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技術 高分子電解質組成物、及び、それを用いた、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池

出願人 旭化成株式会社
発明者 宮崎久遠井上祐一
出願日 2014年5月22日 (5年9ヶ月経過) 出願番号 2014-106540
公開日 2015年1月15日 (5年1ヶ月経過) 公開番号 2015-008128
状態 特許登録済
技術分野 高分子組成物 導電材料 無消耗性電極 燃料電池(本体)
主要キーワード ホスフィン酸イオン 自動スクリーン印刷機 フッ素イオン量 オリフィス内径 車両コスト 過酸化水素分解能 無機ウィスカ 金属製フィルター
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課題

耐久性の高い高分子電解質膜電極触媒層膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を得ることができる高分子電解質組成物、並びに、該高分子電解質組成物を用いた、耐久性の高い、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。

解決手段

分子中にフッ素元素を含有する高分子電解質(a)と、金属イオン捕捉能を有する化合物(b)と、を含有する、高分子電解質組成物。

概要

背景

燃料電池は、電池内で、水素メタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換して取り出すものであり、クリーン電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、他と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源家庭用コジェネレーションシステム携帯用発電機等として期待されている。

このような固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層ガス拡散層とが積層されたガス拡散電極プロトン交換膜の両面に接合された膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいうプロトン交換膜は、高分子鎖中にスルホン酸基カルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する組成物からなる膜である。このようなプロトン交換膜に使用される組成物としては、化学的定性の高いナフィオン登録商標デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系プロトン組成物を用いたプロトン交換膜が好適に用いられる。

燃料電池の運転時においては、アノード側のガス拡散電極に燃料(例えば、水素)、カソード側のガス拡散電極に酸化剤(例えば、酸素や空気)がそれぞれ供給され、両電極間外部回路で接続されることにより、燃料電池の作動が実現される。具体的には、水素を燃料とした場合、アノード触媒上で水素が酸化されてプロトンが生じる。このプロトンは、アノード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通った後、プロトン交換膜内を移動し、カソード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通ってカソード触媒上に達する。一方、水素の酸化によりプロトンと同時に生じた電子は、外部回路を通ってカソード側ガス拡散電極に到達する。カソード触媒上では、上記プロトンと酸化剤中の酸素とが反応して水素が生成される。そして、このとき電気エネルギーが取り出される。

この際、プロトン交換膜は、ガスバリア隔壁としての役割も果たす必要がある。プロトン交換膜のガス透過率が高いと、アノード側水素のカソード側へのリーク及びカソード側酸素のアノード側へのリーク、すなわち、クロスリークが発生する。クロスリークが発生すると、いわゆるケミカルショートの状態となって良好な電圧が取り出せなくなるほか、アノード側水素とカソード側酸素が反応して過酸化水素が発生する。この過酸化水素は電池に供給される加湿ガス供給配管等に含まれる微量な金属(Fe、Cr、Ni等のイオン)によって分解され、ヒドロキシラジカル過酸化ラジカルが生成する。これらのラジカルによりプロトン交換膜の劣化が促進されるという問題が生じる。

特に燃料電池自動車の場合、車両コストの削減の観点から、80℃を越えるような高温運転加湿器削減による湿度30%RH以下のような低加湿運転、金属製のバイポーラプレートの使用が見込まれる。上記のような高温低加湿運転を行う場合、耐久性に優れていると言われているパーフルオロ系のプロトン交換膜を隔膜に用いても膜の劣化が加速されるという問題が生じる。また金属製のバイポーラプレートを用いた場合、運転中に徐々に金属(Fe、Cr、Ni等)が溶け出し、溶け出した金属のイオンが過酸化水素の分解を促進し、ラジカル種が生成し、プロトン交換膜の劣化を促進する恐れがある。

上記のようなラジカル種によるプロトン交換膜の劣化を抑制する方法として、高分子電解質膜中金属酸化物(例えば、酸化マンガン酸化コバルト等)を分散配合する方法(例えば、特許文献1参照。)、高分子電解質膜中にヒドロキシラジカルの酸化還元電位よりも低い電位還元剤として働き、かつ、過酸化水素が還元剤として働く酸化還元電位よりも高い電位よりも高い電位で酸化剤として働く酸化還元サイクルを有する化合物(N−ヒドロキシフタルイミド)を配合する方法(例えば、特許文献2参照。)や高分子電解質膜中にラジカルトラップ剤フェノール性水酸基を有する化合物)を配合する方法(例えば、特許文献3参照。)等が開示されている。また過酸化ラジカルを発生させる原因となる金属イオン捕捉することを目的に、固体電解質材料中に金属カチオン遷移金属錯体カチオン、あるいは第4級アンモニウムカチオン等を導入し、これらのカチオンにより高いイオン導電性を呈する超酸化物(O2-)を捕捉含有させ、電解質のイオン伝導性を高める方法(例えば、特許文献4参照。)、高分子電解質材料中に芳香族系のアニオン基からなるイオン錯体を含ませ、そのイオン錯体のアニオン基によりカチオン(H+イオン)を捕捉除去し、アニオン形成の結果としてイオン伝導性を高める方法(例えば、特許文献5参照。)、金属キレート剤を配合する方法(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。

概要

耐久性の高い高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を得ることができる高分子電解質組成物、並びに、該高分子電解質組成物を用いた、耐久性の高い、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。分子中にフッ素元素を含有する高分子電解質(a)と、金属イオン捕捉能を有する化合物(b)と、を含有する、高分子電解質組成物。なし

目的

本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性の高い高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を得ることができる高分子電解質組成物、並びに、該高分子電解質組成物を用いた、耐久性の高い、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

分子中にフッ素元素を含有する高分子電解質(a)と、金属イオン捕捉能を有する化合物(b)と、を含有する、高分子電解質組成物

請求項2

前記化合物(b)が、リン酸化合物ケイ酸化合物、及びカルボキシル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の高分子電解質組成物。

請求項3

前記化合物(b)が、前記高分子電解質(a)とイオン結合を形成する官能基を有する、請求項1及び2に記載の高分子電解質組成物。

請求項4

前記高分子電解質(a)とイオン結合を形成する前記官能基が、窒素原子を有する官能基である、請求項3に記載の高分子電解質組成物。

請求項5

前記リン酸化合物が、ピロリン酸ピロリン酸塩フィチン酸、及びフィチン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つのリン酸化合物を含む、請求項2に記載の高分子電解質組成物。

請求項6

前記ケイ酸化合物が、ケイ酸塩を含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物。

請求項7

前記カルボキシル基を有する化合物が、パーフルオロカーボンカルボン酸化合物を含む、請求項2〜6のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物。

請求項8

ラジカル捕捉剤(c)をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物。

請求項9

請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物を含む、高分子電解質膜

請求項10

請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物を含む、電極触媒層

請求項11

請求項9に記載の高分子電解質膜及び請求項10に記載の電極触媒層を有する、膜電極接合体

請求項12

請求項11に記載の膜電極接合体を有する、固体高分子型燃料電池

技術分野

0001

本発明は、高分子電解質組成物、及び、それを用いた、高分子電解質膜電極触媒層膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池に関する。

背景技術

0002

燃料電池は、電池内で、水素メタノール等を電気化学的に酸化することにより、燃料化学エネルギーを、直接、電気エネルギーに変換して取り出すものであり、クリーン電気エネルギー供給源として注目されている。特に、固体高分子電解質型燃料電池は、他と比較して低温で作動することから、自動車代替動力源家庭用コジェネレーションシステム携帯用発電機等として期待されている。

0003

このような固体高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層とガス拡散層とが積層されたガス拡散電極プロトン交換膜の両面に接合された膜電極接合体を少なくとも備えている。ここでいうプロトン交換膜は、高分子鎖中にスルホン酸基カルボン酸基等の強酸性基を有し、プロトンを選択的に透過する性質を有する組成物からなる膜である。このようなプロトン交換膜に使用される組成物としては、化学的定性の高いナフィオン登録商標デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系プロトン組成物を用いたプロトン交換膜が好適に用いられる。

0004

燃料電池の運転時においては、アノード側のガス拡散電極に燃料(例えば、水素)、カソード側のガス拡散電極に酸化剤(例えば、酸素や空気)がそれぞれ供給され、両電極間外部回路で接続されることにより、燃料電池の作動が実現される。具体的には、水素を燃料とした場合、アノード触媒上で水素が酸化されてプロトンが生じる。このプロトンは、アノード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通った後、プロトン交換膜内を移動し、カソード触媒層内のプロトン伝導性ポリマーを通ってカソード触媒上に達する。一方、水素の酸化によりプロトンと同時に生じた電子は、外部回路を通ってカソード側ガス拡散電極に到達する。カソード触媒上では、上記プロトンと酸化剤中の酸素とが反応して水素が生成される。そして、このとき電気エネルギーが取り出される。

0005

この際、プロトン交換膜は、ガスバリア隔壁としての役割も果たす必要がある。プロトン交換膜のガス透過率が高いと、アノード側水素のカソード側へのリーク及びカソード側酸素のアノード側へのリーク、すなわち、クロスリークが発生する。クロスリークが発生すると、いわゆるケミカルショートの状態となって良好な電圧が取り出せなくなるほか、アノード側水素とカソード側酸素が反応して過酸化水素が発生する。この過酸化水素は電池に供給される加湿ガス供給配管等に含まれる微量な金属(Fe、Cr、Ni等のイオン)によって分解され、ヒドロキシラジカル過酸化ラジカルが生成する。これらのラジカルによりプロトン交換膜の劣化が促進されるという問題が生じる。

