図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
鉄道車両において、電気ブレーキと機械ブレーキとを協調して制御する協調ブレーキ制御方法が知られている(例えば特許文献1,2参照)。機械ブレーキは、圧縮空気や油圧などを動力源として、車輪踏面やブレーキディスクに制輪子を押し付ける機械的な動作によって摩擦力を発生させてブレーキ力とする方式であり、空気ブレーキが代表例である。そのため、電空協調ブレーキ制御が協調ブレーキ制御の代表例として知られている。
協調ブレーキ制御では、まず、ブレーキ受量器(BCU:Brake Control Unit )が、運転台から入力されるブレーキノッチ信号に基づいて電制信号を生成し、電動機制御装置(例えばインバータ)に出力する。電制信号は、要求する電気ブレーキ力を示す信号である。電動機制御装置は、電制信号に応じた電気ブレーキ力を発生させるように、制動トルク分電流Iqをインバータに発生させる。次いで、速度発電機によって検出される車輪(車軸)の回転速度(或いは回転周波数)と、制動トルク分電流Iq(電流指令値を利用することとしてもよい)とを用いて、実際に電動機で発生している電気ブレーキ力である発生電気ブレーキ力を算出する。この発生電気ブレーキ力がブレーキ受量器にフィードバックされる。そして、ブレーキノッチ信号に応じた全体の要求ブレーキ力から、発生電気ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力を機械ブレーキで補うように制御する。これが協調ブレーキ制御の一般的な制御方式である。
概要
再粘着制御の実行に至る滑走の発生頻度を低減させるための新たな技術を提供すること。電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件32を満たす場合に、再粘着制御部30が再粘着制御を行う。電気ブレーキに係る動輪の状態値が、再粘着用閾値条件32を満たすような滑走に発達することを抑制するために再粘着用閾値条件32より敏感に満足する条件として定められた発達抑制用閾値条件52を満たす場合に、滑走発達抑制制御部50および加算器60が、所与の加算値Aを算出電気ブレーキ力CEに加算して算出電気ブレーキ力CEを変更する。
目的
本発明は、上述した課題に鑑み、再粘着制御の実行に至る滑走の発生頻度を低減させるための新たな技術を提供する
効果
実績
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請求項1
所与の要求電気ブレーキ力又はこの相当値(以下、ブレーキ力又はこの相当値のことを包括して単に「ブレーキ力」という)に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御ステップと、発生電気ブレーキ力を算出する発生電気ブレーキ力算出ステップと、所与の要求ブレーキ力から、前記発生電気ブレーキ力算出ステップで算出された発生電気ブレーキ力(以下、「算出電気ブレーキ力」という)を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する機械ブレーキ制御ステップと、前記電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御ステップと、前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更ステップと、を含む協調ブレーキ制御方法。
請求項2
所与の要求電気ブレーキ力に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御部と、発生電気ブレーキ力を算出する発生電気ブレーキ力算出部と、所与の要求ブレーキ力から、前記発生電気ブレーキ力算出部で算出された算出ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する機械ブレーキ制御部と、を備えた協調ブレーキ制御システムであって、前記電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御部と、前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更部と、を更に備えた協調ブレーキ制御システム。
請求項3
