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技術 中空シャフト鍛造品の鍛造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 持田俊介荒木重臣小島壮一郎村上昌吾長田卓本田恭英
出願日 2013年8月26日 (6年10ヶ月経過) 出願番号 2013-174598
公開日 2015年3月5日 (5年4ヶ月経過) 公開番号 2015-042413
状態 特許登録済
技術分野 鍛造
主要キーワード 有底筒状部材 耐衝撃破壊性 中空棒状 チタン部品 フランジ孔 液体ガラス ガラス潤滑剤 金型支持機構
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課題

鍛造中に被加工材金型との焼き付きを防止すると共に、高い相当ひずみを付与して所望とする機械的特性を有する中空シャフト鍛造品を鍛造する中空シャフト鍛造品の鍛造方法を提供する。

解決手段

β熱処理後のビレット30を凹状の被加工材34に鍛造し、被加工材34を漏斗状の凹部を有する下金型2に装入上金型7の凸状のポンチ8を押し付けて漏斗状の中空シャフト鍛造品37を得るために、予め被加工材34の内周面外周面潤滑剤20を塗布すると共に被加工材34の外周面に塗布される潤滑剤20の量を内周面に塗布される潤滑剤20の量より多くし、金型2,7を200℃以上600℃以下に熱した上で下金型2内の被加工材34に対して上金型7を押し付けて鍛造し、β熱処理後のα+β鍛造における相当ひずみの累積量が1.6以上となる中空シャフト鍛造品37を成型する。

概要

背景

一般に、Ti-6Al-4Vなどのチタン合金は、優れた機械特性耐熱性を有することから、航空機や車両などの輸送機器エンジン部材、あるいはシャーシなどの構造部材に用いられている。
このようなチタン合金を用いて上述した構造部材に用いられる中空鍛造品中空シャフト鍛造品)を鍛造する方法として、金型を用いた熱間押出鍛造方法が用いられる。熱間押出鍛造方法は、予め製品形状を模して形成された金型内に加熱された被加工材装入し、被加工材を高温状態に保持したまま金型に沿った形状に引き伸ばすように変形させながら鍛造するものである。熱間押出鍛造方法を用いれば、鍛造中の変形において製品形状に沿ったメタルフローが得られるため他の加工方法に比べてより粘り強く、耐衝撃破壊性など機械的特性に優れた中空鍛造品を得ることができる。

中空鍛造品を鍛造する技術としては、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されたものがある。
特許文献1には、穴加工を施した中空棒状難加工材の端部に穴を閉塞しないように据込み加工を施して肉厚部を形成し、次いで、その穴加工を施した中空棒状難加工材の穴に押込みパンチを押し込んで型入れ鍛造を行う難加工材の型入れ鍛造方法が開示されている。

特許文献2には、大径部と小径部とが段差部を介して軸方向に並設される成形部が形成された成形型と、前記大径部の内径よりも小径の外径を有する押圧ポンチとを用い、前記大径部内に円柱状素材を保持してこの円柱状素材の端面を前記押圧ポンチで小径部方向へ押圧し、筒状部材又は有底筒状部材を鍛造により成形する方法であって、前記押圧ポンチの押圧により、この押圧ポンチによって押圧される前記素材押圧側端部が押圧ポンチによる押圧方向とは逆方向に流動可能な状態で、かつ前記押圧側端部と反対側に位置する反対側端部を前記押圧方向と同じ方向へ流動させる前後方押出鍛造を行う前後方押出工程が含まれ、前記前後方押出工程では、前記段差部の領域における素材の最小肉厚が、前記大径部の領域における素材の最小肉厚よりも薄くならない範囲で前記押圧ポンチによる素材の押圧を行う筒状部材又は有底筒状部材の製造方法が開示されている。

また、中空鍛造品を鍛造する技術とは異なるが、チタン合金製の鍛造品を鍛造する技術が特許文献3に開示されている。
すなわち、特許文献3には、チタンビレットをα−β温度範囲内の温度に加熱し、そのチタンビレットを、当該チタンビレットの温度より約500°F低い温度を有する第1のダイ中に押し出すことを含んでなる、チタン部品ニアネットシェイプ鍛造する方法が開示されている。

概要

鍛造中に被加工材と金型との焼き付きを防止すると共に、高い相当ひずみを付与して所望とする機械的特性を有する中空シャフト鍛造品を鍛造する中空シャフト鍛造品の鍛造方法を提供する。β熱処理後のビレット30を凹状の被加工材34に鍛造し、被加工材34を漏斗状の凹部を有する下金型2に装入し上金型7の凸状のポンチ8を押し付けて漏斗状の中空シャフト鍛造品37を得るために、予め被加工材34の内周面外周面潤滑剤20を塗布すると共に被加工材34の外周面に塗布される潤滑剤20の量を内周面に塗布される潤滑剤20の量より多くし、金型2,7を200℃以上600℃以下に熱した上で下金型2内の被加工材34に対して上金型7を押し付けて鍛造し、β熱処理後のα+β鍛造における相当ひずみの累積量が1.6以上となる中空シャフト鍛造品37を成型する。

目的

本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、鍛造中に被加工材と金型との焼き付きを防止すると共に、中空シャフト鍛造品全体に高い相当ひずみを付与して所望とする機械的特性を有する中空シャフト鍛造品を鍛造する中空シャフト鍛造品の鍛造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

鋳片を所定の径のビレット鍛造し、当該ビレットに対してβ熱処理を行い、β熱処理後のビレットを前記所定の径より細径とされた細長のビレットに鍛造し、前記細長のビレットを凹状の被加工材に鍛造しておき、その後、前記凹状の被加工材を、軸状の孔部と当該孔部の上部に連接して形成された漏斗状の凹部を有する下金型装入すると共に、前記被加工材に対して、中央部に下方を向く凸状のポンチを有する上金型押し付けて鍛造を行うことにより、中空且つ漏斗状のシャフト鍛造品を得る中空シャフト鍛造品の鍛造方法であって、前記シャフト鍛造品を得る鍛造の前準備として、前記被加工材を下金型に装入する前に、当該被加工材の内周面及び外周面潤滑剤を塗布すると共に、前記被加工材の外周面に塗布される潤滑剤の量を、前記被加工材の内周面に塗布される潤滑剤の量より多いものとしておき、前記下金型及び上金型を200℃以上600℃以下に熱した上で、前記下金型内に装入された被加工材に対して上金型を押し付けて鍛造を行うことで、前記β熱処理後のα+β鍛造における相当ひずみ累積量が1.6以上となるように、前記シャフト鍛造品を成型することを特徴とする中空シャフト鍛造品の鍛造方法。

