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技術 耐水素吸収性に優れたチタン合金材およびその製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 森健一藤井秀樹
出願日 2013年10月22日 (7年2ヶ月経過) 出願番号 2013-219032
公開日 2015年4月27日 (5年8ヶ月経過) 公開番号 2015-081363
状態 特許登録済
技術分野 非鉄金属または合金の熱処理 金属質材料の表面への固相拡散
主要キーワード チタン部材 最終部材 クリープ変形量 水素耐性 チタン材表面 合金添加元素 流動応力 チタン合金材
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課題

水素吸収による脆化を抑制可能なチタン合金材低コストで提供する。

解決手段

水素を含有する高温雰囲気で使用されるチタン合金材であって、表層部にCr濃度5質量%以上のCr濃化層を有し、該Cr濃化層が5μm以上50μm未満の厚みを有する、耐水素吸収性に優れることを特徴とするチタン合金材である。チタン合金材表層にCrを濃化させることで、水素吸収を大幅に抑制できることができる。水素吸収による脆化を抑制することで、生産コスト向上や生産性低下を招くことなくチタン部材を製造でき、また、部材の高靭性化高温変形抑制による寿命の向上が得られる。

概要

背景

軽量高強度で耐食性に優れるチタン合金は、使用目的に応じた様々な合金が開発され、航空機用途をはじめとする広範な分野で利用されている。高温環境で使用されることも多いチタン合金であるが、高温水素含有雰囲気中において、水素を吸収しやすいことが知られている。

高温の水素含有雰囲気は、例えば、チタン合金が部材に加工される以前の板、棒等の中間素材において、組織を作り込むために施される熱処理プロセス等のほか、部材として用いられるエンジンなど内燃機関ガスタービンなど、種々の場合がある。温度としては、内燃機関やガスタービン等であれば700℃〜850℃程度、熱処理プロセス等であれば700℃〜1200℃程度である。目的にかかわらず、高温の水素含有雰囲気にチタン合金が接する場合、水素の吸収を生じる。吸収された水素のうち、外部に脱け出るものもあるが、トータルとしてはチタン合金中残留し、その後の脆化の原因となる。

内燃機関などの特に高温で使用されるチタン合金材は、合金添加元素としてAl、Sn、Siなどを含むNear−α型合金が用いられている。特許文献1には、耐熱性に優れたチタン合金として、Ti、Al、Sn、Zr、Mo、Si、C、Oを所定の範囲で含み、所定の熱処理を施したチタン合金およびその処理方法が記載されている。これら耐熱性を高めたnear−α型チタン合金では、特許文献1に記載されているように、インゴットから製品に至る製造工程において、約1000℃のβ変態温度を超える温度まで加熱された後、熱間加工される。その製造工程において、雰囲気中の水素が材料中に吸収され、水素濃度が上昇する。水素濃度が高い場合には脆化を招くため、代表的なNear−α型合金であるTi−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.08Siにおいて、AMS規格では、水素濃度は0.015wt%または0.0125wt%以下と規定されている。また、さらに水素濃度はチタン合金の高温変形挙動に影響を与え、高水素濃度の場合には高温変形応力耐クリープ性を低下させるなど挙動を示すことも知られている。

チタン合金材の製造工程において、中間素材の水素濃度が高くなった場合には、高真空中に長時間保持することで脱水素処理を行うことは可能である。しかし、処理コストが高く製造工期が長くなるため、工業生産には適さない。

次に、チタン材への水素吸収を抑制する公知技術を以下に述べる。

特許文献2には、チタン材の製造工程において水素吸収を抑制する方法として、加熱炉でチタン材を加熱する際に炉内を3%以上の酸素濃度を有する酸化性雰囲気とする方法が記載されている。しかし、この方法では水素吸収を充分に抑制することはできない。

チタン材表面に形成される酸化皮膜耐水素吸収性が向上することは一般に知られている。しかし、700℃以上ではチタンの酸化皮膜による対水素のバリア効果が低下するとされている。

特許文献3には、窒素ガスまたはアンモニアガス環境中で800〜900℃に加熱してチタン合金表面にチタン窒化物を形成させる方法が記載されている。しかし、加熱雰囲気中に酸素がある場合には酸化を生じてしまうため、真空排気を行った後に窒素ガスまたはアンモニアガス雰囲気とする必要があり、生産効率の低下やコストの増加を招くことが問題である。

