図面 (/)

技術 転炉における酸化マンガン還元方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 井本健夫小川雄司
出願日 2014年1月9日 (7年9ヶ月経過) 出願番号 2014-002566
公開日 2015年7月23日 (6年3ヶ月経過) 公開番号 2015-131980
状態 特許登録済
技術分野 炭素鋼又は鋳鋼の製造
主要キーワード 標準自由エネルギー変化 コントロール指示 実験水準 計算評価 一時的低減 軸受け材料 生産障害 時間不足
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年7月23日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

炭素濃度が2.5mass%以上で温度が1400℃以下の溶銑から溶鋼を製造する際に、転炉内での酸化マンガン還元添加を効率的に実施して、二次精錬工程におけるフェロマンガンなどの高価な合金使用量を削減する。

解決手段

転炉内の脱炭吹錬時のマンガン酸化物還元添加操業に際し、マンガン還元の適正操業条件である、溶鉄中炭素濃度≧0.1mass%,溶鉄温度:1500〜1650℃未満にて、送酸速度を低下させ1分以上の適正条件を確保することによって、COガス物質移動が反応に律側しない高反応性条件の反応時間延長によって高温吹止などの生産障害を回避しつつ多量のマンガンを溶鉄に添加する。

概要

背景

鋼中のマンガン成分は、鋼の靭性向上や、鋳片の偏析防止などのために添加される有用元素で、含マンガン鋼の多くは、フェロマンガンメタリックマンガンのような金属マンガン二次精錬取鍋工程にて添加して成分調整が行われた後に、鋳造圧延工程を経由して製造される。

これらのマンガンは、天然資源としてはマンガン鉱石などの酸化物状態で存在するために、合金用の金属マンガンの購入価格は、マンガン鉱石よりも非常に高価である。
そのため、非特許文献1に詳しく記載されているような、転炉吹錬中の溶鉄温度では酸化マンガン炭素還元可能であることから、転炉内に安価なマンガン鉱石を添加して、吹錬中に還元させて含マンガン溶鋼を製造して、二次精錬で使用する金属マンガン使用量を削減する操業が実施されている。

また、非特許文献2に詳しく記載されているように、天然産出のマンガン鉱石は融点が1550℃程度であることから、融点低下品(例えば焼結品)を添加して転炉吹錬の早い時期(低温域)で反応性の良い滓化状態にして還元効率を高める研究が行われている。

更に、鋼中炭素によるマンガン還元反応は、吸熱反応であることから、高温ほど還元が有利に進行することは良く知られており脱炭精錬完了した高温の溶鋼で酸素上吹き無しに撹拌して還元反応を進行させる手段(特許文献1)や、高温での炭素還元を長時間維持して高Mn溶銑を製造する手段(特許文献2)などが提案されている。

概要

炭素濃度が2.5mass%以上で温度が1400℃以下の溶銑から溶鋼を製造する際に、転炉内での酸化マンガン還元添加を効率的に実施して、二次精錬工程におけるフェロマンガンなどの高価な合金使用量を削減する。転炉内の脱炭吹錬時のマンガン酸化物還元添加操業に際し、マンガン還元の適正操業条件である、溶鉄中炭素濃度≧0.1mass%,溶鉄温度:1500〜1650℃未満にて、送酸速度を低下させ1分以上の適正条件を確保することによって、COガス物質移動が反応に律側しない高反応性条件の反応時間延長によって高温吹止などの生産障害を回避しつつ多量のマンガンを溶鉄に添加する。

目的

本発明は、上記従来技術の問題点を踏まえ、溶銑から溶鋼を製造する転炉操業時に、酸化マンガン還元を行う際に、大量のマンガン還元が可能でかつ、耐火物寿命に影響のある高温状態さらすことない、効率の良い操業方法の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

