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技術 偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法及び偽造防止印刷物の総合性能評価システム

出願人 独立行政法人国立印刷局
発明者 山越学田中純一古家眞平林昌志
出願日 2014年1月17日 (7年11ヶ月経過) 出願番号 2014-007044
公開日 2015年7月27日 (6年5ヶ月経過) 公開番号 2015-135617
状態 未査定
技術分野 クレジットカード等 印刷方法 特定用途計算機
主要キーワード 部分評価 水準値 数値ファイル 性能評価システム 補正演算後 各評価項目毎 合計演算 性能評価値
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年7月27日)のものです。
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図面 (17)

課題

偽造防止印刷物に必要とされる複数の要求事項評価項目として偽造防止印刷物の総合評価を行うにあたり、各評価項目の定量的な評価結果に対して、正確性、合理性及び信頼性を有した偽造防止印刷物の総合評価システムとその方法を提供することである。

解決手段

制御部を中核とし、大別して、評価ツリー構造設定部、データ入力部及び評価出力部から構成され、制御部は、重み係数演算部、整合度演算判定部、性能重み係数セット演算部、部分性能評価素値演算部、部分性能評価値演算部、及び総合性能評価値演算部から構成される評価処理部を有し、評価処理部において、評価ツリー構造設定部で設定されたツリー構造の評価項目と、データ入力部で入力されたデータを用いて、偽造防止印刷物の評価を行う。

概要

背景

金融取引人物認証の場面において、銀行券旅券などの偽造防止印刷物役割は極めて重要である。偽造紙幣国家経済信用失墜を招き、偽造旅券は国際テロリストや人身売買などの重犯罪者が暗躍する契機となってしまう。このようなことから、これら偽造防止印刷物の安全性や使い勝手の良さを十分に評価し、その要求事項をしっかりと担保することが求められている。

偽造防止印刷物における要求事項は、書籍チラシ包装紙などの一般の商業印刷物における要求事項とは大きく異なり、強靭な耐偽造性、耐複製性、耐改ざん性をはじめ、人による真偽判別容易性、取り扱いやすさ、ユニバーサルデザイン性耐久性物理的、化学的なもの)、機械処理適性製造コストなど、多岐に及んでいる。

これらの評価項目のうち、物理的・化学的耐久性要件などの評価については、定量的な評価基準が多数存在し、形式化された具体的な評価が実践されている。その一方で、耐偽造性などの安全性要件、審美性、ユニバーサルデザイン性などの社会的受容性要件の充足度評価方法は、客観的、定量的な評価が困難である。そのため、それら要件の評価は、主として属人的な暗黙知、すなわち、主観評価に基づいて行われている。このような背景から、偽造防止印刷物に求められる要求事項の総合性能を客観的に評価することが求められている。また、製品の最終仕様を決定する際の判断材料のために、安全性、耐久性、コストなどの全ての要求事項の充足度を全体的な見地から考慮し、その製品仕様の総合性能を評価することが求められている。

偽造防止印刷物の総合性能の評価とは異なるが、ある要求事項を総合的に評価する方法として、オフィスビル所有者によるリニューアルの内容の検討やエンドユーザーが自分のニーズに合った集合住宅を選択する場面で、それらの意思決定支援するための施設性能評価システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、階層分析法を用いており、この方法を用いることによって、偽造防止印刷物の大まかな総合評価一定程度可能になると考えられる。階層分析法とは、階層化意思決定法、又はAHP(Analytic Hierarchy Process)とも呼ばれ、目的又は目標、それを実現するための評価基準、評価の比較対象となる代替案階層構造に整理し、各階層の要素同士の一対比較複数要素の中から2つの要素を取り出し、一対一の比較を行うこと)による相対的な重要度算術的導出し、その重要度の大小から、代替案の総合的な評価または選択を行う手法である(例えば、非特許文献1)。特許文献1の技術は、この階層分析法を用いる中で、手間やコストをかけることなく、施設の性能を大まかに、簡易、かつ、合理的に評価し、結果を分かりやすく表示することができることが特徴であり、専門知識を持たない利用者でも利用が可能である。また、施設性能における異なる価値観念を評価に反映できることも特徴となっている。

また、特許文献1の技術と同様に階層分析法を用い、目標に対する代替案の評価を行う装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。階層分析法は、代替案が追加又は削除されたときに再度一対比較を行い評価する必要があるが、特許文献2の技術では、代替案が追加又は削除された場合に再度一対比較することなく評価することを目的とし、評価項目に対する定量値を一定の変換式によって変換し、重み係数乗算の処理を行うことで代替案の評価を行っている。これによって、代替案の変更があった場合にも再度一対比較することなく、代替案の評価が可能となっている。

ここで、特許文献1及び特許文献2で用いられている階層分析法を用いた偽造防止印刷物の総合評価方法の一例について以下に説明する。始めに、図1(a)に示すように、最上位に「総合性能が優れた偽造防止印刷物」が配置された評価のツリー構造を設定し、次に、総合性能が優れた偽造防止印刷物を実現するための評価項目として、下位の階層には、「安全性」、「利便性」、「社会的受容性」、及び「コスト」を設定する(例えば、非特許文献2参照)。なお、図1(a)に示す階層構造における評価項目は、非特許文献2の偽造防止技術のなかの人工物メトリクスセキュリティ研究開発動向と課題に基づいて設定した一例であるが、必要に応じて、偽造防止印刷物の評価項目を追加又は削除して階層構造を設定すれば良い。また、ここでは、図1(a)に示す階層構造について説明するが、階層分析法の階層構造は、図1(a)に示す2層構造に限定されず、図1(b)に示すように、3層構造の設定としても良いし、更に下位の階層を設けても良い。

次に、総合評価を行う際の各評価項目重要性、すなわち、重み係数を求めるための一対比較を行う。これを実施するためには、表1に示す重要度の度合い(一対比較値)を用いる。

(表1)

表1に示す一対比較値を用いて、下位の評価項目である安全性、利便性、社会的受容性、コストにおいて一対比較を行った結果を表2に示す。表2に示される一対比較値は、安全性は利便性と比較して「やや重要(3)」、安全性は社会的受容性と比較して「重要(5)」、安全性はコストと比較して「かなり重要(7)」というように、横の欄(行方向)に一対比較値が入力される。一方、安全性の縦の欄(列方向)には、各一対比較値の逆数である、1/3、1/5、1/7が入力され、同一の評価項目同士の欄には、「同程度に重要(1)」が入力される。ここでは、表1に示す一対比較値を用いる例で説明するが、例えば「極めて重要(9)」と「かなり重要(7)」の中間の評価の場合は、中間の値である「8」を用いることもできる。また、複数の評価者が一対比較を行う場合は、評価者による一対比較値のばらつきを緩和するために、各個人の一対比較値の幾何平均値を用いることで、評価のばらつきを緩和することができる。なお、一対比較により比較を行う評価項目の数は七つ以内が望ましい。これ以上の数になると、全体的な尺度で各評価項目を評価する際の整合性を担保することが困難になるからである。

(表2)

次に、入力された一対比較表に基づき、重み係数の演算を行う。表2に示された一対比較表を上からみると安全性の行が1行目、利便性が2行目、同様に左からみると安全性の列が1列目、利便性が2列目というように、表2に示す一対比較表は、4行4列の正方行列となる。このように、m個(mは2以上の自然数であり、表2の場合のmは4)の評価項目における一対比較表は、m行m列の正方行列Aとして表すことができる。ここで、評価項目jと比較した評価項目iの重要度を、一対比較値aijと表す。同様に、評価項目iと比較した評価項目jの重要度を、一対比較値ajiと表す。このとき、aij=1/ajiとなる。これより、m個の評価項目におけるm行m列の一対比較行列Aは(数1)となる。なお、一対比較行列Aにおける対角要素である、a11・・・aii・・・ammの値は全て1である。

(数1)


・・・(1)

次に、一対比較行列Aをもとに、m個の評価項目における各評価項目の重み係数wi(i=1、・・・、m)を決定する。ここでは、次の(数2)示す主固有ベクトル法を用いて各評価項目の重み係数を算出する例について説明する。ここでは、一対比較行列Aに対し、(数2)の式を満たすL及びq(q1、q2、・・・、qm)を算出する。なお、Lは行列Aの固有値、qを行列Aの固有ベクトルという。

(数2)
Aq=Lq・・・(2)

m行m列の正方行列Aに対し、(数2)の式を満たす固有値Lは、最大でm個存在するが、そのうちの最大の値をLmaxとする(ただし、Lmaxは0ではない)。主固有ベクトル法において、最大固有値Lmaxを(数2)の式に適用する場合、行列Aの各要素は、(数3)に示すLmaxに対する固有ベクトルの要素の比と見なすことができる。

(数3)

これより、一対比較行列Aの最大固有値Lmaxに対する固有ベクトルqの要素を、各評価項目の重み係数wi(i=1、・・・、m)とすることができる。よって、表2に示された一対比較行列Aに対応した重みベクトルmの算出式は(数4)に示す式となる。

(数4)

・・・(4)

(数4)の演算の結果、「総合性能が優れた偽造防止印刷物」に対する、「安全性」の重み(W1)は0.578であり、「利便性」の重み(W2)は0.295であり、「社会的受容性」の重み(W3)は0.077であり、「コスト」の重み(W4)は、0.05となる。

ただし、w1+w2+w3+w4=1、wi≧0となるように正規化を行った。なお、重み係数wiの算出方法には、一対比較行列Aの行方向に幾何平均をとり、その幾何平均の総和で各行の幾何平均を除することで各評価項目の重み係数wiを算出する方法や、一対比較行列Aの行方向に逆数同士の算術平均を求め、その調和平均の総和で各行の調和平均を求め、その調和平均の総和で各行の調和平均を除することで重み係数wiを算出する方法などが知られており(例えば、非特許文献3参照)、階層分析法における重み係数wiの算出方法は、本例で説明する主固有ベクトル法に限定されるものではない。

一対比較行列により求められた重み係数wiは、あくまでも2つの評価項目の重要性の比較である。評価を行う人間には、間違いがつきものであり、重要性の序列逆転してしまうなどの不整合性が発生することが考えられる。そのため、整合度(C.I.:Consistency Index)と呼ばれる、(数5)に示す式で表される数値によって、一対比較行列Aの整合性の判定を行う。

(数5)

ここで、Lmaxは一対比較行列Aの最大固有値、mは一対比較を行った要素の数(この場合、評価項目の項目数)である。この閾値を0.15とし、この閾値を上回った場合、一対比較値を再検討する。なお、表2に示された一対比較行列Aの整合度は、上式よりC.I.=0.111と算出され、十分な整合性を有しているものと判定される。

次に、複数の偽造防止印刷物を対象に、各評価項目における評価値を入力する。この評価には、表3に示されるような評価の度合い(一対比較値)を用いる。

(表3)

