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技術 心筋再生用細胞シート、製造方法及びその利用方法

出願人 澤芳樹
発明者 澤芳樹首藤恭広宮川繁清水達也岡野光夫松山晃文齋藤充弘
出願日 2015年5月18日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2015-101199
公開日 2015年9月24日 (4年4ヶ月経過) 公開番号 2015-165921
状態 拒絶査定
技術分野 医療用材料 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード スポンジ類 単独シート 経時的変動 混合シート 注入範囲 スキャフォルド 水和力 改質ガラス
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (17)

課題

移植手術に耐え得る、実際の手術使用可能な、培養によって生産され得る人工組織又はシートを提供する。又、細胞治療代わる新たな治療法も提供する。特に筋芽細胞及び間葉系幹細胞を材料として移植手術に耐え得る人工組織を作製する。

解決手段

心臓疾患に適用するために細胞培養支持体から単離された、少なくとも間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む、細胞シート及びその三次元構造体。この間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体を用いれば、従来技術である筋芽細胞、或いは間葉系幹細胞だけからなる細胞シートを使用したときに比べ顕著に心機能を改善させることができる。又、細胞シートそのものの強度も向上し移植操作も改善させることができる。

概要

背景

心筋梗塞は、不可逆的損傷である(非特許文献1)。虚血性心疾患は、すべての心血管系の死の50%の原因であり、鬱血性心不全の主要な原因である。鬱血性心不全と診断された患者に関して、慢性心疾患の結果、1年死亡率は、20%である(非特許文献2)。現在臨床医利用可能な治療の多くは、急性心筋梗塞罹患した患者の予後を有意に改善し得る。血管形成術および血栓崩壊剤は、この急性心筋梗塞の原因を除去し得るが、閉塞発症から再灌流までの時間が、不可逆心筋損傷の程度を決定する(非特許文献3)。臨床的に使用されるどの薬剤処置も、機能性収縮組織で心筋瘢痕置換することにおいて、効力を示していない。正常な心筋細胞再生するための新規な治療についての需要が存在する。

心筋形成術が、鬱血性心不全に罹患した患者における左心室(LV)機能を改善するための外科的方法として提唱されているが、心機能に対する効果は、不明のままである(非特許文献4)。近年、生分解性足場を使用する生体操作した心臓移植移植が、別の新規なストラテジーとして提唱されたが、これは、心筋層にほとんど付着しないのが原因で、心機能の改善において最小限の利点しか示していない(非特許文献5)。生体操作した心臓組織が、障害心筋層の再生についてレシピエント心臓組織学電気統合を示し得ることが、要点であり得る。

臓器(例えば、心臓、血管など)の移植に外来性組織を使用する際の主な障害は免疫拒絶反応である。同種異系移植片(または同種移植片、allograft)と異種移植片(xenograft)で起こる変化が最初に記述されたのは90年以上前のことである(非特許文献6)。動脈移植片拒絶反応は、病理学的には移植片の拡張破裂に至る)または閉塞のいずれかを招く。前者の場合、細胞外マトリクスの分解により生じ、一方、後者は血管内細胞の増殖により起こる(非特許文献7)。このような移植片の使用は、材料として非生体物質を使用することが多いことから、このような副作用という弊害がある。

最近、生体物質を利用した治療法として細胞移植が注目されている。しかし、梗塞心臓におけるヒト筋芽細胞移植は、1.移植細胞の障害損失、2.レシピエント心の注入時の組織障害、3.レシピエント心への組織供給効率、4.不整脈の発生、5.梗塞部位全体への治療の困難などの欠点を有する。従って、細胞移植はそれほど成功しているとはいいがたい。

このような背景のもと、特許文献1には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマー基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞剥離させる新規な細胞培養法が記載されている。また、特許文献2には、この温度応答性細胞培養基材を利用して心筋細胞を上限臨界溶解温度以下或いは下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上或いは下限臨界溶解温度以下にすることにより培養心筋細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。温度応答性細胞培養基材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになってきた。特許文献3では、その技術をさらに発展させ、心臓組織以外の筋芽細胞を細胞シートとすることで、従来技術では困難であった心機能を長期にわたり改善させられることが分かってきた。さらに、特許文献4では、間葉系幹細胞を細胞シートとすることで、心機能を改善させられることも分かってきた。これらの細胞シートの機能が向上されれば、さらなる治療効果が期待でき、さらなる開発が望まれていた。

概要

移植手術に耐え得る、実際の手術使用可能な、培養によって生産され得る人工組織又はシートを提供する。又、細胞治療代わる新たな治療法も提供する。特に筋芽細胞及び間葉系幹細胞を材料として移植手術に耐え得る人工組織を作製する。心臓疾患に適用するために細胞培養支持体から単離された、少なくとも間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む、細胞シート及びその三次元構造体。この間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体を用いれば、従来技術である筋芽細胞、或いは間葉系幹細胞だけからなる細胞シートを使用したときに比べ顕著に心機能を改善させることができる。又、細胞シートそのものの強度も向上し移植操作も改善させることができる。なし

目的

これらの細胞シートの機能が向上されれば、さらなる治療効果が期待でき、さらなる開発が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

心臓疾患に適用するために細胞培養支持体から単離された、少なくとも間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む、細胞シート及びその三次元構造体

