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技術 大環状ペプチド、その製造方法、及び大環状ペプチドライブラリを用いるスクリーニング方法

出願人 国立大学法人東京大学
発明者 菅裕明
出願日 2013年8月26日 (7年2ヶ月経過) 出願番号 2013-174906
公開日 2015年3月5日 (5年8ヶ月経過) 公開番号 2015-042159
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 酵素、微生物を含む測定、試験 生物学的材料の調査,分析 ペプチド又は蛋白質 微生物による化合物の製造
主要キーワード 結合センサ 再構成型 難吸収性薬物 遠赤色光 投げ縄 非タンパク質性アミノ酸 共焦点レーザ顕微鏡 大環状構造
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図面 (14)

課題

本発明は、代謝に対する耐性に十分優れ、生体内で安定な構造を有し、且つ、細胞膜を透過して細胞内に到達できるペプチドを提供することを課題とする。

解決手段

本発明は、4以上のアミノ酸大環状構造を形成する大環状ペプチドであって、互いに隣接していない少なくとも2つのアミノ酸が疎水性側鎖を有し、親水性環境においては該疎水性側鎖同士が大環状ペプチドの環の内側で相互作用する、大環状ペプチドを提供する。

概要

背景

近年、様々なペプチド医薬研究開発が進められている。ペプチド医薬の最大の利点は、標的分子への高親和性及び高特異性と、低分子化合物では難しいタンパク質タンパク質相互作用阻害が可能なことである。
ペプチド医薬は、その化学的生物多様性から、低分子化合物よりも標的分子との相互作用の特異性が高いものが得られることが多く、その結果より大きな生理活性が得られる。特異性や選択性については、抗体医薬もペプチド医薬と同等である。

一方、ペプチド医薬は、他のほとんどのバイオ医薬品と同様に、細胞膜を透過できないため細胞内に到達できず、また抗体などの大きなタンパク質に比較してプロテアーゼ耐性に劣るので短時間で分解され、効果を得にくいという問題がある。
近年、このようなペプチド医薬の問題は、ペプチドに様々な修飾を加えることによって改善することが検討されている。

本発明者らは、これまでに人工アミノアシル化RNA触媒フレキシザイム(flexizyme)」を開発した(例えば、非特許文献1)。フレキシザイムは、任意のtRNAに任意のアミノ酸を連結させることができるアミノアシルtRNA合成酵素様活性を持つ人工RNA触媒である。フレキシザイムによれば、所望のアミノ酸を、所望のアンチコドンを有するtRNAに結合させることができるので、アミノ酸を天然遺伝暗号とは異なる任意のコドンと対応させて、遺伝暗号表を書き換えることができる。これをコドン再割当という。
フレキシザイムを用いたコドン再割当により、非タンパク質性アミノ酸を含む任意のアミノ酸をペプチドの任意の位置に導入し、ペプチドのプロテアーゼ耐性や細胞透過性、標的分子への親和性や特異性を増大させることが可能である。

一方、近年ペプチドの大環状化も注目されている。大環状ペプチドは、自然界にも見られ、安定したコンフォメーションを有することが知られている。そのサイズと複雑性から、大環状ペプチドは、小さな非環状化ペプチドよりも高い特異性を示すことが知られており(非特許文献2)、タンパク質間相互作用や、低分子化合物の結合部位が不明な分子など、難易度の高い標的に対する阻害剤となる可能性が期待されている。環状構造による拘束性は、ペプチドのバイオアベイラビリティや代謝に対する耐性も向上させると考えられる。

このように、ペプチドに様々な修飾を加えることが検討されている中で、生体内での代謝に対する耐性や安定性に優れ、且つ、細胞膜を透過して細胞内分子を標的とできるペプチドが特に求められている。

概要

本発明は、代謝に対する耐性に十分優れ、生体内で安定な構造を有し、且つ、細胞膜を透過して細胞内に到達できるペプチドを提供することを課題とする。 本発明は、4以上のアミノ酸が大環状構造を形成する大環状ペプチドであって、互いに隣接していない少なくとも2つのアミノ酸が疎水性側鎖を有し、親水性環境においては該疎水性側鎖同士が大環状ペプチドの環の内側で相互作用する、大環状ペプチドを提供する。

目的

本発明は、生体内で安定な構造を維持し、代謝に対する耐性に十分優れ、且つ、細胞膜を透過して細胞内に到達できるペプチドを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

4以上のアミノ酸大環状構造を形成する大環状ペプチドであって、大環状構造を構成するアミノ酸のうち、互いに隣接していない少なくとも2つのアミノ酸が疎水性側鎖を有し、親水性環境においては、該疎水性側鎖同士が大環状構造の内側で相互作用する、大環状ペプチド。

請求項2

前記疎水性側鎖を有するアミノ酸が、非タンパク質性アミノ酸である、請求項1に記載の大環状ペプチド。

請求項3

前記アミノ酸の疎水性側鎖は、置換基を有していてもよい飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐した炭素数4以上のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基ビニル基ポリオキシプロピレン基、及びポリシロキサン基からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の大環状ペプチド。

請求項4

前記アミノ酸の疎水性側鎖は、炭素数4〜15の直鎖アルキル基である、請求項3に記載の大環状ペプチド。

請求項5

前記大環状ペプチドの大環状構造が5アミノ酸〜20アミノ酸からなり、前記疎水性側鎖を有するアミノ酸が2つであり、該疎水性側鎖を有するアミノ酸が大環状構造において略向かい合った位置に配置されている、請求項1から4に記載の大環状ペプチド。

請求項6

細胞膜透過性を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の大環状ペプチド。

請求項7

請求項1から6のいずれか1項に記載の大環状ペプチドを翻訳合成する方法であって、前記大環状ペプチドをコードする核酸であって、環を形成するために必要な2つのアミノ酸をコードするコドンと、疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを含み、前記環を形成するために必要なアミノ酸をコードする2つのコドンの間に、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードする2つのコドンが配置された核酸を用意する工程と、前記核酸を、環を形成するために必要な2つのアミノ酸及び疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸のそれぞれでアミノアシル化されたtRNAを含む無細胞翻訳系翻訳する工程を含む、方法。

請求項8

前記環を形成するために必要な2つのアミノ酸及び疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸のそれぞれがチャージされたtRNAの少なくとも1つは、人工アミノアシルtRNAである、請求項7に記載の方法。

請求項9

前記環を形成するために必要な2つのアミノ酸が、クロロアセチル化アミノ酸システインである、請求項7又は8に記載の方法。

請求項10

標的分子に対する結合能を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の大環状ペプチドのスクリーニング方法であって、前記大環状ペプチドをコードする核酸であって、環を形成するために必要な2つのアミノ酸をコードするコドンと、疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを含み、前記環を形成するために必要なアミノ酸をコードする2つのコドンの間に、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードする2つのコドンが配置され、前記環を形成するために必要なアミノ酸及び疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン以外の部分に、ランダムアミノ酸配列をコードする核酸を含む核酸を2以上含む核酸ライブラリを形成する工程と、前記核酸ライブラリを無細胞翻訳系で翻訳して大環状ペプチドライブラリを得る工程と、前記大環状ペプチドライブラリと標的分子とを接触させてインキュベートする工程と、前記標的分子に結合した大環状ペプチドを選択する工程と、を含む方法。

請求項11

請求項10に記載の核酸ライブラリ。

請求項12

請求項10に記載の大環状ペプチドライブラリ。

請求項13

標的分子に対する結合能を有する請求項1から6のいずれか1項に記載の大環状ペプチドのスクリーニング方法であって、(a)前記大環状ペプチドをコードするmRNAであって、環を形成するために必要な2つのアミノ酸をコードするコドンと、疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを含み、前記環を形成するために必要なアミノ酸をコードする2つのコドンの間に、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードする2つのコドンが配置され、前記環を形成するために必要なアミノ酸及び疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン以外の部分に、ランダムなアミノ酸配列をコードするmRNAを含むmRNA、を2以上含むライブラリを形成する工程と、(b)前記ライブラリの各mRNAの3’末端に、直接又は間接ピューロマイシンを結合させる工程と、(c)前記ライブラリの核酸を無細胞翻訳系で翻訳してmRNA−大環状ペプチド複合体ライブラリを得る工程と、(d)前記mRNA−大環状ペプチド複合体ライブラリを標的分子と接触させてインキュベートする工程と、(e)前記標的分子に結合したmRNA−大環状ペプチド複合体群を選択し、逆転写反応によりcDNA群を得てこれを増幅する工程と、(f)前記cDNA群を転写してmRNAライブラリを得る工程と、を含み、前記工程(a)〜(f)を2回以上繰り返すことによって、標的分子に結合能を有する大環状ペプチドを濃縮する、方法。

技術分野

0001

本発明は、生体内で安定であり、且つ、細胞膜を透過できる大環状ペプチド等に関する。

背景技術

0002

近年、様々なペプチド医薬研究開発が進められている。ペプチド医薬の最大の利点は、標的分子への高親和性及び高特異性と、低分子化合物では難しいタンパク質タンパク質相互作用阻害が可能なことである。
ペプチド医薬は、その化学的生物多様性から、低分子化合物よりも標的分子との相互作用の特異性が高いものが得られることが多く、その結果より大きな生理活性が得られる。特異性や選択性については、抗体医薬もペプチド医薬と同等である。

0003

一方、ペプチド医薬は、他のほとんどのバイオ医薬品と同様に、細胞膜を透過できないため細胞内に到達できず、また抗体などの大きなタンパク質に比較してプロテアーゼ耐性に劣るので短時間で分解され、効果を得にくいという問題がある。
近年、このようなペプチド医薬の問題は、ペプチドに様々な修飾を加えることによって改善することが検討されている。

0004

本発明者らは、これまでに人工アミノアシル化RNA触媒フレキシザイム(flexizyme)」を開発した(例えば、非特許文献1)。フレキシザイムは、任意のtRNAに任意のアミノ酸を連結させることができるアミノアシルtRNA合成酵素様活性を持つ人工RNA触媒である。フレキシザイムによれば、所望のアミノ酸を、所望のアンチコドンを有するtRNAに結合させることができるので、アミノ酸を天然遺伝暗号とは異なる任意のコドンと対応させて、遺伝暗号表を書き換えることができる。これをコドン再割当という。
フレキシザイムを用いたコドン再割当により、非タンパク質性アミノ酸を含む任意のアミノ酸をペプチドの任意の位置に導入し、ペプチドのプロテアーゼ耐性や細胞透過性、標的分子への親和性や特異性を増大させることが可能である。

0005

一方、近年ペプチドの大環状化も注目されている。大環状ペプチドは、自然界にも見られ、安定したコンフォメーションを有することが知られている。そのサイズと複雑性から、大環状ペプチドは、小さな非環状化ペプチドよりも高い特異性を示すことが知られており(非特許文献2)、タンパク質間相互作用や、低分子化合物の結合部位が不明な分子など、難易度の高い標的に対する阻害剤となる可能性が期待されている。環状構造による拘束性は、ペプチドのバイオアベイラビリティや代謝に対する耐性も向上させると考えられる。

0006

このように、ペプチドに様々な修飾を加えることが検討されている中で、生体内での代謝に対する耐性や安定性に優れ、且つ、細胞膜を透過して細胞内分子を標的とできるペプチドが特に求められている。

先行技術

0007

H. Murakami, H. Saito, and H. Suga, (2003), Chemistry & Biology, Vol. 10, 655-662.
White, T.R. et al., Nature chemical biology, 7(11), 810-7.

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、生体内で安定な構造を維持し、代謝に対する耐性に十分優れ、且つ、細胞膜を透過して細胞内に到達できるペプチドを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者は、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、大環状ペプチドの環状部分に、少なくとも2つの疎水性側鎖を有するアミノ酸を導入すれば、親水性環境においては、疎水性側鎖同士が環の内部で相互作用して非共有結合による二環様構造が得られる一方、疎水性環境においてはダイナミックにその構造が変化し、疎水性基が分子の外部に露出する結果、疎水性環境に対する親和性が獲得できるのではないかと考えた。
そして、本発明者らが開発したフレキシザイムを利用してこのような大環状ペプチドを実際に合成したところ、親水性環境では、疎水結合によって大環状構造が十分に拘束され、生体内での安定性を高めることができることを確認した。
一方、この大環状ペプチドは、細胞膜を透過して細胞内に到達できることも確認した。このことから、期待どおり、疎水性環境では、共有結合によらないフレキシブルな偽二環様構造がダイナミックに変化し、疎水性側鎖が分子の外側に露出したことが示唆された。
さらに、本発明者らは、生体内での安定性と細胞膜透過性に優れる大環状ペプチドのライブラリ構築してスクリーニングを行い、細胞内の標的分子PAD4に対する阻害剤を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
〔1〕4以上のアミノ酸が大環状構造を形成する大環状ペプチドであって、
大環状構造を構成するアミノ酸のうち、互いに隣接していない少なくとも2つのアミノ酸が疎水性側鎖を有し、
親水性環境においては、該疎水性側鎖同士が大環状構造の内側で相互作用する、大環状ペプチド;
〔2〕前記疎水性側鎖を有するアミノ酸が、非タンパク質性アミノ酸である、上記〔1〕に記載の大環状ペプチド;
〔3〕前記アミノ酸の疎水性側鎖は、置換基を有していてもよい飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐した炭素数4以上のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基ビニル基ポリオキシプロピレン基、及びポリシロキサン基からなる群より選択される、上記〔1〕又は〔2〕に記載の大環状ペプチド;
〔4〕前記アミノ酸の疎水性側鎖は、炭素数4〜15の直鎖アルキル基である、上記〔3〕に記載の大環状ペプチド;
〔5〕前記大環状ペプチドの大環状構造が5アミノ酸〜20アミノ酸からなり、前記疎水性側鎖を有するアミノ酸が2つであり、該疎水性側鎖を有するアミノ酸が大環状構造において略向かい合った位置に配置されている、上記〔1〕から〔4〕に記載の大環状ペプチド;
〔6〕細胞膜透過性を有する、上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の大環状ペプチド;
〔7〕上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の大環状ペプチドを翻訳合成する方法であって、
前記大環状ペプチドをコードする核酸であって、環を形成するために必要な2つのアミノ酸をコードするコドンと、疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを含み、前記環を形成するために必要なアミノ酸をコードする2つのコドンの間に、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードする2つのコドンが配置された核酸を用意する工程と、
前記核酸を、環を形成するために必要な2つのアミノ酸及び疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸のそれぞれでアミノアシル化されたtRNAを含む無細胞翻訳系翻訳する工程を含む、方法;
〔8〕前記環を形成するために必要な2つのアミノ酸及び疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸のそれぞれがチャージされたtRNAの少なくとも1つは、人工アミノアシルtRNAである、上記〔7〕に記載の方法;
〔9〕前記環を形成するために必要な2つのアミノ酸が、クロロアセチル化アミノ酸システインである、上記〔7〕又は〔8〕に記載の方法;
〔10〕標的分子に対する結合能を有する上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の大環状ペプチドのスクリーニング方法であって、
前記大環状ペプチドをコードする核酸であって、環を形成するために必要な2つのアミノ酸をコードするコドンと、疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを含み、前記環を形成するために必要なアミノ酸をコードする2つのコドンの間に、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードする2つのコドンが配置され、前記環を形成するために必要なアミノ酸及び疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン以外の部分に、ランダムアミノ酸配列をコードする核酸を含む核酸を2以上含む核酸ライブラリを形成する工程と、
前記核酸ライブラリを無細胞翻訳系で翻訳して大環状ペプチドライブラリを得る工程と、
前記大環状ペプチドライブラリと標的分子とを接触させてインキュベートする工程と、
前記標的分子に結合した大環状ペプチドを選択する工程と、を含む方法;
〔11〕上記〔10〕に記載の核酸ライブラリ;
〔12〕上記〔10〕に記載の大環状ペプチドライブラリ;及び
〔13〕標的分子に対する結合能を有する上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の大環状ペプチドのスクリーニング方法であって、
(a)前記大環状ペプチドをコードするmRNAであって、環を形成するために必要な2つのアミノ酸をコードするコドンと、疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを含み、前記環を形成するために必要なアミノ酸をコードする2つのコドンの間に、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードする2つのコドンが配置され、前記環を形成するために必要なアミノ酸及び疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン以外の部分に、ランダムなアミノ酸配列をコードするmRNAを含むmRNA、を2以上含むライブラリを形成する工程と、
(b)前記ライブラリの各mRNAの3’末端に、直接又は間接ピューロマイシンを結合させる工程と、
(c)前記ライブラリの核酸を無細胞翻訳系で翻訳してmRNA−大環状ペプチド複合体ライブラリを得る工程と、
(d)前記mRNA−大環状ペプチド複合体ライブラリを標的分子と接触させてインキュベートする工程と、
(e)前記標的分子に結合したmRNA−大環状ペプチド複合体群を選択し、逆転写反応によりcDNA群を得てこれを増幅する工程と、
(f)前記cDNA群を転写してmRNAライブラリを得る工程と、を含み、
前記工程(a)〜(f)を2回以上繰り返すことによって、標的分子に結合能を有する大環状ペプチドを濃縮する、方法、
に関する。