評価項目の重要性の一対比較で説明した手順と同様に、各評価項目において、偽造防止印刷物Xを偽造防止印刷物Yと比較した場合の一対比較値を偽造防止印刷物Xの横の欄(行方向)に入力する。本例において、具体的な偽造防止印刷物Xと偽造防止印刷物Yの仕様や構成についての説明は省略するが、表4に示す一対比較値は、一対比較評価の試行の値を示したものである。一方、偽造防止印刷物Xの縦の欄(列方向)には、一対比較値の逆数が入力される。本実施例において、偽造防止印刷物X、偽造防止印刷物Y、偽造防止印刷物Zの3つの偽造防止印刷物を、評価項目の一つである「安全性」の観点から、各偽造防止印刷物間で一対比較を試行した結果の例が表4である。なお、前述のように、一対比較によって評価を行う要素、すなわち、評価対象となる偽造防止印刷物の数は七つ以内が望ましい。

(表4)

次に、表4に記載の安全性に関する複数の偽造防止印刷物の一対比較値から、各偽造防止印刷物の部分評価素値の算出を行う。なお、部分評価素値とは、各偽造防止印刷物の任意の評価項目における評価の素点であり、ここでは、「安全性」に関する偽造防止印刷物X、Y、Xの部分評価素値について説明する。評価対象となる偽造防止印刷物の数がn種類であるとき、各偽造防止印刷物の「安全性」に関する部分評価値v1,k(k=1、・・・、n)は、前述の重み係数の算出で示した固有ベクトルの算出方法と同様に、各偽造防止印刷物について安全性の観点から作成されたn行n列の一対比較行列Bの、最大固有値Kmaxに対する固有ベクトルの各要素に相当する。表4に示された一対比較行列Bに対応した部分評価素値v1,1、v1,2、v1,3は(数6)の式により算出される。

(数6)

(数6)の演算の結果、「安全性」に対する、「偽造防止印刷物X」の部分評価素値(V1,1)は0.487であり、「偽造防止印刷物Y」の部分評価素値(V1,2)は0.078であり、部分評価素値(V1,3)は0.435となる。

評価項目である「安全性」に関する各偽造防止印刷物の部分評価素値v1,k(k=1、・・・、n)に対し、整合度の評価を行う。本実施例における部分評価素値v1,k(k=1、・・・、n)の整合度は、0.006を示し、十分な整合性を有すると判定された。

「安全性」に関する部分評価素値の演算と同様にして、「利便性」に関する部分評価素値v2,k(k=1、・・・、n)を算出する際に行った、一対比較値の例と、一対比較値によって算出した部分評価素値及び整合度の結果を表5に示す。

(表5)

また、「社会的受容性」に関する部分評価素値v3,k(k=1、・・・、n)を算出する際に行った、一対比較値の例と、一対比較値によって算出した部分評価素値及び整合度の結果を表6に示す。

(表6)

また、「コスト」に関する部分評価素値v4,k(k=1、・・・、n)を算出する際に行った、一対比較値の例と、一対比較値によって算出した部分評価素値及び整合度の結果を表7に示す。

(表7)

次に、各偽造防止印刷物間の一対比較によって求められた4つの各評価項目に関する各部分評価素値v1,k、v2,k、v3,k、v4,k(k=1、・・・、n)から、各偽造防止印刷物における総合評価値tk(k=1、・・・、n)の算出を(数7)の式に基づいて行う。

(数7)


・・・(7)

ここで、w1v1,k、w2v2,k、w3v3,k、w4v4,k(k=1、・・・、n)の各々は、各偽造防止印刷物における評価項目である「安全性」、「利便性」、「社会的受容性」、「コスト」の部分評価素値と重み係数が乗算された値を示しており、これを部分評価値とする。

最後に、本実施例における各偽造防止印刷物の各評価項目の部分評価値及び総合評価値の算出結果をもとに作成された評価一覧表を表8に示す。同じく表8に示す評価一覧表をもとに作成された評価プロファイルを図2に示す。ここで、図2(a)は各印刷物の総合評価値を棒グラフで示したもの、また、図2(b)は各評価項目の部分評価値をレーダチャートで示したものである。

(表8)

以上、本発明者による階層分析法を用いた偽造防止印刷物の総合評価、及び評価結果の可視化の事例について説明した。

概要

偽造防止印刷物に必要とされる複数の要求事項を評価項目として偽造防止印刷物の総合評価を行うにあたり、各評価項目の定量的な評価結果に対して、正確性、合理性及び信頼性を有した偽造防止印刷物の総合評価システムとその方法を提供することである。 制御部を中核とし、大別して、評価ツリー構造設定部、データ入力部及び評価出力部から構成され、制御部は、重み係数演算部、整合度演算判定部、性能重み係数セット演算部、部分性能評価素値演算部、部分性能評価値演算部、及び総合性能評価値演算部から構成される評価処理部を有し、評価処理部において、評価ツリー構造設定部で設定されたツリー構造の評価項目と、データ入力部で入力されたデータを用いて、偽造防止印刷物の評価を行う。

目的

本発明の課題を総括すると、偽造防止印刷物に必要とされる複数の要求事項を評価項目として偽造防止印刷物の総合評価を行うにあたり、各評価項目の定量的な評価結果に対して、正確性、合理性及び信頼性を有した偽造防止印刷物の総合評価システムとその方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
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請求項1

偽造防止印刷物における複数の要求事項評価項目とし、前記評価項目に対して偽造防止印刷物から測定される数値を用いて、偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法であって、最上位最終目標を設定し、その下に、上位の目標を実現するための複数の要求事項を評価項目として設定するツリー構造設定工程と、前記ツリー構造設定工程で設定された同じ階層内の評価項目同士の一対比較による第1の固有ベクトルから前記評価項目の重み係数を算出する重み係数算出工程と、前記設定された各評価項目において、評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値をクラス分けするための複数段階水準を設定し、前記各評価項目において設定された前記水準間の一対比較による第2の固有ベクトルから、前記水準毎の性能重み係数を算出し、一つのグループとする性能重み係数セット算出工程と、前記設定された各評価項目に対して、前記評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を前記性能重み係数セット算出工程で設定された複数段階の水準のいずれかにクラス分けし、前記クラス分けされた水準に対応した前記性能重み係数を、同じグループを構成する前記性能重み係数の最大値除算して部分性能評価素値を算出する部分性能評価素値算出工程と、前記部分性能評価素値算出工程で算出された前記部分性能評価素値と、前記部分性能評価素値に対応した前記重み係数を乗算して部分性能評価値を算出する部分性能評価値算出工程と、前記部分性能評価値算出工程で算出された前記部分性能評価値の合計演算を行う総合性能評価値算出工程を少なくとも有することを特徴とする偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法。

請求項2

前記ツリー構造設定工程で設定された同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価するための一対比較による第3の固有ベクトルから相互依存重み係数を算出し、前記重み係数に前記相互依存重み係数を乗算して補正する重み係数補正工程を、前記重み係数算出工程と前記部分性能評価値算出工程の間に有することを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法。

請求項3

偽造防止印刷物における複数の要求事項を評価項目とし、前記評価項目に対して偽造防止印刷物から測定される数値を用いて、偽造防止印刷物の総合性能を評価するシステムであって、前記偽造防止印刷物における複数の要求事項を評価項目とした階層構造を設定するツリー構造設定部と、前記ツリー構造設定部で設定される各評価項目において、評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値、前記測定される数値をクラス分けするための複数段階の水準、前記水準同士及び前記ツリー構造設定部で設定される同じ階層内の評価項目同士において、各々の一対比較に用いる一対比較値が少なくとも入力されるデータ入力部と、前記入力部で入力される各々の一対比較値による固有ベクトルから重み係数を算出し、前記各評価項目において、前記入力部で入力される前記評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を前記複数段階の水準のいずれかにクラス分けし、前記クラス分けされた水準に対応する重み係数を同じ評価項目の前記複数段階の水準における重み係数の最大値で除算し、前記除算した値と前記各評価項目において算出された前記重み係数をそれぞれ乗算して前記各評価項目の評価値を算出し、前記各評価項目の評価値を合算して総合評価を行う評価処理部を備えた制御部を有することを特徴とする偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項4

前記ツリー構造設定部は、最上位を最終目的とし、その下に、上位の目的を実現するための複数の前記評価項目を設定するための少なくとも二つ以上の階層構造を設定する階層設定部と、前記設定された階層構造に前記評価項目を設定する評価項目入力部から成ることを特徴とする請求項3記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項5

前記データ入力部は、前記複数段階の水準の区間の値の入力を行う性能水準値入力部、前記水準同士と前記評価項目同士の一対比較に用いる一対比較値を入力する重み入力部及び前記評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を入力する評価値入力部を有して成ることを特徴とする請求項3又は4記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項6

前記評価処理部は、前記各評価項目の重み係数を算出する重み係数演算部、前記各評価項目毎に前記複数段階の水準の重み係数を算出し、一つのグループとする性能重み係数セット演算部、前記各評価項目において、前記評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を前記複数段階の水準のいずれかにクラス分けし、同じ前記一つのグループを構成する前記重み係数の最大値で除算する部分性能評価素値演算部、前記除算した値と前記各評価項目の重み係数をそれぞれ乗算する部分性能評価値演算部及び前記部分性能評価値演算部で演算された前記各評価項目の評価値を合算する総合性能評価値演算部を有して成ることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項7

前記データ入力部は、さらに、同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価するための一対比較に用いる一対比較値が入力される部位であって、前記評価処理部は、前記データ入力部で入力される前記同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価する一対比較値による固有ベクトルから重み係数を算出し、前記各評価項目において算出された重み係数に乗算して補正することを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項8

前記データ入力部は、前記同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価するための一対比較に用いる一対比較値を入力する相互依存値入力部を有して成り、前記評価処理部は、前記相互依存値入力部で入力された一対比較値による固有ベクトルから重み係数を算出する依存係数演算部と、前記各評価項目において算出された前記重み係数に前記依存係数演算部で算出される重み係数を乗算して補正する重み補正演算部を有して成ることを特徴とする請求項7記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項9

前記評価の対象となる偽造防止印刷物における前記各評価項目の評価値と前記各評価項目の評価値を合算した総合評価の値を、一覧表及び/又は所定の形式で作成し出力する評価出力部をさらに有して成ることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

請求項10

前記評価出力部は、前記各評価項目の評価値と前記総合評価の値の一覧表を作成し出力する評価一覧表作成部と、前記各評価項目の評価値と前記総合評価の値を所定の形式で作成し出力する評価プロファイル作成部から成ることを特徴とする請求項9に記載の偽造防止印刷物の総合性能評価システム。

技術分野

0001

本発明は、偽造防止印刷物に求められる安全性、利便性社会的受容性コストなどの様々な要求事項総合的に評価する方法及びシステムに関するものである。

背景技術

0002

金融取引人物認証の場面において、銀行券旅券などの偽造防止印刷物の役割は極めて重要である。偽造紙幣国家経済信用失墜を招き、偽造旅券は国際テロリストや人身売買などの重犯罪者が暗躍する契機となってしまう。このようなことから、これら偽造防止印刷物の安全性や使い勝手の良さを十分に評価し、その要求事項をしっかりと担保することが求められている。

0003

偽造防止印刷物における要求事項は、書籍チラシ包装紙などの一般の商業印刷物における要求事項とは大きく異なり、強靭な耐偽造性、耐複製性、耐改ざん性をはじめ、人による真偽判別容易性、取り扱いやすさ、ユニバーサルデザイン性耐久性物理的、化学的なもの)、機械処理適性製造コストなど、多岐に及んでいる。

