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技術 STAM1ノックアウト老化促進モデルマウス

出願人 村田亮
発明者 村田和子
出願日 2013年7月3日 (8年0ヶ月経過) 出願番号 2013-139462
公開日 2015年1月22日 (6年5ヶ月経過) 公開番号 2015-012808
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 特有な方法による材料の調査、分析 化合物または医薬の治療活性 酵素、微生物を含む測定、試験 突然変異または遺伝子工学 蛋白脂質酵素含有:その他の医薬 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖 微生物、その培養処理
主要キーワード 空間認知 消化器系臓器 研究課題 雌雄とも 行動解析 X連鎖 遺伝子変異マウス 相互交配
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

治療薬診断薬スクリーニング老化研究に用いることができる非ヒト動物細胞の老化モデルを提供することにある。

解決手段

STAM1遺伝子のノックアウトマウスが、骨粗鬆症様の症状を呈することから、詳細に解析した結果、骨の異常のみではなく、胸腺萎縮等、老化に伴う様々な症状を有することが明らかとなった。そこで、STAM1ノックアウトマウス、STAM1発現調節細胞を、治療薬、診断薬のスクリーニング、老化研究に用いる老化モデルとして提供する。

概要

背景

STAM(signal transducing adapter molecule)1は、X連鎖重症複合免疫不全症(XSCID)の原因遺伝子であるサイトカイン共通受容体γc鎖に会合するJak3キナーゼ基質分子として単離同定された。STAM1は、STAM2とともにSTAMファミリーを形成し、SH3領域やITAM領域を含むチロシンクラスター領域、さらにN末側にNPF(Asn-Pro-Phe)モチーフを有している。ITAM領域を介してチロシンキナーゼであるJak2やJak3と会合することから、シグナル伝達系関与することが示唆され、実際にin vitroの実験系でIL−2及びGMCSFを介したシグナル伝達経路の調節に関与することが示された(非特許文献1)。

しかしながら、これらin vitroの実験系の結果から予測されることとは異なり、STAM1を遺伝子操作によりノックアウトしたマウスでは、骨髄脾臓胸腺でのT細胞B細胞分化成熟を4週齢解析したところ、何ら異常は見られなかった。さらに、STAM1ノックアウトマウスは、生下時は野生型マウスと明らかな差異はないものの3週齢より発育遅滞が明らかとなり、5週齢以降体重の増加が認められず、その後、6週齢以降死亡するマウスが現れ、平均70日程度で死亡し、24週齢までに全例死亡することが示されている(非特許文献2)。

また、病理組織学的な解析から、大脳海馬のCA3領域の錐体細胞層脱落することが明らかになった。STAM1ノックアウトマウスと野生型マウスは、生後3週齢まではCA3錐体細胞に明らかな差異は認められないが、5~7週齢では、錐体細胞数が野生型に比べ明らかに減少し、9週齢ではほとんどの錐体細胞が脱落していた。

このようにSTAM1ノックアウトマウス作製時には、該マウスの特徴として、大脳海馬CA3領域の異常、発育遅滞、早期に死亡するということが挙げられていた。

本発明者は、その後の詳細な研究からSTAM1ノックアウトマウスには、先に得られていた上記のような海馬CA3領域での異常知見の他に、骨密度等、骨の形成異常が見られることを見出した。そして、早くから骨粗鬆症様の疾患を呈するという知見に基づき、さらに組織を詳細に解析した結果、胸腺や脾臓の萎縮等、老化に伴う現象が5週齢前後の非常に早い時期から見られることがわかった。また、運動機能障害腎機能の低下等、老化とともに現れる諸現象も早期から現れることを見出した。