炭素濃度が2.5質量%以上で温度が1400℃以下の溶銑から溶鋼を製造する転炉脱炭処理において、溶鉄酸化マンガン含有添加物を添加するとともに、炭素濃度が0.1質量%以上で溶鉄温度が1500℃以上1650℃未満の時期に、送酸速度を脱炭処理中の平均送酸速度よりも低下させ、低下させた時間を合計で1分以上とし、吹止温度を1650℃未満とすることを特徴とする転炉における酸化マンガン還元方法

請求項2

送酸速度を脱炭処理中の平均送酸速よりも低下させた際の送酸速度が0〜100Nm3/h・tであることを特徴とする請求項1に記載の転炉における酸化マンガン還元方法。

請求項3

溶鉄温度が1450℃に達するまでに溶鉄に酸化マンガン含有添加物を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の転炉における酸化マンガン還元方法。

請求項4

送酸速度を脱炭処理中の平均送酸速度よりも低下させた際の、炉内スラグに酸化マンガンとして含有されるマンガン濃度が20質量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の転炉における酸化マンガン還元方法。

技術分野

0001

本発明は、溶銑から溶鋼を製造する転炉操業において、酸素吹錬による脱炭反応溶鉄中炭素によるマンガン酸化物還元反応の両方を1回の処理で行う、含マンガン溶鋼製造技術に関する。

背景技術

0002

鋼中のマンガン成分は、鋼の靭性向上や、鋳片の偏析防止などのために添加される有用元素で、含マンガン鋼の多くは、フェロマンガンメタリックマンガンのような金属マンガン二次精錬取鍋工程にて添加して成分調整が行われた後に、鋳造圧延工程を経由して製造される。

0003

これらのマンガンは、天然資源としてはマンガン鉱石などの酸化物状態で存在するために、合金用の金属マンガンの購入価格は、マンガン鉱石よりも非常に高価である。
そのため、非特許文献1に詳しく記載されているような、転炉吹錬中の溶鉄温度では酸化マンガン炭素還元可能であることから、転炉内に安価なマンガン鉱石を添加して、吹錬中に還元させて含マンガン溶鋼を製造して、二次精錬で使用する金属マンガン使用量を削減する操業が実施されている。

0004

また、非特許文献2に詳しく記載されているように、天然産出のマンガン鉱石は融点が1550℃程度であることから、融点低下品(例えば焼結品)を添加して転炉吹錬の早い時期(低温域)で反応性の良い滓化状態にして還元効率を高める研究が行われている。

0005

更に、鋼中炭素によるマンガン還元反応は、吸熱反応であることから、高温ほど還元が有利に進行することは良く知られており脱炭精錬完了した高温の溶鋼で酸素上吹き無しに撹拌して還元反応を進行させる手段(特許文献1)や、高温での炭素還元を長時間維持して高Mn溶銑を製造する手段(特許文献2)などが提案されている。

0006

田畑芳明 ら:鉄と鋼,Vol.76(1990),p1916.
金子敏行 ら:鉄と鋼,Vol.79(1993),p941.
日刊工業新聞社:製鋼反応の推奨平衡値(1968).
内田晋 ら:鉄と鋼,Vol.77(1991),p490.

先行技術

0007

特開2000−096117号公報
特開昭61−272345号公報

発明が解決しようとする課題

0008

しかし、非特許文献1に記載の操業で得られている実績は、同文献の1920頁Fig.8記載のように、吹止温度は1630〜1670℃で得られたマンガン濃度は1wt%に満たない(0.6〜0.9 wt %)溶鋼が得られる程度であり、また、非特許文献2に記載の技術でも、焼結品を用いてもマンガン鉱石単体添加より還元向上効果は認められているが、同文献の947頁Fig.16に記載のように、得られた鋼中マンガン濃度は0.8 wt %以下であった。
一般に、厚板材などに求められる製品中のマンガン含有量は1〜3質量%(mass%と記載する場合もある)である場合が多く、マンガン鉱石をより多く還元可能な技術の要求は極めて高いものである。

