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技術 アルミナ焼結体及びその製造方法

出願人 株式会社アテクト
発明者 松田大福島良高曽根葉平谷本啓忠田中祐介香川恵一小高得央
出願日 2014年2月14日 (6年9ヶ月経過) 出願番号 2014-027020
公開日 2015年8月24日 (5年2ヶ月経過) 公開番号 2015-151307
状態 特許登録済
技術分野 酸化物セラミックスの組成1
主要キーワード 水中質量 還元窒 焼結基材 アルミナ単体 体積固有抵抗値測定 密閉炉 半導体パッケージ材料 焼成用容器
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年8月24日)のものです。
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課題

高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、電気絶縁性耐薬品性に優れたアルミナ焼結体を提供する。

解決手段

平均粒子径が10μm以下の粉末成形し、還元窒雰囲気下で、1600〜1825℃範囲の温度で焼結する事により、立方晶窒化アルミニウムを含むアルミナ焼結体とする。

概要

背景

コンピュータ自動車等の自動制御部などにおいては、大電流に伴う発熱量の増大による性能劣化を抑えるために、放熱部品装備されている。近年、放熱性能生産性製造コストパフォーマンスなどを向上することなどを目的として、放熱部品の基材として、セラミックス製の放熱焼結基材が注目されている。

このようなセラミックス製の放熱焼結基材には、電気絶縁性などの基本的な特性に加えて、放熱性の観点から、高い熱伝導率、高い赤外線放射率などが求められている。従来、このような放熱焼結基材の材料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)が使用されている。しかしながら、AlN放熱基板は、耐水性、特にアルカリ水溶液に対する耐薬品性が著しく低いために、基材上への回路実装が技術的に難しいという問題を有する。例えばAlN放熱基板においては、表層数100μm程度をあえて酸化させて高い耐薬品性を持たせる表面処理を施す必要があり、製造コストが増大する。

そこで、高絶縁性高熱伝導性、及び高赤外線放射率を有しつつ、耐薬品性の高い、窒化アルミニウムに代わるセラミック材料が望まれている。セラミック材料は、原料粉末を焼き固める所謂「焼結」プロセスを経て作られるものが多く、代表的な焼結体としては、アルミナ焼結体が挙げられる。アルミナ焼結体は、高絶縁性を有し、耐薬品性にも優れている。

また、アルミナ焼結体は、焼結時に用いる添加剤を選択することにより、アルミナ焼結体単体では発揮しえなかった特性を付与し得ることが知られている。例えば、非特許文献1には、アルミナ(Al2O3)を母材とし、炭化ケイ素焼結添加剤とした場合、従来のアルミナ単体の3倍以上の機械強度を有する焼結体が得られるという報告がなされている(非特許文献1を参照)。

概要

高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、電気絶縁性、耐薬品性に優れたアルミナ焼結体を提供する。平均粒子径が10μm以下の粉末成形し、還元窒雰囲気下で、1600〜1825℃範囲の温度で焼結する事により、立方晶の窒化アルミニウムを含むアルミナ焼結体とする。なし

目的

そこで、高絶縁性、高熱伝導性、及び高赤外線放射率を有しつつ、耐薬品性の高い、窒化アルミニウムに代わるセラミック材料が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

請求項2

熱伝導率が35W/m・K以上である、請求項1に記載のアルミナ焼結体。

請求項3

赤外線放射率が0.60以上である、請求項1または2に記載のアルミナ焼結体。

請求項4

平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末還元窒雰囲気下で焼成する焼結工程を備える、立方晶の窒化アルミニウムを含むアルミナ焼結体の製造方法。

請求項5

前記平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を有機バインダーと共に焼成する、請求項4に記載のアルミナ焼結体の製造方法。

請求項6

前記平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を焼結助剤と共に焼成する、請求項4または5に記載のアルミナ焼結体の製造方法。

請求項7

前記焼結工程における焼成温度が、1600〜1825℃の範囲にある、請求項4〜6のいずれかに記載のアルミナ焼結体の製造方法。

請求項8

前記焼結工程において、前記平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を、窒素及びアンモニアの少なくとも一方の雰囲気下で焼成する、請求項4〜7のいずれかに記載のアルミナ焼結体の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、アルミナ焼結体及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

