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技術 自動車電装・補機用転がり軸受

出願人 NTN株式会社
発明者 伊藤元博川村隆之
出願日 2014年1月10日 (6年1ヶ月経過) 出願番号 2014-002932
公開日 2015年7月23日 (4年6ヶ月経過) 公開番号 2015-132287
状態 特許登録済
技術分野 ころがり軸受
主要キーワード 鉄系金属部材 内部辺 自動車用ファン 流通穴 相互溶解度 油供給性 ドライブディスク 回転軸先端
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年7月23日)のものです。
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図面 (6)

課題

自動車電装補機に用いられる転がり軸受使用条件下において、水素脆性による転走面での剥離を防止でき、かつ、高温耐久性に優れる自動車電装・補機用転がり軸受を提供する。

解決手段

自動車電装・補機用転がり軸受1は、エンジン出力回転駆動される回転軸静止部材に回転自在に支持する軸受であり、内輪2および外輪3と、内輪2および外輪3間に介在する複数の転動体4と、内輪2および外輪3の軸方向両端開口部を覆うシール部材6と、転動体の周囲に封入されるグリース組成物7とを有し、グリース組成物7が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、基油が、(A)アルキルジフェニルエーテル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油、または、(B)エステル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油である。

概要

背景

近年、自動車の小型化、軽量化および静粛性向上の要求に伴ない、その電装部品補機部品の小型化、軽量化およびエンジンルーム内の密閉化が図られている。その一方、装置の性能自体には高出力、高効率化の要求が増大し、エンジンルーム内の電装補機においては、小型化に伴なって生じる出力の低下を高速回転させることで補う手法が採られている。以下に、自動車電装補機用転がり軸受の例として、ファンカップリング装置用転がり軸受、自動車用オルタネータ用転がり軸受およびアイドラプーリ用転がり軸受について概要を説明する。

自動車用ファンカップリング装置は、内部に粘性流体封入し、外周面送風用ファンが取り付けられたハウジングを、軸受を介してエンジン直結するロータに連結され、雰囲気温度感応して増減する粘性流体の剪断抵抗を利用して、エンジンからの駆動トルク伝達量およびファンの回転数を制御することにより、エンジン温度に対応した最適な送風を行なう装置である。このため、ファンカップリング装置用転がり軸受は、エンジン温度の変動に伴い回転数が1000rpmから10000rpmまで変動する回転ムラの他に、夏場高速運転時には180℃以上の高温下で、回転数10000rpm以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐久性が要求される。

自動車用オルタネータは、エンジンの回転をベルトで受けて発電し、車両の電気負荷電力を供給するとともに、バッテリー充電する機能を有する。また、自動車用アイドラプーリは、エンジンの回転を自動車の補機に伝える駆動ベルトベルトテンショナーとして使用されるものであり、軸間距離が固定されているような場合のベルトにテンショナーとして張力を与えるためのプーリとしての機能と、ベルトの走行方向を変えるため、または障害物を避けるために用いてエンジン室内容積の減少を図るアイドラとしての機能とを合わせ持つものである。自動車用オルタネータおよび自動車用アイドラプーリについても、180℃以上の高温下で、回転数10000rpm以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐久性が要求される。

これらの自動車電装・補機用転がり軸受の潤滑には主としてグリースが用いられている。ところが、急加減速や、高温、高速回転など、使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じるおそれがある。この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、グリースの分解などによって発生する水素が原因の水素脆性と考えられている。例えばグリースが分解して水素が発生し、それが転がり軸受の鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離が起きると考えられる。

水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため、接触要素間が油膜分断される弾性流体潤滑と考えられる条件でも、交番せん断応力が最大になる転がり表層内部辺りに亀裂が発生、伝播して早期剥離に至る。また、水がグリースに混入する条件下、すべりを伴う条件下、通電が起きる条件下などで使用されると、水あるいはグリースが分解して水素が発生しやすくなり、それが鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする上記の早期剥離が起きやすくなると考えられる。

このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を抑制する方法として、例えば、グリースに不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)や、ビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が提案されている。また、軸受転走面が鉄系金属軸受鋼で構成されることから、鉄との相互溶解度を考慮し、グリース組成物アルミニウムケイ素チタンタングステンモリブデンクロムコバルトなどの金属粉末を配合する方法も提案されている(特許文献3参照)。

また、従来、転がり軸受に用いるグリース組成物において、親水性有機インヒビターとして親水性基変性されたアルカノールアミン誘導体を配合したものが知られている(特許文献4参照)。このアルカノールアミン誘導体は、ドデカン酸セバシン酸などの二塩基酸ホウ酸などの酸と、ジエタノールアミンアミノテトラゾールジエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミンとの塩である。

その他、耐熱性機械的安定性耐水性防錆性耐荷重性難燃性などに優れた潤滑剤組成物として、鉱油合成油からなる基油に、第三リン酸カルシウムと、ジエタノールアミン類などのグリース構造安定化剤を配合したものが提案されている(特許文献5参照)。