0006

特に燃料電池自動車の場合、車両コストの削減の観点から、80℃を越えるような高温運転加湿器削減による湿度30%RH以下のような低加湿運転、金属製のバイポーラプレートの使用が見込まれる。上記のような高温低加湿運転を行う場合、耐久性に優れていると言われているパーフルオロ系のプロトン交換膜を隔膜に用いても膜の劣化が加速されるという問題が生じる。また金属製のバイポーラプレートを用いた場合、運転中に徐々に金属(Fe、Cr、Ni等)が溶け出し、溶け出した金属のイオンが過酸化水素の分解を促進し、ラジカル種が生成し、プロトン交換膜の劣化を促進する恐れがある。

0007

上記のようなラジカル種によるプロトン交換膜の劣化を抑制する方法として、高分子電解質膜中金属酸化物(例えば、酸化マンガン酸化コバルト等)を分散配合する方法(例えば、特許文献1参照。)、高分子電解質膜中にヒドロキシラジカルの酸化還元電位よりも低い電位還元剤として働き、かつ、過酸化水素が還元剤として働く酸化還元電位よりも高い電位よりも高い電位で酸化剤として働く酸化還元サイクルを有する化合物(N−ヒドロキシフタルイミド)を配合する方法(例えば、特許文献2参照。)や高分子電解質膜中にラジカルトラップ剤フェノール性水酸基を有する化合物)を配合する方法(例えば、特許文献3参照。)等が開示されている。また過酸化ラジカルを発生させる原因となる金属イオン捕捉することを目的に、固体電解質材料中に金属カチオン遷移金属錯体カチオン、あるいは第4級アンモニウムカチオン等を導入し、これらのカチオンにより高いイオン導電性を呈する超酸化物(O2-)を捕捉含有させ、電解質のイオン伝導性を高める方法(例えば、特許文献4参照。)、高分子電解質材料中に芳香族系のアニオン基からなるイオン錯体を含ませ、そのイオン錯体のアニオン基によりカチオン(H+イオン)を捕捉除去し、アニオン形成の結果としてイオン伝導性を高める方法(例えば、特許文献5参照。)、金属キレート剤を配合する方法(例えば、特許文献6参照。)が開示されている。

先行技術

0008

特開2001−118591号公報
特開2006−49263号公報
特開2000−223135号公報
特公平8−30276号公報
特表平10−510090号公報
特開2001−223015号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかしながら、上記特許文献1、特許文献2に記載された方法では、過酸化水素分解物質酸性耐熱性が不充分であるために過酸化水素分解能持続性の観点からなお改善の余地がある。特許文献3に開示された方法では、ラジカル捕捉剤がラジカルを捕捉した後に再生しないため、過酸化水素トラップの持続性や添加量の観点からなお改善の余地がある。上記特許文献4、特許文献5に開示された方法では、いずれもイオン交換によりアニオン、あるいはカチオンを捕捉するものであり効果が不十分である。また上記特許文献6に開示された方法では、プロトン交換膜に炭化水素型の高分子電解質を使用しており、化学耐久性に課題がある。

0010

そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性の高い高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を得ることができる高分子電解質組成物、並びに、該高分子電解質組成物を用いた、耐久性の高い、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意検討した結果、プロトン交換膜が分解する原因となるラジカル種の発生源である金属イオンを不活性化することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明をするに至った。

0012

すなわち本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
分子中にフッ素元素を含有する高分子電解質(a)と、金属イオン捕捉能を有する化合物(b)と、を含有する、高分子電解質組成物。
〔2〕
前記化合物(b)が、リン酸化合物ケイ酸化合物、及びカルボキシル基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つである、前項〔1〕に記載の高分子電解質組成物。
〔3〕
前記化合物(b)が、前記高分子電解質(a)とイオン結合を形成する官能基を有する、前項〔1〕及び〔2〕に記載の高分子電解質組成物。
〔4〕
前記高分子電解質(a)とイオン結合を形成する前記官能基が、窒素原子を有する官能基である、前項〔3〕に記載の高分子電解質組成物。
〔5〕
前記リン酸化合物が、ピロリン酸ピロリン酸塩フィチン酸、及びフィチン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一つのリン酸化合物を含む、前項〔2〕に記載の高分子電解質組成物。
〔6〕
前記ケイ酸化合物が、ケイ酸塩を含む、前項〔2〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物。
〔7〕
前記カルボキシル基を有する化合物が、パーフルオロカーボンカルボン酸化合物を含む、前項〔2〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物。
〔8〕
ラジカル捕捉剤(c)をさらに含有する、前項〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物。
〔9〕
前項〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物を含む、高分子電解質膜。
〔10〕
前項〔1〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の高分子電解質組成物を含む、電極触媒層。
〔11〕
前項〔9〕に記載の高分子電解質膜及び前項〔10〕に記載の電極触媒層を有する、膜電極接合体。
〔12〕
前項〔11〕に記載の膜電極接合体を有する、固体高分子型燃料電池。

発明の効果

0013

本発明によれば、耐久性の高い高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を得ることができる高分子電解質組成物、並びに、該高分子電解質組成物を用いた、耐久性の高い、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池を提供することができる。

0014

以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。

0015

〔高分子電解質組成物〕
本実施形態に係る高分子電解質組成物は、
分子中にフッ素元素を含有する高分子電解質(a)と、金属イオン捕捉能を有する化合物(b)と、を含有する。これにより、過酸化水素の分解を促進する金属イオンを不活性化することでラジカル種の発生を抑制することができ、高温低加湿並びに金属イオンが多く発生する運転条件下等でも耐久性に優れる。また、このような高分子電解質組成物を含む、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池も耐久性により優れるものとなる。

0016

〔高分子電解質(a)〕
本実施形態に係る高分子電解質組成物は、分子中にフッ素元素を含有する高分子電解質(a)を含む。高分子電解質(a)としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換基を有する高分子化合物が好ましい。高分子電解質(a)のイオン交換容量は、0.5〜3.0ミリ当量/gが好ましく、0.65〜2.0ミリ当量/gがより好ましく、0.8〜1.5ミリ当量/gがさらに好ましい。イオン交換当量が3.0ミリ当量/g以下であることにより、高分子電解質膜として利用した際に、燃料電池運転中の高温高加湿下における高分子電解質膜の膨潤がより低減される傾向にある。このように膨潤が低減されることにより、高分子電解質膜の強度の低下や、しわが発生して電極から剥離したりするなどの問題、さらには、ガス遮断性が低下する問題を低減できる傾向にある。また、イオン交換容量が0.5ミリ当量/g以上であることにより、得られた高分子電解質膜を備えた燃料電池の発電能力がより向上する傾向にある。なお、イオン交換容量は、実施例に記載の方法により求めることができる。

0017

フッ素元素を含有する高分子電解質(a)としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物、又は、分子内に芳香環を有する、一部がフッ素化された炭化水素系高分子化合物にイオン交換基を導入した化合物などが好ましい。このなかでも、化学的安定性の観点から、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物がより好ましい。

0019

この中でも、分子内に芳香環を有する、一部がフッ素化された炭化水素系高分子化合物としては、特に限定されないが、耐熱性や耐酸化性耐加水分解性の観点から、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルスルホン、ポリチオエーテルケトン、ポリチオエーテルエーテルケトン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾオキサジノン、ポリキシリレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセン、ポリシアノゲン、ポリナフチリジン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミドの分子中の一部がフッ素化された高分子化合物が好ましい。

0020

なお、これらに導入するイオン交換基としては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸基、スルホンイミド基スルホンアミド基、カルボン酸基、リン酸基等が好ましい。このなかでも、特にスルホン酸基が好ましい。

0021

また、イオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂、パーフルオロカーボンスルホンイミド樹脂、パーフルオロカーボンスルホンアミド樹脂、パーフルオロカーボンリン酸樹脂、又はこれら樹脂のアミン塩金属塩等が挙げられる。

0022

パーフルオロカーボン高分子化合物としては、特に限定されないが、より具体的には、下記式[1]で表される重合体が挙げられる。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X4)]g− [1]
(式中、X1、X2及びX3は、互いに独立して、ハロゲン元素又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。a及びgは、0≦a<1、0<g≦1、a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は、互いに独立して、ハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基である。X4はCOOZ、SO3Z、PO3Z2又はPO3HZである。ここで、Zは水素原子アルカリ金属原子アルカリ土類金属原子又はアミン類(NH4、NH3R3、NH2R3R4、NHR3R4R5、NR3R4R5R6)である。またR3、R4、R5及びR6はアルキル基又はアレーン基である。)

0023

中でも、下記式[2]又は式[3]で表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂もしくはその金属塩が好ましい。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF3))b−O−(CF2)c−SO3X)]d− [2]
(式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1である。bは1以上8以下
の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子
である。)
−[CF2CF2]e−[CF2−CF(−O−(CF2)f−SO3Y)]g− [3]
(式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1である。fは0以上10以
下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子である。)