コンピュータ自動車等の自動制御部などにおいては、大電流に伴う発熱量の増大による性能劣化を抑えるために、放熱部品装備されている。近年、放熱性能生産性製造コストパフォーマンスなどを向上することなどを目的として、放熱部品の基材として、セラミックス製の放熱焼結基材が注目されている。

0003

このようなセラミックス製の放熱焼結基材には、電気絶縁性などの基本的な特性に加えて、放熱性の観点から、高い熱伝導率、高い赤外線放射率などが求められている。従来、このような放熱焼結基材の材料としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)が使用されている。しかしながら、AlN放熱基板は、耐水性、特にアルカリ水溶液に対する耐薬品性が著しく低いために、基材上への回路実装が技術的に難しいという問題を有する。例えばAlN放熱基板においては、表層数100μm程度をあえて酸化させて高い耐薬品性を持たせる表面処理を施す必要があり、製造コストが増大する。

0004

そこで、高絶縁性高熱伝導性、及び高赤外線放射率を有しつつ、耐薬品性の高い、窒化アルミニウムに代わるセラミック材料が望まれている。セラミック材料は、原料粉末を焼き固める所謂「焼結」プロセスを経て作られるものが多く、代表的な焼結体としては、アルミナ焼結体が挙げられる。アルミナ焼結体は、高絶縁性を有し、耐薬品性にも優れている。

0005

また、アルミナ焼結体は、焼結時に用いる添加剤を選択することにより、アルミナ焼結体単体では発揮しえなかった特性を付与し得ることが知られている。例えば、非特許文献1には、アルミナ(Al2O3)を母材とし、炭化ケイ素焼結添加剤とした場合、従来のアルミナ単体の3倍以上の機械強度を有する焼結体が得られるという報告がなされている(非特許文献1を参照)。

先行技術

0006

他、材料 第52号、頁1464〜1470、2003年発行

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、従来知られているアルミナ焼結体は、電気絶縁性及び耐薬品性に優れるものの、熱伝導率及び赤外線放射率が低いという問題がある。熱伝導率及び赤外線放射率が低いアルミナ焼結体を放熱部品の基材に適用することは困難である。

0008

このように、高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、かつ、電気絶縁性、耐薬品性にも優れたセラミック材料が求められているが、これらの特性を全て満足し、放熱部品の基材として好適に使用できるようなものは見出されていないのが現状である。
このような状況下、本発明は、高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、電気絶縁性、耐薬品性に優れたアルミナ焼結体を提供することを主な目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者は、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、立方晶の窒化アルミニウムを含むアルミナ焼結体が、高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、かつ、電気絶縁性、耐薬品性にも優れていることを見出した。さらに、このような優れた特性を備えたアルミナ焼結体は、特定の粒子径を有するアルミナ粉末還元窒雰囲気下で焼結させるという簡便な方法により製造することができることも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。

0010

すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.立方晶の窒化アルミニウムを含むアルミナ焼結体。
項2.熱伝導率が35W/m・K以上である、項1に記載のアルミナ焼結体。
項3.赤外線放射率が0.60以上である、項1または2に記載のアルミナ焼結体。
項4.平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を還元窒素雰囲気下で焼成する焼結工程を備える、立方晶の窒化アルミニウムを含むアルミナ焼結体の製造方法。
項5. 前記平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を有機バインダーと共に焼成する、項4に記載のアルミナ焼結体の製造方法。
項6. 前記平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を焼結助剤と共に焼成する、項4または5に記載のアルミナ焼結体の製造方法。
項7. 前記焼結工程における焼成温度が、1600〜1825℃の範囲にある、項4〜6のいずれかに記載のアルミナ焼結体の製造方法。
項8. 前記焼結工程において、前記平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を、窒素及びアンモニアの少なくとも一方の雰囲気下で焼成する、項4〜7のいずれかに記載のアルミナ焼結体の製造方法。

