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技術 被検体情報取得装置、信号処理方法及びプログラム

出願人 キヤノン株式会社
発明者 三橋賢司
出願日 2014年6月23日 (6年4ヶ月経過) 出願番号 2014-128620
公開日 2015年2月12日 (5年9ヶ月経過) 公開番号 2015-027445
状態 特許登録済
技術分野 超音波診断装置
主要キーワード 立方体セル 基本解 計算空間 共通中心 弾性分布 位相因子 光分布形状 正方形セル
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (10)

課題

少ない計算量で音速不均一性の影響を低減することのできる被検体情報取得装置を提供する。

解決手段

被検体情報取得装置は、被検体100を保持する保持部材130と、被検体内100で発生し保持部材130を伝搬した音響波を複数の位置で検出して複数の時系列検出信号を取得する探触子140と、複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得し、第一の周波数信号に対して保持部材130に起因する音響波の位相変調補正を行うことにより位相変調が補正された第二の周波数信号を取得し、位相変調が補正された第二の周波数信号に基づいて、被検体内の被検体情報を取得する信号処理部150とを有する。

概要

背景

音響波を検出して生体などの被検体内部の情報を取得する技術として、これまで光音響イメージング装置超音波エコーイメージング装置などの被検体情報取得装置が提案されてきた。

ところで、音響波源から探触子に至るまでの媒質中音速が不均一である場合、音響波は屈折する。この屈折した音響波の検出信号から得られる被検体情報定量性は低下してしまう。その結果、被検体情報を画像化した際に、画像の歪みやコントラストの低下が発生する。

上記のような被検体情報の定量性の低下を抑制するには、音速の不均一性の影響を低減する必要がある。そこで、音響波を用いたイメージング技術において、音速の不均一性の影響を低減する方法として下記の例がある。

特許文献1には、音響波の伝播経路スネルの法則に従って追跡し、その伝播距離から到達時間を算出して屈折の影響を補正する手法が開示されている。

概要

少ない計算量で音速の不均一性の影響を低減することのできる被検体情報取得装置を提供する。被検体情報取得装置は、被検体100を保持する保持部材130と、被検体内100で発生し保持部材130を伝搬した音響波を複数の位置で検出して複数の時系列の検出信号を取得する探触子140と、複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得し、第一の周波数信号に対して保持部材130に起因する音響波の位相変調の補正を行うことにより位相変調が補正された第二の周波数信号を取得し、位相変調が補正された第二の周波数信号に基づいて、被検体内の被検体情報を取得する信号処理部150とを有する。

目的

本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、少ない計算量で音速の不均一性の影響を低減することのできる被検体情報取得装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

検体を保持する保持部材と、前記被検体内で発生し前記保持部材を伝搬した音響波を複数の位置で検出して複数の時系列検出信号を取得する探触子と、前記複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得し、前記周波数信号に対して前記保持部材に起因する前記音響波の位相変調補正を行うことにより前記位相変調が補正された第二の周波数信号を取得し、前記位相変調が補正された前記第二の周波数信号に基づいて、前記被検体内の被検体情報を取得する信号処理部と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置

請求項2

前記信号処理部は、前記第一の周波数信号に前記位相変調を表す位相因子を有する複素数掛けることにより、前記位相変調が補正された前記第二の周波数信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の被検体情報取得装置。

請求項3

前記信号処理部は、前記被検体内の音速と前記保持部材内の音速と前記保持部材の厚みに基づいて前記位相変調の位相因子を取得することを特徴とする請求項2に記載の被検体情報取得装置。

請求項4

前記信号処理部は、複数の位相因子が格納された記憶部を備え、前記記憶部から前記位相変調の位相因子を選択することを特徴とする請求項2または3に記載の被検体情報取得装置。

請求項5

前記信号処理部は、前記第二の周波数信号に対して前記保持部材に起因する前記音響波の波数変調の補正を行うことにより前記位相変調および前記波数変調が補正された第三の周波数信号を取得し、前記第三の周波数信号に基づいて、前記被検体内の被検体情報を取得することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。

請求項6

前記信号処理部は、前記探触子の検出面と前記保持部材とのなす角度に基づいて、前記波数変調の補正を行うことを特徴とする請求項5に記載の被検体情報取得装置。

請求項7

前記信号処理部は、前記第二の周波数信号を、前記保持部材を伝搬する前の前記音響波の波数に対応する周波数信号とする前記波数変調の補正により前記第三の周波数信号を取得することを特徴とする請求項5または6に記載の被検体情報取得装置。

請求項8

被検体内で発生した音響波を複数の位置で検出して複数の時系列の検出信号を取得する探触子と、前記複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得し、前記第一の周波数信号に対して前記音響波の伝搬経路における音速分布に起因する前記音響波の位相変調の補正を行うことにより前記位相変調が補正された第二の周波数信号を取得し、前記位相変調が補正された前記第二の周波数信号に基づいて、前記被検体内の被検体情報を取得する信号処理部と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置。

請求項9

前記信号処理部は、前記第二の周波数信号に対して前記音速分布に起因する前記音響波の波数変調の補正を行うことにより前記波数変調が補正された第三の周波数信号を取得し、前記第三の周波数信号に基づいて、前記被検体内の被検体情報を取得することを特徴とする請求項8に記載の被検体情報取得装置。

請求項10

被検体内で発生した音響波を複数の位置で検出して複数の時系列の検出信号を取得する探触子と、前記複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得し、前記第一の周波数信号に対して前記音響波の伝搬経路における音速分布に起因する前記音響波の波数変調の補正を行うことにより前記波数変調が補正された第三の周波数信号を取得し、前記第三の周波数信号に基づいて、前記被検体内の被検体情報を取得する信号処理部と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置。

請求項11

前記信号処理部は、前記被検体内の構造情報に基づき、前記音速分布を取得することを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。

請求項12

前記信号処理部は、前記複数の時系列の検出信号を時間方向および空間方向フーリエ変換して、前記第一の周波数信号を取得することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。

請求項13

前記信号処理部は、前記位相変調が補正された前記第二の周波数信号に対して逆フーリエ変換を行うことにより、前記位相変調が補正された複数の時系列の検出信号を取得し、前記位相変調が補正された前記複数の時系列の検出信号に基づいて、前記被検体情報を取得することを特徴とする請求項1から4、および8のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。

