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課題

哺乳類の血液から、炭疽菌緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌から成る群より選択される病原体又は該病原体由来毒素除去方法の提供。

解決手段

病原体又は毒素に対する結合親和性を有する、固体基体上に固定されたヘパリンなどの炭水化物に、血液試料を、該固体基体が血液試料中の該病原体又は毒素に結合することができる条件で接触させる工程と、該試料を該基体から分離し、それにより、該病原体若しくは該毒素が少なくとも部分的に保持されるか、又は該基体と除去した試料に含まれる該病原体若しくは毒素の量が減少する工程とを含む方法。

概要

背景

様々な病状が、血流中に高濃度病原体及び/又は毒素が存在することよって特徴付けられる。そのような状態のいくつかは、例えば抗感染症治療薬投与による、病原体を殺すように設計された処置によって治療される。他の状態のいくつかは、患者中の血液感染性の病原体又は毒素の濃度を低下させることを目的とした処置によって治療される。他の疾患は、患者の血液から、特定の要素のみを直接除去することを目的とした処置によって治療される。

例えば、ギランバレー症候群は現在、ウイルスが感染し、それにより、患者の神経系を攻撃し得る抗体又は他のタンパク質が過剰生産されるように体の免疫系が刺激されることによって麻痺の生じる自己免疫障害であると認識されている。大部分の患者は時間経過と共に回復するが、そのような患者はその後、ウイルス感染による再発発症しやすいようである。ギラン・バレー症候群を治療する1つの方法としては、患者の神経系を攻撃すると考えられている抗体を、患者の血液から除去して「清浄にする」ための血漿交換が挙げられる。

ヘパリンは、哺乳類組織から単離することができる多糖である。ヘパリンの哺乳類の組織での分布は非常に限られており、肥満細胞好塩基性顆粒のみに存在する。米国の科学者であるMcLeanによって1916年に発見されて以来、ヘパリンは血液の凝固を防止するその能力と、体内でのその半減期が比較的短いことが評価されてきた。遊離型薬物注入による全身へのヘパリン投与は、安全で有効な血液の抗凝血治療及び抗血栓治療として、50年以上にわたって臨床で用いられてきた。血液の凝集/凝固に及ぼすヘパリンの作用は投与を停止すると非常に迅速に弱まることから、外科的及び他の方法と併用して、有効に、かつ、安全にヘパリンを使用することができる。つまり、ヘパリンの抗凝血及び抗血栓特性は多くの医療処置を行う際に、例えば、血液と人工体外血液循環表面との間の望ましくない相互作用を最小限に抑えるために、有用である。処置が終われば、次いでヘパリンの投与を終了してもよい。患者の血液中でのヘパリン濃度は数時間以内に安全なレベルまで下がる。このことは外科的処置後の治癒が、出血性合併症を避けるための手術部位での血液凝固能に依存する場合に特に重要である。血栓閉栓症の治療及び表面誘導血栓の予防にその使用が定着し、継続して使用されているが、加えて近年、ヘパリンがその凝血剤としての機能とは一見関係のない他の様々な機能をもつことが分かってきた。
現在では例えば、血液中の多数のタンパク質が、高い親和性でヘパリン及び/又は類縁多糖であるヘパリン硫酸に結合することが分かっている。ヘパラン硫酸もまた、健康な血管の管腔表面を含む動物組織で見つかっている。例としては、アンチトロンビン(AT)、フィブロネクチンビトロネクチン成長因子(例えば線維芽細胞成長因子インスリン様成長因子など)がある。ヒト血清アルブミンHSA)もまたヘパリンに結合するが、その血液中の濃度が高いにも関わらず、親和性は低い。

これまでに、ヘパリン断片及び/又はいわゆるシアル酸含有断片を脈管系に挿入することによる、感染を防ぐための全身性遊離型ヘパリンの選択的吸着特性の使用が検討されてきた。提案されたこの治療は、これらの断片が微生物レクチンに結合してそれらを遮断するため、レクチンが哺乳類の細胞表面にある受容体に結合できなくなるという仮説に基づいていた。この方法は多くの科学者達によって研究されてきたが、これまでに報告された成功例は少ない。最も一般的な問題は、臨床上有意な病原微生物の減少を達成するために血流に導入された大量の遊離型ヘパリンが出血性合併症を伴うことであった。本発明は遊離型の全身性ヘパリンの使用を必要としないため、出血性合併症は避けられる。これは、表面積の大きい固体基体にヘパリン又はヘパリン硫酸を恒久的に結合させ、この吸着媒体を含むカートリッジ又はフィルターに血液を曝すことによって達成される。

重要な治療対象である、特定の一疾患は炭疽病である。細菌である炭疽菌は、例えば土壌中又は動物上で、何年もの間休眠を維持することができる胞子を生産する天然の細菌である。この疾患は、動物にとって致命的な場合がある。ヒトに感染するには胞子が体内に侵入する必要があり、これは通常は、皮膚の切り傷から又は胞子を含む肉を消費することによる。しかし近年では、バイオテロリズムに対する懸念により、胞子を吸入することによって生じる感染が注目されてきた。吸入すると、直ちに体の免疫系が圧倒され、ショックを起こす可能性がある。

炭疽菌毒素(「炭疽致死毒素」、又は「LT」とも呼ばれる)には3種類の非毒性のタンパク質が含まれ、これが2種類又は3種類組み合わさって、哺乳類細胞の表面に毒素複合体を形成する。これらのタンパク質の内の1つである防御抗原(PA)は、その他の2種類である浮腫因子(EF)と致死因子LF)をサイトゾル輸送する。LFは特定のMAPキナーゼキナーゼを分解するZn2+プロテアーゼであり、まだあまり解明されていない一連事象によって宿主の死を引き起こす。EFはカルモジュリン依存性及びCa2+依存性アデニル酸シクラーゼであり、疾患中に見られる浮腫の原因である。この2つの酵素は、宿主の生得的な免疫系の細胞を阻害するために、細菌に有利に働くと考えられている。毒素複合体の構築は、PAが細胞の受容体に結合し、プロテアーゼであるフリンによって2つの断片に分解された後に開始される。小さい方の断片が解離し、受容体−結合断片であるPA63(63kDa)が自己会合して、環状で7量体ポア前駆体(プレポア)が形成できるようになる。プレポアは、最大3つのEF及び/又はLF分子に結合し、出来た複合体は取り込まれて、酸性画分に輸送される。そこでプレポアは膜貫通型の孔に変換され、EF及びLFのサイトゾルへの移行仲介する。最近の研究から、(a)受容体の正体;(b)3種類の毒素タンパク質と7量体PA63プレポアの結晶学的構造;及び(c)毒素の構築、侵入及びサイトゾル中での作用についての情報が分かってきた。毒素の構造と作用機序に関する知識により、炭疽菌感染治療方法を含む、医薬への応用の可能性が明らかになってきた。Collier, R. J., Rev. Microbiol., 2001;27(3):167-200(参照により本明細書に組み込まれる)。

PAに対する、2種類のヒト細胞の受容体が同定されている。1つは炭疽菌毒素受容体(ATR)と呼ばれ、腫瘍内皮マーカー8(TEM8)遺伝子によってコードされている。マクロファージ細胞株の表面では10000倍以上ものATRが生じる。切断型、すなわち可溶型のATR(膜結合配列を欠損している)は、炭疽菌毒素の致死性作用から、培
養細胞を保護することができる。ATRは、中枢神経系、心臓、及びリンパ球を含む様々な組織で発現する。ATRのcDNAは368アミノ酸のタンパク質をコードしており、これは27アミノ酸のリーダー配列、293アミノ酸の細胞外ドメイン、23残基の膜貫通領域、及びカルボキシ末端にある短い細胞質尾部を有すると推測されている。

PAに対する受容体機能をもつ別の細胞タンパク質には、毛細血管形態形成タンパク質2(CMG2)がある。ATRとCMG2は両方とも、結合に関与しているフォン・ヴィルブランド因子A型(VWA)と構造的に関連のあるドメインを含んでいる。CMG2−VWAの構造は分かっている。