概要

治療薬診断薬スクリーニング、老化研究に用いることができる非ヒト動物、細胞の老化モデルを提供することにある。STAM1遺伝子のノックアウトマウスが、骨粗鬆症様の症状を呈することから、詳細に解析した結果、骨の異常のみではなく、胸腺萎縮等、老化に伴う様々な症状を有することが明らかとなった。そこで、STAM1ノックアウトマウス、STAM1発現調節細胞を、治療薬、診断薬のスクリーニング、老化研究に用いる老化モデルとして提供する。

目的

本発明の課題は、かかる発見に基づき、STAM1遺伝子を染色体上で欠損させたモデル非ヒト動物、特にマウスモデル、すなわちSTAM1ノックアウトマウスを老化のモデルとして、治療薬、診断薬のスクリーニングに利用する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

STAM1遺伝子機能染色体上で欠損させたことを特徴とする老化モデル非ヒト動物

請求項2

非ヒト動物マウスであることを特徴とする請求項1に記載の老化モデル非ヒト動物。

請求項3

請求項1又は2記載の老化モデル非ヒト動物において、老化とは、骨粗鬆症生殖細胞機能障害胸腺脾臓リンパ萎縮皮膚萎縮皮下脂肪消失運動機能障害記憶障害をいうことを特徴とする老化モデル非ヒト動物。

請求項4

加齢に伴う現象老化抑制物質の効果を解析するために用いるSTAM1遺伝子機能を欠損している、あるいは調節可能な老化モデル培養細胞

請求項5

請求項1〜3いずれか1項記載の老化モデル非ヒト動物、又は請求項4に記載の老化モデル培養細胞に被験物質投与することを特徴とする老化抑制物質スクリーニング方法

請求項6

請求項1〜3いずれか1項記載の老化モデル非ヒト動物に被験物質を投与し、骨粗鬆症、生殖細胞の成熟障害、胸腺・脾臓・リンパの萎縮、皮膚萎縮、皮下脂肪消失、運動機能障害、記憶障害を抑制する物質をスクリーニングする方法。

請求項7

請求項1〜3いずれか1項に記載の老化モデル非ヒト動物、又は請求項4に記載の老化モデル培養細胞に被験物質を投与することを特徴とする骨粗鬆症治療薬スクリーニング方法。

請求項8

STAM1を正常に発現する非ヒト動物又は細胞株に被験物質を投与し、STAM1発現を指標とする老化抑制物質スクリーニング方法。

技術分野

0001

本発明は、STAM1の遺伝子をノックアウトした非ヒトモデル動物、及びSTAM1遺伝子の機能を染色体上で欠損させた細胞、あるいは発現を調節した系を用いた老化物質スクリーニング方法、及びこれら遺伝子機能の欠損に起因する疾患の診断方法に関する。

背景技術

0002

STAM(signal transducing adapter molecule)1は、X連鎖重症複合免疫不全症(XSCID)の原因遺伝子であるサイトカイン共通受容体γc鎖に会合するJak3キナーゼ基質分子として単離同定された。STAM1は、STAM2とともにSTAMファミリーを形成し、SH3領域やITAM領域を含むチロシンクラスター領域、さらにN末側にNPF(Asn-Pro-Phe)モチーフを有している。ITAM領域を介してチロシンキナーゼであるJak2やJak3と会合することから、シグナル伝達系関与することが示唆され、実際にin vitroの実験系でIL−2及びGMCSFを介したシグナル伝達経路の調節に関与することが示された(非特許文献1)。

0003

しかしながら、これらin vitroの実験系の結果から予測されることとは異なり、STAM1を遺伝子操作によりノックアウトしたマウスでは、骨髄脾臓胸腺でのT細胞やB細胞分化成熟を4週齢解析したところ、何ら異常は見られなかった。さらに、STAM1ノックアウトマウスは、生下時は野生型マウスと明らかな差異はないものの3週齢より発育遅滞が明らかとなり、5週齢以降体重の増加が認められず、その後、6週齢以降死亡するマウスが現れ、平均70日程度で死亡し、24週齢までに全例死亡することが示されている(非特許文献2)。