特許文献4には、チタン表面物理的蒸着法により窒化チタン層被覆することで水素吸収による脆化を防止する方法が記載されている。しかし、物理的蒸着法は、コストが高く、生産効率も低いことが問題である。

特許文献5には、水素吸収環境下で用いられる構造部材用のチタン合金材において、Al:0.50〜3.0mass%、残部TiからなるTi−Al合金が記載されている。しかし、Al濃度が異なったり、異なる成分元素が含まれる場合についてはその効果が明らかではない。さらに、高温環境下で用いられる、針状組織のチタン合金エンジンバルブが特許文献6に開示されているが、水素耐性具備することによってさらなる長寿命化が期待されるところであるが、低コストで水素耐性を持たせるための方策が無かった。

概要

水素吸収による脆化を抑制可能なチタン合金材を低コストで提供する。水素を含有する高温雰囲気で使用されるチタン合金材であって、表層部にCr濃度5質量%以上のCr濃化層を有し、該Cr濃化層が5μm以上50μm未満の厚みを有する、耐水素吸収性に優れることを特徴とするチタン合金材である。チタン合金材表層にCrを濃化させることで、水素吸収を大幅に抑制できることができる。水素吸収による脆化を抑制することで、生産コスト向上や生産性低下を招くことなくチタン部材を製造でき、また、部材の高靭性化や高温変形抑制による寿命の向上が得られる。なし

目的

本発明は、上記課題を有利に解決して、水素吸収を抑制するチタン合金材(チタン合金部材あるは中間素材)と、その簡便な製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

高温水素含有雰囲気で使用されるチタン合金材であって、表層部にCr濃度5質量%以上のCr濃化層を有し、該Cr濃化層が5μm以上50μm未満の厚みを有することを特徴とする、耐水素吸収性に優れたチタン合金材。

請求項2

さらに、内部組織針状組織を有することを特徴とする、請求項1に記載の耐水素吸収性に優れたチタン合金材。

請求項3

チタン合金材の表面にCr粉末を塗布した後、800℃以上1100℃以下の温度で加熱を行い、表層部にCr濃度5%以上、厚み5μm以上50μm以下のCr濃化層を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の耐水素吸収性に優れたチタン合金材の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、耐衝撃性を低下させる水素吸収を生じる環境において使用されるチタン合金材およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

軽量高強度で耐食性に優れるチタン合金は、使用目的に応じた様々な合金が開発され、航空機用途をはじめとする広範な分野で利用されている。高温環境で使用されることも多いチタン合金であるが、高温水素含有雰囲気中において、水素を吸収しやすいことが知られている。

0003

高温の水素含有雰囲気は、例えば、チタン合金が部材に加工される以前の板、棒等の中間素材において、組織を作り込むために施される熱処理プロセス等のほか、部材として用いられるエンジンなど内燃機関ガスタービンなど、種々の場合がある。温度としては、内燃機関やガスタービン等であれば700℃〜850℃程度、熱処理プロセス等であれば700℃〜1200℃程度である。目的にかかわらず、高温の水素含有雰囲気にチタン合金が接する場合、水素の吸収を生じる。吸収された水素のうち、外部に脱け出るものもあるが、トータルとしてはチタン合金中残留し、その後の脆化の原因となる。

0004

内燃機関などの特に高温で使用されるチタン合金材は、合金添加元素としてAl、Sn、Siなどを含むNear−α型合金が用いられている。特許文献1には、耐熱性に優れたチタン合金として、Ti、Al、Sn、Zr、Mo、Si、C、Oを所定の範囲で含み、所定の熱処理を施したチタン合金およびその処理方法が記載されている。これら耐熱性を高めたnear−α型チタン合金では、特許文献1に記載されているように、インゴットから製品に至る製造工程において、約1000℃のβ変態温度を超える温度まで加熱された後、熱間加工される。その製造工程において、雰囲気中の水素が材料中に吸収され、水素濃度が上昇する。水素濃度が高い場合には脆化を招くため、代表的なNear−α型合金であるTi−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.08Siにおいて、AMS規格では、水素濃度は0.015wt%または0.0125wt%以下と規定されている。また、さらに水素濃度はチタン合金の高温変形挙動に影響を与え、高水素濃度の場合には高温変形応力耐クリープ性を低下させるなど挙動を示すことも知られている。

