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技術 揮発性成分採取方法及び揮発性成分採取具

出願人 花王株式会社
発明者 矢吹雅之
出願日 2013年12月24日 (6年7ヶ月経過) 出願番号 2013-265422
公開日 2015年7月2日 (5年1ヶ月経過) 公開番号 2015-121462
状態 特許登録済
技術分野 サンプリング、試料調製 クロマトグラフィによる材料の調査、分析
主要キーワード 円筒中心軸 生活場面 洗濯物干し 平面視矩形形状 加熱脱着装置 粉末状吸着剤 容器本体部分 ガスクロマトグラフ質量分析法
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この項目の情報は公開日時点(2015年7月2日)のものです。
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図面 (10)

課題

日常生活の種々の場面で鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中の揮発性成分を簡便且つ安全に採取し得る揮発性成分採取具及びそれを用いた揮発性成分採取方法を提供する。

解決手段

揮発性成分採取具1Aは、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取・分析に用いられ、揮発性成分採取時に被験者外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置されるもので、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体2と、使用時に該吸着体2が収容される空間部30を画成し、該空間部30にて該吸着体2を保持する保持体3とを備える。揮発性成分採取具1Aは、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有している。

概要

背景

従来から香料設計や消臭技術開発のため、ヒトが知覚する香り成分悪臭成分分析が行われている。また、近年、生活衛生等の観点から日常生活においてヒトが呼吸を通じてどのような物質体内吸引しているのかについて関心が高まっており、例えば、建材から発生する揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や居住環境における悪臭物質等の分析が行われている。

大気中に含まれる香りやVOCなどの揮発性成分は極めて微量であるため、揮発性成分を分析可能なレベルまで捕集し、必要に応じて更に揮発性成分を濃縮した上で機器分析を行うのが一般的である。従来は例えば、表面積の大きな吸着体を密に詰めた細く長い吸着管を用い、吸着管の一端からポンプ等で大気を吸引することで、大気中の揮発性成分を分析可能な量まで採取し、分析している。

衣料用洗剤身体洗浄料芳香剤等の匂いを有する組成物香気は、該組成物から発せられた香気成分外気拡散し、鼻呼吸に伴って鼻腔に取り込まれ、嗅粘膜に存在する嗅細胞に到達することによって知覚される(以下、先香(Orthonasal aroma)と呼ぶ)。また、歯磨き剤等の口腔用組成物飲食品等の香気は、それらを口腔に含んだ状態において、該口腔から鼻腔へと通ずる気流によって運ばれた香気成分が鼻粘膜に存在する嗅細胞に到達することによって知覚される(以下、口中香(Retronasal aroma)と呼ぶ)。このように実際に知覚される鼻先香や口中香は、鼻粘膜を通過する空気中に含まれる香気成分であるため、必ずしも従来から行われている全成分分析微量成分分析の方法で分析できるわけでは無く、鼻腔内を通過した揮発性成分を採取するための別の方法が検討されてきている。

例えば特許文献1には、香料の口腔での香気の発現特性初発性あるいは持続性)を簡便、客観的且つ効率的に評価する方法として、被験者チューインガム等の香料化合物を含有する飲食品咀嚼してもらい、その咀嚼中に被験者の口から鼻に抜けて鼻より排出される香気成分を、ガラス管充填した多孔性樹脂吸着剤を用いて採取し、採取された香気成分を加熱脱着法によりガスクロマトグラフに導入して分析する方法が記載されている。香気成分の採取方法に関し、特許文献1には、前記多孔性樹脂吸着剤として、この種の吸着剤として一般的な粉末状吸着剤であるTenax(登録商標)を用い、鼻より排出される香気成分を電動ポンプにより吸引しながら前記ガラス管に導入する方法が記載されている。

特許文献2には、既知の分析的な方法を用い、口腔及び鼻腔を含むヒト気道における酵素代謝の発生を考慮して、香料及び芳香の分野において有用な化合物を同定又は評価する方法として、2,6−ジフニレオキシドに基づく多孔質ポリマー樹脂を主要成分とする顆粒状吸着体である、Tenax(登録商標)が充填されたガラス管を被験者の鼻腔に挿入し、その状態で香気成分を含む空気を被験者に鼻腔を通じて吸入させた後、鼻腔を通じて吐き出された呼気を、メタボ−GMメタボスペース又は陽子移動反応質量分析(PTR−MS)によって分析する方法が記載されている。

ところで、実際のヒト嗅粘膜は2〜10cm2の表面積があり、呼吸に伴う鼻腔内の空気の流れは速度125〜200mL/秒程度に達する。また、ヒト嗅粘膜近傍における線速度は90cm/秒程度であることが知られている。

概要

日常生活の種々の場面で鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中の揮発性成分を簡便且つ安全に採取し得る揮発性成分採取具及びそれを用いた揮発性成分採取方法を提供する。揮発性成分採取具1Aは、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取・分析に用いられ、揮発性成分採取時に被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置されるもので、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体2と、使用時に該吸着体2が収容される空間部30を画成し、該空間部30にて該吸着体2を保持する保持体3とを備える。揮発性成分採取具1Aは、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有している。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体と該吸着体を保持する保持体とを備える、揮発性成分採取具を用い、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分を採取する揮発性成分採取方法であって、前記保持体は、使用時に前記吸着体が収容される空間部を画成し、該空間部にて該吸着体を保持するようになされており、前記揮発性成分採取具は、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有しており、前記揮発性成分採取具を被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置し、その状態で該被験者に日常生活を所定時間送らせ、しかる後、該揮発性成分採取具から前記吸着体を取り出す工程を有する揮発性成分採取方法。

請求項2

前記揮発性成分採取具が鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で、被験者に高湿度雰囲気下で日常生活を送らせる請求項1記載の揮発性成分採取方法。

請求項3

前記保持体は前記空間部を内部に有する容器体であり、該容器体における前記気体の通過方向両端部は通気性を有しており、前記空間部に、チューブ状、シート状、棒状、粒状の何れかの形状の前記吸着体が収容されている請求項1又は2記載の揮発性成分採取方法。

請求項4

前記保持体は前記空間部を内部に有する容器体であり、該容器体における前記気体の通過方向両端部は通気性を有しており、前記空間部に、前記吸着体の小片が1個又は2個以上収容されており、その吸着体小片は、それぞれ、該吸着体小片を貫通する貫通孔を有している請求項1〜3の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法。

請求項5

前記保持体は可撓性のシート体であり、該シート体の片面にシート状の前記吸着体が固定されて、該吸着体と該保持体との積層シートとされており、使用時に前記吸着体を内側にして前記積層シートを筒状に丸めることにより、前記空間部が画成されるようになされている請求項1又は2記載の揮発性成分採取方法。

請求項6

前記吸着体はシリコーンエラストマーからなる請求項1〜5の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法。

請求項7

請求項1〜6の何れか一項に記載の方法で採取した揮発性成分の分析方法であって、前記揮発性成分採取具から取り出した前記吸着体に吸着された揮発性成分をガスクロマトグラフにより分析する工程を有する揮発性成分分析方法。

請求項8

前記揮発性成分採取具から前記吸着体を取り出した後、該吸着体を前処理することなく、ガスクロマトグラフによって、該吸着体に吸着された揮発性成分の分析を行う請求項7記載の揮発性成分分析方法。

請求項9

香料組成物を含む賦香製品のにおいの評価方法であって、前記賦香製品のにおいを所定の官能評価によって評価する第1のステップと、前記賦香製品から放出された揮発性成分を、請求項1〜6の何れか一項に記載の方法で採取する第2のステップと、第2のステップで採取された揮発性成分の組成を特定する第3のステップと、第1のステップで得られた前記賦香製品のにおいの官能評価と、第3のステップで特定された揮発性成分の組成とを照らし合わせ、においの特徴に寄与している物質を抽出する第4のステップとを含む、賦香製品のにおいの評価方法。

請求項10

鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取・分析に用いられ、揮発性成分採取時に被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置される揮発性成分採取具であって、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体と、揮発性成分採取時に該吸着体が収容される空間部を画成し、該空間部にて該吸着体を保持する保持体とを備え、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有している揮発性成分採取具。