概要

自動車電装・補機に用いられる転がり軸受の使用条件下において、水素脆性による転走面での剥離を防止でき、かつ、高温耐久性に優れる自動車電装・補機用転がり軸受を提供する。自動車電装・補機用転がり軸受1は、エンジン出力回転駆動される回転軸静止部材に回転自在に支持する軸受であり、内輪2および外輪3と、内輪2および外輪3間に介在する複数の転動体4と、内輪2および外輪3の軸方向両端開口部を覆うシール部材6と、転動体の周囲に封入されるグリース組成物7とを有し、グリース組成物7が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、基油が、(A)アルキルジフェニルエーテル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油、または、(B)エステル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油である。

目的

本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、自動車電装・補機に用いられる転がり軸受の使用条件下において、水素脆性による転走面での剥離を防止でき、かつ、高温耐久性に優れる自動車電装・補機用転がり軸受の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

エンジン出力回転駆動される回転軸静止部材に回転自在に支持する自動車電装補機用転がり軸受であって、前記転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、前記内輪および外輪の軸方向両端開口部を覆うシール部材と、前記転動体の周囲に封入されるグリース組成物とを有し、前記グリース組成物が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、前記基油が、(A)アルキルジフェニルエーテル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油、または、(B)エステル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油であることを特徴とする自動車電装・補機用転がり軸受。

請求項2

前記アルカノールアミンが、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンであることを特徴とする請求項1記載の自動車電装・補機用転がり軸受。

請求項3

前記アルカノールアミンが、ジエタノールアミンであることを特徴とする請求項2記載の自動車電装・補機用転がり軸受。

請求項4

前記増ちょう剤が、脂環族ジウレア化合物であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の自動車電装・補機用転がり軸受。

請求項5

前記アルカノールアミンが、前記グリース組成物全体に対して0.1〜10重量%含まれることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項記載の自動車電装・補機用転がり軸受。

請求項6

前記基油は、ポリα−オレフィン油を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項記載の自動車電装・補機用転がり軸受。

技術分野

背景技術

0002

近年、自動車の小型化、軽量化および静粛性向上の要求に伴ない、その電装部品や補機部品の小型化、軽量化およびエンジンルーム内の密閉化が図られている。その一方、装置の性能自体には高出力、高効率化の要求が増大し、エンジンルーム内の電装・補機においては、小型化に伴なって生じる出力の低下を高速回転させることで補う手法が採られている。以下に、自動車電装補機用転がり軸受の例として、ファンカップリング装置用転がり軸受、自動車用オルタネータ用転がり軸受およびアイドラプーリ用転がり軸受について概要を説明する。

0003

自動車用ファンカップリング装置は、内部に粘性流体封入し、外周面送風用ファンが取り付けられたハウジングを、軸受を介してエンジン直結するロータに連結され、雰囲気温度感応して増減する粘性流体の剪断抵抗を利用して、エンジンからの駆動トルク伝達量およびファンの回転数を制御することにより、エンジン温度に対応した最適な送風を行なう装置である。このため、ファンカップリング装置用転がり軸受は、エンジン温度の変動に伴い回転数が1000rpmから10000rpmまで変動する回転ムラの他に、夏場高速運転時には180℃以上の高温下で、回転数10000rpm以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐久性が要求される。

0004

自動車用オルタネータは、エンジンの回転をベルトで受けて発電し、車両の電気負荷電力を供給するとともに、バッテリー充電する機能を有する。また、自動車用アイドラプーリは、エンジンの回転を自動車の補機に伝える駆動ベルトベルトテンショナーとして使用されるものであり、軸間距離が固定されているような場合のベルトにテンショナーとして張力を与えるためのプーリとしての機能と、ベルトの走行方向を変えるため、または障害物を避けるために用いてエンジン室内容積の減少を図るアイドラとしての機能とを合わせ持つものである。自動車用オルタネータおよび自動車用アイドラプーリについても、180℃以上の高温下で、回転数10000rpm以上の高速回転という極めて過酷な環境に耐えられる耐久性が要求される。

0005

これらの自動車電装・補機用転がり軸受の潤滑には主としてグリースが用いられている。ところが、急加減速や、高温、高速回転など、使用条件が過酷になることで、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴った特異的な剥離が早期に生じるおそれがある。この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、グリースの分解などによって発生する水素が原因の水素脆性と考えられている。例えばグリースが分解して水素が発生し、それが転がり軸受の鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする早期剥離が起きると考えられる。

0006

水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため、接触要素間が油膜分断される弾性流体潤滑と考えられる条件でも、交番せん断応力が最大になる転がり表層内部辺りに亀裂が発生、伝播して早期剥離に至る。また、水がグリースに混入する条件下、すべりを伴う条件下、通電が起きる条件下などで使用されると、水あるいはグリースが分解して水素が発生しやすくなり、それが鋼中に侵入することで、水素脆性を起因とする上記の早期剥離が起きやすくなると考えられる。