発明の効果

0010

本発明に係る大環状ペプチドは、親水性環境においては、アミノ酸の非疎水性側鎖の相互作用により偽二環様構造を形成するので、大環状構造が十分に拘束され、生体内での安定性が高められる。一方、疎水性環境に曝露されると、ダイナミックに構造が変化して疎水性側鎖が分子表面に露出する結果、分子全体が疎水性を呈するので、細胞膜を通過することができる。したがって、細胞内分子を標的とする場合であっても、標的分子への親和性及び特異性が高く、タンパク質−タンパク質相互作用も阻害しやすいというペプチド医薬の利点を得ることが可能となる。
また、本発明に係る大環状ペプチドライブラリ及びスクリーニング方法によれば、標的分子と相互作用する大環状ペプチドを効率よく得ることが可能である。

図面の簡単な説明

0011

図1は、本発明に係る大環状ペプチドの一例(A)、その大環状ペプチドに含まれる相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸(B)、及び親水性環境と疎水性環境におけるコンフォメーションの変化(C)を示す概念図である。
図2は、VB骨格を有するペプチド発現のためのVB1及びVB2mRNAライブラリの設計と構築を示す。
図3は、PAD4に対する阻害活性を有するVBペプチドのセレクションのためのRaPIDシステムを示す概念図である。VB mRNAライブラリは、cDNAライブラリから転写し、3’末端にピューロマイシンが結合したオリゴヌクレオチドと結合させる。その後、mRNAライブラリを、Metを除き、ClAc-D-F-tRNAfMetCAUとAhep-tRNAAsn-E2CCAを加えたFITシステムで翻訳する。直鎖状ペプチドが、それぞれのmRNAに提示され、システインのスルフヒドリル基と、N末端クロロアセチル基のα炭素との分子内反応により自発的に環状化する。逆転写反応の後、ペプチドライブラリを、標的PAD4タンパク質と接触させる。PAD4に結合したVBペプチドは回収され、対応するcDNAはPCRで増幅される。以上の工程を複数ラウンド繰り返した後、濃縮されたmRNAについて、クローニングシーケンシングを行い、配列を決定する。
図4は、VB1ペプチドライブラリ(A)と、VB2ペプチドライブラリ(B)におけるペプチドのセレクションを示す。PAD4を固定した磁気ビーズで回収したmRNAは、右のバーで示され、磁気ビーズバインダからのみ回収されたmRNAを左のバーで示す。(C)は、VB1ペプチドライブラリから濃縮されたクローンの配列を示す。(D)は、VB2ペプチドライブラリから濃縮されたクローンの配列を示す。
図5は、合成したVB1C12とVB1C20のアミノ酸配列と、SPR実験から求めたKd値を示す。
図6は、VBペプチドとクロロアジンについて、COLDER溶液を用いたin vitroのPAD4阻害アッセイ比色分析を行った結果を示す。(A)アッセイは、100mMHEPES(pH7.6)と50mM NaClを含む反応バッファに、様々な濃度のVB1ペプチドを加えて行った。PAD4と基質BAEEの最終濃度は、それぞれ0.2μMと10mMであった。VB1ペプチドによるPAD4阻害の用量依存性を測定するために、ペプチドの濃度は0から50μMまで増加させた。(B)PAD4の低分子化合物阻害剤として知られるクロロアミジンの構造を示す。
図7は、VB1C12とVB1C12-クロロアミジン・ウォヘッド・ペプチドを用いて行ったin vitroのPAD4阻害アッセイを示す。(A)は、VB1C12とVB1C12-クロロアミジンアナログペプチドの構造を示す。(B)は、クロロアミジンの構造を示す。(C)アッセイは、100mM HEPES(pH7.6)と50mM NaClを含む反応バッファに、様々な濃度のVB1ペプチドを加えて行った。PAD4と基質BAEEの最終濃度は、それぞれ0.2μMと10mMであった。VB1ペプチドによるPAD4阻害の用量依存性を測定するために、ペプチドの濃度は0から50μMまで増加させた。
図8は、化学合成(Fmoc固相ペプチド合成)した蛍光標識ペプチドのアミノ酸配列と、それぞれのMALDI-TOF mass解析の結果を示す。
図9は、VB1C12-Flu及びVB1C12-ana-Fluペプチド(Ahepをアラニンに置き換えたペプチド)が生きたHeLa細胞の細胞内に移行する様子を示す。細胞内において、VB1C12-Fluペプチドのみが蛍光を示すことから、Ahepを導入した効果が観測された。
図10は、VB1C20-Flu及びVB1C20-ana-Fluペプチド(Ahepをアラニンに置き換えたペプチド)が生きたHeLa細胞の細胞内に移行する様子を示す。細胞内において、VB1C12-Fluペプチドのみが蛍光を示すことから、Ahepを導入した効果が観測された。
図11は、VB1C12-FluとVB1C20-Fluペプチドで処理した生きたHeLa細胞内で観察された蛍光パターンを示す。両者のペプチドとも、核にペプチドが局在していることが確認できる。
図12は、蛍光標識VBペプチドと、SYTO61(核酸を染色する染料)の共局在を示す。(A)Hela細胞を、10μM VB1C12-Fluペプチド及び5μM SYTO61と共に37℃で60分インキュベートした結果である。(B)Hela細胞を、10μM VB1C20-Fluペプチド及び5μM SYTO61と共に37℃で60分インキュベートした結果である。両者のペプチドとも、核にペプチドが局在していることが確認できる。
図13は、10μM VB1C12-Fluペプチド及び5μM SYTO61で処理したHeLa細胞を、共焦点レーザ顕微鏡で観察した3次元スキャン(Z軸スキャン)の結果を示す。12の連続した切片(z-stack, z-axis increment of 0.49μm)における蛍光標識VB1C12-fluペプチド(緑色蛍光)と、SYTO61(赤色蛍光)を示す。核にペプチドが局在していることが確認できる。

0012

[大環状ペプチド]
本発明に係る大環状ペプチドは、4以上のアミノ酸が大環状構造を形成し、互いに隣接していない少なくとも2つのアミノ酸が疎水性側鎖を有し、親水性環境においては該疎水性側鎖同士が大環状ペプチドの環の内側で相互作用することを特徴とする。
本明細書において、「大環状ペプチド(macrocyclic peptide)」とは、4以上のアミノ酸による大環状構造を含むペプチドをいう。本明細書において「大環状構造」とは、直鎖状ペプチドにおいて、2アミノ酸残基以上離れた2つのアミノ酸が直接に、又はリンカー等を介して結合することによって分子内に形成される閉環構造を意味する。「2アミノ酸残基以上離れた」とは、2つのアミノ酸の間に少なくとも2残基のアミノ酸が存在することを意味する。

0013

大環状構造は、2つのアミノ酸が、ジスルフィド結合ペプチド結合アルキル結合、アルケニル結合、エステル結合チオエステル結合エーテル結合チオエーテル結合ホスホネートエーテル結合、アゾ結合、C-S-C結合、C-N-C結合、C=N-C結合、アミド結合ラクタム架橋カルバモイル結合、尿素結合チオ尿素結合、アミン結合、チオアミド結合等によって結合することで形成されるが、結合の種類はこれらに限定されない。
ペプチドを大環状化することにより、ペプチドの構造を安定化させ、標的への親和性を高めることができる場合がある。

0014

大環状構造を形成するアミノ酸、すなわち大環状ペプチドのうち環を形成するアミノ酸の数は、4アミノ酸以上であれば特に限定されないが、例えば4アミノ酸以上、5アミノ酸以上、8アミノ酸以上、15アミノ酸以下、20アミノ酸以下、25アミノ酸以下、30アミノ酸以下等としてもよい。

0015

大環状化は、ペプチドのN末端とC末端のアミノ酸の結合に限られず、末端のアミノ酸と末端以外のアミノ酸の結合、又は末端以外のアミノ酸同士の結合によるものであってもよい。大環状ペプチドにおいて、環形成のために結合するアミノ酸の一方が末端アミノ酸で、他方が非末端アミノ酸である場合、大環状ペプチドは、大環状構造に直鎖のペプチドが尾のように付いた構造となる。本明細書においては、このような構造を「投げ縄型」と呼ぶ場合がある。

0016

本明細書において「アミノ酸」は、その最も広い意味で用いられ、天然アミノ酸に加え、人工のアミノ酸変異体や誘導体を含む。アミノ酸は慣用的一文字表記又は三文字表記で示される場合もある。本明細書においてアミノ酸又はその誘導体としては、天然タンパク質性L-アミノ酸;非天然アミノ酸;アミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられる。非天然アミノ酸の例として、主鎖の構造が天然型と異なる、α,α-二置換アミノ酸(α-メチルアラニンなど)、N-アルキル-α-アミノ酸、D-アミノ酸、β-アミノ酸、α-ヒドロキシ酸や、側鎖の構造が天然型と異なるアミノ酸(ノルロイシンホモヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸、ホモフェニルアラニン、ホモヒスチジンなど)、及び側鎖中のカルボン酸官能基スルホン酸基置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられるがこれらに限定されない。

0017

アミノ酸には、タンパク質性アミノ酸(proteinogenic amino acids)と、非タンパク質性アミノ酸(non-proteinogenic amino acids)が含まれる。
本明細書において「タンパク質性アミノ酸」は、タンパク質を構成するアミノ酸(Arg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、及びVal)を意味する。
本明細書において「非タンパク質性アミノ酸」は、タンパク質性アミノ酸以外の天然又は非天然のアミノ酸を意味する。

0018

本明細書において「互いに隣接していないアミノ酸」とは、大環状が形成された後においても隣接していないアミノ酸を意味する。隣接していないアミノ酸とは、ペプチドにおいて1アミノ酸残基以上離れたアミノ酸同士を意味する。

0019

本明細書において、互いに隣接していない少なくとも2つのアミノ酸が有する「疎水性側鎖」は、それが大環状ペプチドの環の内側で相互作用してコンフォメーションを安定化させる限り、どのような基であってもよいが、例えば、置換基を有していてもよい飽和若しくは不飽和の直鎖若しくは分岐した炭素数4以上(たとえば、炭素数4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15)のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、ビニル基、ポリオキシプロピレン基、又はポリシロキサン基などが挙げられる。

0021

本発明に係る大環状ペプチドには、他の疎水性側鎖と相互作用しない疎水性側鎖を有するアミノ酸も含まれうる。そこで、相互作用する疎水性側鎖を、相互作用しない疎水性側鎖と区別するために、相互作用する疎水性側鎖を、以降「相互作用性疎水性側鎖」という。
相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸は、天然アミノ酸であっても非天然アミノ酸であってもよい。天然アミノ酸としては、例えば、ロイシンイソロイシンメチオニン等を用いることができる。
非天然アミノ酸としては、例えば、側鎖としてペンチル基を有する2-アミノヘプトン酸(2-Aminoheptonic acid; Ahep)、側鎖としてブチル基を有するN-ブトキシカルボニル-L-ノルロイシン(N-butoxycarbonyl-L-norleucine; Nle)などが挙げられる。
相互作用性疎水性側鎖、及び相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸は、大環状ペプチドの大環状構造の大きさ構成アミノ酸に併せて、当業者が適宜決定することができる。

0022

本発明に係る大環状ペプチドにおいて、少なくとも2つの相互作用性疎水性側鎖は、相互作用する限り同じ側鎖であっても異なる側鎖であってもよい。また、相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸は、典型的には1つの大環状ペプチドに2つ含まれるが、3つ以上含まれていてもよい。

0023

相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸が大環状構造に2つ含まれている場合、それぞれのアミノ酸の位置は、親水性環境中で相互作用して大環状構造のコンフォメーションが安定化される限り特に限定されないが、例えば、略向かい合う位置とすることができる。略向かい合う位置であるとは、大環状構造において、2つのアミノ酸に挟まれる2つの領域のアミノ酸残基の数が略同じであることを意味する。2つのアミノ酸に挟まれる2つの領域のアミノ酸残基の数が略同じであるとは、一方の領域のアミノ酸残基の数が、他方の領域のアミノ酸残基の数の70%〜130%、又は80%〜120%であることをいう。

