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技術 甘く香ばしい豆の風味を納豆に付与する方法

出願人 株式会社MizkanHoldings株式会社Mizkan
発明者 小笠原靖市瀬秀之
出願日 2013年5月13日 (6年2ヶ月経過) 出願番号 2013-101475
公開日 2014年11月27日 (4年7ヶ月経過) 公開番号 2014-221014
状態 特許登録済
技術分野 飼料または食品用豆類
主要キーワード 継続試験 高温設定 気相温度 自社開発 胞子状態 維持温度 日常食品 減少度合い
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年11月27日)のものです。
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図面 (5)

課題

納豆菌全般に対して適用可能な技術であり、風味の観点から従来の納豆とは全く異なる優れた風味を納豆に付与する技術を提供することを目的とする。

解決手段

蒸煮大豆又は煮大豆に納豆菌を植菌した後で、(1) 5.5〜14.5時間の間、豆の品温を実質的に37〜53℃の温度帯に維持して発酵を行う工程、(2) 前記工程を行った後、3.5時間以内の間、豆の品温を実質的に55〜70℃の温度帯に維持して加熱処理を行う工程、を行うことを特徴とする、甘く香ばしい豆の風味を納豆に付与する方法を提供する。また、(a) 納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である性質、(b) 納豆(湿重量)あたりグアヤコール含量が1.5ppm以上である性質を有する納豆を提供する。

概要

背景

大豆納豆菌発酵させた糸引き納豆(いわゆる納豆)は、日本古来発酵食品であり、大豆タンパク質豊富に含み栄養価が高い。また、栄養価に加えて、納豆はそれ自体の嗜好性が高いことから、日本人日常食品の一つとなっている。
さらに、近年、納豆にはプロバイオティック作用、抗菌作用機能性成分等による各種健康増進効果があることが報告されており、益々需要が期待されている食品である。

納豆菌による発酵過程では、発酵により強い粘りを有する糸引き成分が生成される。
当該糸引き成分は、独特風味食感を納豆に与える性質を有し、白米を炊いたご飯との相性が抜群に良い。
一方、納豆菌の発酵過程が進行すると、大豆に含まれる成分の変化が起こり、納豆臭,アンモニア臭,苦味が付与される代わりに、煮豆本来の風味が失われる傾向にある。このような独特な風味は、納豆を初めて食する場合の障壁となる場合がある。
そこで、納豆の風味等の嗜好性に関して、様々な改良が試みられており、特に特定納豆菌株を用いる様々な納豆製造技術が開示されている。例えば、納豆臭低減に関する特許文献1、納豆の硬さの低減に関する特許文献2などを挙げることができる。

しかしながら、これらの技術では、特定菌株の性質を利用して、特定性質に関する課題を解決する技術であり、納豆の嗜好性を全体的に向上させることができる技術ではなかった。また、特定の納豆菌株を用いることが必須となるため、他の優れた性質を有する納豆菌には応用できないという課題があった。

概要

納豆菌全般に対して適用可能な技術であり、風味の観点から従来の納豆とは全く異なる優れた風味を納豆に付与する技術を提供することを目的とする。蒸煮大豆又は煮大豆に納豆菌を植菌した後で、(1) 5.5〜14.5時間の間、豆の品温を実質的に37〜53℃の温度帯に維持して発酵を行う工程、(2) 前記工程を行った後、3.5時間以内の間、豆の品温を実質的に55〜70℃の温度帯に維持して加熱処理を行う工程、を行うことを特徴とする、甘く香ばしい豆の風味を納豆に付与する方法を提供する。また、(a) 納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である性質、(b) 納豆(湿重量)あたりグアヤコール含量が1.5ppm以上である性質を有する納豆を提供する。

目的

本発明は、上記課題を解決し、納豆菌全般に対して適用可能な技術であり、風味の観点から従来の納豆とは全く異なる優れた風味を納豆に付与する技術を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

この技術が所属する分野

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請求項1

納豆を製造するにあたり、蒸煮大豆又は煮大豆に納豆菌植菌した後で下記(1)及び(2)に記載の工程を行うことを特徴とする、甘く香ばしい豆の風味を納豆に付与する方法。(1):5.5〜14.5時間の間、豆の品温を実質的に37〜53℃の温度帯に維持して発酵を行う工程。(2):上記(1)に記載の工程を行った後、3.5時間以内の間、豆の品温を実質的に55〜70℃の温度帯に維持して加熱処理を行う工程。

請求項2

納豆に甘く香ばしい豆の風味に付与されたと判定する指標が、下記(A)及び(B)に記載の条件を満たすことを指標として判定するものである、請求項1に記載の方法。(A):納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である条件。(B):納豆(湿重量)中のグアヤコール含量が1.5ppm以上である条件。

請求項3

上記(1)に記載の工程における温度帯の維持時間が6〜14時間である、請求項1又は2に記載の方法。

請求項4

上記(2)に記載の工程における温度帯の維持時間が3時間以内である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

請求項5

上記(1)及び(2)に記載の工程を行った後、豆の品温を3℃以上10℃未満に維持して熟成させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

請求項6

請求項1〜5のいずれかに記載の方法により甘く香ばしい豆の風味を付与することを特徴とする納豆の製造方法。

請求項7

請求項6に記載の方法を用いて製造された甘く香ばしい豆の風味が付与された納豆であって、下記(a)及び(b)に記載の性質を有する納豆。(a):納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である性質。(b):納豆(湿重量)中のグアヤコール含量が1.5ppm以上である性質。

請求項8

下記(a)及び(b)に記載の性質を有する、甘く香ばしい豆の風味が付与された納豆。(a):納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である性質。(b):納豆(湿重量)中のグアヤコール含量が1.5ppm以上である性質。

技術分野

0001

本発明は、通常よりも発酵を短時間で行った後加熱処理を適切に行うことにより、従来の納豆にはない甘く香ばしい豆の風味を納豆に付与する技術に関する。

背景技術

0002

大豆納豆菌で発酵させた糸引き納豆(いわゆる納豆)は、日本古来発酵食品であり、大豆タンパク質豊富に含み栄養価が高い。また、栄養価に加えて、納豆はそれ自体の嗜好性が高いことから、日本人日常食品の一つとなっている。
さらに、近年、納豆にはプロバイオティック作用、抗菌作用機能性成分等による各種健康増進効果があることが報告されており、益々需要が期待されている食品である。