請求項14

前記信号処理部は、前記位相変調および前記波数変調が補正された前記第三の周波数信号に対して逆フーリエ変換を行うことにより、前記位相変調および前記波数変調が補正された複数の時系列の検出信号を取得し、前記位相変調および前記波数変調が補正された前記複数の時系列の検出信号に基づいて、前記被検体情報を取得することを特徴とする請求項5から7、および9のいずれか1項に記載の被検体情報取得装置。

請求項15

被検体内で発生した音響波が複数の位置で検出されることにより得られた複数の時系列の検出信号に基づき前記被検体内の被検体情報を取得する信号処理方法であって、前記複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得する工程と、前記周波数信号に対して前記音響波の伝搬経路における音速分布に起因する前記音響波の位相変調の補正を行うことにより前記位相変調が補正された第二の周波数信号を取得する工程と、前記位相変調が補正された前記第二の周波数信号に基づいて、前記被検体内の被検体情報を取得する工程とを有することを特徴とする信号処理方法。

請求項16

請求項15に記載の信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム

技術分野

0001

本発明は、被検体情報取得装置信号処理方法及びプログラムに関する。

背景技術

0002

音響波を検出して生体などの被検体内部の情報を取得する技術として、これまで光音響イメージング装置超音波エコーイメージング装置などの被検体情報取得装置が提案されてきた。

0003

ところで、音響波源から探触子に至るまでの媒質中音速が不均一である場合、音響波は屈折する。この屈折した音響波の検出信号から得られる被検体情報定量性は低下してしまう。その結果、被検体情報を画像化した際に、画像の歪みやコントラストの低下が発生する。

0004

上記のような被検体情報の定量性の低下を抑制するには、音速の不均一性の影響を低減する必要がある。そこで、音響波を用いたイメージング技術において、音速の不均一性の影響を低減する方法として下記の例がある。

0005

特許文献1には、音響波の伝播経路スネルの法則に従って追跡し、その伝播距離から到達時間を算出して屈折の影響を補正する手法が開示されている。

0006

特開2010−167258号公報

先行技術

0007

Journal of Biomedical Optics 15(2),021314(March/April 2010)

発明が解決しようとする課題

0008

ところが、特許文献1の手法では、球面波として発生した音響波の複数の音線についてスネルの法則に従って伝搬経路を求めなければならないため、多くの計算量を必要とする。そのため、特許文献1の手法では屈折の影響を補正する計算の高速化が困難であった。

0009

本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、少ない計算量で音速の不均一性の影響を低減することのできる被検体情報取得装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本明細書に開示された被検体情報取得装置は、被検体を保持する保持部材と、被検体内で発生し保持部材を伝搬した音響波を複数の位置で検出して複数の時系列の検出信号を取得する探触子と、複数の時系列の検出信号に基づいて第一の周波数信号を取得し、第一の周波数信号に対して保持部材に起因する音響波の位相変調の補正を行うことにより位相変調が補正された第二の周波数信号を取得し、位相変調が補正された第二の周波数信号に基づいて、被検体内の被検体情報を取得する信号処理部とを有する。

発明の効果

0011

本発明に係る被検体情報取得装置によれば、少ない計算量で音速の不均一性の影響を低減することができる。

図面の簡単な説明

0012

実施形態に係る被検体情報取得装置の模式図
実施形態に係る信号処理部の詳細および信号処理部周辺の構成を示す図
第1の実施形態に係る被検体情報取得方法フロー
第1の実施形態に係る位相変調の補正を説明するための図
第2の実施形態に係る波数変調の補正を説明するための図
第2の実施形態に係る位相変調の補正を説明するための図
本実施例に係る位相変調の補正の結果を示す図
本実施例に係る位相変調の補正の別の結果を示す図
本実施例に係る位相変調の補正および波数変調の補正の結果を示す図

0013

(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本実施形態においては被検体情報取得装置としての光音響装置について詳細に説明する。光音響装置は光音響効果により発生した光音響波の検出信号から被検体情報を取得する装置である。光音響波の検出信号から得られる被検体情報としては、光音響波の初期音圧光エネルギー吸収密度吸収係数、および被検体を構成する物質の濃度などがある。ここで、物質の濃度とは、酸素飽和度オキシヘモグロビン濃度デオキシヘモグロビン濃度、および総ヘモグロビン濃度などである。総ヘモグロビン濃度とは、オキシヘモグロビン濃度およびデオキシヘモグロビン濃度の和である。また、本実施形態において被検体情報は、数値データとしてではなく、被検体内の各位置の分布情報であってもよい。すなわち、吸収係数分布や酸素飽和度分布などの分布情報を被検体情報としてもよい。

0014

なお、本発明は光音響装置だけでなく、音響波のエコーを検出することにより被検体情報を取得する音響波エコー装置にも適用することができる。音響波のエコーの検出信号から得られる被検体情報としては、音響波のエコーの強度を分布として表わしたBモード画像などが挙げられる。その他、被検体内の構造の速度分布を表すドップラー画像、被検体内の構造の弾性分布ひずみ率せん断波速度、ヤング率)を表すエラスト画像、被検体内での音響波の散乱に起因するスペックルパターンデータなどを被検体情報としてもよい。

0015

<被検体情報取得装置の構成>
図1は、本実施形態に係る被検体情報取得装置の模式図である。以下、装置の各構成要素について説明する。

0016

本実施形態の被検体情報取得装置は、光源110、光学系120、保持部材130、複数のトランスデューサ141を備える探触子140、コンピュータとしての信号処理部150、表示部160を有する。

0017

また、図2は、信号処理部150の詳細、および、信号処理部150の周辺の構成を示す模式図である。図2に示すように、信号処理部150は、制御部151、演算部152、記憶部153を備えている。

0018

制御部151は、バス200を介して被検体情報取得装置を構成する各構成の動作を制御している。また、制御部151は、記憶部153に保存された後述する被検体情報取得方法が記述されたプログラムを読み出し、被検体情報取得装置に被検体情報取得方法を実行させている。

