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技術 統合失調症の客観的評価法

出願人 国立大学法人東京大学
発明者 岩本和也笠井清登小池進介文東美紀
出願日 2011年11月29日 (9年1ヶ月経過) 出願番号 2011-260626
公開日 2015年2月19日 (5年10ヶ月経過) 公開番号 2015-034695
状態 未査定
技術分野 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析
主要キーワード 分子クラスタ 複数個体 ピーク情報 判定作業 限外ろ過処理 相対面積 交差確認 ペリル
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2015年2月19日)のものです。
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図面 (5)

課題

統合失調症検査する方法を提供する。

解決手段

ベタインクレアチングルタミン酸グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物を統合失調症のマーカーとして測定し、該測定結果に基づいて統合失調症を検査する。

概要

背景

統合失調症(schizophrenia)は、旧来は精神分裂病と称されていた代表的な精神疾患であり、生涯有病率は約1%と言われている。統合失調症は、一般的に、幻聴妄想等の陽性症状や、意欲の低下や感情の鈍化等の陰性症状によって特徴づけられる。

一般に、統合失調症の診断は、患者への問診に基づき、場合によってはその家族から得られる情報も総合して、世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類・第10版」(ICD−10)または米国精神医学会(APA)の「診断・統計マニュアル・第4版」(DSM−IV)を判断基準として行われる。しかしながら、最終的な判断は担当医の経験に基づく主観に頼らざるを得ず、診断の精度は十分であるとはいえない。

そのため、統合失調症の診断に利用可能な生物学的マーカーの研究が進められている。

例えば、統合失調症患者において、一般的に用いられる3種の非定型抗精神病薬(atypical antipsychotics)による統合失調症の治療前後の脂質プロファイルリピドーム解析し、それらの薬剤効果を検討したことが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、同文献においては、健常者と統合失調症患者との比較はなされていない。

また、例えば、13種のトリプトファン代謝産物プロファイルを健常者と初回エピソードの統合失調症患者で解析し、また、同様に抗精神病薬による初回エピソードの治療前後でも解析し、初回エピソードの統合失調症患者においていくつかの代謝産物トリプトファンとの比率が変化していることが報告されている(非特許文献2)。

また、例えば、初回エピソードの統合失調症患者と健常者の末梢血単核球(peripheral
blood mononuclear cells)について刺激下および非刺激下でプロテオーム解析を行い、解糖系酵素を含む18種類のタンパク質が統合失調症のマーカーとして利用可能であり得ることが報告されている(非特許文献3)。

また、例えば、統合失調症を含む精神病患者と健常者でGC−TOFMS等を用いたメタボローム解析を行い、主に飽和トリグリセリドを含む6つの脂質クラスタと、他の2つの低分子クラスタ分岐鎖アミノ酸を含むクラスタ、およびプロリングルタミン酸等を含むクラスタ)が統合失調症と関連することが示唆されている(非特許文献4)。

従来、代謝産物の網羅的解析は主にイオン性の低い物質について行われており、イオン性の高い低分子や中分子について統合失調症との関連を網羅的に解析した事例はない。

また、ベタインクレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸ペリル酸、シクロヘキシルアミンから選択される化合物が統合失調症のマーカーとして利用可能であることは知られていない。

なお、ベタイン、クレアチン、およびグルタミン酸は、うつ病のマーカーとして利用可能であり得ることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、統合失調症とうつ病とは互いに異なる疾患である。

概要

統合失調症を検査する方法を提供する。ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物を統合失調症のマーカーとして測定し、該測定結果に基づいて統合失調症を検査する。

目的

本発明は、統合失調症の発症リスク発症の有無を正確に検査する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

統合失調症検査する方法であって、被験体から採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、および前記測定の結果に基づいて統合失調症を検査すること、を含み、前記マーカーが、ベタインクレアチングルタミン酸グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である、方法。

請求項2

少なくともベタインが測定される、請求項1に記載の方法。

請求項3

少なくともベタイン、グルタミン酸、およびぺラルゴン酸が測定される、請求項1に記載の方法。

請求項4

ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンが測定される、請求項1に記載の方法。

請求項5

統合失調症が初回エピソード精神病である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

統合失調症のモデル動物スクリーニングする方法であって、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法を用いて被験動物の統合失調症を検査すること、および前記検査の結果に基づいて前記被験動物が統合失調症のモデル動物であるかを判定すること、を含む方法。

請求項7

統合失調症の治療薬をスクリーニングする方法であって、統合失調症の病態を示す被験動物に統合失調症の治療薬の候補化合物投与すること、前記候補化合物を投与されていない前記被験動物から採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、前記被験動物から前記候補化合物の投与後に採取した被験試料中の前記マーカーを測定すること、および前記測定の結果に基づいて前記候補化合物が統合失調症の治療薬であるかを判定すること、を含み、前記マーカーが、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である、方法。

請求項8

被験個体における統合失調症の治療薬の薬効を判定する方法であって、統合失調症の病態を示す被験個体から統合失調症の治療薬の投与前に採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、前記被験個体から前記治療薬の投与後に採取した被験試料中の前記マーカーを測定すること、および前記測定の結果に基づいて前記被験個体における前記治療薬の薬効を判定すること、を含み、前記マーカーが、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である、方法。