請求項2

前記被加工材に塗布される潤滑剤には、液体潤滑剤粉末潤滑剤とが用いられ、前記被加工材の内周面及び外周面に液体潤滑剤を塗布し、その後、前記液体潤滑剤が塗布された被加工材を加熱し、加熱後の被加工材の外周面に粉末潤滑剤を塗布することを特徴とする請求項1に記載の中空シャフト鍛造品の鍛造方法。

請求項3

前記被加工材の外周面は、上面と下面及び前記上面と下面とを繋ぐ側面とを有しており、前記粉末潤滑剤を、加熱後の被加工材の下面及び側面に塗布するようにしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空シャフト鍛造品の鍛造方法。

請求項4

前記ポンチは、軸部と、当該軸部の上部に連接して形成され且つ漏斗状の押出部とを有するものとされ、前記押出部は、上部に向かうにつれて広がるように拡径されたテーパ状の錐面が形成されると共に、前記錐面は、前記ポンチの軸心に対して起立した状態とされており、前記起立状の錐面を有するポンチを備えた上金型を用いて、前記シャフト鍛造品を鍛造することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中空シャフト鍛造品の鍛造方法。

技術分野

0001

本発明は、金型を用いてチタン製の中空シャフト鍛造品鍛造する中空シャフト鍛造品の鍛造方法に関する。

背景技術

0002

一般に、Ti-6Al-4Vなどのチタン合金は、優れた機械特性耐熱性を有することから、航空機や車両などの輸送機器エンジン部材、あるいはシャーシなどの構造部材に用いられている。
このようなチタン合金を用いて上述した構造部材に用いられる中空鍛造品(中空シャフト鍛造品)を鍛造する方法として、金型を用いた熱間押出鍛造方法が用いられる。熱間押出鍛造方法は、予め製品形状を模して形成された金型内に加熱された被加工材装入し、被加工材を高温状態に保持したまま金型に沿った形状に引き伸ばすように変形させながら鍛造するものである。熱間押出鍛造方法を用いれば、鍛造中の変形において製品形状に沿ったメタルフローが得られるため他の加工方法に比べてより粘り強く、耐衝撃破壊性など機械的特性に優れた中空鍛造品を得ることができる。

0003

中空鍛造品を鍛造する技術としては、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されたものがある。
特許文献1には、穴加工を施した中空棒状難加工材の端部に穴を閉塞しないように据込み加工を施して肉厚部を形成し、次いで、その穴加工を施した中空棒状難加工材の穴に押込みパンチを押し込んで型入れ鍛造を行う難加工材の型入れ鍛造方法が開示されている。

0004

特許文献2には、大径部と小径部とが段差部を介して軸方向に並設される成形部が形成された成形型と、前記大径部の内径よりも小径の外径を有する押圧ポンチとを用い、前記大径部内に円柱状素材を保持してこの円柱状素材の端面を前記押圧ポンチで小径部方向へ押圧し、筒状部材又は有底筒状部材を鍛造により成形する方法であって、前記押圧ポンチの押圧により、この押圧ポンチによって押圧される前記素材押圧側端部が押圧ポンチによる押圧方向とは逆方向に流動可能な状態で、かつ前記押圧側端部と反対側に位置する反対側端部を前記押圧方向と同じ方向へ流動させる前後方押出鍛造を行う前後方押出工程が含まれ、前記前後方押出工程では、前記段差部の領域における素材の最小肉厚が、前記大径部の領域における素材の最小肉厚よりも薄くならない範囲で前記押圧ポンチによる素材の押圧を行う筒状部材又は有底筒状部材の製造方法が開示されている。

0005

また、中空鍛造品を鍛造する技術とは異なるが、チタン合金製の鍛造品を鍛造する技術が特許文献3に開示されている。
すなわち、特許文献3には、チタンビレットをα−β温度範囲内の温度に加熱し、そのチタンビレットを、当該チタンビレットの温度より約500°F低い温度を有する第1のダイ中に押し出すことを含んでなる、チタン部品ニアネットシェイプ鍛造する方法が開示されている。

先行技術

0006

特開平6−339743号公報
特開2006−7260号公報
特開2012−91230号公報

発明が解決しようとする課題

0007

近年、熱間押出鍛造で成形される中空鍛造品(中空シャフト鍛造品)は大型化すると共に、過酷な環境下で使用される場合が多くなってきている。この中空シャフト鍛造品の元材としては、Ti-6Al-4Vなどのチタン合金の鋳片が用いられる。
ところが、このようなチタン合金の鋳片を用いて熱間据込鍛造を行う際には、鋳片(被加工材)と金型とが焼き付いてしまう虞がある。被加工材がこのような状況下になってしまうと、所望の中空シャフト鍛造品を得ることが困難になる。また、航空機などに用いられる大型の中空シャフト鍛造品は、過酷な環境下で使用される場合が多く、中空シャフト鍛造品全体に高い相当ひずみを付与して機械的特性に優れたものとすることが要望されている。

0008

ここで、チタン合金の被加工材を大型の中空シャフト鍛造品に成形する場合に、特許文献1〜特許文献3に開示されている熱間据込鍛造の技術を用いることを検討してみる。
特許文献1は、チタン合金の被加工材を前方に押し出してラッパ状の中空鍛造品に成形する技術であるが、被加工材を前方に押し出して熱間据込鍛造を行う際の鍛造加工条件の設定については全く記載されていない。それゆえ、特許文献1の技術を用いて、中空シャフト鍛造品全体に高い相当ひずみを付与して機械的特性に優れたものとすることは困難である。

0009

特許文献2は、炭素鋼合金鋼アルミニウム合金などを被加工材として用いて、前後方押出鍛造を行った後に後方押出鍛造行う冷間鍛造の技術であり、チタン合金などの難加工材を中空シャフト鍛造品に鍛造する方法を開示するものとはなっていない。
特許文献3は、成形される鍛造品に所望の結晶粒度残留圧縮応力を付与しているが、鍛造中に被加工材と金型との焼き付きを防止しながら、鍛造品を鍛造する方法を開示するものとはなっていない。

