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技術 ガラス基板の処理方法

出願人 AGC株式会社
発明者 鈴木俊夫安部朋美秋葉周作舩津志郎裏地啓一郎西井準治原田建治池田弘酒井大輔
出願日 2013年8月29日 (7年5ヶ月経過) 出願番号 2013-178286
公開日 2015年3月12日 (5年11ヶ月経過) 公開番号 2015-044721
状態 未査定
技術分野 ガラスの表面処理 光起電力装置
主要キーワード 下地コート ワイヤ状電極 溶融塩処理 各針状電極 KBS プラズマ形成ガス 主面近傍 コロナ放電開始電圧
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年3月12日)のものです。
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図面 (6)

課題

ガラス基板表面近傍アルカリイオンそれぞれの含有量モル比を調整する処理方法を提供する。

解決手段

いずれもアルカリ金属酸化物を含有し、アルカリ金属酸化物それぞれの含有量のモル比が異なる第1のガラス基板4cと第2のガラス基板4dとを重ねて配置した積重基板4を、正極2と負極3との間に、第1のガラス基板4cの第2の主面が負極3に接触するように、かつ第2のガラス基板4dの最外部に位置する主面が正極2に離間して対向するように配置した後、正極2と負極3との間に直流電圧印加してコロナ放電を発生させる。そして、第1のガラス基板4c中および第2のガラス基板4d中のアルカリイオンをそれぞれ負極3に向って移動させ、第1のガラス基板4cの第2のガラス基板4d側の表層部において、アルカリイオンのそれぞれの含有量のモル比を、コロナ放電発生の前と変化させる。

概要

背景

Cu(In,Ga)Se半導体(以下、CIGS半導体と示す。)を用いた太陽電池(以下、CIGS太陽電池と示す。)において、CIGS半導体膜アルカリ金属酸化物を含有するガラス基板上に形成されており、ガラス基板から半導体中に移行拡散したアルカリイオン(例えば、Na+やK+)がキャリアとして働き、電池効率の上昇に寄与することが知られている。そのため、アルカリイオンの移行、拡散を考慮したガラス基板の組成の検討が行われている。

また、前記ガラス基板に求められるガラス組成は、CIGS半導体の成膜プロセス(温度・時間)により異なっており、さらに同一組成のガラス基板においても、表面から数μmの深さまでのアルカリ元素含有量が異なると、アルカリイオンのCIGS半導体への移行・拡散量が異なることが確認されている。

したがって、コストを抑えつつ所望の電池特性を得るために、ガラス基板全体の組成を変えるのではなく、その表面近傍(表面から数μmの深さの表層部)におけるアルカリイオンそれぞれの含有量やそのモル比を調整することが求められている。

従来から、ガラス基板の表層部のみの組成を変える方法として、所望のイオンを含有する溶融塩で浸漬処理してイオン交換化学強化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、溶融塩処理では、バッチ処理のため、コストがかかる。また、アルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を微調整することが難しかった。

概要

ガラス基板の表面近傍のアルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を調整する処理方法を提供する。いずれもアルカリ金属酸化物を含有し、アルカリ金属酸化物それぞれの含有量のモル比が異なる第1のガラス基板4cと第2のガラス基板4dとを重ねて配置した積重基板4を、正極2と負極3との間に、第1のガラス基板4cの第2の主面が負極3に接触するように、かつ第2のガラス基板4dの最外部に位置する主面が正極2に離間して対向するように配置した後、正極2と負極3との間に直流電圧印加してコロナ放電を発生させる。そして、第1のガラス基板4c中および第2のガラス基板4d中のアルカリイオンをそれぞれ負極3に向って移動させ、第1のガラス基板4cの第2のガラス基板4d側の表層部において、アルカリイオンのそれぞれの含有量のモル比を、コロナ放電発生の前と変化させる。

目的

本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ガラス基板の表面近傍のアルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を調整することができ、かつ片面のみの処理が可能である安価で簡便な方法の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有する第1のガラスからなる第1のガラス基板の第1の主面上に、1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有し、該アルカリ金属酸化物のそれぞれの含有量モル比が前記第1のガラスにおけるモル比とは異なる第2のガラスからなる少なくとも1枚の第2のガラス基板を、重ねて配置する工程と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とが重ねて配置された積重基板を、正極と負極との間に、前記第1のガラス基板の第2の主面が前記負極に接触するように、かつ前記第2のガラス基板の最外部に位置する主面が前記正極に離間して対向するように配置した後、前記正極と前記負極との間に直流電圧印加してコロナ放電を発生させる工程を備えることを特徴とするガラス基板の処理方法

請求項2

前記コロナ放電を発生させる工程で、前記第1のガラス基板中および前記第2のガラス基板中の1種または2種以上のアルカリイオンをそれぞれ前記負極に向って移動させ、前記第1のガラス基板の前記第1の主面側の表層部において、アルカリイオンのそれぞれの含有量のモル比を変化させる、請求項1に記載のガラス基板の処理方法。

請求項3

前記第1のガラス基板において、アルカリイオンのそれぞれの含有量の合計モルは、前記コロナ放電を発生させる工程の前後でほぼ一定である、請求項2に記載のガラス基板の処理方法。