0005

チタン合金材の製造工程において、中間素材の水素濃度が高くなった場合には、高真空中に長時間保持することで脱水素処理を行うことは可能である。しかし、処理コストが高く製造工期が長くなるため、工業生産には適さない。

0006

次に、チタン材への水素吸収を抑制する公知技術を以下に述べる。

0007

特許文献2には、チタン材の製造工程において水素吸収を抑制する方法として、加熱炉でチタン材を加熱する際に炉内を3%以上の酸素濃度を有する酸化性雰囲気とする方法が記載されている。しかし、この方法では水素吸収を充分に抑制することはできない。

0008

チタン材表面に形成される酸化皮膜耐水素吸収性が向上することは一般に知られている。しかし、700℃以上ではチタンの酸化皮膜による対水素のバリア効果が低下するとされている。

0009

特許文献3には、窒素ガスまたはアンモニアガス環境中で800〜900℃に加熱してチタン合金表面にチタン窒化物を形成させる方法が記載されている。しかし、加熱雰囲気中に酸素がある場合には酸化を生じてしまうため、真空排気を行った後に窒素ガスまたはアンモニアガス雰囲気とする必要があり、生産効率の低下やコストの増加を招くことが問題である。

0010

特許文献4には、チタン表面物理的蒸着法により窒化チタン層被覆することで水素吸収による脆化を防止する方法が記載されている。しかし、物理的蒸着法は、コストが高く、生産効率も低いことが問題である。

0011

特許文献5には、水素吸収環境下で用いられる構造部材用のチタン合金材において、Al:0.50〜3.0mass%、残部TiからなるTi−Al合金が記載されている。しかし、Al濃度が異なったり、異なる成分元素が含まれる場合についてはその効果が明らかではない。さらに、高温環境下で用いられる、針状組織のチタン合金エンジンバルブが特許文献6に開示されているが、水素耐性具備することによってさらなる長寿命化が期待されるところであるが、低コストで水素耐性を持たせるための方策が無かった。

先行技術

0012

特許第3959766号公報
特開昭60−262947号公報
特開昭63−210286号公報
特開平3−243759号公報
特開2003−129152号公報
特開2011−17937号公報

発明が解決しようとする課題

0013

従来、水素吸収によるチタン合金材(チタン合金部材または中間素材)の脆化を抑制したり、チタン合金材の高温流動応力低下や耐クリープ性低下を抑制するために、上述したような高コスト表面処理を施してコストの上昇を招くか、不十分な効果しか得られない手段しか存在しなかった。そのため、簡便な方法で、チタン合金材の水素吸収を抑制する手段が求められていた。

0014

本発明は、上記課題を有利に解決して、水素吸収を抑制するチタン合金材(チタン合金部材あるは中間素材)と、その簡便な製造方法を提供するものである。

課題を解決するための手段

0015

本発明者らは、チタン合金材(チタン合金部材あるは中間素材)への水素吸収を抑制する方法を鋭意検討した結果、表層にCr固溶層を形成することが有効であること、および、簡便な方法でCr固溶層を形成する方法を見出した。

0016

本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)高温の水素含有雰囲気で使用されるチタン合金材であって、表層部にCr濃度5質量%以上のCr濃化層を有し、該Cr濃化層が5μm以上50μm未満の厚みを有することを特徴とする、耐水素吸収性に優れたチタン合金材。
(2)さらに、内部組織が針状組織を有することを特徴とする、(1)に記載の耐水素吸収性に優れたチタン合金材。
(3)チタン合金材の表面にCr粉末を塗布した後、800℃以上1100℃以下の温度で加熱を行い、表層部にCr濃度5%以上、厚み5μm以上50μm以下のCr濃化層を形成することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の耐水素吸収性に優れたチタン合金材の製造方法。

発明の効果

0017

本発明のチタン合金材(チタン合金部材あるは中間素材)を用いることによって、水素吸収による脆化を抑制することで、生産コスト向上や生産性低下を招くことなくチタン部材を製造でき、また、部材の高靭性化や高温変形抑制による寿命の向上が得られ、産業上の大きな効果を得ることができる。

