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技術 フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤ならびに幹細胞因子の産生抑制剤

出願人 東洋精糖株式会社
発明者 長井敦史相澤恭
出願日 2015年2月13日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2015-026290
公開日 2015年9月24日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2015-166340
状態 未査定
技術分野 食品の着色及び栄養改善 突然変異または遺伝子工学 微生物、その培養処理 化粧料 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード 防御壁 水あめ状 数珠つなぎ 合成力 グルコピラノシルグリセロール 肌荒れ状態 フィラグリン遺伝子 糖縮合度
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重要な関連分野

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図面 (5)

課題

天然保湿因子の産生に関与しているフィラグリン遺伝子等の発現を促進することのできる新規発現促進剤、および幹細胞因子(SCF)の産生を抑制することのできる新規の産生抑制剤を提供する。

解決手段

D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤、ならびにSCFの産生抑制剤。これらの発現促進剤および産生抑制剤は、経口摂取されるもの、または塗布されるものとして調製することができる。

概要

背景

皮膚の最外層に存在する角質層は、外界からの刺激紫外線、乾燥等)に対する防御壁として機能している。例えば、外環境の乾燥から身を守るため、角質層は体内からの水分の放出を抑制する作用と、角質層自身の水分を保持する作用を合わせ持つことが知られている。体内からの水分の放出を抑制するものとしては角質層の細胞間脂質が、角質層自身の水分を保持する作用を持つものとしては天然保湿因子が知られている。この天然保湿因子はアミノ酸及びその誘導体ピロリドンカルボン酸乳酸塩無機塩、糖類等からなる角質層中に存在する水溶性成分である。これらの天然保湿因子の主要成分はアミノ酸やピロリドンカルボン酸等のアミノ酸代謝物であり、特にアミノ酸には、角質層における水分量と高い相関性報告され、角質層の水分保持には極めて重要である。

しかしながら、角質層におけるアミノ酸の量は年齢肌荒れ状態アトピー性皮膚炎花粉症等のアレルギー反応によって減少し、角質層の水分環境を悪化させることが知られている。角質層の水分量が低下することにより角質層がかたくなり、亀裂を生じさせ、小皺の原因となり、抗原等の外界因子の侵入を容易にし、皮膚炎症反応誘起することもある。

これまで、油剤や、糖、アミノ酸、乳酸ピロリドンカルボン酸塩等の天然保湿因子、コラーゲン等の蛋白質ヒアルロン酸コンドロイチン硫酸等の多糖類グリセリン、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールといった保湿剤外用することで、水分量の減少した角質層を改善することが試みられてきた。しかしながら、上記のような保湿剤は、角質層に留まる間は有効であるが、角質層の水分保持機能を本質的に改善する作用までは期待できない。また、洗浄発汗などによって容易に流されることも問題であった。

天然保湿因子の主成分であるアミノ酸は、フィラグリンが角質層内でカスパーゼ−14の作用を受けて分解することによって供給される。フィラグリンの産生の過程ではまず、フィラグリン遺伝子顆粒細胞顆粒層に位置するケラチノサイト)において発現し、そのmRNAからの翻訳によって、10〜12個のフィラグリンユニットが短いリンカーペプチドを介して数珠つなぎに配列したプロフィラグリン(フィラグリン前駆体)が産生される。プロフィラグリンは直ちにリン酸化され、ケラトヒアリン顆粒蓄積する。顆粒細胞が顆粒層上層から角質層に移行し、角質細胞角化細胞、角質層に位置するケラチノサイト)に変化する際に、プロフィラグリンは脱リン酸化と、タンパク質分解酵素の作用を受けてフィラグリンへと分解される。このようにして産生されたフィラグリンは、角質細胞内でケラチンフィラメント沈着しており、ケラチンフィラメント同士の凝集効率を高め、角質細胞の内部構築関与する。そして、角質層上層で、フィラグリンは前述のようにカスパーゼ−14の作用を受けて分解されて、アミノ酸およびその誘導体である天然保湿因子が生成する。

近年、このフィラグリンが皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、及び乾燥などの条件によりフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが明らかになった。そこで、フィラグリンの合成や分解を促進することによって角質層内のアミノ酸量を増大させ、角質層の水分環境を本質的に改善することが検討されている。

さらに、フィラグリン遺伝子の異常(欠損)によるフィラグリンの発現量の低下が、老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎、尋常性魚鱗癬気管支喘息等の疾患の発症に深く関与していることも明らかになってきている。そのため、フィラグリン遺伝子の発現を促進することによって、上記のような疾患を予防または治療することも検討されている。たとえば、非特許文献1には、JTC801(N-(4-amino-2-methylquinolin-6-yl)-2-[(4-ethylphenoxy)methyl]benzamide)が、ヒトおよびマウス培養表皮細胞(角質細胞)におけるフィラグリンの発現量を亢進する作用を有すること、そして当該化合物を経口で摂取することにより、アトピー性皮膚炎の動物モデルの皮膚におけるフィラグリンの発現を亢進し、炎症が改善されたことが記載されている。

上述したJTC801以外にも、フィラグリン遺伝子の発現を促進する作用を有する物質として、たとえば、ガイヨウ抽出物クマザサ抽出物ローズマリー抽出物レイシ抽出物またはトウニン抽出物を有効成分として含有するプロフィラグリンmRNA発現促進剤(特許文献1)、カキ葉抽出物からなるプロフィラグリン遺伝子発現促進剤(特許文献2)、メハジキアンズスイカズラサイシントウキハトムギモモテンチャまたはシロキクラゲを含有するNMF産生促進剤(特許文献3)、リン脂質糖アルコールが結合した構造を有する特定の一般式で示される糖脂質を有効成分として含有するフィラグリン合成促進剤(特許文献4)などが提案されている。