0004

これらの評価項目のうち、物理的・化学的耐久性要件などの評価については、定量的な評価基準が多数存在し、形式化された具体的な評価が実践されている。その一方で、耐偽造性などの安全性要件、審美性、ユニバーサルデザイン性などの社会的受容性要件の充足度評価方法は、客観的、定量的な評価が困難である。そのため、それら要件の評価は、主として属人的な暗黙知、すなわち、主観評価に基づいて行われている。このような背景から、偽造防止印刷物に求められる要求事項の総合性能を客観的に評価することが求められている。また、製品の最終仕様を決定する際の判断材料のために、安全性、耐久性、コストなどの全ての要求事項の充足度を全体的な見地から考慮し、その製品仕様の総合性能を評価することが求められている。

0005

偽造防止印刷物の総合性能の評価とは異なるが、ある要求事項を総合的に評価する方法として、オフィスビル所有者によるリニューアルの内容の検討やエンドユーザーが自分のニーズに合った集合住宅を選択する場面で、それらの意思決定支援するための施設性能評価システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術では、階層分析法を用いており、この方法を用いることによって、偽造防止印刷物の大まかな総合評価一定程度可能になると考えられる。階層分析法とは、階層化意思決定法、又はAHP(Analytic Hierarchy Process)とも呼ばれ、目的又は目標、それを実現するための評価基準、評価の比較対象となる代替案階層構造に整理し、各階層の要素同士の一対比較複数要素の中から2つの要素を取り出し、一対一の比較を行うこと)による相対的な重要度算術的導出し、その重要度の大小から、代替案の総合的な評価または選択を行う手法である(例えば、非特許文献1)。特許文献1の技術は、この階層分析法を用いる中で、手間やコストをかけることなく、施設の性能を大まかに、簡易、かつ、合理的に評価し、結果を分かりやすく表示することができることが特徴であり、専門知識を持たない利用者でも利用が可能である。また、施設性能における異なる価値観念を評価に反映できることも特徴となっている。

0006

また、特許文献1の技術と同様に階層分析法を用い、目標に対する代替案の評価を行う装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。階層分析法は、代替案が追加又は削除されたときに再度一対比較を行い評価する必要があるが、特許文献2の技術では、代替案が追加又は削除された場合に再度一対比較することなく評価することを目的とし、評価項目に対する定量値を一定の変換式によって変換し、重み係数乗算の処理を行うことで代替案の評価を行っている。これによって、代替案の変更があった場合にも再度一対比較することなく、代替案の評価が可能となっている。

0007

ここで、特許文献1及び特許文献2で用いられている階層分析法を用いた偽造防止印刷物の総合評価方法の一例について以下に説明する。始めに、図1(a)に示すように、最上位に「総合性能が優れた偽造防止印刷物」が配置された評価のツリー構造を設定し、次に、総合性能が優れた偽造防止印刷物を実現するための評価項目として、下位の階層には、「安全性」、「利便性」、「社会的受容性」、及び「コスト」を設定する(例えば、非特許文献2参照)。なお、図1(a)に示す階層構造における評価項目は、非特許文献2の偽造防止技術のなかの人工物メトリクスセキュリティ研究開発動向と課題に基づいて設定した一例であるが、必要に応じて、偽造防止印刷物の評価項目を追加又は削除して階層構造を設定すれば良い。また、ここでは、図1(a)に示す階層構造について説明するが、階層分析法の階層構造は、図1(a)に示す2層構造に限定されず、図1(b)に示すように、3層構造の設定としても良いし、更に下位の階層を設けても良い。

0008

次に、総合評価を行う際の各評価項目重要性、すなわち、重み係数を求めるための一対比較を行う。これを実施するためには、表1に示す重要度の度合い(一対比較値)を用いる。

0009

(表1)

0010

表1に示す一対比較値を用いて、下位の評価項目である安全性、利便性、社会的受容性、コストにおいて一対比較を行った結果を表2に示す。表2に示される一対比較値は、安全性は利便性と比較して「やや重要(3)」、安全性は社会的受容性と比較して「重要(5)」、安全性はコストと比較して「かなり重要(7)」というように、横の欄(行方向)に一対比較値が入力される。一方、安全性の縦の欄(列方向)には、各一対比較値の逆数である、1/3、1/5、1/7が入力され、同一の評価項目同士の欄には、「同程度に重要(1)」が入力される。ここでは、表1に示す一対比較値を用いる例で説明するが、例えば「極めて重要(9)」と「かなり重要(7)」の中間の評価の場合は、中間の値である「8」を用いることもできる。また、複数の評価者が一対比較を行う場合は、評価者による一対比較値のばらつきを緩和するために、各個人の一対比較値の幾何平均値を用いることで、評価のばらつきを緩和することができる。なお、一対比較により比較を行う評価項目の数は七つ以内が望ましい。これ以上の数になると、全体的な尺度で各評価項目を評価する際の整合性を担保することが困難になるからである。

0011

(表2)

0012

次に、入力された一対比較表に基づき、重み係数の演算を行う。表2に示された一対比較表を上からみると安全性の行が1行目、利便性が2行目、同様に左からみると安全性の列が1列目、利便性が2列目というように、表2に示す一対比較表は、4行4列の正方行列となる。このように、m個(mは2以上の自然数であり、表2の場合のmは4)の評価項目における一対比較表は、m行m列の正方行列Aとして表すことができる。ここで、評価項目jと比較した評価項目iの重要度を、一対比較値aijと表す。同様に、評価項目iと比較した評価項目jの重要度を、一対比較値ajiと表す。このとき、aij=1/ajiとなる。これより、m個の評価項目におけるm行m列の一対比較行列Aは(数1)となる。なお、一対比較行列Aにおける対角要素である、a11・・・aii・・・ammの値は全て1である。

0013

(数1)


・・・(1)

0014

次に、一対比較行列Aをもとに、m個の評価項目における各評価項目の重み係数wi(i=1、・・・、m)を決定する。ここでは、次の(数2)示す主固有ベクトル法を用いて各評価項目の重み係数を算出する例について説明する。ここでは、一対比較行列Aに対し、(数2)の式を満たすL及びq(q1、q2、・・・、qm)を算出する。なお、Lは行列Aの固有値、qを行列Aの固有ベクトルという。

0015

(数2)
Aq=Lq・・・(2)

0016

m行m列の正方行列Aに対し、(数2)の式を満たす固有値Lは、最大でm個存在するが、そのうちの最大の値をLmaxとする(ただし、Lmaxは0ではない)。主固有ベクトル法において、最大固有値Lmaxを(数2)の式に適用する場合、行列Aの各要素は、(数3)に示すLmaxに対する固有ベクトルの要素の比と見なすことができる。

0017

(数3)

0018

これより、一対比較行列Aの最大固有値Lmaxに対する固有ベクトルqの要素を、各評価項目の重み係数wi(i=1、・・・、m)とすることができる。よって、表2に示された一対比較行列Aに対応した重みベクトルmの算出式は(数4)に示す式となる。

0019

(数4)

・・・(4)

0020

(数4)の演算の結果、「総合性能が優れた偽造防止印刷物」に対する、「安全性」の重み(W1)は0.578であり、「利便性」の重み(W2)は0.295であり、「社会的受容性」の重み(W3)は0.077であり、「コスト」の重み(W4)は、0.05となる。

0021

ただし、w1+w2+w3+w4=1、wi≧0となるように正規化を行った。なお、重み係数wiの算出方法には、一対比較行列Aの行方向に幾何平均をとり、その幾何平均の総和で各行の幾何平均を除することで各評価項目の重み係数wiを算出する方法や、一対比較行列Aの行方向に逆数同士の算術平均を求め、その調和平均の総和で各行の調和平均を求め、その調和平均の総和で各行の調和平均を除することで重み係数wiを算出する方法などが知られており(例えば、非特許文献3参照)、階層分析法における重み係数wiの算出方法は、本例で説明する主固有ベクトル法に限定されるものではない。

0022

一対比較行列により求められた重み係数wiは、あくまでも2つの評価項目の重要性の比較である。評価を行う人間には、間違いがつきものであり、重要性の序列逆転してしまうなどの不整合性が発生することが考えられる。そのため、整合度(C.I.:Consistency Index)と呼ばれる、(数5)に示す式で表される数値によって、一対比較行列Aの整合性の判定を行う。

0023

(数5)

0024

ここで、Lmaxは一対比較行列Aの最大固有値、mは一対比較を行った要素の数(この場合、評価項目の項目数)である。この閾値を0.15とし、この閾値を上回った場合、一対比較値を再検討する。なお、表2に示された一対比較行列Aの整合度は、上式よりC.I.=0.111と算出され、十分な整合性を有しているものと判定される。

0025

次に、複数の偽造防止印刷物を対象に、各評価項目における評価値を入力する。この評価には、表3に示されるような評価の度合い(一対比較値)を用いる。

0026

(表3)

0027

評価項目の重要性の一対比較で説明した手順と同様に、各評価項目において、偽造防止印刷物Xを偽造防止印刷物Yと比較した場合の一対比較値を偽造防止印刷物Xの横の欄(行方向)に入力する。本例において、具体的な偽造防止印刷物Xと偽造防止印刷物Yの仕様や構成についての説明は省略するが、表4に示す一対比較値は、一対比較評価の試行の値を示したものである。一方、偽造防止印刷物Xの縦の欄(列方向)には、一対比較値の逆数が入力される。本実施例において、偽造防止印刷物X、偽造防止印刷物Y、偽造防止印刷物Zの3つの偽造防止印刷物を、評価項目の一つである「安全性」の観点から、各偽造防止印刷物間で一対比較を試行した結果の例が表4である。なお、前述のように、一対比較によって評価を行う要素、すなわち、評価対象となる偽造防止印刷物の数は七つ以内が望ましい。

0028

(表4)

0029

次に、表4に記載の安全性に関する複数の偽造防止印刷物の一対比較値から、各偽造防止印刷物の部分評価素値の算出を行う。なお、部分評価素値とは、各偽造防止印刷物の任意の評価項目における評価の素点であり、ここでは、「安全性」に関する偽造防止印刷物X、Y、Xの部分評価素値について説明する。評価対象となる偽造防止印刷物の数がn種類であるとき、各偽造防止印刷物の「安全性」に関する部分評価値v1,k(k=1、・・・、n)は、前述の重み係数の算出で示した固有ベクトルの算出方法と同様に、各偽造防止印刷物について安全性の観点から作成されたn行n列の一対比較行列Bの、最大固有値Kmaxに対する固有ベクトルの各要素に相当する。表4に示された一対比較行列Bに対応した部分評価素値v1,1、v1,2、v1,3は(数6)の式により算出される。

0030

(数6)

0031

(数6)の演算の結果、「安全性」に対する、「偽造防止印刷物X」の部分評価素値(V1,1)は0.487であり、「偽造防止印刷物Y」の部分評価素値(V1,2)は0.078であり、部分評価素値(V1,3)は0.435となる。

