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技術 抵抗スポット溶接における電流波形決定方法及び抵抗スポット溶接方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 福本学
出願日 2014年1月14日 (6年10ヶ月経過) 出願番号 2014-004520
公開日 2015年7月23日 (5年4ヶ月経過) 公開番号 2015-131327
状態 特許登録済
技術分野 スポット溶接
主要キーワード 有限要素法解析ソフト 電流形状 通電開始直後 超ハイテン 最適電流 設計変数 肩下がり 有限要素法解析
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年7月23日)のものです。
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図面 (10)

課題

適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することが可能な、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法を提供する。

解決手段

複数の被溶接材で構成された積層体を一対の電極で挟持し、複数の被溶接材を接合する抵抗スポット溶接における電流波形を決定する際に、電極から積層体へと付与される加圧力をP、通電時間をτ、0〜τのいずれかの値をとる時刻tにおけるナゲット径をDN(t)、0〜1のいずれかの値をとる係数をk、非溶融部に作用する時刻tにおける力をF(t)とするとき、時刻t=0〜τにおけるDN(t)の積分値であるSが最大且つDN(τ)が最大を目的関数とし、F(t)の時刻t=0〜τにおけるナゲット形成開始以降の最小値であるFminがFmin>(1−k)・Pなる関係を制約条件とし、且つ、電流波形IS(t)を設計変数とする最適化問題解く工程を有する、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法とする。

概要

背景

自動車等の各種工業部材における材料同士の接合方法の1つとして、抵抗スポット溶接が用いられている。抵抗スポット溶接では、接合される二以上の被溶接部材電極間に挟み、この電極によって被溶接部材を押圧しつつ通電する。これにより、通電された二以上の被溶接部材の接触界面の一部が溶融されて接合される。

抵抗スポット溶接において、抵抗スポット溶接時に発生するチリスパッタと称される溶融部からの溶融金属飛散(以下において、溶融金属が飛散する現象を「チリ」ということがある。)は、作業環境を悪化させる。また、製品表面にチリが付着すると製品品質が低下するため、チリの発生が懸念される場合には、予め、付着したチリを除去しやすくするための加工が製品に施される。かかる加工はコスト高の一因になるため、チリの発生を抑制することが望まれている。

抵抗スポット溶接により接合された被溶接部材の接合強度は、通電により溶融した溶融部の直径(以下において、「ナゲット径」ということがある。)に応じて変化し、ナゲット径を大きくするほど接合強度を高めやすい。そのため、所望の接合強度を確保する観点からは、ナゲット径を大きくすることが好ましい。しかしながら、ナゲット径を大きくし過ぎるとチリが発生する。そのため、抵抗スポット溶接を行う際には、ナゲット径が、所望の接合強度を確保するために最低限必要なナゲット径(以下において、「最小ナゲット径」ということがある。)以上になり、且つ、チリが発生し始める大きさ未満になるように、溶接条件が決められる。

このような抵抗スポット溶接に関する技術として、例えば特許文献1には、通電時間の初期にスパッタの発生を抑え得る程度の電流値に所定時間維持して被溶接物の表面を軟化させ、その後に電流値を所定時間高く維持してスパッタの発生を抑えつつナゲット成長させるスポット溶接通電制御方法が開示されている。また、特許文献2には、抵抗溶接の通電時間内に、溶接する鋼板に対してナゲットを成長させる程度の高い電流値を維持する時間帯と、スパッタを発生させずに鋼板を軟化させる程度の低い電流値を維持する時間帯を交互に繰り返すように、通電するスポット抵抗溶接の通電制御方法が開示されている。また、特許文献3には、高張力鋼板への通電電流漸変的に上昇させることによりナゲット生成を行う第1ステップと、該第1ステップの後に電流下降させる第2ステップと、該第2ステップの後に電流を上昇させて本溶接するとともに、漸変的に通電電流を下降させる第3ステップとを備えた工程によりスポット溶接を行う高張力鋼板のスポット溶接方法が開示されている。