0019

まず、被検体100と探触子140との間に配置された保持部材130により、被検体100が保持される。続いて、光源110から発生した光は、光学系120を介してパルス光121として被検体100に照射される。そして、光音響効果により被検体100内で音響波(光音響波)が発生する。続いて、探触子140が保持部材130を伝搬した音響波を検出して時系列の電気信号を取得する。続いて、信号処理部150が時系列の電気信号に基づいて被検体情報を取得し、表示部160に被検体情報を表示させる。

0020

ところで、被検体100と保持部材130のように音速が異なる2層の界面を有する場合、界面において音響波が屈折する。この屈折により探触子140で検出される音響波の位相は、保持部材130がない場合に探触子140で検出される音響波の位相と異なってしまう。すなわち、この位相変調を補正しなければ得られる被検体情報の定量性が低下してしまう。本実施形態に係る被検体情報取得装置は、音響波の位相変調を補正することにより得られる被検体情報の定量性の低下を抑制することができる。

0021

以下、本実施形態に係る被検体情報取得装置の各構成の詳細を説明する。

0022

(被検体100、および、光吸収体101)
これらは本発明の被検体情報取得装置の一部を構成するものではないが、以下に説明する。本発明の被検体情報取得装置は、人や動物悪性腫瘍血管疾患などの診断化学治療経過観察などを主な目的とする。よって、被検体としては生体、具体的には人体や動物の乳房頸部腹部などの診断の対象部位が想定される。

0023

また、被検体内部にある光吸収体としては、被検体内部で相対的に光吸収係数が高いものとする。例えば、人体が測定対象であればオキシヘモグロビンあるいはデオキシヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管あるいは新生血管を多く含む悪性腫瘍が光吸収体の対象となる。その他、頸動脈壁プラークなどもその対象となる。

0024

(光源110)
光源110としては、数ナノから数マイクロ秒オーダーのパルス光を発生可能なパルス光源が好ましい。具体的には、効率的に光音響波を発生させるため、光源110は10ナノ秒程度のパルス幅の光を発生可能であることが好ましい。光源110が発することのできる光の波長は、被検体内部まで光が伝搬する波長を使うことが望ましい。具体的には、被検体が生体の場合、好適な波長は、500nm以上、1200nm以下である。ただし、比較的生体表面付近生体組織光学特性値分布を求める場合は、上記の波長領域よりも範囲の広い、例えば400nmから1600nmの波長領域を使用することも可能である。

0025

また、光源としてはレーザ発光ダイオードを用いることができる。レーザとしては、固体レーザガスレーザ色素レーザ半導体レーザなど様々なレーザを使用することができる。例えば、本実施形態に使用されるレーザとしては、アレキサンドライトレーザ、Yttrium−Aluminium−Garnetレーザ、Titan−Sapphireレーザなどがある。

0026

(光学系120)
光源110から出射された光は、典型的にはレンズミラーなどの光学部品により、所望の光分布形状成型されながら被検体100に導かれる。その他、光ファイバなどの光導波路などを用いて伝搬させることも可能である。光学部品は、例えば、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズ、光を分散・屈折・反射するプリズム、光を伝搬させる光ファイバ、光を拡散させる拡散板などである。このような光学部品は、光源110から発せられた光が被検体に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。

0027

なお、光源110が発する光を所望の光として被検体に導くことができる場合、光学系120を用いる必要はない。

0028

(保持部材130)
保持部材130は、被検体100を保持するための部材である。

0029

なお、保持部材130は、本実施形態のような平行平板に限らず、お椀形状の部材など被検体100を保持できる部材であればどのような形状であってもよい。また、保持部としての2枚の平行平板で被検体100を挟むことにより、被検体100を保持してもよい。

0030

また、保持部材130はフィルム状の部材であってもよい。すなわち、保持部は、乳房などの被検体100よりも柔らかい材料から構成されていてもよい。

0031

また、保持部材130は、探触子140との音響整合性が高い材料であることが好ましい。また、保持部材130を通過させてパルス光を被検体100に照射する場合、保持部はパルス光に対して高い透過率を有する材料であることが好ましい。例えば、保持部材130の材料としては、ポリメチルペンテンアクリルなどのプラスチックガラスなどを用いることができる。

0032

ただし、被検体100を保持する必要がない場合には、被検体情報取得装置は保持部材130を備えなくてもよい。

0033

(探触子140)
探触子140は、音響波を検出可能な素子であるトランスデューサと、トランスデューサを囲う筺体とを備えている。

0034

トランスデューサは、光音響波や超音波エコーなどの音響波を検出し、アナログ信号である電気信号に変換するものである。トランスデューサは、圧電現象、光の共振静電容量の変化等を用いたものなど、音響波の検出をできるものであれば、どのようなトランスデューサであってもよい。

0035

光音響波は典型的には100KHzから100MHzの音響波であるので、光音響波を検出する場合、これらの周波数の音響波を検出することのできるトランスデューサを採用することが好ましい。また、音響波エコー装置において送信した音響波のエコーを検出する場合、送信した音響波の周波数に適合したトランスデューサを採用することが好ましい。典型的に音響波エコー装置は1MHzから1000MHzの音響波を送受信する。

0036

本実施形態においては、複数の位置で音響波を検出する必要があるため、探触子140はアレイ上に配列された複数のトランスデューサを備えていることが好ましい。なお、複数のトランスデューサは、リニア状や平面状に配列されることができる。ただし、ここで言うリニア状あるいは平面状とは、実質的に直線状あるいは平面状とみなせるという意味である。すなわち、例えば曲面状に配列されたものであっても、その曲率半径検出素子間の距離(ピッチ)と比べて十分に大きければ本発明を採用することができる。例えば、曲率半径がピッチの10倍以上である場合に本発明を適用することができる。

0037

なお、本実施形態における音響波の検出面とは、複数のトランスデューサ141の検出面が配列されている面のことを指す。

0038

(信号処理部150)
信号処理部150は、図2に示すように制御部151、演算部152、および記憶部153を備えている。

0039

制御部151は、典型的にはCPUなどの素子から構成される。

0040

演算部152は、典型的にはCPU、GPU、A/D変換器などの素子や、FPGA、ASICなどの回路から構成される。なお、演算部152は、1つの素子や回路から構成されるだけではなく、複数の素子や回路から構成されていてもよい。また、被検体情報取得方法で行われる各処理をいずれの素子や回路が実行してもよい。各処理を実行する装置を総称して本実施形態に係る演算部とする。

