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課題

高転移性マウス4T1E/M3乳癌細胞株をさらに改良して、乳癌の高い骨髄転移能を有する乳癌細胞株の樹立方法確立すること、並びに当該樹立株を用いた乳癌の骨髄高転移モデル動物の提供。

解決手段

マウス乳癌細胞4T1E/M3細胞株親株として用いて、内側ウェル底部に微小穴を有する二重ウェルを用いた垂直方向運動能の高い細胞選別を行い、次いでマウスに皮下投与して脊椎骨から骨髄細胞採取し、該細胞から薬剤耐性株を取り出して該薬剤耐性株をマウスに投与するという手段を採用することで、高確率で骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を樹立した。当該骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を、マウスに移植することによる乳癌の骨髄高転移モデル動物。

概要

背景

近年日本人女性に増えて来た乳癌は高率で骨髄肝臓等に転移を起こし、これらは患者に著しい苦痛を与え、患者の生活の質(QOL)を低下させ大きな社会問題となっているが、それにも関わらず、乳癌の転移のメカニズム解明が進まないのは、これら組織への転移の動物モデルが存在しない事にその一因がある。また、このような転移の動物モデルは、新規な乳癌骨髄転移抑制薬のスクリーニング開発にとっても不可欠である。
これまでに存在する乳癌の転移モデルとしては、ヒトの乳癌(MDA-231)をヌードマウス移植するモデルが広く使われて来た(非特許文献1)。
しかし、ヌードマウスでは免疫機構が低いため、最近注目されている癌細胞宿主免疫担当細胞相互作用(非特許文献2)を解析することができないため、同系宿主のモデルの方が望ましい。また、このモデルは広く使われているが、マウス麻酔して左心室細胞投与しないと骨髄転移を起こさないため、投与するのに非常に熟練を要するという問題がある。
一方、マウスモデルでよく用いられる4T1乳癌細胞は、ヒト乳癌によく類似した性質を有する事が知られている(非特許文献3)が、マウスの他の組織への転移能は必ずしも高くない(非特許文献3)。

本発明者らは、以前当該4T1乳癌細胞を親株として骨髄と共に肺及び/または肝臓への転移能が高い4T1E/M3乳癌細胞を樹立し、当該4T1E/M3乳癌細胞株を移植して乳癌の骨髄、肺及び/または肝臓転移解析用マウスモデルを作製した(特許文献1,非特許文献4)。そして、この4T1E/M3株についての発現遺伝子網羅的解析により、親株として用いた4T1乳癌細胞株よりもICAM-1という接着分子及び骨形成因子(BMP7)の発現が顕著に亢進され、反対に単球走化性因子(CCL2=MCP1)の発現量が減少していることを見出し、これらの因子が癌細胞の転移に重要な役割を担っていることを報告している(非特許文献4〜6)。
しかしながら、この4T1E/M3株は、マウス尾静脈に投与した場合には、骨髄(脊椎骨)への転移率は77%であり、親株細胞である4T1E株の14%に比べて有意に高かったものの、マウス皮下に移植した場合の転移率は20%と低いものであった(非特許文献4)。前者の癌を静脈内投与した場合は、癌が元々発生した部位(原発巣)から近傍の血管に入り込む最初の過程スキップしてしまうことでもあるから、後者の皮下移植した場合の方が、より実際の転移に近い骨髄への転移解析用のモデルとなるため、皮下移植した場合でも骨髄に高転移性であることが望ましい。したがって、優れた骨髄転移解析モデル動物作出のためにも、皮下移植した場合でも高い骨髄転移能を有する乳癌細胞の樹立が切望されていた。

概要

高転移性のマウス4T1E/M3乳癌細胞株をさらに改良して、乳癌の高い骨髄転移能を有する乳癌細胞株の樹立方法確立すること、並びに当該樹立株を用いた乳癌の骨髄高転移モデル動物の提供。マウス乳癌細胞4T1E/M3細胞株を親株として用いて、内側ウェル底部に微小穴を有する二重ウェルを用いた垂直方向運動能の高い細胞の選別を行い、次いでマウスに皮下投与して脊椎骨から骨髄細胞採取し、該細胞から薬剤耐性株を取り出して該薬剤耐性株をマウスに投与するという手段を採用することで、高確率で骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を樹立した。当該骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を、マウスに移植することによる乳癌の骨髄高転移モデル動物。なし

目的

本発明の課題は、骨髄及び肺、肝臓等の他の組織に対し高い転移能を有するマウス4T1E/M3乳癌細胞株をさらに改良し、皮下移植した場合でも高い骨髄転移能を有する乳癌細胞株を樹立する方法を確立し、乳癌の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

マウス乳癌細胞4T1E/M3細胞株親株として用い、下記の(a)〜(d)工程を含むことを特徴とする、骨髄高転移性マウス乳癌細胞株の樹立方法;(a)薬剤耐性遺伝子が導入されているマウス乳癌細胞4T1E/M3細胞株を、内側ウェル底部に複数の微小穴を有する二重ウェルの内側ウェル上に蒔き込み、穴を通過して下のウェル落ちてきた細胞回収し、培養後再び内側のウェル上に蒔く。この一連の操作を8〜12回繰り返した後、下のウェルに落ちてきた細胞を回収し、培養する工程、(b)得られた細胞を用いて、マウスの皮下へ投与する工程、(c)マウスの脊椎骨採取し、骨髄細胞を回収して、前記薬剤耐性遺伝子による耐性付与の対象薬剤を含有する培地で培養し、薬剤耐性細胞を採取する工程、(d)得られた薬剤耐性細胞を通常培地で培養し、形質を安定させて骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を樹立する工程。

請求項2

さらに、下記の工程(e)を設けることを特徴とする、請求項1に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株の樹立方法;(e)工程(d)で得られた樹立細胞株を用いて、工程(b)〜(d)を繰り返す工程。

請求項3

請求項1又は2の樹立方法で樹立された骨髄高転移性マウス乳癌細胞株。

請求項4

Cdhn17(cadherin17)が親細胞(4T1E/M3細胞株)と比較して10倍以上高発現していることを特徴とする、請求項3に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株。

請求項5

請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株をマウスに皮下投与又は静注により移植することで得られた、乳癌の骨髄転移解析用動物モデルマウス。