0024

本実施形態において用いられうるイオン交換基を有するパーフルオロカーボン高分子化
合物は、特に限定されないが、例えば、下記式[4]に示される前駆体ポリマー重合した後、アルカリ加水分解酸処理等を行って製造することができる。
−[CF2CX1X2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF2X3))b−Oc−(CFR1)d−(CFR2)e−(CF2)f−X5)]g− [4]
(式中、X1、X2及びX3は、互いに独立して、ハロゲン元素又は炭素数1以上3以下のパーフルオロアルキル基である。a及びgは0≦a<1,0<g≦1,a+g=1である。bは0以上8以下の整数である。cは0又は1である。d及びeは、互いに独立して、0以上6以下の整数である。fは、0以上10以下の整数である。ただし、d+e+fは0に等しくない。R1及びR2は互いに独立して、ハロゲン元素、炭素数1以上10以下のパーフルオロアルキル基又はフルオロクロロアルキル基である。X5はCOOR7、COR8又はSO2R8である。ここで、R7は炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基である。R8はハロゲン元素である。)

0025

上記前駆体ポリマーは、特に限定されないが、例えば、フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物とを共重合させることにより製造することができる。

0026

ここで、フッ化オレフィン化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記化合物等が挙げられる。
CF2=CFZ
(式中、Zは、H、Cl、F、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、又は酸素を含んでいてもよい環状パーフルオロアルキル基を示す。)

0027

また、フッ化ビニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記化合物等が挙げられる。
CF2=CFO(CF2)z−SO2F,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(CF2)z−SO2F,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)z-1−SO2F,
CF2=CFO(CF2)z−CO2R,
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(CF2)z−CO2R,
CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(CF2)2−CO2R
(式中、Zは1〜8の整数を示し、Rは炭素数1〜3の炭化水素系アルキル基を表す。)

0028

フッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物との共重合方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような方法を挙げることができる。

0029

(i)溶液重合
含フッ素炭化水素などの重合溶媒を使用し、この重合溶媒に充填溶解した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンガスとを反応させて重合を行う方法。上記含フッ素炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、トリクロロトリフルオロエタン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフロロペンタンなど、「フロン」と総称される化合物群を好適に使用することができる。

0030

(ii)塊状重合
含フッ素炭化水素などの溶媒を使用せず、フッ化ビニル化合物そのものを重合溶剤として用いてフッ化オレフィン化合物とフッ化ビニル化合物との重合を行う方法。

0031

(iii)乳化重合
界面活性剤水溶液を重合溶媒として用い、この重合溶媒に充填溶解した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンガスとを反応させて重合を行う方法。

0032

(iv)ミニエマルジョン重合、マイクロエマルジョン重合:
界面活性剤及びアルコールなどの助乳化剤の水溶液を用い、この水溶液に充填乳化した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを反応させて重合を行う方法。

0033

(v)懸濁重合
懸濁安定剤の水溶液を用い、この水溶液に充填懸濁した状態でフッ化ビニル化合物とフッ化オレフィンのガスとを反応させて重合を行う方法。

0034

本実施形態の形態においては、前駆体ポリマーの重合度指標としてメルトマスフローレート(以下「MFR」と略称する)を使用することができる。本実施形態において、前駆体ポリマーのMFRは、0.01g/10分以上が好ましく、0.1g/10分以上がより好ましく、0.3g/10分以上がさらに好ましい。MFRの上限は限定されないが、100g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましい。MFRを0.01g/10分以上100g/10分以下とすることにより、高分子電解質組成物の成膜等の成型加工性がより優れる傾向にある。なお、MFRは、JIS K−7210に基づき、270℃、荷重2.16kgf、オリフィス内径2.09mmで測定することができる。

0035

以上のようにして作製された前駆体ポリマーは、塩基性反応液体中で加水分解処理され、温水などで十分に水洗され、酸処理される。この酸処理によってパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂前駆体はプロトン化され、SO3H体となる。

0036

〔金属イオン捕捉能を有する化合物(b)〕
本実施形態に係る高分子電解質組成物は、金属イオン捕捉能を有する化合物(b)を含む。「金属イオン捕捉能」とは、過酸化水素の分解を促進する金属イオンを不活性化する作用をいう。ここで、過酸化水素の分解を促進する金属イオンとは、特に限定されないが、例えば、Fe、Cr、Ni等が挙げられる。このような金属イオン捕捉能を有する化合物(b)としては、特に限定されないが、例えば、リン酸化合物、ケイ酸化合物、及びカルボキシル基を有する化合物を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましい。

0037

(リン酸化合物)
上記リン酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記の化合物が挙げられる。なお、リン酸化合物にはリン酸化合物の塩も含まれるものとする。

0038

(1)リン酸エステル類
リン酸エステル類としては、特に限定されないが、例えば、リン酸エステルホスホン酸エステルホスフィン酸エステル亜リン酸エステルなどのエステル類が挙げられる。より具体的には、リン酸トリメチルリン酸トリエチルリン酸トリブチルリン酸トリオクチルリン酸リボフラビンリン脂質(レチシン等)、デンプンリン酸エステル、リン酸ビタミンC、フィチン酸(IP6:イノシトール六リン酸)、4−アミノベンジルホスホン酸ジメチル、4−アミノベンジルホスホン酸ジエチル、4−アミノベンジルホスホン酸ジプロピル、2−アミノメチルホスホン酸ジメチル、2−アミノメチルホスホン酸ジエチル、2−アミノメチルホスホン酸ジプロピル、フタルイミドメチルホスホン酸ジメチル、フタルイミドメチルホスホン酸ジエチル、フタルイミドメチルホスホン酸ジプロピル、1−ヒドロキシメタン−1、1−ジホスホン酸ジメチル、1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸ジエチル、1−ヒドロキシプロパン−1、1−ジホスホン酸ジプロピルなどがある。これらのエステル類は、加水分解によってFeイオン等と難溶性塩を形成するか、あるいは、キレート能力を有するアニオンを生成する。このなかでも、フィチン酸、及びフィチン酸塩が好ましい。フィチン酸及びその塩は、食品添加物として許容されており、高分子電解質組成物の毒性及び環境負荷の観点により優れる傾向にある。

0039

(2)リン酸基を持つ化合物
リン酸基を持つ化合物としては、特に限定されないが、例えば、オルソリン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、メタリン酸トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、ポリリン酸などのリン酸基を持つ化合物又はこれらの塩が挙げられる。リン酸基(例えば、オルソリン酸イオンPO43-、ピロリン酸イオンP2O74-)は、Feイオン等と難溶性の塩又はキレートを形成するため、フェントン活性を著しく低下することができる。

0040

また、ホスホン酸イオンPO33-、ホスフィン酸イオンPO23-や、リン酸の重合体であるポリリン酸イオンは、Feイオンに配位し、可溶性のキレートを生成して、フリーのFeイオンの濃度(活量)を著しく減ずることができる。この観点から、リン酸基を持つ化合物のなかでも、ピロリン酸、ピロリン酸塩が好ましい。

0041

上記の官能基を持つ具体的な化合物としては、特に限定されないが、例えば、アデノシン一リン酸アデノシン二リン酸アデノシン三リン酸グアノシン一リン酸グアノシン二リン酸グアノシン三リン酸、4−アミノベンジルホスホン酸、ジメチル−4−アミノメチルホスホン酸、2−アミノメチルホスホン酸、ニトリトリス(メチレンホスホン酸)、フタルイミドメチルホスホン酸、4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸及びこれらの化合物の塩が挙げられる。

0042

(3)リン酸化物
リン酸化物としては、特に限定されないが、例えば、P2O5などが挙げられる。これらは、加水分解により、PO43-、P2O72-を生ずる。これらの中でも、食品添加物として許容されているPO43-イオン、P2O74-イオンを発生しうるリン酸化物を用いることが、高分子電解質組成物の毒性及び環境負荷の観点から好ましい。

0043

(ケイ酸化合物)
上記ケイ酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、ケイ酸、若しくは、これを含むヘテロポリ酸(例えば、ケイモリブデン酸ケイタングステン酸)、又は、これらの塩、ゼオライトケイ酸アルミニウムナトリウムアルミノケイ酸塩)が挙げられる。このなかでも、ケイ酸塩が好ましい。Feイオンは、ケイ酸イオン又はケイ素を含むヘテロポリ酸イオン沈殿又はキレートを生成しフェントン反応をおこし難くなる。またゼオライト中ではFeイオンはゼオライトに含まれている金属(例えばナトリウム、カリウム)とイオン交換されることでゼオライト中に取り込まれ、フェントン反応を起こし難くなる傾向にある。

0044

上記ケイ酸化合物としては、特に限定されないが、例えば、後述するように高分子電解質のプロトン伝導基とイオン結合を作る官能基を有する化合物が好ましい。具体的には、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデンプロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物は、アミノ基やウレア基が高分子電解質のプロトン伝導基とイオン結合を形成し固定化され、さらにアルコキシ基が加水分解されることでケイ酸を生じる。ケイ酸イオンによりFeイオンは沈殿又はキレートを生成しフェントン反応をおこし難くなる傾向にある。

0045

(カルボキシル基を有する化合物)
上記カルボキシル基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、以下の化合物が挙げられる。なお、カルボキシル基を有する化合物にはカルボキシル基を有する化合物の塩も含まれるものとする。

0046

(1)ポリアミノカルボン酸
ポリアミノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、EDTAエチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、TTHAトリエチレンテトラアミン六酢酸)、HIDA(ヒドロキシエチルイミノ二酢酸)等のポリアミノカルボン酸又はこれらの塩が挙げられる。ポリアミノカルボン酸は、キレート化剤として用いることができる。