0007

このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を抑制する方法として、例えば、グリースに不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)や、ビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が提案されている。また、軸受転走面が鉄系金属軸受鋼で構成されることから、鉄との相互溶解度を考慮し、グリース組成物アルミニウムケイ素チタンタングステンモリブデンクロムコバルトなどの金属粉末を配合する方法も提案されている(特許文献3参照)。

0008

また、従来、転がり軸受に用いるグリース組成物において、親水性有機インヒビターとして親水性基変性されたアルカノールアミン誘導体を配合したものが知られている(特許文献4参照)。このアルカノールアミン誘導体は、ドデカン酸セバシン酸などの二塩基酸ホウ酸などの酸と、ジエタノールアミンアミノテトラゾールジエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミンとの塩である。

0009

その他、耐熱性機械的安定性耐水性防錆性耐荷重性難燃性などに優れた潤滑剤組成物として、鉱油合成油からなる基油に、第三リン酸カルシウムと、ジエタノールアミン類などのグリース構造安定化剤を配合したものが提案されている(特許文献5参照)。

先行技術

0010

特開平3−210394号公報
特開2005−42102号公報
特開2008−266424号公報
特開平11−279578号公報
特開2008−156624号公報

発明が解決しようとする課題

0011

しかしながら、近年の自動車電装部品・補機では、小型化に伴ない軸受部材負荷される接触面圧が高くなる傾向にあり、また、アイドリングストップなどの高機能化に伴ない急加減速頻度が増加する傾向にある。転動体軌道輪との間における面圧の上昇や急加減速によるすべりの増大は、該部分における油膜切れ(潤滑不良)を起こしやすくする。このような過酷化された環境下では、従来の特許文献1や特許文献2のような、不動態化剤やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では、上記剥離現象を防ぐ対策として不十分になってきている。

0012

軸受摺動面における油膜厚さが薄くなるほど、上記剥離現象は起こりやすい。特に、上述の過酷化された環境下などでは、摺動面の潤滑が、境界潤滑条件となり油膜厚さはサブミクロンオーダー(0.1μm以下)となる。このような環境下では、例えば、特許文献3のように、鉄との相互溶解度が一定以上の金属粉末を用いる場合でも、その粒子径などによっては摺動面に十分に介入できず、効果が得られないおそれがある。

0013

特許文献4のように、従来の転がり軸受用グリース組成物において、アルカノールアミン塩が配合されているものはあるが、アルカノールアミン単体での上記剥離現象の防止能力については検討がなされていない。また、特許文献5に記載されるグリース組成物についても、上記剥離現象の防止能力については検討がなされておらず、必須成分の具体的な組み合わせによっては寧ろ悪影響を与える場合もある。また、自動車電装部品・補機用転がり軸受では、上述のとおり高温条件下で使用されるため、上記剥離現象を防止すると同時に、優れた高温耐久性を維持する必要がある。

0014

本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、自動車電装・補機に用いられる転がり軸受の使用条件下において、水素脆性による転走面での剥離を防止でき、かつ、高温耐久性に優れる自動車電装・補機用転がり軸受の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0015

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受は、エンジン出力回転駆動される回転軸静止部材に回転自在に支持する軸受であって、上記転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、上記内輪および外輪の軸方向両端開口部を覆うシール部材と、上記転動体の周囲に封入されるグリース組成物とを有し、上記グリース組成物が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、上記基油が、(A)アルキルジフェニルエーテル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油、または、(B)エステル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油であることを特徴とする。

0016

上記アルカノールアミンが、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンであることを特徴とする。特に、ジエタノールアミンであることを特徴とする。

0017

上記増ちょう剤が、脂環族ジウレア化合物であることを特徴とする。また、上記アルカノールアミンが、該グリース組成物全体に対して0.1〜10重量%含まれることを特徴とする。

発明の効果

0018

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受は、エンジン出力で回転駆動される回転軸を静止部材に回転自在に支持する軸受であり、内輪および外輪と、内輪および外輪間に介在する複数の転動体と、内輪および外輪の軸方向両端開口部を覆うシール部材と、転動体の周囲に封入されるグリース組成物とを有し、該グリース組成物が、基油と、増ちょう剤と、アルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を含まず、基油が、(A)アルキルジフェニルエーテル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油、または、(B)エステル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油であるので、近年の自動車電装・補機に用いられる転がり軸受の使用条件下においても、水素脆性による転走面での剥離を防止でき、かつ、高温耐久性に優れる。このため、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、ファンカップリング装置、中間プーリ、電動ファンモータなどの自動車電装部品、補機において、優れた軸受寿命を持つ転がり軸受として、好適に使用できる。