0004

また、病理組織学的な解析から、大脳海馬のCA3領域の錐体細胞層脱落することが明らかになった。STAM1ノックアウトマウスと野生型マウスは、生後3週齢まではCA3錐体細胞に明らかな差異は認められないが、5~7週齢では、錐体細胞数が野生型に比べ明らかに減少し、9週齢ではほとんどの錐体細胞が脱落していた。

0005

このようにSTAM1ノックアウトマウス作製時には、該マウスの特徴として、大脳海馬CA3領域の異常、発育遅滞、早期に死亡するということが挙げられていた。

0006

本発明者は、その後の詳細な研究からSTAM1ノックアウトマウスには、先に得られていた上記のような海馬CA3領域での異常知見の他に、骨密度等、骨の形成異常が見られることを見出した。そして、早くから骨粗鬆症様の疾患を呈するという知見に基づき、さらに組織を詳細に解析した結果、胸腺や脾臓の萎縮等、老化に伴う現象が5週齢前後の非常に早い時期から見られることがわかった。また、運動機能障害腎機能の低下等、老化とともに現れる諸現象も早期から現れることを見出した。

先行技術

0007

Takeshita T., Biochem Biophys Res Commun. 1996, Vol. 225(3), p.1035-1039.
Yamada M. et al.,,Mol Cell Biol. 2001, Vol. 21(11), p.3807-3819
Kuro-o M., et al., Nature. 1997, Vol. 390(6655), p.45-51

発明が解決しようとする課題

0008

本発明の課題は、かかる発見に基づき、STAM1遺伝子を染色体上で欠損させたモデル非ヒト動物、特にマウスモデル、すなわちSTAM1ノックアウトマウスを老化のモデルとして、治療薬診断薬スクリーニングに利用する方法を提供することにある。また、STAM1ノックアウトマウスのみでなく、STAM1欠損細胞、STAM1を抑制あるいは過剰に発現させた細胞系を治療薬、診断薬の開発に利用する方法を提供することにある。

0009

老化に伴う疾患は、高齢化社会において様々な問題を引き起こしており、老化に伴う疾患を治療するための新薬の開発が望まれている。今までに老化のマウスモデルとしては、Klotho遺伝子を欠損させたマウスが知られている。

0010

Klothoノックアウトマウスは、島らにより単一遺伝子欠損により多彩なヒト老化症状を呈する遺伝子変異マウスとして報告されている(非特許文献3)。Klotho遺伝子をノックアウトしたマウスは、パーキンソン様の運動障害、骨粗鬆症、生殖細胞の成熟障害、胸腺の萎縮等、老化に伴って生じる様々な疾患が早期に現れ、平均60日程度で死亡する。

0011

今回、本発明者によって見出されたSTAM1ノックアウトマウスにおける早老現象は骨粗鬆症様の病態、生殖細胞の成熟障害等、Klothoマウスと多くの類似点を有するものの、本発明のモデルマウス動脈硬化を生じない等相違点も多い。このことは、STAM1遺伝子の欠損による早老現象は、Klotho遺伝子の欠損による早老現象とは異なる経路によるものであることを示唆している。したがって、STAM1遺伝子を欠損したモデル動物、また、STAM1遺伝子発現を制御した細胞系を用いることによって、Klothoマウスを用いた場合とは異なる経路による老化現象の研究が可能である。それにより、老化を抑制する新たな化合物をスクリーニングすること、老化に伴う症状を診断する新たな診断方法の確立が可能となる。

課題を解決するための手段

0012

本発明者は、STAM1遺伝子を染色体上で欠損させたSTAM1ノックアウトマウスを用いてSTAM1の生理的機能解明するために鋭意研究を進め、STAM1ノックアウトマウスが骨に異常をきたしていることを新たに見出した。そして、病理組織学的解析、生化学的解析を行った結果、骨の異常だけではなく老化に伴って発症する様々な異常を有することを見出し、本発明を完成するに至った。