請求項4

前記第2のガラスは、酸化ナトリウムの含有量の、酸化ナトリウム以外のアルカリ金属酸化物の含有量に対するモル比が、前記第1のガラスにおけるモル比より大きくなっており、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記第1のガラス基板の前記第1の主面側の表層部において、ナトリウムイオンの含有量の、ナトリウムイオン以外のアルカリイオンの含有量に対するモル比を増大させる、請求項2または3に記載のガラス基板の処理方法。

請求項5

前記第2のガラスは、酸化カリウムの含有量の、酸化カリウム以外のアルカリ金属酸化物の含有量に対するモル比が、前記第1のガラスにおけるモル比より大きくなっており、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記第1のガラス基板の前記第1の主面側の表層部において、カリウムイオンの含有量の、カリウムイオン以外のアルカリイオンの含有量に対するモル比を増大させる、請求項2または3に記載のガラス基板の処理方法。

請求項6

前記正極は前記負極より小さい電極面積を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス基板の処理方法。

請求項7

前記正極はワイヤ状電極であり、このワイヤ状電極を前記積重基板の最外部に位置する第2のガラス基板の外側の主面に対して平行に配置する、請求項6に記載のガラス基板の処理方法。

請求項8

前記正極は針状の電極であり、この針状電極を前記積重基板の最外部に位置する第2のガラス基板の外側の主面に対して垂直に配置する、請求項6に記載のガラス基板の処理方法。

請求項9

前記正極と前記負極との間は、空気または窒素主体とする雰囲気に保持される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス基板の処理方法。

請求項10

前記積重基板の温度は常温〜400℃である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラスの処理方法。

技術分野

0001

本発明は、ガラス基板処理方法係り、より詳しくは、組成において1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を有するガラス基板の表層部を処理する方法に関する。

背景技術

0002

Cu(In,Ga)Se半導体(以下、CIGS半導体と示す。)を用いた太陽電池(以下、CIGS太陽電池と示す。)において、CIGS半導体膜はアルカリ金属酸化物を含有するガラス基板上に形成されており、ガラス基板から半導体中に移行拡散したアルカリイオン(例えば、Na+やK+)がキャリアとして働き、電池効率の上昇に寄与することが知られている。そのため、アルカリイオンの移行、拡散を考慮したガラス基板の組成の検討が行われている。

0003

また、前記ガラス基板に求められるガラス組成は、CIGS半導体の成膜プロセス(温度・時間)により異なっており、さらに同一組成のガラス基板においても、表面から数μmの深さまでのアルカリ元素含有量が異なると、アルカリイオンのCIGS半導体への移行・拡散量が異なることが確認されている。

0004

したがって、コストを抑えつつ所望の電池特性を得るために、ガラス基板全体の組成を変えるのではなく、その表面近傍(表面から数μmの深さの表層部)におけるアルカリイオンそれぞれの含有量やそのモル比を調整することが求められている。

0005

従来から、ガラス基板の表層部のみの組成を変える方法として、所望のイオンを含有する溶融塩で浸漬処理してイオン交換化学強化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、溶融塩処理では、バッチ処理のため、コストがかかる。また、アルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を微調整することが難しかった。

先行技術

0006

特開2010−202514号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ガラス基板の表面近傍のアルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を調整することができ、かつ片面のみの処理が可能である安価で簡便な方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本発明のガラス基板の処理方法は、1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有する第1のガラスからなる第1のガラス基板の第1の主面上に、1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有し、該アルカリ金属酸化物のそれぞれの含有量のモル比が前記第1のガラスにおけるモル比とは異なる第2のガラスからなる少なくとも1枚の第2のガラス基板を、重ねて配置する工程と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とが重ねて配置された積重基板を、正極と負極との間に、前記第1のガラス基板の第2の主面が前記負極に接触するように、かつ前記第2のガラス基板の最外部に位置する主面が前記正極に離間して対向するように配置した後、前記正極と前記負極との間に直流電圧印加してコロナ放電を発生させる工程を備えることを特徴とする。

0009

本発明のガラス基板の処理方法においては、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記第1のガラス基板中および前記第2のガラス基板中の1種または2種以上のアルカリイオンをそれぞれ前記負極に向って移動させ、前記第1のガラス基板の前記第1の主面側の表層部において、アルカリイオンのそれぞれの含有量のモル比を変化させることができる。また、前記第1のガラス基板において、アルカリイオンのそれぞれの含有量の合計モルは、前記コロナ放電を発生させる工程の前後でほぼ一定であることが好ましい。そして、前記第2のガラスは、酸化ナトリウムの含有量の、酸化ナトリウム以外のアルカリ金属酸化物の含有量に対するモル比が、前記第1のガラスにおけるモル比より大きくなっており、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記第1のガラス基板の前記第1の主面側の表層部において、ナトリウムイオンの含有量の、ナトリウムイオン以外のアルカリイオンの含有量に対するモル比を増大させることができる。また、前記第2のガラスは、酸化カリウムの含有量の、酸化カリウム以外のアルカリ金属酸化物の含有量に対するモル比が、前記第1のガラスにおけるモル比より大きくなっており、前記コロナ放電を発生させる工程で、前記第1のガラス基板の前記第1の主面側の表層部において、カリウムイオンの含有量の、カリウムイオン以外のアルカリイオンの含有量に対するモル比を増大させることができる。