0003

納豆菌による発酵過程では、発酵により強い粘りを有する糸引き成分が生成される。
当該糸引き成分は、独特の風味や食感を納豆に与える性質を有し、白米を炊いたご飯との相性が抜群に良い。
一方、納豆菌の発酵過程が進行すると、大豆に含まれる成分の変化が起こり、納豆臭,アンモニア臭,苦味が付与される代わりに、煮豆本来の風味が失われる傾向にある。このような独特な風味は、納豆を初めて食する場合の障壁となる場合がある。
そこで、納豆の風味等の嗜好性に関して、様々な改良が試みられており、特に特定納豆菌株を用いる様々な納豆製造技術が開示されている。例えば、納豆臭低減に関する特許文献1、納豆の硬さの低減に関する特許文献2などを挙げることができる。

0004

しかしながら、これらの技術では、特定菌株の性質を利用して、特定性質に関する課題を解決する技術であり、納豆の嗜好性を全体的に向上させることができる技術ではなかった。また、特定の納豆菌株を用いることが必須となるため、他の優れた性質を有する納豆菌には応用できないという課題があった。

先行技術

0005

特開平8-154616号公報
特開2008-263929号公報

発明が解決しようとする課題

0006

本発明は、上記課題を解決し、納豆菌全般に対して適用可能な技術であり、風味の観点から従来の納豆とは全く異なる優れた風味を納豆に付与する技術を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、従来法より大幅に短い所定時間で発酵を行うことによって、煮豆本来の風味を保持した上で、風味成分であるアセトイン高濃度に含有させられることを見出した(第1工程)。その後、所定温度で且つ所定時間での加熱処理を行うことによって、別の風味成分であるグアヤコール含量が顕著に増加できることを見出した(第2工程)。
そして、本発明者は、このような工程を経て製造された納豆は、従来の納豆にはない‘甘く香ばしい豆の風味’を有する納豆になることを見出した。

0008

本発明は、当該知見に基づいてなされたものである。
[請求項1]に係る発明は、納豆を製造するにあたり、蒸煮大豆又は煮大豆に納豆菌を植菌した後で下記(1)及び(2)に記載の工程を行うことを特徴とする、甘く香ばしい豆の風味を納豆に付与する方法に関する。
(1):5.5〜14.5時間の間、豆の品温を実質的に37〜53℃の温度帯に維持して発酵を行う工程。
(2):上記(1)に記載の工程を行った後、3.5時間以内の間、豆の品温を実質的に55〜70℃の温度帯に維持して加熱処理を行う工程。
[請求項2]に係る発明は、納豆に甘く香ばしい豆の風味に付与されたと判定する指標が、下記(A)及び(B)に記載の条件を満たすことを指標として判定するものである、請求項1に記載の方法に関する。
(A):納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である条件。
(B):納豆(湿重量)中のグアヤコール含量が1.5ppm以上である条件。
[請求項3]に係る発明は、上記(1)に記載の工程における温度帯の維持時間が6〜14時間である、請求項1又は2に記載の方法に関する。
[請求項4]に係る発明は、上記(2)に記載の工程における温度帯の維持時間が3時間以内である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法に関する。
[請求項5]に係る発明は、上記(1)及び(2)に記載の工程を行った後、豆の品温を3℃以上10℃未満に維持して熟成させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法に関する。
[請求項6]に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の方法により甘く香ばしい豆の風味を付与することを特徴とする納豆の製造方法に関する。
[請求項7]に係る発明は、請求項6に記載の方法を用いて製造された甘く香ばしい豆の風味が付与された納豆であって、下記(a)及び(b)に記載の性質を有する納豆に関する。
(a):納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である性質。
(b):納豆(湿重量)中のグアヤコール含量が1.5ppm以上である性質。
[請求項8]に係る発明は、下記(a)及び(b)に記載の性質を有する、甘く香ばしい豆の風味が付与された納豆に関する。
(a):納豆100g(湿重量)あたりのアセトイン含量が150mg以上である性質。
(b):納豆(湿重量)中のグアヤコール含量が1.5ppm以上である性質。

発明の効果

0009

本発明の方法により、風味の観点から、従来の納豆とは全く異なる優れた嗜好性を有する納豆を製造することが可能となる。これにより本発明は、納豆自体が有する食品としての偏った嗜好性を改善し、納豆の魅力を向上させることに繋がる技術になることが期待される。
具体的には、本発明の方法により、特に下記(i)〜(iii)に記載の優れた性質を有する嗜好性に優れた納豆を製造することが可能となる。(i) 従来の納豆にはない甘く香ばしい豆の風味を有する性質。(ii)納豆臭やアンモニア臭が低減された性質。(iii)煮豆の食感が保持された性質。
これらのうち、特に本発明の方法では、(i)に記載の性質である‘甘く香ばしい豆の風味’を付与することができる点が最大の特徴である。当該風味は、従来の納豆には存在しない完全に新規の風味である。

0010

本発明の方法は、納豆菌の発酵特性が温度条件の違いに大きく依存した技術であるため、特定の納豆菌株,添加物,機器等の使用を必要とせずに実施することが可能となる。

0011

本発明の方法では、従来の納豆製造に要する通常の発酵時間(17時間程度)と比べて、短時間(発酵時間や加熱処理時間を最短とした場合の実施態様では約6〜6.5時間)で、納豆を製造することが可能となる。これにより、納豆製造の大幅な効率化に貢献する技術になることが期待される。

図面の簡単な説明

0012

実施例1で製造した納豆について、アセトイン含量の測定結果と、甘香風味強度の相対評価の結果を示した図である。
実施例2で製造した納豆について、グアヤコール含量及びアセトイン含量の測定結果と、甘香風味強度の相対評価の結果を示した図である。
実施例3で製造した納豆について、グアヤコール含量及びアセトイン含量の測定結果と、甘香風味強度の相対評価の結果を示した図である。
本発明に係る甘く香ばしい豆の風味を付与する方法において、発酵及び加熱処理に関する温度条件及び時間条件を示した図である。

0013

以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、従来法より大幅に短い所定時間で発酵を行い、その後に所定温度で且つ所定時間での加熱処理を行うことによって、甘く香ばしい豆の風味(従来の納豆にはない風味)を納豆に付与する技術に関する。