0013

すなわち、本発明は、STAM1遺伝子機能を染色体上で欠損させた老化モデル非ヒト動物、特にSTAM1ノックアウトマウスに関する。本発明で、老化とは骨粗鬆症、生殖細胞の機能障害、胸腺・脾臓・リンパ節の萎縮、皮膚萎縮皮下脂肪消失、運動機能障害、記憶障害をさす。

0014

本発明のSTAM1ノックアウト非ヒト動物、すなわちSTAM1ノックアウトマウスは、骨粗鬆症等、上記の加齢に伴う現象を早期から表現型として有する。したがって、STAM1ノックアウト非ヒト動物、特にSTAM1ノックアウトマウスを老化のモデル動物として用い、老化現象に関する解析を行うことが可能である。本モデル動物を用いることにより、複雑な生理現象の結果である「老化」を遺伝子レベルで捉え、解析することが可能となる。

0015

本発明は、加齢に伴う現象や老化抑制物質の効果を解析するために用いるSTAM1遺伝子機能を欠損、あるいは調節可能な培養細胞であることを特徴とする。

0016

STAM1遺伝子発現を欠損させることにより、マウスモデルで早老現象が生じることから、培養細胞でSTAM1遺伝子機能を欠損、あるいはsiRNA等により、STAM1発現を消失させる系を用いることによって、STAM1と早老現象の関連を分子レベルで解析することが可能となる。

0017

さらに、本発明は、本発明の老化モデル非ヒト動物、又は培養細胞系に被験物質投与することを特徴とする老化抑制物質、特に骨粗鬆症薬のスクリーニング方法であることを特徴とする。

0018

STAM1ノックアウトマウスの表現型である、骨粗鬆症、胸腺等の萎縮を老化の指標として、あるいは、培養細胞系では下流のシグナル伝達系の解析等により老化に伴う諸現象を抑制する化合物のスクリーニングを行うことが可能となる。特に、本マウス骨量骨塩量、骨密度いずれも雌雄で差がなく低下しており、原発性骨粗鬆症の研究や治療薬の探索に有効である。骨粗鬆症は、X線非侵襲的な診断方法により検査が可能であることから、モデル動物にスクリーニング化合物を投与しながら、経時的に観察、解析することが可能であり、個体レベルで化合物の投薬効果を観察するのに適している。

0019

また、これら老化モデル非ヒト動物だけではなく、STAM1欠損細胞株等、STAM1発現を調節した細胞株、あるいはSTAM1発現を指標に老化抑制物質のスクリーニングを行うことが可能である。培養細胞系を用いることにより、より多くの化合物のスクリーニングが可能となることから、老化を抑制する候補化合物一次スクリーニングを効果的に行うことが可能である。

0020

STAM1欠損細胞株では、エンドサイトーシスされた分子の分解遅延が見られることが知られている。そこで、エンドサイトーシスされた分子の分解速度を指標として、老化抑制物質のスクリーニングを行うことが可能である。細胞株を用いることによって、簡便に多くの老化を抑制する候補化合物の一次スクリーニングを行うことができる。

0021

また、本発明は、STAM1を正常に発現する非ヒト動物又は細胞株に被験物質を投与し、STAM1発現を指標とする老化抑制物質スクリーニング方法であることを特徴とする。

0022

STAM1欠損によって老化が促進されることから、STAM1を正常に発現、あるいは強制発現させている培養細胞において、STAM1発現を調節する物質をスクリーニングすることによって、老化を調節する化合物をスクリーニングすることが可能である。