発明の効果

0011

本発明によれば、高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、電気絶縁性、耐薬品性に優れたアルミナ焼結体を提供することができる。また、本発明のアルミナ焼結体は、絶縁基板、放熱部品の基材、半導体パッケージ材料などとして好適に使用することができる。さらに、本発明によれば、このような優れた特性を有するアルミナ焼結体が簡便に得られる製造方法を提供することができる。

0012

本発明のアルミナ焼結体は、立方晶の窒化アルミニウムを含むことを特徴とする。また、本発明のアルミナ焼結体の製造方法は、平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を還元窒素雰囲気下で焼成する焼結工程を備えることを特徴とする。以下、本発明のアルミナ焼結体及びその製造方法について詳述する。

0013

1.アルミナ焼結体
本発明のアルミナ焼結体は、立方晶の窒化アルミニウム(cAlN)を含む。より具体的には、本発明のアルミナ焼結体は、アルミナ(Al2O3)のマトリックス中に立方晶の窒化アルミニウムが分散している構造を有している。これにより、本発明のアルミナ焼結体は、高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、電気絶縁性、耐薬品性にも優れている。すなわち、熱伝導率の高い立方晶の窒化アルミニウムがアルミナのマトリックス中に分散しているため、従来のアルミナ焼結体に比して、熱伝導率及び赤外線放射率が高められている。なお、アルミナ焼結体は、立方晶の窒化アルミニウムは、通常、閃亜鉛鉱型構造を有している。

0014

本発明のアルミナ焼結体中における立方晶の窒化アルミニウムの含有量としては、特に制限されないが、熱伝導率及び赤外線放射率を高めつつ、優れた電気絶縁性及び耐薬品性を有するアルミナ焼結体とする観点からは、好ましくは0.3〜3.0体積%程度、より好ましくは0.4〜2.5体積%程度、さらに好ましくは0.5〜2.0体積%程度が挙げられる。

0015

また、本発明のアルミナ焼結体には、酸窒化アルミニウム(AlNO)が含まれていてもよい。酸窒化アルミニウムは、アルミナよりも熱伝導率が高いため、酸窒化アルミニウムがアルミナのマトリックス中に含まれていることにより、従来のアルミナ焼結体に比して、熱伝導率及び赤外線放射率を高め得る。本発明のアルミナ焼結体中における酸窒化アルミニウムの含有量としては、特に制限されないが、熱伝導率及び赤外線放射率を高めつつ、優れた電気絶縁性及び耐薬品性を有するアルミナ焼結体とする観点からは、好ましくは0.5〜10.0体積%程度、より好ましくは0.5〜9.0体積%程度、さらに好ましくは0.5〜8.0体積%程度が挙げられる。

0016

なお、本発明のアルミナ焼結体において、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムなどのアルミナ以外の成分により形成される相の含有量は、株式会社リガク製のX線回折装置「SmartLab」を使用して、粉末X線回折により測定した値である。アルミナ以外の成分により形成された相の含有量(体積百分率)は、アルミナの(113)回折ピーク強度に対する、各相最強ピークとの強度比率から算出した値である。

0017

また、後述の通り、本発明のアルミナ焼結体の製造方法においては、焼結に供する原料として、アルミナ粉末に加えて、有機バインダー、焼結助剤などを配合してよい。このため、本発明のアルミナ焼結体には、アルミナ、窒化アルミニウム、及び酸窒化アルミニウムに加えて、有機バインダー、焼結助剤などに由来する成分が含まれていてもよい。

0018

本発明のアルミナ焼結体における有機バインダーに由来する成分としては、例えば炭素が挙げられる。本発明のアルミナ焼結体中における炭素の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは150ppm以下、より好ましくは100ppm未満が挙げられる。なお、アルミナ焼結体中における炭素の含有量は、株式会社堀場製作所製の固体中炭素分析装置EMIA−110」を使用して、JIS−R1675に準じて測定した値である。

