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図面 (9)

課題

トランスフェリンファミリータンパク質を簡便、シンプルに、かつ高感度、正確に検出する、安価な装置および方法を提供すること。

解決手段

紙基材;紙基材上に形成された疎水性バリアにより規定される感知領域;感知領域に固定化された少なくとも1種のランタノイドイオンを含む、トランスフェリンファミリータンパク質検出装置。トランスフェリンファミリータンパク質を含む試料の感知領域との接触;感知領域中に生成した信号の検出を含む、トランスフェリンファミリータンパク質の検出方法

概要

背景

生体液臨床診断に有用な情報が豊富である。例えば、血液は最も一般的な試料であり、グルコースコレステロール酵素電解質など様々なバイオマーカーが含まれる。一方でヒト涙液は、眼病に関連する眼の様々な機能的あるいは組織学的異常を反映する[1]、見過ごされがちであるが容易に採取可能なバイオマーカーである。涙液膜は眼の外側から順に、油層水溶性タンパク質を含む液層ムチン層の三つから構成される。したがってヒト涙液は、水分、タンパク質、酵素、電解質、脂質など様々な物質の混合物である。その中でも、涙液のプロテオミクスは、近年研究が盛んな分野である[2, 3]。涙液タンパク質は眼表面の保護や涙液成分の調節において重要な役割を担うため、涙液タンパク質の分泌異常はドライアイ[4]、円錐角膜[5]、シェーグレン症候群[6]などの眼病の原因となりうる。現在のところ、涙液タンパク質は500種類以上知られている[7]。それらの中には、疾患において濃度が上昇ないし低下するものがある[8]。特に、涙液に比較的高濃度で存在する糖タンパク質であるラクトフェリンの減少は角膜上皮の深い関連があり[9]、ラクトフェリンの涙液濃度を知ることは、シェーグレン症候群や他の生理的障害診断に寄与する。シェーグレン症候群は、眼や口腔の乾燥など症状を呈する、深刻な慢性自己免疫疾患である。シェーグレン症候群の初期診断は、現在のところ自覚症状や他覚所見フルオレセインローズベンガルによる生体染色シルマー試験紙による涙液量の測定によって行われている。疑わしい所見の場合、より侵襲的な口唇腺涙腺生体組織検査唾液腺造影検査が必要となる。シルマー試験紙は、非侵襲性簡便性、迅速性から長くにわたり広く利用されてきたが、臨床的状況を確実に反映するものではなく、「大まかな検査」と見なされることも少なくない[8]。したがって、ラクトフェリンの涙液濃度測定は、より信頼性の高い眼病検査のための新たなアプローチとして期待される。

ラクトフェリンを定量する従来法としては、ELISA法(enzyme linked immunosorbent assay)[10]、放射状免疫拡散法(Lactoplate)[11]、固相免疫比色測定法(Lactocard)[12]、2D-nanoLC-nanoESI-MS/MS[4]やSELDI-TOF-MS[13]と組み合わせたiTRAQ(isobaric tag for relative and absolute quantitation)技術が挙げられる。しかしこれら全ての方法には、多くの体積サンプルが必要であること、所要時間が長いこと、装置やランニングコストが高いこと、多段階の操作が必要であることなど、何らかの欠点が存在する。これらの問題に対処すべく、KarnsとHerrはマイクロガラスチップ上における電気泳動を利用した均一系イムノアッセイを開発し、5秒以内に1 μL以下の涙液に含まれるラクトフェリン濃度を測定することに成功した[2]。しかしながら、ラクトフェリンを認識するために必要なモノクローナル抗体が使用されることによる高価なデバイス作製コスト、シグナル検出に高度な機器蛍光顕微鏡冷却CCDカメラなど)が必要であることは、解決されるべき問題である。

上に述べた問題の解決方法としては、紙装置の使用が挙げられる。紙装置、その中でも特にマイクロ流体ペーパー分析デバイス(microfluidic paper-based analytical devices, μPADs)は、2007年にWhitesidesらによって開発されて以来[14]、有用な分析プラットフォームとして非常に注目を集めてきた。μPADsは分析装置として、(1)材料コストが安い、(2)軽量、(3)焼却により安全に廃棄できる、(4)必要な試料体積が小さい、(5)外部電源が不要、などの特長を有する。紙本来の特性から、μPADsは安価な原料から作ることができ軽量であるため、手に入りやすく、持ち運びが容易である。また紙をベースとすることにより、簡単かつ安全な廃棄が可能となる。使用後のμPADsを焼却することで有害物質病原体アレルゲンなど)を処分できるため、臨床検査において体液などの生体サンプルによって汚染された、プラスチックマイクロプレートマイクロチップと比べてより衛生的に廃棄ができる。少ない体積の試料が分析できることは、μPADsのさらなる利点である。μPADsは、比較的少量しか採取できない試料、例えば涙液、唾液新生児の尿、針を刺した指先から出る一滴の血液でも分析することができる[15]。最後に、紙のセルロース繊維ネットワーク由来する微孔構造により、試料は毛細管力で流れるため、ポンプなどの外部電源が不要となる。総括すると、μPADsは扱いやすく、使用が簡便で、特に量が限られた試料(例:体液)に適した分析装置であり、これまでに様々な応用(例:血液検査食品安全評価浮遊金属分析)が報告されてきた[16-18]。2008年に我々の研究グループは、インクジェットプリント技術を用いて生化学分析のためのμPADを開発した(特許文献1)[19](非特許文献1)。現在のところ、インクジェットプリント技術は、μPADsを一通り作製できる唯一標準的技術である[20](非特許文献2)。

