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技術 抽出方法、抽出物及び製品

出願人 国立大学法人九州大学株式会社JOY・プラス
発明者 清水邦義立山由味枝
出願日 2014年5月9日 (6年6ヶ月経過) 出願番号 2014-097760
公開日 2014年12月18日 (5年11ヶ月経過) 公開番号 2014-237634
状態 特許登録済
技術分野 化粧料 他の有機化合物及び無機化合物含有医薬 植物物質含有医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード 一次回帰式 ヘアカラー剤 標準液濃度 酸化ダメージ 標準試料溶液 白髪予防 乾燥重 ORAC値
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年12月18日)のものです。
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図面 (14)

課題

ヒュウガトウキと比べて研究されていないイヌトウキについて、抽出される抽出物活用するための抽出方法等を提案する。

解決手段

抽出物は、生理活性効果を有し、生理活性効果を促進する抽出物を抽出する場合には、ある抽出溶媒を用いてイヌトウキから抽出物を抽出し、生理活性効果を抑制する抽出物を抽出する場合には、他の抽出溶媒を用いてイヌトウキから前記抽出物を抽出する。生理活性は、例えば、メラニン生合成リパーゼ阻害活性抗菌活性抗アレルギー活性及び抗酸化活性である。

概要

背景

いわゆる日本山人参と言われるセリ科植物には、イヌトウキ当季:Angelica shikokiana)とヒュウガトウキ日向当季:Angelica tenuisecta var furcijuga)という2種類の学名のシシウド属に属する植物がある。日本山人参は、イヌトウキ及びヒュウガトウキとこれらの近似植物の総称と言われることもある。総称と捉えれば、イヌトウキとヒュウガトウキの他にも、トウキホッカイトウキセイヨウトウキカラトウキ、シシウド、アシタバという同属の学名のものが含まれる。

イヌトウキは、一般的には、肝障害アレルギー、炎症、糖尿病高血圧治療に有効であるといわれている(例えば、非特許文献1参照)が、本格的には研究されていない。

他方、ヒュウガトウキについては、種々の研究により、抽出物生理活性が明らかにされてきている(例えば、非特許文献2及び3参照。)。ヒュウガトウキは、平成14年11月に厚生労働省から医薬品(生薬)の認定を受けている。

概要

ヒュウガトウキと比べて研究されていないイヌトウキについて、抽出される抽出物を活用するための抽出方法等を提案する。 抽出物は、生理活性効果を有し、生理活性効果を促進する抽出物を抽出する場合には、ある抽出溶媒を用いてイヌトウキから抽出物を抽出し、生理活性効果を抑制する抽出物を抽出する場合には、他の抽出溶媒を用いてイヌトウキから前記抽出物を抽出する。生理活性は、例えば、メラニン生合成リパーゼ阻害活性抗菌活性抗アレルギー活性及び抗酸化活性である。

目的

ゆえに、本願発明は、イヌトウキから抽出される抽出物を有効に活用するための抽出方法等を提案することを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
1件

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請求項1

イヌトウキから抽出物を抽出する抽出方法であって、前記イヌトウキの部位を選択する選択ステップと、前記選択された前記イヌトウキの部位から、生理活性効果を促進又は抑制する抽出物を抽出する抽出ステップを含む抽出方法。

請求項2

前記抽出ステップにおいて、前記生理活性効果を促進する抽出物を抽出する場合には、第1抽出溶媒を用いて前記イヌトウキから前記抽出物を抽出し、前記生理活性効果を抑制する抽出物を抽出する場合には、前記第1抽出溶媒とは異なる第2抽出溶媒を用いて前記イヌトウキから前記抽出物を抽出する、請求項1記載の抽出方法。

請求項3

前記第1抽出溶媒及び前記第2抽出溶媒は、一方が非極性溶媒であり、他方が極性溶媒である、請求項2記載の抽出方法。

請求項4

前記選択ステップにおいて、前記イヌトウキの部位は、根、、種及び葉の一部又は全部を選択するものであり、前記生理活性効果は、メラニン生合成リパーゼ阻害活性抗菌活性抗アレルギー活性及び抗酸化活性の少なくとも一つである、請求項1から3のいずれかに記載の抽出方法。

請求項5

前記生理活性効果は、メラニン生合成であり、前記第1抽出溶媒は、前記第2抽出溶媒よりも極性が高いものである、請求項2又は3記載の抽出方法。

請求項6

イヌトウキから抽出された抽出物であって、メラニン生合成、リパーゼ阻害活性、抗菌活性、抗アレルギー活性及び抗酸化活性の少なくとも一つを促進又は抑制する生理活性効果を発揮することを特徴とする抽出物。

請求項7

前記イヌトウキの茎から抽出されたものである、請求項6記載の抽出物。

請求項8

請求項6又は7に記載の抽出物を用いた日用品を含む製品

請求項9

前記抽出物は、エタノールを抽出溶媒として抽出されることにより、メラニン生合成を抑制する生理活性効果を発揮するものであり、前記日用品は、美白化粧品である、請求項8記載の製品。

請求項10

前記抽出物は、水を抽出溶媒として抽出されることにより、メラニン生合成を促進する生理活性効果を発揮するものであり、前記日用品は、ヘアケア製品である、請求項8記載の製品。