請求項2

細胞シートが間葉系幹細胞及び筋芽細胞が混在したものである、請求項1記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項3

間葉系幹細胞が含まれる比率が5〜95%である、請求項2記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項4

三次元構造体が複数の層の細胞シートが積層されたものである、請求項1〜3のいずれか1項記載の脂肪細胞シート及びその三次元構造体。

請求項5

三次元構造体が細胞シートが筋芽細胞からなる細胞シート、間葉系幹細胞からなる細胞シートが積層化されたものである、請求項4記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項6

線維化抑制効果、血管新生効果、アトポーシス抑制のいずれか1つ以上の機能を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項7

間葉系幹細胞が脂肪組織由来のものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項8

筋芽細胞が骨格筋組織由来のものである、請求項1〜7のいずれか1項記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項9

スキャフォルドが使われない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項10

細胞が、前記細胞シート及びその三次元構造体が適用される被験体に由来する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞シート及びその三次元構造体。

請求項11

請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞シート及びその三次元構造体を含む心臓疾患に適用するための医薬

請求項12

サイトカインまたは増殖因子が併用される、請求項11記載の医薬。

請求項13

前記心臓は、心不全虚血性心疾患心筋梗塞心筋症心筋炎肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される疾患または障害を伴う、請求項11、12のいずれか1項に記載の医薬。

請求項14

スキャフォルドを用いず、心臓疾患に適用するための少なくとも間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体を製造する方法であって、a)水に対する上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性高分子被覆された細胞培養支持体上で、細胞を培養する工程;b)培養液温度を、該上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下とする工程;およびc)該培養した細胞を、細胞培養支持体から細胞シート及びその三次元構造体として剥離する工程;を包含する、方法。

請求項15

前記剥離前に、培地アスコルビン酸またはその誘導体を加えることを特徴とする、請求項14記載の方法。

請求項16

前記剥離時またはその前に、タンパク質分解酵素処理がなされない、請求項14、15のいずれか1項に記載の方法。

請求項17

前記温度応答性高分子が、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、心臓に適用可能な三次元構造体に関し、詳細には、成体筋芽細胞及び間葉系幹細胞を含む、心臓に適用可能な、医学生物創薬薬学等の分野において有用な細胞シート、製造方法及びその利用方法に関するものである。

背景技術

0002

心筋梗塞は、不可逆的損傷である(非特許文献1)。虚血性心疾患は、すべての心血管系の死の50%の原因であり、鬱血性心不全の主要な原因である。鬱血性心不全と診断された患者に関して、慢性心疾患の結果、1年死亡率は、20%である(非特許文献2)。現在臨床医利用可能な治療の多くは、急性心筋梗塞罹患した患者の予後を有意に改善し得る。血管形成術および血栓崩壊剤は、この急性心筋梗塞の原因を除去し得るが、閉塞発症から再灌流までの時間が、不可逆心筋損傷の程度を決定する(非特許文献3)。臨床的に使用されるどの薬剤処置も、機能性収縮組織で心筋瘢痕置換することにおいて、効力を示していない。正常な心筋細胞再生するための新規な治療についての需要が存在する。

0003

心筋形成術が、鬱血性心不全に罹患した患者における左心室(LV)機能を改善するための外科的方法として提唱されているが、心機能に対する効果は、不明のままである(非特許文献4)。近年、生分解性足場を使用する生体操作した心臓移植移植が、別の新規なストラテジーとして提唱されたが、これは、心筋層にほとんど付着しないのが原因で、心機能の改善において最小限の利点しか示していない(非特許文献5)。生体操作した心臓組織が、障害心筋層の再生についてレシピエント心臓と組織学電気統合を示し得ることが、要点であり得る。

0004

臓器(例えば、心臓、血管など)の移植に外来性組織を使用する際の主な障害は免疫拒絶反応である。同種異系移植片(または同種移植片、allograft)と異種移植片(xenograft)で起こる変化が最初に記述されたのは90年以上前のことである(非特許文献6)。動脈移植片拒絶反応は、病理学的には移植片の拡張破裂に至る)または閉塞のいずれかを招く。前者の場合、細胞外マトリクスの分解により生じ、一方、後者は血管内細胞の増殖により起こる(非特許文献7)。このような移植片の使用は、材料として非生体物質を使用することが多いことから、このような副作用という弊害がある。

0005

最近、生体物質を利用した治療法として細胞移植が注目されている。しかし、梗塞心臓におけるヒト筋芽細胞移植は、1.移植細胞の障害損失、2.レシピエント心の注入時の組織障害、3.レシピエント心への組織供給効率、4.不整脈の発生、5.梗塞部位全体への治療の困難などの欠点を有する。従って、細胞移植はそれほど成功しているとはいいがたい。

0006

このような背景のもと、特許文献1には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマー基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞剥離させる新規な細胞培養法が記載されている。また、特許文献2には、この温度応答性細胞培養基材を利用して心筋細胞を上限臨界溶解温度以下或いは下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上或いは下限臨界溶解温度以下にすることにより培養心筋細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。温度応答性細胞培養基材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになってきた。特許文献3では、その技術をさらに発展させ、心臓組織以外の筋芽細胞を細胞シートとすることで、従来技術では困難であった心機能を長期にわたり改善させられることが分かってきた。さらに、特許文献4では、間葉系幹細胞を細胞シートとすることで、心機能を改善させられることも分かってきた。これらの細胞シートの機能が向上されれば、さらなる治療効果が期待でき、さらなる開発が望まれていた。