請求項6

乳癌の骨髄転移抑制薬の候補となる被検物質スクリーニングするための方法であって、以下の(a)〜(c)を含む方法;(a)請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株に対して被検物質を投与し、培養する工程、(b)投与後の前記細胞株の足場非依存的増殖能垂直方向運動能、及び細胞内のCadherin17発現量のうちの1つ以上を測定し、当該測定値をあらかじめ測定しておいた投与前の前記細胞株における測定値と比較する工程、(c)投与後の測定値が投与前の測定値と比較して有意に減少している場合に、被検物質を乳癌の骨髄転移抑制薬の候補物質であると評価し、選択する工程。

請求項7

前記工程(a)における被検物質が被検ペプチド又は被検核酸分子であって、被検物質の前記細胞株への投与が、被検ペプチドをコードする核酸又は被検核酸分子の細胞内への導入によるものである、請求項6に記載の方法。

請求項8

乳癌の骨髄転移抑制薬の候補となる被検物質をスクリーニングするための方法であって、対象マウスに対し、被検物質を、請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株と共に、又は当該細胞株の投与前もしくは投与後に投与し、投与後のマウスを一定期間飼育後に犠牲死させ、その骨髄への転移能脊椎骨髄組織への乳癌細胞転移の有無又は程度を指標として評価し、骨髄への転移能を有意に抑制した被検物質を、乳癌の骨髄転移抑制薬の候補として選択することを特徴とする、乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング方法

請求項9

乳癌の骨髄転移抑制薬の候補となる被検物質をスクリーニングするための方法であって、以下の(a)〜(d)を含む方法;(a)対象マウスに対して、請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株と共に、又は当該細胞株の投与前もしくは投与後に被検物質を投与し、投与後のマウスを一定期間飼育する工程、(b)工程(a)で得られたマウスを犠牲死させ、骨髄への転移率及び/又は骨髄組織内における転移癌細胞領域の面積を測定する工程、(c)被検物質を投与せずに前記骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を投与し、投与後のマウスを工程(a)と同じ期間飼育し、得られたマウスを犠牲死させ、骨髄への転移率及び/又は骨髄組織内における転移癌細胞領域の面積を測定する工程、(d)工程(b)で得られた測定値を、工程(c)で得られた測定値と比較し、有意に減少している場合に、被検物質を乳癌の骨髄転移抑制薬の候補物質であると評価する工程。

請求項10

請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を含むことを特徴とする、乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング用キット

請求項11

さらに、少なくとも下記の(1)〜(4)のいずれかを含むことを特徴とする、請求項10に記載のスクリーニング用キット;(1)前記細胞株の足場非依存的増殖能測定用軟寒天培地、(2)前記細胞株の垂直方向の運動能測定用の、複数の微小穴を有するプレートが上部に設けられたウェル、(3)前記細胞株のCadherin17発現量測定用の装置、(4)前記細胞株を移植する対象のマウス及び移植用器具

技術分野

0001

本発明は、乳癌骨髄高転移性マウス乳癌細胞樹立方法及びその樹立細胞,該細胞移植した乳癌の骨髄転移解析用動物モデルマウス、並びに該細胞からなる乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング細胞材料及び同スクリーニング法に関する。

背景技術

0002

近年日本人女性に増えて来た乳癌は高率で骨髄、肝臓等に転移を起こし、これらは患者に著しい苦痛を与え、患者の生活の質(QOL)を低下させ大きな社会問題となっているが、それにも関わらず、乳癌の転移のメカニズム解明が進まないのは、これら組織への転移の動物モデルが存在しない事にその一因がある。また、このような転移の動物モデルは、新規な乳癌骨髄転移抑制薬のスクリーニング開発にとっても不可欠である。
これまでに存在する乳癌の転移モデルとしては、ヒトの乳癌(MDA-231)をヌードマウスに移植するモデルが広く使われて来た(非特許文献1)。
しかし、ヌードマウスでは免疫機構が低いため、最近注目されている癌細胞宿主免疫担当細胞相互作用(非特許文献2)を解析することができないため、同系宿主のモデルの方が望ましい。また、このモデルは広く使われているが、マウスを麻酔して左心室に細胞を投与しないと骨髄転移を起こさないため、投与するのに非常に熟練を要するという問題がある。
一方、マウスモデルでよく用いられる4T1乳癌細胞は、ヒト乳癌によく類似した性質を有する事が知られている(非特許文献3)が、マウスの他の組織への転移能は必ずしも高くない(非特許文献3)。

0003

本発明者らは、以前当該4T1乳癌細胞を親株として骨髄と共に肺及び/または肝臓への転移能が高い4T1E/M3乳癌細胞を樹立し、当該4T1E/M3乳癌細胞株を移植して乳癌の骨髄、肺及び/または肝臓転移解析用マウスモデルを作製した(特許文献1,非特許文献4)。そして、この4T1E/M3株についての発現遺伝子網羅的解析により、親株として用いた4T1乳癌細胞株よりもICAM-1という接着分子及び骨形成因子(BMP7)の発現が顕著に亢進され、反対に単球走化性因子(CCL2=MCP1)の発現量が減少していることを見出し、これらの因子が癌細胞の転移に重要な役割を担っていることを報告している(非特許文献4〜6)。
しかしながら、この4T1E/M3株は、マウス尾静脈に投与した場合には、骨髄(脊椎骨)への転移率は77%であり、親株細胞である4T1E株の14%に比べて有意に高かったものの、マウス皮下に移植した場合の転移率は20%と低いものであった(非特許文献4)。前者の癌を静脈内投与した場合は、癌が元々発生した部位(原発巣)から近傍の血管に入り込む最初の過程スキップしてしまうことでもあるから、後者の皮下移植した場合の方が、より実際の転移に近い骨髄への転移解析用のモデルとなるため、皮下移植した場合でも骨髄に高転移性であることが望ましい。したがって、優れた骨髄転移解析モデル動物作出のためにも、皮下移植した場合でも高い骨髄転移能を有する乳癌細胞の樹立が切望されていた。

0004

特許第4936379号明細書

先行技術

0005

Bandyopadhyay A, Elkahloun A, Baysa SJ, Wang L, Sun LZ. Development and gene expression profiling of a metastatic variant of the human breast cancer MDA-MB-435 cells. Cancer Biol Ther 2005;4:168-74.
Condeelis J, Pollard JW. Macrophages: obligate partners for tumor cell migration, invasion, and metastasis. Cell 2006;124:263-6.
Aslakson CJ, Miller FR. Selective events in the metastatic process defined by analysis of the sequential dissemination of subpopulations of a mouse mammary tumor. Cancer Res 1992;52:1399-405.
Clin Exp Metastasis.(2008) 25:517-529
Clin Exp Metastasis.(2009) 26:817-828
Clin Exp Metastasis.(2012) 29:327-338