0010

つまり、鍛造中に被加工材と金型との焼き付きを防止すると共に、高い相当ひずみを付与して機械的特性に優れた大型の中空シャフト鍛造製品を得る技術は、未だ開発されていないのが現状である。
また、チタン合金を用いて大型の中空シャフト鍛造製品を製造する現場では、1回の鍛造で機械的特性に優れた鍛造品を得る技術の要望が挙げられている。特許文献1〜特許文献3は、この要望に応えることができる技術でもない。

0011

本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、鍛造中に被加工材と金型との焼き付きを防止すると共に、中空シャフト鍛造品全体に高い相当ひずみを付与して所望とする機械的特性を有する中空シャフト鍛造品を鍛造する中空シャフト鍛造品の鍛造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

上述した課題を解決するため、本発明では以下の技術的手段を講じている。
本発明に係る中空シャフト鍛造品の鍛造方法は、鋳片を所定の径のビレットに鍛造し、当該ビレットに対してβ熱処理を行い、β熱処理後のビレットを前記所定の径より細径とされた細長のビレットに鍛造し、前記細長のビレットを凹状の被加工材に鍛造しておき、その後、前記凹状の被加工材を、軸状の孔部と当該孔部の上部に連接して形成された漏斗状の凹部を有する下金型に装入すると共に、前記被加工材に対して、中央部に下方を向く凸状のポンチを有する上金型押し付けて鍛造を行うことにより、中空且つ漏斗状のシャフト鍛造品を得る中空シャフト鍛造品の鍛造方法であって、前記シャフト鍛造品を得る鍛造の前準備として、前記被加工材を下金型に装入する前に、当該被加工材の内周面及び外周面潤滑剤を塗布すると共に、前記被加工材の外周面に塗布される潤滑剤の量を、前記被加工材の内周面に塗布される潤滑剤の量より多いものとしておき、前記下金型及び上金型を200℃以上600℃以下に熱した上で、前記下金型内に装入された被加工材に対して上金型を押し付けて鍛造を行うことで、前記β熱処理後のα+β鍛造における相当ひずみの累積量が1.6以上となるように、前記シャフト鍛造品を成型することを特徴とする。

0013

好ましくは、前記被加工材に塗布される潤滑剤には、液体潤滑剤粉末潤滑剤とが用いられ、前記被加工材の内周面及び外周面に液体潤滑剤を塗布し、その後、前記液体潤滑剤が塗布された被加工材を加熱し、加熱後の被加工材の外周面に粉末潤滑剤を塗布するとよい。
好ましくは、前記被加工材の外周面は、上面と下面及び前記上面と下面とを繋ぐ側面とを有しており、前記粉末潤滑剤を、加熱後の被加工材の下面及び側面に塗布するようにしているとよい。

0014

好ましくは、前記ポンチは、軸部と、当該軸部の上部に連接して形成され且つ漏斗状の押出部とを有するものとされ、前記押出部は、上部に向かうにつれて広がるように拡径されたテーパ状の錐面が形成されると共に、前記錐面は、前記ポンチの軸心に対して起立した状態とされており、前記起立状の錐面を有するポンチを備えた上金型を用いて、前記シャフト鍛造品を鍛造するとよい。

発明の効果

0015

本発明に係る中空シャフト鍛造品の鍛造方法によれば、鍛造中に被加工材と金型との焼き付きを防止すると共に、中空シャフト鍛造品全体に高い相当ひずみを付与して所望とする機械的特性を有する漏斗状の中空シャフト鍛造品を得ることができる。

図面の簡単な説明

0016

本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法を示した図である。
本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法に用いられる金型と被加工材の形状を示した図である。
(a)は本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法に用いられる長尺の元材を据込鍛造で圧縮する図であり、(b)は本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法を用いて鍛造された被加工材に付与された相当ひずみの解析結果を示す図である(図1(d)に対応)。
本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法を用いて鍛造された鍛造品に付与された相当ひずみの解析結果を示す図である(図1(f)に対応)。
図4の解析結果をまとめた図である。

実施例

0017

以下、本発明に係る中空シャフト鍛造品の鍛造方法(前後方押出鍛造方法)について、図面に基づき詳しく説明する。なお、本実施形態で鍛造される中空シャフト鍛造品37(シャフト鍛造品37と呼ぶこともある)は、航空機や車両などの輸送機器のエンジン部材、あるいはシャーシなどの構造部材に用いられる大型の中空シャフト鍛造品とする。また、本発明の鍛造は、金型2,7による圧下方向に対して前方側(下側)及び後方側(上側)に材料が変形し流れる鍛造であるため、前後方押出鍛造と呼ぶこともある。

0018

本発明の鍛造方法は、幾つかの前工程(前鍛造工程)を経て、凹状の被加工材34(すなわち荒地)を成型し、成型した荒地34を前後方押出鍛造装置1により、前後方押出鍛造することで、最終製品である中空シャフト鍛造品37を鍛造するものである。図1(a)〜図1(d)が、前鍛造工程であり、図1(e)〜図1(f)が本発明に係る前後方押出鍛造工程(本鍛造工程)である。

0019

以降、本発明の中空シャフト鍛造品37の鍛造方法を説明する前に、図1(e)〜図1(f)で用いる前後方押出鍛造装置1(熱間押出鍛造装置)を、説明する。
図1(f)、図2に示すように、本発明に用いられる前後方押出鍛造装置1は、凹状に鍛造され、且つ加熱された荒地34(凹状の被加工材)を金型2,7内に装入して、金型2,7の形状に沿って荒地34を熱間状態で変形させることにより、中空且つ漏斗状のシャフト鍛造品37(中空シャフト鍛造品37)を成型するものである。

0020

具体的には、この前後方押出鍛造装置1は、シャフト鍛造品37を成型するための金型2,7を有しており、この金型2,7は、上下2つに分割できるようになっていて、荒地34が装入されて載置される下金型2と、この下金型2に載置された荒地34を上方から圧下する上金型7とを有している。
下金型2は、軸状の孔部3と、当該孔部3の上部に連接して形成された漏斗状の凹部4(据え込み部)とを有し、この孔部3、及び凹部4(すなわち据え込み部)に凹状の荒地34が装入されるようになっている。

