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技術 光電変換材料及びその製造方法と、それを用いた有機薄膜太陽電池

出願人 本田技研工業株式会社
発明者 柴唯啓三浦一浩
出願日 2013年9月4日 (7年3ヶ月経過) 出願番号 2013-183519
公開日 2015年3月16日 (5年9ヶ月経過) 公開番号 2015-050442
状態 特許登録済
技術分野 ポリオキシメチレン、炭素-炭素結合重合体 光起電力装置
主要キーワード ナノグラフェン 模式的縦断面図 エネルギー順位 n型半導体 エネルギー準位差 ロールツーロール法 集積体 グラフェン構造
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図面 (15)

課題

ドナーあるいはアクセプタとして優れた特性を示す光電変換材料を提供する。

解決手段

BHJ(バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池10が具備する光電変換層16は、特定構造式で示すモノマー重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環重合体(光電変換材料)からなる。

概要

背景

ロールツーロール法等のコストが低廉なプロセスによって作製することが容易な太陽電池として、有機材料を用いた有機薄膜太陽電池が着目されている。この種の有機薄膜太陽電池として、バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(以下、「BHJ太陽電池」ともいう)が知られている。

BHJ太陽電池は、電子供与体ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメインと、電子受容体アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメインとが混在し、光を電気に変換する機能を営む光電変換層具備する。具体的には、該光電変換層は正極及び負極に介装されており、正極を介して太陽光が光電変換層に入射し、励起子が発生する。

この励起子は、ドナードメインとアクセプタドメインとの界面に到達すると、電子正孔に分離する。そして、電子は、アクセプタドメイン内を移動し、負極に到達する。一方、正孔は、ドナードメイン内を移動し、正極に到達する。これら正孔及び電子は、負極及び正極に電気的に接続された外部回路付勢する電気エネルギーとなる。

以上のような機能を営む光電変換層における光電変換材料、すなわち、ドナー及びアクセプタの体表的な例としては、特許文献1に示される物質が知られている。具体的には、特許文献1には、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT、図11参照)をドナーとし、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM、図12参照)をアクセプタとする光電変換材料が記載されている。

ここで、P3HT、PCBMの各々の最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、図13に示すようになる。上記のようにして光電変換層に光が入射すると、先ず、ドナーであるP3HTのHOMOからLUMOへ電子が遷移する。すなわち、P3HTのHOMOとLUMOとのエネルギー準位差バンドギャップ(Eg)に対応する。

P3HTのLUMOに遷移した電子は、次に、アクセプタであるPCBMのLUMOに電子移動することで電子と正孔が発生する。すなわち、P3HTとPCBMのLUMO同士のエネルギー準位差によってエネルギー損失が生じる。従って、P3HTのHOMOとPCBMのLUMOとのエネルギー準位差が開放電圧(Voc)に対応する。

ところで、太陽電池では、同一の発電量を得ようとする場合、光電変換効率が大きいものほど面積を小さくすることができる。これにより重量が低減するとともに、設置面積が小さくなるので設置レイアウトの自由度が大きくなるという利点が得られる。これらの理由から、太陽電池の光電変換効率を向上させることが求められている。

BHJ太陽電池等の有機薄膜太陽電池において、光電変換効率を向上させるためには、(a)光の吸収量を高め、励起子の生成を活発化する、(b)長波長近赤外側)の光の吸収を高め、太陽光の利用効率を高める、(c)開放電圧Vocを大きくする等すればよい。そして、これら(a)〜(c)を実現するためには、上述した図13に示す関係からも明らかなように、例えば、ドナーとして、(A)吸光係数が大きく、(B)HOMOとLUMOとのエネルギー準位差(バンドギャップ)が小さく、(C)LUMOのエネルギー準位がアクセプタのLUMOの準位に近い物質を選定することが考えられる。

上記(A)〜(C)を満足する可能性があるドナーとして、特許文献2〜5に記載される炭素縮合環、すなわち、π電子共役化合物想起される。なお、この種の炭素縮合環は、「グラフェン」と呼称されるときもある(特許文献4参照)。

概要

ドナーあるいはアクセプタとして優れた特性を示す光電変換材料を提供する。BHJ(バルクヘテロ接合型有機薄膜)太陽電池10が具備する光電変換層16は、特定構造式で示すモノマー重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環の重合体(光電変換材料)からなる。

目的

本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドナーあるいはアクセプタとして優れた特性を示し、しかも、光電変換層を簡便且つ高精度に得ることが可能な光電変換材料及びその製造方法と、この光電変換材料を含む光電変換層を具備する有機薄膜太陽電池を提供する

効果

実績

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請求項1

電子供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料であって、一般式(1)及び(2)で示すモノマー重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環重合体からなることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(1)中のR1〜R6は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R1〜R6の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基シリル基のいずれかを表す。

請求項2

請求項1記載の光電変換材料において、一般式(2)は、一般式(3)〜(5)の少なくとも1つで示すモノマーであることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R9〜R14の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項3

請求項1又は2記載の光電変換材料において、前記炭素縮合環の重合体は、構成単位主鎖骨格に含まれるπ電子の数が60〜250であることを特徴とする光電変換材料。

請求項4

請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換材料において、前記ポリフェニレンは、一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とすることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項5

請求項4記載の光電変換材料において、一般式(10)で示す化合物は、一般式(12)〜(14)の少なくとも1つで示す化合物であることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項6

請求項4記載の光電変換材料において、一般式(11)で示す化合物は、一般式(15)〜(17)の少なくとも1つで示す化合物であることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R49〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項7

請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換材料において、前記炭素縮合環の重合体は、一般式(18)〜(31)で示すグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とすることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項8

請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換材料において、前記可溶性基が、直鎖アルキル基分岐アルキル基直鎖アルコキシ基分岐アルコキシ基の少なくともいずれか1つであることを特徴とする光電変換材料。

請求項9

請求項8に記載の光電変換材料において、前記可溶性基の炭素数が、3〜20個であることを特徴とする光電変換材料。

請求項10

請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換材料において、前記炭素縮合環の重合体の重合度が、2〜150であることを特徴とする光電変換材料。

請求項11

電子を供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料を製造する方法であって、一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて、ポリフェニレンを生成する工程と、前記ポリフェニレンを反応させて、光電変換材料である炭素縮合環の重合体を生成する工程と、を有することを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(1)中のR1〜R6は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R1〜R6の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。

請求項12

請求項11記載の光電変換材料の製造方法において、一般式(2)で示すモノマーを、一般式(3)〜(5)の少なくともいずれか1つとすることを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R9〜R14の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項13

請求項11又は12記載の光電変換材料の製造方法において、前記炭素縮合環の重合体の構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数を、60〜250とすることを特徴とする光電変換材料の製造方法。

請求項14

請求項11〜13のいずれか1項に記載の光電変換材料の製造方法において、前記ポリフェニレンの構成単位を、一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つとすることを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項15

請求項14記載の光電変換材料の製造方法において、一般式(10)で示す化合物は、一般式(12)〜(14)の少なくとも1つで示す化合物であることを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項16

請求項14記載の光電変換材料の製造方法において、一般式(11)で示す化合物は、一般式(15)〜(17)の少なくとも1つで示す化合物であることを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R49〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項17

請求項11〜16のいずれか1項に記載の光電変換材料の製造方法において、前記炭素縮合環の重合体の構成単位を、一般式(18)〜(31)で示すグラフェンの少なくともいずれか1つとすることを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

請求項18

請求項11〜17のいずれか1項に記載の光電変換材料の製造方法において、前記可溶性基を、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基の少なくともいずれか1つとすることを特徴とする光電変換材料の製造方法。

請求項19

請求項18記載の光電変換材料の製造方法において、前記可溶性基の炭素数を、3〜20個とすることを特徴とする光電変換材料の製造方法。

請求項20

請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池であって、前記光電変換材料を電子供与体として含む光電変換層具備することを特徴とする有機薄膜太陽電池。

請求項21

請求項20記載の有機薄膜太陽電池において、前記電子供与体と、該電子供与体から供与された電子を受容する電子受容体とが混在する光電変換層を具備するバルへテロ接合構造をなすことを特徴とする有機薄膜太陽電池。

技術分野

0001

本発明は、炭素縮合環構成単位とする重合体からなる光電変換材料及びその製造方法と、該光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池に関する。

背景技術

0002

ロールツーロール法等のコストが低廉なプロセスによって作製することが容易な太陽電池として、有機材料を用いた有機薄膜太陽電池が着目されている。この種の有機薄膜太陽電池として、バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(以下、「BHJ太陽電池」ともいう)が知られている。

0003

BHJ太陽電池は、電子供与体ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメインと、電子受容体アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメインとが混在し、光を電気に変換する機能を営む光電変換層具備する。具体的には、該光電変換層は正極及び負極に介装されており、正極を介して太陽光が光電変換層に入射し、励起子が発生する。