図面の簡単な説明

0019

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受の一実施例を示す深溝玉軸受の断面図である。
本発明の自動車電装・補機用転がり軸受を用いたファンカップリング装置を示す断面図である。
本発明の自動車電装・補機用転がり軸受を用いたオルタネータを示す断面図である。
本発明の自動車電装・補機用転がり軸受を用いたアイドラプーリを示す断面図である。
基油の酸価測定結果を示す図である。

0020

自動車電装・補機用転がり軸受において、水素脆性による転走面での剥離を防止すべく、潤滑に供するグリースについて鋭意検討を行なった結果、所定の基油を用いたグリースにアルカノールアミンを必須添加剤として配合することにより、高い高温耐久性を有しつつ、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できることを見出した。

0021

転がり軸受において、転動体と軌道輪、転動体と保持器などの鉄系金属部材同士が、潤滑油またはグリースに接触しながら転がり接触・摺動する場合、鉄系金属部材同士の接触面(主に転走面)において、油膜が殆ど無くなり、部分的に金属同士の表面が直接触れ合っているような状態である境界潤滑条件となる場合がある。近年の自動車電装・補機用転がり軸受では、上述のとおり、転動体と軌道輪との間における面圧の上昇や急加減速によるすべりの増大により、油膜切れを起こしやすくなっている。このように、転走面における過酷条件下(境界潤滑条件)で油膜が薄くなる場合であっても、摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において、アルカノールアミンが吸着などすることで、鉄系金属新生面とグリースとの直接接触を防止できる。これにより、グリースの分解による水素の発生を抑制して、水素脆性による特異な剥離を防止でき、転がり軸受の寿命延長できると考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。

0022

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受に用いるグリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、添加剤であるアルカノールアミンとを含み、無機酸のアルカリ金属塩および無機酸のアルカリ土類金属塩を含まない。ここで、無機酸としては、リン酸オルトリン酸)、塩酸硝酸硫酸、ホウ酸などが挙げられ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、リチウムナトリウムカリウムカルシウムストロンチウムバリウムなどが挙げられる。具体的には、第三リン酸カルシウム(オルトリン酸のカルシウム塩)などが挙げられる。

0023

上記グリース組成物に用いるアルカノールアミンとしては、モノイソプロパノールアミンモノエタノールアミン、およびモノn−プロパノールアミンなどの一級アルカノールアミン、N−アルキルモノエタノールアミン、およびN−アルキルモノプロパノールアミンなどの二級アルカノールアミントリエタノールアミンシクロヘキシルジエタノールアミン、トリ(n−プロパノール)アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジアルキルエタノールアミン、およびN−アルキル(又はアルケニル)ジエタノールアミンなどの三級アルカノールアミンが挙げられる。また、アルカノール基の数により、モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミンに分類されるが、本発明では複数のヒドロキシル基(アルカノール基)とアミノ基のキレート作用により、鉄イオンを挟み込み、鉄系金属新生面の露出を防止しやすいことから、ジアルカノールアミンまたはトリアルカノールアミンを用いることが好ましい。

0024

上記の中でも、基油との相溶性と剥離現象の防止能力に優れ、入手性にも優れることから、下記式(1)のN−アルキル(又はアルケニル)ジエタノールアミンを用いることが好ましい。

0025

0026

式中のR1は、炭素原子数1〜20の直鎖もしくは分枝状のアルキル基またはアルケニル基を示す。また、炭素原子数は1〜12が好ましく、1〜8がより好ましい。具体的な化合物としては、例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−ペンチルジエタノールアミン、N−ヘキシルジエタノールアミン、N−ヘプチルジエタノールアミン、N−オクチルジエタノールアミン、N−ノニルジエタノールアミン、N−デシルジエタノールアミン、N−ウンデシルジエタノールアミン、N−ラウリルジエタノールアミン、N−トリデシルジエタノールアミン、N−ミリスチルジエタノールアミン、N−ペンタデシルジエタノールアミン、N−パルミチルジエタノールアミン、N−ヘプタデシルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、N−イソステアリルジエタノールアミン、N−ノナデシルジエタノールアミン、N−エイコシルジエタノールアミンなどが挙げられる。

0027

アルカノールアミンは、1種単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、アルカノールアミンは、室温および使用温度で液状またはペースト状のものが好ましい。また、溶剤などに分散された状態であってもよい。このようなアルカノールアミンを用いることで、自動車電装・補機における過酷条件下で転走面の油膜が薄くなる場合でも該部分に入り込みやすい。アルカノールアミンの動粘度としては、40℃において10〜100mm2/sが好ましく、40℃において40〜70mm2/sがより好ましい。

0028

アルカノールアミン(三級ジエタノールアミン)の市販品としては、例えば、ADEKA社製のアデカキクルーブFM−812、アデカキクルーブFM−832などが挙げられる。

0029

上記グリース組成物におけるアルカノールアミンの配合割合は、グリース全体に対して0.1〜10重量%であることが好ましい。この範囲内であると、他の悪影響なく、水素脆性による特異な剥離を防止し得る。10重量%をこえると、鉄との反応性が高くなりすぎて腐食摩耗が生じるなどのおそれがある。好ましくは0.3〜10重量%であり、より好ましくは0.3〜5重量%であり、さらに好ましくは2〜5重量%である。