0021

詳しくは、図2(a)に示すように、下金型2の幅方向中央であって上部側には、その内径が荒地34の外径より大きく、且つ漏斗状(フランジ状)に形成された凹部4が形成されており、この凹部4の内部に荒地34を上方から下方に向かって装入可能となっている。
この漏斗状の凹部4は、上部に向かうにつれて広がるように拡径されたテーパ状の錐面5と、当該錐面5の上部に連接して形成された円筒状のフランジ孔部6とで構成されている。錐面5は、下方に向かうにしたがって内径が徐々に小さくなる(先細る)ように形成されており、この錐面5に荒地34を載置することができるようになっている。また、フランジ孔部6の開口径は、荒地34より若干大きい径、すなわち荒地34の外径が嵌り込んで面接触する径とされている。言い換えると、荒地34はその外周面35が錐面5及びフランジ孔部6の内周壁に面接触して、支持されるようになっており、荒地34の上下方向の軸心と下金型2(凹部4)の上下方向の軸心とが一致する。つまり、下金型2(凹部4)に装入することで、荒地34をセンタリングすることができる。

0022

下金型2の幅方向中央であって凹部4の下方側は、荒地34(フランジ孔部6の内径)よりも小径とされた軸状の孔部3(貫通孔)が形成されており、その孔部3を後述するノックアウト棒が通過するようになっている。
孔部3(下金型2)の下側には、鍛造が終了したシャフト鍛造品37を排出するノックアウト棒と、このノックアウト棒を上下方向に移動させるシリンダ機構(図示略)とが設けられている。ノックアウト棒は、下金型2の孔部3に対応した位置に上下方向に移動可能に配備されており、シリンダ機構によってノックアウト棒を上方に移動させてシャフト鍛造品37(鍛造後の荒地34)を押し上げることでシャフト鍛造品37を下金型2から引き剥がせるようになっている。

0023

また、下金型2の下側には、金型支持機構(図示略)が設けられており、金型支持機構によって下金型2を床面などに対して支持できるようになっている。
上金型7は、下金型2の上方に配備されており、下金型2内に載置された荒地34に対して上方から近接離反とされており、上金型7を下降させることで荒地34を上方から押しつぶすように圧下可能となっている。上金型7の中央部には、荒地34を圧下するためのポンチ8が形成されている。

0024

ポンチ8は、下方を向く凸状であって、荒地34の内周面36側に嵌り込む軸部9と、当該軸部9の上部に連接して形成され且つ漏斗状の押出部10と、押出部10の上部に連接して形成された圧下部12とを有する。
図2(a)に示すように、押出部10は、上部に向かうにつれて広がるように拡径されたテーパ状の錐面11が形成されると共に、その錐面11がポンチ8の軸心に対して起立した状態とされている。詳しくは、錐面11の傾斜角θがポンチ8の軸心に対して広角(例えば、45°以上)とされ、側面視で錐面11が外側に張り出す形状(凸状)とされている。錐面11をこのような形状にすることで、荒地34を下方に押し出す荷重の成分を大きくすることができる。そのため、前方押し出し鍛造が進みやすくなる。また、錐面11をこのような形状にすることで、荒地34を横方向に押し付ける荷重の成分が小さくなる。その結果、荒地34と下金型2及び上金型7(ポンチ8)の摩擦が小さくなり、少ない荷重でシャフト鍛造品37を成型することができる。

0025

圧下部12は、下金型2上部のフランジ孔部6の開口径に比べてやや小さな外径(荒地34の外径とほぼ同径)であり、上金型7が下金型2に衝合するまで下降した際に下金型2上部のフランジ孔部6に上方から嵌り込むようになっている。つまり、ポンチ8は荒地34の上部を上方から圧下可能となっている。
ところで、上述した下金型2及び上金型7(ポンチ8)は、シャフト鍛造品37を製造する過程において、予め200℃以上600℃以下に加熱されている。好ましくは、金型2,7の温度を400℃以上500℃以下に加熱しておくとよい。その理由としては、荒地34が薄肉の部材であるため鍛造中に荒地34が冷却されやすく、金型2,7の温度を200℃以上(望ましくは400℃以上)600℃以下に加熱しておく必要がある。仮に、金型2,7の温度を200℃より低くすると、鍛造中に荒地34が冷却されてしまい、荒地34の変形能が進み難くなると共に、荒地34本体が割れてしまう虞がある。また、金型2,7の温度を200℃より低くした場合、荒地34に塗布されているガラス潤滑剤20が鍛造中に機能しなくなる。つまり、ガラス潤滑剤20の温度が機能する適正な温度範囲(800℃〜1200℃)から外れてしまうこととなる。その結果、荒地34と金型2,7との間で焼き付きが発生することとなる。

0026

それゆえ、予め金型2,7の温度を200℃以上(望ましくは400℃以上)600℃以下に加熱しておく必要がある。
なお、本実施形態の下金型2及び上金型7は、SKT4、若しくはSKD61 (熱間鍛造用鋼)を用いて作製されている。
図2(b)に示すように、荒地34は、Ti-6Al-4Vなどのチタン合金で形成されている。この荒地34は、側面視で略矩形状であって、内部が中空とされた略凹状の円筒部材である。言い換えれば、荒地34は、内部の空間を囲むように形成された内周面36と、その内周面36を取り囲むように形成された外周面35とを有しているともいえる。この荒地34は、図1(a)〜図1(d)の前工程を経て成型される(詳細は後述)。

0027

荒地34の外周面35は、上金型7の方向(上方向)を向く上面35aと、下金型の錐面5の方向(下方向)を向く下面35b、及びその上面35aと下面35bとを繋ぐ側面35cとを有している。この荒地34の外周面35は、その上面35aや下面35bの縁が斜めに面取りされており、荒地34の下面35bの面取り部分と凹部4の錐面5とが接触して、荒地34が下金型2に載置される。なお、荒地34の下面35bの面取り部分は、凹部4に対応した形状にしてもよい。例えば、荒地34の下面35bの面取り部分を、外側に張り出す形状の錐面5に沿った形状にしてもよい。