図面の簡単な説明

0023

野生型(WT)及びSTAM1ノックアウトマウス(KO)の大腿骨CT画像を示す。
CT画像から算出した骨塩量、骨面積、骨密度を野生型及びSTAM1ノックアウトマウスで比較した図。(A)は♂、(B)は♀の結果を示す。
野生型及びSTAM1ノックアウトマウスの病理組織学的解析。(A)精巣、(B)前立腺、(C)卵巣、(D)子宮
野生型及びSTAM1ノックアウトマウスの皮膚の病理組織学的解析。
野生型及びSTAM1ノックアウトマウスの血液の生化学的解析。
野生型及びSTAM1ノックアウトマウスの記憶行動解析
野生型及びSTAM1ノックアウトマウスの破骨細胞分化解析。

実施例

0024

本発明の老化モデル非ヒト動物とは、STAM1遺伝子の機能を染色体上で欠損させたモデル動物であり、出生後早い時期に骨密度の低下、骨量の低下等を伴う骨粗鬆症様の症状や、胸腺、脾臓、リンパの萎縮、皮膚萎縮、皮下脂肪消失等、老化に伴う症状を呈する非ヒト動物をいう。

0025

また、上記STAM1遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物とは、STAM1をコードする非ヒト動物の遺伝子の全部、又は一部が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、生理的機能を有するSTAM1発現を失った非ヒト動物をいう。

0026

本発明における非ヒト動物としては、マウス、ラット等のげっ歯目動物を具体的に上げることができるが、これらに限定されるものではない。

0027

以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら例示に限定されるものではない。

0028

(実施例)
〔STAM1ノックアウトマウスの作製方法
本発明で用いたSTAM1ノックアウトマウスの作成方法は非特許文献2に詳細を開示しているが、以下に簡単に説明する。また、STAM1の発現を欠失させるようなゲノム構造であれば、これに限ることはなくどのようなものであってもよい。

0029

STAM1cDNAの5’領域をプローブとして、λFixIIマウス129/Svゲノムライブラリ(Stratagene)をスクリーニングすることによって、STAM1遺伝子のゲノムDNAを単離した。ターゲッティングベクターは、loxP遺伝子ポリデニレーション部位のないジフテリア毒素A鎖を備えたpGK−neoカセットを用いて構築された。このコンストラクトを129/Svゲノムライブラリに由来するエクソン3と4を含む0.6−kbのPstI−PstIゲノム断片を置き換えた。コンストラクトはエレクトロポレーションで129/Sv由来のJ1ES細胞に導入し、G418で選択した。相同組換えの有無をSourthern blotで解析し、4つのESクローンを同定した。選択した上記ES細胞をC57BL/6の胚盤胞注入し、キメラマウスを得るために仮親に移植した。得られた雄のキメラマウスはC57BL/6のメス交配し、STAM1突然変異ヘテロ接合で有するF1マウスをSourthern blotで同定し、相互交配ホモ接合のF2を得た。F2マウスの遺伝子型はSourthern blotとPCRによって確認した。

0030

〔STAM1ノックアウトマウスの表現型解析
(1)外見解剖所見
すでに本発明者らにより、開示されているように、STAM1ノックアウトマウスは、3〜4週齢までは正常に成長するが、その後、成長遅延が明らかとなる。5週齢のマウスでは、野生型に比べ平均2/3程度の体重しかない。また、行動も徐々に不活発となり、衰弱し、10週齢で半数のマウスが死亡する。死亡時は成長遅延が見られるものの外見は正常である。また、成長遅延、衰弱死は雌雄の差なく現れる(非特許文献2)。

0031

本発明者は、STAM1ノックアウトマウスに骨の形態異常を新たに認めたことから、発育遅延が明らかとなる5週齢以降のマウスを解剖し、詳細に観察を行った。その結果、解剖時の所見としては、発育初期には胸腺は正常であるが、週齢を経るとともに萎縮が観察され、6〜9週齢ではかろうじて存在が確認できる程度となることが新たに明らかとなった。胸腺の萎縮は、マウスだけではなく、ヒトを含む哺乳動物で老化時に広く認められる現象であり、本マウスの老化表現型の特徴である。