発明が解決しようとする課題

0006

本発明の課題は、骨髄及び肺、肝臓等の他の組織に対し高い転移能を有するマウス4T1E/M3乳癌細胞株をさらに改良し、皮下移植した場合でも高い骨髄転移能を有する乳癌細胞株を樹立する方法を確立し、乳癌の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を提供すること、及び当該樹立株を用いた乳癌の骨髄高転移モデル動物を提供することにある。また、当該樹立株を移植した乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、上記課題を解決するため、マウス乳癌細胞4T1株由来の前記4T1E/M3乳癌細胞株(特許文献1,非特許文献4)を親株として用い、皮下移植した場合でも高い骨髄転移能を有する悪性度の高い乳癌細胞株を樹立することを試みた。様々な試行錯誤の結果、まず、二重ウェル微小穴を有する内側ウェル底面に蒔き込み、穴を通過して下のウェル落ちてきた細胞を回収し、培養後再び内側のウェルに蒔くことを繰り返して、in vitroでの垂直方向運動能の高い細胞の選別を行い、次いでマウスに皮下投与して脊椎骨から骨髄細胞採取し、該細胞中のうちの薬剤耐性株を継代培養することで、皮下移植でも高い骨髄転移能を有する乳癌細胞株を樹立することができた。得られた乳癌細胞株をマウスに皮下移植すると、ほぼ100%という高確率で骨髄転移を起こすことが確認され、得られた骨髄転移マウスは、優れた乳癌の骨髄転移解析用モデルマウスとなる。また、当該乳癌細胞及びその皮下移植マウスは、乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング用ツールとしても極めて有用である。
さらに、本発明者らは当該乳癌細胞株についての発現遺伝子の網羅的解析を行い、親株(4T1E/M3株)と比較してCadherin17遺伝子発現が顕著に増大していることを見出した。Cadherin17については、従来から種々の癌において癌の悪性度を示すマーカーとなることが報告されていたが乳癌に関する報告はなく、今回はじめてCadherin17が、乳癌の骨髄転移についても悪性度を示すマーカーとなることが明らかとなった。
以上の知見を得たことで、本発明を完成するに至ったものである。

0008

すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕マウス乳癌細胞4T1E/M3細胞株を親株として用い、下記の(a)〜(d)工程を含むことを特徴とする、骨髄高転移性マウス乳癌細胞株の樹立方法;
(a)薬剤耐性遺伝子が導入されているマウス乳癌細胞4T1E/M3細胞株を、内側ウェル底部に複数の微小穴を有する二重ウェルの内側ウェル上に蒔き込み、穴を通過して下のウェルに落ちてきた細胞を回収し、培養後再び内側のウェル上に蒔く。この一連の操作を8〜12回繰り返した後、下のウェルに落ちてきた細胞を回収し、培養する工程、
(b)得られた細胞を用いて、マウスの皮下へ投与する工程、
(c)マウスの脊椎骨を採取し、骨髄細胞を回収して、前記薬剤耐性遺伝子による耐性付与の対象薬剤を含有する培地で培養し、薬剤耐性細胞を採取する工程、
(d)得られた薬剤耐性細胞を通常培地で培養し、形質を安定させて骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を樹立する工程。
〔2〕 さらに、下記の工程(e)を設けることを特徴とする、前記〔1〕に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株の樹立方法;
(e)工程(d)で得られた樹立細胞株を用いて、工程(b)〜(d)を繰り返す工程。
〔3〕 前記〔1〕又は〔2〕の樹立方法で樹立された骨髄高転移性マウス乳癌細胞株。
〔4〕 Cdhn17(cadherin17)が親細胞(4T1E/M3細胞株)と比較して10倍以上高発現していることを特徴とする、前記〔3〕に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株。
〔5〕 前記〔3〕又は〔4〕に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株をマウスに皮下投与又は静注により移植することで得られた、乳癌の骨髄転移解析用動物モデルマウス。
〔6〕 乳癌の骨髄転移抑制薬の候補となる被検物質をスクリーニングするための方法であって、以下の(a)〜(c)を含む方法;
(a)請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株に対して被検物質を投与し、培養する工程、
(b)投与後の前記細胞株の足場非依存的増殖能、垂直方向の運動能、及び細胞内のCadherin17発現量のうちの1つ以上を測定し、当該測定値をあらかじめ測定しておいた投与前の前記細胞株における測定値と比較する工程、
(c)投与後の測定値が投与前の測定値と比較して有意に減少している場合に、被検物質を乳癌の骨髄転移抑制薬の候補物質であると評価し、選択する工程。
〔7〕 前記工程(a)における被検物質が被検ペプチド又は被検核酸分子であって、被検物質の前記細胞株への投与が、被検ペプチドをコードする核酸又は被検核酸分子の細胞内への導入によるものである、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕 乳癌の骨髄転移抑制薬の候補となる被検物質をスクリーニングするための方法であって、対象マウスに対し、被検物質を、前記〔3〕又は〔4〕に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株と共に、又は当該細胞株の投与前もしくは投与後に投与し、投与後のマウスを一定期間飼育後に犠牲死させ、その骨髄への転移能を脊椎骨髄組織への乳癌細胞転移の有無又は程度を指標として評価し、骨髄への転移能を有意に抑制した被検物質を、乳癌の骨髄転移抑制薬の候補として選択することを特徴とする、乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング方法。
〔9〕 乳癌の骨髄転移抑制薬の候補となる被検物質をスクリーニングするための方法であって、以下の(a)〜(d)を含む方法;
(a)対象マウスに対して、請求項3又は4に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株と共に、又は当該細胞株の投与前もしくは投与後に被検物質を投与し、投与後のマウスを一定期間飼育する工程、
(b)工程(a)で得られたマウスを犠牲死させ、骨髄への転移率及び/又は骨髄組織内における転移癌細胞領域の面積を測定する工程、
(c)被検物質を投与せずに前記骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を投与し、投与後のマウスを工程(a)と同じ期間飼育し、得られたマウスを犠牲死させ、骨髄への転移率及び/又は骨髄組織内における転移癌細胞領域の面積を測定する工程、
(d)工程(b)で得られた測定値を、工程(c)で得られた測定値と比較し、有意に減少している場合に、被検物質を乳癌の骨髄転移抑制薬の候補物質であると評価する工程。
〔10〕 前記〔3〕又は〔4〕に記載の骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を含むことを特徴とする、乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング用キット
〔11〕 さらに、少なくとも下記の(1)〜(4)のいずれかを含むことを特徴とする、前記〔10〕に記載のスクリーニング用キット;
(1)前記細胞株の足場非依存的増殖能測定用軟寒天培地
(2)前記細胞株の垂直方向の運動能測定用の、複数の微小穴を有するプレートが上部に設けられたウェル、
(3)前記細胞株のCadherin17発現量測定用の装置、
(4)前記細胞株を移植する対象のマウス及び移植用器具