0004

この励起子は、ドナードメインとアクセプタドメインとの界面に到達すると、電子正孔に分離する。そして、電子は、アクセプタドメイン内を移動し、負極に到達する。一方、正孔は、ドナードメイン内を移動し、正極に到達する。これら正孔及び電子は、負極及び正極に電気的に接続された外部回路付勢する電気エネルギーとなる。

0005

以上のような機能を営む光電変換層における光電変換材料、すなわち、ドナー及びアクセプタの体表的な例としては、特許文献1に示される物質が知られている。具体的には、特許文献1には、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT図11参照)をドナーとし、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM、図12参照)をアクセプタとする光電変換材料が記載されている。

0006

ここで、P3HT、PCBMの各々の最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、図13に示すようになる。上記のようにして光電変換層に光が入射すると、先ず、ドナーであるP3HTのHOMOからLUMOへ電子が遷移する。すなわち、P3HTのHOMOとLUMOとのエネルギー準位差バンドギャップ(Eg)に対応する。

0007

P3HTのLUMOに遷移した電子は、次に、アクセプタであるPCBMのLUMOに電子移動することで電子と正孔が発生する。すなわち、P3HTとPCBMのLUMO同士のエネルギー準位差によってエネルギー損失が生じる。従って、P3HTのHOMOとPCBMのLUMOとのエネルギー準位差が開放電圧(Voc)に対応する。

0008

ところで、太陽電池では、同一の発電量を得ようとする場合、光電変換効率が大きいものほど面積を小さくすることができる。これにより重量が低減するとともに、設置面積が小さくなるので設置レイアウトの自由度が大きくなるという利点が得られる。これらの理由から、太陽電池の光電変換効率を向上させることが求められている。

0009

BHJ太陽電池等の有機薄膜太陽電池において、光電変換効率を向上させるためには、(a)光の吸収量を高め、励起子の生成を活発化する、(b)長波長近赤外側)の光の吸収を高め、太陽光の利用効率を高める、(c)開放電圧Vocを大きくする等すればよい。そして、これら(a)〜(c)を実現するためには、上述した図13に示す関係からも明らかなように、例えば、ドナーとして、(A)吸光係数が大きく、(B)HOMOとLUMOとのエネルギー準位差(バンドギャップ)が小さく、(C)LUMOのエネルギー準位がアクセプタのLUMOの準位に近い物質を選定することが考えられる。

0010

上記(A)〜(C)を満足する可能性があるドナーとして、特許文献2〜5に記載される炭素縮合環、すなわち、π電子共役化合物想起される。なお、この種の炭素縮合環は、「グラフェン」と呼称されるときもある(特許文献4参照)。

先行技術

0011

特開2007−273939号公報
特許第4005571号公報
特開2010−56492号公報
特開2007−19086号公報
特表2010−508677号公報

発明が解決しようとする課題

0012

特許文献2記載の技術は、ヘキサベンゾコロネン(HBC)に官能基を結合するとともに、この官能基を介して自己集積化させることで、いわゆるナノチューブ状の集積体を得ようとするものである。従って、最終的な半導体を得るための工程数が多く、しかも、得られた集積体がp型(ドナー)であるのか、又はn型(アクセプタ)であるのかが明確ではない。

0013

特許文献3には、HBCの集積体であるナノチューブは、正孔及び電子の伝導経路を同時に有する、との示唆がある。この特許文献3記載の技術は、ナノチューブの内面及び外面をフラーレン被覆するとともに、その被覆率でHBCにおける正孔移動度を制御するものである。このことから諒解されるように、特許文献2、3記載の技術では、HBCそれ自体のドナーとしての特性を向上させることはできない。

0014

また、特許文献4記載の技術は、グラフェン誘導体に対し、フッ素原子を有する官能基を結合させ、これにより、n型半導体を得るものである。すなわち、この技術では、アクセプタが得られるに留まり、ドナーを得ることはできない。

0015

ところで、光電変換材料のアクセプタとして用いることが可能な物質としては、上記のPCBMの他にも、キノイド系やペリレン系等の種々の低分子有機半導体が提案されている。その一例として、図14に示す、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物NTCDA)、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物PTCDA)等が挙げられる。

0016

上記の通り、光電変換材料の光電変換効率を向上させるためには、アクセプタのHOMO及びLUMOのエネルギー準位に応じて、上記(A)〜(C)を満足するようなドナーを選定する必要がある。しかしながら、アクセプタとして用いることが可能な種々の物質のそれぞれに対して、最適なHOMO及びLUMOのエネルギー準位を有するドナーを選定することは容易ではない。すなわち、特許文献2〜5記載の炭素縮合環をドナーとして用いたとしても、上記の種々のアクセプタに対応した最適なエネルギー準位の組み合わせからなる光電変換層を得ることは困難である。その結果、十分な光電変換効率が得られない懸念がある。

0017

さらに、特許文献2〜5のいずれにおいても、低分子有機化合物が開示されるのみである。周知のように、低分子有機化合物は有機溶媒に溶解し難く、光電変換層を得る際にロールツーロール法等を行うことが困難となるという不具合顕在化している。また、BHJ太陽電池において、光電変換層を得る際に有機溶媒に溶解し難い低分子有機化合物を用いると、アクセプタドメインとドナードメインとが良好に混在しない懸念がある。その結果、光電変換層における電子及び正孔の移動が促進されず、光電変換効率を十分に向上させることが困難になる。

0018

本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドナーあるいはアクセプタとして優れた特性を示し、しかも、光電変換層を簡便且つ高精度に得ることが可能な光電変換材料及びその製造方法と、この光電変換材料を含む光電変換層を具備する有機薄膜太陽電池を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0019

前記の目的を達成するために、本発明は、電子を供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料であって、
一般式(1)及び(2)で示すモノマー重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環の重合体からなることを特徴とする。






ただし、一般式(1)中のR1〜R6は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R1〜R6の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基シリル基のいずれかを表す。

0020

一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて得たポリフェニレンをさらに反応させることで、π共役系が拡張された、すなわち、π電子の非局在化の範囲が拡張された炭素縮合環からなる重合体が形成される。以下、この重合体を「ナノグラフェンポリマー」ともいう。なお、ここでの「ポリマー」は、モノマーを繰り返し単位とする低分子及び高分子の総称であり、オリゴマーを含む。

0021

このナノグラフェンポリマーは、上記の通り、主鎖に沿ってπ電子広がりをもつπ共役系であるため、吸光係数が大きく、励起子が活発に生成される。また、HOMOとLUMOとの間のエネルギー準位差であるバンドギャップが小さく、極大吸収波長が長波長側にシフトし、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収される。つまり、太陽光の利用効率を良好に向上させることができる。

0022

以上のような理由から、このナノグラフェンポリマーを光電変換材料とする有機薄膜太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。

0023

また、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は、P3HT等に比して低く(深く)なる。従って、例えば、PCBMをアクセプタとし、ナノグラフェンポリマーをドナーとする場合、P3HTをドナーとする場合に比してエネルギー損失が小さくなる。すなわち、ナノグラフェンポリマーを光電変換層のドナーとする有機薄膜太陽電池では、開放電圧Vocが大きくなる。

0024

また、上記の通り、一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させることによりポリフェニレンが得られる。この際、例えば、重合させるモノマーのモル比や、モノマーの各々の組成及び構造を調整することによって、ポリフェニレンの組成及び構造についても様々に調整することができる。ひいては、ポリフェニレンをさらに反応させて得られるナノグラフェンポリマーの組成及び構造(主鎖骨格に含まれる炭素縮合環の数等)を容易に調整することができる。

0025

基本的には、ナノグラフェンポリマーの主鎖骨格を構成する炭素縮合環に含まれる二重結合個数に2を乗じることで、該主鎖骨格に含まれるπ電子(以下、単にπ電子ともいう)の数が算出される。従って、上記のようにナノグラフェンポリマーの組成及び構造を調整することで、π電子の数を所望の値に調整することが可能になる。

0026

ナノグラフェンポリマーのバンドギャップはπ電子の数に関連して定まるため、上記のようにπ電子の数を調整することで、該バンドギャップを所望の値に調整することが可能になる。さらに、バンドギャップの値の変化に併せてHOMO及びLUMOのエネルギー準位も変化する。従って、結果的には、π電子の数を調整することで、バンドギャップ、HOMO及びLUMOのエネルギー準位を所望の値に調整することが可能になる。

0027

すなわち、種々のアクセプタに対応して、ナノグラフェンポリマーが最適なHOMO及びLUMOのエネルギー準位を有するようにπ電子数を調整することができる。その結果、例えば、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、アクセプタとして用いることができる種々の物質に対して、良好な光電変換効率を示すナノグラフェンポリマーをドナーとして提供することが可能になる。なお、ナノグラフェンポリマーをアクセプタとして用いる場合も同様に、種々のドナーに対応して最適な値となるようにHOMO及びLUMOのエネルギー準位を調整することができる。従って、優れた光電変換効率を示す光電変換層を容易に得ることが可能になる。