技術分野

0001

本発明は、統合失調症発症リスク発症の有無を客観的に評価するための検査方法に関する。

背景技術

0002

統合失調症(schizophrenia)は、旧来は精神分裂病と称されていた代表的な精神疾患であり、生涯有病率は約1%と言われている。統合失調症は、一般的に、幻聴妄想等の陽性症状や、意欲の低下や感情の鈍化等の陰性症状によって特徴づけられる。

0003

一般に、統合失調症の診断は、患者への問診に基づき、場合によってはその家族から得られる情報も総合して、世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類・第10版」(ICD−10)または米国精神医学会(APA)の「診断・統計マニュアル・第4版」(DSM−IV)を判断基準として行われる。しかしながら、最終的な判断は担当医の経験に基づく主観に頼らざるを得ず、診断の精度は十分であるとはいえない。

0004

そのため、統合失調症の診断に利用可能な生物学的マーカーの研究が進められている。

0005

例えば、統合失調症患者において、一般的に用いられる3種の非定型抗精神病薬(atypical antipsychotics)による統合失調症の治療前後の脂質プロファイルリピドーム解析し、それらの薬剤効果を検討したことが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、同文献においては、健常者と統合失調症患者との比較はなされていない。

0006

また、例えば、13種のトリプトファン代謝産物プロファイルを健常者と初回エピソードの統合失調症患者で解析し、また、同様に抗精神病薬による初回エピソードの治療前後でも解析し、初回エピソードの統合失調症患者においていくつかの代謝産物トリプトファンとの比率が変化していることが報告されている(非特許文献2)。

0007

また、例えば、初回エピソードの統合失調症患者と健常者の末梢血単核球(peripheral
blood mononuclear cells)について刺激下および非刺激下でプロテオーム解析を行い、解糖系酵素を含む18種類のタンパク質が統合失調症のマーカーとして利用可能であり得ることが報告されている(非特許文献3)。

0008

また、例えば、統合失調症を含む精神病患者と健常者でGC−TOFMS等を用いたメタボローム解析を行い、主に飽和トリグリセリドを含む6つの脂質クラスタと、他の2つの低分子クラスタ分岐鎖アミノ酸を含むクラスタ、およびプロリングルタミン酸等を含むクラスタ)が統合失調症と関連することが示唆されている(非特許文献4)。

0009

従来、代謝産物の網羅的解析は主にイオン性の低い物質について行われており、イオン性の高い低分子や中分子について統合失調症との関連を網羅的に解析した事例はない。

0010

また、ベタインクレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸ペリル酸、シクロヘキシルアミンから選択される化合物が統合失調症のマーカーとして利用可能であることは知られていない。

0011

なお、ベタイン、クレアチン、およびグルタミン酸は、うつ病のマーカーとして利用可能であり得ることが報告されている(特許文献1)。しかしながら、統合失調症とうつ病とは互いに異なる疾患である。

0012

WO2011/019072

先行技術

0013

Kaddurah-Daouk R. et al. Metabolomic mappingof atypical antipsychotic effects in schizophrenia. Mol Psychiatry. Oct; 12(10): 934-45. (2007)
Yao JK. et al. Altered interactions of tryptophan metabolites in first-episode neuroleptic-naive patients with schizophrenia. Mol Psychiatry. Sep; 15(9): 938-53. (2010)
Herberth M. et al. Impaired glycolytic response in peripheral blood mononuclear cells of first-onset antipsychotic-naive schizophrenia patients. Mol Psychiatry. Aug; 16(8): 848-59. (2011)
Oresic M. et al. Metabolome in schizophrenia andotherpsychotic disorders: a general population-based study. Genome Med. Mar 23; 3(3): 19. (2011)

発明が解決しようとする課題

0014

本発明は、統合失調症の発症リスクや発症の有無を正確に検査する方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0015

本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討した結果、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、シクロヘキシルアミンから選択される化合物が統合失調症と相関することを見出した。そして、これらの化合物をマーカーとして利用することにより統合失調症の発症リスクや発症の有無を正確に検査できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0016

すなわち、本発明は以下の態様を包含する:
[1]
統合失調症を検査する方法であって、
被験体から採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、および
前記測定の結果に基づいて統合失調症を検査すること、を含み、
前記マーカーが、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である、方法。
[2]
少なくともベタインが測定される、前記方法。
[3]
少なくともベタイン、グルタミン酸、およびぺラルゴン酸が測定される、前記方法。
[4]
ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンが測定される、前記方法。
[5]
統合失調症が初回エピソードの精神病である、前記方法。
[6]
統合失調症のモデル動物スクリーニングする方法であって、
前記方法を用いて被験動物の統合失調症を検査すること、および
前記検査の結果に基づいて前記被験動物が統合失調症のモデル動物であるかを判定すること、を含む方法。
[7]
統合失調症の治療薬をスクリーニングする方法であって、
統合失調症の病態を示す被験動物に統合失調症の治療薬の候補化合物投与すること、
前記候補化合物を投与されていない前記被験動物から採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、
前記被験動物から前記候補化合物の投与後に採取した被験試料中の前記マーカーを測定すること、および
前記測定の結果に基づいて前記候補化合物が統合失調症の治療薬であるかを判定すること、を含み、
前記マーカーが、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である、方法。
[8]
被験個体における統合失調症の治療薬の薬効を判定する方法であって、
統合失調症の病態を示す被験個体から統合失調症の治療薬の投与前に採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、
前記被験個体から前記治療薬の投与後に採取した被験試料中の前記マーカーを測定すること、および
前記測定の結果に基づいて前記被験個体における前記治療薬の薬効を判定すること、を含み、
前記マーカーが、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である、方法。

