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技術 光電変換材料及びその製造方法と、それを用いた有機薄膜太陽電池

出願人 本田技研工業株式会社
発明者 三浦一浩宮崎嵩大柴唯啓
出願日 2013年8月2日 (7年4ヶ月経過) 出願番号 2013-161851
公開日 2015年2月16日 (5年10ヶ月経過) 公開番号 2015-030806
状態 特許登録済
技術分野 有機低分子化合物及びその製造 ポリオキシメチレン、炭素-炭素結合重合体 光起電力装置
主要キーワード ナノグラフェン n型半導体 エネルギー準位差 ロールツーロール法 集積体 自己集積 エネルギー準位図 成膜作業
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図面 (12)

課題

電子供与体ドナー)あるいは電子受容体アクセプタ)として優れた特性を示すとともに有機溶媒に対して易溶である光電変換材料を得る。

解決手段

BHJ太陽電池は、ドナードメインと、アクセプタドメインとが混在する光電変換層具備する。ドナードメインは、下記の一般式で表されるポリフェニレンがさらに反応したポリマーからなり、該ポリマーがドナー(光電変換材料)として作用する。なお、アクセプタドメインをなすアクセプタは、例えば、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)である。

概要

背景

ロールツーロール法等のコストが低廉なプロセスによって作製することが容易な太陽電池として、有機材料を用いた有機薄膜太陽電池が着目されている。この種の有機薄膜太陽電池として、バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(以下、「BHJ太陽電池」ともいう)が知られている。

BHJ太陽電池は、電子供与体ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメインと、電子受容体アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメインとが混在し、光を電気に変換する機能を営む光電変換層具備する。具体的には、該光電変換層は正極及び負極に介装されており、正極を介して太陽光が光電変換層に入射し、励起子が発生する。

この励起子は、ドナードメインとアクセプタドメインとの界面に到達すると、電子正孔に分離する。この中、電子は、アクセプタドメイン内を移動して負極に到達する。一方、正孔は、ドナードメイン内を移動し、正極に到達する。これら正孔及び電子は、負極及び正極に電気的に接続された外部回路付勢する電気エネルギーとなる。

以上のような機能を営む光電変換層における光電変換材料、すなわち、ドナー及びアクセプタの代表的な例としては、特許文献1に示されるように、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT、図9参照)、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM、図10参照)がそれぞれ挙げられる。

ここで、P3HT、PCBMの各々の最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、図11に示すようになる。上記のようにして光電変換層に光が入射すると、先ず、ドナーであるP3HTのHOMOからLUMOへ電子が遷移する。すなわち、P3HTのHOMOとLUMOとのエネルギー準位差バンドギャップ(Eg)に対応する。

P3HTのLUMOに遷移した電子は、次に、アクセプタであるPCBMのLUMOに電子移動することで電子と正孔が発生する。すなわち、P3HTとPCBMのLUMO同士のエネルギー準位差によってエネルギー損失が生じ、P3HTのHOMOとPCBMのLUMOとのエネルギー準位差が開放電圧(Voc)に対応する。

ところで、太陽電池では、同一の発電量を得ようとする場合、光電変換効率が大きいものほど面積を小さくすることができる。これにより重量が低減するとともに、設置面積が小さくなるので設置レイアウトの自由度が大きくなるという利点が得られる。

BHJ太陽電池等の有機薄膜太陽電池において、光電変換効率をさらに向上させるためには、(a)光の吸収量を高め、励起子の生成を活発化する、(b)長波長近赤外側)の光の吸収を高め、太陽光の利用効率を高める、(c)開放電圧Vocを大きくする等すればよい。そして、これら(a)〜(c)を実現するべく、(A)吸光係数が大きい、(B)HOMOとLUMOとのエネルギー準位差(バンドギャップEg)が小さい、(C)LUMOのエネルギー準位がアクセプタのLUMOの準位に近いドナーを選定することが考えられる。

上記(A)〜(C)を満足する可能性がある物質として、特許文献2〜5に記載される縮合芳香環、すなわち、π電子共役化合物想起される。なお、この種の縮合芳香環は、「グラフェン」と呼称されるときもある(特許文献4参照)。

概要

電子供与体(ドナー)あるいは電子受容体(アクセプタ)として優れた特性を示すとともに有機溶媒に対して易溶である光電変換材料を得る。BHJ太陽電池は、ドナードメインと、アクセプタドメインとが混在する光電変換層を具備する。ドナードメインは、下記の一般式で表されるポリフェニレンがさらに反応したポリマーからなり、該ポリマーがドナー(光電変換材料)として作用する。なお、アクセプタドメインをなすアクセプタは、例えば、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)である。

目的

本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドナー(電子供与体)あるいはアクセプタ(電子受容体)として優れた特性を示し、しかも、有機溶媒に対して易溶であり、光電変換層を簡便且つ容易に得ることが可能となる光電変換材料及びその製造方法と、この光電変換材料を含む光電変換層を具備する有機薄膜太陽電池を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
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1件

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請求項1

電子供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料であって、一般式(1)で表されるポリフェニレンがさらに反応したポリマーからなることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

請求項2

請求項1記載の光電変換材料において、一般式(1)中のR1〜R10の全てがアルコキシ基であることを特徴とする光電変換材料。

請求項3

請求項2記載の光電変換材料において、一般式(1)中のR1〜R10は、炭素数が1〜20個のアルコキシ基であることを特徴とする光電変換材料。

請求項4

請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換材料において、前記ポリマーは、一般式(2)、(3)で表されるグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とすることを特徴とする光電変換材料。ただし、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

請求項5

請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換材料において、前記ポリマーの重合度が2〜1000であることを特徴とする光電変換材料。

請求項6

請求項5記載の光電変換材料において、前記ポリマーの分子量が1500〜4000000であることを特徴とする光電変換材料。

請求項7

電子を供与する電子供与体あるいは電子を受容する電子受容体として機能する光電変換材料を製造する方法であって、フェニレン誘導体重合して、一般式(1)で表されるポリフェニレンを生成する工程と、前記ポリフェニレンを反応させて、光電変換材料であるポリマーを生成する工程と、を有することを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