概要

トランスフェリンファミリータンパク質を簡便、シンプルに、かつ高感度、正確に検出する、安価な装置および方法を提供すること。紙基材;紙基材上に形成された疎水性バリアにより規定される感知領域;感知領域に固定化された少なくとも1種のランタノイドイオンを含む、トランスフェリンファミリータンパク質検出装置。トランスフェリンファミリータンパク質を含む試料の感知領域との接触;感知領域中に生成した信号の検出を含む、トランスフェリンファミリータンパク質の検出方法。 1

目的

本発明の目的は、トランスフェリンファミリータンパク質を簡便、シンプルに、かつ高感度、高精度に検出できる、安価な装置および方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

紙基材;該紙基材上に形成された疎水性バリアにより規定される感知領域;及び該感知領域上に固定化された少なくとも1種のランタノイドイオンを含む、トランスフェリンファミリータンパク質検出装置

請求項2

前記疎水性バリアにより規定される、サンプリング領域マイクロ流路とをさらに含み、前記感知領域と前記サンプリング領域が前記マイクロ流路により連結されている、請求項1記載の装置。

請求項3

前記疎水性バリアは、紫外線硬化疎水性インクインクジェット印刷により形成される請求項1又は2記載の装置。

請求項4

前記ランタノイドイオンが、La(III)、Eu(III)、Tb(III)及びYb(III)から成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。

請求項5

前記ランタノイドイオンがTb(III)である請求項4記載の装置。

請求項6

前記紙基材上に固定化された、少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸水素塩をさらに含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。

請求項7

前記アルカリ土類金属炭酸水素塩が、LiHCO3, NaHCO3及びKHCO3から成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の装置。

請求項8

前記トランスフェリンファミリータンパク質を含む試料と、請求項1〜7のいずれか1項に記載の前記装置の前記感知領域とを接触させ;そして、該感知領域中に生成した信号を検出することを含む、トランスフェリンファミリータンパク質の検出方法

請求項9

前記装置が、前記疎水性バリアにより規定される、サンプリング領域とマイクロ流路とをさらに含み、前記感知領域と前記サンプリング領域が前記マイクロ流路により連結されており、前記試料は前記サンプリング領域に適用される、請求項8記載の方法。

請求項10

前記信号が蛍光である請求項8又は9記載の方法。

請求項11

前記トランスフェリンファミリータンパク質が、血清トランスフェリンオボトランスフェリンラクトフェリン及びメラノトランスフェリンから成る群より選ばれる請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。

請求項12

前記トランスフェリンファミリータンパク質が、ラクトフェリンである請求項11記載の方法。

請求項13

前記試料が体液である請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。

請求項14

前記体液が、全血血漿血清、尿、唾液初乳及び涙液から成る群より選ばれる請求項13記載の方法。

請求項15

請求項6記載の前記装置を用い、前記試料の適用後に前記少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸水素塩が前記少なくとも1種のランタノイドイオンと接触する請求項8記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、トランスフェリンファミリータンパク質検出の装置および方法に関する。より具体的には、本発明は認識物質およびその他の検査物質紙基材に配置あるいは固定化された、トランスフェリンファミリータンパク質の検出装置に関する。

背景技術

0002

生体液臨床診断に有用な情報が豊富である。例えば、血液は最も一般的な試料であり、グルコースコレステロール酵素電解質など様々なバイオマーカーが含まれる。一方でヒト涙液は、眼病に関連する眼の様々な機能的あるいは組織学的異常を反映する[1]、見過ごされがちであるが容易に採取可能なバイオマーカーである。涙液膜は眼の外側から順に、油層水溶性タンパク質を含む液層ムチン層の三つから構成される。したがってヒト涙液は、水分、タンパク質、酵素、電解質、脂質など様々な物質の混合物である。その中でも、涙液のプロテオミクスは、近年研究が盛んな分野である[2, 3]。涙液タンパク質は眼表面の保護や涙液成分の調節において重要な役割を担うため、涙液タンパク質の分泌異常はドライアイ[4]、円錐角膜[5]、シェーグレン症候群[6]などの眼病の原因となりうる。現在のところ、涙液タンパク質は500種類以上知られている[7]。それらの中には、疾患において濃度が上昇ないし低下するものがある[8]。特に、涙液に比較的高濃度で存在する糖タンパク質であるラクトフェリンの減少は角膜上皮の深い関連があり[9]、ラクトフェリンの涙液濃度を知ることは、シェーグレン症候群や他の生理的障害診断に寄与する。シェーグレン症候群は、眼や口腔の乾燥など症状を呈する、深刻な慢性自己免疫疾患である。シェーグレン症候群の初期診断は、現在のところ自覚症状や他覚所見フルオレセインローズベンガルによる生体染色シルマー試験紙による涙液量の測定によって行われている。疑わしい所見の場合、より侵襲的な口唇腺涙腺生体組織検査唾液腺造影検査が必要となる。シルマー試験紙は、非侵襲性簡便性、迅速性から長くにわたり広く利用されてきたが、臨床的状況を確実に反映するものではなく、「大まかな検査」と見なされることも少なくない[8]。したがって、ラクトフェリンの涙液濃度測定は、より信頼性の高い眼病検査のための新たなアプローチとして期待される。