0032

評価項目である「安全性」に関する各偽造防止印刷物の部分評価素値v1,k(k=1、・・・、n)に対し、整合度の評価を行う。本実施例における部分評価素値v1,k(k=1、・・・、n)の整合度は、0.006を示し、十分な整合性を有すると判定された。

0033

「安全性」に関する部分評価素値の演算と同様にして、「利便性」に関する部分評価素値v2,k(k=1、・・・、n)を算出する際に行った、一対比較値の例と、一対比較値によって算出した部分評価素値及び整合度の結果を表5に示す。

0034

(表5)

0035

また、「社会的受容性」に関する部分評価素値v3,k(k=1、・・・、n)を算出する際に行った、一対比較値の例と、一対比較値によって算出した部分評価素値及び整合度の結果を表6に示す。

0036

(表6)

0037

また、「コスト」に関する部分評価素値v4,k(k=1、・・・、n)を算出する際に行った、一対比較値の例と、一対比較値によって算出した部分評価素値及び整合度の結果を表7に示す。

0038

(表7)

0039

次に、各偽造防止印刷物間の一対比較によって求められた4つの各評価項目に関する各部分評価素値v1,k、v2,k、v3,k、v4,k(k=1、・・・、n)から、各偽造防止印刷物における総合評価値tk(k=1、・・・、n)の算出を(数7)の式に基づいて行う。

0040

(数7)


・・・(7)

0041

ここで、w1v1,k、w2v2,k、w3v3,k、w4v4,k(k=1、・・・、n)の各々は、各偽造防止印刷物における評価項目である「安全性」、「利便性」、「社会的受容性」、「コスト」の部分評価素値と重み係数が乗算された値を示しており、これを部分評価値とする。

0042

最後に、本実施例における各偽造防止印刷物の各評価項目の部分評価値及び総合評価値の算出結果をもとに作成された評価一覧表を表8に示す。同じく表8に示す評価一覧表をもとに作成された評価プロファイル図2に示す。ここで、図2(a)は各印刷物の総合評価値を棒グラフで示したもの、また、図2(b)は各評価項目の部分評価値をレーダチャートで示したものである。

0043

(表8)

0044

以上、本発明者による階層分析法を用いた偽造防止印刷物の総合評価、及び評価結果の可視化の事例について説明した。

0045

特許第4549514号公報
特開平9−69051号公報

先行技術

0046

高萩栄一郎、中島信之共著、「Excelで学ぶAHP入門」、オーム社、2005年9月)
宇根、田本、偽造防止技術のなかの人工物メトリクス:セキュリティ研究開発の動向と課題、金融研究、2009、7)
星田侑久、階層分析法の新しい適用方法:多数の観点の定量化評価得点行列の吟味に焦点をあてて、Theory and Applications ofGIS、2006、Vol、No.2、pp.63‐72)

発明が解決しようとする課題

0047

銀行券や旅券などの偽造防止印刷物には、大きく分類して、耐変造性などの安全性要件、使い勝手や耐久性などの利便性要件、審美性や社会文化への適合性などの社会的受容性要件及び材料・製造費などのコスト要件をバランスよく充足することが求められている。このうち、偽造防止印刷物の物理的、化学的耐久性の評価については、定量的な評価が行われているものもあるが、個別の評価項目に対する評価であり、種類の異なる評価結果が融合されるものではなく、総合的、包括的な評価を実行することができない。金融取引や人物認証の場面で重要な役割を果たす銀行券や旅券などの偽造防止印刷物においては、精度、信頼性及び合理性の高い総合的な評価方法が必要とされている。

0048

特許文献1及び特許文献2で用いられる階層分析法を、前述したように、偽造防止印刷物の総合評価に用いることで、偽造防止印刷物の大まかな総合評価が一定程度可能になると考えられる。しかしながら、前述した階層分析法を用いて、偽造防止印刷物の総合評価を行う場合に、以下の問題がある。例えば、評価の対象となる印刷物が追加された場合に、再度、評価の対象となる印刷物同士で一対比較を行う必要があり、手間がかかるという問題がある。これに対して、特許文献1の技術を用いれば、手間やコストをかけずに定量値で表される性能を評価することができ、特許文献2の技術を用いれば、代替案が追加された場合に再度一対比較することなく、評価が可能となる。しかしながら、特許文献1及び特許文献2の評価方法は以下の問題がある。

0049

特許文献1に示される施設性能評価システムは、手間やコストをかけずに性能を大まかに評価することを目的としており、評価項目毎に性能水準を決め、その水準毎に倍数を設定し、評価項目の重み係数と評価対象が該当する水準の倍数を乗算することで評価点を求めている。この性能水準の設定は、極めて簡易な設定方法であり、評価結果の正確性、合理性、及び信頼性の観点から十分であるとは言い難い。例えば、性能水準の設定で、施設の最寄り駅からの時間を1分以内、10分、20分の順とし、単純に倍数を3倍、2倍、1倍の順として設定したとし、各水準を比較すると、20分の施設に対して10分の施設を評価する場合と、10分の施設に対して1分の施設を評価する場合に、同じ倍数の設定では評価することができないという場合がある。いいかえれば、最寄駅から時間が短い施設ほど、その件数は少なくなって価値が上がるはずであるが、特許文献1の性能水準からは、その評価ができない。

0050

また、特許文献2に示される代替案の評価を行う装置においては、定量評価結果の取り扱い方が十分ではないという問題があった。特許文献2の技術において定量評価結果の扱い方は、任意の評価項目における代替案の定量評価結果である定量値D(i)に対して、代替案間における定量評価結果の最大値Dmaxで除算した値と、重みの乗算で評価を行うものである。しかし、定量値D(i)の取り得る値は、少数分数、負の数、乗数など様々な場合が想定されるうえ、最大値Dmaxによる除算という画一的な算出方法であるため、評価結果の精度が担保されるとは考え難い。例えば、評価対象の定量値における、最大値との大小関係によって評価値が大きく変化してしまうという問題がある。

0051

他の課題として、ツリー構造として導出された評価項目間の相互の依存性に起因する評価精度低下の解消があげられる。一般に階層分析法では、評価項目間の相互の独立性が求められるが、現実的には困難であり、それは評価結果に少なからず悪影響を及ぼす。偽造防止印刷物の基本的な要求事項(評価項目)と考えられる安全性、利便性、社会的受容性、及びコストを具体的な事例に説明する。コストをかければ、総じて安全性も上昇する。同様に、利便性が高いものは、社会的受容性が高い傾向にあるともいえる。本来、高い総合評価が与えられるべき、低コストでありながら安全性の高い印刷物に対し、精度の高い総合評価結果が与えられないことが懸念される。つまり、各評価項目の独立性が十分でない場合を考慮した、補正処理手続きが必要とされている。

0052

以上、本発明の課題を総括すると、偽造防止印刷物に必要とされる複数の要求事項を評価項目として偽造防止印刷物の総合評価を行うにあたり、各評価項目の定量的な評価結果に対して、正確性、合理性及び信頼性を有した偽造防止印刷物の総合評価システムとその方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0053

本発明の偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法は、偽造防止印刷物における複数の要求事項を評価項目とし、評価項目に対して偽造防止印刷物から測定される数値を用いて、偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法であって、最上位に最終目標を設定し、その下に、上位の目標を実現するための複数の要求事項を評価項目として設定するツリー構造設定工程と、ツリー構造設定工程で設定された同じ階層内の評価項目同士の一対比較による第1の固有ベクトルから評価項目の重み係数を算出する重み係数算出工程と、設定された各評価項目において、評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値をクラス分けするための複数段階の水準を設定し、各評価項目において設定された水準間の一対比較による第2の固有ベクトルから、水準毎の性能重み係数を算出し、一つのグループとする性能重み係数セット算出工程と、設定された各評価項目に対して、評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を性能重み係数セット算出工程で設定された複数段階の水準のいずれかにクラス分けし、クラス分けされた水準に対応した性能重み係数を、同じグループを構成する性能重み係数の最大値で除算して部分性能評価素値を算出する部分性能評価素値算出工程と、部分性能評価素値算出工程で算出された部分性能評価素値と、部分性能評価素値に対応した重み係数を乗算して部分性能評価値を算出する部分性能評価値算出工程と、部分性能評価値算出工程で算出された部分性能評価値の合計演算を行う総合性能評価値算出工程を少なくとも有することを特徴とする。

0054

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法は、ツリー構造設定工程で設定された同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価するための一対比較による第3の固有ベクトルから相互依存重み係数を算出し、重み係数に相互依存重み係数を乗算して補正する重み係数補正工程を、重み係数算出工程と部分性能評価値算出工程の間に有することを特徴とする。

0055

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、偽造防止印刷物における複数の要求事項を評価項目とし、評価項目に対して偽造防止印刷物から測定される数値を用いて、偽造防止印刷物の総合性能を評価するシステムであって、偽造防止印刷物における複数の要求事項を評価項目とした階層構造を設定するツリー構造設定部と、ツリー構造設定部で設定される各評価項目において、評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値、測定される数値をクラス分けするための複数段階の水準、水準同士及びツリー構造設定部で設定される同じ階層内の評価項目同士において、各々の一対比較に用いる一対比較値が少なくとも入力されるデータ入力部と、入力部で入力される各々の一対比較値による固有ベクトルから重み係数を算出し、各評価項目において、入力部で入力される評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を複数段階の水準のいずれかにクラス分けし、クラス分けされた水準に対応する重み係数を同じ評価項目の複数段階の水準における重み係数の最大値で除算し、除算した値と各評価項目において算出された重み係数をそれぞれ乗算して各評価項目の評価値を算出し、各評価項目の評価値を合算して総合評価を行う評価処理部を備えた制御部を有することを特徴とする。

0056

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、ツリー構造設定部は、最上位を最終目的とし、その下に、上位の目的を実現するための複数の評価項目を設定するための少なくとも二つ以上の階層構造を設定する階層設定部と、設定された階層構造に評価項目を設定する評価項目入力部から成ることを特徴とする。

0057

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、データ入力部は、複数段階の水準の区間の値の入力を行う性能水準値入力部、水準同士と評価項目同士の一対比較に用いる一対比較値を入力する重み入力部及び評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を入力する評価値入力部を有して成ることを特徴とする。

0058

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、評価処理部は、各評価項目の重み係数を算出する重み係数演算部、各評価項目毎に複数段階の水準の重み係数を算出し、一つのグループとする性能重み係数セット演算部、各評価項目において、評価の対象となる偽造防止印刷物から測定される数値を複数段階の水準のいずれかにクラス分けし、同じ一つのグループを構成する重み係数の最大値で除算する部分性能評価素値演算部、除算した値と各評価項目の重み係数をそれぞれ乗算する部分性能評価値演算部及び部分性能評価値演算部で演算された各評価項目の評価値を合算する総合性能評価値演算部を有して成ることを特徴とする。

0059

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、データ入力部は、さらに、同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価するための一対比較に用いる一対比較値が入力される部位であって、評価処理部は、データ入力部で入力される同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価する一対比較値による固有ベクトルから重み係数を算出し、各評価項目において算出された重み係数に乗算して補正することを特徴とする。

