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課題
解決手段
概要
背景
近年、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術が提案されている(例えば、特開2012−144610号公報等参照)。この新たな微細パターン形成技術は非常に画期的な技術であり、この微細パターン形成技術を用いることによって、他の微細パターン形成技術で必要とされる洗浄等の煩雑な工程や厳密な雰囲気制御(フォトリソグラフィー技術)、鋳型(マイクロコンタクトプリント技術)等を必要とせず、マスクを介して光架橋性高分子フィルムに光照射するだけで、あるいは、光架橋性高分子フィルムにレーザー光線を直接照射するだけで、簡便に微細パターンを形成することができる。このため、この微細パターン形成技術については、産業界から実用化に向けた応用展開が待ち望まれている。
概要
本発明の課題は、上述の事情に鑑み、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化やさらなる応用展開をることである。本発明に係るパターン基材の製造方法は、準備工程および光照射工程を備える。準備工程では、基材が準備される。なお、この基材は、粒子含有高分子材料から形成される。粒子含有高分子材料は、光照射により体積変化する高分子材料と、高分子材料に分散される粒子とを含有する。光照射工程では、基材に対して光を照射して、第1体積変化領域、第2体積変化領域および未体積変化領域のうちの少なくとも2種の領域のパターンが形成される。なお、ここで、第2体積変化領域は、第1体積変化領域における体積変化度と異なる体積変化度を有する。
目的
このため、このパターン形成用基材は、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化に向けた応用展開を図ることができるパターン基材を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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この技術が所属する分野
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請求項1
光照射により体積変化する高分子材料と、前記高分子材料に分散される粒子とを含有する粒子含有高分子材料から形成される基材を準備する準備工程と、前記基材に対して光を照射して(a)第1体積変化領域、(b)前記第1体積変化領域における体積変化度と異なる体積変化度を有する第2体積変化領域および(c)未体積変化領域のうちの少なくとも2種の領域のパターンを形成する光照射工程とを備える、パターン基材の製造方法。
請求項2
前記体積変化は、収縮である請求項1に記載のパターン基材の製造方法。
請求項3
請求項4
前記未体積変化領域は、前記光多量化官能基を有する高分子を主成分とする高分子材料から形成されており、前記体積変化領域は、前記光多量化官能基が多量化した架橋構造を含む高分子を主成分とする高分子材料から形成されている請求項3に記載のパターン基材の製造方法。
請求項5
前記光多量化官能基は、シンナモイル基、クマリン基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基およびウラシル基より成る群から選択される少なくとも一種の官能基を含む請求項3または4に記載のパターン基材の製造方法。
請求項6
前記光多量化官能基は、可逆性を有する請求項3から5のいずれかに記載のパターン基材の製造方法。
請求項7
前記体積変化は、膨張である請求項1に記載のパターン基材の製造方法。
請求項8
前記高分子材料は、光照射により多量化する官能基(以下「光多量化官能基」という)が多量化した架橋構造を含む高分子を主成分とする請求項7に記載のパターン基材の製造方法。
請求項9
前記未体積変化領域は、前記光多量化官能基が多量化した架橋構造を含む高分子を主成分とする高分子材料から形成されており、前記体積変化領域は、前記光多量化官能基を有する高分子を主成分とする高分子材料から形成されている請求項8に記載のパターン基材の製造方法。
請求項10
前記光多量化官能基は、クマリン基およびチミン基より成る群から選択される少なくとも一種の官能基を含む請求項8または9に記載のパターン基材の製造方法。
請求項11
請求項12
第1密度で粒子を含有する第1領域と、前記第1密度とは異なる第2密度で前記粒子を含有する第2領域とを含むパターン基材。
請求項13
前記第1領域の体積は、前記第2領域の体積と異なる請求項12に記載のパターン基材。
請求項14
光照射により体積変化する高分子材料と、前記高分子材料に分散される粒子とを含有する粒子含有高分子材料から形成されるパターン形成用基材。
技術分野
背景技術
0002
近年、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術が提案されている(例えば、特開2012−144610号公報等参照)。この新たな微細パターン形成技術は非常に画期的な技術であり、この微細パターン形成技術を用いることによって、他の微細パターン形成技術で必要とされる洗浄等の煩雑な工程や厳密な雰囲気制御(フォトリソグラフィー技術)、鋳型(マイクロコンタクトプリント技術)等を必要とせず、マスクを介して光架橋性高分子フィルムに光照射するだけで、あるいは、光架橋性高分子フィルムにレーザー光線を直接照射するだけで、簡便に微細パターンを形成することができる。このため、この微細パターン形成技術については、産業界から実用化に向けた応用展開が待ち望まれている。
0003
特開2012−144610号公報
特開2004−300282号公報
特開2011−016953号公報
先行技術
0004
Sakamoto, M., Tachikawa, T., Fujitsuka, M., Majima, T. Adv. Matter., 20, 3427-3432 (2008)
発明が解決しようとする課題
0005
本発明の課題は、上述の事情に鑑み、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化に向けた応用展開を図ることである。
課題を解決するための手段
0006