0003

ラクトフェリンを定量する従来法としては、ELISA法(enzyme linked immunosorbent assay)[10]、放射状免疫拡散法(Lactoplate)[11]、固相免疫比色測定法(Lactocard)[12]、2D-nanoLC-nanoESI-MS/MS[4]やSELDI-TOF-MS[13]と組み合わせたiTRAQ(isobaric tag for relative and absolute quantitation)技術が挙げられる。しかしこれら全ての方法には、多くの体積サンプルが必要であること、所要時間が長いこと、装置やランニングコストが高いこと、多段階の操作が必要であることなど、何らかの欠点が存在する。これらの問題に対処すべく、KarnsとHerrはマイクロガラスチップ上における電気泳動を利用した均一系イムノアッセイを開発し、5秒以内に1 μL以下の涙液に含まれるラクトフェリン濃度を測定することに成功した[2]。しかしながら、ラクトフェリンを認識するために必要なモノクローナル抗体が使用されることによる高価なデバイス作製コスト、シグナル検出に高度な機器蛍光顕微鏡冷却CCDカメラなど)が必要であることは、解決されるべき問題である。

0004

上に述べた問題の解決方法としては、紙装置の使用が挙げられる。紙装置、その中でも特にマイクロ流体ペーパー分析デバイス(microfluidic paper-based analytical devices, μPADs)は、2007年にWhitesidesらによって開発されて以来[14]、有用な分析プラットフォームとして非常に注目を集めてきた。μPADsは分析装置として、(1)材料コストが安い、(2)軽量、(3)焼却により安全に廃棄できる、(4)必要な試料体積が小さい、(5)外部電源が不要、などの特長を有する。紙本来の特性から、μPADsは安価な原料から作ることができ軽量であるため、手に入りやすく、持ち運びが容易である。また紙をベースとすることにより、簡単かつ安全な廃棄が可能となる。使用後のμPADsを焼却することで有害物質病原体アレルゲンなど)を処分できるため、臨床検査において体液などの生体サンプルによって汚染された、プラスチックマイクロプレートマイクロチップと比べてより衛生的に廃棄ができる。少ない体積の試料が分析できることは、μPADsのさらなる利点である。μPADsは、比較的少量しか採取できない試料、例えば涙液、唾液新生児の尿、針を刺した指先から出る一滴の血液でも分析することができる[15]。最後に、紙のセルロース繊維ネットワーク由来する微孔構造により、試料は毛細管力で流れるため、ポンプなどの外部電源が不要となる。総括すると、μPADsは扱いやすく、使用が簡便で、特に量が限られた試料(例:体液)に適した分析装置であり、これまでに様々な応用(例:血液検査食品安全評価浮遊金属分析)が報告されてきた[16-18]。2008年に我々の研究グループは、インクジェットプリント技術を用いて生化学分析のためのμPADを開発した(特許文献1)[19](非特許文献1)。現在のところ、インクジェットプリント技術は、μPADsを一通り作製できる唯一標準的技術である[20](非特許文献2)。

0005

WO 2012/160857 A1

先行技術

0006

Abe, K.; Suzuki, K.;Citterio, D., Anal. Chem., 2008, 80, 6928-6934
Maejima, K.; Tomikawa S.; Suzuki, K; Citterio, D., RSC Adv., 2013, 3, 9258-9263

発明が解決しようとする課題

0007

本発明の目的は、トランスフェリンファミリータンパク質を簡便、シンプルに、かつ高感度、高精度に検出できる、安価な装置および方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