0024

本明細書において「親水性環境」とは、水や水をベースとした各種緩衝液など、極性の高い溶媒中の環境をいう。
本明細書において「疎水性側鎖同士が大環状ペプチドの環の内側で相互作用する」とは、相互作用性疎水性側鎖同士が、大環状ペプチドの環状構造の内側に向かって伸び、疎水結合をすることを意味する。相互作用性疎水性側鎖同士が疎水結合をすることにより、環状構造の内部に偽二環様構造(pseudo bicyclic like structure)が形成される。「偽二環様構造」とは、共有結合による二環構造ではないが、疎水性側鎖の非共有結合によって、大環状ペプチドの環状構造が事実上2つの環に分けられる状態を意味する。親水性環境で偽二環様構造が形成されることにより、大環状構造のコンフォメーションが安定化し、代謝に対する耐性も向上して生体内での安定性が高くなると共に、天然の大環状ペプチドと同様に標的分子に対する親和性や特異性が高くなることが期待される。

0025

一方、本発明に係る大環状ペプチドは、偽二環様構造を形成する結合が共有結合ではなく、フレキシブルな構成となっている。そのため、細胞膜など疎水性環境に曝露されると、ダイナミックに構造が変化して、環の内側で相互作用していた疎水性側鎖が分子表面に露出する。その結果、大環状ペプチドの分子全体が疎水性を呈するので、細胞膜を透過することができる。即ち、本発明に係る大環状ペプチドは、生体内で安定であると同時に、細胞膜を透過して細胞内にも到達できるものである。

0026

なお、本発明に係る大環状ペプチドは、そのC末端アミノ酸が環状化に用いられていない場合、当該C末端は、カルボキシル基又はカルボキシレート基のみでなく、アミドエステルになっていてもよい。また、本発明の大環状ペプチドには、大環状ペプチドの塩も含まれる。大環状ペプチドの塩としては、生理学的に許容される塩基や酸との塩があり、例えば、無機酸(塩酸臭化水素酸ヨウ化水素酸硫酸リン酸等)の付加塩有機酸p-トルエンスルホン酸メタンスルホン酸シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸カルボン酸コハク酸クエン酸安息香酸酢酸等)の付加塩、無機塩基水酸化アンモニウム又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属水酸化物炭酸塩重炭酸塩等)、アミノ酸の付加塩等が挙げられる。
また、本発明の大環状ペプチドは、本発明の課題を解決するものである限り、リン酸化メチル化アセチル化アデニリル化ADPリボシル化糖鎖付加などの修飾が加えられたものであってもよい。他のペプチドやタンパク質と融合させたものであってもよい。

0027

図1Aに、本発明の大環状ペプチドの一態様を示す。この例では、大環状ペプチドは6アミノ酸からなり、非天然アミノ酸として2つのAhep(図1B)が向かいあう位置に配置される。その結果、親水性環境では、図1C左及び右に示されるように、例えばAhepの側鎖が大環状ペプチドの環状構造の内側に向かって伸び、疎水結合を形成する結果、環状構造が実質的に2つの環に分けられる。
一方、図1C中央に示されるように、細胞膜など疎水性環境に曝露されると、環の内側で相互作用していた疎水性側鎖が分子表面に露出し、分子全体が疎水性を呈する。本発明に係る大環状ペプチドは、このような構成により、生体投与されると細胞内に到達し、細胞内の標的分子に作用することが可能である。

0028

[大環状ペプチドの製造方法]
本発明に係る大環状ペプチドの調製方法は特に限定されない。本発明に係る大環状ペプチドは、液相法固相法、液相法と固相法を組み合わせたハイブリッド法等の化学合成法遺伝子組み換え法、無細胞翻訳系による翻訳合成等、公知の方法又はそれに準ずる方法によって調整することができる。

0029

1.無細胞翻訳系による翻訳合成
本発明に係る大環状ペプチドは、これをコードする核酸を調製し、当該核酸を無細胞翻訳系で翻訳することによって調製することができる。大環状ペプチドをコードする核酸は、生体の翻訳系で用いられる遺伝暗号、リプログラミングした遺伝暗号、又はこれらの組み合わせを用いて、当業者が適宜設計することができる。核酸は、DNAであってもRNAであってもよい。

0030

無細胞翻訳系を用いる方法によれば、非天然アミノ酸でアミノアシル化したtRNAを使用して、天然アミノ酸に加え、非天然アミノ酸をペプチドに効率よく導入することができる。例えば、本発明者らが開発した人工アミノアシルtRNA合成酵素フレキシザイムを用いれば、任意の天然又は非天然のアミノ酸で、任意のアンチコドンを有するtRNAをアミノアシル化することが可能である。したがって、この技術を用いて、mRNAのトリプレットからなる遺伝暗号が、生体の翻訳系とは異なるアミノ酸をコードするように、リプログラミングすることができる(WO2008/059823)。

0031

例えば、開始コドンAUGは、原核細胞真核細胞では、それぞれホルミルメチオニンとメチオニンをコードする。一方、フレキシザイムによれば、開始コドンに対応するtRNAを別のアミノ酸でアミノアシル化することができるので、任意のアミノ酸でペプチド合成を開始することができる。また、開始コドン以外のコドンに対応するtRNAも、任意のアミノ酸でアミノアシル化できるので、無細胞翻訳系を用いて、任意のアミノ酸をペプチドの任意の位置に導入することができる。
なお、フレキシザイムによれば、アミノ酸以外のヒドロキシ酸やカルボン酸をtRNAに結合させることもできるので、無細胞翻訳系を用いて、任意のヒドロキシ酸やカルボン酸をペプチドの任意の位置に導入することも可能である。本発明の大環状ペプチドには、アミノ酸に代えて、ヒドロキシ酸やカルボン酸を導入してもよい。

0032

フレキシザイムとしては、例えば、以下の文献に記載されたものが知られている。
H. Murakami, H.Saito, and H. Suga, (2003) Chemistry & Biology, Vol. 10, 655-662; H. Murakami, D. Kourouklis, and H. Suga, (2003) Chemistry & Biology, Vol. 10, 1077-1084; H. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga, (2006) Nature methods3, 357-359; N. Niwa, Y. Yamagishi, H. Murakami, H. Suga, (2009) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 19, 3892-3894; 及びWO2007/066627。
フレキシザイムは、原型のフレキシザイム(Fx)、及び改変型ジニトロベンジルフレキシザイム(dFx)、エンハンスドフレキシザイム(eFx)、アミノフレキザイム(aFx)等も知られている。
なお、任意のtRNAを任意のアミノ酸でアミノアシル化する方法は、フレキシザイムを用いる方法に限定されず、その他の方法も本発明に適用可能である。

0033

フレキシザイムによって導入することができる非天然アミノ酸の非限定的な例を以下に示す。なお、表中DBEとCMEは、これらのアミノ酸をフレキシザイムでtRNAに結合させるときのエステルの種類であり、DBEは、3,5-dinitrobenzyl esterを意味し、CMEは、cyanomethyl esterを意味する。

0034

0035

上記の非天然アミノ酸も、疎水性相互作用する側鎖を有する限り、本発明に係る大環状ペプチドの相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸として用いることができる。上表における相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸の好適な例としては、N-n-butyl-Glycine、N-n-pentyl-Glycine、N-n-hexyl-Glycine、N-n-heptyl-Glycin、N-n-octyl-Glycine、N-isopentyl-Glycineが挙げられるが、これらに限定されない。

0036

本明細書において、「無細胞翻訳系」は、無細胞タンパク質合成系とも呼ばれ、大腸菌等の細胞をそのまま使用せず、大腸菌などの細胞内に存在する成分を利用する翻訳系であり、主として細胞抽出液を用いるものと、細胞抽出液の各成分を精製したもので再構成した反応液再構成型無細胞翻訳系)を用いるものがある。無細胞翻訳系によれば、発現産物を精製することなく高い純度で得ることができる。
主として細胞抽出液を用いるものとしては、例えば、大腸菌抽出液コムギ胚芽抽出液ウサギ赤血球抽出液、昆虫細胞抽出液を用いるものが挙げられる。
再構成型無細胞翻訳系は、それぞれ精製したリボソームタンパク質、アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)、リボソームRNA、アミノ酸、rRNAGTPATP翻訳開始因子(IF)、伸長因子(EF)、終結因子(RF)、リボソーム再生因子、その他の翻訳に必要な因子等で構築することができる。
これらの翻訳系には、透析を用いて連続的にエネルギーを供給してもよい。DNAからの転写を行うために、RNAポリメラーゼを加えてもよい。

0037

市販されている無細胞翻訳系として、大腸菌由来の系では、ロシュダイアグスティックス社のRTS-100(登録商標)、コムギ胚芽抽出液の系では、ゾイジーン社やセルフリーサイエンス社の製品、再構成型翻訳系では、PGI社のPURESYSTEM(登録商標)、New England BioLabs社のPURExpress(登録商標) In Vitro Protein Synthesis Kit等が挙げられる。
大腸菌のリボソームを用いる系として、次の文献に記載された技術が知られており、これらを用いてもよい。
H. F. Kung et al., 1997, The Journal of Biological Chemistry Vol. 252, No. 19, 6889-6894; M. C. Gonza et al., 1985, Proceeding of National Academy of Sciences of the United States of America Vol. 82, 1648-1652; M. Y. Pavlov and M. Ehrenberg, 1996, Archives of Biochemistry and Biophysics Vol. 328, No.1, 9-16; Y. Shimizu et al., 2001, Nature Biotechnology Vol. 19, No. 8, 751-755; H. Ohashi et al., 2007, Biochemical and Biophysical Research Communications Vol. 352, No.1, 270-276.

0038

再構成型翻訳系によれば、翻訳系の構成因子を目的に合わせて自由に選択できる。したがって、特定のアミノ酸を含まない翻訳系や、特定のアミノ酸に対応するアミノアシルtRNAを含まず当該アミノアシルtRNAが産生されない翻訳系を再構成すると、そのアミノ酸に対応するコドンを解読するtRNAが存在しなくなる。そこで、フレキシザイム等を利用して、そのコドンに対応するアンチコドンを有するtRNAを所望のアミノ酸でアミノアシル化し、これを翻訳系に加えれば、当該コドンによって、所望のアミノ酸をペプチドに導入することができるようになる。
後述する実施例で用いたFITシステムは、本発明者らが開発した遺伝暗号のリプログラミングを効率よく行うための再構成型翻訳系の一例である。

0039

上述の技術を利用すれば、本発明に大環状ペプチドにも、環を形成するために必要なアミノ酸や、疎水性側鎖を有するアミノ酸を、所望の位置に導入することができる。
この場合、大環状ペプチドをコードする核酸に、環を形成するために必要な2つのアミノ酸(以下「環形成アミノ酸」ということもある。)をコードするコドンと、相互作用する疎水性側鎖を有する2つのアミノ酸をコードするコドンを入れる。5'末端から、環形成アミノ酸をコードするコドン、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン、疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン、環形成アミノ酸をコードするコドン、の順に、間に適当な数のアミノ酸が入るように核酸配列を決定することができる。

0040

例えば、本来はAsnに対応するtRNAであるtRNAAsn-E2CCAを、疎水性側鎖を有する非天然アミノ酸でアミノアシル化し、これを再構成型翻訳系に加えるとともに、Asnを翻訳系から除いておけば、CCAコドンの位置にAsnに代えて疎水性側鎖を有する非天然アミノ酸が導入される。したがって、大環状ペプチドをコードする核酸に、疎水性側鎖を有する非天然アミノ酸が導入されるべき位置にCCAコドンを入れておけば、相互作用して偽二環様構造を形成するのに最適な位置に、2つの疎水性側鎖を有するアミノ酸を導入できる。

0041

また、ペプチドを大環状化する方法は特に限定されないが、例えば、以下の官能基1を有するアミノ酸と、対応する官能基2を有するアミノ酸を含めることにより、自発的な反応によって翻訳合成されたペプチドを大環状化することができる。官能基1と2はどちらがN末端側にきてもよく、N末端とC末端に配置してもよいし、一方を末端アミノ酸、他方を非末端アミノ酸としてもよいし、両方を非末端アミノ酸としてもよい。



式中、X1はCl、Br、又はIであり、Arは置換基を有していてもよい芳香環を示す。

0042

(A−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、クロロアセチル化したアミノ酸を用いることができる。クロロアセチル化アミノ酸としては、N-chloroacetyl-L-alanine、N-chloroacetyl-L-phenylalanine、N-chloroacetyl-L-tyrosine、N-chloroacetyl-L-tryptophan、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(2-chloroacetamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-chloroacetyl-L-diaminopropanoic acid、γ-N-chloroacetyl-L-diaminobutyric acid、σ-N-chloroacetyl-L-ornithine、ε-N-chloroacetyl-L-lysine、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
(A−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、 mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、2-amino-8- mercaptooctanoic acid、およびこれらのアミノ酸のSH基をいったん保護しておいた後に保護基を脱保護したアミノ酸、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
環状化方法は、例えば、Kawakami, T. et al., Nature Chemical Biology 5, 888-890 (2009);Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009);Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008);Goto, Y. et al., ACS Chemical Biology 3, 120-129 (2008);Kawakami T. et al, Chemistry & Biology 15, 32-42 (2008)、WO2008/117833に記載された方法に従って行うことができる。

0043

(B−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、propargylglycine、homopropargylglycine、2-amino-6-heptynoic acid、2-amino-7-octynoic acid、2-amino-8-nonynoic acidを用いることができる。また、4-pentynoyl化や5-hexynoyl化したアミノ酸を用いることもできる。4-pentynoyl化アミノ酸としては、N-(4-pentenoyl)-L-alanine、N-(4-pentenoyl)-L-phenylalanine、N-(4-pentenoyl)-L-tyrosine、N-(4-pentenoyl)-L-tryptophan、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-(4-pentenoyl)-L-diaminopropanoic acid、γ-N-(4-pentenoyl)-L-diaminobutyric acid、σ-N-(4-pentenoyl)-L-ornithine、ε-N-(4-pentenoyl)-L-lysine、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
(B−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、azidoalanine、2-amino-4-azidobutanoic acid、azidoptonorvaline、 azidonorleucine、2-amino-7-azidoheptanoic acid、2-amino-8- azidooctanoic acidを用いることができる。また、azidoacetyl化や3-azidopentanoyl化したアミノ酸を用いることもできる。azidoacetyl化アミノ酸としては、N-azidoacetyl-L-alanine、N-azidoacetyl-L-phenylalanine、N-azidoacetyl-L-tyrosine、N-azidoacetyl-L-tryptophan、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-phenylalanine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tyrosine、N-3-(4-pentynoylamido)benzoyl-L-tryptophane、β-N-azidoacetyl-L-diaminopropanoic acid、γ-N-azidoacetyl-L-diaminobutyric acid、σ-N-azidoacetyl-L-ornithine、ε-N-azidoacetyl-L-lysine、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
環状化方法は、例えば、Sako, Y. et al., Journal of American Chemical Society 130, 7932-7934 (2008)、WO2008/117833に記載された方法に従って行うことができる。