請求項11

前記保持体は前記空間部を内部に有する容器体であり、該容器体における前記気体の通過方向両端部は通気性を有しており、前記空間部に、前記吸着体の小片が1個又は2個以上収容されており、その吸着体小片は、それぞれ、該吸着体小片を貫通する貫通孔を有している請求項10記載の揮発性成分採取具。

請求項12

前記保持体は可撓性のシート体であり、該シート体の片面にシート状の前記吸着体が固定されて、該吸着体と該保持体との積層シートとされており、使用時に前記吸着体を内側にして前記積層シートを筒状に丸めることにより、前記空間部が画成されるようになされている請求項10記載の揮発性成分採取具。

技術分野

0001

本発明は、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる、各種香気成分等の揮発性成分採取するための揮発性成分採取具、及びそれを用いた揮発性成分採取方法に関する。

背景技術

0002

従来から香料設計や消臭技術開発のため、ヒトが知覚する香り成分悪臭成分分析が行われている。また、近年、生活衛生等の観点から日常生活においてヒトが呼吸を通じてどのような物質体内吸引しているのかについて関心が高まっており、例えば、建材から発生する揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)や居住環境における悪臭物質等の分析が行われている。

0003

大気中に含まれる香りやVOCなどの揮発性成分は極めて微量であるため、揮発性成分を分析可能なレベルまで捕集し、必要に応じて更に揮発性成分を濃縮した上で機器分析を行うのが一般的である。従来は例えば、表面積の大きな吸着体を密に詰めた細く長い吸着管を用い、吸着管の一端からポンプ等で大気を吸引することで、大気中の揮発性成分を分析可能な量まで採取し、分析している。

0004

衣料用洗剤身体洗浄料芳香剤等の匂いを有する組成物香気は、該組成物から発せられた香気成分が外気拡散し、鼻呼吸に伴って鼻腔に取り込まれ、嗅粘膜に存在する嗅細胞に到達することによって知覚される(以下、先香(Orthonasal aroma)と呼ぶ)。また、歯磨き剤等の口腔用組成物飲食品等の香気は、それらを口腔に含んだ状態において、該口腔から鼻腔へと通ずる気流によって運ばれた香気成分が鼻粘膜に存在する嗅細胞に到達することによって知覚される(以下、口中香(Retronasal aroma)と呼ぶ)。このように実際に知覚される鼻先香や口中香は、鼻粘膜を通過する空気中に含まれる香気成分であるため、必ずしも従来から行われている全成分分析微量成分分析の方法で分析できるわけでは無く、鼻腔内を通過した揮発性成分を採取するための別の方法が検討されてきている。

0005

例えば特許文献1には、香料の口腔での香気の発現特性初発性あるいは持続性)を簡便、客観的且つ効率的に評価する方法として、被験者チューインガム等の香料化合物を含有する飲食品咀嚼してもらい、その咀嚼中に被験者の口から鼻に抜けて鼻より排出される香気成分を、ガラス管充填した多孔性樹脂吸着剤を用いて採取し、採取された香気成分を加熱脱着法によりガスクロマトグラフに導入して分析する方法が記載されている。香気成分の採取方法に関し、特許文献1には、前記多孔性樹脂吸着剤として、この種の吸着剤として一般的な粉末状吸着剤であるTenax(登録商標)を用い、鼻より排出される香気成分を電動ポンプにより吸引しながら前記ガラス管に導入する方法が記載されている。

0006

特許文献2には、既知の分析的な方法を用い、口腔及び鼻腔を含むヒト気道における酵素代謝の発生を考慮して、香料及び芳香の分野において有用な化合物を同定又は評価する方法として、2,6−ジフニレオキシドに基づく多孔質ポリマー樹脂を主要成分とする顆粒状吸着体である、Tenax(登録商標)が充填されたガラス管を被験者の鼻腔に挿入し、その状態で香気成分を含む空気を被験者に鼻腔を通じて吸入させた後、鼻腔を通じて吐き出された呼気を、メタボ−GMメタボスペース又は陽子移動反応質量分析(PTR−MS)によって分析する方法が記載されている。

0007

ところで、実際のヒト嗅粘膜は2〜10cm2の表面積があり、呼吸に伴う鼻腔内の空気の流れは速度125〜200mL/秒程度に達する。また、ヒト嗅粘膜近傍における線速度は90cm/秒程度であることが知られている。

先行技術

0008

特開2009−31138号公報
特表2008−506958号公報

発明が解決しようとする課題

0009

本発明者は通常の生活環境下でヒトが知覚する香りを把握する上で、嗅粘膜上のように空気の流れが速く、吸着面積が狭い所で吸着する揮発性成分の構成比に着目し、これを分析することを着想した。しかし、特許文献1及び2記載の方法は依然として捕集管を吸引ポンプに接続し、鼻より排出される香気成分を吸着する方法であるため、吸着管を流れる空気の流れは精々1〜3ml/秒程度と鼻腔内の空気の速度に比べて非常にゆっくりとしたものとなる。このため、空気の流れが速く、吸着面積が狭い鼻粘膜がとらえている香気を把握できているとは言えなかった。

0010

また、実際に知覚される組成物等の香気特性は、鼻腔を通過する香気成分の組成を反映しており、この香気成分の組成は比較的短い時間間隔で変化している。しかし特許文献1及び2記載の方法は吸着管を流れる空気の流れが非常に遅いため、この香気成分の変化を捉えるのは難しかった。仮に鼻から排出される空気を一時的に容器等に蓄えることで各時間ごとの空気を回収することはできたとしても、容器等に蓄えている間に揮発性成分が何らかの理由で経時変化する場合があり、実際に鼻から排出される空気と揮発性成分との構成比が変化してしまい、正しく分析できない恐れがあった。

0011

また、特許文献1及び2記載の方法は、電動ポンプにより強制的に該ガラス管に導入するというものであるため、電力使用可能な環境に被験者を一定時間拘束する必要があり、日常生活から乖離した状態で香気成分を採取する必要があるため、通常の生活環境下で人の知覚する香気成分を把握するには不適当であった。

0012

更に特許文献1に記載されている、Tenax(登録商標)の如き顆粒状樹脂をガラス管に密に充填してなる吸着剤は、可撓性を有しておらず硬くて脆いため細かく砕けやすいところ、鼻腔に該ガラス管を挿入中に該吸着剤に衝撃が与えられると、該吸着剤が微細粉末状の粉砕物を生じ、この粉砕物が該ガラス管から漏れ出て体内の奥深くに侵入するおそれがあり危険である。更に、特に高湿度雰囲気下では、Tenax(登録商標)等の粉末状吸着剤が充填されたガラス管中に水蒸気やそれが凝縮した水滴が付着するため、該吸着剤に吸着した香気成分のガスクロマトグラフによる分析の前に、特許文献1の〔0022〕に記載されているように、窒素パージ等により水分を取り除く必要がある。そのため、特許文献1記載の方法では、高湿度雰囲気下での比較的長時間に及ぶ香気成分の採取は困難である。

0013

また、特許文献2記載の香気成分の採取方法は、採取対象物質を予め決めておく必要があり、また、においに寄与している複数(例えば20成分以上)の揮発性成分を同時に分析し難いものであった。特許文献2記載の香気成分の採取方法は、鼻腔から排出される香気成分を分析可能ではあるものの、鼻腔を通じて嗅粘膜方向に吸引される成分を分析するものではない。また、特許文献1記載の香気成分の採取方法と同様に、被験者を一定時間分析装置の近くに拘束する必要があり、例えば、屋外等の電気の供給が難しい場所や被験者の移動を伴う場面等では実施できない。更に、分析時にはガラス管内の樹脂上に捕集された化合物を、分析装置サンプラー適合するような、一層小さな直径を有する分析管移送させてから分析装置に導入する必要があるため、分析時の手間もかかる上に、吸着した香気成分の構成比が変動する恐れがあった。

0014

本発明は、日常生活の種々の場面で鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中の揮発性成分を簡便且つ安全に採取し得る揮発性成分採取具及びそれを用いた揮発性成分採取方法に関する。