0009

さらに、高温域でのマンガン還元を有利に進行させるための特許文献1記載の手段では、マンガン還元を実施するためにリンシングによって還元時間延長を図っているが、同文献の図5記載のように、リンシング開始時の温度は1680℃以上であり、この程度の温度での操業は、転炉耐火物に対しては損耗の激しい状態であり、耐火物寿命極端な低下を招いたり、非吹錬時に実施する炉補頻度が増加して高生産性が維持できないという深刻な課題を含むものであった。
また、マンガン鉱石を大量に還元するためには、特許文献2のように、高温で十分な炭素濃度を確保して、長時間の吹錬を行う溶融還元技術はあるが、このときに得られる溶鉄には炭素が7%程度含有されていることからそのまま二次精錬工程で製品にできるものではない。

0010

本発明は、上記従来技術の問題点を踏まえ、溶銑から溶鋼を製造する転炉操業時に、酸化マンガン還元を行う際に、大量のマンガン還元が可能でかつ、耐火物寿命に影響のある高温状態さらすことない、効率の良い操業方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意研究した。その結果、マンガン鉱石などの安価な酸化マンガンを転炉吹錬で効果的に還元添加できる手段を見出した。その要旨は以下のとおりである。

0012

(1)炭素濃度が2.5質量%以上で温度が1400℃以下の溶銑から溶鋼を製造する転炉脱炭処理において、溶鉄に酸化マンガン含有添加物を添加するとともに、炭素濃度が0.1質量%以上で溶鉄温度が1500℃以上1650℃未満の時期に、送酸速度を脱炭処理中の平均送酸速度よりも低下させ、低下させた時間を合計で1分以上とし、吹止め温度を1650℃未満とすることを特徴とする転炉における酸化マンガン還元方法
(2) 送酸速度を脱炭処理中の平均送酸速よりも低下させた際の送酸速度が0〜100Nm3/h・tであることを特徴とする前記(1)に属する転炉における酸化マンガン還元方法。
(3) 溶鉄温度が1450℃に達するまでに溶鉄に酸化マンガン含有添加物を添加することを特徴とする前記(1)又は(2)に属する転炉における酸化マンガン還元方法。
(4) 送酸速度を脱炭処理中の平均送酸速度よりも低下させた際の、炉内スラグに酸化マンガンとして含有されるマンガン濃度が20質量%以上であることを特徴とする前記(1)、(2)、(3)のいずれかに属する転炉における酸化マンガン還元方法。

発明の効果

0013

本発明によれば、マンガン鉱石などの安価な酸化マンガンを転炉吹錬で効果的に還元添加でき、その工業的な利用価値は極めて高いものである。

図面の簡単な説明

0014

上底吹き転炉による本発明の実施を模式的に示す図である。

0015

本発明の転炉での酸化マンガン還元添加方法(以下「本発明方法」という)の実施形態を、図1に基づいて説明する。なお、本発明方法は、ここに示す実施形態に限られるものではなく、上吹き転炉、Q−BOP、AODなどの各種転炉型精錬設備にて適宜実施できるものである。

0016

転炉内には、溶鉄1とスラグ2が挿入され、上吹きランス3より酸素4が供給される。底吹き羽口5からは、撹拌ガス6(撹拌ガスには、窒素炭酸ガス、酸素、アルゴンなどが適宜用いられる)が吹き込まれている。転炉は、耐火物7(マグネシアカーボンなど適宜)を内張りした鉄皮8で構成されている。ホッパー9より、炉口から炉内に副材10が添加される。サブランス11は、測温、サンプリングメタル及び/又はスラグ)、CDセンサー(メタル凝固点測定に基づくオンラインバッチ[C]測定)機能を有している。