0030

上記グリース組成物の基油は、(A)アルキルジフェニルエーテル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油、または、(B)エステル油を必須成分として基油全体に対して25重量%以上含む油である。アルキルジフェニルエーテル油のみからなる基油、または、エステル油のみからなる基油であってもよい。図5に示すように、アルキルジフェニルエーテル油は酸価安定性に優れ、高温耐久性に優れる。また、エステル油を含む基油とする場合であっても、該基油とアルカノールアミンとを併用することで、酸価低減が図れ、自動車電装・補機用途において十分な高温耐久性を有する転がり軸受となる。

0031

アルキルジフェニルエーテル油としては、下記式(2)で示されるモノアルキルジフェニルエーテル油、下記式(3)で示されるジアルキルジフェニルエーテル油、またはポリアルキルジフェニルエーテルなどが挙げられる。

0032

0033

式中のR2、R3、およびR4は、それぞれ炭素原子数8〜20のアルキル基であり、一つのフェニル環に結合しているか、あるいは二つのフェニル環にそれぞれ結合している。これらの中で、耐熱性などを考慮するとR3およびR4を有するジアルキルジフェニルエーテル油が好ましい。

0034

エステル油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケートジオクチルアジペートジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルシノレートなどのジエステル油トリオクチルトリメリテートトリデシルトリメリテートテトラオクチルピロメリテートなどの芳香族エステル油トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネートなどのポリオールエステル油、炭酸エステル油りん酸エステル油などが挙げられる。

0035

基油には、上記(A)(B)を満たすものであれば、アルキルジフェニルエーテル油とエステル油以外にポリα−オレフィン油(以下、「PAO」ともいう)や鉱油などの他の油を含んでいてもよい。特に、上記(A)または(B)にPAO油を含めた混合油とすることが好ましい。PAO(合成炭化水素油)は、α−オレフィンまたは異性化されたα−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α−オレフィンの具体例としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラドコセンなどが挙げられ、通常はこれらの混合物が使用される。

0036

基油の動粘度(混合油の場合は、混合油の動粘度)としては、40℃において10〜200mm2/sが好ましい。より好ましくは10〜100mm2/sであり、さらに好ましくは30〜100mm2/sである。

0037

上記グリース組成物の増ちょう剤は、特に限定されず、通常グリースの分野で使用される一般的なものを使用できる。例えば、金属石けん複合金属石けんなどの石けん系増ちょう剤、ベントン、シリカゲルウレア化合物ウレアウレタン化合物などの非石けん系増ちょう剤を使用できる。金属石けんとしては、ナトリウム石けんカルシウム石けんアルミニウム石けんリチウム石けんなどが、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、他のポリウレア化合物ジウレタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱耐久性に優れ、転走面への介入性付着性にも優れたウレア化合物の使用が好ましい。

0038

ウレア化合物は、ポリイソシアネート成分モノアミン成分とを反応して得られる。ポリイソシアネート成分としては、フェニレンジイソシアネートトリレンジイソシアネートジフェニルジイソシアネートジフェニルメタンジイソシアネートオクタデカジイソシアネートデカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜などが挙げられる。また、モノアミン成分は、脂肪族モノアミン脂環族モノアミンおよび芳香族モノアミンを用いることができる。脂肪族モノアミンとしては、ヘキシルアミンオクチルアミンドデシルアミンヘキサデシルアミンオクタデシルアミンステアリルアミンオレイルアミンなどが挙げられる。脂環族モノアミンとしては、シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。芳香族モノアミンとしては、アニリンp−トルイジンなどが挙げられる。

0039

これらのウレア化合物の中でも、耐熱耐久性に特に優れることから、ポリイソシアネート成分として芳香族ジイソシアネートを用いたジウレア化合物、例えば、モノアミン成分として芳香族モノアミンを用いた芳香族ジウレア化合物、脂肪族モノアミンを用いた脂肪族ジウレア化合物、脂環族モノアミンを用いた脂環族ジウレア化合物の使用が好ましい。特に、プーリなどの外輪回転用途においても油供給性などに優れることから、脂環族ジウレア化合物を用いることが好ましい。

0040

基油にウレア化合物などの増ちょう剤を配合してベースグリースが得られる。ウレア化合物を増ちょう剤とするベースグリースは、基油中で上記ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させて作製する。ベースグリース中に占める増ちょう剤の配合割合は、1〜40重量%、好ましくは3〜25重量%である。増ちょう剤の含有量が1重量%未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40重量%をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。

0041

上記グリース組成物の作製方法としては、まず、基油にアルカノールアミンを配合し、この基油を用いて増ちょう剤を作製する方法、アルカノールアミンを除いてグリース組成物を調整した後にこれに分散液を加える方法のいずれであってもよい。アルカノールアミンがアミノ基を含むので、ウレア化合物を増ちょう剤とする場合は、基油中で上記ポリイソシアネート成分とモノアミン成分とを反応させてベースグリースを作製した後に、アルカノールアミンを添加することが好ましい方法である。