課題を解決するための手段

0015

本発明者らは、外鼻孔から鼻腔に挿入され、鼻呼吸に伴って該鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分を採取する揮発性成分採取具における該揮発性成分の吸着体として、可撓性と撥水性とを有するポリジメチルシロキサン(PDMS)系樹脂から作製した吸着体を用いることにより、高湿度雰囲気下を含む日常生活の様々な場面において、該揮発性成分を簡便且つ安全に採取し得ることを知見した。

0016

本発明は、前記知見に基づきなされたもので、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体と該吸着体を保持する保持体とを備える、揮発性成分採取具を用い、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分を採取する揮発性成分採取方法であって、前記保持体は、使用時に前記吸着体が収容される空間部を画成し、該空間部にて該吸着体を保持するようになされており、前記揮発性成分採取具は、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有しており、前記揮発性成分採取具を被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置し、その状態で該被験者に日常生活を所定時間送らせ、しかる後、該揮発性成分採取具から前記吸着体を取り出す工程を有する揮発性成分採取方法である。

0017

また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、前記方法で採取した揮発性成分の分析方法であって、前記揮発性成分採取具から取り出した前記吸着体に吸着された揮発性成分をガスクロマトグラフにより分析する工程を有する揮発性成分分析方法である。

0018

また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、香料組成物を含む賦香製品のにおいの評価方法であって、前記賦香製品のにおいを所定の官能評価によって評価する第1のステップと、前記賦香製品から放出された揮発性成分を、前記方法で採取する第2のステップと、第2のステップで採取された揮発性成分の組成を特定する第3のステップと、第1のステップで得られた前記賦香製品のにおいの官能評価と、第3のステップで特定された揮発性成分の組成とを照らし合わせ、においの特徴に寄与している物質を抽出する第4のステップとを含む、賦香製品のにおいの評価方法である。

0019

また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取・分析に用いられ、揮発性成分採取時に被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置される揮発性成分採取具であって、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体と、揮発性成分採取時に該吸着体が収容される空間部を画成し、該空間部にて該吸着体を保持する保持体とを備え、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有している揮発性成分採取具である。

発明の効果

0020

本発明によれば、高湿度雰囲気下を含む日常生活の様々な場面において、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中の揮発性成分を、別途動力を用いることなく、簡便且つ安全に採取することができる。こうして採取された揮発性成分は、特別な処理を施すことなく、公知の各種分析手段を用いて直接分析することができるため、該揮発性成分の組成や量の実態を簡便に把握することができる。

図面の簡単な説明

0021

図1は、本発明の揮発性成分採取具の第1実施形態の斜視図である。
図2は、図1に示す揮発性成分採取具の各構成部材(吸着体及び保持体)の斜視図である。
図3は、図1に示す揮発性成分採取具を収容する容器の斜視図である。
図4は、図1に示す揮発性成分採取具の使用状態の一例を示す図である。
図5(a)〜図5(e)は、それぞれ、本発明の揮発性成分採取具の第1実施形態の変形例の要部を示す図であり、保持体の一部(容器本体)の空間部に吸着体が収容されている状態を模式的に示す斜視図である。
図6(a)は、本発明の揮発性成分採取具の第2実施形態の非使用時の状態を示す斜視図、図6(b)は、該第2実施形態の使用時の状態を示す斜視図である。
図7は、図6に示す揮発性成分採取具の使用状態を示す図である。
図8(a)は、実施例の揮発性成分採取具を用いて採取した、入浴剤投入された湯船での入浴中に鼻腔を通過した気体中に含まれる揮発性成分のGCMS分析結果を示す図であり、図8(b)は、図8(a)の拡大図である。
図9は、実施例の揮発性成分採取具を用いて採取した、鼻腔を通過した気体中に含まれる揮発性成分のGC−MS分析結果を示す図であり、図9(a)は、歯磨き中に採取した該揮発性成分のGC−MS分析結果を示す図、図9(b)は、歯磨き後の口すすぎ後に採取した該揮発性成分のGC−MS分析結果を示す図である。

0022

以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき、図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本発明の揮発性成分採取具の第1実施形態が示されている。第1実施形態の揮発性成分採取具1Aは、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取・分析に用いられ、揮発性成分採取時に被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置される器具であり、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体2と、該吸着体2を保持する保持体3とを備えている。保持体3は、揮発性成分採取時に吸着体2が収容される空間部30を画成し、該空間部30にて吸着体2を保持する。保持体3は、揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入したときにおける吸着体2と鼻腔との接触を阻止し、吸着体2に鼻腔の汚れが付着する不都合を防止する役割を果たす。

0023

吸着体2は、揮発性成分吸着能に加えて更に、可撓性を有する。可撓性を有する吸着体2は、弾性を有し柔軟であり、外力が加えられても破壊されずに(折り曲げても折れずに)変形する。特許文献1及び2に記載の如き、「樹脂粉末〔例えばTenax(登録商標)〕をガラス管に密に充填してなる吸着剤」は、可撓性を有しておらず硬くて脆いため、外部から衝撃を与えられると破壊されて粉砕物を生じるおそれがあり、この粉砕物が該ガラス管(樹脂粉末の収容容器)から漏れ出て鼻腔の奥深くに吸引される危険性がある。これに対し、吸着体2は可撓性を有しているのでこのような危険性は無い。従って、可撓性を有する吸着体2を備える揮発性成分採取具1Aは、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中の揮発性成分を安全に採取することができる。

0024

本発明ではTwister(登録商標)(ゲステル(Gerstel)社製)等も吸着体として用いることが可能であるが、特に、揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体が望ましい。可撓性の吸着体の一例として、シリコーン樹脂が挙げられ、シリコーンエラストマーが好ましい。このようなシリコーン樹脂やシリコーンエラストマーとしては、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)又は、シリコーン化合物におけるポリマー鎖メチル基ビニル基又はフェニル基置換された、変性シリコーン化合物からなる吸着体が挙げられる。PDMSは、コンタクトレンズ等の医療用器具にも使われている高分子材料であり、万が一、誤って鼻腔奥に吸引されたとしても害が少ないと考えられる。例えば、Specialty Silicone Products社のThin Silicone Membrane、Goodfellow社のSilicone Elastomer製品ブランド名:SilasticまたはSilopren)、Dow Corning社のSILASTIC Silicone Laboratory Tubing、Rogers社のSilicone Foam等は、可撓性の吸着体として用いることができる。

0025

また、吸着体2に吸着された揮発性成分は、通常、分析手段による分析に供されるところ、その分析が例えば、固体吸着−加熱脱着−ガスクロマトグラフ質量分析法(加熱脱着法)である場合には、吸着体2の加熱時にその形成材料由来揮発性物質の発生が少ない方が、データ解析が行いやすい。従って、吸着体2としては、耐熱性が高く、加熱時の揮発性物質の発生が少ないものが好ましい。斯かる観点から、好ましい吸着体2として、耐熱性の高いPDMS、より具体的には、耐熱温度が200℃以上のPDMSが挙げられる。ここでいう「耐熱性の高い吸着体」(耐熱温度200℃以上のPDMS)としては、例えば、JIS K6249、JIS 6257、あるいはそれらに準じる方法により試験(評価)され、加熱による外形変化(ふくれひび割れ、変形、変色)や引っ張り強さ、切断時伸び、硬さ等の特性について、高温下での耐性があり、且つ加熱によって発生するガスアウトガス)の発生量がデータ解析を著しく妨げないものが好ましい。アウトガスはGC−MS等の分析装置を使って分析することができる。吸着体2は、JIS K6249若しくはJIS 6257又はこれらに準じる方法に従って該吸着体2を加熱した際に発生するガス(アウトガス)の発生量が、10mg/g以下、特に5mg/g以下であることが好ましい。

0026

吸着体2は後述するように、鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有しつつ、十分に揮散成分を採取できるものにする必要がある。第1実施形態においては、吸着体2は、図2に示すように、複数に小片化されて吸着体小片20とされている。複数の吸着体小片20は、それぞれ、該小片20を貫通する貫通孔21を有している。より具体的には、吸着体小片20は円筒状をなし、その円筒中心軸方向に沿って該方向の全長に亘って貫通孔21が形成されている。このようなチューブ状の吸着体小片20は、貫通孔21が通気孔として機能するため、該小片20が多数充填された保持体3を被験者の鼻腔に挿入しても、被験者の鼻呼吸が阻害され難く、特許文献1に記載の如き、電動ポンプによる呼気の排出等は不要である。また、吸着体小片20に貫通孔21が形成されていると、これが形成されていない場合に比して吸着体小片20の表面積が増大するため、揮発性成分の採取がより一層容易になる。従って、チューブ状の吸着体小片20の採用により、ヒトの種々の生活場面において鼻腔環境にできるだけ近い状態で揮発性成分を採取・分析することがより一層容易になる。