発明の効果

0017

本発明によれば、これまで予測が困難であった統合失調症の発症リスク(罹患リスク)を正確かつ簡便に予測することができる。また、本発明によれば、これまで診断が困難であった統合失調症の発症の有無を正確かつ簡便に判定することができる。したがって、本発明は統合失調症の予防や早期治療に貢献するものである。

図面の簡単な説明

0018

初回エピソード精神病状態の患者(FEP)群と健常対照者(HC)群における代謝産物濃度分布およびP値を示す図。C_0037:クレアチン、C_0058:グルタミン酸、A_0056:グルコン酸。縦軸は、代謝産物の相対面積値を示す。
FEP群とHC群における代謝産物濃度分布およびP値を示す図。C_0026:ベタイン、A_0037:ペラルゴン酸、C_0064:イミダゾール酢酸。縦軸は、代謝産物の相対面積値を示す。
FEP群とHC群における代謝産物濃度分布およびP値を示す図。A_0039:ペリル酸、C_0011:シクロヘキシルアミン。縦軸は、代謝産物の相対面積値を示す。
FEP群におけるPANSSの5因子陽性症状とベタイン濃度との相関を示す図。縦軸は、ベタインの相対面積値を示す。

0019

<統合失調症の検査方法>
本発明は、統合失調症のマーカー(以下、「本発明のマーカー」または「マーカー」ともいう)を測定すること、および該測定結果に基づいて統合失調症を検査することを含む、統合失調症を検査する方法(以下、「本発明の検査方法」または「本発明の方法」ともいう)を提供する。

0020

本発明において、「検査」には、統合失調症の発症リスクの検査、統合失調症の発症の有無の検査、および統合失調症の重症度の検査が含まれる。すなわち、本発明においては、被験体(subject)から採取された被験試料中のマーカーを測定し、測定結果を、被験試料を採取した被験体における統合失調症の発症リスク、統合失調症の発症の有無、および/または統合失調症の重症度と関連付ける。

0021

本発明において、統合失調症は特に制限されない。例えば、統合失調症は、妄想型解体型(破瓜型)、緊張型、鑑別不能型、残遺型、単純型のいずれの型の統合失調症であってもよい。また、例えば、統合失調症は、初期の統合失調症であってもよく、急性期の統合失調症であってもよく、慢性期の統合失調症であってもよい。また、例えば、統合失調症は、初回エピソードの精神病、すなわち、具体的には初回エピソードの統合失調症であってもよい。初回エピソードとは、初回の発症をいう。

0022

本発明において、被験体(subject)は、被験者(human subject)であってもよく、被験動物(animal subject)であってもよい。被験動物としては、ヒト以外の動物であれば特に制限されないが、例えば、マウスラットモルモットウサギイヌサルチンパンジーが挙げられる。被験体の年齢は特に制限されないが、例えば被験体がヒトである場合、被験者は若年被験者、具体的には30以下の被験者であってもよい。

0023

本発明において測定されるマーカーは、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンからなる群より選択される1またはそれ以上の化合物である。なお、本発明において、「ベタイン」とは、トリメチルグリシンを意味する。本発明においては、少なくともベタインが測定されるのが好ましい。また、本発明においては、例えば、少なくともベタイン、ペラルゴン酸、およびシクロヘキシルアミンが測定されるのが好ましく、少なくともグルタミン酸、ベタイン、およびペラルゴン酸が測定されるのも好ましい。また、本発明においては、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンの全てが測定されるのも好ましい。複数のマーカーを組み合わせて測定することで、統合失調症の検査の精度の向上が期待される。

0024

また、本発明においては、上記より選択されるマーカーと、それ以外のマーカーとを組み合わせて測定してもよい。例えば、上記より選択されるマーカーと、既知の統合失調症のマーカーとを組み合わせて測定してもよい。

0025

本発明において、「マーカーを測定する」とは、被験試料におけるマーカーの濃度を定量すること、または、被験試料におけるマーカーの濃度を反映する値を測定することをいう。本発明において、マーカーを測定することにより取得される、マーカーの濃度の定量値またはマーカーの濃度を反映する値を「マーカーの測定値」ともいう。また、本発明において、「マーカーの測定」を、「マーカーの定量」ともいう。「マーカーの濃度を反映する値」とは、マーカーの濃度と相関し、且つ、被験試料間でマーカーの濃度を定量的に比較するために利用できるものであれば特に制限されない。すなわち、マーカーの濃度の定量的な比較が可能であれば、マーカーの濃度自体は取得されなくともよい。マーカーの濃度を反映する値としては、例えば、マーカーの濃度を算出するために測定する生データやそれを加工したデータが挙げられる。そのようなデータとして、具体的には、例えば、CE−TOFMSにより得られるクロマトグラムにおけるピーク面積標準化したもの、比色定量法における吸光度増減値等が挙げられる。また、マーカーの濃度を反映する値は、例えば、任意の基準に対するマーカーの相対濃度であってよい。