0042

上記グリース組成物の混和ちょう度(JIS K 2220)は、200〜350の範囲にあることが好ましい。ちょう度が200未満である場合は、油分離が小さく潤滑不良となるおそれがある。一方、ちょう度が350をこえる場合は、グリースが軟質で軸受外に流出しやすくなり好ましくない。

0043

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受に用いるグリース組成物中において、アルカノールアミンは、酸との塩のように反応生成物の形ではなく、そのままの状態で存在している。よって、他の添加剤として、脂肪酸などのアルカノールアミンと塩を形成するような添加剤は含まないようにする。上記グリース組成物には、このような本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物などの酸化防止剤ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤ポリメタクリレートポリスチレンなどの粘度指数向上剤二硫化モリブデングラファイトなどの固体潤滑剤金属スルホネート多価アルコールエステルなどの防錆剤エステルアルコールなどの油性剤、他の摩耗防止剤などが挙げられる。これらを単独で、または2種類以上組み合せて添加できる。また、本発明では、ジチオリン酸モリブデン、ジチオカルバミン酸モリブデンなどの有機モリブデン化合物を配合しない構成とする場合でも、水素脆性による転走面での剥離を防止できる。

0044

上記の中でも、フェノール系酸化防止剤アミン系酸化防止剤およびジチオリン酸亜鉛から選ばれる少なくとも1つの酸化防止剤を含むことが好ましい。この中でも、ジチオリン酸亜鉛は必須とし、これにフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤の一方を併用することが好ましい。特に、ジチオリン酸亜鉛とアミン系酸化防止剤とを併用することが好ましい。また、これら酸化防止剤の配合割合は、基油と増ちょう剤の合計量100重量部に対して合計で0.5〜5重量部であることが好ましい。

0045

ジチオリン酸亜鉛(ジンクジチオフォスフェート;以下、「ZnDTP」という)としては、下記式(5)で示されるジアルキルジチオジチオリン酸亜鉛ジアリールジチオリン酸亜鉛などが挙げられる。

0046

式中のR5は、炭素原子数1〜24の一級または二級のアルキル基、または、炭素原子数6〜30のアリール基を示す。R5としては、例えば、メチル基エチル基プロピル基イソプロピル基、ブチル基、第二級ブチル基、イソブチル基ペンチル基、4−メチルペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基イソデシル基、ドデシル基テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基ドコシル基、テトラコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、フェニル基トリル基キシリル基エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ドデシルフェニル基、テトラデシルフェニル基、ヘキサデシルフェニル基、オクタデシルフェニル基、ベンジル基などが挙げられる。なお、これらの各R5は同一であっても、異なっていてもよい。

0047

これらの中でも、安定性に優れ、水素脆性による転走面での剥離防止にも寄与することからR5が一級のアルキル基であることが好ましい。また、R5がアルキル基である場合において、炭素原子数が多いほど、耐熱性に優れ、また、基油に溶けやすい。一方、炭素原子数が少ないほど、耐摩耗性に優れ、基油には溶けにくいものとなる。ZnDTPの好ましい市販品としては、例えば、ADEKA社製:アデカキクルーブZ112などが挙げられる。

0048

また、上記グリース組成物には、基油に溶解しない固体粉末を含有しないことが好ましい。なお、基油に溶解しないとは、例えば、溶解後の全重量に対して、0.5重量%の固体粉末を基油に加えて撹拌し、これを70℃×24時間保持後に目視で観察した結果、基油中に不溶解分析出している固体粉末をいう。不溶解分が析出していると基油が透明にならず、固体粉末がコロイド状態、あるいは懸濁状態になり、目視で判断できる。このような固体粉末としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、コバルト、金、銀、銅、イットリウムジルコニウムイリジウムパラジウム白金ロジウムルテニウムハフニウムタンタル、タングステン、レニウムオスミウムなどの金属粉末が挙げられる。本発明は、これらの金属粉末を配合しなくとも、アルカノールアミン(液状またはペースト状)を配合することで水素脆性による転走面での剥離を防止できる。

0049

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受の一例を図1に基づいて説明する。図1は転がり軸受(深溝玉軸受)の断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この転動体4は、保持器5により保持される。また、必要に応じて、内・外輪の軸方向両端開口部8a、8bがシール部材6によりシールされ、転動体4の周囲に上述のグリース組成物7が封入される。