0007

特開平02−211865号公報
再表2002−08387号公報
再表2005−011524号公報
再表2006−080434号公報

先行技術

0008

Ho KK, Anderson KM, Kannel WB, Grossman W, Levy D.,Circulation.1993;88: 107-115
American Heart Association., Dallas, Tex: American Heart Association; 2001
RyanTJ, AntmanEM, Brooks NH, Califf RM, Hillis LD, HiratzkaLF, Rapaport E, RiegelB, Russell RO, Smith EE III, Weaver WD, Gibbons RJ, Alpert JS, Eagle KA,Gardner TJ, Garson A Jr, Gregoratos G, Ryan TJ, Smith SC Jr., J Am Coll Cardiol.1999; 34: 890-911
Corin WJ, George DT, Sink JD et al., J Thorac Cardiovasc Surg 1992;104:1662-71;Kratz JM, Johnson WS, Mukherjee R et al., J Thorac Cardiovasc Surg 1994;107:868-78;Carpentier A, Chachques JC., Lancet.1985;8840:1267;およびHagege AA, Desnos M, Chachques JCら、Preliminary report: follow-up after dynamic cardiomyoplasty. Lancet.1990;335:1122-4
Leor J, Etzion SA, Dar A et al., Circulation 2000;102[suppl III]III-56-III-61;およびLi RK, Jia ZQ, Weisel RD et al., Circulation 1999;100[suppl II]:II-63-II-69
Carrel A.,1907, J Exp Med 9:226-8;Carrel A., 1912., J Exp Med 9:389-92;Calne RY., 1970,Transplant Proc 2:550およびAuchincloss 1988, Transplantation 46: 1
Uretsky BF, Mulari S, Reddy S, et al., 1987, Circulation 76:827-34

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、移植手術に耐え得る、実際の手術使用可能な、培養によって生産され得る人工組織またはシートを提供することを課題とする。本発明はまた、細胞治療代わる新たな治療法を提供することを課題とする。特に、筋芽細胞及び間葉系幹細胞を材料として移植手術に耐え得る人工組織を作製することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、筋芽細胞及び間葉系幹細胞を併用した細胞シート及びその三次元構造体を利用することで、予想外に移植部の組織化進展し、かつ、培養皿から剥離し易いという性質をもつ人工組織を見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。

0011

すなわち、本発明は、心臓疾患に適用するため少なくとも間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体を提供するものである。また、本発明は、この細胞シート及びその三次元構造体を温度応答性ポリマーが被覆された基材表面で作製する方法を提供するものである。本発明は、細胞シートという世界に類のない新規な発想による細胞構造物を使ってはじめて実現する極めて重要な発明と考えている。

発明の効果

0012

本発明に示される間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体を用いれば、従来技術である筋芽細胞、或いは間葉系幹細胞だけからなる細胞シートを使用したときに比べ顕著に心機能を改善させられるようになる。また、細胞シートそのものの強度も向上し移植操作も改善させられるようになる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、実施例1の概要を示す図である。
図2は、実施例1の作業の概要を示す図である。
図3は、実施例1の温度応答性培養皿上で培養された細胞シートのmRNA発現量を示す図である。
図4は、実施例1の温度応答性培養皿上で培養された細胞シートのタンパク質産生量を示す図である。
図5は、実施例1の動物実験の作業の概要を示す図である。
図6は、実施例1で使用した細胞シートの種類を示す図である。
図7は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図8は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図9は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図10は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図11は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図12は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図13は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図14は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図15は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図16は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。
図17は、実施例1で得られた移植後の各細胞シートの評価結果を示す図である。

発明を実施するための最良の形態

0014

本発明は、心臓疾患に適用するために細胞培養支持体から単離された、少なくとも間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む、細胞シート及びその三次元構造体を示すものであり、この間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体が心筋梗塞後心不全治療に極めて有用であることが判明した。本発明における間葉性幹細胞とは多分化能をもつ体性幹細胞である。間葉系幹細胞は、移植を受けるべき患者の骨髄脂肪組織、その他の組織から細胞を採取し、従来の方法により培養することにより、容易に調製することができる。本発明においては間葉性幹細胞においては、その由来は何ら限定されるものではないが、採取が容易な簡便な骨髄または脂肪組織が好ましい。細胞源としては、自己成長する性質を有し、かつ心筋細胞および血管内皮細胞分化しうる体性幹細胞が望ましいが特に限定されるものではない。また、間葉系幹細胞は、従来技術において心臓に対する移植可能性が示されたことから、実際の医療に使用できるものである。さらに、移植の際の組織適合性および感染のリスクの観点から、患者の自己体性幹細胞が特に望ましいがこれについても特に限定されるものではない。間葉系幹細胞とは、未分化の状態を保ったまま増殖した間葉系幹細胞に加え、間葉系幹細胞が分化した線維芽細胞間質細胞脂肪細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞平滑筋細胞SP細胞および心筋細胞などの他の細胞や、間葉系幹細胞を採取する際に混入した間質細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、平滑筋細胞、SP細胞及び心筋細胞等の細胞が含まれていても良い。