本発明の第1局面に係るパターン基材の製造方法は、準備工程および光照射工程を備える。準備工程では、基材が準備される。なお、この基材は、粒子含有高分子材料から形成される。粒子含有高分子材料は、光照射により体積変化する高分子材料(以下「光体積変化高分子材料」という)と、光体積変化高分子材料に分散される粒子とを含有する。この光体積変化高分子材料は、光照射により体積変化を引き起こす性質を有する高分子(以下「光体積変化性高分子」という)のみから構成されていてもよいし、光体積変化性高分子と他の高分子とのブレンド物から構成されていてもよい。かかる場合、他の高分子は、本発明の趣旨を損なわない範囲で光体積変化性高分子とブレンドされる。なお、このような基材は、例えば、特開2012−144610号公報に記載される高分子材料中に粒子を添加することによって作製することができる。なお、ここにいう「体積変化」とは、「膨張」または「収縮」を意味する。また、粒子は、特に限定されず、球状のもののみならず、ロッド状粒子やファイバー状粒子も含み得る。粒子は高分子材料に均一に分散されているのが好ましい。また、粒子は、特に限定されないが、互いの近接距離によって色相が変化する粒子であることが好ましい。光照射工程では、基材に対して光を照射して、第1体積変化領域、第2体積変化領域および未体積変化領域のうちの少なくとも2種の領域のパターンが形成される。なお、ここで、第2体積変化領域は、第1体積変化領域における体積変化度と異なる体積変化度を有する。また、先の記載は、「光照射工程では、基材に対して光を照射して、複数種の体積変化領域および未体積変化領域のうちの少なくとも2種の領域によりパターンが形成される」とも言い換えることもできる。すなわち、基材に、1種の体積変化領域と未体積変化領域からパターンが形成されていてもよいし、体積変化度が異なる複数種の体積変化領域からパターンが形成されていてもよいし、体積変化度が異なる複数種の体積変化領域と未体積変化領域からパターンが形成されてもよい。また、この光照射工程では、フォトマスクを介して基材に対して光を照射して上記パターンを形成してもよいし、基材にレーザー光を直接、照射して上記パターンを形成してもよい。
0007
そして、このパターン基材の製造方法を利用すれば、基材に対して粒子密度が異なる複数の領域(パターン)を形成することができる。この技術を応用すれば、以下のような応用展開が考えられる。
(i)粒子として金ナノ粒子等を用いた場合:ホログラム等の表示素子のカラー化,記録材料
(ii)粒子として金属粒子や、合金粒子、磁気粒子等を用いた場合:記録材料
(iii)粒子として金属粒子や合金粒子等の導電性粒子を用い、その導電性粒子のパーコレーション転移を利用した場合:微細配線素子
したがって、このパターン基材の製造方法は、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化に向けた応用展開を図ることができる。
0008
上述のパターン基材の製造方法において、体積変化が収縮である場合、高分子材料は、光照射により多量化する官能基(以下「光多量化官能基」という)を有する高分子(以下「光多量化官能基含有高分子」という)を主成分とすることが好ましい。なお、このとき、高分子材料は、光多量化官能基含有高分子のみから構成されていてもよいし、光多量化官能基含有高分子と他の高分子とのブレンド物から構成されていてもよい。かかる場合、他の高分子は、本発明の趣旨を損なわない範囲で光多量化官能基含有高分子とブレンドされる。また、光多量化官能基を架橋化させるための照射光としては、例えば、紫外線、可視光、X線等が挙げられる。また、かかる場合、未体積変化領域は、光多量化官能基含有高分子を主成分とする高分子材料から形成されており、体積変化領域は、光多量化官能基が多量化した架橋構造を含む高分子(以下「光架橋化高分子」という)を主成分とする高分子材料から形成されていることが好ましい。なお、この体積変化領域は、未体積変化領域が光多量化官能基含有高分子のみから形成されている場合、主として光架橋化高分子から構成され、未体積変化領域が光多量化官能基含有高分子と他の高分子とのブレンド物から形成されている場合、主として光架橋化高分子と他の高分子とのブレンド物から構成される。また、この光架橋化高分子は、相互侵入網目構造またはセミ相互侵入網目構造を有していてもよい。さらに、かかる場合、光多量化官能基は、シンナモイル基、クマリン基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基およびウラシル基より成る群から選択される少なくとも一種の官能基を含むことが好ましい。なお、シンナモイル基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基およびウラシル基は紫外線により二量化し、クマリン基は紫外線および可視光により二量化する。また、この光多量化官能基は、二量化−単量化の可逆性を有することが好ましい。なお、このような光多量化官能基としては、例えば、クマリン基、チミン基が挙げられる。
0009
上述のパターン基材の製造方法において、体積変化が膨張である場合、高分子材料は、光照射により多量化する官能基(以下「光多量化官能基」という)が多量化した架橋構造を含む高分子(以下「光架橋化高分子」という)を主成分とすることが好ましい。なお、このとき、高分子材料は、光架橋化高分子のみから構成されていてもよいし、光架橋化高分子と他の高分子とのブレンド物から構成されていてもよい。かかる場合、他の高分子は、本発明の趣旨を損なわない範囲で光架橋化高分子とブレンドされる。また、この光架橋化高分子は、相互侵入網目構造またはセミ相互侵入網目構造を有していてもよい。また、架橋構造を開裂させるための照射光としては、例えば、紫外線、可視光、X線等が挙げられる。また、かかる場合、未体積変化領域は、光架橋化高分子を主成分とする高分子材料から形成されており、体積変化領域は、光多量化官能基含有高分子を主成分とする高分子材料から形成されていることが好ましい。なお、この体積変化領域は、未体積変化領域が光架橋化高分子のみから形成されている場合、主として光多量化官能基含有高分子から構成され、未体積変化領域が光架橋化高分子と他の高分子とのブレンド物から形成されている場合、主として光多量化官能基含有高分子と他の高分子とのブレンド物から構成される。さらに、かかる場合、光多量化官能基は、クマリン基およびチミン基より成る群から選択される少なくとも一種の官能基を含むことが好ましい。
0010
本発明の第2局面に係るパターン基材は、第1領域および第2領域を含む。第1領域には、第1密度で粒子が含有される。第2領域には、第1密度とは異なる第2密度で粒子が含有される。また、かかる場合、第1領域の体積は、第2領域の体積と異なってもよい。
0011