請求項11

β−アミリン及び/又はグルチノールを有効成分として含有するメラニン生合成促進剤。

請求項12

請求項11記載のメラニン生合成促進剤を含むヘアケア製品。

請求項13

髪の毛根部のメラノサイトに作用する請求項12記載のヘアケア製品。

技術分野

0001

本発明は、抽出方法抽出物及び製品に関し、特に、イヌトウキから抽出物を抽出する抽出方法等に関する。

背景技術

0002

いわゆる日本山人参と言われるセリ科植物には、イヌトウキ(当季:Angelica shikokiana)とヒュウガトウキ日向当季:Angelica tenuisecta var furcijuga)という2種類の学名のシシウド属に属する植物がある。日本山人参は、イヌトウキ及びヒュウガトウキとこれらの近似植物の総称と言われることもある。総称と捉えれば、イヌトウキとヒュウガトウキの他にも、トウキホッカイトウキセイヨウトウキカラトウキ、シシウド、アシタバという同属の学名のものが含まれる。

0003

イヌトウキは、一般的には、肝障害アレルギー、炎症、糖尿病高血圧治療に有効であるといわれている(例えば、非特許文献1参照)が、本格的には研究されていない。

0004

他方、ヒュウガトウキについては、種々の研究により、抽出物の生理活性が明らかにされてきている(例えば、非特許文献2及び3参照。)。ヒュウガトウキは、平成14年11月に厚生労働省から医薬品(生薬)の認定を受けている。

先行技術

0005

Taniguchi M、外4名著,The 115th Annual Meeting of the Pharmaceutical Society of Japan,Sendai,March 1995,Abstract of Papers II,p.194.
下洋一、外3名著,ヒュウガトウキ(Angelica furcijuga Kitagawa)葉およびの分離・分析,Memoirs of the Faculty of Engineering,Miyazaki University,38:87-90,2009-09-30.
博士、外6名著,ヒュウガトウキ(Angelica furcijuga)のメラニン色素産生能への影響,Jpn Phaimacok Ther(薬理と治療),vol.38,no.12,2010.

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、イヌトウキについては、ヒュウガトウキとは異なり、抽出物の生理活性はほとんど研究されておらず、薬理効果等について、氷山一角を明らかにしたにすぎない。その結果、イヌトウキは、医薬品(生薬)の認定を受けておらず、イヌトウキからの抽出物を用いた製品も、実質的には実用化にまで至っていない。

0007

ゆえに、本願発明は、イヌトウキから抽出される抽出物を有効に活用するための抽出方法等を提案することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

本願発明の第1の観点は、イヌトウキから抽出物を抽出する抽出方法であって、前記イヌトウキの部位を選択する選択ステップと、前記選択された前記イヌトウキの部位から、生理活性効果を促進又は抑制する抽出物を抽出する抽出ステップを含むものである。

0009

本願発明の第2の観点は、第1の観点の抽出方法において、前記抽出ステップにおいて、前記生理活性効果を促進する抽出物を抽出する場合には、第1抽出溶媒を用いて前記イヌトウキから前記抽出物を抽出し、前記生理活性効果を抑制する抽出物を抽出する場合には、前記第1抽出溶媒とは異なる第2抽出溶媒を用いて前記イヌトウキから前記抽出物を抽出するものである。

0010

本願発明の第3の観点は、第2の観点の抽出方法であって、前記第1抽出溶媒及び前記第2抽出溶媒は、一方が非極性溶媒であり、他方が極性溶媒である。

0011

本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の抽出方法であって、前記選択ステップにおいて、前記イヌトウキの部位は、根、茎、種及び葉の一部又は全部を選択するものであり、前記生理活性効果は、メラニン生合成リパーゼ阻害活性抗菌活性抗アレルギー活性及び抗酸化活性の少なくとも一つである。

0012

本願発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の抽出方法であって、前記生理活性効果は、メラニン生合成であり、前記第1抽出溶媒は、前記第2抽出溶媒よりも極性が高いものである。

0013

本願発明の第6の観点は、イヌトウキから抽出された抽出物であって、メラニン生合成、リパーゼ阻害活性、抗菌活性、抗アレルギー活性及び抗酸化活性の少なくとも一つを促進又は抑制する生理活性効果を発揮することを特徴とするものである。

0014

本願発明の第7の観点は、第6の観点の抽出物であって、前記イヌトウキの茎から抽出されたものである。

0015

本願発明の第8の観点は、第6又は第7の観点の抽出物を用いた日用品を含む製品である。

0016

本願発明の第9の観点は、第8の観点の製品であって、前記抽出物は、エタノールを抽出溶媒として抽出されることにより、メラニン生合成を抑制する生理活性効果を発揮するものであり、前記日用品は、美白化粧品である。

0017

本願発明の第10の観点は、第8の観点の製品であって、前記抽出物は、水を抽出溶媒として抽出されることにより、メラニン生合成を促進する生理活性効果を発揮するものであり、前記日用品は、ヘアケア製品である。

0018

本願発明の第11の観点は、β−アミリン(β-Amyrin)及び/又はグルチノール(Glutinol)を有効成分として含有するメラニン生合成促進剤である。

0019

本願発明の第12の観点は、第11の観点のメラニン生合成促進剤を含むヘアケア製品である。

0020

本願発明の第13の観点は、髪の毛根部のメラノサイトに作用する、第12の観点のヘアケア製品である。

0021

なお、製品としては、例えば、メラニン生合成という観点からヘアケア製品(例えば、シャンプーリンス、髪染など)、抗菌抗アレルギー等の観点から、歯磨き粉食器用洗剤入浴剤洗濯用洗剤などがある。また、飲食品サプリメント等の錠剤ドリンク剤日用雑貨品などもある。また、例えば、抗アレルギーという観点からは、アトピー等の皮膚がきれいになるなどの効果が期待される。