概要

適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することが可能な、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法を提供する。複数の被溶接材で構成された積層体を一対の電極で挟持し、複数の被溶接材を接合する抵抗スポット溶接における電流波形を決定する際に、電極から積層体へと付与される加圧力をP、通電時間をτ、0〜τのいずれかの値をとる時刻tにおけるナゲット径をDN(t)、0〜1のいずれかの値をとる係数をk、非溶融部に作用する時刻tにおける力をF(t)とするとき、時刻t=0〜τにおけるDN(t)の積分値であるSが最大且つDN(τ)が最大を目的関数とし、F(t)の時刻t=0〜τにおけるナゲット形成開始以降の最小値であるFminがFmin>(1−k)・Pなる関係を制約条件とし、且つ、電流波形IS(t)を設計変数とする最適化問題解く工程を有する、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法とする。

目的

かかる加工はコスト高の一因になるため、チリの発生を抑制することが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

2枚以上の複数の被溶接材で構成された積層体を一対の電極で挟持し、前記一対の電極で前記積層体を押圧しつつ通電することにより前記2枚以上の複数の被溶接材の界面に溶融部を形成させる過程を経て、前記2枚以上の複数の被溶接材を接合する抵抗スポット溶接における電流波形を決定する方法であって、前記電極から前記積層体へと付与される加圧力をP、前記一対の電極間電流を通す通電時間をτ、0〜τのいずれかの値をとる時刻tにおけるナゲット径をDN(t)、0〜1のいずれかの値をとる係数をk、前記積層体に含まれている互いに接触する任意の2つの前記被溶接材が前記抵抗スポット溶接時に溶融せずに互いに接触する界面である非溶融部に作用する、前記時刻tにおける力をF(t)、とするとき、前記DN(t)の、時刻t=0〜τにおける積分値であるSが最大であること、および、前記DN(τ)が最大であることを目的関数とし、前記F(t)の、時刻t=0〜τにおけるナゲット形成開始以降の最小値であるFminがFmin>(1−k)・Pなる関係を制約条件とし、且つ、時刻tにおける電流の波形IS(t)を設計変数とする最適化問題解く工程を有する、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法

請求項2

前記係数kが0.85〜0.95である、請求項1に記載の抵抗スポット溶接における電流波形決定方法。

請求項3

請求項1又は2に記載の抵抗スポット溶接における電流波形決定方法により決定された電流波形IS(t)で抵抗スポット溶接を行うことを特徴とする、抵抗スポット溶接方法

技術分野

0001

本発明は、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法、および、この方法により決定された波形通電する抵抗スポット溶接方法に関する。より詳しくは、チリを発生させることなく所望のナゲット径が得られる抵抗スポット溶接の電流波形を決定する方法、および、電極を介して押圧されている被溶接部材へ上記方法で決定された波形で通電することにより抵抗スポット溶接を行う、抵抗スポット溶接方法に関する。

背景技術

0002

自動車等の各種工業部材における材料同士の接合方法の1つとして、抵抗スポット溶接が用いられている。抵抗スポット溶接では、接合される二以上の被溶接部材を電極間に挟み、この電極によって被溶接部材を押圧しつつ通電する。これにより、通電された二以上の被溶接部材の接触界面の一部が溶融されて接合される。

0003

抵抗スポット溶接において、抵抗スポット溶接時に発生するチリやスパッタと称される溶融部からの溶融金属飛散(以下において、溶融金属が飛散する現象を「チリ」ということがある。)は、作業環境を悪化させる。また、製品表面にチリが付着すると製品品質が低下するため、チリの発生が懸念される場合には、予め、付着したチリを除去しやすくするための加工が製品に施される。かかる加工はコスト高の一因になるため、チリの発生を抑制することが望まれている。