0019

本発明のアルミナ焼結体における焼結助剤に由来する成分としては、焼結助剤の種類によって異なり、焼結によっても気化しない無機成分がアルミナ焼結体中に含まれる。焼結助剤として、例えば酸化イットリウムを用いた場合には、YAG(Y3Al5O12)などが含まれていてもよい。本発明のアルミナ焼結体中における焼結助剤に由来する成分の含有量としては、焼結助剤の種類などによっても異なるが、通常0.5〜10.0体積%程度、好ましくは0.5〜8.0体積%程度、より好ましくは0.5〜7.5体積%程度が挙げられる。なお、アルミナ焼結体中における焼結助剤に由来する成分の含有量の測定方法は、アルミナ以外の成分により形成される相の含有量の測定方法と同様である。

0020

本発明のアルミナ焼結体の熱伝導率としては、好ましくは35W/m・K以上、より好ましくは41W/m・K以上が挙げられる。このように、本発明のアルミナ焼結体は、アルミナ焼結体としては非常に高い熱伝導率を有する。なお、本発明のアルミナ焼結体の熱伝導率は、通常、100W/m・K以下である。本発明において、アルミナ焼結体の熱伝導率は、アルバック理工株式会社製の「TC−7000」を使用して、レーザーフラッシュ法により室温(25℃)で測定した値である。

0021

また、本発明のアルミナ焼結体の赤外線放射率としては、好ましくは0.60以上が挙げられる。なお、本発明のアルミナ焼結体の赤外線放射率は、通常、0.95以下である。本発明において、アルミナ焼結体の赤外線放射率は、パーキンエルマー製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT−IR System2000」を使用して、JIS−R16932に準じて室温(25℃)で測定した値である。

0022

本発明のアルミナ焼結体の体積固体抵抗率は、通常、1014Ωcmよりも大きい値を有する。体積固体抵抗率が1014Ωcmよりも大きければ、電気絶縁性が十分に高いため、コンピュータ、自動車等の自動制御部などの放熱部材として好適に使用することができる。アルミナ焼結体の体積固体抵抗率は、三菱化学株式会社製の「ハイレスタ」を使用して、JIS−K6911に準じて室温(25℃)で測定した値である。

0023

本発明のアルミナ焼結体の曲げ強度としては、好ましくは300MPa以上が挙げられる。曲げ強度が300MPa以上であれば、十分な強度を有するため、コンピュータ、自動車等の自動制御部などの放熱部材として好適に使用することができる。なお、本発明のアルミナ焼結体の曲げ強度は、通常、440MPa以下である。アルミナ焼結体の曲げ強度は、株式会社島津製作所製の「オートグラフAG−20kNG」を使用して、JIS−R1601に準じて室温(25℃)で3点曲げ強度を測定した値である。

0024

本発明のアルミナ焼結体は、酸及びアルカリに対する優れた耐薬品性を備えている。例えば、本発明のアルミナ焼結体は、例えば、アルミナ焼結体の試験片表面積5.3cm2)を100℃で6規定のNaOH水溶液中に16時間浸漬した時の質量減少量が、0.1質量%未満である。また、例えば、アルミナ焼結体の試験片(表面積5.3cm2)を100℃で1規定のH2SO4水溶液中に16時間浸漬した時の質量減少量が、0.01質量%未満である。本発明のアルミナ焼結体は、酸及びアルカリに対する優れた耐薬品性を備えているため、窒化アルミニウムに比して回路実装が容易である。

0025

本発明のアルミナ焼結体の密度としては、特に制限されないが、通常3.80〜4.00g/cm2程度、好ましくは3.85〜3.98g/cm2程度が挙げられる。

0026

本発明のアルミナ焼結体は、高熱伝導率及び高赤外線放射率を有し、電気絶縁性、耐薬品性に優れているため、絶縁基板、放熱部品の基材、半導体パッケージ材料などとして好適に使用することができる。

0027

2.アルミナ焼結体の製造方法
本発明のアルミナ焼結体の製造方法としては、特に制限されないが、例えば、平均粒子径が10μm以下のアルミナ粉末を還元窒素雰囲気下で焼成する焼結工程を備える製造方法により、簡便に製造することができる。