発明の効果

0022

本願発明の各観点によれば、イヌトウキの各部位から、特定の生理活性効果を抑制又は促進する抽出物を抽出することができる。

0023

イヌトウキの抽出物が、各部位によって機能性が具体的に異なること、特に、茎()も、良い生理活性を有することは、発明者らによって明らかにされたものである。イヌトウキは、分類上は「人参」とは関係のないにもかかわらず、ヒュウガトウキと含めて「日本山人参」と称されてきたことから検討すれば、「山人参」と称されていることから、注目されている部位は、一般に薬効が高いとされる根であり、次に葉であろう。特に、茎に関しては、廃棄されるべきものとされ、活用されていない。しかしながら、発明者らは、イヌトウキの部位によって具体的な機能性が異なること、特に、茎も、良い生理活性を示すことを明らかにした。そのため、イヌトウキの抽出物の機能性については、部位を特定することが重要である。このように、抽出物の機能性について、イヌトウキの部位に着目すること、特に、茎を活用することができることは、当業者予想できなかったものである。

0024

さらに、発明者らは、例えばエタノールによる抽出物と水による抽出物を比較したとき、例えばメラニン生合成について、エタノール抽出物ではこれを抑制し、水抽出物ではこれを促進することとなることを明らかにした。ここで、エタノールは、極性が低い溶媒の一例であり、水は、極性が高い溶媒の一例ということができる。本願発明の第2の観点にあるように、イヌトウキの各部位からの抽出物が、溶媒に依存して、特定の生理活性効果を促進したり抑制したりすることは、発明者らによって明らかにされた事項である。そのため、同じイヌトウキの部位であっても、溶媒によって、特定の生理活性効果を促進又は抑制した抽出物を利用することが可能になる。このように、溶媒によって、同じ生理活性効果を促進させたり抑制させたりする抽出物が得られることは、当業者が予想できなかったものである。

0025

このように、イヌトウキの部位によっても、抽出溶媒によっても、抽出成分が異なり、機能性が異なることは、当業者が容易に推測しえたものではない。

0026

また、発明者らはイヌトウキからの単離物質であるβ−アミリン(β-Amyrin)及びグルチノール(Glutinol)がメラニン生合成を促進する作用を持つことを初めて明らかにした。β−アミリン及びグルチノールは多くの植物に含有されていることが知られており、β−アミリン及びグルチノールが属するトリテルペン類は、例えば、特開平11—292752号公報によると、美白剤の有効成分として報告されていた。しかし、発明者らの研究結果によると、β−アミリン及びグルチノールは、生存細胞当たりのメラニン生合成を有意に増加させることが分かった。発明者らは、メラニン生合成量の評価だけでなく、細胞生存率も考慮しており、これらは信頼にたる研究結果といえる。したがって、本願発明の第11の観点によれば、安価に得られる物質を用いて、細胞生存率を高く保ちつつ、メラニン生合成を促進することができる。

0027

加えて、本願発明の第12及び第13の観点のヘアケア製品では、白髪を黒くする作用が期待できる。白髪を黒くするためには、毛髪染料で染めるヘアカラー剤が用いられることが一般的である。しかし、ヘアカラー剤は、毛髪表面へのダメージが大きく、その上、染色後しばらく経つと染色した部分と伸びてきた根元部分と色が異なる等の欠点を有している。本願発明のヘアケア製品では、毛根部のメラノサイトでのメラニン生合成が促進され、毛髪に含まれるメラニンが増加することにより、白髪を黒くすることができると期待される。そのため、ヘアカラー剤に比べ、毛髪へのダメージが少なく、染色部分と根元部分で色が異なることもない。

図面の簡単な説明

0028

本願発明の実施の形態に係る抽出処理の一例を示すフロー図である。
イヌトウキの各部位から抽出物ごとのメラニン生合成阻害試験の試験結果を示す表である。
β−アミリン及びグルチノールのメラニン生合成試験の試験結果を示すグラフである。
β−アミリンのメラニン生合成試験の濃度依存性を示すグラフである。
リパーゼ阻害試験の試験結果を示すグラフである。
抗菌活性試験の試験結果を示すグラフである。
抗アレルギー活性試験の試験結果を示すグラフである。
抗酸化活性試験の試験結果を示すグラフである。
分画条件を示す表である。
全抽出のクロマトグラフィー分画を示す表である。
図10のF10のクロマトグラフィーの分画を示す表である。
アセチルコリンエステラーゼ阻害試験の結果を示すグラフである。
細胞毒性試験の試験結果を示すグラフである。

実施例

0029

図1は、本願発明の実施の形態に係る抽出処理の一例を示すフロー図である。まず、イヌトウキの部位を選択する(図1のステップST1)。例えば、根、茎、葉、種などである。続いて、抽出溶媒を選択する(図1のステップST2)。抽出溶媒は、例えば、水、エタノールなどである。続いて、ステップST1において選択された部位を例えば粉末状にし、ステップST2において選択された抽出溶媒を用いて、抽出物を調製する(ステップST3)。続いて、ステップST3において調製された抽出物を含む製品を製造する(ステップST4)。

0030

以下では、まず、イヌトウキの根、茎、葉及び種について、水抽出物とエタノール抽出物について、生理活性に関する実験結果について説明する。この実験結果によれば、イヌトウキは部位ごとに様々な生理活性(メラニン生合成阻害、抗アレルギー、抗リパーゼ、抗菌、抗酸化)を持つことが明らかになった。なお、具体的な実験については、例えば、食品機能性の科学編集委員会,“食品機能性の科学”,2008年などを参照されたい。

0031

まず、植物試料の調製について説明する。

0032

イヌトウキの各部位(根、茎、葉、種)を各20g用意し、それぞれを150mLのエタノールで3回抽出した。3回の抽出は、常温で、ときどき攪拌し、それぞれ一昼夜後にろ過して抽出を行った。エタノール抽出液は、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去した。これにより、エタノール抽出物を得た。エタノール抽出物はDimethylsulfoxide(DMSO)に溶解させ、160、40、20、10、5、2.5、1.25mg/mLに調製し、その後の実験に用いた。