0014

大豆原料
本発明の納豆の製造方法では、通常の納豆の製造に用いることができる如何なる原料をも用いることができる。例えば、丸大豆半割大豆、割砕大豆(引き割り納豆の原料)、脱脂大豆などを使用できる。特に高品質納豆製造時に使用される中粒大粒のものが好適である。これらの大豆は、生のまま用いることもできるが、乾燥処理を行ったもの(乾燥品)を用いることが一般的である。

0015

本発明では、原料の大豆を常法により蒸煮大豆又は煮大豆にして用いる。成分の流亡を防ぐ意味では、蒸煮大豆が好適である。なお、蒸煮や煮る操作を行う前には、原料大豆を水に浸漬し、膨潤させて用いることが望ましい。
ここで、蒸煮大豆の具体的な調製手順としては、大豆を水中に6〜24時間程度浸漬した後、水切りして、100〜135℃の蒸気で10〜30分の蒸煮処理する方法を採用することができる。また、0.12〜0.22Mpaの高圧条件にて、加圧蒸煮する方法を採用することもできる。
また、煮大豆の具体的な調製手順としては、大豆を水中に6〜24時間程度浸漬した後、90〜100℃の湯で20〜50分間煮込む方法を採用することができる。

0016

[納豆菌]
本発明の方法では、通常の納豆発酵能を有する納豆菌であれば、如何なる納豆菌(菌株)であっても用いることができる。ここで納豆菌は、枯草菌バチルスサチリス(Bacillus subtilis)の変種(B. subtilis var.natto、B. subtilis (natto))として、又は、枯草菌の近縁種バチルス・ナットウ(B. natto)として、分類されている細菌である。
納豆菌の最大の特徴は、煮大豆等に接種して発酵させた際に、粘質物糸引物質)や納豆らしい風味を生成し、納豆としての特徴をつくり出す特性を有する点である。また、栄養的には、ビオチン要求性を示す。
本発明に用いることができる納豆菌として、具体的には、一般的な市販菌である宮城野菌、高橋菌、成菌等を用いることができるが、特定の性質を有する突然変異株,遺伝子組み換え株などの各種菌株(例えば、低温感受性菌、アンモニア生成制菌など)を利用することもできる。後述する実施例で例示した21541株は、通常の温度感受性を有する菌株であり、出願人が自社開発した菌株である。

0017

納豆菌の接種に用いる際の納豆菌の状態としては、即座に増殖発酵可能な栄養増殖状態のものを用いることも可能であるが、胞子状態のものを用いることが通常であり好適である。胞子状態の納豆菌は、安定保存が可能で取扱いが容易だからである。また、胞子状態の納豆菌は、熱い煮豆等への接種の際にも死滅しないため、豆の雑菌汚染を防げる点で利点がある。また、胞子状態の納豆菌は、熱によるヒートショックにより、大豆への接種後速やかに発させることが可能となる。

0018

大豆等への納豆菌の植菌は、発酵を均一に行うため、大豆等と納豆菌が均一になるように添加(又は、接種,散布など)した後、混合等を行うことが望ましい。好ましくは、納豆菌液(納豆菌を液体に懸濁した状態)を調製し、液体状態にて添加して用いることが好適である。
ここで納豆菌液としては、(i) 市販の納豆菌胞子液の他、各種納豆菌の胞子形成培養液を用いることができる。また、(ii)グルタミン酸グルコース主原料とした合成培地,大豆煮汁,豆乳,酵母エキスなどを含む液体培地にて納豆菌を培養した培養液も用いることができる。また、(iii) 納豆菌の固体培養物、例えば大豆(大豆粉脱脂加工大豆も含む)に、納豆菌を植菌し培養したもの(納豆そのもの)から納豆菌を集菌し、溶液に懸濁して用いることができる。また、当該固形培養物の粉砕物等をそのまま溶液に懸濁して、用いることも可能である。

0019

植菌する納豆菌の数としては、常法に準じた菌濃度で特に限定はないが、蒸煮大豆1gあたり103個以上、好ましくは104個以上、さらに好ましくは105個以上となるように添加することが望ましい。植菌量の上限としては特に限定はないが、例えば108個以下、好ましくは107個以下を挙げることができる。

0020

上記納豆菌を植菌した大豆は、1〜数食分用の個容器充填した後、個容器内にて後述する発酵を行うことが好適である。また、伝統的な方法として、煮沸した藁に充填して行うことも可能である。
また、数リットル体積容の容器等にて発酵を行うことも可能であるが、表面積に対する体積の値が大きくなると、中央部の豆に温度変化伝わりにくくなることを考慮すると、大きめの容器を用いることは望ましくない。

0021

ここで個容器としては、豆の充填が可能なものであれば、どんな容器を用いることもできる。一般的には納豆で一般に用いられるようなPET、PE、PP、PSP等を用いた合成樹脂性の容器や、カップ状の紙製の容器を用いることができる。
また、容器の形状として、当該容器を用いて直接、喫食のための掻き混ぜ(攪拌)ができるような形状のものが好適である。
また、発酵後は、蓋やシーリングによる封を行うことができる態様のものが好適である。

0022

[発酵工程]
本発明の方法は、従来の納豆の製法よりも大幅に短い所定時間の発酵を行うことを要する方法である。当該条件にて発酵を行うことで、製造した納豆に甘く香ばしい豆の風味(以下、甘香風味という場合がある。)の原因成分の一つであるアセトインを所定量以上含有させることが可能となる。また、当該発酵条件は、煮豆が本来有する風味が十分に保持されている条件でもある。

0023

発酵開始
本発明では、納豆菌を植菌した豆の品温が37〜53℃の温度になった時に、発酵が開始されたとみなすことができる。例えば、蒸煮等によって、豆の品温が37〜53℃となっている場合、植菌時点において発酵が開始したと判断できる。
また、豆の品温が53℃より高い場合、発酵室等に入れて品温が53℃以下に達した時点を発酵開始と判断できる。同様に、豆の品温が37℃未満の場合、発酵室等に入れて品温が37℃に達した時点を発酵開始と判断できる。

