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課題

本発明は、肺炎球菌経鼻ワクチン及びその製造方法を提供する。

解決手段

本発明は、アミノ基を有するプルランに側鎖として疎水性コレステロールを付加したナノゲルワクチン抗原であるPspAとの複合体を含む霊長類用経鼻ワクチン製剤である。また、本発明は、前記霊長類経鼻ワクチン製剤の製造方法である。

概要

背景

肺炎球菌は、インフルエンザウイルスと並んで臨床上重要な上気道感染病原体であり、中耳炎から肺炎菌血症及び髄膜炎などを併発し、死亡を含む重篤疾病小児成人発症させる。
このような肺炎球菌による感染を防御する手段として、近年、成人向けの7価−、10価−、及び13価−多糖結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7, 10, 13)が開発され、筋肉内注射によって投与されている。しかし、この多糖体ベースワクチンは、T細胞非依存的な多糖の免疫原性が弱いため、小児に対する免疫応答をほとんど誘導せず、また、莢膜血清型の肺炎球菌にしか感染防御効果を示さない。さらに、ワクチンの筋肉内注射は、主として、全身性の抗IgG抗体を誘導するため、これらのワクチンは肺炎球菌に対して、粘膜免疫応答を誘導することができないなどの問題点を有している。

肺炎球菌の表面蛋白質であるPspAは、高い免疫原性を有する蛋白質として知られており、ワクチンの候補として有望であると考えられている(非特許文献1及び非特許文献2)。PspAは、ほぼ全ての種類の肺炎球菌上に存在しており、PspAベースのワクチンは、マウス及びヒトにおいて、交差反応惹起する抗体を誘導する(非特許文献3〜非特許文献5)。さらに、PspA特異的な粘膜性及び全身性の抗体が、仔マウス母体を通じて)及び大人のマウスに誘導され、この抗体の誘導は、CD4+T細胞によるTh1及びTh2型サイトカインの応答によってメディエートされている。以上の知見から、PspAは、成人のみならず、小児においても有効な肺炎球菌ワクチン候補であることが示唆されている。

肺炎球菌は、いずれの種も鼻腔内にコロニーを形成し、気道粘膜に最初に感染することから、経鼻ワクチンは、肺炎球菌の感染防御手段として最も有効であると考えられる。
しかし、前臨床試験における、いわゆる、ADMEなどの安全性薬理試験によって評価されている安全な経鼻免疫用のアジュバント及び経鼻ワクチンの送達系は存在しておらず、実用化における一つの障害となっている。さらに、生物学的に活性粘膜アジュバントであるコレラトキシン(CT;cholera toxin)や易熱性毒素LT; heat-labile enterotoxin)と共に投与することは、毒素中枢神経系に到達する可能性、あるいは、嗅球などに蓄積されるなどの懸念が生じ、ヒトに対して投与するには、あまり好ましいことではなく、安全性の面においても解決すべき点が残されている。

これらの問題を回避するために、発明者らは、コレステロールが付加されたカチオン性プルランによって構成される自己凝集性ナノサイズヒドロゲル(cCHP;cationic type of cholesteryl group-bearing pullulan)を利用して、効果的なワクチンの送達システムを開発した(特許文献1、非特許文献6)。
cCHPナノゲルは、そのナノマトリックス内部に蛋白質抗原を内包すると、人工的なシャペロンとして機能し、抗原凝集及び変性を防ぎ、抗原放出後リフォディングを助ける。このナノゲルは、効率的に細胞まで送達され、アジュバントフリーワクチンとして免疫応答を誘導する(非特許文献7、非特許文献8、特許文献2)。さらに、マウスにおいて、経鼻的に投与した[111In]-標識 BoHc/A(ボツリヌスA型毒素の重鎖C末端領域無毒領域) を担持するcCHPナノゲルを経鼻的に投与しても、嗅球や脳などの中枢神経系に蓄積することはなかった(非特許文献7)。発明者らは、マウスにおいて、PspA-ナノゲル経鼻ワクチンが安全であり、かつ、強力な抗原特異的な全身性及び粘膜性の抗体免疫応答を誘導することを報告した(非特許文献9)。

上述の通り、PspA-ナノゲル経鼻ワクチンは、安全性及び防御免疫の誘導の両面において、非常に良好であり、経鼻ワクチンとしての実用化に期待がもたれている(非特許文献9)。しかしながら、これまでのところ、霊長類において有効であることが確認されておらず、実用化に向けて、さらに、改良を重ねる必要があった。

概要

本発明は、肺炎球菌経鼻ワクチン及びその製造方法を提供する。 本発明は、アミノ基を有するプルランに側鎖として疎水性のコレステロールを付加したナノゲルとワクチン抗原であるPspAとの複合体を含む霊長類用経鼻ワクチン製剤である。また、本発明は、前記霊長類経鼻ワクチン製剤の製造方法である。なし

目的

本発明は、霊長類においても安全かつ有効な肺炎球菌経鼻ワクチンを提供する

効果

実績

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請求項1

アミノ基を有するプルランに側鎖として疎水性コレステロールが付加されたナノゲルワクチン抗原であるPspAとの複合体であって、該ナノゲルが、グルコース100単糖あたり18〜22個の割合でアミノ基が付加されている該複合体を含む、霊長類経鼻ワクチン製剤

請求項2

前記ナノゲルが、グルコース100単糖あたり20個の割合でアミノ基が付加されていることを特徴とする請求項1に記載の霊長類用経鼻ワクチン製剤。

請求項3

前記PspAとナノゲルが1:4〜1:6のモル比複合化されることを特徴とする請求項1又は2に記載の霊長類用経鼻ワクチン製剤。

請求項4

グルコース100単糖あたり18〜22個の割合でアミノ残基が付加されているプルランに側鎖として疎水性のコレステロールが付加されたナノゲルとPspAを、該PspAとナノゲルのモル比が1:4〜1:6となるように混合することを含む、霊長類用経鼻ワクチン製剤の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、肺炎球菌経鼻ワクチンに関する。