上述の通り、このようなパターン基材は、例えば、「光多量化官能基含有高分子を主成分とすると共に粒子を含有する高分子材料から形成される基材」または「光架橋化高分子を主成分とすると共に粒子を含有する高分子材料から形成される基材」にフォトマスクを介して光を照射することにより作製することができる。
0012
そして、このようなパターン基材は、以下のような応用展開を図ることができる。
(i)粒子として金ナノ粒子等を用いた場合:ホログラム等の表示素子のカラー化,記録材料
(ii)粒子として金属粒子や、合金粒子、磁気粒子等を用いた場合:記録材料
(iii)粒子として金属粒子や合金粒子等を用い、その粒子のパーコレーション転移を利用した場合:微細配線素子
したがって、このパターン基材は、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化に向けた応用展開を図ることができる。
0013
本発明の第3局面に係るパターン形成用基材は、粒子含有高分子材料から形成される。粒子含有高分子材料は、光照射により体積変化する高分子材料と、高分子材料に分散される粒子とを含有する。なお、このようなパターン形成用基材は、例えば、特開2012−144610号公報に記載される高分子材料中に粒子を添加した後にそれを成形することによって作製することができる。また、パターン形成用基材は、フィルムであってもよいし、コーティング膜であってもよい。また、ここにいう「体積変化」とは、「膨張」または「収縮」を意味する。また、粒子は高分子材料に均一に分散されているのが好ましい。また、粒子は、互いの近接距離によって色相が変化する粒子であることが好ましい。本局面に係るパターン形成用基材の化学的構造に関しては、上述の通りである。
0014
このパターン形成用基材から上述のパターン基材の製造方法により上述のパターン基材を形成することができる。このため、このパターン形成用基材は、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化に向けた応用展開を図ることができるパターン基材を提供することができる。
図面の簡単な説明
0015
本発明の第1実施形態に係る粒子密度パターン樹脂基材の斜視図である。
光架橋性高分子のシンナモイル基が二量化する前の状態を示す模式的断面図である。
光架橋性高分子のシンナモイル基が二量化した後の状態を示す模式的断面図である。
270nmの波長の紫外線をシートメッシュ越しにPVCi-g-PDMSフィルムに2時間照射して作製した粒子密度パターン樹脂基材のAFM画像である(左上:形状像、右上:濃淡図、下:断面図)。
広域波長の紫外線をシートメッシュ越しにPVCi-g-PDMSフィルムに1時間照射して作製した粒子密度パターン樹脂基材のAFM画像である(左上:形状像、右上:濃淡図、下:断面図)。
実施例1に係る金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡像である。
実施例1に係る金ナノ粒子の紫外可視スペクトルである。
実施例1に係る種々の金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの写真である。
実施例1に係る種々の金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの紫外可視スペクトルである。
実施例1に係る金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの光照射前後の写真である。
実施例1に係る金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの光照射前後の紫外可視スペクトルである。
実施例1に係る金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムのパターニング形成方法を示す模式図である。
実施例1に係る金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムのパターニング形式の模式図である。
0016
−第1実施形態−
本発明の第1実施形態に係る粒子密度パターン樹脂基材100は、図1に示されるように、架橋領域Rc0および未架橋領域Rn0によるパターンPn0を有する。このような粒子密度パターン樹脂基材100は、例えば、以下に説明する光架橋性高分子および粒子等から形成される基材に対して、パターンPn0に対応するフォトマスクを介して光を照射することにより、または、レーザー光線を直接、照射することにより作製される。以下、この光架橋性高分子およびその製造方法、粒子、ならびに粒子密度パターン樹脂基材100の製造方法について詳述する。
0017
<光架橋性高分子>
光架橋性高分子は、光の照射を受けて架橋構造を形成する光架橋性官能基を含む高分子である。光架橋性官能基は、光の光線量に応じた量の架橋構造を形成する。そして、この光架橋性高分子においてそのような架橋構造が形成されると、光架橋性高分子は、その架橋構造形成量に応じて体積が減少する。なお、このような体積の減少は光の照射方向に沿って生じる。また、本実施の形態において、光の光線量は、照射面積当たりのエネルギー(mJ/cm2またはmW・s/cm2)で表される。また、光架橋性官能基特有の光吸収ピークでの吸光度が照射時間0分における初期吸光度aに対して1/2になるまでの時間は、180分以下であることが好ましく、60分以下であることがより好ましい。この時間が短ければ短いほど加工時間を短縮することできる。すなわち、この時間は0分に近いことが好ましい。このような架橋構造を生じさせる光は、光架橋性官能基の種類に依存するが、例えば、紫外線(UV光)、可視光線、X線等である。なお、紫外線の波長領域は10nm以上400nm以下であり、可視光線の波長領域は400nm超830nm以下であり、X線の波長領域は1pm以上10nm以下である。
0018
なお、光架橋性高分子の分子量は、特に限定されず、数平均分子量で1000以上であることが好ましく、数平均分子量で2000以上5000000以下の範囲内にあることがより好ましい。光架橋性高分子の数平均分子量がこの範囲内であれば、光架橋性高分子からフィルムなどを形成し易くできるだけでなく、光架橋性高分子における体積減少をより顕著なものとすることができるからである。
0019