0028

本発明のアルミナ焼結体の原料として用いるアルミナ粉末の平均粒子径は、10μm以下であることが必要である。このような微細なアルミナ粉末を後述する還元窒素雰囲気下で焼結することにより、アルミナ焼結体の熱伝導率及び赤外線放射率を高めつつ、優れた電気絶縁性及び耐薬品性を備えさせることができる。アルミナ焼結体のこれらの特性をより向上させる観点からは、アルミナ粉末の平均粒子径としては、好ましくは0.6〜5μm程度が挙げられる。なお、アルミナ原料粉末の粒子径が10μmより大きい場合、焼結後の結晶粒径が大きくなり、焼結体の密度及び熱伝導率が低下しやすくなる。なお、アルミナ粉末の粒子径が0.5μmより小さいものは、製造上困難であるため、アルミナ粉末の平均粒子径は、0.5μm以上であることが好ましい。

0029

本発明において原料として用いられるアルミナ粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(シスメックス社製のFPIA−3000)を用いて測定した体積基準でのD50の粒子径である。

0030

本発明において、上記のアルミナ粉末の焼結は、還元窒素雰囲気下で行うことが必要である。ここで、還元窒素雰囲気とは、酸素ガス(O2)などが含まれる大気雰囲気とは異なり、窒素成分を含む気体からなる雰囲気を意味する。還元窒素雰囲気を構成する気体の具体例としては、窒素(N2)、アンモニア(NH3)などが挙げられる。本発明においては、上記のアルミナ粉末を還元窒素雰囲気下で焼結させることにより、アルミナ焼結体中に立方晶の窒化アルミニウムを効率的に生成させることができる。還元窒素雰囲気を構成する気体は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、アルミナ粉末の還元窒化反応阻害しないことを限度として、還元窒素雰囲気下においては、窒素成分を含む気体以外の気体が含まれていてもよい。

0031

本発明においては、上記のアルミナ粉末と共に、焼結助剤を焼成することが好ましい。これにより、本発明のアルミナ焼結体の焼結を促進することができる。焼結助剤としては、特に制限されず、アルミナ焼結体に使用される公知の焼結助剤を使用することができる。好ましい焼結助剤としては、例えば、ホウ素化合物アルカリ土類金属化合物希土類化合物などが挙げられる。焼結助剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。

0032

ホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸酸化ホウ素無水ホウ酸)、ホウ酸アルミニム等の酸化物などが挙げられる。これらの中でも、アルミナ焼結体の熱伝導率をより向上させる観点からは、ホウ酸、酸化ホウ素(無水ホウ酸)がより好ましい。

0033

アルカリ土類金属化合物の具体例としては、マグネシウムカルシウムストロンチウムバリウム等の金属の酸化物、これらの金属の炭酸塩、これらの金属のステアリン酸塩などが挙げられる。これらの中でも、アルミナ焼結体の熱伝導率をより向上させる観点からは、酸化カルシウムアルミン酸カルシウム炭酸カルシウム等のカルシウムの酸化物や炭酸塩、またはステアリン酸カルシウムなどがより好ましい。

0034

希土類化合物の具体例としては、イットリウムランタン等の金属の酸化物、これらの金属の炭酸塩などが挙げられる。これらの中でも、アルミナ焼結体の熱伝導率をより向上させる観点からは、酸化イットリウムなどがより好ましい。

0035

これらの焼結助剤の中でも、ホウ素化合物及びアルカリ土類金属化合物が好ましく、酸化ホウ素及びステアリン酸カルシウムが特に好ましい。

0036

焼結助剤の粒子径としては、特に制限されないが、一般に小さいほど活性が高くなるため、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下が挙げられる。なお、酸化ホウ素、ステアリン酸カルシウムなどのように、水またはアルコールに溶解する焼結助剤は、水またはアルコールに溶解させた状態でアルミナ原料粉末に添加し、造粒等の手段を用いて混合してもよい。

0037

焼結助剤の添加量としては、特に制限されないが、アルミナ粉末100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部程度、より好ましくは0.1〜5質量部程度が挙げられる。焼結助剤の添加量をこのような範囲に調整することにより、得られるアルミナ焼結体の密度及び熱伝導率をより高めることができる。なお、焼結助剤の添加量を5質量以上にすると、アルミナ粉末の還元窒化反応により生成する立方晶の窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムなどの高熱伝導率成分が、アルミナ焼結体母材の緻密化を妨げやすくなる。これにより、アルミナ焼結体の密度が低下し、熱伝導率も低下しやすくなる。

