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課題
解決手段
概要
背景
一般に、端子等の電子部品には機械的強度、導電性、半田付け性、めっき性等の観点から銅含有材料が好適に使用されている。このような端子は、例えばプレスによる打ち抜き加工によって成形され、その際に、滑り性、金型の摩耗および破損防止、端子破断面の焼付け防止等を目的として、銅含有材料の表面に金属加工油(プレスオイル)が塗布される。
なお、例えば次工程の樹脂との複合成形や半田付けでの作業性等を考慮して、プレス加工後の銅製品表面には残留油分を少なくする必要があるため、金属加工油としては、揮発性が良好で且つ乾燥性に優れるものが選定される。
金属加工油としては、例えば下記特許文献1、2や、数多くの文献に提案がなされている。
概要
銅製品の表面、例えば端子破断面の変色(黒点化等)を抑制する。重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有しない化合物からなる金属加工油を、銅含有材料の表面に付着させ、前記銅含有材料を所望の形状に加工する工程を有することを特徴とする銅製品の製造方法とする。なし
目的
本発明の課題は、銅製品の変色が抑制される銅製品の製造方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
0001
本発明は、銅製品の製造方法に関し、詳しくは銅製品の変色が抑制される銅製品の製造方法に関する。
背景技術
0002
一般に、端子等の電子部品には機械的強度、導電性、半田付け性、めっき性等の観点から銅含有材料が好適に使用されている。このような端子は、例えばプレスによる打ち抜き加工によって成形され、その際に、滑り性、金型の摩耗および破損防止、端子破断面の焼付け防止等を目的として、銅含有材料の表面に金属加工油(プレスオイル)が塗布される。
なお、例えば次工程の樹脂との複合成形や半田付けでの作業性等を考慮して、プレス加工後の銅製品表面には残留油分を少なくする必要があるため、金属加工油としては、揮発性が良好で且つ乾燥性に優れるものが選定される。
0003
金属加工油としては、例えば下記特許文献1、2や、数多くの文献に提案がなされている。
先行技術
0004
特開2008−163115号公報
特開2002−167589号公報
発明が解決しようとする課題
0005
ところが、前記のような条件を満たす金属加工油には、銅製品の表面、例えば端子破断面を変色(黒点化等)させるものがあるため、シリカゲル等を同梱して銅製品を梱包する等、変色防止の対策が製造現場で行われている。
しかし、梅雨や夏場等の湿気が多い時期では、前記のようなシリカゲル等を用いた対策が有効ではない場合があり、改善が求められていた。
したがって本発明の課題は、銅製品の変色が抑制される銅製品の製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段
0006
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、金属加工油に含まれる原料を特定のものに設定することにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有しない化合物からなる金属加工油を、銅含有材料の表面に付着させ、前記銅含有材料を所望の形状に加工する工程を有することを特徴とする銅製品の製造方法。
(2)前記銅含有材料をプレスする工程を経て、前記銅含有材料を所望の形状に加工することを特徴とする前記(1)に記載の銅製品の製造方法。
(3)前記銅製品が端子またはバスバーであることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の銅製品の製造方法。
発明の効果
0007
本発明の銅製品の製造方法は、金属加工油に含まれる原料を、二重結合および三重結合を実質上有しない化合物から構成したので、銅製品の変色を抑制することができる。
特に、端子やバスバーなどの銅製の電子部品の変色を抑制することができるので、外観上の不具合を抑制できる。
図面の簡単な説明
0009
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
0010
本発明の銅製品の製造方法は、重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有しない化合物からなる金属加工油を、銅含有材料の表面に付着させ、前記銅含有材料を所望の形状に加工する工程を有することを特徴としている。
0011
重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有する化合物を含む金属加工油は、揮発時等において、前記結合が切断され、酸素と結びつき、その酸素が銅を酸化させると考えられる。酸化により銅は変色(黒色)を起こし、成形品の外観上、ムラができてしまう。本願発明者らは、前記重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合が銅含有材料に与える影響を確認し、該重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有する化合物を含まない金属加工油を用いるものである。
0012
本発明の金属加工油は、一般的に基油と必要に応じて添加される添加剤とから構成される。
前記基油としては、上記したように、重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有する化合物を含まないものであれば、鉱油および/または合成油のいずれも使用することができる。