この発明は次のものを提供する:
1.紙基材;
該紙基材上に形成された疎水性バリアにより規定される感知領域;及び
該感知領域上に固定化された少なくとも1種のランタノイドイオン
を含む、トランスフェリンファミリータンパク質の検出装置。
2. 前記疎水性バリアにより規定される、サンプリング領域マイクロ流路とをさらに含み、前記感知領域と前記サンプリング領域が前記マイクロ流路により連結されている、1記載の装置。
3. 前記疎水性バリアは、紫外線硬化疎水性インクインクジェット印刷により形成される1又は2記載の装置。
4. 前記ランタノイドイオンが、La(III)、Eu(III)、Tb(III)及びYb(III)から成る群より選ばれる少なくとも1種である1〜3のいずれか1項に記載の装置。
5. 前記ランタノイドイオンがTb(III)である4記載の装置。
6. 前記紙基材上に固定化された、少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸水素塩をさらに含む1〜5のいずれか1項に記載の装置。
7. 前記アルカリ土類金属炭酸水素塩が、LiHCO3, NaHCO3及びKHCO3から成る群より選ばれる少なくとも1種である6記載の装置。
8. 前記トランスフェリンファミリータンパク質を含む試料と、1〜7のいずれか1項に記載の前記装置の前記感知領域とを接触させ;そして、該感知領域中に生成した信号を検出することを含む、トランスフェリンファミリータンパク質の検出方法
9. 前記装置が、前記疎水性バリアにより規定される、サンプリング領域とマイクロ流路とをさらに含み、前記感知領域と前記サンプリング領域が前記マイクロ流路により連結されており、前記試料は前記サンプリング領域に適用される、8記載の方法。
10. 前記信号が蛍光である8又は9記載の方法。
11. 前記トランスフェリンファミリータンパク質が、血清トランスフェリンオボトランスフェリン、ラクトフェリン及びメラノトランスフェリンから成る群より選ばれる8〜10のいずれか1項に記載の方法。
12. 前記トランスフェリンファミリータンパク質が、ラクトフェリンである11記載の方法。
13. 前記試料が体液である8〜12のいずれか1項に記載の方法。
14. 前記体液が、全血血漿血清、尿、唾液、初乳及び涙液から成る群より選ばれる13記載の方法。
15. 6記載の前記装置を用い、前記試料の適用後に前記少なくとも1種のアルカリ土類金属炭酸水素塩が前記少なくとも1種のランタノイドイオンと接触する8記載の方法。

発明の効果

0009

本発明により、トランスフェリンファミリータンパク質を簡便、シンプルに、かつ高感度、高精度に検出することが可能となる。

図面の簡単な説明

0010

a)マイクロ流体構造パターニングされた紙基材の概略図;b) 少なくとも一つのサンプリング領域と少なくとも一つの感知領域を含み、それらが互いにマイクロ流路で連結されているマイクロ流体ペーパー分析デバイス(μPAD)の概略図。黒線は説明のためだけに示された疎水性バリアである。
インクジェット印刷による紙装置の作製と試料の適用を示す模式図。
a)トランスフェリンファミリータンパク質検出用μPADの概略と寸法;b) トランスフェリンファミリータンパク質検出用μPADを作製するための具体的な実験条件を表す模式図;c) μPADのマイクロ流体構造を示す写真赤色着色剤溶液を適用することで親水性のマイクロ流体構造を可視化した)。
μPADsの蛍光信号観測するために使用される装置;a) 装置の写真、b) 概略図。
ヒトラクトフェリンを含む100 μM TbCl3溶液(50 mMHEPESバッファー、2.5 mM NaHCO3、pH 7.4)の蛍光発光スペクトル励起波長290 nm。
a) μPADを用いて作成したラクトフェリンの検量線;b) ラクトフェリンを適用後、紫外線波長254 nm)を照射して撮影された感知領域の画像。「Green」の値はRGB表色系における「G」の数値を表す。
μPADsの選択性:a)涙液の主成分それぞれ単独に対する応答;b) ラクトフェリンにいずれか一つの涙液主成分を混合した時の応答(ラクトフェリン以外の全ての成分に関しては、表1に示された中での最高濃度(範囲の上限値)を使用し、ラクトフェリンに関しては、平均値である1.84 mg/mLを使用した)。
μPADを用いて作成したトランスフェリンの検量線。「Green」の値はRGB表色系における「G」の数値を表す。