0015

一方、本発明を実現するためには筋芽細胞が必要となる。その筋芽細胞とはその種類、採取する組織の由来は特に限定されるものではないが、例えば骨格筋組織骨格筋芽細胞生体内豊富に存在に比較的容易な操作で採取できる点で好ましい。また、その骨格筋芽細胞は、従来技術において心臓に対する移植可能性が示されたことから、実際の医療に使用できるものである。本発明においては、その筋芽細胞を採取する際、未分化の状態を保ったまま増殖した間葉系幹細胞に加え、線維芽細胞、間質細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、及び平滑筋細胞等の他の細胞や、間葉系幹細胞を採取する際に混入した間質細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、平滑筋細胞、SP細胞及び心筋細胞などの細胞が含まれていても良い。

0016

本発明は、筋芽細胞と間葉系幹細胞が同一の培養液内に存在することで筋芽細胞が本来持っている機能が増強される知見に基づくものである。そのメカニズム現時点では必ずしも明確に解明されていないが、間葉系幹細胞が筋芽細胞に接触することそのものが筋芽細胞の機能が増強させた、或いは間葉系幹細胞から産生される特定のタンパク質が筋芽細胞の機能を増強させたものと考えている。本発明は、少なくとも筋芽細胞と間葉系幹細胞が必要である。しかしながら、その他の細胞が筋芽細胞と間葉系幹細胞の中に混在していても良く、何ら限定されるものではない。

0017

本発明を実現する一つの形態は、少なくとも筋芽細胞と間葉系幹細胞を同一器材表面上で共培養する方法である。その際に使用する培地は筋芽細胞と間葉系幹細胞が培養できる一般的な培地でよく特に限定されるものではない。具体的には、10〜15%の自己血清または牛胎児血清(FBS)および抗生物質を補充したα-MEMDMEM、F-12培地、或いはこれらの混合物を用いることができる。必要に応じて線維芽細胞増殖因子(bFGF)やアドレノメデユリンなどの成長因子を加えることがある。培養は、哺乳動物の細胞の培養に適する任意の条件で実施することができるが、一般的には37℃、5%CO2で数日間培養し、必要に応じて培地を交換する。筋芽細胞、並びに間葉系幹細胞は培養基材接着して増殖する性質を有するため、浮遊して増殖する造血性幹細胞と容易に分離することができる。また、間葉系幹細胞は、CD29、CD44、CD71、CD90、CD105等の細胞表面マーカーにより容易に確認することができる。また、培養した間葉系幹細胞は、従来の方法を用いて凍結保存することが可能である。

0018

本発明において、少なくとも筋芽細胞と間葉系幹細胞を同一器材表面上で共培養する方法は特に限定されるものではないが、最も簡便な方法は、これらの細胞を混在させた細胞懸濁液を器材表面へ播種させ培養する方法である。その懸濁液中に含まれる間葉系幹細胞の割合は、5〜95%が良く、好ましくは10〜80%、さらに好ましくは15〜60%、最も好ましくは20〜40%が良い。間葉系幹細胞の割合が5%より低いと共培養されている筋芽細胞の機能を増強させるだけの十分な効果が期待できず、逆に間葉系幹細胞の割合が95%より多い場合、得られる細胞シート中の筋芽細胞数が少なすぎて、十分な効果を有する細胞シートが得られず好ましくない。さらに、これらの細胞の共培養方法は、はじめにどちらか一方の細胞を培養し、その後、その中へもう一方の細胞を播種しても良い。或いは、細胞培養用インサートを用い、筋芽細胞と間葉系幹細胞を接触させず同一培地中で培養する方法でも良く、特に限定されるものではない。

0019

本発明とは、かくして培養された少なくとも筋芽細胞と間葉系幹細胞が含まれた細胞をシート状に回収し、心筋組織の再生に利用しようとするものである。その培養した細胞をシート状に回収する方法は特に限定されないが、例えば後述するような温度応答性細胞培養器材上で培養する方法、希薄タンパク質分解酵素水溶液を使用する方法、特殊なタンパク質分解酵素水溶液を使用する方法、EDTA水溶液だけを使って剥離する方法、さらにはスクレーパー等を使い物理的に剥離する方法等が挙げられる。本発明においては、かくして得られた細胞シートを重ね合わせ、積層化させることで三次元構造体としても良い。その際、各細胞シートに筋芽細胞と間葉系幹細胞が混在されたものでも良く、各細胞シートが筋芽細胞と間葉系幹細胞のそれぞれの細胞からなり重ね合わせることで共培養する形となっていても良く、その状態は何ら限定されるものではない。また、本発明においては、細胞シートが積層化される際の細胞シートの収縮程度は特に限定さるものではなく、その他の積層化条件も何ら制約されるものではない。その積層化枚数は特に限定されるものではないが、積層回数は10回以下が良く、好ましくは8回以下、さらに好ましくは4回以下が良い。細胞シートを積層化するとシート単面積当たりの細胞密度が向上し、細胞シートとしての機能も向上し好ましい。さらに、その三次元構造体を作製する際、コラーゲンフィブリンゼラチン等の1種以上からなるゲルマトリゲル等のその他のスキャフォルドを用いても良く、本発明においては何ら制約されるものではないが、これらのものは移植後、生体内でさまざまな影響を与え、好ましくは使用しない方が良い。