他の細菌と同様に炭疽菌は休眠胞子分化することができ、不利な環境下であっても何年も生存する場合がある。胞子は栄養を摂取すると直ちに栄養細胞へと発する。これは、ヒト又は動物の皮膚表面又は肺の中でも起こり得る。細菌が体内で高力価まで成長すると、毒素の助けを借りて、それらは宿主の防御打ち勝つ。毒素に加えて、他の成分(ポリ−D−グルタミン酸カプセル)も毒性に寄与する。カプセルと毒素は両方とも、細菌によってかくまわれたプラスミドにコードされている。

感染に対する防御は、ワクチン摂取によって獲得することができる。認可されているワクチンには、毒素生産性ではあるが無莢膜性の炭疽菌由来の胞子又は水酸化アルミニウムを吸収した無細胞PAがある。弱毒生菌ワクチンの使用は局部的な副反応を起こす場合があり、かつ、あまり効果的ではない。さらに、PA遺伝子を、元々プラスミドをもっていなかった細菌株に導入することによって、未だ実験段階のワクチンが構築された。天然の炭疽菌感染は非常に稀であるため、ヒトへのワクチン接種は通常は行われない。

初期段階の感染は抗生物質によって治療され、薬としてはシプロフロキサシンが選択される。認識されなかった感染は通常致死である。抗毒素(例えばPAに対する免疫グロブリン又は毒素因子の結合を競合する合成ペプチド)治療は、重篤な感染に打ち勝つ助けとなる場合がある。

概要

哺乳類の血液から、炭疽菌、緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌から成る群より選択される病原体又は該病原体由来の毒素の除去方法の提供。病原体又は毒素に対する結合親和性を有する、固体基体上に固定されたヘパリンなどの炭水化物に、血液試料を、該固体基体が血液試料中の該病原体又は毒素に結合することができる条件で接触させる工程と、該試料を該基体から分離し、それにより、該病原体若しくは該毒素が少なくとも部分的に保持されるか、又は該基体と除去した試料に含まれる該病原体若しくは毒素の量が減少する工程とを含む方法。A

目的

本発明は、除去する病原体及び/又は毒素(吸着質)に結合親和性をもつヘパリン、ヘパリン硫酸塩及び/又は他の分子若しくは化学基表面処理した固体の、すなわち本質的に無孔の基体(吸着媒体又は媒体)に血液を接触させることにより、血液又は血清(血液)から病原体及び/又は病原体から放出される毒素を除去する方法を目的とする

効果

実績

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請求項1

哺乳類の血液から病原体又は該病原体由来毒素を除去する方法であって、該病原体は、炭疽菌緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌から成る群より選択されるメンバーであり、a.該病原体又は毒素に対する結合親和性を有する、固体基体上に固定された炭水化物に、血液試料を、該固体基体が血液試料中の該病原体又は毒素に結合することができる条件で接触させる工程と、b.該試料を該基体から分離し、それにより、該病原体若しくは該毒素が少なくとも部分的に保持されるか、又は該基体と除去した試料に含まれる該病原体若しくは毒素の量が減少する工程とを含む方法。

請求項2

該病原体が炭疽菌である、請求項1に記載の方法。

請求項3

該基体が、シンデカン上のヘパリン硫酸セグメントに結合可能な毒素に対する親和性をもつ、請求項1に記載の方法。

請求項4

該基体が、炭疽毒の防御抗原に対する親和性をもつ、請求項1に記載の方法。

請求項5

該固体基体が、ガラスセルロース酢酸セルロースキチンキトサン架橋デキストラン架橋アガロースポリウレタンポリメタクリル酸メチルポリエチレン又はエチレンと他の単量体との共重合体ポリエチレンイミンポリプロピレンポリスルホンポリアクリロニトリルシリコーン及びポリイソブチレンから成る群より選択される、少なくとも1種のメンバーから構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

該炭水化物がヘパリンである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

請求項7

少なくとも1種の病原体又は該病原体由来の毒素を血液から除去する方法であって、該病原体が、炭疽菌、緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌から成る群より選択されるメンバーであり、血液又は血清の試料を、高表面積の固体基体に50ml/分以上の流速で流して通過させる工程を含み、該固体基体の表面は、該病原体又は毒素に対する結合親和性をもつヘパリンを含み、該基体は、該血液中吸着質吸着の前に該基体中の細孔を通過する必要がないように十分に無孔であり、かつ、該基体の個々の部分の間の間隙流路空間の大きさと間隙基体表面積の量が、該血液流又は血清流が50ml/分以上の流速で該基体に接触した場合に、該病原体又は毒素が該ヘパリンに結合して該血液又は血清から分離され、かつ、該基体を通過する該血液又は血清及びそれに含まれる吸着質の輸送ブラウン拡散輸送を上回る対流輸送の手段によるようになっているものである、方法。

請求項8

該基体が、無孔の硬質ビーズ若しくは粒子充填したカラム硬質網状発泡体で充填したカラム、内部流路をもつ焼結ビーズ製の硬質なモノリス床で充填したカラム、硬質な織布若しくは不織布で充填したカラム、硬質な糸又は中空であってもよい単繊維で充填したカラム、螺旋状のカートリッジ、又はビーズ、硬質な網状発泡体、焼結ビーズ、布、糸及び単繊維から成る群より選択される少なくとも2種のメンバーの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。

請求項9

該固体基体が、1種以上の多糖類コーティングされたポリエチレンビーズを含む、請求項7に記載の方法。

請求項10

少なくとも1種の該多糖類が、ヘパリン、ヒアルロン酸サリチル酸及びキトサンから成る群より選択される、請求項9に記載の方法。

請求項11

血液から少なくとも1種の病原体又は該病原体由来の毒素を除去する方法であって、該病原体が炭疽菌、緑膿菌、及び黄色ブドウ球菌から成る群より選択されるメンバーであり、血液試料を、容器に入った硬質ポリエチレンビーズに接触させて50ml/分以上の流速で流す工程を含み、該ビーズの表面は、該病原体又は毒素に対する結合親和性をもつヘパリンを含み、該ビーズは、血液が該基体中の細孔を通過しないように十分に硬質であり、かつ、個々の該ビーズ間の間隙流路空間の大きさと該ビーズの間隙表面積の量は、該血液を該基体に50ml/分以上の流速で流して接触させた場合に、該病原体又は毒素が該ヘパリンに結合して該血液から分離し、かつ該基体を通過する該血液の流動輸送がブラウン拡散輸送法を上回る対流輸送手段によるようになっているものである、方法。

請求項12

血液又は血清の流速が、およそ150〜2000mL/分の範囲である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の方法。

請求項13

該ビーズがポリエチレンの重合体を含む、請求項2〜12のいずれか1項に記載の方法。

請求項14

該ビーズの直径が、100〜450ミクロンの範囲である、請求項2〜13のいずれか1項に記載の方法。

請求項15

該ビーズの平均直径が0.3mmである、請求項14に記載の方法。

請求項16

該ビーズが、ビーズ1グラム当たり0.5〜10mgのヘパリンでコーティングされている、請求項2〜15のいずれか1項に記載の方法。

請求項17

該ビーズが、ビーズ1グラム当たり2±0.5mgのヘパリンでコーティングされている、請求項16に記載の方法。

請求項18

該ヘパリンの平均分子量が約8kDaである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。

請求項19

該ヘパリンが、末端での共有結合で該ビーズに結合している、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。

請求項20

該基体が、炭疽菌致死毒素、炭疽菌防御抗原、炭疽菌浮腫因子、炭疽菌致死因子、炭疽菌ポリグルタミン酸カプセルアンスラリシン(anthralysin)O、アンスラリシン(anthralysin)B、黄色ブドウ球菌α−毒素、黄色ブドウ球菌β−毒素、及び緑膿菌LasAから成る群より選択される少なくとも1種のメンバーに結合する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。

請求項21

炭疽菌の治療を、そのような治療を必要としている哺乳類において行う方法であって、a)哺乳類由来の血液試料を、容器に入った硬質なポリエチレンビーズを含む固体基体に、少なくともおよそ150ml/分の流速で流して接触させる工程と、b)該固体基体から該血液を分離する工程を含み、該ビーズの表面は、炭疽菌又はそれ由来の毒素に結合親和性をもつヘパリンを含み、該ビーズは、血液が該基体中の細孔を通過しないように十分に硬質であり、かつ、個々の該ビーズ間の間隙流路空間の大きさと該ビーズの間隙表面積の量は、該血液を少なくともおよそ150ml/分の流速で流して該基体に接触させた場合に、該炭疽菌又は該毒素が該ヘパリンに結合して該血液から分離され、該基体を通過する該血液の流動輸送がブラウン拡散輸送法を上回る対流輸送手段によるようになっているものである、方法。