0018

本発明において、チタン合金材とは、チタン合金中間素材、チタン合金部材の両者とも含むものとして定義するものである。

0019

発明者らは、簡便な方法で水素を含有する高温雰囲気からの水素吸収を抑制する手段を検討した。種々の金属あるいは金属化合物をチタン合金材表面に塗布したり表層に拡散層を形成させたりした後、都市ガスを用いた燃焼炉内試料を置いて加熱試験を行い、試料内部の水素量変化を調査した。その結果、チタン合金材表層にCrを濃化させることで、水素吸収を大幅に抑制できることを見出した。その機構の詳細は不明であるが、チタン合金材表面にCr濃化層を有することで、燃焼ガスに曝される場合に緻密なCr含有化合物層を形成して水素吸収に対するバリヤとなる、あるいは、チタン合金表層部に水素固溶限の高いβ相が形成されることで母材内部への水素拡散を抑制する、などの機構が考えられる。

0020

耐熱チタン合金において、Crを含む遷移金属元素は耐クリープ性を低下させることが知られており、積極的に添加することは一般的ではない。しかし、部材の表層のみCr濃度の高い層を形成することで、母材の耐熱性能を損なうことなく、水素吸収を大幅に抑制することができる。

0021

Cr濃化層を形成する工程は、中間素材の製造工程において、どの段階に入れることもできる。たとえばインゴットにCr濃化層を形成した後に熱間鍛造を行ったり、スラブビレットにCr濃化層を形成した後に熱間圧延を行うことができる。また、Cr濃化層を形成するための加熱と、熱間加工のための加熱を連続あるいは同時に行うこともできる。連続あるいは同時に行うことによって、Cr濃化層形成を従来の加熱工程の中で行うことができるため、製造時間や費用を追加することなく、実施することができる。部材として用いる場合にはその製造工程において、微視組織を作り込む前後のどこに入れることもでき、部材、素材の用途によって最適な順番を決めることができる。

0022

Cr濃度の測定には、チタン合金材の断面を鏡面研磨した後、FE(電界放射)型のEPMA分析装置を用いることができる。加速電圧15kV、照射電流0.5μA、照射時間50msec、ビーム径1μmの条件で測定し、標準試料を用いて定量分析を行う。α相およびβ相からなるチタン合金において、Crはβ相に濃化しやすく、上記測定によってCr濃度測定値局所的な変動が生じるため、50μm以上の幅で深さ方向の測定を行って、表面からの距離毎にCr濃度を平均化することで、深さ方向分布を算出して用いるとよい。

0023

脆化を防ぐことができる水素濃度のしきい値には、代表的なNear−α型合金であるTi−6Al−2Sn−4Zr−2Mo−0.08Siにおいて、AMS規格で水素濃度は0.015質量%または0.0125質量%以下と規定されていることから、0.0125質量%以下を基準とした。

0024

以下に、本発明について詳しく説明する。

0025

請求項1に記載の本発明において、水素含有雰囲気は、分子状の水素ガスを含む混合ガスばかりではなく、水蒸気炭化水素ガスや、該炭化水素ガスが燃焼する時に発生する燃焼ガス等のように、その分子を構成する原子として水素原子を含むものも含む。代表的には炭化水素ガスを燃焼させて得られる高温雰囲気であるが、水素を含むガスの雰囲気下で電気加熱等によって高温にすることで同様の環境とした状態を含む。

0026

水素吸収は温度が高い方が高くなるが、ここで高温とは水素吸収が特に促進される700℃以上とする。700℃以上ではチタン材表面の酸化皮膜による対水素保護膜の効果が低下するとされている。Cr濃化層は、前述の測定方法でCr濃度が5質量%以上であり、かつ、表面のスケールコンタミ影響を除いた、チタン材の部分を指す。Cr濃化層の厚みは、表面のスケールやコンタミ影響を除いたチタン材表面を起点として、Cr濃度が5質量%未満となる位置までの距離を指す。Cr濃化層の厚みは、5μm以上、かつ50μm以下の範囲とする。

