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技術 神経変性疾患および障害を処置するためのL−セリン組成物、方法および使用

出願人 ザインスティチュートフォーエスノメディシン
発明者 ロジャース,ケニスダンロップ,レイチェルコックス,ポール,エー.
出願日 2012年11月21日 (6年10ヶ月経過) 出願番号 2014-543579
公開日 2014年12月18日 (4年10ヶ月経過) 公開番号 2014-534263
状態 特許登録済
技術分野 非環式または炭素環式化合物含有医薬 酵素・酵素の調製 酵素、微生物を含む測定、試験 化合物または医薬の治療活性 ペプチド又は蛋白質 特有な方法による材料の調査、分析
主要キーワード 物理的構造体 衝動性眼球運動 回流水槽 クオリファイア 日常作業 電子的記憶媒体 遊泳性 平衡性
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年12月18日)のものです。
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図面 (20)

課題・解決手段

タンパク質凝集もつれプラークおよびタンパク質凝集/もつれ/プラークに関連する疾患の処置緩和および/または防止のためのL−セリン、L−セリン前駆体、L−セリン誘導体およびL−セリンコンジュゲート。特に、L−セリン、L−セリン前駆体、L−セリン誘導体、L−セリンコンジュゲートによる処置および使用がアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症ALS)、およびハンチントン病(HD)を含む。

概要

背景

概要

タンパク質凝集もつれプラークおよびタンパク質凝集/もつれ/プラークに関連する疾患の処置緩和および/または防止のためのL−セリン、L−セリン前駆体、L−セリン誘導体およびL−セリンコンジュゲート。特に、L−セリン、L−セリン前駆体、L−セリン誘導体、L−セリンコンジュゲートによる処置および使用がアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症ALS)、およびハンチントン病(HD)を含む。

目的

本発明の方法および使用は、本明細書に記載されるような、または当業者既知のような、神経学的疾患または障害の任意の症状の主観的または客観的改善を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

哺乳動物細胞の1つまたは複数のタンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを防止、阻害または低減する方法であって、細胞を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを防止、阻害または低減するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートと接触させることを含む、方法。

請求項2

哺乳動物細胞の1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集を防止、阻害または低減する方法であって、細胞を、タンパク質の誤った折畳みまたは凝集を防止、阻害または低減するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートと接触させることを含む、方法。

請求項3

対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の軽減またはリスク低下のための方法であって、対象に、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の軽減またはリスク低下に十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することを含む、方法。

請求項4

対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行の安定化、低下または阻害のための方法であって、対象に、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行を安定化、低下または阻害するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することを含む、方法。

請求項5

対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の処置のための方法であって、対象に、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行を処置するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することを含む、方法。

請求項6

細胞または対象が、ヒト細胞またはヒトである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項7

細胞が、ニューロンまたはグリア細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項8

タンパク質が、TARDNA−結合タンパク質43(TDP−43)またはα−シヌクレインである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項9

BMAAの誘導体および異性体が、2,4−ジアミノ酪酸(2,4−DAB)、2,3−ジアミノ酪酸(2,3−DAB)、N−(2−アミノエチルグリシンAEG)、またはβ−アミノ−N−メチル−アラニン(BAMA)を含む、請求項1に記載の方法。

請求項10

神経学的疾患または障害が、組織学的にタンパク質の誤った折畳みまたはタンパク質凝集によって特徴付けられる、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項11

神経学的疾患または障害が、運動または認知障害である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項12

神経学的疾患または障害が、アルツハイマー病パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症ALS)、進行性核上麻痺PSP)、レビー小体型認知症(LBD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)、ハンチントン病(HD)、ピック病および前頭側頭型認知症(FTD)である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項13

神経学的疾患または障害の症状が、運動もしくは認知障害;疲労;振戦運動失調症不明瞭な、混雑したもしくは不規則発語筋肉痙攣、ひきつり萎縮もしくは衰弱息切れ摂食呼吸もしくは嚥下困難短期あるいは長期記憶喪失;仕慣れた作業または日常作業の集中または完了困難;空間および時間的混乱視力、色あるいは記号認識喪失;深さ知覚喪失;発語もしくは書字困難判断力喪失;語彙喪失;むら気;短気;攻撃性;偏執;妄想社会的関わりからの退避硬直または固縮微細または粗大運動の制御喪失;動きの鈍化;平衡機能不全;身体的不安定;姿勢または歩行異常引きずり歩行調整力低下;理学的不安定;不安定歩行;運動機能低下;痙攣様の身体の動き;緩慢衝動性眼球運動;身体固縮;発作咀嚼、摂食、嚥下および発語困難;認知的/精神的能力低下;認知症;睡眠行動もしくは精神的異常;発語または思考困難;行動的変化;社会的品行の制御不全;受動性;不活発引きこもり無気力;過活動;ペーシング徘徊平衡性喪失;移動時の突進;速歩;平衡異常(例えば、物体または人々への衝突);転倒人格の変化;動きの鈍化;抑制あるいは情報を整理する能力の喪失;不明瞭な発語;嚥下困難;眼麻痺または眼球運動不全;瞼機能不全;顔筋拘縮症;首失調症あるいは首の筋肉硬直を伴う頭の後方傾斜睡眠障害;尿/便失禁;またはパーキンソン症候群である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。神経学的疾患または障害の1つまたは複数の症状の発生、重症度頻度または期間を防止、低減または阻害する、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項14

L−セリンが、L−セリンポリマーポリセリン)、L−セリンの塩、アルキル化L−セリンまたはL−セリン脂質を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項15

L−セリン塩が、L−セリンのナトリウム塩カリウム塩カルシウム塩マグネシウム塩亜鉛塩またはアンモニウム塩を含む、請求項14に記載の方法。

請求項16

アルキル化L−セリンが、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基を有する、請求項14に記載の方法。

請求項17

誘導体が、L−セリンエステル、L−セリンジエステル、L−セリンのリン酸エステル、L−セリンの硫酸エステルまたはスルホン酸エステル、PEG化L−セリン、脂質付加L−セリン、または1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)部分を有するL−セリンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項18

L−セリン前駆体が、L−ホスホセリンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項19

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、リポソームまたはミセルを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項20

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、医薬組成物または製剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項21

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、経口、注射、注入挿管カテーテル、または頭蓋内で、対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項22

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、少なくとも1日1回、少なくとも1週間、対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項23

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12週間、対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項24

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12ヶ月間、対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項25

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、約1〜10mg/日、10〜25mg/日、25〜50mg/日、50〜100mg/日、100〜250mg/日、250〜500mg/日、500〜750mg/日、750〜1,000mg/日、1,000〜2,000mg/日、2,000〜3,000mg/日、3,000〜4,000mg/日、4,000〜5,000mg/日、5,000〜7,500mg/日、7,500〜10,000mg/日、10〜15g/日、15〜20g/日、20〜25g/日、25〜30g/日、30〜40g/日、40〜50g/日、50〜75g/日または75〜100g/日の用量で対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項26

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、約1〜10mg/kg体重、10〜25mg/kg体重、25〜50mg/kg体重、50〜100mg/kg体重、100〜250mg/kg体重、250〜500mg/kg体重、500〜750mg/kg体重または750〜1,000mg/kg体重の用量で対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項27

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、約1〜10mg/kg体重/日、10〜25mg/kg体重/日、25〜50mg/kg体重/日、50〜100mg/kg体重/日、100〜250mg/kg体重/日、250〜500mg/kg体重/日、500〜750mg/kg体重/日または750〜1,000mg/kg体重/日の用量で対象に投与される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。

請求項28

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含む医薬組成物または製剤であって、経口、注射、注入、挿管、カテーテル、脊髄内、または頭蓋内での対象への投与または送達に適している、医薬組成物または製剤。

請求項29

タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤を同定するための方法であって、a)セリンラセミ化酵素試験化合物とを、L−セリンの存在下、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下で、接触させる工程と、b)試験化合物が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定し、試験化合物が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減する場合には、試験化合物を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤として同定する工程とを含む方法。

請求項30

タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する候補薬剤を同定するための方法であって、a)セリンラセミ化酵素とL−セリンとを、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下で、試験薬剤の存在下、接触させる工程と、b)試験薬剤が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定し、阻害または低減により、試験薬剤を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する候補薬剤として同定する工程とを含む方法。

請求項31

タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤をスクリーニングする方法であって、a)セリンラセミ化酵素とL−セリンとを、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下で、試験薬剤の存在下、接触させる工程と、b)試験薬剤が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定して、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤をスクリーニングする工程とを含む方法。

請求項32

細胞のタンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを、薬剤が低減または阻害または防止する活性を測定する工程を含む、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。

技術分野

0001

関連出願
本出願は、参照により本明細書に全体として明確に組み込まれる2011年11月21日に出願された米国特許出願第61/562,194号の優先権を主張するものである。

0002

導入
タンパク質翻訳は、20種の標準アミノ酸をタンパク質に組立てる非常に効率的で正確なプロセスである。翻訳のエラー率は、比較的稀で(103〜104に1回)、20種のタンパク質(または基準)アミノ酸識別するシステム能力によって決まる(Zaher, et al., Cell 136, 746-762 (2009))。しかしながら、この稀なエラーにより、tRNA合成酵素によって誤ったアミノ酸が挿入され、タンパク質の誤った折畳みまたは短縮が生じ、その後、細胞損傷が引き起こされる可能性がある。例えば、アラニングルタミン酸に置き換わるマウスのsti(スティッキー突然変異においては、神経変性が生じる(Lee, et al., Nature 443, 50-55 (2006))。本出願人は、本明細書において、シアノバクテリアによって産生される非タンパク質アミノ酸のβ−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)が、ヒトタンパク質に誤って組み込まれ得ることを報告する。また本出願人は、この誤った組込みはL−セリンによって阻害し得ることを報告する。

0003

タンパク質翻訳は、mRNA核酸配列に含まれる情報から遺伝暗号解釈し、ポリペプチド鎖一次配列解読するプロセスである。翻訳レベルでのタンパク質合成忠実度は、tRNA合成酵素によって認識されるアミノ酸とコグネイトtRNAとの特異性に依存する。特定の場合には、2つのタンパク質アミノ酸が同様の構造を有するとき、校正工程でアミノ酸のtRNA合成酵素触媒部位への「適合性」がチェックされ、誤ったアミノ酸が結合していると判断された場合には、その結合は加水分解される(Zaher, et al., Cell 136, 746-762 (2009))。何百もの非タンパク質アミノ酸が存在しており、多くは植物中に天然に存在しているが、一部はアミノ酸の酸化によりin vivoで生じ、他の一部は合成的に製造される(Rubenstein, et al. Medicine (Baltimore) 79, 80-89 (2000); Rodgers, et al., Free Radic Biol Med 32, 766-775 (2002); Rodgers, et al., Int J Biochem Cell Biol 40, 1452-1466 (2008); Bell, J Agric Food Chem 51, 2854-2865 (2003))。20種のタンパク質アミノ酸のいずれかと近い構造の類似体である非タンパク質アミノ酸は、アミノ酸−tRNA合成酵素と結合し、誤ってポリペプチド鎖中に結合するペプチドを生じる可能性がある(Rodgers, et al., Int J Biochem Cell Biol 40, 1452-1466 (2008))。非タンパク質アミノ酸は、タンパク質に組み込まれるためには、tRNAへの結合に関してタンパク質アミノ酸との競合成功するに十分なレベル細胞内に存在する必要がある。タンパク質に誤って組み込まれて病理学的作用を引き起こす非タンパク質アミノ酸の例としては、カナバニン(cavananine)およびL−DOPAが挙げられる(Rubenstein, et al. Medicine (Baltimore) 79, 80-89 (2000); Rodgers, et al., Int J Biochem Cell Biol 40, 1452-1466 (2008); Allende, et al., J Biol Chem 239, 1102-1106 (1964); Rosenthal, et al., Science 196, 658-660 (1977); Rosenthal Quarterly Review of Biology, 52, 155-178 (1977))。

0004

BMAAは、シアノバクテリアおよび他の生物において、タンパク質に関与することが見出されている(Banack, et al., Mar Drugs 5, 180-196 (2007); Cox, et al., Proc Natl Acad Sci U S A 102, 5074-5078 (2005); Murch, et al., Proc Natl Acad Sci U S A 101, 12228-12231 (2004))。シアノバクテリアの毒素BMAAがタンパク質に誤って組み込まれる場合があることは、オートラジオグラフィー分析による研究において、3H−BMAAの単回注射後のマウスにタンパク質形成アミノ酸と同様の分布パターンが報告されたことから裏づけられた(Karlsson, et al., Pigment Cell Melanoma Res 22, 120-130 (2009))。3H−BMAAの取込みは、タンパク質合成が高レベル組織で実証され、放射活性は酸抽出後の組織においても維持された(Karlsson, et al., Pigment Cell Melanoma Res 22, 120-130 (2009))。これらのデータは、タンパク質合成によりBMAAが組み込まれることと合致する。

0005

本明細書に開示されるように、シアノバクテリアによって産生される非タンパク質アミノ酸β−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)は、ヒトタンパク質に誤って組み込まれる可能性がある。このBMAAの誤った組込みは、L−セリンによって阻害し得る。

0006

概要
本明細書に開示されるように、L−セリンは、ヒト細胞培養物におけるBMAAの挿入を阻止し、タンパク質の誤った折畳みを防止することができる。意義深いことに、アポトーシスを介したプログラム細胞死を受けるリスクがあるヒト細胞が、L−セリンの追加によって救済され得る。

0007

アルツハイマー病(AD)は、認知および記憶を損なわせる進行性神経変性疾患である。この最も一般的な認知症の形態の原因は知られていない。アルツハイマー病には、家族性と孤発性があり、この疾患に影響を与えることが知られているリスク因子もある。