背景技術

0002

肺炎球菌は、インフルエンザウイルスと並んで臨床上重要な上気道感染病原体であり、中耳炎から肺炎菌血症及び髄膜炎などを併発し、死亡を含む重篤疾病小児成人発症させる。
このような肺炎球菌による感染を防御する手段として、近年、成人向けの7価−、10価−、及び13価−多糖結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7, 10, 13)が開発され、筋肉内注射によって投与されている。しかし、この多糖体ベースのワクチンは、T細胞非依存的な多糖の免疫原性が弱いため、小児に対する免疫応答をほとんど誘導せず、また、莢膜血清型の肺炎球菌にしか感染防御効果を示さない。さらに、ワクチンの筋肉内注射は、主として、全身性の抗IgG抗体を誘導するため、これらのワクチンは肺炎球菌に対して、粘膜免疫応答を誘導することができないなどの問題点を有している。

0003

肺炎球菌の表面蛋白質であるPspAは、高い免疫原性を有する蛋白質として知られており、ワクチンの候補として有望であると考えられている(非特許文献1及び非特許文献2)。PspAは、ほぼ全ての種類の肺炎球菌上に存在しており、PspAベースのワクチンは、マウス及びヒトにおいて、交差反応惹起する抗体を誘導する(非特許文献3〜非特許文献5)。さらに、PspA特異的な粘膜性及び全身性の抗体が、仔マウス母体を通じて)及び大人のマウスに誘導され、この抗体の誘導は、CD4+T細胞によるTh1及びTh2型サイトカインの応答によってメディエートされている。以上の知見から、PspAは、成人のみならず、小児においても有効な肺炎球菌ワクチン候補であることが示唆されている。

0004

肺炎球菌は、いずれの種も鼻腔内にコロニーを形成し、気道粘膜に最初に感染することから、経鼻ワクチンは、肺炎球菌の感染防御手段として最も有効であると考えられる。
しかし、前臨床試験における、いわゆる、ADMEなどの安全性薬理試験によって評価されている安全な経鼻免疫用のアジュバント及び経鼻ワクチンの送達系は存在しておらず、実用化における一つの障害となっている。さらに、生物学的に活性粘膜アジュバントであるコレラトキシン(CT;cholera toxin)や易熱性毒素LT; heat-labile enterotoxin)と共に投与することは、毒素中枢神経系に到達する可能性、あるいは、嗅球などに蓄積されるなどの懸念が生じ、ヒトに対して投与するには、あまり好ましいことではなく、安全性の面においても解決すべき点が残されている。

0005

これらの問題を回避するために、発明者らは、コレステロールが付加されたカチオン性プルランによって構成される自己凝集性ナノサイズヒドロゲル(cCHP;cationic type of cholesteryl group-bearing pullulan)を利用して、効果的なワクチンの送達システムを開発した(特許文献1、非特許文献6)。
cCHPナノゲルは、そのナノマトリックス内部に蛋白質抗原を内包すると、人工的なシャペロンとして機能し、抗原凝集及び変性を防ぎ、抗原放出後リフォディングを助ける。このナノゲルは、効率的に細胞まで送達され、アジュバントフリーワクチンとして免疫応答を誘導する(非特許文献7、非特許文献8、特許文献2)。さらに、マウスにおいて、経鼻的に投与した[111In]-標識 BoHc/A(ボツリヌスA型毒素の重鎖C末端領域無毒領域) を担持するcCHPナノゲルを経鼻的に投与しても、嗅球や脳などの中枢神経系に蓄積することはなかった(非特許文献7)。発明者らは、マウスにおいて、PspA-ナノゲル経鼻ワクチンが安全であり、かつ、強力な抗原特異的な全身性及び粘膜性の抗体免疫応答を誘導することを報告した(非特許文献9)。

0006

上述の通り、PspA-ナノゲル経鼻ワクチンは、安全性及び防御免疫の誘導の両面において、非常に良好であり、経鼻ワクチンとしての実用化に期待がもたれている(非特許文献9)。しかしながら、これまでのところ、霊長類において有効であることが確認されておらず、実用化に向けて、さらに、改良を重ねる必要があった。

0007

WO00/12564号
特許第5344558号

先行技術

0008

Berryら, Infect Immun 57:2037-2042 1989
McDanielら, J Exp Med 165:381-394 1987
Brilesら, Infect Immun 68:796-800 2000
Nguyenら, Vaccine 29:5731-5739 2011
McCoolら, J Exp Med 195:359-365 2002
Ayameら, Bioconjug Chem 19:882-890 2008
Nochiら, Nat Mater 9:572-578 2010
Yukiら, Biotechnol Genet Eng Rev 29:61-72 2013
Kongら, Infect Immun 81:1625-1634 2013

発明が解決しようとする課題

0009

記事情に鑑み、本発明は、霊長類においても安全かつ有効な肺炎球菌経鼻ワクチンを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者ら、上記課題を解決するために、従来のPspA-ナノゲルワクチンの組成につき、鋭意研究を行った結果、以下に述べる改良を加えることで、霊長類においても、肺炎球菌の感染に対する免疫防御機能を誘導することに成功した。
発明者らは、まず、ナノゲルのカチオン化比率引き上げ(100グルコースあたり20アミノ基)、PspAとナノゲルの比率を最適化した(PspA(25μg):ナノゲル(1.1mg)=1:5モル比)。