0004

抵抗スポット溶接により接合された被溶接部材の接合強度は、通電により溶融した溶融部の直径(以下において、「ナゲット径」ということがある。)に応じて変化し、ナゲット径を大きくするほど接合強度を高めやすい。そのため、所望の接合強度を確保する観点からは、ナゲット径を大きくすることが好ましい。しかしながら、ナゲット径を大きくし過ぎるとチリが発生する。そのため、抵抗スポット溶接を行う際には、ナゲット径が、所望の接合強度を確保するために最低限必要なナゲット径(以下において、「最小ナゲット径」ということがある。)以上になり、且つ、チリが発生し始める大きさ未満になるように、溶接条件が決められる。

0005

このような抵抗スポット溶接に関する技術として、例えば特許文献1には、通電時間の初期にスパッタの発生を抑え得る程度の電流値に所定時間維持して被溶接物の表面を軟化させ、その後に電流値を所定時間高く維持してスパッタの発生を抑えつつナゲット成長させるスポット溶接通電制御方法が開示されている。また、特許文献2には、抵抗溶接の通電時間内に、溶接する鋼板に対してナゲットを成長させる程度の高い電流値を維持する時間帯と、スパッタを発生させずに鋼板を軟化させる程度の低い電流値を維持する時間帯を交互に繰り返すように、通電するスポット抵抗溶接の通電制御方法が開示されている。また、特許文献3には、高張力鋼板への通電電流漸変的に上昇させることによりナゲット生成を行う第1ステップと、該第1ステップの後に電流下降させる第2ステップと、該第2ステップの後に電流を上昇させて本溶接するとともに、漸変的に通電電流を下降させる第3ステップとを備えた工程によりスポット溶接を行う高張力鋼板のスポット溶接方法が開示されている。

先行技術

0006

特開2006−43731号公報
特開2006−181621号公報
特開2003−236674号公報

発明が解決しようとする課題

0007

近年、ハイテン超ハイテン等の新しい鋼板の活用が、ますます志向されつつある。これらの高強度鋼板は、強度を高めるための方策として、一般にSi等の合金軟鋼より多く添加されており、その結果比抵抗が高いため発熱しやすい。それゆえ、高強度鋼板を抵抗スポット溶接した場合には、接触界面における温度上昇激しく、溶融部(ナゲット)を得ることが容易である反面、非溶融部を含んだ接触面積が、溶融部の面積より大きい状態を維持すること、すなわちチリの発生を回避することが困難となる。したがって、最小ナゲット径を得るために必要な電流値(下限電流)とチリが発生する直前の電流値(上限電流)とによって画定される適正電流範囲が狭い。適正電流範囲が狭いと、最小ナゲット径を確保しつつチリの発生を抑制できる溶接条件が限定されるため、複数回の溶接を連続的に行うことにより生じる電極先端損耗や、被溶接材同士の隙間等による重ね合わせの状態変化など、実生上生じ得る種々の外乱に対する余裕度が小さいこととなり、場合によっては適正条件範囲から逸脱した条件で溶接することとなる。そのため、上限電流を最大化する等により適正電流範囲を拡大することが望まれている。
これまでに、特許文献1〜特許文献3のような技術が開発されているが、これらの文献には適正電流範囲が拡大されるか否かに関する記載がない。そのため、これらの技術を用いても、適正電流範囲を拡大できない虞があった。また、鋼板を軟化させる程度の通電を行うため、総通電時間が長くなる。その結果、生産上の制約溶接時間を制限するような場合には、実生産への適用が困難になる虞もあった。