0011

本発明は、トランスフェリンファミリータンパク質検出の装置および方法に関する。より具体的には、本発明は認識物質およびその他の検査物質が紙基材に配置あるいは固定化された、トランスフェリンファミリータンパク質検出の装置に関する。認識物質およびその他の検査物質は、インクジェット印刷で紙基材に配置されることが、発明の実施として好ましい。特に本発明に関わる認識物質は、ランタノイドイオン(本文では一般にLnイオン略記する)である。好ましくは、ランタノイドイオンはLa(III)、Eu(III)、Tb(III)、Yb(III)を含む群から選ばれ、最も好ましいランタノイドイオンはTb(III)である。なお、ここではLn(III)およびLn3+の表記は同一のものを示すと理解されるべきである。これらのイオンは個々に使用することが可能であり、二つ以上のイオンを組み合わせて使用することも可能である。ランタノイドイオンの紙基材への配置の際は、3価の塩が適当であり、好ましくはハロゲン塩LnX3であり、Xはフッ素塩素臭素ヨウ素のいずれかのハロゲンを示す。インクジェット印刷によるランタノイドイオンの配置の際は、それに相当するハロゲン塩LnX3は、好ましくは添加物、例えばアセチレングリコールないしpHバッファー成分を含む、ないし添加物を含まない水溶液として使用される。好ましくは、ハロゲン塩LnX3のpH緩衝液であり、好ましくはその濃度は0.5 mmol/Lから10 mmol/Lであり、好ましくは濃度10-20%(v/v)のエチレングリコールを添加物として含む。最も好ましくは、15%(v/v)のエチレングリコールを含む1 mmol/LのTbCl3のpH緩衝液である。特に本発明に関わるその他の検査物質は、LiHCO3、NaHCO3、KHCO3を含むアルカリ土類金属炭酸水素塩である。前記アルカリ土類金属炭酸水素塩としては、NaHCO3が最も好ましい。アルカリ土類金属炭酸水素塩は、ランタノイドイオンとトランスフェリンファミリータンパク質の錯体、例えばTb(III)とラクトフェリンの錯体、の形成を促進する機能を持つ物質として働く。これらのアルカリ土類金属炭酸水素は個々に使用することが可能であり、また二つ以上のイオンを組み合わせて使用することも可能である。アルカリ土類金属炭酸水素の固定化の際には、ランタノイドイオンとともに固定化することが可能であり、また検出過程において前記アルカリ土類金属炭酸水素が少なくとも一つの前記ランタノイドイオンと接触するように、少なくとも一つの前記ランタノイドイオンと異なる領域に固定化することも可能である。したがって、例えば、アルカリ土類金属炭酸水素はサンプリング領域ないし以下に示すマイクロ流路の少なくとも一方に固定化することが可能である。

0012

本発明は、トランスフェリンファミリータンパク質の検出(定量化を含む)を目標とする。トランスフェリンファミリータンパク質は、鉄に結合することが知られている分子から成り、血清トランスフェリン(ないし単にトランスフェリンと称される)、オボトランスフェリン、ラクトフェリン(ラクトフェリンとも称される)、メラノトランスフェリン(MTF)が含まれる。多くのトランスフェリンファミリーメンバーは、およそ340のアミノ酸から成るローブを二つ(NとC)持つ。本発明において特に着目されるのは、トランスフェリンとラクトフェリンであり、ラクトフェリンは本発明において最も重要な目標物質である。

0013

トランスフェリンファミリータンパク質は、様々な生体液に利用される紙装置により検出することができ、その生体液には全血、血漿、血清、尿、唾液、初乳、涙液が含まれる。本発明の紙装置は、具体的には涙液のトランスフェリンファミリータンパク質の検出に役立ち、さらに具体的には涙液のラクトフェリンの検出に役立つ。本発明において特に着目される紙装置の形態は、マイクロ流体構造がパターニングされた紙装置、先に既に述べたいわゆるマイクロ流体ペーパー分析デバイス(microfluidic paper-based analytical devices、μPADsと略される)である。一般にマイクロ流体構造のパターンは、紙基材を厚さ方向に貫いて形成される疎水性バリアによって得られる。これらのバリアは、マイクロ流体構造のパターンの輪郭を形成する。疎水性バリアは、水性系液体に対して不浸透性を示す。紙基材において規定された親水性領域は、サンプリング領域、感知領域、マイクロ流路などとして機能する。マイクロ流体構造がパターニングされた紙装置を得る方法の一つは、インクジェット印刷による紫外線硬化疎水性インクの印刷であり、例えばここに明示的に引用を示した、我々のグループにより以前に報告された方法[20, 21](特許文献1)である。典型的なμPAD(Fig. 1)は、少なくとも一つのサンプリング領域と少なくとも一つの感知領域を含み、それらは互いにマイクロ流路によって連結される。マイクロ流路の幅は、一般的には0.1から2 mmの間であり、好ましくは0.5から1.5 mm、最も好ましくは1 mmである。しかしながら、本発明における他の実施においては、サンプリング領域と感知領域は同一でも良い。後者の形式の紙装置においては、マイクロ流路は不要である。この場合、試料を適用する領域(サンプリング領域)と信号を生成する領域(感知領域)は同一である。μPADの設計および寸法としては、図1に示すように試料適用と検出のための二つの正方形領域が、真っ直ぐなマイクロ流路で連結されたものが好ましい。

0014

トランスフェリンファミリータンパク質、好ましくはラクトフェリンないしトランスフェリン、さらに好ましくはラクトフェリン、を含む少量の生体液(一般的には0.5から50 μL、好ましくは1から10 μL、さらに好ましくは1から5 μL、最も好ましくは2から4 μL)をサンプリング領域に適用することにより、物理的に観測可能な信号が感知領域に生成される。サンプリング領域と感知領域が互いにマイクロ流路によって連結されたμPADにおいては、サンプリング領域に適用された試料は、サンプリング領域から感知領域へ流れる。試料は紙の微孔構造に起因する毛細管力によって流れる。物理的に観測可能な信号には、色変化(紙装置表面吸光度反射の変化)や、蛍光発光強度の変化が含まれる。