この光架橋性高分子では、光架橋性官能基による架橋構造形成に伴って分子の移動が生じる。光架橋性高分子は、このときに変形を生じ易い構造を有していることが好ましい。架橋構造形成時において、光架橋性高分子が体積変化し易くなるだけでなく、架橋構造が形成され易くなるからである。また、架橋構造形成時において、そのフィルム等に亀裂等が生じ難い。以下、この光架橋性高分子の化学構造について詳述する。
0020
(1)高分子主鎖構造
光架橋性高分子の高分子主鎖は、ホモポリマーであってもよいし、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合等の共重合体であってもよい。また、この高分子主鎖は、合成高分子であってもよいし、天然高分子であってもよいし、半合成高分子(改質天然高分子)であってもよい。この高分子主鎖は柔軟性を有することが好ましい。柔軟性を有する高分子主鎖としては、例えば、ポリジメチルシロキサン系ポリマー、ポリエチレングリコール系ポリマー、スチレン‐ブタジエン共重合ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ポリマー、イソプレン−イソブチレン共重合ポリマー、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ポリマー、ハロゲン化ブチルポリマー等のガラス転移温度が低いゴム系高分子、エラストマー系高分子が例示される。なお、このようなポリマーの好ましいガラス転移温度は−140℃以上40℃以下の範囲内である。
0021
また、高分子主鎖に柔軟な側鎖を導入することによって柔軟性を確保するようにしてもかまわない。なお、そのような側鎖としては、例えば、ケイ素鎖、炭素鎖などを基本骨格とする長鎖構造を有するものが挙げられる。かかる場合、高分子主鎖は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリマレイン酸、ポリスチレン、ポリビニルピリジン、ポリビニルカルバゾール、ポリジメチルアミノスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアリルアミン、アクリル酸系ポリマー等の比較的柔軟性に乏しいものであってもよい。なお、アクリル酸系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド・アクリルアミドアルキルスルホン酸・(メタ)アクリロニトリル・ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ置換(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート・ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アミノ置換アルキルエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシエチルメタクリレート、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアルキル置換(メタ)アクリルアミド等のホモポリマー、共重合体が挙げられる。さらに、本発明の趣旨を損ねない範囲で、他のモノマー、オリゴマーを共重合させてもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」との表記は、「アクリル」または「メタクリル」を意味するものとして使用されている。
0022
上述の柔軟な側鎖は、ケイ素数または炭素数が20以上50000以下の範囲内のケイ素鎖または炭素鎖であることが好ましい。ケイ素数または炭素数がこの範囲内であれば、フィルム等の成形品を形成しやすいだけでなく、光架橋性官能基の相対的な濃度が適度に維持され、架橋構造が形成され易くなるからである。
0023
上述のケイ素鎖としては、例えば、ポリシロキサン、シリコーンなどの構造が挙げられる。また、上述の炭素鎖としては、例えば、イソプレン、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、エチレン−プロピレン、ブタジエン−ニトリル、クロロプレン、エチレングリコール、プロピレングリコール、アクリル酸系モノマー、ウレタン系モノマー等のホモポリマー、共重合体が挙げられる。
0025
(2)光架橋性官能基
光架橋性官能基としては、例えば、アジド基、クロロメチル基、光開始ラジカル発生基、光多量化官能基等を挙げることができる。光多量化官能基としては、例えば、光二量化官能基が挙げられる。光二量化官能基としては、例えば、シンナモイル基、クマリン基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基、ウラシル基、アントラセン基等が挙げられる。このような光二量化官能基は、π電子共役構造を含んでおり、[A+A](Aは2、4などの整数)光環化付加反応によって二量化される。なお、ここにいう「光環化付加反応」とは、π電子系の骨格を形成する反応をいう。また、上記光二量化官能基のうちクマリン基、チミン基、アントラセン基には、二量化−単量化の可逆性がある。具体的には、クマリン基は、310nm以上の長波長紫外線が照射されると二量化し、250〜260nm程度の短波長紫外線が照射されると単量化する。チミン基は、280nm前後の長波長紫外線が照射されると二量化し、240nm前後の短波長紫外線が照射されると単量化する。アントラセン基は、長波長紫外線が照射されると二量化し、加熱されたり300nm以下の短波長紫外線が照射されたりすると単量化する。光架橋性官能基は、光架橋性高分子に少なくとも1種類含まれていればよく、複数種類含まれていてもよい。特に、光二量化官能基は、光の照射時間に応じて光架橋性高分子の体積を減少させ易く好ましい。また、光二量化官能基が1種類である場合、同種の光二量化官能基のみが存在するため架橋構造の形成を制御し易い。一方、光二量化官能基が複数種類含まれている場合、異種の光二量化官能基は架橋構造の形成光波長が異なる。かかる場合、異なる波長の光を用いて光架橋性高分子の体積を減少させることができる。なお、光二量化官能基がシンナモイル基である場合の二量化形成モデルは以下の化学式に示される通りである。
0026
なお、シンナモイル基特有の光吸収ピークは280nm付近にあり、シンナモイル基は、この波長の紫外線を吸収して二量化する。シンナモイル基の二量化前では高分子主鎖が互いに離間しているが、シンナモイル基の二量化後では高分子主鎖同士が互いに接近している。その結果、光架橋性高分子の自由体積が減少することとなる。なお、マレイミド基は380nm以下の紫外線が照射されると二量化し、カルコン基は360nm前後の紫外線が照射されると二量化する。
0027