0028

このように、荒地34の下部形状を凹部4(下金型2)に沿った形状とすることで、荒地34を容易かつ迅速に下金型2の中心に配置することができ、荒地34の芯ずれを軽減することができる。
一方、荒地34の内周面36は、その上部から中途部に向かって先細る(縮径される)傾斜面と、その中途部から下部に向かって垂直に伸び垂直面とを有している。

0029

傾斜面は、ポンチ8の錐面11と略同形状に形成されていて、そのポンチ8が上方から押し込まれたときに面接触するようになっている。また、傾斜面の下方に形成されている垂直面の内径は、ポンチ8の軸部9の外径とほぼ同径とされていて、ポンチ8が上方から押し込まれたときに嵌り込むようになっている。
ところで、中空シャフト鍛造品37の鍛造を行うに際しては、図1(e)、図2(b)に示すように、この荒地34の外周面35及び内周面36(表面)に、下金型2及びポンチ8との潤滑性を向上させる潤滑剤を塗布(被覆)するようにしている。この図1(e)は、図1(f)の鍛造の前準備として行われるものである。

0030

本実施形態においては、荒地34の外周面35及び内周面36に塗布する潤滑剤20にガラス潤滑剤を用いている。詳しくは、ガラス潤滑剤20は、荒地34(チタン合金などの難加工材)の表面を被覆することにより、鍛造時における金型2,7と荒地34との焼付発生を抑制すると共に、鍛造時において金型2,7と荒地34との間での潤滑性を高めている。

0031

本実施形態では、荒地34の外周面35に塗布されるガラス潤滑剤20の量を、荒地34の内周面36に塗布されるガラス潤滑剤20の量より多いものとしている。ガラス潤滑剤20の塗布量を面によって変更する理由としては、ポンチ8と荒地34の内周面36との摩擦を下金型2と荒地34の外周面35の摩擦より相対的に大きくして、荒地34の前方押出しを起こしやすくするためである。このように、荒地34の前方押出しを起こしやすくすることで、後方に向けて発生するバリによる押し詰まりリスクを軽減することができる。つまり、荒地34の内周面36に生じる摩擦と外周面35に生じる摩擦とに差を設けることで、荒地34の後方押出しを抑制し、シャフト鍛造品37の上端部に発生するバリを防ぐことができる。

0032

また、本実施形態では、荒地34に塗布されるガラス潤滑剤20に、液体ガラス潤滑剤20a(液体潤滑剤)と粉末ガラス潤滑剤20b(粉末潤滑剤)とを用いている。
本実施形態の液体ガラス潤滑剤20aは、主にホウケイ酸ガラス粉末を使用し、下記の範囲(重量%)を満たすように混練する。
(a)ホウケイ酸ガラス粉末:40%〜60%
(b)スチレンアクリル樹脂(バインダー) :10%〜20%
(c)防腐剤:0.1%未満
(d)水 :40%〜50%
(e)シリカ:約1%
上述した組成割合で混練されたガラス材からなるガラス潤滑剤20を荒地34の外周面35に塗布する。

0033

粉末ガラス潤滑剤20bには、アルミノホウケイ酸ガラス粒子を用いており、その組成は100%である。
上述したガラス潤滑剤20を荒地34に塗布する手順としては、まず、荒地34の内周面36及び外周面35(全周面)に液体ガラス潤滑剤20aを塗布する。その後、液体ガラス潤滑剤20aを塗布した荒地34を加熱炉に装入して加熱する。荒地34を加熱した後、液体ガラス潤滑剤20aを外周面35及び内周面36に定着させた荒地34の外周面35に粉末ガラス潤滑剤20bを塗布する。

0034

ここで、加熱後の荒地34に粉末ガラス潤滑剤20bを外周面35のみに塗付する理由を説明する。従来より行われている液体ガラス潤滑剤20aを鍛造後の荒地34に塗布するだけでは、その荒地34をシャフト鍛造品37に鍛造する際に生じる荒地34の外周面35と下金型2との摩擦を小さくすることができず、荒地34と下金型2との焼き付きを生じさせてしまう虞がある。そのため、本願発明では、加熱後の荒地34に粉末ガラス潤滑剤20bを外周面35のみに塗布、すなわちガラス潤滑剤20が2層となるように荒地34の外周面35に塗布し、荒地34と下金型2との摩擦を小さくするようにしている。それゆえ、荒地34と下金型2との焼き付きを防止することができる。また、ポンチ8と荒地34の内周面36の摩擦を、下金型2と荒地34の外周面35との摩擦より大きい状態とすることで、鍛造中における前方押出しが起こり易くなる。

0035

なお、好ましくは、粉末ガラス潤滑剤20bを、加熱後の荒地34の下面35b及び側面35cに塗布するようにするとよい。その理由としては、粉末ガラス潤滑剤20bには保温効果があるため、鍛造中の荒地34の上部に生じる熱が粉末ガラス潤滑剤20bによって保温されることとなり、その荒地34の上部が変形するようになる。それゆえ、鍛造後のシャフト鍛造品37の上部にバリが発生してしまうことがある。本願発明では、そのバリの発生を抑制するために、荒地34の上面35aに粉末ガラス潤滑剤20bを塗布しないようにしている。このようにすることで、鍛造中の荒地34の上面35aに生じる熱が冷却されやすくなる。その結果、鍛造中における荒地34の上面35aの変形能が低下して、鍛造後のシャフト鍛造品37の上部に生じるバリを防止することができる。

0036

このようにすることで、図2(b)に示すような、荒地34の外周面35に塗布されるガラス潤滑剤20の量を、荒地34の内周面36に塗布されるガラス潤滑剤20の量より多いものとすることができる。
ところで、本発明の中空シャフト鍛造品37の鍛造方法で製造されるシャフト鍛造品37は、航空機や車両などの輸送機器のエンジン部材、あるいはシャーシなどの構造部材に用いられ、過酷な環境下(高温・高応力等)で繰返し使用される。そのため、高い強度、延性靭性および疲労特性などの高くて安定した機械的特性がそのシャフト鍛造品37に要求される。