0027

第1実施形態において、保持体3は、図1及び図2に示すように、空間部30を内部に有する容器体3Aであり、該空間部30に複数の吸着体小片20が収容される。容器体3A(保持体3)は筒状をなし、その中心軸方向Xは、揮発性成分採取具1Aの適切な使用状態において、鼻呼吸により鼻腔を通過する気体の通過方向に一致する。

0028

容器体3Aは、容器本体4と、該容器本体4に着脱自在に取り付け可能な蓋体5とからなる。容器本体4は、中空の円筒状をなし、中心軸方向Xの一端部が閉鎖端部41、他端部が開口端部(口頸部)42となっており、これら両端部に挟まれた中空部分が空間部30として利用される。円筒状の容器本体4の外径は、該容器本体4を通常のヒトの外鼻孔から鼻腔に挿入可能で且つ挿入後に衝撃を与えない限り鼻腔に留まり得る、大きさに設定されている。蓋体5は、使用時に容器本体4の開口端部42を閉鎖する平面視円形状天板51と、該天板51の周縁から該天板51と直交する方向に延びる円筒状の側板52とを有し、該側板52の内周面52aが、容器本体4の開口端部42側の外周面4aに螺着可能になされている。

0029

容器体3Aにおける、使用者の鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体の通過方向両端部、即ち、筒状の容器体3Aの中心軸方向Xの両端部は、通気性を有している。より具体的には、容器体3Aの中心軸方向Xの両端部を形成する、容器本体4の閉鎖端部41及び蓋体5の天板51には、それぞれ、これらを厚み方向に貫通する貫通孔6が複数形成されており、これにより閉鎖端部41及び天板51に通気性が付与されている。

0030

容器体3Aの中心軸方向Xの長さ(高さ)は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは50mm以下、更に好ましくは30mm以下、より具体的には、好ましくは5〜50mm、更に好ましくは10〜30mmである。
容器体3Aにおける鼻腔に挿入される部分(容器本体4)の外径は、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下、より具体的には、好ましくは3〜30mm、更に好ましくは5〜20mmである。
吸着体2(吸着体小片20)が収容される空間部30の容量は、好ましくは0.1ml以上、更に好ましくは0.5ml以上、そして、好ましくは5ml以下、更に好ましくは3ml以下、より具体的には、好ましくは0.1〜5ml、更に好ましくは0.5〜3mlである。

0031

保持体3(容器体3A)の形成材料としては、鼻腔を通過する気体中の揮発性成分が吸着しにくく、且つ人体に対する安全性が高く鼻腔を傷つけにくい材料が好ましく、例えば、テフロン(登録商標)、ステンレスが挙げられる。特に、テフロン(登録商標)は、揮発性成分に対する不活性度が比較的高いため、保持体3(容器体3A)の形成材料として好適である。

0032

前述の如き構成を有する第1実施形態の揮発性成分採取具1Aは、使用者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該使用者の鼻呼吸を阻害しない程度の「通気性」を有している。揮発性成分採取具1Aに斯かる通気性を付与するのに特に寄与している構成として、A)保持体3を構成する容器体3Aの中心軸方向Xの両端部(使用者の鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体の通過方向両端部)が通気性を有している点、及びB)容器体3Aの中心軸方向Xの両端部間に位置する空間部30に収容される複数の吸着体小片20が、それぞれ、該小片20を貫通する貫通孔21を有している点が挙げられる。

0033

前記通気性を有する揮発性成分採取具1Aは、該採取具1Aを鼻腔に挿入した状態での鼻呼吸に伴う気体の、該採取具1Aを通過する速度(採取具通過速度)が、鼻腔に異物が挿入されていない通常状態での鼻呼吸に伴う気体の、該鼻腔を通過する速度(鼻腔通過速度)と同程度であることが、日常生活において鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中の揮発性成分を採取する観点から好ましい。つまり、日常生活において鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体の流れ(速度および線速度)に近い方が好ましい。より具体的には、揮発性成分採取具1Aの採取具通過速度は、好ましくは20ml/s以上、更に好ましくは50ml/s以上、そして、好ましくは500ml/s以下、更に好ましくは300ml/s以下、より具体的には、好ましくは20〜500ml/s、更に好ましくは50〜300ml/sである。鼻呼吸に伴う気体の採取具通過速度は、デジタルボリュームトランスデューサースパイロメーター等の公知の流量センサーを揮発性成分採取具に接続し、その揮発性成分採取具を鼻腔に挿入した状態で呼吸を行うことにより、測定することができる。

0034

揮発性成分採取具1Aに前記通気性をより確実に付与する観点から、空間部30の全容量に占める吸着体2(吸着体小片20)の体積割合(空間部占有体積割合)は、好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.5%以上、そして、好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、より具体的には、好ましくは0.1〜90%、更に好ましくは0.5〜80%である。吸着体2(吸着体小片20)の空間部占有体積割合は、吸着体2(吸着体小片20)の体積とそれが収容される空間部30の容積とから下記式に従い計算によって求めることができる。 空間部占有体積割合(%)=(全吸着体(吸着体小片20)の合計体積/空間部30の全容積)×100

0035

同様の観点から、貫通孔21を有する円筒状(チューブ状)の吸着体小片20の各部の寸法は次のように設定することが好ましい。
吸着体小片20の中心軸方向の長さ(高さ)は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは300mm以下、更に好ましくは180mm以下、より具体的には、好ましくは0.5〜300mm、更に好ましくは1〜180mmである。
吸着体小片20の外径は、前記通気性をより確実に付与する観点から、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。更に分析機器による分析時に吸着体をそのまま分析機器に導入する観点から、吸着体小片20の外径は分析機器に接続可能なサンプラーの内径よりも小さい方が好ましく、好ましくは10mm以下、更に好ましくは6mm以下である。より具体的には、好ましくは0.1〜10mm、更に好ましくは0.5〜6mmである。
吸着体小片20の内径(貫通孔21の直径)は、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは9mm以下、更に好ましくは4mm以下、より具体的には、好ましくは0.1〜9mm、更に好ましくは0.5〜4mmである。

0036

また、一般的な生活環境下でのヒトの嗅覚を介した感覚を引き起こす揮発性成分を分析するためには、吸着体2(吸着体小片20)の総表面積は、ヒトの嗅粘膜に近いことが好ましく、より具体的には、好ましくは0.1cm2以上、更に好ましくは0.2cm2以上、そして、好ましくは200cm2以下、更に好ましくは80cm2以下、より具体的には、好ましくは0.1〜200cm2、更に好ましくは0.2〜80cm2である。本願において、吸着体2(吸着体小片20)の表面積は、吸着体小片をなすチューブの表面積と同値であり、吸着体小片の長さ、外径、内径等の測定値から常法に従い計算によって求めることができる。

0037

揮発性成分採取具1Aは、使用前において、密閉可能な容器に収容された状態で保管されることが好ましい。使用前において、揮発性成分採取具1Aが密閉空間に保管されずに外気に晒されていると、外気中の揮発性成分が吸着体2に吸着されてしまい、いざ使用する段になって吸着体2の揮発性成分吸着能が低下しているおそれがある。図3には、揮発性成分採取具1Aを収容する容器の一例が示されている。図3に示す採取具収容容器10は、内部に採取具1Aの収容空間11を有する筒状の容器本体12と、該容器本体12に着脱自在に取り付け可能な蓋体13とからなり、収容空間11に採取具1Aを収容した状態で、容器本体12の開口端部(口頸部)側の外周面12aに蓋体13の内周面13aを螺着させることにより、密閉容器とすることができ、密閉容器12内の収容空間11に採取具1Aを収容した状態とすることができる。採取具収容容器10は、揮発性成分採取具1Aを用いて揮発性成分を採取後(吸着体2に吸着後)、これを各種分析法により分析するまでの間、該採取具1Aを保管するのに用いることもできる。