0008

そこで本発明は、最小ナゲット径を確保しつつチリの発生を抑制できる適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することが可能な、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法、および、この方法により決定された電流波形で抵抗スポット溶接を行う抵抗スポット溶接方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者は、「適正電流範囲が広い」という態様は、電流を横軸としナゲット径を縦軸とする座標平面に記載した曲線、いわゆるウェルドローブ勾配が緩やかになると考えた。より具体的には、通電時間τに対する通電量時間平均値が上限電流となるような、時刻tにおける通電量を表した通電波形をIS(t)としたとき、IS(t)により得られるナゲット径DSと、IS(t)−ΔI(ΔI>0)で下限電流を表したときに、通電波形IS(t)−ΔIにより得られるナゲット径D0との差をΔD=DS−D0(>0)とした場合、ΔD/ΔIを小さくするような通電波形IS(t)を選ぶことで適正電流範囲を拡大することができると考えた。
この考えに基づいて鋭意研究した結果、本発明者は、かかる特徴を有する波形で通電したときのナゲット径と通電時間との関係を、通電時間を横軸としナゲット径を縦軸とする座標平面に記載すると、通電開始直後のナゲット径の成長速度が速く、且つ、ナゲット径が所定値になった後にナゲット径が漸増する形態になることを知見した。さらに、本発明者は、この特徴を表現した数式と、ナゲット径を最小ナゲット径以上にすることを表す数式を目的関数とし、チリを発生させないために満たすべき条件を表す数式を制約条件として与え、且つ、電流波形(電流パターン)を設計変数とする最適化問題解くことにより、適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することが可能になることを知見した。本発明は、このような知見に基づいて完成させた。以下、本発明について説明する。

0010

本発明の第1の態様は、2枚以上の複数の被溶接材で構成された積層体を一対の電極で挟持し、該一対の電極で積層体を押圧しつつ通電することにより上記2枚以上の複数の被溶接材の界面に溶融部を形成させる過程を経て、上記2枚以上の複数の被溶接材を接合する抵抗スポット溶接における電流波形を決定する方法であって、電極から積層体へと付与される加圧力をP、一対の電極間に電流を通す通電時間をτ、0〜τのいずれかの値をとる時刻tにおけるナゲット径をDN(t)、0〜1のいずれかの値をとる係数をk、積層体に含まれている互いに接触する任意の2つの被溶接材が抵抗スポット溶接時に溶融せずに互いに接触する界面である非溶融部(コロナボンドと称される場合がある)に作用する、時刻tにおける力をF(t)、とするとき、DN(t)の、時刻t=0〜τにおける積分値であるSが最大であること、および、DN(τ)が最大であることを目的関数とし、F(t)の、時刻t=0〜τにおけるナゲット形成開始以降の最小値であるFminがFmin>(1−k)・Pなる関係を制約条件とし、且つ、時刻tにおける電流の波形IS(t)を設計変数とする最適化問題を解く工程を有する、抵抗スポット溶接における電流波形決定方法である。

0011

ここで、本発明において、「電流」は、交流の場合には実効電流を意味する。また、目的関数の「Sが最大であること」は、適正電流範囲を拡大させやすい電流波形であること、に相当する。また、目的関数の「DN(τ)が最大であること」は、ナゲット径を最大にすることに相当し、これは、適正電流範囲の上限電流を最大にすることに相当する。ナゲット径の最大値を可能な限り大きくすることにより、ナゲット径を最小ナゲット径以上にしやすくなる。さらに、本発明において、制約条件の「Fmin>(1−k)・P」は、チリが発生しないこと、に相当する。
本発明における最適化問題では、「Sが最大であること」および「DN(τ)が最大であること」を目的関数にするので、最適化問題を解くことにより得られる電流波形は、適正電流範囲を拡大させやすく、且つ、適正電流範囲の上限電流を最大にする電流波形である。また、「Fmin>(1−k)・P」を制約条件にするので、得られる電流波形は、チリが発生しない電流波形である。本発明では、このような条件を設定した最適化問題を解くことにより電流波形を決定する。したがって、本発明によれば、適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することが可能である。

0012

また、上記本発明の第1の態様において、係数kが0.85〜0.95であることが好ましい。このような形態にすることにより、チリの発生/不発生の予測精度を高めやすくなるので、適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定しやすくなる。

0013

本発明の第2の態様は、上記本発明の第1の態様にかかる抵抗スポット溶接における電流波形決定方法により決定された電流波形IS(t)で抵抗スポット溶接を行うことを特徴とする、抵抗スポット溶接方法である。