請求項22

該血液を同じ哺乳類から採取して戻す、請求項21に記載の方法。

請求項23

サイトカイン又は病原体を除去するための該方法を、該血液の少なくとも1種の別の体外治療と併用して行う、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。

請求項24

該少なくとも1種の別の体外治療が、心肺バイパス(CPB)、血液透析、及び酸素化から成る群より選択される少なくとも1種のメンバーを含む、請求項23に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、除去する病原体及び/又は毒素吸着質)に結合親和性をもつヘパリン、ヘパリン硫酸塩及び/又は他の分子若しくは化学基表面処理した固体の、すなわち本質的に無孔の基体吸着媒体又は媒体)に血液を接触させることにより、血液又は血清(血液)から病原体及び/又は病原体から放出される毒素を除去する方法を目的とする。本発明は、毒性因子、例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)、緑膿菌(Pseudomonas aureginosa)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの病原体から放出される毒素を
除去するのに用いることができる。一側面では、前記媒体中の間隙流路の大きさは媒体表面積の量及び媒体表面における結合部位の濃度と釣り合いが取れており、十分な吸着能を提供すると同時にこの媒体中を血液が比較的高流速で流れることも可能にしている。

0002

本発明はまた、ヘパリン及び/又は他の吸着材料コーティングした本質的に無孔の基体と血液を接触させることにより、血液から病原体及び/又は病原体由来の毒素を除去することによる疾患の治療方法、並びにこの方法及び治療を実施するためのデバイスを提供する。

背景技術

0003

様々な病状が、血流中に高濃度の病原体及び/又は毒素が存在することよって特徴付けられる。そのような状態のいくつかは、例えば抗感染症治療薬投与による、病原体を殺すように設計された処置によって治療される。他の状態のいくつかは、患者中の血液感染性の病原体又は毒素の濃度を低下させることを目的とした処置によって治療される。他の疾患は、患者の血液から、特定の要素のみを直接除去することを目的とした処置によって治療される。

0004

例えば、ギランバレー症候群は現在、ウイルスが感染し、それにより、患者の神経系を攻撃し得る抗体又は他のタンパク質が過剰生産されるように体の免疫系が刺激されることによって麻痺の生じる自己免疫障害であると認識されている。大部分の患者は時間経過と共に回復するが、そのような患者はその後、ウイルス感染による再発発症しやすいようである。ギラン・バレー症候群を治療する1つの方法としては、患者の神経系を攻撃すると考えられている抗体を、患者の血液から除去して「清浄にする」ための血漿交換が挙げられる。

0005

ヘパリンは、哺乳類組織から単離することができる多糖である。ヘパリンの哺乳類の組織での分布は非常に限られており、肥満細胞好塩基性顆粒のみに存在する。米国の科学者であるMcLeanによって1916年に発見されて以来、ヘパリンは血液の凝固を防止するその能力と、体内でのその半減期が比較的短いことが評価されてきた。遊離型薬物注入による全身へのヘパリン投与は、安全で有効な血液の抗凝血治療及び抗血栓治療として、50年以上にわたって臨床で用いられてきた。血液の凝集/凝固に及ぼすヘパリンの作用は投与を停止すると非常に迅速に弱まることから、外科的及び他の方法と併用して、有効に、かつ、安全にヘパリンを使用することができる。つまり、ヘパリンの抗凝血及び抗血栓特性は多くの医療処置を行う際に、例えば、血液と人工体外血液循環表面との間の望ましくない相互作用を最小限に抑えるために、有用である。処置が終われば、次いでヘパリンの投与を終了してもよい。患者の血液中でのヘパリン濃度は数時間以内に安全なレベルまで下がる。このことは外科的処置後の治癒が、出血性合併症を避けるための手術部位での血液凝固能に依存する場合に特に重要である。血栓閉栓症の治療及び表面誘導血栓の予防にその使用が定着し、継続して使用されているが、加えて近年、ヘパリンがその凝血剤としての機能とは一見関係のない他の様々な機能をもつことが分かってきた。
現在では例えば、血液中の多数のタンパク質が、高い親和性でヘパリン及び/又は類縁多糖であるヘパリン硫酸に結合することが分かっている。ヘパラン硫酸もまた、健康な血管の管腔表面を含む動物組織で見つかっている。例としては、アンチトロンビン(AT)、フィブロネクチンビトロネクチン成長因子(例えば線維芽細胞成長因子インスリン様成長因子など)がある。ヒト血清アルブミンHSA)もまたヘパリンに結合するが、その血液中の濃度が高いにも関わらず、親和性は低い。

0006

これまでに、ヘパリン断片及び/又はいわゆるシアル酸含有断片を脈管系に挿入することによる、感染を防ぐための全身性遊離型ヘパリンの選択的吸着特性の使用が検討されてきた。提案されたこの治療は、これらの断片が微生物レクチンに結合してそれらを遮断するため、レクチンが哺乳類の細胞表面にある受容体に結合できなくなるという仮説に基づいていた。この方法は多くの科学者達によって研究されてきたが、これまでに報告された成功例は少ない。最も一般的な問題は、臨床上有意な病原微生物の減少を達成するために血流に導入された大量の遊離型ヘパリンが出血性合併症を伴うことであった。本発明は遊離型の全身性ヘパリンの使用を必要としないため、出血性合併症は避けられる。これは、表面積の大きい固体基体にヘパリン又はヘパリン硫酸を恒久的に結合させ、この吸着媒体を含むカートリッジ又はフィルターに血液を曝すことによって達成される。

0007

重要な治療対象である、特定の一疾患は炭疽病である。細菌である炭疽菌は、例えば土壌中又は動物上で、何年もの間休眠を維持することができる胞子を生産する天然の細菌である。この疾患は、動物にとって致命的な場合がある。ヒトに感染するには胞子が体内に侵入する必要があり、これは通常は、皮膚の切り傷から又は胞子を含む肉を消費することによる。しかし近年では、バイオテロリズムに対する懸念により、胞子を吸入することによって生じる感染が注目されてきた。吸入すると、直ちに体の免疫系が圧倒され、ショックを起こす可能性がある。

0008

炭疽菌毒素(「炭疽致死毒素」、又は「LT」とも呼ばれる)には3種類の非毒性のタンパク質が含まれ、これが2種類又は3種類組み合わさって、哺乳類細胞の表面に毒素複合体を形成する。これらのタンパク質の内の1つである防御抗原(PA)は、その他の2種類である浮腫因子(EF)と致死因子LF)をサイトゾル輸送する。LFは特定のMAPキナーゼキナーゼを分解するZn2+プロテアーゼであり、まだあまり解明されていない一連事象によって宿主の死を引き起こす。EFはカルモジュリン依存性及びCa2+依存性アデニル酸シクラーゼであり、疾患中に見られる浮腫の原因である。この2つの酵素は、宿主の生得的な免疫系の細胞を阻害するために、細菌に有利に働くと考えられている。毒素複合体の構築は、PAが細胞の受容体に結合し、プロテアーゼであるフリンによって2つの断片に分解された後に開始される。小さい方の断片が解離し、受容体−結合断片であるPA63(63kDa)が自己会合して、環状で7量体ポア前駆体(プレポア)が形成できるようになる。プレポアは、最大3つのEF及び/又はLF分子に結合し、出来た複合体は取り込まれて、酸性画分に輸送される。そこでプレポアは膜貫通型の孔に変換され、EF及びLFのサイトゾルへの移行仲介する。最近の研究から、(a)受容体の正体;(b)3種類の毒素タンパク質と7量体PA63プレポアの結晶学的構造;及び(c)毒素の構築、侵入及びサイトゾル中での作用についての情報が分かってきた。毒素の構造と作用機序に関する知識により、炭疽菌感染の治療方法を含む、医薬への応用の可能性が明らかになってきた。Collier, R. J., Rev. Microbiol., 2001;27(3):167-200(参照により本明細書に組み込まれる)。