光架橋性高分子の100質量部に対する光架橋性官能基の含有率は10質量部以上90質量部以下の範囲内であることが好ましい。光架橋性官能基の含有率がこの範囲内であれば、適度な量の架橋構造を形成することができると共に、光架橋性高分子の体積変化を適度なものとすることができるからである。
0028
<光架橋性高分子の製造方法>
本発明の第1実施形態に係る光架橋性高分子は、(a)光架橋性官能基を有するモノマー(マクロモノマーを含む)、オリゴマー等を重合する方法(以下「重合法」という)、(b)高分子に光架橋性官能基を導入する方法(以下「官能基導入法」という)等により製造することができる。以下、上述の2種類の製造方法について詳述する。
0029
(1)重合法
重合法では、上述の通り、光架橋性官能基を有するモノマー、オリゴマー等(以下「光架橋性官能基含有モノマー等」という)が重合される。なお、この重合法では、光架橋性官能基含有モノマー等に、光架橋性官能基を有さない他のモノマー、オリゴマー等(以下「光架橋性官能基非含有モノマー等」という)が共重合されてもよい。光架橋性官能基非含有モノマー等としては、例えば、<光架橋性高分子>の欄に記載されている高分子主鎖を構成するモノマー、オリゴマー等が例示される。
0030
光架橋性官能基を有するモノマーとしては、例えば、アジド基、クロロメチル基、光開始ラジカル発生基、光多量化官能基等を有する各種モノマーを挙げることができる。このようなモノマーの具体例としては、例えば、アジド基、クロロメチル基、光開始ラジカル発生基、光多量化官能基を有するビニルモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、テレフタル酸モノマー、1,3−プロパンジオール、ε−カプロラクタムモノマー、ウンデカンラクタムモノマー、ラウリルラクタムモノマー、ビスフェノールモノマー、アクリル酸モノマー、ジメチルシロキサンモノマー、エチレングリコールモノマー、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、イソプレンモノマー、イソブチレンモノマー等が挙げられる。なお、これらのモノマーに代えてオリゴマーを用いることもできる。
0031
また、光多量化官能基を有するモノマーとしては、例えば、光二量化官能基を有するモノマーが挙げられる。光二量化官能基を有するモノマーとしては、例えば、シンナモイル基、クマリン基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基、ウラシル基またはアントラセン基を有するビニルモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、テレフタル酸モノマー、1,3−プロパンジオール、ε‐カプロラクタムモノマー、ウンデカンラクタムモノマー、ラウリルラクタムモノマー、ビスフェノールモノマー、アクリル酸モノマー、ジメチルシロキサンモノマー、エチレングリコールモノマー、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、イソプレンモノマー、イソブチレンモノマー等が挙げられる。なお、これらのモノマーに代えてオリゴマーを用いることもできる。
0032
光架橋性官能基含有モノマー等、光架橋性官能基非含有モノマー等を重合する方法としては、例えば、ラジカル重合、イオン重合、重縮合、開環重合等が挙げられる。また、その重合に用いられる溶媒は、光架橋性官能基含有モノマー等、光架橋性官能基非含有モノマー等が溶解するものであればよい。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、酢酸エチル、塩化メチル、クロロホルム、エーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン等の公知の溶媒が挙げられる。
0033
なお、本重合法では、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。かかる場合、重合開始剤は、上記溶媒に溶解する必要がある。このような重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム・過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素・t−ブチルハイドロパーオキシド・クメンハイドロパーオキシド等のパーオキシド類、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。なお、過硫酸塩・パーオキシド類等の酸化性開始剤は、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等と併用されることによりレドックス開始剤としても使用することができる。なお、このような重合開始剤を用いることなく、光架橋性官能基含有モノマー等、光架橋性官能基非含有モノマー等に光、放射線等を照射することにより重合を開始させてもよいし、光架橋性官能基含有モノマー等、光架橋性官能基非含有モノマー等を加熱することによって重合させてもよい。
0034
重合温度は、モノマーの耐熱温度、重合開始剤の種類に依存するため、一義的に決定することは困難であるが、例えば、50℃以上100℃以下の範囲内において設定することができる。また、重合時間も、特に限定されないが、通常、4時間以上48時間以下の範囲内である。
0035
光架橋性官能基含有モノマー等、光架橋性官能基非含有モノマー等の重合が完了すれば、光架橋性高分子が生成される。光架橋性高分子は、公知の方法により精製することができる。例えば、重合完了後の光架橋性高分子が溶液中に存在している場合、再沈殿法により光架橋性高分子を精製することができる。再沈殿法では、光架橋性高分子を含む溶液を光架橋性高分子の貧溶媒または非溶媒に添加させる。このとき、光架橋性高分子が析出して沈殿すると共に溶媒中に未反応のモノマー等の不純物が溶解する。その後、この沈殿物を濾過して溶媒を除去することにより光架橋性高分子が精製される。なお、必要に応じて、光架橋性高分子を良溶媒に再溶解させて、上記と同様の操作を複数回繰り返してもよい。
0036
(2)官能基導入法