0014

本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様にかかる抵抗スポット溶接における電流波形決定方法により決定された電流波形IS(t)で抵抗スポット溶接を行うので、強度を高めたスポット溶接材を、良好な作業環境で低コスト且つ高精度に製造することが可能な、抵抗スポット溶接方法を提供することができる。

発明の効果

0015

本発明によれば、適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することが可能な抵抗スポット溶接における電流波形決定方法、および、この方法により決定された波形で通電する抵抗スポット溶接方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0016

コロナボンドに作用する力Fと時刻tとの関係を説明する模式図である。
ナゲット径Dと電流Iとの関係を説明する模式図である。図2(a)は適正電流範囲が狭い場合におけるナゲット径Dと電流Iとの関係を説明する模式図であり、図2(b)は適正電流範囲が広い場合におけるナゲット径Dと電流Iとの関係を説明する模式図である。
ナゲット径Dと時刻tとの関係を説明する模式図である。図3(a)は適正電流範囲が狭い場合における典型的な通電波形の態様としてナゲット径Dと時刻tとの関係を説明する模式図であり、図3(b)は適正電流範囲が広い場合における典型的な通電波形の態様としてナゲット径Dと時刻tとの関係を説明する模式図である。
Sを説明する図である。
最適化計算により得られた5段通パターンを示す図である。
最適化計算により得られた5段通電パターンおよび単通電の場合におけるナゲット径と通電時間との関係を示す図である。
最適化計算により得られた5段通電パターンおよび単通電の場合における非溶融部に作用する力と通電時間との関係を示す図である。
実施例の適正電流範囲を説明する図である。
比較例の適正電流範囲を説明する図である。

0017

以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の例示であり、本発明は以下に例示する形態に限定されない。

0018

1.抵抗スポット溶接における電流波形決定方法
製造現場における抵抗スポット溶接の実施状況を考慮すると、三大溶接条件(電極から被溶接材へと付与される加圧力P、一対の電極間に通す電流I、通電時間τ)のうち、加圧力Pは溶接機の性能や制御機構の制約により調整範囲や調整自由度が大きくなく、通電時間τは生産タクトにより制約を受けるため、特に長時間化の方向には調整自由度が確保しづらいが、電流Iは制御装置タイマー)の性能の範囲内で調整自由度が大きい。このように、三大溶接条件のうち最も変更しやすい溶接条件は、電流Iである。そこで、本発明によって電流波形を決定する際には、加圧力Pおよび通電時間τを一定とし、電流Iのパターンを最適化することにした。また、一般に、抵抗スポット溶接により接合された溶接材は所定以上の強度であることが求められる。ナゲット径Dを大きくすることにより溶接材の強度を高めることが可能になる一方、ナゲット径が大き過ぎるとチリが発生する。そのため、本発明では、チリが発生しない範囲内でナゲット径Dを最大化する電流Iのパターンを探索することにした。ここで、0〜1のいずれかの値をとる係数をk、互いに接触する2つの被溶接材が抵抗スポット溶接時に溶融せずに互いに接触する界面である非溶融部に作用する力をF、とするとき、「チリが発生しない」ことは、Fmin>(1−k)・Pと表現できることを本発明者は知見している。そこで、本発明では、「チリが発生しない」という条件を、Fmin>(1−k)・Pで表現することにした。F(t)と時刻tとの関係を、模式的に図1に示す。図1において、Fcritはチリが発生する直前のFの値である。図1に示したように、Fmin>(1−k)・P=Fcritを満たす条件で通電することにより、チリの発生を回避することができる。

0019

また、本発明者は、適正電流範囲が狭い板組と、適正電流範囲が広い板組とでは、電流Iを横軸としナゲット径Dを縦軸とする座標平面に記載されるグラフの形態が異なることを知見した。ナゲット径Dと電流Iとの関係を、模式的に図2に示す。図2(a)は適正電流範囲が狭い場合を説明する模式図であり、図2(b)は適正電流範囲が広い場合を説明する模式図である。図2(a)および図2(b)において、ISはチリが発生する直前の電流(適正電流範囲の上限電流)であり、Dminは最小ナゲット径であり、矢印で特定された範囲が適正電流範囲である。