0009

PAに対する、2種類のヒト細胞の受容体が同定されている。1つは炭疽菌毒素受容体(ATR)と呼ばれ、腫瘍内皮マーカー8(TEM8)遺伝子によってコードされている。マクロファージ細胞株の表面では10000倍以上ものATRが生じる。切断型、すなわち可溶型のATR(膜結合配列を欠損している)は、炭疽菌毒素の致死性作用から、培
養細胞を保護することができる。ATRは、中枢神経系、心臓、及びリンパ球を含む様々な組織で発現する。ATRのcDNAは368アミノ酸のタンパク質をコードしており、これは27アミノ酸のリーダー配列、293アミノ酸の細胞外ドメイン、23残基の膜貫通領域、及びカルボキシ末端にある短い細胞質尾部を有すると推測されている。

0010

PAに対する受容体機能をもつ別の細胞タンパク質には、毛細血管形態形成タンパク質2(CMG2)がある。ATRとCMG2は両方とも、結合に関与しているフォン・ヴィルブランド因子A型(VWA)と構造的に関連のあるドメインを含んでいる。CMG2−VWAの構造は分かっている。

0011

他の細菌と同様に炭疽菌は休眠胞子分化することができ、不利な環境下であっても何年も生存する場合がある。胞子は栄養を摂取すると直ちに栄養細胞へと発する。これは、ヒト又は動物の皮膚表面又は肺の中でも起こり得る。細菌が体内で高力価まで成長すると、毒素の助けを借りて、それらは宿主の防御打ち勝つ。毒素に加えて、他の成分(ポリ−D−グルタミン酸カプセル)も毒性に寄与する。カプセルと毒素は両方とも、細菌によってかくまわれたプラスミドにコードされている。

0012

感染に対する防御は、ワクチン摂取によって獲得することができる。認可されているワクチンには、毒素生産性ではあるが無莢膜性の炭疽菌由来の胞子又は水酸化アルミニウムを吸収した無細胞PAがある。弱毒生菌ワクチンの使用は局部的な副反応を起こす場合があり、かつ、あまり効果的ではない。さらに、PA遺伝子を、元々プラスミドをもっていなかった細菌株に導入することによって、未だ実験段階のワクチンが構築された。天然の炭疽菌感染は非常に稀であるため、ヒトへのワクチン接種は通常は行われない。

0013

初期段階の感染は抗生物質によって治療され、薬としてはシプロフロキサシンが選択される。認識されなかった感染は通常致死である。抗毒素(例えばPAに対する免疫グロブリン又は毒素因子の結合を競合する合成ペプチド)治療は、重篤な感染に打ち勝つ助けとなる場合がある。

0014

本発明の目的は、ヘパリン、ヘパリン硫酸、及び/又は任意に他の選択的吸着分子生体分子又は化学基でコーティングした固体の、すなわち本質的に無孔の基体に血液を接触させることにより、哺乳類の血液から、病原体、又は病原体由来の毒素を除去する方法を提供することである。

0015

本発明の別の目的は、ヘパリン(及び他の吸着剤分子であってもよい)でコーティングした固体の本質的に無孔の基体に哺乳類の血液を接触させ、その後血液を疾患に罹患している患者に戻すことにより、哺乳類の血液から病原体又は病原体由来の毒素を除去することによって、炭疽菌、緑膿菌又は黄色ブドウ球菌によって引き起こされた疾患を処置するための治療を提供することである。

0016

上述した目的は、本発明の範囲を多少なりとも制限することを意図するものではない。

図面の簡単な説明

0017

対数増殖期の7702と9131を、対照又はヘパリンビーズ負荷し、その後PA量の変化を決定するためにELISA型のアッセイを行った(吸収値として表した)。B)FBSを、対照及びヘパリンビーズの両方に5回流し、その後上清を加えた。
対数増殖期の7702と9131を、対照又はヘパリンビーズに負荷し、その後PA量の変化を決定するためにELISA型のアッセイを行った(吸収値として表した)。B)FBSを、対照及びヘパリンビーズの両方に5回流し、その後上清を加えた。
ヘパリン化媒体による、PAからのマクロファージの保護。
ヘパリン化ビーズを通過させた後の、USA300型MRSAのα−毒素の減少。

0018

1.血液からの病原体又は毒素の除去
本発明の第一の側面は、固体基体(例えばヘパリンでコーティングした基体)に血液を接触させることにより、哺乳類の血液などの血液から、病原体及び/又は毒素を除去する方法を提供する。

0019

この方法では、ヘパリンを基体の表面に固定する。発明者らは、表面に固定したヘパリンが、多量の病原体、毒素及び/又は毒性因子を血液から除去するのに効果があることを発見した。毒性因子とは、炭疽菌、黄色ブドウ球菌、及び緑膿菌などの病原体から放出され、それらの宿主細胞中でのコロニー形成、宿主の免疫反応からの回避、宿主細胞への侵入及び宿主細胞からの脱出、並びに細胞から栄養素の獲得を可能にする毒素である。多くの毒性因子は、細胞表面のシンデカンであるヘパラン硫酸などのプロテオグリカンを標的とする。ヘパリンはヘパラン硫酸と構造が非常によく似ており、ヘパリンもまた毒性因子に結合する。さらに、ヘパリンのような炭水化物を表面に結合させた高表面積のカートリッジに感染した血液を通過させることで、通常は内皮細胞の表面を傷つけてコロニー形成を誘導する毒性因子を除去することができる。これらの毒性因子を除去することによって内皮細胞の表面はより保護され、従来型の抗生物質が感染を引き起こしている有害な細菌を殺すことができる。

0020

シンデカンは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンセグメント(HSPG)を含む膜貫通型タンパク質であり、大部分の細胞型に存在する。HSPGが、凝固カスケードから、成長因子のシグナル伝達リパーゼの結合と活性、ECMへの細胞接着とそれに続く細胞骨格形成、微生物による細胞の感染過程までの範囲の、多様な生物学的過程を制御することが以前から知られている。それらは、特定のコアタンパク質をもつ複合体分子であり、コアタンパク質には様々な数のグリコサミノグリカン(GAG)鎖が結合している。鎖の数が異なるだけではない。シンデカンは主にヘパラン硫酸GAGをもつが、いくつかはさらに、コンドロイチンデルマタン硫酸鎖をもつ。さらに、ヘパラン硫酸鎖の長さ、グルクロン酸からイズロン酸へのエピマー化、鎖の全体的な硫酸化、及び単糖スルホン化の位置は異なる場合がある。Anne Woods, J. Clin, Invest. 2001;107(8):935-941(参照により本明細書に組み込まれる)。

0021

内皮細胞面で最も一般的なシンデカンであるSynd1は結合に関与しており、かつ、多数の分子を制御している。これらには、成長因子及びサイトカインが含まれる。シンデカン−1は、このファミリー中で、同定・クローニングされた最初のHSPGであった。これは主に上皮細胞に限定されているが、発達の間には凝集している間葉細胞でも見られ、また、前駆Bリンパ球及び血漿細胞でも見られる。シンデカン−1が上皮側底部に分布していることは接着に関する役割矛盾が無く、シンデカン−1に対するアンチセンスmRNAを上皮細胞に導入すると、上皮−間葉転換が起こり、細胞のコラーゲンゲルへの侵入が活性化されることから、シンデカン−1は上皮の形態を制御していると考えられている。これに付随してこれらの細胞で起こるE−カドヘリン消失は、シンデカン−1とE−カドヘリンの連動した制御を示唆しており、実際に、E−カドヘリンの発現が低下すると、シンデカン−1の生産もまた低下する。

0022

初期の研究から、シンデカン−1がECMへの細胞接着に関与している可能性が示され
た。通常はこのシンデカンを欠損しているシュワン細胞にシンデカン−1を導入すると、接着斑ストレスファイバー伸展が増大し、形成が促進される。伸展している間シンデカン−1は、膜の微細繊維系に共局在して界面活性剤不溶性になるが、接着斑には局在しない。実際に、シンデカン−1が接着斑に存在しているとの報告は1つしかない。興味深いことに、通常は細胞骨格への結合を示していると考えられる界面活性剤不溶性は、細胞質ドメインの存在を必要としない。ごく最近の研究から、シンデカン−1の膜貫通型ドメインは、特殊な型のエンドサイトーシスとして、界面活性剤に不溶性の脂質ラフトと関連していることが分かった。Anne Woods, J. Clin, Invest. 2001;107(8):935-941(参照により本明細書に組み込まれる)。