請求項8

請求項7記載の製造方法において、一般式(1)中のR1〜R10の全てがアルコキシ基であることを特徴とする光電変換材料の製造方法。

請求項9

請求項8記載の製造方法において、一般式(1)中のR1〜R10は、炭素数が1〜20個のアルコキシ基であることを特徴とする光電変換材料の製造方法。

請求項10

請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ポリマーとして、一般式(2)、(3)で表されるグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするものを生成することを特徴とする光電変換材料の製造方法。ただし、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

請求項11

請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ポリマーを、重合度が2〜1000であるものとして得ることを特徴とする光電変換材料の製造方法。

請求項12

請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池であって、前記光電変換材料を電子供与体として含む光電変換層具備することを特徴とする有機薄膜太陽電池。

請求項13

請求項12記載の有機薄膜太陽電池において、前記電子供与体と、該電子供与体から供与された電子を受容する電子受容体とが混在する光電変換層を具備するバルへテロ接合構造をなすことを特徴とする有機薄膜太陽電池。

技術分野

0001

本発明は、側鎖にアルコキシ基を備える縮合芳香環構成単位とするポリマーからなる光電変換材料及びその製造方法と、該光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池に関する。

背景技術

0002

ロールツーロール法等のコストが低廉なプロセスによって作製することが容易な太陽電池として、有機材料を用いた有機薄膜太陽電池が着目されている。この種の有機薄膜太陽電池として、バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(以下、「BHJ太陽電池」ともいう)が知られている。

0003

BHJ太陽電池は、電子供与体ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメインと、電子受容体アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメインとが混在し、光を電気に変換する機能を営む光電変換層具備する。具体的には、該光電変換層は正極及び負極に介装されており、正極を介して太陽光が光電変換層に入射し、励起子が発生する。

0004

この励起子は、ドナードメインとアクセプタドメインとの界面に到達すると、電子正孔に分離する。この中、電子は、アクセプタドメイン内を移動して負極に到達する。一方、正孔は、ドナードメイン内を移動し、正極に到達する。これら正孔及び電子は、負極及び正極に電気的に接続された外部回路付勢する電気エネルギーとなる。

0005

以上のような機能を営む光電変換層における光電変換材料、すなわち、ドナー及びアクセプタの代表的な例としては、特許文献1に示されるように、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT図9参照)、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM、図10参照)がそれぞれ挙げられる。

0006

ここで、P3HT、PCBMの各々の最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、図11に示すようになる。上記のようにして光電変換層に光が入射すると、先ず、ドナーであるP3HTのHOMOからLUMOへ電子が遷移する。すなわち、P3HTのHOMOとLUMOとのエネルギー準位差バンドギャップ(Eg)に対応する。

0007

P3HTのLUMOに遷移した電子は、次に、アクセプタであるPCBMのLUMOに電子移動することで電子と正孔が発生する。すなわち、P3HTとPCBMのLUMO同士のエネルギー準位差によってエネルギー損失が生じ、P3HTのHOMOとPCBMのLUMOとのエネルギー準位差が開放電圧(Voc)に対応する。

0008

ところで、太陽電池では、同一の発電量を得ようとする場合、光電変換効率が大きいものほど面積を小さくすることができる。これにより重量が低減するとともに、設置面積が小さくなるので設置レイアウトの自由度が大きくなるという利点が得られる。

0009

BHJ太陽電池等の有機薄膜太陽電池において、光電変換効率をさらに向上させるためには、(a)光の吸収量を高め、励起子の生成を活発化する、(b)長波長近赤外側)の光の吸収を高め、太陽光の利用効率を高める、(c)開放電圧Vocを大きくする等すればよい。そして、これら(a)〜(c)を実現するべく、(A)吸光係数が大きい、(B)HOMOとLUMOとのエネルギー準位差(バンドギャップEg)が小さい、(C)LUMOのエネルギー準位がアクセプタのLUMOの準位に近いドナーを選定することが考えられる。

0010

上記(A)〜(C)を満足する可能性がある物質として、特許文献2〜5に記載される縮合芳香環、すなわち、π電子共役化合物想起される。なお、この種の縮合芳香環は、「グラフェン」と呼称されるときもある(特許文献4参照)。

先行技術

0011

特開2007−273939号公報
特許第4005571号公報
特開2010−56492号公報
特開2007−19086号公報
特表2010−508677号公報

発明が解決しようとする課題

0012

特許文献2記載の技術は、ヘキサベンゾコロネン(HBC)に官能基を結合するとともに、この官能基を介して自己集積化させることで、いわゆるナノチューブ状の集積体を得ようとするものである。従って、最終的な半導体を得るための工程数が多く、しかも、得られた集積体がp型(ドナー)であるのか、又はn型(アクセプタ)であるのかが明確ではない。

0013

特許文献3には、HBCの集積体であるナノチューブは、正孔及び電子の伝導経路を同時に有する、との示唆がある。この特許文献3記載の技術は、ナノチューブの内面及び外面をフラーレン被覆するとともに、その被覆率でHBCにおける正孔移動度を制御するものであるが、このことから諒解されるように、特許文献2、3記載の技術では、HBCそれ自体のドナーとしての特性を向上させることはできない。

0014

また、特許文献4記載の技術は、グラフェン誘導体に対し、フッ素原子を有する官能基を結合させ、これにより、n型半導体を得るものである。すなわち、この技術では、アクセプタが得られるに留まり、ドナーを得ることはできない。

0015

さらに、特許文献2〜5のいずれにおいても、低分子有機化合物が開示されるのみである。周知のように、低分子有機化合物は有機溶媒に溶解し難く、このため、光電変換層を得る際にロールツーロール法等を行うことが困難となるという不具合顕在化している。