0011

すなわち、本発明は、以下の(1)〜(4)である。
(1)アミノ基を有するプルランに側鎖として疎水性のコレステロールが付加されたナノゲルとワクチン抗原であるPspAとの複合体であって、該ナノゲルが、グルコース100単糖あたり18〜22個の割合でアミノ基が付加されている該複合体を含む、霊長類用経鼻ワクチン製剤
(2)前記ナノゲルが、グルコース100単糖あたり20個の割合でアミノ基が付加されていることを特徴とする上記(1)に記載の霊長類用経鼻ワクチン製剤。
(3)前記PspAとナノゲルが1:4〜1:6のモル比で複合化されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の霊長類用経鼻ワクチン製剤。
(4)グルコース100単糖あたり18〜22個の割合でアミノ残基が付加されているプルランに側鎖として疎水性のコレステロールが付加されたナノゲルとPspAを、該PspAとナノゲルのモル比が1:4〜1:6となるように混合することを含む、霊長類用経鼻ワクチン製剤の製造方法。

発明の効果

0012

本発明により、霊長類においても、安全かつ有効に防御免疫を誘導する、肺炎球菌ワクチンが提供される。また、マウスを用いた防御免疫を誘導するために必要なワクチン量を、既報の量(前掲、非特許文献9を参照のこと)の1/5程度にまで抑えることが可能となった。加えて、物理化学的性状も既報(非特許文献9)と比較したとき、完全なFRETを確認することができたことから、より性状の安定したナノゲルワクチンを提供することが可能となった。

図面の簡単な説明

0013

本発明のPspA-ナノゲルの物理化学的性状(FRETの測定)ローダミンを結合したcCHPと、FITCを結合したPspAの比率を最適化した複合体(FITC-PspA/ cCHP20-Rho)から、完全なFRETが検出された(A)のに対し、既報(非特許文献9)の条件では、FRETは検出されたが不十分であった(B)。また、FITCを結合させたPspAのみ(FITC-PspA)、又は、ローダミンを結合させたcCHPのみ(cCHP20-Rho)から、FRETは検出されなかった。
本発明のPspA-ナノゲルの物理化学的性状(動的光散乱法及びゼータ電位の測定) 動的光散乱法による測定を行ったところ、cCHPナノゲルはPspAと複合化した後も、均一なサイズであることが確認された(DH(PDI))。また、cCHPナノゲルのみ、及びPspA-cCHP複合体のゼータ電位を測定した結果を示す(Zeta-potential)。*:流体力学的半径(DH; Hydrodynamic diameter)、**:多分散指数(PDI;Polydispersity index)
[18F]-PspA-ナノゲル又は [18F]-PspA-PBSマカク属サル経鼻投与したときの、PET/MRIの画像(A及びB)及びTACs(C)を示す。(A)[18F]-PspA-ナノゲル又は [18F]-PspA -PBSを、ナイーブアカゲザル鼻孔に投与した後、サルの頭部を、PETスキャナーを使用して6時間スキャンした。MRI画像上に重ね合わせたリアルタイムPET画像を、免疫後の時間毎に示す。(B)中枢神経系又は嗅球における[18F]-PspAの蓄積の有無を調べるために、さらに、PETによる検討を行った。(C)[18F]-PspA-ナノゲル又は [18F]-PspA-PBSを経鼻投与して6時間の鼻腔のTACs(Time-activity curves)を示す。値は、経鼻投与後の残存量を%で示した。a:同一のサルに対し、1週間の間隔を置いて、[18F]-PspA-ナノゲル又は [18F]-PspA-PBSを経鼻投与した。
PspA-ナノゲルをサルに投与した後の免疫応答の誘導結果カニクイザルに対し、2.5μgのPspA-ナノゲル(PspA:ナノゲル=1:5モル比)、PspAのみ又はPBSのみを、矢印で示す時間毎に経鼻免疫し、血清鼻洗浄液及び気管支肺胞洗浄液(BALF; bronchoalveolar lavage fluid)を採取した。その後、PspA特異的な血清IgA(A)、鼻洗浄液中のIgA(B)及び気管支肺胞洗浄液中のIgG(■)とIgA(○)(C)をELISAで測定した。#2-6:PspA-ナノゲル投与グループ、#7,8:PspAのみ投与グループ、#9:PBS投与グループ
PspA-ナノゲルの投与による防御免疫の誘導。肺炎球菌に対する防御効果について、各免疫後のサルの血清をナイーブなBALB/cマウスに投与して評価を行った。サルの血清は、最終の一次免疫後1週間の時点で調製した(PspA-ナノゲル(#2-6)、PspAのみ(#7, 8)又はPBSのみ(#9))。各血清は、7.5 x 103 CFU のS. pneumoniae Xen10株と共に、37℃1時間のインキュベート後、マウス腹腔内へ注射により投与した。その後、毎日、マウスの生存確認を行った。
PspA-ナノゲルで免疫したサルにおける、CD4+T細胞からのTh2及びTh17型のサイトカインの産生。 CD4+T細胞は、ブースター免疫後1週間の時点で末梢血細胞から分離した。リンパ球を、放射線処理したAPCs及び5μg/mlとPspAと抗CD28抗体及び抗CD49d抗体と共に5日間培養した。培養上清中のIFN-γ(A)、IL-4(B)及びIL-17(C)の量を測定した。本実験は3回行った#2, 4, 5:PspA-ナノゲル投与グループ、#7, 8:PspAのみ投与グループ、#9:PBS投与グループ。#3及び6のサルからは末梢血細胞を分離することができなかった。
PspA-ナノゲルを経鼻免疫したサルのmiRNAの発現レベル(1)。血清中のmiR-155、miR-106a、miR-17、miR-18a、miR-20a、miR-92 aの発現レベルを示す。miRNAの発現レベルは、定量RT-PCR解析を行い、miR-16の発現レベルに対して標準化した。値は、各実験毎に、値±標準偏差で示した。免疫前グループとブースター後のグループ間において比較したときの*;p<0.05、**;p<0.01。
PspA-ナノゲルを経鼻免疫したサルのmiRNAの発現レベル(2)。鼻組織におけるmiR-155、miR-106a、miR-17、miR-18a、miR-20a、miR-92 aの発現レベルを示す。miRNAの発現レベルは、定量RT-PCRで解析を行い、miR-16の発現レベルに対して標準化した。値は、各実験毎に、値±標準偏差で示した。免疫前のグループとブースター後のグループ間において比較したときの*;p<0.05。
PspA-ナノゲルを経鼻免疫したサルのmiRNAの発現レベル(3)。 血清中のmiR-326とmiR-181aの発現レベル(A)と鼻組織におけるmiR-326とmiR-181aの発現レベル(B)を示す。miRNAの発現レベルは、定量RT-PCRで解析を行い、miR-16の発現レベルに対して標準化した。値は、各実験毎に、値±標準偏差で示した。免疫前のグループとブースター後のグループ間において比較したときの*;p<0.05、**;p<0.01。b;ブースターしたサルにおいて、PspA-ナノゲルブループとPspA又はPBSグループ間を比較した。Pre;免疫前の血清、Post;ブースター後の血清。