0060

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、データ入力部は、同じ階層内の評価項目において、一つの評価項目に対する各評価項目の影響度を評価するための一対比較に用いる一対比較値を入力する相互依存値入力部を有して成り、評価処理部は、相互依存値入力部で入力された一対比較値による固有ベクトルから重み係数を算出する依存係数演算部と、各評価項目において算出された重み係数に依存係数演算部で算出される重み係数を乗算して補正する重み補正演算部を有して成ることを特徴とする。

0061

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、評価の対象となる偽造防止印刷物における各評価項目の評価値と各評価項目の評価値を合算した総合評価の値を、一覧表及び/又は所定の形式で作成し出力する評価出力部をさらに有して成ることを特徴とする。

0062

また、本発明の偽造防止印刷物の総合性能評価システムは、評価出力部は、各評価項目の評価値と総合評価の値の一覧表を作成し出力する評価一覧表作成部と、各評価項目の評価値と総合評価の値を所定の形式で作成し出力する評価プロファイル作成部から成ることを特徴とする。

発明の効果

0063

本発明によれば、偽造防止印刷物の総合評価を行うために設定した各評価項目において、偽造防止印刷物から測定される定量値を、複数段階の水準に割り当て、水準同士の一対比較による重み付けを経た後に評価することによって、各評価項目に対応した部分性能評価値と評価の対象となる偽造防止印刷物の総合評価値を、正確に合理的に得ることができる。

0064

また、本発明によれば、性能水準の設定による評価精度の向上に加えて、評価項目同士の影響度を評価した重み係数を用いることで、より評価の精度を向上させることができる。

図面の簡単な説明

0065

総合性能が優れた偽造防止印刷物を達成するための評価ツリー構造の一例を示す図である。
偽造防止印刷物における総合評価値と総合性能の部分評価値を示す図である。
本発明の偽造防止印刷物の総合評価システムの構成を示すブロック図である。
本発明の偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法のフロー図である。
評価ツリー構造の設定工程の詳細を示す図である。
ツリー構造の設定の一例を示す図である。
各評価項目間の重み係数の算出工程の詳細を示す図である。
性能重み係数セットの算出工程の詳細を示す図である。
部分性能評価素値の算出工程の詳細を示す図である。
部分性能評価値の算出工程の詳細を示す図である。
総合性能評価値の算出工程の詳細を示す図である。
各印刷物の識別性に関する総合性能評価値及び部分性能評価値の可視化の一例を示す図である。
第2の実施の形態の偽造防止印刷物総合評価システムの構成を示すブロック図である。
第2の実施の形態の偽造防止印刷物の総合性能を評価する方法のフロー図である。
重み係数の補正工程の詳細を示す図である。
各評価項目間の相互依存性を考慮した上で、各印刷物の識別性に関する総合性能評価値及び部分性能評価値の可視化の一例を示す図である。

実施例

0066

本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に述べる形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他様々な形態が実施可能である。

0067

(第1の実施の形態)
(偽造防止印刷物総合評価システム)
本発明の偽造防止印刷物総合評価システム(A)の構成を示すブロック図を図3に示す。偽造防止印刷物総合評価システム(A)は、制御部(C)を中核とし、大別して、評価ツリー構造設定部(S)、データ入力部(I)及び評価出力部(O)から構成される。各部位の具体的な機能は後述するが、一連の機能は、汎用パソコン上で稼働する表計算ソフト数値解析ソフトなどを用いて実装することができる。

0068

(評価ツリー構造設定部)
評価ツリー構造設定部(S)は、偽造防止印刷物の総合評価を行う際に導出される評価のための各評価項目の相互関係、すなわちツリー構造と、評価項目の具体的な項目名を設定する部位である。

0069

評価ツリー構造設定部(S)は、図1に示すように、最上位を最終目的とし、目的を実現するための複数の評価項目からなる少なくとも二つ以上の階層構造を設定する階層設定部(S1)と、階層構造に具体的な評価項目を設定する評価項目入力部(S2)から成る。階層設定部(S1)は、ワープロ描画ソフトで一般的に利用可能な階層構造描画コンポーネントによる文字列入力ボックス生成機能や文字列入力ボックスを罫線によって任意に連結する機能により、最終目的及び最終目的を実現するための複数の評価項目の入力がなされる空欄の文字列入力ボックスの従属(階層)関係を決定し、任意のツリー構造を設定する機能を有する。また、階層を設定する機能は、表計算ソフトのセルシートと罫線機能によっても代替可能である。評価項目入力部(S2)とは、階層設定部(S1)によって設定された文字列入力ボックス又はセルから構成される任意のツリー構造において、マウス指示カーソル移動による入力ボックス又はセルのアクティブ化により最終目的又は具体的な評価項目の入力機能を有する。なお、設定及び記入された階層構造と評価項目は、図形情報又はセルシートの形で記憶部(M)に保存され、自由な読出し編集及び保存が可能である。

0070

(データ入力部)
データ入力部(I)は、重み入力部(I1)、性能水準値入力部(I2)及び評価値入力部(I3)から成る。重み入力部(I1)は、最終目的を実現するために設定した階層構造の評価項目において、同じ階層内に設定された評価項目同士で一対比較を行った際の重要性又は優先度、すなわち、重みの入力をする部位である。なお、重みの入力は、表1や表3に示したように、上位の目的に対する同じ階層の評価項目同士で一対比較した場合の重要性の度合いを複数段階に定義し、定義した重要性の度合い毎に設定した一対比較値を用いる。また、重み入力部(I1)は、この後説明する性能水準値入力部(I2)で設定する性能水準同士で一対比較した場合の重要性又は優先度の度合いである一対比較値の入力も行う。なお、重み入力部(I1)で入力する表1や表3に示す一対比較値は、予め記憶部(M)に保存しておき、それを読みだして、該当する値を入力しても良いし、評価項目に対する重み入力の段階で、適宜、一対比較値を定義し、入力しても良い。また、複数の評価者が一対比較を行う場合の一対比較値のばらつきを緩和するために、重み入力部で入力される一対比較値の幾何平均をとる部位を設けても良い(図示せず)。

0071

性能水準値入力部(I2)とは、評価項目に対する偽造防止印刷物の数値性能(例えば、真偽判別に要する時間や最低限必要とされる照度などの定量的な評価結果)をクラス分けするための複数段階の水準を設定するための区間の入力を行う部位である。以下、評価項目に対する複数段階の水準のことを性能水準という。前術の性能水準値入力部(I2)を備える点が、本発明の一つ目の特徴である。例えば、偽造防止印刷物の真偽判別に要する時間など評価項目に対して、表9に示す水準を性能水準値入力部(I2)によって設定する。なお、表9に示す識別時間の水準は、0.6秒未満、0.6秒以上2秒以下、2.1秒以上3.5秒未満、3.5秒以上の4段階として設定した例であるが、本発明において、設定した区間の数値範囲と水準の数はこれに限定されるものではない。

0072

(表9)

0073

また、評価値入力部(I3)とは、各評価項目において定量値で与えられる評価結果の入力を行う部位である。例えば、評価項目の一つに識別時間が設定された場合、評価の対象となる偽造防止印刷物において識別に要した時間の入力を、評価値入力部(I3)を用いて行う。

0074

(制御部)
制御部は、大別して、評価処理部(P)と記憶部(M)から構成される。評価処理部(P)は、評価ツリー構造設定部(S)で設定されたツリー構造の評価項目と、データ入力部(I)で入力されたデータを用いて、偽造防止印刷物の評価を行う部位であり、重み係数演算部(P1)、整合度演算判定部(P2)、性能重み係数セット演算部(P3)、部分性能評価素値演算部(P4)、部分性能評価値演算部(P5)、及び総合性能評価値演算部(P6)から構成される。評価処理部(P)に接続された記憶部(M)は、ツリー構造の評価項目、並びに、重み係数、整合度、部分性能評価素値、部分性能評価値、総合性能評価値、及び性能重み係数セットの値が保存される。

0075

重み係数演算部(P1)は、重み入力部(I1)で入力された一対比較結果から、同じ階層に設定された評価項目の重み係数の演算を行う部位であり、演算の方法としては、前述した(数1)、(数2)、(数3)及び(数4)の式の主固有ベクトル法で算出しても良いし、前述した幾何平均法や調和平均法で算出しても良い。

0076

整合度演算判定部(P2)は、重み係数演算部(P1)で算出した重み係数の整合度の判定を行う部位であり、演算の方法は、前述した(数5)の式によって算出することができる。

0077

性能重み係数セット演算部(P3)は、性能水準値入力部(I2)で入力し、設定した水準同士の一対比較による一対比較値の入力結果から、性能重み係数セットの演算を行う部位である。性能重み係数セットの演算方法は、前述した(数1)、(数2)、(数3)及び(数4)の式の主固有ベクトル法で算出しても良いし、前述した幾何平均法や調和平均法で算出しても良い。これらの算術方法は、一般的な表計算ソフトや数値解析ソフトなどを用いて実装することができる。

0078

ここで、性能重み係数セットとは、特定の評価項目に設定された性能水準の各水準同士を一対比較した場合に演算される各水準の重み係数を、一つのグループとしたものである。例えば、表9に示す性能水準の場合、識別時間の評価項目に対して四つの水準が設定されており、四つの水準の一対比較によって演算される四つの水準の重み係数を一つのグループとする。以降の説明では、評価項目の重み係数と区別するため、性能水準として設定された各水準の重み係数のことを性能重み係数として説明する。従来技術の課題で前述したように、特許文献1については、性能水準の水準毎に単純に倍数を乗算する評価であり、特許文献2については、最大値の除算という画一的な手法であるため、高精度な評価方法であるとは言い難い。一方、本発明の偽造防止印刷物の総合評価システムでは、性能重み係数セット演算部(P3)によって、各水準間同士の一対比較を経て算出された性能重み係数セットを用いることで、各水準間の重み(重要さ)を考慮することによって評価の精度を著しく向上させている。

0079

部分性能評価素値演算部(P4)は、評価値入力部(I3)で入力された評価値と、性能重み係数セット演算部(P3)で演算された性能重み係数セットから、部分性能評価素値を演算する部位である。ここで、部分性能評価素値とは、特定の評価項目における評価対象の数値性能が属する水準に対応した性能重み係数を、性能重み係数セットを構成する性能重み係数の最大値で除算したものである。例えば、仮に、表9に示す性能水準が設定され、評価対象の偽造防止印刷物Aの識別時間が3秒であったとすると、2.1秒から3.5秒の水準の重み係数を性能重み係数セットから参照し、識別時間の評価項目の性能重み係数セットを構成する四つの水準の重み係数の最大値で除算する。なお、部分性能評価素値の演算の詳細については後述するが、この演算方法は、一般的な表計算ソフトや数値解析ソフトなどを用いて実装することができる。

0080

部分性能評価値演算部(P5)は、重み係数演算部(P1)で演算された重み係数と、部分性能評価素値演算部(P4)で演算された部分性能評価素値を各評価項目毎に乗算して部分性能評価値の演算を行う部位である。この演算は、一般的な表計算ソフトや数値解析ソフトを用いて行うことができる。

0081

総合性能評価値演算部(P6)は、部分性能評価値演算部(P5)で演算された各評価項目の部分性能評価値を和算して、総合性能評価値の演算を行う部位である。この演算も表計算ソフトなどを用いて実装される。