0032

また、子宮、卵巣も外観上の明らかな萎縮が見られる。生殖器のこのような変化も老化に伴う現象の1つである。

0033

次に、各器官についての詳細な解析結果に関して述べる。

0034

(2)骨
[方法]
骨の解析は、マイクロフォーカスX線CTスキャナーを用いた断層画像撮影により行った。8週齢のマウスの大腿骨の断層画像をもとに、骨塩量、骨面積、骨密度を算出した。

0035

[結果]
図1に示すのは、8週齢の野生型(WT)、又はSTAM1ノックアウトマウス(KO)の大腿骨のCTスキャナーによる断層画像写真である。

0036

雌雄ともにSTAM1ノックアウトマウスは、骨の発達が悪く、骨の径が小さいことが観察される。骨の径は、STAM1ノックアウトマウスでは、野生型に比べ、約85%程度の太さしかない。また、骨断面を観察するとSTAM1ノックアウトマウスでは皮質骨が薄くなっている。

0037

さらに、ここでは、図示しないが、軟X線写真を用いて解析したところ、骨幹部の長さが短くなっている。8週齢のマウスで比較したところ野生型では骨の長さが平均1.4cmであるのに対し、STAM1ノックアウトマウスでは平均1.0cmと約70%の長さしかない。

0038

また、図2は、マイクロフォーカスX線CTスキャナーにより算出した骨塩量、骨面積、骨密度を示している。STAM1ノックアウトマウスと野生型の骨塩量を比較すると、STAM1ノックアウトマウスの雄では60%程度、雌では40%程度しかなく、著しく減少していることが観察される。また、骨面積に関しても、STAM1ノックアウトマウスは、雄では野生型の80%程度、雌では60%程度、骨密度については雄、雌ともに約70%程度しかなく、顕著な減少が観察される。

0039

上記骨の形成異常は雌雄ともに認められることから、原発性骨粗鬆症の研究や治療薬の探索に用いることができる。

0040

(3)器官の病理組織学的解析
[方法]
マウスは脱血後、10%フォルムアルデヒドPBSで固定した。各組織はパラフィン包埋し、5〜10μmの厚さにミクロトーム薄切した。5μmの組織切片ヘマトキシリンエオシンHE)染色を行い、顕微鏡観察により解析した。

0041

[結果]
(3−1)脳
脳組織に関しては3週齢までは、野生型、STAM1ノックアウトマウスともにほとんど差が認められないが、5〜7週齢のSTAM1ノックアウトマウスで多くのCA3領域の錐体細胞層の脱落が見られる(非特許文献2参照。)。
(3−2)生殖器
雄の生殖器は、精巣、前立腺ともに成熟阻害が観察される(図3(A)、(B))。精巣の萎縮は認められるものの精細管の萎縮は認められない。また、精子形成の低下が観察される。

0042

雌では、卵巣、子宮の著しい萎縮が観察される(図3(C)、(D))。STAM1ノックアウトマウスの卵巣には卵胞は観察されるものの、いずれも野生型マウスの卵巣内の卵胞と比較して小さく、成熟状態は不明である。子宮は、野生型マウスに比べ、子宮壁が薄く、発情休止期状態にある。

0043

(3−3)胸腺
雌のSTAM1ノックアウトマウスの胸腺は、6〜9週齢で萎縮が著しく、痕跡を含めて胸腺組織自体の確認ができなかった。これに対し、雄の胸腺は非常に萎縮していることが観察されたが、8週齢でも存在が確認できた。5週齢以下の幼若マウスでは、胸腺は野生型と差異がなく、T細胞も正常に分化していることが確認されていることから、5週齢以降、急激に胸腺の萎縮が起こるものと考えられる。なお、胸腺の萎縮に関する雌雄の差が何に由来するかが不明である。8週齢雄の胸腺の病理検査の結果、ノックアウトマウスでは著しい胸腺萎縮は認められるものの、組織構造の違いは認められなかった。