0010

また、本発明のガラス基板の処理方法において、前記正極は前記負極より小さい電極面積を有することが好ましい。そして、前記正極はワイヤ状電極であり、このワイヤ状電極を前記積重基板の最外部に位置する第2のガラス基板の外側の主面に対して平行に配置することができる。また、前記正極は針状の電極であり、この針状電極を前記積重基板の最外部に位置する第2のガラス基板の外側の主面に対して垂直に配置することができる。

0011

さらに、本発明のガラス基板の処理方法において、前記正極と前記負極との間は、空気または窒素主体とする雰囲気に保持できる。また、前記積重基板の温度は常温〜400℃であることが好ましい。

0012

本発明において、「コロナ放電」とは、正極と負極との間に必要かつ十分な大きさの直流電圧(コロナ放電開始電圧)を印加することにより、被処理物であるガラス基板から離間して配置された正極の周りに不均一な電界が生じることによって起こる、持続的な放電をいう。なお、この放電は、電極間に存在する気体電離局所的に限られた局部放電(部分放電)で、多数のストリーマ集合体であり、前記した直流電圧を維持している間継続して発生する。電圧を上げると、コロナ放電は負極に向かって進展し、1つのストリーマが負極に接近ないし到着すると、火花放電へと瞬時のうちに移行する。本発明では、基本的に、火花放電には移行しない持続的なコロナ放電を行わせる。

0013

本発明において、「アルカリイオン」は、第1のガラス基板および第2のガラス基板を構成する第1のガラスおよび第2のガラスに含まれるアルカリ金属酸化物を構成するアルカリ金属のイオンをいう。

発明の効果

0014

本発明の処理方法によれば、第1のガラス基板と第2のガラス基板とが重ねて配置された積重基板において、負極側に配置した第1のガラス基板の第2のガラス基板に接する主面近傍のアルカリイオンの含有量のモル比を、第1のガラス基板全体の組成を変えることなく、調整することができる。また、片面のみの処理が可能であり、安価な方法である。

図面の簡単な説明

0015

本発明の実施形態に使用される表面処理装置の一例を示し、図1(a)は概略構成を示す正面図であり、図1(b)は、積重基板に対する正極の配置を示す上面図である。
本発明の実施形態に使用される表面処理装置の別の例を示し、図2(a)は概略構成を示す正面図であり、図2(b)は、積重基板に対する正極の配置を示す上面図である。
本発明の実施例の処理方法を示す図である。
実施例1において、KBSi基板の上面側表層部における元素濃度を深さ方向に測定した結果を示すグラフである。
実施例2において、NaBSi基板の上面側表層部における元素濃度を深さ方向に測定した結果を示すグラフである。

0016

以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の処理方法の実施形態では、まず、第1のガラス基板の一方の主面である第1の主面上に、少なくとも1枚の第2のガラス基板を重ねて配置し、こうして得られた積重基板を、正極と負極との間に、第2のガラス基板のうちで最外部に配置されたガラス基板の外側の主面、すなわち他のガラス基板と接触していない非接触側の主面が、正極から離間し、かつ第1のガラス基板の他方の主面である第2の主面が負極に接触するように配置する。
なお、第1のガラス基板と第2のガラス基板は、いずれも1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有するガラスからなる基板である。そして、第1のガラス基板を構成する第1のガラスと第2のガラス基板を構成する第2のガラスとでは、1種または2種以上のアルカリ金属酸化物それぞれの含有量のモル比が異なっている。

0017

こうして積重基板を配置した後、正極と負極との間に直流電圧を印加して、電極間にコロナ放電を発生させ、発生したコロナ放電により、第1のガラス基板中および第2のガラス基板中の1種または2種以上のアルカリイオンを、それぞれ負極に向って移動させる。第1のガラス基板を構成する第1のガラス、および第2のガラス基板を構成する第2のガラスは、いずれも組成において1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有するので、コロナ放電により、第1のガラスおよび第2のガラスに含有されるアルカリ金属酸化物を構成する1種または2種以上のアルカリ金属のイオン(アルカリイオン)が、第1のガラス基板中および第2のガラス基板中を負極に向って移動する。そして、このようなアルカリイオンの移動において、アルカリイオンの種類により移動のしやすさが異なる。また、第1のガラス基板と第2のガラス基板との界面近傍では、第1のガラス基板におけるアルカリイオンの移動により形成されたカチオン脱離部の電荷補償するように、第2のガラス基板から第1のガラス基板へと界面を越えたアルカリイオンの移動が生じる。その結果、第1のガラス基板の第2のガラス基板との界面側の表層部において、アルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を変化させることができる。
なお、第1のガラス基板の前記表層部は、例えば、表面から0.5〜1.6μmの深さまでの部分をいうものとする。

0018

具体的には、第1のガラスおよび第2のガラスが、アルカリ金属酸化物として酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)のうちの少なくとも1種を含有する場合、これらのアルカリ金属酸化物を構成するアルカリ金属のイオンであるリチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)が、コロナ放電により、第1のガラス基板中および第2のガラス基板中をそれぞれ負極に向って移動する。その結果、第1のガラス基板の第2のガラス基板と接する第1の主面側の表層部におけるリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンそれぞれの含有量のモル比が、コロナ放電処理の前とは変化する。
ここで、処理の前後でリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンそれぞれの含有量のモル比が変化するとは、処理前後の各アルカリイオンの含有量を、リチウムイオンについてはaおよびA、ナトリウムイオンについてはbおよびB、カリウムイオンについてはcおよびCとしたとき、a:b:c≠A:B:Cであることをいう。すなわち、a:b≠A:B、a:c≠A:C、b:c≠B:Cという3つの不等式のいずれかが成り立つことをいう。