0016

本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、ドナー(電子供与体)あるいはアクセプタ(電子受容体)として優れた特性を示し、しかも、有機溶媒に対して易溶であり、光電変換層を簡便且つ容易に得ることが可能となる光電変換材料及びその製造方法と、この光電変換材料を含む光電変換層を具備する有機薄膜太陽電池を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0017

前記の目的を達成するために、本発明は、電子を供与する電子供与体(ドナー)あるいは電子を受容する電子受容体(アクセプタ)として機能する光電変換材料であって、一般式(1)で表されるポリフェニレンがさらに反応したポリマーからなることを特徴とする。



ただし、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

0018

一般式(1)で示すポリフェニレンが反応する際、R1〜R6に導入されたアルコキシ基が、複数のポリフェニレンの構成単位同士が接近することを抑制する立体障害となる。また、一般式(1)中のR7〜R10にアルコキシ基及びアルキル基の少なくとも一方が側鎖として導入されている場合、該側鎖も上記のアルコキシ基と同様に立体障害となる。これによって、複数のポリフェニレンの構成単位同士の間に架橋結合が形成されることを抑制しつつ、各構成単位内の反応を十分に進行させることができる。その結果、全体にわたって十分にπ電子が広がった縮合芳香環を構成単位とするπ共役系ポリマーが形成される。

0019

また、このπ共役系ポリマーは、可溶性のアルコキシ基が導入された状態で得られる。ポリフェニレンがR7〜R10に上記の側鎖を備える場合は、可溶性の側鎖がさらに導入された状態でπ共役系ポリマーが得られる。

0020

すなわち、本発明の光電変換材料は、上記のπ共役系ポリマーからなる。以下、該ポリマーを「ナノグラフェンポリマー」ともいう。このナノグラフェンポリマーでは、主鎖に沿ってπ電子雲が広がっている。これによって、吸光係数が大きくなり、励起子が活発に生成されるようになる。また、HOMOとLUMOとの間のエネルギー準位差であるバンドギャップEgが小さい。さらに、極大吸収波長が長波長側にシフトし、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになる。つまり、太陽光の利用効率を良好に向上させることができる。

0021

また、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は、P3HT等に比して低い(深い)。従って、PCBMをアクセプタとし、ナノグラフェンポリマーをドナーとする場合、P3HTをドナーとする場合に比してエネルギー損失が小さくなる。すなわち、ナノグラフェンポリマーを光電変換層のドナーとする有機薄膜太陽電池では、開放電圧Vocが大きくなる。

0022

以上のような理由から、ナノグラフェンポリマーを光電変換材料とする有機薄膜太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。

0023

また、ナノグラフェンポリマーは、上記のように架橋構造の形成が抑制されていることに加え、可溶性のアルコキシ基が導入されている。これによって、ナノグラフェンポリマーを有機溶媒に溶解することが著しく容易となる。

0024

さらに、上記の通り、一般式(1)中のR7〜R10に、上記の側鎖が導入されたナノグラフェンからナノグラフェンポリマーを得た場合、該ナノグラフェンポリマーが有する可溶性基の割合が高くなる。これによって、有機溶媒に対する溶解度を向上させることが可能になる。特に、ナノグラフェンポリマーが上記の側鎖としてアルコキシ基を備える場合、該ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解度をさらに効果的に高めることができる。

0025

その結果、ナノグラフェンポリマーについて、上記の通り太陽光の利用効率を向上させるべく縮合芳香環の分子量を増大させても、有機溶媒に容易に溶解することができる。従って、スピンコート法やロールツーロール法等を用いて光電変換層を簡便且つ容易に形成することができる。

0026

上記のアルコキシ基は、一般式(1)中のR1〜R10の全ての位置に結合していることが好ましい。また、この可溶性基はC1〜C20のアルコキシ基であることがより好ましい。なお、後述する一般式(2)、(3)についても同様である。

0027

R1〜R10の全てにアルコキシ基を結合させることによって、ポリフェニレンの複数の構成単位同士が接近することが一層有効に抑制される。従って、ナノグラフェンポリマーに架橋構造が形成されることをより効果的に抑制することができる。さらに、R1〜R10の全てにアルコキシ基を結合させることによって、ナノグラフェンポリマーと有機溶媒との親和性がさらに向上する。このため、有機溶媒に対して、ナノグラフェンポリマーを一層易溶とすることができる。

0028

なお、アルコキシ基の炭素数を1〜20とすることで、ポリフェニレンの構成単位同士の接近を抑制しつつ、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解性を十分に高くすることができる。すなわち、アルコキシ基の炭素数を上記の範囲内に設定することにより、ドナーとして優れた特性を示し、且つ良好に有機溶媒に溶解させて容易に成膜可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。

0029

上記のナノグラフェンポリマーの好適な例としては、下記の一般式(2)、(3)で表されるグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするものが挙げられる。






ただし、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

0030

なお、本発明においては、前記特許文献4と同様に、縮合芳香環を「グラフェン」といい、一般式(2)、(3)に示されるような構成単位がナノメートルスケールであるグラフェンを「ナノグラフェン」ともいう。

0031

ナノグラフェンポリマーの重合度(構成単位の個数)は、2〜1000であることが好ましい。重合度を2以上とすることで、吸光係数を十分に高くすることや、Egを十分に小さくすることができる。一方、1000以下とすることで、重合に要する時間を短縮して、ナノグラフェンポリマーの生産効率を向上させることができる。すなわち、重合度を上記の範囲内に設定することにより、ドナーとして優れた特性を示すナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。

0032

ここで、ナノグラフェンポリマーの構成単位が上記したグラフェンである場合、該ナノグラフェンポリマーの分子量は1500〜4000000である。

0033

また、本発明は、電子を供与する電子供与体(ドナー)あるいは電子を受容する電子受容体(アクセプタ)として機能する光電変換材料を製造する方法であって、
フェニレン誘導体を重合して、一般式(1)で表されるポリフェニレンを生成する工程と、
前記ポリフェニレンを反応させて、光電変換材料であるポリマーを生成する工程と、
を有することを特徴とする。