0047

(2) COO-イオンを有する化合物
COO-イオンを有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸無水シュウ酸、シュウ酸二水和物)、没食子酸、又はこれらの塩が挙げられる。アニオンとしてのCOO-イオン(特に、(COO-)2のシュウ酸イオン)は、Feと難溶性の塩を形成しやすく、好ましいアニオンである。これらのアニオンがFeと難溶性の塩を形成することによって、フェントン反応を抑制することができる。特に、食品添加物として許容されている没食子酸イオンは、毒性及び環境負荷の観点から好ましい。

0048

(3)カルボン酸エステル化合物
カルボン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸エステル(例えば、シュウ酸ジメチルシュウ酸ジエチルシュウ酸ジプロピルなど)等が挙げられる。カルボン酸エステル化合物は、加水分解によってFeイオンと難溶性塩を形成するか、あるいは、キレート能力を有するアニオンを生成する。

0049

(4)高分子カルボン酸
高分子カルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、フミン酸タンニン酸などの高分子カルボン酸又はその塩が挙げられる。高分子カルボン酸もFeと難溶性の塩を形成する。

0050

(5)パーフルオロカルボン酸
パーフルオロカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロカルボン酸又はその塩、パーフルオロカーボンカルボン酸化合物が挙げられる。パーフルオロカルボン酸もFeと難溶性の塩を形成する。また、フッ素化合物であることから、電池運転で発生したラジカルへの耐性も高く、長時間にわたり機能を発現することが可能となる傾向にある。

0051

中でも、下記式[5]又は[6]で表されるパーフルオロカーボンカルボン酸樹脂もしくはその金属塩が特に好ましい。
−[CF2CF2]a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF3))b−O−(CF2)c−CO2X)]d− [5]
(式中、a及びdは、0≦a<1、0≦d<1、a+d=1である。bは1以上8以下の整数である。cは0以上10以下の整数である。Xは水素原子又はアルカリ金属原子である。)
−[CF2CF2]e−[CF2−CF(−O−(CF2)f−CO2Y)]g− [6]
(式中、e及びgは、0≦e<1、0≦g<1、e+g=1である。fは0以上10以下の整数である。Yは水素原子又はアルカリ金属原子である。)

0052

(イオン結合を形成する官能基)
上記化合物(b)としては、高分子電解質(a)とイオン結合を形成する官能基を有する化合物が好ましい。化合物(b)が高分子電解質(a)のプロトン伝導基とイオン結合を作ることで、化合物(b)を高分子電解質中に固定化でき、これらの溶出を防ぐことが可能となる。

0053

高分子電解質(a)のプロトン伝導基とイオン結合を形成する官能基としては、特に限定されないが、例えば、窒素原子を有する官能基が好ましい。窒素元素を有する官能基としては、特に限定されないが、具体的には、アミノ基、イミド基、ウレア基、ウレタン基アミド基イミダゾール基ジアゾール基、トリアゾール基チアゾール基、トリアジン基、ウレア基等が挙げられる。このなかでもアミノ基が好ましい。なお、プロトン伝導基は、特に限定されないが、例えば、スルホン酸やリン酸といった酸性基である。窒素原子を有する官能基は塩基性を示す傾向にあるため、窒素原子を有する官能基を有することにより、プロトン伝導基と良好にイオン結合を形成する傾向にある。

0054

化合物(b)の含有量は、高分子電解質(a)と化合物(b)の合計100質量%に対して、好ましくは0.001〜50.000質量%であり、より好ましくは0.005〜20.000質量%、さらに好ましくは0.010〜10.000質量%、よりさらに好ましくは0.100〜5.000質量%、さらにより好ましくは0.100〜2.000質量%である。化合物(b)の含有量が上記の範囲(0.001〜50.000質量%)であることにより、良好なプロトン伝導度を維持したまま、金属イオンを効果的に捕捉し、高耐久性を有する高分子電解質膜、電極触媒層を得ることができる傾向にある。

0055

〔溶媒〕
本実施形態に係る高分子電解質組成物は溶媒を含んでもよい。用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち少なくとも1種以上を含有したものが挙げられる。

0057

溶媒の含有量は、高分子電解質組成物100質量%に対して、50質量%〜98質量%が好ましく、60質量%〜95質量%がより好ましい。溶媒の含有量が50質量%〜98質量%であることにより、沈殿物のない各種材料が均一に分散した高分子電解質組成物を得ることが可能となる傾向にある。

0058

〔ラジカル捕捉剤(c)〕
本実施形態に係る高分子電解質組成物は、ラジカル捕捉剤(c)をさらに含有することができる。本実施形態に係る高分子電解質組成物は、上述したように、ラジカル種の発生を効率よく抑制できる。これに加え、ラジカル捕捉剤(c)を含むことにより、万が一ラジカル種が発生した場合にも、ラジカル捕捉剤(c)で、捕捉することができる。

0059

本実施形態に用いることのできるラジカル捕捉剤(c)としては、特に限定されないが、具体的には、公知の酸化防止剤提唱されているメカニズムを可能にする官能基を有する化合物が挙げられる。このような官能基としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル連鎖禁止機能を有する官能基、ラジカルを分解させる機能を有する官能基、連鎖開始を阻害する機能を有する官能基が挙げられる。ラジカル連鎖禁止機能を有する官能基としては、特に限定されないが、例えば、フェノール水酸基、1級アミン、2級アミン等を挙げることができる。また、ラジカルを分解させる機能を有する官能基としては、特に限定されないが、例えば、硫黄リン等を含有するメルカプト基チオエーテル基、ジサリフイド基、フォスファイト基等を挙げることができる。さらに、連鎖開始を阻害する機能を有する官能基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドラジンアミドなどを挙げることができる(「酸化防止剤ハンドブック」(大成社刊1978))。

0060

また、ラジカル捕捉剤(c)としては、原子がラジカルにより引き抜かれやすい、例えば、3級炭素に結合した水素、あるいは、炭素ハロゲン結合などを構造中に有する化合物も挙げられる。

0061

また、本実施形態に用いることのできるラジカル捕捉剤(c)は、高分子電解質(a)とイオン結合を作る官能基を有することも可能である。このようなラジカル捕捉剤(c)としては、特に限定されないが、例えば、同一分子内に1級アミン、2級アミンのうち何れかのアミンを少なくとも有する化合物(c−1)及び/又は同一分子内に3級アミンを有し、かつ、硫黄、リン、ヒドラジン、アミド、フェノール水酸基、1級アミン、2級アミン、3級炭素に結合した水素、及び炭素に結合したハロゲンからなる群より選択される少なくとも1種以上を有する化合物(c−2)が挙げられる。

0062

ここで、化合物(c−1)及び化合物(c−2)における、高分子電解質(a)とイオン結合を作る官能基としては、特に限定されないが、例えば、高分子電解質(a)中のイオン交換基がスルホン酸基の場合は、塩基性官能基を示し、具体的には1級アミン、2級アミン、3級アミン等の窒素含有官能基が挙げられる。従って、1級アミン、2級アミンであれば、高分子電解質(a)のイオン交換基と相互作用を有し、かつ、ラジカル捕捉機能をも有することとなる(化合物(c−1)に相当)。一方、高分子電解質(a)のイオン交換基と相互作用を有する部分が3級アミンである場合には、高分子電解質(a)とイオン結合を作る官能基としては、ラジカル捕捉機能を有する部分として別に同一分子内に有する、フェノール水酸基、1、2級アミン等が挙げられる(化合物(c−2)に相当)。

0063

本実施形態に用いることができる化合物(c−1)及び化合物(c−2)をより具体的に例示すると以下のようになる。

0064

化合物(c−1)としては、特に限定されないが、例えば、ポリアニリンのような上記の官能基で一部置換された芳香族化合物、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、フェニル化ポリキノキサリン、フェニル化ポリキノリン等の不飽和複素環化合物を挙げることができる。

0065

化合物(c−2)としては、特に限定されないが、例えば、側鎖にスルホン酸と酸塩基結合を有する3級窒素複素環を有し、主鎖にラジカルで引き抜かれやすいベンジル位の水素を有する化合物として、ポリビニルピリジンポリビニルカルバゾール芳香族環に2級アミン、あるいは、3級アミンを含む基が導入されたポリスチレン等を挙げることができる。

0066

尚、化合物(c−1)及び化合物(c−2)は、イオン交換基を有する高分子物質と相互作用を有するユニットと、ラジカル捕捉機能を有するユニットとの共重合体であってもよい。高分子固体電解質と相互作用を有する部分を有することにより、高分子電解質への相溶性がより向上する傾向にある。また、ラジカル捕捉機能を有することにより、化学的耐久性がより向上する傾向にある。

0067

本実施形態の高分子電解質膜における化合物(c−1)及び化合物(c−2)の含有量は、高分子電解質(a)と化合物(c−1)及び化合物(c−2)の合計100質量%に対して、好ましくは0.001〜50.000質量%であり、より好ましくは0.005〜20.000質量%であり、さらに好ましくは0.010〜10.000質量%であり、よりさらに好ましくは0.100〜5.000質量%であり、さらにより好ましくは0.100〜2.000質量%である。

0068

本実施形態では化合物(c−1)及び化合物(c−2)全体の含有量を上記の範囲(0.001〜50.000質量%)に設定することにより、良好なプロトン伝導度を維持したまま、より高耐久性を有する高分子電解質膜を得ることができる傾向にある。