0024

ここで、発酵を行うための部屋や装置としては、20〜53℃を含む温度の調節が可能な発酵室、恒温室恒温器インキュベーター等を挙げることができる。
例えば、(i)昇温及び冷却機能を有する発酵室等を用いて温度調節する手段を採用することができる。当該手段を採用した場合、温度条件を正確に調節することが可能となる。
(ii) また、最初に発酵温度帯に温度設定された恒温室等で発酵を行い、所定時間経過後に異なる温度帯に設定された恒温室等に豆を容器ごと移動することによって、豆の品温を調節することもできる。当該温度調節手段を採用した場合、容器の移動を自動化することにより、温度調節の無駄を省き、納豆の大量生産を効率良く行うことが可能となる。

0025

・発酵条件
本発明の発酵においては、発酵開始から所定時間の間、豆の品温を実質的に通常の発酵温度帯に維持することが必須となる。
ここで、通常の発酵温度帯とは品温が37〜53℃の温度帯を指す。特に好ましくは40〜52℃、さらに好ましくは44〜51℃の温度帯である。豆の品温が当該温度にあると、植菌した納豆菌は発酵作用全般的活発となる発酵特性を示す。一般的には、納豆らしい風味の付与、豆の食感の消失、納豆臭やアンモニア臭の付与、糸引きの付与、菌膜の形成などが促進される。

0026

本発明における発酵では、上記温度帯の範囲に含まれる温度のうちの一定温度に維持して、発酵を行うことが望ましい。但し、上記温度帯に含まれる温度であれば、途中で温度を上昇及び/又は低下させる条件で発酵を行うことは勿論可能である。
ここで、当該発酵において「実質的に温度帯に維持する」とは、完全に当該温度帯を外れないことを意味するものではなく、例えば、若干の温度範囲(例えば、2℃以内, 好ましくは1℃以内)で、若干の時間(例えば、10分以内, 好ましくは5分以内)であれば、当該温度帯を外れた品温となった場合も、当該発酵条件を満たすことを意味する。

0027

本発明の方法において、当該発酵温度帯を維持する所定時間(発酵時間)としては、5.5〜14.5時間を挙げることができる。発酵時間の下限としては、5.5時間以上、好ましくは6時間以上、さらに好ましくは7時間以上、さらに好ましくは8時間以上、さらに好ましくは9時間以上を挙げることができる。当該発酵においては、発酵時間が8〜12時間に近いほど納豆臭成分が少ない状態でアセトイン含量が高くなるため、甘香風味が強くなり好適である。発酵時間が所定より短い場合、発酵が十分に進まず、アセトインが十分に生成されない。そのため甘く香ばしい豆の風味が付与されず好ましくない。また、糸引き性の原因成分の生成も十分でなく、糸引き性も付与されないため好ましくない。

0028

発酵時間の上限としては、14.5時間以内、好ましくは14時間以内、さらに好ましくは13時間以内、さらに好ましくは12時間以内、さらに好ましくは11時間以内を挙げることができる。発酵時間が所定より長い場合、発酵が進み過ぎて煮豆が本来有する風味が消失してしまい好ましくない。また、発酵が進み過ぎると一度生成されたアセトインが減少する傾向になるため、一度付与された風味が失われてしまい好ましくない。

0029

これらを総合的に考慮すると、当該発酵温度帯を維持する所定時間(発酵時間)としては、5.5〜14.5時間、好ましくは6〜14時間、さらに好ましくは8〜14時間、さらに好ましくは8〜12時間、さらに好ましくは9〜11時間が望ましい。当該時間範囲は、納豆中のアセトイン含量が所定量以上になり、且つ、煮豆の本来の風味が十分に保持されている状態にある時間帯に相当する。

0030

[加熱処理]
本発明は、上記発酵が終了した後、下記の所定条件での加熱処理を行うことを要する方法である。当該条件にて加熱処理を行うことで、製造した納豆に甘く香ばしい豆の風味(以下、甘香風味という場合がある。)の原因成分の一つであるグアヤコールを所定量以上含有させることが可能となる。また、当該加熱処理条件は、アセトインが所定量未満に減少しない条件でもある。

0031

当該加熱処理の温度調整維手段としては、発酵工程で行った手段と同様の手段を採用することができる。即ち、(i) 室や装置の設定温度の変更、(ii)高温設定した室や装置への移動により、品温を上昇させる手段を採用することができる。また、室や装置としても、発酵工程で用いるものと同じものを用いることができる。

0032

当該加熱処理は、発酵終了後にそのまま加熱(昇温)して行うことが望ましい。また、発酵終了後、一度豆の品温を37℃未満に冷却し、その後に加熱処理を行う態様を採用することもできる。例えば、上記通常の発酵(37〜53℃での発酵)の後に、豆の品温を20℃以上37℃未満に維持して低温発酵を行い、その後に加熱処理を行ってもよい。

0033

本発明における加熱処理では、上記温度帯の範囲に含まれる温度のうちの一定温度に維持して、加熱処理を行うことが望ましい。また、上記温度帯に含まれる温度であれば、途中で温度を上昇及び/又は低下させる条件で加熱処理を行ってもよい。
ここで、当該加熱処理において「実質的に温度帯に維持する」とは、完全に当該温度帯を外れないことを意味するものではなく、例えば、若干の温度範囲(例えば、2℃以内, 好ましくは1℃以内)で、若干の時間(例えば、10分以内, 好ましくは5分以内)であれば、当該温度帯を外れた品温となった場合も、当該加熱処理条件を満たすことを意味する。

0034

本発明の加熱処理においては、所定時間の間、豆の品温を実質的に55〜70℃の温度帯に維持することが必須となる。なお、当該温度帯では、納豆菌の発酵が停止して発酵熱が発生しないため、室等の気相温度定常状態での品温がほぼ同じ温度になる。
加熱処理における品温の下限としては55℃以上、好ましくは56℃以上、より好ましくは57℃以上、さらに好ましくは58℃以上、特に好ましくは59℃以上を挙げることができる。当該加熱処理温度が55〜65℃(特に60℃程度)に近いほど、アセトイン含量が高い状態のままでグアヤコール含量を高くすることができるため好適である。
一方、加熱処理温度が所定より低い場合、反応が十分に進まず、グアヤコールが十分に生成されないため(増加しないため)、納豆に当該甘香風味を付与することができない。