0020

本発明で用いられる細胞は、生体組織から直接採取した細胞、直接採取し培養系等で分化させた細胞、或いは細胞株が挙げられるがその種類は、何ら制約されるものではない。これらの細胞の由来は特に制約されるものではないが、例えば、ヒト、或いはラットマウスモルモットマーモセットウサギイヌネコヒツジブタチンパンジーあるいはそれらの免疫不全動物等が挙げられるが、本発明の細胞シート及びその三次元構造体をヒトの治療に用いる場合はヒト、ブタ、チンパンジー由来の細胞を用いる方が望ましい。本発明における細胞培養のための培地は培養される細胞に対し通常用いられるものを用いれば特に制約されるものではない。

0021

本発明において、培養時に播種する細胞数は使用細胞の動物種によって異なるが、一般的に0.4×106〜2.5×106個/cm2が良く、好ましくは0.5×106〜2.1×106個/cm2が良く、さらに好ましくは0.6×106〜1.7×106個/cm2が良い。播種濃度が0.4×106個/cm2以下の場合、筋芽細胞及び間葉系幹細胞の増殖が悪く、得られる筋芽細胞と間葉系幹細胞が含まれる細胞シートの機能の発現程度が悪化し、本発明を実施する点において好ましくない。

0022

かくして得られた細胞シート及びその三次元構造体は、良好な線維化抑制効果、血管新生効果、アトポーシス抑制を示すものであり、心筋組織の再生に好都合である。また、本発明で得られる細胞シート及びその三次元構造体からは、肝細胞増殖因子HGF)、血管内皮細胞増殖因子VEGF)も発現し、心筋組織の再生に有用である。しかもこれらの効果、並びにHGF、VEGFの産生量は筋芽細胞、間葉系幹細胞が単独で存在する場合より顕著に増加していることが判明した。

0023

本発明において、上述した細胞シート及びその三次元構造体を得るためには、0〜80℃の温度範囲水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で培養すると容易に得られる。すなわち、上記細胞を0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で培養される。その温度とは通常、細胞を培養する温度である37℃が好ましい。本発明に用いる温度応答性高分子ホモポリマーコポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマー単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタアクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。その際、培養、剥離されるものが細胞であることから、分離が5℃〜50℃の範囲で行われるため、温度応答性ポリマーとしては、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド単独重合体の下限臨界溶解温度21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド(同56℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)などが挙げられる。本発明に用いられる共重合のためのモノマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリ−N、N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N、N−ジメチルアクリルアミドポリエチレンオキシドポリアクリル酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレートポリビニルアルコールポリビニルピロリドンセルロースカルボキシメチルセルロースなどの含水ポリマーなどが挙げられるが、特に制約されるものではない。

0024

本発明で用いられる、上述の各ポリマーの基材表面への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、基材と上記モノマーまたはポリマーを、電子線照射(EB)、γ線照射紫外線照射プラズマ処理コロナ処理有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。培養基材表面への温度応答性ポリマーの被覆量は、1.1〜2.3μg/cm2の範囲が良く、好ましくは1.4〜1.9μg/cm2であり、さらに好ましくは1.5〜1.8μg/cm2である。1.1μg/cm2より少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該ポリマー上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に2.3μg/cm2以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。このような場合、温度応答性ポリマー被覆層の上にさらに細胞接着性タンパク質を被覆すれば、基材表面の温度応答性ポリマー被覆量は2.3μg/cm2以上であっても良く、その際の温度応答性ポリマーの被覆量は9.0μg/cm2以下が良く、好ましくは8.0μg/cm2以下が良く、7.0μg/cm2以下が好都合である。温度応答性ポリマーの被覆量が9.0μg/cm2以上であると温度応答性ポリマー被覆層の上にさらに細胞接着性タンパク質を被覆しても細胞が付着し難くなり好ましくない。そのような細胞接着性タンパク質の種類は何ら限定されるものではないが、例えば、コラーゲン、ラミニン、ラミニン5、フィブロネクチン、マトリゲル等の単独、もしくは2種以上の混合物が挙げられる。また、これらの細胞接着性タンパク質の被覆方法は常法に従えば良く、通常、細胞接着性タンパク質の水溶液を基材表面に塗布し、その後その水溶液を除去しリンスする方法がとられている。本発明は、温度応答性培養皿を利用したなるべく細胞シートそのものを利用しようとする技術である。従って、温度応答性ポリマー層上の細胞接着性タンパク質の被覆量が極度に多くなっては好ましくない。温度応答性ポリマーの被覆量、並びに細胞接着性タンパク質の被覆量の測定は常法に従えば良く、例えばFT−IR−ATRを用いて細胞付着部を直接測る方法、あらかじめラベル化したポリマーを同様な方法で固定化し細胞付着部に固定化されたラベル化ポリマー量より推測する方法などが挙げられるがいずれの方法を用いても良い。

0025

本発明の方法において、培養した細胞シートを温度応答性基材から剥離回収するには、培養された細胞の付着した培養基材の温度を培養基材上の被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって剥離させることができる。その際、培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。細胞をより早く、より高効率に剥離、回収する目的で、基材を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。さらに、細胞培養時に細胞が細胞外マトリックスを十分に産生させる目的でアスコルビン酸またはその誘導体を培地中に加えても良い。