0019

<被処理物である積重基板>
本発明の方法により処理される積重基板は、組成において1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有する第1のガラスからなる第1のガラス基板の上に、組成において1種または2種以上のアルカリ金属酸化物を含有し、それらアルカリ金属酸化物それぞれの含有量のモル比が、第1のガラスとは異なる第2のガラスからなる第2のガラス基板を、重ねて配置したものである。第1のガラス基板と第2のガラス基板は、直接接触させて重ねることが好ましい。

0020

第1のガラス基板上に重ねて配置される第2のガラス基板の枚数は、処理作業の効率の観点から1枚であることが好ましいが、薄いものであれば2枚以上であってもよい。積重基板全体の厚さは、コロナ放電によるアルカリイオンの移動が可能な厚さとする。後述する処理条件の場合、具体的には0.5〜5mmとすることが好ましい。そして、積重基板全体の厚さがこのような範囲になるように、第1のガラス基板の厚さに合わせて第2のガラス基板の厚さおよび枚数を調整することができる。第2のガラス基板を構成する複数のガラス基板は、それぞれ直接接触させて重ねることが好ましい。

0021

第1のガラスおよび第2のガラスが含有するアルカリ金属酸化物としては、前記したように、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)等が挙げられる。第1のガラスおよび第2のガラスは、これらのアルカリ金属酸化物以外に、SiO2を含有することができる。さらに、Al2O3、B2O3等を含有しても良い。

0022

第1のガラスおよび第2のガラスの組成は、前記アルカリ金属酸化物の少なくとも1種を含有するものであれば特に限定されないが、処理の容易性の観点から、例えば、酸化物基準のモル%表示で、酸化ナトリウム(Na2O)と酸化カリウム(K2O)のうちの少なくとも1種を0.5〜20モル%含有するシリケートガラスアルミノシリケートガラス、またはホウケイ酸ガラスボロシリケートガラス)を挙げることができる。

0023

また、第1のガラスとしては、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)および酸化カリウム(K2O)からなる群から選択される1種以上と、SiO2を含むガラスを挙げることができる。例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiO2を45〜80%、Al2O3を0〜18%、B2O3を0〜15%、Li2Oを0〜15%、Na2Oを0〜20%、K2Oを0〜15%で(Li2O+Na2O+K2O)を5〜20%、MgOを0〜12%、CaOを0〜12%、SrOを0〜12%、BaOを0〜10%、ZrO2を0〜5%、TiO2を0〜5%含有するガラスを挙げることができる。なお、このガラス組成は、前記したCIGS太陽電池用のガラス基板を構成するガラスとして好適する組成である。
以下、このガラスを構成する各成分について説明する。なお、%はいずれも酸化物基準のモル%を表す。

0024

SiO2はガラスの骨格を構成する成分である。SiO2の含有割合が45%以上であると、ガラスの耐熱性および化学的耐久性が良好であり、平均熱膨張係数が低い。SiO2の含有割合は、より好ましくは55%以上である。一方、SiO2の含有割合が80%以下であると、ガラス粘性および溶融性が良好である。SiO2の含有割合は、より好ましくは75%以下である。

0025

Al2O3は必須成分ではないが、ガラス転移点温度を上げ、耐候性、耐熱性および化学的耐久性を向上し、ヤング率を上げ、またイオンの移動速度を向上させるため、含有してもよい成分である。Al2O3の含有割合は、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは1%以上である。一方、Al2O3の含有割合が18%以下であると、ガラス粘性および溶融性が良好である。Al2O3の含有割合は、より好ましくは15%以下である。

0026

B2O3は必須成分ではないが、高温での溶融性またはガラス強度の向上のために含有してもよい成分である。B2O3の含有割合が15%以下であると、半導体製膜時の膨張特性ガラス製造時の失透特性が良好である。

0027

Na2Oは、CIGS太陽電池の発電効率向上に寄与する成分である。また、ガラスの溶融性を向上させるとともに、コロナ放電によって移動するナトリウムイオンを有する。Na2Oの含有割合が20%以下であると、平均熱膨張係数が大きくなりすぎず、溶解性や失透特性が良い。また、化学的耐久性、ヤング率が高く保たれるため、良好なガラスが得られる。Na2Oの含有割合は、より好ましくは16%以下である。また、Na2Oの含有割合は、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは10%以上である。

0028

K2OもNa2Oと同様の効果があるため、15%以下含有させることができる。K2Oの含有割合が15%以下であると、平均熱膨張係数が大きくなりすぎず、溶解性や失透特性が良い。また、化学的耐久性、ヤング率が高く保たれるため良好なガラスが得られる。K2Oの含有割合は、より好ましくは12%以下である。

0029

さらに、Li2OもNa2Oと同様の効果があるため、15%以下含有させることができる。Li2Oの含有割合が15%以下であると、平均熱膨張係数が大きくなりすぎず、溶解性や失透特性が良い。また、化学的耐久性、ヤング率が高く保たれるため良好なガラスが得られる。Li2Oの含有割合は、より好ましくは12%以下である。