0035

加熱処理における品温の上限としては、70℃以下、好ましくは69℃以下、より好ましくは68℃以内、さらに好ましくは67℃以下、特に好ましくは66℃以下、さらに特に好ましくは65℃以下、一層好ましくは64℃以下、より一層好ましくは63℃以下、さらに一層好ましくは62℃以下、さらに特に一層好ましくは61℃以下を挙げることができる。当該加熱処理温度が55〜65℃(特に60℃程度)に近いほど、アセトイン含量が高い状態のままでグアヤコール含量を高くすることができるため好適である。
加熱温度が高すぎると、グアヤコールが十分に生成されないため(増加しないため)、好ましくない。また、一度生成されたアセトインが減少する傾向になるため好ましくない。また、煮豆が本来有する風味が消失してしまい好ましくない。また、糸引き成分の分解が進み糸引き性も失われてしまう傾向にあり好ましくない。

0036

これらを総合的に考慮すると、当該加熱処理における品温維持温度帯としては、55〜70℃、好ましくは55〜65℃、より好ましくは58〜62℃、さらに好ましくは59〜61℃、最も好ましくは60℃程度であることが望ましい。当該温度範囲は、煮豆本来の風味を十分に保持しつつ、且つ、納豆中のグアヤコール含量が所定量以上になり、且つ、納豆中のアセトイン含量が所定量未満に減少しない条件に相当する。

0037

本発明の方法において、品温を当該温度帯に維持する所定時間(加熱処理時間)としては、達温から3.5時間以内の時間範囲を挙げることができる。加熱処理時間としては、当該温度帯に達温すればよいが、好ましくは10秒以上、より好ましくは30秒以上、さらに好ましくは1分以上、特に好ましくは2分以上、さらに特に好ましくは5分以上、一層好ましくは10分以上、より一層好ましくは20分以上、さらに一層好ましくは30分以上、特に一層好ましくは45分以上、最も好ましくは1時間以上を挙げることができる。当該加熱処理においては、品温が一瞬でも当該温度帯に達温するだけで、十分量のグアヤコールが生成され強い甘香風味が付与される。また、加熱処理の時間が1〜2時間に近いほどグアヤコール含量が高くなって甘香風味が強くなるため好適である。

0038

加熱処理時間の上限としては、3.5時間以内、好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2.5時間以内、さらに好ましくは2時間以内を挙げることができる。当該処理時間が短い場合、アセトイン含量の減少が抑制できる点で好適である。加熱処理の時間が1〜2時間に近いほど、生成されたグアヤコールやアセトイン含量の減少を抑えることができ、甘香風味が強く維持されるため好適である。
加熱処理時間が所定より長い場合、加熱処理による分解が進み過ぎてしまい、一度生成されたアセトイン及びグアヤコールが減少する傾向になるため好ましくない。また、煮豆が本来有する風味が消失してしまい好ましくない。また、糸引き成分の分解が進み糸引き性も失われてしまうため好ましくない。

0039

これらを総合的に考慮すると、当該加熱処理温度帯に維持する時間としては、3.5時間以内、好ましくは3時間以内、さらに好ましくは10秒〜3時間、さらに好ましくは30秒〜3時間、さらに好ましくは1分〜3時間、さらに好ましくは1分〜2時間、最も好ましくは1時間程度であることが望ましい。当該処理時間は、煮豆本来の風味を十分に保持しつつ、且つ、納豆中のグアヤコール含量が所定量以上になり、且つ、納豆中のアセトイン含量が所定量未満に減少しない条件に相当する。

0040

[熟成工程]
本発明における納豆の製造においては、上記加熱処理温度帯での維持が終了した納豆の品温が5℃未満になった時点で、製造が完了したとみなすことができる。
なお、製造した納豆の二次発酵を抑制するという点では、本発明の納豆の製造における好適な態様としては、上記発酵を経て製造した納豆の品温を3℃以上10℃未満、好ましくは3〜6℃の低温になるようにして熟成させることが望ましい。ここで、低温での熟成を行う場合における時間的制約はないが、例えば、6時間〜3日間、好ましくは8時間〜2日間程度の熟成を行うことが好適である。

0041

保管
なお、製造後の納豆を保管する際には、二次発酵による納豆の品質の劣化タンパク質等の分解を抑えるために、好ましくは3℃以上10℃未満、より好ましくは3〜6℃の品温になるように冷蔵状態にて保管することが好適である。

0042

[製造された納豆の性質]
上記工程を経て製造された納豆は、風味及び食感(特に風味)の観点から、従来の納豆とは全く異なる優れた嗜好性を有する納豆となる。具体的には、以下に示す性質を有する。

0043

(i) 甘く香ばしい豆の風味
本発明の納豆は、従来の納豆にない‘甘く香ばしい豆の風味’を有する納豆となる。当該風味は、従来の納豆には存在しない完全に新規の風味であり、極めて嗜好性の高い風味である。当該風味をもう少し具体的に表現すると、「枝豆様の香ばしい風味」と「煮豆本来の甘い風味」を合わせたような風味である。
当該甘香風味は、煮豆に由来する風味成分があった上で、(A)発酵により生成される‘アセトイン’と、(B)加熱処理により生成が促される‘グアヤコール’が所定量以上加わった場合において、初めて発揮される風味である。逆に、(A)又は(B)のいずれかが不足する場合は、当該甘香風味は奏されない。
また、当該甘香風味は、納豆臭原因成分が所定量以下である場合に特に発揮されやすい風味でもある。

0044

・アセトイン
ここで、製造した納豆が当該甘香風味を発揮するために必要なアセトイン含量としては、納豆100g(湿重量)あたり150mg以上、好ましくは160mg以上、より好ましくは170mg以上、さらに好ましくは180mg以上、特に好ましくは190mg以上、さらに特に好ましくは200mg以上、一層好ましくは210mg以上、より一層好ましくは220mg以上、さらに一層好ましくは230mg以上、さらに特に一層好ましくは240mg以上であることが望ましい。アセトインを多く含む納豆ほど、当該甘香風味が強く発揮する納豆となる。なお、アセトイン含量の上限としては、風味に不自然な違和感を与えない程度の量であれば良いが、例えば、1000mg以下、好ましくは800mg以下、より好ましくは600mg以下を挙げることができる。
一方、アセトイン含量が所定量より少ない場合、甘香風味が全く感じられなくなり好ましくない。

0045

・グアヤコール
グアヤコール含量としては、納豆(湿重量)中に1.5ppm以上、好ましくは1.6ppm以上、より好ましくは1.7ppm以上であることが望ましい。グアヤコール含量が所定量より少ない場合、甘香風味が全く感じられなくなり好ましくない。グアヤコール含量を多く含む納豆ほど、当該甘香風味を強く発揮する納豆となる。なお、グアヤコール含量の上限としては、風味に不自然な違和感を与えない程度の量であれば良いが、例えば、10ppm以下、好ましくは8ppm以下、より好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下を挙げることができる。
一方、グアヤコール含量が所定量より少ない場合、甘香風味が全く感じられなくなり好ましくない。