0041

記憶部153は、典型的にはROM、RAM、およびハードディスクなどの記憶媒体から構成される。なお、記憶部153は、1つの記憶媒体から構成されるだけでなく、複数の記憶媒体から構成されていてもよい。

0042

また、信号処理部150は、同時に複数の信号をパイプライン処理できるように構成されていることが好ましい。これにより、被検体情報を取得するまでの時間を短縮することができる。

0043

なお、被検体情報取得方法で行われるそれぞれの処理を、演算部152に実行させるプログラムとして記憶部153に保存しておくことができる。ただし、プログラムが保存される記憶部153は、非一時的な記録媒体である。

0044

また、信号処理部および複数のトランスデューサは、共通の筺体に収められた構成で提供されてもよい。ただし、筺体に収められた信号処理部で一部の信号処理を行い、残りの信号処理を筺体の外部に設けられた信号処理部で行ってもよい。この場合、筺体の内部および外部に設けられた信号処理部を総称して、本実施形態に係る信号処理部とすることができる。

0045

(表示部160)
表示部160は、信号処理部150から出力される被検体情報を表示する装置である。表示部160は、典型的には液晶ディスプレイなどが利用されるがプラズマディスプレイ有機ELディスプレイ、FEDなど他の方式のディスプレイでも良い。

0046

なお、表示部160は、本実施形態に係る被検体情報取得装置とは別に提供されてもよい。

0047

<被検体情報取得方法>
次に、図3を参照しながら、本実施形態に係る被検体情報取得方法の各工程を説明する。各工程は、制御部151が被検体情報取得装置の各構成の作動を制御することにより実行される。すなわち、以下、本実施形態に係る被検体情報取得装置の作動方法を説明する。

0048

(S100:被検体内で音響波を発生させる工程)
光源110から発された光は、光学系120を介してパルス光121として被検体100に照射される。そして、被検体100はパルス光121を吸収し、光音響効果により音響波(光音響波)が発生する。

0049

なお、被検体100に音響波を送信し、送信された音響波が被検体100内で反射することにより発生したエコーを本発明に係る音響波としてもよい。この場合、被検体情報取得装置は、音響波を送信する音響波送信部を備える必要がある。そこで複数のトランスデューサ141を音響波検出部としてだけでなく、音響波送信部としても用いてよい。すなわち、音響波検出部と音響波送信部とは1つのトランスデューサアレイで構成されていてもよい。

0050

(S200:音響波を検出して時系列の検出信号を取得する工程)
本工程では、探触子140が保持部材130を伝搬した音響波を検出して、複数の時系列の検出信号pd(x,y,t)を出力する。出力された時系列の検出信号は記憶部153に格納される。

0051

ここで、時系列の検出信号は音響波の圧力の実測値を表す。また、本実施形態に係る複数の時系列の検出信号は、空間座標時間座標に対して一つの圧力値が定まるように取得されなければならない。そこで、本実施形態においては、複数の位置で音響波を時系列に検出することができるように、探触子140が複数のトランスデューサ141を備えている。なお、この他に複数の位置で音響波を検出するために、被検体情報取得装置は探触子を走査する走査機構(不図示)を備えていてもよい。

0052

ここで、空間座標とは測定の行われた位置を示す座標である。すなわち、(実施形態において空間座標とは各トランスデューサの位置座標である。また、時間座標とは各トランスデューサが音響波を検出した時刻を示す座標である。

0053

(S300:時系列の検出信号をフーリエ変換して波数スペクトルを取得する工程)
本工程では、演算部152が、複数の時系列の検出信号を空間方向(空間座標が並ぶ方向)及び時間方向(時間座標が並ぶ方向)に対してそれぞれフーリエ変換することにより、周波数スペクトルKf(kx1,ky1,ω)を取得し、記憶部153に格納する。

0054

例えば、演算部152は、非特許文献1に基づき、式(1)にしたがって時系列の検出信号pdをフーリエ変換することにより周波数信号としての周波数スペクトルKfを取得する。

0055

0056

ここで、kx、ky、kzは、x、y、z軸方向の波数(空間周波数とも呼ぶ)[1/m]を表す。一般に、波数は空間周波数に2π[rad]を乗じた[rad/m]の単位を持つ量であるが、本発明では便宜的に空間周波数を波数と呼ぶ。また、ωは時間周波数[1/s]を表わす。また、c0は被検体内の音速を表し、Fx、y、tはフーリエ変換を表す。

0057

本実施形態においては、(x,y)平面上に複数のトランスデューサ141の検出面を配置して音響波を検出しているため、フーリエ変換して得られる周波数スペクトルはxおよびy軸方向の波数と、時間周波数ωとの関数として表わされる。

0058

周波数スペクトルは、kx、ky、ωが各値のときに得られる複素数値集合として取得される。すなわち、(kx,ky,ω)の各組み合わせに対応する複素数値が記憶部153に格納される。

0059

また、典型的にkx、kyの数は複数のトランスデューサ141の個数から決定され、ωは時系列の検出信号に対する時間方向のサンプリング数によって決定される。なお、複数の信号の補間によりkx、ky、ωの数の上限を変更する処理を行ってもよい。また、信号に0を足すこと(0パディング)や、一部の信号の削除により、kx、ky、ωの数を増減する処理を行っても良い。

0060

続いて、演算部152は、非特許文献1に基づき、式(2)にしたがって記憶部153に格納された周波数スペクトルの時間周波数ωをz軸方向の波数kzに変換して、波数のみで表現された周波数信号としての波数スペクトルK(kx,ky,kz)を取得する。取得された波数スペクトル(kx,ky,kz)の各複素数値は測定値として記憶部153に格納される。

0061

0062

本実施形態において、時間周波数を含むスペクトルを周波数スペクトルと称し、時間周波数を波数に変換した後のスペクトルを波数スペクトルと称する。なお、演算部152は、周波数スペクトルを取得せずに時系列の検出信号から波数スペクトルを取得してもよい。すなわち、演算部152は、式(1)に式(2)を代入した式を用いて、時系列の検出信号から波数スペクトルを取得してもよい。