0050

転がり軸受1において、内輪2、外輪3、転動体4、保持器5などの軸受部材を構成する鉄系金属材料は、軸受材料として一般的に用いられる任意の材料であり、例えば、高炭素クロム軸受鋼(SUJ1、SUJ2、SUJ3、SUJ4、SUJ5など;JIS G 4805)、浸炭鋼(SCr420、SCM420など;JIS G 4053)、ステンレス鋼(SUS440Cなど;JIS G 4303)、高速度鋼(M50など)、冷間圧延鋼などが挙げられる。また、シール部材6は、金属製またはゴム成形体単独でよく、あるいはゴム成形体と金属板プラスチック板、またはセラミック板との複合体であってもよい。耐久性、固着の容易さからゴム成形体と金属板との複合体が好ましい。

0051

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受として玉軸受を例示したが、上記以外の円筒ころ軸受円すいころ軸受自動調心ころ軸受針状ころ軸受スラスト円筒ころ軸受スラスト円すいころ軸受スラスト針状ころ軸受スラスト自動調心ころ軸受などの転がり軸受とすることもできる。

0052

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受の他の実施例を図2(a)および図2(b)に示す。図2(a)および図2(b)はファンカップリング装置の構造の断面図である。ファンカップリング装置は、冷却用ファン9を支持するケース10内にシリコーンオイルなどの粘性流体が充填されたオイル室11とドライブディスク18が組込まれた撹拌室12とを設け、両室11、12間に設けられた仕切板13にポート14を形成し、そのポート14を開閉するスプリング15の端部を上記仕切板13に固定している。冷却用ファン9が上述のグリース組成物が封入された転がり軸受1に回転自在に支持されている。また、ケース10の前面にバイメタル16を取付け、そのバイメタル16にスプリング15のピストン17を設けている。バイメタル16はラジエータを通過した空気の温度が設定温度、例えば 60℃以下の場合、扁平の状態となり、ピストン17はスプリング15を押圧し、スプリング15はポート14を閉じる。また、上記空気の温度が設定温度をこえると、バイメタル16は図2(b)に示すように、外方向にわん曲し、ピストン17はスプリング15の押圧を解除し、スプリング15は弾性変形してポート14を開放する。

0053

上記の構成からなるファンカップリング装置の運転状態において、ラジエータを通過した空気の温度がバイメタル16の設定温度より低い場合、図2(a)に示すように、ポート14はスプリング15によって閉じられているため、オイル室11内の粘性流体は撹拌室12内に流れず、その撹拌室12内の粘性流体は、ドライブディスク18の回転により仕切板13に設けた流通穴19からオイル室11内に送られる。このため、撹拌室12内の粘性流体の量はわずかになり、ドライブディスク18の回転による剪断抵抗は小さくなるので、ケース10への伝達トルクは減少し、転がり軸受1に支持されている冷却用ファン9は低速回転する。ラジエータを通過した空気の温度がバイメタル16の設定温度をこえると、図2(b)に示すように、バイメタル16は外方向にわん曲し、ピストン17はスプリング15の押圧を解除する。このとき、スプリング15は仕切板13から離れる方向に弾性変形するため、ポート14は開放し、オイル室11内の粘性流体はポート14から撹拌室12内に流れる。このため、ドライブディスク18の回転による粘性流体の剪断抵抗が大きくなり、ケース10への回転トルクが増大し、転がり軸受1に支持されている冷却用ファン9は高速回転する。

0054

以上のように、ファンカップリング装置は温度の変化に応じて冷却用ファン9の回転速度が変化するため、ウォーミングアップを早めると共に、冷却水過冷却を防止し、エンジンを効果的に冷却することができる。冷却用ファン9はエンジン温度が低いとドライブ軸20から切り離されているに等しく、高温の場合はドライブ軸20に連結されているに等しい。このように、転がり軸受1は低温から高温まで広い温度範囲、および、温度の変動に伴い回転数が大きく変動する急加減速条件で使用される。

0055

本発明の自動車電装・補機用転がり軸受の他の実施例としてオルタネータに用いられる自動車電装・補機用転がり軸受を図3により説明する。図3はオルタネータの構造の断面図である。オルタネータは、静止部材であるハウジングを形成する一対のフレーム21a、21bに、ロータ22を装着されたロータ回転軸23が、上述のグリース組成物が封入された一対の転がり軸受1、1で回転自在に支持されている。ロータ22にはロータコイル24が取り付けられ、ロータ22の外周に配置されたステータ25には、120 °の位相で3巻のステータコイル26が取り付けられている。ロータ回転軸23は、その先端に取り付けられたプーリ27にベルト(図示省略)で伝達される回転トルクで回転駆動されている。プーリ27は片持ち状態でロータ回転軸23に取り付けられており、ロータ回転軸23の高速回転に伴って振動も発生するため、特にプーリ27側を支持する転がり軸受1は、苛酷な負荷を受ける。