0014

本発明は、ヒトを含む霊長類に対する肺炎球菌の感染に対し、有効な経鼻ワクチンが未だに開発されていないことに鑑み、これまでに報告されているPspA-ナノゲルワクチンに改良を加え、霊長類において、有効に防御免疫を誘導する経鼻ワクチンを製造したことにより完成されたものである。
すなわち、本発明の実施形態の1つは、アミノ基を有するプルランに側鎖として疎水性のコレステロールが付加されたナノゲルとワクチン抗原であるPspAとの複合体であって、該ナノゲルが、グルコース100単糖あたり18〜22個の割合でアミノ基が付加されている該複合体を含む、霊長類用経鼻ワクチン製剤である。

0015

ここで、ナノゲルとは、親水性の多糖(例えば、プルラン)に、側鎖として疎水性のコレステロールが付加された、高分子ゲルナノ粒子のことである。ナノゲルは公知の方法、 例えば、国際公開第WO00/12564号公報に記載された方法などに基づいて製造することができる。
具体的には、まず、炭素数12〜50の水酸基含有炭化水素又はステロールと、OCN-R1NCO(式中、R1は炭素数1〜50の炭化水素基である)で表されるジイソシアナート化合物を反応させて、炭素数12〜50の水酸基含有炭化水素又はステロールが1分子反応したイソシアナート基含有疎水性化合物を製造する。得られたイソシアナート基含有疎水性化合物と多糖類とを反応させ、炭素数12〜50の炭化水素基又はステリル基を含有する疎水性基含有多糖類を製造する。次に、得られた生成物ケトン系の溶媒で精製することにより、純度の高い疎水性基含有多糖類を製造することができる。
ここで、多糖類としては、プルラン、アミロペクチンアミロースデキストランヒドロキシエチルデキストラン、マンナンレバンイヌリンキチンキトサンキシログルカン及び水溶性セルロース等が利用可能であり、特に、プルランが好ましい。

0016

本発明で使用されるナノゲルとしては、コレステロール置換プルラン(以下、CHPと称する)及びCHP誘導体を挙げることができる。CHPは、分子量3万から20万、例えば分子量100,000のプルランに100単糖あたりコレステロールが1〜10個、好ましくは1〜数個置換された構造を有する。なお、本発明で使用されるCHPは、抗原のサイズや疎水性の度合いにより、コレステロール置換量を適宜変更してもよい。また、CHPの疎水性の度合いを変更するために、アルキル基(炭素数10〜30、好ましくは、炭素数12〜20程度)を付加させてもよい。本発明で使用されるナノゲルは、粒径10〜40nm、好ましくは20〜30nmである。ナノゲルは既に広く市販されており、本発明においては、これら市販品を利用してもよい。

0017

本発明で使用されるナノゲルは、ワクチンが負に帯電する鼻粘膜表面へ侵入できるように、正電荷を有する官能基、例えばアミノ基を導入したナノゲルである。ナノゲルへのアミノ基の導入率最適値は、抗原によって異なる値で、PspAを抗原とする場合には、CHPのグルコース100単糖あたり18〜22、特に好ましくは、100単糖あたり20である。アミノ基のナノゲルへの導入の方法としては、アミノ基を付加したコレステロールプルラン(CHPNH2)を用いる方法を挙げることができる。
具体的には、減圧乾燥したCHP(例えば、0.15 g)をジメチルスルホキシド(DMSO)15mlに溶解し、これに1-1’カルボニルジイミダゾール(例えば、75mg)を窒素気流下に加え数時間(例えば、1時間程度)室温で反応させる。その反応溶液エチレンジアミン(例えば、300mg)を徐々に添加し、数時間から数十時間程度(例えば、24時間程度)攪拌する。得られた反応溶液を蒸留水に対して、数日間透析する。透析後の反応溶液を凍結乾燥し、乳白色の固体を得る。エチレンジアミンの置換度元素分析やH-NMRなどを用いて評価することができる。