0038

揮発性成分採取具1Aは、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分を採取し、分析する揮発性成分採取方法、又は揮発性成分分析方法に好適に用いられる。一般に、ヒトの鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分は複数種あり、5種以上、更には10種以上の場合もあり得るが、本発明によれば、そのような多種類の揮発性成分が鼻腔を通過する場合でも、それらの採取・分析を簡便且つ安全に行うことができる。以下、本発明の揮発性成分採取・分析方法について、揮発性成分採取具1Aを用いた形態に基づき説明する。

0039

先ず、揮発性成分採取具1Aを、被験者の少なくとも片方の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置し、その状態で該被験者に日常生活を所定時間送らせる。日常的な活動に伴う鼻呼吸によって嗅粘膜に到達する成分、あるいは嗅粘膜を通過した成分を分析できる点から鼻腔に挿入した方が良い。図4には、揮発性成分採取具1Aを被験者の片方の外鼻孔から鼻腔に挿入した状態が示されている。揮発性成分採取具1Aは、容器体3A(保持体3)における容器本体4の閉鎖端部41(図1及び図2参照)を挿入方向先端として、鼻腔に挿入される。揮発性成分採取具1Aの鼻腔への挿入長さは、鼻腔に挿入された採取具1Aが鼻腔から容易に抜け落ちない程度であれば良く、採取具1Aの一部のみを鼻腔に挿入しても良く、全体を鼻腔に挿入しても良い。通常は図4に示すように、容器本体4の一部又は全部が鼻腔に挿入され、容器本体4に比して外径の大きい蓋体5は、鼻腔に挿入されずに外鼻孔からはみ出た状態のままとされる。尚、揮発性成分採取具1Aを2個用意し、被験者の2つの鼻腔の両方に1個ずつ挿入しても良い。

0040

尚、揮発性成分採取具1Aは、被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入せずに、外鼻孔の近傍に配置することもできる。その場合、揮発性成分採取具1Aとは別体の採取具支持具(図示せず)を用い、筒状の該採取具1Aの中心軸方向Xを、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体の通過方向に一致させて、外鼻孔の近傍に配置するのが好ましい。そのような採取具支持具としては、例えば、シート状の本体部と、該本体部の両側部それぞれに設けられたかけ部とを有する、マスク様の外観を有するものが挙げられる。斯かる採取具支持具において、本体部は、揮発性成分採取具1Aを保持可能に構成されており、該採取具支持具を通常のマスクと同様に使用することで、該本体部に保持された揮発性成分採取具1Aを、被験者の外鼻孔の近傍に配置することができる。前記本体部が有する「揮発性成分採取具1Aを保持可能に構成」としては、例えば、「本体部における、ヒトの顔面装着時に外鼻孔の近傍に位置する部分に、揮発性成分採取具1Aを挿入可能な貫通孔を設けた構成」が挙げられる。

0041

揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入されている被験者に送らせる「日常生活」は、鼻呼吸をしながら行う日常的な活動であり、例えば、入浴歯磨き、洗髪洗濯物干し等が挙げられ、特に制限されない。被験者にどのような日常生活を送らせるかは、通常、分析対象の揮発性成分が存在する場面に応じて適宜選択される。例えば、入浴剤由来の揮発性成分を採取・分析する場合、揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入されている被験者に送らせる「日常生活」は、入浴である。

0042

前述したように、揮発性成分採取具1Aは、図4に示す如く鼻腔に挿入された状態で鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有しているので、揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入されている被験者は、通常とほとんど変わらない鼻呼吸が可能であり、しかも、揮発性成分採取具1Aによる揮発性成分の採取には、鼻呼吸に伴う気体の揮発性成分採取具1Aへの導入を補助する電動ポンプ等の動力は不要であるので、被験者の行動範囲は特に制限されない。また、吸着体2は、特許文献1〜3記載の方法において吸着体として用いられているTenax(登録商標)等に比して湿気に強く、高湿度雰囲気下に置いても水蒸気や水滴が付着し難いにもかかわらず、香気成分捕集性能に優れているため、例えば、揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入した状態で入浴あるいは洗髪することが可能である。このように、揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入されている被験者は、高湿度雰囲気下を含む様々な場面において普段と変わらない日常生活を送ることが可能であり、揮発性成分採取具1Aを用いた揮発性成分の採取は、入浴中、歯磨き中、洗髪中洗濯物を干している最中等、日常生活における種々の場面で実施可能である。

0043

揮発性成分採取具1Aが被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で、該被験者が鼻呼吸するのに伴って気体中の揮発性成分を採取するのに要する時間は、通常の呼吸時間が4秒〜6秒付近であることを考慮して、1秒以上あれば良く、被験者が感じているにおいの強さ等に応じて適宜調整すれば良い。例えば、被験者が比較的強いにおいを感じている場面での鼻呼吸の時間は1秒〜1分、比較的弱いにおいを感じている場面での鼻呼吸の時間は1〜10分、ほとんどにおいを感じていない場面での鼻呼吸の時間は10分以上24時間以下とすることができる。

0044

また、このように、被験者がにおいを感じている場面では、揮発性成分を採取するために鼻呼吸をする時間は短時間で十分であるため、例えば1秒〜10分の間で任意に決めた一定時間ごとに揮発性成分採取具1Aを差し替えることで、鼻腔を通過する気体中に含まれる香気成分等の揮発性成分の時間変化を簡便に採取・分析することも可能である。即ち、揮発性成分採取具1Aを複数個用意し、そのうちの1個を被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置後、1秒〜10分の間から選択された所定の採取時間が経過したら、その1個の揮発性成分採取具1Aを他の1個と差し替える揮発性成分採取方法も、本発明の範囲に含まれる。

0045

鼻腔に揮発性成分採取具1Aが挿入された被験者に日常生活を所定時間送らせた後は、該鼻腔から揮発性成分採取具1Aを外し、図2に示す如く容器本体4から蓋体5を外して、容器本体4内から吸着体小片20を取り出す。そして、取り出した吸着体小片20に吸着された揮発性成分を別途分析手段で分析する。

0046

吸着体小片20に吸着された揮発性成分の分析法は特に制限されず、各種揮発性成分の定性定量分析に使用可能な公知の分析法を利用することができる。特に好ましい分析法の一例として、GC−MS法が挙げられる。GC−MS法において、ガスクロマトグラフへのサンプル導入法は特に制限されず、加熱脱着法、溶剤抽出法等の公知の方法を利用できる。特に微量成分の解析には、溶剤抽出法よりも加熱脱着法がより適切である。被験者の鼻腔に挿入されていた揮発性成分採取具1Aから取り出された吸着体小片20には、分析に十分な量の揮発性成分が吸着しており、また、該小片20は、耐熱性を有し且つガスクロマトグラフに導入する際に利用する加熱脱着装置に収容可能なサイズになっているので、該小片20に対し、加熱脱着装置に収容可能なサイズに切断したり、揮発性成分をいったん溶剤抽出してから、溶剤を留去して分析試料を濃縮したりするといった特別な前処理を施す必要はなく、該小片20を直接GC−MS分析にかけることが可能である。即ち、前述した構成の揮発性成分採取具1Aを用いることにより、揮発性成分の採取作業後(被験者の鼻腔から揮発性成分採取具1Aを外した後)、揮発性成分採取具1Aから吸着体小片20(吸着体2)を取り出した後、該吸着体小片20を前処理することなくこれをガスクロマトグラフィーの加熱脱着装置に入れ、該吸着体小片20に吸着された揮発性成分の分析を行うことができる。