所与の要求電気ブレーキ力に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御部と、発生電気ブレーキ力を算出する発生電気ブレーキ力算出部と、所与の要求ブレーキ力から前記発生電気ブレーキ力算出部で算出された算出電気ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する機械ブレーキ制御部と、前記電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御部と、を備えた協調ブレーキ制御システムに設けられた滑走の発達を抑制するための滑走発達抑制装置であって、前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更部、を備えた滑走発達抑制装置。
請求項4
所与の要求電気ブレーキ力に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御装置が発生している電気ブレーキ力を算出した算出電気ブレーキ力を出力し、当該算出電気ブレーキ力が所与の要求ブレーキ値に満たない分を機械ブレーキで補うように協調制御される協調ブレーキ制御システムにおける前記電気ブレーキ制御装置であって、電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御部と、前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更部と、を備えた電気ブレーキ制御装置。
技術分野
背景技術
0002
鉄道車両において、電気ブレーキと機械ブレーキとを協調して制御する協調ブレーキ制御方法が知られている(例えば特許文献1,2参照)。機械ブレーキは、圧縮空気や油圧などを動力源として、車輪踏面やブレーキディスクに制輪子を押し付ける機械的な動作によって摩擦力を発生させてブレーキ力とする方式であり、空気ブレーキが代表例である。そのため、電空協調ブレーキ制御が協調ブレーキ制御の代表例として知られている。
0003
協調ブレーキ制御では、まず、ブレーキ受量器(BCU:Brake Control Unit )が、運転台から入力されるブレーキノッチ信号に基づいて電制信号を生成し、電動機制御装置(例えばインバータ)に出力する。電制信号は、要求する電気ブレーキ力を示す信号である。電動機制御装置は、電制信号に応じた電気ブレーキ力を発生させるように、制動トルク分電流Iqをインバータに発生させる。次いで、速度発電機によって検出される車輪(車軸)の回転速度(或いは回転周波数)と、制動トルク分電流Iq(電流指令値を利用することとしてもよい)とを用いて、実際に電動機で発生している電気ブレーキ力である発生電気ブレーキ力を算出する。この発生電気ブレーキ力がブレーキ受量器にフィードバックされる。そして、ブレーキノッチ信号に応じた全体の要求ブレーキ力から、発生電気ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力を機械ブレーキで補うように制御する。これが協調ブレーキ制御の一般的な制御方式である。
先行技術
0004
特開2000−71964号公報
特開2001−268705号公報
発明が解決しようとする課題
0005
一方、ブレーキ中に滑走の発生が検知された場合には、制動トルク分電流Iqを一時的に低減させて再粘着させる再粘着制御が行われる。そのため、協調ブレーキ制御下において滑走検知による再粘着制御が実行されると、再粘着制御によって低減される電気ブレーキ力を機械ブレーキで補うように制御されるため、滑走状態が解消されず、車輪固着に至る場合が起こり得た。そこで、発生電気ブレーキ力とともに、電動機制御装置が電気ブレーキが有効である旨の電制有効信号をブレーキ受量器にフィードバックすることで、滑走検知による再粘着制御時には、機械ブレーキによるブレーキ力の補足を行わないようにする技術が特許文献1に開示されている。
0006
しかしながら、この従来技術によれば、滑走検知による再粘着制御が実行されると、実際に発生している全体ブレーキ力が減少する。その間は所望の減速度が得られないことになる。そのため、早急に所定の目標速度に低減させるために、再粘着制御が終わった直後にブレーキ力を増加させる結果、減速中に車両に大きな前後動が発生して旅客の乗り心地に影響が及んだり、再度の滑走が発生して再粘着制御を繰り返し実行する場合が起こり得た。また、ブレーキ距離の延伸につながる可能性もあった。
0007
