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技術 鉄酸化物薄膜およびその製造方法

出願人 公益財団法人電磁材料研究所
発明者 阿部世嗣増本健
出願日 2014年2月13日 (6年4ヶ月経過) 出願番号 2014-025533
公開日 2015年8月24日 (4年10ヶ月経過) 公開番号 2015-151572
状態 特許登録済
技術分野 鉄化合物(I) 物理蒸着 半導体メモリ オブシンスキー素子 薄膜、厚膜装置
主要キーワード 酸素含有濃度 安定化熱処理 鉄ターゲット 酸化鉄膜 好適材料 低抵抗体 非加熱状態 加熱合成
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (4)

課題

主にマグマイ結晶相からなる鉄酸化物薄膜およびその製造方法を提供する。

解決手段

一般式Fe100−x−yMgxOy(ただし、60≦x+y≦66、0<x≦15、51≦y≦60であり、各数字原子比率を示す)で表され、成膜状態における構造が主にマグへマイト(γ-Fe2O3)結晶相である鉄酸化物薄膜である。この鉄酸化物薄膜は、ターゲットとして、ヘマタイト(α-Fe2O3)ターゲット上にMgのチップを配置した複合ターゲットを用いて、スパッタリング法により得ることができる。

概要

背景

デジタルカメラ携帯電話等の電子機器高性能化に伴い不揮発メモリー需要が高まっている。従来、不揮発性メモリーとしては、軽量で発熱が少なく静寂性が高い長所を有することから、フラッシュメモリーが広く普及している。しかし、フラッシュメモリーは、揮発メモリーであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)と比較して動作速度が遅く、高集積化も困難な短所を有する。

このため、このような短所を克服することができる次世代の不揮発メモリーが求められ、さらに大容量化低電力駆動化、長寿命化および低コスト化も要求されており、現在、強誘電体メモリー(FeRAM;Ferroelectric Random Access Memory)、磁気抵抗メモリーMRAM;Magnetic Random Access Memory)、相変化メモリー(PRAM;Phase−change Random Access Memory)、および電気抵抗変化型メモリー(ReRAM;Resistive Random Access Memory)が検討されている。

この中で、FeRAMは、誘電体を用い、低消費電力、かつ、書き換え回数が理論上ほぼ無限である長所を有するが、大容量化や小型化等の面でフラッシュメモリーに劣る短所を有する。また、MRAMは、磁性体を用い、大容量化が可能である長所を有するが、外部からの強磁場に弱い短所を有する。さらに、PRAMは、大容量化が可能であるという長所を有するが、加熱と冷却を通じた相変化材料を利用するため、耐熱性に弱い短所を有する。

これに対し、ReRAMは、高集積化および低コスト化が可能な次世代不揮発メモリーとして有望視されている。

ReRAMは、上部および下部電極電気抵抗変化膜を挟んだ極めて単純な構造を有しており、メモリー動作の際には、電極間に所定の電気パルスを与え、電気抵抗を増大もしくは減少させることにより、デジタル的に信号を記録させる(例えば非特許文献1)。

従来、ReRAMの電気抵抗変化膜用材料として、ペロブスカイト系化合物タンタル酸化物チタン酸化物亜鉛酸化物、および鉄酸化物等が候補材料である。このうち、鉄酸化物は豊富資源により構成され、原料調達が比較的容易であることから素子の低コスト化が期待される。

鉄酸化物は、酸化の進行とともに、ウスタイト(Fe1−xO)、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)およびヘマタイト(α-Fe2O3)の順に相転移し、ヘマタイトにおいて不可逆的に安定化する。このうち、マグマイトのみが準安定相であり、マグネタイトと可逆的に相転移可能である。電気抵抗は酸化の進行とともに増加するため、ReRAM用材料としてマグヘマイトが好適材料である。

すなわち、比較的高電気抵抗体であるマグヘマイトは、還元により比較的低抵抗体であるマグネタイトに相転移し、広帯域の電気抵抗変化を生じる。この可逆的な相転移は素子のパルス電圧駆動によって制御可能であり、デジタル信号を電気抵抗の高低値として不揮発的に記録する。準安定相であるマグへマイトは、約400℃で不可逆的に安定相であるヘマタイトに相転移する。したがって、ReRAMとしての電気抵抗変化は、当該温度以下において、マグへマイトとマグネタイトとの可逆的相転移を通じて行われることが望ましい。