0046

・煮豆本来の風味
また、製造した納豆が当該甘香風味を発揮するためには、従来の納豆では発酵によって失われるはずの煮豆本来の風味が保持されていることが好適である。
煮豆本来の良い風味が保持される要因としては、蒸煮大豆や煮大豆に由来する1オクテン3オール, β-ダマセノン,マルトール, γ-ノナラクトンなどの成分が高い含有量で残存し、且つ、これらの成分が奏する風味を妨げる成分が低減された状態になっていることが必要である。

0047

(ii)納豆臭・アンモニア臭の低減
本発明の納豆は、従来の納豆では発酵によって付与される納豆臭が大幅に低減された納豆となる。これは、発酵を短時間で行うことにより、従来法では付与されるはずの納豆臭及びアンモニア臭の付与が抑制されるからである。
ここで納豆臭の原因成分としては、イソ吉草酸,イソ絡酸等の低級分岐脂肪酸類、;2,5ジメチルピラジン,トリメチルピラジン,テトラメチルピラジン等のピラジン類、;を挙げることできる。

0048

(iii)煮豆の食感の保持
本発明の納豆は、煮豆の食感を保持したものとなる。これは、発酵を大幅に短時間で行うことにより、通常発酵を行った場合では失われる煮豆の食感が保持されるからである。

0049

以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。

0050

[実施例1]『発酵時間が納豆に与える影響』
納豆の発酵において、発酵時間を変化させた場合に納豆の性質にどのような影響が現れるかを検討した。

0051

(1)「納豆の製造」
乾燥大豆を水に16時間浸漬し、水切りした後、1.65kg/cm2で30分間加圧蒸煮した。蒸煮した大豆1gあたり105個の納豆菌(納豆菌株:21541株)を含むように納豆菌液を添加し、軽く均一化した。
その後、50gずつをPSP製納豆容器に入れて蓋をし、気相温度49℃に設定したプログラムインキュベーター内で静置することで発酵を行った。各試料の発酵時間(品温37〜53℃にて静置した時間)を表1に示した。なお、定常状態に達した時の品温は、発酵熱により50〜52℃となっていた。
次に、インキュベーターの気相温度を60℃に設定して、試料の品温を60℃に上昇させることで加熱処理を行った。各試料の加熱処理時間(品温55℃以上で静置した時間)を表1に示した。なお、当該加熱処理において定常状態に達し品温は、納豆菌の発酵が停止しているため設定温度と同じ60℃であった。
加熱処理後、品温を20℃まで冷却した。最後に4℃の冷蔵室に移動して品温約5℃の状態にて8時間静置して熟成させた。

0052

(2)「各成分の含有量の測定」
得られた各納豆について、納豆(湿重量)あたりのアセトイン含量及びグアヤコール含量を以下のようにして測定した。

0053

・アセトイン含量の分析
乳鉢でよく摩砕した納豆を水で希釈しながらよく懸濁し、n-アミルアルコール内部標準液として加え、100倍量(w/v)にメスアップし、0.45μmのメンブレンフィルター濾過した溶液を検体とし、島津製作所製ガスクロマトクラフィーGC17A(検出器FID)にて分析した。ここで、カラムはGLサイエンス社製TC−WAX(30m×0.53mm)を使用した。測定条件カラム温度30℃, 5分、170℃まで6℃/分で昇温、その後240℃まで10℃/分で昇温、240℃で10分保持する条件で行った。インジェクション量1μLで行った。
測定したアセトイン含量の結果を、表1及び図1に示した。なお、表中の「n.d.」は、「未測定(no data)」を意味する。

0054

・グアヤコール含量の分析
乳鉢でよく摩砕した納豆5gを、20gの水に懸濁し、GERSTEL社製TWISTERポリジメチルシロキサンコーティングした攪拌子)を1本入れて、室温で60分間攪拌することで、納豆に含まれていたグアヤコールを吸着させた。吸着操作後、よく水洗いしたTWISTEERをAgilent Tecnology社製GC-MS(型式5973MSD)に導入し、MSの検出で分析した。グアヤコール濃度は、所定量(0〜5ppm)のグアヤコールを添加した検体を、同様の操作で分析して検量線を作成することにより求めた。カラムにはGLサイエンス社製TC-WAX(60m×0.25mm)を使用した。測定条件は、オーブン温度40℃から230℃への昇温を5℃/分で行う条件で行った。

0055

その結果、アセトイン含量については、発酵時間10時間までは発酵時間が長くなるにつれて増加する傾向が見られた(試料1-1〜1-4)。一方、発酵時間が10時間を超えた場合、発酵時間が長くなるにつれて逆に低くなる傾向が見られた(試料1-4〜1-6)。
グアヤコール含量については、全ての試料において2.5ppm付近の値であり発酵時間の増減による影響は見られなかった。

0056

(3)「官能評価
各納豆について、甘く香ばしい豆の風味、煮豆本来の風味、及び糸引きについて以下の項目の官能評価を行なった。
‘甘く香ばしい豆の風味(甘香風味)’の評価については、「+3」:強く感じられる、「+2」:普通に感じられる、「+1」:やや感じられる、「0」:感じられない、を基準に評価した。
‘煮豆本来の風味’の評価については、「A」:強く感じられる、「B」:普通に感じられる、「C」:感じられない、を基準に評価した。
納豆の糸引き性については、‘糸引き性’の評価が強い場合を「A」、やや強い場合を「B」、糸引きがない場合を「C」と評価した。これらの結果を表1に示した。なお、甘香風味については、図1にも結果を示した。

0057

その結果、煮豆本来の風味は、発酵時間が10時間以内の場合は強く呈されることが示された(試料1-1〜1-4)。一方、発酵を12〜14時間行った場合はやや弱くなることが示された(試料1-5, 1-6)。