以上、鉄道車両に関して説明したが、回生ブレーキ(電気ブレーキ)と油圧ブレーキ(機械ブレーキ)とを協調制御する走行駆動用の電動機を搭載した自動車(いわゆるハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車など)においても、同様の課題がある。
課題を解決するための手段
0009
以上の課題を解決するための第1の発明は、
所与の要求電気ブレーキ力又はこの相当値(以下、ブレーキ力又はこの相当値のことを包括して単に「ブレーキ力」という)に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御ステップ(図1の電気ブレーキ制御部20)と、
発生電気ブレーキ力を算出する発生電気ブレーキ力算出ステップ(図1の発生電気ブレーキ力算出部40)と、
所与の要求ブレーキ力から、前記発生電気ブレーキ力算出ステップで算出された発生電気ブレーキ力(以下、「算出電気ブレーキ力」という)を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する機械ブレーキ制御ステップ(図1のブレーキ力分配部10、機械ブレーキ制御部90)と、
前記電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御ステップ(図1の再粘着制御部30)と、
前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更ステップ(図1の滑走発達抑制制御部50および加算器60)と、
を含む協調ブレーキ制御方法である。
0010
また、第2の発明は、
所与の要求電気ブレーキ力に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御部と、
発生電気ブレーキ力を算出する発生電気ブレーキ力算出部と、
所与の要求ブレーキ力から、前記発生電気ブレーキ力算出部で算出された算出ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する機械ブレーキ制御部と、
を備えた協調ブレーキ制御システムであって、
前記電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御部と、
前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更部と、
を更に備えた協調ブレーキ制御システムである。
0011
また、第3の発明は、
所与の要求電気ブレーキ力に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御部と、発生電気ブレーキ力を算出する発生電気ブレーキ力算出部と、所与の要求ブレーキ力から前記発生電気ブレーキ力算出部で算出された算出電気ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する機械ブレーキ制御部と、前記電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御部と、を備えた協調ブレーキ制御システムに設けられた滑走の発達を抑制するための滑走発達抑制装置であって、
前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更部(例えば、図3の滑走発達抑制制御部50および加算器60)、
を備えた滑走発達抑制装置(例えば、図3の滑走発達抑制装置502)である。
0012
また、第4の発明は、
所与の要求電気ブレーキ力に基づいて電気ブレーキを制御する電気ブレーキ制御装置が発生している電気ブレーキ力を算出した算出電気ブレーキ力を出力し、当該算出電気ブレーキ力が所与の要求ブレーキ値に満たない分を機械ブレーキで補うように協調制御される協調ブレーキ制御システムにおける前記電気ブレーキ制御装置であって、
電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件を満たす場合に再粘着制御を行う再粘着制御部と、
前記状態値が、前記再粘着用閾値条件を満たすような滑走に発達することを抑制するために前記再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件として定められた所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで前記算出電気ブレーキ力を変更する算出電気ブレーキ力変更部(例えば、図2の滑走発達抑制制御部50および加算器60)と、