0027

Cr濃化層の厚みが5μm未満では、水素吸収を抑制する効果が十分でない。Cr濃化層の厚みが50μm以上で、その効果が飽和し、またその形成に製造時間や費用がかかりすぎる。好ましくは、10μm以上、40μm以下である。Cr濃度が5%未満では、水素吸収を抑制する効果が十分でない。Cr濃度に特に上限は設けないが、好ましくは20%以下である。

0028

また、請求項1に開示のチタン合金材は、最終部材としてのチタン合金部材であって、チタン合金中間素材を用いたものでもよいし、また、そうでないものでもよい。ここで、中間素材とは、最終部材に加工される途中の部材である。

0029

最終部材になるまでにいくつかの中間的な高温熱処理が必要な場合、中間素材は、そのような中間的熱処理において素材内部への水素吸収を抑制することができる。一方、たとえば水素の吸収が懸念されるような工程を経ない中間素材は、中間素材に含まれない場合もある。しかしながら、これら中間素材が加工され、最終部材となった後、水素吸収が懸念される高温環境下で使用される場合、請求項1に開示されるチタン合金材は、水素吸収を抑制するためには非常に有効である。

0030

請求項2に記載の本発明において、表層部にCr濃度5質量%以上のCr濃化層を有し、該Cr濃化層が5μm以上50μm未満の厚みを有するとともに、内部組織が針状組織を有するチタン合金材を規定している。これは、このような針状組織とすることにより、例えば自動車のエンジンバルブ等、高温環境下での耐クリープ性が著しく向上するためである。しかしながら、内部組織が針状組織であっても、前記Cr濃化層が無い場合、高温環境下で使用するうちに水素を吸収してしまい、水素脆化や高温変形容易化のために部材の寿命が本来の寿命より短くなってしまう。これに対して本発明では、Cr濃化層を具備することにより、針状組織本来の高い耐クリープ性を反映した耐久性を示す部材を得ることが可能となる。

0031

チタン合金表層にCr濃化層を形成する手段として、たとえば、以下のような拡散法を用いる。純度99.5%以上、粒径45μm以下のCr粉末を水と混ぜてスラリー状としたものを用い、Crスラリーを刷毛でチタン合金材表面に塗布した後、800℃以上の温度で加熱を行うことで、チタン合金内部にCrを拡散させて濃化層を形成する。加熱方法は、ガス燃焼炉電気炉真空炉誘導加熱などのが選択できる。

0032

請求項3に記載の本発明について説明する。チタン合金の表層部に5〜50μmのCr濃化層を形成するために、800℃以上1100℃以下の加熱温度、10分から4時間の加熱時間の範囲で適正に制御する。形成されるCr濃化層の厚みは、800℃で1時間の加熱により約10μm、1100℃で1時間の加熱により約40μmである。加熱温度が800℃より低いとCr濃化層の形成に長時間を要し、1100℃より高いと加熱コストが著しく上昇するため不適である。

0033

チタン合金部材の内部組織を針状組織とするためには、β変態温度以上の温度に保持した後、冷却することで、旧β相内に針状のα相を生成させればよい。保持時間は、β相への変態を確実にするために10分以上とするのがよい。冷却速度は、0.1℃/s以上であれば針状のα相が形成される。

0034

一般に、高温環境で使用されるチタン合金の組成は、質量%で、Al:5〜8%、Sn:5%未満、Zr:6%未満、Mo:4%未満、Si:0.1%以上1%未満、Cr:0.2%未満、Fe:0.2%未満、Ni:0.2%未満である。このうち、β相安定化元素のMoは加工性を維持するために少量添加されるが、同様にβ相安定化元素であるCr、Fe、Niは高温での耐クリープ性を劣化させるため積極的に添加されることはなく、不可避的に含まれるのみである。したがって、通常の製造方法よび使用方法において、Near−α型チタン合金にCr濃度5%以上のCr濃化層が5μm以上の厚みに形成されることはない。実施例ではTi−6%Al−2.7%Sn−5.5%Zr−0.4%Mo−0.45%Si、および0.03%Fe、0.01%Cr、0.01%Niからなる合金を用いて評価を行ったが、実施の形態はこの合金組成に限定されるものではない。さらに、高濃度にCrを含有するチタン合金があった場合、表層にも高濃度のCrが含有されるが、特に表層に濃化したものではなく、部材内部全体が高濃度でCrが含有されている。このような部材は、前述のように、耐クリープ性等の理由から、水素吸収が懸念される高温環境下で使用されうるものではない。従って、Crを1%以上含有するようなチタン合金は、本実施例を検討する際に対象とはしていない。