0028

上記の一般式(2)で示すモノマーとしては、一般式(3)〜(5)の少なくともいずれか1つであることが好ましい。









ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R9〜R14の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0029

この場合、最終的に得られるナノグラフェンポリマーについて、その主鎖骨格を形成するグラフェン構造部分、すなわち、互いに縮合している炭素環の数を効果的に増大させることができる。その結果、π共役系を一層良好に拡張することができ、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを得ることができる。このようなナノグラフェンポリマーを光電変換材料とすることで、有機薄膜太陽電池の光電変換効率をより良好に向上させることが可能になる。

0030

また、一般式(1)、(2)で示すモノマーが、R1〜R6、R9〜R14の少なくともいずれか一つに、側鎖として上記の可溶性基を備えることが好ましい。この場合、モノマーを重合させて得られるポリフェニレンにも上記の可溶性基が導入されることとなる。上記の側鎖は、ナノグラフェンポリマーを形成するべくポリフェニレンを反応させる際、複数のポリフェニレンの構成単位同士が接近することを抑制する立体障害となる。これによって、複数のポリフェニレンの構成単位同士の炭素環が架橋することを抑制しつつ、各構成単位内の反応(炭素縮合環の形成)を十分に進行させることができる。その結果、主鎖骨格の全体にわたってπ電子雲が十分に広がったナノグラフェンポリマーを容易に得ることができる。

0031

また、このナノグラフェンポリマーは、可溶性基が導入された状態で得られるため、有機溶媒に対するナノグラフェンポリマーの溶解度を高めることができる。これによって、上記の通り太陽光の利用効率を向上させるべく、炭素縮合環の分子量を増大させたナノグラフェンポリマーであっても、有機溶媒に容易に溶解することができる。従って、スピンコート法やロールツーロール法等を用いて光電変換層を簡便且つ高精度に形成することができる。

0032

上記のナノグラフェンポリマーの構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数は、60〜250であることが好ましい。上記の通り、π電子の数を調整し、π共役系の範囲を調整することによって、バンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。従って、π電子の数を60以上とすることで、π共役系を十分に拡張して、光電変換効率に優れたナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0033

また、π電子の数を増大させることは、炭素縮合環の分子量を増大させることになるため、π電子の数を250以下とすることで、有機溶媒等に対して容易に溶解するナノグラフェンポリマーを得ることができる。つまり、ナノグラフェンポリマーのπ電子の数を上記の範囲内とすることで、光電変換効率に優れた光電変換層を、簡便且つ高精度に形成することが可能になる。

0034

上記のポリフェニレンの好適な例としては、下記の一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。


















ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0035

なお、一般式(10)で示す化合物は、種々の異性体を含み、その一例として、一般式(12)〜(14)で示す化合物が挙げられる。









ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0036

同様に、一般式(11)で示す化合物は、種々の異性体を含み、その一例として、一般式(15)〜(17)で示す化合物が挙げられる。









ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R49〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0037

これらのポリフェニレンは、上記の通りモノマーを重合する際のモル比や、該モノマーの組成及び構造等を調整することによって容易に作成することが可能である。

0038

また、上記ポリフェニレンの反応物として、一般式(18)〜(31)で示すグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマーが挙げられる。










































ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0039

これらのナノグラフェンポリマーでは、主鎖骨格のグラフェン構造部分が効果的に増大され、π共役系が一層良好に拡張されている。すなわち、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がっている。このようなナノグラフェンポリマーを光電変換材料とすることで、有機薄膜太陽電池の光電変換効率をより効果的に向上させることが可能になる。

0040

なお、本発明においては、一般式(18)〜(31)に示されるような構成単位がナノメートルスケールであるグラフェンを「ナノグラフェン」ともいう。

0041

上記のモノマー、ポリフェニレン、ナノグラフェンポリマーは、側鎖の可溶性基として、直鎖アルキル基分岐アルキル基直鎖アルコキシ基分岐アルコキシ基の少なくともいずれか1つを備えることが好ましい。つまり、一般式(1)に示すモノマーのR1〜R6の少なくとも1つが上記の可溶性基であることが好ましい。また、一般式(3)〜(5)に示すモノマーのR9〜R14の少なくとも1つが上記の可溶性基であることが好ましい。

0042

これらのモノマーを重合させて得られるポリフェニレンも上記の可溶性基を有する。すなわち、一般式(6)〜(17)に示す化合物のR15〜R72の少なくとも1つに上記の可溶性基が導入されることになる。また、これらの化合物を構成単位とするポリフェニレンを反応させて得られるナノグラフェンポリマーも上記の可溶性基を有する。すなわち、一般式(18)〜(31)に示すナノグラフェンのR15〜R72の少なくとも1つに上記の可溶性基が導入されることになる。

0043

なお、側鎖として上記の可溶性基を備えていないモノマーを重合させることで、無置換のポリフェニレンを得た後、該無置換のポリフェニレンに上記の可溶性基を導入することもできる。

0044

ポリフェニレンが側鎖として上記の可溶性基を備える場合、上述した通り、該可溶性基が立体障害となることで、主鎖骨格の全体にわたってπ電子雲が十分に広がったナノグラフェンポリマーを容易に得ることができる。

0045

また、このようにして得られたナノグラフェンポリマーには、上記の可溶性基が側鎖として導入されているため、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解度を一層良好に高めることができる。特に、ナノグラフェンポリマーが側鎖の可溶性基として、アルコキシ基を備える場合、一層好ましくは分岐アルコキシ基を備える場合、上記の溶解度を一層良好に高めることができる。

0046

また、可溶性基が、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基の少なくともいずれか一つである場合、該可溶性基の炭素数は、3〜20であることが好ましい。これによって、光電変換材料として優れた変換効率を示し、且つ良好に有機溶媒に溶解させて容易に成膜可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。

0047

また、ナノグラフェンポリマーの重合度(構成単位の個数)は、2〜150であることが好ましい。重合度を2以上とすることで、吸光係数を十分に高くすることや、バンドギャップを十分に小さくすることができる。一方、150以下とすることで、重合に要する時間を短縮でき、ナノグラフェンポリマーの生産効率を向上させることができる。すなわち、重合度を上記の範囲内に設定することにより、光電変換材料として優れた特性を示すナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。

0048

さらに、本発明は、電子を供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料を製造する方法であって、

0049

一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて、ポリフェニレンを生成する工程と、
前記ポリフェニレンを反応させて、光電変換材料である炭素縮合環の重合体を生成する工程と、
を有することを特徴とする。






ただし、一般式(1)中のR1〜R6は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R1〜R6の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。

0050

このような過程を経ることで、π共役系が十分に拡張され、光電変換材料(ドナーあるいはアクセプタ)として優れた機能するナノグラフェンポリマーを容易且つ高精度に得ることができる。すなわち、このナノグラフェンポリマーを光電変換材料とした有機薄膜太陽電池では、光電変換効率を効果的に向上させることが可能になる。

0051

また、上記のようにして、ポリフェニレンを得る際、一般式(2)で示すモノマーは、一般式(3)〜(5)の少なくとも1つで示すモノマーであることが好ましい。









ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R9〜R14の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0052

このモノマーからポリフェニレンを経て得られたナノグラフェンポリマーでは、その主鎖骨格を形成するグラフェン構造部分を効果的に増大させることができる。すなわち、π共役系が一層良好に拡張され、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0053

上記のナノグラフェンポリマーを得る際、該ナノグラフェンポリマーの構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数を60〜250とすることが好ましい。このπ電子の数は、例えば、重合させるモノマーのモル比や、組成及び構造等を調整することによって調整することができる。π電子の数を60以上とすることで、π共役系を十分に拡張して、光電変換材料として優れた吸光係数、バンドギャップ、極大吸収波長を有するナノグラフェンポリマーを得ることができる。また、π電子の数を250以下とすることで、有機溶媒等に対しても容易に溶解する分子量のナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0054

上記のモノマーを重合させることで、下記の一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とするポリフェニレンを得ることが好ましい。


















ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0055

なお、一般式(10)で示す化合物の一例としては、一般式(12)〜(14)で示す化合物が挙げられる。つまり、一般式(12)〜(14)で示す化合物は互いに異性体の関係にある。









ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0056

また、一般式(11)で示す化合物の一例としては、一般式(15)〜(17)で示す化合物が挙げられる。つまり、一般式(15)〜(17)で示す化合物は互いに異性体の関係にある。









ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R49〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0057

そして、上記のポリフェニレンを反応させることで、一般式(18)〜(31)で示すグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマーを得ることが好ましい。










































ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0058

このようにして得られたナノグラフェンポリマーでは、主鎖骨格のグラフェン構造部分が効果的に増大され、π共役系が一層良好に拡張されている。すなわち、主鎖骨格全体にわたって十分にπ電子雲が広がっている。従って、ナノグラフェンポリマーを光電変換材料とすることで、有機薄膜太陽電池の光電変換効率をより効果的に向上させることが可能になる。