0026

本発明において分析される被験試料は、被験体から単離された血液、またはそれを処理
して得られるものである。血液を処理して得られるものとしては、例えば、血清血漿が挙げられる。血清または血漿は、例えば、血液を静置遠心分離することにより得られる。なお、本発明において、血液、血清、および血漿を総称して「血液試料」ともいう。血液試料は、そのままマーカーの測定に用いてもよいが、必要により適宜前処理を行ってからマーカーの測定に用いてもよい。前処理としては、例えば、血液試料中酵素反応の停止、脂溶性物質の除去、タンパク質の除去、等が挙げられる。これらの前処理は、例えば、公知の手法により行えばよい。また、被験試料は、適宜、希釈濃縮してもよい。

0027

マーカーを測定する方法は特に制限されず、例えば、公知の方法によりマーカーを測定することができる。複数のマーカーを測定する場合、各マーカーを同時に測定してもよく、それぞれ別個に測定してもよい。

0028

例えば、核磁気共鳴法(NMR)による定量、酸アルカリ中和滴定による定量、アミノ酸分析計による定量、酵素法による定量、核酸アプタマーペプチドアプタマー等のアプタマーを利用した定量、比色定量等から測定対象のマーカーに応じた定量法を選択して利用することによりマーカーを測定することができる。また、測定対象のマーカーに応じた市販の定量キットを用いてマーカーを測定することもできる。

0029

また、例えば、キャピラリー電気泳動液体クロマトグラフィーガスクロマトグラフィー質量分析計等を単独でまたは適宜組み合わせて利用することによりマーカーを測定することができる。これらの測定手法は、特に、複数のマーカーをまとめて測定する際に好適である。イオン性の高いマーカーに適した測定法としては、キャピラリー電気泳動−質量分析計による測定が挙げられる。具体的には、例えば、キャピラリー電気泳動−飛行時間型質量分析計(CE−TOFMS)によりマーカーを測定することができる。

0030

マーカーを測定することにより取得されたマーカーの測定値は、所定の閾値を基準に、正常値異常値とに区分される。測定の結果、マーカーの測定値が正常値の範囲にあれば、統合失調症を発症する可能性および/または統合失調症を発症している可能性(これらを総称して統合失調症の可能性ともいう)が低く、マーカーの測定値が異常値の範囲にあれば、統合失調症の可能性が高い、と判定できる。すなわち、「正常値」とは、あるマーカーの測定値について、統合失調症の可能性が低い範囲をいい、「異常値」とは、あるマーカーの測定値について、統合失調症の可能性が高い範囲をいう。なお、ある被験体について「統合失調症の可能性が低い、と判定する」ことには、当該被験体が統合失調症に罹患していないと判定することが含まれる。また、ある被験体について「統合失調症の可能性が高い、と判定する」ことには、当該被験体が統合失調症に罹患していると判定することが含まれる。

0031

なお、本発明において、あるマーカーの測定値が正常値の範囲に含まれることを、当該マーカーの判定結果が「陰性」であるともいう。また、本発明において、あるマーカーの測定値が異常値の範囲に含まれることを、当該マーカーの判定結果が「陽性」であるともいう。

0032

例えば、マーカーがクレアチン、グルタミン酸、およびグルコン酸から選択される場合は、マーカーの測定値が閾値以上である場合に統合失調症の可能性が高く、また、マーカーの測定値が高いほど統合失調症の重症度が高い、と判定してよい。この場合、閾値以上の値が異常値とされ、閾値未満の値が正常値とされる。

0033

例えば、マーカーがベタイン、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンから選択される場合は、マーカーの測定値が閾値以下である場合に統合失調症の可能性が高く、また、マーカーの測定値が低いほど統合失調症の重症度が高い
、と判定してよい。この場合、閾値以下の値が異常値とされ、閾値を超える値が正常値とされる。

0034

閾値は、統合失調症の検査の目的、被験体の種類、性別、および年齢、被検試料の種類、ならびにマーカー測定値の種類等の諸条件に応じて、当業者が適宜決定すればよい。閾値の決定方法は特に制限されず、例えば、公知の手法に従って閾値を決定することができる。

0035

閾値は、統合失調症に罹患している被験体(症例被験体;case subject)でマーカーを測定した結果のみに基づいて決定してもよく、統合失調症に罹患していない被験体(対照被験体;control subject)でマーカーを測定した結果のみに基づいて決定してもよく、症例被験体と対照被験体でマーカーを測定した結果の両方に基づいて決定してもよい。閾値は、症例被験体と対照被験体でマーカーを測定した結果の両方に基づいて決定するのが好ましい。対照被験体は、統合失調症に罹患していない限り、それ以外の疾患に罹患していてもよく、していなくともよいが、測定されるマーカーと相関する疾患には罹患していないのが好ましい。

0036

例えば、対照被験体でマーカーを測定した結果にのみ基づいて閾値を決定する場合には、対照被験体の複数個体で測定されたマーカーの濃度の上限から下限までの範囲が正常値の範囲となるよう閾値を決定してもよく、対照被験体の複数個体で測定されたマーカーの濃度の平均値±標準偏差の範囲が正常値の範囲となるよう閾値を決定してもよい。また、例えば、対照被験体の複数個体で測定されたマーカーの測定値の分布において、正常値の範囲に対照被験体が所定の割合含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%であってよい。上記記載は、症例被験体でマーカーを測定した結果にのみ基づいて閾値を決定する場合にも準用できる。なお、正常値と比較して大小いずれの側を異常値とするかはマーカーごとに決まっているため、それを考慮して閾値は設定される。