一方で、角質細胞によるSCF(Stem Cell Factor:幹細胞因子)の異常産生は、肥満細胞マスト細胞)の異常増殖や異常脱顆粒化を引き起こし、ヒスタミンセロトニンLTB4等のケミカルメディエーター遊離を亢進させて、かゆみの原因となることも知られている。SCFには、タンパク質分解酵素の作用により切断された膜から遊離する分泌型(SCF−1)と、膜結合型(SCF−2)がある。このうちSCF−1はその切断部位において細胞膜から遊離して、色素細胞や肥満細胞のSCFレセプターに結合し、色素細胞の増殖活性化や、肥満細胞の増殖活性化および脱顆粒化をもたらす。アトピー性皮膚炎では、皮膚炎発症部位における肥満細胞の浸潤病態に重要な働きを担っていると考えられており、SCF(特にSCF−1)はそのような肥満細胞の増殖や、成熟分化ケモタキシスにとって必須の因子となっている。そのため、アトピー性皮膚炎の治療等においてSCFの産生を抑制することが重要視されており、そのような作用効果を奏する物質がいくつか提案されている。たとえば、特許文献5には、α−グルコシルヘスペリジンを含有する経口投与・摂取用の、SCF産生抑制剤およびかゆみ抑制剤などが記載されており、特許文献6には、関平鉱泉水からなるSCF遊離抑制剤およびそれを含む鎮痒剤および皮膚外用剤が記載されている。また、皮膚が乾燥、紫外線等の刺激を受けることでSCFが産生されることも報告されており(特許文献7)、SCFの量は細胞乾燥状態を示す一つの指標となる。SCFのSCFレセプターへの結合も、皮膚が乾燥、紫外線等の刺激を受けることで促進される。

なお、SCF−2は角質細胞等に結合したまま色素細胞(メラノサイト)のSCFレセプターに結合して色素細胞の増殖を活性化し、メラノジェネシス(メラニン合成)の制御因子として働いている。

ところで、α−D−グルコピラノシルグリセロールは、清酒に0.5質量%程度含まれており、すっきりとした甘さを与えていることが知られている物質である。近年では、α−D−グルコピラノシルグリセロールが非う蝕性、難消化性保湿性等の機能を有することが報告されており、その機能性材料としての有用性が注目されている。例えば、特許文献8には、そのような機能に着目して、α−D−グルコピラノシルグリセロールを甘味剤や保湿剤などとして利用し、各種飲食品化粧品医薬品などに添加することができることが記載されている。

また、特許文献9には、α−D−グルコピラノシルグリセロール(α−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド)とその立体異性体であるβ−D−グルコピラノシルグリセロール(β−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド)を特定の比率で含有する糖組成物を用いることにより、α−D−グルコピラノシルグリセロールを単独で用いる場合と比較して保湿性を向上させることができることが記載されている。

しかしながら、特許文献8および9では、保湿性とフィラグリン等の特定の遺伝子の発現との関係性については全く言及されておらず、α−および/またはβ−D−グルコピラノシルグリセロールを上記遺伝子の発現促進剤として利用することができることは記載されていない。

さらに、特許文献10には、α−および/またはβ−D−グルコピラノシルグリセロール等を包含するグリセリルグリコシドが、皮膚におけるアクアポリンの発現を促進する作用を有することが記載されている。アクアポリンは植物および動物の細胞膜に存在する、分子量の小さな極性分子、特に水を透過させる細孔を形成しており、たとえば皮膚の深部から表層へ水を供給して潤いを保持するために重要な役割を担っている。

しかしながら、特許文献10では、グリセリルグリコシドがアクアポリン以外のタンパク質の発現を促進する作用を有することは記載されていない。

概要

天然保湿因子の産生に関与しているフィラグリン遺伝子等の発現を促進することのできる新規な発現促進剤、および幹細胞因子(SCF)の産生を抑制することのできる新規の産生抑制剤を提供する。D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤、ならびにSCFの産生抑制剤。これらの発現促進剤および産生抑制剤は、経口摂取されるもの、または塗布されるものとして調製することができる。

目的

本発明は、天然保湿因子の産生に関与しているケラチノサイト等によるフィラグリン遺伝子等の発現を促進することのできる、新規な発現促進剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤

請求項2

前記D−グルコピラノシルグリセロールが、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールの混合物である、請求項1に記載の発現促進剤。

請求項3

経口摂取されるものである、請求項1または2に記載の発現促進剤。

請求項4

塗布されるものである、請求項1または2に記載の発現促進剤。

請求項5

請求項3に記載の発現促進剤を含有することを特徴とする飲食品

請求項6

請求項3または4に記載の発現促進剤を含有することを特徴とする、化粧品医薬部外品または医薬品。

請求項7

D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、幹細胞因子(SCF)の産生抑制剤

請求項8

前記D−グルコピラノシルグリセロールが、1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールの混合物である、請求項1に記載の産生促成剤。

請求項9

経口摂取されるものである、請求項7または8に記載の産生抑制剤。

請求項10

塗布されるものである、請求項7または8に記載の産生抑制剤。

請求項11

請求項9に記載の産生抑制剤を含有することを特徴とする飲食品。

請求項12

請求項9または10に記載の産生抑制剤を含有することを特徴とする、化粧品、医薬部外品または医薬品。

技術分野

0001

本発明は、皮膚の角質層で水分を保持するための天然保湿因子(Natural Moisturizing Factors:NMF)の産生に関与する、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤に関する。また本発明は、異常産生がかゆみなどの原因となる、幹細胞因子(SCF)の産生抑制剤に関する。換言すれば、本発明はそのような発現促進剤または産生抑制剤としての、D−グルコピラノシルグリセロールの用途に関する。

背景技術

0002

皮膚の最外層に存在する角質層は、外界からの刺激紫外線、乾燥等)に対する防御壁として機能している。例えば、外環境の乾燥から身を守るため、角質層は体内からの水分の放出を抑制する作用と、角質層自身の水分を保持する作用を合わせ持つことが知られている。体内からの水分の放出を抑制するものとしては角質層の細胞間脂質が、角質層自身の水分を保持する作用を持つものとしては天然保湿因子が知られている。この天然保湿因子はアミノ酸及びその誘導体ピロリドンカルボン酸乳酸塩無機塩、糖類等からなる角質層中に存在する水溶性成分である。これらの天然保湿因子の主要成分はアミノ酸やピロリドンカルボン酸等のアミノ酸代謝物であり、特にアミノ酸には、角質層における水分量と高い相関性報告され、角質層の水分保持には極めて重要である。

0003

しかしながら、角質層におけるアミノ酸の量は年齢肌荒れ状態アトピー性皮膚炎花粉症等のアレルギー反応によって減少し、角質層の水分環境を悪化させることが知られている。角質層の水分量が低下することにより角質層がかたくなり、亀裂を生じさせ、小皺の原因となり、抗原等の外界因子の侵入を容易にし、皮膚炎症反応誘起することもある。