0017

転炉による溶銑から溶鋼を製造する脱炭処理は、一般的な転炉では、炉内容積に応じた溶銑量(炉容比:炉内体積/溶鉄体積=5〜9程度)が挿入され、現状では、多孔ランス採用などの技術導入によって、溶鉄1tあたりの平均送酸速度は200〜300Nm3/hでの高速吹錬で所定成分の溶鋼に脱炭するまでの吹錬時間は10〜20分が一般的となっている。

0018

ここで、脱炭前の溶銑は、高炉から出銑される溶銑(一般的に溶鉄中炭素濃度:[C]≧4mass%)のみならず、溶銑予備処理ラップ配合によって炭素濃度の低下したものも対象となる。
溶銑と溶鋼の定義は、一般的には[C]で区分され、その濃度は文献によって異なる。本発明の説明では、鋳物銑などに用いられる脱炭吹錬を必要としない高炭素濃度と、軸受け材料などに用いられる脱炭吹錬を必要とする高炭素鋼を区分する意味で、[C]>2mass%の溶鉄を溶銑とし、[C]≦2mass%の溶鉄を溶鋼として扱う。
また、本発明は、一般の低合金鋼のみならず、20mass%以上の鉄以外の合金成分を含んだ特殊高Ni製品の製造などにも適用できることから、溶鉄は、鉄を50mass%以上含有する溶融金属として規定する。

0019

本発明で、炭素濃度が2.5mass%以上で温度が1400℃以下の溶銑を対象としたのは、溶銑から溶鋼を製造することを目的とした転炉における脱炭吹錬前の溶銑の炭素濃度および、温度がこの範囲であり、本発明の実施には適した範囲であることに付け加え、炭素濃度が2.5%未満である場合には、次工程以降から要求される、吹止温度確保に加えて、マンガン還元のための熱源の炭素が不足して、還元操業のためには吹錬中の炭材添加などのコス作業負荷が加わることが多くなること、また、高温溶銑では燐分配が低下することから、初期温度が1400℃を超える溶銑では、処理前の溶銑[P]が高位ばらつく場合が多く、マンガン還元と同時に進行する復燐のための高[P]による成分外れなどの操業障害が発生しやすいためである。

0020

まず、現状の転炉マンガン還元操業について説明する。
吹錬中の鋼中へのマンガン還元反応は、代表的には下記(1)式で進行する。
(MnO)+C → Mn+CO↑ ・・・(1)
但し、(MnO):スラグ中のMnOを示し、C、Mn:メタル中のC、Mnを示す。

0021

このため、鋼中にマンガンを還元添加するにはMnO源が必要となる。MnO源としては、MnO等の酸化マンガンを含有する前チャージキャリーオーバースラグなども利用できるが、還元量としては限定されるため、マンガン鉱石などの酸化マンガン含有物をホッパーから炉内に添加供給することで、有効なマンガン還元操業が実施できる。この際、酸化マンガン添加は、粉体のものをキャリヤーガスと共に上吹きランスや底吹き羽口などから炉内に供給しても差支えない。

0022

上記(1)式のマンガン還元の平衡定数Kは、例えば非特許文献3に記載されているような既知熱力学的なデータより、温度Tの関数として一義的に定義できる。
すなわち(1)式の標準自由エネルギー変化:ΔG゜は下記(2)式で表されるので、マンガン還元の平衡定数Kは下記(3)式の通りとなる。
MnO+C→Mn+CO(g) ・・・(1)
△G゜=+266020−167.64T ・・・(2)
K=(aMn・PCO)/(aMnO・aC)=exp(‐31997/T‐20.164) ・・・(3)
ここで、Tは溶銑温度、PCOは炉内のCO分圧、aMnはスラグ中のMn活量、aMnOはスラグ中の酸化マンガン(MnO)活量、aCはスラグ中のC活量である。