0015

実施の一つにおいては、本発明は生体液(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、涙液など)に含まれるトランスフェリンファミリータンパク質(例えば、ラクトフェリン、トランスフェリンなど)の、蛍光発光強度を用いた紙装置による検出に関するものであり、紙装置には認識物質やその他の検査物質がインクジェット印刷により配置されている。係るデバイスの一般的な作製方法を図2に示す。好ましい実施においては、本発明は蛍光発光強度を検出に用い、インクジェット印刷により作製された紙装置による、ヒト涙液に含まれるラクトフェリンの検出に関する。最も好ましい実施においては、本発明は蛍光発光強度を検出に用い、インクジェット印刷により作製されたマイクロ流体ペーパー分析デバイス(μPAD)による、ヒト涙液に含まれるラクトフェリンの検出に関する。この場合、インクジェット印刷はマイクロ流体構造のパターニングおよび検査物質、認識物質の配置の双方に使用される。紙装置において物理的に観測可能な信号として好ましいのは、蛍光発光強度である。この蛍光発光は、認識物質(例えば、Tb3+などのランタノイドイオン)と生体液に存在するトランスフェリンファミリータンパク質によって形成された錯体から生ずる。好ましい実施においては、蛍光発光は紙装置に認識物質として配置されたTb(III)と涙液に存在するトランスフェリンファミリータンパク質であるラクトフェリンによって形成された錯体から生ずる。

0016

本発明における装置は紙を用いて作られる。本発明における紙基材として好ましいのは、セルロース繊維から作られる濾紙である。タンパク質(ラクトフェリンやトランスフェリンなどの、トランスフェリンファミリーメンバーを含む)の中には、ランタノイドイオン(ランタンテルビウムユウロピウムイッテルビウムなど)の存在下において蛍光を発するものがあることが報告されている。ラクトフェリン—テルビウム錯体はpHに依存した蛍光を放つこと、また生理的pH(7.4)においては安定した緑色蛍光を放つことが知られている[22]。μPADの感知領域にインクジェットプリントされたテルビウム塩(例えば、TbCl3)の溶液は、μPADのサンプリング領域に適用された試料に含まれるラクトフェリンの濃度に依存した強度の蛍光を放つ。μPADを外部光源により励起し、μPADの放つ蛍光の強度を、例えばデジタル色明度(例としてはR、G、B値)などの形式で観測することで、試料に含まれるラクトフェリンの濃度を定量することができる。本方法により、ラクトフェリンを比色分析によって(簡便)、抗体を使用することなく(安価)、20分以内に(迅速)分析することができる。達成された検出限界は、ラクトフェリンを定量するための従来の分析法ほど低濃度ではないが、涙液、特にヒト涙液に含まれるヒトラクトフェリンの異常濃度を検出するには充分低い濃度である。

0017

■具体的な実験条件に関する説明
材料。
塩化テルビウム六水和物(TbCl3・6H2O)およびヒトラクトフェリンはシグマアルドリッチセントルイス、ミズーリ州)より購入した。1, 10-デカンジオールジアクリレートは東京化成工業(東京、日本)より購入した。N-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)は同仁化学研究所(熊本、日本)より購入した。水酸化ナトリウムおよびポリビニルアルコールは関東化学(東京、日本)より購入した。ヒトラクトフェリンELISAキットメルクサンディエゴ、米国)より購入した。ヒト血清トランスフェリンおよびその他全ての試薬和光純薬工業(大阪、日本)より購入した。全ての溶液は18 MΩのミリQ水使い調製した。

0018

溶液の蛍光スペクトルの観測は、分光光度計(SPEX Fluorolog-NIR, 堀場製作所)を用いて行った。マイクロ流路の印刷は、改造などを施さないEPSON PX-105インクジェットプリンターエプソン、諏訪、日本)を用いて行った。ラクトフェリン検出のための試薬(認識物質およびその他の検査物質)は、10 pLカートリッジDMC-11610)を装着したピエゾ方式マテリアルプリンターであるダイマテクスDMP 2831(ダイマティクス富士フイルムサンタクララ、米国)を用いて行った。ペーパーデバイス、特にμPADの放つ蛍光発光シグナルの記録は、UVハンドランプフナコシ、東京、日本)、520 nmのロングパスフィルター(シグマ光機、東京、日本)を装着したデジタルカメラDMC-FZ50(パナソニック、大阪、日本)を用いて行った。

0019

溶液の蛍光スペクトルの観測。
蛍光スペクトルは、濃度0から1 mg/mLのラクトフェリンの他、100 μMのTbCl3(認識物質)および2.5 mMのNaHCO3(その他の検査物質)を溶解させたHEPES緩衝液(pH 7.4、50 mM)から測定した。ラクトフェリン—テルビウム錯体の形成を促進する炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の代わりに、他の炭酸水素塩、例えば炭酸水素カリウム(KHCO3)を使用することもできる。試料溶液は290 nmのキセノンランプにより励起し、蛍光スペクトルは440から720 nmの範囲で観測し、この際、励起光遮断のために420 nmのロングパスフィルター(シグマ光機、東京、日本)を併用した。励起および発光スリット幅は4.5 nmで固定し、シグナルは励起光から90°回転した方向より測定した。