0004

これまで、油剤や、糖、アミノ酸、乳酸ピロリドンカルボン酸塩等の天然保湿因子、コラーゲン等の蛋白質ヒアルロン酸コンドロイチン硫酸等の多糖類グリセリン、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールといった保湿剤外用することで、水分量の減少した角質層を改善することが試みられてきた。しかしながら、上記のような保湿剤は、角質層に留まる間は有効であるが、角質層の水分保持機能を本質的に改善する作用までは期待できない。また、洗浄発汗などによって容易に流されることも問題であった。

0005

天然保湿因子の主成分であるアミノ酸は、フィラグリンが角質層内でカスパーゼ−14の作用を受けて分解することによって供給される。フィラグリンの産生の過程ではまず、フィラグリン遺伝子が顆粒細胞顆粒層に位置するケラチノサイト)において発現し、そのmRNAからの翻訳によって、10〜12個のフィラグリンユニットが短いリンカーペプチドを介して数珠つなぎに配列したプロフィラグリン(フィラグリン前駆体)が産生される。プロフィラグリンは直ちにリン酸化され、ケラトヒアリン顆粒蓄積する。顆粒細胞が顆粒層上層から角質層に移行し、角質細胞角化細胞、角質層に位置するケラチノサイト)に変化する際に、プロフィラグリンは脱リン酸化と、タンパク質分解酵素の作用を受けてフィラグリンへと分解される。このようにして産生されたフィラグリンは、角質細胞内でケラチンフィラメント沈着しており、ケラチンフィラメント同士の凝集効率を高め、角質細胞の内部構築に関与する。そして、角質層上層で、フィラグリンは前述のようにカスパーゼ−14の作用を受けて分解されて、アミノ酸およびその誘導体である天然保湿因子が生成する。

0006

近年、このフィラグリンが皮膚の水分保持に非常に重要かつ必要不可欠であること、及び乾燥などの条件によりフィラグリンの合成力が低下し、角質層におけるアミノ酸量が低下することが明らかになった。そこで、フィラグリンの合成や分解を促進することによって角質層内のアミノ酸量を増大させ、角質層の水分環境を本質的に改善することが検討されている。

0007

さらに、フィラグリン遺伝子の異常(欠損)によるフィラグリンの発現量の低下が、老人性乾皮症、アトピー性皮膚炎、尋常性魚鱗癬気管支喘息等の疾患の発症に深く関与していることも明らかになってきている。そのため、フィラグリン遺伝子の発現を促進することによって、上記のような疾患を予防または治療することも検討されている。たとえば、非特許文献1には、JTC801(N-(4-amino-2-methylquinolin-6-yl)-2-[(4-ethylphenoxy)methyl]benzamide)が、ヒトおよびマウス培養表皮細胞(角質細胞)におけるフィラグリンの発現量を亢進する作用を有すること、そして当該化合物を経口で摂取することにより、アトピー性皮膚炎の動物モデルの皮膚におけるフィラグリンの発現を亢進し、炎症が改善されたことが記載されている。

0008

上述したJTC801以外にも、フィラグリン遺伝子の発現を促進する作用を有する物質として、たとえば、ガイヨウ抽出物クマザサ抽出物ローズマリー抽出物レイシ抽出物またはトウニン抽出物を有効成分として含有するプロフィラグリンmRNA発現促進剤(特許文献1)、カキ葉抽出物からなるプロフィラグリン遺伝子発現促進剤(特許文献2)、メハジキアンズスイカズラサイシントウキハトムギモモテンチャまたはシロキクラゲを含有するNMF産生促進剤(特許文献3)、リン脂質糖アルコールが結合した構造を有する特定の一般式で示される糖脂質を有効成分として含有するフィラグリン合成促進剤(特許文献4)などが提案されている。

0009

一方で、角質細胞によるSCF(Stem Cell Factor:幹細胞因子)の異常産生は、肥満細胞マスト細胞)の異常増殖や異常脱顆粒化を引き起こし、ヒスタミンセロトニンLTB4等のケミカルメディエーター遊離を亢進させて、かゆみの原因となることも知られている。SCFには、タンパク質分解酵素の作用により切断された膜から遊離する分泌型(SCF−1)と、膜結合型(SCF−2)がある。このうちSCF−1はその切断部位において細胞膜から遊離して、色素細胞や肥満細胞のSCFレセプターに結合し、色素細胞の増殖活性化や、肥満細胞の増殖活性化および脱顆粒化をもたらす。アトピー性皮膚炎では、皮膚炎発症部位における肥満細胞の浸潤病態に重要な働きを担っていると考えられており、SCF(特にSCF−1)はそのような肥満細胞の増殖や、成熟分化ケモタキシスにとって必須の因子となっている。そのため、アトピー性皮膚炎の治療等においてSCFの産生を抑制することが重要視されており、そのような作用効果を奏する物質がいくつか提案されている。たとえば、特許文献5には、α−グルコシルヘスペリジンを含有する経口投与・摂取用の、SCF産生抑制剤およびかゆみ抑制剤などが記載されており、特許文献6には、関平鉱泉水からなるSCF遊離抑制剤およびそれを含む鎮痒剤および皮膚外用剤が記載されている。また、皮膚が乾燥、紫外線等の刺激を受けることでSCFが産生されることも報告されており(特許文献7)、SCFの量は細胞乾燥状態を示す一つの指標となる。SCFのSCFレセプターへの結合も、皮膚が乾燥、紫外線等の刺激を受けることで促進される。

0010

なお、SCF−2は角質細胞等に結合したまま色素細胞(メラノサイト)のSCFレセプターに結合して色素細胞の増殖を活性化し、メラノジェネシス(メラニン合成)の制御因子として働いている。

0011

ところで、α−D−グルコピラノシルグリセロールは、清酒に0.5質量%程度含まれており、すっきりとした甘さを与えていることが知られている物質である。近年では、α−D−グルコピラノシルグリセロールが非う蝕性、難消化性保湿性等の機能を有することが報告されており、その機能性材料としての有用性が注目されている。例えば、特許文献8には、そのような機能に着目して、α−D−グルコピラノシルグリセロールを甘味剤や保湿剤などとして利用し、各種飲食品化粧品医薬品などに添加することができることが記載されている。

0012

また、特許文献9には、α−D−グルコピラノシルグリセロール(α−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド)とその立体異性体であるβ−D−グルコピラノシルグリセロール(β−D−ジヒドロキシプロピルグルコピラノシド)を特定の比率で含有する糖組成物を用いることにより、α−D−グルコピラノシルグリセロールを単独で用いる場合と比較して保湿性を向上させることができることが記載されている。