発明の効果

0009

本発明により樹立されたマウス乳癌細胞は、その親株であるマウス乳癌細胞4T1E/M3株に比べて極めて骨髄転移性が高く、皮下移植するだけで100%というきわめて高い確率で骨髄転移を起こす高骨髄転移性マウス乳癌細胞株である。また、上記親株が保有するヒト乳癌に類似する性質をそのまま保有しているため、本発明の高骨髄転移性マウス乳癌細胞を移植したマウスは、ヒト乳癌細胞を投与した従来のマウスと比べ、ヒト乳癌細胞に対するマウス免疫系の関与がないことと相俟って、極めて優れた乳癌の骨髄転移解析用の動物モデルとなり、乳癌の骨髄転移の解析にとって有力な手段となる。

0010

すなわち、本発明の高転移性マウス乳癌細胞を投与したマウスは、該細胞投与から死亡するまでの間、その生体産生タンパク質の変化を解析したり、あるいは各段階のマウスから高転移性マウス乳癌細胞を採取し、その親株あるいは投与前の高転移性マウス乳癌細胞との遺伝子の発現状態等の比較を通じて、骨髄への転移メカニズム、その原因等の解明にとっても有効な手段となりうる。

0011

一方、本発明の骨髄高転移性マウス乳癌細胞は、マウスに対して皮下投与のみで極めて高い確率で骨髄に転移癌を形成させることができるため、マウス骨髄内に容易かつ短期間に乳癌の転移状態を作りだすことができる。本発明の骨髄高転移性マウス乳癌細胞を移植すると同時に、又はその前後に乳癌の転移抑制剤の候補物質をマウスに投与して、骨髄内での乳癌の転移状況をみることにより、乳癌転移抑制剤のスクリーニングを効率的に行うことが可能となる。
また、本発明の骨髄高転移性マウス乳癌細胞は、足場非依存的増殖能、垂直方向の運動能でも顕著な活性を示すことから、これら増殖能、運動能を指標として、乳癌転移抑制剤候補のin vitroでのスクリーニングのための細胞材料、キットとして用いることができる。
さらに、本発明の高骨髄転移性マウス乳癌細胞では親株(4T1E/M3株)と比較しても顕著にCadherin17遺伝子が高発現していることが明らかとなり、Cdhn17(Cadherin17)が乳癌の骨髄転移性(悪性度)のマーカーとして用いられることを見出しているので、乳癌転移抑制剤候補のin vitroスクリーニングには、Cdhn17発現量の変化を指標とすることもできる。

図面の簡単な説明

0012

親細胞4T1E/M3株(EM3)及び本願発明FP10SC1及びFP10SC2細胞の位相差顕微鏡写真対物レンズ20倍、接眼レンズ10倍で撮影した。
4T1E/M3細胞、FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞をそれぞれ3×103個/wellずつ96well plateに蒔き、その日及び1〜4日後にMTT試薬10uL/wellを添加し4時間37℃、5%CO2で培養後、450nmの吸光度を測定する事により、通常の増殖能を測定した。通常の増殖能には4T1E/M3細胞、FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞間で殆ど差がなかった。
0.5%濃度の軟寒天倍地を5mL/dish蒔いた上に、4T1E/M3細胞、FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞をそれぞれ0.3%の軟寒天を含ませた培地に懸濁して、2×104個/6cm dishで蒔きこみ、12日後に形成したコロニーの数を、顕微鏡下で計測した。Aはコロニー数、Bはコロニーの写真である。FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞では、明らかに足場非依存的増殖能が著しく亢進していた。
8umの穴の開いているポリカーボネート膜が底に張ってあるチェンバー(市販品、ケモタキセル)を、800uL/wellの培地を入れた24well plateに入れ、その上から2×104個/wellの乳癌細胞(4T1E/M3、FP10SC1及びFP10SC2)を蒔きこみ、24時間後にチェンバーの下に落ちてきた細胞数を顕微鏡下計測した。Aはポリカーボネート膜の上に骨髄由来内皮細胞単層に培養してから乳癌細胞を蒔いた場合、Bは内皮細胞なしで蒔いた場合である。A,Bのいずれの場合も、FP10SC1,2細胞の垂直方向の運動能は大きく亢進していた。
4T1E/M3細胞、FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞をそれぞれ1×106個/マウスずつマウス(BALB/cメス、8週齢)に皮下投与して25日目に脊椎骨を採取し、組織切片を作成してHE(ヘマトキシリンエオジン)染色した。対物レンズ4倍と40倍の顕微鏡写真を示す。癌細胞は細胞質と核が大きく、正常細胞と区別できる。
4T1E/M3細胞、FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞からRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCRを行なって解析したCadherin17のmRNA発現量の比較。FP10SC1,2細胞においてCadherin17の遺伝子発現が亢進していた。