0023

従って、溶鋼中のマンガン濃度(aMnとほぼ比例する)を高めるには、一定の温度即ちKが一定の条件で、
1)スラグ中のマンガン酸化物濃度を確保する:高aMnOの維持
2)溶鋼中の炭素濃度を確保する:高acの維持
の2点が重要であり、1)については、レススラグ吹錬でのMn鉱石添加操業、2)については、[C]≧0.1mass%の確保が重要ということは、前述の、非特許文献1、2にも記載されている。

0024

ここで、大気圧で操業される転炉では、Pco≧1atmであれば平衡aMnに達するまでは、気体相側のCO物質移動雰囲気ガス濃度に左右されずに速やかに進行することは、当該技術者では容易に考察でき、そのための手段として、特許文献1、2に記載されているように、炉内温度を高位にしてKの値を高くする操業が指向されてきた。

0025

上記のような知見に基づいて現状の転炉マンガン還元操業は行われているが、前記の要解決課題である、大量のマンガン還元を実施するためには、転炉操業では極めて障害になる1650℃以上での高温での処理を長時間実施することが要求されており、発明者らは、転炉での脱炭と酸化マンガン還元反応を炉体に対するダメージの無いような温度と操業時間延長が問題にならないような操業技術確立のために鋭意調査研究を行った。

0026

本調査研究において、最も重要な課題となったのは、(3)式中のaMnO(スラグ中の酸化マンガン活量)の正確な評価の点である。各種モデル計算によってスラグ中のMnO活量は計算可能であるが、既存の計算評価手法は、実験値に基づいて決定したパラメータを利用し、それをモデル化して評価するものである。
例えば、非特許文献4中Fig.2でも明らかなように、単純なCaO−MnO二元系のaMnOでもモデル計算と実測値で大きな違いがある。ここでは、この実験温度も、製鋼温度よりも低い1400℃の結果であり、更に、マンガン鉱石中に存在する酸化マンガンはMnO2が主成分であることが確認されており、スラグ中で、4価、2価が混在する遷移金属であるマンガンの正確なイオン挙動が明らかになっていないという大きな問題点がある。

0027

従って、発明者らは、酸化マンガンを含む各種スラグ(マンガン鉱石あるいはMnO試薬転炉スラグなどと配合して種々組成に変更したスラグ)と炭素含有溶鉄との界面で生じる還元挙動を詳細に調査した。
その際、鋼中炭素濃度が0.1〜3mass%の領域において、転炉スラグと酸化マンガンが共存するときのマンガン還元速度の調査と実験炉内観察を、大気圧雰囲気の実験炉によって種々実施し、1500℃を超えた条件で、スラグメタル界面からCOガスと考えられるボイリングが発生し、かつ、極めて速やかにMn還元反応が進行することを明確にすることができた。

0028

このCOガスボイリングは、(3)式のPCOが雰囲気の1atmを超える状態であるために発生しており、気体側のCO物質移動が反応律速関与しない臨界条件であることを示している。特に、スラグ中の酸化マンガンとして含まれるマンガン含有率が20mass%(スラグを粉砕磁選したサンプルを蛍光X線分析法にて定量した値)を超える場合に、特に著しく、還元反応が速やかに進行することと、鋼中炭素濃度が0.1mass%未満では、還元反応が著しく停滞することも確認できた。

0029

従って、転炉でのマンガン還元を有利に進行させるためには、従来技術で示されているような1650℃程度の高温吹止温度値自体が還元率に大きな影響を及ぼしているのではないと考えることができる。一定送酸速度の転炉操業においては、連続的に温度が上昇し、上昇速度は放散熱の温度依存性酸化反応物質によって変化はするものの、送酸速度一定の場合の溶鉄温度上昇は時間に比例することは一般的な操業経験から良く知られたことである。本発明の効果は、このような温度上昇による効果ではなく、今回の調査研究で明らかになった1500℃以上の望ましい温度に達した以降から吹止までの吹錬時間が延長されている効果に相当するものであることが、以下の、実機操業データ解析例などからも裏付けることができた。