0082

(評価出力部)
評価出力部(O)は、評価対象となる偽造防止印刷物の名称、各評価項目、各評価項目の評価値及び総合評価値から成る一覧表を作成し出力する評価一覧表作成部(O1)、並びに各評価項目に対応した評価値をレーダチャート形式で可視化した評価プロファイルを作成し紙面出力する評価プロファイル作成部(O2)から成る。なお、総合評価結果の出力は、パソコンに接続された汎用プリンタを用いた紙面に限定されず、PDFのような電子文書ファイルの生成によっても代替可能である。

0083

なお、制御部(C)で行われる偽造防止印刷物の総合評価にかかる種々の演算は、当該システムを構成する汎用パソコンのCPUによって実行される。また、CPUでの演算結果の保存や各種演算に必要な数値ファイル読み出しが行われる記憶部(M)は、汎用パソコンのハードディスク、若しくはクラウド上の任意の記録デバイスなどが用いられる。

0084

次に、偽造防止印刷物総合評価システム(A)を用いた本発明の偽造防止印刷物の総合評価方法の説明を行う。図4は、偽造防止印刷物の総合評価方法の概要を示すフローチャートである。図4の評価ツリー構造設定工程(F1)の詳細を図5に示す。図5における第1の工程(F1−1)は、階層設定部(S1)を用いたツリー構造の設定である。図6(a)は、設定されたツリー構造の一例であり、頂点に最終目標を入力する入力ボックスが配置され、その下に複数の大評価項目が入力される入力ボックスが配置され、大評価項目の下に複数の中評価項目が入力される入力ボックスが配置された状態を示している。これらの入力ボックスは、従属関係の理解を容易にするために罫線で連結されることが望ましい。

0085

次に、図5における第2の工程(F1−2)は、評価ツリーの最上位に位置する最終目的の設定であり、ここでは、図6(b)に示すように、「総合性能が優れた偽造防止印刷物」を最終目的として設定する。図5における第3の工程(F1−3)は、評価項目の設定である。偽造防止印刷物における総合評価のために必要な評価項目の一例として、図6(b)に示すように、「安全性」、「利便性」、「社会的受容性」を、評価項目入力部(S2)を用いて、ワープロや描画ソフトの階層構造描画コンポーネントや表計算シートのセルに入力された形態で設定する。

0086

なお、図6(b)に示すツリー構造おける大評価項目の数は、あくまで本発明の実施の形態の一例を示すものであり、三つの評価項目が設定されているが、大評価項目として設定する評価項目の数はこれに限定されるものではない。また、同じ階層内に設定される評価項目の数もこれと同様である。ただし、前述のように、一対比較により比較を行う対象の数が七つより多くなると、全体的な尺度で各評価項目を評価する際の整合性を担保することが困難になるため、同じ階層内に設定する評価項目の数は七つ以下が望ましい。

0087

図6(b)は、ツリー構造として大評価項目を設定した例であるが、大評価項目の内容に対して、さらに、細別化し、詳細な評価を行いたい場合には、大評価項目に対して複数の中評価項目を設定しても良い。例えば、図6(b)に示す大評価項目として設定した安全性に対して、真正性完全性機密性などの中評価項目を設定することができる。このように、上位の評価項目を評価するためのより具体的な評価項目を設定することで、詳細な評価が可能となる。

0088

図5における第4の工程(F1−4)は評価ツリー構造の保存であり、設定したツリー構造を記憶部(M)へ保存する。なお、図4の評価ツリー構造設定工程(F1)は、これまでに説明したツリー構造の新規作成の他に、読み出し修正、保存及び参照機能であっても良い。ここで、評価ツリー構造設定工程(F1)において、最終目的とそれに対する評価項目を設定する一例について説明する。

0089

前述したように、本発明は偽造防止印刷物の総合評価を行うものであるが、ここでは、本発明の評価方法について簡単に説明するため、図6(c)に示すように、偽造防止印刷物の要求事項の一つである「識別性」を最終目的に設定した例を取り上げる。評価ツリー構造設定部(S)における評価項目入力部(S2)を用い、最終目的として「識別性に優れた偽造防止印刷物」を入力した。また、図5に記載のフローチャートの詳細にならい、「識別性に優れた偽造防止印刷物」を達成するための評価のツリー構造を設定し、「識別性に優れた偽造防止印刷物」に対する下位の具体的な評価項目として識別時間、発現角度及び識別照度を入力し、記憶部(M)に保存した。なお、識別時間とは、ここでは、真偽判別に要する時間のことである。また、発現角度とは潜像が発現する角度のことであり、例えば、特許2615401号に記載の印刷物は、正面から観察したときには、何も画像が視認できないが、傾けて観察したときに正面から視認できない画像が潜像として視認できる。その他の潜像が視認できる技術としては、ホログラム光学的変化インキ等がある。また、識別照度とは真偽判別に最低限必要とされる明るさのことである。以上、図4の評価ツリー構造設定工程(F1)によって設定した評価ツリー構造の結果を図6(d)に示す。

0090

本実施の形態では、「識別性に優れた偽造防止印刷物」に対して、下位の具体的な評価項目として「識別時間」、「発現角度」、「識別照度」を設定した例について説明するが、具体的な評価項目の設定はこれに限定されるものではなく、必要に応じて任意の評価項目を設定すれば良い。例えば、「環境負荷」の評価項目については、各種法令汚染物質排出基準が定められた項目が存在するのならば採択するほか、「耐久性」の評価項目においては、ISOやJISなどの標準書で規定された評価方法を網羅することが求められる。また、使い勝手などの「利便性」を考慮するために利用者の観点から、また、原材料費製造適性などの「コスト」を考慮するために生産者及び製品発注者の観点を考慮して、最終目的を実現するような評価項目を導出しても良い。

0091

なお、図6破線で示したように、大評価項目の下位の階層である中評価項目、さらには、中評価項目の下位の階層である小評価項目(図示せず)を必要に応じて設定することができる。また、同様に、「識別性に優れた偽造防止印刷物」がさらに上位の階層のサブ・セット、すなわち、大評価項目の一つであると想定することも可能である。

0092

なお、本実施の形態で述べたツリー構造の設定方法は、はじめに基本的な要求事項を上位の評価項目として設定したのちに下位の具体的な評価項目の設定を行う、いわば、トップダウン方式をとっているが、この方式に限定されるものではない。偽造防止印刷物の複数の具体的な評価項目に対して、類似する概念の評価項目をグループ化し、グループ化した評価項目の上位概念を、上位の評価項目としてツリー構造に設定する、いわば、ボトムアップ方式をとることもできる。例えば、偽造防止印刷物の評価試験として、摩耗・折り曲げ・引っ張り・衝撃・加圧などの一連のストレス負荷試験があるならば、これらの評価項目を包含できる概念、すなわち、「耐久性」を上位概念として導出し、評価ツリー構造の一部として設定することができる。

0093

次に、図4に示される重み係数算出工程(F2)の詳細を図7に示す。図7における第1の工程(F2−1)は一対比較値の入力工程である。ここでは、前述した方法と同様に、各評価項目の重要性(優先度と言い換えることもできる)に関する一対比較を行い、図3の重み入力部(I1)を用いて一対比較値の入力を行う。例として、識別性に関する下位の評価項目である識別時間、発現角度及び識別照度の重み入力を行った結果を表9に示す。

0094

(表9)

0095

図7における第2の工程(F2−2)では、各評価項目における重み係数wi(i=1、・・・、m)を演算する。重み係数の演算の方法は、前述した(数2)、(数3)及び(数4)に示す主固有ベクトル法により、図3の制御部(C)における重み係数演算部(P1)を用いて行う。例として、主固有ベクトル法に基づき、表9記載の一対比較行列の重み係数Wiの演算結果を表10に示す。なお、前述のとおり、重み係数の演算は幾何平均や調和平均を用いた他の方法を適用することができる。

0096

(表10)

0097

図7における第3の工程(F2−3)は、算出された重み係数の整合度の演算である。演算の方法は、前述した(数5)の式に基づき、図3の制御部(C)における整合度演算判定部(P2)で算出される。表10に示した重み係数の整合度は、0.014と算出された。

0098

図7における第4の工程(F2−4)は、演算された整合度の判定である。整合度判定部(P2)で算出された整合度が、もし、0.15を上回るようであれば、重み付けにブレ揺らぎを含んでいることが懸念されるため、第1の工程(F2−1)に戻り、重みの再入力をする。本具体例の整合度=0.014は、図3の制御部(C)における整合度演算判定部(P2)によって適切であると判定される。最後に、図7における第5の工程(F2−5)は重み係数の保存である。表10に示された本例における重み係数は、整合度判定を経た後、図3の記憶部(M)に保存される。

0099

図4における性能重み係数セット算出工程(F3)では、性能重み係数セットPi(i=1、2、3、・・・、n)を算出する。図4における性能重み係数セットPi(i=1、2、3、・・・、n)の算出工程(F3)の詳細フローを図8に示す。図8における第1の工程(F3−1)は、性能水準の設定である。ここでは、識別時間の性能水準の設定方法について説明する。性能水準とは、前述のように、偽造防止印刷物の評価結果が数値性能で与えられる各評価項目において、複数段階から構成される水準のことである。例えば、識別時間の場合、短い水準として、1秒未満、長い水準として5秒以上、中間の水準として、1秒以上5秒未満といったことである。このような、区間の設定を性能水準値入力部(I2)を用いて設定する。識別性の評価項目である識別時間の性能水準の設定例を表11に示す。

0100

(表11)

0101

本実施例では、銀行券の識別時間の性能水準を表11に示すような4段階に設定した。これらの値は、小売店銀行などの現金取扱者に平均的に与えられる識別時間の猶予が0.6(秒)、平均的なおつりの確認時間2(秒)程度という見積もりに基づいている。なお、性能水準の設定は、表11の4段階に限定されるものではなく、また、水準の区間の値の設定についても、表11に示す例に限定されるものではない。利用者の観点、生産者の観点、製品発注者の観点を考慮して設定しても良いし、複数の評価対象のうちの最大の識別時間を均等に分割して設定しても良い。なお、後述する一対比較工程を考慮し、設定する水準の個数は七つ以内が望ましい。これは、前述のように、一対比較により比較を行う対象の数が七つより多くなると、全体的な尺度で各評価項目を評価する際の整合性を担保することが困難になるからである。

0102

図8における第2の工程(F3−2)は、性能水準間の一対比較である。これは、前述した一対比較の方法によって、各評価項目で設定された各性能水準同士の優劣の比較を行い、その一対比較値を図3に示す重み入力部(I1)を用いて入力する。例として、表11に示した識別時間の四つの性能水準同士の一対比較結果を表12に示す。

0103

(表12)

0104

図8における第3の工程(F3−3)は、性能重み係数セットPi(i=1、2、3、・・・、n)の算出である。性能重み係数セットは、表12に示された一対比較値をもとに、前述した(数2)、(数3)及び(数4)に示す主固有ベクトル法に基づき、制御部(C)の性能重み係数セット演算部(P3)を用いて算出される。例として、表12に示す識別時間の一対比較結果から性能重み係数セットPi(i=4)の算出結果を表13に示す。