0026

以上のことを温度応答性ポリマーとしてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を例にとり説明する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は31℃に下限臨界溶解温度を有するポリマーとして知られ、遊離状態であれば、水中で31℃以上の温度で脱水和を起こしポリマー鎖凝集し、白濁する。逆に31℃以下の温度ではポリマー鎖は水和し、水に溶解した状態となる。本発明では、このポリマーがシャーレなどの基材表面に被覆、固定されたものである。したがって、31℃以上の温度であれば、基材表面のポリマーも同じように脱水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が疎水性を示すようになる。逆に、31℃以下の温度では、基材表面のポリマーは水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が親水性を示すようになる。このときの疎水的な表面は細胞が付着、増殖できる適度な表面であり、また、親水的な表面は細胞が付着できないほどの表面となり、培養中の細胞、もしくは細胞シートも冷却するだけで剥離させられることになる。

0027

被覆を施される基材としては、通常細胞培養に用いられるガラス改質ガラスポリスチレンポリメチルメタクリレートポリエチレンテレフタレートポリカーボネート等の化合物を初めとして、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外のポリマー化合物セラミックス類など全て用いることができる。

0028

本発明における培養基材の形状は特に制約されるものではないが、例えばディッシュマルチプレートフラスコセルインサート、ビーズファイバーのような形態のもの、平膜状のもの、さらには多孔膜等が挙げられ、特に限定されるものではない。

0029

本発明における細胞シート及びその三次元構造体は、培養時にディスパーゼトリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された細胞シート及びその三次元構造体は接着性蛋白質を有し、細胞シート及びその三次元構造体をシート状に剥離させた際には細胞−細胞間のデスモソーム構造がある程度保持されたものとなる。このことにより、移植時において患部組織と良好に接着することができ、効率良い移植を実施することができるようになる。一般に蛋白質分解酵素であるディスパーゼに関しては、細胞−細胞間のデスモソーム構造については10〜40%保持した状態で剥離させることができることで知られているが、細胞−基材間基底膜様蛋白質等を殆ど破壊してしまうため、得られる細胞シートは強度の弱いものとなる。これに対して、本発明の細胞シート及びその三次元構造体は、デスモソーム構造、基底膜様蛋白質共に60%以上残存された状態のものであり、上述したような種々の効果を得ることができるものである。

0030

本発明における三次元構造体を作製する方法についても特に限定されるものではないが、例えば、培養細胞をシート状で剥離させ、必要に応じ培養細胞移動治具を用いて培養細胞シート同士を積層化させることで得られる。その際、培地の温度は、培養基材表面に被覆された前記ポリマーが上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記ポリマーが下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。また、使用される培養細胞移動治具は剥離した細胞シートを捕捉できるものであれば特に限定されるわけではなく、例えば多孔膜や紙、ゴム等の膜類や板類、スポンジ類等が挙げられ、積層化作業を行い易くするために柄の付いた治具に多孔膜や紙、ゴム等の膜類や板類、スポンジ類等を取り付けたものを利用しても良い。

0031

本発明においては、温度応答性細胞培養基材から剥離させた細胞シート及びその三次元構造体を密着させるためにキャリアを用いても良い。本発明の細胞シート及びその三次元構造体の形態を保持するものとしては、例えば高分子膜または高分子膜から成型された構造物金属性治具などを使用することができる。例えば、キャリアの材質として高分子を使用する場合、その具体的な材質としてはポリビニリデンジフルオライドPVDF)、ポリプロピレンポリエチレン、セルロース及びその誘導体、紙類キチンキトサン、コラーゲン、ウレタン、ゼラチン等を挙げることができる。キャリアの形状は、特に限定されるものではない。

0032

本発明で得られた細胞シート及びその三次元構造体を生体内の所定部位に移植することができる。その移植部位は心筋組織のいずれの場所でも良く特に限定されないが、その他の方法として、特に大網は血管が豊富に存在し、かつ移植行為が容易な点で好ましい。そして、体網に移植した細胞シート及びその三次元構造体を、血管をつなげたまま心筋組織へ移植することでも良い。その移植部位はあらかじめ血管誘導を施されていても、施されていなくても良く、特に限定されるものではない。ここで、血管誘導を施す方法も特に限定されるものではないが、例えば、血管増殖因子であるFGFをミクロスフィア包埋し、このミクロスフィアの組成、大きさ、注入範囲を変えながら生体に8〜10日間作用させる方法、ポリエチレンテレフタレートメッシュを任意の大きさに切り、袋状のものを作製し、そのバッグの内側に、高濃度アガロース溶液に溶解させたFGFを入れ、8〜10日間後、そのバッグを除去することにより、血管誘導された空間を作製する方法などが挙げられる。

0033

ヒトに対し、本発明で示すところの本発明の細胞シート及びその三次元構造体を利用すれば、移植された細胞シート及びその三次元構造体はヒトの生体内で機能を長期間発現することとなる。そして、剥離された細胞シート及びその三次元構造体の大きさや形状、もしくは両者で機能の発現量を制御できる。このような細胞シート及びその三次元構造体は、例えば心不全、虚血性心疾患、心筋梗塞、心筋症心筋炎肥大型心筋症、拡張相肥大型心筋症および拡張型心筋症からなる群より選択される疾患または障害を伴う各疾患の治療を目的に使用されるが、特に限定されるものではない。