0059

上記のモノマー、ポリフェニレン、ナノグラフェンポリマーは、側鎖の可溶性基として、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、直鎖アルコキシ基、分岐アルコキシ基の少なくともいずれか1つを備えることが好ましい。また、これらの可溶性基は、炭素数が3〜20であることが一層好ましい。この場合、可溶性基によって、複数のポリフェニレンの構成単位同士の炭素縮合環が架橋することを抑制でき、主鎖骨格の全体にわたってπ電子雲が十分に広がったナノグラフェンポリマーを容易に得ることが可能になる。また、これらの可溶性基が側鎖として導入されることで、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解度を高めることができる。なお、溶解度を高める観点から、特に好ましい可溶性基はアルコキシ基であり、一層好ましくは分岐アルコキシ基である。

0060

また、ナノグラフェンポリマーの重合度が2〜150となるように、ポリフェニレンを反応させることが好ましい。このためには、例えば、重合反応時反応温度や反応時間を、重合度が2〜150となるような条件に設定すればよい。重合度を2以上とすることで、吸光係数を十分に高くすることや、バンドギャップを十分に小さくすることができる。一方、150以下とすることで、重合に要する時間を短縮でき、ナノグラフェンポリマーの生産効率を向上させることができる。

0061

さらに、本発明は、前記光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池であって、該光電変換材料を電子供与体として含む光電変換層を具備することを特徴とする。

0062

この有機薄膜太陽電池では、例えば、PCBMをアクセプタとしたときのドナーとしてナノグラフェンポリマーを用いることで、P3HTを用いる場合に比して、光電変換層の吸光係数を大きくし、極大吸収波長を長波長側にシフトすることができる。また、ドナーのバンドギャップを小さくすることができる。その上、ドナーのLUMOのエネルギー準位を、アクセプタであるPCBMのLUMOの準位に近くすることができる。

0063

従って、この有機薄膜太陽電池では、励起子の生成の活発化、太陽光の利用効率の向上、開放電圧Vocの増大が可能となり、光電変換効率を向上させることができる。

0064

このように光電変換効率が大きな有機薄膜太陽電池では、同一の発電量が得られる太陽電池に比して、その面積を小さくすることができる。従って、重量を低減させることができるため、設置場所に加わる負荷も小さくすることができる。また、設置面積が小さくなるので、設置レイアウトの自由度も向上する。

0065

また、ナノグラフェンポリマーが、上記の可溶性基を備える場合、有機溶媒に対する溶解度が良好に高められる。このため、上記の通り、太陽光の利用効率を向上させるべく炭素縮合環の分子量を増大させたナノグラフェンポリマーであっても、簡便且つ容易に成膜して光電変換層を得ることができる。すなわち、光電変換効率に優れた有機薄膜太陽電池を簡便且つ容易に得ることができる。

0066

有機薄膜太陽電池の好適な例は、ドナードメインとアクセプタドメインが混在する光電変換層を備えるバルへテロ接合型のものである。この場合、例えば、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成される平面ヘテロ接合型のものに比して、ドナードメインとアクセプタドメインとの接触面積が大きい。有機薄膜太陽電池では、主にドナードメインとアクセプタドメインの界面で励起子が電子と正孔に分離して発電関与するので、両者の接触面積が大きいバルクへテロ接合型として構成することにより、光電変換効率を向上させることが可能となる。

0067

特に分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを用いてバルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池の光電変換層を作製する場合、該ナノグラフェンポリマーが有機溶媒に易溶であるため、容易に成膜を行うことができる。これによって、良好に相分離したドナードメインとアクセプタドメインとが互いに混在した光電変換層を得ることができる。すなわち、光電変換層における電荷分離効率を向上させることができるため、光電変換効率を向上させた有機薄膜太陽電池を得ることができる。

発明の効果

0068

本発明によれば、π電子雲の広がりが大きいπ共役系のナノグラフェンポリマーを光電変換材料とするため、吸光係数を大きく、且つバンドギャップ(HOMOとLUMOとのエネルギー準位差)を小さくすることができる。また、極大吸収波長を長波長側にシフトさせて、光の吸収領域可視光側へ広くすることができる。

0069

また、ナノグラフェンポリマーを得る際、主鎖骨格に含まれるπ電子の数を調整することができる。つまり、ナノグラフェンポリマーのバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を所望の値に調整することができる。このため、HOMOのエネルギー準位が低いドナーとしてナノグラフェンポリマーが得られる。また、PCBMをアクセプタとして用いた場合、ドナー及びアクセプタのLUMOのエネルギー準位を互いに近づけることができる。

0070

すなわち、ナノグラフェンポリマーをドナーとし、PCBMをアクセプタとした光電変換層では、励起子が活発に生成される。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、開放電圧Vocが大きくなる。その結果、光電変換効率が大きく、小面積で軽量な有機薄膜太陽電池を得ることが可能になる。

0071

さらに、PCBM以外の種々の物質をアクセプタとして用いた場合であっても、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、良好な光電変換効率を示すナノグラフェンポリマーをドナーとして提供することが可能になる。従って、優れた光電変換効率を示す光電変換層を容易に形成することが可能なナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0072

このナノグラフェンポリマーは、側鎖として可溶性基を備える場合、有機溶媒に一層容易に溶解するようになる。その結果、光電変換層の成膜作業を容易且つ高精度に行うことが可能になり、有機薄膜太陽電池の製造効率及び光電変換効率を良好に向上させることができる。

図面の簡単な説明

0073

本実施形態に係るバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池の模式的縦断面図である。
無置換のポリフェニレンが反応して得られる化合物の構造を示す説明図である。
可溶性基を導入したポリフェニレンaにおける構成単位と該アルコキシ基との関係を示した模式的構造図である。
可溶性基を導入したポリフェニレンbにおける構成単位と該アルコキシ基との関係を示した模式的構造図である。
ポリフェニレンaと、ナノグラフェンポリマーaとの1H−核磁気共鳴(NMRスペクトルである。
ポリフェニレンbと、ナノグラフェンポリマーbの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。
ポリフェニレンaと、ナノグラフェンポリマーaとについて、紫外可視分光法で得られた吸収スペクトルである。
ポリフェニレンbと、ナノグラフェンポリマーbとについて、紫外・可視分光法で得られた吸収スペクトルである。
ナノグラフェンポリマーa、b、c、d、P3HT、PCBMの各HOMO、LUMOのエネルギー準位を示すエネルギー準位図である。
実施例のBHJ太陽電池セル発電性能を示す図表である。
P3HTの構造式を示す説明図である。
PCBMの構造式を示す説明図である。
P3HTのHOMOからLUMO、さらにPCBMのLUMOへと電子が遷移することを示した模式説明図である。
アクセプタとして利用可能な低分子有機半導体の構造式を示す説明図である。

0074

以下、本発明に係る光電変換材料及びその製造方法につき、該光電変換材料を含む光電変換層を具備するバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。

0075

図1は、本実施形態に係るバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(BHJ太陽電池)10の要部概略縦断面図である。このBHJ太陽電池10は、透明電極12に対し、正孔輸送層14、光電変換層16、裏面電極18が下方からこの順で重畳されることで構成される。

0076

透明電極12は、正極として機能する。すなわち、該透明電極12には、正孔24が移動する。なお、透明電極12としては、例えばインジウムスズ複合酸化物(ITO)等、太陽光をはじめとする光を十分に透過するものが選定される。

0077

正孔輸送層14は、光電変換層16にて生成した正孔24が透明電極12に移動することを支援する層である。この正孔輸送層14は、一般的には、ポリスチレンスルホン酸でドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、すなわち、いわゆるPEDOT:PSSから形成することができる。

0078

光電変換層16は、電子供与体(ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメイン26と、電子受容体(アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメイン28とが混在する層として形成されている。この中、アクセプタの好適な例としては、上記のPCBMが挙げられるが、これ以外にも、図14に示す、TCNQ、NTCDA、PTCDAを用いることができる。

0079

さらに、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、N,N’−ジペンチル−3,4,9,10−ペリレン−ジカルボキシイミド(PTCDI−C5)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレン−ジカルボキシイミド(PTCDI−C8)、N,N’−ジフェニル−3,4,9,10−ペリレン−ジカルボキシイミド(PTCDI−Ph)等をアクセプタとして用いてもよい。

0080

一方、ドナーとなるp型半導体、すなわち、本実施形態に係る光電変換材料は、一般式(1)及び(2)で示すモノマーを重合させて得られるポリフェニレンをさらに反応させた炭素縮合環の重合体(ナノグラフェンポリマー)からなる。

0081

0082

0083

ただし、一般式(1)中のR1〜R6は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R1〜R6の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。また、一般式(2)中のArは、未置換の若しくは置換された芳香族を表し、R7及びR8は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。