0033

また、イヌトウキの各部位(根、茎、葉、種)を各20g用意し、それぞれを100mLの水で3回抽出した。抽出方法は、先と同様である。水抽出液は、凍結乾燥器TAITEC(Freeze Dryer)VD-250Rを用いて溶媒を除去した。これにより、水抽出物を得た。水抽出物は水:DMSO=1:1の溶液に溶解させ、160、40、20、10、5、2.5、1.25mg/mLに調製し、その後の実験に用いた。

0034

表1は、部位ごとの抽出率(溶媒重量当たりの抽出物の重量%)を示す。

0035

0036

続いて、メラニン生合成試験について説明する。各抽出物が、B16メラノーマ細胞のメラニン生合成量に与える影響を評価した。また、化粧品等製品化にあたっては、細胞が死なないことが重要である。そのため、細胞生存率も評価した。

0037

シャーレ上に培養したB16メラノーマ細胞培養液(Eagle's Minimum Essential Medium Alpha(EMEM))を血球計測板に10μL添加し、顕微鏡を用いて細胞数を測定した。その後、細胞培養液にEMEM培地を加え、細胞濃度を1.0×105cells/mLとなるよう調製した。これを24ウェルプレートの各ウェルに1mLずつ播種し、5モル%CO2、37℃で24時間静置培養した。培養後、24ウェルプレートの培地を除去し、新たにEMEM培地998μLとサンプル溶液2μLを添加した。これを5モル%CO2、37℃で48時間静置培養した。培養後、再び培地を除去し、EMEM培地998μLとサンプル溶液2μLを添加し、5モル%CO2、37℃で24時間静置培養した。培養後、下記の方法で細胞生存率とメラニン生合成量を測定した。

0038

各ウェルにMTT染色液(5mg/mLPBSリン酸緩衝生理食塩水))を50μL添加し、5モル%CO2、37℃で4時間静置培養した。培地を除去し、各wellに塩酸イソプロパノール溶液を1mLずつ加え、遮光し、4時間室温で放置した。マイクロプレートリーダーで570nmにおける吸光度を測定し、細胞生存率の指標とした。

0039

培地を除去し、各ウェルに300μLのPBS(−)(すなわち、カルシウムが含まれないもの)を加えて洗浄した。PBS(−)を除去し、各ウェルに1MNaOH水溶液を1mLずつ添加し、細胞を溶解させた。室温で遮光し、4時間放置した。マイクロプレートリーダーで405nmにおける吸光度を測定し、メラニン生合成量の指標とした。

0040

続いて、メラニン生合成阻害試験について、説明する。図2は、実験結果を示す表である。MCは、メラニン生合成量(%)であり、CVは、細胞生存率(%)である。Typeについて、Aは、MC45%(又はそれよりも少ない)を与えたサンプル、Bは、MC45〜60%を与えたサンプル、Cは、MC60〜80%を与えたサンプル、Dは、メラニン合成を10%以上促進されたサンプルであり、Eは、それ以外である。また、*は、CV>80%のサンプル、**は、CV=70〜80%である。

0041

根のエタノール抽出物(RE)は、濃度依存的にメラニン生合成を阻害した。最も阻害活性が強かったのは、根のエタノール抽出物(40μg/mL)で、阻害率は73.57%であった。しかし、同時に強い細胞毒性細胞死亡率41.47%)も確認された。低濃度(20、10μg/mL)においても、メラニン生合成阻害活性(62.77%、45.05%)を示し、また、細胞毒性はそれぞれ14.63%、7.32%であった。この値は、ポジティブコントロールとして使用したarbutinよりメラニン生合成阻害活性が強く、細胞毒性が低いことを示している(arbutin:メラニン生合成阻害率49.7%、細胞毒性:14.53%)。

0042

茎のエタノール抽出物(STE)は、40μg/mLにおいて強いメラニン生合成阻害活性(65.1%)を示した。20μg/mLにおいても、強いメラニン生合成阻害活性(56.61%)、低い細胞毒性(4.36%)を示した。さらに低濃度(10μg/mL)では、メラニン生合成阻害活性は低下し(28.38%)、細胞毒性は検出されなくなった。

0043

葉のエタノール抽出物(LE)は、40、20μg/mLにおいて、弱いメラニン生合成阻害活性(29.2%、22.53%)と細胞毒性(27.65%、20.48%)を示した。10μg/mLにおいては、メラニン生合成阻害活性が15.62%、細胞毒性が18.23%と、抽出物の活性は低かった。

0044

種のエタノール抽出物(SE)は、40μg/mLにおいて強いメラニン生合成阻害活性(53.6%)と、弱い細胞毒性(29.81%)を示した。また、20、10μg/mLにおいては、弱いメラニン生合成阻害活性(26.58%、22.98%)と同じく弱い細胞毒性(16.3%、15.0%)を示した。

0045

他方、ほとんどの水抽出物(RW、STW、LW、SW)でメラニン生合成の抑制効果は観察されなかった。茎(10μg/mL)は、メラニン生合成を21.6%で促進した。

0046

このように、エタノール抽出物は、メラニン生合成阻害活性を示し、他方、水抽出物は、メラニン生合成促進活性を示す。化粧品等の商品化をするためには、溶媒として、例えば、メタノールのような毒性があるものを使用することは困難である。そのため、商品化に向けた溶媒としては、エタノールと水が有力な候補となる。水は、極性の高い溶媒(極性溶媒)と評価できる。エタノールは、極性の低い溶媒(非極性溶媒)と評価できる。そして、極性溶媒と非極性溶媒(特に、水とエタノール)によって、どのような性質の抽出物が得られるかは、当業者が予測できない事項である。これにより、非極性溶媒(特に、エタノール)による抽出物は、例えば美白化粧品への応用が可能であり、極性溶媒(特に、水)抽出物は、例えば、サンタン剤、白髪予防等のヘアケア製品(例えば、シャンプー、リンス、育毛剤等)への応用が可能である。