0008

アルツハイマー病理学の顕著な特徴の1つは、凝集アミロイドβペプチド(Aβ)と、他のユビキチン化または細胞骨格タンパク物質である。Aβ(主に40または42アミノ酸長)は、全長アミロイド前駆体タンパク質APP)のタンパク質切断によって生じる。APPは、Cu(II)およびZn(II)金属イオン結合部位テール部分に含有する膜タンパク質であり、このテール部分にAβ領域が含まれる。Aβ含有プラークは、この疾患の病因の一部であるが、これより小さいペプチドおよび全長APPのいずれについても機能はほとんど知られていない。プラークを誘導する42アミノ酸長のAβタンパク質は、APPを様々なサブ形態にする通常の切断から生じる。右記の図に示されるAPPに対する2つの経路があり、アミロイド生成経路(左)ではAβ、sAPPβおよびC99に至り、非アミロイド生成経路(右)ではp3、sAPPβおよびC83に至る。

0009

したがって、L−セリン、ならびにL−セリン前駆体、L−セリン誘導体およびL−セリンコンジュゲートは、タンパク質凝集もつれ/プラークならびにタンパク質凝集/もつれ/プラークに関連する疾患(例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病筋萎縮性側索硬化症ALS)、ハンチントン病(HD))の処置緩和および/または防止のための薬物候補であり、ならびに神経変性の疾患進行または継続を遅延または停止することができる処置剤である。

0010

本発明によれば、哺乳動物細胞の1つまたは複数のタンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みの防止、阻害もしくは低減、ならびに哺乳動物細胞の1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集の防止、阻害または低減における、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの方法および使用が提供される。一実施形態において、方法または使用は、細胞を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを防止、阻害または低減するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートと接触させることを含む。別の実施形態において、方法または使用は、細胞を、タンパク質の誤った折畳みまたは凝集を防止、阻害または低減するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートと接触させることを含む。

0011

本発明によれば、対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の軽減またはリスク低下;対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行の安定化、低下または阻害;および対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の処置における、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの方法および使用が提供される。一実施形態において、方法または使用は、対象に、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の軽減またはリスク低下に十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することを含む。別の実施形態において、方法または使用は、対象に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集により引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行を安定化、低下または阻害するために十分な量で投与することを含む。さらなる実施形態において、方法または使用は、対象に、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害を処置するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することを含む。

0012

細胞には、哺乳動物、例えば、霊長類(例えば、ヒト)の細胞が含まれる。細胞の特定の非限定的な例としては、ニューロンまたはグリア細胞が挙げられる。タンパク質の特定の非限定的な例としては、TAR DNA−結合タンパク質43(TDP−43)およびα−シヌクレインが挙げられる。

0013

L−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートとしては、L−セリンポリマーポリセリン)、L−セリンの塩、アルキル化L−セリンまたはL−セリン脂質が挙げられる。またL−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートとしては、L−セリンの塩、例えば、ナトリウム塩カリウム塩カルシウム塩マグネシウム塩亜鉛塩またはアンモニウム塩が挙げられる。L−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートとしては、さらに、アルキル化L−セリン、例えばアルキル基(例えば、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基)を有するL−セリンが挙げられる。L−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートとしては、さらに、L−セリンエステル、L−セリンジエステル、L−セリンのリン酸エステル、L−セリンの硫酸エステルまたはスルホン酸エステル、PEG化L−セリン、脂質付加L−セリン、または1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)部分を有するL−セリンが挙げられる。L−セリン前駆体の非限定的な例は、L−ホスホセリンである。

0014

L−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートは、組成物または製剤、例えば、医薬組成物または製剤に処方してもよい。L−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートは、リポソームまたはミセルに含まれていてもよい。医薬組成物、製剤、リポソームおよびミセルを含むそのような組成物および製剤としては、任意の経路(例えば、経口、注射、注入挿管カテーテル脊髄内、または頭蓋内)での投与または送達に適したものが含まれる。

0015

BMAAの誘導体および異性体としては、限定されないが、2,4−ジアミノ酪酸(2,4−DAB)、2,3−ジアミノ酪酸(2,3−DAB)、N−(2−アミノエチルグリシンAEG)、またはβ−アミノ−N−メチル−アラニン(BAMA)が挙げられる。

0016

神経学的疾患および障害には、例えば、組織学的に、タンパク質の誤った折畳みまたはタンパク質凝集により特徴付けられる疾患および障害が含まれる。神経学的疾患および障害には、運動または認知障害によって特徴付けられる疾患および障害も含まれる。本明細書に記載の方法および使用によって処置可能な神経学的疾患および障害の特定の臨床形態としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性核上麻痺PSP)、レビー小体型認知症(LBD)、筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合(ALS/PDC)、ハンチントン病(HD)、ピック病および前頭側頭型認知症(FTD)が挙げられる。

0017

神経学的疾患または障害の症状の非限定的な例としては、例えば、運動もしくは認知障害;疲労;振戦運動失調症不明瞭な、混雑したもしくは不規則発語筋肉痙攣、ひきつり萎縮もしくは衰弱息切れ摂食呼吸もしくは嚥下困難短期あるいは長期記憶喪失;仕慣れた作業または日常作業の集中または完了困難;空間および時間的混乱視力、色あるいは記号認識喪失;深さ知覚喪失;発語もしくは書字困難判断力喪失;語彙喪失;むら気;短気;攻撃性;偏執;妄想社会的関わりからの退避(withdrawal from social engagement);硬直(stiffness)または固縮(rigidity);微細または粗大運動の制御喪失;動きの鈍化;平衡機能不全(impaired balance);身体的不安定(body instability);姿勢または歩行異常引きずり歩行調整力低下;理学的不安定(physical instability);不安定歩行;運動機能低下;痙攣様の身体の動き;緩慢衝動性眼球運動;身体固縮;発作咀嚼、摂食、嚥下および発語困難;認知的/精神的能力低下;認知症;睡眠行動もしくは精神的異常;発語または思考困難;行動的変化;社会的品行の制御不全;受動性;不活発引きこもり(social withdrawal);無気力;過活動;ペーシング徘徊平衡性喪失(loss of balance);移動時の突進(lunging forward when mobilizing);速歩;平衡異常(imbalance)(例えば、物体または人々への衝突);転倒人格の変化;動きの鈍化;抑制あるいは情報を整理する能力の喪失;不明瞭な発語;嚥下困難;眼麻痺または眼球運動不全;瞼機能不全;顔筋拘縮症;首失調症あるいは首の筋肉硬直を伴う頭の後方傾斜睡眠障害;尿/便失禁;またはパーキンソン症候群が挙げられる。

0018

本発明の方法および使用は、本明細書に記載されるような、または当業者既知のような、神経学的疾患または障害の任意の症状の主観的または客観的改善を提供する方法および使用を含む。特定の実施形態において、方法または使用は、神経学的疾患または障害の1つまたは複数の症状の発生、重症度頻度または期間を防止、低減または阻害する。

0019

本発明の方法および使用は、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの送達または接触のための任意の適切な手段を用いて、対象に、または対象の任意の組織、器官もしくは細胞に投与、送達、または接触させることを含む。特定の実施形態において、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、経口、注射、注入、挿管、カテーテル、または頭蓋内で、方法または使用における対象に投与される。より特定の態様において、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、少なくとも1日1回、対象に、少なくとも1週間、対象に、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12週間、または、対象に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12ヶ月間、投与される。

0020

本発明の方法および使用は、任意選択で、所望の効果を達成することを目的として、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの投与を含む。特定の実施形態において、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、約1〜10mg/日、10〜25mg/日、25〜50mg/日、50〜100mg/日、100〜250mg/日、250〜500mg/日、500〜750mg/日、750〜1,000mg/日、1,000〜2,000mg/日、2,000〜3,000mg/日、3,000〜4,000mg/日、4,000〜5,000mg/日、5,000〜7,500mg/日、7,500〜10,000mg/日、10〜15g/日、15〜20g/日、20〜25g/日、25〜30g/日、30〜40g/日、40〜50g/日、50〜75g/日または75〜100g/日の用量で対象に投与され、約1〜10mg/kg体重、10〜25mg/kg体重、25〜50mg/kg体重、50〜100mg/kg体重、100〜250mg/kg体重、250〜500mg/kg体重、500〜750mg/kg体重または750〜1,000mg/kg体重の用量で対象に投与され、または約1〜10mg/kg体重/日、10〜25mg/kg体重/日、25〜50mg/kg体重/日、50〜100mg/kg体重/日、100〜250mg/kg体重/日、250〜500mg/kg体重/日、500〜750mg/kg体重/日または750〜1,000mg/kg体重/日の用量で対象に投与される。

0021

また本発明は、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減、阻害または防止する薬剤を同定するための方法を提供する。一実施形態において、方法は、セリンラセミ化酵素と、試験化合物とを、L−セリンの存在下、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下で、接触させる工程と、試験化合物が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定する工程とを含む。試験化合物が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減する場合には、試験化合物を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤として同定する。

0022

さらに、本発明は、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する候補薬剤を同定するための方法を提供する。一実施形態において、方法は、セリンラセミ化酵素とL−セリンとを、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下で、試験薬剤の存在下、接触させる工程と、試験薬剤が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定する工程とを含む。阻害または低減により、試験薬剤を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する候補薬剤として同定する。

0023

さらに、本発明は、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤をスクリーニングする方法を提供する。一実施形態において、方法は、セリンラセミ化酵素と、L−セリンとを、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下で、試験薬剤の存在下、接触させる工程と、試験薬剤が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定して、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤をスクリーニングする工程とを含む。

図面の簡単な説明

0024

図1A〜1Bは、MRC−5細胞によるタンパク質への3H−BMAAの取込みと組込みを示す図である。MRC−5細胞を、10%FCS含有HBSS中で、3H−BMAA(31.25nM)とインキュベートした。2、4および16時間後、細胞を溶解し、溶解産物および細胞タンパク質におけるタンパク質濃度および放射活性レベルを測定した。1A:細胞による放射性同位体捕捉は、細胞タンパク質1μgあたりの1分あたりの崩壊(disintegrations per minute、DPM)として表した。1B:細胞タンパク質画分における放射性同位体は、全細胞タンパク質1μgあたりのDPMとして表した。
上記の通り。
シクロヘキシミド(CHX)による、細胞タンパク質への放射性同位体の組込み阻害を示す図である。MRC−5、HUVECおよびSH−SY5Y細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、2μg/mlのCHXの存在または非存在下で、16時間インキュベートした。細胞タンパク質を単離し、細胞タンパク質に存在する放射性同位体の量を、細胞タンパク質あたりのDPMとして表した。CHX処理培養物の細胞タンパク質に存在している放射性同位体の量は、対照培養物(CHXなし)の細胞タンパク質に存在している放射性同位体の量を100%と設定し、これと比較して表した。MRC−5細胞の並行培養物を、3H−ロイシン(41nM)と共に、2μg/mlのCHXの存在下または非存在下[MRC−5(Leu)]で、インキュベートし、CHXの効果を同様に測定した(白色の棒)。***は、スチューデント両側t検定によるP<0.001を示す。
細胞と3H−BMAAとをインキュベートした後の細胞タンパク質からの放射性同位体の取出しを示す図である。SH−SY5Y細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、24時間インキュベートした。細胞タンパク質は、TCA(5%)沈殿により単離した。37℃で、DTT(1mM)ならびにSDS(2%)、DTT(DTT/SDS)と共にインキュベートした後のタンパク質から放出された(すなわち、TCAで沈殿されていない)放射性同位体の量を、緩衝液のみでインキュベートした対照試料での放射性同位体の量と比較して示す。細胞タンパク質を、プロナーゼ(2mg/ml)と48時間(37℃)またはHCl(12M)と12時間インキュベートし、放射性同位体の放出を、プロナーゼについては緩衝液単独と、HClについては水と比較して、定量した。全てのタンパク質試料は、三連で処理した。
図4A−4Cは、細胞タンパク質への放射性同位体の組込みがL−セリンにより阻害されることを示す図である。4A:MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、16時間、L−セリン(0、50、100および250μM)の存在下で、インキュベートした。細胞タンパク質をTCA沈殿によって単離し、細胞タンパク質中の放射性同位体を、細胞タンパク質1μgあたり1分あたりの崩壊(DPM)として表した。各L−セリン濃度での放射性同位体の組込み阻害を、L−セリンを含まない培地で培養した細胞の場合と比較して示す。4B:MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、16時間、250μMのL−セリン(L−SER)または250μMのD−セリン(D−SER)の存在下でインキュベートし、放射性同位体の組込みを、L−セリンを含有しない細胞培養物CTR、100%と設定)と比較した。4C:MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と、16時間、20種全てのタンパク質アミノ酸400μMの存在下(なし)、またはアミノ酸を含有しないハンクス(Hank's)緩衝塩溶液の存在下(全て)、またはL−セリンを除く全19種のタンパク質アミノ酸の存在下(L−セリン)でインキュベートし、細胞タンパク質中の放射性同位体を、1秒あたりの崩壊(DPM)として表した。
上記の通り。
上記の通り。
遊離のBMAAと共に培養培地でインキュベートしたMRC5細胞におけるタンパク質−結合BMAAを示す図である。ピークは、リジンの濃度により標準化した。
図6A−6Dは、BMAAとのインキュベートにより、自家蛍光体の形成と、細胞におけるアポトーシスの変化がもたらされることを示す。自家蛍光は、BMAA(300μM)と96時間インキュベートしたMRC−5細胞で観察され(6A)、これは、L−セリン(300μM)と共にインキュベートすることで防止された(6B)。アポト−シスを検出するためのアクリジンオレンジ壊死を検出するためのエチジウムブロミドとで二重染色したMRC−5細胞に蛍光顕微鏡検査を行うと、BMAA処理細胞における形態学的変化とアポトーシスが進行していることを示す「青白い」細胞の出現が示されたが(6D)、BMAAに曝露せなかった細胞では示されなかった(6C)。フローサイトメトリーを使用した測定で示されるように、500μMのBMAAのみとインキュベートしたSH−SY5Y細胞において、アネキシンV染色の著しい増加が示された。CHX(2μg/mL)またはL−セリン(50μM)と共にインキュベートすることにより、細胞に結合しているアネキシンVが著しく減少し、アポトーシスの減少が示された(6E)。
上記の通り。
上記の通り。
上記の通り。
上記の通り。
L−セリンが、タンパク質へのBMAAの組込みを低減することを示す図である。
L−セリンが、ショウジョウバエ生存を促進し、BMAAにより誘導される死を阻止することを示す図である。
BMAAがゼブラフィッシュ遊泳性能を損なうことを示す図である。
図10A−10Cは、BMAA注射によりニューロン発達の異常が引き起こされることを示す図である。10A:運動ニューロン成長分岐が30時間後に明確に観察された。10Bおよび10C:L−BMAAを注射したでは、ニューロンの短縮(白色の矢印で示す)が観察された。
上記の通り。
上記の通り。