0018

本発明の肺炎球菌に対する霊長類用経鼻ワクチンは、抗原として、PspA(肺炎レンサ球菌表面タンパク質A:pneumococcal surface protein A)を使用する。PspAはfamily 1-3、clade1-6に分類されるが、抗原性を有するものであれば、いかなるものであっても使用可能であり、また、抗原性を有するPspAの一部分を使用してもよい(例えば、成熟PspAのアミノ酸位置1〜302からなるペプチドなど)。さらに、抗原として用いるPspAは、PspAの抗原性を低下させるなど、悪影響を与えないものであれば、PspAに由来しないペプチド(例えば、精製用のタグペプチドなど)を含んでいてもよい。PspAのアミノ酸配列は、例えば、配列番号1(シグナル配列を含むアミノ酸配列;配列番号2はコード核酸配列の一例)、配列番号3(成熟PspAのアミノ酸配列;配列番号4はコード核酸配列の一例)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、公知のデータベース(NCBIなどが提供するデータベースなど)を使用して検索することで、当業者であれば容易にその情報を入手することができる。

0019

本発明の霊長類用の経鼻ワクチンは、肺炎球菌による感染症に対する霊長類に使用可能な経鼻ワクチンとしては、初めて製造されたものである。
ここで、霊長類とは、動物分類学上の霊長目(Primates)に相当し、ヒト、類人猿の他、原猿類(キツネザル類、ロリス類、アイアイ)、旧世界サル、新世界ザルなどのことを指す。

0020

ワクチン抗原であるPspAと上記カチオン性ナノゲルとの複合体は、カチオン性ナノゲルとPspAを共存させ、相互作用させ、PspAをカチオン性ナノゲル内に取り込ませることにより作製することができる。複合体を作製することを複合化という。PspAとカチオン性ナノゲルの混合比は、例えば、PspA:ナノゲルが、モル比で、1:4〜1:6、好ましくは1:5となるように混合すればよい。

0021

PspAとナノゲルの複合体の形成は、PspAとナノゲルをバッファー中において混合し、4〜50℃、例えば、46℃で、30分〜48時間、例えば、1時間程度静置して、混合する。PspAとナノゲルの複合化に使用するバッファーは、特に、限定されず、例えば、ワクチン抗原−カチオン性ナノゲル複合体の形成に用いるバッファーは、タンパク質とナノゲルの種類により適宜調製することができ、あえて例示するならば、Tris-HCl緩衝液(50mM、pH7.6)が挙げられる。調製したPspA-ナノゲル複合体は、公知の方法によりその物理化学的性状を解析することが可能である。例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET; fluorescence response energy transfer)、動的光散乱法(DLS; dynamic light scattering)、及び、ゼータ電位の測定などにより、解析が可能である。

0022

本発明の経鼻ワクチン製剤は、鼻粘膜を介して投与する。その方法としては、例えば、鼻粘膜への噴霧、塗布、滴下等により鼻腔内へ投与することができる。本発明の経鼻ワクチンは、全身免疫を誘導し、生体内に肺炎球菌に特異的なIgGが産生されるとともに、粘膜免疫を引き起こし、粘膜においてIgA抗体が産生され、全身免疫機構粘膜免疫機構の両方の機構で感染を防御し、感染症を治療し得る。

0023

経鼻ワクチン製剤は、薬学的に許容できる公知の安定剤、防腐剤酸化防止剤等を含ませても良い。安定剤としてはゼラチン、デキストラン、ソルビトール等が挙げられる。防腐剤としてはチメロサール、βプロピオラクトン等が挙げられる。酸化防止剤としてはαトコフェロール等が挙げられる。

0024

粘膜ワクチン製剤の投与量は、投与対象年齢や体重等により適宜決定することができるが、薬学的に有効な量のワクチン抗原を含む。薬学的に有効な量とは、そのワクチン抗原に対する免疫反応を誘導するのに必要な抗原量をいう。例えば、1回のワクチン抗原投与量数μg〜数10mgで1日1回〜数回投与し、1〜数週間間隔でトータル数回、例えば1〜5回投与すればよい。

0025

以下に実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。

0026

1.材料と実験方法
1−1.動物
8頭の雌のナイーブなカニクイザル(Macaca fascicularis, 5、〜3kg)を免疫実験に使用し、独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科研究センター(NIBIO、、筑波)で飼育を行った。また、1頭の雄のナイーブなアカゲザル(Macaca mulatta, 5-6歳、〜5kg)を、浜松ホトクス株式会社のPETセンターでのPET画像解析に用いた。抗体の中和実験においては、雌のBALB/cマウス(6週齢)をSLC(静岡、日本)から購入し、使用した。全ての実験は、動物実験及び動物ケアに関するガイドラインに従って行い、また、NIBIO、浜松ホトニクス、東京大学の動物実験委員会承認を得て行った。

0027

1−2.組換体PspAの調製
S.pneumoniae Rx1の組換体PspA(family 1, clade 2)(コード領域のアミノ酸配列は配列番号1、成熟蛋白質のアミノ酸配列は配列番号3)は、基本的には、すでに報告されている方法に従って調製を行った(Brilesら, Infect Immun 68:796-800, 2000を参照のこと)。具体的には、PspA/Rx1をコードするプラスミドGenBankアクセッション番号M74122、pUAB055)で大腸菌BL21(DE3)を形質転換した。pUAB055を構築するために、肺炎球菌株Rx1由来のPspAをコードする909bpフラグメントをpET20bベクター(Novagen社)のNcoIサイトとXhoIサイトの間にクローニングした。組換体PspA/Rx1は、成熟PspA由来の最初の302アミノ酸と6個のポリヒスチジンをC末端に含んでいる。
培養した大腸菌を回収し、超音波処理を行った後その遠心上清DEAEセファロースカラム(BD Healthcare社)にかけた。次に、Niアフィニティーカラム(Qiagen社)に通し、その後、Sephadex G-100カラム(BD Healthcare社)でゲル濾過を行って、組換体PspAの精製を行った。エンドトキシンは0.05 EU/mg以下であった。