0047

さらに、上述の各抽出物のメラニン生合成試験に加え、抽出物から単離し、同定された化合物であるβ−アミリン及びグルチノールについてもメラニン生合成試験を行ったので、その結果について説明する。

0048

まず、イヌトウキを室温にてエタノール抽出した。その抽出物を、減圧条件下、45℃を超えない温度範囲にて濃縮し、さらに、シリカゲルカラムにて複数に分画した。

0049

分画したイヌトウキ抽出物を画分ごとにNMR測定を行い、既報の文献にて報告されているデータと比較することで、そのうち2つの画分はそれぞれβ−アミリン及びグルチノールであると同定した(例えば、Antonio G. Gonzalez, 外2名著, Triterpenes from Maytenus horrida, Phytochemistry, Vol. 26, pages 2785-2788, 1987.を参照)。

0050

続いて、イヌトウキ各部位からの抽出物について行ったメラニン生合成阻害試験と同様に、イヌトウキから単離したβ−アミリン及びグルチノールについてもメラニン生合成試験を行った。図3は、DMSO(溶媒のみ)、美白剤として知られているアルブチン、β−アミリン及びグルチノール、それぞれのメラニン生合成量(%)及び細胞生存率(%)を示すグラフである。DMSOと比較して、アルブチンではメラニン生合成量が減少しているのに対し、β−アミリン及びグルチノールではメラニン生合成量の増加が観測された。なお、細胞生存率はβ−アミリンが約90%、グルチノールが約80%であり、美白剤として多くの化粧品に用いられているアルブチンと同程度の細胞生存率が保たれた。

0051

図4は、β−アミリンのメラニン生合成促進作用の濃度依存性を示す図である。β−アミリンが低濃度になるに伴い、細胞生存率はほぼ一定に保たれたまま、メラニン生合成促進作用は強くなった。したがって、β−アミリンをメラニン生合成促進剤として用いる際には、このような濃度依存性を考慮した上で、濃度設定を行うことにより、さらなるメラニン生合成促進作用が期待できる。

0052

β−アミリン及びグルチノールは多くの植物に含有されていることが知られていたが、メラニン生合成を促進する作用を持つことは、本発明者らによって初めて明らかにされた。従来はむしろ美白化粧品に含まれていたが、生存細胞当たりのメラニン生合成量は有意に増加していることが見てとれる。そこで、本発明者らはβ−アミリン及びグルチノールは、メラニン生合成促進剤として、サンタン剤、白髪予防等のヘアケア製品への応用が期待できることを見出した。なお、β−アミリン及びグルチノールは安価に得られる物質であり、本発明のβ−アミリンを有効成分として含有するメラニン生合成促進剤は、精製されたβ—アミリンを配合しても、当該化合物を含有するイヌトウキからの抽出物を配合しても、どちらでも良い。

0053

続いて、リパーゼ活性阻害試験について説明する。各抽出物が、リパーゼの活性に与える影響を評価した。

0054

各抽出物を3%DMSO(3ml DMSO/97ml水溶液体積%))とし、13mM Tris-HCl、150mM NaCl、1.3mM CaCl2緩衝液(リパーゼ緩衝液:pH 7.98)で25μLにメスアップした。この溶液に、リパーゼ緩衝液に溶かした0.05mM 4-methylumbelliferyl oleate(4-MUO)を50μL加え、続いて、50U/mL、150μg/mL膵臓由来リパーゼ25μLを上記と同様の緩衝液に溶かし系内に加えることで反応を開始させた。25℃で30分間反応させ、0.1Mクエン酸緩衝液(pH 4.2)100μLを加えて反応を停止させた後、蛍光強度を測定した(Em:355nm、Ex:460nm)。4-MUOにリパーゼが作用して遊離した4-methylumbelliferoneの蛍光強度を測定することで、リパーゼ活性に与える影響を評価する。リパーゼ活性(%)は、数1の計算式により算出した。ここで、Sは、試料添加系の反応後の蛍光強度であり、SBlankは、試料と4-MUOのみの蛍光強度であり、Cは、試料無添加系の反応後の蛍光強度であり、CBlankは、4-MUOのみの蛍光強度である。なお、ポジティブコントロールに、リパーゼ阻害剤として用いられるorlistatを使用した。

0055

0056

続いて、リパーゼ阻害試験の試験結果について説明する。図5は、各抽出物がリパーゼ活性に与える影響を示すグラフである。最終濃度は、μg/mLである。全ての値は、4つのレプリカの平均である。*は、コントロールグループからの有意な差異が認められた試料である。実験中に群間差が偶然生じる可能性を示す尺度であるP値について、P<0.01とした。P<0.01とは、この結果を偶然生じることが100回に1回未満であることを意味する。このP値が小さくなるほど、コントロール群と、サンプル群との差は、サンプルの効果によるものであることをあらわしている。通常は、0.05以下であれば、有効と考えられる。Orlistat(1μg/mL)をポジティブコントロールとして使用した。

0057

茎、根、葉のエタノール抽出物(400μg/mL)(RE400、STE400、LE400)において、強いリパーゼ阻害活性(81.2%、76.41%、57.09%)が確認された。200μg/mLでは、リパーゼ阻害活性は、それぞれ49.65%、45.61%、40.26%に減少した。

0058

水抽出物では、種が400μg/mLにおいて阻害活性(31.7%)を示した(SW400)。他の水抽出物については、15.09〜4.44%の弱い阻害活性しか検出されなかった。