0084

この一般式(2)で示すモノマーの好適な例としては、一般式(3)〜(5)で示すものが挙げられる。

0085

0086

0087

0088

ただし、一般式(3)〜(5)中のR9〜R14は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R9〜R14の全てが水素である場合以外は同一構造であるモノマーよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0089

すなわち、一般式(1)で示すモノマーと、一般式(3)〜(5)で示すモノマーの少なくとも1つとを重合させてポリフェニレンを得ることが好ましい。この場合、最終的に得られるナノグラフェンポリマーについて、その主鎖骨格を形成するグラフェン構造部分、すなわち、互いに縮合している炭素環の数を効果的に増大させることができる。

0090

これらのモノマーを重合させて得られるポリフェニレンとして、一般式(6)〜(11)で示す化合物の少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。

0091

0092

0093

0094

0095

0096

0097

ただし、一般式(6)〜(11)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0098

すなわち、一般式(6)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは、一般式(1)で示すモノマーと、一般式(3)で示すモノマーとを1:1のモル比で重合させることによって得られる。また、一般式(7)〜(9)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは互いに異性体であり、一般式(1)、(4)で示すモノマーを1:1のモル比で重合させることによって得られる。さらに、一般式(10)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは、一般式(1)、(4)、(5)で示すモノマーを2:1:1のモル比で重合させることによって得られる。さらに、一般式(11)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンは、一般式(1)、(4)、(5)で示すモノマーを3:1:2のモル比で重合させることによって得られる。

0099

具体的には、一般式(10)、(11)で示す化合物は複数の異性体を含む。一般式(10)で示す化合物の異性体の一例として、一般式(12)〜(14)で示すものが挙げられる。

0100

0101

0102

0103

ただし、一般式(12)〜(14)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0104

また、一般式(11)で示す化合物の異性体の一例として、一般式(15)〜(17)で示すものが挙げられる。

0105

0106

0107

0108

ただし、一般式(15)〜(17)中のR49〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R49〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0109

なお、一般式(10)、(11)で示す化合物は、一般式(12)〜(14)及び一般式(15)〜(17)で示す化合物に限定されるものではなく、異性体として取り得る全ての化合物を含む。

0110

また、ポリフェニレンは、一般式(6)〜(11)で示す化合物のいずれか1つのみが互いに結合したものに限定されることなく、例えば、一般式(6)〜(11)で示す化合物がランダムに結合したものであってもよい。

0111

上記のポリフェニレンをさらに反応させて得られるナノグラフェンポリマーとして、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。

0112

0113

0114

0115

0116

0117

0118

0119

0120

0121

0122

0123

0124

0125

0126

ただし、一般式(18)〜(31)中のR15〜R72は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R15〜R72の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0127

すなわち、一般式(18)、(19)で示すナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーは、一般式(6)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンを反応させることで得られる。同様に、一般式(20)、(21)に係るナノグラフェンポリマーは、それぞれ一般式(7)、(8)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(22)、(23)に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(9)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(24)、(25)に係るナノグラフェンポリマーは、それぞれ一般式(12)、(13)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(26)、(27)に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(14)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(28)、(29)に係るナノグラフェンポリマーは、それぞれ一般式(15)、(16)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。一般式(30)、(31)に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(17)に係るポリフェニレンを反応させることで得られる。

0128

なお、ナノグラフェンポリマーは、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンのいずれか1つのみが互いに結合したものに限定されることなく、例えば、一般式(16)〜(29)で示す化合物がランダムに結合したものであってもよい。

0129

また、ナノグラフェンポリマーの構成単位は、一般式(16)〜(29)で示すナノグラフェンに限定されない。すなわち、ポリフェニレンが一般式(6)〜(11)で示す化合物が取り得る全ての異性体を構成単位とすることに対応して、該ポリフェニレンを反応させて得られるナノグラフェンポリマーも複数の異性体を含む。

0130

上記の通り、一般式(1)、(2)で表されるモノマーを重合させる際に、モノマーのそれぞれのモル比や、組成及び構造等を調整することで、得られるポリフェニレンの組成及び構造についても調整することが可能である。従って、ポリフェニレンをさらに反応させて得られるナノグラフェンポリマーの組成及び構造(主鎖骨格に含まれる炭素縮合環の数等)を容易に調整することができる。

0131

ナノグラフェンポリマーの主鎖骨格に含まれる炭素縮合環中の二重結合の数に応じて、該主鎖骨格に含まれるπ電子の数も変化する。このため、ナノグラフェンポリマーの組成及び構造を調整することで、π電子の数を調整することが可能になる。具体的には、炭素縮合環の二重結合の数に2を乗じることでπ電子の数を算出することができる。従って、一般式(18)、(19)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は60である。一般式(20)〜(23)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は78である。一般式(24)〜(27)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は150である。一般式(28)〜(31)で示すナノグラフェンに含まれるπ電子の数は222である。

0132

このナノグラフェンポリマーの主鎖骨格に含まれるπ電子は、主鎖骨格の炭素縮合環上に非局在化している。すなわち、このπ電子の数は、π共役系の範囲に対応し、該π電子の数を調整することによって、バンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。つまり、上記のようにπ電子の数を調整することで、ナノグラフェンポリマーのHOMO及びLUMOのエネルギー準位を所望の値に調整することが可能になる。

0133

その結果、例えば、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、上記に例示したようなアクセプタとして用いることができる種々の物質に対して、良好な光電変換効率を示すナノグラフェンポリマーをドナーとして提供できる。種々のアクセプタに対応して最適なHOMO及びLUMOのエネルギー準位を有するようにナノグラフェンポリマーのπ電子の数を調整できるためである。

0134

なお、ナノグラフェンポリマーをアクセプタとして用いる場合も同様に、種々のドナーに対応して最適な値となるようにバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。従って、光電変換材料としてのナノグラフェンポリマーの汎用性を向上させることができ、且つ優れた光電変換効率を示す光電変換層を容易に得ることが可能になる。

0135

ナノグラフェンポリマーの構成単位の主鎖骨格に含まれるπ電子の数は、60〜250であることが好ましい。π電子の数を増大させるほど、π共役系の範囲を拡張することとなる。従って、π電子の数を60以上とすることで、π共役系を十分に拡張して、光電変換効率に優れたナノグラフェンポリマーを得ることができる。また、π電子の数を増大させることは、炭素縮合環の分子量を増大させることになるため、π電子の数を250以下とすることで、有機溶媒等に対して容易に溶解するナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0136

つまり、ナノグラフェンポリマーのπ電子の数を上記の範囲内とすることで、光電変換効率に優れた光電変換層を、簡便且つ高精度に形成することが可能になる。

0137

ここで、一般式(6)中のR15〜R24として水素を備える(無置換の)ポリフェニレンから形成されるナノグラフェンポリマーについて説明する。このナノグラフェンポリマーでは、図2(a)に示すように、一つの構成単位内の炭素環同士が全て反応して炭素縮合環が形成されることが好ましい。

0138

つまり、図2(a)に示すナノグラフェンポリマーでは、図2(b)に示すように、構成単位内に反応していない炭素環が含まれるナノグラフェンポリマーに比べて、π電子雲の広がりを一層良好に得ることができる。また、図2(a)に示すナノグラフェンポリマーでは、図2(c)に示すように、複数の構成単位同士が架橋結合したナノグラフェンポリマーに比べて、有機溶媒に対するナノグラフェンポリマーの溶解度を効果的に高めることができる。すなわち、ナノグラフェンポリマーの溶液を用いた成膜を容易にすることができる。

0139

図2(a)に示すようなナノグラフェンポリマーを容易且つ効率的に得るためには、ポリフェニレンが一般式(6)中のR15〜R24の少なくとも一つに、可溶性基を備えることが好ましい。ここで、可溶性基とは、ポリフェニレンに側鎖として導入されることで、無置換のポリフェニレンよりも、有機溶媒に対する溶解性を高めることができる置換基である。可溶性基として好適には、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基(アルキル基)、直鎖アルコキシ基及び分岐アルコキシ基(アルコキシ基)等の置換基が挙げられる。

0140

このような可溶性基は、例えば、図3に示すように、ポリフェニレンaの構成単位同士の反応において立体障害となる。これによって、該構成単位同士が互いに接近することを抑制できる。その結果、1つの構成単位内における炭素環同士の反応を効果的に進行させることができるため、複数の構成単位間が架橋することを抑制し、十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを容易且つ効率的に得ることができる。

0141

なお、図3に例示のポリフェニレンaでは、一般式(6)中のR17、R19、R20、R22にアルコキシ基(OC10H21)が導入され、R24及びR25にアルキル基(C12H25)が導入され、R15及びR16にアルキル基(CH3)が導入されている。なお、導入される可溶性基の種類や配置は、上記に限定されるものではない。

0142

また、図4に示すように、一般式(7)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンbについても、一般式(6)と同様に、可溶性基が導入されることで、複数の構成単位同士の間で反応が生じることを抑制できる。