0063

また、計算量を低減するために、高速フーリエ変換によって本工程のフーリエ変換処理を行ってもよい。

0064

以下、空間周波数の組み合わせ(kx,ky,kz)を単に「波数」と称する。また、本実施形態においては、周波数空間における信号を総称して周波数信号と称する。本実施形態において、演算部は複数の時系列の検出信号に基づいて、第一の周波数信号としての周波数スペクトルまたは波数スペクトルを取得する。すなわち、複数の時系列の検出信号が第一の周波数信号に変換される。

0065

(S400:波数スペクトルに対して音響波の位相変調の補正を行う工程)
本工程では、演算部152が、保持部材130で生じた音響波の屈折に起因する音響波の位相変調の補正を、記憶部153に格納された波数スペクトルに対して行う。すなわち、演算部152は、位相変調が補正された第二の周波数信号を取得する。

0066

以下、複数の波数に対応する測定値(複素数値)の集合である波数スペクトルのうち、波数kd=(kdx,kdy,kdz)に対応する測定値Kdの位相変調を補正する方法を、図4を用いて説明する。波数kd=(kdx,kdy,kdz)は、複数のトランスデューサ141に検出された保持部材130内を伝搬した音響波の波数である。また、保持部材130を伝搬する前の音響波の波数をk0=(k0x,k0y,k0z)としている。また、S300において原点Oを基準にフーリエ変換が行われた場合を考えている。なお、原点Oは音響波の検出面(x,y)の任意の位置に設定することができる。

0067

本実施形態において、音響波は被検体100と保持部材130との界面で屈折する。図4においては音響波の振幅の山を表示することにより音響波の伝播を表している。そのうち実線は被検体100内で発生した音響波が屈折して伝播する様子を示している。一方、点線は音響波が屈折しなかったと仮定した場合の音響波の伝播を示している。

0068

また、θ0は被検体100から保持部材130へ入射する音響波の入射角を表し、θdは被検体100と保持部材130との界面で屈折した音響波の屈折角を表す。

0069

まず、演算部152は、入射角θ0および屈折角θdを取得する。

0070

ここで、波数kdが決定されると保持部材130内を伝搬する音響波の伝搬方向が決定されるので、θdについても一意に決定される。また、スネルの法則(sinθ0/sinθd=c0/c1)より、θ0はθdと被検体100内の音速c0と保持部材内の音速c1とから一意に決定される。すなわち、被検体100内の音速c0と保持部材130内の音速c1とが予め分かっている場合、対象とする波数kdに対応するθdおよびθ0は一意に決定される。

0071

そのため、演算部152は、波数kd、被検体100内の音速c0、および保持部材内の音速c1に基づいて、入射角θ0および屈折角θdをスネルの法則に従って算出することができる。

0072

なお、演算部152は、複数の波数に対応した入射角θ0および屈折角θdが格納された記憶部153から波数kdに対応する入射角θ0および屈折角θdを選択してもよい。また、被検体100内の音速c0および保持部材内の音速c1が各値のときの入射角θ0および屈折角θdが記憶部153に格納されていてもよい。この場合、演算部152は、被検体100内の音速c0および保持部材内の音速c1に基づいて、対応する入射角θ0および屈折角θdを選択する。

0073

続いて、演算部152が、波数kdに対応する音響波の位相φdから、音響波が屈折しなかった場合の波数k0に対応する音響波の位相φ0を取得する。位相φdと位相φ0は、図4に示すように音響波の山と原点との間の位相差である。

0074

以下、位相φ0を求める方法を説明する。

0075

被検体100と保持部材130の界面とz軸とが交差する点を入射点Iとし、波数k0とkdにおける入射点Iから各音響波の山までの位相をそれぞれφ0_Iとφd_Iとする。φ0_Iとφd_Iは、図4に示す幾何学的関係より以下の式(3)で表すことができる。

0076

0077

入射点Iにおいて、音響波の波面は連続である。このため、入射点Iから音響波の山までの位相であるφ0_Iとφd_Iは同じである。よって、

0078

0079

となる。式(4)より、波数k0の成分の位相φ0を式(5)に示すように求める。ここで、Lは保持部材130の厚みであり、n=c0/c1である。

0080

0081

続いて、演算部152は、式(7)に示すように、測定値Kdから位相差iΔφを位相因子とする位相変調が補正された複素数値Kd’を算出する。Δφは、φ0とφdの差である。なお、測定値Kdについては、式(6)に示すようにAを振幅、iφdを位相因子として表わした。

0082

0083

0084

式(7)から理解されるように、波数kdに対応する測定値Kdに式(8)に示す位相因子を有する複素数掛けることにより、波数kdに対応する位相変調が補正された複素数値Kd’を取得することができる。式(8)のsgn(k0z)は、k0zが0以上の時は+1、k0zが負の時は−1をとる符号関数である。上記では、k0zが正の場合を説明している。k0zが負の場合も、上記説明と同様の過程を経ることにより、sgn(k0z)が−1の時の式(8)が位相因子となることがわかる。

0085

0086

なお、式(8)に示す位相因子は、被検体100内の音速c0、保持部材130内の音速c1、保持部材130の厚みLが予め分かっている場合、対象の波数kdが決まると一意に決定される。すなわち、演算部152は、複数の波数に対応する位相因子が予め格納された記憶部153から、任意の波数kdに対応する位相因子を選択することもできる。

0087

また、本実施形態においては、音響波の振幅の山が原点に対して先にある場合、すなわちφ0およびφdが負の場合を説明したが、式(7)及び式(8)はφ0およびφdの符号によらず適用可能である。

0088

続いて、演算部152は、以上の位相変調の補正処理を波数スペクトルKの各波数に対応する測定値に対して行うことにより、位相変調が補正された第二の周波数信号としての波数スペクトルK’を取得することができる。位相変調が補正された波数スペクトルK’の各波数に対応する複素数値は記憶部153に格納される。

0089

なお、本実施形態においては、保持部材130に起因する位相変調を補正する方法を説明したが、補正することのできる位相変調は保持部材130に起因するものに限らない。音響波の伝搬経路に音速分布が存在する場合、本実施形態に係る位相変調の補正を適用することができる。

