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課題
解決手段
概要
背景
従来、導電性接着剤として利用されるAg導電フィラー粉末では、配合される導電性フィラーとして、銀粒子が広く利用されている。銀自体、熱伝導性、電気伝導性に優れた金属であり、また、銀粒子の表面に形成される酸化被膜層の伸長も進み難いという利点を具えている。加えて、延性、展性に優れており、銀粒子相互の接触で凝集後、その銀粒子相互の接触部面積の拡大が容易に進むため、良好な導電性を示す導電性接着層が形成される。
このようなAg導電フィラー粉末は、純Agを用いたり、母材となるCuにAgをコーティングすることで得られるが、純Agはコスト面、Agコーティングはプロセス面がコスト高になる。この問題を同時に解決する、急速冷却によって粉末表面にAgが濃化した導電フィラー用粉末の詳細な検討例は存在しない。
現状、Ag導電フィラー粉末は、銅と銀との総重量を100としたとき、銅の重量比率が50以下であることを特徴とすることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、芯材である銅系金属の表面に銀粒子が配置されたコアシェル型構造をとるAg導電フィラー粉末は、芯材となる金属とAg粒子間にAg被覆層が存在することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
一方、粉末最表層にAgが濃化している合金粉末が記載されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、粉末表層におけるAgとCuの比率やAgCu相の存在率が明確にされていない。
概要
本発明は、微細共晶組織とAgが多く、かつCuが少ないAgCu相が粉末表層を占める効果を高める成分の制御をすることによって、純Agと遜色のない電気伝導度を有し、かつアトマイズままの合金粉末で、Agコーティングが不要なAgCu系導電フィラー粉末を提供する。 Ag含有率が1〜30質量%のCu−Ag合金からなるアトマイズ合金粉末であって、該アトマイズ合金粉末はアトマイズままで、Cuに対するAgの質量比X=(MAg/MCu)が1.2以上のAgCu相3を、に模式的に示すように、アトマイズ粉末最表層2に有することを特徴とするAgCu系導電フィラー粉末。
目的
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
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技術分野
背景技術
0002
従来、導電性接着剤として利用されるAg導電フィラー粉末では、配合される導電性フィラーとして、銀粒子が広く利用されている。銀自体、熱伝導性、電気伝導性に優れた金属であり、また、銀粒子の表面に形成される酸化被膜層の伸長も進み難いという利点を具えている。加えて、延性、展性に優れており、銀粒子相互の接触で凝集後、その銀粒子相互の接触部面積の拡大が容易に進むため、良好な導電性を示す導電性接着層が形成される。
0003
このようなAg導電フィラー粉末は、純Agを用いたり、母材となるCuにAgをコーティングすることで得られるが、純Agはコスト面、Agコーティングはプロセス面がコスト高になる。この問題を同時に解決する、急速冷却によって粉末表面にAgが濃化した導電フィラー用粉末の詳細な検討例は存在しない。
0004
現状、Ag導電フィラー粉末は、銅と銀との総重量を100としたとき、銅の重量比率が50以下であることを特徴とすることが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
0005
また、芯材である銅系金属の表面に銀粒子が配置されたコアシェル型構造をとるAg導電フィラー粉末は、芯材となる金属とAg粒子間にAg被覆層が存在することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
先行技術
0007
特開2007−99851号公報
特開2011−249257号公報
特開平10−21742号公報
発明が解決しようとする課題
0008
ところで、従来の銅系金属からなる芯材の表面を銀粒子で被覆してなる導電性フィラーでは、銅系金属を芯材にすることで、電子部品の電極に用いられるSn(スズ)電極とフィラーとの間の電位差を小さくし、ガルバニック腐食を防止するようにしている。
0010