0025

詳細な説明
本明細書に開示されるように、BMAAは、タンパク質に組み込まれ、望ましくないタンパク質の誤った折畳みやタンパク質凝集を引き起こし、結果的にタンパク質の凝集/もつれ/プラークによって特徴付けられるニューロン性障害および疾患を導く可能性がある。L−セリンは、タンパク質へのBMAAの組込みを阻害または防止することができ、それにより、タンパク質の望ましくない凝集を低減および防止し、結果的にタンパク質凝集/もつれ/プラークによって特徴付けられるニューロン性障害および疾患を軽減および防止し得る。したがって、L−セリンならびにL−セリン前駆体、L−セリン誘導体およびL−セリンコンジュゲートは、タンパク質の凝集/もつれ/プラークによって特徴付けられる神経学的障害および疾患の処置として使用し得る。

0026

本発明によれば、1つまたは複数のタンパク質(例えば、細胞内タンパク質)へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みの防止、阻害および低減のための方法および使用、ならびに細胞(例えば、哺乳動物細胞)の1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集の防止、阻害または低減のための方法および使用が提供される。一実施形態において、方法または使用は、細胞に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、細胞(例えば、哺乳動物細胞)のタンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込み(誤ったセリンアミノアシル−tRNA合成酵素との結合)を防止、阻害または低減するために十分な量で、接触させることを含む。BMAAの異性体としては、2,4−ジアミノ酪酸(2,4−DAB)、2,3−ジアミノ酪酸(2,3−DAB)、N−(2−アミノエチル)グリシン(AEG)、およびβ−アミノ−N−メチル−アラニン(BAMA)が挙げられる(Banack et al, Toxicon 56, 868-879(2010);Banack et al, Toxicon 57, 730-738(2011);Jiang et al, Anal Bioanal Chem 403, 1719-1730(2012))。別の実施形態において、方法および使用は、細胞に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、細胞(例えば、哺乳動物細胞)のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集を防止、阻害または低減するために十分な量で接触させることを含む。

0027

本発明によれば、対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害を軽減またはリスク低下するための方法および使用も提供される。一実施形態において、方法または使用は、対象に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集により引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害を軽減またはリスク低下するために十分な量で、投与することを含む。

0028

本発明によれば、さらに、対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行を安定化、防止、低下または阻害するための方法および使用も提供される。一実施形態において、方法または使用は、対象に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集により引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害の進行を安定化、低下または阻害するために十分な量で、投与することを含む。

0029

本発明によれば、さらに、対象における1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集によって引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害を処置するための方法および使用も提供される。一実施形態において、方法または使用は、対象に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、1つまたは複数のタンパク質の誤った折畳みまたは凝集により引き起こされるまたは特徴付けられる神経学的疾患または障害を処置するために十分な量で、投与することを含む。

0030

神経学的障害および疾患は、異常であるか不十分な神経もしくはニューロン細胞数、機能または活性により特徴付けられる。そのような神経およびニューロン細胞は、中枢神経系(CNS、例えば、脳、脊髄)、または末梢神経系(PNS、脳および脊髄の外側、体神経自律神経、および感覚神経系)に存在し得る。そのような障害および疾患によって影響を受けるニューロンの種類としては、単極二極、および多極(例えば、運動)ニューロンが挙げられる。

0031

L−セリンならびにL−セリン前駆体、L−セリン誘導体およびL−セリンコンジュゲートは、対象に、検出可能なまたは測定可能治療的利益または改善を提供し得る。治療的利益または改善は、任意の測定可能なまたは検出可能な、客観的または主観的な、一過性の、一時的なまたはより長期の、対象に対する利益であるか、または、障害もしくは疾患、有害症状、結果または根本的原因の、任意の程度での、対象の組織、器官、細胞または細胞集団の改善である。治療的利益および改善としては、限定されないが、障害または疾患に関連する1つまたは複数の症状または合併症の発生、頻度、重症度、進行もしくは期間、または障害もしくは疾患の根本的原因もしくは結果的な作用の、低減または低下が挙げられる。L−セリンならびにL−セリン前駆体、L−セリン誘導体およびL−セリンコンジュゲート、方法および使用は、それゆえ、対象に、治療的利益または改善を提供することを含む。

0032

本発明の方法および使用には、対象の疾患または障害の症状または根本的原因を改善し、対象にとって有益とみなされる変化を望ましくはもたらす処置方法および使用が含まれる。したがって、処置により、疾患もしくは障害または症状の進行または悪化、さらには疾患または障害の1つまたは複数のさらなる症状の悪化または発生を阻害、低減または防止するなどの改善がもたらされ得る。このように、処置の奏効により、「治療効果」、即ち、対象における疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状の重症度または頻度もしくは根本的原因の阻害、低減または防止がもたらされる。

0033

用語「緩和する」は、対象の状態における検出可能または測定可能な、客観的または主観的改善を意味する。検出可能または測定可能な改善としては、主観的もしくは客観的な、障害もしくは疾患が引き起こすもしくは関連する1つまたは複数の症状の重症度もしくは頻度の低下、障害もしくは疾患の根本的原因の改善、または障害もしくは疾患の回復が含まれる。

0034

疾患または障害の安定化も処置の奏効である。処置の奏効により、疾患または障害の1つまたは複数の症状の重症度または頻度を低減または防止することができ、疾患または障害の進行または悪化を阻害することができ、ある場合には、疾患または障害を逆行させ得る。したがって、神経学的疾患または障害の場合、処置により、例えば、神経学的疾患または障害の1つまたは複数の症状の改善、神経学的疾患または障害の1つまたは複数の症状の安定化、または神経学的疾患または障害の回復が導かれ得る。

0035

神経学的障害および疾患の非限定的な症状としては、限定されないが、運動(例えば、協調運動性)もしくは認知障害;疲労;振戦;運動失調症;不明瞭な、混雑したもしくは不規則な発語;筋肉(例えば、手、腕、脚、嚥下、呼吸、発語に関わる筋肉)の痙攣、ひきつり、萎縮もしくは衰弱;息切れ;摂食、呼吸もしくは嚥下困難が挙げられる。神経学的障害および疾患の非限定的な症状としては、限定されないが、短期あるいは長期記憶喪失;仕慣れた作業または日常作業の集中または完了困難;空間および時間的混乱;視力、色あるいは記号認識喪失;深さ知覚喪失;発語もしくは書字困難;判断力喪失;語彙喪失;むら気;短気;攻撃性;偏執;妄想;社会的関わりからの退避が挙げられるが、これらに限定されない。神経学的障害および疾患の非限定的な症状としては、限定されないが、振戦、硬直または固縮;微細または粗大運動の制御喪失;動きの鈍化;平衡機能不全;身体的不安定;姿勢または歩行異常;引きずり歩行が挙げられる。神経学的障害および疾患の非限定的な症状としては、限定されないが、調整力低下;理学的不安定;不安定歩行;運動機能低下;痙攣様の身体の動き(舞踏病);緩慢な衝動性眼球運動;身体固縮;発作;咀嚼、摂食、嚥下および発語困難;認知症を含む認知的/精神的能力低下;短期および/または長期記憶喪失;睡眠、行動もしくは精神的異常(例えば、不安、うつ、情動喪失、攻撃強迫行動)が挙げられる。神経学的障害および疾患の非限定的な症状としては、限定されないが、さらに、発語または思考困難;行動的変化;社会的品行の制御不全(例えば、エチケット違反無機転、脱抑制犯罪行動);受動性;不活発;引きこもり;無気力;過活動;ペーシング;徘徊が挙げられる。神経学的障害および疾患の非限定的な症状としては、限定されないが、さらに、平衡性喪失;移動時の突進;速歩;平衡異常(例えば、物体または人々への衝突);転倒;人格の変化;動きの鈍化;認知症(例えば、抑制あるいは情報を整理する能力の喪失);不明瞭な発語;嚥下困難;眼麻痺または眼球運動不全(特に患者が経験した転倒の一部に関係する縦方向運動不全);瞼機能不全;顔筋拘縮症;首失調症あるいは首の筋肉硬直を伴う頭の後方傾斜;睡眠障害;尿/便失禁;またはパーキンソン症候群が挙げられる。本発明による方法および使用、例えば処置には、前述の症状のいずれかを、任意の程度または期間、改善または緩和する処置が含まれる。

0036

本発明による方法および使用、例えば処置は、その疾患または障害の根本的原因にも影響を及ぼすことを含む。したがって、神経学的疾患または障害の場合には、例えば、神経学的障害の臨床的重症度の客観的または主観的尺度による状態の悪化の安定化または軽減が、処置の奏効と考えられる。例えば、筋萎縮性側索硬化症の機能的な評定尺度(ALSFRS)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療的臨床試験で使用するために考案された10項目の機能的目録である。食事、身づくろい、歩行(運動性および発動力)、コミュニケーションなどの機能が、尺度の一部である。したがって、ALSの根本的原因の改善は、例えば、1つまたは複数の機能項目の改善によって反映され得る。

0037

治療上の利益または改善が所望の結果である本発明の方法または使用では、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートが、必要とする対象に十分な量または有効な量で投与され得る。「十分な量」または「有効な量」とは、単回用量または複数回用量で、単独または1つまたは複数の他の組成物(化学療法剤または免疫刺激薬などの治療薬剤)、処置、治療プロトコル投与計画もしくは薬剤と組み合わせて、任意の持続期間(短期または長期)の検出可能な応答、所望の結果、または任意の測定可能もしくは検出可能な程度もしくは持続期間(例えば、数時間、数日間、数ヶ月間、数年間、または治癒まで)で対象への利益をもたらすために、計算されるまたは可能性のある量を指す。処置のため(例えば治療上の利点または改善を提供するため)の用量または「十分な量」もしくは「有効な量」は、典型的には、障害もしくは疾患または障害もしくは疾患の1つ、複数もしくは全ての有害な症状、結果または合併症を、測定可能な程度に緩和するために有効である。但し、障害もしくは疾患または症状の進行または悪化の軽減または阻害(例えば、安定化)も満足な結果と考えられる。

0038

したがって、処置は、障害もしくは疾患または関連する症状もしくは結果または根本的原因の阻害、低減または防止;障害もしくは疾患、症状もしくは結果または根本的原因の進行もしくは悪化の阻害、低減または防止;あるいは障害、疾患または症状のさらなる悪化または1つまたは複数の追加の症状の発生の阻害、低減または防止をもたらし得る。したがって、処置の奏効により、「治療効果」もしくは「利益」、または、対象における疾患もしくは障害の1つまたは複数の症状、根本的原因もしくは結果の発生、頻度、重症度、進行、もしくは期間の阻害、低減または防止がもたらされる。したがって、障害もしくは疾患または症状の根本的原因の1つまたは複数に影響を及ぼす処置方法および使用は有益とみなされる。障害または疾患の進行または悪化の安定化もしくは阻害または低減も、処置の奏効である。

0039

したがって、治療上の利益または改善は、障害または疾患に関連する症状、合併症、結果または根本的原因のいずれか1つ、ほとんど、または全てを完全に除去する必要はない。したがって、対象の状態が緩やかに改善したのみであっても、例えば、発生、頻度、重症度、進行もしくは期間の部分的低減、または短期間もしくは長期間(数分間、数時間、数日間、数週間、数か月間など)にわたる障害または疾患の1つまたは複数の生理学的、生化学的もしくは細胞的発現もしくは特徴の1つまたは複数の関連する有害症状、合併症、結果、根本的原因、悪化もしくは進行の阻害または逆行(例えば、疾患または障害の1つまたは複数の症状又は合併症の安定化)であっても、十分な目的が達成される。