0013

以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
1.本発明の骨髄高転移性マウス乳癌細胞FP10SC株及びその樹立方法
(1−1)親株とするマウス乳癌細胞4T1E/M3について
本発明において親株として使用するマウス乳癌細胞4T1E/M3(以下、単に4T1E/M3細胞ともいう。)は、マウス乳癌細胞4T1(以下、単に4T1細胞ともいう。)由来の細胞であって、4T1細胞(ATCC:CRL-2539)はATCC(American Type Culture Collection)から入手可能である。当該4T1細胞由来4T1E/M3細胞は、親の4T1細胞の性質である、転移能,増殖能,免疫学的特徴等は受け継いでおり、その上で、骨髄への転移能と共に、肺、肝臓組織への転移能も高いという特徴がある。
4T1E/M3細胞は、特許文献1又は非特許文献4に記載の方法に従って樹立することができる。具体的には、以下の(a)〜(c)の方法で得られる。
(a)まず、薬剤耐性遺伝子を導入したマウス乳癌細胞4T1をマウス尾静脈から静注し(1×106個/マウス)、10〜12日経過後、マウスを犠牲死させ、その大腿骨を取り出して骨髄を採取し、該骨髄から細胞を採取する。
(b)次いで、上記骨髄から採取された細胞を、上記薬剤耐性遺伝子による耐性付与の対象となる薬剤を含有する培地で培養し、該培地で生存する薬剤耐性株を採取する。
(c)上記(b)プロセスで得られた薬剤耐性細胞を再びマウス尾静脈からの静注工程に供し、大腿骨の骨髄からの細胞採取工程及び(b)の薬剤による細胞選択工程を繰り返す。これら一連の操作を複数回、例えば3回以上繰り返して、4T1細胞が変異した高転移性マウス乳癌細胞4T1E/M3細胞を得る。
なお、本発明で用いる薬剤耐性遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子ブラストサイジン(Blasticidin)耐性遺伝子等の抗生物質耐性遺伝子が挙げられるが特に制限がなく、市販されているこれら遺伝子を担持したプラスミド等を適宜用いることができ、また耐性遺伝子導入手法も、常法に従えばよく、例えば、市販品に添付されるプロトコルに従えばよい。選択培地は薬剤耐性遺伝子としてネオマイシン耐性遺伝子を使用した場合には、G418などを、ゼオシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子を使用した場合にはゼオシン、ブラストサイジン等を培地中に含有させる。
4T1E/M3細胞は、その親株である4T1細胞と比較すれば、その骨髄転移能は飛躍的に増大しており、マウス尾静脈に投与した場合の骨髄転移率は77%もの高転移率を示す。しかしながら、マウスに皮下投与した場合の骨髄転移率は、20%という低転移率である。癌の転移過程を考えると、癌は元々発生した部位(原発巣)から近傍の血管に入り込み、血管を巡って他の臓器に行き、そこから転移先臓器に入り込んで増殖するという一連の過程を辿る。癌を静脈内投与するという事は、転移の最初の過程をスキップしてしまうことであるから、皮下投与の場合の方がより実際の転移に近い。つまり、真に悪性度の高い高転移性癌細胞というためには、皮下投与した場合でも骨髄に高転移性の癌細胞である必要があるので、その意味では4T1E/M3細胞の骨髄転移活性(悪性度)は十分なものではなかった。

0014

(2—2)本発明の骨髄高転移性マウス乳癌細胞FP10SCの樹立方法
本発明の骨髄高転移性マウス乳癌細胞FP10SC細胞は、前記4T1E/M3細胞を親細胞とし、以下の工程(a)〜(c),又はさらに工程(d)により樹立する。
(a)垂直方向への運動性の高い細胞のin vitroでの選別工程
4T1E/M3細胞株を親株として、垂直方向への運動性の高い細胞を選別するためのin vitroでの選別工程を設ける。具体的には、複数の微小穴、例えば約6〜10ミクロン、好ましくは8ミクロンの穴が約5000〜6000個/cm2開いたポリカーボネートフィルターを有する二重ウェルを用いて、内側のフィルター表面に細胞を蒔き込み、穴を通過した細胞を回収して培養する。なお、本実施例では、2種類のウェルを組み合わせ、内側ウェル底部(ポリカーボネート膜製)に複数の微小穴(直径8um程度)を設けた市販の二重ウェル(クラボウ社製、ケモタキセル)を用いたが、これに限られるものではなく、培養ウェル又はプレートの上方に複数の微小穴を有する膜、好ましくはポリカーボネートの膜が設置された培養ウェル又はプレートでよい。得られた細胞を再度フィルター表面に蒔く工程を6回以上、好ましくは8〜12回設ける。この工程をさらに繰り返しても良いが、10回繰り返した段階で、運動性の上昇度が頭打ちになるため、効率の面からみて10回繰り返しが最も好ましい。この段階で得られた細胞を「FP10細胞」ともいう。
この段階のFP10細胞においても、マウス背部に皮下投与した場合の骨髄転移率は60%であり、親株4T1E/M3細胞に比べて有意に上昇していた。
なお、本発明において「骨髄転移率」というときは、癌細胞投与マウス総数に対する、一定日数経過後に脊椎骨骨髄組織で転移癌が観察されたマウス数の割合をいう。具体的には、対象癌細胞をマウス背部の皮下に投与(1×106個/マウス)し、22〜24日後に投与マウスを犠牲死させ、マウスの脊椎骨から採取した骨髄組織の組織切片を顕微鏡による目視で転移状態を観察し、全投与マウスに対する骨髄転移癌マウスの割合を測定した。

0015

(b)マウス皮下投与工程及び骨髄細胞採取工程
(a)工程で得られたFP10細胞を、マウスに皮下投与し、20〜26日経過後(マウスの種類及び週齢によって異なるが,例えばBALB/cマウス(雌8週齢)の場合は22〜24日後が好ましい。)、マウスを犠牲死させてその脊椎骨を採取して骨髄細胞を回収し、該骨髄から骨髄細胞を採取する。
(c)薬剤による細胞選択工程
回収した骨髄細胞を、薬剤耐性遺伝子による耐性付与の対象となる薬剤(例えばネオマイシン耐性遺伝子の場合にはG418)含有培地で8〜14日、好ましくは10〜12日間培養し、該培地で生残する薬剤耐性株を採取する。ここで得られた薬剤耐性株の形質は培養を続けても形質が変化しない安定株であり、骨髄高転移性マウス乳癌細胞FP10SC1細胞株が樹立できる。
(d)さらに、当該FP10SC1細胞株に対して、再び(b)のマウスへの皮下投与工程,及び脊椎骨の骨髄からの細胞採取工程,並びに(c)の薬剤による細胞選択工程に供する。ここで得られた薬剤耐性株も、その形質は培養を続けても形質が変化しない安定株であり、骨髄高転移性マウス乳癌細胞FP10SC2細胞株が樹立できる。
これら一連の操作を、さらに繰り返しても良いが、FP10SC1細胞株及びFP10SC2細胞株のいずれもが、骨髄転移率100%であり(表1)、垂直方向の運動能は、FP10SC1細胞株よりもFP10SC2細胞株の方が落ちていることからみて、効率的には、当該in vivoでの選別工程は、むしろ1〜2回が好ましい。
FP10SC1株、FP10SC2株またはさらに(b)及び(c)工程を繰り返して樹立された骨髄高転移性マウス乳癌細胞株を「4T1E/M3/FP10SC細胞株」又は単に「FP10SC細胞」ともいう。