0013

しかしながら、特許文献8および9では、保湿性とフィラグリン等の特定の遺伝子の発現との関係性については全く言及されておらず、α−および/またはβ−D−グルコピラノシルグリセロールを上記遺伝子の発現促進剤として利用することができることは記載されていない。

0014

さらに、特許文献10には、α−および/またはβ−D−グルコピラノシルグリセロール等を包含するグリセリルグリコシドが、皮膚におけるアクアポリンの発現を促進する作用を有することが記載されている。アクアポリンは植物および動物の細胞膜に存在する、分子量の小さな極性分子、特に水を透過させる細孔を形成しており、たとえば皮膚の深部から表層へ水を供給して潤いを保持するために重要な役割を担っている。

0015

しかしながら、特許文献10では、グリセリルグリコシドがアクアポリン以外のタンパク質の発現を促進する作用を有することは記載されていない。

0016

特開2012−219047号公報
特開2013−180968号公報
特開2006−124350号公報
特開2006−241095号公報
特開2009−007336号公報
特開2010−126494号公報
特開2003−194809号公報
特開平11−222496号公報
特開2011−236152号公報
米国特許出願公開第2009/0130223号明細書

先行技術

0017

Otsuka et al., Possible new therapeutic strategy to regulate atopic dermatitis through upregulating filaggrin expression. The Journal of Allergy and Clinical Immunology, 19 September 2013. (http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2013.07.027)

発明が解決しようとする課題

0018

本発明は、天然保湿因子の産生に関与しているケラチノサイト等によるフィラグリン遺伝子等の発現を促進することのできる、新規な発現促進剤を提供することを課題とする。本発明はさらに、ケラチノサイト等によるSCFの産生を抑制することのできる、新規の産生抑制剤を提供することも課題とする。

課題を解決するための手段

0019

本発明者らは、D−グルコピラノシルグリセロールが、天然保湿因子の原料ともいうべきフィラグリンの遺伝子の発現を促進するとともに、フィラグリンを分解して天然保湿因子に変換するタンパク質分解酵素であるカスパーゼ−14の遺伝子の発現を促進する作用を有し、それらの遺伝子の発現促進剤として利用することができることを見出した。本発明者らはさらに、D−グルコピラノシルグリセロールはSCFの産生抑制剤として利用できることも見出した。

0020

すなわち、本発明は一つの側面において、D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤(以下、「本発明の発現促進剤」と称することがある。)を提供する。本発明はもう一つの側面において、D−グルコピラノシルグリセロールを含有することを特徴とする、SCFの産生抑制剤(以下、「本発明の産生抑制剤」と称することがある。)を提供する。本発明はさらなる側面において、経口摂取または塗布により利用される上記の発現促進剤または産生抑制剤や、それらを含有する飲食品、化粧品、医薬部外品または医薬品を提供する。

0021

換言すれば、本発明は、D−グルコピラノシルグリセロールの、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進するための有効成分としての用途や、D−グルコピラノシルグリセロールを、インビトロまたはインビボで、ヒトおよびその他の動物の、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子を発現しうる細胞と接触させることにより、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進させる方法を提供する。同様に、本発明は、D−グルコピラノシルグリセロールの、SCFの産生を抑制するための有効成分としての用途や、D−グルコピラノシルグリセロールを、インビトロまたはインビボで、ヒトおよびその他の動物の、SCFを発現しうる細胞と接触させることにより、SCFの産生を抑制する方法を提供する。

発明の効果

0022

D−グルコピラノシルグリセロールを含有する本発明の発現促進剤を用いることにより、フィラグリン遺伝子のみならずカスパーゼ−14遺伝子のケラチノサイト等における発現を促進することができるため、角質層における天然保湿因子の産生量を相乗的に増加させることが期待できる。また、本発明の発現促進剤を用いることによりSCF発現細胞が産生するSCFの量を抑制することができるため、SCFの異常産生に起因するかゆみを低減することなどが期待できる。このような本発明の発現促進剤または産生抑制剤を、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等に配合して利用することにより、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進効果や、SCFの産生抑制効果を期待できる、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等を製造することが可能となる。

0023

なお、後記実施例により示されている結果から、D−グルコピラノシルグリセロールは湿潤状態にある(培養液中で培養されている)ケラチノサイト等のSCF発現細胞に直接的に作用して、SCFの発現量を抑制する効果を有することが推定される。ただ、ケラチノサイトは乾燥刺激によってもSCFの産生を促進するので、たとえば、本発明の発現促進剤としての作用によって生体の角質層の湿潤状態が保たれ、ケラチノサイトが乾燥刺激を受けないようにすることで、SCFの産生量を抑制するという間接的な作用機序示唆されうる。本発明の産生抑制剤による作用効果は、少なくとも上記の直接的な作用機序に基づいており、上記の間接的な作用機序だけに基づくものではないが、これら両方の作用機序やさらなるその他の作用機序が働くことも排除されるものではない。

図面の簡単な説明

0024

図1は、プロフィラグリン、フィラグリン、天然保湿因子(NMF)およびカスパーゼ−14の関係と、D−グルコピラノシルグリセロールがプロフィラグリンおよびカスパーゼ−14の発現を促進する作用を表した模式図である。
図2は、実施例1における、COSARTE−2G(D−グルコピラノシルグリセロール等を含有する組成物)のフィラグリン(A)およびカスパーゼ−14(B)それぞれの遺伝子の発現促進作用を示す結果のグラフである。
図3は、実施例2における、COSARTE−2Gから精製したD−グルコピラノシルグリセロール(GMG)を50mMまたは200mMの濃度で用いたときのフィラグリン遺伝子の発現促進作用を示す結果のグラフである。グリセリン(Glycerol)は対照物質である。
図4は、実施例3における、COSARTE−2GによるSCFの産生抑制作用を示す結果のグラフである。図の見出し[4−1],[4−2]および[4−3]はそれぞれ、実施例中の見出し[3−1],[3−2]および[3−3]に対応するものである。図中のカラムおよびバーはn=3の平均値および標準偏差(SD)を示す。横軸下段は培養液に添加したSCF誘導剤(mediumは無添加)、横軸上段は培養液へのCOSARTE−2G(3%)の添加の有無(mediumは無添加)を表す。縦軸は培養液中のSCFの濃度、または吸光度(450nm−750nm)を表す。