0058

甘く香ばしい豆の風味については、発酵を6〜14時間行って製造した納豆では、当該風味を有することが示された(試料1-2〜1-6)。これらのうち、発酵時間を8〜12時間とした場合に当該甘香風味が強く感じられた(試料1-3〜1-5)。特には、発酵時間を10時間とした場合に、甘香風味が最も強く感じられた(試料1-4)。一方、発酵を5時間しか行わなかった場合には、甘香風味が感じられなかった(試料1-1)。また、発酵を15時間行った場合も甘香風味が感じられなかった(試料1-7)。

0059

糸引き性については、発酵を6時間以上行った場合、製造した納豆に十分に強い糸引き性が付与されることが示された(試料1-2〜1-7)。特に、発酵時間が8時間以上の場合の糸引き性が強かった(試料1-3〜1-7)。

0060

(4)「考察」
以上の結果から、一般的な発酵時間(約17時間)より大幅に短い6〜14時間(特には8〜12時間)で発酵を行い、その後に所定の加熱処理を行うことによって、通常の納豆にはない‘甘く香ばしい豆の風味’を有する納豆が製造できることが明らかになった。なお、当該納豆は、十分に強い‘糸引き性’を有する納豆であった。

0061

当該甘香風味の強度は、発酵時間の増加と共に強くなり約10時間の時に最大(ピーク)になることが示された(試料1-4)。ここで、アセトインは発酵によって生成される物質であり、その含有量は発酵10時間でピークに達し、その後発酵を継続すると徐々に分解される物質であった。
当該甘香風味強度のピークは、アセトイン含量のピーク(358mg/100g)と一致する結果であったことから、発酵によって生成されるアセトインは当該甘香風味の原因成分の一つであると推定された。

0062

ここで、アセトイン含量が104mg/100g(試料1-1)の場合では、甘香風味の評価は低かったが、一方で、アセトイン含量が168mg/100g(試料1-2)の場合では、甘香風味の評価は高かった。このことから、アセトイン含量が甘香風味を発揮する濃度は、120〜160mg以上であると推定された。

0063

また、試料1-6のアセトイン含量は、275mg/100gと比較的高い値を示していたが、甘香風味の強度はやや低い評価となっていた。ここで、試料1-6の煮豆本来の風味は、発酵の進行により減少した評価となっていた。
このことから、甘く香ばしい風味が呈されるためには、アセトインの増加に加えて、煮豆本来の風味を有する状態が好適であると推測された。

0064

0065

[実施例2]『加熱処理における処理温度の検討』
発酵後に行う加熱処理の温度条件が、納豆の性質にどのような影響を与えるかを検討した。

0066

(1)「納豆の製造」
以下に記載した条件を採用したことを除いては、実施例1に記載の方法と同様にして各納豆を製造した。
納豆菌液を添加した蒸煮大豆(1gあたり105個の21541株を添加したもの)について、発酵(品温37〜53℃での静置)を10時間行った後、表2に示す温度及び時間での加熱処理を行った。加熱処理後、品温を20℃まで冷却した。最後に4℃の冷蔵室に移動して品温約5℃の状態にて8時間静置して熟成させた。

0067

(2)「各成分の含有量の測定」
得られた各納豆について、納豆(湿重量)あたりのグアヤコール含量及びアセトイン含量を測定した。これらの含量の測定は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。結果を表2, 図2に結果を示した。

0068

その結果、グアヤコール含量については、加熱処理での定常品温が60℃までは温度が高くなるにつれて増加する傾向が見られた(試料2-1〜2-3)。一方、加熱処理の定常品温が60℃を超えた場合では、温度が高くなるにつれて低下する傾向が見られた(試料2-3〜2-6)。
アセトイン含量については、加熱処理によって増加する傾向は見られず逆に加熱処理により減少する傾向が見られた(試料2-1〜2-6)。但し、その減少度合いは定常品温50〜75℃での加熱処理を1時間程度行った程度ではほとんど減少しなかった。特に、定常品温55〜60℃での加熱処理を行った場合、減少率は小さかった(試料2-1〜2-3)。

0069

(3)「官能評価」
各納豆について、実施例1と同様にして、甘く香ばしい豆の風味、煮豆本来の風味、及び糸引きについて官能評価を行なった。結果を表2に示した。なお、甘香風味については、図2にも結果を示した。

0070

その結果、煮豆本来の風味は、定常品温50〜70℃での加熱処理を1時間行った程度では、減少しないことが示された。

0071

甘く香ばしい豆の風味については、定常品温55〜70℃での加熱処理を行って製造した納豆では、当該風味を有することが示された(試料2-2〜2-5)。これらのうち、定常品温60℃での加熱処理を行った場合に甘香風味が最も強く感じられた(試料2-3)。一方、定常品温50℃での加熱処理を行った場合では甘香風味が感じられなかった(試料2-1)。また、定常品温75℃での加熱処理を行った場合も甘香風味が感じられなかった(試料2-6)。

0072

また、糸引き性については、定常品温50〜70℃での加熱処理を1時間行った程度では、十分に強い糸引き性が保持されていた(試料2-1〜2-5)。但し、定常品温70℃での加熱処理の場合では、糸引き性がやや弱くなっていた(試料2-5)。一方、定常品温75℃での加熱処理の場合では、糸引き性がなくなっていた(試料2-6)。

0073

(4)「考察」
以上の結果から、適切な短時間発酵を行った後、定常品温55〜70℃での加熱処理を1時間行って製造した納豆では、通常の納豆にはない‘甘く香ばしい豆の風味’を有する納豆が製造できることが明らかになった。なお、当該納豆は、十分に強い‘糸引き性’を有する納豆であった。

0074

ここで、試料2-1〜2-6のアセトイン含量は、いずれも300mg/100g以上という高い値であり、煮豆本来の風味も「A」という評価であるにも関わらず、甘味風味の評価は低かった。ここで、グアヤコールは加熱処理によって生成が促される(増加する)物質であり、その含有量は定常品温60℃での加熱処理を行った場合にピークに達し(試料2-3)、定常品温60℃を超える加熱処理をすると生成量が少なくなることが示された。
甘香風味強度のピークは、グアヤコール含量のピーク(2.55ppm)と一致する結果であったことから判断すると、加熱処理によって増加するグアヤコールは、甘香風味の原因成分の一つであると推定された。

0075

グアヤコール含量が1.44ppm(試料2-1)の場合では、甘香風味の評価は低かったが、一方で、グアヤコール含量が1.64ppm(試料2-5)の場合では、甘香風味の評価は高かった。このことから、グアヤコール含量が甘香風味を発揮する濃度は、1.5〜1.6ppm以上であると推定された。