マグへマイトおよびマグネタイトにおける可逆的相転移は、両化合物ともに逆スピネル構造を有することに起因する。すなわち、逆スピネル構造のBサイト(Octahedral)では、マグネタイトにおいてFe2+およびFe3+が同等に存在するのに対し、マグへマイトではFe3+のみにより構成される。Fe2+は、酸化(または還元)の進行と共に消滅(または生成)し、結晶構造を変化させることなく可逆的に相転移することができる。また、マグネタイトは、Fe2+およびFe3+間の電子ホッピングにより低電気抵抗化するのに対し、マグへマイトはFe3+のみにより構成されるため高電気抵抗化する。したがって、酸化および還元を通じたFeの価数制御により可逆的相転移が可能になり、その結果、電気抵抗の広帯域変化が可能になる。

他方、ヘマタイトはコランダム構造を有し鉄酸化物の最終形態として不可逆的に相安定化する。また、ウスタイトは塩化ナトリウム型構造を有し、Feの空孔を多量に含む不定比化合物である。組成不安定性が電気抵抗のばらつきに反映することから当該用途に不適である。したがって、可逆的に相転移可能な鉄酸化物は、逆スピネル構造を有するマグネタイトおよびマグへマイトのみである。

ところで、ReRAMにおける実際の生産工程では、各種処理に約300℃までの加熱が避けられず、その際に鉄酸化物薄膜の電気抵抗が急激に減少することによる素子量産における歩留低下が課題であり、鉄酸化物の温度安定性を確保するために、マグヘマイトおよびヘマタイトのいずれか一方または両方を含む第1の酸化鉄膜を形成した後、酸素が存在しない雰囲気において300℃以上で熱処理して、第2の酸化鉄膜へと変化させる方法が提案されている(特許文献1)。

概要

主にマグへマイト結晶相からなる鉄酸化物薄膜およびその製造方法を提供する。一般式Fe100−x−yMgxOy(ただし、60≦x+y≦66、0<x≦15、51≦y≦60であり、各数字原子比率を示す)で表され、成膜状態における構造が主にマグへマイト(γ-Fe2O3)結晶相である鉄酸化物薄膜である。この鉄酸化物薄膜は、ターゲットとして、ヘマタイト(α-Fe2O3)ターゲット上にMgのチップを配置した複合ターゲットを用いて、スパッタリング法により得ることができる。

目的

本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、主にマグへマイト結晶相からなる鉄酸化物薄膜およびその製造方法を提供する

効果

実績

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請求項1

一般式Fe100−x−yMgxOy(ただし、60≦x+y≦66、0<x≦15、51≦y≦60であり、各数字原子比率を示す)で表され、成膜状態における構造が主にマグマイト(γ-Fe2O3)結晶相であることを特徴とする鉄酸化物薄膜

請求項2

ターゲットとして、ヘマタイト(α-Fe2O3)ターゲット上にMgのチップを配置した複合ターゲットを用いて、スパッタリング法により、基板上に請求項1に記載の鉄酸化物薄膜を成膜することを特徴とする鉄酸化物薄膜の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、電気抵抗変化メモリー(ReRAM)素子の電気抵抗変化層として好適な鉄酸化物薄膜およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

デジタルカメラ携帯電話等の電子機器高性能化に伴い不揮発メモリー需要が高まっている。従来、不揮発性メモリーとしては、軽量で発熱が少なく静寂性が高い長所を有することから、フラッシュメモリーが広く普及している。しかし、フラッシュメモリーは、揮発メモリーであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)と比較して動作速度が遅く、高集積化も困難な短所を有する。

0003

このため、このような短所を克服することができる次世代の不揮発メモリーが求められ、さらに大容量化低電力駆動化、長寿命化および低コスト化も要求されており、現在、強誘電体メモリー(FeRAM;Ferroelectric Random Access Memory)、磁気抵抗メモリーMRAM;Magnetic Random Access Memory)、相変化型メモリー(PRAM;Phase−change Random Access Memory)、および電気抵抗変化型メモリー(ReRAM;Resistive Random Access Memory)が検討されている。

0004

この中で、FeRAMは、誘電体を用い、低消費電力、かつ、書き換え回数が理論上ほぼ無限である長所を有するが、大容量化や小型化等の面でフラッシュメモリーに劣る短所を有する。また、MRAMは、磁性体を用い、大容量化が可能である長所を有するが、外部からの強磁場に弱い短所を有する。さらに、PRAMは、大容量化が可能であるという長所を有するが、加熱と冷却を通じた相変化材料を利用するため、耐熱性に弱い短所を有する。