を備えた電気ブレーキ制御装置(例えば、図2の電気ブレーキ制御装置201)である。
0013
第1〜第4の発明によれば、要求ブレーキ力から算出電気ブレーキ力を減算した残余のブレーキ力に基づいて機械ブレーキを制御する協調ブレーキ制御において、動輪の状態値が、再粘着用閾値条件より敏感に満足する条件である所定の発達抑制用閾値条件を満たす場合に、所与の値を加算することで算出電気ブレーキ力が変更される。算出電気ブレーキ力が増加する結果、機械ブレーキ力が低減することとなる。すなわち、全体のブレーキ力が減少することとなる。但し、再粘着用閾値条件を満たす前に、発達抑制用閾値条件を満たした段階でブレーキ力が低減されるため、例えば、再粘着制御を実行するほどではない微小な滑りが生じている段階でブレーキ力を減少させて、滑走に発達することを抑制することができる。よって、再粘着制御の実行に至る滑走の発生頻度を低減させることができる。これにより、再粘着制御の実行頻度の低減によって回生電力量の増加を図ることができる。また、機械ブレーキ力を低減する機会の増加によって例えばブレーキシュー等の摩耗を抑え、交換頻度を低減させることができる。
図面の簡単な説明
0014
協調ブレーキ制御システムSを説明するための図。
第1実施例を示す図。
第2実施例を示す図。
第3実施例を示す図。
実施例
0015
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を説明する。尚、以下では、本発明を鉄道車両、特に電気車に適用した場合を例に挙げて説明するが、電動機で動輪を駆動して走行する車両(電動車両)であれば、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池自動車等の自動車にも適用することが可能である。
本実施形態の基本構成を先に説明し、次いで具体的な実施例について説明する。
0016
[基本構成]
図1は、本実施形態の協調ブレーキ制御システムSの構成を示す図である。
協調ブレーキ制御システムSは、ブレーキ力分配部10と、電気ブレーキ制御部20と、再粘着制御部30と、発生電気ブレーキ力算出部40と、滑走発達抑制制御部50と、加算器60と、機械ブレーキ制御部90とを具備して構成される。
0017
ブレーキ力分配部10は、例えばブレーキ受量器(BCU:Brake Control Unit)で構成することができ、運転操作に係るブレーキノッチ信号および車両の走行速度を示す速度信号に基づき、車両全体で要求されるブレーキ力RTや、要求される電気ブレーキ力(要求電気ブレーキ力)REを算出する。なお、ブレーキ力分配部10に要求ブレーキ力RTが入力され、走行速度等を参照して、この要求ブレーキ力RTから要求電気ブレーキ力REを算出する構成としてもよい。要求電気ブレーキ力REは、例えば電制信号等とも言われる。
0018
なお、本実施形態において「ブレーキ力」とは、ブレーキ力そのものでもよいし、減速度等のブレーキ力に相当する値であってもよく、またこれらを示す信号であってもよいこととし、これらを包括して単に用語「ブレーキ力」として説明する。仮に、減速度等のブレーキ力相当値に本実施形態を適用する場合には、以下の説明においてブレーキ力をブレーキ力相当値と読み替えて適用すればよい。
0019
また、ブレーキ力分配部10は、算出した要求電気ブレーキ力REを電気ブレーキ制御部20に出力し、加算器60を介して発生電気ブレーキ力算出部40から算出電気ブレーキ力CEを入力する。そして、要求ブレーキ力RTから算出電気ブレーキ力CEを減算した残余のブレーキ力を要求機械ブレーキ力RMとして機械ブレーキで補うべく、機械ブレーキ制御部90に出力する。このときの要求機械ブレーキ力RMは、機械ブレーキが空気ブレーキであるならば空制信号とも言える。
0020
電気ブレーキ制御部20は、動輪(動軸とも言える)を駆動する電動機を制御する電動機制御装置で構成することができ、例えばインバータ装置の一機能として実現することができる。電気ブレーキ制御部20は、要求電気ブレーキ力REに応じた制動トルクを発生させ、電動機を発電機として働かせることでブレーキ力を得る。電気ブレーキは、発電ブレーキおよび回生ブレーキの何れでもよいが、本実施形態では回生ブレーキとして説明する。
0021