0044

(C−1)の官能基を有するアミノ酸としては、N-(4-aminomethyl-benzoyl)-phenylalanine (AMBF)、4-3-aminomethyltyrosineが挙げられる。
(C−2)の官能基を有するアミノ酸としては、5-hydroxytryptophan (WOH)が挙げられる。
環状化方法は、例えば、Yamagishi, Y. et al., ChemBioChem 10, 1469-1472 (2009)、WO2008/117833に記載された方法に従って行うことができる。

0045

(D−1)の官能基を有するアミノ酸としては、例えば、2-amino-6-chloro-hexynoic acid、2-amino-7-chloro-heptynoic acid、2-amino-8-chloro-octynoic acid、などが挙げられる。
(D−2)の官能基を有するアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、 mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、2-amino-8- mercaptooctanoic acid、およびこれらのアミノ酸のSH基をいったん保護しておいた後に保護基を脱保護したアミノ酸、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。
環状化方法は、例えば、WO2012/074129に記載された方法に従って行うことができる。

0046

(E−1)のアミノ酸としては、例えば、N-3-chloromethylbenzoyl-L-phenylalanine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tyrosine、N-3-chloromethylbenzoyl-L-tryptophane、が挙げられる。
(E−2)のアミノ酸としては、例えばcysteine、homocysteine、mercaptonorvaline、 mercaptonorleucine、2-amino-7-mercaptoheptanoic acid、2-amino-8- mercaptooctanoic acid、およびこれらのアミノ酸のSH基をいったん保護しておいた後に保護基を脱保護したアミノ酸、およびこれらに対応するD-アミノ酸誘導体などが挙げられる。

0047

2.固相法による合成
本発明に係る大環状ペプチドは、固相合成によっても調製することができる。
固相法は、例えば、水酸基を有するレジンの水酸基と、α-アミノ基が保護基で保護された第一のアミノ酸(通常、目的とするペプチドのC末端アミノ酸)のカルボキシ基エステル化反応させる。エステル化触媒としては、1-メシチレンスルホニル-3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール(MSNT)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミドDIPCDI)等の公知の脱水縮合剤を用いることができる。
次に、第一アミノ酸のα−アミノ基の保護基を脱離させるとともに、主鎖のカルボキシ基以外のすべての官能基が保護された第二のアミノ酸を加え、当該カルボキシ基を活性化させて、第一及び第二のアミノ酸を結合させる。さらに、第二のアミノ酸のα-アミノ基を脱保護し、主鎖のカルボキシ基以外のすべての官能基が保護された第三のアミノ酸を加え、当該カルボキシ基を活性化させて、第二及び第三のアミノ酸を結合させる。これを繰り返して、目的とする長さのペプチドが合成されたら、すべての官能基を脱保護する。

0048

固相合成のレジンとしては、Merrifield resin、MBHAresin、Cl-Trt resin、SASRINresin、Wang resin、Rink amide resin、HMFS resin、Amino-PEGAresin(Merck)、HMPA-PEGA resin(Merck)等が挙げられる。これらのレジンは、溶剤ジメチルホルムアミドDMF)、2−プロパノール塩化メチレン等)で洗浄してから用いてもよい。
α-アミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニルCbz又はZ)基、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、ベンジル基アリル基アリルオキシカルボニル(Alloc)基等が挙げられる。Cbz基はフッ化水素酸水素化等によって脱保護でき、Boc基トリフルオロ酢酸(TFA)により脱保護でき、Fmoc基はピペリジンによる処理で脱保護できる。
α-カルボキシ基の保護は、メチルエステルエチルエステルベンジルエステル、tert−ブチルエステルシクロヘキシルエステル等を用いることができる。
アミノ酸のその他の官能基として、セリントレオニンのヒドロキシ基はベンジル基やtert−ブチル基で保護することができ、チロシンのヒドロキシ基は2−ブロモベンジルオキシカルボニル希やtert−ブチル基で保護する。リジン側鎖のアミノ基、グルタミン酸アスパラギン酸のカルボキシ基は、α−アミノ基、α−カルボキシ基と同様に保護することができる。

0049

カルボキシ基の活性化は、縮合剤を用いて行うことができる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCあるいはWSC)、(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノホスホニウムヘキサフルオロホスファートBOP)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチル]-1H-ベンゾトリアゾリウム-3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)等が挙げられる。
レジンからのペプチド鎖の切断は、TFA、フッ化水素(HF)等の酸で処理することによって行うことができる。

0050

[大環状ペプチドライブラリ及びスクリーニング方法]
本発明は、上述した大環状ペプチドのライブラリとこれを用いたスクリーニング方法も提供する。
本明細書において「大環状ペプチドライブラリ」とは、大環状ペプチドにおいて、環形成アミノ酸と、疎水性側鎖を有するアミノ酸以外の部分にランダムなアミノ酸配列を含む大環状ペプチドが複数含まれるペプチドの集合体をいう。
環形成アミノ酸と、疎水性側鎖を有するアミノ酸以外のすべてのアミノ酸がランダムな配列であってもよいし、一部の配列をランダムな配列としてもよい。

0051

このようなライブラリは、大環状ペプチドをコードする核酸において、環形成アミノ酸をコードするコドンと疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドン以外の部分に、ランダムなアミノ酸配列をコードする核酸を含む核酸を複数用意し、これを無細胞翻訳系で翻訳することによって得ることができる。
ランダムなアミノ酸配列をコードする核酸は、例えば(NNT)xとすることができる。ここで、NはA、T、G、又はCを表す。xは任意の整数であり、ランダムなアミノ酸配列のアミノ酸数に合わせて選択することができる。(NNT)xと、環形成アミノ酸をコードするコドンと疎水性側鎖を有するアミノ酸をコードするコドンを適宜配置することにより、所望の大環状ペプチドライブラリをコードする核酸を調製することができる。一例として、本発明に係る大環状ペプチドをコードする核酸は、以下のような配列を含むものとすることができる。
AUG-(NNU)2-3-AUG-(NNU)5-7-AUG-(NNU)2-3-UGU-GGC
AUG-(NNU)2-4-AUG-(NNU)5-7AUG-UGU-GGC
末端のAUGコドンは、UGUでコードされるシステインと結合する環形成アミノ酸に割り当て、その他のAUGコドンは、疎水性側鎖を有するアミノ酸に割り当てる。NNUの繰り返しはランダムなアミノ酸配列に翻訳される。翻訳されたペプチドは、自発的な反応によって大環状構造を形成する。
大環状ペプチドライブラリでは、コードする核酸を複数種類混合してもよい。これにより、ライブラリの多様性が増大し、標的分子に対する活性を有するペプチドが得られる可能性が高くなる。

0052

大環状ペプチドライブラリを用いたスクリーニング方法は、大環状ペプチドライブラリと標的分子を接触させてインキュベートする工程を含む。
本明細書において、標的物質は特に限定されず、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖、脂質等とすることができるが、典型的にはタンパク質である。
特に、本発明に係る大環状ペプチドは、生体内での安定性が高く、細胞膜透過性に優れるため、細胞内のタンパク質を標的とすることも可能である。本発明に係る大環状ペプチドは、プロテアーゼ耐性にも優れるので、プロテアーゼ活性を有する標的分子に対するスクリーニングも行うことができる。

0053

標的物質は、例えば固相担体に固定して、大環状ペプチドライブラリと接触させることができる。本明細書において、「固相担体」は、標的物質を固定できる担体であれば、特に限定されず、ガラス製、金属製、樹脂製等のマイクロタイタープレート基板ビーズニトロセルロースメンブレンナイロンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられる。標的物質は、これらの固相担体に公知の方法で固定することができる。
標的物質とライブラリは、適宜選択された緩衝液中で接触させ、pH、温度、時間等を調節して相互作用させる。

0054

本発明に係るスクリーニング方法は、次に、標的物質に結合した大環状ペプチドを選択する工程を含む。標的物質への結合は、例えば、ペプチドを公知の方法で検出可能に標識し、上記インキュベーションの後、緩衝液で固相担体表面を洗浄し、標的物質に結合している化合物を検出することによって行うことができる。
検出可能な標識としては、ペルオキシダーゼアルカリホスファターゼ等の酵素、125I、131I、35S、3H等の放射性同位体フルオレセインイソチオシアネートローダミンダンシルクロリドフィコエリトリンテトラメチルローダミンイソチオシアネート近赤外蛍光材料等の蛍光物質ルシフェラーゼルシフェリンエクオリン等の発光物質金コロイド量子ドットなどのナノ粒子が挙げられる。酵素の場合は酵素の基質を加えて発色させ検出させてもよい。ペプチドにビオチンを結合させ、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。

0055

上記工程では、単に結合の有無又は程度を検出・測定するのみでなく、標的物質の活性の亢進又は阻害を測定し、かかる亢進活性又は阻害活性を有する大環状ペプチドを同定することも可能である。このような方法により、生理活性を有し、医薬として有用な大環状ペプチドを得ることができる。

0056

大環状ペプチドライブラリを、mRNAディスプレイ法に応用してスクリーニングを行うこともできる。mRNAディスプレイ法とは、mRNAを翻訳する際に、mRNAと合成されたペプチドとを何らかの方法で結合させることにより、表現型(ペプチド)と核酸配列(mRNA)を対応付けることを可能にする方法である。
mRNAと合成されたペプチドを結合させる方法としては、mRNAの3'末端に直接、又はリンカーを介してピューロマイシンを結合させておく方法が広く用いられている。

0057

そこで、大環状ペプチドライブラリをmRNAディスプレイ法に応用する場合、上述した大環状ペプチドライブラリをコードするmRNAライブラリを調製した後、まず各mRNAの3'末端にピューロマイシンを結合させる。結合させる方法は特に限定されないが、例えば、ピューロマイシンにmRNAの3'末端に相補的なDNAからなるリンカーを結合させておき、このDNAとmRNAのハイブリダイゼーションを利用することができる。

0058

ピューロマイシン結合mRNAライブラリを無細胞翻訳系で翻訳することにより、mRNA-ペプチド複合体ライブラリを得ることができる。ペプチド部分は自発的に環状化し、mRNA-大環状ペプチドライブラリとなる。

0059

続いて、mRNA-大環状ペプチドライブラリと標的分子とを接触させてインキュベートし、標的分子に結合したmRNA-大環状ペプチド複合体群を選択する。この工程は、例えば標的分子を固相表面に固定しておき、固相表面に捕捉されたmRNA-大環状ペプチド複合体を選択することによって行うことができる。
このmRNA-大環状ペプチド複合体群に対して逆転写反応を行うことにより、cDNA群が得られる。このcDNAは、標的分子に結合する大環状ペプチドをコードするものである。

0060

cDNA群を増幅し、これを転写することによって再度mRNAライブラリを得ることができる。このmRNAライブラリは、当初のmRNAライブラリに比較して、標的分子に結合する分子の濃度が高くなっている。したがって、上述の工程を複数回繰り返すことにより、標的分子に結合する分子を徐々に濃縮することができる。
濃縮された大環状ペプチドのアミノ酸配列は、cDNAの配列を解析することによって特定できるので、配列情報を基に、標的分子に対して高い親和性を有する大環状ペプチドを産生することが可能である。

0061

本発明に係る大環状ペプチドライブラリをスクリーニングして得られた標的分子に結合する大環状ペプチドは、その後さらに公知の方法又はそれに準ずる方法で修飾を加え、最適化してもよい。

0062

後述する実施例で用いた、RaPIDシステム(Yamagishi, Y. et al., Chemistry & biology, 2011, 18(12), 1562-70)は、FITシステムとmRNAディスプレイを組み合わせたスクリーニング系の一例である。FITシステムを用いた遺伝暗号のリプログラミング技術を、mRNAディスプレイ法と組み合わせたRaPIDシステムにより、非タンパク質を含むペプチドライブラリを用いたスクリーニングが可能となった。本発明者らは、これまでに、このRaPIDシステムにより、非標準環状ペプチドライブラリから、キナーゼ阻害剤(Hayashi, Y. et al., 2012, ACS chemical biology, 7(3), 607-13.)とヒストンデアセチラーゼ(SIRT2)阻害剤(Morimoto, J., et al., 2012, Angewandte Chemie (International ed. in English), 51(14), 3423-7)を発見することに成功した。発見されたペプチド阻害剤は、キナーゼとヒストンデアセチラーゼの他のアイソフォームに対して著しく高い選択性を示した。このように、RaPIDシステムは、多様性に優れた非標準ペプチドライブラリのスクリーニングに有用な技術である。

0063

[ぺプチジルアルギニンデアミナーゼ4(PAD4)阻害剤]
実施例に示すとおり、本発明者らは、本発明に係る大環状ペプチドライブラリを用いて、PAD4タンパク質に対する阻害剤を同定した。本発明は、係るPAD4阻害剤である大環状ペプチドも包含する。
PAD4は、アルギニンのメチル化と反対の反応によって、メチルアルギニンシトルリンに変換するヒストンデアミナーゼとして機能するタンパク質である。これまでに、シトルリンを含むタンパク質が、PAD4によるアルギニン残基翻訳後修飾によって産生されることが見出されている。また、PAD4は、アポトーシス好中球細胞外トラップの形成、ケモカイン機能変化、及びDNA転写の調節に関与していると考えられている。また、PAD4は、関節リウマチ発症にも強く関連している(Firestein, G.S. (2003) Nature, 423(6937), 356-61.)。このため、PAD4は、治療標的として広く注目されており、PAD4特異的阻害剤が緊急に必要とされていた。これまでに低分子化合物のクロロアミジンがPAD4阻害剤であることが報告されているが、IC50はmicromolarレベルで、PAD酵素の異なるアイソフォームに対する選択性が十分でなく、より特異性の高い新たなPAD4選択的阻害剤が必要とされていた。