官能基導入法では、上述の通り、高分子に光架橋性官能基が導入される。高分子は、合成高分子であってもよいし、天然高分子であってもよいし、半合成高分子(改質天然高分子)であってもよい。なお、合成高分子を形成するためのモノマーとしては、ビニルモノマー、プロピレンモノマー、ブテンモノマー、塩化ビニルモノマー、テレフタル酸モノマー、1,3−プロパンジオール、ε‐カプロラクタムモノマー、ウンデカンラクタムモノマー、ラウリルラクタムモノマー、ビスフェノールモノマー、アクリル酸モノマー、ジメチルシロキサンモノマー、エチレングリコールモノマー、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、イソプレンモノマー、イソブチレンモノマー等が挙げられる。なお、これらのモノマーに代えてオリゴマーを用いることもできる。また、当然のことながらこれらのモノマー、オリゴマーは、光架橋性官能基を有さない。また、天然高分子としては、澱粉、セルロース、キチン、キトサン、タンパク質等が挙げられる。当然のことながらこれらの天然高分子は、光架橋性官能基を有さない。
0037
合成高分子の製造条件(重合の種類、溶媒、重合開始剤、重合温度、重合時間、精製等)は、上述の重合法に示された製造条件と同様である。そして、この官能基導入法では、天然高分子、半合成高分子または上述のモノマー等を重合して得られる合成高分子中の官能基に、光架橋性官能基を含む化合物(以下「光架橋性官能基含有化合物」という)を反応させることにより高分子に光架橋性官能基を導入して、光架橋性高分子を得る。
0038
光架橋性官能基含有化合物としては、例えば、アジド基、クロロメチル基、光開始ラジカル発生基、光多量化官能基などを有するビニル化合物、アルコール、カルボン酸、アミン、エステル、エーテル等が挙げられる。また、光多量化官能基を有する化合物としては、例えば、シンナモイル基、クマリン基、チミン基、キノン基、マレイミド基、カルコン基ウラシル基またはアントラセン基を有するビニル化合物、アルコール、カルボン酸、アミン、エステル、エーテル等の光二量化官能基を含む化合物が挙げられる。
0040
<粒子>
粒子は、例えば、金ナノ粒子等の金属微粒子、合金微粒子、金属や合金をシェルとするコア−シェル型粒子、磁気粒子等である。粒子の形状は、球形、棒状、針状、角状など、任意の形状であってよい。また、粒子は、応用分野にも依存するところもあるため特に限定されないが、粒子含有高分子材料の20体積%以上80体積%以下を占めるのが好ましく、30体積%以上70体積%以下を占めるのがより好ましく、40体積%以上60体積%以下を占めるのがさらに好ましい。
0041
なお、粒子として金ナノ粒子等、表面プラズモン効果を有する粒子を用いた場合、本発明の実施の形態に係る粒子密度パターン樹脂基材100をカラーホログラム等の表示素子等として応用することができる。また、粒子として金属粒子や、合金粒子、磁気粒子等を用いた場合、同粒子密度パターン樹脂基材100を、粒子密度を利用した記録材料として応用することができる。なお、かかる場合、光架橋性官能基含有化合物としてクマリン基やチミン基を選択すれば、粒子密度パターン樹脂基材100に可逆性が備わる。したがって、かかる場合、リライタブルな記録材料を作製することができる。さらに、粒子として金属粒子や合金粒子等の導電性粒子を用いた場合、同粒子密度パターン樹脂基材100を微細配線素子として応用することができる。なお、かかる場合、粒子含有光架橋性高分子フィルム(後述)の光照射部分の体積変化に伴う導電性粒子のパーコレーション転移を利用することになる。
0043
フィルム成形工程では、スピンコート法、バーコート法、押出し法等の方法により、粒子を含有する光架橋性高分子のフィルム(以下「粒子含有光架橋性高分子フィルム」という)を成形する。なお、この粒子含有光架橋性高分子フィルムの成形条件は、光架橋性高分子の種類、粒子の種類や添加量、所望の膜厚等によって適宜変更すればよい。また、粒子含有光架橋性高分子フィルムの作製に際し、高分子として光架橋性高分子のみを使用してもよいし、本発明の趣旨を損なわない範囲で光架橋性高分子に他の高分子をブレンドしてもよい。なお、他の高分子は、他の光架橋性高分子であってもよいし、光架橋性を有さない高分子であってもよい。
0044
露光工程では、パターンPn0に対応するフォトマスクを介して粒子含有光架橋性高分子フィルムに光を照射することにより、または、粒子含有光架橋性高分子フィルムにレーザー光線を直接、照射することにより、粒子含有光架橋性高分子フィルム上に架橋領域Rc0および未架橋領域Rn0のパターンPn0を形成する(図1参照)。なお、本発明の実施の形態では、上述の理由により架橋領域Rc0が窪んだ状態となる(図1参照)。この現象を更に詳細に説明すると以下のとおりである。
0045
露光工程を開始するに際し、図2に示されるように、粒子含有光架橋性高分子フィルム1の表面に例えばメッシュ状のフォトマスク2が被覆される。そして、図3に示されるように、フォトマスク2の上方からフォトマスク2および粒子含有光架橋性高分子フィルム1に向かって紫外線が照射されると、粒子含有光架橋性高分子フィルム1のフォトマスク被覆箇所ではフォトマスク2によって紫外線が遮られる一方、粒子含有光架橋性高分子フィルム1の非被覆箇所には紫外線が照射される。したがって、粒子含有光架橋性高分子フィルム1の非被覆箇所では、二量化基であるシンナモイル基3同士が二量化し、その結果、高分子主鎖4同士が接近して光架橋性高分子フィルム1の非被覆箇所の体積が減少する。なお、このとき、紫外線として280nm付近のフィルタリングされた紫外線ではなく広域波長領域の紫外線を使用することにより効率的に体積減少を促進することができる。
0046
<粒子密度パターン樹脂基材の特徴>
第1実施形態に係る粒子密度パターン樹脂基材100は、以下のような応用展開を図ることができる。
(i)粒子として金ナノ粒子等を用いた場合:ホログラム等の表示素子のカラー化,記録材料
(ii)粒子として金属粒子や、合金粒子、磁気粒子等を用いた場合:記録材料
(iii)粒子として金属粒子や合金粒子等を用い、その粒子のパーコレーション転移を利用した場合:微細配線素子
したがって、この粒子密度パターン樹脂基材100は、光応答性高分子を利用した新たな微細パターン形成技術につき実用化に向けた応用展開を図ることができる。
0047
<変形例>