0047

GC−MS法等を用い、吸着体小片20に吸着された揮発性成分を分析することにより、実際に鼻腔に届いている該揮発性成分の組成や量の実態を把握することができる。また、被験者に予め、揮発性成分採取具1Aを鼻腔に挿入していた時に感じたにおいの官能評価をしてもらっていた場合には、その官能評価結果と、GC−MS法等により得られた揮発性成分データとを照らし合わせることで、ヒトが感じる様々なにおいをより科学的に検証することが可能となる。例えば、分析対象物のにおいは、通常、においの質が異なる複数の揮発性成分が混じり合って形成されているが、それらの複数の揮発性成分の中で特ににおいの質を特徴づける成分が数種類存在している。そこで、分析対象物を構成しているにおいの質の中で特にその分析対象物に特徴的なにおいの質を構成する要素を被験者に官能評価で、においの質毎に分類して言語表現してもらうと共に、本発明の分析方法によって得られた香気成分を香質ごとにグループ化し、官能評価で得られた香質と同一のグループを選択することで、実際に人の鼻腔に届く揮発性成分のうち人の官能に強く訴える揮発性成分を、揮発性成分の検出量によらずに選択することができる。このような官能評価結果と揮発性成分データとの照合は、香料、衣料用洗剤、身体洗浄料、芳香剤等の、「におい」が重要な特性となり得る製品処方及び製品(賦香製品)に賦香する香料組成物の開発に特に有用である。

0048

即ち、製品に賦香する香料組成物(調合香料)を調製し、製品処方に添加した場合、香料組成物そのものからの揮発性成分(香料物質)の組成と、実際に製品処方に添加された状態での揮発性成分の組成とは、製品処方に含まれる原料成分(界面活性剤有機溶剤増粘剤など)と香料物質との相互作用によって、異なっているのが通常であり、また、原料成分そのものがいわゆる基剤臭を有していることもあり、元々の香料組成物には含まれていなかった揮発性成分が「におい」の質に影響することもある。つまり、製品の「におい」の質は必ずしも、当初の香料組成物を設計した時点での予測どおりにならないのが通例である。このような場合、本発明の揮発性成分採取方法を用いることによって、製品を実際に使用している状態において、人の鼻腔に届く揮発性成分の中で、特に「におい」の質に影響する揮発性成分を選択することができ、その結果に基づいて、製品に賦香する香料組成物や製品処方の原料成分の組成や構成比率を調整することが可能となり、所望の「におい」を有する製品の開発に役立てることができる。

0049

本発明の揮発性成分採取方法は、例えば、香料組成物を含む賦香製品(例えば、香料、衣料用洗剤、身体洗浄料、芳香剤)のにおいの評価方法に利用することができる。斯かるにおいの評価方法の一例として、1)賦香製品のにおいを所定の官能評価によって評価する第1のステップと、2)賦香製品から放出された揮発性成分を、本発明の揮発性成分採取方法で採取する第2のステップと、3)第2のステップで採取された揮発性成分の組成を、GC−MS法等の公知の揮発性成分分析法により、特定する第3のステップと、4)第1のステップで得られた賦香製品のにおいの官能評価と、第3のステップで特定された揮発性成分の組成とを照らし合わせ、においの特徴に寄与している物質を抽出する第4のステップとを含むものが挙げられる。

0050

図5には、前述した第1実施形態の揮発性成分採取具1Aの変形例1A1〜1A5の要部が示されている。後述する変形例1A1〜1A5については、前述した第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。

0051

本発明に係る吸着体は、被験者が鼻呼吸をする際、十分な通気性を有する状態で、十分に揮散成分を採取できれば、どのような態様も許容され、例えばシリコーン樹脂製の吸着体であれば、図2図5(a)及び図5(b)に示す吸着体2の如き、チューブ状でも良く、あるいは図5(c)〜図5(e)に示す吸着体2の如き、シート状でも良い。また、厚手のシートを切断して得られる角柱等の棒状体でも良く、立方体等の多面体不定形粒状体でも良い。また、揮散成分の採取効率の向上には、図2及び図5(a)に示す如く、吸着体を複数とすることが有効であるが、このように吸着体を複数から構成せずとも、図5(b)〜図5(e)に示す如く、チューブ状又はシート状の吸着体を、必要に応じ丸める等して、空間部30に収容することも有効である。中でも十分な通気性を有しつつ採取効率を上げる観点から、シート状、チューブ状の吸着体を使用するのが好ましく、これを複数用いるのがより好ましい。

0052

図5(a)に示す揮発性成分採取具1A1及び図5(b)に示す揮発性成分採取具1A2は何れも、吸着体2が貫通孔21を有するチューブ状である点で、第1実施形態の揮発性成分採取具1Aと共通する。チューブ状の吸着体2は、揮発性成分採取具1Aにおいては図2に示すように、その中心軸方向の長さ(貫通孔21の長さ)が容器体3A(保持体3)を構成する容器本体4の内径よりも短い、円筒状の吸着体小片20であったが、揮発性成分採取具1A1においては図5(a)に示すように、円筒状(中空の棒状)ではあるが小片化されておらず、より具体的には、その中心軸方向の長さ(貫通孔21の長さ)は容器本体4の内径よりも長い。また、揮発性成分採取具1A2においては図5(b)に示すように、チューブ状の吸着体2は、小片化されておらず、螺旋状(渦巻き状)に丸められた状態で空間部30に収容されている。

0053

図5(c)に示す揮発性成分採取具1A3においては、平面視矩形形状の1枚のシート状の吸着体2が折り曲げられたり丸められたりせずに、自然状態(展開状態)で空間部30に収容されている。図5(d)に示す揮発性成分採取具1A4においては、平面視矩形形状の1枚のシート状の吸着体2が、その長手方向に丸められた状態で空間部30に収容されている。図5(e)に示す揮発性成分採取具1A5においては、平面視帯状の1枚のシート状の吸着体2が、その長手方向に巻回した状態で空間部30に収容されている。

0054

図6には、本発明の揮発性成分採取具の第2実施形態が示されている。第2実施形態については、前述した第1実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。

0055

第2実施形態の揮発性成分採取具1Bにおいては、図6に示すように、保持体3は可撓性のシート体3Bであり、該シート体3Bの片面にシート状の吸着体2が固定されて、吸着体2と保持体3との積層シート23とされている。シート状の吸着体2及びシート体3B(シート状の保持体3)は何れも平面視矩形形状をなしているが、シート状の吸着体2の方がシート体3Bに比して幅(長手方向と直交する方向の長さ)が短い。シート状の吸着体2は、シート体3Bの片面の幅方向中央部に重ねられており、吸着体2の長手方向に沿う両側縁2s,2sは、シート体3Bの長手方向に沿う両側縁3s,3sよりも幅方向内方に位置している。このように、積層シート23において吸着体2の両側縁2s,2sがシート体3Bの両側縁3s,3sよりも幅方向内方に位置していると、後述するように該積層シート23を筒状に丸めて鼻腔に挿入した時に、吸着体2が鼻腔に接触し難く、吸着体2に鼻孔の汚れが付着する不都合が効果的に防止される。

0056

シート状の吸着体2の長手方向長さは、好ましくは5mm以上、更に好ましくは10mm以上、そして、好ましくは70mm以下、更に好ましくは60mm以下、より具体的には、好ましくは5〜70mm、更に好ましくは10〜60mmである。
シート状の吸着体2の幅方向長さは、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下、より具体的には、好ましくは3〜30mm、更に好ましくは5〜20mmである。
シート状の吸着体2の厚みは、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下、より具体的には、好ましくは0.01〜5mm、更に好ましくは0.1〜3mmである。

0057

シート体3B(シート状の保持体3)の長手方向長さは、好ましくは10mm以上、更に好ましくは15mm以上、そして、好ましくは75mm以下、更に好ましくは65mm以下、より具体的には、好ましくは10〜75mm、更に好ましくは15〜65mmである。
シート体3B(シート状の保持体3)の幅方向長さは、好ましくは5mm以上、更に好ましくは7mm以上、そして、好ましくは32mm以下、更に好ましくは22mm以下、より具体的には、好ましくは5〜32mm、更に好ましくは7〜22mmである。
シート体3B(シート状の保持体3)の厚みは、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.1mm以上、そして、好ましくは3mm以下、更に好ましくは1mm以下、より具体的には、好ましくは0.01〜3mm、更に好ましくは0.1〜1mmである。