ただし、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

0034

このような過程を経ることで、光電変換材料(ドナーあるいはアクセプタ)として機能するナノグラフェンポリマーを構造上のばらつきなく且つ容易に作製することができる。

0035

また、上記のR1〜R10の全てにアルコキシ基を結合させることが好ましい。この場合、ナノグラフェンポリマーに架橋構造が形成されることをより効果的に抑制することができるとともに、ナノグラフェンポリマーと有機溶媒との親和性を向上させることができる。その結果、有機溶媒に対して、ナノグラフェンポリマーを一層易溶とすることができる。

0036

この際、アルコキシ基の炭素数を1〜20とすることで、ドナーとして優れた特性を示し、且つ良好に有機溶媒に溶解させて容易に成膜可能なナノグラフェンポリマーを効率よく得ることができる。

0037

上記のナノグラフェンポリマーの構成単位は、典型的には、下記の一般式(2)、(3)で表されるグラフェンの少なくともいずれか1つである。






ただし、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

0038

本発明によれば、例えば、先ず、アルコキシ基が導入されたフェニレン誘導体を得て、該フェニレン誘導体を重合することでアルコキシ基を備えるポリフェニレンを得る。このポリフェニレンをさらに反応させることで、アルコキシ基を備えるナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマー(光電変換材料)を生成することが可能である。

0039

上記した理由から、ナノグラフェンポリマーの重合度が2〜1000となるように制御することが好ましい。このためには、例えば、重合反応時反応温度や反応時間を、重合度が2〜1000となるような条件に設定すればよい。

0040

さらに、本発明は、前記光電変換材料を用いた有機薄膜太陽電池であって、該光電変換材料を電子供与体として含む光電変換層を具備することを特徴とする。

0041

この有機薄膜太陽電池では、例えば、PCBMをアクセプタとしたときのドナーとしてナノグラフェンポリマーを用いることで、P3HTを用いる場合に比して、光電変換層の吸光係数を大きくし、極大吸収波長を長波長側にシフトすることができる。また、ドナーのバンドギャップEgを小さくすることができる。その上、ドナーのLUMOのエネルギー準位を、アクセプタであるPCBMのLUMOの準位に近くすることができる。

0042

従って、この有機薄膜太陽電池では、励起子の生成の活発化、太陽光の利用効率の向上、開放電圧Vocの増大が可能となり、光電変換効率を向上させることができる。

0043

このように光電変換効率が大きな有機薄膜太陽電池では、同一の発電量が得られる太陽電池に比して、その面積を小さくすることができる。従って、重量を低減させることができるため、設置場所に加わる負荷も小さくすることができる。また、設置面積が小さくなるので、設置レイアウトの自由度も向上する。

0044

また、ナノグラフェンポリマーは、アルコキシ基を有することで、有機溶媒に易溶であるため、該ナノグラフェンポリマーを用いて簡便且つ容易に光電変換層を得ることができる。すなわち、有機薄膜太陽電池自体を簡便且つ容易に得ることができる。

0045

有機薄膜太陽電池の好適な例は、ドナードメインとアクセプタドメインが混在する光電変換層を備えるバルへテロ接合型のものである。この場合、例えば、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成される平面ヘテロ接合型のものに比して、ドナードメインとアクセプタドメインとの接触面積が大きい。有機薄膜太陽電池では、主にドナードメインとアクセプタドメインの界面で励起子が電子と正孔に分離して発電関与するので、両者の接触面積が大きいバルクへテロ接合型として構成することにより、光電変換効率を向上させることが可能となる。

0046

また、ナノグラフェンポリマーを用いてバルクへテロ接合型の有機薄膜太陽電池の光電変換層を作製する場合、該ナノグラフェンポリマーが有機溶媒に易溶であるため、容易に成膜を行うことができる。これによって、良好に相分離したドナードメインとアクセプタドメインとが互いに混在した光電変換層を得ることができる。すなわち、光電変換層における電荷分離効率を向上させることができるため、光電変換効率を向上させた有機薄膜太陽電池を得ることができる。

発明の効果

0047

本発明によれば、π電子雲の広がりが大きいπ共役系ポリマー(ナノグラフェンポリマー)を構成して光電変換材料とする。これによって、光電変換材料の吸光係数を大きくできるとともに、HOMOとLUMOとのエネルギー準位差(バンドギャップEg)を小さくすることができる。また、極大吸収波長を長波長側にシフトさせて、光の吸収領域可視光側へ広くすることができる。

0048

さらに、HOMOのエネルギー準位が低いドナーとして用いることができるため、PCBMをアクセプタとしたとき、ドナー及びアクセプタのLUMOのエネルギー準位を互いに近づけることができる。

0049

このため、ナノグラフェンポリマーをドナー、PCBMをアクセプタとして有機薄膜太陽電池を構成すると、励起子が活発に生成される。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、開放電圧Vocが大きくなる。従って、光電変換効率が大きく、小面積で軽量な有機薄膜太陽電池を構成することができる。

0050

また、このナノグラフェンポリマーは有機溶媒に著しく容易に溶解するので、光電変換層の成膜作業を容易且つ高精度に行うことができる。これによって、この光電変換層を備える有機薄膜太陽電池の製造効率及び光電変換効率を良好に向上させることができる。

図面の簡単な説明

0051

本実施形態に係るバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池の要部概略縦断面図である。
置換のポリフェニレンが反応して得られる化合物の構造を示す説明図である。
アルコキシ基を導入したポリフェニレンにおける構成単位と該アルコキシ基との関係を示した模式的構造図である。
アルコキシ基を導入したポリフェニレンにおける構成単位についての説明図である。
図3に示すポリフェニレンと、該ポリフェニレンを反応させて得られた本実施形態に係る光電変換材料(ナノグラフェンポリマー)の1H−核磁気共鳴(NMRスペクトルである。
図3に示すポリフェニレンと、該ポリフェニレンを反応させて得られたナノグラフェンポリマーとについて、紫外可視分光法で得られた吸収スペクトルである。
図3に示すポリフェニレンを反応させて得られたナノグラフェンポリマー、P3HT、PCBMの各HOMO、LUMOのエネルギー準位を示すエネルギー準位図である。
実施例のBHJ太陽電池セル発電性能を示す図表である。
P3HTの構造式を示す説明図である。
PCBMの構造式を示す説明図である。
P3HTのHOMOからLUMO、さらにPCBMのLUMOへと電子が遷移することを示した模式説明図である。