0025

−発現促進剤−
本発明のフィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進剤およびSCFの産生抑制剤は、D−グルコピラノシルグリセロールを含有する物質であればよく、たとえば他の成分を含む組成物として調製してもよいし、他の成分を極力減らした精製物として調製してもよい。すなわち、本発明において、実際にフィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進する作用、あるいは実際にSCFの産生を抑制する作用を有する化合物はD−グルコピラノシルグリセロールであるが、本発明の発現促進剤および産生抑制剤は、そのような作用を阻害しない範囲で、D−グルコピラノシルグリセロール以外の物質(たとえば水、グリセリン)を含有していてもよい。このような作用効果に対する貢献の意味で、本発明の発現促進剤および産生抑制剤は、本質的にD−グルコピラノシルグリセロールからなるものということもできる。

0026

(D−グルコピラノシルグリセロール)
D−グルコピラノシルグリセロールは、式(1)で表される化合物、すなわち1−O−(α−またはβ−)D−(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロール(1−O−(α−またはβ−)D−ジヒドロキシプロピル(モノまたはポリ)グルコピラノシドと称されることもある。)および式(2)で表される化合物、すなわち2−O−(α−またはβ−)D−(モノまたはポリ)グルコピラノシルグリセロール(2−O−(α−またはβ−)D−ジヒドロキシプロピル(モノまたはポリ)グルコピラノシドと称されることもある。)の総称である。これらの化合物は互いに構造異性体の関係にある。本発明では、式(1)で表される化合物のみを用いても、式(2)で表される化合物のみを用いても、式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との混合物を用いてもよい。

0027

0028

式(1)中の*印を付けた2位の炭素原子不斉炭素原子であり、光学異性体、すなわち(2R)体および(2S)体が存在する。式(1)で表される化合物はどちらの光学異性体であってもよく、これらの光学異性体からなる混合物(ラセミ体)であってもよい。

0029

式(1)および(2)中のnは糖縮合度を示し、1以上の整数である。後述するような製造方法によって得られる糖組成物中の化合物については、nは通常1〜6の整数、ほとんどは1〜4の整数である。本発明では、nが1である化合物のみを用いても、nが1以上の化合物の混合物を用いてもよい。

0030

式(1)および(2)中の波線は、括弧内のグルコース残基の1位の炭素原子とグリセリンの水酸基由来する酸素原子が、n=2以上の場合はさらにグルコース残基の4位の水酸基に由来する酸素原子とグルコース残基の1位の炭素原子が単結合で結合していて、その結合はα結合であってもβ結合であってもよいことを表す。本発明では、波線部がα結合である化合物のみを用いても、波線部がβ結合である化合物のみを用いても、波線部がα結合である化合物とβ結合である化合物との混合物を用いてもよい。

0031

式(1)によって表される化合物の具体例としては、式(1)においてn=1で波線がα結合を表す場合に相当する、下記式(1A)で表される化合物、すなわち1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールと、式(1)においてn=1で波線がβ結合を表す場合に相当する、下記式(1B)で表される化合物、すなわち1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールが挙げられる。式(2)によって表される化合物の具体例としては、式(2)においてn=1で波線がα結合を表す場合に相当する、下記式(2A)で表される化合物、すなわち2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールが挙げられる。

0032

0033

本発明で用いるD−グルコピラノシルグリセロールの形態及び純度含有率)は、本発明における作用効果が阻害されない範囲、すなわちフィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進する作用を発揮できる範囲であれば、特に限定されるものではない。D−グルコピラノシルグリセロールの形態としては、例えば、水溶液、水溶液を濃縮した水あめ状の高粘度溶液などが挙げられる。D−グルコピラノシルグリセロールの純度は10重量%以上が好ましく、例えば、前記高粘度溶液中のD−グルコピラノシルグリセロールの純度は40重量%程度またはそれ以上とすることができる。

0034

また、D−グルコピラノシルグリセロールは、それを調製する際に残存または混入することのある未反応物または反応副生物不純物)と混合した状態であってもよい。そのような不純物としては、D−グルコピラノシルグリセロールを有機合成法により合成するための一方の原料として配合されるグリセリンおよびそれに由来する反応副生物、たとえばエタノールイソプロピルアルコールエチレングリコールジエチレングリコールトリエチレングリコールプロピレングリコールジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオールジグリセリンポリグリセリン等のアルコールが挙げられる。

0035

なお、グリセリンは食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等への配合量が制限される場合がある。そのため、有機合成法によって得られるD−グルコピラノシルグリセロールおよび上記の未反応物および反応副生物を含有する糖組成物を食品、化粧品、医薬品等の製造に用いる場合、その糖組成物中のグリセリンの割合は、糖組成物中の全固形分に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。一方、グリセリンの配合量が特に問題とならない場合は、糖組成物中の全固形分に対して、20質量%以上であってもよい。

0036

また、前記不純物としては、D−グルコピラノシルグリセロールを合成するためのもう一方の原料として配合されるグルコース源およびそれに由来する反応副生物、たとえば、グルコース源が二糖以上の糖である場合にその分解により生じた糖や、そのような糖同士が反応して副生した糖なども挙げられる。

0037

D−グルコピラノシルグリセロールは、公知の手法により予め調製しておくこともできるし、商品として購入することもできる。たとえば、特開平11−0222496号公報(特許文献7)に記載されているような酵素法を用いれば、α−D−グルコピラノシルグリセロールを主成分とする生成物が得られ、特開2011−236152号公報(特許文献8)に記載されているような有機合成法を用いれば、α−D−グルコピラノシルグリセロールとβ−D−グルコピラノシルグリセロールを所定の割合で含有する混合物が得られる。有機合成法の概略を説明すれば、この製造方法は、グルコース源とグリセリンとを酸性触媒を用いて反応させることによりD−グルコピラノシルグリセロールを合成する工程(グリコシル化工程)および酸性触媒の中和剤グルコシル化工程の反応系内に添加して反応を停止させる工程(反応停止工程)を含み、必要に応じてさらに、残存グリセリン、残存グルコース源、副生物等を除去するための精製工程(蒸留工程、脱色工程等)や、粘度を低下させてハンドリング性を向上させるための水溶液調製工程などを含んでいてもよい。

