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技術 マルテンサイト鋼及びその製造方法

出願人 国立研究開発法人物質・材料研究機構
発明者 花村年裕鳥塚史郎
出願日 2013年7月9日 (7年5ヶ月経過) 出願番号 2013-143920
公開日 2015年1月29日 (5年10ヶ月経過) 公開番号 2015-017292
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 全ひずみ 機械的バランス 微小析出物 強靭鋼 衝撃エネルギー吸収能 全応力 方向断面積 結晶方位マップ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

建造物橋梁等の構造物自動車足回り鋼、機械歯車部品に使用される鋼として、特に好適な厚鋼板形鋼異形棒鋼棒鋼及び鋼線等の鋼製品用の高強度鋼を提供すること。

解決手段

化学成分組成が、質量%で、C :0.20〜0.30%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなり、ミクロ組織は、マルテンサイト組織である高強度鋼であって、当該高強度鋼の全伸びを13〜15%に維持した状態と共に、次の回帰式に従って炭素濃度Cを選定することで、最大応力TSを1800〜2160MPaに調整可能な高強度鋼。 TS[MPa]=4000×C[mass%]+1050・・・(1)

概要

背景

近年、構造物の大型化や自動車部品の軽量化に伴って、これまで以上に高性能な鋼が求められている。これに加えて当該鋼を製造するに当たり、省資源かつ省エネルギーであることも重要な課題である。そして、当該鋼を製造するに当たっては設備増設ないし新設することなく、しかも従来の製造工程よりも省工程で目的とする鋼を製造できることが望まれている。

従来、高強度鋼板は多数開発されている。例えば、特許文献1には、高強度と高延性両立させ、プレス成形性衝撃エネルギー吸収能に優れた自動車用冷延鋼板に関する技術が開示されている。これは高価な合金元素添加量を抑制してフェライト結晶粒微細化により強度を上昇させ、しかもプレス成形性に重要となる延性とのバランスに優れた薄鋼板である。そしてその製造工程では熱間圧延の後、冷間圧延を行ない、適切な焼鈍を行なうというものである。しかしながら、この技術によれば、MoやNi等の高価な合金元素が少量ではあるが必須添加元素であり、薄鋼板に圧延後、焼鈍処理の工程を必要としている。

また、非特許文献1には、高価な合金元素を添加せずにMnとSi含有量を高めた0.1%C−5%Mn−2%Siという低炭素鋼に準じる化学成分組成鋼を用い、焼鈍後の低温再加熱処理において高含有量のMnにより残留オーステナイトの分率を高めると同時に、高含有量のSiにより、セメンタイトの生成を抑制しつつ、フェライト中からオーステナイトへ排出されたCにより残留オーステナイトを安定化させることによって加工硬化指数を高めた鋼板(NewTRIP鋼と称される)が開示されている。しかし、このプロセスは薄鋼板に圧延後に複雑なプロセスである焼鈍処理及び低温再加熱処理を必要としており、省エネルギーの観点からのプロセス効率化の問題が解決されていない。そして、薄鋼板を製造対象鋼としているので、熱間圧延工程に加えて冷間圧延工程も必須としている。

一方、製造対象鋼として薄鋼板を除く構造物等に使用される高強靭鋼についても多数開発されている。例えば、特許文献2には、高強度、高延性で、耐遅れ破壊特性に優れ、しかも靭性飛躍的に向上した高強度鋼に関する技術が開示されている。この技術によれば、引張強さが1660〜1800MPa、伸び全伸び)が18.5〜19.2%であって、室温におけるVノッチシャルピー試験衝撃吸収エネルギーで305〜382J/cm2を有する鋼が例示されている(特許文献2の表6の実施例1及び実施例17参照)。しかし、この技術においても、化学成分組成として高価格のMoを1.0%程度含有させ、製造工程として、所定の温度及び時間の条件下において焼鈍、焼戻し及び時効処理のいずれかを施した後、350℃以上(AC1−20℃)以下の温度で加工をする(温間加工をする)工程が必要である。