0028

1−3.組換体PspA-ナノゲル複合体の調製
コレステリル基を持つカチオンタイプのプルランから調製したcCHPナノゲル(〜40nmサイズ) を全ての実験において使用した。このcCHPナノゲルは、グルコース100単糖あたり20アミノ基が導入されている。免疫を行うためのPspA-cCHP複合体は、PspA(25μg)とcCHP(1.1mg)がモル比で1:5となるように混合し、46℃で1時間インキュベートした。FITCで標識したPspAとTRITCで標識したcCHPナノゲル間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET; fluorescence response energy transfer)を、FP-6500蛍光スペクトロメーター(JASCO社)を用いて測定した(Ayameら, Bioconjug Chem 19:882-890 2008:Nochiら, Nat Mater 9:572-578 2010)。また、PspAを含むcCHP、あるいは、PspAを含まないcCHPに対し、動的光散乱法(DLS; dynamic light scattering)による測定、及び、ゼータ電位の測定を、Zetasizer Nano ZS instrument(Malvern Instruments社)を使用して行った。

0029

1−4.サルに対する経鼻免疫及びサンプルの採取
カニクイザルに対し、ケタミン麻酔を行い、2週間の間隔を置いて、PspA-ナノゲルを5回経鼻免疫した。また、コントロールとして、25μgのPspAのみ、又はPBSのみを経鼻投与した。サンプルは、第1次免疫の前、各免疫の1週間後、最終免疫の2、4、6及び8ヶ月後、ブースターの2週間後に、血清、鼻洗浄液(NW; nasal wash)及び気管支肺胞洗浄液(BALF; bronchoalveolar lavage fluid)を採取した。

0030

1−5.抗体応答に関するPspA特異性の検討
抗原特異的な抗体応答について、ELISA法により解析を行った(Kongら, Infect Immun 81:1625-1634, 2013)。PBS中、1 μg/ml PspAを4℃で一晩、96ウェルプレートにコートした。1%BSAを含むPBS-Tweenでブロッキングをした後、2倍に連続希釈したサンプルを添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、HRP結合ヤギ抗サルIgG(Nordic Immunological Laboratory社)又はHRP結合ヤギ抗サルIgA(Cortex Biochem社)を1:1000に希釈し、ウェルに添加後、室温で2時間インキュベートした。インキュベート後、TMB Microwell Peroxidase Substarate System(XPL社)で発色させた。エンドポイントタイターは、ネガティブコントロールよりもOD450の値が0.1以上高い最終希釈倍率について、対数表示した(reciprocal log2 titer)で表示した。

0031

1−6.バクテリアの株
本実験では、カナマイシン耐性株である肺炎球菌S. pneumonia Xen10株(Caliper Life Sciences社)を使用した。この株は、family 1、clade 1及び2のPspAを発現している野生型のA66.1株に由来する。S. pneumonia Xen10株の毒性は親株と同等である。S. pneumonia Xen10株はブレインハートインフージョン(BHI; brain heart infusion)培地を使用し、37℃、5% CO2の条件下で増殖させた。

0032

1−7.ワクチン投与を行ったカニクイザル由来の血清の中和活性
ワクチン投与を行ったカニクイザルから調製した血清のPspA抗原に対する中和活性を評価するために、PspA-ナノゲル、PspAのみ、PBSのみを免疫したカニクイザルから血清を調製した。各血清10μlを、90μlの7.5 x 103CFUのS. pneumonia Xen10株と37℃で1時間インキュベートした。その後、各混合物をBalb/cマウスに腹腔内投与(100μl/マウス)し、1週間、経過観察を行った。

0033

1−8.PspA特異的なCD4+T細胞応答
ブースターの1週間後、カニクイザルの末梢血からficoll-PaquePLUS(GE Healthcare社)を用いてリンパ球を調製した。洗浄したリンパ球の中から、CD4マイクロビーズ及び磁気細胞ソーティング(AutoMACS社)を用いて、CD4+T細胞を単離した。また、CD8+T細胞についても、同様に、単離した。CD4+細胞及びCD8+細胞を除去した後に残った細胞は、3000radの放射線照射したのち、抗原提示細胞(APCs)として使用した。CD4+T細胞(1 x 105細胞/ウェル)及びAPCs(0.5 x 105細胞/ウェル)を、10%FCSペニシリンストレプトマイシン(Gibco社)を添加したRPMI1640(ナカライテスク社)に懸濁し、5μl/mlのPspAの存在下、抗CD28(clone: CD28.2)及び抗CD49d(clone: 9F10)抗体(各0.5μg/ml)(eBioscience社)と共に、24ウェルプレート中、37℃、5% CO2の条件下で培養し、上清を回収した。上清中のサイトカインIFN-γ,IL-4及び IL-17は、Monkey Sinleplex Bead Kit (Invitrogen社)とBio-Plex 200 (BIO-RAD社)を使用して測定した。

0034

1−9.[18F]-PspAの合成
[18F]-PspAは、N-succinimidy-4-[18F]fluorobenzoate([18F]SFB)で標識した。精製したPspAは、N末及びε-Lysの遊離アミノ基に[18F]SFBをコンジュゲートすることで標識した。得られた産物をゲル浸透クロマトグラフィー(Superose 12,PBS, 1 ml/min)で精製した。615MBqの[18F]SFBをEOB(end of bombardment)から150分で取得した。放射化学的純度及びdecay-corrected radiochemical yieldは、各々、100%及び29.5%であった。