0143

図4に例示のポリフェニレンbは、一般式(7)中のR25〜R32にアルコキシ基としてOC10H21が導入された化合物を構成単位とする。

0144

可溶性基が導入されたポリフェニレンは、例えば、一般式(1)、(3)〜(5)に示すモノマーのR1〜R6、R9〜R14の少なくとも1つに可溶性基を導入することで得ることができる。

0145

なお、例えば、可溶性基としてアルキル基を有するポリフェニレンを得る場合等については、予めモノマーに可溶性基が導入されていなくてもよい。すなわち、無置換(一般式(1)及び(3)〜(5)中のR1〜R6及びR9〜R14がいずれも水素)のモノマーから無置換のポリフェニレンを得た後、該ポリフェニレンにアルキル基を導入することも可能である。

0146

上記の通り、側鎖として可溶性基が導入されたポリフェニレンを反応させてナノグラフェンポリマーを得る場合、該ナノグラフェンポリマーにも可溶性基が導入される。つまり、一般式(18)〜(31)に示すナノグラフェンのR15〜R72の少なくとも1つに上記の可溶性基が導入されることになる。これによって、ナノグラフェンポリマーを有機溶媒に対して易溶とすることができる。

0147

なお、ナノグラフェンポリマーの溶解度を向上させる観点からは、ポリフェニレンが側鎖としてアルコキシ基を備えることが好ましく、特に好ましくは分岐アルコキシ基である。この場合、上記溶解度を一層効果的に高めることができる。

0148

アルキル基及びアルコキシ基としては、炭素数が3〜20個であるものが好ましい。アルコキシ基の炭素数を上記の範囲とすることで、ポリフェニレンの構成単位同士の接近を抑制しつつ、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解性を向上させることができる。すなわち、光電変換材料として優れた特性を示し、且つ有機溶媒に易溶であり良好に成膜することが可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。

0149

また、ナノグラフェンポリマーの重合度は、2〜150であることが好ましい。重合度を2以上、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを2個以上とすることによって、吸光係数を大きくすることができる。また、重合度を150以下、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを150個以下とすることによって、ナノグラフェンポリマーを得るまでの重合に要する時間を短縮して、生産効率を向上させることができる。従って、重合度を上記の範囲に設定することで、吸光係数が十分に向上した光電変換材料を効率よく作製することができる。

0150

BHJ太陽電池10(図1参照)においては、このようなナノグラフェンポリマーからなる光電変換材料を含む光電変換層16上に、裏面電極18が重畳される。この裏面電極18は、電子30が到達する負極として機能する。なお、光電変換層16と裏面電極18の間には、バトクプロインやフッ化リチウム等からなる電子輸送層(不図示)を介在させてもよい。これによって、光電変換層16にて生成した電子30が裏面電極18に移動することを促進させることができる。

0151

本実施形態に係るBHJ太陽電池10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。

0152

BHJ太陽電池10の透明電極12に光(例えば、太陽光)が照射されると、該光は、正孔輸送層14を通過して光電変換層16に到達する。その結果、該光電変換層16において、励起子32が生成する。

0153

生成した励起子32は、ドナードメイン26内を移動して、該ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との界面に到達する。そして、この界面において、電子30と正孔24に分離する。上記と同様に、この中の電子30は、アクセプタドメイン28内を移動し、電子輸送層を経由した後、負極である裏面電極18に到達する。一方、正孔24は、ドナードメイン26内を移動し、正孔輸送層14を経由した後、正極である透明電極12に到達する。

0154

ここで、本実施形態では、光電変換層16中のドナードメイン26が、一般式(16)〜(29)で示すナノグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマー(光電変換材料)からなる。

0155

一般式(18)〜(31)から諒解される通り、ナノグラフェンにおいては、その全体にπ電子雲が広がっている。ドナードメイン26は、このナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーからなる。つまり、ドナードメイン26では、ナノグラフェン単体(モノマー)からなる場合に比して、π電子雲がより一層広範囲にわたって広がっている。

0156

このようにπ電子雲の広がりが大きいドナードメイン26では、極大吸収波長が長波長側にシフトするとともに吸光係数が大きくなる。すなわち、HOMO−LUMO間のエネルギー準位差に相当するバンドギャップが小さくなる。従って、ドナードメイン26において、励起子32の生成が活発となるとともに、太陽光の利用効率が向上する。

0157

さらに、このナノグラフェンポリマーを得る際、主鎖骨格に含まれるπ電子の数を調整することができる。すなわち、ナノグラフェンポリマーのバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を所望の値に調整することができる。これによって、ナノグラフェンポリマーをドナーとして用いる場合では、アクセプタとして用いる物質に応じて、HOMO及びLUMOのエネルギー準位を適切な値に調整することができる。その結果、優れた光電変換効率を示す光電変換層16を容易に得ることが可能になる。

0158

さらに、このナノグラフェンポリマーは、側鎖として可溶性基を備える場合、有機溶媒に一層容易に溶解するようになる。その結果、光電変換層16の成膜作業を容易且つ高精度に行うことが可能になり、BHJ太陽電池10の製造効率及び光電変換効率を良好に向上させることができる。

0159

このため、BHJ太陽電池10では、同一の発電量が得られる他の太陽電池に比して面積を小さくすることができる。従って、重量が低減するので設置場所に加わる負荷が小さくなり、また、設置レイアウトの自由度が向上する。

0160

次に、本実施形態に係る光電変換材料の製造方法、すなわち、ナノグラフェンポリマーの製造方法について説明する。

0161

上記した通り、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーは、一般式(1)、(2)で示すモノマーを重合させて得られたポリフェニレンの反応生成物として得ることができる。以下、図3に示すポリフェニレンaを反応させて、ナノグラフェンポリマーaを得る場合を例に挙げて説明する。

0162

先ず、ポリフェニレンaを得るべく、アルコキシ基(OC10H21)を導入したジベンジルケトンを形成する。具体的には、反応式(32)で示すように、4−ヒドロキシベンゼン酢酸メチルと1−ヨードデカンとを反応させて4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルを得る。

0163

0164

そして、反応式(33)で示すように、4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルに、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を加え、これによって得られる中間生成物にさらに塩酸を加える。その結果、アルコキシ基を導入したジベンジルケトンとして、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンを形成することができる。

0165

0166

次に、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンと、1,4−ビスベンジルとからアルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノンa(一般式(1)で示すモノマー)を得る。具体的には、反応式(34)で示すように、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、1,4−ビスベンジル、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。なお、TritonBは、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムである。これによって、ビスシクロペンタジエノンaを得ることができる。

0167

0168

次に、反応式(35)で示すように、上記の通り得られたビスシクロペンタジエノンaと、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼン(一般式(3)で示すモノマー)をディールスアルダー重合させる。これによって、ポリフェニレンaを得ることができる。この際、アルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノンaと、アルキル基を備える1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼンとを反応させることによって、効率的にポリフェニレンaを得ることができる。また、ポリフェニレンaにアルコキシ基及びアルキル基の両方を導入することが可能になり、有機溶媒に対するポリフェニレンaの可溶性を一層高めることができる。

0169

0170

上記のようにして得られたポリフェニレンaを、例えば、反応式(36)で示すように、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させる。その結果、上記のアルコキシ基及びアルキル基が導入されたナノグラフェンポリマーaが得られる。具体的には、このナノグラフェンポリマーaには構造異性体が含まれる。従って、一般式(18)又は(19)のR17、R19、R20、R22にOC10H21が導入され、R23及びR24にC12H25が導入され、R15及びR16にCH3が導入されたナノグラフェンポリマーaを得ることができる。

0171

0172

次に、図4に示すポリフェニレンbを反応させて、ナノグラフェンポリマーbを得る場合を例に挙げて説明する。

0173

なお、ポリフェニレンbと構造異性体の関係にある一般式(8)、(9)に係るポリフェニレンも、ポリフェニレンbと同様にして得られることは勿論である。また、ポリフェニレンbからナノグラフェンポリマーbを得る場合と同様に、一般式(8)、(9)に係るポリフェニレンから、一般式(20)〜(23)に係るナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0174

先ず、ポリフェニレンbを得るべく、アルコキシ基(OC10H21)を導入したジベンジルケトンと、アルコキシ基(OC10H21)を導入した1,4−ビスベンジルとを形成する。

0175

具体的には、先ず、上記の反応式(32)、(33)で示す反応を経て、アルコキシ基を導入したジベンジルケトンを得る。

0176

これとは別に、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルを形成するべく、先ず、反応式(37)で示すように、ヨードフェノールブロモデカンとを反応させて、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンを得る。

0177

0178

次に、反応式(38)で示すように、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンと、1,4−ジエチニルベンゼンとを反応させて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを得る。

0179

0180

次に、反応式(39)で示すように、パラジウム(Pd)錯体等を触媒に用いて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを酸化反応させることでアルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルを得る。