0016

(2−3)本発明のFP10SC細胞株の特性
本発明の骨髄高転移性のマウス乳癌細胞のFP10SC細胞は、親株であるマウス乳癌細胞4T1E/M3株に比べて極めて骨髄転移性が高く、皮下移植するだけで100%というきわめて高い確率で骨髄転移を起こす極めて悪性度の高い乳癌細胞株である。
また、通常の増殖能は、親細胞(4T1E/M3株)と同程度であるが、足場非依存的増殖能は親細胞の7〜20倍もある(図3)。
ここで、足場非依存的増殖能は0.3%軟寒天を含む培地中での増殖能を観察した。具体的には、0.3%軟寒天を含む培地に被検癌細胞を各dishあたり2×104個ずつ蒔き12日間培養した後、各dish内に見られるコロニー数を顕微鏡下計数した。
また、あわせて垂直方向の運動能を測定したところ、内皮細胞を介した場合も介さない場合もいずれも親細胞の3〜6倍である(図4)。
ここで、垂直方向の運動能の測定方法は、二重ウェルの内側の微小穴の開いたポリカーボネート膜の上から、被検癌細胞を各wellあたり4×104個ずつ蒔きこみ、24時間後にチェンバーの下に落ちてきた細胞数を顕微鏡下計測した。その際、内皮細胞を介した垂直方向の運動能を測定するためには、ポリカーボネート膜の上に骨髄由来内皮細胞を単層培養し、その上から被検癌細胞を蒔きこむ。

0017

(2−4)本発明のFP10SC細胞株での高発現遺伝子について
本発明のFP10SC細胞株についての発現遺伝子の網羅的解析により、親細胞(マウス乳癌細胞4T1E/M3株)と比較して発現の大きく変化している遺伝子について定量的RT-PCRを行なった結果、特にCdhn17(Cadherin17)の発現が大きく亢進していることが明らかとなった(図6)。本発明のFP10SC細胞株は、親細胞(マウス乳癌細胞4T1E/M3株)と比較してCdhn17が10倍以上、好ましくは10〜20倍高発現している乳癌の骨髄高転移性マウス乳癌細胞である、と表現することもできる。
Cdhn17(cadherin17)は、細胞接着を司る糖タンパク質であるカドヘリンスーパーファミリーに属しているが、7つのカドヘリンドメインを有していたり、細胞内ドメインが約20アミノ酸残基しかないというように、古典的なカドヘリンとは構造が異なる。Cdhn17はペプチドのトランスポーターや接着分子としての働きが知られているが、最近肝臓癌胃癌結腸癌などにおいて癌転移や癌の悪性度との関わりが報告されるようになってきた(Biochimica et Biophysica Acta 1806,138-145,2010)。さらに、高転移性の結腸癌においてCdhn17は細胞接着や増殖の亢進を引き起こし、Cdhn17の発現を抑制すると結腸癌細胞の増殖や肝臓への転移が抑制されたという報告(Oncogene 2013 Apr 22 on line(doi:10.1038/onc.2013.117))や、Cdhn17の発現を抑制すると胃癌細胞の増殖、接着運動浸潤が抑制されるという報告(PLOS ONE 2013 8, 3, e56959)、抗Cdhn17抗体が、肝臓癌の増殖や肺への転移を抑制したという報告(PLOS ONE 2013, 8, 9. e72386)、胃癌患者癌組織でCdhn17を多く発現している場合は発現していない場合に比べて有意に生存率が低い(Ann Surg Oncol 2012, 19, 1529-1534)という報告、卵巣癌患者の組織切片でCdhn17の発現と癌の悪性度とに相関が見られるという報告(Int JGynecol Cancer 2012, 22, 1170-1176)などがあるが、乳癌におけるCdhn17の役割を調べた報告はない。
本発明において、はじめてCdhn17(cadherin17)が乳癌の骨髄転移性(悪性度)のマーカーとして用いられることが見出された。

0018

(2−5)乳癌の骨髄転移解析用モデルマウスの作製
FP10SC細胞を移植した骨髄転移状態のマウスでは、ヒト乳癌細胞をマウスに接種した場合とは異なり、異種細胞に対するマウス免疫系作動が起きないため、より自然に近い状態の乳癌の骨髄転移状態のマウスとなり、当該マウスも乳癌の骨髄転移を解析するための動物モデルとして有用である。
乳癌の骨髄転移解析用モデルマウスを作製する場合には、FP10SC細胞のマウスへの投与形態は、静注でも皮下移植でもよいが、皮下移植が好ましく、特に背部または腹部皮下移植が好ましい。マウス尾静脈などにより、静注の場合には、マウス尾静脈などからの静注が好ましい。
通常、マウス尾静脈投与の場合には、FP10SC細胞5×105個以上、好ましくは1×106個/マウスを静注すれば通常5〜10日で骨髄に転移し、マウスに皮下移植する場合は、FP10SC細胞5×105個以上、好ましくは1×106個/マウスをマウスの背部または腹部などの皮下に移植すれば通常15〜20日で骨髄に転移する。しかし、本発明においてこれらの転移までの期間、あるいは投与する細胞数等には制限がなく、マウスが癌により自然死するまでの間、様々な状態の動物モデルを使用して、骨髄転移を解析することができる。

0019

例えば、転移直前と直後の、マウスにおける各種生理活性物質、免疫系物質の産生状況、または骨髄細胞における各種遺伝子の発現状況を解析したり、あるいは投与してから死亡する間の様々な状態のマウス骨髄細胞に転移したマウス乳癌細胞を採取して、投与前の骨髄高転移性FP10SC細胞における各種遺伝子の発現状況等を比較解析し、乳癌の骨髄転移のメカニズム、その原因を解析することが可能となる。また、投与する細胞数を様々に変化させて、同様な解析を行うことも可能である。
さらに、上記FP10SC細胞を投与したマウスに、様々な生理活性物質あるいはその阻害物質を投与して、転移の状況変化あるいはマウスにおける各種遺伝子、特にCadherin17遺伝子の発現状態の変化、あるいは採取された骨髄高転移性マウス乳癌細胞における遺伝子発現状態の変化を観測して、これら生理活性物質が与える影響をとおして、乳癌の骨髄転移のメカニズムあるいはその抑制手法を探ることも可能となる。