0030

すなわち、270t/ch転炉で70000Nm3/hの送酸条件(全送酸時間は15〜17分中)では、吹錬開始以降、1500℃に達した以降の吹止までの吹錬時間は、1630℃吹止(条件1)では4.3分に対して、1680℃吹止(条件2)では、6.0分(28%延長)である。条件1と条件2のマンガン還元量を比較したところ、条件2の条件1に対するマンガン還元量増加が3割程度であり、1500℃以上での反応時間増加率とマンガン還元量増加率はほぼ等しくなることを知見した。

0031

上記知見より、転炉での脱炭と酸化マンガン還元反応を効率的に実施するためには、1)マンガン還元速度が遅い1500℃までは、脱炭と昇温を短時間に行うための高速送酸を行い、2)マンガン還元速度が速い1500℃を超えた領域では長時間の還元時間を確保するために送酸速度を低下させて、炭素濃度の低下抑制と転炉の吹止温度を耐火物ダメージの小さい温度域で吹錬を完了する、ことによって無駄な処理時間の延長なく良好な還元特性が享受できることを見出した。

0032

ここで、送酸速度を低下する条件としては、上記記載の通り、炭素による還元力が極端に低下する[C]:0.1mass%よりも高炭素濃度でなければ、マンガン還元を進行させることができず、また、1650℃以上の温度で送酸速度を低下させても、1650℃という温度自体がマグカーボンなど転炉レンガに大きなダメージを与える範囲であることから、[C]:0.1mass%以上かつ1650℃未満の規定を設けた。
吹止温度も転炉レンガに大きなダメージを与えないために1650℃未満とする。
また、送酸速度を低下する条件として1500℃以上としたのは、上記のように1500℃以上の条件がマンガン還元を進行させる温度として極めて望ましいことと、1500℃未満で送酸速度を低下させると吹錬時間が長くなってしまい、生産性が低下することによる。

0033

従来の脱炭吹錬では、スロッピング発生回避、サブランス測定時の安定測定のための送酸速度の一時的低減、鉄分酸化ロスを回避するといった一部の目的を除いて、送酸速度は高位を維持する操業が行われる。そのため、現状の高速吹錬の吹錬開始から吹錬終了までの10〜20分の間に、還元反応が極めて有利に進行する[C]≧0.1mass%かつ、溶鉄温度が1500℃以上であるのは、全吹錬時間の3割程度の限られた時間であり、上記記載の良好な、耐火物ダメージが小さく、かつ、マンガン還元が有利に進行する温度、炭素濃度域は、全吹錬時間の20〜30%程度である。
これに対し、本発明では、上記の得られた知見に基づき、脱炭吹錬中に送酸速度を低下させ、良好な還元条件の時間を意図的に延長させるものである。このような良好な還元条件の時間の意図的な延長によって、従来操業では困難であったマンガン還元量(溶鋼中のマンガン濃度で1mass%以上の溶鋼を耐火物ダメージなどの操業悪影響を伴うことなく得ることが出来る。
ここで、平均送酸速度は下記(4)式にて規定する。
平均送酸速度(Nm3/h・t)=
吹錬開始〜終了炉内吹込O2量(Nm3)/(溶鉄量(t)×送酸時間(分)/60) ・・・(4)

0034

また、平均送酸速度よりも送酸速度を低下させて良好な状態の還元時間延長を行う場合、低下させた時間が合計で1分未満の短時間である場合には、従来操業よりも有利なMn還元率を得ることできなかったため、1分以上の維持を必要条件と規定した。
後に記載するが、発明者らの操業実験による知見から、特に経済的な効果が著しい[Mn]2mass%以上の鋼を転炉での還元操業で得るためには、2分以上の送酸低下操業にて実施できることも明らかになっている。