0058

シート体3Bの片面にシート状の吸着体2を固定する固定手段は、一定の固定強度を有するものであれば良いが、揮発性成分採取具1Bの主たる使用目的(鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取)を考慮すると、揮発性成分を含む固定手段、例えば接着剤は好ましくなく、接着剤を使わない固定手段、例えば、i)シート体3B(保持体)に、該シート体3Bを厚み方向に貫通するスリットを形成し、該スリットにシート状の吸着体2を差し込んで固定する方法や、ii)ホッチキスで固定する方法等がある。第2実施形態では、ホッチキスによって、シート体3Bの片面にシート状の吸着体2を固定しており、図6中の符号7はホッチキスの針である。シート状の吸着体2は、その長手方向両端部にてシート体3Bにホッチキス留めされている。可撓性のシート体3B(保持体3)の形成材料としては、テフロン(登録商標)が挙げられる。

0059

第2実施形態の揮発性成分採取具1B(積層シート23)は、非使用時には、平板状(図示せず)、あるいは図6(a)に示す如き、吸着体2を内側にしてカールした状態となっており、特に平板状の場合は、吸着体2が収容される空間部30を画成してない。揮発性成分採取具1Bの使用時には、平板状あるいはカールした状態の積層シート23を、吸着体2を内側にして長手方向に筒状に丸め、図6(b)に示す如き円筒状とする。こうして得られた中空の円筒状の積層シート23における中空部分が空間部30であり、該空間部30ではシート状の吸着体2が、シート体3B(保持体3)の内面に固定される態様で、該シート3Bに保持されている。このように、揮発性成分採取具1Bにおいては、吸着体2を内側にして積層シート23を筒状に丸めることにより、空間部30が画成されるようになされている。図6(b)に示す円筒状の積層シート23は、これを中心軸方向Xから見た場合(側面視)において、C字状をなしており、中心軸方向Xの全長に亘ってシート23が存在しない不連続部分を有している。このような不連続部分は無くても良く、円筒状の積層シート23において、その周方向の全長に亘って積層シート23が連続していても良い。

0060

図6(b)に示す如き円筒状とされた揮発性成分採取具1B(積層シート23)は、前述した揮発性成分採取具1Aと同様に、ヒトの外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置されて使用される。図7には、揮発性成分採取具1Bを被験者の片方の外鼻孔から鼻腔に挿入した状態が示されている。揮発性成分採取具1Bによっても揮発性成分採取具1Aと同様の効果が奏される。

0061

以上、本発明について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。例えば、吸着体小片20の形状は特に制限されず、第1実施形態の如き円筒状の他、立方体状、球状等でも良い。また、第1実施形態では、保持体3の中心軸方向X(鼻腔を通過する気体の通過方向)の両端部(容器本体4の閉鎖端部41及び蓋体5の天板51)の通気性は、該両端部に貫通孔6を形成することにより付与されていたが、斯かる構成に代えて、該両端部それぞれを該端部全体が開口した開口端部とし且つ該開口端部をメッシュ等の多孔性部材被覆した構成としても良い。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。

0062

<1>
揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体と該吸着体を保持する保持体とを備える、揮発性成分採取具を用い、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分を採取する揮発性成分採取方法であって、
前記保持体は、使用時に前記吸着体が収容される空間部を画成し、該空間部にて該吸着体を保持するようになされており、前記揮発性成分採取具は、被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有しており、
前記揮発性成分採取具を被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置し、その状態で該被験者に日常生活を所定時間送らせ、しかる後、該揮発性成分採取具から前記吸着体を取り出す工程を有する揮発性成分採取方法。
<2>
前記揮発性成分採取具が鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で、被験者に高湿度雰囲気下で日常生活を送らせる前記<1>記載の揮発性成分採取方法。

0063

<3>
前記保持体は前記空間部を内部に有する容器体であり、該容器体における前記気体の通過方向両端部は通気性を有しており、
前記空間部に、チューブ状、シート状、棒状、粒状の何れかの形状の前記吸着体が収容されている前記<1>又は<2>記載の揮発性成分採取方法。
<4>
前記保持体は前記空間部を内部に有する容器体であり、該容器体における前記気体の通過方向両端部は通気性を有しており、
前記空間部に、前記吸着体の小片が1個又は2個以上収容されており、その吸着体小片は、それぞれ、該吸着体小片を貫通する貫通孔を有している前記<1>〜<3>の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法。<5>
前記保持体は可撓性のシート体であり、該シート体の片面にシート状の前記吸着体が固定されて、該吸着体と該保持体との積層シートとされており、
使用時に前記吸着体を内側にして前記積層シートを筒状に丸めることにより、前記空間部が画成されるようになされている前記<1>又は<2>記載の揮発性成分採取方法。

0064

<6>
前記吸着体はシリコーンエラストマーからなる前記<1>〜<5>の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法

0065

<7>
被験者が前記揮発性成分採取具を鼻腔に挿入した状態で鼻呼吸をしている際の、その鼻呼吸に伴う気体の該揮発性成分採取具の通過速度は、好ましくは20ml/s以上、更に好ましくは50ml/s以上、そして、好ましくは500ml/s以下、更に好ましくは300ml/s以下、より具体的には、好ましくは20〜500ml/s、更に好ましくは50〜300ml/sである前記<1>〜<6>の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法。
<8>
被験者の鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分が複数種、あるいは5種以上、あるいは10種以上である前記<1>〜<7>の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法。
<9>
前記揮発性成分採取具を複数個用意し、そのうちの1個を被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置後、1秒〜10分の間から選択された所定の採取時間が経過したら、その1個の揮発性成分採取具を他の1個と差し替えることで、鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の時間変化を分析する前記<1>〜<8>の何れか一項に記載の揮発性成分採取方法。

0066

<10>
前記<1>〜<9>の何れか一項に記載の方法で採取した揮発性成分の分析方法であって、
前記揮発性成分採取具から取り出した前記吸着体に吸着された揮発性成分をガスクロマトグラフにより分析する工程を有する揮発性成分分析方法。
<11>
前記揮発性成分採取具から前記吸着体を取り出した後、該吸着体を前処理することなく、ガスクロマトグラフによって、該吸着体に吸着された揮発性成分の分析を行う前記<10>記載の揮発性成分分析方法。

0067

<12>
香料組成物を含む賦香製品のにおいの評価方法であって、
前記賦香製品のにおいを所定の官能評価によって評価する第1のステップと、
前記賦香製品から放出された揮発性成分を、前記<1>〜<9>の何れか一項に記載の方法で採取する第2のステップと、
第2のステップで採取された揮発性成分の組成を特定する第3のステップと、
第1のステップで得られた前記賦香製品のにおいの官能評価と、第3のステップで特定された揮発性成分の組成とを照らし合わせ、においの特徴に寄与している物質を抽出する第4のステップと
を含む、賦香製品のにおいの評価方法。

0068

<13>
鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取・分析に用いられ、揮発性成分採取時に被験者の外鼻孔から鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置される揮発性成分採取具であって、
揮発性成分吸着能を有する可撓性の吸着体と、揮発性成分採取時に該吸着体が収容される空間部を画成し、該空間部にて該吸着体を保持する保持体とを備え、
被験者の鼻腔に挿入又は外鼻孔の近傍に配置された状態で該被験者の鼻呼吸を阻害しない程度の通気性を有している揮発性成分採取具。

0069

<14>
前記保持体は前記空間部を内部に有する容器体であり、該容器体における前記気体の通過方向両端部は通気性を有しており、
前記空間部に、前記吸着体の小片が1個又は2個以上収容されており、その吸着体小片は、それぞれ、該吸着体小片を貫通する貫通孔を有している前記<11>記載の揮発性成分採取具。
<15>
前記吸着体小片は円筒状をなし、その円筒中心軸方向に沿って該方向の全長に亘って前記貫通孔が形成されており、
前記吸着体小片の外径は、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは10mm以下、更に好ましくは6mm以下であり、
前記吸着体小片の内径(前記貫通孔の直径)は、好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.5mm以上、そして、好ましくは9mm以下、更に好ましくは4mm以下である前記<14>記載の揮発性成分採取具。
<16>
前記吸着体小片の中心軸方向の長さ(高さ)は、好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、好ましくは300mm以下、更に好ましくは180mm以下である前記<14>又は<15>記載の揮発性成分採取具。