(A)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、粒子密度パターン樹脂基材の製造方法の露光工程において、パターンPn0の形成後、(i)パターンPn0に対応するフォトマスクの配置方法を変えたり、(ii)そのフォトマスクの上に別のフォトマスクを重ねたり、(iii)そのフォトマスクを別のフォトマスクに置き換えたりした後に、さらに露光を行うことによってパターンPn0を加工してもよい。かかる場合、例えば、(i)パターンPn0形成後の未架橋領域Rn0に対して先とは異なる量の光を照射して先の架橋領域Rc0の架橋度とは異なる架橋度を有する新たな架橋領域を形成してもよいし、(ii)パターンPn0形成後の架橋領域Rc0に対して部分的に光を照射して先の架橋領域Rc0の架橋度とは異なる架橋度を有する新たな架橋領域を形成してもよいし、(iii)前2つの新たな架橋領域を同時に形成してもよい。なお、かかる場合、新たな架橋領域の窪み度合いは先の架橋領域Rc0の窪み度合いと異なり、その結果、複雑な凹凸構造が形成されることになる。このようにしてパターンPn0を加工すれば、未架橋領域Rn0および複数種類の架橋領域を利用した3種以上のパターン形成を行うことができる。
0048
(B)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、未架橋領域Rn0を、架橋領域Rc0の架橋度と異なる架橋度を有するように光架橋させてもよい。かかる場合であっても、先の実施の形態に係る粒子密度パターン樹脂基材と同様の効果を奏することができる。
0049
(C)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、光架橋性高分子が、上述のクマリン基、チミン基、アントラセン基等の二量化−単量化の可逆性光架橋性官能基を有する場合、パターンPn0の形成後、(i)パターンPn0に対応するフォトマスクの配置方法を変えたり、(ii)そのフォトマスクの上に別のフォトマスクを重ねたり、(iii)そのフォトマスクを別のフォトマスクに置き換えたりした後に、単量化波長の光をそのパターンPn0の一部を含むように照射して更に複雑な形状のパターン形成を行ってもよい。
0050
−第2実施形態−
本発明の第2実施形態に係る粒子密度パターン樹脂基材の製造方法では、フィルム形成後にパターン形成が実行されたが、フィルム形成後に全架橋処理を経てパターン形成が行われてもよい。ただし、本製造方法を実現させるためには、光架橋性高分子が、上述のクマリン基、チミン基、アントラセン基等の二量化−単量化の可逆性光架橋性官能基を有することが必須である。以下、第2実施形態に係る粒子密度パターン樹脂基材の製造方法について詳述する。
0051
先ず、第1実施形態に係るフィルム成形工程と同様にして粒子含有光架橋性高分子フィルムを作製する。次に、この粒子含有光架橋性高分子フィルム全面に二量化波長の光を照射し、粒子含有光架橋性高分子フィルムを全面的に架橋化させて全架橋化粒子含有光架橋性高分子フィルムを作製する。最後に、パターンPn0に対応するフォトマスクを介して全架橋化粒子含有光架橋性高分子フィルムに単量化波長の光を照射することにより、または、全架橋化粒子含有光架橋性高分子フィルムに単量化波長の光を直接、照射することにより、全架橋化粒子含有光架橋性高分子フィルム上に架橋領域Rc0および未架橋領域Rn0のパターンPn0を形成する(図1参照)。すなわち、第2実施形態に係る粒子密度パターン樹脂基材の製造方法では、露光部分が体積膨張することによってパターンPn0が形成されることになる。
0052
<変形例>
先の実施の形態では特に言及しなかったが、パターンPn0の形成後、(i)パターンPn0に対応するフォトマスクの配置方法を変えたり、(ii)そのフォトマスクの上に別のフォトマスクを重ねたり、(iii)そのフォトマスクを別のフォトマスクに置き換えたりした後に、二量化波長の光をそのパターンPn0の一部を含むように照射して更に複雑な形状のパターン形成を行ってもよい。
0053
−実施例−
以下、実施例を示して本発明の実施の形態をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
0054
<金ナノ粒子の合成>
テトラクロロ金(III)酸三水和物393mgとオレイルアミン4.6mLを50mLのトルエンに溶解させた後、その反応溶液を窒素雰囲気下で3時間還流して、金ナノ粒子を析出させた。次に、反応溶液5mLに対してメタノール3mLを添加し、その混合液を6000rpmで3分間遠心分離して金ナノ粒子を沈殿させた。次いで、その遠心分離処理液からデカンテーションにより上澄みを除去した後、残った金ナノ粒子に再びトルエンを加えてトルエン中に金ナノ粒子を分散させた。そして、この操作をさらに2回繰り返して金ナノ粒子を精製・濃縮した。得られた金ナノ粒子の透過型電子顕微鏡像および紫外可視スペクトルを図6および図7にそれぞれ示した。図7に示される紫外可視スペクトルにおいて、520nm付近に、金ナノ粒子に特徴的な表面プラズモン共鳴に由来するピークが見られたことから、金ナノ粒子が合成されたことが明らかとなった。また、図6の透過型電子顕微鏡像より、得られた金ナノ粒子は、ほぼ均一な粒径を有しており、その粒径が15μmであることが明らかとなった。
0055
<光架橋性高分子の合成>
シンナモイル基を含むモノマーであるケイ皮酸ビニル(VCi)と、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むマクロモノマー(PDMS macromonomer)とを共重合して光架橋性高分子であるグラフト共重合体(PVCi-g-PDMS)を合成した。
0056
具体的には、先ず、5.48gのVCiおよび2.44gのPDMS macromonomerを、全モノマー量が20質量%になるように31.68mLのベンゼンに溶解させて溶液を調製した。次いで、この溶液に対して、窒素雰囲気下、開始剤として0.40gの2,2’-Azobis isobutyronitrile (AIBN)を添加した後(全モノマー量に対して5.0質量%)、窒素雰囲気下、70℃で8時間、その溶液を加熱し続けることにより重合を行ってPVCi-g-PDMSを合成した(以下の化学式参照)。
0057
0058
(なお、化学式中、PVCi-g-PDMS中のlは5以上100000以下の整数であり、mは5以上5000以下の整数であり、nは2以上5000以下の整数である。)
0059
続いて、PVCi-g-PDMSの溶液をメタノール/n−ヘキサン(2:1)の混合液600mLに滴下してPVCi-g-PDMSを沈殿させた。このとき、未反応のモノマーは溶媒に溶解する。このため、濾過等の手法によって溶媒を除去することによりPVCi-g-PDMSから未反応のモノマーを除去した。そして、再度、PVCi-g-PDMSを50mLのベンゼンに溶解させた後に、その溶液をメタノール/n−ヘキサン(2:1)の混合溶液300mLに滴下してPVCi-g-PDMSを沈殿させることにより、PVCi-g-PDMSを精製した。そして、先と同様にして溶媒を除去した後、さらにメタノール/n−ヘキサン(2:1)の混合溶液にてPVCi-g-PDMSを洗浄して精製処理を終了した。得られたPVCi-g-PDMSの組成を1H‐NMRによって決定した。1H‐NMRの測定結果から算出したPVCi-g-PDMSの組成を表1に示した。