0020

図2(a)及び図2(b)に示したように、適正電流範囲が広い板組(図2(b))は、適正電流範囲が狭い板組(図2(a))よりもグラフの勾配が緩やかであった。したがって、適正電流範囲が広い電流形状は、「電流Iが変化したときのナゲット径Dの変化量が小さい」という条件を満たすと考えられる。

0021

これまで検討したように、本発明で決定される適正電流範囲が広い電流形状は、「電流Iが変化したときのナゲット径Dの変化量が小さい」という条件を満たし、さらに、「チリが発生しない範囲内でナゲット径Dを最大化する」という条件を満たす。本発明者は、鋭意研究の結果、これらの条件を満たす電流形状で抵抗スポット溶接を行うと、溶接開始後の時刻tを横軸としナゲット径Dを縦軸とする座標平面に記載されるグラフが特有の形態になることを知見した。ナゲット径Dと時刻tとの関係を、模式的に図3に示す。図3(a)は、電流Iが変化したときのナゲット径の変化ΔDが大きい場合を説明する模式図であり、図3(b)は、電流Iが変化したときのナゲット径の変化ΔDが小さい場合を説明する模式図である。図3(a)および図3(b)において、ΔIは、チリが発生し始める電流ISから低減した電流であり、ΔDは、I=ISの場合に得られるナゲット径とI=IS−ΔIの場合に得られるナゲット径との差である。

0022

加圧力および通電時間を一定とし、通電量を種々変化させて、ある同一の大きさのナゲット径を得ようとした場合、ナゲット成長履歴様態として次の両極端の場合を考えることができる。すなわち、ナゲット径Dと通電開始後の時刻tとの関係としては、抵抗スポット溶接開始後のナゲット成長が緩慢で、抵抗スポット溶接を終了する前にナゲット径が急激に成長する場合(図3(a))と、抵抗スポット溶接開始直後にナゲット径が急激に成長し、抵抗スポット溶接を終了する前にナゲット径の成長が飽和する場合(図3(b))の2形態が考えられる。
図3(a)と図3(b)とを比較すると、同じΔIだけ電流を低減した場合のΔDが、図3(a)は図3(b)よりも大きい。ΔD/ΔIは図2(a)および図2(b)に示したグラフの傾きに相当するので、図3(a)は適正電流範囲が狭い場合に相当し、図3(b)は適正電流範囲が広い場合に相当する。

0023

図4に、Sを示す。図4において、DSはI=ISのときのナゲット径である。図3(a)、図3(b)、および、図4を比較すると、図3(a)よりも図3(b)の方が、Sが大きくなる。したがって、図3(b)のような形態になることは、「Sを最大にする」と表現することが可能と考えられる。

0024

電流波形を最適化するには、電流Iのパターンを設計変数とする最適化問題を解けば良い。上述のように、チリが発生しないためには「Fmin>(1−k)・P=Fcrit」という条件を満たせば良い。そのため、本発明では、「Fmin>(1−k)・P=Fcrit」、「ナゲット径Dが最大」、「Sが最大」のすべてを満たし、且つ、電流Iのパターンを設計変数とする最適化問題を解くことにより、電流波形を決定することができる。具体的には、ナゲット径およびチリの発生有無を正確に予測可能な抵抗スポット溶接シミュレーションソフトと、最適化計算を行う最適化ソフトとを用いることにより、適正電流範囲を拡大させる電流波形を決定することができる。かかる過程により決定された電流波形は、「Fmin>(1−k)・P=Fcrit」、「ナゲット径Dが最大」、「Sが最大」のすべてを満たすので、具体的には、ISを通る電流波形が決定される。

0025

母材強度クラス980MPa級冷延鋼板である被溶接材について抵抗スポット溶接をする際に、通電開始から通電終了まで一定の電流を通す単通電の場合よりも最適電流範囲を拡大させることが可能な電流波形の決定を試みた。以下にその内容を記すことにより、本発明についてさらに具体的に説明する。なお、ここでは、被溶接材として母材強度クラス980MPa級の冷延鋼板を用いたが、本発明を適用可能な被溶接材はこれに限定されない。