0034

動物に対し、本発明で示すところの細胞シート及びその三次元構造体が移植されれば、医薬評価用動物となる。そして、剥離された細胞シート及びその三次元構造体の大きさや形状で機能の発現量を制御できる。ここで使用される動物はラット、マウス、モルモット、マーモセット、ウサギ、イヌ、ブタ、チンパンジーあるいはそれらの免疫不全動物等が挙げられるが特に限定されるものではない。このような移植動物は、例えば、被検物質をこの動物に投与し、当該被検物質の心機能への影響を判定する心機能評価ステム等を目的に使用されるが、特に限定されるものではない。

0035

以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。

0036

本実施例において、動物の取り扱いは、大阪大学において規定される基準を遵守し、動物愛護精神に則って実験を行った。

0037

強い血管新生効果をもつと報告されるヒト脂肪細胞由来間葉系幹細胞(以下ADMSC)を併用することにより、従来の筋芽細胞シートが有するサイトカイン産生能増幅する可能性を期待した。すなわち、ADMSCが、筋芽細胞のパラクライン効果を増幅し、ラット心筋梗塞モデルの心機能を改善するかを検討した(図1)。

0038

細胞培養基材として、ポリスチレン製の35 mm細胞培養皿コーニング社製)に対し温度応答性ポリマーであるポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを被覆したものを用いた。温度応答性ポリマーの被覆は特開平02−211865号公報に示された方法に従って行い、最終的に温度応答性ポリマーの被覆量が1.9μg/cm2である温度応答性細胞培養基材を得た。その表面へ上述の筋芽細胞(以下SMB)とADMSC(4:1で混合)を5.7×105個/cm2となるよう播種し、そのまま培養を続けた。ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが被覆された基材表面は、32℃以上では疎水性となり、32℃以下では親水性となる。これにより、37℃の培養条件下では接着培養が可能で、37℃以下になると、トリプシン処理することなくシート状に剥離された。

0039

図2に示す手順によって作業を行った。Lewisラット3週令(♂)の下腿筋からSMBを単離, 培養,成人女性皮下脂肪よりhADMSCsを単離, 培養した。骨格筋筋芽細胞は、ラット3週令雄の両前脛骨を採取し、ペニシリンストレプトマイシンアンフォテリシンB含有のハンク平衡塩溶液にて洗浄後、繊維組織腱組織、脂肪組織を可能な限り除去し、II 型コラゲナーゼ、トリプシンーEDTAで30分酵素消化した。酵 素消化液から遠心分離にて細胞を回収した後、20%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地中で摂氏37度、5%CO2存在下で培養をおこなった。ヒト脂肪由来間葉系幹細胞は、皮下脂肪を採取し、細切した後、コラゲナーゼで酵素消化した。酵素消化液から遠心にて細胞を回収しダルベッコ変法イーグル培地中で摂氏37度、5%CO2存在下で培養をおこなった。培養後にSMB, hADMSCsを4:1の比率に混合し,温度応答性培養皿に播種し細胞シートを作成した。細胞シートにおけるHGF,VEGFのmRNA発現,シート上清のcytokine産生を定量化した。無胸腺ラット(♀, 8週令, 120-130 g)の左前下行枝結紮して心筋梗塞モデルを作成し, 2週間後に, (1)S群: SMB単独シート移植(3枚) (n=5), (2)M群: SMB/hADMSCs混合シート移植(3枚) (SMB:hADMSCs=4:1) (n=6), (3)A群: hADMSCsシート移植(3枚) (n=6), (4)C群: Sham手術(n=4)の4群を作成した。移植後, 2,4,6週間後に心臓超音波検査を行った。

0040

その結果、ラットspecific primerを用いて本発明の細胞シートの、培地中のRT-PCRを行った結果、SMB, ADMSC混合シートにて、SMB単独シートに比して有意にHGF,VEGFの発現が高いことが分った(図3)。また、ELISA法で細胞シート培養上清中のHGF産生は、SMB, ADMSC混合シートにおいて他群に比して有意に高く、VEGF産生は、SMB, ADMSC混合シートにおいてSMB単独シート群に比して有意に高いことが分った(図4)。

0041

常法に従って、無胸腺ラット(8週齢、♀)の左前下行枝を結紮して心筋梗塞モデルを作製し、2週間後に細胞シートを患部へ移植した。移植後、2、4、6、8週後に心臓超音波検査にて心機能を評価し、8週後に心臓カテーテル検査を行いSacrifice、病理組織学的検討を行った(図5)。その際、図6に示すようにSMB, ADMSC混合シート群、SMB単独シート群、ADMSC単独シート群、Sham群の4群に分けて実施した。

0042

心臓超音波検査による左室前壁壁厚経時的変化の結果を図7に示す。SMB,ADMSC混合シート群は、SMB単独シート群、ADMSC単独シート群の各群に比べ、移植後2, 4, 6, 8週後の時点で、有意に増加していることが分った。SMBシート移植群においても、術後2,4,6,8週後の時点でSham群に比して有意に高値であることが分った。さらに、ADMSC単独シート移植群において、術後2週後の時点ではSham群に比して有意に高値でしたが、その後は有意差が得られなかった。