0030

コロナ放電による処理効果を上げるとともに、ガラスの溶融性を向上させ、またCIGS太陽電池の発電効率向上のために、Li2OとNa2OとK2Oの含有割合の合計(Li2O+Na2O+K2O)は5%〜20%とする。好ましくは8%以上である。しかし、(Li2O+Na2O+K2O)が20%超では、ガラス転移点温度が下がりすぎるおそれがある。(Li2O+Na2O+K2O)は15%以下が好ましい。

0031

MgOは、ガラスの溶融時の粘性を下げ、溶融を促進する効果があるので含有させることができる。MgOの含有割合が12%以下であると、平均熱膨張係数が大きすぎず、製造特性が良い。MgOの含有割合はより好ましくは8%以下である。

0032

CaOは、ガラスの溶融時の粘性を下げ、溶融を促進する効果があるので含有させることができる。CaOの含有割合が12%以下であると、平均熱膨張係数が大きすぎず、製造特性が良い。CaOの含有割合は好ましくは9%以下である。

0033

SrOは、ガラスの溶融時の粘性を下げ、溶融を促進する効果があるので含有させることができる。SrOの含有割合が12%以下であると、平均熱膨張係数が大きすぎず、製造特性が良い。また、SrOを含有するガラスは密度が高く脆いため、SrOの含有割合は8%以下が好ましい。

0034

BaOも、ガラスの溶融時の粘性を下げ、溶融を促進する効果があるので含有させることができる。BaOの含有割合が10%以下であると、平均熱膨張係数が大きすぎず、製造特性が良い。また、BaOを含有するガラスは密度が高く脆いため、BaOの含有割合は8%以下が好ましい。

0035

ガラスの溶融時の粘性を下げ、溶融を促進する観点から、MgOとCaOとSrOとBaOの含有量の合計(MgO+CaO+SrO+BaO)は、3.5%以上とすることが好ましい。より好ましくは5%以上である。(MgO+CaO+SrO+BaO)が27%以下であると、失透しにくく、製造特性が良い。

0036

ZrO2は、ガラスの溶融時の粘性を下げ、溶融を促進する効果があるので含有させることができる。ZrO2の含有割合が5%以下であると、失透しにくく、製造特性が良い。ZrO2の含有割合は5%以下が好ましい。また、ZrO2の含有割合は好ましくは0.5%以上である。

0037

TiO2は、ガラスの溶融性向上のために含有させることができる。TiO2の含有割合が5%以下であると、失透しにくく、製造特性が良い。

0038

第2のガラスとしては、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)および酸化カリウム(K2O)からなる群から選択される1種以上と、SiO2を含むガラスを挙げることができる。Na2O:K2O(モル比)=3:7〜8:2であることが好ましい。例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiO2を50〜80%、Al2O3を0.5〜15%、B2O3を0〜10%、Na2Oを10〜16%、K2Oを0〜8%、Li2Oを0〜12%、CaOを0〜10%、MgOを0〜12%、その他SrO、BaO、ZrO2、ZnO、SnO2などを合計で10%未満含有するガラスを挙げることができる。このガラスを構成する各成分の作用、より好ましい含有割合とその理由等については、前記第1のガラスについての記載と同様である。

0039

第1のガラスとして好ましい組成の一例、および第2のガラスとして好ましい組成の一例を、それぞれ表1に示す。

0040

このような組成を有する第1のガラスおよび第2のガラスから構成される第1のガラス基板および第2のガラス基板の形状は、互いに平行な一対の主面を有する形状であれば、平板状でも曲板状でもよいが、一対の主面が平坦な平面である平板状のものが好ましい。

0041

<正極および負極>
本発明の実施形態においては、直流電圧が印加される一方の電極である正極は、積重基板を構成する1枚または2枚以上の第2のガラス基板のうちで、最外部に配置されたガラス基板の外側の主面(例えば上面)から所定の距離だけ離間した位置に配置される。そして、直流電圧が印加される他方の電極である負極は、被処理物である積重基板を構成する第1のガラス基板において、第2のガラス基板と接していない側の主面である第2の主面(例えば下面)に接触するように配置される。

0042

最外部に配置された第2のガラス基板の上面と正極との距離は、正極の形状や印加電圧等によっても異なるが、この距離が大きいほど、放電電流が小さくなってコロナ放電が弱くなるため、0mmより大きくし、かつ30mm以下が好ましい。さらには、前記距離が近いほど、放電電流は放物的に大きくなってコロナ放電が強くなるため、0mmより大きく、かつ10mm以下がより好ましい。

0043

ここで、正極は負極より電極面積が小さいことが好ましい。なお、「電極面積」とは、正極については、被処理物である積重基板を構成する第2のガラス基板の主面に投影された電極の面積をいい、負極については、第1のガラス基板の第2の主面に接触する面積をいう。後述するように、正極が複数本のワイヤ状の電極または針状の電極の集合体である場合、「電極面積」は、各ワイヤ状電極または各針状電極についての前記「電極面積」の合計をいう。