0059

このように、非極性溶媒(エタノール)によれば、阻害活性を示すのに対し、極性溶媒(水)によれば、阻害活性を示しにくくなる。このように、溶媒によって、抽出物の性質が異なることは、発明者らによって初めて見出されたものである。

0060

続いて、抗菌活性試験について説明する。各抽出物がEschericia coli(NBRC13276)とStaphylococcus aureus(NBRC3301)の増殖に与える影響を評価した。

0061

Nutrient agar(NA)培地上に培養した菌のコロニーを5mLのNutrient broth(NB)培地に加え、37℃で18時間振とう培養(160rpm)して定常期菌体を得た。得られた定常期の培養液をNB培地で希釈し、OD660=0.4になるよう調製した(E.coli:109 CFU/mL、S.aureus:108 CFU/mL)。さらに、これを滅菌水で希釈し、菌濃度を105 CFU/mLとして抗菌試験に用いた。

0062

抗菌活性の測定は以下のようにした。エッペンチューブに445μLのNB培地、50μLの菌液、5μLのサンプル溶液を加え、十分に混合した。この溶液を96ウェルプレートに150μLずつ分注し(n=3)、37℃で18時間振とう培養(1150rpm)した。培養後、630nmにおける濁度を測定し、抗菌活性の指標とした。

0063

続いて、抗菌活性試験の試験結果について説明する。図6は、各抽出物の大腸菌(E.coli)と黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する抗菌活性を示すグラフである。結果の値は、3回繰り返し実験での平均値±標準偏差で示した。最終濃度は、エタノール抽出物では、400μg/mLであり、水抽出物では、1600μg/mLとした。統計処理としては、スチューデントt検定を行うことにより、抽出物未添加群(コントロール群)との差の有無を検定した。P<0.05の場合は*を、P<0.01の場合は**を記載した。

0064

E.coliに対する抗菌活性は、全抽出物を通して確認できなかった。一方で、根と茎のエタノール抽出物が、400μg/mLにおいてS.aureusに対する強い抗菌活性を示した。また、葉のエタノール抽出物は400μg/mLにおいてS.aureusに対する弱い抗菌活性を示した。

0065

このように、E.coliに対しては、全体として抗菌活性を示さず、S.aureusに対しては、非極性溶媒(エタノール)抽出物は、全体としてよい抗菌活性を示し、極性溶媒(水)抽出物は、全体として弱い抗菌活性を示す。このように、一部の菌に対してのみ抗菌活性を示すこと、さらに、溶媒によって、抽出物の性質が異なることは、発明者らによって初めて見出されたものである。本願発明を、イヌトウキの葉及び/又は茎のエタノール抽出物であって、S.aureusに対して抗菌活性を示すものとして捉えてもよい。

0066

本願発明を、イヌトウキの葉、根及び茎の一部又は全部のエタノール抽出物であって、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を示すものとして捉えてもよい。

0067

続いて、抗アレルギー活性試験について説明する。食品中の成分に抗アレルギー活性を評価するため、ラット肥満細胞様細胞株RBL-2H3を用いて脱顆粒抑制作用の有無を調べた。

0068

96ウェルプレートにRBL-2H3細胞溶液を100μL(1×106cells/well)播種し、37℃、5モル%CO2条件下で24時間培養した。培養後、1μg/mLの抗DNP-IgE抗体を1μL添加した。同様の条件でさらに24時間培養後、培地を除去し、100μLのTyroid bufferと1μLの抽出物溶液を添加した。これを30分培養後、培地を除去し、100μLのTyroid bufferと20μL/mLのDNP-BSAを1μL添加した。さらに30分培養後、各ウェルから50μLを取り、別の96ウェルプレートに移した。ここに、基質として1mM p-nitrophenyl-N-acetyl-β-glucosaminideを50μL添加し、室温で1時間静置した。最後に、100mM Na2CO3水溶液(pH=10)を100μL加えて反応を停止させ、405nmの吸光度を測定した。

0069

また、抽出物が細胞の生存率に与える影響をMTT法により評価した。96ウェルプレートにRBL-2H3細胞溶液を100μL(1×106 cells/well)播種し、37℃、5モル%CO2条件下で24時間培養した。培養後、抽出物溶液を1μL添加した。さらに24時間培養後、5mg/mL MTT溶液を10μLずつwellに添加し、37℃、5モル%CO2条件下で4時間培養した。培養後、培地を除去し、100μLのイソプロパノールで細胞を溶解させ、遮光し一晩放置した。プレートリーダーで570nmの吸光度を測定し、生細胞数の指標とした。

0070

続いて、抗アレルギー活性試験の試験結果について説明する。図7は、RBL-2H3細胞へのイオノフォアA23187ならびにIgEにより誘導されるβ−ヘキソアミダーゼ活性に及ぼす影響を示すグラフである。結果の値は、5回繰り返し実験での平均値±標準偏差で示した。統計処理としては、スチューデントのt検定を行うことにより、抽出物未添加群(コントロール群)との差の有無を検定した。P<0.01の場合には、*を記載した。没食子酸(100μM)を陽性コントロールとして用いた。

0071

MTT試験の結果から、試験濃度における抽出物がRBL-2H3細胞に対して細胞毒性を示さないことが分かった。免疫グロブリン、イオノフォアを用いた実験はある程度相関のある結果となった。β−ヘキソアミダーゼ分泌に対する最も強い阻害活性を示したのは葉のエタノール抽出物であり(95.68%:IgE、69%:A23187)、次いで、種の水抽出物(63%:IgE、77.6%:A23187)、葉の水抽出物(61%:IgE、77.6%:A23187)であった。他の抽出物も両試験において穏やかな阻害活性を示した。この結果より、RBL-2H3細胞において、IgE又はイオノフォアにより産生されるβ−ヘキソアミダーゼの分泌は、試験した抽出物により阻害できることが分かった。