0037

このような高水準の機械的特性を実現するためには、シャフト鍛造品37全体に所定の低サイクル疲労強度(LCF)が付与される必要がある。低サイクル疲労強度(LCF)は、β熱処理後のα+β鍛造において付与されるシャフト鍛造品37全体の相当ひずみ(軸方向の圧縮や引張りによるひずみ)の総量(累積量)によって決まる。また、シャフト鍛造品37に付与される低サイクル疲労強度(LCF)を向上させるためには、組織内で同一の結晶方位を有するコロニー分断微細化することが必要であり、そのためにはシャフト鍛造品37全体に付与する相当ひずみを増加させることで実現することができる。

0038

そこで、本願発明者らは、上述した前後方押出鍛造装置1を用いて、シャフト鍛造品37全体に1.6以上の相当ひずみを付与し、所望とする高水準の機械的特性を有するシャフト鍛造品37を鍛造している。
以上述べた前後方押出鍛造装置1を用い、高水準の機械的特性を有するシャフト鍛造品37を鍛造する方法(手順)を、前工程を含めて説明する。

0039

本発明の中空シャフト鍛造品37の鍛造方法は、荒地34を高温状態(チタンのβ変態点温度未満・α+β温度域内)に保持したまま金型形状に沿って引き伸ばすように変形させながら鍛造するものであり、複数回の金型鍛造で高くて安定した機械的特性(相当ひずみの累積量が1.6以上)と所望の製品形状(漏斗状の中空シャフト鍛造品37)を同時に得ることができる。また、鍛造時に金型形状に沿ったメタルフローが得られるため従来の鍛造方法に比べて粘り強く、耐衝撃性耐破壊性に優れたシャフト鍛造品37を得ることができる。

0040

まず、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法を説明する前に、チタン合金(Ti-6Al-4V)製の鋳片を中央が凹状の荒地34に変形させる工程、つまり中空シャフト鍛造工程の前鍛造工程について、図を基に説明する。(図1(a)〜図1(d)に対応)。なお、本実施形態で行われる鍛造方法は、α+β鍛造を用いることとする。
α+β鍛造とは、荒地34をα+β温度(およそ950℃)域内になるように加熱し、鍛造中の材料温度と相当ひずみを適正に制御して材料特性満足させると同時に、金型鍛造によって製品形状(中空シャフト鍛造品37)をつくりこむ鍛造熱処理技術である。

0041

図1(a)〜図1(d)は、中空シャフト鍛造工程の前鍛造工程を示す図である。図1(a)は鋳片から所定の径(太径)に鍛造されたビレット30を細長(細径)のビレット31に鍛造するビレット鍛造工程を示し、図1(b)、図1(c)は圧下を繰り返しながら細長のビレット31を短尺のビレット32に鍛造した後、略矩形状のビレット33に鍛造する据込鍛造工程を示す図である。図1(d)は、凸状のポンチを有する上金型を用いて、短尺のビレット32の中央に凹状の孔を形成する中空鍛造工程を示す図である。

0042

ビレット鍛造工程に移行する前に、外径がφ800mm〜φ1000mmの鋳片を加熱炉に装入してチタンのβ変態点温度以上に加熱する。加熱炉から鋳片を取り出して、外径がφ600mm程度の鋳片になるように分塊鍛造を行う。次に、外径がφ600mm程度に分塊鍛造された鋳片を、加熱炉に装入してα+β温度域(950℃)に加熱する。加熱炉から鋳片を取り出して、外径がφ500mm程度の太径ビレット30になるように据込鍛造を行う。そして、太径ビレット30に対してβ熱処理を行う。

0043

β熱処理とは、太径ビレット30を加熱炉に装入してチタンのβ変態点温度以上に加熱し、加熱後に太径ビレット30を液体を用いて冷却する(水冷)方法である。このようにすることで、太径ビレット30の組織を均一化すると共に、荒地34の材料特性のばらつきを抑えることができる。
次に、上述した太径ビレット30は、ビレット鍛造工程に送られる。

0044

図1(a)では、太径ビレット30(φ500mm)を、加熱炉に装入してα+β温度域(950℃)に加熱する。加熱炉から鋳片を取り出して、外径がφ250mm程度の細長(細径)のビレット31になるように据込鍛造を行う。
ところで、図3図4は、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法において、鍛造されるシャフト鍛造品37に相当ひずみが付与される過程を示した図である。

0045

なお、このビレット鍛造工程で製造される細長のビレット31は、例えば軸長L/外径Dの比が3以下とされていてもよい。
そして、上述した細長のビレット31は、据込鍛造工程に送られる。
図1(b)では、細長のビレット31を下金型の凹部に装入して、その細長のビレット31の底部を据込鍛造工程で用いられる下金型の凹部に嵌め込むように固定する。そして、熱間で据込鍛造を行い、予め決定された寸法及び形状、つまり細長のビレット31より短いビレットを製造する。

0046

ここでの下金型は、細長のビレット31の軸長Lよりやや低い高さとし、据え込み部の内径が細長のビレット31の外径Dより若干大きい程度のものとする。
この後、押しつぶすように鍛造されたビレットの上部と下部を入れ替えて(上下反転させて)、次の据込鍛造工程で用いられる下金型の凹部に装入し、据込鍛造を行う。そして、細長のビレット31のおよそ1/2の軸長に相当する短尺のビレット32になるまで据込鍛造工程を数回繰り返す。

0047

続いて、図1(c)では、まず前の据込鍛造工程で据込鍛造された短尺のビレット32に対応する上金型と下金型に変更する。そして、前の据込鍛造工程で据込鍛造された短尺のビレット32の上部と下部を入れ替えて(上下反転させて)その下金型の凹部に装入し、その短尺のビレット32の底部を孔部に嵌め込むように固定する。そして、熱間で据込鍛造を行い、予め決定された寸法及び形状(ここでは、断面視で略矩形状)を有するビレット33を製造する。

0048

ここでの下金型(交換後の下金型)は、交換前の下金型より短でビレットの軸長Lよりやや低い高さとし、据え込み部の内径が長尺のビレットの外径Dより若干大きい程度のものである。
また、ここでの上金型のポンチは、前の据込鍛造工程で用いられた上金型のポンチより若干短尺に形成されたものとされ、幅方向の径は凹部に嵌り込むものとされる。そして、ここでの据込鍛造工程を終えた矩形状ビレット33は、細長のビレット31のおよそ1/4の軸長分だけ圧下されたものになっている。