0037

症例被験体と対照被験体でマーカーを測定した結果の両方に基づいて閾値を決定する場合には、例えば、正常値の範囲に対照被験体が所定の割合含まれ、且つ、異常値の範囲に症例被験体が所定の割合含まれるように閾値を決定してもよい。具体的には、例えば、測定値が閾値以上である場合に統合失調症の可能性が高いマーカーの場合は、症例被験体が閾値以上に所定の割合含まれ、且つ、対照被験体が閾値未満に所定の割合含まれるように閾値を決定することができる。また、具体的には、例えば、測定値が閾値以下である場合に統合失調症の可能性が高いマーカーの場合は、症例被験体が閾値以下に所定の割合含まれ、且つ、対照被験体が閾値を超える範囲に所定の割合含まれるように閾値を決定することができる。

0038

異常値を示す症例被験体の割合、および、正常値を示す対照被験体の割合は、いずれも高い方が好ましい。これらの割合は、それぞれ、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%であってよい。これらの割合が高いほど、特異度(specificity)および感度(sensitivity)が高くなる。特異度および感度は、いずれも高い方が好ましい。特異度および感度は、それぞれ、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは100%であってよい。特異度とは対照被験体で陰性となる率を意味し、特異度が高いほど偽陽性率が低い。また、感度とは症例被験体で陽性となる率を意味し、感度が高いほど偽陰性率が低い。特異度および感度の両方を高くすることができない場合は、統合失調症の検査の目的等に応じて、特異度および感度のいずれかが高くなるような閾値を設定してもよい。例えば、検査結果が陽性である場合に統合失調症であることを確定することが目的であれば、特異度が高くなるように閾値を設定すればよい。または、例えば、検査結果が陰性である場合に統合失調症であることを除外することが目的であれば、感度が高くなるように閾値を設定すればよい。

0039

なお、閾値の決定は、市販のソフトウェアを用いて行ってもよい。例えば、統計解析ソフトウェアを用い、対照被験体と症例被験体とを統計学的に最も適切に判別できるような閾値を決定してもよい。そのようなソフトウェアとしては、例えば、SAS社の統計解析ソフトウェアであるJMPが挙げられる。

0040

上述の通り、閾値は当業者が適宜決定すればよいが、具体的には、例えば、ヒト血清におけるクレアチン濃度の正常値の範囲は、:0.1〜1.2 mg/dl、:0.2〜1.6 mg/dlであってもよい。

0041

複数のマーカーを組み合わせて統合失調症を検査する場合、少なくとも1つのマーカーが陽性であれば統合失調症の可能性が高いと判定してもよく、全てのマーカーが陽性である場合のみ統合失調症の可能性が高いと判定してもよい。また、陽性と判定されるマーカーの数が多いほど、統合失調症の可能性が高いと判定してもよい。また、陽性と判定されるマーカーの数が多いほど、統合失調症の重症度が高いと判断してもよい。

0042

複数のマーカーを組み合わせて統合失調症を検査する場合、少なくとも1つのマーカーが陰性であれば統合失調症の可能性が低いと判定してもよく、全てのマーカーが陰性である場合のみ統合失調症の可能性が低いと判定してもよい。また、陰性と判定されるマーカーの数が多いほど、統合失調症の可能性が低いと判定してもよい。また、陰性と判定されるマーカーの数が多いほど、統合失調症の重症度が低いと判断してもよい。

0043

また、特異度および/または感度の異なる複数のマーカーを組み合わせて統合失調症を検査する場合、例えば、感度が高くなるように閾値を設定したマーカーを用い、判定結果が陰性である被験体は統合失調症の可能性が非常に低いとして検査対象から排除し、判定結果が陽性である被験体についてのみ、さらに他のマーカーを利用して検査を継続することもできる。

0044

また、本発明においては、本発明のマーカーを利用した統合失調症の検査と、他の統合失調症の検査とを組み合わせて、統合失調症を検査してもよい。他の統合失調症の検査としては、面接による問診やアンケートによる統合失調症の検査、統合失調症と相関する遺伝子、タンパク質、および化合物を指標とした統合失調症の検査が挙げられる。

0045

<統合失調症のモデル動物のスクリーニング方法
本発明のマーカーを利用すれば、統合失調症のモデル動物をスクリーニングすることができる。

0046

例えば、本発明は、統合失調症のモデル動物をスクリーニングする方法であって、
本発明の検査方法を用いて被験動物の統合失調症を検査すること、および
前記検査の結果に基づいて前記被験動物が統合失調症のモデル動物であるかを判定すること、を含む方法(以下、「本発明のモデル動物のスクリーニング方法」ともいう)、を提供する。

0047

本発明のモデル動物のスクリーニング方法においては、本発明の検査方法を用いて被験動物の統合失調症を検査した結果、統合失調症の可能性が高いと判定された場合に、当該被験動物を統合失調症のモデル動物であると判定することができる。

0048

<統合失調症の治療薬のスクリーニング方法>
また、本発明のマーカーを利用すれば、統合失調症の治療薬をスクリーニングすることができる。なお、ここでいう「治療薬」には、予防薬が含まれる。