0035

1−10.アカゲザルのPET/MRI画像
[18F]の半減期は110分と長くないため、同じアカゲザルに対し、[18F]-PspA-nanogelと[18F]-PspA-PBSを1週間の間隔を置いて経鼻投与した。700μlあたり50MBqの[18F]-PspA-nanogel又は [18F]-PspA-PBSを投与した(350μlを鼻孔に投与)後、頭部を10分間後ろに傾け、麻酔後直立位置方向にスキャンを行った。PETスキャンは、高解像度の動物PETスキャナー(SHR-7700)(浜松ホトニクス社)を使用して、25 x 3minのフレームで345分間行ったのち、さらに、27 x 10min行った。MRIスキャンは、Signa Excite HDxt(3T)(GE Healthcare社)を使用して、大脳領域を確認するために行った。
なお、本PETでの感度は0.05 SUV(standardized uptake value)であり、従来のインジューム111Inや125Iヨウ素を用いたオードラジオグラムとほぼ同じ感度である。

0036

1−11.画像のデータ処理
PETデータのデータ処理は、PMODソフトウェアパッケージ(PMOD Technologies社)を使用して行った。各PET画像は、対応するMRIデータに重ね合わせ、大脳の位置等を確認した。PET/MRI画像のTACs(Time-activity curves)は、残存量の%で表示した。

0037

1−12.miRNAマイクロアレイ解析
免疫前及びブースター後の血清サンプル対し、マイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析には、3D-Gene miRNA microarray platform(TORAY社)を用いた。RNAの抽出は添付の使用説明書に従って行った。全RNAをHy5で標識し、アカゲザル又はブタザルと高い相同性を有する配列を持つ3D-GeneヒトmiRNAチップ上に、32℃で16時間ハイブリダイズさせた。プローブオリゴヌクレオチド配列は、miRBase(http://www.mirbase.org)で確認した。miRNA遺伝子発現データは、global normalization法で調整した。

0038

1−13.血清と鼻孔組織におけるmiRNA発現レベル
第1次免疫前とPspA-ナノゲル、PspAのみ、又はPBSのみでブースターを行った後に、血清を調製した。鼻孔上皮組織サンプルは、PspA-ナノゲル、PspAのみ、又はPBSのみでブースター免疫した後、採取した。全RNAは血清又は鼻孔組織から、TRIzol LS又はTRIzol試薬(Invitrogen社)を、各々用いて単離した。サンプル中の全てのmiRNAはポリAポリメラーゼATPを用いてポリアデニル化した。ポリアデニル化後、SuperScript IIIRT及びユニバーサルプライマー(Invitorogen社)を用いてテール化したmiRNAからcDNAを合成した。各first-strand cDNAを、Fast SYBR Green Master Mix and Step One Plus Real-TimePCRSystem (Applied Biosystems社)を用いて、定量RT-PCR解析を行った。発現レベルは、miRNA発現の内在性コントールとして通常使用されるmiR-16に対して標準化した。

0039

1−14.統計処理
結果は、値±標準偏差(SD)として表した。グループ間の比較に対する統計学的解析は、スチューデントtテストにより行った。p値<0.05又は<0.01を有意と判断した。

0040

2.結果
2−1.PspAとカチオン性ナノゲル(cCHP)との複合体
本実験において、ナノゲルはグルコース100単糖あたり20アミノ基を使用し、2.5μgのPspAをcCHPとモル比が1:5となるように混合して調製した。このような調製法を用いることにより、従来の方法(Kongら, Infect Immun 81:1625-1634 2013)と比較して、5分の1の量で抗原特異的な免疫応答を誘導することができた。なお、従来の方法で調整したPspA−ナノゲルワクチン(Kongら, Infect Immun 81:1625-1634 2013)はアカゲザルでは免疫応答を誘導することができなかった。
まず、PspA-ナノゲルの複合体形成及びナノメートルスケールの大きさの均一性について、FRET分析図1A)及び動的光散乱法(DLS)(図2)で確認した結果、ナノゲルはPspAを取り込んだ後、均一にナノ粒子を形成していることが分かった。特に最適化されたPspA -ナノゲルのFRETデータ(図1A)は、既報のデータ(図1B)に比較して完全なFRETを示していた。さらに、ゼータ電位は複合体の形成後もプラスであったことから、当該PspA-ナノゲルは有効なタンパク質の捕捉に適していることが明かとなった(図2)。これらの結果は、本発明において改良されたcCHPナノゲルは、ワクチン抗原を陰イオン性の上皮組織に効率的に運んで、経鼻投与を可能にし得ることを示している。

0041

2−2.[18F]-PspA-ナノゲルを用いた経鼻投与の影響
本発明のPspA-ナノゲルが、鼻腔内に滞留する効果と、嗅球及び中枢神経系へ蓄積の有無について、ナイーブなアカゲザルを用いて検討した。
麻酔後、サルの頭部をPETスキャナー上に置き、リアルタイム画像処理を6時間行った。大脳の正確な位置を確認するために、MRIスキャンを行って、その画像をPET画像上に重ね合わせた。経鼻投与後、15分から6時間までのアカゲザルのリアルタイムPET画像を図3Aに示す。PET画像を参照すると、[18F]-PspA-ナノゲルは、経鼻投与により有効に鼻粘膜に送達され、鼻組織中に6時間連続的に滞留することを、確認することができる(図3A左図及び3C)。これに対し、ナノゲルと複合体を形成させずに、[18F]-PspAのみを経鼻投与した場合には、経鼻投与後3時間で、鼻腔内から徐々に分散してしまった(図3A右図)。
なお、[18F]-PspAを経鼻投与してから6時間の間、大脳又は嗅球においてワクチン抗原が沈着することはなかった(図3B)。
これらのデータは、本発明のPspA-ナノゲルは、有効に鼻粘膜へ送達され、かつ、安全であることを示している。