0070

<17>
前記保持体は可撓性のシート体であり、該シート体の片面にシート状の前記吸着体が固定されて、該吸着体と該保持体との積層シートとされており、
使用時に前記吸着体を内側にして前記積層シートを筒状に丸めることにより、前記空間部が画成されるようになされている前記<13>記載の揮発性成分採取具。
<18>
前記シート状の吸着体の幅方向長さは、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは30mm以下、更に好ましくは20mm以下である前記<17>記載の揮発性成分採取具。
<19>
前記シート状の吸着体の厚みは、好ましくは0.01mm以上、更に好ましくは0.1mm以上、そして、好ましくは5mm以下、更に好ましくは3mm以下である前記<17>又は<18>記載の揮発性成分採取具。

0071

<20>
前記吸着体は、ポリジメチルシロキサン、又は、シリコーン化合物におけるポリマー鎖のメチル基がビニル基又はフェニル基に置換された、変性シリコーン化合物からなる前記<13>〜<19>の何れか一項に記載の揮発性成分採取具。
<21>
前記吸着体は、JIS K6249若しくはJIS 6257又はこれらに準じる方法に従って該吸着体を加熱した際に発生するガス(アウトガス)の発生量が、好ましくは10mg/g以下、更に好ましくは5mg/g以下である前記<13>〜<20>の何れか一項に記載の揮発性成分採取具。
<22>
前記吸着体の総表面積は、0.1cm2以上、更に好ましくは0.2cm2以上、そして、好ましくは200cm2以下、更に好ましくは80cm2以下である前記<13>〜<21>の何れか一項に記載の揮発性成分採取具。

0072

<23>
前記空間部の全容量に占める前記吸着体の体積割合(空間部占有体積割合)は、好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.5%以上、そして、好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である<13>〜<22>の何れか一項に記載の揮発性成分採取具。
<24>
前記保持体は、前記空間部を内部に有する筒状の容器体であり、該容器体の中心軸方向の長さは、好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは50mm以下、更に好ましくは30mm以下である前記<13>〜<23>の何れか一項に記載の揮発性成分採取具。

0073

以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。

0074

〔実施例1〕
図1及び図2に示す揮発性成分採取具1Aと同様の構成を有する揮発性成分採取具を作製した。より具体的には、容器体としての保持体として、テフロン(登録商標)製の円筒状の容器本体と蓋体とからなるスクリューサンプル管を用い、該容器本体の底部(閉鎖端部)及び該蓋体の天板それぞれに、内径1.8mmの貫通孔を10個穿設した。スクリューサンプル管からなる容器体(保持体)における容器本体(鼻腔に挿入される部分)は、内径10mm、外径14mm、中心軸方向の長さ(高さ)18mm、空間部の容量1mlであった。また、吸着体として、PDMSチューブ(Goodfellow社、P/N:SI307300(450−389−65)、外径3.0mm、内径2.0mm、厚み0.5mm)を用い、該チューブを長さ5mmに切断して得られた12個の吸着体小片を、前記スクリューサンプル管内部の空間部に収容した。こうして作製した揮発性成分採取具を図4に示す如き採取具収容容器に収容し、使用直前までその状態で保管した。尚、この揮発性成分採取具は、通常の鼻呼吸の吸引速度(50〜300ml/s)が維持できることを確認した。

0075

〔使用例1〕
実施例1の揮発性成分採取具を用い、入浴中の揮発性成分の採取・分析を行った。より具体的には、健康な一人の男性を被験者とし、お湯がはられた湯船に被験者の首から下の部分がつかっている状態で、被験者の左の外鼻孔から鼻腔に図4に示す如く揮発性成分採取具の容器本体部分を挿入し、その状態で被験者に5分間自然に呼吸してもらった。その後、揮発性成分採取具を鼻腔から外して、内部に収容されている12個の吸着体小片を全て新しいものに交換し、湯船に市販の入浴剤を投入した後に、吸着体小片を交換済みの揮発性成分採取具を前記と同様に被験者の鼻腔に挿入し、再び5分間自然に呼吸してもらった。こうして、「入浴剤が投入されていない湯船での入浴中」(コントロール)及び「入浴剤が投入された湯船での入浴中」の各場面において、被験者の鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取を行った。そして、両場面で用いた12個の吸着体小片をガラス管(内径4mm、外径6mm、長さ177mm)に入れ、常法に従って加熱脱着しGC−MS分析を行った。尚、各場面で揮発性成分の採取に用いた12個の吸着体小片は、揮発性成分採取具の保管に使用した採取具収容容器に収容し、GC−MS分析に供するまで冷蔵保存した。GC−MS分析条件は下記の通り。

0076

・GC−MS分析装置:7890A+5975C(アジレンテクノロジーズ)
キャリアガス(He)流速:1mL/min
カラム:DB−WAX(アジレント、P/N:122−7062、S/N:USA175211H、60m×0.25mm、膜厚0.25μm)
GCオーブン昇温条件:40℃を3分間維持した後、昇温速度6℃/minで70℃まで昇温し、更に昇温速度2℃/minで240℃まで昇温し、240℃を30分間維持。
・加熱脱着システム:TDS3(ゲステル)+TDSA2(ゲステル)
・加熱脱着条件:Splitless;TDS:5℃から250℃まで3分間かけて昇温;CIS:−150℃から250℃まで2分間かけて昇温。

0077

〔使用例2〕
実施例1の揮発性成分採取具を用い、「歯磨き中」及び「歯磨き後の口すすぎ後」それぞれの揮発性成分の採取・分析を行った。より具体的には、健康な一人の男性を被験者とし、被験者に市販の歯磨き剤を用いた普段通りの歯磨きを3分間かけて行ってもらう過程で、被験者の左の外鼻孔から鼻腔に図4に示す如く揮発性成分採取具の容器本体部分を挿入し、その状態で自然に呼吸してもらいつつ、歯磨き開始1分後から1分間歯磨きを続けてもらった。その後、揮発性成分採取具を鼻腔から外して、内部に収容されている12個の吸着体小片を全て新しいものに交換し、被験者に口内を水ですすいでもらった後に、吸着体小片を交換済みの揮発性成分採取具を前記と同様に被験者の鼻腔に挿入し、口内の水すすぎ後30秒経過後から1分間自然に呼吸してもらった。こうして、「歯磨き中」及び「歯磨き後の口すすぎ後」の各場面において、被験者の鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する気体中に含まれる揮発性成分の採取を行った。そして、両場面で用いた12個の吸着体小片を、前記〔実施例1〕と同様にGC−MS分析に供した。

0078

図8には、使用例1のGC−MS分析結果(トータルイオンクロマトグラム)が示されている。図示していないが、コントロールのGC−MS分析では揮発性成分(香気成分)はほとんど検出されなかったのに対し、入浴剤が投入された湯船での入浴中においては、図8に示すように、入浴剤由来の各種揮発性成分が検出されている。このように、本発明の揮発性成分採取具及びそれを用いた揮発性成分分析方法によれば、入浴中の如き、高湿度雰囲気下での日常生活であっても、鼻呼吸に伴って鼻腔を通過する入浴剤由来の揮発性成分の採取及び分析を簡便且つ安全に行うことができる。

実施例

0079

図9には、使用例2のGC−MS分析結果(トータルイオンクロマトグラム)が示されている。歯磨き中に採取した揮発性成分のGC−MS分析結果を示す図9(a)と、歯磨き後の口すすぎ後に採取した揮発性成分のGC−MS分析結果を示す図9(b)とから、「歯磨き剤を用いて歯磨きをした後、口内を水ですすぐ」という一連の過程における、揮発性成分の量あるいは組成の変化が確認できる。このように、本発明の揮発性成分採取具及びそれを用いた揮発性成分分析方法によれば、1分間という比較的短い揮発成分採取時間(揮発性成分採取具の鼻腔への挿入時間)で、複数種の揮発性成分の解析を簡便且つ安全に行うことができる。

0080

1A,1A1,1A2,1A3,1A4,1A5,1B揮発性成分採取具
2吸着体
20 吸着体小片
21 吸着体小片の貫通孔
23 吸着体と保持体との積層シート
3 保持体
3A容器体(保持体)
3Bシート体(保持体)
30 空間部
4容器本体
5蓋体
6 容器体の貫通孔
7ホッチキスの針
10 採取具収容容器

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