0069

添加剤
本実施形態に係る高分子電解質組成物には、高分子電解質(a)、化合物(b)、ラジカル捕捉剤(c)の他に下記に記載した化合物を配合することができる。下記に記載した添加剤は単独で配合することもできるし、2種以上を配合することもできる。

0070

(金属酸化物(d))
金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素分解能を有し、かつ一次粒子径が1nm〜50nmである金属酸化物が挙げられる。ここで上記の金属酸化物(d)の「一次粒子径」とは、溶媒中の金属酸化物(d)の含有量が1質量%となるように分散液を調整し、動的光散乱粒度分布計(大塚電子製)を用いて測定される平均粒子径をいう。また、上記「過酸化水素分解能」とは、金属酸化物(d)が過酸化水素と接触した際に、水と酸素に分解することをいう。

0071

過酸化水素分解能を有する金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、酸化鉄(Fe2O3,FeO,Fe3O4),酸化銅(CuO、Cu2O)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化インジウム(In2O3,In2O)、酸化スズ(SnO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化タングステン(WO3、W2O5)、酸化鉛(PbO,PbO2)、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化セリウム(CeO2、Ce2O3)、酸化アンチモン(Sb2O3、Sb2O5)、酸化ゲルマニウム(GeO2,GeO)、酸化ランタン(La2O3)、酸化ルテニウム(RuO2)等が挙げられる。これら金属酸化物は、単独で用いても、混合物を用いてもよいし、例えば、スズ添加酸化インジウム(ITO)、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、酸化アルミニウム亜鉛(ZnO・Al2O3)等に挙げられる複合酸化物を用いてもよい。

0072

本実施形態に用いられる金属酸化物(d)は、燃料電池の運転時における(熱や酸・アルカリ等による)金属酸化物のイオン化による溶出性を防止し、過酸化水素分解能を持続させる観点から、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、酸化イットリウム(Y2O3)が好ましい。本実施形態に用いられる金属酸化物(d)は、分散性の観点より、少なくとも1つ以上の反応性官能基を有する表面修飾剤により表面が修飾されていることが好ましい。

0073

金属酸化物(d)の表面修飾剤としては、1つ以上の反応性官能基を有することが好ましい。この反応性官能基としては、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素二重結合又はケイ素−水素結合を有することが好ましく、アルコキシル基ヒドロキシル基ビニル基スチリル基アクリル基メタクリル基アクリロイル基エポキシ基の群から選択される1種又は2種以上の反応性官能基であることが好ましい。本実施形態において特に好ましいのは、炭素−炭素二重結合又はケイ素−水素結合を有するもののうち、シランカップリング剤変性シリコーン、界面活性剤の群から選択された1種又は2種以上である。

0074

シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、ビニルトリメトキシシランビニルトリエトキシシランビニルトリクロルシラン、ビニルトフェノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリクロルシラン、3−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリクロルシシラン、p−スチリルトリフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロルシラン、3−アクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロルシラン、3−メタクリロキシプロピルトリフェノキシシラン、アリルトリメトキシシランアリルトリエトキシシラン、アリルトリクロルシシラン、アリルトリフェノキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルエチルジエトキシシラン、ビニルエチルジクロルシラン、ビニルエチルジフェノキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジクロルシラン、3−グリシドキシプロピルエチルジフェノキシシラン、p−スチリルエチルジメトキシシラン、p−スチリルエチルジエトキシシラン、p−スチリルトリエチルジクロルシシラン、p−スチリルエチルジフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジクロルシラン、3−アクリロキシプロピルエチルジフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジクロルシラン、3−メタクリロキシプロピルエチルジフェノキシシラン、アリルエチルジメトキシシラン、アリルエチルジエトキシシラン、アリルエチルジクロルシシラン、アリルエチルジフェノキシシラン、ビニルジエチルメトキシシラン、ビニルジエチルエトキシシラン、ビニルジエチルクロルシラン、ビニルジエチルフェノキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルクロルシラン、3−グリシドキシプロピルジエチルフェノキシシラン、p−スチリルジエチルメトキシシラン、p−スチリルジエチルエトキシシラン、p−スチリルジエチルクロルシシラン、p−スチリルジエチルフェノキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルクロルシラン、3−アクリロキシプロピルジエチルフェノキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルクロルシラン、3−メタクリロキシプロピルジエチルフェノキシシラン、アリルジエチルメトキシシラン、アリルジエチルエトキシシラン、アリルジエチルクロルシシラン、アリルジエチルフェノキシシラン等も挙げられる。

0076

界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。非イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸クロトン酸オレイン酸リノール酸リノレン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。

0077

上記の表面修飾剤を用いて金属酸化物(d)の表面を修飾する方法としては、湿式法乾式法等が挙げられる。

0078

湿式法とは、表面修飾剤と金属酸化物(d)を溶媒に投入し混合することにより、金属酸化物(d)の表面を修飾する方法である。

0079

乾式法とは、表面修飾剤と乾燥した金属酸化物(d)をミキサー等の乾式混合機に投入し混合することにより、金属酸化物(d)の表面を修飾する方法である。

0080

この表面が修飾された金属酸化物(d)の修飾部分質量比は、高分子電解質(a)との混合性の観点から、金属酸化物(d)全体量100質量%に対して、5質量%〜200質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜100質量%である。

0081

本実施形態に用いられる金属酸化物(d)の一次粒子径は、過酸化水素分解能及び分散性のバランスから1nm〜50nmの範囲が好適である。金属酸化物(d)の一次粒子径が50nm以下であることにより、ほど高分子電解質組成物中での金属酸化物(d)の分散性が向上する傾向にある。また、金属酸化物(d)の一次粒子径が1nm以上であることにより、結晶性が向上し良好な過酸化水素分解能を有する傾向にある。したがって、金属酸化物(d)の一次粒子径のより好ましい範囲は1nm〜30nmであり、特に好ましくは2nm〜20nmである。

0082

高分子電解質(a)と金属酸化物(d)の質量比(a/d)は、耐久性と伝導性のバランスの観点から、(a/d)=50/50〜99.99/0.01が好ましく、(a/d)=70/30〜99.99/0.01がより好ましく、(a/d)=80/20〜99.9/0.1がさらに好ましく、(a/d)=95/5〜99.5/0.5がよりさらに好ましい。

0083

また金属酸化物(d)を混合・分散させる場合には、凝集を抑制する観点から、溶媒に分散させて用いることが好ましい。

0084

分散液中の金属酸化物(d)の含有量は、1質量%〜70質量%が好ましく、より好ましくは1質量%〜50質量%、さらに好ましくは5質量%〜30質量%である。分散液中の金属酸化物(d)の含有量を1質量%〜70質量%とすることにより、金属酸化物(d)が溶媒中でゲルや沈殿を生じることなく、良好な分散状態を維持することができる傾向にある。

0085

チオエーテル化合物(e))
チオエーテル化合物(e)としては、特に限定されず−(R−S)n−(Sはイオウ原子、Rは炭化水素基、nは1以上の整数)の化学構造を含む化合物であって、例えば、ジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジプロピルチオエーテル、メチルエチルチオエーテル、メチルブチルチオエーテルのようなジアルキルチオエーテル;テトラヒドロチオフェンテトラヒドロアピランのような環状チオエーテル;メチルフェニルスルフィドエチルフェニルスルフィド、ジフェニルスルフィドジベンジルスルフィドのような芳香族チオエーテル等が挙げられる。これらは単量体で用いてもよいし、例えばポリフェニレンスルフィド(PPS)のような重合体で用いてもよい。

0086

チオエーテル化合物(e)は、耐久性の観点からn≧10の重合体(オリゴマーポリマー)であることが好ましく、n≧1,000の重合体であることがより好ましい。特に好ましいチオエーテル化合物(e)は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)である。

0087

ここでポリフェニレンスルフィドについて説明する。本実施形態において用いられるポリフェニレンスルフィドは、パラフェニレンスルフィド骨格を好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上有するポリフェニレンスルフィドである。

0088

上記ポリフェニレンスルフィドの製造方法は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン置換芳香族化合物(p−ジクロルベンゼン等)を硫黄と炭酸ソーダの存在下で重合させる方法、極性溶媒中でハロゲン置換芳香族化合物を硫化ナトリウムあるいは硫化水素ナトリウム水酸化ナトリウムの存在下で重合させる方法、又は極性溶媒中でハロゲン置換芳香族化合物を硫化水素と水酸化ナトリウムあるいはナトリウムアミノアルカノエートの存在下で重合させる方法、p−クロルチオフェノール自己縮合等が挙げられる。中でもN−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒スルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンを反応させる方法が好適に用いられる。

0089

また、ポリフェニレンスルフィドの有する−SX基(Sはイオウ原子、Xはアルカリ金属又は水素原子である)の含有量は、通常10μmol/g以上10,000μmol/g以下であり、好ましくは15μmol/g以上10,000μmol/g以下であり、より好ましくは20μmol/g以上10,000μmol/g以下である。

0090

−SX基濃度が上記範囲にあることにより、反応活性点が多くなる。−SX基濃度が上記範囲を満たすポリフェニレンスルフィドを用いることで、本実施形態の高分子電解質(a)との混和性が向上することにより分散性が向上し、高温低加湿条件下でより高い耐久性が得られると考えられる。

0091

また、チオエーテル化合物(e)としては、末端酸性官能基を導入したものも好適に用いることができる。導入する酸性官能基としては、特に限定されないが、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボン酸基、マレイン酸基無水マレイン酸基フマル酸基,イタコン酸基,アクリル酸基メタクリル酸基が好ましい。このなかでもスルホン酸基がより好ましい。