0013
本発明で使用できる鉱油としては、例えば、パラフィン基系原油または混合基系原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分、あるいは潤滑油脱ろう工程により得られるワックス(スラックワックス等)および/またはガストゥリキッド(GTL)プロセス等により得られる合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、GTLワックス等)を原料とし、各種精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油、ノルマルパラフィン系基油、イソパラフィン系基油、ホワイトオイルが挙げられ、重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有する化合物を含まないようにして、前記鉱油は公知の水素添加処理等に施される。
0014
また本発明で使用できる合成油としては、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、炭素数5〜20のα−オレフィンのオリゴマー、エチレンと炭素数5〜20のα−オレフィンとのコオリゴマー等のポリオレフィンの水素添加物;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ポリグリコール;フェニルエーテル;シリコーン油;フルオロエーテル;等が挙げられ、重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有する化合物を含まないようにして、前記合成油は公知の水素添加処理等に施される。
0015
また、本発明で使用する金属加工油には、前記の基油以外にも、公知の添加剤を添加することができる。かかる添加剤としてはとくに制限されないが、例えば、極圧剤;酸化防止剤;湿潤剤;造膜剤;水置換剤;固体潤滑剤;腐食防止剤;金属不活性化剤;消泡剤;無灰分散剤;等が挙げられる。これらの添加剤の添加量は、例えば金属加工油に対し、0〜10質量%程度である。なお、これらの添加剤においても、重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有する化合物を含むことのないように、選択する必要がある。
0016
重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有しない化合物からなる金属加工油は、化合物中に炭素の二重結合および三重結合を含有しないため、結合部分の切断による酸化が生じないため、銅の酸化が抑制され、結果として銅製品の変色が生じにくい。また、銅製品の変色を防止するために従来使用していたシリカゲル等の使用量が低減でき、製造工場での検査に掛かる費用を抑制できる。
0017
本発明の銅製品の製造方法は、前記のような金属加工油を、銅含有材料の表面に付着させ、前記銅含有材料を所望の形状に加工する工程を有することを特徴としている。
銅含有材料としては、例えば、銅;黄銅、りん青銅、ベリリウム銅等の銅合金等が挙げられる。なお、銅合金とは、銅を60質量%以上含有する合金のことをいう。銅含有材料の表面への金属加工油の付着量、付着時間等の油使用条件は、該材料を所望の形状に加工する具体的な手段によって当業者であれば適宜設定することができる。
金属加工油を、銅含有材料の表面に付着させる方法としては、例えば、銅含有材料を金属加工油に浸漬する方法、金属加工油を銅含有材料の表面に噴霧する方法、およびこれらを組み合わせて行う方法等が挙げられる。
0018
前記加工の種類としては、具体的には、切削加工、研削加工、転造加工、鍛造加工、プレス加工、引き抜き加工、圧延加工等が挙げられ、中でも、本発明では銅製品の変色が一層抑制されるという観点から、プレス加工が好ましい。
0019
また本発明により得られる銅製品としては、とくに制限されないが、例えば銅製品が端子、バスバーであるときに、黒点化等の変色が抑制され、とくに有用である。
0020
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されない。
0024
(金属加工油D)
金属加工油Dとして、潤滑油、潤滑油添加剤、酸化防止剤および安定剤の混合物である打抜油(外観:淡黄色の液体、密度:0.837g/cm3(15℃))を用いた。
0025
図1に、金属加工油A〜DのFT−NMRの分析結果を示す。金属加工油Aにのみ、重合性炭素−炭素二重結合に不飽和炭化水素のピークが確認された(囲み部分)。なお、FT−NMRの分析条件は以下の通りである。
使用機器:JNM−ECX500(商品名、日本電子株式会社製)
測定温度:23℃±5℃
測定周波数:500MHz
0026
<変色確認試験>
試験片として、板厚0.80mm、幅16.00mm、長さ60.00mmの銅合金である黄銅C2600(銅含有量65質量%、めっきなし)を用い、各金属加工油A〜Dに試験片をそれぞれ5個ずつ(1〜5番)、5〜10分間浸漬し、温度80℃、相対湿度90%の条件の恒温高湿槽に5日間投入し、5日間経過後、試験片表面の変色度合いを目視で確認した。なお、金属加工油に浸漬していない試験片を対照とした。
0027
本実験の結果を、各試験片の表面写真として図2に示す。
その結果、重合性炭素−炭素二重結合および重合性炭素−炭素三重結合を有しない金属加工油B、C、Dは、前記実験終了後において試験片の変色が確認されることはなく、対照である金属加工油に浸漬していない試験片と同等の外観であったのに対し、金属加工油Aは、試験片の変色(黒色化)が確認された。