0043

左室拡張末期径収縮末期径の経時的変動図8に示す。左室拡張末期径は、Shamにおいて、シート移植時に比して、移植後2, 4, 6, 8週後の時点で、有意に拡大していることが分った。また、SMB群では、6, 8週後の時点で、有意に拡大していた。一方、ADMSC単独シート群、SMB+ADMSC混合シート群においては、有意差はなかった。左室収縮末期径については、同様に、Sham群では、移植後、経時的に有意に拡大し、また、SMB群でも8週後の時点で、有意に拡大していた。 ADMSC群においては、有意差はみとめられなかった。一方、SMB+ADMSC混合シート群においては、術後4, 6, 8週後、有意に縮小していた。すなわち、左室拡張末期径は、SMB, ADMSC混合シート移植群において、移植後 4, 6, 8 週後の時点で、他群に比して有意に低値であった。SMB単独シート移植群、ADMSC単独シート移植群においてはSham群との間に有意差は得られなかった。左室収縮末期径は、SMB, ADMSC混合シート移植群において、移植後 2, 4, 6, 8 週後の時点で、 他群に比して有意に低値であった。SMBシート移植群においては、術後2,4週後の時点では Sham群に比して有意に小さかった。ADMSC単独シート移植群においては、術後2週後の時点では Sham群に比して有意に低値だったが、その後は有意差が得られなかった。

0044

図9に、Fractional shortening, Ejection fractionの経時的変動を示す。FSは、Shamにおいて、シート移植時に比して、移植後6, 8週後の時点で、有意に低下した。SMB群では、シート移植時に比して、術後2, 8週後の時点で、有意に改善した。ADMSC単独シート群、混合シート群においては、シート移植時に比して、術後 2, 4, 6, 8週後の時点で、有意に改善した。EFについても同様の変動を呈することが分った。すなわち、SMB, ADMSC混合シート移植群のFSは、移植後2週間後の時点では、Sham群に比して、また、移植後4, 6, 8 週後の時点で、他の3群に比して有意に高値であった。また、ADMSC単独シート移植群においても、術後2,4,6,8週後の時点でSham群に比して有意に高値であった。SMB単独シート移植群においては、術後2, 4, 8週後の時点でSham群に比して有意に高値であった。EFについても、同様であった。

0045

心臓カテーテル検査にて算出したパラメーター図10に示す。収縮能の指標であるdp/dt max、ESPVRは、いずれもSMB, ADMSC混合シート群において他群に比して有意に高値であり、SMB単独シート群、ASDMSC単独シート群においてSham群に比して有意に高値であった。拡張能の一指標であるdp/dt minは、SMB, ADMSC混合シート群において他群に比して有意に高値であり、SMB単独シート群、ASDMSC単独シート群においてSham群に比して有意に高値であった。EDPVR,τにおいては有意差が認められなかった(図11)。

0046

Masson-trichrome染色を用いて、Peri-infarct areaの線維化率を定量した(図12)。SMB, ADMSC混合シート群において、他群に比して有意に低く、SMB単独シート群、ADMSC単独シート群においてはSham群に比して有意に低い値であった。また、Hematoxylin-eosin染色を行った結果からもSMB, ADMSC混合シート群において、他群に比して心壁が厚いことが判明した(図13)。

0047

PAS染色のFigureを用いて、シート移植部位の細胞径を測定した(図14)。SMB, ADMSC混合シート群において他群に比して有意に小さく、SMB単独シート群、ADMSC単独シート群においてはSham群に比して有意に小さかった。次に、Factor 8 染色を用いてPeri-infarct 領域のCapillary densityを定量した(図15)。SMB, ADMSC混合シート群において、他群に比して有意に高値であり、SMB単独シート群、ADMSC単独シート群においてSham群に比して有意に高値であった。

0048

移植後8週後、切除心筋のRT-PCR結果を図16に示す。HGF発現は、in vivo,Infarct area において、SMB, ADMSC混合シート群では他群に比して有意に高値であり、SMB単独シート群ではSham群に比して有意に高値であった。Remote area において、SMB, ADMSC混合シート群ではSham群に比して有意に高値であった。VEGF発現については、in vivo、Infarct area、(Remote area 双方)において、SMB, ADMSC混合シート群では Sham群に比して有意に高値であった(図17)。

0049

上より、筋芽細胞と脂肪細胞由来間葉系幹細胞を混合するとサイトカイン産生量が増加し、ラット心筋梗塞モデルの心機能改善につながることが判明した。その機序については、現時点では不明確だが脂肪細胞由来間葉系幹細胞自身が、従来の筋芽細胞シートが有するサイトカイン産生能を直接、増幅させた、若しくはADMSCから産生される特定のタンパクによりサイトカイン産生能が、増幅されたものと考えられる。

0050

本発明に示される間葉系幹細胞及び筋芽細胞を含む細胞シート及びその三次元構造体を用いれば、従来技術である筋芽細胞、或いは間葉系幹細胞だけからなる細胞シートを使用したときに比べ顕著に心機能を改善させられるようになる。そのような細胞シート及びその三次元構造体を利用することでさらなる治療効果を期待することができる。

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