0092

なお、酸性官能基の導入方法は特に限定されず、一般的な方法を用いて実施される。例えば、スルホン酸基の導入については、無水硫酸発煙硫酸などのスルホン化剤を用いて公知の条件で実施することができる。このような導入方法は、特に限定されないが、例えば、K.Hu, T.Xu, W.Yang, Y.Fu, Journal of Applied Polymer Science, Vol.91,や、 E.Montoneri, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.27, 3043−3051(1989)に記載の条件で実施できる。

0093

また、導入した酸性官能基を金属塩又はアミン塩に置換したものも好適に用いられる。金属塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩カリウム塩等のアルカリ金属塩カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩が好ましい。

0094

さらに、チオエーテル化合物(e)を粉末状で用いる場合、チオエーテル化合物(e)の平均粒子径は、高分子電解質(a)中の分散性が向上することで高寿命化等の効果を良好に実現させる観点から、0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.01〜1.0μmがより好ましく、0.01〜0.5μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmがよりさらに好ましい。

0095

チオエーテル化合物(e)を高分子電解質(a)中に微分散させる方法としては、特に限定されないが、例えば、高分子電解質(a)等との溶融混練時高せん断を与えて粉砕及び微分散させる方法、高分子電解質溶液を得た後、その溶液濾過し粗大チオエーテル化合物(e)粒子を除去し、濾過後の溶液を用いる方法、等が挙げられる。

0096

溶融混練を行う場合に好適に用いられるポリフェニレンスルフィドの溶融粘度フローテスターを用いて、300℃、荷重196N、L/D(L:オリフィス長、D:オリフィス内径)=10/1で6分間保持した値)は、成形加工性の観点から、好ましくは1〜10,000ポイズであり、より好ましくは100〜10,000ポイズである。

0097

高分子電解質(a)とチオエーテル化合物(e)の質量比(a/e)は、(a/e)=60/40〜99.99/0.01であることが好ましく、(a/e)=70/30〜99.95/0.05がより好ましく、(a/e)=80/20〜99.9/0.1がさらに好ましく、(a/e)=90/10〜99.5/0.5がよりさらに好ましい。高分子電解質(a)の質量比を60以上とすることにより、良好なイオン伝導性が実現でき、良好な電池特性が実現できる傾向にある。一方、チオエーテル化合物(e)の質量比を40以下とすることにより、高温低加湿条件での電池運転における耐久性がより向上する傾向にある。

0098

また、チオエーテル化合物(e)は、本実施形態に係るラジカル捕捉剤(c)と併せて配合することにより、高温低加湿の条件下でも極めて高い耐久性を示すことが可能となる傾向にある。

0099

ここでラジカル捕捉剤(c)とチオエーテル化合物(e)の質量比(c/e)は、(c/e)=1/99〜99/1が好ましく、(c/e)=5/95〜95/5がより好ましく、(c/e)=10/90〜90/10がさらに好ましく、(c/e)=20/80〜80/20がよりさらに好ましい。質量比(c/e)が上記範囲内であることにより、化学的安定性と耐久性(分散性)のバランスにより優れる傾向にある。

0100

さらに、ラジカル捕捉剤(c)とチオエーテル化合物(e)の合計質量が高分子電解質膜中に占める含有量は、0.01〜50質量%が好ましく、0.05〜45質量%がより好ましく、0.1〜40質量%がさらに好ましく、0.2〜35質量%がよりさらに好ましく、0.3〜30質量%がさらにより好ましい。含有量が上記範囲内であることにより、イオン伝導性と耐久性(分散性)のバランスにより優れる傾向にある。

0101

また、本実施形態に係る高分子電解質組成物は、高分子電解質溶液、高分子電解質膜、及び高分子電解質バインダー等の形態で使用することができる。

0102

〔高分子電解質溶液〕
本実施形態に係る高分子電解質組成物は、その組成物を構成する各成分をそれぞれ同時に又は別々に溶解又は分散した後、混合することにより、高分子電解質溶液として用いてもよい。さらに、高分子電解質溶液は、そのまま、あるいは濾過、濃縮等の工程を経た後、単独あるいは他の電解質溶液と混合して、高分子電解質膜や電極バインダー等の材料として用いることができる。

0103

高分子電解質溶液の製造方法について説明する。高分子電解質溶液の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、まず、高分子電解質前駆体からなる成形物を塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解する。この加水分解処理により、上記高分子電解質前駆体は高分子電解質(a)に変換される。次に、加水分解処理された上記成形物を温水などで十分に水洗し、その後、酸処理を行う。

0104

酸処理に使用する酸は、特に限定されないが、例えば、塩酸硫酸硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸ギ酸トリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって高分子電解質前駆体はプロトン化され、SO3H体となる。上記のように酸処理された上記成形物(プロトン化された高分子電解質を含む成形物)は、上記高分子電解質(a)を溶解又は懸濁させ得る溶媒(樹脂との親和性が良好な溶媒)に溶解又は懸濁される。このような溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;エタノール、メタノール、n−プロパノールイソプロピルアルコール、ブタノール、グリセリンなどのプロトン性有機溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性溶媒等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。特に、1種の溶媒を用いる場合、水単独が好ましい。また、2種類以上を併用する場合、水とプロトン性有機溶媒との混合溶媒が好ましい。

0105

溶解又は懸濁する方法は、特に限定されないが、例えば、上記溶媒中にそのまま溶解又は分散させることが好ましく、大気圧下又はオートクレーブ等で密閉加圧した条件のもとで、0〜250℃の温度範囲で溶解又は分散させることがより好ましい。特に、溶媒としてプロトン性有機溶媒を用いる場合、水とプロトン性有機溶媒の混合比は、溶解方法、溶解条件、高分子電解質の種類、総固形分濃度、溶解温度攪拌速度等に応じて適宜選択できる。水に対するプロトン性有機溶媒の質量の比率は、水1に対してプロトン性有機溶媒0.1〜10が好ましく、より好ましくは水1に対してプロトン有機溶媒0.1〜5である。

0106

なお、高分子電解質(a)の溶解・懸濁液としては、特に限定されないが、例えば、乳濁液液体中に液体粒子コロイド粒子あるいはそれより粗大な粒子として分散して乳状をなすもの)、懸濁液(液体中に固体粒子がコロイド粒子あるいは顕微鏡見える程度の粒子として分散したもの)、コロイド状液体(巨大分子が分散した状態)、ミセル状液体(多数の小分子が分子間力会合してできた親液コロイド分散系)等の1種又は2種以上が含まれる。

0107

また、高分子電解質溶液は、成形方法や用途に応じて、濃縮したり、濾過したりすることが可能である。濃縮の方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱し、溶媒を蒸発させる方法や、減圧濃縮する方法等がある。高分子電解質溶液を塗工用溶液として使用する場合、高分子電解質溶液の固形分率は、0.5〜50質量%が好ましい。固形分率が0.5質量%以上であることにより、粘度上昇が抑制され、取り扱い性に優れる傾向にある。また、固形分率が50質量%以下であることにより、生産性が向上する傾向にある。

0108

濾過の方法としては、特に限定されないが、例えば、フィルターを用いて、加圧濾過する方法が代表的に挙げられる。フィルターについては、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10倍〜100倍の濾材を使用することが好ましい。この濾材としては紙製、金属製等が挙げられる。特に濾材が紙の場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の10〜50倍であることが好ましい。金属製フィルターを用いる場合は、90%捕集粒子径が粒子の平均粒子径の50〜100倍であることが好ましい。当該90%捕集粒子径を平均粒径の10倍以上に設定することにより、送液するときに必要な圧力が高くなりすぎることを抑制したり、フィルターが短期間で閉塞してしまうことを抑制し得る傾向にある。一方、平均粒径の100倍以下に設定することにより、フィルム異物の原因となるような粒子の凝集物や樹脂の未溶解物を良好に除去できる傾向にある。

0109

〔高分子電解質膜〕
本実施形態に係る高分子電解質膜は、上記高分子電解質組成物を含む。高分子電解質膜の膜厚は、1μm以上500μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上100μm以下、さらに好ましくは5μm以上50μm以下である。膜厚が1μm以上であることにより、水素と酸素の直接反応のような不都合を低減し得る点、燃料電池製造時の取り扱い時や燃料電池運転中に差圧・歪み等が生じても、膜の損傷等が発生しにくい傾向にある。一方、膜厚が500μm以下であることにより、イオン透過性が向上し、固体高分子電解質膜としての性能が向上する傾向にある。

0110

高分子電解質膜の成形方法について説明する。高分子電解質膜の成形方法は、特に限定されず、高分子電解質溶液を用いてキャスト製膜してもよいし、溶融押し出し、延伸等の工程を経ることにより成形してもよい。溶融押し出しにより成形を行う場合、成形性の観点から、高分子電解質前駆体及びラジカル捕捉剤(c)、添加剤(d、e)の混合物を溶融混練後押し出し成形して膜を形成し、その後、塩基性反応液体中に浸漬し、加水分解するのが好ましい。この加水分解処理により、上記高分子電解質前駆体は高分子電解質(a)に変換される。

0111

さらに、上記成形物は、前記塩基性反応液体中で加水分解処理された後、温水などで十分に水洗され、その後、酸処理が行われる。酸処理に使用する酸は、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類が好ましい。この酸処理によって高分子電解質前駆体はプロトン化され、SO3H体となる。