0023

シンデカンはまた、形態形成宿主防御、及び組織修復に役立つ。シンデカンは、コロニー形成及び、細菌やウイルスの細胞への侵入の阻止を助けることができ、病原体による毒性の潜在的機序は、病原体がシンデカンにあるヘパリン硫酸セグメントに結合する毒性因子を放出した時に開始され、その後細胞表面からのシンデカンの切断を促進すると考えられている。これによって、その後、細胞表面上に細菌細胞やウイルスがコロニーを形成し、細胞内に侵入することが可能になる。この機序は、炭疽菌(B. anthracis)、黄色ブドウ球菌(S. aureasu)、及び緑膿菌(P. aeruginosa)を含む複数の病原体について提
示されており、これらの菌については、発症している間にSynd1を打ち消すことが分かっている。これらの病原体が、上皮細胞からのSynd1の細胞外ドメインの切断を促進し、それによって上皮バリアの完全性を構成していることが分かった。Popva, T. et al.,BMCMicrobiology, 2006, 6:8, 7 February 2006, 「Acceleration of epithelial cell syndecan-1 shedding by anthrax hemolytic virulence factor」(参照により本明
細書に組み込まれる)。3種類の病原体は全て、synd1を標的としていると考えられている。Chenm Y. et al., Mol. Cells, 26, 415-426, Nov. 30, 2008, 「Microbial Subversion of Heparan Sulfate Proteoglycans」(参照により本明細書に組み込まれる)。

0024

本発明では、ヘパリンを表面に結合させた高表面積の血液ろ過吸着カートリッジを用い、感染血液を体外循環によってこの表面を通過させる。血液中に排出された毒性因子は表面結合したヘパリンに結合するため、血液から毒性因子を除去することができる。高濃度の毒性因子を血液から除去することにより、コロニー形成及び内皮細胞表面の損傷が低減し、標準的な抗菌治療を行う期間を延ばすことができる。加えて、高表面積のヘパリンカートリッジに血液中の細菌が接触した場合には、細菌が放出する毒性因子は、表面結合したヘパリンに直接結合する。

0025

この治療法はさらに、炭疽菌、黄色ブドウ球菌、及び緑膿菌の血液感染のような、重篤な感染症の治療に用いることができる。3種類の病原体のいずれかによって引き起こされた感染を、本発明に従って治療することにより、以下の毒素を部分的に又は完全に、血液から除去することができる。
a)炭疽菌について
防御抗原(PA)、
浮腫因子(EF)、
致死因子(LF)、
ポリグルタミン酸カプセル、
アンスラリシン(Anthralysin)O(AnlO)、
アンスラリシン(Anthralysin)B(AnlB)、
致死性毒素(LT)
を含む、3種類のタンパク質で構成される毒素(炭疽菌毒素)
b)黄色ブドウ球菌について
α−毒素
β−毒素
c)緑膿菌について
LasA
体外血液循環に特有の流速では、安全に操作するために、比較的速い流速が可能になるように吸着「床」を設計する必要がある。

0026

本発明の一側面では、大幅な圧力損失を起こすことなく、基体を通過する血液の流速を大きくできるように、基体は十分に大きな間隙容積をもつように設計される。すなわち、哺乳類患者から血液を採取し、吸着質の吸着床表面への送達が主に強制対流によることを特徴とする一定の流速で、血液を基体に通す。これは、非常に多孔質な媒体(例えば多孔質シリカセファデックス架橋ポリスチレン製サイズ排除媒体、緻密な若しくは微多孔質中空繊維、又はシート状の膜など)を用いた場合、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、又は他の形態の親和性治療での、非常にゆっくりとした分子の拡散特徴の過程とは対照的である。

0027

本発明のこの側面は、臨床での体外血液循環、例えば透析心肺バイパス、及び体外(膜型)血液酸素化で一般的に用いられる、安全な流速の範囲内での十分な吸着能を提供する。このことは、吸着質が吸着媒体の上又は媒体中にある結合部位に結合する前に、微多孔膜及び/又は吸着媒体中の顕微鏡レベルの細孔に拡散する必要があり、そのため、通過している間に各血液を十分に分離するためには流速を非常に遅くする必要がある、多くの多孔質の吸着媒体で一般的な吸着質の非常に遅い拡散輸送とは正反対である。

0028

対流輸送の間に起こる病原体及び毒素のヘパリンへの結合は、体外血液循環の(安全な)操作で一般的に用いられる、比較的高流速な条件、例えば約>50mL/分から好ましくは>150mL/分(しかし約2000mL/分未満)で特に効果的である。一方、微多孔質媒体中の細孔での吸着では、実用的な大きさの吸着媒体を通過させて血液を十分に分離又は精製するためには、より遅い流速、すなわち50mL/分未満から1mL/分未満程度にすることが必要になる場合がある。

0029

厳密に言えば、吸着質が吸着部位に移動するために媒体中での及び/又は微多孔膜を通過する拡散輸送が必要とされる媒体では、吸着カラム上での「滞留時間」を非常に長くする必要があるが、それと比較して、吸着質を強制対流によって(本質的に無孔の媒体上の)結合部位へ運ぶ場合には滞留時間がより短くて済むと考えられている。しかしながら、安全、かつ、有効な吸着カートリッジ、カラム、フィルターなどの実用化には、大きさの制限、特にそれらが保持できる血液の最大容量、及び吸着媒体を通過する血液又は血清の流速に制限がある。このような理由から、吸着デバイスを通過する平均流速が重要な設計変数であると考えられている。

0030

血流からサイトカイン又は病原体を除去する際の対流及び拡散の動力学を比較することができる。拡散輸送に依存する吸着媒体には通常、顕微鏡レベルの細孔が存在するために、内部表面積が非常に大きい多孔質材料が用いられる。一方、対流輸送に適した媒体は通常、粒子、ビーズ、繊維、網状の発泡体、又は螺旋状のカートリッジのような、固体の、すなわち本質的に無孔の材料間の、顕微鏡レベルの「流路」又は目に見えるレベルの間隙に依存している。

0031

強制対流輸送に依存している媒体は通常、高流速により適しているが、より遅い拡散輸送に依存している媒体は、高流速で滞留時間が短い場合には効果が非常に低い。このため、体外血液ろ過デバイスでは、吸着質が吸着媒体中の細孔にゆっくりと拡散する必要のない吸着媒体がより好ましい。血液を、人工材料から作られた回路ポンプを用いて通す場合、血液の滞留を防ぎ、凝固のリスクを低減させるために、比較的高血流速を採用するのが一般的である。一方で極端な高流速は、血液細胞破裂させる高剪断力衝撃損傷に血
液細胞を曝す可能性があるため、避けなければならない。そのため本発明は、対流輸送の好ましい特性とその望ましくより速い動態を用いて、血液からサイトカイン又は病原体を除去する方法及びデバイスを提供する。これは、吸着分子、例えばヘパリンを表面処理したことにより、血液から除去することが望まれるサイトカイン又は病原体と結合することができるようになった、本質的に無孔の基体に血液を流すことによって行われる。

0032

移植可能なデバイスもまた、体の外で実施される「体外治療」の手段ではあるが、本発明の方法は主に、酸素抗凝血剤麻酔などのような所望の産物を体液に添加することができる、体外での治療又は手技に用いられることを目的としている。逆に、特定の種類の体外回路を用いることにより、天然の毒素又は毒物のような、望ましくない産物を除去することができる。例としては、血液の老廃物を除去するための代表的な技術である、血液透析及び血液ろ過が挙げられる。血液感染性毒物などの除去には、活性炭素表面への吸着が用いられてきた。

0033

本発明では、哺乳類由来全血及び血清を用いることができる。特許請求した方法で用いることができる血液又は血清の量を制限する意図はない。その範囲は1mL未満から1Lを超えてもよく、途切れることなく血液を患者に再循環させる場合には、患者の血液の全量まで、及び全量を含んでいてもよい。必要な場合には、吸着床を通る1つ以上の「管」を使用してもよい。血液は、ヒト又は動物の血液であってよい。