0038

また、たとえば東洋精糖(株)製の商品「コスアルテ2G」は、D−グルコピラノシルグリセロール(1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロールおよび2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールの混合物)、グリセリン、その他の糖類および水を含有する組成物であり、この組成物中の、水およびグリセリンを除いたD−グルコピラノシルグリセロールの含有率は、約70〜78重量%、平均73.5重量%である。また、上記商品は有機合成法により効率的に製造することができる。このような、D−グルコピラノシルグリセロールとして上記4種類の化合物を含有する上記商品を、本質的にD−グルコピラノシルグリセロールからなる本発明の発現促進剤または産生抑制剤として用いることが好ましい。

0039

図1は、プロフィラグリン、フィラグリン、天然保湿因子(NMF)およびカスパーゼ−14の関係と、D−グルコピラノシルグリセロールがプロフィラグリンおよびカスパーゼ−14の発現を促進する作用を表した模式図である。D−グルコピラノシルグリセロールが細胞に作用すると、後述する実施例1が示すとおり、フィラグリンおよびカスパーゼ−14遺伝子の発現が促進される。発現したフィラグリン遺伝子は、プロフィラグリンに翻訳され、脱リン酸化などの分解反応によりフィラグリンになる。フィラグリンは、発現したカスパーゼ−14によりさらに分解反応を受け、NMF(Natural Moisturizing Factor)となる。

0040

(用途)
D−グルコピラノシルグリセロールを含有する本発明の発現促進剤は、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進することによって目的とする効果が得られる用途において、特に限定されることなく使用することができる。本発明の発現促進剤は、フィラグリン遺伝子またはカスパーゼ−14遺伝子のどちらかの発現を促進することを目的として使用してもよいし、これら両方の遺伝子の発現を同時に促進することを目的として使用してもよい。つまり、本発明の発現促進剤は、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ14遺伝子の少なくとも一方の遺伝子の発現を促進することを目的として使用することができる。

0041

たとえば、本発明の発現促進剤は、インビトロまたはインビボで、ヒトおよびその他の動物の、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子を発現しうる細胞、好ましくは顆粒細胞または角化細胞と接触させることにより、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進させるために使用することができる。

0042

また、本発明の発現促進剤は、フィラグリン遺伝子および/またはカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進する作用を有するD−グルコピラノシルグリセロール以外の物質と混合して、さらにそのような作用を向上させた発現促進剤を調製するために利用することもできる。

0043

D−グルコピラノシルグリセロールを含有する本発明の産生抑制剤は、SCFの産生を促進することによって目的とする効果が得られる用途において、特に限定されることなく使用することができる。

0044

たとえば、本発明の産生抑制剤は、インビトロまたはインビボで、ヒトおよびその他の動物の、SCFを産生しうる細胞、たとえば角化細胞(サイトケラチン)と接触させることにより、SCFの産生を促進させるために使用することができる。なお、SCFを産生する細胞としては、角化細胞の他、線維芽細胞内皮細胞、マスト細胞(肥満細胞)、ストローマ細胞間質細胞)等も挙げられ、本発明の産生抑制剤は、SCFの産生を抑制することが所定の作用効果を奏する各種の細胞に対して適用することが可能である。

0045

また、本発明の産生抑制剤は、SCFの産生を抑制する作用を有するD−グルコピラノシルグリセロール以外の物質と混合して、さらにそのような作用を向上させた産生抑制剤を調製するために利用することもできる。

0046

本発明の発現促進剤および産生抑制剤は、経口摂取されるもの、または塗布されるものとして調製することができる。特に好適な実施形態として、本発明の発現促進剤は、フィグラリン遺伝子等の発現促進作用により角質層中の天然保湿因子の産生量を増加させるための有効成分として、また本発明の産生抑制剤は、角質層中のSCF産生細胞によるSCFの産生量を抑制するための有効成分として、食品(栄養機能食品特定保健用食品といった保健機能食品を含む。)、化粧品、医薬部外品(薬用化粧品入浴剤等を含む)、医薬品、その他の製品に配合して利用することができる。このような実施形態において、D−グルコピラノシルグリセロールは、発現促進剤としての用途と産生抑制剤としての用途のどちらか一方のみを目的として配合してもよいし、両方の用途を目的として配合してもよい。

0047

化粧品の場合、例えば、乾燥、紫外線等の外的ストレスによって引き起こされる、肌の乾燥、荒れシワ老化等を予防(リスクの低減)または改善する効果を期待することのできる化粧品として製造することができる。また、本発明の産生抑制剤を有効成分とする化粧品は、SCFの異常産生によって色素細胞が異常増殖し、メラニン産生が亢進することによって引き起こされる、しみ、そばかす、くすみ等を予防または改善することも可能である。

0048

医薬品の場合、例えば、アトピー性皮膚炎、乾皮症等に代表される乾燥性皮膚疾患のように、角質層の天然保湿因子の減少やSCFの異常産生、遊離が直接的または間接的に症状に関与している疾患を治療または予防するための医薬品として製造することができる。医薬品の場合はさらに、上記の疾患に加えて尋常性魚鱗癬、気管支喘息等を含めた、フィラグリンおよび/またはカスパーゼ−14の発現量の低下、あるいはそれらの遺伝子の異常が直接的または間接的に症状に関与している疾患を治療または予防するための医薬品として製造することができる可能性がある。また、本発明の産生抑制剤を有効成分とする医薬品は、乾燥性皮膚疾患が伴う掻痒(かゆみ)を効果的に抑制することのできる鎮痒剤として好適である。

0049

食品(特に保健機能食品)の場合、または薬用化粧品、入浴剤等の医薬部外品の場合も、上述したような化粧品および/または医薬品の場合と同様である。

0050

このような食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等の形態(剤型)は、目的とする効果が得られる限り特に限定されるものではなく、適切な形態を選択すればよい。

0051

例えば、化粧品、医薬部外品および医薬品については、所望の部位の皮膚に塗布することにより前述したような所定の効果を発揮することができる剤形のもの(皮膚外用剤)として製造することが可能である。そのような化粧品の具体例としては、オイルクリーム口紅化粧水ジェルパック、口紅、リップクリーム石鹸ハンドソープボディソープシャンプーリンストリートメントヘアトニック、その他のエアゾールローションスティック等が挙げられる。また、経皮投与型の医薬品の具体例としては、エアゾール剤液剤経皮吸収型製剤懸濁剤乳剤貼付剤軟膏剤パップ剤リニメント剤ローション剤等が挙げられる。皮膚外用型の医薬部外品の具体例としては、上記の化粧品または医薬品と同様の剤形や、入浴剤等が挙げられる。