0020

紙装置の作製。
μPADのマイクロ流体構造のパターンは、インクジェットプリンターと紫外線硬化疎水性インクを用い、我々のグループが以前に報告した方法[20, 21]とほぼ同様に印刷した。円形切り抜いたA4コピー用紙に円形のNo. 5Cの濾紙を貼り付け、紫外線硬化疎水性インクを充填したEPSONインクジェットプリンターに給紙した。紙の表面には、パワーポイントマイクロソフト)で描いたマイクロ流体構造のパターンを印刷した。紫外線硬化疎水性インクが紙内部へ必要以上に浸透するのを防ぐため、印刷後に濾紙を10℃の冷却プレートの上に乗せ、紫外線硬化疎水性インクを重合するために紫外線を15分間照射した。紙の裏面には、表面のパターニングされた部分を完全に覆うように紫外線硬化疎水性インクを印刷し、冷却および10分間の紫外線照射を行った。次に、マイクロ流体構造がパターニングされた紙に、ラクトフェリン検出のための物質(認識物質およびその他の検査物質)を印刷した。μPADおよびその作製の模式図を図3に示す。まず、15%(v/v)のエチレングリコールを含む1 mMのTbCl3のHEPES緩衝液(pH 7.4、50 mM)を、感知領域に8回印刷した。続いて、ブロッキング処理のため、μPADsを0.5wt%のポリビニルアルコールのHEPES緩衝液(pH 7.4、50 mM)に5分間浸漬し、37℃にて20分間乾燥させた。最後に、25 mMのNaHCO3のHEPES緩衝液(pH 7.4、50 mM)を、サンプリング領域に12回印刷した。テルビウムおよびNaHCO3の最適な印刷回数実験的に検討され、上述の回数が最適であると判断した(テルビウムは4-12回、NaHCO3は10-15回の範囲でそれぞれ検討を行った)。

0021

溶液におけるラクトフェリンの蛍光検出
本発明では、試料中ラクトフェリン濃度はラクトフェリン—テルビウム錯体の放つ緑色蛍光を用いて定量した。テルビウムと結合したラクトフェリンは、pHに依存した強度の蛍光(λmax = 548 nm)を放つことが報告されている[22]。一定量のラクトフェリンおよびテルビウムを含む溶液の蛍光発光強度は、pH6から7にかけて鋭い増加を示し、およそpH7.2において最大に達する。したがって、一定のpHにおいてラクトフェリン—テルビウム錯体の発する蛍光発光強度を観測することにより試料中ラクトフェリンを定量することができる。

0022

紙装置によるラクトフェリン検出およびデータの定量的解析
ヒトラクトフェリン濃度を定量的に調べるために、2.5 μLの試料をサンプリング領域に適用した。この発明全体を通し、検量操作や検出を行う際、紙装置に適用する試料体積およびpHは、それぞれ2.5 μL、pH7.4が最適であった。完全に乾燥させたのち、μPADを暗室内で二つのUVハンドランプ(λex = 254 nm)の間に置き、520 nmのロングパスフィルターを装着したデジタルカメラを用いて、発せられる緑色蛍光を撮影した。フィルターは、紙基材に反射されたUVハンドランプの励起光を遮断するために用いた。撮影された画像は、解像度240 dpiのJPEG形式にて保存し、感知領域における緑色強度の数値(RGB表色系において0-255)を、画像解析ソフトImage J(国立衛生研究所)により定量した。蛍光発光信号を撮影するための実験装置は図4に示した。

0023

ヒト涙液の分析。
ヒト涙液試料は、使い捨てのポリエチレンピペット(アズワン、大阪、日本)を使い当研究室の5人の健常な提供者から採取し、加圧滅菌器で処理したProtein LoBindチューブエッペンドルフ)内で4℃にて保存し、3日以内に使用した。開発したμPADsによるラクトフェリン濃度分析のため、希釈されていない涙液をサンプリング領域にマイクロピペットで適用した。比較のため、同一の涙液試料に含まれるラクトフェリン濃度をELISAキットによっても定量した。この際、ヒト涙液試料は使用前に、加圧滅菌器で処理したProtein LoBindチューブ内で、ELISAキット付属サンプル希釈用緩衝液を使用して105倍に希釈した。これは、ELISAキットの応答濃度領域が5-50 ng/mLであるのに対し、ヒト涙液に含まれるラクトフェリンの平均的な濃度はおよそ2 mg/mLであることに因る。

0024

紙装置によるトランスフェリン検出
ヒトトランスフェリン濃度を定量的に調べるために、2.5 μLの試料をサンプリング領域に適用した。完全に乾燥させたのち、μPADを暗室内で二つのUVハンドランプ(λex = 254 nm)の間に置き、520 nmのロングパスフィルターを装着したデジタルカメラを用いて、放たれる緑色蛍光を撮影した。フィルターは、紙基材に反射されたUVハンドランプの励起光を遮断するために用いた。撮影された画像は、解像度240 dpiのJPEG形式にて保存し、感知領域における緑色強度の数値(RGB表色系において0-255)を、画像解析ソフトImage J(国立衛生研究所)により定量した。蛍光発光信号を撮影するための実験装置は図4に示した。