0056

自動車の補機駆動ベルトのベルトテンショナーとして使用されるアイドラプーリの一例を図4に示す。図4はアイドラプーリの構造の断面図である。このプーリは、鋼板プレス製のプーリ本体28と、プーリ本体28の内径に嵌合された単列の転がり軸受1(図1参照)とで構成される。プーリ本体28は、内径円筒部28aと、内径円筒部28aの一端から外径側に延びたフランジ部28bと、フランジ部28bから軸方向に延びた外径円筒部28cと、内径円筒部28aの他端から内径側に延びた鍔部28dとからなる環体である。内径円筒部28aの内径には、図1に示す転がり軸受1の外輪3が嵌合され、外径円筒部28cの外径にはエンジンによって駆動されるベルトと接触するプーリ周面28eが設けられている。このプーリ周面28eをベルトに接触させることにより、プーリがアイドラとしての役割を果たす。

0057

本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これらの例によって何ら限定されるものではない。

0058

[酸価の評価]
ジアルカノールアミンと基油との組み合わせによる酸価低減の効果を評価した。表1に評価した組み合わせ(参考例1〜14)を示す。アルカノールアミンを添加したものについては、基油100重量部に対してアルカノールアミンを2重量部添加した。添加したアルカノールアミンは、いずれもジエタノールアミン(ADEKA社製アデカキクルーブFM−812)である。また、PAOは、新日鉄化学社製シンフルード801、エステル油はHATCO社製H2362、アルキルジフェニルエーテル油は石油研究所製モレスハイルーブLB100である。

0059

表1に示す基油を30mLのビーカ鉄粉2gを予め入れたもの)に10g採取して150℃にて260時間放置したときの酸価(mgKOH/g)を中和滴定法で測定した。結果を表1および図5に示す。

0060

0061

表1および図5に示すように、PAOにアルカノールアミンを添加した参考例8は、PAO油単独の参考例1に対して酸価が増加した。また、エステル油を含むものは、アルカノールアミンの添加により酸価が減少した。

0062

実施例1〜実施例6、比較例1〜比較例8
まず、表2に示す配合で基油を単独で、または、混合して調整した。次に、この基油の半量に、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製ミリオネートMT、以下「MDI」と記す)を溶解し、残りの半量の基油にMDIの2倍当量となるシクロヘキシルアミンを溶解した。MDIを溶解した溶液を撹拌しながらシクロヘキシルアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120℃で30分間撹拌を続けて反応させて、脂環族ジウレア化合物を基油中に生成させベースグリースを得た。増ちょう剤を構成する各成分の配合割合は、グリース全体に対して生成した脂環族ジウレア化合物が表1の重量割合となるように調整した。これにアルカノールアミンを表1に示す配合割合で加えてさらに十分撹拌した。その後、三本ロール均質化し、供試グリースを得た。

0063

得られたグリースを転がり軸受に封入して急加減速試験を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。

0064

<急加減速試験>
電装補機の一例であるオルタネータを模擬し、回転軸を支持する内輪回転の転がり軸受(内輪・外輪・鋼球は軸受鋼SUJ2)に上記グリースを封入し、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、120℃の雰囲気下、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を1960N、回転速度は0rpm〜18000rpmで運転条件を設定し、摩耗による新生面の露出を促すためにグリース中に1重量%の鉄粉を混入させ、さらに、試験軸受(6203)内に1.0Aの電流が流れる状態で試験を実施した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって停止する時間(剥離発生寿命時間)を計測した。剥離発生寿命時間が、20時間以上の場合を「剥離試験:○」とし、20時間未満の場合を「剥離試験:×」とし、表2に示した。

0065

また、それぞれの実施例および比較例で用いた基油について、上記参考例を参照し、260時間経過後の酸価値が4.00mgKOH/g以下である場合を「高温耐久試験:○」とし、4.00mgKOH/gをこえる場合を「高温耐久試験:×」とし、表2に示した。なお、表2でアルカノールアミンが添加されているものは、上記参考例のアルカノールアミンの添加「有」を参照し、アルカノールアミンが添加されていないものは、上記参考例のアルカノールアミンの添加「無」を参照した。

0066

実施例

0067

表2に示すように、アルカノールアミン(ジエタノールアミン)を配合した各実施例は、各比較例と対比して剥離発生寿命時間が延長できた。これは、転走面で生じる水素脆性による白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止できたためであると考える。一方、アルカノールアミンを配合しない比較例2〜8では耐剥離性に劣る結果となった。

0068

本発明の転がり軸受は、水素脆性による転走面での剥離を防止でき、かつ、高温耐久性に優れるので、オルタネータ、カーエアコン用電磁クラッチ、ファンカップリング装置、中間プーリ、電動ファンモータなどの自動車電装部品、補機の転がり軸受として好適に使用できる。

0069

1転がり軸受
2内輪
3外輪
4転動体
5保持器
6シール部材
7グリース組成物
8a、8b 開口部
9冷却用ファン
10ケース
11オイル室
12撹拌室
13仕切板
14ポート
15スプリング
16バイメタル
17ピストン
18ドライブディスク
19流通穴
20ドライブ軸
21a、21bフレーム
22ロータ
23ロータ回転軸
24ロータコイル
25ステータ
26ステータコイル
27プーリ
28 プーリ本体

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