0090

例えば、被検体100内で音速の異なる組織で形成される界面を有する場合に生じる位相変調に対して本発明を適用することができる。この場合、S400の工程の前に被検体100内の構造情報を把握し、その構造情報から被検体100内の音速分布を把握する必要がある。そこで、S400の工程の前に、構造情報取得部としてのMRI拡散光トモグラフィ装置、超音波エコー装置などが被検体100内の構造情報を取得してもよい。これらの装置は被検体情報取得装置が備えていてもよいし、別の装置として提供されてもよい。なお、本実施形態に係る光源110を拡散光トモグラフィ装置が備える光源に適用することにより、装置規模の拡大を抑えながら被検体100内の構造情報を取得することができる。また、被検体100内の構造情報を推定できる場合、推定された構造情報を用いてもよい。なお、信号処理部150が、以上のように取得された構造情報に基づいて音速分布を取得してもよい。

0091

また、保持部材130以外に被検体100の外部に設けられる部材に起因する位相変調に対しても本発明を適用することができる。

0092

また、内部の音速が異なる層が3つ以上ある場合も、各層に対して上記と同様の処理を施すことにより、位相変調を補正することができる。

0093

(S500:位相変調が補正された波数スペクトルに基づいて被検体情報を取得する工程)
本工程では、演算部152が、S400で取得した補正された波数スペクトルに基づいて被検体情報を取得する。

0094

例えば、演算部152は、式(9)に示すように、S400で取得した位相変調が補正された波数スペクトルK’に対して、逆フーリエ変換を行うことにより、被検体100内の初期音圧分布p0(x,y,z)を取得することができる。

0095

0096

ここで得られた初期音圧は、保持部材130での屈折による位相変調が補正された複素数値を用いているので、位相変調による定量性の低下が抑制されている。

0097

なお、演算部152は、S400で取得した位相変調が補正された波数スペクトルに対して式(1)および式(2)に示す処理と逆工程の処理を施すことにより、位相変調が補正された時系列の検出信号を復元してもよい。この場合、演算部152は、位相変調が補正された時系列の検出信号に対して任意の再構成処理を行って初期音圧分布を取得することができる。この方法によれば、逆フーリエ変換による再構成だけでなく、任意の再構成処理によって初期音圧分布を取得することができる。例えば、任意の再構成処理としては、タイムドメインによるバックプロジェクション法やモデルベース法などが挙げられる。

0098

なお、演算部152は、得られた初期音圧分布と、被検体100に照射された光の被検体100内の光量分布とに基づいて、被検体100内の吸収係数分布を取得してもよい。また、複数の波長の光のそれぞれについて、S100〜S500の工程を行うことにより、複数の波長に対応する被検体情報を取得してもよい。さらに、複数の波長に対応する被検体情報を用いて、被検体内の物質の濃度を取得してもよい。以上のように得られた様々な被検体情報についても位相変調による定量性の低下が抑制される。

0099

(S600:被検体情報を表示する工程)
本工程では、S500で取得された被検体情報の画像が表示部160に表示される。演算部152は、S500で取得された被検体情報に対して、輝度値変換などの表示部160に表示させるための処理を行って被検体情報の画像データを生成し、この画像データを表示部160に出力している。表示部160に表示された被検体情報は位相変調による定量性の低下が抑制された情報であるため、医師等の作業者が診断等に用いる上で好適な情報となっている。

0100

以上、本実施形態に係る被検体情報取得方法によれば、保持部材等の音速分布に起因する音響波の位相変調が補正された被検体情報を取得することができる。これにより得られる被検体情報の定量性の低下を抑制することができる。

0101

また、本実施形態においては、周波数信号に対して位相変調の補正を行うことにより、平面波に対応する1つの音線についてスネルの法則に従って伝搬経路を求めることで位相変調の補正を行うことができる。すなわち、球面波として発生した音響波の複数の音線についてスネルの法則に従って伝搬経路を求める特許文献1が開示する位相変調の補正手法と比べて、本実施形態に係る位相変調の補正手法は計算量を低減することができる。

0102

(第2の実施形態)
本実施形態では、図5に示すように音響波の検出面に対して、音速の異なる界面が角度αだけ傾いている場合について説明する。すなわち、複数のトランスデューサ141の検出面と、被検体100と保持部材130との界面とがy軸を回転軸として角度αだけ傾いている場合を考える。本実施形態において角度αは、複数のトランスデューサ141の検出面と保持部材130の一面とのなす角度となっている。

0103

ところで、内部の音速の異なる2層の界面の前後においては、界面と平行な方向の波数は保存される。すなわち、第1の実施形態においては、音響波の検出面(x−y平面)と、被検体100と保持部材130との界面とが平行であったため、波数k0のxおよびy軸方向の波数と、波数kdのxおよびy軸方向の波数は同じとなっていた。

0104

ところが、本実施形態においては、界面がy軸を回転軸として回転しているため、界面の前後でx軸方向の波数が保存されない。一方、界面と平行な方向x’の波数については保存される。そのため、波数k0のx軸方向の波数と波数kdのx軸方向の波数は異なってしまう。すなわち、本来波数がk0xである保持部材130を伝搬する前の音響波のx軸方向の波数をkdxとしてS400で説明した位相変調の補正を行ってしまうと、被検体情報の定量性の低下の抑制効果が小さい。

0105

そこで、本実施形態においては、音響波の位相変調の補正を行う前に、波数スペクトルに対して音速の異なる界面の傾きに起因する音響波の波数変調の補正を行う点が第1の実施形態とは異なる。

0106

以下、本実施形態に係る被検体情報取得装置の作動方法を図6のフローに沿って説明する。なお、図3に示す工程と同様の工程には同一の符号を付して説明を省略する。また、第1の実施形態で説明した構成要素と同一の構成要素には原則として同一の符号を付して、説明を省略する。

0107

(S700:波数スペクトルに対して音響波の波数変調の補正を行う工程)
前述したように、本実施形態において、界面の前後でx軸方向の波数は保存されない。一方で、界面に平行な成分(ここではx’軸方向)の波数については界面の前後で保存される。なお、y軸方向の波数については、界面の前後で保存されている。