0181

0182

上記のように形成した、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンと、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルとを反応させる。すなわち、反応式(40)で示すように、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジル、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。これによって、アルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノンb(一般式(1)で示すモノマー)を得ることができる。

0183

0184

そして、反応式(41)で示すように、ビスシクロペンタジエノンbと、4,4’−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ビフェニル(一般式(4)で示すモノマー)とをディールスアルダー重合させる。これによって、ポリフェニレンbを得ることができる。

0185

0186

なお、上記の4,4’−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ビフェニルは、以下のようにして得ることができる。すなわち、先ず、上記の反応式(37)で示すように、ヨードフェノールとブロモデカンとを反応させて、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンを得る。

0187

そして、反応式(42)で示すように、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンと、4,4’−ジエチニルビフェニルとを溶媒中、触媒存在下で反応させる。ここで、溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF:C4H8O)を用いることができる。また、触媒としては、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド((Ph3P)2PbCl2)と、ヨウ化銅(CuI)と、ジエチルアミン(Et2NH)とを用いることができる。これによって、4,4’−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ビフェニルが形成される。

0188

0189

上記のようにして得られたポリフェニレンbを、例えば、反応式(43)で示すように、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させる。その結果、ナノグラフェンポリマーbを得ることができる。すなわち、このナノグラフェンポリマーbは、一般式(20)中のR25〜R32にOC10H21が導入されたナノグラフェンを構成単位とする。

0190

0191

上記の通り、ポリフェニレンa、bには、可溶性基が導入されているため、複数の構成単位間のカップリング(分子間カップリング)が抑制される。従って、例えば、触媒としての塩化鉄の量を調整することで、構成単位内の炭素環を全て反応させつつ、複数の構成単位間に架橋構造が形成されることを抑制できる。これによって、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった炭素縮合環からなるナノグラフェンポリマーa、bを得ることができる。つまり、この炭素縮合環に非局在化しているπ電子の数は、ナノグラフェンポリマーaの主鎖骨格の構成単位中では60であり、ナノグラフェンポリマーbの主鎖骨格の構成単位中では78である。

0192

このように、一般式(1)、(2)で表されるモノマーの重合比、組成及び構造等を調整することによって、ナノグラフェンポリマーのπ電子の数(主鎖骨格に含まれる炭素縮合環の二重結合の数)を容易に調整することができる。

0193

また、ナノグラフェンポリマーの重合度は、例えば、モノマーの比率や、重合反応時の反応時間や反応温度を設定することで調整可能であり、上記したように2〜150とすることが好ましい。これによって、吸光係数が十分に向上した光電変換材料(ナノグラフェンポリマー)を効率よく作製することができる。

0194

図5は、上記のポリフェニレンa及びナノグラフェンポリマーaの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。スペクトル中、0〜2ppmに現れているピークは、アルコキシ基の水素に由来している。また、6〜8ppmに現れているピークは、フェニル基の水素に由来している。

0195

図5から、ポリフェニレンaのスペクトル中に出現しているアルコキシ基の水素に由来するピークは、ナノグラフェンポリマーaのスペクトル中にも出現していることが分かる。すなわち、上記のように、アルコキシ基を備えるポリフェニレンaを反応させることで、該アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーaが生成されていると判断し得る。

0196

また、フェニル基の水素に由来するピークは、ポリフェニレンaのスペクトル中には出現しているが、ナノグラフェンポリマーaのスペクトル中には出現していない。このため、上記のように得られたナノグラフェンポリマーaでは、ポリフェニレンaの構成単位内のフェニル基が互いに反応して炭素縮合環が形成されていること、つまり、ナノグラフェンポリマーaのπ共役系が十分に拡張されていることが分かる。

0197

図6は、上記のポリフェニレンb及びナノグラフェンポリマーbの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。スペクトル中、0〜2ppmに現れているピークは、アルコキシ基の水素に由来している。また、6〜8ppmに現れているピークは、フェニル基の水素に由来している。

0198

上記のポリフェニレンa及びナノグラフェンポリマーaと同様、図6から、アルコキシ基を備えるポリフェニレンbを反応させることで、該アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーbが生成されていると判断し得る。また、ナノグラフェンポリマーbのπ共役系が十分に拡張されていることが分かる。

0199

図7は、ポリフェニレンa及びナノグラフェンポリマーaの紫外・可視分光法(UV−Vis)の吸収スペクトルであり、図8は、ポリフェニレンb及びナノグラフェンポリマーbの紫外・可視分光法(UV−Vis)の吸収スペクトルである。

0200

図7及び図8から、長波長側の吸収端が、ポリフェニレンa、bの各々では略330nmであるのに対し、ナノグラフェンポリマーaでは略585nmであり、ナノグラフェンポリマーbでは略650nmであることが分かる。すなわち、ナノグラフェンポリマーa、bでは、ポリフェニレンa、bに比して、極大吸収波長が長波長側にシフトしている。π電子共役系では、その分子量が増え、π電子の数が増大するにつれて、極大吸収波長が長波長側にシフトし、光の吸収領域が可視光側へ広くなる。従って、図7及び図8からも、ナノグラフェンポリマーa、bは、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった炭素縮合環からなり、π共役系が十分に拡張されていると判断し得る。

0201

ナノグラフェンポリマーa、bの他にも、一般式(1)、(2)で示すモノマーの重合時のモル比や、組成及び構造等を調整することで、種々の構成単位からなるナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0202

例えば、一般式(18)で示すナノグラフェンのR15〜R25が全て水素(無置換)であるナノグラフェンポリマー(以下、ナノグラフェンポリマーcともいう)を得る方法について説明する。この場合、上記のナノグラフェンポリマーaを得る工程において、反応式(35)で示す反応中のビスシクロペンタジエノンaに代えて、無置換のビスシクロペンタジエノンを用いればよい。

0203

すなわち、無置換のビスシクロペンタジエノンと、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼン(一般式(3)で示すモノマー)をディールスアルダー重合させることでポリフェニレンcを得る。そして、このポリフェニレンcを塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いてさらに反応させることでナノグラフェンポリマーcを得ることができる。

0204

また、一般式(18)で示すナノグラフェンのR17〜R19、R20〜22にアルキル基として、ヘプチル基を有するナノグラフェンポリマーdを得る方法について説明する。この場合、上記と同様にポリフェニレンcを得た後、該ポリフェニレンcの側鎖にアシル基を導入する。具体的には、一般式(6)中のR17〜R19及びR20〜R22にアシル基を導入する。このためには、例えば、反応式(44)で示すように、カルボン酸塩化物アシル化剤とし、塩化アルミニウム(AlCl3)を触媒として、ポリフェニレンcをアシル化する。

0205

0206

次に、アシル基が導入されたポリフェニレンcを、例えば、反応式(45)で示すように、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)及び塩化アルミニウムを還元剤として還元する。これによって、一般式(6)中のR17〜R19及びR20〜R22にヘプチル基が導入されたポリフェニレンdが得られる。

0207

0208

反応式(46)で示すように、ポリフェニレンdを塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させることでナノグラフェンポリマーdを得ることができる。

0209

0210

図9に、上記のナノグラフェンポリマーa、b、c、d、P3HT、PCBMのそれぞれについて、紫外・可視分光法(UV−Vis)、光電子収量分光法(PYS)を用いて測定したHOMO及びLUMOのエネルギー準位を示す。

0211

図9に示すように、HOMOとLUMOとのエネルギー準位差であるバンドギャップは、ナノグラフェンポリマーa、b、c、dがそれぞれ2.1eV、1.9eV、2.0eV、2.0eVであり、P3HTが2.2eVである。従って、ナノグラフェンポリマーa〜dのバンドギャップのそれぞれは、P3HTのバンドギャップに比して、小さいことが分かる。

0212

また、LUMOのエネルギー準位は、ナノグラフェンポリマーa、b、c、dがそれぞれ約−3.2eV、−3.2eV、−3.9eV、−3.5eVであり、P3HTが約—2.5eVである。従って、ナノグラフェンポリマーa〜dのそれぞれのLUMOのエネルギー準位は、P3HTに比して低く、PCBM(フラーレン誘導体)のLUMOのエネルギー準位に近い。この理由は、ナノグラフェンポリマーa〜dの構成単位であるナノグラフェンa〜dが炭化水素炭素環を基本骨格とする炭素縮合環であり、PCBMの構造に類似するためであると推察される。このため、ナノグラフェンポリマーa〜dをドナーとし、PCBMをアクセプタとして光電変換層16を形成したBHJ太陽電池10では、P3HTをドナーとする場合に比して、開放電圧Vocを大きくすることができる。

0213

また、PCBMをアクセプタとして用いた場合と同様に、アクセプタとして用いられる種々の物質に対して、最適な光電変換効率を示すようにナノグラフェンポリマーのπ電子の数を調整することができる。これによって、優れた変換効率を示す光電変換層を容易に形成することが可能になる。