再粘着制御部30は、電気ブレーキに係る動輪の状態値から滑走の発生を検知して、制動トルクを一時的に低減させる再粘着制御を行う。図1では、再粘着制御部30を、電気ブレーキ制御部20とは別体の機能部として図示しているが、電気ブレーキ制御部20が再粘着制御部30を有する構成としても勿論よい。動輪の状態値とは、動輪に滑走が発生しているか否かの判断材料となる値のことであり、例えば、動輪の回転速度や回転加速度、回転周波数である。再粘着制御部30は、状態値が、再粘着用閾値条件32を満たした場合に、滑走が発生したことを検知する。状態値を回転速度とするならば、例えば、再粘着用閾値条件32は、従軸の回転速度を基準値として、この基準値から状態値(回転速度)を減算した値が、第1の閾値以上となることを条件とすることができる。また、状態値を加速度とするならば、例えば、再粘着用閾値条件32は、状態値(加速度)が負の値となり、且つ、その大きさ(絶対値)が第1の値以上となることを条件とすることができる。再粘着制御部30は、滑走の発生を検知した場合には、電気ブレーキ制御部20に制動トルク(インバータであれば制動トルク分電流Iq)を一時的に低減させることで再粘着制御を実行する。
0022
発生電気ブレーキ力算出部40は、現在発生している電気ブレーキ力を算出して、算出電気ブレーキ力CEとして出力する。発生している電気ブレーキ力は、電気ブレーキ制御部20によって制御されている制動トルクと、動輪の回転速度(或いは回転周波数)とを用いて算出される。
発生電気ブレーキ力算出部40もまた、電気ブレーキ制御部20の一機能部として、電気ブレーキ制御部20に含めることとしてもよい。
0023
滑走発達抑制制御部50は、再粘着用閾値条件32を満たすような滑走への発達を抑制するための制御部であり、動輪の状態値が、再粘着用閾値条件32より敏感に満足する条件として定められた発達抑制用閾値条件52を満たす場合に、加算器60に所与の加算値Aを出力して算出電気ブレーキ力CEを増加・更新させる。発達抑制用閾値条件52は、状態値を回転速度とするならば、例えば、従軸の回転速度を基準値として、この基準値から状態値(回転速度)を減算した値が、第2の閾値以上となることを条件とすることができる。このとき、第2の閾値は第1の閾値より小さい値である。また、状態値を加速度とするならば、例えば、発達抑制用閾値条件52は、状態値(加速度)が負の値となり、且つ、その大きさ(絶対値)が第2の値以上となることを条件とすることができる。このとき、第2の値は第1の値より小さい値である。
0024
よって、発達抑制用閾値条件52は、再粘着用閾値条件32よりも満足し易い条件であり、状態値が再粘着用閾値条件32を満たす前に満足する条件である。再粘着制御が実行されることとなる滑走の検知前に、動輪の微小な滑りを検知するための条件として定められる。
0025
滑走発達抑制制御部50は、状態値が発達抑制用閾値条件52を満たす場合には、正の所与の値とする加算値A(例えば、再粘着制御を実行した場合に低減させる電気ブレーキ力の1/5〜1/10の値等)を加算器60に出力する。なお、発達抑制用閾値条件52を満たさない場合には、加算値Aが出力されない(或いは加算値Aをゼロとする)。
0026
加算器60は、算出電気ブレーキ力CEに加算値Aを加算することで算出電気ブレーキ力CEを変更・更新して、ブレーキ力分配器10へ出力する。
0027
機械ブレーキ制御部90は、圧縮空気や油圧などを動力源として、車輪踏面やブレーキディスクに制輪子を押し付ける機械的な動作によって摩擦力を発生させる機械ブレーキの動作を制御する機能部であり、本実施形態では、機械ブレーキを空気ブレーキとするため、電空変換弁によって実現することができる。機械ブレーキ制御部90は、ブレーキ力分配部10からの要求機械ブレーキ力RMに応じた機械ブレーキ力を発生させるように、機械ブレーキを制御する。
0028
以上の協調ブレーキ制御システムSの動作の流れをまとめると次のようになる。
(1)まず、電気ブレーキ制御部20が、ブレーキ力分配部10からの要求電気ブレーキ力REに基づいて電気ブレーキを制御する。
(2)一方、発生している電気ブレーキ力である算出電気ブレーキ力CEが、発生電気ブレーキ力算出部40によって算出される。
(3)ブレーキ力分配部10が、要求される全体のブレーキ力である要求ブレーキ力RTから、算出電気ブレーキ力CEを減算した残余のブレーキ力に基づいて要求機械ブレーキ力RMを算出し、この要求機械ブレーキ力RMに基づいて機械ブレーキ制御部90が機械ブレーキを制御する。