0044

正極としては、ワイヤ状の電極、または先端に尖鋭部を有する針状の電極を使用できる。これらワイヤ状電極および針状電極は、1本を単独で使用してもよいし、複数本を互いに所定の間隔をおいて配置した集合体を正極としてもよい。このように、複数本のワイヤ状電極または針状電極を所定の間隔をおいて配置した集合体を正極とすることで、積重基板の均一な処理が可能となる。

0045

本発明の処理方法に用いられる装置の例を、図1および図2に示す。図1(a)および図2(a)は、処理装置1の構成を概略的に示す正面図であり、図1(b)および図2(b)は、積重基板に対する正極の配置を説明するための上面図である。図1に示す処理装置1においては、正極2としてワイヤ状電極2aが設けられ、図2に示す処理装置1においては、正極2として針状電極2bが設けられている。なお、これらの図において、符号3は負極を示し、符号4は被処理物である積重基板を示す。この積重基板4は、第1のガラス基板4aの第1の主面(例えば上面)に、第2のガラス基板4bの1枚が重ねて配置されたものである。また、これらの図において、符号5は直流電源を示し、符号6は回路を流れる電流モニタするための電流計を示す。

0046

図1に示す処理装置1において、正極2であるワイヤ状電極2aは、コロナ放電の発生しやすさの観点から、細い方がよいが、強度と取り扱い易さの点で、ワイヤ状電極2aの直径は0.03〜0.1mmが好ましい。また、ワイヤ状電極2aは、積重基板4の上面に対して平行に配置することが好ましい。正極2として複数本のワイヤ状電極2aを用いる場合、各ワイヤ状電極2aは、図1(b)に示すように、0mmより大きく、第2のガラス基板4bとワイヤ状電極2aとの距離と同程度の間隔dをおいて互いに平行に、かつ積重基板4の上面に平行な平面上に配置することが、均一に処理する上で好ましい。後述するように、積重基板4をワイヤ状電極2aに対して平行に運動させる場合は、処理ムラ緩和されるので、各ワイヤ状電極2aの間隔はより大きくできる。

0047

正極2として1本のワイヤ状電極2aを単独で配置する場合には、積重基板4を面方向に均一に処理し、第1のガラス基板4aの第1の主面側表層部におけるアルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を、面方向に均一に変化させるために、積重基板4と一体とした負極3を、正極2であるワイヤ状電極2aに対して相対的に運動させることが好ましい。具体的には、積重基板4を載せた状態で、負極3をワイヤ状電極2aの配設方向に対して直交する方向に運動させることが好ましい。この運動は、直線運動往復直線運動であることがより好ましいが、回転運動揺動であってもよい。

0048

図2に示す処理装置1において、正極2である針状電極2bは、根元部の直径が0.1〜2mmであることが好ましく、針状電極2bの先端尖鋭部を第2のガラス基板4bの上面に向け、かつ上面に垂直に配置することが好ましい。正極2として複数本の針状電極2bを用いる場合、各針状電極2bは、互いに平行で第2のガラス基板4bの上面に垂直とし、かつ先端部が第2のガラス基板4bの上面から等しい距離となるように配置することが好ましい。また、各針状電極2bの配設は、図2(b)に示すように、0mmよりも大きく、かつ第2のガラス基板4bと針状電極2bとの距離と同程度の間隔dで千鳥状または碁盤状等の均等配置が、積重基板4表面を均一に処理するうえで好ましい。積重基板4を針状電極2bに対して平行に運動させる場合は、処理ムラが緩和されるので、各針状電極2bの間隔はより大きくできる。

0049

針状電極2bの先端部の角度(先端角)は小さく鋭角であるほど、直下の電界強度が大きくなるので、針状電極2bの先端角を調整することで、正極2近傍の電界強度を調整できる。針状電極2bの先端角は、1〜15度が好ましく、1〜9度がより好ましい。
ワイヤ状電極2aおよび針状電極2bにおいては、表面に、金、白金、その他貴金属等の耐食性導電性膜を設けると、電界強度が均一となり、かつ電極としての耐久性が向上する。

0050

図1および図2に示す処理装置1において、負極3は、平板状や曲板状など、被処理物である積重基板4を構成する第1のガラス基板4aの下面に合わせた形状とする。また、孔あき部を有するメッシュ状のものなど、第1のガラス基板4aと面内で均一に接触するものでもよい。
このような負極3を、第1のガラス基板4aの下面に接触するように配置することで、第1のガラス基板4aへの通電性が向上するため、印加電圧を高くできる。負極3の第1のガラス基板4aと接する面にITO等の導電膜を設けることで、さらに通電性を向上できる。

0051

次に、本発明の実施形態における処理の条件(ガラス基板の温度、処理雰囲気など)について説明する。

0052

<積重基板の温度>
積重基板の温度、すなわち積重基板を構成する第1のガラス基板および第2のガラス基板の温度は、常温から400℃が好ましい。400℃以下の温度とすることで、第1および第2のガラス基板の変形や電極の劣化を防止できる。また、前記温度範囲ガラス転移点よりも温度が低く、ガラスは粘性が十分に大きい固体状態を呈するため、第1および第2のガラス基板中のアルカリイオンが動き過ぎるということがなく、アルカリイオンの移動方向が電界方向である負極に向う方向に限定されるので、コロナ放電による処理の効率が高い。積重基板の温度は、100〜300℃がより好ましい。ただし、ガラス転移点が400℃以下の場合、積重基板の温度はさらに低い温度がより好ましい。