0052

一方で、経口で摂取することにより前述したような所定の効果を発揮することができる医薬品および食品を製造することも可能である。

0053

経口投与型の医薬品(内服薬)の具体例としては、液剤、エリキシル剤カプセル剤顆粒剤丸剤、懸濁剤・乳剤、散剤錠剤シロップ剤トローチ剤リモナーデ剤等が挙げられる。経口投与型の医薬部外品の具体例としても、上記の医薬品と同様の剤形が挙げられる。

0054

食品の具体例としては、乳製品魚肉畜肉果実野菜ビン詰、缶詰類コーヒー紅茶ココア緑茶ジュース炭酸飲料乳酸飲料乳酸菌飲料などの清涼飲料水、合成酒、洋酒などの酒類パンビスケットクラッカークッキーパイプリンバタークリームカスタードクリームシュークリームスポンジケーキドーナツチョコレートグミガムキャンデーなどの各種洋菓子、せんべい、あられ、餅類、あん類、羮、ゼリー飴玉などの各種和菓子フラワーペーストピーナッツペーストフルーツペーストなどのペースト類アイスクリームシャーベットなどの氷菓、果実のシロップ漬、などのシロップ類、ジャムマーマレード、シロップ漬、糖果などの果実、野菜の加工食品類、福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬などの漬物類、ハムソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ天ぷらなどの魚肉製品ウニイカ塩辛、さきするめ、酢コンブ、などの各種珍味類、のり、山菜小魚、するめ、などで製造されるつくだ煮類、煮豆ポテトサラダ、こんぶ巻などのそう菜食品、プリンミックスホットケーキミックス即席しるこ、即席スープなどの即席食品醤油粉末醤油味噌粉末味噌、もろみ、ふりかけ、マヨネーズドレッシング食酢、三酢、中華の素、天つゆ、麺つゆソースケチャップ焼肉タレカレールウシチューの素、スープの素、ダシの素、核酸系調味料複合調味料、みりん砂糖など各種調味料等が挙げられる。

0055

このような形態の食品、化粧品、医薬部外品および医薬品は、本発明の発現促進剤および/または産生促進剤(すなわちD−グルコピラノシルグリセロール)と各形態に応じた各種の成分とを配合するようにして、各形態に応じた一般的な方法に従って製造することができる。それらの製品中のD−グルコピラノシルグリセロールの含有量は、目的とする効果が得られる限り特に限定されるものではなく、適切な含有量は通常行われるような試験を通じて、製品の形態(剤型)等を考慮しながら適切に調節すればよい。特に医薬品の場合は、患者の症状や年齢等の条件も考慮しながら、1日あたりの適切な投与量(有効成分量)を調節し、それに基づいて、1回あたりの医薬品中のD−グルコピラノシルグリセロールの含有量や、1日あたりの投与回数を設定することが適切である。

0056

化粧品や経皮投与型の医薬部外品および医薬品のような皮膚外用剤の場合、D−グルコピラノシルグリセロールの含有量は、例えば、その皮膚外用剤の全量に対して、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の範囲で調節することができる。含有量が高すぎる場合は、べたつきの原因となり、使用感が悪くなる。そのような化粧品、医薬部外品または医薬品は、例えば1日あたり1〜3回程度、1回につき0.01〜100mg/cm2程度、所望の部位の皮膚に塗布されるものとすることができる。入浴剤も、上記の皮膚外用剤と同程度の効果が得られるような態様で使用されるものとして調製することができる。

0057

また、食品の場合、D−グルコピラノシルグリセロールの含有量は、例えば、その食品の全量に対して、通常0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜20重量%の範囲で調節することができる。含有量が高すぎる場合は、食感が失われたり、成形することが困難となる。

0058

[実施例1]
正常ヒト表皮角化細胞(Normal human epidermal keratinocyte: NHEK)を培養プレート播種し、表皮角化細胞増殖培地(Keratinocyte-SFM)を用いて、サブコンフルエントになるまで培養した。続いて、「COSARTE−2G」(東洋精糖株式会社)を2.5重量%含有する前記増殖培地で24時間培養した(処理群)。

0059

リアルタイムRTPCRによってmRNA発現量を測定するためのキットとして「ライトサイクラ—」(ロシュダイアノスティック社製)を用いた。このキットのプロトコールに従って、処理群の培養細胞からRNAを精製し、それを逆転写してcDNAを合成した。そこに含まれるフィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子を、SYBR Green I キット(ロシュダイアノスティック社製)を用いてリアルタイムRT−PCRによって増幅し、各対象遺伝子のmRNA発現量を定量した。また、内部標準とするGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)についても、同様の手順でmRNA発現量を定量した。

0060

処理群について(対象遺伝子のmRNA発現量)/(GAPDHのmRNA発現量)の比率を求め、対象遺伝子に対する「発現促進率」とした。結果を図2に示す。フィラグリン遺伝子に対する発現促進率は2.6倍であり、カスパーゼ−14遺伝子に対する発現促進率は5.0倍であった。

0061

以上の結果は、D−グルコピラノシルグリセロールは、フィラグリン遺伝子及びカスパーゼ−14遺伝子の発現を促進することができることを示している。このため、D−グルコピラノシルグリセロールを含有する発現促進剤は、角質層における天然保湿因子の産生量を相乗的に増加させることができる。したがって、本発明の発現促進剤を、食品、化粧品、医薬品等に配合して利用することにより、フィラグリン遺伝子およびカスパーゼ−14遺伝子の発現促進効果を有する食品、化粧品、医薬品等を製造することが可能となる。

0062

[実施例2]DJM−1細胞を用いたGMGによるフィラグリンの転写誘導試験
「COSARTE−2G」(東洋精糖株式会社)を擬似移動層クロマト分離装置オルガノ株式会社)に供し、GMG(グリセリルモノグルコシド、分子量254。式(1)の糖縮合度n=1の化合物と、式(2)の糖縮合度n=1の化合物との混合物。)が全固形分の99質量%以上になるまで精製した。本実施例では、この精製物を以下の実験におけるGMGとして用いた。

0063

DJM−1細胞(ヒトケラチノサイト毛包癌の一種malignant trichilemmal cyst由来細胞株、理研バイオリソースセンター)を、1.0×106cfuになるように6ウェルプレートに播種し、10%FBS(Cell Culture Bioscience)ならびにペニシリンおよびストレプトマイシン(Gibco)を添加したMEM培地(nacalai tesque)を用いて、37℃、5%CO2で24時間培養した。続いて培養液を、50mMもしくは200mMのグリセリンまたは50mMもしくは200mMのGMGを添加したMEM培地に交換し、上記培養条件でさらに24時間培養した。