0005

これに対し、ReRAMは、高集積化および低コスト化が可能な次世代不揮発メモリーとして有望視されている。

0006

ReRAMは、上部および下部電極電気抵抗変化膜を挟んだ極めて単純な構造を有しており、メモリー動作の際には、電極間に所定の電気パルスを与え、電気抵抗を増大もしくは減少させることにより、デジタル的に信号を記録させる(例えば非特許文献1)。

0007

従来、ReRAMの電気抵抗変化膜用材料として、ペロブスカイト系化合物タンタル酸化物チタン酸化物亜鉛酸化物、および鉄酸化物等が候補材料である。このうち、鉄酸化物は豊富資源により構成され、原料調達が比較的容易であることから素子の低コスト化が期待される。

0008

鉄酸化物は、酸化の進行とともに、ウスタイト(Fe1−xO)、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-Fe2O3)およびヘマタイト(α-Fe2O3)の順に相転移し、ヘマタイトにおいて不可逆的に安定化する。このうち、マグマイトのみが準安定相であり、マグネタイトと可逆的に相転移可能である。電気抵抗は酸化の進行とともに増加するため、ReRAM用材料としてマグヘマイトが好適材料である。

0009

すなわち、比較的高電気抵抗体であるマグヘマイトは、還元により比較的低抵抗体であるマグネタイトに相転移し、広帯域の電気抵抗変化を生じる。この可逆的な相転移は素子のパルス電圧駆動によって制御可能であり、デジタル信号を電気抵抗の高低値として不揮発的に記録する。準安定相であるマグへマイトは、約400℃で不可逆的に安定相であるヘマタイトに相転移する。したがって、ReRAMとしての電気抵抗変化は、当該温度以下において、マグへマイトとマグネタイトとの可逆的相転移を通じて行われることが望ましい。

0010

マグへマイトおよびマグネタイトにおける可逆的相転移は、両化合物ともに逆スピネル構造を有することに起因する。すなわち、逆スピネル構造のBサイト(Octahedral)では、マグネタイトにおいてFe2+およびFe3+が同等に存在するのに対し、マグへマイトではFe3+のみにより構成される。Fe2+は、酸化(または還元)の進行と共に消滅(または生成)し、結晶構造を変化させることなく可逆的に相転移することができる。また、マグネタイトは、Fe2+およびFe3+間の電子ホッピングにより低電気抵抗化するのに対し、マグへマイトはFe3+のみにより構成されるため高電気抵抗化する。したがって、酸化および還元を通じたFeの価数制御により可逆的相転移が可能になり、その結果、電気抵抗の広帯域変化が可能になる。

0011

他方、ヘマタイトはコランダム構造を有し鉄酸化物の最終形態として不可逆的に相安定化する。また、ウスタイトは塩化ナトリウム型構造を有し、Feの空孔を多量に含む不定比化合物である。組成不安定性が電気抵抗のばらつきに反映することから当該用途に不適である。したがって、可逆的に相転移可能な鉄酸化物は、逆スピネル構造を有するマグネタイトおよびマグへマイトのみである。

0012

ところで、ReRAMにおける実際の生産工程では、各種処理に約300℃までの加熱が避けられず、その際に鉄酸化物薄膜の電気抵抗が急激に減少することによる素子量産における歩留低下が課題であり、鉄酸化物の温度安定性を確保するために、マグヘマイトおよびヘマタイトのいずれか一方または両方を含む第1の酸化鉄膜を形成した後、酸素が存在しない雰囲気において300℃以上で熱処理して、第2の酸化鉄膜へと変化させる方法が提案されている(特許文献1)。

0013

特開2008−091602号公報

先行技術

0014

木下ら、Applied Physics Letters 2006年89巻103509頁

発明が解決しようとする課題

0015

前述のように、マグへマイトは、約400℃以下において安定に存在可能であることから、ReRAM素子用の鉄酸化物としてマグへマイトに単相化したものを用い、マグネタイトとの可逆的相転移により広帯域の電気抵抗変化を行うことが望ましい。しかし、特許文献1に示すように、従来の鉄酸化物薄膜では約300℃までの加熱の際に鉄酸化物薄膜の電気抵抗が急激に減少する現象が生じており、これは、従来の鉄酸化物薄膜を構成する鉄酸化物相がマグへマイトに単相化していないことを示唆する。すなわち、鉄酸化物の電気抵抗は、前述のように、ウスタイト、マグネタイト、マグへマイト、およびヘマタイトの順に増加するのであり、生産工程における加熱による意図しない電気抵抗の減少は、様々な酸化物等が混合状態であることを示唆する。