0072

続いて、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法による抗酸化活性試験について説明する。各抽出物のペルオキシラジカル消去能をORAC法により評価した。

0073

96ウェルプレートにトロロックス標準試料溶液(75mM)20μL、又は、抽出物溶液(Blankは75mMリン酸緩衝液)20μLを入れ、94.4nMフルオレセイン溶液(リン酸緩衝液に溶かしている)200μL添加した。これを37℃の湯浴で10分間加温した。さらに、37℃で10分間加温した31.7mM AAPH(2,2'−azobis (2-amidino-propane)-dihydrochloride)溶液を75μLずつ8連ピペットで添加した。AAPHを添加して30秒後に装置を起動させ、37℃で反応させながら、30秒間隔で90分間蛍光強度を測定した。数2の計算式を用いて、各サンプルのAUCを、得られた各ウェルでの蛍光強度の測定結果から算出した。ここで、AUCは、蛍光強度の曲線下面積(AUC:Area Under the Curve)のことであり、f0は、0秒時(計測開始時)の蛍光強度であり、fiは、i秒後の蛍光強度である。

0074

0075

また、トロロックス0μMのデータをブランクとし、トロロックス各標準液濃度(6.33、3.16、1.58、0.79μg/mL)で得られたデータのAUCの増加量(AUCTrolox−AUCBlank)をnetAUCとした。X軸にトロロックスのnetAUCの平均値、Y軸にトロロックス濃度をとり一次回帰式(Y=aX+b)を作成した。数3の回帰式を用いて相対ORAC値を算出した。

0076

0077

続いて、抗酸化活性試験の試験結果を説明する。図8は、各抽出物のORAC値を示す図である。横軸は、それぞれ部位毎抽出物の種類を示し、縦軸は、その部位の乾燥重量100グラムあたりのトロロックス相当ORAC値を示している。

0078

ORAC値は、μM TE/100g(生重量)で示してあり、既報(Wu、外5名著,Lipophilic and hydrophilic antioxidant capacities of common foodsin the United States,J.Agric.Food Chem.,52,4026−4037(2004))の食品のORAC値と比較した。葉の水抽出物と茎のエタノール抽出物が最も高いORAC値を示し、それぞれ11181.1、10831.6であった。これらの値は100gのエルダーベリー(10655)に匹敵する値である。根と茎の水抽出物のORAC値は少し低く、8673.1と8064.8であった。これらの値は100gのリンゴ(7781)に相当する値である。種の水抽出物のORAC値は6650.6であり、100gのザクロに近い値(5923)であった。他の抽出物のORAC値は低く(3809.4〜2141.5)、100gのブロッコリーと同程度であった。このように、抽出物は、全体として、抗酸化活性を示す。

0079

続いて、日本山人参地上部からの生理活性物質の単離について説明する。

0080

まず、大量抽出について説明する。10kgのA.furcijuga地上部粉末を室温でメタノールを用いて抽出した(14L×4回)。抽出液減圧濃縮して、メタノール抽出物700gを得た。

0081

続いて、メタノール抽出物の分画について説明する。650gのメタノール抽出物をメタノールに溶解させ、700gのシリカゲルと混合した後、すり潰した。その後、室温で乾燥させ、シリカゲルカラム(50cm×19cm i.d.,3.5kg)に充填した。その後、ヘキサン酢酸エチル(100:0−0:100,グラジエント)、酢酸エチル−メタノール(100:0−0:100,グラジエント)、メタノール−水(1:1)で溶出させた。溶離液は20Lずつ分取し、濃縮した後にシリカゲルTLCで分析した。

0082

図9は、分画条件を示す表である。

0083

次に、神経保護物質の単離について説明する。日本山人参の抽出物は、血圧調整や食欲増進免疫賦活効果皮膚細胞代謝調節疲労回復炭水化物代謝調節など様々な生理活性が報告されている。

0084

アルツハイマー病は、進行性の特に先進諸国の高齢者発症する脳変性障害である。アルツハイマー病は、学習、記憶、行動情動行動を扱っている脳領域でのアセチルコリンの減少によるコリン機構喪失と関連があると示唆されている。神経病理学的には、アルツハイマー病は、β−アミロイドプラークの存在や、神経原繊維変化前脳基底核のコリン神経系の変性・委縮により特徴づけられている。前脳基底核のコリン細胞の喪失は、シナプスにおけるアセチルコリン利用能減退させ、アルツハイマー病における認知障害を引き起こす。したがって、アルツハイマー病の症状緩和に最も有効な方法は、アセチルコリンを加水分解するアセチルコリンエステラーゼの阻害によるシナプス内のアセチルコリンの増加である。

0085

そこで、以下では、日本山人参からアセチルコリンエステラーゼ阻害物質を単離し、アルツハイマー病の新規治療薬の可能性について検討する。

0086

加えて、スーパーオキシドアニオン(O-2)などのフリーラジカルや、過酸化水素(H2O2)などのnon-free radical speciesといった活性酸素種が引き起こす酸化ダメージ神経症の原因となる。そこで、日本山人参の地上部位がもつ、neuro-2A細胞における抗過酸化水素能を検討する。