0064

PAD4阻害剤となり得る大環状ペプチドのアミノ酸配列は、以下の一般式(I)で表される。
(Xaa1)m-Xaa2-(Xaa3)n-Xaa4-(Xaa5)o (I)
式中、mは1から5の整数を表し、nは4から8の整数を表し、oは1から5の整数を表す。
m個のXaa1、n個のXaa3、及びo個のXaa5は、それぞれ独立に選択されるアミノ酸を表し、Xaa2とXaa4は、相互作用性疎水性側鎖を有するアミノ酸を現す。m個のXaa1の中の1つのアミノ酸と、o個のXaa5の中の1つのアミノ酸が、分子内で結合して、大環状が形成される。例えば、m個のXaa1の中の1つのアミノ酸を、上述した官能基1を有するアミノ酸とし、o個のXaa5の中の1つのアミノ酸を官能基2を有するアミノ酸とするか、m個のXaa1の中の1つのアミノ酸を上述した官能基2を有するアミノ酸とし、o個のXaa5の中の1つのアミノ酸を官能基1を有するアミノ酸とすればよい。

0065

式(I)で表されるペプチドの具体例として、以下のものが挙げられる。
VB1C12:ClAc-D-F-N-A-Ahep-Y-P-Y-R-P-P-Ahep-T-S-C
VB1C20:ClAc-D-F-D-A-Ahep-Y-P-F-R-P-P-Ahep-A-H-C
VB1C21:ClAc-D-F-Y-R-C-Ahep-H-P-V-P-V-Ahep-P-T-P-C
VB1C25:ClAc-D-F-N-A-Ahep-Y-P-F-R-P-P-Ahep-T-T-C
VB1C35:ClAc-D-F-Y-R-C-Ahep-Y-P-V-P-R-Ahep-T-R-P-C
VB1C36:ClAc-D-F-Y-R-C-Ahep-Y-P-L-P-S-P-P-Ahep-T-P-H-C
VB2C15:ClAc-D-F-Y-R-C-Ahep-Y-P-I-P-R-P-P-Ahep-C
VB2C35:ClAc-D-F-Y-R-C-Ahep-N-P-I-P-A-L-P-Ahep-C
VB2C37:ClAc-D-F-Y-R-C-Ahep-H-P-V-P-R-P-P-Ahep-C
VB2C11:ClAc-D-F-V-S-R-S-Ahep-F-D-A-L-P-N-N-Ahep-C
VB2C28:ClAc-D-F-P-S-I-R-Ahep-A-F-P-H-T-N-P-Ahep-C

0066

また、これらのアミノ酸配列から、1又は数個のアミノ酸が付加、置換、又は欠失したアミノ酸配列を含み、PAD4阻害効果を有する大環状ペプチドも本発明のPAD4阻害剤に含まれる。
また、これらのアミノ酸配列と、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、PAD4阻害効果を有する大環状ペプチドも本発明のPAD4阻害剤に含まれる。
PAD4阻害ペプチドは、本発明に係る大環状ペプチドと同様に種々の方法で製造することができ、用途に合わせてリン酸化、メチル化、アセチル化、アデニリル化、ADPリボシル化、糖鎖付加などの修飾を加えてもよい。また、PAD4阻害ペプチドは、生理学的に許容される塩基や酸との塩であってもよい。

0067

これらのペプチドは、PAD4阻害剤が関与する疾患の治療のための医薬組成物に用いることも可能である。
医薬組成物の投与形態は特に限定されず、経口的投与でも非経口的投与でもよい。非経口投与としては、例えば、筋肉内注射静脈内注射皮下注射等の注射投与経皮投与経粘膜投与経鼻、経口腔、経眼、経経膣、経直腸)投与等が上げられる。
医薬組成物中のペプチドは、代謝及び排泄されやすい性質に鑑みて、各種の修飾を行うことができる。例えば、ポリペプチドポリエチレングリコール(PEG)や糖鎖を付加して血中滞留時間を長くし、抗原性を低下させることができる。また、ポリ乳酸グリコールPLGA)などの生体内分解性高分子化合、多孔性ヒドロキシアパタイトリポソーム表面修飾リポソーム、不飽和脂肪酸で調製したエマルジョンナノパーティクルナノスフェア等を徐放基剤として用い、これにポリペプチドを内包させてもよい。経皮投与する場合、弱い電流を皮膚表面に流して角質層を透過させることもできる(イオントフォレシス法)。

0068

医薬組成物は、有効成分をそのまま用いてもよいし、薬学的に許容できる担体、賦形剤添加剤等を加えて製剤化してもよい。剤形としては、例えば、液剤(例えば注射剤)、分散剤懸濁剤錠剤丸剤粉末剤坐剤散剤細粒剤顆粒剤カプセル剤シロップ剤トローチ剤吸入剤軟膏剤点眼剤点鼻剤点耳剤パップ剤等が挙げられる。
製剤化は、例えば、賦形剤、結合剤崩壊剤滑沢剤溶解剤溶解補助剤着色剤矯味矯臭剤安定化剤乳化剤吸収促進剤界面活性剤pH調整剤防腐剤抗酸化剤などを適宜使用し、常法により行うことができる。
製剤化に用いられる成分の例としては、精製水食塩水リン酸緩衝液デキストロースグリセロールエタノール等薬学的に許容される有機溶剤動植物油乳糖マンニトールブドウ糖ソルビトール結晶セルロースヒドロキシプロピルセルロースデンプンコーンスターチ無水ケイ酸ケイ酸アルミニウムマグネシウムコラーゲンポリビニルアルコールポリビニルピロリドンカルボキシビニルポリマーカルボキシメチルセルロースナトリウムポリアクリル酸ナトリウムアルギン酸ナトリウム水溶性デキストランカルボキシメチルスターチナトリウム、ぺクチンメチルセルロースエチルセルロースキサンタンガムアラビアゴムトラガントカゼイン寒天、ポリエチレングリコール、ジグリセリングリセリンプロピレングリコールワセリンパラフィンミリスチン酸オクチルドデシルミリスチン酸イソプロピル高級アルコールステアリルアルコールステアリン酸ヒト血清アルブミン、等が挙げられるがこれらに限定されない。
ペプチドの経粘膜吸収されにくい難吸収性薬物の吸収を改善する吸収促進剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル類ラウリル硫酸ナトリウムサポニン等の界面活性剤;グリココール酸デオキシコール酸タウロコール酸等の胆汁酸塩EDTAサリチル酸類等のキレート剤カプロン酸カプリン酸ラウリン酸オレイン酸リノール酸混合ミセル等の脂肪酸類エナミン誘導体、N-アシルコラーゲンペプチド、N-アシルアミノ酸シクロデキストリン類キトサン類一酸化窒素供与体等を用いてもよい。

0069

丸剤又は錠剤は、糖衣溶性腸溶性物質被覆することもできる。
注射剤は、注射用蒸留水生理食塩水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油アルコール類等を含むことができる。さらに、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解剤、溶解補助剤、防腐剤等を加えることができる。

0070

本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。

0071

以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。

0072

A.本発明に係る大環状ペプチド発現のためのmRNAライブラリの設計と構築
1.材料と方法
1−1.化合物
全ての化合物と試薬はWatanabe Chemical Industries、Nacalai Tesque、Tokyo Chemical Industry、又はSigma-Aldrich Japanから購入した。特に記載しない限り、購入した化合物はそれ以上精製せずに使用し、緩衝液にはSartorius Filtration System(18.2MΩ)で処理した水を用いた。

0073

1−2.オリゴヌクレオチドプライマー
用いたオリゴヌクレオチドプライマーは以下のとおりであり、いずれもOperon Biotechnologies(Japan)から購入した。T1-T5はtRNAの調製に用いた。

P1 : 5′-GTAATACGACTCACTATAGGCGGGGTGGAGCAGCCTGGTAGCTCGTCGG -3′
P2 : 5′- GAACCGACGATCTTCGGGTTATGAGCCCGACGAGCTACCAGCCT -3′
P3 : 5′- GGCGTAATACGACTCACTATAG -3′
P4 : 5′- TGGTTGCGGGGGCCGGATTTGAACCGACGATCTTCGGG -3′
P5 : 5′- TGGTTGCGGGGGCCCGATTT -3′
P6 : 5′- GTAATACGACTCACTATAGGCTCTGTAGTTCAGTCGGTAGAACGGCGGA -3′
P7 : 5′- GAACCAGTGACATACGGATTATGAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3′
P8 : 5′- TGGCGGCTCTGACTGGACTCGAACCAGTGACATACGGA -3′
P9 : 5′- TGGCGGCTCTGACTGGACTC -3′
P10 : 5′- GTAATACGACTCACTATAGGATCGAAAGATTTCCGC -3′
P11 : 5′- ACCTAACGCTAATCCCCTTTCGGGGCCGCGGAAATCTTTCGATCC -3′
P12 : 5′- ACCTAACGCTAATCCCCT -3′
P13 : 5′- GAACCAGTGACATACGGATTUGGAGTCCGCCGTTCTACCGACT-3′
M1 : 5′- TAATACGACTCACTATAGGGTTAACTTTAACAAGGAGAAAAACATG -3′
M2 : 5′- AATCGGCGGAATAGACTTGGTCATCATGTTTTTCTCCTTGTTAAAGT -3′
M3 : 5′- GGCGTAATACGACTCACTATAG -3′
M4 : 5′- CGTCGTCCTTGTAGTCACAGTCCGGAAACATAATCGGCGGAATAGACTT-3′
M5 : 5′- TTACTTGTCGTCGTCGTCCTTGTAGTCAC -3′
VF : 5′- TAATACGACTCACTATAGGGTTGAACTTTAAGTAGGAGATATATCCATG -3′
VR: 5′- TTTCCGCCCCCCGTCCTAAGACCCAGACCCAGACCCACA -3′
VB1-1: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNCATANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-2: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNCATANNANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-3: 5′-AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNCATANNANNANNANNNNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-4: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNANNCATANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-5: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNANNCATANNANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-6: 5′-AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNANNCATANNANNANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAA -3′
VB1-7: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNANNCATANNANNANNANNANNCATANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-8: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNANNCATANNANNANNANNANNANNCATANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB1-9: 5′-AGACCCAGACCCAGACCCACAANNANNANNCATANNANNANNANNANNANNANNCATANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAG -3′
VB2-1: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB2-2: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB2-3: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNANNANNCATANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB-4: 5′-AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNCATANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB2-5: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNANNCATANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB2-6: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNANNANNCATANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB2-7: 5′-AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNCATANNANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VB2-8: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNANNCATANNANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3'
VB2-9: 5′- AGACCCAGACCCAGACCCACACATANNANNANNANNANNANNANNCATANNANNANNANNCATGGATATATCTCCTACTTAAAG -3′
VBP.F49: 5′- TAATACGACTCACTATAGGGTTGAACTTTAAGTAGGAGATATATCCATG -3′
VBP.R39: 5′- TTTCCGCCCCCCGTCCTAAGACCCAGACCCAGACCCACA -3′

0074

1−3. FITシステム
FITシステムは、メチオニンとRF1を除く翻訳に必要なすべての成分を含む混合液として調製した。FITシステムの組成は以下のとおりである。
50 mMHEPES-KOH (pH 7.6); 12mM酢酸マグネシウム; 100 mM酢酸カリウム; 2mMスペルミジン; 20 mMリン酸クレアチニン; 2 mM DTT; 2 mMATP; 2 mMGTP; 1 mM CTP; 1 mMUTP; 0.1 mM 10-ホルミr-5,6,7,8-テトラヒドロ葉酸; 0.5 mM 15 Met, Lys, Gln, Trp, Glu以外のタンパク質性アミノ酸; 1.5 mg/ml E.coli totaltRNA; 0.73 μM AlaRS; 0.03 μM ArgRS; 0.38 μM AsnRS; 0.13 μM AspRS; 0.02 μM CysRS; 0.06 μM GlnRS; 0.23 μM GluRS; 0.02 μM GlyRS; 0.02 μM HisRS; 0.4 μM IleRS; 0.04 LeuRS; 0.11 μM LysRS; 0.03 μM MetRS; 0.68 μM PheRS; 0.16 μM ProRS; 0.04 μM SerRS; 0.09 μM ThrRS; 0.03 μM TrpRS; 0.02 μM TyrRS; 0.02 μM ValRS; 0.6 μMMTF; 2.7 μM IF1; 0.4 μM IF2; 1.5 μM IF3; 0.26 μM EF-G; 10 μM EF-Tu; 10 μM EF-Ts; 0.25 μM RF2; 0.17 μM RF3; 0.5 μMRRF; 0.1 μM T7 RNAポリメラーゼ; 4 μg/mlクレアチンキナーゼ; 3 μg/mlミオキナーゼ; 0.1 μMピロホスファターゼ; 0.1 μMヌクレオチドジホスファターゼキナーゼ; 及び 1.2 μM ribosome。

0075

1−4.tRNAfMetCAU、tRNAAsn-E2CCA、及びFlexyzymeの調製
tRNAfMetCAU:P1をP2とアニーリングさせ、TaqDNAポリメラーゼ伸長した。得られた産物をPCR反応液で20倍に希釈し、P3とP4をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。さらに、増幅産物をPCR反応液で200倍に希釈し、P3とP5をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。DNA産物をT7RNAポリメラーゼで転写し、10%変性PAGEで精製した。精製されたtRNAfMetCAUを水に溶解させた。

0076

tRNAfAsn-E2CAU:P6をP7とアニーリングさせ、TaqDNAポリメラーゼで伸長した。得られた二本鎖DNA(dsDNA)をPCR反応液で20倍に希釈し、P3とP8をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。さらに、増幅産物をPCR反応液で200倍に希釈し、P3とP9をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。DNA産物をT7RNAポリメラーゼで転写し、変性PAGEで精製した。精製されたtRNAfAsn-E2CAUを水に溶解させた。

0077

Flexizyme (eFx):P10をP11とアニーリングさせ、TaqDNAポリメラーゼで伸長した。得られた二本鎖DNA(dsDNA)をPCR反応液で20倍に希釈し、P3とP12をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。さらに、増幅産物をPCR反応液で200倍に希釈し、P3とP9をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。DNA産物をT7RNAポリメラーゼで転写し、変性PAGEで精製した。精製されたeFxを水に溶解させた。

0078

tRNAfAsn-E2CCA:P6をP13とアニーリングさせ、TaqDNAポリメラーゼで伸長した。得られた二本鎖DNA(dsDNA)をPCR反応液で20倍に希釈し、P3とP8をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。さらに、増幅産物をPCR反応液で200倍に希釈し、P3とP9をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。DNA産物をT7RNAポリメラーゼで転写し、変性PAGEで精製した。精製されたAsn-E2CCAを水に溶解させた。

0079

1−5.クロロアセチル-D-フェニルアラニン-CME
フェニルアラニン (33 mg, 0.20 mmol)、酢酸N-ヒドロキシスクシンイミド(38 mg, 0.24 mmol)、及びNaHCO3 (50 mg, 0.60 mmol) を含む、0.3 mLの50% 1,4-ジオキサン水溶液を、室温で1時間撹拌した。反応後、1,4-ジオキサンを蒸発させ、溶液をAcOEt (3 mL x 2)で洗浄した。水層は、1M HClで酸性化して酢酸エチル(3 mL x 2) で抽出し、有機層はMgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物(Nα-Ac-Phe-OH) を、0.2 mLのDMF中のEt3N (24 mg, 0.24 mmol) 及びクロロアセトニトリル(0.1 mL) と混合し、反応液を室温で12時間撹拌した。反応後、Et2O (9 mL) を加え、溶液を1 M HCl (3 mL x 3)、飽和NaHCO3 (3 mL x 3)、及びbrine (5 mL x 1) で洗浄し、有機層をMgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、Nα-ClAc-Phe-CME (28 mg, over all yield 55%)を得た。
1H NMR(CDCl3, 500MHz) δ 7.35 (m, 3H), 7.16 (d, J = 7.0 Hz, 2H), 5.9 (br, 1H), 4.95 (m, 1H) 4.81 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 4.71 (d, J = 15.6 Hz, 1H), 3.17 (m, 2H), 2.02 (s, 3H).