0049

例えば、本発明は、統合失調症の治療薬をスクリーニングする方法であって、
統合失調症の病態を示す被験動物に統合失調症の治療薬の候補化合物を投与すること、
前記候補化合物を投与されていない前記被験動物から採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、
前記被験動物から前記候補化合物の投与後に採取した被験試料中の前記マーカーを測定すること、および
前記測定の結果に基づいて前記候補化合物が統合失調症の治療薬であるかを判定すること、を含む方法(以下、「本発明の治療薬のスクリーニング方法」ともいう)、を提供する。

0050

本発明の治療薬のスクリーニング方法においては、測定の結果、候補化合物の投与により統合失調症が改善されたと判定された場合に、当該候補化合物を統合失調症の治療薬であると判定することができる。

0051

「統合失調症の病態を示す被験動物」とは、被験動物であって、統合失調症の可能性が高いと判定されているものであれば特に制限されない。用いられる被験動物は、本発明の検査方法により統合失調症の可能性が高いと判定されたものであってもよく、公知の手法により統合失調症の可能性が高いと判定されたものであってもよく、それらの組み合わせにより統合失調症の可能性が高いと判定されたものであってもよい。なお、「統合失調症の病態を示す被験動物」には、既に統合失調症の病態を示しているものだけでなく、未だ統合失調症の病態を示していないが将来的に統合失調症の病態を示す可能性が高いものも含まれる。すなわち、用いられる被験動物は、例えば、統合失調症の発症前で統合失調症の病態を示していないが、本発明の検査方法によれば統合失調症の可能性が高いと判定されるものであってもよい。また、用いられる被験動物は、上述したような統合失調症のモデル動物であってよい。

0052

「統合失調症の治療薬の候補化合物」とは、任意の物質であってよい。

0053

「候補化合物の投与後」とは、化合物の種類、化合物の投与量、および被験動物の種類等に応じて適宜設定すればよい。「候補化合物の投与後」とは、例えば、候補化合物を投与してから1分後〜24時間後のいずれかの時点であってよく、10分後〜12時間後のいずれかの時点であってよい。

0054

「候補化合物の投与により統合失調症が改善された」とは、当該候補化合物の投与前と比較して、当該候補化合物の投与後の方が、統合失調症の可能性が低いまたは統合失調症の重症度が低いことをいう。候補化合物の投与により統合失調症が改善されたかどうかは、当該候補化合物の投与前後のマーカーの測定値を比較することにより判定できる。

0055

例えば、単一のマーカーを測定する場合、候補化合物の投与によりマーカーの測定値が正常値の範囲に近づいた場合に、当該候補化合物の投与により統合失調症が改善されたと判定してよい。また、例えば、候補化合物の投与前には陽性と判定されたマーカーが、投与後には陰性と判定された場合に、当該候補化合物の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよい。

0056

また、例えば、複数のマーカーを測定する場合、候補化合物の投与により少なくとも1つのマーカーの測定値が正常値の範囲に近づいた場合に、当該候補化合物の投与により統
失調症が改善されたと判定してもよく、候補化合物の投与により全てのマーカーの測定値が正常値の範囲に近づいた場合に、当該候補化合物の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよい。また、例えば、候補化合物の投与により陰性と判定されるマーカーの数が増えた場合に、当該候補化合物の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよい。

0057

なお、本発明の治療薬のスクリーニング方法において、候補化合物の投与前のマーカーを測定するための被験試料を採取される個体と、候補化合物の投与後のマーカーを測定するための被験試料を採取される個体とは、同一の個体であってもよく、そうでなくてもよい。すなわち、「候補化合物を投与されていない被験動物から採取した被験試料」とは、候補化合物を投与される個体から当該候補化合物の投与前に採取されたものであってもよく、当該個体とは別の、当該候補化合物を投与していない個体から採取されたものであってもよい。

0058

<被験個体における統合失調症の治療薬の薬効を判定する方法>
疾患の治療薬は、しばしば、投与した際の効果が個体間で相違する。本発明のマーカーを利用すれば、各被験個体における統合失調症の治療薬の薬効を判定することができる。なお、ここでいう「治療薬」には、予防薬が含まれる。

0059

例えば、本発明は、被験個体における統合失調症の治療薬の薬効を判定する方法であって、
統合失調症の病態を示す被験個体から統合失調症の治療薬の投与前に採取した被験試料中の統合失調症のマーカーを測定すること、
前記被験個体から前記治療薬の投与後に採取した被験試料中の前記マーカーを測定すること、および
前記測定の結果に基づいて前記被験個体における前記治療薬の薬効を判定すること、を含む方法(以下、「本発明の薬効の判定方法」ともいう)、を提供する。

0060

「統合失調症の病態を示す被験個体」とは、統合失調症の可能性が高いと判定されている被験個体であれば特に制限されない。用いられる被験個体は、本発明の検査方法により統合失調症の可能性が高いと判定されたものであってもよく、公知の手法により統合失調症の可能性が高いと判定されたものであってもよく、それらの組み合わせにより統合失調症の可能性が高いと判定されたものであってもよい。なお、「統合失調症の病態を示す被験個体」には、既に統合失調症の病態を示しているものだけでなく、未だ統合失調症の病態を示していないが将来的に統合失調症の病態を示す可能性が高いものも含まれる。すなわち、用いられる被験個体は、例えば、統合失調症の発症前で統合失調症の病態を示していないが、本発明の本発明の検査方法によれば統合失調症の可能性が高いと判定されるものであってもよい。