0044

(3−4)脾臓・リンパ節
STAM1ノックアウトマウスでは、脾臓、リンパ節の顕著な萎縮が認められる。白脾髄赤脾髄ともに、顕著な萎縮が観察される。

0045

(3−5)皮膚
図4に示すように、STAM1ノックアウトマウスでは、皮膚構造菲薄化しているが、表皮層には違いは認められない。表皮より下層の組織構造に野生型との違いが認められ、STAM1ノックアウトマウスでは、真皮下に数層の未熟脂肪細胞が存在するのみであり、皮下組織における脂肪の発達が認められない。

0046

(3−6)その他
肝臓胆嚢腎臓副腎甲状腺臓器の大きさが野生型に比べ小さいが、細胞の大きさ、組織構造の違い、病変等は認められなかった。心臓は、臓器全体及び心筋細胞は小さいが組織構造に違いは認められなかった。
、及び唾液腺小腸大腸すい臓等の消化器系臓器において、違い及び病変は認められない。また、組織の石灰化ならびに動脈硬化病変は認められなかった。

0047

(4)血液の生化学的検査
[方法]
7〜9週齢のマウスの血液を自動分析機により血液検査を行った。
[結果]
液中の成分について生化学的検査を行った。血液中の尿素窒素(BUN)、カルシウム(Ca)、無機リン(IP)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素AST)、アミラーゼAMY)、総コレステロール(T−CHO)、中性脂肪(TG)、血糖値(BUN)の測定を行った。図5に結果を示す。

0048

STAM1ノックアウトマウスでは尿素窒素(BUN)の増加、及び血糖値(BUN)の低下が顕著である。一般に尿素窒素が正常値よりも高い場合には、腎不全が疑われる。また、血糖値の低下も認められ、副腎皮質機能低下も生じているものと考えられる。この結果は、組織学的には腎臓の異常は認められないものの、肉眼所見で腎臓の萎縮が認められるという解剖所見と良く一致している。

0049

また、血中のCa濃度が、ノックアウトマウスで減少していることが認められるが、無機リン濃度は野生型と同程度である。Klothoノックアウトマウスでは、血中のCa濃度、無機リンの濃度ともに増加していることが報告されており、この点でも本発明のSTAM1ノックアウトマウスと大きく相違する。STAM1ノックアウトマウス、Klothoノックアウトマウス両者ともに骨粗鬆症様の症状を呈しているものの、Ca代謝を示す血液検査の結果は異なっており、骨粗鬆症を引き起こす経路は違うものと考えられる。したがって、STAM1老化モデルを用いることによって、Klothoノックアウトマウスとは異なる治療薬、診断薬のスクリーニングが可能になると考えられる。

0050

(5)運動機能
[方法]
運動機能を測定するために、7〜8週齢のマウスを用いて野生型、ノックアウトマウスの平均の歩幅を測定した。歩幅はマウスの前足インクを付け、紙の上を自由に歩かせ、歩幅の平均を算出した。

0051

[結果]
野生型マウスの歩幅は平均30mmであるのに対し、ノックアウトマウスでは平均19mmと2/3以下の歩幅であった。ノックアウトマウスの体型が小さいことを考慮にいれても、運動機能が劣っているものと認められる。

0052

(6)記憶
[方法]
7〜8週齢のマウスを用いて空間認知・記憶の指標となるY−迷路試験を行った。マウスをY字型の装置の中に置き、8分間にわたって迷路内を自由に探索させて、マウスが移動したアーム順番通りに記録し、3回連続して異なるアームへ進入した回数をアームへの総進入回数から1を引いた値で除したのち、100を乗ずることで交替行動率(alternation behavior(%))を求めた。

0053

[結果]
交替行動率は、野生型マウスで75%であったのに対し、STAM1ノックアウトマウスでは55%で、野生型マウスに比較して空間認知・記憶力の低下が観察された(図6)。