0026

本発明により電流波形を決定する際には、決定される電流波形の基本形態を予め設定する必要はないが、溶接機の制御装置(タイマー)の機能制約等を考慮して、今回は、電流パターンが任意の5段階に設定可能な5段通電の最適解を探索した。また、今回は、市販の有限要素法解析ソフトに、ナゲット径およびチリの発生有無を正確に予測可能にする機能を組み込んだソフトを「ナゲット径およびチリの発生有無を正確に予測可能な抵抗スポット溶接シミュレーションソフト」として使用し、市販の最適化ソフトを「最適化ソフト」として使用した。解析条件を表1に示す。なお、本発明は、電流パターンを任意の3段階に設定可能な3段通電や、任意の7段階に設定可能な7段通電等、他の形態の最適解も探索することができる。

0027

0028

まず、適正電流範囲の上限になる電流パターンを最適化した。最適化計算の試行回数は50回とし、(1)加圧力P、溶接電流I、および、通電時間τのデータを入力、(2)ナゲット径およびチリの発生有無を正確に予測可能な抵抗スポット溶接シミュレーションソフトによる有限要素法解析、(3)ナゲット径DN(t)および非溶融部に作用する力F(t)を出力、(4)最適化ソフトによる、S最大およびDN(τ)最大を目的関数とし、Fmin>(1−k)・Pを制約条件とし、電流パターンを設計変数とする最適化計算、を繰り返した。この最適化計算では、k=0.9とした。得られた5段通電パターン(以下において、「最適5段通電」ということがある。)を図5に示す。

0029

図5に示したように、最適5段通電では、電流値が各段階で増/減を繰り返しつつ、全体的には漸増する形態になった。

0030

最適5段通電で抵抗スポット溶接を行う有限要素法解析により得られた、ナゲット径と通電時間との関係を図6に、非溶融部に作用する力と通電時間との関係を図7に、それぞれ示す。なお、図6および図7には、最適5段通電と同等のナゲット径が得られる単通電条件(I=7.5kA)で抵抗スポット溶接を行う有限要素法解析を行うことにより得られた結果もあわせて示した。

0031

図6に示したように、ナゲット径の成長では、最適5段通電と単通電条件との間に大差はなかった。これに対し、図7に示したように、非溶融部に作用する力Fの履歴では、最適5段通電と単通電条件との間に大きな差が見られた。単通電条件ではFがFcrit以下になる時間帯があるため、チリが発生したが、最適5段通電ではFがFcrit(=0.1P)以下になる時間帯がなかったため、チリの発生を防止できた。

0032

次に、最適5段通電の電流波形を維持したまま当該電流波形を上下させることにより平均電流値Im(=(I1+I2+I3+I4+I5)/5)を0.5kA間隔で変化させた有限要素法解析を行うことにより、最適化計算によって得られた電流波形(実施例)の適正電流範囲を調べた。また、0.5kA間隔で電流値を変化させた単通電条件の場合の有限要素法解析を行うことにより、単通電条件の場合(比較例)の適正電流範囲も調査した。実施例の結果を図8に、比較例の結果を図9に、それぞれ示す。図8および図9において、右肩上がりの線で結ばれている■がナゲット径Dの結果であり、右肩下がりの線で結ばれている○がFの結果である。なお、図8および図9に示したDminは4.73mmとした。

実施例

0033

図8に示したように、実施例の適正電流範囲は約1.9kAであった。これに対し、図9に示したように、比較例の適正電流範囲は約1.3kAであった。以上の結果から、最適5段通電は単通電条件より約0.6kAも適正電流範囲を拡大できることが確認できた。また、この結果は、高強度鋼板を被溶接材とした解析により得られた結果であるため、本発明は、適正電流範囲が狭いとされる高強度鋼板を含む板組についても、適正電流範囲を拡大できることが確認できた。

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