0042

2−3.PspA-ナノゲルの鼻腔内投与による粘膜免疫応答及び全身免疫応答
次に、鼻腔内へのPspA-ナノゲルワクチンの投与によって、PspA特異的な免疫応答が誘導されるかどうか検討を行った。最終免疫から1週間後、PspAのみ又はPBSのみを経鼻投与したサルと比較して、PspA-ナノゲルで経鼻免疫を行ったサルにおいては、PspA特異的な血清IgG抗体応答が有意に増加していき、その後、徐々に減少していった(図4A)。血清と同様に、PspA特異的な気管支肺胞洗浄液中のIgG及び鼻洗浄液中のIgAの抗体応答は、PspAのみ又はPBSのみを経鼻投与したサルと比較して、PspA-ナノゲルで経鼻免疫を行ったサルにおいて、より高いレベルにあり、徐々に減少していった(図4B 、図4C)。さらに、気管支肺胞洗浄液中に存在する、PspA-特異的なIgA抗体応答が、免疫した2頭のサル(No.3とNo.5)において、僅かに増加した(図4C)。
これらのサルに対し、最終免疫から8ヶ月後にPspA-ナノゲルのブースター量を投与すると、PspA特異的な血清及び気管支肺胞洗浄液中のIgG及び鼻洗浄液中のIgAの抗体応答は、最初のPspA-ナノゲルによる免疫後に観察されたレベルと同程度にまで回復した(図4のA−C)。さらに、気管支肺胞洗浄液中のPspA特異的な抗体応答は、PspA-ナノゲルで経鼻免疫を行った、No.2, No.5及びNo.6のサルにおいて、初期免疫後に観察された応答以上に回復することが明かとなった(図4C)。
これらの結果は、PspA-ナノゲルは、長期に渡り継続する抗原特異的な全身免疫及び粘膜免疫の両方を誘導し、経鼻ブースター活性を導き出すことが可能な経鼻ワクチンの候補であることを示す。

0043

2−4.PspA-ナノゲルの経鼻投与による肺炎球菌に対する防御免疫の誘導
PspA-ナノゲル経鼻ワクチンが防御免疫を誘導するかどうか検討するために、PspA-ナノゲルを経鼻免疫したサルから調製した血清が、肺炎球菌のマウスに対する感染を防御するか調べた。Balb/cマウスに、肺炎球菌株Xen10とPspA-ナノゲルを経鼻免疫したサルから得た血清を投与すると、少なくとも1週間は、感染に対し完全に防御効果を示した(図5、#2-6)。これに対し、PspA(図5、#7, 8)又はPBS(図5、#9)のみを経鼻投与したサルから取得した血清を投与したマウスは、投与後3日以内に死亡した。
これらの結果は、PspA-ナノゲルワクチンの経鼻投与により、防御免疫が誘導されたことを示している。

0044

2−5.PspA-ナノゲルの経鼻免疫によるTh2及びTh17の応答
上述の通り、PspA-ナノゲルで経鼻免疫したサルは、高度なIgG/IgA応答反応を示すことが明かとなった。そこで、次に、サルの血液から単離したCD4+T細胞によるサイトカインの産生について調べた。No.3とNo.6のサルを除く全てのサルの血液からリンパ球を調製した。PspA-ナノゲルを経鼻投与したNo.2, 4, 5のサルでは、PspAのみ(#7,8)又はPBS(#9)のみを投与したサルと比較すると、CD4+細胞から産生されるIL-4及びIl-17のレベルが増大していることが分かった(図6B、6C)。しかし、CD4+T細胞から産生されるIFN-γのレベルは、PspA-ナノゲル投与群(#2, 4, 5)と、PspAのみ(#7,8)又はPBSのみ(#9)を投与した群との間で差は無かった(図6A)。これらの結果は、Th2型の応答の特徴である、PspA-ナノゲルの経鼻免疫によって誘導されたPspA特異的なIgG抗体応答の結果とよく相関していた。さらに、PspA-ナノゲル経鼻ワクチンが、Th2型免疫応答と共に、Th17応答をも誘導する可能性のあることをも示唆している。

実施例

0045

2−6.PspA-ナノゲルによる経鼻免疫とmiRNAの発現レベルの関係
次に、経鼻免疫を介したmiRNAの発現状況を検討した。
免疫前とブースター後の血清中のmiRNAプロファイルにおいて、免疫現象に関連するmiRNAプロファイルの相違を調べるためにmiRNAマクロアレイを行った。miRNAプロファイルから免疫的に関連性のあるmiRNA、すなわち、miR-155、miR-181a、miR-326、miR-106a、miR-17、miR-18a、miR-20a、miR-92aを選択し、定量RT-PCRにて検討を行った(図6図7及び図8)。miR-155、miR-106a、miR-17、miR-18a、miR-20a、miR-92aは、血清及び粘膜面での追加免疫群及びPspA-ナノゲル(PspA-nanogel)の投与群でそれぞれ増加傾向に有り、T細胞特にTh2免疫応答をサポートするデータであった(図7及び図8)。
特に、Th17細胞分化に関連するmiR-326とT細胞及びB細胞分化に関連するmiR-181aの発現レベルは、免疫前の血清と比較して、PspA-ナノゲルの追加免疫群のサルの血清で有意に増加していた(図9A)。またこれらのmiRNAは、PspAのみ又はPBSのみを投与したコントロール群と比較して、PspA-ナノゲルを投与したサルにおいて粘膜面でも有意に高いレベルを示していた(図9B)。
以上の結果は、これらのmiRNAが、PspA-ナノゲルの経鼻免疫後のTh17サイトカインの応答とTh2免疫応答において、重要な役割を担っていることを示唆するものである。

0046

本発明の肺炎球菌経鼻ワクチンは、肺炎球菌による感染を効果的に予防することができる。従って、本発明は、感染症の予防医学の分野において、利用されることが期待される。

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