0040

治療上の利益または処置効力は、本明細書で記載する神経学的障害または疾患によって特徴付けられるまたは関連する1つまたは複数の症状の改善によって、観察または測定される。神経学的障害および疾患に対する治療上の利益または改善の特定の非限定的な例としては、限定されないが、以下の症状に関するもの(例えば、有害症状または有害症状の進行の低減または低下)が挙げられる:運動(例えば、協調運動性)もしくは認知障害;疲労;振戦;運動失調症;不明瞭な、混雑したもしくは不規則な発語;筋肉(例えば、手、腕、脚、嚥下、呼吸、発語に関わる筋肉)の痙攣、ひきつり、萎縮もしくは衰弱;息切れ;摂食、呼吸もしくは嚥下困難;神経学的短期あるいは長期記憶喪失;仕慣れた作業または日常作業の集中または完了困難;空間および時間的混乱;視力、色あるいは記号認識喪失;深さ知覚喪失;発語もしくは書字困難;判断力喪失;語彙喪失;むら気;短気;攻撃性;偏執;妄想;社会的関わりからの退避;振戦、硬直または固縮;微細または粗大運動の制御喪失;動きの鈍化;平衡機能不全;身体的不安定;姿勢または歩行異常;引きずり歩行;調整力低下;理学的不安定;不安定歩行;運動機能低下;痙攣様の身体の動き(舞踏病);緩慢な衝動性眼球運動;身体固縮;発作;咀嚼、摂食、嚥下および発語困難;認知症を含む認知的/精神的能力低下;短期および/または長期記憶喪失;睡眠、行動もしくは精神的異常(例えば、不安、うつ、情動喪失、攻撃、強迫行動)、発語または思考困難;行動的変化;社会的品行の制御不全(例えば、エチケット違反、無機転、脱抑制、犯罪行動);受動性;不活発;引きこもり;無気力;過活動;ペーシング;徘徊;平衡性喪失;移動時の突進;速歩;平衡異常(例えば、物体または人々への衝突);転倒;人格の変化;動きの鈍化;認知症(例えば、抑制あるいは情報を整理する能力の喪失);不明瞭な発語;嚥下困難;眼麻痺または眼球運動不全(特に患者が経験した転倒の一部に関係する縦方向の運動不全);瞼機能不全;顔筋拘縮症;首失調症あるいは首の筋肉硬直を伴う頭の後方傾斜;睡眠障害;尿/便失禁;またはパーキンソン症候群。本発明による方法および使用、例えば処置には、前述の症状のいずれかを、任意の程度または期間、改善するまたは緩和する処置が含まれる。

0041

追加の例としては、確立された基準と比較した様々な機能の測定が挙げられる。例えば、知能的(認知)機能、例えば、記憶試験または物理的機能の評価により、疾患の状態をさらに特徴付けることができる。神経学的障害または疾患の治療上の利点または処置効力(または神経学的障害もしくは疾患の重症度)は、機械的手段または計器により確認されるかまたは測定することもできる。特に、神経学的障害または疾患に罹患している人の脳のポジトロン電子断層撮影法(PET)走査により、機能の損失がある程度を示すことができる。コンピュータ断層撮影(CT)あるいは磁気共鳴画像MRI)、あるいは単一の陽電子放射形コンピュータ断層撮影(SPECT)あるいは陽電子放射断層撮影(PET)などの画像を使用して、大脳病理または認知症の小分類を同定し、神経学的障害または疾患の治療上の利益または処置の効果、もしくは神経学的障害または疾患の重症度を確認することができる。

0042

アルツハイマー病(AD)に関しては、認知障害の一般に使用される基準は、確立されているNINCDS−ADRDAアルツハイマー臨床診断基準である。認識の8つの領域、すなわち、記憶、言語、知覚視覚的な色、深さ、記号認識)、注意の構成的/機能的能力、方向付け問題解決能力が、ADでは、ほぼ一般的に機能低下している。したがって、これらの領域は、診断において、およびADの何らかの改善において、有用となり得る。アルツハイマー病疾患に罹患している人の脳をPET走査すると、典型的に、側頭葉の中で二頭頂骨代謝低下が示される。

0043

筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリッグ疾患としても知られる)に関しては、診断は、主に、症状および徴候ならびに他の疾患を除外する試験に基づく。神経学的検査を用いて、症状、例えば、筋衰弱、筋萎縮反射亢進および痙縮が、存在しているか、または経時的に悪化するかが評価される。ALSを、類似の症状のある疾患または障害と区別するこれらの試験法の1つは、筋肉の電気的な活動を検出して記録する技術である筋電図検査EMG)である。一定のEMGの知見により、ALSの診断を裏付けることができる。別の一般的な試験法は、神経伝導速度(NCV)を測定するものである。NCVの特定の異常により、例えば、患者がALSではなく、末梢ネオパシー(末梢神経系の損傷)またはミオパシー筋肉疾患)であることが示唆され得る。MRI走査が、ALS罹患患者に対して通常よく行われるが、症状を引き起こし得る別の問題点、例えば、脊髄腫瘍、首の椎間板ヘルニア脊髄空洞症または頚部脊椎症などが明らかになり得る。

0044

パーキンソン病に関しては、発症の診断は、例えば、本明細書に記載されるような、疾患に特有の身体的および/または精神的症状の出現に従って行うことが可能である。特徴的な症状としては、振戦、身体の硬直または固縮;微細または粗大運動の制御喪失;動きの鈍化;平衡機能不全;身体的不安定;姿勢または歩行異常;引きずり歩行;調整力低下;理学的不安定;不安定歩行;運動機能低下;痙攣様の身体の動き(舞踏病);緩慢な衝動性眼球運動;身体固縮;発作;咀嚼、摂食、嚥下および発語困難;認知的/精神的能力低下;認知症を含む短期および/または長期記憶喪失;睡眠、行動もしくは精神的異常(例えば、不安、うつ、情動喪失、攻撃、強迫行動)が挙げられる。

0045

ハンチントン病(HD)に関しては、発症の診断は、例えば、本明細書に記載されるような、疾患に特有の身体的および/または精神的症状の出現に従って行うことが可能である。突然で、不規則なタイミングおよび間隔での身体の一部における過度不随意の動きにより、HDとの診断が示唆される。認知または精神的症状が最初に診断されることはめったになく、通常、結果的に解釈されるか、またはさらに症状が発達したときにのみ認識される。疾患の進行は、統一化されたハンチントン病評価尺度を使用して測定され、この尺度には、運動、行動、認知および機能的評価に基づく全体的な評価が含まれる。CTおよびMRIなどの医学的画像により、疾患初期において尾状核の萎縮が示される場合があるが、これらの変化のみでは、HDと診断されない。大脳の萎縮が、疾患の進行段階で見られる場合がある。HDの家族歴が無い場合は、遺伝的検査を使用して、理学的診断の確認がなされる場合がある。症状の発症前であっても、遺伝的検査により、個体がHT遺伝子内に、疾患の引き金となるトリヌクレオチドCAG反復拡大コピーを保有していないかを確認することができる。HDは、常染色体優先遺伝パターンに従うため、リスクのある個体を容易に同定することができる。発症よりかなり前に陽性の結果が得られる場合もある。陰性の試験結果は、個体が遺伝子の拡大コピーを保有していないことを意味し、したがってHDが発症することはない。

0046

ピック病(PD)に関しては、最も広く知られている基準は、英国パーキンソン病協会脳バンク(UK Parkinson's Disease Society Brain Bank)および米国国立神経疾患脳卒中研究所(U.S. National Institute of Neurological Disorders and Stroke)によるものである。PD協会脳バンクによる基準では、緩慢な動き(ブラジキネジア)と、硬直性安静時の振戦または体位不安定のいずれかとが必要とされる一方、これらの症状の他に考えられる要因は排除される。さらに、以下の特徴の3つ以上が、発症または進行において必要とされる:一側性の発症、安静時の振戦、着実な進行、運動症状非対称性、少なくとも5年間のレボドパに対する反応性、少なくとも10年間の臨床経過、レボドパの過剰摂取によって誘導されるジスキネジアの出現。

0047

前頭側頭型認知症(FTD)に関しては、診断は、例えば、行動の変化、言語の変化に、神経心理学的試験および画像診断が組み合わされて、主に臨床的になされる。構造的MRI走査により、前頭葉および/または前部の側頭葉の萎縮が明らかにされることが多いが、初期の段階では、走査結果は正常と示され得る。萎縮は、しばしば非対称的である。異なる時点で(例えば、1年空けて)取得した画像を比較すると、正常と報告された可能性のある2つの横断面画像に萎縮の証拠が示される場合もある。FDG−PET走査により、典型的に、前頭葉および/または前部の側頭葉の代謝低下が示され、このことも、FTDとアルツハイマー病との識別に役立つ。

0048

十分な量または有効な量は、単回投与してもよいが、必ずしもその必要はなく、単独でまたは他の組成物、処置、プロトコルもしくは治療計画と組み合わせて投与することができるが、必ずしもそうする必要もない。例えば、量は、対象、処置される障害または疾患の状態、処置の副作用の示す必要性に応じて、比例的に増加させてもよい。加えて、十分な量または有効な量は、第2の組成物、処置、プロトコル、または治療計画を伴わない単回用量または複数回用量で与えられる場合にも十分または有効である必要はない。その理由は、所与の対象で有効または十分とみなされるために、そのような用量を上回るまたは超える追加の用量、量もしくは期間、または追加の組成物、処置、プロトコルまたは治療計画が含められ得るためである。

0049

十分とみなされる量には、別の処置、治療計画またはプロトコルの使用の低減をもたらす量も含まれる。例えば、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体またはコンジュゲートの十分な量または有効な量が、投与により、神経学的障害または疾患の処置に必要とされる薬物または他の療法もしくはプロトコルの量または頻度を減少させる場合、治療効果を有する量とみなされる。

0050

十分な量または有効な量は、防止的または治療的に処置された対象、特定の対象、または所与の群もしくは集団で処置された対象の一部もしくは大半のそれぞれおよび全てに有効である必要はない。処置または治療法においては通例であるように、一部の対象は、所与の処置、治療計画またはプロトコルに対して、過剰または過小な応答を示す。十分な量または有効な量は、群または一般的な集団に対して十分または有効な量ではなく、所与の1対象に対して十分または有効な量を指す。そのような量は、部分的に、処置される疾患あるいは障害に依存し、例えば、障害または疾患の種類または段階(初期または進行期)、所望の治療効果、ならびに個々の対象(例えば、対象の生物学的活性性別年齢など)に依存する。

0051

本発明の方法、使用および組成物のための十分な量としては、約1〜10ミリグラム(mg)、10〜25mg、25〜50mg、50〜100mg、100〜250mg、250〜500mg、500〜750mg、750〜1,000mg、1,000〜2,000mg、2,000〜3,000mg、3,000〜4,000mg、4,000〜5,000mg、5,000〜7,500mg、7,500〜10,000mg、10〜15グラム(g)、15〜20g、20〜25g、25〜30g、30〜40g、40〜50g、50〜75gまたは75〜100gが挙げられる。十分な量は、対象の質量(例えば、キログラム(kg))に従って用いられ得る。例えば、ヒト対象に関して、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの量としては、対象の約1〜10mg/kg体重、10〜25mg/kg体重、25〜50mg/kg体重、50〜100mg/kg体重、100〜250mg/kg体重、250〜500mg/kg体重、500〜750mg/kg体重、750〜1,000mg/kg体重、1〜5g/kg体重または5〜10g/kg体重が挙げられる。本発明の方法、使用および組成物に関するそのような量は、より少ない量、例えば、約50〜500、500〜5000、5000〜25,000または25,000〜50,000ng/kgからであり得る。

0052

本発明の方法および使用は、症状が開始する前(即ち、防止)もしくは後、または症状もしくは疾患または障害が発達する前または後に、実施することができる。症状の発症の前または直後に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することにより、対象において、症状の重症度もしくは頻度または神経学的障害の根本的原因を低減し得る。さらに、1つまたは複数の症状の発症の前または直後に、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを投与することにより、症状または神経学的障害もしくは疾患の根本的原因を安定化させ、または進行もしくは悪化を遅らせることができる。

0053

本発明の方法および組成物は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで使用し得る。組成物は、単回投与形態または複数回投与形態で、連日もしくは隔日または断続的に、対象に投与または送達することができる。例えば、単回投与形態または複数回投与形態は、隔日または断続的に、約1〜7日、もしくは7〜45日、もしくは45〜90日または約1〜4、4〜8、8〜12、12〜18、18〜24、24〜48週、またはそれ以上の週にわたって対象に投与または送達することができる。

0054

用語「接触」は、2以上の実体間(例えば、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲート、または細胞内の標的分子)の間の直接的または間接的な結合または相互作用を指す。本明細書で使用するとき、接触には、溶液中、固相中、in vitro、ex vivo、細胞内およびin vivoでの接触が含まれる。in vivoでの接触は、投与すること、投与またはin vivo送達として参照される場合がある。

0055

用語「対象」は、動物、典型的には哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類ベルベットゴリラチンパンジーオランウータンマカークテナガザル)、家庭用動物(イヌおよびネコ)、農業用動物(ウマウシヤギヒツジブタ)、実験動物(マウス、ラットウサギモルモット)およびヒトを指す。ヒト対象には、成人および子供が含まれる。ヒト対象には、神経学的障害の罹患者または罹患リスクのある者が含まれる。リスクのある対象は、神経学的障害の素因または神経学的障害の家族歴、例えば、ケラチン様組織または血漿におけるBMAAの蓄積(例えば、米国特許第7,256,002号および第7,670,783号)に関しての遺伝的スクリーニングを通じて同定し得る。対象には、さらに、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートのin vivo有効性を試験するための疾患モデル動物(例えば、マウスおよび非ヒト霊長類など)が含まれる。

0056

また本発明は、L−セリンに関連する1つまたは複数の活性を生じ得る量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含む組成物も提供する。一実施形態において、組成物は、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、神経学的障害を処置するために十分な量で含む。別の実施形態において、組成物は、神経学的障害の1つまたは複数の症状を阻害、逆行、緩和または軽減するために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含む。さらに別の実施形態において、組成物は、神経学的障害の根本的原因を逆行させるために十分な量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含む。