0061

本発明の薬効の判定方法において、被験個体は、ヒトであってもよく、ヒト以外の動物であってもよいが、ヒトであるのが好ましい。

0062

「統合失調症の治療薬」とは、任意の統合失調症の治療薬であってよい。

0063

「治療薬の投与後」とは、治療薬の種類、治療薬の投与量、および被験体の種類等に応じて適宜設定すればよい。「治療薬の投与後」とは、例えば、治療薬を投与してから1分後〜24時間後のいずれかの時点であってよく、10分後〜12時間後のいずれかの時点であってよい。

0064

「薬効の判定」には、薬効の有無の判定、および薬効の程度の判定が含まれる。

0065

本発明の薬効の判定方法においては、統合失調症の治療薬の投与により統合失調症が改善されたと判定された場合に、当該治療薬を投与された個体において当該治療薬は薬効を有すると判定することができる。また、統合失調症の治療薬の投与による統合失調症の改善の程度が大きいほど、薬効が高いと判定することができる。

0066

「治療薬の投与により統合失調症が改善された」とは、当該治療薬の投与前と比較して、当該治療薬の投与後の方が、統合失調症の可能性が低いまたは統合失調症の重症度が低いことをいう。治療薬の投与により統合失調症が改善されたかどうかは、当該治療薬の投与前後のマーカーの測定値を比較することにより判定できる。

0067

例えば、単一のマーカーを測定する場合、治療薬の投与によりマーカーの測定値が正常値の範囲に近づいた場合に、当該治療薬の投与により統合失調症が改善されたと判定してよい。また、例えば、治療薬の投与前には陽性と判定されたマーカーが、投与後には陰性と判定された場合に、当該治療薬の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよい。

0068

また、例えば、複数のマーカーを測定する場合、治療薬の投与により少なくとも1つのマーカーの測定値が正常値の範囲に近づいた場合に、当該治療薬の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよく、治療薬の投与により全てのマーカーの測定値が正常値の範囲に近づいた場合に、当該治療薬の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよい。また、例えば、治療薬の投与により陰性と判定されるマーカーの数が増えた場合に、当該治療薬の投与により統合失調症が改善されたと判定してもよい。

0069

また、例えば、単一のマーカーを測定する場合、治療薬の投与によりマーカーの測定値が正常値の範囲に近づく程度が大きいほど、当該治療薬の投与による統合失調症の改善の程度が大きいと判定してよい。

0070

また、例えば、複数のマーカーを測定する場合、治療薬の投与により測定値が正常値の範囲に近づいたマーカーの数が多いほど、当該治療薬の投与による統合失調症の改善の程度が大きいと判定してもよく、治療薬の投与によるマーカーの測定値の正常値の範囲側への変動の平均値あるいは最大値が大きいほど、当該治療薬の投与による統合失調症の改善の程度が大きいと判定してよい。また、例えば、候補化合物の投与により陰性と判定されるマーカーの数が増えた場合に、その増加数が多いほど、当該治療薬の投与による統合失調症の改善の程度が大きいと判定してもよい。

0071

また、ある個体において複数の統合失調症の治療薬の薬効を判定すれば、当該個体において最も有効な統合失調症の治療薬を決定することもできる。

0072

<システムプログラム
本発明においては、コンピュータがマーカーの測定結果を利用して上述したような方法における種々の判定作業を実行してもよい。

0073

例えば、医療関係者が被験体から血液を採取し、必要により前処理を行い、被験試料をマーカー測定装置にセットする。コンピュータは、マーカー測定装置に被験試料中のマーカーを測定させ、測定結果を取得する、コンピュータは、さらに、測定結果に基づいて統合失調症の可能性を判定する。コンピュータは、同様に、モデル動物のスクリーニング結果の判定、統合失調症の治療薬のスクリーニング結果の判定、被験個体における統合失調症の治療薬の薬効の判定を行うことができる。コンピュータは、そのようにして得られた判定結果を出力し、医療関係者は判定結果についての情報を取得できる。

0074

本発明のプログラムは、コンピュータに、マーカーの測定結果を利用して上述したような方法における種々の判定作業を実行させるプログラムである。本発明のプログラムは、さらに、コンピュータに、マーカー測定装置に被験試料中のマーカーを測定させることを実行させてもよい。

0075

また、本発明のプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録され、提供されてもよい。ここで、コンピュータが読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報が電気的、磁気的、光学的、機械的、又は化学的作用等により蓄積され、さらに蓄積された情報をコンピュータから読み取ることのできる記録媒体を言う。このような記録媒体としては、例えばフロッピー登録商標ディスク光磁気ディスクCD−ROM、CD−R/W、DVD−ROM、DVD−R/W、DVD−RAM、DAT、8mmテープメモリカードハードディスク、ROM(リードオンリーメモリ)、及びSSD等が挙げられる。また、本発明のプログラムは、コンピュータにより実行される各ステップが別個のプログラムとして記録されていてもよい。