0112

また、高分子電解質膜は、ポリテトラフルオロエチレンPTFE)、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルコキシビニルエーテル)共重合体(PFA)、ポリエチレンポリプロピレン等の多孔体、繊維、織布、不織布等の多孔シート;シリカ、アルミナ等の無機ウィスカ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン製有機フィラー等で補強されていてもよい。

0113

さらに、高分子電解質膜は架橋剤や紫外線、電子線、放射線等を用いて架橋することもできる。

0114

本実施形態に係る高分子電解質膜は、成形後、熱処理が施されることが好ましい。熱処理により高分子電解質の結晶化が促進され、高分子電解質膜の機械的強度が安定化され得る。また、熱処理によりラジカル捕捉剤(c)やチオエーテル化合物(e)等の添加剤の結晶物部分と高分子固体電解質部分とが強固に接着され、その結果、機械的強度がより安定化される傾向にある。

0115

熱処理温度は、好ましくは120℃以上300℃以下であり、より好ましくは140℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは160℃以上230℃以下である。熱処理温度が120℃以上であることにより、結晶物部分と電解質組成物部分との間の密着力がより向上する傾向にある。一方、熱処理温度が300℃以下であることにより、高分子電解質膜の特性がより向上する傾向にある。熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが、好ましくは5分以上3時間以下であり、より好ましくは10分以上2時間以下である。

0116

〔電極触媒層〕
本実施形態に係る電極触媒層は、上記高分子電解質組成物を含む。電極触媒層は、高分子電解質組成物と、必要に応じて触媒金属微粒子とこれを担持した導電剤とから構成される。また、必要に応じて撥水剤が含まれる。電極に使用される触媒としては、特に限定されず、水素の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればよく、例えば、白金、金、銀、パラジウムイリジウムロジウムルテニウム、鉄、コバルトニッケルクロムタングステンマンガンバナジウム、及びこれらの合金等が挙げられる。この中では、主として白金が用いられる。

0117

〔膜電極接合体〕
本実施形態に係る膜電極接合体は、上記高分子電解質膜及び上記電極触媒層を有する。本実施形態に係る高分子電解質膜は、膜電極接合体、及び固体高分子電解質型燃料電池の構成部材として使用することができる。高分子電解質膜の両面にアノードとカソードの2種類の電極触媒層が接合したユニットは、膜電極接合体(以下「MEA」と略称することがある)と呼ばれる。電極触媒層のさらに外側に一対のガス拡散層を対向するように接合したものについても、MEAと呼ばれる場合がある。

0118

MEAの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、次のような方法が行われる。まず、電極用バインダーイオン交換樹脂をアルコールと水の混合溶液に溶解したものに、電極物質となる白金担持カーボンを分散させてペースト状にする。これをPTFEシートに一定量塗布して乾燥させる。次に、PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に高分子電解質膜を挟み込み、100℃〜200℃で熱プレスにより転写接合してMEAを得ることができる。電極用バインダーは一般にイオン交換樹脂を溶媒(アルコールや水等)に溶解したものが使用されるが、燃料電池運転時の耐久性の観点から、本実施形態に係る高分子電解質組成物を使用する。

0119

〔固体高分子電解質型燃料電池〕
本実施形態に係る固体高分子型燃料電池は、上記膜電極接合体(MEA)を有する。上記で得られたMEA、場合によってはさらに一対のガス拡散電極が対向した構造のMEAは、さらにバイポーラプレートやバッキングプレート等の一般的な固体高分子電解質型燃料電池に用いられる構成成分と組み合わされて、固体高分子電解質型燃料電池を構成することができる。

0120

バイポーラプレートとは、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトと樹脂との複合材料、又は金属製のプレート等を意味する。バイポーラプレートは、電子を外部負荷回路へ伝達する機能の他、燃料や酸化剤を電極触媒近傍に供給する流路としての機能を持っている。こうしたバイポーラプレートの間にMEAを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池が製造される。

0121

以下、実施例によりさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。実施例等における各種物性の測定方法及び評価方法は次の通りである。

0122

(1)イオン交換容量
イオン交換基の対イオンがプロトンの状態となっている高分子電解質膜、およそ2〜20cm2を、25℃、飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置した。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレイン指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。中和後に得られた、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっている高分子電解質膜を、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して量した。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの高分子電解質膜の重量をW(mg)とし、下記式により当量重量EW(g/eq)を求めた。
EW=(W/M)−22
さらに、得られたEW値逆数をとって1000倍とすることにより、イオン交換容量(ミリ当量/g)を算出した。

0123

(2)膜厚
高分子電解質膜を23℃、50%RHの恒温恒湿室内で1時間以上静置した後、膜厚計(東洋精機製作所製、商品名:B−1)を用いて測定を行った。

0124

(3)耐久性試験:発電・OCVサイクル試験
高温低加湿条件下における高分子電解質膜の耐久性を加速的に評価するため、以下のような手順で発電、OCVサイクルによる加速試験を実施した。尚、「OCV」とは、開回路電圧(OpenCircuit Voltage)を意味する。

0125

(3)−1電極触媒インクの調製
20質量%のパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(SS700C/20、旭化成製当量質量(EW):740)、電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属販売社製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(質量)となるように配合し、次いで、固形分(電極触媒とパーフルオロスルホン酸ポリマーの和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3,000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。

0126

(3)−2MEAの作製
自動スクリーン印刷機製品名:LS−150、ニューロング精密工業株式会社製)を用い、高分子電解質膜の両面に前記電極触媒インクを、白金量がアノード側0.2mg/cm2、カソード側0.3mg/cm2となるように塗布し、140℃、5分の条件で乾燥・固化させることでMEAを得た。

0127

(3)−3燃料電池単セルの作製
前記MEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。

0128

(3)−4発電・OCVサイクル試験
前記燃料電池単セルを評価装置(東陽テクニカ製燃料電池評価システム890CL)にセットして、発電3時間、OCV3時間のサイクルによる耐久性試験を実施した。

0129

発電の試験条件は、セル温度90℃、加湿ボトル61℃(相対湿度30%RH)とし、アノード側に水素ガス、カソード側に空気ガスを、それぞれ0.3A/cm2でのガス利用率が75%、55%となるよう供給する条件とした。また、アノード側とカソード側の両方を無加圧(大気圧)とした。

0130

OCVの試験条件は、セル温度、加湿ボトル温度、供給ガス、圧力は発電の試験条件と同様とした。

0131

(3)−5劣化判定
試験時間0時間(L0)から100時間毎に水素のリーク電流を測定した。試験開始から500時間後(L500)の水素のリーク電流とL0の差(L500−L0)を算出することで劣化判定を行った。L500−L0が小さい程良好な耐久性を有すると判断した。尚、水素リーク電流が10mA/cm2以上となった場合、試験時間が500時間に満たなくとも破膜と判断し試験を中止した。

0132

水素のリーク電流は、セル温度、加湿ボトルの温度は発電の試験条件と同様にして、無加圧の条件でアノードに水素ガス、カソードに窒素ガスをそれぞれ200cc/min導入することで実施した。測定にはポテンショガルバノスタット(製品名:ソーラートロン1280B、東陽テクニカ社製)を用い、0.4Vを5分間保持し、5分後の電流値電極面積で割ることで算出した。

0133

フェントン試験
高分子電解質膜を空気下、200℃、2時間の条件で前処理を行った。次いで鉄イオンが2ppm、過酸化水素が1%の水溶液を調製し、80℃に加温したところに前処理後の高分子電解質膜を1時間、浸漬した。その後、イオンクロマトグラフにより試験後の液に含まれるフッ素イオンを測定した。なお、フッ素イオン量フッ素溶出量)が少ないほど耐久性の高い高分子電解質膜、電極触媒層等を与える高分子電解質組成物となる。

0134

下記実施例1から10及び比較例1から2は、高分子電解質組成物の高分子電解質膜への適用例である。また、下記実施例11から12及び比較例3は高分子電解質組成物の電極触媒層への適用例である。

0135

〔実施例1〕
(高分子電解質組成物の調製)
高分子電解質(a)の前駆体である、テトラフルオロエチレン、及びCF2=CFO(CF2)2−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体(加水分解・酸処理後のEW:740)ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回新しい塩酸水溶液を用いて5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有する高分子電解質(a)のペレットを得た。

0136

このペレットをエタノール水溶液(水:エタノール=66.7:33.3(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なパーフルオロスルホン酸樹脂溶液を作製した。

0137

次に、この溶液100gに化合物(b)としてフィチン酸(関東化学社製)を0.15g添加し、a/b=97/3(質量比)となるように調整した。最後に、化合物(b)の効果を確認する目的で、硫酸鉄(II)(関東化学社製)をパーフルオロスルホン酸樹脂に対して20ppmとなるように配合し、高分子電解質組成物を含む高分子電解質溶液を得た。

0138

(高分子電解質膜の作製)
得られた高分子電解質溶液をスターラーを用いて充分に攪拌した後、80℃にて減圧濃縮して、キャスト溶液を得た。キャスト液21gを直径15.4cmのシャーレ流し込み、ホットプレート上にて60℃で1時間及び80℃で1時間の乾燥を行い、溶媒を除去した。次に、シャーレをオーブンに入れ160℃で1時間熱処理を行った。その後、オーブンから取り出し、冷却したシャーレにイオン交換水を注いで膜を剥離させ、膜厚約30μmの高分子電解質膜を得た。次に、60℃の2N塩酸水溶液に3時間浸漬した後、イオン交換水で水洗、乾燥して高分子電解質膜を得た。