0064

次に、上記培養細胞をPBSで洗い、ISOGENE(ニッポンジーン)を用いてRNAを単離した。このRNA1μgをテンプレートとし、Transcriptor First StrandcDNASynthesis Kit(Roche)を用いて逆転写PCRによりcDNAを合成した。そしてLight Cycler 480(Roche)を用いて、リアルタイムPCRにより18srRNAとフィラグリンのmRNA量を測定した。このリアルタイムPCRで用いたプライマーの配列は下記の通りである。
hFLG1 Fw(フィラグリン遺伝子用フォワードプライマー
ggcaaatcctgaagaatcca(配列番号1)
hFLG1 Rv(フィラグリン遺伝子用リバースプライマー
tgctttctgtgcttgtgtcc(配列番号2)
18srRNA Fw(18srRNA用フォワードプライマー)
actcaacacgggaaacctca(配列番号3)
18srRNA Rv(18srRNA用リバースプライマー)
aaccagacaaatcgctccac(配列番号4)

0065

上記の測定結果から、18srRNAの量で標準化した、フィラグリンの相対的なmRNA量を求めた。結果を図3に示す。この結果によっても示されるように、D−グルコピラノシルグリセロール(GMG)についてフィラグリン遺伝子等の発現促進効果が認められる一方、グリセリンにはそのような効果は認められない。COSARTE−2Gを用いた実施例1の結果(および次に述べる実施例3の結果)は、当該製品に含まれるD−グルコピラノシルグリセロールが有効成分として作用したことに基づいていることは明らかである。

0066

[実施例3]DJM−1細胞を用いたCOSARTE−2GによるSCFの産生抑制試験
DJM−1細胞を、1.0×105cfuになるように24ウェルプレートに播種し、10%FBSならびにペニシリンおよびストレプトマイシンを添加したMEM培地を用いて、37℃、5%CO2で24時間培養した。続いて培養液を、ペニシリンおよびストレプトマイシンのみを含むMEM培地に交換し、上記培養条件でさらに18時間培養した。18時間後に、ペニシリンおよびストレプトマイシンに「COSARTE−2G」(東洋精糖株式会社)を3質量%加えた培養液に交換した群(I)と、「COSARTE−2G」を加えない培養液に交換した群(II)に分け、さらに12時間培養した。12時間後にSCF誘導剤を添加しないMEM培地(a)と、SCF誘導剤としてヒトIL−4(10ng/mL)を添加したMEM培地(b)、VIP(1μM)を添加したMEM培地(c)、およびIL−4(10ng/mL)+VIP(1μM)を併用して添加したMEM培地(d)に交換し、さらに16時間培養した。16時間後に培養上清回収し、SCFの濃度をELISA法で測定した。なお、試験は各群について3反復行い(n=3)、SCF濃度の測定値はその平均値±標準偏差である。

0067

結果を図4に示す。まず、COSARTE−2Gを添加しない場合(I)、培養液中のSCF濃度は、SCF誘導剤無添加群(I−a;28.5±7.3pg/mL)と比べて、IL−4添加群(I−b;49.6±3.6pg/mL)では、有意に高い値を示した(2群間のt−test:P<0.05)。同じくCOSARTE−2Gを添加しなかった場合、IL−4+VIP(Vasoactive Intestinal Peptide)添加群(I−d)では、IL−4添加群(I−b)と同程度のSCF値を示したが、SCF誘導剤無添加群(I−a)との間で有意な差は認められなかった。VIP添加群(I−c)も、SCF誘導剤無添加群(I−a)に比べて10%程度高い値を示したが有意な差は認められなかった。

0068

続いて、SCF誘導剤無添加群(a)同士の間で、COSARTE−2Gを添加しなかった場合(I)と添加した場合(II)を比較すると、COSARTE−2G添加群(II−a)はCOSARTE−2G無添加群(I−a)よりも約40%程度低い値を示したが、有意な差は認められなかった。ところが、IL−4添加群(b)同士の間で比較すると、COSARTE−2G添加群(II−b)はCOSARTE−2G無添加群(I−b)に対して約37%の有意に低い値を示した。VIP添加群(c)同士の間、IL−4+VIP添加群(d)同士の間それぞれで比較しても、COSARTE−2G添加群(I−c,I−d)は無添加群(II−c,II−d)よりも低い値を示したが有意な差は認められなかった。

0069

[3−2]COSARTE−2Gの添加による細胞増殖への影響を調べる目的で、WST−1試薬を用いて、生細胞に由来するWST−1試薬の吸光度値を測定した。結果を図5に示す。IL−4添加群(b)同士の間で比較すると、COSARTE−2G添加群(I−b;1.820±0.058)とCOSARTE−2G無添加群(II−b;1.798±0.037)の比較でほぼ同程度であったであった。SCF誘導剤無添加群(a)同士、VIP添加群(c)同士およびIL−4+VIP添加群(d)同士においては、COSARTE−2G添加群(II−a,II−c,II−d)はそれぞれのCOSARTE−2G無添加群(I−a,I−c,I−d)に比べて5%から7.7%の低い値を示したが有意な差は認められなかった。

0070

[3−3]前記[3−1]で測定したSCF濃度を前記[3−2]で測定したWST−1の吸光度値で補正した値を算出した。結果を図6に示す。補正を行っていない図4と同様の傾向が見られ、IL−4添加群(a)同士の比較において、COSARTE−2G添加群(II−a)はCOSARTE−2G無添加群(I−a)に比べて有意に低い値を示した。

実施例

0071

以上の結果より、COSARTE−2Gは、DJM−1細胞(ヒトケラチノサイト培養細胞株)おいて、IL−4刺激により誘導されるSCFの産生量の上昇を抑制する効果を示すことが明らかになった。また、VIP刺激によるSCF産生上昇やIL−4とVIPの両方の刺激によるSCF産生上昇に対しても、それらを抑制し得ることが示唆された。さらに、DJM−1細胞が無刺激のときにも、SCFの産生は抑制されうることが示唆された。

0072

配列番号1:フィラグリン遺伝子用フォワードプライマー
配列番号2:フィラグリン遺伝子用リバースプライマー
配列番号3:18srRNA用フォワードプライマー
配列番号4:18srRNA用リバースプライマー

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