上記の様な、銅系粉末に銀をコーティングする製法は、アトマイズした粉末を製造し、回収後、コーティングを施す装置で処理するため、コストや時間が問題になる。また、コーティング処理を避けるために、銅系粉末の代わりに銀粉末を用いることは、尚更コスト面が問題になる。
課題を解決するための手段
0012
上述のような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、Ag含有率が1〜30質量%のCu−Ag合金からなるアトマイズ合金粉末の最表層に、Cuに対するAgの質量比X=(M Ag/MCu)が1.2以上のAgCu相を10%以上存在させた、優れた伝導率をもつAgCu系導電フィラー粉末の生成を可能にした。
0013
そこで、本発明の課題を解決するための手段としては、請求項1の手段では、Ag含有率が1〜30質量%のCu−Ag合金からなるアトマイズ合金粉末であって、該アトマイズ合金粉末はアトマイズままで、Cuに対するAgの質量比X=(M Ag/MCu)が1.2以上のAgCu相をアトマイズ粉末最表層に有することを特徴とするAgCu系導電フィラー粉末である。粉末最表層とは、粉末最表面から内部に20nmまでの層をいう。
0014
請求項2の手段では、前記アトマイズ合金粉末は、比Xが1.2以上のAgCu相が粉末最表層の10%以上に存在することを特徴とする請求項1に記載のAgCu系導電フィラー粉末である。
発明の効果
0016
AgとCuは微細共晶組織の形成に有効であり、Agが多く、かつCuが少ないAgCu相が粉末表層を占めることで、純Cuよりも接触抵抗を減少させ、電気伝導度を高める。特に最表層のAgCu相のCuに対するAgの質量比Xが1.2以上の場合に、純Agとほぼ遜色ない優れた電気伝導度を得ることができる。これは、比Xが1.2以上の場合、酸化物を形成し難くなり、また酸化物を形成する場合でも、比抵抗の高いCu系の酸化物形成を抑制し、比抵抗の低いAg系の酸化物が形成されるためである。
0017
また、Cuに対するAgの質量比Xが1.2以上のAgCu相が粉末表層の面積比率が10%以上を占めることで、Agが少なく、かつCuが多いCuAg相である粉末内層に存在するCuが大気に露出することを極力防止することができる。その結果、Ag同士の金属接合が良好に行われ、接合の信頼性を確保できる。
0018
以上述べたように、本発明は純Agと遜色ない電気伝導度をもち、かつアトマイズままの合金粉末で、Agコーティングが不要なAgCu系導電フィラー粉末を提供できる極めて優れた効果を奏するものである。
図面の簡単な説明
0020
以下に、本発明について詳細に説明する。
導電フィラー粉末の電気伝導度は電子の移動量で決まってくる。電子を多量に移動、かつ移動を阻害するようなものの存在がない状態が求められる。そこで、導電フィラー材料に純Au、純Ag、純Cuを使用すれば良いのだが、純Auと純Agはコスト面に、純Cuは酸化のされ易さに問題がある。そこで、電子をより多く移動できる合金の研究を進めたところ、それら合金の中でもCu系合金表面にAgを存在させた合金が有望であることがわかった。そこで、Agを採用するものとする。
0021
本発明の特徴は、Cuに対するAgの質量比を1.2以上に制御したAgCu相を粉末最表層に存在させることである。
0023
上記のAgとCuの共晶組織に加えて、Agの比率を制御することで、さらにAgCu系導電フィラー粉末の改善が見込まれる。Ag含有率が少なすぎると、粉末表層にAgが多く、かつCuが少ないAgCu相が現れにくくなる。また、Ag含有率が多すぎると、粉末表層にAgが多く含まれるAgCu相が現れ易くなるが、コスト面で問題がある。このことより、粉末全体のAg含有率は1〜30質量%とする。
0024
AgとCuの共晶組織の制御については、上記に定めた成分の制御に加えて、原料金属を溶解した後の凝固時の冷却速度の制御によって可能である。製造方法としては、ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法、水アトマイズ法等があるが、この限りではない。
0025
ガスアトマイズ法は、溶融金属を出湯する際に噴霧ガスの圧力を調整することで、溶融金属の凝固速度を変化させることができる。例えば、噴霧ガスの圧力を下げることや他の製造条件最適化を図ることで、溶融金属の凝固する冷却速度が遅くなり、AgCu粉末の表層にAgが多くCuが少ないAgCu相が偏析しやすくなる。
0026
ディスクアトマイズ法は、溶融金属を出湯する際に噴霧ガスを用いないので、ガスアトマイズ法と比較すると冷却速度を遅く制御できる。これより、他の製造条件の最適化と合わせて、AgCu粉末の表層にAgが多くCuが少ないAgCu相が偏析しやすくなる。