0049

そして、据込鍛造工程を終えた矩形状ビレット33は、中空鍛造工程に送られる。
図1(d)に示す如く、中空鍛造工程は、据込鍛造工程にて鍛造された矩形状ビレット33の軸心方向中央部に凹状の窪み部を形成した荒地34を製造する工程である。
図1(d)では、据込鍛造工程を終えた矩形状ビレット33を下金型から離型せずにそのまま保持する。そして、圧下面の中央に下方に向かって突出状の凸部が形成されたポンチを有する上金型に変更して熱間で据込鍛造を行い、矩形状ビレット33の高さ(軸長方向)の1/2以下の底部厚さを有し且つ均等の肉厚となるように形成された、断面視U字形状カップ形状)の荒地34を製造する。なお、荒地34の底部厚さが1/2を超えると、荒地34の中央部以外に相当ひずみが付与されていない部分(低ひずみ部)が生じやすくなるため、荒地34の底部厚さが1/2以下とされている。

0050

ここでの、上金型の凸部は、断面視でボールペンの先端部(ペン先)形状に形成されており、この凸部は矩形状ビレット33を貫通しないようになっている。また、上金型のポンチの幅方向の径は、据込鍛造工程で用いられた上金型のポンチの径と同じである。
そして、中空鍛造工程を終えた荒地34は、軸長L/外径Dの比が3以下とされた断面視でU字形状に成形される。なお、荒地34の軸心方向中央部が圧下されて凹状の窪み部が形成されるため、据込鍛造工程での矩形状ビレット33の高さ(軸長L)よりやや高くなっている。

0051

図1(d)に対応する図3(b)に示すように、ビレット鍛造工程、据込鍛造工程、及び中空鍛造工程で荒地34に付与される相当ひずみの累積量は、少なくとも2.4以上付与される。つまり、ここで荒地34に付与される相当ひずみは、所望とされている1.6以上の相当ひずみが付与されることとなる。
図示はしないが、荒地34は、下金型(孔部)の下方に備えられているノックアウト棒により下金型から押し出されるように排出される。

0052

その後、中空鍛造工程を終えた荒地34は、穿孔工程(図示せず)に送られて、打抜き鍛造・せん断加工などによって荒地34の軸心方向を向く中心部が穿孔(貫通)される。なお、機械加工などによって、断面視凹状(U字状)の荒地34の底部を貫通させてもよい。
次に、本鍛造工程、すなわち、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法を説明する。

0053

まず、図1(e)の如く、中空鍛造工程及び穿孔工程を終えた荒地34(中央が上下方向に貫通された荒地34)は、潤滑剤塗布工程に送られて、液体ガラス潤滑剤20a及び粉末ガラス潤滑剤20bが塗布される。図1(e)は、図1(f)の鍛造の前準備として行われるものである。
図1(e)では、まず、中空の荒地34の全周面(外周面35及び内周面36)に液体ガラス潤滑剤20aを塗布する。そして、全周面に液体ガラス潤滑剤20aが塗布された荒地34を加熱炉に装入して、α+β温度域(950℃)となるように荒地34を加熱する。加熱された荒地34を加熱炉から取り出して、荒地34の外周面35(上面35a、下面35b、側面35c(外側面))に粉末ガラス潤滑剤20b (転写剤)を塗布する。

0054

このようにすることで、図1(e)、図2(b)に示すような、荒地34の外周面35に塗布されるガラス潤滑剤20の量が、荒地34の内周面36に塗布されるガラス潤滑剤20の量より多くすることができる。荒地34の外周面35は、液体ガラス潤滑剤20aの上に粉末ガラス潤滑剤20bが塗布された状態、すなわちガラス潤滑剤20が2層構造となっている。なお、好ましくは、粉末ガラス潤滑剤20bを、加熱後の荒地34の下面35b及び側面35cのみに塗布する(上面35aは塗布しない)ようにするとよい。

0055

そして、潤滑剤塗布工程を終えた荒地34は、中空シャフト鍛造工程に送られる。
中空シャフト鍛造工程は、中空鍛造工程にて鍛造された後、穿孔工程にて底部が削除された荒地34を、β熱処理後のα+β鍛造における相当ひずみの累積量が1.6以上となるように、中空、且つ漏斗状のシャフト鍛造品37を成型する工程である。
図1(f)では、予め、金型2,7の温度を200℃以上(望ましくは400℃以上)600℃以下に加熱しておく。そして、ガラス潤滑剤20が塗布された荒地34を、加熱された下金型2の漏斗状の凹部4に装入して、その荒地34の底部を漏斗状の凹部4に嵌め込むように固定する。その後、漏斗状の凹部4に固定された荒地34に対して、中央部に下方を向く凸状のポンチ8を有する前後方押出鍛造装置1の上金型7を押し付けて前後方押出鍛造を行う。

0056

前後方押出鍛造では、荒地34は、ポンチ8の圧下によって前方(下方)と後方(上方)に同時に押し出される。さらに、荒地34はポンチ8のさらなる圧下によって、荒地34全体が下金型2の下方、すなわち凹部4の漏斗形状に沿ってすべるように押し出される。このようにすることで、中空、且つ漏斗状のシャフト鍛造品37が得られる。
なお、所望の中空、且つ漏斗状のシャフト鍛造品37を得るには、鍛造中における後方にあるポンチ8と下金型2の間に生じる荒地34上部のバリによる押し詰まりの発生を防止するために、荒地34形状や潤滑剤などの鍛造条件を最適化して、ポンチ8による荒地34の前方押出しがスムーズに行えるようにする。

0057

例えば、荒地34の重心位置が当該荒地34の高さの1/2以下となるように荒地34を鍛造し、下金型2の漏斗状テーパ部の上端より下側に存在する荒地34の下端部が、テーパ高さ以下となるように体積を配分する。このように体積を配分することで、鍛造中におけるポンチ8による荒地34の前方押出しが促進されることとなり、荒地34上部に生じるバリによる押し詰まりの発生を抑制することができる。