0052

以下、本発明に係る光電変換材料及びその製造方法につき、該光電変換材料を含む光電変換層を具備するバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池との関係で好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。

0053

図1は、本実施形態に係るバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池(BHJ太陽電池)10の要部概略縦断面図である。このBHJ太陽電池10は、透明電極12に対し、正孔輸送層14、光電変換層16、裏面電極18が下方からこの順で重畳されることで構成される。

0054

透明電極12は、正極として機能する。すなわち、該透明電極12には、正孔24が移動する。なお、透明電極12としては、例えばインジウムスズ複合酸化物(ITO)等、太陽光をはじめとする光を十分に透過するものが選定される。

0055

正孔輸送層14は、光電変換層16にて生成した正孔24が透明電極12に移動することを支援する層である。この正孔輸送層14は、一般的には、ポリスチレンスルホン酸でドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、すなわち、いわゆるPEDOT:PSSから形成することができる。

0056

光電変換層16は、電子供与体(ドナー)として作用する光電変換材料からなるドナードメイン26と、電子受容体(アクセプタ)として作用する光電変換材料からなるアクセプタドメイン28とが混在する層として形成されている。この中、アクセプタとなる光電変換材料の好適な例としては、上記のPCBMが挙げられる。

0057

一方、ドナーとなるp型半導体、すなわち、本実施形態に係る光電変換材料は、一般式(1)で示すポリフェニレンがさらに反応したナノグラフェンポリマーからなる。

0058

0059

なお、一般式(1)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

0060

ここで、官能基を具備しない無置換のポリフェニレンを反応させてポリマーを形成する場合、図2の(a)に示すように、一つの構成単位内の芳香環同士が全て反応してナノグラフェン構造を形成することが理想的である。

0061

これに対し、ポリフェニレンの反応が十分に進行しなかった場合、図2の(b)に示すように、ポリマーの構成単位内に反応していない芳香環が含まれることとなる。このため、π共役系ポリマーのπ電子雲の広がりが十分に得られないことがある。

0062

さらに、ポリフェニレンの反応の進行を過剰に促進させた場合、図2の(c)に示すように、構成単位内における芳香環同士が反応するに留まらず、複数の構成単位同士が架橋結合してしまうことがある。すなわち、ポリマーに架橋構造が形成されるため、ポリマーが有機溶媒等に対して難溶、場合によっては不溶となる。この場合、ポリマーの溶液を用いての成膜が困難となる。

0063

本実施形態に係るポリフェニレンは、上記のように少なくともアルコキシ基が可溶性基として導入されている。この可溶性基は、例えば、図3に示すように、ポリフェニレンの構成単位30同士の反応において立体障害となる。これによって、該構成単位30同士が互いに接近することを抑制できる。

0064

なお、図3に例示のポリフェニレンでは、一般式(1)中のR1、R3、R4、R6にアルコキシ基としてOC10H21が導入され、R7及びR8にアルキル基としてC12H25が導入され、R9及びR10にアルキル基としてCH3が導入されているが、これらに限定されるものではない。

0065

すなわち、可溶性基R1〜R10が導入されたポリフェニレンでは、複数の構成単位同士の間で反応が生じることが抑制され、1つの構成単位内における芳香環同士の反応を効果的に進行させることができる。つまり、複数の構成単位間が架橋構造で結合されたポリマーが発生することを抑制し、十分にπ電子雲が広がったナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0066

このように、側鎖として可溶性基が導入されたポリフェニレンを反応させてナノグラフェンポリマーが得られるため、該ナノグラフェンポリマー自体にも可溶性基が導入されている。これによって、ナノグラフェンポリマーを有機溶媒に対して易溶とすることができる。

0067

なお、ナノグラフェンポリマーの溶解度を向上させる観点からは、式(1)中のR1〜R10の全てにアルコキシ基が導入されていることが好ましい。この場合、ナノグラフェンポリマーに導入されるアルコキシ基の割合を増やすことができるため、上記溶解度を一層効果的に高めることができる。

0068

また、アルコキシ基としては、炭素数が1〜20個であるものが好ましい。アルコキシ基の炭素数を上記の範囲とすることで、ポリフェニレンの構成単位同士の接近を抑制しつつ、ナノグラフェンポリマーの有機溶媒に対する溶解性を向上させることができる。すなわち、ドナーとして優れた特性を示し、且つ有機溶媒に易溶であり良好に成膜することが可能なポリマーを効率よく得ることができる。

0069

ここで、ポリフェニレンから得られるナノグラフェンポリマーの構造異性体について説明する。このポリフェニレンでは、図4に示すように、構成単位中ベンゼン核32が、ベンゼン核34の34a、34bのいずれにも結合し得る。このため、ナノグラフェンポリマーは、下記の一般式(2)、(3)で示されるナノグラフェンが構成単位となる。

0070

0071

0072

なお、一般式(2)、(3)中のR1〜R6の少なくとも一つはアルコキシ基であり、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかである。

0073

以上のように、本実施形態に係る光電変換材料は、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンのうち、少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマーである。すなわち、このナノグラフェンポリマーは、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンのいずれか1つのみが互いに結合したものに限定されることなく、例えば、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンがランダムに結合したものであってもよい。

0074

なお、このナノグラフェンポリマーの重合度は、2〜1000であることが好ましい。重合度を2以上、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを2個以上とすることによって、吸光係数を大きくすることができる。また、重合度を1000以下、すなわち、互いに結合したナノグラフェンの個数nを1000個以下とすることによって、ナノグラフェンポリマーを得るまでの重合に要する時間を短縮して、生産効率を向上させることができる。つまり、重合度を上記の範囲に設定することで、吸光係数が十分に向上した光電変換材料を効率よく作製することができる。