0060
0061
<粒子密度パターン樹脂基材の作製>
1mg/mL、10mg/mL、30mg/mL、50mg/mL、100mg/mLおよび200mg/mLの金ナノ粒子分散液それぞれにPVCi-g-PDMSが10質量%になるようにPVCi-g-PDMSを溶解させた後、そのPVCi-g-PDMS溶液それぞれを2000rpmの回転速度で10分間、シリコンウエハ上にスピンキャストすることによって金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムを調製した。なお、得られた金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルム中の金ナノ粒子含有量は、それぞれ1.0重量%、9.3重量%、23.4重量%、34.0重量%、50.7重量%および67.3重量%であった。図8には、調製された各金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの写真が示されている。図8から明らかなように、金ナノ粒子含有量が高い程、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの色調が濃くなった。また、図8から、いずれの金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムにおいても金ナノ粒子は凝集することなく均一に分散していることが明らかとなった。また、図9には、金ナノ粒子含有量が34.0重量%、50.7重量%および67.3重量%である金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの紫外可視スペクトルが示されている。図9から明らかなように、いずれの金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムにおいても、550nm付近に、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に由来するピークが現れた。また、これらの金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に由来するピークは、金ナノ粒子含有量が高い程、長波長側の領域の吸収が増大し、ブロード化した。一般的に、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴によるピークは、金ナノ粒子の凝集によりブロード化すると共に長波長側にシフトすることが知られている。したがって、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルム中の金ナノ粒子含有量の増加に伴うピークのブロード化および長波長領域の吸収の増大は、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの金ナノ粒子含有量の増加に伴う金ナノ粒子同士の近接に伴って引き起こされたものであると考えられる。
0062
<金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの光体積変化の検証>
次に、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムに広域波長の光を2時間照射した際の金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの色調および吸光度変化について検討した。図10には、光照射前後の金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの写真が示されている。図10から明らかなように、光照射に伴って金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムがワインレッドから薄紫色に変化した。図11には、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの光照射前後の紫外可視スペクトルが示されている。図11から明らかなように、いずれの金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムにも、光照射によって表面プラズモン共鳴によるピークのブロード化および極大吸収波長の長波長シフトが確認された。これらの結果から、光照射による金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの膜厚減少に伴って金ナノ粒子間の距離が短くなったために金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの色調が変化したものと考えられる。
実施例
0063
<金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムのパターニング形成の検証>
ここでは、フォトマスクを利用した金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムのパターニング形成について検討した。図12に示されるように、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムにフォトマスクを介して広域波長の光を30分間照射した。その結果、光照射部分のみで金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの色調が変化した(図13参照)。これは、光照射部分のみでシンナモイル基の光二量化反応が進行して金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルムの膜厚が減少し、金ナノ粒子分散PVCi-g-PDMSフィルム中の金ナノ粒子の密度が高まったために、金ナノ粒子間の距離が短くなったためであると考えられる。
0064
本発明に係るパターン基材は、ホログラム等の表示素子、記録材料、微細配線素子等の技術分野の要素技術として利用することができる。
0065
100,100A粒子密度パターン樹脂基材
Pn0 パターン
Rc0架橋領域
Rn0 未架橋領域