0027
Agの比率を制御して作製したAgCu系導電フィラー粉末を用いることにより、アトマイズままの合金粉末で、Agコーティングが不要であり、かつ純Agと遜色ない優れた電気伝導度を示す粉末が得られる。
0028
CuとAgの他に、低融点を示す金属やCu、Agと液相分離するZn、In、Ga、Sn、Bi、Pb等を添加してもよい。
0029
以下、本発明について、実施例により具体的に説明する。
表1に示す組成のAgCu系導電フィラー粉末を、ガスアトマイズ法およびディスクアトマイズ法により作製した。
0030
ガスアトマイズ法については、所定組成の原料を、底部に細孔を設けた石英坩堝内に入れ、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解炉により加熱溶融した後、Arガス雰囲気中で、ガス噴射により出湯させて、急冷凝固することで、ガスアトマイズ微粉末を得た。
0031
ガス噴射圧を調整することで、急冷凝固する速度を変化させることができる。ガス噴射圧を下げると、ガスによる溶融金属の冷却が小さくなるので、急冷凝固する速度は遅くなる。対して、ガス噴射圧を上げると、ガスによる溶融金属の冷却が大きくなるので、急冷凝固する速度は早くなる。
0032
ディスクアトマイズ法については、所定組成の原料を、底部に細孔を設けた石英坩堝内に入れ、Arガス雰囲気中で高周波誘導溶解炉により加熱溶融した後、Arガス雰囲気中で、40000〜60000r.p.m.の回転ディスク上に出湯させて、急冷凝固させることでディスクアトマイズ微粉末を得た。
0033
ガスアトマイズ法、ディスクアトマイズ法などで作製したアトマイズ合金粉末を評価するために、東陽テクニカ製の粉体インピーダンス測定用4端子サンプルホルダーを用いて、アトマイズ合金粉末の電気伝導度を測定した。
0034
電気伝導度測定に用いるアトマイズ合金粉末は、篩を用いて45μm以下の粒度に揃えた後、直径25mm、高さ10mmの円柱状のサンプルホルダーに充填させた後、高さ方向上下から4ニュートンメートルの荷重をかけた。
0036
0037
0038
表1は、本発明における実施例1〜12を、表2は比較例1〜24を表す。これらの特性として、フィラー材に対するAgが1質量%以上で30質量%以下、比Xが1.2以上で、フィラー材であるAgCu相の存在率Yが10%以上、さらに、Agと同程度の電気伝導度4000AV-1m-1を示すものを評価Aとする。評価Bは電気伝導度が3500AV-1m-1以上であり、評価Cは電気伝導度が3500AV-1m-1以下で、評価Dはフィラー材に対するAgが1質量%未満もしくは30質量%超、比Xが1.2未満、フィラー材であるAgCu相の存在率Yが10%未満のどれかに該当している。なお、表1、表2では、電気伝導度を単に伝導度として記載している。また、表2において、比Xにおける下線は比Xの値が1.2未満を示す。フィラー材の組織におけるAgの値の下線は、1質量%未満または30質量%超を示す。
0040
例えば、実施例12は、フィラー材に対するAgが30質量%であり、比Xが1.2以上、存在率Yが10%以上の条件を満たしている。このような本発明の条件を満たし、かつ電気伝導度が4140S/mである本発明は、一番良い特性を示した。
0041
比較例1〜24はAg含有率が1質量%未満、あるいは30質量%よりも大きいため、また、比Xが1.2未満であるため本条件を満たさない。
0042
例えば、比較例4では、Ag含有率が20%、存在率Yが14%を満たしているが、比Xが1.2以上を満たしておらず、電気伝導度が2210AV-1m-1と良い特性を示していない。
0043
比較例20では、比Xが2.2%、存在率Yが22%、電気伝導度4070AV-1m-1と良い特性を示しているが、フィラー材に対するAgが90質量%であるため、Agの含有率1〜30質量%の条件を満たしていない。
実施例
0045
以上のように、本発明では、図2に示すように、Cuに対するAgの質量比Xが1.2以上のAgCu相3を、図1に示すアトマイズ合金粉末1の粉末最表層2に存在させるように制御することで、純Agと遜色ない電気伝導度を有し、かつアトマイズままの合金粉末で、Agコーティングが不要なAgCu系導電フィラー粉末の提供が可能となる。
0046
1アトマイズ合金粉末
2粉末最表層(20nm)
3 Cuに対するAgの質量比Xが1.2以上のAgCu相
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