0075

一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンのいずれにおいても、分子量は750〜4000である。従って、ナノグラフェンポリマーの重合度を2〜1000としたとき、該ナノグラフェンポリマーの分子量は1500〜4000000の範囲内となる。

0076

BHJ太陽電池10(図1参照)においては、このようなナノグラフェンポリマーからなる光電変換材料を含む光電変換層16上に、裏面電極18が重畳される。該裏面電極18は、電子36が到達する負極として機能する。なお、光電変換層16と裏面電極18の間には、バトクプロインやフッ化リチウム等からなる電子輸送層(不図示)を介在させてもよい。これによって、光電変換層16にて生成した電子36が裏面電極18に移動することを促進させることができる。

0077

本実施形態に係るBHJ太陽電池10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき説明する。

0078

BHJ太陽電池10の透明電極12に光(例えば、太陽光)が照射されると、該光は、正孔輸送層14を通過して光電変換層16に到達する。その結果、該光電変換層16において、励起子38が生成する。

0079

生成した励起子38は、ドナードメイン26内を移動して、該ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との界面に到達する。そして、この界面において、電子36と正孔24に分離する。上記と同様に、この中の電子36は、アクセプタドメイン28内を移動し、電子輸送層を経由した後、負極である裏面電極18に到達する。一方、正孔24は、ドナードメイン26内を移動し、正孔輸送層14を経由した後、正極である透明電極12に到達する。

0080

ここで、本実施形態では、光電変換層16中のドナードメイン26が、一般式(2)、(3)で示すナノグラフェンの少なくともいずれか1つを構成単位とするナノグラフェンポリマー(光電変換材料)からなる。

0081

一般式(2)、(3)から諒解される通り、ナノグラフェンにおいては、その全体にπ電子雲が広がっている。ドナードメイン26は、このナノグラフェンを構成単位とするナノグラフェンポリマーからなる。つまり、ドナードメイン26では、ナノグラフェン単体モノマー)からなる場合に比して、π電子雲がより一層広範囲にわたって広がっている。

0082

このようにπ電子雲の広がりが大きいドナードメイン26では、極大吸収波長が長波長側にシフトするとともに吸光係数が大きくなる。すなわち、HOMO−LUMO間のエネルギー準位差に相当するバンドギャップ(Eg)が小さくなる。従って、ドナードメイン26において、励起子38の生成が活発となるとともに、太陽光の利用効率が向上する。

0083

以上のことが相俟って、BHJ太陽電池10は、優れた光電変換効率を示す。このため、該BHJ太陽電池10では、同一の発電量が得られる他の太陽電池に比して面積を小さくすることができる。従って、重量が低減するので設置場所に加わる負荷が小さくなり、また、設置レイアウトの自由度が向上する。

0084

次に、本実施形態に係る光電変換材料の製造方法、すなわち、ナノグラフェンポリマーの製造方法について説明する。

0085

上記した通り、ナノグラフェンポリマーは、ポリフェニレンの反応生成物として得ることができる。以下、図3に示すポリフェニレン、すなわち、一般式(1)中のR1、R3、R4、R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたポリフェニレンからナノグラフェンポリマーを形成する場合を例に挙げて説明する。

0086

先ず、上記のポリフェニレンを得るべく、アルコキシ基(OC10H21)を導入したジベンジルケトンを形成する。具体的には、反応式(4)で示すように、4−ヒドロキシベンゼン酢酸メチルと1−ヨードデカンとを反応させて4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルを得る。

0087

0088

そして、反応式(5)で示すように、4−デシルオキシベンゼン酢酸メチルに、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)を加え、これによって得られる中間生成物にさらに塩酸を加える。その結果、アルコキシ基を導入したジベンジルケトンとして、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンを形成することができる。

0089

0090

次に、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンと、1,4−ビスベンジルとからアルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノン(フェニレン誘導体)を得る。具体的には、反応式(6)で示すように、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、1,4−ビスベンジル、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。なお、TritonBは、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムである。これによって、アルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノンを得ることができる。

0091

0092

次に、反応式(7)で示すように、上記の通り得られたビスシクロペンタジエノンと、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼンディールスアルダー重合させる。これによって、上記の可溶性基を備えるポリフェニレンを得ることができる。この際、アルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノンと、アルキル基を備える1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼンとを反応させることによって、効率的にポリフェニレンを得ることができる。また、ポリフェニレンにアルコキシ基及びアルキル基の両方を導入することが可能になり、有機溶媒に対するポリフェニレンの可溶性を一層高めることができる。

0093

0094

上記のようにして得られたポリフェニレンを、例えば、反応式(8)で示すように、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸触媒を用いて反応させる。その結果、アルコキシ基及びアルキル基が導入されたナノグラフェンポリマーが得られる。具体的には、このナノグラフェンポリマーには、上記の通り構造異性体が含まれるため、一般式(2)、(3)中のR1、R3、R4、R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R8及びR10にCH3が導入されたナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0095

0096

このようにポリフェニレンを反応させる際、該ポリフェニレンには、アルコキシ基及びアルキル基が導入されているため、複数の構成単位間のカップリング(分子間カップリング)が抑制される。従って、例えば、触媒としての塩化鉄の量を調整することで、構成単位内の芳香環を全て反応させつつ、複数の構成単位間に架橋構造が形成されることを抑制できる。これによって、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった縮合芳香環からなるナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0097

また、ナノグラフェンポリマーの重合度は、例えば、重合反応時の反応温度や反応時間を設定することで調整することが可能であり、上記したように2〜1000とすることが好ましい。これによって、吸光係数が十分に向上した光電変換材料(ナノグラフェンポリマー)を効率よく作製することができる。

0098

なお、例えば、上記の反応式(6)において、1,4−ビスベンジルと反応させる物質として、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノンに代えて他の物質を選択することで、一般式(2)、(3)中のR1〜6に導入される側鎖についても選択することができる。