0054

STAM1ノックアウトマウスに見られる運動機能障害は、興奮症状であり、運動能力の低下ではない。したがって、探索行動そのものが低下しているわけではなく、上記結果は空間作業記憶が低下していることを示している。また、上記結果が海馬CA3領域の脱落とどのような関連があるかは、今後の研究課題である。

0055

上記説明してきたとおり、STAM1ノックアウトマウスは、非常に早期から老化に伴う諸症状が多発する。老化促進マウスとして先に発表されているKlothoマウスの表現型とは、いくつかの点で類似するものの、異なる点も多い。表1にSTAM1ノックアウトマウスと、Klothoノックアウトマウスの表現型を比較する。

0056

0057

表1に見られるように、骨粗鬆症様の症状や、胸腺の萎縮等、老化に伴う現象がSTAM1ノックアウトマウス、Klothoノックアウトマウス両者で共通に観察される。しかしながら、生化学的検査結果等を参照すると、例えば血中のCa濃度等、Ca代謝を示す検査値等に相違が見られることから、骨粗鬆症をはじめとする老化現象を引き起こす経路は異なっているものと考えられる。したがって、治療薬のスクリーニング等に用いれば、異なる治療薬を探索できる可能性が高い。

0058

(7)細胞を用いた解析
破骨細胞分化
[方法]
7〜8週齢のマウスの骨髄細胞採取し、in vitro の系において、10%FCS含有MEMα培地にM−CSFとRANK Ligandを添加・培養して、破骨細胞へ分化させた。破骨細胞はTRAP染色にて染色した。

0059

[結果]
図7に示すように、野生型マウスでは破骨細胞分化が観察されたが、STAM1ノックアウトマウスでは多核化は観察されるものの、破骨細胞への分化が不十分であった。また、STAM1ノックアウトマウスにおいては多核の細胞の数も野生型に比較して減少していた。

0060

STAM1ノックアウトマウスでは、上記のように破骨細胞ならびに骨芽細胞の減少が見られ、そして、骨粗鬆症が観察される。このことは、骨代謝全般的に低下していることを示すものであり、この病態は老人性の骨粗鬆症に類似している。

0061

上記のように、STAM1ノックアウトマウスでは、破骨細胞ならびに骨芽細胞の減少が見られることから、in vivo ならびにin vitroの系で骨粗鬆症治療薬のスクリーニングが可能である。

0062

また、骨髄培養細胞のみではなく、STAM1の発現が欠失、減少、増加している細胞を用いることによって、STAM1遺伝子が関与する老化現象を調節する化合物を簡便にスクリーニングすることが可能であることはいうまでもない。

0063

STAM1発現を欠失させた細胞としては、本発明のモデル動物を作成する際に樹立されたES細胞クローンを挙げることができる。また、siRNA等を用いることによって、STAM1発現を減少させることも可能である。遺伝子発現を増強させるには、発現ベクタークローニングされたSTAM1遺伝子を用いて、強制発現させる等、通常の遺伝子工学で用いられる方法によることができる。

0064

本発明のSTAM1遺伝子機能を欠損させたモデル動物は、老化に伴う様々な症状を呈することから老化モデルとして有用である。したがって、本発明の老化モデル動物を老化研究、老化抑制物質のスクリーニングに用いることができる。また、STAM1発現を調節した細胞系を用いることによっても、簡便に老化抑制物質のスクリーニングを行うことができる。

0065

本発明のモデル動物は、先に老化モデル動物として知られているKlothoと表現型で相違する点も有することから、老化を促進する経路が異なるものと考えられる。したがって、Klothoと異なる経路を通して効果を有する薬剤を探索することが可能であると考えられる。

0066

また、本発明のモデルマウスだけではなく、STAM1発現を欠失、減少、増加等、遺伝子やタンパク質の発現を調節した細胞を用いることによって、老化に関与する遺伝子の探索や、化合物のスクリーニングを行うことも可能となる。

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