0016

前述したように、特許文献1では、生産工程における鉄酸化物の温度安定性を確保するために、成膜後に熱処理工程を追加し電気抵抗の安定化を図っているが、この熱処理は、混合する鉄酸化物相を各相に安定化させる工程であり、マグへマイトに単相化させる工程ではなく、マグヘマイトに単相化された鉄酸化物薄膜は未だ得られていない。

0017

本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、主にマグへマイト結晶相からなる鉄酸化物薄膜およびその製造方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0018

通常の生産工程において、鉄酸化物薄膜はスパッタリング法により作製されるが、スパッタリング法により準安定相であるマグへマイト単相薄膜を作製することが最も困難であり、従来の鉄酸化物薄膜において電気抵抗の温度安定性が低いという課題が生じるのは、従来の成膜手法がマグへマイト単相薄膜の成膜に適していないからである。

0019

以下にその理由を説明する。
従来、鉄酸化物薄膜の作製には、ターゲットとして鉄酸化物焼結体またはFeが用いられる。鉄酸化物焼結体ターゲットの製造では、比較的高温に保持して粉末固体化させることから、約400℃で不可逆的にヘマタイトに相転移するマグへマイトの焼結体ターゲットは存在しない。また、Feターゲットを用いる場合、成膜雰囲気中の酸素含有濃度を変化させることにより各鉄酸化物相が作製される。しかし、単に酸素含有濃度の変化のみではマグへマイトは形成されず、安定相であるマグネタイトから、同様に安定相であるヘマタイトに相転移する。したがって、単純にスパッタリングしただけでは、主にマグヘマイト結晶相からなる薄膜を成膜することは困難である。

0020

そこで、準安定相であるマグへマイト薄膜を成膜する手法として、鉄ターゲットを用い、酸素含有雰囲気中で基板を加熱しつつ成膜する方法や、スパッタリング法によりマグネタイト薄膜を成膜後に、別途酸化熱処理を施す方法が考えられる。すなわち、いずれの方法も「加熱酸化」である。しかし、前者では、酸素含有濃度に応じて様々な鉄酸化物相に変化することから、マグへマイトに単相化するためには極めて厳密な制御技術を要する。また、後者では、このような厳密な制御技術を要することに加え、酸化熱処理工程が追加されることによる生産コストの増加を招く。

0021

さらに、マグへマイト薄膜を作製する際の基板も重要な要素である。すなわち、生産工程では電子回路集積化の観点からシリコン基板が用いられ、ReRAM素子は熱酸化シリコン(すなわちアモルファス酸化物)上に作製される。単結晶基板を用いて結晶化を促すエピタキシャル成長と比較し、アモルファス酸化物上へのマグへマイト薄膜の作製は一層困難であり、実際、前述のように、生産工程では複数の鉄酸化物相が容易に混合する。

0022

したがって、「加熱酸化」に基づくマグへマイト薄膜の作製方法も、生産工程において主にマグヘマイト結晶相からなる薄膜(ほぼマグヘマイト単相薄膜)を得る方法としては適していない。

0023

鉄酸化物薄膜を用いたReRAMの実用化に向けて、素子の低コスト化を考慮すると、追加の熱処理を施すことなく、酸素含有雰囲気や基板加熱が不要で、アモルファス酸化物(ガラス)基板上に単純に成膜しただけでマグへマイト単相薄膜が作製されることが望ましい。このような観点から、新たな着想のマグへマイト薄膜の成膜方法が求められる。

0024

そこで、本発明者らが研究を重ねた結果、FeおよびOに所定範囲のMgを混合させることにより、成膜したままの状態で主にマグヘマイト結晶相(ほぼマグヘマイト単相)からなる鉄酸化物薄膜が得られることを見出した。また、ターゲットとしてヘマタイトターゲットの上にMgチップを設置した複合ターゲットを用いて高周波スパッタリングを行うことにより、酸素含有雰囲気、基板加熱および成膜後の熱処理を用いることなく、アモルファス酸化物(ガラス)基板上であっても、マグへマイトに単相化した鉄酸化物薄膜を作製できることを見出した。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。