0105

(表13)
識別時間の性能重み係数セットの算出結果

0106

図8における第4の工程(F3−4)は、算出された性能重み係数セットの整合度の演算である。前述した(数5)の式に基づき、制御部(C)における整合度演算判定部(P2)を用いて算出される。なお、表13に示した性能重み係数セットPi(i=4)の整合度は、0.038と算出された。

0107

図8における第5の工程(F3−5)は、演算された整合度の判定である。第4の工程(F3−4)で演算された整合度が、0.15を上回るようであれば、各性能水準間の一対比較にブレや揺らぎを含んでいることが懸念されるため、第2の工程(F3−2)に戻り、一対比較値の再入力をする。本実施例の整合度=0.038は、制御部(C)における整合度演算判定部(P2)によって適切であると判定された。最後に、図8における第6の工程(F3−6)は、性能重み係数セットの保存である。表13に示した性能重み係数セットPi(i=4)は、整合度判定を経た後、制御部(C)における記憶部(M)に保存される。

0108

なお、識別性を担保するためのその他の評価項目である発現角度と識別照度における性能水準の設定、性能重み係数セットPi(発現角度:i=5、識別照度:i=4)及び整合度の演算結果を例として表14に示す。発現角度と識別照度における性能重み係数セットもまた、整合度の判定を経た後、制御部(C)における記憶部(M)に保存される。

0109

(表14)

0110

次に、図4における部分性能評価素値算出工程(F4)では、部分性能評価素値を算出する。本発明において、部分性能評価素値とは、評価ツリー構造において上位に位置する任意の目標を達成するための要求事項又は評価項目の評価値を示すものである。ただし、部分性能評価素値は、各評価項目の重要性(又は優先度)を意味する重みは考慮されていない。部分性能評価素値の算出のための詳細フローを図9に示す。図9における第1の工程(F4−1)は性能重み係数セットの読み出しである。ここでは、図8に示す性能重み係数セット算出工程において算出され、制御部(C)における記憶部(M)に保存された性能重み係数セットPi(i=1、2、3、・・・、n)の読み出しを行う。

0111

図9における第2の工程(F4−2)では、該当する性能重み係数を入力する。該当する性能重み係数とは、性能重み係数セットPiのうち、定量値で与えられた評価結果が属する性能水準に対応した性能重み係数のことである。これは、評価値入力部(I3)を用いて行われる。評価値入力部(I3)を用いた性能重み係数の入力の例としては、性能重み係数セットを読出し、例えば、識別時間の場合、表13に示す性能重み係数セットを読出し、定量値で与えられた評価結果が属する性能水準に対応した性能重み係数をオペレータ手動入力するほか、一般の表計算シートで利用可能な論理関数、例えば、IF文などを用いて0.6(秒)以内ならば0.565を代入するなどといった、評価結果を手動入力した後、入力された評価結果に対応した性能重み係数が自動で条件入力される機能を利用することもできる。

0112

図9における第3の工程(F4−3)は、第2の工程(F4−2)で入力された性能重み係数の性能重み係数セットの最大値による除算である。すなわち、読み出された性能重み係数セットの最大値をPmaxとし、定量値として与えられた評価結果が属する性能水準に対応した性能重み係数をPiすると、部分性能評価素値Vは(数8)の式に示す除算で与えられる。例えば、表13に示す識別時間の性能重み係数セットの場合、性能重み係数セットの最大値は、0.565であり、性能重み係数セットの最大値で第2の工程(F4−2)で入力された性能重み係数Piを除算する。この演算は、制御部(C)における部分性能評価素値演算部(P5)において行われる。

0113

(数8)


・・・(8)

0114

最後に、図9における第4の工程(F4−4)は、第3の工程(F4−3)で算出された部分性能評価素値Vの保存である。部分性能評価素値Vは、制御部(C)における記憶部(M)に保存される。

0115

図4における部分性能評価素値算出工程(F4)について、例として、識別性の評目である識別時間、発現角度及び識別照度の評価における部分性能評価素値の具体的な算出方法の説明を行う。表15は、偽造防止印刷物S、T、Uに対し、あらかじめ定量値で与えられた識別時間、角度及び照度に関する評価結果である。なお、表15に示す識別時間、角度及び照度の値は、仮の偽造防止印刷物に対する仮の評価値を示すものであって、実際に評価を行う場合には、評価の対象となる銀行券や諸証券等の偽造防止印刷物における評価値を入力すれば良い。

0116

(表15)

0117

図9における第1の工程(F4−1)として、制御部(C)における記憶部(M)から、識別時間、発現角度及び識別照度に対応した性能重み係数セット(表13及び表14)を読み出し、読み出した性能重み係数セットを参照し、次に、図9における第2の工程(F4−2)として、表15に示した各評価結果に対応した区間の性能水準及び性能水準に対応した性能重み係数Piと性能重み係数の最大値Pmaxを表16に示すように入力した。なお、一般の表計算シートで利用可能な最大値関数を使用し、最大値が自動入力される仕様とすることもできる。

0118

(表16)

0119

次に、図9における第3の工程(F4−3)として、図9における第2の工程(F4−2)で入力された性能重み係数の最大値Pmaxによる性能重み係数Piの除算を行い、部分性能評価素値を算出し、図9における第4の工程(F4−4)として、制御部(C)の記憶部(M)に部分性能評価素値が保存される。表16に示す各偽造防止印刷物の評価項目である識別時間、観察角度及び照度における部分性能評価素値Vの算出結果を表17に示す。

0120

(表17)

0121

次に、図4における部分性能評価値算出工程(F5)では、部分性能評価値Rを算出する。本発明において、部分性能評価値Rとは、各評価項目の重要度、すなわち、重み係数が考慮された各評価項目の評価値のことであり、部分性能評価値Rは、部分性能評価素値と重み係数の乗算によって算出される。この演算は、制御部(C)における部分性能評価値演算部(P5)において算出される。

0122

部分性能評価値Rの算出のための詳細フローを図10に示す。図10における第1の工程(F5−1)は、制御部(C)の記憶部(M)からの部分性能評価素値Vの読み出しであり、ここでは、表17に示された部分性能評価素値Vの読み出しを行う。

0123

図10における第2の工程(F5−2)は、重み係数算出工程(F2)で算出され記憶部(M)に保存された重み係数の読み出しであり、ここでは表10に示された重み係数の読み出しを行う。図10における第3の工程(F5−3)は、制御部(C)の部分性能評価値演算部(P5)を用いて行われる部分性能評価素値とそれに対応する重み係数の乗算であり、ここでは、読み出された表10の重み係数と表17の部分性能評価値Vを用い、同じ評価項目同士の偽造防止印刷物S、T、Uの部分性能評価素値と重み係数を乗算する。例えば、表18に示す偽造防止印刷物Sの識別時間における部分性能評価値Rは、以下の(数9)に示す演算によって求められる。

0124

(数9)偽造防止印刷物Sの識別時間における部分性能評価値
= 0.481(識別時間の重み係数)×0.098(偽造防止印刷物Sの識別時間における部分性能評価素値) = 0.047

0125

(数9)と同様にして、表18に示す部分性能評価素値Rと対応する重み係数を乗算することで、各偽造防止印刷物における識別時間、発現角度、識別照度の部分性能評価値が算出される。

0126

図10における第4の工程(F5−4)は、算出された部分性能評価値Rを保存であり、制御部(C)の記憶部(M)に部分性能評価値Rの演算結果が保存される。

0127

次に、図4における総合性能評価値算出工程(F6)は、総合評価値Tの算出である。本発明において、総合性能評価値Tとは、各偽造防止印刷物において各評価項目毎に演算された部分性能評価値Rの和算である。総合性能評価値Tは、制御部(C)における総合性能評価値演算部(P6)において算出される。

0128

総合性能評価値の算出のための詳細フローを図11に示す。図11における第1の工程(F6−1)は、制御部(C)の記憶部(M)からの部分性能評価値(R)の読み出しである。表18に各評価項目における部分性能評価値を示す。

0129

(表18)

0130

図11における第2の工程(F6−2)は、制御部(C)の総合性能評価値演算部(P6)を用いて行われる各偽造防止印刷物の部分性能評価値の和算である。表18に示す各偽造防止技術における総合性能評価値の演算結果を表19に示す。

0131

(表19)

0132

図11における第3の工程(F6−3)は総合性能評価値Tの保存である。第2の工程(F6−2)で算出された総合性能評価値Tは、制御部(C)の記憶部(M)に保存される。

0133

図4における出力工程(F7)は、演算結果の出力である。図3の評価出力部(O)を用い、部分性能評価値算出工程(F5)で算出された部分性能評価値P及び/又は総合性能評価値算出工程(F6)で算出された総合性能評価値の演算結果の出力を行う。図12(a)は、例として、棒グラフにより総合性能評価値を表した図であり、図12(b)は、レーダチャートにより各評価項目の部分性能評価値を表した図である。なお、グラフの種類は図12に示す例に限定されず、様々な様態可視化方法が想定される。

0134

以上、本発明である偽造防止印刷物の総合評価システム(A)及び方法の実施の形態について説明した。なお、本発明は図6(d)に示される実線で描画された単一のツリー構造に限定して適用されるものではない。図6(d)における大評価項目と示される識別時間がさらに下位のツリー構造(中評価項目)を有している場合は、中評価項目の部分性能評価値の合計をあらかじめ算出し、識別時間の部分性能評価値として想定(運用)することができる。同様に、実施の形態の例で最終目的として設定された「識別性が優れた偽造防止印刷物」が、なんらかの上位の評価項目に従属する下位の評価項目であると想定することもできる。例えば、「識別性が優れた偽造防止印刷物」が「利便性」を実現するための評価項目の一つである場合は、本実施の形態で算出された「識別性が優れた偽造防止印刷物」の総合性能評価値が「利便性」を評価するための一つ部分性能評価値であると想定することができる。また、各評価項目同士及び性能水準同士の一対比較を複数の評価者が行う場合には、評価者による一対比較値のばらつきを緩和するために、幾何平均値を算出して各評価項目の重み係数と性能重み係数を算出しても良い。

0135

(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における偽造防止印刷物総合評価システム(B)について説明する。第2の実施の形態は、同じ階層内に設定された複数の評価項目同士の相互に依存関係がある場合、例えば、評価項目Aの評価値が高ければ、評価項目Bの評価も高い又はその逆に、評価項目Aの評価値が低ければ、評価項目Bの評価も低いというような関係がある場合に、評価項目同士の一対比較によって算出した重み係数の補正を行うことで、さらに精度の高い評価を行うことが可能な偽造防止印刷物総合評価システム(B)と偽造防止印刷物の総合評価方法である。なお、重み係数の補正の方法と、相互に依存する評価項目の具体例については、以下に記載の偽造防止印刷物総合評価システム(B)の構成と偽造防止印刷物の総合評価方法において説明する。

0136

本発明の第2の実施の形態における偽造防止印刷物総合評価システム(B)の構成を示すブロック図を図13に示す。偽造防止印刷物総合評価システム(B)は、実施の形態1と同様に、制御部(C)を中核とし、大別して、評価ツリー構造設定部(S)、データ入力部(I)及び評価出力部(O)から構成される。各部位の具体的な機能は後述するが、一連の機能は、偽造防止印刷物総合評価システム(A)と同様に汎用のパソコン上で稼働する表計算ソフトや数値解析ソフトなどを用いて実装することができる。