さらに、本発明者の提案にかかるものとして、特許文献3、4、5がある。ここで、特許文献4、5では、鋼の組織がα/γ2相組織である点で、本願で目的とする組織(マルテンサイト)とは異なる。また、機械的な特性も強度が比較的低く延性があるという性質がある点で、本願のマルテンサイト鋼の機械的な特性である、強度が高く、延性はα/γ組織に比べて低いという点で違いがある。
また、特許文献3はマルテンサイト組織鋼であるため、鋼の組織や機械的な特性で、本願のマルテンサイト鋼と類似性がある。しかし、成分の観点では、特許文献3の成分は0.05〜0.2%Cの範囲であるため、炭素濃度が低すぎて、引張強度TSとして1400MPaレベルに過ぎず、指標となる2000MPaレベルが得られないという問題がある。また、特許文献3の特性の観点として、高強度を高めると延性が劣化するという炭素鋼一般の性質が存在する。

以上のように、これまでに開示されている技術では省資源、省エネルギーの問題が解決されておらず、また、比較的低温領域における温間加工を実施するために通常の製造ラインにおいては加工装置に大きな負担を強いることになり、工業的に幅広く利用するには問題がある。
更に、高強度のレベルを変化させたいという要求があった場合、C濃度を高めたり、低めたりすることで対処するのが容易であるが、Cを高めて強度を高めた場合、延性が落ち、Cを低めて延性を高めた場合、強度が落ちるという、相反する問題がある。

概要

建造物橋梁等の構造物、自動車足回り鋼、機械用歯車部品に使用される鋼として、特に好適な厚鋼板形鋼異形棒鋼棒鋼及び鋼線等の鋼製品用の高強度鋼を提供すること。化学成分組成が、質量%で、C :0.20〜0.30%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなり、ミクロ組織は、マルテンサイト組織である高強度鋼であって、当該高強度鋼の全伸びを13〜15%に維持した状態と共に、次の回帰式に従って炭素濃度Cを選定することで、最大応力TSを1800〜2160MPaに調整可能な高強度鋼。 TS[MPa]=4000×C[mass%]+1050・・・(1)

目的

これに加えて当該鋼を製造するに当たり、省資源かつ省エネルギーであることも重要な課題である

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

化学成分組成が、質量%で、C :0.20〜0.30%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなり、ミクロ組織は、マルテンサイト組織である高強度鋼であって、当該高強度鋼の全伸びを13〜15%に維持した状態と共に、次の回帰式に従って炭素濃度Cを選定することで、当該高強度鋼のTS(最大応力)を1800〜2160MPaに調整可能な高強度鋼。TS[MPa]=4000×C[mass%]+1050・・・(1)

請求項2

化学成分組成が、質量%で、C :0.20〜0.30%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなる高強度鋼であって、当該高強度鋼を1200℃±25℃で均一に加熱後、1200℃〜750℃の温度域で連続鍛造により減面率88%以上の加工後、室温まで空冷したものであり、圧延方向に対する直角方向断面における平均ブロック粒径が幅5.0μm以下であるマルテンサイトからなる微細ミクロ組織を有する鋼組織が得られることを特徴とする高強度鋼の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、建造物橋梁等の構造物自動車足回り鋼、機械歯車部品に使用される鋼に関し、特に高強度-高延性-高靭性を有する厚鋼板棒鋼鋼線等に用いて好適な非調質マルテンサイト鋼及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

近年、構造物の大型化や自動車部品の軽量化に伴って、これまで以上に高性能な鋼が求められている。これに加えて当該鋼を製造するに当たり、省資源かつ省エネルギーであることも重要な課題である。そして、当該鋼を製造するに当たっては設備増設ないし新設することなく、しかも従来の製造工程よりも省工程で目的とする鋼を製造できることが望まれている。

0003

従来、高強度鋼板は多数開発されている。例えば、特許文献1には、高強度と高延性を両立させ、プレス成形性衝撃エネルギー吸収能に優れた自動車用冷延鋼板に関する技術が開示されている。これは高価な合金元素添加量を抑制してフェライト結晶粒微細化により強度を上昇させ、しかもプレス成形性に重要となる延性とのバランスに優れた薄鋼板である。そしてその製造工程では熱間圧延の後、冷間圧延を行ない、適切な焼鈍を行なうというものである。しかしながら、この技術によれば、MoやNi等の高価な合金元素が少量ではあるが必須添加元素であり、薄鋼板に圧延後、焼鈍処理の工程を必要としている。