0038

本発明において、上記のアルミナ粉末と焼結助剤との混合粉末は、公知の混合方法によって得られる。混合方法としては、例えば、ボールミル等の混合機によって、乾式または湿式により混合する方法が挙げられる。なお、湿式で混合する場合は、水、アルコール類等の分散媒を使用するが、分散性の点でアルコール類を用いることが望ましい。

0039

また、本発明において、上記のアルミナ粉末と共に、有機バインダーを焼成することが好ましい。これにより、本発明のアルミナ焼結体の保形性を高めることができる。

0040

有機バインダーとしては、特に制限されず、公知のものが使用できる。有機バインダーの具体例としては、ポリメタクリルブチル等のアクリル樹脂ポリスチレンポリプロピレンポリオレフィン系樹脂ポリビニルブチラールブチラール樹脂エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。有機バインダーは、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。

0041

有機バインダーを使用する場合、有機バインダーの添加量としては、特に制限されないが、アルミナ粉末100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部程度、より好ましくは1〜20質量部程度が挙げられる。なお、有機バインダーの添加量が0.1質量部より少ない場合、所望の形状を有するアルミナ焼結体が得られ難くなる。また、有機バインダーの添加量が30質量部を超える場合は、所望の形状に成形されたアルミナ焼結体が得られるが、後述する脱脂過程において過剰収縮が起こりやすく、変形を伴う場合がある。

0042

また、本発明において、例えば粉末射出成形といった手法でアルミナ焼結体を成形する場合には、有機バインダーに加えて、潤滑剤をさらに用いてもよい。潤滑剤の具体例としては、パラフィンワックスモンタン酸エステルワックスカルナバワックス油脂類ステアリン酸アミド脂肪酸アミドなどが挙げられる。

0043

有機バインダーを用いる場合、有機バインダーの混合方法としては特に制限されない。例えば、アルミナ粉末と焼結助剤との混合粉末の製造時に、有機バインダーを添加して混合してもよい。また、ラボプラストミルなどの公知の粉末混練機を用いて、アルミナ粉末、焼結助剤、及び有機バインダーを同時に添加して混練してもよい。

0044

本発明において、アルミナ粉末と共に、焼結助剤、有機バインダーなどを焼成する場合には、アルミナ粉末と共にこれらを含む組成物を焼成することにより、アルミナ焼結体とすることができる。さらに、アルミナ粉末を含むこのような組成物を成形してから焼成することにより、所望の形状に成形されたアルミナ焼結体が得られる。アルミナ粉末を含む組成物の成形法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、粉末射出成形、プレス成形ドクターブレード法によるシート成形といった、公知の粉末成形法を用いることができる。

0045

焼結工程における焼成温度(焼成最高温度)としては、特に制限されないが、アルミナ焼結体の熱伝導率及び赤外線放射率を高めつつ、優れた電気絶縁性及び耐薬品性を備えさせる観点からは、好ましくは1600〜1825℃程度、より好ましくは1700〜1825℃程度が挙げられる。なお、焼成温度が1600℃より低い場合、アルミナの還元窒化反応が進みにくく、長時間焼成しても目的の高熱伝導率を有するアルミナ焼結体が得られない場合がある。また、焼成温度が1825℃よりも高い場合、熱伝導率の低いスピネル構造を有するアルミナ(γ—Al2O3)が過剰に生成してしまい、アルミナ焼結体の熱伝導率の低下しやすくなる。

0046

アルミナ焼結体の熱伝導率及び赤外線放射率を高めつつ、優れた電気絶縁性及び耐薬品性を備えさせる観点から、焼結工程における焼結時間としては、好ましくは0.5〜10時間程度、より好ましくは1〜5時間程度が挙げられる。また、同様の観点から、焼結時の圧力としては、好ましくは0.1〜2.0気圧程度が挙げられる。焼成時間が0.5時間より短い場合は、焼結が十分に進行せず、高い熱伝導性を有するアルミナ焼結体を得ることは困難である。一方、焼成時間が10時間を超えた場合、アルミナ粉末の還元窒化反応による高熱伝導性成分の生成、アルミナ焼結体の熱伝導性の向上は頭打ちとなる。