0108

そこで、本工程では、演算部152が、探触子140の検出面の座標系(x,y,z)における波数kd=(kdx,kdy,kdz)に対応付けられた測定値Kdを、検出面の座標系における波数k0=(k0x,k0y,k0z)に対応付けることにより波数変調を補正する。すなわち、演算部152は、波数変調が補正された第三の周波数信号を取得する。

0109

例えば、演算部152は、アフィン変換およびスネルの法則から導かれる式(10)により波数kd(kdxおよびkdz)から波数k0(k0xおよびk0z)を取得する。

0110

0111

そして、演算部152は、式(10)で求められた波数k0に対応するアドレスに、波数kdに対応するアドレスに格納された測定値Kdを格納する。

0112

なお、θd’はθdと角度αとの加算により求められる。また、θdは前述したように波数kdから一意に決定される。すなわち、演算部152は、複数のトランスデューサ141の検出面と保持部材130とのなす角度αの情報に基づいて波数k0を求めることができる。なお、角度αが予め分かっていない場合には、角度αをCCDなどの測定部により得られる画像などから取得することができる。

0113

また、検出面の座標系における波数kdから音速の異なる界面の座標系における波数k0を求められる限り、その方法は上記方法に限らない。例えば、まず演算部152が検出面の座標における波数kdから被検体100と保持部材130との界面の座標系(x’,y’,z’)における波数kdをアフィン変換により取得し、記憶部153に格納する。続いて、演算部152が記憶部153に格納された界面の座標系における波数kdから界面の座標系における波数k0をスネルの法則により取得し、記憶部153に格納する。続いて、演算部152が記憶部に格納された界面の座標系における波数k0から検出面の座標系における波数k0をアフィン変換により取得し、記憶部153に格納する。このような方法により、検出面の座標系における波数kdから検出面の座標系における波数k0を取得してもよい。

0114

本工程では以上の処理を波数スペクトルの各波数に対して行うことにより、波数変調が補正された波数スペクトルを取得することができる。

0115

なお、測定値Kdを格納する前に格納すべきアドレスを取得した場合、記憶部153に格納された複数の時系列の検出信号からKdを取得し、直接波数k0に対応するアドレスに格納してもよい。

0116

また、本工程において波数変調が補正された波数スペクトルを取得せずに、後述するS800の工程において測定値Kdを波数k0に対応する測定値として扱って位相変調の補正を行ってもよい。本実施形態においては、この場合も波数変調の補正を行ったとすることができる。

0117

また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、補正することのできる波数変調は保持部材130の傾きに起因するものに限らない。音響波の伝搬経路に音響波の検出面と角度をなす音速の異なる2層の界面が存在する場合、本実施形態に係る波数変調の補正を適用することができる。また、内部の音速が異なる層が3つ以上ある場合も、各層に対して上記と同様の処理を施すことにより、波数変調を補正することができる。

0118

本実施形態ではy軸方向の傾きが無い場合を説明した。なお、y軸方向にも傾きがある場合は、2次元でのアフィン変換である式(10)を一般的な3次元のアフィン変換に拡張することで容易に波数変調の補正を行うことができる。

0119

また、本実施形態では座標系の変換にアフィン変換を用いたが、他の回転変換を用いてもよい。例えば、オイラー変換等を用いることができる。

0120

(S800:波数変調が補正された波数スペクトルにおいて音響波の位相変調を補正する工程)
本工程では、S700により取得された波数変調が補正された波数スペクトルに対して位相変調の補正を行う。本工程は第1の実施形態のS400に相当し、本工程においてもS400で行った同様の補正を行うことによって、音速の異なる2層の界面に起因する音響波の波数変調および位相変調を補正することができる。これにより、後のS500の工程で得られる被検体情報の定量性を向上させることができる。

0121

なお、前述したように、例えばS300で取得した波数kdに対応する測定値Kdを、波数k0に対応する測定値として扱って位相変調の補正を行ってもよい。この方法によっても音速の異なる2層の界面に起因する音響波の波数変調および位相変調を補正することができる。

0122

以上、本実施形態に係る被検体情報取得方法によれば、保持部材等の音速分布に起因する音響波の位相変調に加え、波数変調についても補正された被検体情報を取得することができる。これにより、得られる被検体情報の定量性の低下を抑制することができる。

0123

以下、第1または第2の実施形態に係る被検体情報取得方法をシミュレーションにより行った結果を説明する。

0124

なお、以下の記述において単位が付されていない物理量は、適当な定数により規格化されていることを示す。また、以下の記述において座標原点計算空間頂点の1つとし、計算空間の各辺は0から正の最大値までの座標を有する。

0125

また、本実施例においては、シミュレーションにより以下4つの測定データ(複数の時系列の信号)を算出した。

0126

まず、測定データ1は下記のように算出されたものである。計算空間は3次元で横(x)120mm、縦(y)46mm、高さ(z)60mmとし、一辺の長さ0.5mmの立方体セルに分割した。計算空間に直径1mm、長さ46mm、一定の内部圧力1を有するワイヤ状数値ファントム9本を横間隔5mm、高さ間隔5mmで配置した。こうして得られた計算空間内の初期圧力分布と、自由空間における波動方程式基本解である外向き球面波との畳みこみ積により任意の時刻の圧力分布を得た。ただし、音響特性の異なる領域の界面ではスネルの法則に従って外向き球面波を屈折させた。計算空間内部の音響特性はz軸に平行な1つの界面で2つの領域に分割した。分割位置はz=10mmであり、分割された領域はz座標の大きい方から順に領域1、2と呼称した。各領域の音響特性は以下の通りにした。すなわち、領域1は密度1、弾性率1、領域2は密度0.833、弾性率1.8とした。計算空間の底面(z=0mm)を探触子の検出面とみなし、一辺の長さ2mmの正方形セルに分割して、各セル内部で平均した圧力分布を経時的に記録し、測定データ1とした。