0035

(実施例1)
VAR(真空アーク溶解)法によって製造されたTi−6%Al−2.7%Sn−5.5%Zr−0.4Mo−0.45Siのチタン合金インゴット鍛造表面切削して、φ100mmのビッレットを製造した。ビレットを500mm長さに切断して試料とした。水素吸収の影響を明確にするため、1×10-4Torr以上の高真空中で1100℃、5hの脱水素処理を行った。試料中の水素濃度は、10ppm未満であった。

0036

次に、純度99.5%以上、粒径45μm以下のCr粉末を水と混ぜてスラリー状としたものを、刷毛で試料表面に均一に塗布した後、750℃〜900℃、1時間から5時間の熱処理を都市ガス(13A)を燃焼ガスとする加熱炉にて行った、これにより、試料表面から内部にCrを拡散させることでCr濃度5%以上のCr濃化層を、表面から3〜60μmの深さに形成させた。クロム濃化層の厚み測定方法は、前述のFE(電界放射)型のEPMA分析装置を用いる方法によって行った。

0037

次いで、都市ガス(13A)を燃焼ガスとする加熱炉内に試料を入れて、1200℃、10時間の加熱を行った。加熱中の炉内酸素濃度は、5〜10%の範囲に制御した。加熱後、試料の断面中央部から水素分析試料を採取して、LECO社製水素分析装置にて分析を行った。Cr濃化層を形成するときの熱処理条件と、1200℃、10時間の加熱後の水素濃度を表1に示す。水素濃度判定において、水素濃度が判定基準の125ppmよりも低い場合は合格として「○」とし、それ以外は不合格として「×」とした。

0038

0039

No.1は、Cr濃化層の厚みが3μmと、本発明例を外れる場合である。加熱後の水素濃度は、140ppmと判定基準より高い。

0040

No.2〜No.5は、本発明例であり、加熱後の水素濃度は60〜117ppmと、判定基準の125ppmよりも低い。

0041

No.6は、Cr濃化層の厚みが60μmと、本発明例を外れる場合である。加熱後の水素濃度は、60ppmと判定基準より低いが、No.6と比較して効果は飽和しているうえ、Cr濃化層の形成に900℃で5時間と2.5倍の時間がかかっており、工業的に不適である。

0042

No.7は、Cr濃化層を形成しない場合である。脱水素処理後の試料をそのまま1200℃、10時間の加熱炉内で加熱した。加熱後の水素濃度は180ppmと、判定基準の125ppmより高い。

0043

No.8は、Cr濃化層形成のための加熱を、次工程のための加熱とを同時に行った場合である。前述の方法でCr粉末を試料表面に塗布した後、複数の試料を同時に加熱炉にいれて、900℃、1時間の保定をした後、一部の試料を取り出して測定したCr濃化層の厚みは22μmであった。引き続き、残りの試料に対して1200℃、10時間の加熱を行った。当該残りの試料は連続して加熱を行ったので、900℃、1時間保定後のCr濃化層の厚みは測定できていないが、No.4と同等と推定される。1200℃、10時間加熱後のCr濃化層厚みは、約200μmであった。加熱後の水素濃度は63ppmと、判定基準の125ppmより低い。

0044

(実施例2)
VAR(真空アーク溶解)法によって製造されたTi−6Al−2.7Sn−5.5Zr−0.4Mo−0.45Siのチタン合金インゴットを鍛造、熱延、表面切削して、φ15mmの丸棒を製造した。丸棒を100mm長さに切断して試料とした。

0045

純度99.5%以上、粒径45μm以下のCr粉末を水と混ぜてスラリー状としたものを、刷毛で試料表面に均一に塗布した後、Cr濃化層を形成する処理として、1020℃〜1100℃、10分〜3時間、空冷の加熱を電気炉で大気雰囲気にて行い、同時に材料内部の微視組織を針状組織に調整した。調整後の微視組織は、100〜800μmの旧β相内に幅1〜10μmの針状α相が針状に析出した組織である。試験に用いたチタン合金のβ変態温度は約1000℃である。都市ガス(13A)を燃焼ガスとする加熱炉内に試料を入れて、850℃、48時間の加熱を行った。加熱中の炉内酸素濃度は、5〜10%の範囲に制御した。