0047

本発明においては、上記の焼結工程の前に、焼結工程よりも低温で、アルミナ粉末と有機バインダーを含む組成物を焼成する脱脂工程を行うことが好ましい。脱脂工程は、上記の還元窒素雰囲気下で行う。この脱脂工程により、アルミナ粉末と共に添加された有機バインダーが炭化して焼結体中に炭素が生成し、この炭素が、焼成工程におけるアルミナの還元窒化反応における触媒となり、立方晶の窒化アルミニウムをアルミナ母相に生成させる反応を促進すると考えられる。

0048

脱脂温度最高温度)は、有機バインダーの種類によっても異なるが、立方晶の窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムなどの生成を促進する観点からは、250〜900℃程度、より好ましくは300〜800℃程度が挙げられる。なお、脱脂温度が250℃より低い場合、有機バインダー成分がアルミナ焼結体中に不純物として残存しやすくなる。また、脱脂温度が900℃よりも高い場合、脱脂工程において過剰収縮が起こり、アルミナ焼結体が変形しやすくなる。

0049

脱脂工程における脱脂時間としては、有機バインダーの脱脂を十分に進行させることができれば特に制限されないが、好ましくは5〜70時間程度、より好ましくは15〜50時間程度が挙げられる。

0050

本発明において、例えばアルミナ粉末と共に有機バインダーを焼成した場合、窒素雰囲気下の炭素によるアルミナ粉末の窒化還元反応の促進は、次の化学反応式(1)のように進行すると考えられる。
Al2O3+3C+N2→2AlN+3CO (1)

0051

このような反応により、立方晶のcAlNが、Al2O3母相の粒界または粒内に効率的に生成されると考えられる。すなわち、有機バインダーから生じる炭素を触媒とした母相アルミナ表面と窒素との還元窒化反応によって、高熱伝導性を有するアルミナ焼結体が合成されると考えられる。このようなアルミナ焼結体では、非常に微細な立方晶の窒化アルミニウム粒子が、アルミナのマトリックスに分散した微細な組織構造を有しており、これによって、アルミナ焼結体の熱伝導率が高められていると考えられる。

0052

また、本発明においては、焼結助剤を用いることにより、アルミナ粉末の還元窒化反応が促進されていると考えられる。焼結助剤として、例えば、酸化カルシウムを用いた場合、窒素雰囲気下で焼結させることにより、次の化学反応式(2)〜(4)に示されるような逐次反応を経て、途中生成するCaO−Al2O3中間生成物が、炭素の存在下に窒素と反応し、高熱伝導率成分となる立方晶の窒化アルミニウムをアルミナ母相に生成させる反応が促進されていると考えられる。
CaO・2Al2O3+3C+N2→CaO・Al2O3+2AlN+3CO (2)
12(CaO・Al2O3)+15C+5N2→12CaO・7Al2O3+10AlN+15CO (3)
12CaO・7Al2O3+21C+7N2→14AlN+12CaO+21CO (4)

0053

さらに、上記化学反応式(4)に示されるように、アルミナ粉末の焼成における還元窒化反応の進行に伴って、CaOのような添加剤由来の化合物熱分解等による除去も同時に促進され、結果、高熱伝導性を有するAlNがアルミナ母相に一様に存在するアルミナ焼結体が得られると考えられる。

0054

本発明における上記の脱脂工程及び焼結工程は、例えば、密閉炉内を窒素、アンモニアガスなどで置換し、該密閉炉内に窒化アルミニウムや窒化ホウ素等のセラミックス製の材料よりなる焼成用容器セッター)を配置し、該セッター内でアルミナ粉末(アルミナ粉末を含む組成物)を還元窒素雰囲気下で焼成することにより行うことができる。

0055

以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。

0056

実施例及び比較例において、アルミナ焼結体の各種物性などは、以下のようにして測定した。
<密度>
水中質量法により、JIS−R1634に準じて室温(25℃)で測定を行った。