0080

1−6. Nle-CMEの化学合成
N,N'-ジメチルホルムアミド(0.2ml)中のN-ブトキシカルボニル-L-ノルロイシン溶液にEt3N (56 mg, 0.55 mmol)とクロロアセトニトリル(0.1 mL) の溶液を加えた。混合物を室温で14時間撹拌した。反応後、沈殿をろ過して溶液を飽和NaHCO3 (3 mL x 3)とbrine (5 mL x 1)で洗浄し、有機層をMgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、N-ブトキシカルボニル-L-ノルロイシンシアノメチルメチルエステルを得た。

0081

精製産物を2mLの4N HCl/酢酸エチルに溶解させ、15分室温でインキュベートした。溶液を減圧下で濃縮した後、ジエチルエーテル(3mL)の添加と減圧下での濃縮を3回繰り返して、残りのHClを除去した。得られた産物にジエチルエーテル (3mL)を加えて沈殿させ、沈殿物をろ過してNle-CME (59.0 mg, 0.285 mmol, overall quantitative yield)を得た。
1H NMR(CDCl3, 500MHz) δ 8.03 (m, 3H), 5.19 (s, 1H), 4.59 (s, 1H), 4.17 (m, 1H) 1.81 (s, 2H), 1.31 (m, 2H), 1.11 (m, 2H), 0.88 (m, 3H).

0082

1−7. Ahep-CMEの化学合成
N,N'-ジメチルホルムアミド(0.2 ml)中の(S)-2-[(t-ブトキシカルボニル)アミノ]へプタン酸 (68 mg, 0.26 mmol)溶液に、Et3N (56 mg, 0.55 mmol)とクロロアセトニトリル(0.1 mL)の溶液を加えた。混合物を室温で14時間撹拌し、沈殿をろ過して溶液を飽和NaHCO3 (3 mL x 3)とbrine (5 mL x 1)で洗浄し、有機層をMgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、(S)-2-[(t-ブトキシカルボニル)アミノ]へプタン酸-CMEを得た。精製した産物を2 mLの4N HCl/酢酸エチルに溶解させ、15分室温でインキュベートした。溶液を減圧下で濃縮した後、ジエチルエーテル(3mL)の添加と減圧下での濃縮を3回繰り返して、残りのHClを除去した。得られた産物にジエチルエーテル (3mL)を加えて沈殿させ、沈殿物をろ過してAhep-CME (23.1 mg, 0.103 mmol, overall 57% yield)を得た。
1H NMR(CDCl3, 500MHz) δ 8.33 (s, 3H), 4.58 (s, 2H), 4.10 (s, 1H), 1.82 (s, 2H), 1.40 (m, 2H), 1.28 (m, 4H), 0.88 (m, 3H).

0083

1−8. ClAc-D-F-tRNAfMetCAUの調製
3 μLの41.7 μM tRNAfMetCAUと、3 μLの41.7 μM eFx とを167 mMHEPES-KOH (pH 8.0)中で、95°Cで2分加熱し、5分で室温まで冷却した。このRNA溶液に、2 μLの3 M MgCl2を加え、5分間上でインキュベートした。続いて、2 μLの25 mM ClAc-D-F-CME (DMSO中)を反応液に加え、1時間氷上でインキュベートした。40 μLの0.3 M酢酸ナトリウム(pH5.2)を加えて反応を停止させ、tRNAをエタノール沈殿で回収した。沈殿を70%エタノールと0.1 Mの酢酸ナトリウム (pH5.2)で2回、70%エタノールで1回洗浄した。10分間空気乾燥した後、沈殿物を1.0 μLの0.1 mM酢酸ナトリウムに溶解させ、5.0 μLスケール翻訳反応に用いた。

0084

1−9. Ahep-tRNAAsn-E2CCA及びAhep-tRNAAsn-E2CAUの調製
3 μLの41.7 μM tRNAAsn-E2CCAと、3 μLの41.7 μM eFx とを167 mMHEPES-KOH (pH 8.0)中で、95°Cで2分加熱し、5分で室温まで冷却した。このRNA溶液に、2 μLの3 M MgCl2を加え、5分間氷上でインキュベートした。続いて、2 μLの25 mM Ahep-CME (DMSO中)を反応液に加え、3時間氷上でインキュベートした。40 μLの0.3 M酢酸ナトリウム(pH5.2)を加えて反応を停止させ、tRNAをエタノール沈殿で回収した。沈殿を70%エタノールと0.1 Mの酢酸ナトリウム (pH5.2)で2回、70%エタノールで1回洗浄した。10分間空気乾燥した後、沈殿物を1.0 μLの0.1 mM酢酸ナトリウムに溶解させ、5.0 μLスケールの翻訳反応に用いた。
Ahep-tRNAAsn-E2CAUは、tRNAAsn-E2CCAの代わりにtRNAAsn-E2CAUを用いて同様に調製した。

0085

1−10.アミノアシル化解析
tRNAのClAc-D-F-CME及びAhep-CMEによるアミノアシル化は、従来法(H. Murakami, A. Ohta, H. Ashigai, H. Suga (2006) Nature Methods3, 357-359.)に従って解析した。アミノアシル化後のtRNA 10 pmolを含むペレットを、7.5 mg/mLスルホスクシンイミジル-D-ビオチン(Dojin, Japan)の0.4 M Hepes-K (pH 8.0)溶液3.5 μLに溶解させた。氷上でビオチン化反応を1時間行い、8.0 μLの0.6 M酢酸ナトリウム(pH 5.0)で反応を停止させ、エタノールで沈殿させた。ペレットを、0.1 M酢酸ナトリウムを含む70% エタノール (pH 5.0)で2回洗浄し、10.0 μLのH2Oに溶解させた。この溶液0.5 μLを1.5 μLのローディングバッファー(0.2 mg/mLのストレプトアビジン(37 mMピペラジン(pH 6.1)中)、37 mMEDTA、及び6 M urea)と混合し、6M ureaを含む12%変性PAGEで解析した。RNAをSyber Green II (Molecular Probe)で染色し、FLA-5100 (Fuji, Japan)で観察した。

0086

1−11. 本発明の大環状ペプチド(以下「VBペプチド」という)をコードする鋳型DNAモデルの調製
M1をM2とアニーリングさせ、TaqDNAポリメラーゼで伸長した。得られた産物をPCR反応液で100倍に希釈し、M3とM4をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。さらに、増幅産物をPCR反応液で100倍に希釈し、M3とM5をそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして増幅した。PCR産物フェノール/クロロホルム抽出により精製し、エタノール沈殿させた。精製されたDNAを水に溶解させた。

0087

1−12.モデルVPペプチドの翻訳合成
鋳型DNA、100 μMのClAcDF-tRNAfMetCAU、及び200 μMのAhep-tRNAAsn-E2CAUを加えたFITシステムを、37℃で30分インキュベートした。翻訳産物を、C18シリカで満たしたSPE C-TIP (Nikkyo technos Co., Tokyo, Japan)に充填し、4%アセトニトリルと0.5%酢酸で2度洗浄し、80%アセトニトリルと0.5%酢酸で溶出させ、MALDI-TOF massで解析した。

0088

1−13.翻訳されたペプチドのMADLI-TOF解析
MALDI-TOF解析は、Autoflex II (Bruker Daltonics)とpeptide calibration standard II (Bruker Daltonics)を用いて行った。

0089

1−14. VBmRNAライブラリの調製
VB1 mRNAライブラリ
VB1 DNAライブラリを2ステップの反応で調製した。まず、フォワードプライマーVFを、リバースプライマーVB1-1、VB1-2、VB1-3、VB1-4、VB1-5、VB1-6、VB1-7、VB1-8又はVB1-9のいずれかとアニーリングさせ、それぞれTaqDNAポリメラーゼで伸長させた。得られた鋳型DNAを、VFとリバースプライマーVRを用いた5サイクルのPCRで増幅した。各鋳型DNAは、T7RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写に供された。各mRNA (VB1-1: VB1-2: VB1-3: VB1-4: VB1-5: VB1-6: VB1-7: VB1-8: VB1-9) をモル比1/162: 1/16: 1: 1/16: 1: 1: 1: 1: 1で混合し、濃度を10 mMに調整した。

0090

VB2mRNAライブラリ
VB2 DNAライブラリを、VB1ライブラリと同様に調製した。フォワードプライマーVFを、リバースプライマーVB2-1、VB2-2、VB2-3、VB2-4、VB2-5、VB2-6、VB2-7、VB2-8又はVB2-9のいずれかとアニーリングさせ、それぞれTaqDNAポリメラーゼで伸長させた。得られた鋳型DNAを、VFとリバースプライマーVRを用いた5サイクルのPCRで増幅した。各鋳型DNAは、T7RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写に供された。各mRNA (VB2-1: VB2-2: VB2-3: VB2-4: VB2-5: VB2-6: VB2-7: VB2-8: VB2-9) をモル比1/162: 1/162: 1/162: 1/162: 1/162: 1/16: 1/162: 1/16: 1で混合し、濃度を10 mMに調整した。

0091

2.結果
2−1. Flexizymeシステムを用いたClAc-D-F-CME、Nle-CME、及びAhep-CMEによるアミノアシル化
ClAc-D-F-CME、Nle-CME、及びAhep-CMEについて、Flexyzymeを用いたアミノアシル化効率を本発明者による標準的なプロトコルで確認したところ、すべてのCMEはtRNAアナログにチャージされていた。ClAc-D-F-CMEは開始tRNAfMetCAUに、Nle-CMEとAhep-CMEは伸長tRNAAsn-E2CCAにチャージされた。Flexizymeは、eFxを用いた。
3つのアミノ酸アナログは、いずれも十分に効率よく伸長されるポリペプチドに取り込まれた。Ahep-CMEのアミノアシル化効率は、Nle-CMEより1.2倍高かった。次に、NleとAhepをモデルペプチドの特異的な部位に取り込み、NleとAhepを含むペプチドを、ラジオアイソトープを用いたペプチド定量法で測定した。ペプチド濃度は、[14C]-Aspのラジオアイソトープ(RI)のカウントを、既知の濃度のカウントに比較して決定した。発現した野生型ペプチドと大環状ペプチドのRIカウントを、キャリブレーションラインに当てはめて個々のペプチドの濃度を求めた。NleとAhepを含むモデルペプチドの発現は同等であったが、Nleよりも長い脂肪族鎖を有することから、その後の実験には、Ahepを用いた。

0092

2−2. VBペプチドモデルとコントロールとの比較
FITシステムで、VBペプチドが作られることを示すために、FITシステムで発現させるモデル配列を設計した。まず、ClAc-D-F-CMEとAhep-CMEを材料として、flexizymeで、ClAc-D-FとAhepを、tRNAfMetCAUとtRNAAsn-E2CCAにそれぞれチャージした。
Metを含まないFITシステムにこれらのアミノアシルtRNAを加えたところ、コード配列
AUG-UGG-ACC-AAG-UCU-AUU-CCG-CCG-AUU-UGG-UUU-CCG-GAC-UGU-GAC-UAC-AAG-GAC-GAC-GAC-GAC-AAG-UAA
を含む鋳型DNAが、このFITシステムで転写及び翻訳された。
開始AUGコドンと伸長UGGコドンが、ClAc-D-F-tRNAfMetCAUとAhe-tRNAAsn-E2CCAにそれぞれ解読されるので、VBペプチド
ClAc-D-FAhepTKSIPPIAhepFPDCDYKDDDDK
が産生された。

0093

これまでに報告されているとおり、開始AUGにおいてClAc-D-Fが発現すると、N末端クロロアセチル基とC末端システインのスルフヒドリル基との自発的な反応により大環状ペプチドが容易に形成される。一方、UGGコドンで発現する2つのAhep残基は、発現したペプチドにおいて、偽二環様構造(pseudo bicyclic like structure)を形成する。MALDI-TOF mass解析により、Ahep残基を2つ含むVBペプチドが発現したことが確認された。

0094

VB合成実験ネガティブコントロールとして、VBペプチドに似ているが、Ahepアミノ酸残基をSer残基に代えた以下の大環状モデルペプチド配列を設計し、Metを含まないFITシステムで、AUGコドンをClAc-D-F-tRNAfMetCAUに割り当てて翻訳を行った。その結果、以下の配列を有する直鎖状ペプチドが発現し、自発的に環状化して大環状ペプチドが形成された。
ClAc-D-FSTKSIPPISFPDCDYKDDDDK
このペプチドのMALDI-TOF mass解析を行ったところ、VBペプチドに比較して、環状化の時間が長くかかることが判明した。これは、VBペプチド内の非タンパク質性のアルキル鎖が疎水性相互作用し、その結果、非VBペプチドよりも、速く自発的な環状化が生じたことを示唆する。

0095

2−3. VBmRNAライブラリの構築
flexizymeを用いてClAc-D-FとAhepの翻訳による取り込みが成功したことから、2つの異なるmRNAライブラリ(それぞれ「VB-1 mRNAライブラリ」、「VB-2 mRNAライブラリ」という。)を構築した。まず、ランダムなヌクレオチド配列が(NTT)xコドン(ここで、NはA、T、G又はCを表し、Xは7から14のいずれかの整数を表す)によって導入される合成鋳型DNAから、二本鎖DNAプールを構築した。これらのランダム配列は、ClAc-D-Fのための開始ATGコドンと、Ahepのための2つの伸長ATGコドンと、C末端システインのためのTGTコドンの間に配置された。