0057

本発明の方法、使用および組成物に関するL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの量には、約1〜10ミリグラム(mg)、10〜25mg、25〜50mg、50〜100mg、100〜250mg、250〜500mg、500〜750mg、750〜1,000mg、1,000〜2,000mg、2,000〜3,000mg、3,000〜4,000mg、4,000〜5,000mg、5,000〜7,500mg、7,500〜10,000mg、10〜15グラム(g)、15〜20g、20〜25g、25〜30g、30〜40g、40〜50g、50〜75gまたは75〜100gが挙げられる。量は、対象の質量(例えば、キログラム(kg))に従って生じるおよび/または提供される場合もある。例えば、ヒト対象に関して、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの量は、ヒトの質量に応じて調整し得る。L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートのそのような量としては、対象の約1〜10mg/kg体重、10〜25mg/kg体重、25〜50mg/kg体重、50〜100mg/kg体重、100〜250mg/kg体重、250〜500mg/kg体重、500〜750mg/kg体重、750〜1,000mg/kg体重、1〜5g/kg体重または5〜10g/kg体重が挙げられる。そのような量は、より少ない量、例えば、約50〜500、500〜5000、5000〜25,000または25,000〜50,000ng/kgであり得る。

0058

本発明の方法および使用は、必要に応じ、本明細書に記載されるような量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを使用して実施し得る。L−セリンの誘導体またはコンジュゲートは、L−セリンの官能基のアミノ部分(NH2)、酸部分(−COOH)および/またはヒドロキシル部分(−OH)の基の任意の1つ、任意の2つ、または3つ全てが修飾(例えば、保護基)を有していてもよい。修飾基は、in vivoで切断されて遊離のL−セリンを生ずるもの、および加水分解性保護基であり得る。適切な基は、薬学的に許容される基であり、通常、実質的に非毒性の基である。L−セリンの誘導体またはコンジュゲートは、遊離のL−セリンと比較して安定性および/または溶解性が増大しており、活性なL−セリン化合物の保存、投与および取込みに役立つ。これらのおよび当業者に公知の他のL−セリン誘導体およびコンジュゲートが、本発明の方法、使用および組成物(例えば、医薬組成物)に含められる。

0059

L−セリン誘導体およびコンジュゲートの非限定的な例としては、ヒドロキシル部分が、誘導体化されて、エステル、カーボネートホスフェートおよびスルホネートエステルを含む保護されたヒドロキシルを形成しているものが挙げられる。L−セリンのヒドロキシル基は、L−セリンのアミノ部分または酸部分を先に保護した後で適切なカルボニルホスホニルまたはスルホニル求電子基で、選択的にエステル化され得る。典型的には、アミノ保護基および酸保護基の一方または両方を、ヒドロキシル部分の選択的なエステル化の後に除去することができ、両方の保護基が除去される場合には、酸およびアミノ保護基の生体適合性は問題にはならない。アミノ保護基の非限定的な例としては、限定されないが、tert−ブトキシカルボニル(Boc)およびカルボベンジルオキシ(CBz)が挙げられ、これらはそれぞれ酸性および水素化分解条件下で除去可能である。適切な酸保護基としては、tert−ブチル(tBu)およびベンジル(Bn)エステルが挙げられ、これらはそれぞれ酸性および水素化分解条件下で除去可能である。適切なヒドロキシル保護基としては、カルボン酸リン酸ホスホン酸硫酸およびスルホン酸のエステル、ならびに当業者にとって公知の他のヒドロキシル保護基が挙げられる。当業者であれば、ヒドロキシルが保護されたL−セリンが、遊離のアミノ酸として両性イオン種で存在してもよく、またプロトン酸付加塩に容易に変換されてもよいことを理解するであろう。

0060

アミノ部分が誘導体化されているL−セリン誘導体およびコンジュゲートの非限定的な例としては、アミドウレアまたはカルバメート含有L−セリンの形成が挙げられる。L−セリンのアミノ部分は、L−セリンのヒドロキシル部分および酸部分を先に保護した後で選択的に誘導体化することができる。L−セリンのヒドロキシル部分および酸部分の両方を、アミノ基を最終的に誘導体化した後に除去可能な基で保護してもよい。典型的には、ヒドロキシル部分および酸部分の一方または両方が、L−セリンアミノ部分を選択的に誘導体化した後に、除去される。

0061

L−セリン誘導体およびコンジュゲートには、酸部分の誘導体化を含めることができ、この酸部分はL−セリンのヒドロキシルおよびアミノ部分を保護した後に選択的に誘導体化し得る。L−セリンのヒドロキシル部分およびアミノ部分の両方を、酸部分を最終的に保護した後に除去可能な基で保護することができる。典型的には、ヒドロキシルおよびアミノ部分保護基の一方または両方が、L−セリン酸部分を選択的に誘導体化した後に、除去される。

0062

様々なさらなる実施形態において、L−セリンコンジュゲートとしてはポリマーが挙げられる。例えば、L−セリンは、他のアミノ酸を含む小(例えば、2〜10)残基ペプチド内であり得る。この実施形態においては、酵素(例えばペプチダーゼおよびペプシン)によりペプチドを個々のアミノ酸に切断し、L−セリンを遊離させることができる。そのような実施形態において、ペプチドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20など、またはそれ以上のL−セリン分子Ser−[Ser]n(ここでnは1〜1000)を含み得る。投与されたペプチドより、セリンまたは後で加水分解される小さいセリンペプチドが生じる。

0063

L−セリン誘導体およびコンジュゲートを調製するために有用な出発材料は、市販されているか、または周知の合成方法により調製し得る(Harrison et al., "Compendium of Synthetic Organic Methods", Vols. 1-8(John Wiley and Sons, 1971-1996); "Beilstein Handbook of Organic Chemistry,"Beilstein Institute of Organic Chemistry, Frankfurt, Germany;Feiser et al., "Reagents for Organic Synthesis, "Volumes 1-17, Wiley Interscience;Trost et al., "Comprehensive Organic Synthesis, "Pergamon Press,1991;"Theilheimer's Synthetic Methods of Organic Chemistry, "Volumes 1-45, Karger, 1991;March," Advanced Organic Chemistry, "Wiley Interscience, 1991;Larock" Comprehensive Organic Transformations, "VCH Publishers, 1989;Paquette," Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis," John Wiley & Sons, 1995)。ヒドロキシル保護されたセリン化合物およびアミノ酸保護基の合成のための他の方法は、当業者にとって容易に明らかとなる。

0064

L−セリン、L−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートならびにその組成物(例えば、医薬製剤)は、全身的に、局部的に、または局所的に、任意の経路で投与し得る。例えば、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、静脈内、経口的(例えば、摂取)、頭蓋内、脊髄内、筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、内、経皮(局所)、非経口的(例えば、経粘膜および直腸内)に、投与し得る。本発明の方法、使用、ならびにL−セリンおよびL−セリンの前駆体、誘導体およびコンジュゲートならびにその組成物は、医薬製剤を含め、マイクロ化カプセル化された送達系、または持続的、連続的もしくは断続的投与のためのインプラントへのパッケージ化を介して投与することができる。

0065

組成物には、さらに、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを含有する医薬製剤も含まれる。そのような医薬製剤は、本明細書に開示された1つまたは複数の活性を有する量で、薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、製剤化され得る。様々な実施形態において、医薬製剤は、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、目的とする効果を達成するために十分な量で含む。

0066

本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」は、対象に投与することができ、好ましくは過剰な有害副作用(例えば、吐気腹痛頭痛など)を生じない担体、賦形剤、希釈剤などを指す。投与のためのそのような調製物には、滅菌水性または非水性の溶液、懸濁液および乳化液が挙げられる。

0067

医薬製剤は、対象への投与に適合し得る担体、希釈剤、賦形剤、溶媒分散媒被覆剤抗菌剤および抗真菌剤等張剤および吸収遅延剤等から作製し得る。そのような製剤は、錠剤被覆または被覆されていない)、カプセル硬質または軟質)、マイクロビーズ乳剤粉末顆粒結晶、懸濁液、シロップまたはエリキシル剤に含有され得る。補足的に活性な化合物および保存剤は、添加剤の中でも、例えば、抗微生物剤酸化防止剤キレート剤不活性気体なども表す場合がある。

0068

医薬製剤は、その意図する投与経路に適合するように製剤化され得る。したがって、医薬製剤は、投与経路[例えば、腹腔内、皮内、皮下、経口的(例えば、摂取または吸入)、静脈内、窩内、頭蓋内、脊髄内、経皮的(局所)、非経口的(例えば、経粘膜および直腸)]に適した担体、希釈剤、または賦形剤を含む。

0069

非経口的、皮内、または皮下に適用するために使用される溶液または懸濁液としては、無菌の希釈剤、例えば、注射用水食塩水不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリンプロピレングリコールもしくは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールもしくはメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸もしくは亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸緩衝剤、例えば、アセテートシトレート、もしくはホスフェート;および等張性調節剤、例えば塩化ナトリウムもしくはデキストロースを挙げることができる。pHは、酸または塩基、例えば、塩酸または水酸化ナトリウムによって調整し得る。非経口調製物は、アンプル使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作られた多回投与バイアル封入することができる。

0070

注射に適した医薬製剤としては、滅菌水溶液水溶性である場合)もしくは分散物および滅菌注射溶液もしくは分散物の即時調製に適した滅菌粉末を挙げることができる。静脈内投与の場合、適切な担体としては、生理的食塩水静菌水、Cremophor EL.(商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水PBS)を挙げることができる。担体は、溶媒または分散媒、例えば、水、エタノールポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびその適切な混合物であり得る。流動性は、例えば、レシチンなどにより被覆することによって、分散物の場合には必要とされる粒子径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって、維持することができる。微生物による作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベンクロロブタノールフェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成し得る。等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール(例えば、マンニトールソルビトール)、塩化ナトリウムも、本組成物に含めることができる。注射用製剤の吸収延長は、組成物に、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによって、達成することができる。

0071

経口投与の場合、L−セリン、L−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲート、またはその組成物を、賦形剤と共に、錠剤、トローチ、またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の剤型に組み込むことができる。薬学的に適合可能な結合剤および/または佐剤物質も、経口製剤に含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどには、次の成分または同様の性質を有する化合物のいずれかを含めることができる:結合剤(例えば、微結晶性セルローストラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸プリモゲル(Primogel)またはコーンスターチ)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes);滑剤(glidani)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、ショ糖またはサッカリン);芳香剤(例えば、ペパーミントサリチル酸メチルまたは香料)。

0072

製剤には、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートを、分解または身体からの排出から保護する担体も含めることができ、例えば、活性成分複数可)の体内での分解を遅くし、次いで放出を遅くする物質を含む徐放製剤が挙げられる。例えば、遅延物質として、モノステアリン酸グリセリンまたはステアリン酸グリセリン単独もしくはステアリン酸グリセリンとワックスとの組合せなどを利用し得る。

0073

さらなる製剤には、生分解性もしくは生体適合性粒子またはポリマー物質、例えば、ポリエステルポリアミン酸ヒドロゲルポリビニルピロリドンポリ無水物ポリグリコール酸エチレン酢酸ビニルメチルセルロースカルボキシメチルセルロース硫酸プロタミンまたはラクチドグリコリドコポリマーポリラクチド/グリコリドコポリマー、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーを含め、投与された組成物の送達を制御することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者にとって既知である。これらの材料は、例えば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals、Incから商業的に入手することもできる。

0074

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの放出速度は、そのようなマクロ分子の濃度または組成を変化することによって制御することができる。例えば、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、コアセルベーション技術または界面重合によって、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルもしくはポリメチルメタクリレート)(poly(methylmethacrolate)マイクロカプセルの使用によって調製されたマイクロカプセル内に、あるいはコロイド薬物送達系に封入することができる。コロイド分散系としては、マクロ分子複合体、ナノカプセルマイクロスフェア、マイクロビーズが含まれ、脂質をベースとする系としては、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームが挙げられる。これらは、当業者にとって既知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号に記載の方法に従って調製することができる。

0075

投与に適したさらなる医薬製剤は、当技術分野で既知であり、本発明の方法、使用および組成物に適用し得る(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(1990) 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa.;The Merck Index(1996) 12th ed., Merck Publishinggroup, Whitehouse, N.J.およびPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms, Technonic Publishing Co.,Inc., Lancaster,Pa.,(1993)を参照)。

0076

本発明のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、他の組成物との組合せを含むことができ、また本発明の医薬組成物に含めることができる。例えば、神経学的障害を処置するために使用する薬物を、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートと共に含めることができる。

0077

L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートは、それらの医薬製剤を含め、キットパッケージすることができ、キットには、任意選択で、例えば本発明の方法または使用を実施する使用説明書などを含めることができる。したがって、本発明は、キットを提供する。一実施形態において、キットは、適切なパッケージング材料にパッケージされたL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートおよび/または医薬製剤を含めることができる。さらなる実施形態において、キットは、本発明の方法を実施化するラベルまたは添付文書を含む。したがって、一実施形態において、キットは、神経学的障害を有する対象またはそのリスクのある対象を、in vitro、in vivoまたはex vivoで処置するための説明書を含む。さらなる実施形態では、キットは、神経学的障害に罹患している対象を、in vivoまたはex vivoで処置するための指示を含むラベルまたは添付文書を含む。

0078

本明細書で使用するとき、用語「パッケージング材料」は、キットの各構成成分を収容する物理的構造体を指す。パッケージング材料は、構成成分を無菌に維持することができ、そのような目的のために一般的に使用される材料(例えば、紙、波状繊維、ガラス、プラスチック、箔、アンプルなど)で作製され得る。ラベルまたは添付文書には、適切な書面による指示、例えば、本発明の方法および使用を実施化するための指示を含むことができる。それゆえ、本発明のキットには、追加的に、本発明の方法または使用においてキット構成成分を使用するための指示を含むことができる。