0025

すなわち、第1発明は、一般式Fe100−x−yMgxOy
(ただし、60≦x+y≦66、0<x≦15、51≦y≦60であり、各数字原子比率を示す)で表され、成膜状態における構造が主にマグへマイト(γ-Fe2O3)結晶相であることを特徴とする鉄酸化物薄膜を提供する。

0026

第2発明は、ターゲットとして、ヘマタイト(α-Fe2O3)ターゲット上にMgのチップを配置した複合ターゲットを用いて、スパッタリング法により、基板上に第1発明に係る鉄酸化物薄膜を成膜することを特徴とする鉄酸化物薄膜の製造方法を提供する。

発明の効果

0027

本発明によれば、酸素含有雰囲気、基板加熱および成膜後の熱処理を用いることなく、主にマグヘマイト結晶相からなる鉄酸化物薄膜を任意の基板上に成膜することができる。したがって、熱酸化シリコン上へ成膜して集積回路との一体化も可能であり、ReRAMの電気抵抗変化層の低コスト化に好適である。また、マグへマイトは可視光吸収性を有することから太陽電池用材料としても好適であるとともに、強磁性体であることから光アイソレータ等の光磁気素子用材料としても好適であり、応用範囲が広い。

図面の簡単な説明

0028

本発明に係る鉄酸化物薄膜の典型的なX線回折パターンを示す図である。
本発明に係る鉄酸化物薄膜の典型的な光透過スペクトルを示す図である。
本発明に係る鉄酸化物薄膜の熱処理温度と電気抵抗の関係を示す図である。

0029

以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の鉄酸化物薄膜は、一般式Fe100−x−yMgxOy(ただし、60≦x+y≦66、0<x≦15、51≦y≦60であり、各数字は原子比率(at.%)を示す)で表され、成膜状態における構造が主にマグへマイト(γ-Fe2O3)結晶相である。

0030

本発明の鉄酸化物薄膜を製造する際には、スパッタリング装置、例えば、高周波スパッタリング装置に、ヘマタイト(α-Fe2O3)ターゲット上にMgのチップを配置した複合ターゲットおよび基板を設置し、ガス雰囲気中、例えば、アルゴンガス中で基板上に鉄酸化物薄膜を成膜する。

0031

基板の材料は特に限定されず、用途によって適当な基板を用いることができる。例えば、表面に熱酸化シリコンが形成されたシリコン基板や板状ガラス等を用いることができる。

0032

基板をスパッタリング装置に設置し、成膜前に基板のスパッタエッチングを適当時間行った後、スパッタリング法による成膜を行い、基板上に適当な形状の薄膜を製造する。成膜終了後真空槽内を適当なガス、例えば、窒素によりパージしてから薄膜が形成された基板を取り出す。なお、成膜方法としては、スパッタリング法であれば特に限定されないが、高周波スパッタリング法が好ましい。

0033

図1はこのように作製された鉄酸化物薄膜のX線回折パターンであり、図2は光透過スペクトルである。図1に示すように、結晶構造としてマグへマイト特有の逆スピネル構造が形成されていることがわかる。また、図2に示すように、マグへマイトの禁制帯幅に対応する約600nmに光吸収端(光が急激に減少する波長)が観測され、作製された鉄酸化物薄膜が主にマグへマイト結晶相であることがわかる。

0034

本発明に係る鉄酸化物薄膜の成膜状態の構造が主にマグへマイト結晶相であるのは、複合ターゲットの原料として使用するMgは、薄膜中において元素状態でマグへマイト相とともに存在するからであり、同じく複合ターゲットの原料として使用するヘマタイトのみがマグへマイトに相転移するからである。また、薄膜中におけるMgの濃度を原子比率で15以下(15at.%以下)としたのは、当該濃度を超えると急激に光透過特性が悪化し、鉄酸化物がマグへマイトに単相化し難くなるためである。

0035

添加したMgは薄膜中において元素として存在し、マグへマイト薄膜の成膜過程において、酸化や還元への関与はない。すなわち、ターゲット原料のヘマタイトおよび成膜されるマグへマイトはともにFe2O3の化合物組成を有し、Mg添加によっても組成は不変である。他方、原料のヘマタイトはコランダム構造を有し、マグへマイトは逆スピネル構造を有することから、Mg添加により結晶構造のみが転移する。