0004

また、非特許文献1には、高価な合金元素を添加せずにMnとSi含有量を高めた0.1%C−5%Mn−2%Siという低炭素鋼に準じる化学成分組成鋼を用い、焼鈍後の低温再加熱処理において高含有量のMnにより残留オーステナイトの分率を高めると同時に、高含有量のSiにより、セメンタイトの生成を抑制しつつ、フェライト中からオーステナイトへ排出されたCにより残留オーステナイトを安定化させることによって加工硬化指数を高めた鋼板(NewTRIP鋼と称される)が開示されている。しかし、このプロセスは薄鋼板に圧延後に複雑なプロセスである焼鈍処理及び低温再加熱処理を必要としており、省エネルギーの観点からのプロセス効率化の問題が解決されていない。そして、薄鋼板を製造対象鋼としているので、熱間圧延工程に加えて冷間圧延工程も必須としている。

0005

一方、製造対象鋼として薄鋼板を除く構造物等に使用される高強靭鋼についても多数開発されている。例えば、特許文献2には、高強度、高延性で、耐遅れ破壊特性に優れ、しかも靭性が飛躍的に向上した高強度鋼に関する技術が開示されている。この技術によれば、引張強さが1660〜1800MPa、伸び全伸び)が18.5〜19.2%であって、室温におけるVノッチシャルピー試験衝撃吸収エネルギーで305〜382J/cm2を有する鋼が例示されている(特許文献2の表6の実施例1及び実施例17参照)。しかし、この技術においても、化学成分組成として高価格のMoを1.0%程度含有させ、製造工程として、所定の温度及び時間の条件下において焼鈍、焼戻し及び時効処理のいずれかを施した後、350℃以上(AC1−20℃)以下の温度で加工をする(温間加工をする)工程が必要である。

0006

さらに、本発明者の提案にかかるものとして、特許文献3、4、5がある。ここで、特許文献4、5では、鋼の組織がα/γ2相組織である点で、本願で目的とする組織(マルテンサイト)とは異なる。また、機械的な特性も強度が比較的低く延性があるという性質がある点で、本願のマルテンサイト鋼の機械的な特性である、強度が高く、延性はα/γ組織に比べて低いという点で違いがある。
また、特許文献3はマルテンサイト組織鋼であるため、鋼の組織や機械的な特性で、本願のマルテンサイト鋼と類似性がある。しかし、成分の観点では、特許文献3の成分は0.05〜0.2%Cの範囲であるため、炭素濃度が低すぎて、引張強度TSとして1400MPaレベルに過ぎず、指標となる2000MPaレベルが得られないという問題がある。また、特許文献3の特性の観点として、高強度を高めると延性が劣化するという炭素鋼一般の性質が存在する。

0007

以上のように、これまでに開示されている技術では省資源、省エネルギーの問題が解決されておらず、また、比較的低温領域における温間加工を実施するために通常の製造ラインにおいては加工装置に大きな負担を強いることになり、工業的に幅広く利用するには問題がある。
更に、高強度のレベルを変化させたいという要求があった場合、C濃度を高めたり、低めたりすることで対処するのが容易であるが、Cを高めて強度を高めた場合、延性が落ち、Cを低めて延性を高めた場合、強度が落ちるという、相反する問題がある。

0008

特開2007−321207号公報
国際公開WO2007/058364
特開2012−102346号公報
特開2012−224884号公報
特開2012−229455号公報

先行技術

0009

H.Takechi, Journal of Metals. December 2008, p.22

発明が解決しようとする課題

0010

本発明は、以上の点に鑑みて、従来技術では解決することができない以下の問題点を解決したマルテンサイト鋼及びその製造方法を提供することを目的とする。
(1)製造される鋼の用途は、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用されるもので、製造される鋼の形態は、高強度に優れた厚鋼板、形鋼異形棒鋼、棒鋼及び鋼線等であること。
(2)鋼の組成は、安価なMn及びSiを添加した低C鋼を基準とし、MoやNi等の高価な合金元素の添加は不要であること。
(3)通常の製鋼所に設けられている既設圧延設備のままで、特段の焼鈍処理を施さなくても組織の制御ができること。
(4)製造対象とする鋼の材料特性値に関しては、機械的性質として、引張試験におけるTE(全伸び)を13〜15%に維持した状態でC濃度を変化させ、TS(最大応力)を1800〜2160MPaに可変可能な強度-延性バランスを有すること。