0099

また、上記の反応式(7)で示すディールスアルダー重合において、ビスシクロペンタジエノンと反応させる物質として、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼンに代えて他の物質を選択することで、一般式(2)、(3)中のR7〜R10に導入される側鎖についても選択することができる。

0100

図5は、上記の可溶性基を備えるポリフェニレン(図3に示すポリフェニレン)と、該ポリフェニレンが反応して得られたナノグラフェンポリマーの1H−核磁気共鳴(NMR)スペクトルである。スペクトル中、0〜2ppmに現れているピークは、アルコキシ基の水素に由来している。また、6〜8ppmに現れているピークは、フェニル基の水素に由来している。

0101

図5から、ポリフェニレンのスペクトル中に出現しているアルコキシ基の水素に由来するピークは、ナノグラフェンポリマーのスペクトル中にも出現していることが分かる。すなわち、上記のように、アルコキシ基を備えるポリフェニレンを反応させることで、該アルコキシ基を備えるナノグラフェンポリマーが生成されていると判断し得る。

0102

また、フェニル基の水素に由来するピークは、ポリフェニレンのスペクトル中には出現しているが、ナノグラフェンポリマーのスペクトル中には出現していない。このため、上記のように得られたナノグラフェンポリマーでは、ポリフェニレンの構成単位内のフェニル基が互いに反応して縮合芳香環が形成されていること、つまり、ナノグラフェンポリマーがπ共役系ポリマーであることが分かる。

0103

図6は、上記の可溶性基を備えるポリフェニレン(図3に示すポリフェニレン)と、該ポリフェニレンが反応して得られたナノグラフェンポリマーの紫外・可視分光法(UV−Vis)の吸収スペクトルである。

0104

図6から、長波長側の吸収端が、ポリフェニレンでは略330nmであるのに対し、ナノグラフェンポリマーでは、略585nmであることが分かる。すなわち、ナノグラフェンポリマーでは、ポリフェニレンに比して、極大吸収波長が長波長側にシフトしている。π電子共役系では、その分子量が増え、π電子の数が増大するにつれて、極大吸収波長が長波長側にシフトし、光の吸収領域が可視光側へ広くなる。従って、図6からも、上記のように得られたナノグラフェンポリマーは、構成単位全体にわたって十分にπ電子雲が広がった縮合芳香環からなるπ共役系ポリマーであると判断し得る。

0105

図7に、上記のナノグラフェンポリマー、P3HT、PCBMのそれぞれについて、紫外・可視分光法(UV−Vis)、光電子収量分光法(PYS)を用いて測定したHOMO及びLUMOのエネルギー準位を示す。

0106

図7に示すように、HOMOとLUMOとのエネルギー準位差であるバンドギャップEgは、ナノグラフェンポリマーが2.1eVであり、P3HTが2.2eVである。従って、ナノグラフェンポリマーのバンドギャップEgは、P3HTに比して、小さいことが分かる。

0107

また、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は約−3.2eVであり、P3HTのLUMOのエネルギー準位(約−2.5eV)に比して深い。すなわち、ナノグラフェンポリマーのLUMOのエネルギー準位は、P3HTに比して、PCBM(フラーレン誘導体)のLUMOのエネルギー準位に近い。この理由は、ナノグラフェンポリマーの構成単位であるナノグラフェンが炭化水素芳香環を基本骨格とする縮合芳香環であり、PCBMの構造に類似するためであると推察される。このため、ナノグラフェンポリマーをドナーとし、PCBMをアクセプタとして光電変換層16を形成したBHJ太陽電池10では、P3HTをドナーとする場合に比して、開放電圧Vocを大きくすることができる。

0108

なお、上記のナノグラフェンポリマーを含む光電変換層16は、以下のようにして形成することができる。

0109

先ず、トルエンクロロホルムクロロベンゼン等の適切な溶媒に、ナノグラフェンポリマーとPCBMとを混合して、又はそれぞれ個別に添加する。ナノグラフェンポリマー及びPCBMは有機溶媒に易溶であるため、混合溶液を容易に調整することができる。

0110

次に、この混合溶液を、スピンコーティングインクジェット印刷ローラキャスティング、ロールツーロール法等のいずれかの手法によって、正孔輸送層14上に塗布する。

0111

次に、該正孔輸送層14上の混合溶液を加熱すると、該混合溶液が硬化し、光電変換層16が得られる。必要に応じて、アニール処理を施すことでドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離をさらに促進することが可能である。その結果、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28の接合界面の面積が増大し、発電性能を向上させることも可能である。

0112

ドナーとしてモノマーを用いる場合、モノマーが有機溶媒に溶解し難いことから、光電変換層16を得る際に上記したような手法を採用することは困難である。これに対し、本実施形態では、上記のように可溶性基が導入されたナノグラフェンポリマーをドナーとして用いる。ナノグラフェンポリマーが所定の溶媒に易溶であることから、上記したプロセスによって、光電変換層16を容易且つ簡便に、しかも、低コストで形成することが可能である。また、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28との相分離を一層良好に促進することができる。すなわち、ドナードメイン26とアクセプタドメイン28とが良好に混在され、互いの界面の面積を増大させることができる。これによって、光電変換層16において、電荷が電子36と正孔24に分離する効率を高めることができ、BHJ太陽電池10の光電変換効率を向上させることができる。

0113

以上の通り、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーは、π電子雲の広がりが大きいπ共役系ポリマーからなるため、吸光係数が大きい。また、長波長(近赤外側)の光が良好に吸収されるようになり、太陽光の利用効率が向上する。さらに、バンドギャップEgが小さく、HOMOのエネルギー準位が低い。すなわち、LUMOのエネルギー準位が、PCBMのLUMOのエネルギー準位に近い。

0114

このため、ナノグラフェンポリマーをドナー、PCBMをアクセプタとしたBHJ太陽電池10では、励起子38が活発に生成される。また、開放電圧Vocが大きくなる。従って、光電変換効率を良好に向上させることができる。