0139

この高分子電解質膜を用い、上記(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0140

〔実施例2〕
化合物(b)として、ポリリン酸ナトリウム(関東化学社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0141

〔実施例3〕
化合物(b)として、4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸(関東化学社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0142

〔実施例4〕
化合物(b)として、ゼオライト(和光純薬工業社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0143

〔実施例5〕
化合物(b)として、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂(製品名Aciplex、旭化成ケミカルズ社製、EW1100)を用いたこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0144

〔実施例6〕
化合物(b)として、ポリリン酸(関東化学社製)を用い、さらにラジカル捕捉剤(c)としてポリベンゾイミダゾールを配合したこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0145

〔実施例7〕
化合物(b)として、パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂(製品名Aciplex、旭化成ケミカルズ社製、EW1100)を用い、さらにラジカル捕捉剤(c)としてポリベンゾイミダゾールを配合したこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0146

〔実施例8〕
化合物(b)として、4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸(関東化学社製)を用い、さらにラジカル捕捉剤(c)としてポリベンゾイミダゾールを配合したこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0147

〔実施例9〕
(高分子電解質溶液の調製)
高分子電解質(a)の前駆体である、テトラフルオロエチレン、及びCF2=CFO(CF2)2−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体(加水分解・酸処理後のEW:740)ペレットに、チオエーテル化合物(e)としてポリフェニレンスルフィド(シグマアルドリッチジャパン社製)を添加し、二軸コンパウンディングテスター(製品名 ULT15TW nano−15MG−NH(−700)テクノベル社製)を用い混練し、パーフルオロスルホン酸樹脂前駆体/ポリフェニレンエーテルの質量比が94/6であるペレットを得た。

0148

このペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回新しい塩酸水溶液を用いて5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有する高分子電解質(a)のペレットを得た。

0149

このペレットをエタノール水溶液(水:エタノール=66.7:33.3(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なパーフルオロスルホン酸樹脂溶液を作製した。

0150

次に、この溶液100gに化合物(b)として4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸(関東化学社製)を0.15g添加し、a/b/e=91/3/6(質量比)となるように調整した。最後に、化合物(b)の効果を確認する目的で、硫酸鉄(II)(関東化学社製)をパーフルオロスルホン酸樹脂に対して20ppmとなるように配合し、高分子電解質溶液を得た。

0151

(高分子電解質膜の作製)
得られた高分子電解質溶液を、スターラーを用いて充分に攪拌した後、80℃にて減圧濃縮して、キャスト溶液を得た。上記キャスト液21gを直径15.4cmのシャーレに流し込み、ホットプレート上にて60℃で1時間及び80℃で1時間の乾燥を行い、溶媒を除去した。次に、シャーレをオーブンに入れ160℃で1時間熱処理を行った。その後、オーブンから取り出し、冷却したシャーレにイオン交換水を注いで膜を剥離させ、膜厚約30μmの高分子電解質膜を得た。次に、60℃の2N塩酸水溶液に3時間浸漬した後、イオン交換水で水洗、乾燥して高分子電解質膜を得た。この高分子電解質膜を用い、上記(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0152

〔実施例10〕
化合物(b)として4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸(関東化学社製)を用い、さらに金属酸化物(d)として酸化セリウム(関東化学社製)を加えたこと以外は実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ良好な結果を得た。結果を表1に示す。

0153

〔比較例1〕
実施例1で化合物(b)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ200時間で水素のリーク電流が10mA/cm2をこえた為、破膜と判断し試験を終了させた。結果を表1に示す。

0154

〔比較例2〕
実施例1で化合物(b)の代わりに2−アミノエタンスルホン酸(関東化学社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして高分子電解質溶液及び高分子電解質膜を得て、(3)耐久性試験を実施したところ300時間で水素のリーク電流が10mA/cm2をこえた為、破膜と判断し試験を終了させた。結果を表1に示す。

0155

〔実施例11〕
(高分子電解質組成物の調製)
高分子電解質(a)の前駆体である、テトラフルオロエチレン、及びCF2=CFO(CF2)2−SO2Fから得られたパーフルオロスルホン酸樹脂前駆体(加水分解・酸処理後のEW:740)ペレットを、水酸化カリウム(15質量%)とメチルアルコール(50質量%)を溶解した水溶液中に、80℃で20時間接触させて、加水分解処理を行った。その後、60℃水中に5時間浸漬した。次に60℃の2N塩酸水溶液に1時間浸漬させる処理を、毎回新しい塩酸水溶液を用いて5回繰り返した後、イオン交換水で水洗、乾燥した。これにより、スルホン酸基(SO3H)を有する高分子電解質(a)のペレットを得た。

0156

このペレットをエタノール水溶液(水:エタノール=66.7:33.3(質量比))と共に5Lオートクレーブ中に入れて密閉し、翼で攪拌しながら160℃まで昇温して5時間保持した。その後、オートクレーブを自然冷却して、5質量%の均一なパーフルオロスルホン酸樹脂溶液を作製した。

0157

次に、この溶液100gに化合物(b)としてポリリン酸(関東化学社製)を0.15g添加し、a/b=97/3(質量比)となるように調製した。最後に、化合物(b)の効果を検証する目的で、硫酸鉄(II)(関東化学社製)をパーフルオロスルホン酸樹脂に対して20ppmとなるように配合し、さらに固形分が20質量%になるまで減圧下、濃縮を行い、高分子電解質組成物を含む高分子電解質溶液を得た。

0158

(電極触媒インクの調製)
得られた高分子電解質溶液に電極触媒(TEC10E40E、田中貴金属販売社製、白金担持量36.7wt%)を白金/パーフルオロスルホン酸ポリマーが1/1.15(重量)となるように配合した。最後に、固形分(電極触媒、パーフルオロスルホン酸ポリマー、ポリリン酸の和)が11wt%となるようにエタノールを加え、ホモジナイザー(アズワン社製)により回転数が3,000rpmで10分間、撹拌することで電極触媒インクを得た。

0159

(膜電極接合体の作製)
得られた電極インクを自動スクリーン印刷機(製品名:LS−150、ニューロング精密工業株式会社製)を用い、高分子電解質膜(ナフィオン211CS(25μm)、デュポン社製)の両面に、白金量がアノード側0.2mg/cm2、カソード側0.3mg/cm2となるように塗布し、140℃、5分の条件で乾燥・固化させることでMEAを得た。

0160

(燃料電池単セルの作製)
得られたMEAの両極にガス拡散層(製品名:GDL35BC、MFCテクノロジー社製)を重ね、次いでガスケット、バイポーラプレート、バッキングプレートを重ねることで燃料電池単セルを得た。得られた燃料電池単セルを用い、上記(3)耐久性試験を行ったところ良好な結果を得た。結果を表2に示す。

0161

〔実施例12〕
化合物(b)として4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸(関東化学社製)を配合したこと以外は実施例11と同様にして燃料電池単セルを得て、上記(3)耐久性試験を行ったところ良好な結果を得た。結果を表2に示す。

0162

〔比較例3〕
化合物(b)を配合しなかったこと以外は実施例11と同様にして燃料電池単セルを得て、上記(3)耐久性試験を行ったところ100時間にて水素のリーク電流が10mA/cm2をこえた為、破膜と判断し試験を終了させた。結果を表2に示す。

0163

〔実施例13〕
化合物(b)に4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸を用いる以外は実施例1と同様な手法により、厚さ23μmの高分子電解質膜を作製した。次いで上記の手法によりフェントン試験を実施した。結果を表1に示す。

0164

〔実施例14〕
化合物(b)にN,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)を用いる以外は実施例1と同様な手法により、厚さ23μmの高分子電解質膜を作製した。次いで、実施例13と同様な手法によりフェントン試験を実施したところ、化合物(b)を配合していない高分子電解質膜と比較して、フッ素溶出量を低減できることが分かった。結果を表1に示す。

0165

〔実施例15〕
化合物(b)に4−アミノベンジルホスホン酸ジエチルを用いる以外は実施例1と同様な手法により、厚さ23μmの高分子電解質膜を作製した。次いで、実施例13と同様な手法によりフェントン試験を実施したところ、化合物(b)を配合していない高分子電解質膜と比較して、フッ素溶出量を低減できることが分かった。結果を表1に示す。

0166

〔比較例4〕
化合物(b)を配合しない以外は実施例1と同様な手法により、厚さ23umの高分子電解質膜を作製した。次いで、実施例13と同様な手法によりフェントン試験を実施したところ、化合物(b)を配合した高分子電解質膜よりもフッ素溶出量が多くなることが分かった。結果を表1に示す。

実施例

0167

パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂:テトラフルオロエチレン、CF2=CF−O−(CF2)2−SO3Hの共重合体、EW740
パーフルオロカーボンカルボン酸樹脂:テトラフルオロエチレン、CF2=CF−O−(CF2)2−COOHの共重合体、EW1100
フルオロカーボンスルホン酸樹脂:フッ化ビニリデン、CF2=CF−O−(CF2)2−SO3Hの共重合体、EW740
PBI:ポリベンゾイミダゾール
PPS:ポリフェニレンスルフィド

0168

本発明に係る高分子電解質組成物は、高分子電解質膜、電極触媒層、膜電極接合体、及び固体高分子型燃料電池の分野において産業上の利用可能性を有する。

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