課題を解決するための手段

0011

本発明者は上記の課題を解決するために、鋼のミクロ組織形態の新規組合せの相及びその構成比率と材料特性値との関係を鋭意研究し、かかる組織を得るための製造条件を研究した結果、本発明を完成するに至った。本発明は以下の特徴を有する。

0012

本発明の高強度鋼は、上記課題を解決するもので、化学成分組成が、質量%で、C :0.20〜0.30%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなり、ミクロ組織は、マルテンサイト組織である。そして、機械的性質として、高強度鋼の引張試験におけるTE(全伸び)を13〜15%に維持した状態で、次の回帰式(1)に従って炭素濃度Cを選定することで、高強度鋼のTS(最大応力)を1800〜2160MPaに調整可能である。

0013

0014

これにより、強度-延性バランスを有する機械的バランス特性に優れた高強度鋼が得られる。

0015

本発明の高強度鋼の製造方法は、例えば図2に示すように、化学成分組成が、質量%で、C :0.20〜0.30%、Si:1.0〜3.5%、Mn:4.5〜5.5%、Al:0.001〜0.080%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、N:0.010%以下、Nb:0.01〜0.045であって、残部がFe及び不可避不純物からなる高強度鋼に関するものである。当該高強度鋼を1200±25℃で均一に加熱した(S104)後、1200℃〜750℃の温度域で連続鍛造により減面率88%以上の加工(S106)後、室温まで空冷した(S108)。これにより、圧延方向に対する直角方向断面における平均ブロック粒径が幅5.0μm以下であるマルテンサイトからなる微細ミクロ組織を有する鋼組織が得られるものである。

0016

S104の均一加熱温度は、オーステナイトが平衡状態にある温度であって熱間加工に適すると共に、微細ミクロ組織が得られるものであればよく、熱間加工設備との関係で温度範囲が定まる。高強度鋼が1225℃以上であると、加工温度が高くなるため、平均ブロック径微粒子化が充分でなく、必要な強度が得られにくい。高強度鋼が1175℃以下であると、加工温度が低くなるため、鍛造の際の抵抗増して、減面率88%の確保が困難になる。

発明の効果

0017

本発明の高強度鋼によれば、高価な合金添加元素のない低炭素鋼を使用しつつ高強度鋼が得られると共に、C濃度を変化させるのみで、延性を一定レベル(TE:13〜15%)で保ったまま強度をTS1800MPa〜2160MPaまで可変可能とする優れた機械的バランス性質を備えた鋼が得られる。
また、優れた厚鋼板、形鋼、異形棒鋼、棒鋼及び鋼線等の鋼を製造するに当たって、例えば非特許文献1に記載されているような、高価な合金元素を添加することなく、低炭素鋼の化学成分組成を有する鋼を使用でき、低コストの高強度鋼が得られる。

0018

本発明の高強度鋼の製造方法によれば、熱間鍛造により、製造設備に過大な負荷をかけることなく現有の製造ラインにおいて、高強度鋼を製造することができるため、各種強度の規格適合した所望の鋼を製造することができる。

図面の簡単な説明

0019

マルテンサイト組織における4層の構成要素の階層構造説明図である。
高強度鋼の調製方法を説明する流れ図である。
本発明の実施例として、C濃度を0.20〜0.30mass%まで変化させた鋼の引張特性の比較図である。
本発明の比較例として、C濃度を0.05〜0.20mass%まで変化させた鋼の引張特性の比較図である。
図3図4におけるC濃度と鋼の引張強度から回帰式を求める図である。

0020

以下、本発明に係る鋼の化学成分組成、顕微鏡組織及び機械的性質の特徴、並びに当該鋼の製造方法の特徴について詳細に説明する。

0021

<鋼の化学成分組成>
本発明に係る高強度鋼における化学成分組成の範囲は以下の通りである(以下、成分の%はすべて質量%を示す)。

0022

C:0.20〜0.30%とする。Cは引張を確保するために必要であるが、0.20%未満では本発明に係る鋼の引張を十分に満たさないおそれがあるため、0.20%以上に規定する。一方、0.30%を超えると、鋼の延性の低下傾向及び溶接性の低下傾向を示すので、上限を0.30%に規定する。