0035

本発明による有利なMn還元率を得る条件の維持時間の上限は規定しない。経済的な優位性の確保出来る範囲内で行えば良い。例えば、3mass%レベルの高Mn添加のために、送酸速度を低下させて、マンガン還元と脱炭で必要な[C](0.1mass%以上)を維持するために炭材添加を実施して吹錬延長操業を実施することはできるが、延長時間が60分を超える場合には、脱炭処理を目的とした転炉の生産性の低下による不利益よりも、特許文献2記載のようなマンガン還元専用炉使用時と比較した場合の経済的な利益が勝っているとは言えないことが予想される。

0036

平均送酸速度以下に低下した後の送酸量は、上限の100Nm3/h・t以下が望ましい。これは、現状の国内外の転炉での平均送酸速度が、上記の270t/ch転炉で70000Nm3/hの送酸条件(260Nm3/h・t)に見られるように、200〜300Nm3/h・tであり、送酸速度を100Nm3/h・t以下とすることで、脱炭速度温度上昇速度を低下させて効率の良いMn還元操業には非常に適している範囲であるからである。下限は0Nm3/h・tを含む。これは、短時間のリンシングでも温度低下などによる影響が低い場合や、ダイナミックコントロールなどの予想にて冷却材添加が必要な過剰温度操業時の対応の場合の条件が、本発明の効果を得るのに適しているためである。

0037

また、前チャージからのキャリーオーバースラグ中酸化マンガン以外に、マンガン酸化物の添加を行う場合の添加方法は、吹錬前に、スクラップとの同時に添加、溶銑挿入完了後または、吹錬中の適宜のタイミングのホッパーからの炉内添加などで良いが、良好な還元特性が見られる1500℃までの間にマンガン酸化物および、周囲のスラグ温度が可熱昇温する時間2分程度必要で、転炉吹錬では、溶鋼温度50℃上昇する時間に相当することから、マンガン酸化物の添加は溶鉄温度が1450℃以下の領域で実施することが望ましい。

0038

更に、上記研究検討結果より明らかになったように、スラグ中の酸化物として含有されるマンガン濃度が20mass%以上で特に良好な還元特性が得られることから、送酸速度を低下させ、0〜100Nm3/h・tに変更するときの、炉内スラグに酸化マンガンとして含有されるマンガン濃度が20mass%以上であることが望ましい。マンガン濃度は、例えば、送酸変更タイミングのスラグを吹錬中にサブランスなどで採取して、磁選して蛍光X線分析などで測定し、その測定結果に基づき、適宜条件選定と確認が可能である。

0039

次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0040

実施例の実験基本操業は、容量270tの上底吹き転炉を用い、初期温度1240〜1300℃、[C]が3.7〜4.1%の溶銑の吹錬を実施し、不可避的不純物(mass%)は、[Si]<0.08、[Mn]<0.1、[P]<0.03、[S]<0.01であった。
酸化マンガンとして、Mn品位47%のマンガン鉱石をホッパーより14.3t(還元率100%時△[Mn]=2.5mass%)を添加して吹錬を実施することを基本条件としたが、比較のため、マンガン鉱石と転炉滓混合品も使用した。また、処理中の炭素濃度変更水準を変更することを目的に、適宜吹錬開始前〜吹錬開始2分に適宜、コークス加炭目的)および鉄鉱石(炭素濃度低減目的)添加などを実施した。

0041

吹錬開始時の送酸速度は70000Nm3/h(260Nm3/h・t)として、初期の送酸開始の溶銑温度と送酸実績、およびサブランス測定から、吹錬中の[C]と溶鉄温度を推定し、実験水準目標において送酸速度を変更して吹止直後にサブランスでの測温、サンプリングにて吹錬後の温度、成分(メタル、スラグ)の比較評価を行った。
尚、上記の吹錬開始の送酸速度(70000Nm3/h)が、上記(4)式で規定した平均送酸速度となる。