0025

■結果と検討
ラクトフェリン濃度に対する蛍光発光強度の依存性
ラクトフェリン—テルビウム錯体の放つ蛍光発光強度のpH依存性は報告されているが[22]、ラクトフェリン濃度に対する依存性はこれまでに検討されていない。したがってまず概念実証のため、濃度0から1 mg/mLのラクトフェリンと2.5 mMのNaHCO3を含む、100 μMのTbCl3溶液の放つ蛍光を調べた。発明全体を通し、試薬をHEPES緩衝液(50 mM)に溶解することでpHを7.4に固定し、ヒト涙液の生理的pHに合わせた。ラクトフェリン—テルビウム錯体の蛍光発光スペクトル(図5)から、強度は試料のラクトフェリン濃度に依存することが明らかになった。図5に示されるテルビウム特有発光スペクトルは549 nmで極大となるため、観測される蛍光発光は緑色を示す。

0026

μPADにおける蛍光応答を確認するため、HEPES緩衝液に溶解した濃度0.1から4 mg/mLのヒトラクトフェリン試料をサンプリング領域に適用した。図6aに検量線を示す。ラクトフェリン濃度と、デジタルカメラで撮影した感知領域における緑色強度の間には良い相関が見られた(図6b)。蛍光発光強度の増加は、目視によっても簡単に確認することができた。注意すべき点は、μPADsは使い捨ての分析装置であることである。このため、検量線の全てのデータ点は別々のμPADを用いて測定された結果である。3つの測定結果における小さなエラーバー標準偏差1s)は、インクジェット印刷により作製された装置が再現性に優れることを示す。

0027

サンプリング領域のHCO3-アニオンは、感知領域で見られるラクトフェリン—テルビウム錯体の放つ蛍光発光強度の増強に重要であることがわかった(データは示されていない)。この結論は、テルビウムがラクトフェリンに結合する際、カルボン酸塩アニオンが重要な役割を果たすという報告[23]と一致する。シグモイド関数フィッティングカーブにおいて、ブランクの標準偏差の3倍(3σ)として算出された検出限界(limit of detection, LOD)である0.30 mg/mLは、健常者の涙液に含まれるラクトフェリン濃度の下限値(0.63 mg/mL)[24]を下回った。したがって、開発したμPADを用いれば、ヒト涙液ラクトフェリン濃度の異常を検出することが可能である。

0028

μPADsを実試料に応用する前に、想定されうるヒト涙液の主成分による妨害について調べた(表1)。μPADsの選択性を評価するため、各涙液成分が表1に示した濃度で、単一で存在する場合と、ラクトフェリンに混合された場合の蛍光応答を調べた。それぞれの結果を図7a、7bに示す。縦軸は感知領域の緑色強度からブランク(ラクトフェリンを含まないHEPES緩衝液)の信号を差し引いた結果を表す。図7aから、ラクトフェリン以外の涙液主成分は有意な蛍光応答を示さないことがわかった。さらに、他の成分が共存しても、感知領域に存在するTb3+に対するラクトフェリンの結合が阻害されないことも示された(図7b)。

0029

最後に、実試料の分析と開発した方法の正確性の評価を行った。開発したμPADsを用いてヒト涙液試料に含まれるラクトフェリン濃度を定量し、ELISA法による結果と比較した。μPADsによる分析では、希釈されていない涙液をサンプリング領域に適用し、ELISA法による分析では、涙液をELISAキット付属のサンプル希釈用緩衝液で105倍に希釈した。表2に示す結果から、μPADsで全てのサンプルを6%以内の誤差率で正確に分析できたことが示された。μPADsによる分析結果の中で、試料5に見られる比較的大きな標準偏差は、ラクトフェリン濃度がμPADsの応答濃度領域の上限付近であることに起因する。試料5をHEPES緩衝液で2倍に希釈した場合の分析結果は1.74 ± 0.11 mg/mLとなり、標準偏差が大きく減少することが確認された。

0030

マイクロ流体構造がパターニングされた同一の紙装置を、ヒトトランスフェリンの分析に適用した。検量線を図8に示す。

0031

結論
紙基材を使用することで、ヒト涙液に含まれるラクトフェリンを定量するための、抗体を必要とせず、安価で、使用が簡便、迅速な検出装置を初めて開発することに成功した。信号を得るまでに数時間におよぶ多くのピペッティング洗浄インキュベーションなどの操作を要するELISA法と異なり、μPADsによる分析で必要となる操作はマイクロピペッターによる試料の適用のみである。試料を適用してから、目視でも確認可能な蛍光信号を撮影するまでにかかる時間は15分以内である。簡便な操作手順や低い材料コストから、開発されたμPADsは、知識や技術のない人材でも涙液ラクトフェリンを定量することができる有用な装置として期待される。

0032

0033

実施例

0034

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