0079

説明書には、本明細書に記載の本発明の方法または使用のいずれかを実施化するための指示を含めることができる。したがって、L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートおよびそれらの医薬組成物は、容器パックまたはディスペンサーに、対象への投与のための指示書と共に含めることができる。指示には、さらに、適応症、目的を満たす臨床エンドポイント、起こり得る有害症状、またはヒト対象に使用するために米国食品医薬品局から要請されている追加情報が含まれ得る。

0080

指示は、「印刷物」、例えば、キット内の紙もしくはボール紙、キットもしくはパッケージング材料に添付されているラベル、またはキットの構成成分を含有するバイアルもしくはチューブに付着されているラベル上に示されてもよい。指示は、音声またはビデオテープを含んでもよく、これらは任意選択で、コンピュータ可読媒体、例えば、ディスクハードディスク)、光学CD(例えば、CD)、またはDVD−ROM/RAM、磁気テープ電子的記憶媒体(例えば、RAMおよびROM)、およびそのような磁気光学的記憶媒体ハイブリッドに含めることができる。

0081

本発明のキットには、さらに、相乗または相加効果を奏するか、または神経学的障害の1つまたは複数の症状を低減または緩和する1種以上の薬物を含めることもできる。例えば、神経学的障害の症状を低減または低下させる薬物を含めてもよい。本発明のキットは、さらに、緩衝剤、保存料、または安定化剤を含めてもよい。さらに、キットには、処置の活性または効果をアッセイするための対照構成成分を含めてもよい。キットの構成成分はそれぞれ別個の容器内に封入することができる。例えば、キットには、本明細書に記載のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの単回単位用量を含めることができる。あるいは、キットには、本明細書に記載のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲートの多回単位用量を含めることができる。例えば、多回単位用量のそれぞれは、一定量のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体またはコンジュゲートを、別個の容器に含むことができる。キットの構成成分は、1個または複数個の容器の混合物であってもよく、様々な容器の全てが、1個または複数個のパッケージに入れられていてもよい。

0082

本発明は、セリンラセミ化酵素活性を調節する薬剤をスクリーニング、検出および同定するための無細胞系および細胞系の方法、ならびに、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)、またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを調節する薬剤をスクリーニング、検出および同定するための方法を提供する。方法は、溶液中、固相中、in silico、in vitro、細胞内およびin vivoで実施し得る。

0083

一実施形態において、薬剤をスクリーニングする方法は、セリンラセミ化酵素を、L−セリンがD−セリンに変換され得る条件下、試験薬剤の存在下、接触させる工程と、試験薬剤が、L−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定する工程とを含む。別の実施形態において、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤を同定する方法は、セリンラセミ化酵素を、試験化合物と、L−セリンの存在下、L−セリンがセリンラセミ化酵素によりD−セリンに変換される条件下で接触させる工程と、試験化合物が、L−セリンからセリンラセミ化酵素によるD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定する工程とを含む。セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換が試験薬剤または試験化合物の存在下で低減または阻害されることにより、試験薬剤または試験化合物を、L−セリンからD−セリンへの変換を低下、低減、阻害または低減する薬剤、またはタンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減、阻害または防止する薬剤として同定する。

0084

さらなる実施形態において、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAA誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する候補薬剤を同定する方法は、セリンラセミ化酵素を、L−セリンと、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下、試験薬剤の存在下で、接触させる工程と、試験薬剤が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかどうかを判定する工程とを含む。D−セリンの阻害または低減により、試験薬剤を、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する候補薬剤として同定する。

0085

さらなる実施形態において、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAA誘導体もしくは異性体の組込みを、低減または阻害または防止する薬剤をスクリーニングする方法は、セリンラセミ化酵素を、L−セリンと、セリンラセミ化酵素によりL−セリンがD−セリンへ変換される条件下、試験薬剤の存在下で、接触させる工程と、試験薬剤が、セリンラセミ化酵素によるL−セリンからD−セリンへの変換を阻害または低減するかを判定する工程とを含む。この方法により、タンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを低減または阻害または防止する薬剤がスクリーニングされる。

0086

そのような方法には、さらなるまたは追加の方法工程も含めることができる。例えば、同定方法検出方法およびスクリーニング方法には、細胞のタンパク質へのβ−N−メチルアミノ−L−アラニン(BMAA)またはBMAAの誘導体もしくは異性体の組込みを、薬剤が低減または阻害または防止する活性を測定する工程も含み得る。

0087

用語「判断すること」、「アッセイすること」および「測定すること」ならびにその文法的変化形は、本明細書において相互に交換可能に使用され、質的または量的判断のいずれか、あるいは質的および量的判断の両方を指す。用語が測定あるいは検出に関して使用されるとき、相対的な量を評価するための任意の手段、例えば、本明細書に記載の様々な方法および当技術分野で既知の方法が含まれる。

0088

別途、定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法および材料と同様または等価の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を本明細書に記載する。

0089

本明細書で引用されている全ての特許、特許出願、刊行物、他の参照文献、GenBankの引用およびATCCの引用は全て、参照により全体として本明細書に明確に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含め、本明細書の記載が優先される。

0090

本明細書において使用するとき、単数形「a」、「and」および「the」は、文脈が明らかに別様を示していない限り、複数の参照物も含む。したがって、例えば、「L−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲート」との言及には、複数のL−セリンまたはL−セリンの前駆体、誘導体もしくはコンジュゲート等が含まれる。

0091

本明細書で使用されるとき、全ての数値または数値範囲は、文脈が明確に別様を示していない限り、そのような範囲の整数およびそのような範囲にある値または整数の分数を含む。したがって、例えば、1〜10の範囲についての言及には、1、2、3、4、5など、ならびに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5など、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5などおよび同様の数値が含まれる。範囲に関する言及は、範囲内の小範囲に関する言及も含む。したがって、例えば、1〜10に関する言及は、1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、2〜4、2〜5、2〜6、2〜7、3〜5、3〜6、3〜7、3〜8などに関する言及も含む。一連の範囲に関する言及、例えば、1〜10mg、10〜25mg、25〜50mg、50〜100mg、100〜250mg、250〜500mg、500〜750mg、750〜1,000mg、1,000〜2,000mg、2,000〜3,000mg、3,000〜4,000mg、4,000〜5,000mg、5,000〜7,500mg、7,500〜10,000mg、10〜15g、15〜20g、20〜25g、25〜30g、30〜40g、40〜50g、50〜75gおよび75〜100gの範囲に関する言及には、結合した範囲の組合せ、例えば、10〜50、50〜500、70〜100(mgまたはg)などが含まれる。一連の範囲には、これらの範囲の下端または上端の両方を組み合わせた範囲も含まれる。したがって、例えば、一連の範囲に関する言及、例えば、50〜100、100〜200および200〜300には、50〜200、50〜300、100〜300などの範囲も含まれる。

0092

本発明は、多数の実施形態について記述するため、肯定的な言語を使用して、本明細書に一般的に開示される。また本発明は、特定の主題、例えば、物質または材料、方法の工程および条件、プロトコル、手順、アッセイまたは分析が、完全にまたは部分的に排除される実施形態も明確に含む。したがって、たとえ本発明が一般的に本明細書に表されていない場合であっても、本発明に含まれないものという観点において本発明において明確に含まれていない態様は、やはり本明細書に開示されている。

0093

本発明のいくつかの実施形態が記述されている。しかしながら、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、様々な修正がなされ得ることが理解されるであろう。したがって、以下の実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明を例証するものであるが、本発明の範囲を制限するものではない。

0094

実施例1
本実施例では、様々な材料および方法を記載する。

0095

材料および方法
MRC−5細胞は、American Tissue and Cell Culture(バージニア、USA)から入手した。SH−SY5Y細胞は、European Collection of Cell Culture(ECACC)から入手した。3H−BMAA(80Ci/mmol、0.5mCi/mL)は、American Radiolabeled Chemicalsから取得した。ダルベッコ改変イーグル最小必須培地DMEM)およびHAMS F12は、JRH biosciences(Lenexa、カンザス(Kansans)、USA)から入手した。BMAA、ジチオスレイトール、L−セリン、D−セリン、アクリジンオレンジ、エチジウムブロミド、シクロヘキシミドおよびSDSは、Sigma Chemical Co.(Sigma−Aldrich、Castle Hill、NSW、オーストラリア)から入手した。BCAタンパク質試薬は、Pierce Biotechnology(Rockford、IL、USA)から入手した。BD Pharminigen(商標)アネキシン(Annexin)V−FITCアポトーシス検出キットは、BD Biosciences(シドニー、オーストラリア)から入手した。水は、Milli Q 4ステージシステム(Millipore−Waters、Lane Cove、NSW、オーストラリア)から入手した。全てのHPLC装置は、カラム(Nova−Pak(登録商標)C18 4μM 3.9x300mm)およびAccQ・Tag誘導体化キット(Waters Corporation(MA、USA)から入手)をのぞいてShimadzu Corporation(京都、日本)から入手した。他の化合物、溶媒、およびクロマトグラフ材料は、ARまたはHPLC等級であった。

0096

細胞培養
MRC−5細胞(ヒト肺線維芽細胞株、継代数14〜19)およびSH−SY5Y細胞(ヒト神経芽細胞株、継代数30〜32)を、10%ウシ胎仔血清(FBS)、4mMのL−グルタミン、100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンをそれぞれ含むDMEMまたはDMEM/Hams F12中で、37℃で、5%CO2および95%空気の湿性雰囲気下、維持した。ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、野生型IIコラゲナーゼ(Sigma−Aldrich)を用いて、滅菌条件下で、Minter(Minter, et al., Thromb Haemost 67, 718-723(1992))に記載されるように酵素的採取し、20%FBS、4mMのL−グルタミン、0.5%の内皮細胞成長増殖因子、100U/mLのペニシリンおよび100μg/mLのストレプトマイシンを含有するM199((Trace Biosciences、シドニー、オーストラリア)で、一次細胞培養物として樹立させた。全ての培地は、エンドトキシンを含まない水(Baxter)で調製し、Zetaporeフィルター(Cuno Life Sciences Division)で濾過した。細胞を6ウェルプレートに、1ウェルあたり3×105細胞で播種し、一晩(16時間)接着させてから、処置を行った。

0097

タンパク質へのBMAAの組込みと、シクロヘキシミドおよびアミノ酸による組込み阻害を調べる研究
MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、10%FCS含有HBSS中でインキュベートした。2、4および16時間後に、細胞をリン酸緩衝食塩水で3回洗浄し、トリトンX−100中で凍結解凍することにより細胞を溶解した。溶解産物中のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸アッセイ(bicinchoninic acid assay、BCA)(Smith, et al., Anal Biochem 150, 76-85(1985))を使用して測定した(さらに細胞溶解産物の放射性同位体を、液体シンチレーション計数(liquid scintillation counting、LSC)により定量した)。次いで、細胞タンパク質を、トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid、TCA)(5%)により沈殿させて、TCA(5%)で3回洗浄することにより単離し、蟻酸に溶解させた。

0098

タンパク質への放射性同位体の組込みがタンパク質合成によるものかを判断するために、MRC−5、SH−SY5YおよびHUVEC細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、CHX 2μg/mlの存在下または非存在下で、16時間インキュベートした。CHM処理培地の細胞タンパク質に存在している放射性同位体の量は、対照培地(CHXなし)の細胞タンパク質に存在している放射性同位体の量を100%として相対的に表した。MRC−5細胞の並列培養物を、3H−ロイシン(41nM)と共に、CHX 2μg/mlの存在下または非存在下で、前述と同一の培養条件および処理下で、インキュベートした。

0099

個々のアミノ酸が、タンパク質への放射性同位体の組込みを低減する能力を調べるために、MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、16時間、個々のアミノ酸(250μM)の存在下にインキュベートし、細胞タンパク質に存在する放射性同位体を前述のように評価した。20種のタンパク質アミノ酸(L−異性体)の全てを、三連の細胞培養物でそれぞれ調べた。L−セリンがタンパク質への放射性同位体の組込みに対して阻害効果を有するかを確認するために、MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、16時間、L−セリン(0、50、100および250μM)の存在下で、別の実験では、250μMのL−セリンとD−セリンとの存在下で、インキュベートした。放射性同位体の組込みは、セリンを含有しない培地でインキュベートした細胞と比較して測定した。次いで、MRC−5細胞を、3H−BMAA(31.25nM)と共に、16時間、HBSSのみ、20種全てのタンパク質アミノ酸(400μM)を含有するHBSSまたはL−セリンを除いた19種のタンパク質アミノ酸を含有するHBSS中でインキュベートし、細胞タンパク質における放射性同位体の量を、前述と同様に評価した。

0100

MRC−5細胞を3H−BMAAと共にインキュベートすることにより生成した細胞タンパク質からの放射性同位体の取り出し
SH−SY5Y細胞を3H−BMAA(31.25nM)と共に24時間インキュベートし、細胞タンパク質をTCA(5%)沈殿により単離した。タンパク質を、TCA(5%)で3回洗浄し、氷冷酢酸濯ぎ、PBS中に再溶解させた。タンパク質から放出される放射性同位体(つまり、TCAで沈殿していない)の量を、37℃で、DTT(1mM)ならびにSDS(2%)およびDTT(DTT/SDS)と共にインキュベートした後で、液体シンチレーション計数(LSC)により測定した。細胞タンパク質を、プロナーゼ(2mg/ml)と、20mMのCaCl2を含有する100μMのTrisHCl緩衝液(pH8)中で48時間(37℃)、または、HCl(12M)中で12時間インキュベートし、放射性同位体の放出を、プロテナーゼについては緩衝液単独、HClについては水の場合と比較して定量した。全てのタンパク質試料は、三連で処理した。