0076

0077

[実施例3]『加熱処理の処理時間の検討』
発酵後に行う加熱処理時間の長さが納豆の性質にどのような影響を与えるかを検討した。

0078

(1)「納豆の製造」
以下に記載した条件を採用したことを除いては、実施例1に記載の方法と同様にして各納豆を製造した。
納豆菌液を添加した蒸煮大豆(1gあたり105個の21541株を添加したもの)について、発酵(品温37〜53℃での静置)を10時間行った後、表3に示す温度及び時間での加熱処理を行った。加熱処理後、品温を20℃まで冷却した。最後に4℃の冷蔵室に移動して品温約5℃の状態にて8時間静置して熟成させた。

0079

(2)「各成分の含有量の測定」
得られた各納豆について、納豆(湿重量)あたりのグアヤコール含量及びアセトイン含量を測定した。これらの含量の測定は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。結果を表3, 図3に結果を示した。

0080

その結果、グアヤコール含量については、加熱処理時間が2時間までは処理時間が長くなるにつれて増加する傾向が見られた(試料3-1〜3-4)。一方、加熱処理時間が2時間を超えた場合では、処理時間が長くなるにつれて低下する傾向が見られた(試料3-5〜3-6)。
アセトイン含量については、加熱処理を一瞬だけ行った場合(品温55℃に達してすぐに冷却した場合)、若干増加することが観察されたが(試料3-1〜3-2)、一方、加熱処理時間が長くなるにつれて徐々に低下する傾向が見られた(試料3-3〜3-6)。

0081

(3)「官能評価」
各納豆について、実施例1と同様にして、甘く香ばしい豆の風味、煮豆本来の風味、及び糸引きについて官能評価を行なった。結果を表3に示した。なお、甘香風味については、図3にも結果を示した。

0082

その結果、煮豆本来の風味は、定常品温55〜60℃での加熱処理を4時間以内で行った程度では、減少しないことが示された。

0083

甘く香ばしい豆の風味については、定常品温55〜60℃での加熱処理を4時間以内で行って製造した納豆では、当該風味を有することが示された(試料3-2〜3-6)。特に加熱処理時間が1時間の場合に甘香風味が最も強く感じられた(試料3-3)。一方、加熱処理を行わなかった場合では、甘香風味が感じられなかった(試料3-1)。

0084

糸引き性については、55〜60℃での加熱処理を3時間以内にて行った場合では、十分に強い糸引き性が保持されていた(試料3-1〜3-5)。但し、処理時間が3時間の場合では、処理時間が2時間以内の場合と比べて糸引き性がやや弱くなっていた(試料3-5)。
一方、加熱処理を4時間行った場合では、糸引き性がなくなっていた(試料3-6)。

0085

(4)「考察」
以上の結果から、適切な短時間発酵を行った後、定常品温55〜60℃での加熱処理を4時間以内で行って製造した納豆では、通常の納豆にはない‘甘く香ばしい豆の風味’を有する納豆が製造できることが明らかになった。なお、当該納豆(特に加熱処理を2時間以内で行って製造した納豆)は、十分に強い‘糸引き性’を有する納豆であった。

0086

当該甘香風味の強度は、加熱処理時間の増加と共に強くなり約1時間の時に最大(ピーク)になることが示された(試料3-3)。一方、グアヤコールは加熱処理によって生成が促される物質であり、その含有量は加熱処理2時間後にピークに達し(試料3-4)、その後加熱処理を継続すると徐々に分解される物質であった。即ち、加熱処理の継続試験においては、甘香風味の強度がピークに達してから1時間経過後に、グアヤコール含量がピークに達していた。
ここで、アセトイン含量を見ると、甘香風味がピークに達している加熱処理1時間後の試料3-3では358mg/100gという高い値であり、一方、加熱処理2時間後の試料3-4では316mg/100gとやや低い値であった。また、煮豆本来の風味は、試料3-3, 3-4ともに「A」という高い評価であった。これらのことを鑑みると、甘香風味強度が高い評価になるためには、グアヤコールとアセトインの両方が所定量以上含まれることが必須条件であると認められた。

0087

0088

[比較例1]『通常発酵納豆に関する評価結果』
通常の製造方法発(17時間発酵,加熱処理なし)により製造した納豆について、官能評価と成分分析を行った。

0089

(1)「納豆の製造」
以下に記載した条件を採用したことを除いては、実施例1に記載の方法と同様にして各納豆を製造した。
納豆菌液を添加した蒸煮大豆(1gあたり105個の21541株を添加したもの)について、発酵(品温37〜53℃での静置)を17時間行った。その後、加熱処理をすることなく、品温を20℃まで冷却した。最後に4℃の冷蔵室に移動して品温約5℃の状態にて8時間静置して熟成させた。

0090

(2)「各成分の含有量の測定」
得られた各納豆について、納豆(湿重量)あたりのグアヤコール含量及びアセトイン含量を測定した。これらの含量の測定は、実施例1に記載の方法と同様にして行った。結果を表4に示した。
その結果、アセトイン含量は、227mg/100gとある程度の含有量が認められた。一方、グアヤコール含量は0.86ppmととても低い値であった。

0091

(3)「官能評価」
各納豆について、実施例1と同様にして、‘甘く香ばしい豆の風味(甘香風味)’及び‘糸引き性’について官能評価を行なった。結果を表4に示した。
その結果、上記従来法で製造した納豆では、甘香風味が全く感じられなかった。なお、糸引き性については、十分に強い糸引き性が付与されていた。

0092

(4)「考察」
以上の結果から、発酵を17時間行いその後に加熱処理しない製法(従来法)で製造した納豆では、甘香風味が全く付与されなかった。これは、発酵時間が長すぎたことにより煮豆本来の風味が失われてしまい、さらに加熱処理を行わないことによりグアヤコール含量の増加が起こらなかったためと推測された。

実施例

0093

0094

本発明により、従来の納豆とは全く異なる優れた嗜好性を有する納豆を製造することが可能となる。
また、本発明の納豆製造方法は、特定の納豆菌株,添加物,機器等の使用を必要とせずに、納豆の製造全般に実施に即座に適用することが可能な技術である。
これにより、本発明は、納豆自体が有する食品としての偏った嗜好性を改善し、納豆の魅力を向上させることに繋がる技術になることが期待される。

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