0020

(2−6)乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング
本発明のFP10SC細胞は、乳癌の骨髄転移抑制薬のスクリーニング手段として有用である。
具体的には、本発明のFP10SC細胞と乳癌の骨髄転移抑制薬の候補物質とをマウスに投与し(1×106個/マウス)、一定時間経過後マウスを犠牲死させ、骨髄転移の状況を観察し、転移の有無、程度から、使用した候補物質の転移抑制効果判別することにより、使用した候補物質の中から乳癌の骨髄転移抑制薬をスクリーニングすることができる。また、FP10SC細胞の前記(2−3)で述べた足場非依存的増殖能、又は内皮細胞を介した、もしくは介さない垂直方向の運動能という性質を利用してin vitroにおいて、FP10SC細胞に対し、骨髄転移抑制薬の候補物質がこれら能力を抑制するかどうかを指標にスクリーニングすることも可能である。このような手法は、特に骨髄転移抑制薬のスクリーニングの予備実験系として簡便で効率的手法となる。
ここで、骨髄転移抑制薬の候補物質が、ペプチド、低分子化合物などの場合はFP10SC細胞の培地中に添加することが好ましいが、候補ペプチドをコードする遺伝子を、哺乳動物用発現ベクターなど通常の哺乳動物細胞への核酸導入法を用いて細胞内に導入して発現させる方法であってもよい。候補物質がsiRNAなどの核酸分子である場合は、周知のキャリア化合物と共に細胞内に導入する方法を利用することができる。
さらに、Cadherin17またはその遺伝子をマーカーとし、乳癌の骨髄転移抑制薬の候補物質をFP10SC細胞と共に培養するか、もしくはFP10SC細胞に候補遺伝子又はRNAi核酸分子を導入してFP10SC細胞のCadherin17遺伝子の発現量が低下するかどうかを、RT-PCR又はウエスタンブロッティングなどにより観察することでも、骨髄転移抑制薬の予備的なスクリーニングが可能である。

0021

また、このようなスクリーニングあるいは、上記高転移性マウス乳癌細胞を使用する骨髄転移メカニズムの解析に際しては、骨髄高転移性マウス乳癌細胞の作製において、薬剤耐性遺伝子の導入に加えて、ルシフェラーゼ遺伝子等の発光遺伝子、又はGFP遺伝子などの蛍光遺伝子を導入しておけば、転移の状態は発光又は蛍光観察により把握でき、正確な転移率についても発光強度又は蛍光強度を測定することにより定量的に把握できるためより効率的である。

0022

以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。

0023

〔実施例1〕
(1−1)4T1E/M3細胞株の樹立
マウス乳癌細胞4T1株(ATCC:CRL-2539)をATCC(American Type Culture Collection)から入手し、特許文献1又は非特許文献4に記載の方法に従って、4T1E/M3細胞株を樹立した。
具体的には、4T1株に,ネオマイシン耐性遺伝子を含むpEGFP-Fベクター(BD Biosciences Clontech社製)を,トランスフェクション試薬Effecten(QIAGEN社製)を使用して導入し、得られた4T1E細胞をBALB/cマウス(雌8週齢)に尾静脈投与(1×106個/マウス)した。10〜12日後に骨髄(大腿骨及び骨)から骨髄細胞を回収してG418(ネオマイシン誘導体, 120ug/mL)含有培地で培養し、増殖してきた細胞を再びマウスに投与する操作を3回繰り返して4T1E/M3細胞株を樹立した。

0024

(1−2)運動性の高い細胞の選別
実施例(1−1)で得られた4T1E/M3細胞株を親株として、垂直方向への運動性の高い細胞を選別した。
具体的には、8ミクロンの穴の開いたポリカーボネートフィルターが、底についているようなウェル(ケモタキセル、クラボウ社製)を用い、これをもう少し大きなウェル(24ウェルプレートコーニングコースター社製、他社製品でも良い)に入れ、二重ウェルを作る。
外側のwellに800uL/wellの培養用培地(10%FBS(牛胎児血清)、10mMHEPES含有RPMI-1640培地)を入れてから、内側のウェルに細胞を蒔き込む(1ウェルあたり4×104細胞/mlとなるように、200uL/well蒔く)と、運動性の高い細胞は穴を通過して膜の下に落ちて来る。24時間後に、下のウェルに落ちてきた細胞を回収し、上述RPMI-1640培地で3〜4日間培養して再び内側のウェルに蒔いた。この一連の操作を10回繰り返し、運動能の高い細胞のみを選別した。これら細胞を「FP10細胞」ともいう。FP10細胞を1×106個ずつマウスに皮下投与して25日後に脊椎骨を採取し、ホルマリン液漬けて固定後、脱カルシウム液に漬けて脱灰後、パラフィン樹脂に抱埋して5-6umの組織切片を作成し、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色して顕微鏡下観察し、骨髄転移の有無を判定した結果、10匹中6匹に転移が認められ(転移率60%)親株に比べて有意に骨髄転移率が有意に上昇している事が判明した。ただし、さらに高転移性の細胞を樹立するために、以下の操作を行なった。

0025

(1−3)FP10SC1細胞株及びFP10SC2細胞株の樹立
実施例(1−2)で得られたFP10細胞を、BALB/cマウス(雌8週齢)2〜3匹に1×106個ずつ皮下投与し、24日後に脊椎骨を採取して骨髄細胞を回収し、G418(120ug/mL)を含む前述のRPMI-1640培地で10〜12日間培養してFP10SC1株を得た。このFP10SC1株をさらにマウス2〜3匹に1×106個ずつ皮下投与して、24日後に脊椎骨を取り出して骨髄細胞を回収し、G418(120ug/mL)を含む前述のRPMI-164培地で10〜12日間培養して、FP10SC2株を樹立した。
図1に、親株(4T1E/M3細胞株、EM3と表記する。)と、樹立したFP10SC1株及びFP10SC2株それぞれの顕微鏡写真を示す。FP10SC1株及びFP10SC2株は、いずれも4T1E/M3株を親株とした増殖性、運動性の高い高転移性マウス乳癌細胞株であるので、両者をあわせて「4T1E/M3/FP10SC細胞株」又は単に「FP10SC細胞株」ともいう。

0026

〔実施例2〕FP10SC細胞のin vitroにおける性質についての検定
(2−1)各細胞の顕微鏡写真
親株である4T1E/M3細胞(EM3)と、本発明で樹立したFP10SC1細胞及びFP10SC2細胞それぞれの位相差顕微鏡写真(20×10倍)を図1に示す。FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞は、4T1E/M3細胞と比較してやや丸みがあり接着が弱い傾向があった。

0027

(2−2)FP10SC細胞の通常の増殖能の測定
4T1E/M3/FP10SC細胞株と親株(4T1E/M3細胞株)との通常の増殖能を改変MTTアッセイにより比較した。
具体的には、1.5×104細胞/ml濃度に調整したFP10SC1株及びFP10SC2株並びに親株をそれぞれ200ul/wellずつ96 well plateに撒き、0〜4日間培養し、培養後の細胞数の増加を cell counting kit8(同人化学社製)を用いた改変MTT Assayにより測定した。MTT試薬(和光純薬社製)を10uL/wellを添加し4時間37℃、5%CO2で培養後、450nmの吸光度(OD450)をマイクロプレートリーダーで測定して比較したところ、FP10SC1,FP10SC2細胞は親株4T1E/M3細胞と通常の増殖能には殆ど差はなかった(図2)。