0096

非タンパク質性アミノ酸をコードするコドンは、いずれもATGコドンとした。VB-1mRNAライブラリと、VB-2 mRNAライブラリの唯一の違いは、Ahepアミノ酸を発現させる伸長ATGコドンの位置であった(図2)。2種類のライブラリを作ることにより、標的タンパク質に対するペプチド阻害剤のスクリーニングに、より適したVB骨格を調べた。

0097

これらのDNAライブラリから、in vitro転写によりmRNAのプールを調製した。これらのNNU mRNAライブラリでは、15のタンパク質性アミノ酸が16の活性なコドンに割り当てられ、開始アミノ酸には、VBペプチドのプロテアーゼ耐性を増大させるために、D-ホルムアミノ酸を選択した。また、いずれのライブラリもランダム領域終止コドンを含まないようにすることにより、VBペプチドライブラリ産生の信頼性を高めた。いずれのmRNAライブラリもT7プロモータ(5'-UAAUACGACUCACUAUAG-3')、イプシロン配列 (5'-UUAACUUUAA-3')、シャインダルガーノ配列(5'-AAGGAGA-3')、ランダムNNU領域(図2)、リンカー配列(5'-GGCAGCGGCAGCGGCAGC-3')、及びピューロマイシンリンカーに対する相補配列(5'-UAGGACGGGGGGCGGAAA-3')と含めた。

0098

2−4.結論
VBペプチドのリボソーム合成と、VB骨格を有するペプチド発現のためのmRNAライブラリの開発に成功した。VB mRNAライブラリの設計では、AhepをmRNA配列の異なる場所に割り当て、2種類の異なるVB骨格を作った。2つの異なるVBペプチドを発現するmRNAライブラリを使用すれば、治療標的に対するペプチド阻害剤のスクリーニングの成功の可能性が高くなると考えられる。

0099

B.本発明の大環状ペプチドライブラリを用いたPAD4阻害剤のin vitroスクリーニング
1.材料と方法
1−1.オリゴヌクレオチドプライマー
用いたオリゴヌクレオチドプライマーは以下のとおりである。すべてOperon Biotechnologies (Japan)より購入した。
VF : 5′- TAATACGACTCACTATAGGGTTGAACTTTAAGTAGGAGATATATCCATG -3′
VR: 5′- TTTCCGCCCCCCGTCCTAAGACCCAGACCCAGACCCACA -3′

0100

1−2. RaPIDディスプレイ法によるセレクション
200pmのmRNAライブラリの各mRNAにオリゴDNA(5′-pCTCCCGCCCCCCGTCC-3′)を結合させた。オリゴDNAの3′末端にはピューロマイシン-CC-PEGが結合している。得られたmRNA-ピューロマイシンは、RF1とMetを含まず、50 μMのClAc-D-F-tRNAfMetCAUと、100 μM Ahep-tRNAAsn-E2CAUを含む150 μLのFITシステムで、37℃で60分インキュベートした。反応液をさらに、室温で12分インキュベートし、ピューロマイシンを介したペプチドとmRNAの結合を増強した。
続いて、15 μLの100 mMEDTA[pH 7.5] を溶液に加え、ペプチド-mRNA結合体からリボソームを解離させ、さらに37℃で30分インキュベートしてペプチドの大環状化を進めた。EDTAをゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で除去した後、反応液に165 μLのブロッキング溶液(100 mM Tris-HCl [pH 7.6], 1.3 M NaCl, 0.1% tween, 0.2% acetylBSA 及び5 μM tRNA)を加えた。

0101

FITシステムに含まれるHis-タグをつけたタンパク質と、ペプチドライブラリ中のビーズに結合するペプチドを除くために、反応液を6 mgのDynabeadsmagnetic beads (Invitrogen)と混合し、4℃で30分インキュベートした。インキュベーション後、ビーズを洗浄し、再度、1.2 mgのDynabeadsと共に4℃で30分インキュベートした(この繰り返しプロセスを「プレクリア(pre-clear)」と呼ぶ。)。その後、ライブラリと、Dinabeadsに固定したHis-PAD4とを混合し、4℃で1時間インキュベートして、PAD4-結合ペプチドを選択した。

0102

このインキュベーションにおけるHis-PAD4の濃度は400 nMとした。上清を除去し、800μL TBS-T (50 mM Tris-HCl [pH 8.0], 150 mM NaCl, 0.05% tween 20)でビーズを2回洗浄した。ビーズを40 μLのreverse-transcription mix (0.6 mM dNTP, 2.5 μM oligo DNA O12, and M-MLV Reverse Transcriptase (Promega) (逆転写酵素とセットで販売されている反応緩衝液中)) と混合し、42℃で1時間インキュベートした。ビーズの懸濁液に、200 μLのPCR反応液(10 mM Tris-HCl [pH 9.0], 50 mM KCl, 0.1% Triton X-100, 2.5 mM MgCl2, 0.25 mM dATP, 0.25 mM dTTP, 0.25 mM dGTP, 0.25 mM dCTP, 0.25 μM oligo DNA VF, 及び0.25 μM oligo DNAVR) を加えて、反応液を95℃で5分間加熱した。
上清を新しいチューブに移し、600 μLのPCR反応液と混合した。

0103

20 μLの反応液を、結合セレクション後に回収されたDNAを定量するためのリアルタイムPCRに用いた。残りのDNAは、オリゴDNAのVFとVRをそれぞれ5'-及び3'-プライマーとして、PCRで増幅した。増幅されたDNAを転写して、PAD4に結合する配列が濃縮されたmRNAライブラリを生成し、次のラウンドのセレクションに用いた。

0104

第2ラウンド以降は、以下の点を除いて第1ラウンド基本的に同じ手順で行った。
(1)翻訳の量を5 μLに減らした。
(2)ビーズに結合したペプチドを効率よく除去するために、プレクリアの時間を長くした。まず、翻訳産物を0.3 mgのDynabeadsと4℃で30分インキュベートし、上清を0.1 mgのdynabeads TALONと4℃で30分、2回インキュベートした(計3回のプレクリアの繰り返し)。
(3)逆転写は、M-MLV Reverse Transcriptase,RNaseH Minus [Point Mutant] (Promega)を用いた結合セレクションの前に行い、RNA-アプタマーが選択されるのを防いだ。
(4) セレクション後、100 μLのPCR反応液で、PAD4結合ペプチドのcDNAを回収した。100 μLの回収されたcDNAのうち1 μLを、選択された配列を定量するためのリアルタイムPCRに用い、残りの99 μLをPCRで増幅した。PAD4結合配列を濃縮した後、dsDNA配列を、pGEM-T easy vector (Promega)を使用して標準的なTAクローニング法でクローニングし、BigDye Terminator v3.1 (Life Technologies)を用いて配列を決定した。

0105

1−3. MALDI-TOF解析
すべてのMALDI-TOF解析は、Autoflex II (Bruker Daltonics)とpeptide calibration standard II (Bruker Daltonics)を用いて行った。

0106

1−4. Fmoc固相合成によるVBペプチドのペプチド合成
ペプチドは、標準的なFmoc固相合成法によりC末端から合成した。簡単に説明すると、まず、Rink amide AM resin (25 μmol scale) (Merck)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中、40%ピペリジンと共に3分、回転させながら室温でインキュベートし、続いて、DMF中、20%ピペリジンと共に12分、室温で回転させながらインキュベートしてFmoc基を除いた。レジンをDMF (2 mL, 5回)で洗浄した後、0.19 MのFmoc-Cys、0.19 Mの2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及び0.38 MのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)をDMF中に含む溶液で、レジンを室温で40分回転させてインキュベートした。レジンをDMF (2 mL, 3回)で洗浄した後、Fmocの脱保護と、アミノ酸の結合をN末端アミノ酸又はD-Pheが結合されるまで繰り返し、それらのFmocも除去した。

0107

選択されたVB1C12ペプチドとVB1C20ペプチドの合成では、レジン上で合成されたペプチドのN末端のα-アミノ基を、N-メチルピロリドン(NMP)中に0.5 MのクロロアセチルN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルを含む溶液と、室温で40分回転させながらインキュベートすることによって、クロロアセチル化した。
レジンをDMF(2 mL, 3回)で洗浄した後、トリフルオロ酢酸溶液(TFA)/1,2-エタンジチオール/トリイソプロピルシラン/水 (92.5 : 2.5 : 2.5 : 2.5)と共に、室温で3時間インキュベートしてペプチドをレジンから切断し、脱保護した。
切断したペプチドは、ジエチルエーテルで沈殿させ、遠心処理ペレット化し、ジエチルエーテル (3 mL, 5回)で洗浄した。

0108

精製ペプチドを、0.1% TFAを含む水/アセトニトリル(1:1)溶液に溶解させ、トリエチルアミンを加えて溶液のpHを約10とし、42℃で2時間、回転させながらインキュベートして、N末端のクロロアセトアミド基とシステインのスルホニル基の間のチオエーテル結合を促進した。

0109

続いて、ペプチド溶液をTFAで酸性化し、逆相HPLC(Cosmosil, 5C18-AR-300, 10 x 250 mm, Nacalai tesque)により、水とアセトニトリルのグラジエントで、純度95%超まで精製した。ロータリーエバポレータでペプチドからアセトニトリルを除いた後、凍結乾燥した。選択されたペプチドをDMSOに溶解させ、ストック溶液とした。ストック用ペプチドは、50% (v/v) アセトニトリルを含む水で希釈し、分光光度計で濃度を決定した。精製したペプチドを凍結乾燥し、DMSOに溶解させた。すべての合成されたペプチドは、MALDI-TOF massで解析し、分子量を確認した。

0110

1−5.表面プラズモン共鳴(SPR)による結合反応速度 (binding kinetics)解析
反応速度解析は、25℃で、Biacore T100 instrument (GE healthcare)とNi-NTAセンサチップを用いて行った。His-PAD4をチップ表面に固定した。すべての実験で、修正HBS-EP+ (10 mMHEPES-KOH [pH 7.4], 150 mM NaCl, 50μMEDTA, 0.05% Tween 20, 0.1%DMSO)をランニングバッファとして用いた。反応速度データを補正するために、5つの異なる濃度のペプチドをそれぞれ、流速(10 mM HEPES-KOH [pH 7.4], 150 mM NaCl, 50μM EDTA, 0.05% Tween 20, 0.1% DMSO)で1分間注入(injection)した。ペプチドの解離は、注入間の1分と、最後の注入の後3分とした。

0111

バックグラウンド結合をモニタするため、His-PAD4は結合していないがニッケルは有するネガティブコントロール表面とのdouble referenceのために、バッファのブランク注入を、サンプル注入前に2回、サンプル注入後に1回行った。結合センサグラムを、結合センサグラムをBiacoreの評価ソフトウエアで解析した。

0112

1−6.クロロアミジン
市販のクロロアミジン (CAS 913723-61-2)をCayman Chemical Company, USAから購入した。

0113

1−7. ヒトPAD4酵素
ヒトPAD4は、Modiquest Research (catalog no. MQ 16.206-10)から購入した。
ヒトPAD4は、NCBI accession no. CCDS180.1、分子量74.08 kDa、663アミノ酸からなるたんぱく質である。

0114

1−8. in vitroPAD4阻害アッセイ
PAD4阻害アッセイを、100 mMHEPES(pH 7.6) と 50 mM NaClを含む反応バッファ中の様々な濃度のVBペプチドで行った。
BAEE(最終濃度10 mM)を加えて反応を開始させる前に、上記反応液を、PAD4 (0.2 μM) (5 mM CaCl2存在下)と共に37℃で15分インキュベートした。30分反応させた後、液体窒素で瞬間冷凍して反応を停止した。着色のため、200 μLの新しく調製したCOLDER溶液(2.25 M H3PO4, 4.5 M H2SO4, 1.5 mM NH4Fe(SO4), 20 mM diacetyl monoxime, 及び 1.5 mM thiosemicarbazide)を、反応停止した溶液のそれぞれに加え、完全に混合されるようvortexで撹拌した後、95℃で30分インキュベートした(Firestein, G.S., 2003, Nature, 423(6937), 356-61; Jones, J.E., et al., ACS chemical biology, 7(1), 160-5)。540 nmの吸光度を測定し、Citの標準曲線と比較して、反応中に生成したCit濃度を決定した。

0115

1−9.クロロアミジン・ウォーヘッド(Warhead)導入のためのVB1C12ペプチドの化学修飾
(1) Fmoc固相合成ペプチド合成
VB1C12ペプチドは、標準的なFmoc固相合成法によりC末端から合成した。
簡単に説明すると、まず、Rink amide AM resin (25 μmol scale) (Merck)を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中、40%ピペリジンと共に3分、回転させながら室温でインキュベートし、続いて、DMF中、20%ピペリジンと共に12分、室温で回転させてFmoc基を除いた。レジンをDMF (2 mL, 5回)で洗浄した後、0.19 MのFmoc-システイン、0.19 Mの2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、及び0.38 MのN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)をDMF中に含む溶液で、レジンを室温で40分回転させてインキュベートした。レジンをDMF (2 mL, 3回)で洗浄した後、Fmocの脱保護と、アミノ酸の結合をN末端アミノ酸又はD-Pheが結合されるまで繰り返し、それらのFmocも除去した。

0116

(2)クロロアセチルN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の結合
レジン上で合成されたペプチドのN末端のα-アミノ基を、N-メチルピロリドン(NMP)中に0.5 MのクロロアセチルN-ヒドロキシスクシンイミド (NHS)エステルを含む溶液と、室温で40分回転させながらインキュベートすることによって、クロロアセチル化した。
レジンをDMF(2 mL, 3回)で洗浄し、DCMでも同様に洗浄した。

0117

(3)Cys残基からのMmt基の除去、及び大環状化
レジンを、1%のTFAジクロロメタン溶液で15分、6回インキュベートし、C末端Cys残基からMmt基を除いた。ペプチドのレジン上での大環状化のために、レジンを20%DIPEA/DMFと共に、室温で2時間インキュベートした。大環状化の完了後、レジンをDCM (2ml, 3回)で洗浄した。

0118

(4)レジンに結合したオルニチンからのAlloc基の除去
テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.1 equiv per Alloc moiety)と、N,N-ジメチルバルビツール酸(5 equiv per Alloc moiety)を、アルゴンで洗浄したアミノ酸バイアル中に入れた。次に、4.5 mLのDCMをアミノ酸バイアルに加え、固体を溶解させた。溶液を反応容器に移し、2時間振とうした。全部の手順をもう1度繰り返してから、レジンをDCMで3回、0.2 M DIEA (DMF中)で3回、DMFで6回洗浄した。

0119

(5)レジンに結合したオルニチンのδNH2の機能化
メチル2-クロロアセトイデート塩酸塩(5.5 mmol)、乾燥トリエチルアミン(5.5 mmol)、及びレジン結合オルニチン (1.23 mmol)を1ml の乾燥DMFと混合した。この反応液は、室温で一晩(16時間)、アルゴン下で撹拌した。次に、レジンをろ過し、DMFとDCMで連続的に洗浄した。