0023

Si:1.0〜3.5%とする。Siは、材質を大きく硬質化する置換型固溶体強化元素であり、鋼の硬度を上昇させるのに有効な元素であり、1.0%以上が望ましい。しかしながら、Si含有量が過度に高くなると熱間加工時の加熱中にSiスケールが多く発生しスケール除去に余分のコストがかかることや、スケールによる表面疵が発生し易くなる問題が生じる。そこで、上限を3.5%とする。

0024

Mn:4.5〜5.5%とする。
本高強度鋼の特性である400℃以上の低温域加工でマルテンサイトを生成させるためには、オーステナイトの高度な安定化が必要であり、それを確保するために、高いMn含有量が効果的作用を発揮する。

0025

この作用効果を十分に発揮させるためには、Mn含有量を4.5%以上とすることが望ましい。一方、Mnが高濃度になると、鋼の低温靭性を劣化させること、及び過度に高濃度になると凝固時の鋼中Mnの偏析が過大となり材料内部の均一性を害する。また、素材の調製工程における熱間加工工程において表面割れが発生し易くなる。よって、上限を5.5%とする。

0026

Al:0.001〜0.080%とする。Alは溶鋼脱酸のために添加するが、真空溶解炉を使用した場合でも、0.001%未満ではその効果が不十分となる。転炉精錬の場合には、十分な脱酸をするためには、通常、0.010%以上が望ましい。一方、0.080%を超えると、AlNの生成により脆化の問題が起こる可能性がある他に、酸化物系介在物が増加して靭性を損なう可能性があるので、上限を0.080%とする。なお、本願発明においては、鋼の溶製工程としては、通常の工業的量産方法である転炉製鋼法電気炉製鋼法を前提条件とし、真空精錬をしなくてもよい場合の他に、真空溶解炉をしようする少量生産の場合をも想定して下限値を規定している。

0027

P:0.030%以下とする。Pは、鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、靭性を低下させるので、その含有量の上限を0.030%に制限する。また、P含有量のより一層望ましい上限は、0.015%以下である。下限値は特に限定しないが、コストを考慮し適宜決めればよい。

0028

S:0.020%以下とする。Sは、Pと同様に鋼中に不可避的に混入する不純物元素であり、加工性及び靭性を損なうので、その含有量の上限を0.020%に制限する。また、Sのより一層望ましい上限は、0.005%である。下限値は特に限定しないが、コストを考慮し適宜決めればよい。

0029

N:0.010%以下とする。Nは、鋼中に不可避的に含有される元素であり、積極的に低減するためには脱ガス精錬等を必要とするので、製造コスト高を招く。また、Nは電気炉製鋼法による場合は特に原料中のN含有量にも依存するので、特に下限は規定しない。一方、N含有量が0.0080%を超えると、窒化物が増加して靭性を損なうので、上限を0.0100%とする。

0030

Nb:0.045%以下とする。Nbは、鋼中に炭化物微細分散させて組織を微細化させる効果がある。これはNbが鋼中性分のCと反応してNbCを生成し、この微小析出物高温のγ域におけるγ粒の成長粒界ピニングにより抑えることによるものである。0.045%以上入れると鋼中の炭素消費してしまい、マルテンサイト変態駆動力下げ、鋼の特性を劣化させる危険がある。

0031

<ミクロ組織と機械的特性値
次に、本発明に係る高強度鋼のミクロ組織について説明する。
本発明に係る高強度鋼のミクロ組織は、主相がマルテンサイトであり、そのビッカース硬度HV>400であり、マルテンサイトの硬度を有しているのが特徴である。このように高価な合金元素を添加しなければ達成できない高強度化通常組成のまま達成できることが特徴である。かかるミクロ組織を有することは、所要の機械的特性値を満たすための必要条件の一つであり、そのためには上述した鋼の化学成分組成を満たすことを前提条件とするものである。