0028

(2−3)FP10SC細胞の足場非依存的増殖能
0.5%のアガロースを含む前述培養用培地を直径6cmのdishに5mL/dishずつ蒔いた上に、0.3%のアガロースを含む同培地に1×104/mLに調製した親株(4T1E/M3細胞株)、FP10SC1細胞及びFP10SC2細胞を2mL/dishずつ蒔きこみ、37℃、5%CO2で12日間培養した。使用した細胞数は各dishにつきそれぞれ2×104個である。培養後、各dish内に見られるコロニー数を顕微鏡下計数し、コロニーの形状・大きさを顕微鏡撮影した。コロニー数及び観察された顕微鏡写真は、図3Aおよび図3Bに示す。これらによればFP10SC1細胞及びFP10SC2細胞では癌細胞の悪性度の指標となる「足場非依存的増殖能」(基板に接着しなくても増殖できる能力)親株に比べて大きく亢進していることが明らかである。

0029

(2−4)FP10SC細胞の垂直方向の運動能
次いで、前記(1−2)で用いたと同様の二重ウェルを使って、垂直方向の運動能を測定した。8umの穴の開いているポリカーボネート膜が底に張ってあるチェンバー(クラボウ社製、ケモタキセル)を、800uL/wellの培地を入れた24well plate(コーニングコースター社製など)に入れ、その上から2×105/mLに調製した4T1E/M3細胞及びFP10SC1,FP10SC2細胞を200uL/wellずつ蒔きこみ、24時間後にチェンバーの下に落ちてきた細胞数を顕微鏡下計測した。結果を図4A,Bに示す。
図4Aは、「骨髄由来内皮細胞を介した垂直方向の運動能」を測定したものであるが、4T1E/M3細胞及びFP10SC1,FP10SC2細胞を蒔きこむ前に、フィブロネクチン(20ug/mL, 60ul/well)でコートしたポリカーボネート膜の上に2×105/mLに調製した骨髄由来内皮細胞を200uL/wellずつ二重wellに蒔きこみ、2日後に完全な単層が形成されている事を顕微鏡下で確認した。その骨髄由来内皮細胞の単層上に4T1E/M3細胞及びFP10SC1,FP10SC2細胞を蒔きこみ、24時間後にチェンバーの下に落ちてきた細胞数を計測したところ、FP10SC1,FP10SC2細胞の骨髄由来内皮細胞を介した垂直方向の運動能は親株(4T1E/M3細胞株)に比べて大きく亢進していることが明らかとなった。
図4Bは、「骨髄由来内皮細胞を介さない垂直方向の運動能」を測定したものであるが、骨髄由来内皮細胞単層なしに、直接ポリカーボネート膜上に4T1E/M3細胞及びFP10SC1,FP10SC2細胞を蒔きこみ、24時間後にチェンバーの下に落ちてきた細胞数を計測したものである。骨髄由来内皮細胞を介した場合(図4A)と同様に、FP10SC1,FP10SC2の垂直方向の運動能は親株(4T1E/M3細胞株)に比べて大きく亢進していることが明らかとなった。

0030

〔実施例3〕FP10SC細胞を皮下投与したマウスでの骨髄転移能の測定
FP10SC1株及びFP10SC2株をBALB/cマウス(雌8週齢)の背部に皮下投与し(1×106/マウス)、25日後に脊椎骨を回収し組織切片を作成して転移の有無を確認した。6匹及び9匹のマウスで2回ずつ行ったが、いずれの細胞株でも100%脊椎骨の骨髄組織に転移を起こす事が判明した(表1)。同時に、親株(4T1E/M3細胞株)でも6匹及び10匹のマウスで同様の実験を行ったが、転移率は20〜33%に留まった。その際のFP10SC1株及びFP10SC2株を投与したマウスの脊椎骨の組織切片写真を図5に示す。
本実施例では、BALB/cマウス(雌8週齢)をそれぞれ6匹または9-10匹ずつ3群に分け、1つの群に4T1E/M3細胞をそれぞれ皮下投与(1×106/マウス)し、残りの2つの群にFP10SC1及びFP10SC2細胞をそれぞれ皮下投与(1×106/マウス)し、25日後に肺及び脊椎骨を採取して、10%ホルマリン液に漬けて固定した。脊椎骨はさらに脱カルシウム液に漬けて脱灰した。これらをパラフィン樹脂に抱埋し、5-6umに薄切して組織切片を作成し、HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色して、肺及び脊椎への転移の有無を顕微鏡下で解析した。肺に対しては親株(4T1E/M3細胞株)およびFP10SC1,2細胞投与群全てにおいて転移が見られた。
一方脊椎の骨髄組織に対しては、親株の転移率が20〜30%であったのに対し、FP10SC1, FP10SC2細胞での転移率は100%であり(投与したすべてのマウスの脊椎に転移が観察された)、有意に脊椎の骨髄組織に対する転移能が亢進していることが明らかとなった(表1)。それぞれの細胞を投与したマウスの脊椎骨の組織切片写真を図5に示す。癌細胞が転移して増殖している部分は、核・細胞質共に大きく、転移をしていない部分と顕微鏡下で明確に区別できる。
図5のようにして被検癌細胞を投与し、脊椎の骨髄組織切片を作製して、脊椎骨への転移の有無を解析した時の転移率を(表1)として示す。例えば6匹中6匹に転移が見られた場合に100%として示している。EM3細胞投与では20〜30%の転移率であるのに対し、FP10SC1,2細胞は投与した全てのマウスに転移を起こさせた(転移率100%)。

0031

実施例

0032

〔実施例4〕FP10SC細胞株における遺伝子発現の解析
親株(4T1E/M3細胞株)とFP10SC2細胞のそれぞれから、トータルRNAを採取してDNAマイクロアレイ解析により、網羅的な遺伝子発現比較を行なって、発現の大きく変化している遺伝子について、定量的RT-PCRを行なった結果、特にCdhn17(cadherin17)の発現が大きく亢進していることが明らかとなった(図6)。Cdhn17(cadherin17)は、種々の癌転移や癌の悪性度との関わりが報告されるようになってきたタンパク質であるが、乳癌における骨髄転移とCdhn17の役割を調べた報告はない。本実施例において、はじめて乳癌における骨髄転移の悪性度との相関が明らかとなった。

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