0034

血液から病原体又は毒素を除去するために表面をヘパリン化した吸着媒体を、50mL/分未満、好ましくは約150〜2000mL/分の範囲の流速で従来型の体外血液循環で使用するために、本発明に従って最適化することができる。そのような高流速により、吸着カラム中での滞留時間が短くなり、かつ、対流輸送がブラウン拡散輸送を上回る。このことは、TNF−αなどの分子量の大きいタンパク質又はサイトカインやウイルス、細菌及び寄生虫などのより大きい粒子を結合させるためには、それらが非常にゆっくりと拡散するため、特に重要である。本発明では、病原体及び毒素を除去することができる吸着部位は主に、血液が流れる又は強制対流によって送達される媒体床中の間隙の表面に存在する。血液治療用の間隙流路の大きさは、直径の平均が6ミクロンである赤血球が移動できる程度に十分大きい必要がある。充填済みの吸着カートリッジを高血流速で用いる体外循環に設置可能にするためには、間隙流路は赤血球の直径の数倍の大きさでなくてはならない。これにより、溶血を引き起こす高剪断速度を防止し、同時に、充填床又はカートリッジを通過する血流の圧力損失を最小限に抑えることができる。加えて媒体は、フィルターカートリッジを塞ぐ圧縮による変形を最小限にするために、剛性をもつことが好ましい。これらの適性に基づいて、例えば、高流速の体外血液循環によってサイトカインを十分に除去できるように、最適化した硬質媒体の間隙流路の大きさと全表面積の釣り合いを取る。

0035

2.本発明で使用する基体。
本発明では、形及び組成が多様な材料を基体として用いることができる。好適な基体はどれも広い表面積を提供し、(主に)強制対流輸送により、吸着質のそれらが吸着する吸着部位への移動を促進する。媒体は通常、媒体が血流中に流れ出ないように(媒体漏出とも呼ばれている)、かつ、血液が本質的に全媒体表面を通過できるように、媒体を保持するように設計されたカラムのような容器中に充填されて提供される。吸着媒体を作成するための有用な基体としては、無孔の硬質ビーズ若しくは粒子、微粒子、網状の発泡体、硬質モノリシック床(例えば焼結ビーズ又は粒子から成形した)、織布又は不織布で充填したカラム、糸又は固体若しくは中空で緻密な(微多孔質ではない)単繊維で充填したカラム、平坦フィルム若しくは緻密な膜から形成した螺旋状のカートリッジ、あるいはビーズと布を組み合わせたカートリッジのような媒体の併用が挙げられる。本発明での使用に好適な基体は例えば、最初は微多孔質であるが、表面の加工過程の際に本質的に無孔にな
る基体でもよい。

0037

固体基体上のヘパリンの表面濃度は、1〜10μg/cm2の範囲であってよい。
本発明のカラム型の吸着/ろ過床は、血液又は血清に対する高表面積を提示し、同時に大幅な圧力損失と高剪断力を防止する、マクロ多孔質構造をもつ。大幅な圧力損失は溶血による血液損傷の可能性に加えて、圧力損失に応答して自動的に停止する装置を備えた体外回路を停止させる可能性があるため避けなくてはならない。

0038

2.1.基体としてのビーズ
有用な基体の1つは、固体のビーズ又は粒子の形態である。遭遇する流速による変形/圧縮に耐える十分な剛性をもつ材料から「ビーズ」を作成することができる。変形に耐える力は、自由体積を維持し、それに続く充填床「接触器」の圧力損失を低くするために必要である。基体のバルクには実質的に細孔がないため、吸着質が吸着の前に細孔中に拡散する必要がない。本発明の吸着部位は主に媒体表面にあるため、主に強制対流輸送によって表面に送達される血液中の吸着質が到達しやすい位置にある。好適な基体は、その表面が完全に平坦である必要はない。というのは、凹凸は、例えばヘパリンを共有結合又はイオン結合によって、結合部位として接着させるための表面積の望ましい増加を生じるからである。一方、吸着質が結合部位に結合する前に細孔中に拡散する必要性を排除するために、分子大の内部細孔の大部分を避ける。

0039

本発明では、様々な種類のビーズを使用することができる。有用なビーズは、この方法で使用している最中の変形/圧縮を避けるための十分な硬さ、並びにこの方法で使用するためにヘパリンでコーティングすることができる、十分な表面積をもつ必要がある。

0040

臨床で通常用いる流速で水又は生理食塩水をおよそ1時間流す間に、吸着床の圧力損失が有意に上昇しないことが、例えば、同様の流速の例えば生理食塩水を測定した場合に、最初の圧力損失(流動早々に測定する)と比較して、圧力損失の上昇が10〜50%未満であることが、十分に硬質であることの証拠となる

0041

ビーズ又は他の高表面積基体を、ガラス、セルロース、セルロース酢酸、キチン、キトサン、架橋デキストラン、架橋アラニーズ、ポリウレタン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン又はエチレンと他単量体との共重合体ポリエチレンイミン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、シリコーン及びポリイソブチレンを含む、本質的に漏出する不純物を含まない、重合体又は非重合性材料などの生体適合性材料から作成してもよい。有用な基体の例としては、無孔の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)が挙げられる。他の適したビーズには、ポリスチレン、高密度及び低密度ポリエチレンシリカ、ポリウレタン、及びキトサンがある。

0042

そのようなビーズ自体の作成方法は当該分野において既知である。ポリエチレンビーズ及び他のポリオレフィンビーズは、合成過程を通じて直接生産され、しばしば、さらなる修正をせずに使用することができる。

0043

上述のように、本発明の方法で使用するためには、カートリッジの入口と出口の間での大幅な圧力損失を防ぐように、血液細胞が個々のビーズの間を高流速環境で安全に通過できるように、また、血液中のサイトカイン又は病原体が吸着するヘパリンを結合させるた
めの適切な間隙表面積を提供するように、体外血液ろ過用の流路の大きさ又は個々のビーズ間の間隙を最適化する必要がある。300ミクロンのビーズを密に充填した床の適切な間隙細孔の大きさは、直径約68ミクロンである。有用なビーズのサイズは、直径100〜500ミクロンの範囲である。ビーズサイズの平均は、150〜450ミクロンであってもよい。例えば、DSMPTG(以前のPolymer Technology Group、バークリー、カリフ
ニア州)のポリエチレンビーズの直径の平均は0.3mmであり、好適である。間隙細孔はビーズの大きさの関数である。

0044

使用にあたっては、好適なビーズをカラムのような容器中に充填する。
2.2.基体に適した他の形状
網状の発泡体は連通気泡構造をもち、例えば、ポリウレタン及びポリエチレンから製造することができる。製造方法を制御することにより、細孔径を制御することができる。通常、網状の発泡体は1インチ当たり3〜100個の細孔をもつことができ、表面積は最大66cm2/cm3になる可能性がある。

0045

ビーズを化学的又は物理的いずれかの手段を用いて焼結し、モノリス多孔質構造にすることができる。ポリエチレンビーズをカートリッジ中で、加圧しながらその融点を超える温度で加熱することにより、焼結させることができる。得られた間隙細孔径は、ビーズを充填した床の間隙細孔径よりもやや小さい。

0046

カラムを織布又は不織布のいずれかで充填することもできる。布の繊維サイズを制御することにより、間隙細孔の大きさを制御することができる。不織布はフェルトとしても知られており、様々な方向を向いた繊維が互いにからみあって接着している。織布は、一定の、不均一でない構造をもつ。

0047

カラムを繊維又は繊維製の糸で充填してもよい。ポリエチレンや他の繊維を、細くて中空な又は固体の繊維に延伸してもよく、それらを標準的な血液透析用カートリッジと同様のカートリッジ中に充填することができる。加えて、これらの繊維を糸になるように織ってもよい。Dyneema Purity(登録商標)は、UHMWPE製の、強度の高い織布である。Dyneema繊維をヘパリン化してカートリッジ中に充填してもよく、これはサイトカイン及
び病原体を除去するための広い表面積の支持体を提供する。

0048

螺旋状のカートリッジは、隣接した表面が接触するのを防ぐための任意のスペーサー材料と共に密に巻いた、薄い膜を含む。膜を、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリカーボネート、PET、PBTなどのような重合体から作成することができる。

0049

2.3.ヘパリンの結合
本発明の吸着媒体は、固体基体の表面に共有結合したヘパリンを含む場合がある。Wendel及びZiemerの総説に記載された方法のような、それ自体が既知の様々な方法を用いてヘパリンを所望の基体に結合させることができる(H.P Wendel and G. Ziemer, European Journal of Cardio-thoracic Surgery 16 (1999) 342-350)。一態様ではヘ
パリンを、末端共有結合で固体基体に結合させる。この方法では、血流に入る可能性があるヘパリンの基体表面からの放出が低減又は排除されるため、デバイスの安全性が高まる。ヘパリンの血液による又は血液への「漏出」により、出血及びヘパリン誘導性血小板減少症のリスクが高まるため、これを避けなければならない。