0214

なお、ナノグラフェンポリマーをアクセプタとして用いる場合も同様に、種々のドナーに対応して最適な値となるようにバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー準位)を調整することができる。

0215

上記のナノグラフェンポリマーをドナーとして含む光電変換層16は、以下のようにして形成することができる。先ず、トルエンクロロホルムクロロベンゼン等の適切な溶媒に、ナノグラフェンポリマーとPCBMとを混合して、又はそれぞれ個別に添加する。ナノグラフェンポリマー及びPCBMは有機溶媒に良好に溶解するため、混合溶液を容易に調整することができる。

0216

次に、この混合溶液を、スピンコーティングインクジェット印刷ローラキャスティング、ロールツーロール法等のいずれかの手法によって、正孔輸送層14上に塗布する。

0217

次に、該正孔輸送層14上の混合溶液を加熱すると、該混合溶液が硬化し、光電変換層16が得られる。必要に応じて、アニール処理を施すことでドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離をさらに促進することが可能である。その結果、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28の接合界面の面積が増大し、発電性能を向上させることも可能である。

0218

ドナーとしてモノマーを用いる場合、モノマーが有機溶媒に溶解し難いことから、光電変換層16を得る際に上記したような手法を採用することは困難である。これに対し、本実施形態では、上記のように可溶性基が導入されたナノグラフェンポリマーをドナーとして用いる。ナノグラフェンポリマーが所定の溶媒に容易に溶解することから、上記したプロセスによって、光電変換層16を容易且つ簡便に、しかも、低コストで形成することが可能である。また、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離を一層良好に促進することができるため、BHJ太陽電池10の光電変換効率を向上させることができる。

0219

以上の通り、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーは、π電子雲の広がりが大きいπ共役系からなるため、吸光係数が大きい。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、バンドギャップが小さく、HOMOのエネルギー準位が低い。すなわち、LUMOのエネルギー準位が、PCBMのLUMOのエネルギー準位に近い。

0220

このため、ナノグラフェンポリマーをドナー、PCBMをアクセプタとしたBHJ太陽電池10では、励起子32が活発に生成される。また、開放電圧Vocが大きくなる。従って、光電変換効率を良好に向上させることができる。

0221

なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。

0222

上記した実施形態では、一般式(1)、(2)で示すモノマーから、一般式(18)〜(31)で示すナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーを得る例について説明した。しかしながら、特にこれらに限定されるものではなく、必要なバンドギャップ(HOMO及びLUMOのエネルギー順位)に応じて適当なπ電子の数のナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0223

また、上記した実施形態では、側鎖の可溶性基として、直鎖アルコキシ基(OC10H21)を備えるナノグラフェンポリマーa、bを得る例について説明した。この直鎖アルコキシ基に代えて、分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを得る場合、以下に示すようにすればよい。

0224

すなわち、上記のナノグラフェンポリマーaを得る工程のうち、反応式(32)で示す反応中の1−ヨードデカンに代えて、2−エチルヘキシルヨージドを用いる。これによって、ナノグラフェンポリマーaの直鎖アルコキシ基に代えて、分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0225

また、上記のナノグラフェンポリマーbを得る工程のうち、反応式(37)で示す反応中のブロモデカンに代えて、2−エチルヘキシルブロミドを用いる。これによって、ナノグラフェンポリマーbの直鎖アルコキシ基に代えて、分岐アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0226

また、上記した実施形態では、一般式(2)で示すモノマーが、一般式(3)〜(5)で示すモノマーである場合を例に挙げて説明したが、とくにこれらに限定されるものではない。例えば、一般式(2)で示すモノマーとして、一般式(47)〜(50)で示すモノマーを採用してもよい。

0227

0228

0229

0230

0231

ただし、一般式(47)、(50)中のR73、R74、R77、R78は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表し、一般式(49)中のR75及びR76は、それぞれ独立にアルキル基を表す。

0232

一般式(1)に対して、一般式(47)〜(50)で示すモノマーのそれぞれを1:1のモル比で重合させた場合、一般式(51)〜(54)で示す化合物を構成単位とするポリフェニレンを得ることができる。

0233

0234

0235

0236

0237

ただし、一般式(51)〜(54)中のR79〜R104は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R79〜R104の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表し、一般式(53)中のR75及びR76は、それぞれ独立にアルキル基を表し、一般式(54)中のR77及びR78は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。

0238

このポリフェニレンをさらに反応させることで、一般式(55)〜(58)で示すナノグラフェンを構成単位とし、それぞれのπ電子の数が52、68、60、54であるナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0239

0240

0241

0242

0243

ただし、一般式(55)〜(58)中のR105〜R130は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R105〜R130の全てが水素である場合以外は同一構造であるグラフェンよりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表し、一般式(57)中のR75及びR76は、それぞれ独立にアルキル基を表し、一般式(58)中のR77及びR78は、それぞれ独立に、水素、未置換の若しくは置換された芳香族、メチル基、シリル基のいずれかを表す。

0244

また、上記した実施形態では、一般式(10)で示す化合物の一例として、一般式(12)〜(14)で示す化合物を例示したが、この他にも、例えば、一般式(59)〜(61)で示す化合物を挙げることができる。

0245

0246

0247

0248

ただし、一般式(59)〜(61)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0249

一般式(59)〜(61)で示す化合物のそれぞれは、一般式(12)〜(14)で示す化合物と異性体である。従って、一般式(59)〜(61)に係るポリフェニレンも、一般式(12)〜(14)に係るポリフェニレンと同様にして得ることができる。

0250

また、一般式(59)〜(61)に係るポリフェニレンのそれぞれが反応して得られるナノグラフェンポリマーの一例として、一般式(62)〜(64)で示すナノグラフェンを構成単位とするものが挙げられる。

0251

0252

0253

0254

ただし、一般式(62)〜(64)中のR33〜R48は、それぞれ独立に、水素、若しくは該R33〜R48の全てが水素である場合以外は同一構造である化合物よりも有機溶媒に対する溶解性を高める可溶性基を表す。

0255

また、上記した実施形態では、光電変換層16にドナーとアクセプタが混在するBHJ太陽電池10を例示して説明している。しかしながら、ナノグラフェンポリマー(光電変換材料)は、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成された光電変換層を有する平面ヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池に用いることもできる。この場合、ドナーからなる層を、ナノグラフェンポリマーから形成するようにすればよい。

0256

また、この実施形態では、ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のドナーとして用いる例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のアクセプタとして採用することも可能である。

0257

さらに、ナノグラフェンポリマーの用途は、有機薄膜太陽電池の光電変換層16に限定されるものではない。例えば、光センサに採用することも可能である。

0258

光電変換層のドナーに上記のナノグラフェンポリマーaを採用し、アクセプタにPCBMを採用してBHJ太陽電池セルを作製した。

0259

具体的には、先ず、ITO電極パターニングされたガラス基板洗浄し、該基板スピンコータに固定する。次に、基板上にPEDOT:PSS水分散液滴下し、4000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の正孔輸送層を形成する。

0260

これとは別に、図3に示す構成単位30からなるナノグラフェンポリマーa4mgと、PCBM16mgとを、1.0mlのオルトジクロロベンゼンに溶解させて混合溶液を調整する。

0261

この混合溶液を、グローブボックス内に設置したスピンコータに固定した上記基板の正孔輸送層上に滴下し、1000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の光電変換層を形成する。

0262

次に、真空蒸着装置内に、上記のように正孔輸送層及び光電変換層を形成した基板をセットし、該光電変換層上にバトクプロインやフッ化リチウム等を電子輸送層として蒸着する。さらに、電子輸送層上に200nmの膜厚となるようにアルミニウム電極を蒸着して、BHJ太陽電池セルを得た。

0263

このBHJ太陽電池セルについて発電性能を測定した結果を図10に示す。なお、発電性能は、疑似太陽光として、エアマスフィルタを装着したソーラーシミュレータの光AM1.5G(100mW/cm2)をBHJ太陽電池セルに照射して行った。すなわち、BHJ太陽電池セルに対して、ソースメータユニット(Kethley2400)を用いて電圧印加しつつ、上記の光照射時に流れる電流の測定を行った。そして、この測定結果から、短絡電流密度Isc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、光電変換効率(%)を求めた。

0264

図10に示すように、BHJ太陽電池セルでは、短絡電流密度Iscが3.27mA/cm2、開放電圧Vocが0.80V、曲線因子FFが0.5であり、光電変換効率が1.3%であった。

実施例

0265

従って、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーaをドナーとするBHJ太陽電池では、開放電圧Vocが大きく、十分な光電変換効率が得られることが確認された。すなわち、発電性能を良好に向上させることが可能である。

0266

10…バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池12…透明電極
14…正孔輸送層16…光電変換層
18…裏面電極24…正孔
26…ドナードメイン28…アクセプタドメイン
30…電子32…励起子

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