0076

以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。

0077

実施例1:統合失調症マーカーのスクリーニング
初回エピソード精神病状態の患者(patients with first-episode psychosis;FEP)18名と、年齢および性別を統制した健常対象者(healthy control:HC)14名から、空腹時に末梢血を採取し、ヒト血漿を得た。被験者の情報を表1に示す。

0078

0079

10 μMの内部標準物質を含む450μLのメタノール溶液に、50 μLのヒト血漿を添加して撹拌した。これに500 μLのクロロホルムおよび200 μLのMilli-Q水を加えて撹拌し、遠心分離(2,300 × g、4 ℃、5分)を行った。遠心分離後、水層400 μLを限外ろ過チュー
ブ(ウルトラフリーMC UFC3 LCC遠心式フィルターユニット5 kDa;MILLIPORE製)に移した。これを遠心(9,100 × g、4 ℃、120分)し、限外ろ過処理を行った。ろ液乾固させ、再び25μLのMilli-Q水に溶解してCE-TOFMSにより分析した。

0080

分析はカチオンモード、およびアニオンモードでそれぞれ行った。分析条件は以下の通りである。なお、アニオンモードでの分析には2倍に希釈した試料を用いた。

0081

陽イオン性代謝物質の分析(カチオンモード)>
装置
Agilent CE-TOFMSsystem(Agilent Technologies 社)
Capillary : Fused silica capillary i.d. 50 μm × 80 cm
分析条件
Run buffer : Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001)
Rinse buffer : Cation Buffer Solution (p/n : H3301-1001)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 10 sec
CE voltage : Positive, 27 kV
MS ionization :ESI Positive
MS capillary voltage : 4,000 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMTSheath Liquid (p/n : H3301-1020)

0082

陰イオン性代謝物質の分析(アニオンモード)>
装置
Agilent CE-TOFMSsystem(Agilent Technologies 社)
Capillary : Fused silica capillary i.d. 50 μm × 80 cm
分析条件
Run buffer : Anion Buffer Solution (p/n : H3302-1021)
Rinse buffer : Anion Buffer Solution (p/n : H3302-1022)
Sample injection : Pressure injection 50 mbar, 25 sec
CE voltage : Positive, 30 kV
MS ionization :ESI Negative
MS capillary voltage : 3,500 V
MS scan range : m/z 50-1,000
Sheath liquid : HMTSheath Liquid (p/n : H3301-1020)

0083

CE-TOFMSで検出されたピークを自動積分ソフトウェアMasterHandsver.2.9.0.9(慶應義塾大学開発)を用いて自動抽出し、ピーク情報として、質量電荷比(m/z)、泳動時間 (Migration time;MT)、およびピーク面積値を得た。各ピークについて、m/zとMTの値をもとに候補化合物の検索を行い、アミノ酸有機酸糖リン酸、及び核酸等の主要代謝産物を含む175物質を同定した。

0084

得られたピーク面積値は、用いた試料量と内部標準物質の面積値に基づき相対面積値に変換し、代謝産物濃度の比較に用いた。なお、相対面積値=得られたピーク面積値/(内部標準物質の面積値×試料量)である。

0085

得られた代謝産物濃度の群間差をMann-Whitney U testにより統計解析し、p<0.05を有意とした。FEP群とHC群とで濃度に有意な差があった代謝産物は、ベタイン、クレアチン、グルタミン酸、グルコン酸、ぺラルゴン酸、イミダゾール酢酸、ペリル酸、およびシクロヘキシルアミンの8物質であった。これら8物質の、FEP群とHC群における濃度分布およびP値を図1〜3に示す。

0086

また、FEP群の内、抗精神病薬を未服用の症例3例と、HC群とで濃度に有意な差があった代謝産物は、ベタイン、ペラルゴン酸、シクロヘキシルアミンの3物質であった。

0087

次に、グルタミン酸、ベタイン、およびペラルゴン酸を用いて、ステップワイズ法により判別分析を行った。その結果、これら3物質について正準判別関数を作成でき、判別率は87.5%であった。すなわち、これらの代謝産物をマーカーとして、統合失調症を正確に検査できることが示された。標準化された正準判別関数係数を表2に、分類結果を表3に示す。

0088

0089

a.交差確認分析中ケースのみに実行される。交差確認では、各ケースはそのケース以外の全てのケースから得られた関数により分類される。
b.元のグループ化されたケースの内、90.6%個が正しく分類された。
c.交差確認済みのグループ化されたケースの内、87.5%個が正しく分類された。

実施例

0090

次に、FEP群において、ベタイン濃度と臨床指標との相関をSpearmanの順位相関により統計解析した。統合失調症の臨床指標としては、陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Syndrome Scale;PANSS)を用いた。その結果、PANSSの5因子陽性症状(PANSS 5-factor positive symptoms)、PANSSの陽性症状(PANSS positive symptoms)、PANSSの5因子陰性症状(PANSS 5-factor negative symptoms)のいずれにおいても、ベタイン濃度との有意な相関が認められた。すなわち、統合失調症の重症度が高いほど、ベタイン濃度が減少することが明らかとなった。これらの内、PANS
Sの5因子陽性症状とベタイン濃度との相関を図4に示す。

0091

以上の通り、統合失調症のマーカーとして利用できる8物質を同定した。これらの物質は統合失調症の検査に有用であり、統合失調症の予防および/または治療に貢献するものである。

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