0058

図1(f)に対応する図4に示すように、ビレット鍛造工程、据込鍛造工程、中空鍛造工程、及び中空シャフト鍛造工程でシャフト鍛造品37に付与される相当ひずみの累積量は、少なくとも3.3以上付与される。つまり、β熱処理後の鍛造(図1(a)以降の鍛造)におけるシャフト鍛造品37に付与される相当ひずみの累積量は、所望とされている1.6以上となる。

0059

鍛造されたシャフト鍛造品37は、下金型2(孔部3)の下方に備えられているノックアウト棒により下金型2から引き剥がされるように排出される(図示せず)。
実験例]
以下、上述した中空シャフト鍛造品の鍛造方法に基づき、ガラス潤滑剤20が塗布された荒地34に対して前後方押出鍛造を行った実験例について、述べる。

0060

前後方押出鍛造を行うには、まず荒地34の全周面(外周面35、内周面36)に液体ガラス潤滑剤20aを塗布し、その荒地34をチタンのα+β温度域(950℃程度)に加熱する。また、金型2,7を200℃以上(望ましくは400℃以上)600℃以下の範囲で加熱する。その加熱された荒地34を下金の凹部4に装入する。このような温度状況下で荒地34の鍛造を開始する。

0061

表1には、ガラス潤滑剤20の量が異なった荒地をそれぞれ鍛造を行い、その鍛造された荒地(シャフト鍛造品)の鍛造状況を示す結果が表示されている。

0062

0063

表1の最上段をみてみると、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法に基づいて、行われた荒地34(シャフト鍛造品37)の鍛造状況が示されている。本発明の鍛造方法は、まず荒地34の全周面に液体ガラス潤滑剤20aを塗布し、その荒地34をチタンのα+β温度域(950℃程度)に加熱する。そして、加熱後の荒地34の外周面35のみに粉末ガラス潤滑剤20bを塗布する。その荒地34を下金型の凹部4に装入して、ガラス潤滑剤20を塗布した荒地34を最終製品であるシャフト鍛造品37になるまで前後方押出鍛造をする。その結果は、荒地34(シャフト鍛造品37)の上面35aに極わずかにバリが出現するに留まり、シャフト鍛造品37として良品であることが確認された。

0064

次に、表1の中段をみてみると、比較例1として行われた荒地(シャフト鍛造品)の鍛造状況が示されている。比較例1の鍛造方法は、まず荒地の全周面に液体ガラス潤滑剤を塗布し、その荒地をチタンのα+β温度域(950℃程度)以上に加熱する。その加熱された荒地を下金型の凹部に装入して、最終製品であるシャフト鍛造品になるまで前後方押出鍛造をする。その結果は、荒地(シャフト鍛造品)の上面に大きなバリが出現すると共に、押し詰まりが発生してしまい、シャフト鍛造品として不良品であることが確認された。

0065

表1の最下段をみてみると、比較例2として行われた荒地(シャフト鍛造品)の鍛造状況が示されている。比較例2の鍛造方法は、まず荒地の全周面に液体ガラス潤滑剤を塗布し、その荒地をチタンのα+β温度域(950℃程度)に加熱する。そして、加熱後の荒地の全周面に粉末ガラス潤滑剤を塗布する。その荒地を下金型の凹部に装入して、最終製品であるシャフト鍛造品になるまで前後方押出鍛造をする。その結果は、所望のシャフト鍛造品に成型されるが、そのシャフト鍛造品の上面に大きなバリが出現してしまい、シャフト鍛造品として不良品であることが確認された。

0066

次に、上述した中空シャフト鍛造品の鍛造方法に基づいて、製造されたシャフト鍛造品37に付与された相当ひずみの結果をまとめたものを図5に示す。
図5は、破断サイクル数とβ熱処理後のα+β鍛造における相当ひずみとの関係を示すデータをプロットし、グラフ化したものである。
図5の右上側を見てみると、本発明の鍛造方法で鍛造されたシャフト鍛造品37のデータがプロットされており、相当ひずみが1.6以上付与されていることがわかる。相当ひずみが1.6以上付与されたシャフト鍛造品37の低サイクル疲労強度は、必ず規格値を上回るようになる。なお、図5の左下などにプロットされたデータは、相当ひずみが1.6未満の比較例であり、本発明の鍛造方法以外の方法(本発明の鍛造方法での条件を満たさない鍛造)で鍛造されたシャフト鍛造品のデータである。以上の結果より、本発明の鍛造方法で鍛造されたシャフト鍛造品37は、機械的特性に優れたものであることが確認された。

0067

以上述べたように、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法は、鍛造中に被加工材34と金型2,7との焼き付きを防止すると共に、中空シャフト鍛造品37全体に1.6以上の相当ひずみを付与して所望とする機械的特性を有する漏斗状の中空シャフト鍛造品37を得ることができる。つまり、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法を用いることで、太径ビレット30のβ熱処理からα+β鍛造を行ってシャフト鍛造品37を一体成型するまでの間において、シャフト鍛造品37にトータルで1.6以上の相当ひずみを付与して、所望の材料特性を有するニアネットの中空シャフト鍛造品37を得ることができる。また、本発明の中空シャフト鍛造品の鍛造方法で製造されたシャフト鍛造品37は、過酷な環境下で使用される航空機や車両などの輸送機器のエンジン部材、あるいはシャーシなどの構造部材に最も適している。

0068

なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本実施形態では、Ti-6Al-4Vを用いてシャフト鍛造品37に相当ひずみを付与する実験を行ったが、他のチタン合金に対しても、本発明の鍛造方法を行うことで、1.6以上の相当ひずみをシャフト鍛造品37全体に付与することが可能であることを確認している。

0069

特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件操業条件、各種パラメータ構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。

0070

1前後方押出鍛造装置(熱間押出鍛造装置)
2下金型
3 孔部(貫通孔、軸状)
4 凹部(据え込み部)
5 錐面
6フランジ孔部
7上金型
8ポンチ
9 軸部
10押出部
11 錐面
12 圧下部
20ガラス潤滑剤(潤滑剤)
20a液体ガラス潤滑剤(液体潤滑剤)
20b粉末ガラス潤滑剤(粉末潤滑剤)
30ビレット(太径ビレット)
31細長のビレット
32短尺のビレット
33矩形状ビレット
34被加工材(荒地)
35外周面
35a 上面
35b 下面
35c 側面
36内周面
37中空シャフト鍛造品(シャフト鍛造品)

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