0050

ヘパリンを固体基体へ共有結合させることにより、非共有結合と比較して、固定化した分子の表面密度及び配向のようなパラメータの制御がより容易になる。発明者らは、これらのパラメータが、サイトカイン又は病原体を固定化した炭水化物分子に最適に結合させ
るために重要であることを示してきた。固体基体上でのヘパリンの表面濃度は、1〜10μg/cm2の範囲となろう。末端共有結合とは、ヘパリン分子の末端残基を介して、ヘパリンを固体基体に共有結合させることを意味する。ヘパリンはまた、複数の位置でも結合することができる。末端結合が好ましい。

0051

ビーズを用いる場合、それらを親水性にしてから、ヘパリン又は他の化合物を結合させてもよい。ビーズの調製に用いることができる方法には、酸腐食プラズマ処理、及び過マンガン酸カリウムのような強い酸化剤への露出が挙げられる。

0052

2.4.基体1グラム当たりのヘパリンの量
基体1グラム当たりのヘパリンの量は変えてもよい。ビーズを用いる場合、ビーズ1グラム当たりのヘパリンの量は、用いる層の数によって、及びビーズの大きさによっても決定される。ビーズが大きくなればなるほど、ビーズ1グラム当たりのヘパリンは少なくなる。固体基体上でのヘパリンの表面濃度は、1〜10μg/cm2の範囲となろう。MBTH方法での1つの好ましい量は、ビーズ1グラム当たり、ヘパリン2.0±0.5mgである。

0053

特許請求した方法で用いるヘパリンの分子量は変わり得る。例えば、天然ヘパリンの平均分子量は22kDaである。硝酸分解したヘパリンの分子量は8kDaである。
本発明に有用な基体はまた、公開されている、米国特許出願第2009/0136586A1号に記載されている方法によっても調整することができ、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。

0054

3.本発明の方法で使用するためのデバイス
本発明の別の側面は、哺乳類の血液からサイトカイン又は病原体を体外へ除去するための、サイトカイン又は病原体に結合親和性もつヘパリンで加工した固体基体を含むデバイスの使用を提供する。

0055

本発明での使用及び方法で記載したデバイスは、患者、例えば腎不全を患っている患者の血液及び血清を体外治療するための標準的なデバイスを含んでいてもよい。
体外循環では、医療機器に接触している血液の局所的な血流パターンが、剪断の活性化を介した血栓形成停滞域での血小板の凝集に影響することが知られている。従って、本発明の様々な態様で使用するデバイスは、これらの問題を生じない方法で設計しなければならない。

0056

本発明のいくつかの実施形態で使用するデバイスは例えば、以下の特性を有していてもよい。
血流が150〜2000ml/分の範囲にある。
流れ抵抗が低い。
基体の表面積が広く、例えばおよそ1〜40m2であり、その基体表面に炭水化物が固定化されている。
コーティングが安定している(それに接触しても血液中に炭水化物が漏出しない)。
デバイス中(停滞域以外で)での血行動態特性が適切である。
生体適合性が最適である。

0057

本発明による使用又は方法で用いることができる、そのようなデバイスの非限定的な例には、サイトカイン分子を除去するための、高流速に適応したExthera Medical社製の体
外血液ろ過デバイスのような、小児用血液透析器がある。Prisma M10ヘモフィルターダイアライザー(Gambro AB、スウェーデン)のような、血液又は血清の体外治療用の、他
モデル又は型のデバイスもまた使用することができる。

0058

流速条件とは、拡散限界を超える血流と定義することができる。
4.病原体
本発明は、上述の方法で開示した固体基体に哺乳類の血液を接触させて、哺乳類の血液から病原体及び/又は毒素を除去することによって疾患を治療する方法を提供する。本発明の、ヘパリン化した基体を用いて血液から除去することができる病原体の例としては、細菌、すなわち炭疽菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌がある。

0059

上述のように、本発明で治療する疾患の一例は炭疽病である。早期治療は、多くの症例で炭疽病を治癒することができる。皮膚(皮膚)炭疽は、ペニシリンテトラサイクリンエリスロマイシン及びシプロフロキサシン(シプロ)のような一般的な抗生物質で治療することができる。肺型の炭疽は医学的な緊急事態である。初期段階での、かつ、継続した抗生物質を用いた静脈内治療により、救命できる場合がある。生物テロによって攻撃された場合、症状が現れる前に炭疽菌に曝された患者に抗生物質を投与することになる。ワクチンは存在するが、まだ一般市民には使用できない。炭疽菌によって引き起こされる疾患には、皮膚(皮膚)炭疽、肺炭疽(inhalation anthrax)及び胃腸(腸)炭疽の3種類の症状がある。肺炭疽は非常に重篤な疾患であり、残念ながら、罹患した患者のほとんどが、適切な抗生物質の投与を受けても死に至る。抗生物質は細菌を殺すのには効果があるが、炭疽菌から既に放出された致死毒素を破壊することはない。

0060

本発明の方法を、抗生物質の投与のような他の標準的な治療の前後いずれにも実施することができる。
5.本発明と、別のろ過/分離工程の併用
本発明による治療方法のある実施形態では、血液の採取と再導入を、対象の血液の一部分を含む切れ目のないループを用いて行ってもよい。

0061

さらなる側面では、上述した方法を、哺乳類の血液をろ過又は治療する他の方法と組み合わせても良い。例えば、対流力学に基づくカートリッジを、CPB、血液透析、及び酸素化のような、一連の標準的な体外回路の中で使用することができる。

0062

6.実施例
本発明の様々な態様を、以下の実施例でさらに記載する。これらの実施例は限定を意図してはいない。

0063

6.1.実施例1−ヘパリンカラムの調製
平均直径が0.3mmのポリエチレン(PE)ビーズ(ロット番号:180153)はPolymer Technology Group(バークリー、米国)から供給され、カラム(Mobicol、1mL)はMoBiTec(ドイツ)から入手した。ヘパリンとポリエチレンイミン(PEI)はそれぞれ、Scientific Protein Laboratories(ワナキーウィスコシン
米国)及びBASF(ルートヴィヒスハーフェン、ドイツ)から購入した。化合物は全て、分析グレード又はそれ以上の等級のものを使用した。

0064

Larmら(Larm O, Larsson R, Olsson P. A new non-thrombogenic surface prepared by selective covalent binding of heparin via a modified reducing terminal residue. Biomater Med Devices Artif Organs 1983; 11: 161-173)によって記載されたよ
うに、ヘパリンをビーズ上に固定化した。

0065

以下に記載した一般的な方法により、重合体表面をヘパリン化した。
数種類反応性官能基(−SO3H、−OH、−C=O、−C=C−)を用いて重合体
表面に親水特性を導入するために、酸化剤(過マンガン酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム)を用いて重合体表面をエッチングする。表面をプラズマ又はコロナによりエッチングすることもできる。例えば、PE−ビーズを酸化剤でエッチングする(過マンガン酸カリウムの硫酸溶液)。これらの親水性ビーズ、とりわけOH−基と二重結合を含むビーズはこれ以降、対照として用いる。

0066

ポリアミン、ポリエチレンイミン(PEI)又はキトサンを用いた処理により、反応性アミ官能基を導入する。いくつかの目的のためには、クロトンアルデヒド又はグルタルアルデヒドなどの二官能性試薬を用いて架橋することにより、ポリアミンを表面に安定化させてもよい。

0067

コーティングをさらに、硫酸化多糖硫酸デキストラン又はヘパリン)を用いたイオン架橋により安定化させる。必要であればこれらの工程を繰り返して、サンドイッチ構造を構築する。各工程と工程との間では、注意深くすすぎを行う必要がある(水、適切な緩衝液)。PEI又はキトサンの最後の添加を行った後、天然ヘパリンの還元末端残基もつアルデヒド機能を用いた還元アミノ化により、アミノ化した表面に天然ヘパリンを末端結合(EPA)させる。

0068

ヘパリンの部分的な亜硝酸分解により、還元末端残基がより多くの反応性アルデヒド機能をもつようにすることができる。これにより反応時間が短縮されるが、固定化したヘパリンの分子量は小さくなる。このカップリングは還元アミノ化(シアノボヒドリド、CNBH3−)により、水溶液中で行われる。