0137

第1の実施の形態で説明した偽造防止印刷物総合評価システム(A)と、第2の実施の形態の偽造防止印刷物総合評価システム(B)との差異は、図13に示すように、入力部(I)に相互依存値入力部(I4)、並びに、評価処理部(P)に依存係数演算部(P7)及び重み補正演算部(P8)を備える点である。図13において、理解を容易にするために、これらの差異となる部位を色分けして図示している。以下、主として差異となる部位についてとりあげ、説明する。

0138

(相互依存値入力部)
相互依存値入力(I4)部は、本発明の第2の実施の形態の特徴であり、各評価項目間の相互依存性の評価結果を入力する部位である。なお、相互依存性の詳細については後述するが、相互依存値入力部(I4)による入力について簡単に説明すると、ある一つの評価項目に対する、同じ階層内に属する各評価項目間の影響度を評価するための一対比較を行い、その評価値の入力を行う。なお、相互依存値入力部(I4)で入力する一対比較値は、予め記憶部(M)に保存しておき、それを読みだして、該当する値を入力しても良いし、一対比較を行う段階で、適宜、一対比較値を導出し、入力しても良い。

0139

(依存係数演算部)
依存係数演算部(P7)は、相互依存値入力部(I4)で入力された各評価項目間の一対比較による評価値から相互依存重み係数の算出を行う部位である。相互依存重み係数の算出方法は、(数1)、(数2)、(数3)及び(数4)で述べた主固有ベクトル法のほか、幾何平均法又は調和平均法が用いられ、いずれの場合も表計算ソフトや数値解析ソフト上に実装される。

0140

(重み補正演算部)
重み補正演算部(P8)は、あらかじめ重み係数演算部(P1)で導出された各評価項目の重み係数(各評価項目の相互依存性を有した)と依存係数演算部(P7)で算出した相互依存重み係数との乗算演算を行う部位である。その他の部位の構成と機能は偽造防止印刷物総合評価システム(A)と同様である。

0141

次に、偽造防止印刷物総合評価システム(B)を用いた第2の実施の形態の偽造防止印刷物の総合評価方法の説明を行う。図14は、第2の実施の形態の総合評価方法の概要を示すフローチャートである。第1の実施の形態の総合評価方法との差異は、図14において、重み係数算出工程(G2)の後に、重み係数の補正工程(G3)が新たに加えられた点である。理解を容易にするため、図14の重み係数の補正工程(G3)を色分けして図示している。重み係数の補正とは、従来技術における課題でも述べた通り、ツリー構造として導出された各評価項目間の相互の依存性に起因する評価精度低下の解消を目的とし、重み係数算出工程(G2)で算出された各評価項目における重み係数に対し、重み係数の補正工程(G3)で算出された相互依存重み係数を用い、修正演算を施すことである。以下、図14の重み係数の補正工程(G3)の詳細フローを図15に示し、実施例を交えながら説明する。

0142

図15における第1の工程(G3−1)は、各評価項目における相互依存性の一対比較値の入力である。これは、相互依存値入力部(I4)を用いて行われる。具体例として、第1の実施の形態でも引用した識別性における三つの評価項目である識別時間、観察角度及び識別照度を例示し、各評価項目間における相互依存性の評価方法について説明する。

0143

相互依存性評価の概要について述べる。はじめに、各評価項目の中から一つの評価項目をとりあげ、その一つの評価項目を鑑みた各評価項目間の相互依存性についての一対比較を行う。次に、残りの評価項目についても順次とりあげ、最終的には全ての評価項目において、各評価項目間の同様の一対比較を行うものである。ここで、一つの評価項目における各評価項目間の相互依存性についての一対比較の方法について説明する。

0144

例えば、前述した識別性に関する三つの評価項目である識別時間、観察角度及び識別照度の場合ならば、はじめに識別時間における各評価項目間の一対比較、具体的には、識別時間(対)発現角度、識別時間(対)発現照度、発現角度(対)識別照度の一対比較を行うことになる。ここで、識別時間における識別角度(対)識別照度の相互依存性評価を事例に説明する。はじめに、一対比較を行う場合には、識別角度と識別照度でどちらの評価項目が識別時間により影響を与えるか、あるいは同程度に影響するかという観点で一対比較を行う。ここで、一対比較値としては表20に示す評価値を用いる。

0145

(表20)

0146

例えば、特許2615401号に記載の技術では、正面から観察した場合に画像が視認できないが、傾けることで潜像が出現するものであり、このときの傾ける角度が小さければ、傾けるために要する時間、すなわち、識別時間は短くなり、傾ける角度が大きければ、傾けるために要する時間、すなわち、識別時間は長くなる。そのため、識別時間は発現角度の大小に依存したものといえる。同じく、識別時間は、特許2615401号に記載の技術の観察環境、一例をあげれば、識別照度にも依存する。人間工学における認知の観点から十分な明るさを有さない観察環境、すなわち400LXを下回るような環境では、より多くの識別時間を要する。つまり、相互依存性の一対比較とは、一例をあげるとするならば、識別時間において、観察角度と識別照度の影響度の強さを比較することである。

0147

表21は、各評価項目における影響力、すなわち相互依存の強さ加減の評価を各評価項目間で一対比較した結果である。前述したように、識別性に関する三つの評価項目から一つの評価項目を順次とりあげ、取りあげた評価項目を鑑みた各評価項目間の相互依存性の一対比較を行う。そのため、表21には3組の一対比較結果が示されている。一対比較の結果は、図13における相互依存値入力部(I4)を用いて入力した。一対比較値の入力方法は、段落(0010)に基づくものとし、表21記載の識別時間への影響力の一対比較ならば、発現角度と識別照度の一対比較を行い、前術の比較結果として発現角度が識別照度と比較して影響力が強い(「強い・・・5」表20より)と評価されたのならば、発現角度の行方向に5が挿入される。これに伴い、識別照度の行方向には自動的に前術の数値の逆数である1/5が挿入される。なお、表21に示した一対比較結果の対角線上には、同一評価項目の比較結果であるので1が挿入される。

0148

(表21)

0149

図15における第2の工程(G3−2)は、相互依存重み係数の演算である。相互依存重み係数とは、前項で説明した特定の評価項目における各評価項目間の一対比較結果から導出された各評価項目間の相互依存関係の強さを示すものである。この演算の方法は、(数1)、(数2)、(数3)及び(数4)に記載の主固有ベクトル法に基づき、制御部(C)における依存係数演算部(P7)を用いて演算される。なお、相互依存重み係数の演算は、幾何平均や調和平均を用いた他の方法の使用も想定することができる。具体例として、第1の工程(G3−1)において入力された表21に示す三つの評価項目における相互依存重み係数の演算結果を表22に示す。なお、相互依存重み係数は評価項目ごとに3行1列の形で算出されるが、図中では横方向の3列集約し表示している。

0150

(表22)

0151

図15における第3の工程(G3−3)は、依存係数演算部(P7)で算出された相互依存重み係数の整合度の演算である。整合度の演算の方法は、(数5)に記載の式に基づき、図13の制御部(C)における整合度演算判定部(P2)で算出される。具体例として表22に示した相互依存重み係数の整合度は、識別時間、観察角度及び識別照度の同順で、それぞれ、0.006、0.019及び0.000と算出された。

0152

図15における第4の工程(G3−4)は、演算された整合度の判定である。もし、0.15を上回るようであれば、重み付けにブレや揺らぎを含んでいることが懸念されるため、図15中の矢印で示されるように第1の工程(G3−1)に戻り、相互依存に関する一対比較値の再入力をする。本具体例で求められた三つの値は、全て0.15を下回るため、全て適切であると判定された。なお、図15に示す通り、求められた相互依存重み係数は、必要に応じ、制御部(C)における記憶部(M)に適宜保存することができる。

0153

図15における第5の工程(G3−5)は、制御部(C)における記憶部(M)に保存された重み係数の読み出しである。この重み係数は、図14の重み係数算出工程(G2)において、各評価項目の重要性(又は優先度)に関する一対比較に基づき算出し、あらかじめ保存されたものである。本実施の形態における例として、表10に示される重み係数を用いるものとする。

0154

図15における第6の工程(G3−6)は、相互依存重み係数の乗算である。これは、第5の工程(G3−5)で読み出された重み係数に対し、第2の工程(G3−2)で算出された相互依存重み係数を乗算し、各評価項目間の相互依存性の解消を図るものである。相互依存重み係数の乗算は、制御部(C)の重み補正演算部(P8)を用いて行われる。相互依存重み係数をmi(i=1、2、3、・・・、n)、あらかじめ求められた重み係数をwi(i=1、2、3、・・・、n)としたとき、相互依存重み係数の乗算結果Wi(i=1、2、3、・・・、n)は(数10)の式となる。ただし、nは評価項目の数を表す。

0155

(数10)

0156

(数10)に定義した乗算に基づき、制御部(C)における重み補正演算部(P8)を用いた補正演算の実施例を(数11)に示す。なお、ここで用いられている重み係数wiは第1の実施の形態の表10に示されたもの、また、相互依存係数miは表22に示されたもの用いた。補正演算後の重み係数Wiは、次式の通り算出された。

0157

(数11)


・・・(11)

0158

なお、(数11)による補正がなされた、W1、W2、W3の値(0.264、0.459、0.277)は、図15における第7の工程(G3−7)に示したとおり、制御部(C)における記憶部(M)に保存される。

0159

以上、第2の実施の形態の偽造防止印刷物の総合評価方法における重み係数の補正工程(G3)について詳細な説明を行った。前述したように図14における第1(G1)、第2(G2)、第4(G4)、第5(G5)、第6(G6)及び第7(G7)の工程は、第1の実施の形態の総合評価方法の工程と同一ではあるが、部分性能評価値の算出工程(G5)では、補正後の重み係数を用いて、部分性能評価素値と乗算が行われる。補正された各評価項目の重み係数を用いて新たに算出された識別性に関する総合性能評価値及び部分性能評価値の評価結果を実施例として図16に示す。

0160

第2の実施の形態では、評価項目同士の相互依存性が加味された重み係数を用いることで、第1の実施の形態の図12に示す評価結果に対して、図16に示す評価の値が異なっている。このことから第2の実施の形態では、評価項目同士に依存関係がある場合に、補正された重み係数が反映されており、適切な評価ができていることが分かる。

0161

A偽造防止印刷物の総合評価システム
S 評価ツリー構造設定部
S1 階層設定部
S2評価項目入力部
Iデータ入力部
I1 重み入力部
I2 性能水準値入力部
I3評価値入力部
I4相互依存値入力部
C 制御部
P評価処理部
P1重み係数演算部
P2整合度演算判定部
P3 性能重み係数セット演算部
P4 部分性能評価素値演算部
P5 部分性能評価値演算部
P6総合性能評価値演算部
P7 依存係数演算部
P8 重み補正演算部
M 記憶部
評価値出力
O1 評価一覧表作成部
O2 評価プロファイル作成部

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