0101

加水分解後のタンパク質からの組み込まれたBMAAの回収
3H−BMAAまたは冷BMAAとインキュベートした後で、細胞をPBSで3回洗浄し、Triton−X−100(0.1%)で凍結解凍して溶解させ、細胞タンパク質をTCA(5%)中に沈殿させた。タンパク質ペレットを、TCA(5%)で3回洗浄し、先に記述されているように(Mondo, et al., Mar Drugs 10, 509-520(2012))、沸騰した6MのHCl中、110℃で16時間、加水分解させた。タンパク質ペレットを、凍結乾燥し、20mMのHClで再構成した。粒子を0.22μMのメンブレンを通じて遠心分離することによって取り出し、この加水分解物をAccQ・Tag(Waters Corporation、オーストラリア)で誘導体化した。アミノ酸を、Waters C−18カラムで、先に記述されているような方法および勾配(Mondo, et al., Mar Drugs 10, 509-520(2012))を用いて分離した。加水分解された試料から放射性同位体を回収するために、画分を40分かけて1分ごとに手動で回収し、5mlのシンチラント(Ultima Gold(商標)シンチラント、Perkin Elmer)に希釈し、壊変毎分(distintegrations per minute、DPM)をLSCにより測定した。

0102

細胞の自家蛍光画像
MRC−5細胞を300μMのBMAAを補足したDMEM中で、300μMのL−セリンの存在下または非存在下、96時間、培地を毎日変えながらインキュベートした。細胞の自家蛍光を、倒立型蛍光顕微鏡(Olympus IX71)を用いて、先に記述されているように(Dunlop, et al., Biochem J 410, 131-140(2008))可視化した。

0103

乳酸デヒドロゲナーゼLDH)アッセイ
細胞から放出された乳酸デヒドロゲナーゼ、先に記述されているように(Tang, et al., PhytotherRes 25, 417-423(2010))、測定した。

0104

細胞のアクリジンオレンジ(AO)/エチジウムブロミド(EtBr)二重染色
MRC−5細胞を、500μMのBMAAの存在下または非存在下で、23時間、インキュベートした。培地を取り除いた後、細胞を温PBSで1回すすぎ、AO/EB溶液中でインキュベートした後、蛍光顕微鏡検査法を利用して、先に記述されているように(Tang et al., PhytotherRes 25, 417-423(2010))可視化した。

0105

原形質膜上に露出したホスファチジルセリン(PS)へのアネキシンVの結合
後期アポトーシスまたは壊死を、ヨウ化プロピジウムおよびアネキシンVを用いる同時染色によって、BD Pharminigen(商標)アネキシンV−FITCアポトーシス検出キットおよびフローサイトメトリーを使用して、先に記述されているように(Dunlop, et al., Biochem J 435, 207-216(2010))、測定した。

0106

ミバエBMAA分析についての抽出方法
各処置からの30匹のハエについて、重さを量り、10%のトリクロロ酢酸(TCA 72μg/μl)中で超音波処理した(Fisher Scientific sonic dismembrator model 100;2ワットで30秒)。TCAの抽出は、2工程で、20時間4℃で、TCAの体積の半分を用い、その後、遠心分離(13rpmで3分間、Labnet spectrafuge 16M)、および、上清の回収を行って達成した。続けて、第2の超音波処理および抽出を、室温で5時間、等体積のTCAを使用して行い、その後、遠心分離および上清の回収を行った。上清をプールし(最後の抽出から回収した50μlは除く)、遠心分離物を濾過した(0.22μmのUltrafree−MC、Millipore)。残りのタンパク質ペレットをガラスバイアルに移し、6MのHCl中で16時間、110℃で加水分解した(58μg/μl)。プールしたTCA抽出物の一部も、等体積の12MのHCl中で、16時間、110℃で加水分解した。抽出物を希釈し、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)で誘導体化し、LC−MS/MSで分析した。

0107

ミバエBMAAについての分析方法
6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート誘導体(AQCWaters AccQTag reagent、PN WAT052880)を、Binary Solvent Manager、Sample ManagerおよびWaters AccQTag Ultraカラム(部品番号186003837、2.1×100mm)を有するWaters Acquity−UHPLCシステムにより55℃で分離した後、三連四重極型装置(Thermo Scientific Finnigan TSQ Quantum UltraAM、San Jose、CA)を使用して分析した。分離は、溶離勾配について、0.65ml/分で、0.1%(v/v)の蟻酸水溶液溶離液A)および0.1%(v/v)の蟻酸含有アセトニトリル(溶離液B)を用い、0.0分=99.1%A;0.5分=99.1%Aカーブ6;2分=95%Aカーブ6;3分=95%Aカーブ6;5.5分=90%Aカーブ8;6分=15%Aカーブ6;6.5分=15%Aカーブ6;6.6分=99.1%Aカーブ6;8分=99.1%Aカーブ6で行った。この勾配により、BMAA(Irvine Chemistry、CA)が、異性体である2,4−ジアミノ酪酸(Sigma番号 32830 St.Louis、MO)およびN−2(アミノ)エチルグリシン(TCIAmerica(Portland、OR)から分離された。窒素ガスを、熱したエレクトロスプレーイオン化(H−ESI)端子に、噴霧圧力40psi、気化器温度を400℃で供給した。

0108

質量分析を、以下の条件で行った:キャピラリー設定温度270℃、キャピラリーオフセット35、チューブレンズオフセット110、補助ガス圧力35、スプレー電圧3500、ソース衝突エネルギー0、および増倍管電圧−1585。第2の四重極を、1.0mTorrに、100%アルゴンを用いて加圧した。AQCで誘導体化したBMAAの生成イオン分析は、m/z459(単一電荷でイオン化)およびm/z230(二重電荷でイオン化)を、衝突誘起解離(collision-induced dissociation、CID)のための前駆体イオンとして、用いた。

0109

2工程質量フィルタリングを、CID後のBMAAの選択的反応モニタリング(selective reaction monitoring、SRM)の間、第2の四重極で実施し、次のトランジションをモニタリングした:m/z459〜119、CE21eV;m/z459〜289 CE17eV;m/z459〜171 CE38eV;m/z459〜258 CE21eV;m/z230〜171 CE21eV。生成イオンを、第3の四重極で検出し、それらの相対的存在量を定量した。

0110

BMAAの同定は、確認済み標準(Irvine Chemistry、CA)との比較により、4つのパラメータ:(a)親イオンm/z459およびm/z230の存在と、(b)保持時間と、(c)衝突誘起解離(トランジションm/z459〜171 クオンティファイアイオン;トランジションm/z459〜289、258および119クオリファイアイオン;およびトランジションm/z230〜171 クオリファイアイオン)由来のクオリファイアイオンの存在と、(d)親イオンm/z 459由来のクオンティファイアイオンに対するクオリファイアイオンの比とを用いて、確認した。AQC反応の適切性は、単一誘導体化リジン(m/z317)のピーク面積と二重誘導体化リジン(m/z487)のピーク面積とを比較するL−リジン(Sigma番号 L5501)の検査によってモニタリングした。

0111

実施例2
本実施例では、BMAAがタンパク質に組み込まれ、これによりタンパク質の誤った折畳み/凝集が導かれ得ること、そしてこの組込みと誤った折畳み/凝集がL−セリンによって阻害されることを示すデータを記述する。

0112

ヒトMRC−5線維芽細胞を、3H−BMAAと共に、アミノ酸を枯渇させた培養培地中でインキュベートすると、時間依存的に、細胞溶解物中の放射性同位体が増加し(図1A)、この放射性同位体の割合は、細胞タンパク質と関連していた(図1B)。MRC−5細胞を、3H−BMAAおよびタンパク質合成阻害剤CHXと共にインキュベートすると、タンパク質画分における放射性同位体の量が著しく減少した(図2)。CHXが、タンパク質へのタンパク質アミノ酸3H−ロイシンの組込みを、3H−BMAAと同程度に阻害したことから(図2)、3H−BMAAが、タンパク質合成依存的な機構により、タンパク質へ組み込まれたことが示唆される。3H−BMAAは、ヒト一次内皮細胞(HUVEC)およびヒト神経芽細胞(SH−SY5Y)とインキュベートした後のタンパク質と関連することも見出され、この工程がCHXにより阻害されたので(図2)、タンパク質合成依存的であることが再度見出された。

0113

BMAAと細胞タンパク質との関係をさらに調べるために、細胞タンパク質から放射性同位体を放出する一連の利用可能性処理を分析した。放射性標識された細胞タンパク質は、SH−SY5Y細胞を3H−BMAAと共に24時間インキュベートすることによって生成した。この放射性同位体は、100倍モル過剰の還元剤ジチオスレイトール(DTT)とのインキュベートによっても、または洗剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびDTT(図3)との加熱によっても、単離された細胞タンパク質から取り出せなかった。放射性同位体の放出には、酸分解またはプロナーゼによるタンパク質分解図3)のいずれかによるペプチド結合の切断が必要であった。

0114

全20種のタンパク質アミノ酸の中で、どのアミノ酸がBMAAとの競合により置換されるのかを判断するために、細胞タンパク質への3H−BMAAの組込みを分析した。細胞タンパク質への3H−BMAAの組込みは、L−セリンの存在下、濃度依存的に阻害された(図4A)。哺乳動物のtRNA合成酵素による作業を受けないD−セリンは、タンパク質への3H−BMAAの組込みを防止しなかった(図4B)。細胞を3H−BMAAと共に20種のタンパク質アミノ酸(400μM)全てを含む培養培地中でインキュベートすると、タンパク質画分における放射性同位体の量が、アミノ酸枯渇培養条件の場合(図4C)と比較して大きく減少した。L−セリンをアミノ酸混合物から除去したとき、タンパク質へのBMAAの組込みは顕著に増加した(図4C)。

0115

BMAAが細胞タンパク質に存在することおよび組込みがLセリンによって阻害されることをさらに確認するために、MRC−5細胞を、一連の濃度のBMAA(250−1000μM)またはBMAAおよびL−セリン(250−1000μM)とインキュベートし、加水分解された細胞タンパク質を、タンデム質量分析により、三連四重極LC/MS/MSによって分析した。保持時間、固有娘イオン、および、衝突誘起解離の間のm/zトランジションの比率は、確認済みBMAA標準のものと一致した(図5A)。細胞を、漸増濃度のBMAAと共にインキュベートしたところ、加水分解タンパク質からのBMAAの回収が増加した(図5B)。3H−BMAAを利用した試験と一致して、非標識BMAAの組込みは、L−セリンとCHXの両方で阻害された(図5C)。BMAA(300μM)と共に96時間インキュベートした細胞において、自家蛍光体は、核、細胞質ゾル、および核周囲領域に存在していた(図6A)。このことは凝集タンパク質の蓄積と一致する。その理由は、蛍光顔料が、老化リボフスシン)またはタンパク質分解障害に関連する一連の病理(セロイド)の結果として細胞内に蓄積することが明らかにされているためである。

0116

L−セリンと共にインキュベートすることにより、自家蛍光体の形成が防止された(図6B)。MRC−5およびSH−SY5Y細胞においてLDHの放出に顕著な変化がなかったことで示されるように(データ示さず?−データは示していない)、壊死の徴候は示されなかったが、アネキシンVの染色増加(図6E)およびアクリジンオレンジとエチジウムブロミドとで処理した細胞の「青白い」外観の数の増加(図6CおよびD)で示されるように、アポトーシスが存在していた。アポトーシスは、L−セリンとのインキュベーションならびにCHXによって生じさせないことができ、このことは、このプロセスがBMAAのタンパク質鎖への組込みに依存していることをさらに裏付ける(図6E)。これらのデータをまとめると、細胞タンパク質へのBMAAの組込みは、タンパク質合成に依存したプロセスであり、このプロセスはL−セリンにより阻害されることが示唆される。

0117

前述のデータに基づくと、BMAAがL−セリンの代わりに誤ってタンパク質に組み込まれることにより、誤った折畳みまたは凝集傾向のあるタンパク質が増加する。有糸分裂後の細胞、例えばニューロンが最も影響を被るが、その理由は、他の要因(Polymenidou, et al., J Exp Med 209, 889-893(2012))の中でも、タンパク質凝集物娘細胞の中に分配することができないことによる。いくつかの疾患特異的タンパク質の誤った折畳みを促進するゆえに、BMAAは、グアムで報告された複雑な神経学的障害の単独の誘因となり得た(報告によれば、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病および認知症様症状が、BMAAに曝露した個体で現れた(Bradley, et al., Amyotroph Lateral Scler 10 Suppl 2, 7-20(2009))。

0118

実施例3
本実施例では、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)のBMAA誘導死がL−セリンにより救済されたことを示すデータ、および追加的な有用なモデルについて記述する。

0119

APPは、無脊椎動物から脊椎動物に至るまで進化的に保存されている。これにより、ショウジョウバエ(Drosophila)(ミバエ)のAPPを利用して、アルツハイマー病などのヒト疾患の研究を実施することが可能である。ショウジョウバエ(Drosophila)モデルを使用して、BMAAがどのように、APP由来断片、特に、アミロイド形成断片の産生に影響するかを特徴付けた。キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ミバエ)昆虫モデルは、プラーク形成記憶喪失社会的相互作用を含むヒト疾患の重要な特徴ならびにモデル生物の全体的なニューロン構造の測定のために便利な無脊椎系である。また過剰のヒトAβを産生するように操作したミバエに、BMAAを与え、得られるプラーク誘導Aβの増減が測定される。ハエは、その遺伝的特徴が熟知されており、ヒト疾患の全体的な宿主がミバエで調べられていることから、優れたモデルである。