0053

<印加電圧>
正極と負極との間に印加する直流電圧は、正極からコロナ放電を発生させる電圧である。この印加電圧は、正極の形状や被処理物である積重基板の温度によっても変わるが、3〜12kVの範囲とする。印加電圧が3kV未満ではコロナ放電が発生しにくい。印加電圧が12kVを超えると、アーク放電が生じやすくなり、コロナ放電を継続するのが難しい。

0054

本発明の実施形態において、このような直流電圧の印加により被処理物である積重基板を流れる電流は、電子の移動による電流と、アルカリイオンの移動による電流の両者を含むものである。処理過程で積重基板を流れる電流は、0.01〜0.5mAの範囲であり、単位面積当たり電気量は、10〜500mC/cm2の範囲であることが好ましい。

0055

<処理雰囲気>
被処理物である積重基板が配置された正極と負極との間は、空気または窒素を主体とする雰囲気に保持できる。ここで、「空気または窒素を主体とする雰囲気」とは、空気または窒素の含有割合が雰囲気ガス全体の50体積%を超える気体状態をいう。
前記したように、負極は第1のガラス基板の第2の主面(例えば下面)に接触するように配置され、負極と第1のガラス基板との間の通電性が向上されているので、ヘリウムアルゴンのようなプラズマ形成ガスの雰囲気にする必要がない。すなわち、空気または窒素を主体とする雰囲気で、正極の周りにコロナ放電を発生させ、この放電により積重基板の処理を行うことができる。

0056

本発明の実施形態においては、第1のガラス基板上に第2のガラス基板が重ねて配置された積重基板に対してこのようにコロナ放電による処理を行うことで、第1のガラスおよび第2のガラスに含有されるアルカリ金属酸化物の有するアルカリイオンを、それぞれ負極に向って移動させることができる。そして、第1のガラス基板と第2のガラス基板との界面近傍では、第1のガラス基板におけるアルカリイオンの移動により形成されたカチオン脱離部の電荷を補償するように、第2のガラス基板から第1のガラス基板へと界面を越えたアルカリイオンの移動が生じるので、第1のガラス基板の前記界面側の表層部において、アルカリイオンそれぞれの含有量のモル比を処理前に比べて変化させることができる。
なお、本発明の実施形態において、第1のガラス基板の前記界面側の表層部におけるアルカリイオンそれぞれの含有量のモル比は、コロナ放電による処理の前後で変化するが、各アルカリイオンの含有量の合計モルは、処理の前後でほぼ一定であることが好ましい。すなわち、コロナ放電による処理の前後で、第1のガラス基板の各アルカリイオンの含有量の合計モルは、表層部においても、ガラス基板の全体においても、ほぼ一定であることが好ましい。なお、「ほぼ一定」とは、プラスマイナス5%の誤差許容する意味である。

0057

具体的な処理では、第1のガラスおよび第2のガラスの組成(ガラス全体の平均組成)として、第2のガラスにおける酸化ナトリウムの含有量の、酸化ナトリウム以外のアルカリ金属酸化物の含有量に対するモル比が、第1のガラスにおけるモル比より大きくなるようにすることで、コロナ放電処理により、第1のガラス基板の前記表層部において、ナトリウムイオンの含有量の、ナトリウムイオン以外のアルカリイオンの含有量に対するモル比を増大させることができる。
また、第2のガラスにおける酸化カリウムの含有量の、酸化カリウム以外のアルカリ金属酸化物の含有量に対するモル比を、第1のガラスにおけるモル比より大きくすることで、コロナ放電処理により、第1のガラス基板の前記表層部において、カリウムイオンの含有量の、カリウムイオン以外のアルカリイオンの含有量に対するモル比を増大させることができる。

0058

以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0059

実施例1
図3に示すように、酸化物基準のモル%表示でSiO2を70%、B2O3を10%、K2Oを20%含有するボロシリケートガラスの基板(主面が25mm×25mmの矩形、厚さ1mm)(以下、KBSi基板4cと示す。)の上に、SiO2を70%、B2O3を10%、Na2Oを20%含有するボロシリケートガラスからなり、KBSi基板4cと同サイズで同じ厚さの基板(以下、NaBSi基板4dと示す。)を重ねて配置した積重基板4を、正極2の針状電極2bと負極3との間に配置し、コロナ放電による処理を行った。

0060

この処理装置1において、負極3は、接地された平板状電極電極材料カーボン電極サイズ25mm×25mm)であり、この負極3の上に前記積重基板4をKBSi基板4cを下側にして載せ、水平に配置した。また、根元の直径1mmの1本の針状電極2bを、その先端部を前記積重基板4に向け、かつ積重基板4の上面すなわちNaBSi基板4dの表面に垂直になるように配置した。針状電極2bの先端部とNaBSi基板4dの表面との距離は5mmとした。なお、針状電極2bは、鉄(炭素鋼)からなる針状体の表面に、スパッタ法で厚さ0.05μmのクロム下地コートした後、厚さ1μmの白金をコートしたものを使用した。さらに、正極2である針状電極2bと負極3との間は、大気雰囲気とした。

0061

こうして、積重基板4を200℃に加熱しつつ、直流電源5により正極2である針状電極2bと負極3の間に電圧を印加した。印加電圧は、18分間かけて4.5kVまで上昇させ、この電圧で720分間処理を継続した。なお、処理中、回路に設置された電流計(図示を省略。)で電流値を測定したところ、最高9μAで平均電流値は7.5μAであった。