0046

加熱後、試料の断面中央部から水素分析試料を採取して、LECO社製水素分析装置にて分析を行った。その結果を表2に示す。

0047

0048

No.1は、Cr濃化層の厚みが3μmと、本発明例を外れる場合である。加熱後の水素濃度は、142ppmと判定基準より高い。

0049

No.2〜No.5は、本発明例であり、加熱後の水素濃度は66〜118ppmと、判定基準の125ppmよりも低い。

0050

No.6は、Cr濃化層の厚みが62μmと、本発明例を外れる場合である。加熱後の水素濃度は、66ppmと判定基準より低いが、No.6と比較して効果は飽和しているうえ、Cr濃化層の形成にはNo.6の3倍の時間がかかっており、工業的に不適である。

0051

No.7は、Cr濃化層を形成しない場合である。脱水素後の試料をそのまま、850℃、4時間の加熱を行った。加熱後の水素濃度は170ppmと、判定基準の125ppmより高い。

0052

(実施例3)
VAR(真空アーク溶解)法によって製造されたTi−6Al−2.7Sn−5.5Zr−0.4Mo−0.45Siのチタン合金インゴットを鍛造、熱延、表面切削して、φ15mmの丸棒を製造した。丸棒試料に、1090℃、10分、空冷の加熱を行い、材料内部の微視組織を針状組織とした後、耐クリープ試験用にφ5mmの丸棒試験片を採取した。試験片の微視組織は、100〜800μmの旧β相内に幅1〜10μmの針状α相が針状に析出した組織であった。上記チタン合金のβ変態温度は約1000℃である。その後、純度99.5%以上、粒径45μm以下のCr粉末を水と混ぜてスラリー状としたものを、刷毛で試験片表面に均一に塗布した後、700℃〜880℃、1時間の加熱を電気炉で大気雰囲気にて行い、チタン合金内部に拡散させることで、Cr濃化層を形成した。

0053

耐クリープ試験は、水平に保持したφ5mm試験片の軸端部に0.67±0.1kgの耐熱合金製をのせ、後述の暴露試験後の変形量Hを測定した。変形量Hは、試験後の軸端部下端から、試験前の元のφ5mm試験片の軸端部下端までの距離である。φ5mm試験片の把持部を除いた固定端から軸端までの有効試験片長さLは45mmとした。耐クリープ性は、H/L×100(%)が2%以下の試料を良とした。

0054

暴露試験は、都市ガス(13A)を燃焼ガスとする加熱炉内に耐クリープ試験用の治具と試験片を入れて、850℃、24時間の加熱を行った。加熱中の炉内酸素濃度は、5%未満に制御した。加熱後、試験片の変形量Hを測定し、試料の断面中央部から水素分析試料を採取してLECO社製水素分析装置にて分析を行った。その結果を表3に示す。

0055

0056

No.1は、Cr濃化層の厚みが3μmと、本発明例を外れる場合である。加熱後の水素濃度は、131ppmと判定基準より高い。また、クリープ変形量は2.4%と大きい。

0057

No.2およびNo.3は、本発明例であり、加熱後の水素濃度は67〜83ppmと、判定基準の125ppmよりも低い。また、クリープ変形量は、1.9%と1.7%であり、2%の基準以下であった。

実施例

0058

No.4は、φ15mmの丸棒素材に、950℃、1時間の熱処理を施し、微視組織を等軸組織にしたものである。その後、純度99.5%以上、粒径45μm以下のCr粉末を水と混ぜてスラリー状としたものを、刷毛で試験片表面に均一に塗布した後、880℃、1時間の加熱を電気炉で大気雰囲気にて行い、チタン合金内部に拡散させることで、Cr濃化層を形成した。耐クリープ試験および暴露試験は、No.1〜3と同様に行った。加熱後水素濃度は71ppmと基準以内であり、耐水素吸収性に優れていた。一方、等軸組織であるためクリープ変形量は30%超であった。

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