0069

この代替法では、アミノ化媒体を酢酸緩衝液(800ml、0.1M、pH4.0)に懸濁し、その後4.0gの亜硝酸分解したヘパリン(Pharmacia、スウェーデンから入手したヘパリン)を添加した。30分間撹拌した後、NaBH3CN(0.4g)を添加した。反応混合物を24時間撹拌し、その後上述のように処理してヘパリン化媒体を得た。

0070

1〜10μg/cm2のヘパリンを、ガラス、セルロース、キチンなど全ての親水性表面、及びポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、PTFEなどのほとんど全ての疎水性重合体にカップリングさせることができる。

0071

得られた、ヘパリンが末端で共有結合したPEビーズをエチレンオキシド(ETO)で滅菌し、0.9%塩化ナトリウム及び超純粋ですすぐ。MBTH方法によって結合させたヘパリンの測定値はビーズ1グラム当たり2.0mgであった(Larm O, Larsson R, Olsson P. A new non-thrombogenic surface prepared by selective covalent binding of heparin via a modified reducing terminal residue. Biomater Med Devices Artif Organs 1983; 11: 161-173及びRiesenfeld J, Roden L. Quantitative analysis of N-sulfated, N-acetylated, and unsubstituted glucosamine amino groups in heparin and related polysaccharides. Anal Biochem 1990; 188: 383-389)。

0072

ポリエチレンビーズの平均直径は0.3mmであり、末端を介した共有結合によってヘパリン分子をその表面に結合させることで、炭水化物鎖がヘパリン/ヘパリン硫酸に親和性をもつタンパク質により接近しやすくなることを保障する技術によりヘパリン化されている。固定化したヘパリンの平均分子量は約8kDaであり、ビーズ1グラム当たり2mg(およそ360IUと等しい)のヘパリンが結合している。非ヘパリン化ビーズではなくヘパリン化したビーズに流した血液で、アンチトロンビン(AT)濃度の75%が期待していたとおりに除去されたことから、この表面の完全性を確認した。

0073

6.2.実施例2−毒素の除去
患者の血液透析器から動脈血を採取する。血液をEDTA入り真空採血管を用いて採取し、その内の1mLを予め調製しておいたカラムにすぐに充填し、その後ローラーポンプを用いて、例えば1、5又は10mL/分のいずれかでカラム内を通過させる。カラムを通過した血液をすぐに、もう一方の端から回収し、低温遠心分離する(4500G)。その後上清を回収し、後の解析のために−80℃で凍結させる。

0074

簡単に説明すると、ヘパリン化ビーズを通過させることで、非ヘパリン化ビーズと比較して、血液中の毒素が非常に大幅に減少する。
6.3.実施例3:生体外での炭疽菌防御抗原の除去
細菌上清:炭疽菌7702又は9131を、ルリア培地(LB)中、37℃で、250RPMで振とうしながら一晩培養した。pH8に調製した(1MのHEESで)0.8%の重炭酸ナトリウム(NaHCO3)を含む20mLのLBに、7702の一晩培養1mLを播種し、250RPMで振とうしながら、37℃で、対数増殖期後期まで生育させた(およそ7時間)。培養を3500RPMで5分間遠心分離して細菌細胞と破片を除去した。上清を回収し、0.2μmのフィルターに通してすぐに使用するか、又は−20℃で保存した。

0075

ビーズの調製:1gのヘパリン又は対照ビーズを、底部にフィルターを設置したシリンジに添加し、ビーズの上にもフィルターを設置した。実験の前に、2mLのトリ緩衝食塩水(TBS)を添加してビーズを前処理した。ウシ胎仔血清(FBS)を用いた場合には、2mLのTBSを添加してビーズを前処理した後に、2mLのFBSを5回ビーズに通した。TBS又はFBSの液滴がシリンジから放出されなくなってから、細菌上清を通した。

0076

上清を通す:2mLの細菌上清をビーズに負荷した。通過させた後、上清を回収して、さらに4回通した。上清の液滴がシリンジから出てこなくなったら上清を回収して、−20℃で保存した。

0077

酵素免疫測定法(ELISA):100μLの上清をImmulon 4HBX高結合マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに入れ、振とう機にかけて室温で2時間インキュベートした。上清を除去し、その後、0.05%のツイーンを含むTBS(TBST)でウェルを3回洗浄した。ウェルを2%ウシ血清アルブミンで、振とう機を用いて室温で1時間ブロッキングした。ウェルを再度洗浄した。ウェルにヤギ抗PA(List Biological Laboratories)(TBSを用いて1/2000に希釈した)を加え、振とう機を用いて室温で1時間インキュベートした。ウェルを記載した通りに洗浄した。ウェルにウサギ抗ヤギ−HRP(Invitrogen)(TBSを用いて1/2000に希釈した)を加え、振とう機を用いて室温で1時間インキュベートした。ウェルを記載した通りに洗浄した。ウェルにSigmaFast-OPD(Sigma)のdH2O溶液を加え、室温でおよそ30分間発色させた。吸収
を450nmで測定した。

0078

ウェスタンブロット:記載したように細菌上清を調製し、2.5μL又は5μL容量を、メタノールとその後TBSを用いて3分間前処理したPVDF膜(BioTrace)に乗せた。5分後、膜を2%脱脂粉乳のTBST溶液中、室温で30分間ブロッキングした。膜をTBSTで3回洗浄し、1/3000に希釈したヤギ抗PAを加えて、室温で45分間インキュベートした。膜を3回洗浄し、1/3000に希釈したウサギ抗ヤギ−アルカリホスファターゼを加えて室温で45分間インキュベートした。膜に1-step NBT/NCIP(Piercenet)を加えて発色させた。

0079

結果
ウェスタンドットブロットアッセイにより、我々の培養条件で毒素が生産されたことが初めて確認された。防御抗原(PA)は、5%CO2雰囲気を加えて又は加えずに37℃で培養した7702の一晩培養及び8時間培養の両方で検出された。FBSを抗体検出のバックグラウンドの対照として用いた。

0080

7702と9131の上清を対照及びヘパリン化ビーズに通した。対照及びヘパリン化ビーズを通すと、およそ75%が減少することが分かった(図1B)。繰り返し実験結果からは、これまでに、予浸なしでは43.3%、また予浸後にヘパリン化ビーズを使用すると75%減少することが分かっている。75%減少すると、PAの測定値は9131のバックグランドレベルまでに下がり、このことは、これが100%の減少である可能性を示している。PAの減少は、上清をもう一度ビーズに通すことで回復する。複数回通過させることは、PAの減少には効果がない。

0081

6.4.実施例4:ヘパリン化ビーズによる細胞保護の証明
この試験では、PA上清とビーズの調製は、実施例3で概要を示したように行った。7702と9131の上清を10倍まで濃縮した。この上清を次に、DMEM細胞用培地(−フェノールレッド)を用いて、所望の濃度に希釈した。マクロファージを培養し、計数し、1×106細胞/mLになるように再懸濁した。500μlのDMEM+FBSに1x105個の細胞を加えて各ウェルに入れ、37℃、5%CO2条件で一晩インキュベートした。0.05gのビーズを各ウェルに加えた。次にDMEM+/−FBS又はFBSを100μlずつトランスウェルに通した(合計300μl)。その後培地を培養ウェルから除去し、ビーズをDMEMで1回洗浄した。次に、希釈した上清500μlを各トランスウェルに入れた。このウェルをその後、37℃、5%CO2で20時間培養した。それぞれのトランスウェルから50mlを採取し、LDHレベルを測定した(細胞毒性)。図2に結果を示す。上清の希釈倍率にかかわらず、マクロファージ細胞死の有意な低下が測定された。FBSとDMEMで処理したビーズでは、細胞死はバックグランドレベルまで低下した。

実施例

0082

6.5.実施例5:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、USA300株のα−毒素の除去。
実施例3に概要を示した方法に従って、USA300株から、USA300型MRSAのα−毒素を含む上清を調製した。ヘパリン化ビーズもまた、実施例3に概要を示した方法に従って調製した。結果を図3に示す。ELISA型検定で測定すると、上清の希釈倍率にかかわらず、α−毒素の濃度が有意に減少した。

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