0062

720分間表面処理を行った後、積重基板4において下側に配置されたKBSi基板4cのNaBSi基板4dと接する上面側の表層部の組成を、C60−XPS(X線光電子分光分析)によって調べた。C60−XPSの測定では、処理後のKBSi基板4cの上面を、C60のイオンスパッタによりエッチングしながらXPSを行い、KBSi基板4cの上面側表層部におけるアルカリ等の元素の含有割合(濃度)を深さ方向に調べた。測定結果を、図4のグラフに示す。

0063

図4のグラフから、以下に示すことがわかる。
すなわち、下側のKBSi基板の上面側表層部においては、処理前には存在しなかったナトリウム(Na)が存在しており、その濃度は表面から200〜300nmの深さの位置で最大となり、深さが増すにつれて漸減している。また、前記上面側表層部におけるカリウム(K)の濃度は、深さが増すにつれて増大しており、コロナ放電処理により、KBSi基板中に処理前から存在したカリウムイオンが負極に向って移動していることを示している。さらに、NaとKの濃度の合計は、表面からの深さに関係なくほぼ一定となっている。

0064

このような測定結果から、以下に示す考察が得られる。
下側のKBSi基板の上面側表層部におけるNaの存在は、コロナ放電処理により、上側のNaBSi基板に含有されたナトリウムイオンが、負極に向ってKBSi基板との界面を越えて移動して、KBSi基板中に導入されていることを示している。そして、KBSi基板の上面側表層部において、NaとKの濃度の合計が表面からの深さに関係なくほぼ一定となっていることから、前記界面を越えたナトリウムイオンの導入は、KBSi基板の上面側表層部でのカリウムイオンの負極に向っての移動に伴って形成されたカチオン脱離部の電荷を補償するように行われている、と考えられる。

0065

実施例2
実施例1で使用したNaBSi基板4dの上に、実施例1で使用したKBSi基板4cを重ねて配置した。この積重基板を、図3に示す処理装置1の正極2と負極3との間に配置し、コロナ放電による処理を行った。コロナ放電による処理条件は、実施例1と同じであった。

0066

処理を行った後、下側に配置されたNaBSi基板4dのKBSi基板4cと接する上面側の表層部の組成を、実施例1と同様にC60−XPSによって調べ、アルカリ等の元素の含有割合(濃度)を深さ方向に測定した。測定結果を、図5のグラフに示す。

0067

図5のグラフから、以下に示すことがわかる。
すなわち、下側のNaBSi基板の上面側表層部においては、処理前には存在しなかったカリウム(K)が存在しており、その濃度は表面からの深さが増すにつれて減少している。また、前記上面側表層部におけるナトリウム(Na)の濃度は、深さが増すにつれて増大しており、コロナ放電処理により、NaBSi基板中に処理前から存在したナトリウムイオンが負極に向って移動していることを示している。さらに、NaとKの濃度の合計は、表面からの深さに関係なくほぼ一定となっている。

0068

この測定結果から得られた考察を以下に示す。
下側のNaBSi基板の上面側表層部におけるKの存在は、コロナ放電処理により、上側のKBSi基板に含有されたカリウムイオンが、負極に向ってNaBSi基板との界面を越えて移動して、NaBSi基板中に導入されていることを示している。そして、NaBSi基板の上面側表層部において、NaとKの濃度の合計が表面からの深さに関係なくほぼ一定となっていることから、前記界面を越えたカリウムイオンの導入は、NaBSi基板の上面側表層部でのナトリウムイオンの負極に向っての移動に伴って形成されたカチオン脱離部の電荷を補償するように行われている、と考えられる。

実施例

0069

さらに、実施例1におけるKBSi基板の上面側表層部におけるNaの濃度と、実施例2におけるNaBSi基板の上面側表層部におけるKの濃度とを比べると、後者の方が大きくなっているが、これは下側のガラス基板中のカチオンの動きやすさに依るものと考えられる。すなわち、実施例2において下側のNaBSi基板のカチオンであるナトリウムイオンは、実施例1において下側のKBSi基板のカチオンであるカリウムイオンに比べて、イオン半径が小さく、コロナ放電処理により負極に向って移動しやすいので、下側ガラス基板の上面側表層部においてカチオン脱離部が形成されやすい。そのため、このようなカチオン脱離部の電荷を補償するように上側ガラス基板から導入されるカチオンであるカリウムイオンの量も多くなり、その結果下側のNaBSi基板の上面側表層部におけるKの濃度が大きくなると考えられる。

0070

本発明の処理方法によれば、ガラス基板の表面近傍の1種または2種以上のアルカリイオンの含有量のモル比を、基板全体の組成を変えることなく調整することができる。また、ガラス基板の片面のみの処理が可能である。
したがって、本発明の方法を用いることで、CIGS太陽電池の半導体膜用のガラス基板において、表層部のアルカリイオンの含有量のモル比を、安価にかつ簡単に調整することができる。

0071

1…表面処理装置、2…正極、2a…ワイヤ状電極、2b…針状電極、3…負極、4…積重基板、4a…第1のガラス基板、4b…第2のガラス基板、5…直流電源。

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