0120

予備的研究により、L−セリンが、タンパク質へのBMAAの誤った組込みを防止する能力があることが示される。一連の食餌実験において、ショウジョウバエ(Drosophila)ミバエに以下の4種類の培地を3日間与えた:1)0mMのBMAAのミバエ標準培地(対照)、2)25mMのL−セリンで富化した培地、3)25mMのBMAAを添加した培地、および4)25mMのBMAAと25mMのL−セリンの両方を添加した培地。タンパク質へのBMAAの誤った組込みは、三連四重極型LC/MS/MSおよび軌道トラップ(Orbital Trap)型LC/MS/MSで分析した。L−セリンの培地への添加により、BMAAの誤った組込みの量が半分に減少した(図7)。

0121

同等に関心が持たれることは、BMAAを投与したショウジョウバエ(Drosophila)に対するL−セリンの保護的価値の分析である。BMAA富化培地(第3セットのブロック)を与えたミバエでは、3日後に40%が死んだが、セリンとBMAAを添加した培地(第4セットのブロック)を与えたミバエでは死んだハエはいなかった(図8)。これらのハエは、L−セリンにより救済された。

0122

BMAAの効果を試験するために使用され得る以下の2つのさらなるモデルがある:
1.ヒトニューロン細胞株(NT2細胞)。これらのヒトニューロンはペトリ皿で培養され、長期間の試験に対して十分強健である。これらの細胞は、ヒト脳のニューロンレベルで生じ得ることに最も近似するモデルである。このex−vivo細胞は、ニューロン同士の連絡に必要な全ての特徴、神経伝達物質グルタミン酸塩機能、ならびにタンパク質技術(ウエスタンブロット)を使用して細胞生存性およびAPP断片を測定するための利便性のある系を保有している。
2.CHO/APP細胞と称される高増殖細胞ハムスター由来のこれらの細胞は、過剰量のAPPを有しており、少量のAβ断片の測定が可能である。タンパク質技術は、少量の断片を上手く検出し得るが、特定のタンパク質(ここではAPP)をより多く産生するように操作した細胞株を使用して、さらに増強させることもよく行われる。

0123

実施例4
本実施例では、BMAAの神経毒性とBMAAが神経発達の異常を引き起こすこととを示す脊椎モデルのデータを記述する。

0124

ゼブラフィッシュ(Dario rerio)は、脊髄筋萎縮症、運動失調症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、てんかん、ハンチントン病、パーキンソン病、認知症およびアルツハイマー病などのヒトの神経学的障害および疾患に関する臨床的に適切なモデルである(例えば、Kabashi et al., TrendsGenet. 26:373(2010)およびKabashi et al., Bicohim. Biophys. Acta 1812:335(2011)を参照)。ゼブラフィッシュを使用してBMAAの毒性を測定し、BMAAに単純曝露させた後のフィッシュにおける遊泳性能の機能的変化を評価した。

0125

BMAAを、漿膜を介して卵の中核に直接注射し、発達中のフィッシュにおいて新たに合成されるタンパク質へ組み込まれるL−セリンと直接競合させた。BMAA(水中100mg/ml)または水を、1回の注射あたり5nL送達させるように設定した自動化Picospritzerポンプを用いて、受胎直後のゼブラフィッシュの卵の中核(約110μl)に送達させた。フィッシュを、30時間、標準的条件下で成育させた。
生存:対照群では、91%のフィッシュが生き残った。BMAA処置群では、ゼブラフィッシュの生存率は、74%に低下した。

0126

生き残ったフィッシュを、生物学的濾過装置および28℃に設定した温度制御装置を備えた水槽で3カ月間、成育させた。同じ親由来のBMAA処置フィッシュおよび対照フィッシュを、同じタンクで成育させ、蛍光タグに基づき分離してから、遊泳性能を評価した。3ヶ月後、変形または異常のない全ての健常な成体フィッシュを、検査した。臨界的遊泳速度を測定し、回流水槽中で設定時間保持され得る最大遊泳速度を決定した。水は、貯蔵器(EcoTech Marine MP10 Vortech Propeller Pump、EcoSMARTDriverを付属)から50mm径配管を通して汲み入れた。下流の端に位置させたメッシュスクリーンにより、フィッシュが試験区間から離れるのを防いだ。フィッシュは、ポンプを4の設定にして6分間泳がせ、次いで6の設定まで速度を漸次的に増加させ、フィッシュが失敗するまで維持した。
遊泳性能:BMAAで処置したフィッシュは、対照フィッシュ(Ctrl)と比較して、失敗するまでの時間(秒)に基づいた遊泳性能の著しい低下(秒)が示された(図9)。2つの群間には、有意差があった(p<0.001)。
ニューロン発達:ニューロンを、蛍光顕微鏡下で観察した。対照を注射したフィッシュ(図10A)では、30時間後に、運動ニューロンの成長と分岐がはっきりと観察された。L−BMAAを注射した卵では、ニューロンの短縮が観察された(図10B、白色の矢印で示す)。運動ニューロンの合計の長さの差異は、卵の中核の拡張が終了するまでに示された最初の10本の運動ニューロンの突起を測定することによって定量した(Paquet D et al., J. Clin. Invest. 119:1382(2009))。測定は、1処置あたり3匹の異なるフィッシュに対して、イメージJの手書きツール(http://rsb.info.nih.gov/ij/ Version 1.46r)を用いて行った。データは、GraphPad Prism(バージョン6のOSX)と、スチューデントT−検定を用いて算出した統計学有意性で照合した。水平ラインは、試料内および試料間のニューロンの長さの平均を表す(図10C)。P<0.0001。

0127

実施例5
本実施例では、L−セリンによる齧歯類動物神経タンパク質へのBMAAの誤った組込みの防止についての分析を記述する。

0128

実施した一連の試験において、放射標識されたBMAAが、三重水素および14−C標識されたBMAAの両方において、ラットの血液脳関門を迅速に通過し、ニューロンタンパク質に挿入されることを実証した。この放射性同位体を付けたBMAAの齧歯類の脳への誤った組込みが、L−セリンにより阻止されるかを判断するための研究を行う。

0129

実施例6
本実施例では、進行性の神経変性疾患に対するL−セリンの保護的効果を評価するためのベルベットモデルについて記述する。

0130

非ヒト霊長類は、ヒトゲノムと大部分で共通し、ヒト神経系との顕著な類似性を有していることから、ヒト疾患の理解においては特別なモデルである。ベルベットとして知られるアフリカミドリザルは、APOe遺伝子を保有し、大脳アミロイド−ベータ(Aβ)プラークが発達することが知られており、このことでベルベットは、アルツハイマー病(AD)のための有望なモデルとなっている。1つのベルベット研究と1つの研究において、Aβワクチンにより脳内のAβが減少することが明らかになった。その後のヒトフェーズI試験により、Aβワクチンがヒトに対して安全であることが示され、ベルベットでの肯定的な試験結果に基づいて、現在この手法が広く検討されている。このことは、ベルベットがヒトアルツハイマー病に対する認容されたモデルであることを示している。

0131

ベルベットのコロニーにおいて、BMAAの経口投与により生成されるタンパク質の誤った折畳みおよびタンパク質凝集と、等量のL−セリンがタンパク質へのBMAAの誤った組込みを防止する能力と、L−セリンがタンパク質の誤った折畳みおよびタンパク質凝集を防止する能力とを調べた。ベルベット(16匹)を、4つの異なる群に分けた。4匹のベルベットに、651mgのBMAAを、毎日摂取させた。第2群の4匹のベルベットには、651mgのBMAAと651mgのL−セリンを毎日摂取させた。第3群には、651mgのL−セリンを毎日投与し、第4の対照群にはプラセボ(本実験では、651mgの米粉)を与えた。これらの用量(正規化すると210mg/kg/日)は、マカークに使用する場合に一部の動物で急性神経毒性を誘導し、服用動物に深遠な行動および認知障害を誘導する量に匹敵する。

0132

ベルベット組織由来のニューロタンパク質ならびに血漿および大脳脊髄液試料について、BMAAの誤った組込みを確認するために、軌道トラップ質量分析法および三連四重極質量分析法により分析する。さらに、先に詳述したような染色および蛍光顕微鏡検査法ならびに病変または他の神経解剖学的異常(adnormalities)についての脳組織の全体的な神経病理学的試験を用い、ニューロタンパク質の誤った折畳みおよび凝集を調べる試験を行う。

0133

実施例7
本実施例では、BMAAが誤って組み込まれたタンパク質についてアルツハイマー患者の脳を評価する試験を記述する。

0134

霊長類の神経系における星状細胞内の内因性L−セリンを産生する酵素、特に3−PGDH、PSAT、およびPSPHの量の差異を調べることにより、ニューロンのL−セリンの欠乏によってニューロタンパク質がBMAAによる誤った折畳みを受けやすくなるかが調べられる。これらのアルツハイマー関連タンパク質の特定の構成を使用して、BMAAが、L−セリンに代わって、生きている霊長類の神経系に誤って組み込まれるかを証明し得る。これらのin vivo研究の結果から、L−セリンによりニューロタンパク質へのBMAAの誤った組込みが防止されるか、およびL−セリンがその後のタンパク質の誤った折畳みおよび凝集を防止し得るかが判断される。

0135

アルツハイマー脳からの抽出物を精製し、タンパク質配列にBMAAが誤って組み込まれたタンパク質についての分析を行う。アルツハイマー病の罹患患者から脳試料を取得し、脳由来のタンパク質を抽出する。抽出物をゲル電気泳動により分離し、タンパク質を膜に移行させる。抽出物の全てのタンパク質を含有するこれらの膜を、BMAA抗体で探索し、どのタンパク質が抗体に反応を示すか、ひいてはどのタンパク質にBMAAが含有されているかを測定する。膜探索により、これらのタンパク質の大きさまたは分子量の計算も可能である。膜を評価した際に陽性であったタンパク質と同じ分子量を有するタンパク質を単離する。次いで、これらのタンパク質をゲルから切り出し、消化し、質量分析により分析する。これらの消化タンパク質について得られた配列を、タンパク質分析ソフトウェアを使用して評価し、これらの配列に基づいてタンパク質を同定し、さらにBMAAの誤った組込みが生じる部位を判断する。

0136

あるいは、BMAA抗体を使用して、抗体アフィニティカラムを調製することにより、溶液からタンパク質を精製する。アルツハイマー患者の脳由来のタンパク質抽出物に、アフィニティ精製を施す。タンパク質溶液抗体カラムに通過させると、BMAAを含有するタンパク質はカラム上の抗体に結合し易いが、BMAAを含有しないタンパク質はカラムを通り抜ける。カラムを洗浄し、BMAAを含有するタンパク質を、半純粋溶液としてカラムから溶出する。そのようなカラムの使用により、タンパク質溶液を迅速に精製し、BMAAを含有するタンパク質を取得する可能性をより高くすることができる。単離したら、タンパク質を酵素により消化し、その断片を質量分析計およびタンパク質分析ソフトウェアを使用して分析する。

0137

実施例8
本実施例では、進行性の神経変性疾患の処置としてのL−セリンについて提唱されるヒト臨床試験を記述する。

0138

上記検討に基づき、L−セリンおよびその構造誘導体は、ヒトの進行性の神経変性疾患を防止し得る防止剤、ならびに進行性の神経変性疾患と診断された患者の症状の進行を遅延させる処置剤の両方として機能することが予測される。

0139

ヒトでの臨床試験を実施することにより、L−セリンがALSおよびアルツハイマー病の進行を遅らせることができるか、さらにはそれらの発生を防止し得るかを判断する。任意の化合物が薬物として承認されるためには、米国食品医薬品局(FDA)による3つの異なるフェーズのヒト臨床試験が必要となる。フェーズI試験は、通常、当該疾患を患う少数の患者(10〜12)が関与し、薬物が患者にとって安全で十分忍容性があるものかどうかを確認するように設計される。フェーズII試験は、より多くの患者(30〜60)が関与し、薬物が疾患の処置に有効であるかを確認するように設計される。フェーズIII試験は、安全性と有効性の両方を再確認し、可能性のある副作用を判断するように設計される。これらの試験には、通常、300〜500人の患者が関与する。

0140

先に詳述されたin vitroおよびin vivoデータに基づくと、無作為二重盲検臨床試験でプラセボを与えたALS患者提示することは非倫理的である。したがって、Phoenix Neurological Associates等により実施された先の臨床試験からの対照ALS患者に関する組織学的データを使用する。

0141

ここでの設計では、フェーズI非盲検試験において、20人のALS患者に、L−セリンを、経口的に500mg/日〜30g/日の範囲の用量で6カ月間、投与する。ALS組入れ基準:年齢18〜85;男性または女性エルエスコリアル(El Escorial)基準に基づきALSとの臨床上の推定または確定診断あり;ALS−FRSスコア>25;インフォームドコンセント提出可能および全ての医学的手順の承諾あり。ALS排除基準FVCが60%未満;3年を超えるMNDの痕跡不適切に試験と競合する可能性のある何らかの他の併存症;L−セリンに対する不耐性経歴;何らかの他の試験薬の摂取;女性の場合、妊娠または授乳中、または妊娠可能年齢の場合、試験が完了するまで避妊意思がない。

0142

フェーズI試験は、ALS患者へのL−セリン投与の安全性を実証するように設計されているが、これらの用量の範囲内で、ALSFRS−Rの使用による症状の低減、臨床症状に基づく進行性筋萎縮側索硬化症の速度の遅延が生じる可能性がある。さらに、血漿および脳脊髄液試料を取り出し、三連四重極LC/MS/MSおよび軌道トラップLC/MS/MSを使用して分析し、ニューロタンパク質へのBMAAの誤った組込みの程度および血漿L−セリンのレベルが測定される。本明細書に詳述したものと類似の染色および蛍光顕微鏡検査法を使用して、進行性の神経変性に関連する重要なタンパク質についてのタンパク質凝集および誤った折畳みの程度が検出される。さらに、BMAAの誤った組込みを特に受けやすいニューロタンパク質が軌道トラップ質量分析計を使用して同定される。

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