0032

マルテンサイト組織は、四つの構成要素でできた複雑な階層構造をとっている、図1はマルテンサイト組織における4層の構成要素の階層構造説明図である。大きさが数10μmの旧オーステナイト相の結晶粒子は、大きさ数μmのパケットが詰まった構造になっており、そのパケットは幅が約1μmの細長い板状のブロックが詰まってできている。 当該ブロックはラスによって構成されている。すなわち、旧オーステナイト相の粒子、パケット、ブロック、ラスの四つの構成要素が積み重なってできている。この四つの構成要素の粒界・境界や粒内に数〜数10nmの大きさの炭化物粒子が分散しているという非常に複雑な階層構造をとっている。

0033

また、本発明材では、機械的特性について、質量%で、C濃度を0.05から0.075、0.125、0.15、0.20、0.30と高めていくとその公称応力公称歪曲線において、全伸びを13〜15%に保持したまま、最大応力(TS)値を1800MPaから2160MPaまで高めることができることが特徴である。すなわち、通常であれば強度を高めると延性が低下するのが一般的な傾向であるが、本発明材は延性の低下を抑えた高強度化がC濃度を変化することのみで制御することを特徴とする。

0034

平均ブロック粒径は、例えば、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)装置を用いて測定できる。具体的には、線材長手方向に垂直な線材断面において、表層から0.1Dの範囲、及び、1/4D部(鋼線の表面から鋼線の中心方向に鋼線の直径Dの1/4離れた部分)から1/2D部(鋼線の中心部分)の範囲にて、それぞれ、275μm×165μmの領域を測定する。
EBSP装置で測定したbcc構造結晶方位マップから、方位差が10°以上となる境界を、ブロック粒界とする。そして、一つのブロック粒の円相当粒径をブロック粒径と定義し、その体積平均平均粒径と定義する。

0035

本発明に係る高強度鋼は、その機械的特性値として、下記式(2):

0036

0037

を満たすものである。
上記化学成分組成を有する鋼であって、かかる機械的特性値を備えた鋼は、これまで見当たらない。非調質とは、軟質化焼鈍や焼入れ焼戻し処理などの熱処理を省略して、伸線や鍛造などの加工効果により強度を付与した鋼製品をいう。非調質の鋼製品としては、例えば、初期断面からの減面率が10%以上である鋼製品とする。

0038

供試材の製造方法>
次に、本発明の鋼を得るための供試材の製造方法を説明する。
[素材(0.1%C−2%Si−5%Mn鋼)の熱間塑性加工条件]
素材の熱間における塑性加工方式としては、工業的に行われている厚鋼板製造ラインにおける平ロール圧延極厚鋼板製造ラインにおける鍛造、棒鋼又は鋼線材製造ラインにおける溝ロール圧延、及び条鋼又は形鋼製造ラインにおける形ロール圧延の内のいずれであってもよい。これらいずれかの加工方式により、素材に対して所望の塑性相当ひずみを与える。

0039

上記の加工方式により、素材に導入される圧縮ひずみせん断ひずみ入り方は異なる。そこで、全応力成分や全ひずみ成分の量や分布に関して理論的塑性ひずみを算出する方法として、有限要素法(finite element methode:FEM)がある。塑性ひずみの計算については、参考文献(海佳三郎、他「有限要素法入門」(共立出版(株):1990年3月15日)に詳述されている。しかしここでは、工業的に簡便に用いることができる塑性相当ひずみを用いてもよい。有限要素法計算で得られる塑性ひずみを用いれば一層望ましいが、ここでは工業的に簡便な、下記式(3)で定義される塑性相当ひずみ(e)を塑性ひずみの指標とする。

0040

0041

ただし、Rは減面率(%)であり、素材のC方向断面積をS0とし、熱間加工後のC方向断面積をSとすると、下記式(4)で表される。

0042

0043

後述する実施例1の試験において、前記化学成分組成範囲内にある0.1%C−2%Si−5%Mnの95mm角鋼塊(素材)を1200℃で60分加熱後、38mm角まで鍛造圧縮したときに得られた組織は、主相がほぼ100体積%マルテンサイトから成り、HV>400であった。

0044

以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、下記の実施例によって制限されず、前記及び後記の趣旨に適合し得る範囲で適切な改変を行って実施することも可能であり、これらはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれる。