0087

実験方法を説明する。まず、サンプルを準備する。日本山人参の地上部位の粉末10kgを室温(14Lx4)においてメタノールにて抽出した。抽出液は、45℃未満の湯浴に浸しロータリーエバポレーターにかけて、溶媒を除去し、メタノール抽出物を700g得た。メタノール抽出物は緑色の粘性がある物質であった。メタノール抽出物はシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。オープンカラム(50x19cm)にシリカゲル4.2kg、メタノール抽出物を充填し、nヘキサンと酢酸エチル(100:0−0:100,gradient)、酢酸エチルとメタノール(100:0〜0:100,gradient)、メタノールと水(1:1)の順に流した。各画分のTLC分析結果より、類似の成分が含有されている画分をひとまとめにして、整理した。Fr.10(F10,200g)はさらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分画を行った。オープンカラム(30x8cm)にシリカゲル800 g、F10を充填し、クロロホルムとメタノール(100:0−0:100, gradient)を流した。各溶出画分はシリカゲルTLCにて、類似の成分が含有されているものをひとまとめにした。

0088

試験結果について、説明する。図10は、全抽出のクロマトグラフィーの分画を示す表である。図10にあるように、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて、計12の画分に分画した。F1は0.003 mgとごく微量だったため、後の試験には供さなかった。図11は、F10のクロマトグラフィーの分画を示す表である。F10の分画では、計7つの画分に分画した。

0089

続いて、アセチルコリンエステラーゼ阻害試験(Ellman’s Method)について説明する。

0090

アセチルコリンエステラーゼ酵素は基質のアセチルコリンを加水分解し、チオコリンを生成する。チオコリンはEllman試薬である5,5−dithiobis[2−nitrobenzoic acid](DTNB)と反応し、2-nitrobenzoate-5-mercaptothiocholine及び5-thio-2-nitrobenzoateを生じさせる。これらは405 nmにおいて吸光を示す。

0091

96ウェルプレートに、トリス緩衝液(50 mM,pH= 8.0,0.1%BSA for stabilizing the enzyme)100μL、0.25 U/mLアセチルコリンエステラーゼ10μL、10mM DTNB 10μL、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて分画した画分F2からF12(2,10mg/mLエタノール,最終濃度;76.92、384.6μg/mL)10μL又は5μLを加え、混合し、30℃で5分間インキュベートした。次に、基質として75mMアセチルコリン5μLを加え、再び30℃で10分間インキュベートした。インキュベート後、405nmにて吸光度を測定した。

0092

阻害率(%)の算出方法は、数4の計算式による。ここで、AControlは、サンプルの代わりとして、エタノールを加えた系の吸光度であり、ABlankは、サンプルと酵素の代わりに同量の緩衝液を加えた系の吸光度であり、ASampleは、サンプルを加えた系の吸光度であり、ASample Blankは、サンプルと基質の代わりに、緩衝液を加えた系の吸光度である。ポジティブコントロールとして、ガランタミンを用いた。T−testを用いて、有意差を調べた。

0093

0094

図12は、アセチルコリンエステラーゼ阻害試験の結果を示す。縦軸は、アセチルコリンエステラーゼ阻害率(n=4)を示す。F2、8、10、11、12においては低濃度(76.92μg/mL)では阻害がほとんど見られなかったが、高濃度(384.6 μg/mL)では顕著な阻害がみられた。F3、F4、F5、F6においては、低濃度、高濃度両方で高い阻害がみられた。

0095

続いて、euro 2A細胞の細胞毒性試験(MTT試験)及び過酸化水素のもつ細胞毒性試験について説明する。

0096

まず、細胞毒性試験(MTT試験)について説明する。neuro-2A細胞を96ウェルプレート中に播種し(1x105 cells/well)CO2インキュベーター(5モル%CO2, 37℃)にて24時間インキュベートした。培地を交換し99μL入れ、1μLのDMSOに溶かしたF2〜F12のサンプルをそれぞれ添加し、再び24時間インキュベートした。MTT溶液(5mg/mLリン酸緩衝液)20μLを添加した。4時間インキュベートしたのち、150 μLのDMSOを加えることによって、沈殿したホルマザンを溶解させた。暗黒条件下でさらに4時間後、マイクロプレートリーダーにて570nmの吸光度を測定した。有意差はt−testを用いて算出した。

0097

続いて、過酸化水素のもつ細胞毒性試験について説明する。neuro-2A細胞を96ウェルプレート中に播種し(1x105cells/well)CO2インキュベーター(5モル%CO2,37℃)にて12時間インキュベートした。培地に、1 μLのDMSOに溶かしたF2〜F12のサンプルをそれぞれ添加し、再び1時間インキュベートした。1つのプレートには99μLの新しい培地と交換し、H2O2 1μLを添加した。もう一つのプレートには、コントロールのウェルを除いて、培地を交換せずにH2O2 1μLを添加した。そして、さらに24時間インキュベートしたのち、細胞生存率を測定した。細胞生存率は、MTT法と同様に測定した。有意差はt-testを用いて算出した。

0098

図13は、実験結果を示すグラフである。図13(a)は、neuro-2A細胞における細胞毒性試験の結果を示す。F2、F8、F9、F10、F11、F12は、400μg/mLにおいて、細胞生存率が80%以上を示した。全体としては、F4、F5、F7は200μg/mL、F3、F6は100μg/mLの際に細胞生存率80%以上を示した。そして、これらの濃度を次の過酸化水素が持つ細胞毒性試験に供した。90μMの過酸化水素は、細胞生存率の40%から50%の減少を引き起こす。しかし、F2、F3、F4、F5を加えることで、細胞生存率は86%〜94%まで改善した。過酸化水素を加えない系での細胞生存率は81%から100%であった。したがって、これらの画分は神経細胞膜を通過できるだけでなく、細胞内の酸化ストレスを低下させ、細胞外ラジカルにより生成された過酸化水素と反応することが可能だと示唆された。一方で、F7、F9、F10、F11は、過酸化水素を加えない系ではCVが66%~78%まで上昇した。したがって、これらの画分は、細胞膜を通過する能力は低いが、細胞外の過酸化水素がもたらす酸化ストレスを強力に低下させる働きを持つと判明した。

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