0042

本発明の特徴である、平均送酸速度から送酸速度を低下させた状態で、かつ、[C]≧0.1mass%、1500℃〜1650℃未満の適正条件の時間(送酸速度低下後適正時間)は、サブランス測定と送酸量などの操業条件から求められるダイナミック制御システムによる[C]、温度連続算定モデル指示値にて、その範囲を満足する時間を求めた。
二点間のサブランス測定値([C]、温度)とダイナミックコントロール指示値比較の予備試験にて、本手法による送酸速度低下後適正条件時間の測定誤差は10秒未満であることが確認されている。

0043

実験結果を表1に示す。
本発明1、2はマンガン鉱石を吹錬開始前に添加(送酸変更後流量水準変更)、本発明3は吹錬中(メタル温度1420℃で添加)したものであるが、いずれも2mass%を超える吹止[Mn]実績が得られ、良好であった。
本発明4は、送酸変更後の送酸流量を30000Nm3/h(111Nm3/h・t)としたものであるが、本発明1とほぼ同様良好な還元特性が確認できた。
本発明5は、マンガン鉱石添加を吹錬開始後、溶鉄温度が1463℃時に実施したものであるが送酸速度変更時にサブランスよるスラグ採取プローブ外周に設けた金属板付着採取する構造)で付着スラグが採取できなかった。これは、マンガン鉱石添加後から送酸速度変更までにマンガン鉱石添加によってスラグ固化が発生して採取できなかったものと考えられ、吹止[Mn]は1.5mass%と本発明1~3よりは低めであった。

0044

本発明6は、マンガン鉱石と転炉滓(2:1)の混合品を添加したものであるが、送酸速度低下時のスラグ中のマンガン濃度は15.8mass%で、還元力が低下したため、マンガン還元率は低めであった。
本発明7は、送酸速度低下を40000Nm3/h(148Nm3/h・t)として、望ましい還元時間を1.5分確保しているが、送酸速度低下から吹止めまでの時間がやや短いため、還元率もやや低めで吹止Mnは1.4mass%であった。

0045

比較例1は、マンガン鉱石を投入して、通常の脱炭吹錬と同じ送酸速度(70000Nm3/h一定)で操業したものであるが、吹止[Mn]は0.8mass%と低位であった。
比較例2は、本発明1とほぼ同じ条件で送酸速度低下のタイミングを早めて1410℃にて変更したものであるが、吹錬時間延長しているものの、1500℃の臨界温度以下での時間延長であったため、吹止[Mn]は本発明1と有意差の無いものであり、処理時間延長によって、二次精錬工程での処理時間不足生産影響が発生した。
比較例3は、送酸変更後の適正時間を規定時間以下になる操業データであるが、適正時間が0.9分と規定の1分に満たない条件であり、通常吹錬の比較例1と還元率に大きな差異は見られなかった。

0046

比較例4は、送酸変更タイミングを1655℃にしたものであるが、マンガン還元は良好であったが、吹止温度が1688℃となり、転炉のスラグライン溶損激しく、次チャージの処理を遅らせて、溶射補修作業を実施する必要があり、生産に障害を与えるものであった。
比較例5は、送酸変更時の炭素濃度を0.08mass%で実施した結果であったが、炭素濃度不足によって吹止[Mn]は0.2mass%と不十分であった。

0047

実施例

0048

0049

前述したように、本発明によれば、鉄鋼製品の特性向上に重要であるマンガンを転炉吹錬中に安価なマンガン酸化物の炭素還元によって、操業時間の延長耐火物溶損などの生産障害を伴うことなく、高位の[Mn]溶鋼を製造でき、経済的かつ、操業的には容易で、工業的価値が極めて大きく、鉄鋼産業において利用可能性が大きいものである。

0050

1溶鉄
2スラグ
3 上吹きランス
4酸素
5 底吹き羽口
6撹拌ガス
7耐火物
8鉄皮
9ホッパー
10副材
11 サブランス

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