0045

<実施例1、2>
図2は高強度鋼の調製方法を説明する流れ図である。実施例1、2と比較例1、2、3および4における本願発明に係る高強度鋼の調製方法を、図2の概略調製工程図に基づき以下、詳細に説明する。

0046

[実施例1、2の供試材調整:素材を熱間鍛造]
まず、溶解用主原料として電解鉄電解Mn及び金属Siを準備する(S100)。次に、高周波真空誘導溶解炉を用いて、溶解用主原料を溶製して、縦95mm×横95mm×高さ450mmの鋼塊に鋳造する(S102)。この鋳造した鋼塊を本発明の高強度鋼の素材とした。素材の化学成分組成を表1に示す。実施例1、2の炭素濃度は0.2、0.3mass%、比較例1〜4の炭素濃度は0.05、0.075、0.125、0.15mass%と変化させてあるが、シリカは1.96mass%、マンガンは5.02mass%で共通である。リン硫黄アルミニューム酸素窒素に関しても、実施例1、2と比較例1〜4で、共通の濃度としている。

0047

0048

次に、上記95mm角の素材(鋼塊)を加熱昇温し、1200℃で1時間加熱保持する(S104)。この後、縦95mm×横95mmの角形状断面の素材に対して、途中で再加熱することなく縦と横とを交互に1回ずつセットのプレス鍛造を6セット行ない、縦38mm×横38mmの角形状断面(38mm角という。以降、これに準じた表記をすることがある)まで鍛造し、そして最後に材料全体を直線状に矯正して、38mm角の棒材とした(S106)。この熱間鍛造において、95mm角から38mm角に至る減面率(R)は、R=84.0%であり、塑性相当ひずみ(e)は、e=1.83であり、鍛造終了温度は680℃であった。その後直ちに空冷し、室温まで冷却して、棒材とした(S108)。

0049

ここで、減面率(R)及び塑性相当ひずみ(e)は、下記式(5)及び(6)式で算出した。S0は素材の圧延に垂直方向(C方向)の断面積であり、Sは熱間鍛造後の圧延に垂直方向(C方向)の断面積である。

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この熱間鍛造により得られた38mm角の棒材のミクロ組織は、主相が95体積%以上を占めるラスマルテンサイトであった。この組織状態において、硬度HV400以上であった。この棒鋼をベース材として15mm角の棒を切り出し、高強度鋼の製造プロセスの供試材とした。

0053

機械的試験結果を図3から図5にまとめてある。図3はC濃度を0.20〜0.30mass%まで変化させた鋼の引張特性の比較図、図4は本発明の比較例として、C濃度を0.05〜0.20mass%まで変化させた鋼の引張特性の比較図である。図5は、図3図4におけるC濃度と鋼の引張強度から回帰式を求める図である。当業者図3を参照すれば、C濃度の違いによる応力−歪曲線は基本的な曲線の形が相似であり、単にC量が増すに従いその位置を高めている挙動をしめすことが、了解される。図5に基づく回帰式は下記式(7)の通りである。

0054

実施例

0055

これらの図より、本発明の高強度鋼によれば、NiやMoのような高価な合金元素無しの通常の鋼組成において、C濃度を変化させるのみで、延性を一定レベル(TE:13〜15%)で保ったまま強度をTS1800MPa〜2160MPaまで可変可能とする優れた機械的バランス性質を備えた鋼が得られる。

0056

本発明の高強度鋼は、延性一定(13〜15%)のまま、強度レベルをTS(最大応力)で1800MPa〜2160MPaまで変化させるという強度-延性バランス変化を達成できるため、建造物や橋梁等の構造物、自動車の足回り鋼、機械用歯車等部品に使用される厚鋼板や棒鋼・鋼線等の非調質鋼に用いて好適である。
本発明の高強度鋼の製造方法は、鋼の組成が安価なMn及びSiを添加した低C鋼を基準とし、MoやNi等の高価な合金元素の添加は不要であると共に、通常の製鋼所に設けられている既設の圧延設備のままで、特段の焼鈍処理を施さなくても組織の制御ができ、設備投資額が少なくて済むため、価格競争力の高い高強度鋼が製造できる。

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