0029
これが、正常時の協調ブレーキ動作となる。これに対して、本実施形態では次の動作が加わる。
(4)電気ブレーキに係る動輪の状態値が、滑走による再粘着制御を開始するための所定の再粘着用閾値条件32を満たす場合に、再粘着制御部30が再粘着制御を行う。
(5)電気ブレーキに係る動輪の状態値が、再粘着用閾値条件32を満たすような滑走に発達することを抑制するために再粘着用閾値条件32より敏感に満足する条件として定められた発達抑制用閾値条件52を満たす場合に、滑走発達抑制制御部50および加算器60が、所与の加算値Aを算出電気ブレーキ力CEに加算して算出電気ブレーキ力CEを変更する。
0030
これによれば、滑走に発達する前の微小な滑りを検知した場合に算出電気ブレーキ力CEが加算値A分、増加することとなるため、要求機械ブレーキ力RMが加算値A分、減少することとなる。結果、全体のブレーキ力が加算値A分減少することとなり、微小な滑りを解消させて、粘着状態を保つように促す作用効果が発揮される。これにより、再粘着制御に至るような滑走が発生する頻度を抑制することができる。また、再粘着制御の実行頻度の低減によって回生電力量の増加を図ることができる。また、機械ブレーキ力を低減する機会の増加によって例えばブレーキシュー等の摩耗を抑え、交換頻度を低減させることができる。
0031
[実施例]
次に、協調ブレーキ制御システムSの具体的な実施例を幾つか説明する。ブレーキ力分配部10、電気ブレーキ制御部20、再粘着制御部30、発生電気ブレーキ力算出部40、滑走発達抑制制御部50および加算器60は、信号制御に係る機能部であるため、電子回路や、各種演算処理手順が記述されたソフトウェア(プログラム)を実行するコンピュータによって実現することができる。そのため、ブレーキ力分配部10、電気ブレーキ制御部20、再粘着制御部30、発生電気ブレーキ力算出部40、滑走発達抑制制御部50および加算器60を具体的にどのように構成するかの幾つかの実施例が考えられる。
0032
図2は、第1実施例の構成を示す図である。第1実施例の協調ブレーキ制御システムS1では、ブレーキ受量器101がブレーキ力分配部10を有し、電気ブレーキ制御装置201が電気ブレーキ制御部20、再粘着制御部30、発生電気ブレーキ力算出部40、滑走発達抑制制御部50および加算器60を有する。電気ブレーキ制御装置201は、電動機を駆動するインバータ装置に組み込むことが可能である。
0033
図3は、第2実施例の構成を示す図である。第2実施例の協調ブレーキ制御システムS2では、ブレーキ受量器102がブレーキ力分配部10を有し、電気ブレーキ制御装置202が電気ブレーキ制御部20、再粘着制御部30および発生電気ブレーキ力算出部40を有する。そして、電気ブレーキ制御装置202とブレーキ受量器102との間に、滑走発達抑制制御部50および加算器60を有する滑走発達抑制装置502が設けられる。滑走発達抑制装置502は、各種電子回路や信号処理回路、コンピュータ等により実現することができ、算出電気ブレーキ力CEを、上述した実施形態に沿って可変に制御する。
0034
図4は、第3実施例の構成を示す図である。第3実施例の協調ブレーキ制御システムS3は、ブレーキ受量器102がブレーキ力分配部10、滑走発達抑制制御部50および加算器60を有し、電気ブレーキ制御装置202が電気ブレーキ制御部20、再粘着制御部30および発生電気ブレーキ力算出部40を有する構成である。
0035
[変形例]
本発明が適用可能な実施形態および実施例は上述した内容に限られるものではない。
例えば、走行速度域(高速・中速・低速)に応じて、加算値Aの大きさを可変に制御することとしてもよい。また、現在の走行速度と目標速度との差速度や、減速度に応じて、加算値Aの大きさを可変に制御することとしてもよい。
0036
また、発達抑制用閾値条件52も、走行速度域や差速度、減速度の何れかに応じて、より敏感な条件(満足しやすい条件)やより鈍感な条件(満足しにくい条件)に切り替えることとしてもよい。ただし、何れの条件に切り替えたとしても、再粘着用閾値条件32よりは敏感な条件とする。
0037
S,S1,S2,S3協調ブレーキ制御システム
10ブレーキ力分配部
20電気ブレーキ制御部
30再粘着制御部
32 再粘着用閾値条件
40 発生電気ブレーキ力算出部
50滑走発達抑制制御部
52 発達抑制用閾値条件
60加算器
90機械ブレーキ制御部