0120

(6)最終生成物のレジンからの切断
切断用混合液(TFA: 1,2-ethanedithiol: triisopropyl silane: waterを92.5:2.5:2.5:2.5の割合で含む)と共に室温で3時間インキュベートし、最終生成物を脱保護し、レジンから切り離した。
次に、ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、手動遠心処理でペレット化した。粗精製ペプチドを、0.1% TFAを含む水:アセトニトリル(4:1)溶液に溶解させた。
続いてペプチドを逆相HPLC(Cosmosil, 5C18-AR-300, 10 x 250 mm, Nacalai tesque)により、水とアセトニトリルのグラジエントで、純度95%超まで精製した。ロータリーエバポレータで、ペプチドからアセトニトリルを除いてから、凍結乾燥した。選択されたペプチドをDMSOに溶解させ、ストック溶液とした。ストック用ペプチドは、50% (v/v) アセトニトリルを含む水で希釈し、分光光度計で濃度を決定した。精製したペプチドを凍結乾燥し、DMSOに溶解させた。すべての合成されたペプチドは、MALDI-TOF massで解析し、分子量を確認した (cal. mass = 1801.48, obs. mass = 1800.17)。

0121

1−10.蛍光標識したペプチドの化学合成
蛍光標識したすべてのペプチドは、上述のFmoc固相ペプチド合成により化学的に合成された。すべてのペプチドにおいて、追加のLys残基がC末端にB-アラニンリンカーで導入された。N末端アミノ酸のFmoc脱保護の後、レジンを0.5 Mクロロアセチル-NHs/NMPと共に、室温で40分インキュベートした。
レジンをジクロロメタンで洗浄した後、レジンを1%のTFAジクロロメタン溶液と共に、15分で6回インキュベートし、C末端のLys残基からMmt基を脱保護した。続いて、残渣を50 mMの蛍光-NHSと共に、NMP/DIPEA中暗所でインキュベートした。レジンをDMFとジクロロメタンで洗浄してから、切断用混合液(TFA:1,2-ethanedithiol:triisopropyl silane: waterを92.5:2.5:2.5:2.5の割合で含む)と共に室温で3時間インキュベートし、ペプチドを脱保護し、レジンから切断した。次に、ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、手動遠心処理でペレット化した。粗生成ペプチドを、0.1% TFAを含む水:アセトニトリル(4:1)の溶液に溶解した。
ペプチドを大環状化させるため、トリエチルアミンを加えてペプチド溶液のpHを10程度にした。ペプチドの大環状化が完了するよう、ペプチド溶液を42℃で1時間インキュベートした。

0122

ペプチドは、逆相HPLC(Cosmosil, 5C18-AR-300, 10 x 250 mm, Nacalai tesque)により、水とアセトニトリル/0.1% TFAのグラジエントで、純度95%超まで精製した。ロータリーエバポレータで、ペプチドからアセトニトリルを除いてから、凍結乾燥した。
選択されたペプチドをDMSOに溶解させ、ストック溶液とした。ストック用ペプチドは、50% (v/v) アセトニトリルを含む水で希釈し、分光光度計で濃度を決定した。精製したペプチドを凍結乾燥し、DMSOに溶解させた。すべての合成されたペプチドは、MALDI-TOF massで解析し、分子量を確認した。

0123

1−11.細胞培養
HeLa細胞は、10% (v/v)ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン(100 units/ml)、及びストレプトマイシン(100 μg/ml)を加えた最小必須培地(MEM)で、5% CO2 (気体)を含む高湿度インキュベータ内で培養した。

0124

1−12.共焦点顕微鏡
90-mmプレート上でサブコンフルエントになるまで増殖させたHeLa細胞を、Trypsin/EDTAと共に、37℃で1時間処理してプレートから剥離した。1 x 104細胞を、35mmのガラス底の培養ディッシュ(Iwaki)に播種し、10% FBSを加えたMEM培養中で一晩培養して、細胞を接着させた。培地を除去し、細胞を0.1% FBSを含むMEM培地で洗浄した。
細胞を、10 μMのペプチド(VB1C12-Flu, VB1C12-ana-Flu, VB1C20-Flu 又はVB1C20-ana-Flu)と、3 μM DRAQ7とを含む1 mlのMEM培地と共に37℃で60分インキュベートした。後者は、細胞統合性を確認するために用いた。蛍光標識したペプチドの細胞内分布では、洗浄及び固定を行わず、NPLAN 40x対物レンズを装着したLeicaTCSSP2顕微鏡を用いて解析した。

0125

1−13. 共局在解析
上述のように増殖及び播種したHeLa細胞は、10 μM のペプチド(VB1C12-Flu,
VB1C12-ana-Flu, VB1C20-Flu 又はVB1C20-ana-Flu) 及び 5 μMのSYTO61を含む1 mlのMEM培地と共に、37℃で60分インキュベートした。
細胞は、洗浄や固定を行わずに、上述のように解析した。

0126

2.結果
2−1. RaPIDディスプレイを用いたPAD4に対するVBペプチドのin vitroセレクション
PAD4ペプチドに結合するVBペプチドのin vitroセレクションは、RaPIDシステム(図3)によって行った。PAD4に対する活性を有するVB種のセレクションを行うために、VB1mRNAライブラリとVB2 mRNAライブラリをmRNAディスプレイ法と組み合わせた。まず、VB1及びVB2 mRNAライブラリの各mRNAを、ピューロマイシン-CC-(PEGリンカー)-DNAフラグメントと結合させ、mRNAの末端にピューロマイシンを結合させ。次に、ピューロマイシン結合mRNAライブラリを、Metの代わりにClAc-D-F-tRNAfMetCAUと、Ahep-tRNAAsn-E2CAUを加えたFITシステムで翻訳した。第1ラウンドのライブラリには、100pmのmRNAを用いたと仮定すると、各ペプチド1コピーずつ、1.7 x 1013種を超えるペプチドが含まれていると考えられた。

0127

セレクションの第1ラウンドでは、VBペプチドライブラリを、His-Tag磁気ビーズ上に固定したPAD4と混合し、回収する前に逆転写反応とcDNAの増幅を行った。第2ラウンドでは、PAD4固定ビーズに対するセレクションに先立って、ライブラリを磁気Dynabeadsのみで処理し(12回まで)、望ましくないバックグラウンド結合ペプチドを除き、ビーズに結合しなかったペプチド画分をPAD4固定ビーズに対するセレクションに供した。こうして、RaPIDセレクションサイクルを繰り返し、活性のあるペプチド群を得た。予想通り、PaPIDセレクションのサイクルの繰り返しにより、VB1ペプチドライブラリ(図4A)、VB2ペプチド(図4B)ペプチドライブラリのいずれにおいても、第8サイクルで活性なペプチドが濃縮された。

0128

2−2.濃縮されたペプチド配列の決定
62配列の中から11ペプチドクローンが同定された(図4C及び4D)。その中で、6クローン(図4C)はVB1ペプチドライブラリに由来し、5クローン(図4D)はVB2ペプチドライブラリに由来した。驚くべきことに、すべてのペプチド配列が疎水性であり、いくつかのケースでは、3番目にもう1つシステインが入り、VB骨格を有する投げ縄型の環状ペプチドとなっていた。配列を決定したすべてのクローンに、少なくとも1つのArg残基が含まれた。PAD4は、翻訳後修飾によりぺプチジルアルギニンをぺプチジルシトルリンに変換することが知られていることから、このArgがPAD4の活性部位と反応していることが示唆された。したがって、これらのVBペプチドPAD4に特異的に結合するPAD4阻害剤のVBペプチド候補と考えられた。

0129

2−3. 選択されたVBペプチドのPAD4阻害効果の評価
得られたペプチドの結合親和性と生理活性を調べるために、高頻度出現したVB1ペプチドを、グリシン以外のリンカー配列なしで、Fmoc固相合成で調製した。結合親和性解析は、表面プラズモン共鳴(SPR)(図5A、B)で行ったところ、VB1ペプチドは、PAD4に対する結合速度が速く (9.21x104 - 1.21x105 M-1s-1)、解離速度が遅い (3.56 - 6.64 x10-3s-1)ことがわかり、その結果、38.7 - 54.9 nMと高い親和性を有することがわかった(図5C)。

0130

2−4. in vitroPAD4阻害アッセイ
VB1C12とVB1C20がPAD4活性を阻害できるかどうか調べるために、比色分析法(Jones, J.E., et al., 2012, ACS chemical biology, 7(1), 160-5)によりin vitro PAD4阻害アッセイを行った。PAD4阻害活性の標準として、最近発見されたPAD4の低分子化合物阻害剤を選択されたVB1ペプチドと並行して用いた。正確なIC50測定を行ったが、当初のデータ(図6)では、VB1C12、VB1C20ペプチドのいずれもPAD4を用量依存的に阻害したが、既存のPAD4阻害剤ほどの強い阻害活性は見られなかった。

0131

2−5. VBペプチドへのウォーヘッド(warhead)官能基の導入のための化学修飾
VBペプチドの阻害能を改善するために、VBペプチドをウォーヘッド型のPAD4阻害剤に変化させる化学修飾を行った。このケースでは、VB1C12ペプチドに、Arg残基を修飾することにより、ハロアセタミジンのウォーヘッドを導入した。ハロアセタミジン系阻害剤はPAD阻害能を有することが知られている(Jones, 2012)。これらの化合物は、触媒活性に不可欠な活性部位のシステイン(Cys645)を共有結合で修飾し、非可逆的にPAD4を不活性化する。不活性化は、ハロアセタミジンのウォーヘッドのイミニウム炭素上のCys645チオラート攻撃し、4面体中間体を形成することによって進むと考えられる。次に、His471が、この中間体を安定させるためにプロトンを与え、それによって硫黄原子によるハロゲン転位が促進されると考えられる。結果として生じるスルホニウム三員環崩壊してチオエーテル付加物が形成され、酵素が不活性化される。
VB1C12-クロロアミジンアナログの合成は(実験方法に記載)、fmoc固相ペプチド合成と、メチル2-chloroacetimidate hydrochlorideのN-α-ベンゾイルオルニチンへのレジン上カップリングによって行った(スキーム1)。ペプチドをレジンから切り離した後、ペプチドを逆相HPLCで精製した。VB1C12-クロロアミジンアナログのPAD4阻害能を調べるために、in vitro PAD4阻害アッセイを上述の比色分析法で行った。VBペプチドのクロロアセタミジンのウォーヘッド型は、クロロアミジン及びVB1C12ペプチドよりも、2.7倍高い阻害能を示した(図7)。

0132

2−6.共焦点顕微鏡によるVBペプチドの細胞内導入解析
VBペプチドの細胞質および核への移行調べるために、HeLa細胞を用いて蛍光顕微鏡による解析を行った。蛍光標識したVBペプチド(VB1C12及びVB1C20)とVB骨格を有しないそのアナログは、標準的なfmoc固相ペプチド合成で合成した。ペプチドは、逆相HPLCで精製し、MLADITOF解析を行った。この実験に用いられたペプチドを、図8に示す。
HeLa細胞は、蛍光標識ペプチドと37℃で60分インキュベートし、洗浄した後、共焦点蛍光顕微鏡で観察した。すべてのアッセイは、小さなガラス底のディッシュで行ったので、細胞をマウントした標本ではなく、緩衝液中で観察することができた。DRAQ7(3 μM)は遠赤色光蛍光染料で、透過性死細胞の核のみを染色する。ペプチドをインキュベーションするときにこのDRAQ7を加え、細胞の生存を確認した。
1μMのVB1C12-FluペプチドをHeLa細胞と37℃で60分インキュベートした場合、ほとんど細胞はペプチドを取り込まなかった(図9)。しかしながら、5又は10μMのVB1C12-Fluペプチドを用いた場合、一部の細胞(5-10%)はペプチドを細胞内に取り込んだ(図10)。ペプチドを取り込んだ細胞では、異なるパターンの濃縮された蛍光が観察された。ほとんどの生きたHeLa細胞では、核内に蛍光の濃縮が見られた(図11)。一方、コントロールのVB骨格を有しない蛍光標識ペプチド(VB1C12-ana-Flu)を用いた場合は、10μMでもペプチドが細胞内に取り込まれず(図9)、VB骨格の重要性が示唆され。もう一方の蛍光標識VBペプチドであるVB1C20-Fluは、細胞内への取り込み効率が比較的低かった。この場合、HeLa細胞に取り込まれるためには、少なくとも10μMのVB1C20が必要だった(図10)。コントロールの蛍光標識ペプチド(VB1C20-ana-Flu)は、まったく細胞に取り込まれず、VB骨格の重要性がここでも示された。

0133

2−7. 生きたHeLa細胞におけるVBペプチドとSYTO61染料の共局在
HeLa細胞に取り込まれたVBペプチドの分布を調べるために、蛍光標識VBペプチドとSYTO61 (Molecular Probes)の二重標識実験(double-labeling experiment)を行った。SYTO61は、核酸用染料で、細胞質にも結合する。図12は、VB1C12-FluとVB1C20-Fluペプチド双方の分布と、蛍光標識VBペプチドとSYTO61の分布をマージした像を示す。マージした像は、VBペプチドで処理したHeLa細胞で見られたように、異なる蛍光の濃縮が核に局在することを示した。
そこで、この現象が、細胞の核内に局在するPAD4に対するVB1C12とVB1C20ペプチドの親和性が高いことによるとの仮説を立てた。10μMのVB1C12-Fluと5μM SYTO61で処理したHeLa細胞の一連のマージした像を、複数の共焦点平面(z-方向)で得ることにより、HeLa細胞におけるVB1C12-Fluペプチドの局在をリアルタイムで明らかにすることができた(図13)。一連のz-方向画像により、VB1C12-Fluペプチドが核内において緑色蛍光パターンを形成していることが確認された。

実施例

0134

2−8.結論
RaPIDシステムにより、PAD4に対するVBペプチド阻害剤が同定された。選択されたVBペプチドは、PAD4に対して、ナノモラーレベルの強い結合親和性を示した。これらのペプチドは、PAD4のin vitro阻害アッセイでは、用量依存的な阻害能を示したものの、既知のPAD4阻害剤と比較してそれほど強い阻害活性を示さなかった。
しかし、VBペプチドのクロロアミジン・ウォーヘッドアナログを化学合成したところ、PAD4に対する阻害能が改善された。VBペプチドのHeLa細胞に対する細胞透過性の研究では、VBペプチドが細胞内に取り込まれることが確認された。

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