0127

測定データ2は下記のように算出したものである。計算空間は2次元で横(x)30mm、縦(y)60mmとし、一辺の長さ50μmの正方形セルに分割した。計算空間の一点(x=15mm、y=15mm)に最大圧力1、標準偏差0.5mmのガウス分布状数値ファントム1つを配置した。こうして得られた計算空間内の初期圧力分布を初期値として、一般的な音響FDTD法により、任意の時刻の圧力分布を算出した。計算空間内部の音響特性はx軸に平行な2つの界面で3つの領域に分割した。分割位置はy=30mmとy=40mmであり、分割された領域はy座標の小さい方から順に領域1、2、3と呼称した。各領域の音響特性は以下の通りにした。すなわち、領域1は密度1、弾性率1、領域2は密度0.833、弾性率1.8、領域3は密度0.91、弾性率0.9とした。計算空間の内部(y=50mm)に長さ27mmのx軸に平行な直線を引いて探触子の検出面とみなし、一辺の長さ45μmの区間に分割して各セルの中心で評価した圧力分布を経時的に記録し、測定データ2とした。

0128

測定データ3は下記のように算出したものである。探触子以外の条件は全て測定データ2を取得するのに用いた条件と同様とした。計算空間の内部に長さ27mm、x軸に対して15度の角度をなし、x=15mm、y=50mmの点を通過する直線を引いて探触子の検出面とみなし、一辺の長さ45μmの区間に分割した。そして、各セルの中心で評価した圧力分布を経時的に記録し、測定データ3とした。測定データ3は、音響特性の異なる領域を隔てる界面が検出面に対して平行でない点で測定データ2とは異なる。

0129

測定データ4は下記のように算出したものである。音響特性の分布以外の条件は全て測定データ2を取得するのに用いた条件と同様とした。計算空間内部の音響特性は、x=15mm、y=−70mmの点を共通中心とし異なる半径を有する2つの円弧を界面として3つの領域に分割した。第1の円弧は直径100mm、第2の円弧は直径110mmとした。分割された領域の呼称及び各領域の音響特性は測定データ2の条件と同様とした。測定データ2と同様の検出面により圧力分布を経時的に記録し、測定データ4とした。測定データ4は、音響特性の異なる領域を隔てる界面が曲率半径の大きい円弧である点で測定データ2とは異なる。

0130

なお、測定データ1及び2については検出面と音速の異なる領域の界面とが平行であるから第2の実施形態で説明した波数変調の補正は行っていない。

0131

また、フーリエ変換における平面波の伝播路算出には、全てスネルの法則を用いた。具体的には、各界面においてスネルの法則が成立するとして、入射角を既知として出射角を求め、これを順次繰り返すことにより各領域における平面波の波数を得た。また、そのようにして求めた伝播経路の幾何学的長さと各領域における音速とに基づき、平面波の伝播時間を算出した。

0132

図7は、測定データ2に対して位相変調の補正を行って得られた信号(補正後の信号)と、測定データ2(補正前の信号)と、音速が均一であった場合に得られる信号(真値の信号)とを示す。

0133

ここで補正後の信号とは、測定データ2に対して第1の実施形態に係るS300およびS400を行うことにより得られた位相変調が補正された波数スペクトルに対して、逆フーリエ変換することにより得られた実時間の時系列の信号である。ただし、この信号は探触子の中心において測定された値である。図7において縦軸は圧力を、横軸は規格化された時間を表す。

0134

図7からわかるように、位相変調の補正の結果、補正後の信号は補正前の信号と比べて真値の信号に近づいた。

0135

図8は、測定データ1に対して位相変調の補正を行わずに再構成された初期音圧分布(図8(a))と位相変調の補正を行って再構成された初期音圧分布(図8(b))を示す。すなわち、図8(b)は測定データ1に対して第1の実施形態に係るS300およびS400を行うことにより得られた位相変調が補正された波数スペクトルに対して、非特許文献1に代表されるk−space法による再構成を行った結果である。

0136

図8(a)に示すように、補正前にはワイヤの断面形状が本来の形状とは異なる弓型に歪み、位置がずれ、コントラストも低い。一方、図8(b)に示すように、補正後にはワイヤの断面形状が回復し、正しい位置に再構成され、コントラストも向上した。

0137

なお、図8(b)に関する計算に要した時間は1.4GFlopsの計算機環境においてk−space法による再構成に要する時間やデータの入出力に要する時間を含めて3.7秒間であった。一方、補正を行わずにk−space法による再構成を行った場合3.1秒間を要した。すなわち、差し引き0.6秒間が位相変調の補正に要した時間であったといえる。

0138

一方、特許文献1に記載の手法で同様に所要時間を測定したところ、補正ありの場合で877秒間、補正無しの場合で137秒間を要した。したがって、差し引き740秒間が位相変調の補正に要した時間であったと言える。なお、特許文献1に記載の手法は再構成手法としてバックプロジェクション法しか用いることができないため、この測定における再構成手法としてはバックプロジェクション法を用いた。

0139

この結果から、本実施例に係る補正手法によれば、従来の補正手法と比べて早く位相変調の補正を行うことができる。すなわち、本実施例に係る補正手法は従来の補正手法と比べて計算量が少ない。

0140

図9は、測定データ2に対して位相変調の補正を行い、一方測定データ3および4に対して位相変調の補正および波数変調の補正を行った後に、これらを再構成した結果である。なお、本発明の手法がk−space法以外の再構成手法とも適合することを示すため、図9に関する計算における再構成はバックプロジェクション法によって行った。

0141

図9上段(a)、(b)、(c)はそれぞれ測定データ2、3、4を補正無しに再構成した結果であり、図9下段(d)、(e)、(f)はそれぞれ測定データ2、3、4を補正した後、同様に再構成した結果である。また、図9の下段(g)は音速が均一である場合(探触子の条件は測定データ2と同様)の再構成結果を参考のために示したものである。

0142

図9のそれぞれの画像から分かるように、音速の異なる領域が3つ以上ある場合、その界面が検出面に対して平行でない場合、およびその界面が曲率半径の大きい曲面である場合のいずれにおいても被検体情報の定量性の低下を抑制することができた。

0143

上より、本発明に係る被検体情報取得方法によれば、音速分布に起因する音響波の位相変調に加え、波数変調についても補正された被検体情報を取得することができることがわかった。さらに、従来手法と比べて少ない計算量で補正を行うことができることもわかった。

実施例

0144

以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明は上記特定の形態に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で実施形態の修正をすることができる。

0145

100 被検体
130保持部材
140探触子
150信号処理部

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