0036

このとき、鉄酸化物薄膜の全てがマグヘマイト結晶相になるとは限らないが、主にマグヘマイト結晶相となり、X線回折により図1に示すような明確な逆スピネル構造が得られる。

0037

このように本発明は、鉄酸化物にMgを添加することにより、ヘマタイトからマグヘマイトへの相転移を誘発させるものであり、成膜したままの非加熱状態で主にマグヘマイト結晶相からなる構造(ほぼマグヘマイト単相構造)を得ることができる。したがって、本発明では、従来、マグヘマイト単相化に不可欠であると考えられていた成膜後あるいは成膜中加熱合成が不要である。このため、鉄酸化物相の厳密な制御技術が不要であり、また、付加的な工程による生産コストの増加を招くことがない。また、本発明の鉄酸化物薄膜は、このように極めて単純な手法で製造することができることから、実デバイスとして生産工程への適用に適したものである。特に、所定量のMg添加によりターゲット原料であるヘマタイトを、ほぼマグヘマイトに単相化することができるため、生産工程における電気抵抗のばらつきを抑えたReRAM素子を安定的に製造することができる。さらに、加熱せずに成膜することができるので、基板として熱に弱い有機フィルムへの成膜も可能であり、マグへマイト単相構造のウエアラブ情報機器への応用も可能となる。

0038

なお、本発明の鉄酸化物機能性薄膜材料を構成するマグへマイトの形成に支障が生じない場合は、Mgの組成が15at.%を多少超えても本発明の範囲内である。

0039

まず、4インチヘマタイトターゲット上に、5mm角のMgチップをカーボン両面テープにより3枚貼り付け、これを高周波スパッタリング装置の真空槽中に設置した。また、基板として板ガラスを真空槽内に設置した。次いで、真空槽内を1.5×10−7Torrの真空度に達するまで真空排気を行い、引き続き、真空槽内にアルゴンガスを供給してガス圧を2mTorrに制御しつつ投入電力200Wで60分間の成膜を行った。これにより得られた鉄酸化物薄膜の膜厚は1μmであった。

0040

得られた試料について、組成分析を行ったところ、Mg組成は原子比率で5.7(5.7at.%)であった。この材料のX線回折パターンおよび光透過スペクトルを図1および図2に示す。前述したように、これらの図からマグへマイト薄膜が形成されていることがわかる。

0041

次に、得られた薄膜(本発明例)の電気抵抗の温度依存性を評価した。熱処理は真空環境において行い、200〜600℃の各温度において10分間保持した後に炉冷し、室温まで降下させた後に装置からの取り出しを行った。電気抵抗は直流四端子法により行った。得られた結果を図3に示す。比較のために、特許文献1に示された従来の鉄酸化物薄膜(従来例)の評価結果も同時に示す。

0042

図3に示すように、従来例では生産工程に要する加熱温度約300℃以下の領域で電気抵抗が急激に減少するのに対し、本発明例では電気抵抗は殆ど変化しないことがわかる。したがって、本発明例の鉄酸化物薄膜は、200〜600℃の温度領域において安定に存在し、他の鉄酸化物相がほぼ混入していないことが示唆される。このため、本発明例の鉄酸化物薄膜は、生産工程に要する加熱においても安定に存在する。また、成膜したままの状態でこのようにほぼマグヘマイト単相の薄膜が得られるため、従来不可欠であった電気抵抗安定化の熱処理は不要である。

実施例

0043

以上の結果から、本発明では、極めて単純な成膜手法により主にマグへマイト結晶相からなる鉄酸化物薄膜が得られ、ReRAMの電気抵抗変化層用材料として好適であることが確認された。

0044

本発明は、酸素含有雰囲気、基板加熱および成膜後の熱処理を用いることなく、スパッタリング法のみの極めて単純な方法により、主にマグヘマイト結晶相からなる鉄酸化物薄膜を任意の基板上に成膜する。このため、ReRAM用電気抵抗変化層用材料として好適である。また、生産工程における電気抵抗のばらつきが抑えられるため、従来不可欠であった電気抵抗安定化熱処理が不要になるととともに、入手容易な元素による材料を用いることから、生産コストを低減することもできる。また、太陽電池用光変換材料や光アイソレータ用材料としても好適であり、応用範囲が広く、産業上の利用範囲は極めて広い。

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