0057

<熱伝導率>
アルバック理工株式会社製の「TC−7000」を使用して、レーザーフラッシュ法により室温(25℃)で測定した。

0058

<赤外線放射率>
パーキンエルマー製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT−IR System2000」を使用して、JIS−R16932に準じて室温(25℃)で測定を行った。

0059

耐薬品性試験
それぞれ、アルミナ焼結体の試験片(表面積5.3cm2)を100℃で6規定のNaOH水溶液(アルカリ)、100℃で1規定のH2SO4水溶液(酸)中に16時間浸漬したときの質量減少量を測定することにより行った。

0060

体積固有抵抗値測定による電気絶縁性の評価>
三菱化学株式会社製の「ハイレスタ」を使用して、JIS−K6911に準じて室温(25℃)で測定を行った。

0061

<アルミナ以外の成分の結晶相の同定>
株式会社リガク製のX線回折装置「SmartLab」を使用して、粉末X線回折により行った。アルミナ以外の成分の相の含有量(体積百分率)は、アルミナの(113)回折ピーク強度に対する、各相の最強ピークとの強度比率から算出した。

0062

<曲げ強度>
株式会社島津製作所製の「オートグラフAG−20kNG」を使用して、JIS−R1601に準じて室温(25℃)で3点曲げ強度測定を行った。

0063

炭素含有量>
株式会社堀場製作所製の固体中炭素分析装置「EMIA−110」を使用して、JIS−R1675に準じて測定を行った。

0064

<アルミナ粉末の平均粒子径>
原料として用いたアルミナ粉末の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(シスメックス社製のFPIA−3000)を用いて測定した体積基準でのD50の粒子径を意味する。

0065

<実施例1〜12>
アルミナ粉末(平均粒子径0.9μm)100質量部に対して、ポリメタクリル酸ブチルを7.0質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体を5.0質量部、パラフィンワックス6.0質量部を有機バインダーとして添加し、容器内140℃でラボプラストミルにより加熱混練し、ペレット化した。なお、実施例6〜12においては、表1に記載の添加剤をアルミナ100質量部に対して、それぞれ1質量部添加した。次に、射出成形機を用いて、ペレットを厚さ2.2mm、直径15mmの円形に成形した。得られた成形体窒化ホウ素製容器に入れ、密閉カーボン炉内で常圧の窒素雰囲気中、最高800℃まで20時間かけて加熱脱脂し、次いで最高温度が表1の温度となるようにして3時間保持して焼結させた。得られたアルミナ焼結体の物性を表1に示す。

0066

<比較例1>
成形体の焼結を常圧の大気中で行ったこと以外は、実施例3と同様にして、アルミナ焼結体を得た。得られたアルミナ焼結体の物性を表1に示す。

0067

0068

表1において、AlNOは、酸窒化アルミニウムを示す。また、YAGは、Y3Al5O12を示す。cAlNは、立方晶(閃亜鉛鉱構造)の窒化アルミニウムを示す。γAl2O3は、スピネル構造のアルミナを示す。

実施例

0069

表1に示されるように、窒素雰囲気下で焼結を行った実施例1〜12のアルミナ焼結体では、41〜85W/m・Kという高い熱伝導率を有していた。実施例1〜12のアルミナ焼結体では、いずれも、アルミナ焼結体の高熱伝導率に寄与すると考えられる立方晶(閃亜鉛構造)の窒化アルミニウム(cAlN)相が観察された。また、実施例1〜12のアルミナ焼結体では、赤外線放射率も0.61〜0.82と比較的高い値を示した。さらに、実施例1〜12のアルミナ焼結体では、体積固有抵抗率及び曲げ強度も高く、耐薬品性にも優れることが確認された。一方、大気中で焼結を行った比較例1のアルミナ焼結体では、熱伝導率が28W/m・Kと低い値を示し、赤外線放射率も焼結再考温度を同じにした実施例3と比べて、かなり劣っていた。比較例1のアルミナ焼結体では、立方晶(閃亜鉛構造)の窒化アルミニウム(cAlN)相は観察されなかった。

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