0115

なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。

0116

上記した実施形態では、一般式(1)中のR1、R3、R4、R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたポリフェニレンから形成されたナノグラフェンポリマーについて説明した。しかしながら、ポリフェニレンに導入されるアルコキシ基及びアルキル基は上記のものに限定されるものではない。一般式(1)のR1〜R6の少なくとも一つがアルコキシ基であればよく、R7〜R10はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかであればよい。

0117

例えば、一般式(1)のR1〜R6の全てにアルコキシ基としてOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入されたポリフェニレンからナノグラフェンポリマーを形成することもできる。この場合、先ず、反応式(9)で示すように、ヨードフェノールブロモデカンとを反応させて、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンを得る。

0118

0119

次に、反応式(10)で示すように、1−デキシルオキシ−4−ヨードベンゼンと、1,4−ジエチニルベンゼンとを反応させて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを得る。

0120

0121

次に、反応式(11)で示すように、パラジウム(Pd)錯体等を触媒に用いて、1,4−ビス(デシルオキシフェニルエチニル)ベンゼンを酸化反応させることでアルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルを得る。

0122

0123

このアルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジルと、上記の反応式(5)によって得られるアルコキシ基を導入したジベンジルケトン(1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン)とを反応させる。すなわち、反応式(12)で示すように、アルコキシ基を導入した1,4−ビスベンジル、1,3−ジデシルオキシベンゼン−2−プロパノン、n−ブタノールを混合した溶液を加熱しながら、TritonBのメタノール溶液を添加する。

0124

0125

これによって得られたアルコキシ基を備えるビスシクロペンタジエノンについて、上記の反応式(6)で得られたビスシクロペンタジエノンと同様に、1,4−ジエチニル−2,5−ジドデシルベンゼンとディールスアルダー重合させる。その結果、一般式(1)のR1〜R6の全てにアルコキシ基を導入し、R7及びR8にアルキル基を導入し、R9及びR10にCH3を導入したポリフェニレンを得ることができる。

0126

このポリフェニレンを、さらに、上記の通り、塩化鉄(FeCl3)等のルイス酸を触媒として反応させる。これによって、一般式(2)、(3)中のR1〜R6にOC10H21が導入され、R7及びR8にC12H25が導入され、R9及びR10にCH3が導入された構成単位を有するナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0127

上記のように一般式(1)のR1〜R6の全てにアルコキシ基を導入し、且つR7及びR8にアルキル基を導入したポリフェニレンの反応では、複数の構成単位同士が接近することが一層有効に抑制される。このため、得られたナノグラフェンポリマーに架橋構造が形成されることを一層効果的に抑制することができる。また、有機溶媒との親和性を一層向上させて、該有機溶媒に対する溶解度をさらに大きくしたナノグラフェンポリマーを得ることができる。

0128

また、上記した実施形態では、光電変換層16にドナーとアクセプタが混在するBHJ太陽電池10を例示して説明している。しかしながら、ナノグラフェンポリマー(光電変換材料)は、ドナーからなる層と、アクセプタからなる層とが個別に形成された光電変換層を有する平面ヘテロ接合型の有機薄膜太陽電池に用いることもできる。この場合、ドナーからなる層を、ナノグラフェンポリマーから形成するようにすればよい。

0129

また、この実施形態では、ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のドナーとして用いる例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。ナノグラフェンポリマーを有機薄膜太陽電池のアクセプタとして採用することも可能である。

0130

さらに、ナノグラフェンポリマーの用途は、有機薄膜太陽電池の光電変換層16に限定されるものではない。例えば、光センサに採用することも可能である。

0131

光電変換層のドナーにナノグラフェンポリマーを採用し、アクセプタにPCBMを採用してBHJ太陽電池セルを作製した。

0132

具体的には、先ず、ITO電極パターニングされたガラス基板洗浄し、該基板スピンコータに固定する。次に、基板上にPEDOT:PSS水分散液滴下し、4000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の正孔輸送層を形成する。

0133

これとは別に、図3に示す構成単位30からなるナノグラフェンポリマー4mgと、PCBM16mgとを、1.0mlのオルトジクロロベンゼンに溶解させて混合溶液を調整する。

0134

この混合溶液を、グローブボックス内に設置したスピンコータに固定した上記基板の正孔輸送層上に滴下し、1000rpmで回転させる。これによって、膜厚が40nm程度の光電変換層を形成する。

0135

次に、真空蒸着装置内に、上記のように正孔輸送層及び光電変換層を形成した基板をセットし、該光電変換層上にバトクプロインやフッ化リチウム等を電子輸送層として蒸着する。さらに、電子輸送層上に200nmの膜厚となるようにアルミニウム電極を蒸着して、BHJ太陽電池セルを得た。

0136

このBHJ太陽電池セルについて発電性能を測定した結果を図8に示す。なお、発電性能は、疑似太陽光として、エアマスフィルタを装着したソーラーシミュレータの光AM1.5G(100mW/cm2)をBHJ太陽電池セルに照射して行った。すなわち、BHJ太陽電池セルに対して、ソースメータユニット(Kethley2400)を用いて電圧印加しつつ、上記の光照射時に流れる電流の測定を行った。そして、この測定結果から、短絡電流密度Isc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)、曲線因子FF、光電変換効率(%)を求めた。

0137

図8に示すように、BHJ太陽電池セルでは、短絡電流密度Iscが3.27mA/cm2、開放電圧Vocが0.80V、曲線因子FFが0.5であり、光電変換効率が1.3%であった。

実施例

0138

従って、本実施形態に係るナノグラフェンポリマーをドナーとするBHJ太陽電池では、開放電圧Vocが大きく、十分な光電変換効率が得られることが確認された。すなわち、発電性能を良好に向上させることが可能である。

0139

10…バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池12…透明電極
14…正孔輸送層16…光電変換層
18…裏面電極24…正孔
26…ドナードメイン28…アクセプタドメイン
30…構成単位32、34…ベンゼン核
36…電子38…励起子

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