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技術 ホットスタンプ成形品の溶融金属脆化割れの発生を判定する方法及びホットスタンプ成形品

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 仙石晃大竹林浩史中田匡浩秋岡幸司高橋克
出願日 2013年4月5日 (6年11ヶ月経過) 出願番号 2013-079611
公開日 2014年10月27日 (5年5ヶ月経過) 公開番号 2014-201799
状態 特許登録済
技術分野 溶融金属による被覆 型打ち,へら絞り,深絞り
主要キーワード 回折強度ピーク 各加熱温度 主面近傍 合金化法 ガンマ相 Zn系金属間化合物 亜鉛めっき液 バックグランド強度
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (19)

課題

ホットスタンプ用の亜鉛系めっき鋼材における溶融金属脆化割れの発生の有無を容易に判定できる方法を提供する。

解決手段

本実施形態による方法は、亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形して製造されるホットスタンプ成形品における溶融金属脆化割れの発生を判定する。本方法は、ホットスタンプ成形品の加熱条件に基づいて、亜鉛系めっき鋼材を加熱する工程と、加熱後された亜鉛系めっき鋼材を焼入れする工程と、焼入れ後の亜鉛系めっき鋼材の表面に対してX線回析を実施する工程と、X線回折で測定された回折強度のうち、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備える。

概要

背景

亜鉛系めっき鋼材は、ホットスタンプ成形品素材として利用される。ホットスタンプ成形品を製造する場合、加熱された亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形する。ホットスタンプ成形時に、鋼材金型により冷却され、焼入れされる。つまり、ホットスタンプ成形では、プレス加工と同時に焼入れが実施される。これにより、高強度のホットスタンプ成形品が製造される。

亜鉛融点は419℃と低い。そのため、亜鉛系めっき鋼材を加熱すると、表面の亜鉛系めっき皮膜溶融する。亜鉛系めっき皮膜が溶融したままでホットスタンプ成形を実施すると、溶融金属脆化割れ(以下、LME割れという)が発生する。したがって、LME割れを抑制するためには、ホットスタンプ成形時に鋼材表面に液相が極力存在しない方が好ましい。

ホットスタンプ成形時の液相を減らす方法として、主として次の2つ方法がある。一つは、加熱工程における加熱時間を長くし、鋼材表面のFeと亜鉛との合金化反応を十分に進行させ、液相を減らす方法である(以下、合金化法という)。もう一つは、加熱工程で鋼材を高温加熱し、加熱終了後からホットスタンプ成形を開始するまでの間に鋼材の温度を低下して鋼材表面の液相を凝固させ、液相を減らす方法である(以下、液相凝固法という)。

液相凝固法では、加熱時間を短時間にすることができるものの、加熱後の鋼材を冷却して、鋼材温度下げる必要がある。液相中のFe濃度が15〜30質量%程度である場合、状態図の上では、鋼材温度が782℃よりも低くなれば、溶融したZn系めっき皮膜の液相は固相変態する。したがって、液相凝固法を採用した場合、ホットスタンプ成形直前での鋼材温度は、750〜700℃程度まで下げられなければならない。このような低めの温度で鋼材を焼入れするためには、合金元素を含有して鋼材の焼き入れ性を上げる必要がある。したがって、液相凝固法を採用する場合、鋼材は高合金にする必要があり、鋼材コストが高くなりやすい。

一方、合金化法の場合、ホットスタンプ成形直前の鋼材温度は特に限定されない。そのため、ホットスタンプ成形直前の鋼材温度を高く維持できる。したがって、合金元素の含有量が少ない低合金の鋼材であっても、ホットスタンプ成形時に焼入れすることができる。

しかしながら、合金化法においても加熱時間が過剰に長くなれば、生産性が低下する。したがって、LME割れの発生を抑制でき、かつ、生産性の低下も抑制できる適切な加熱条件を設定する必要がある。

従来、適切な加熱条件を設定するために、次の方法を行っている。ホットスタンプ成形品と同じ鋼種及び同じ加熱条件でサンプル鋼材をホットスタンプ成形してサンプル成形品を製造する。サンプル成形品の断面をミクロ組織観察し、LME割れの発生の有無を判定する。判定結果に基づいて、加熱条件を調整する。

しかしながら、上記の判定方法では、ミクロ組織観察試験片の作製が煩雑であり、作業負荷が大きい。

特許第5015356号(特許文献1)は、液相凝固法を採用した場合のホットスタンプ方法を開示する。特許文献1では、加熱後の亜鉛めっき鋼板を冷却するとき、亜鉛メッキ鋼板の表面の放射率を測定する。鋼板表面の亜鉛めっき液相が消滅するとき、つまり、合金化反応により固相が形成されたとき、又は、亜鉛めっき液相が凝固して金属間化合物が形成されたとき、放射率が変化する。放射率が変化したとき、亜鉛めっき液相が消滅したと判断し、プレス及び焼入れを開始する。この方法により、未合金の溶融亜鉛に起因した鋼の粒界脆化割れの発生を抑制できると特許文献1には記載されている。

概要

ホットスタンプ用の亜鉛系めっき鋼材における溶融金属脆化割れの発生の有無を容易に判定できる方法を提供する。本実施形態による方法は、亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形して製造されるホットスタンプ成形品における溶融金属脆化割れの発生を判定する。本方法は、ホットスタンプ成形品の加熱条件に基づいて、亜鉛系めっき鋼材を加熱する工程と、加熱後された亜鉛系めっき鋼材を焼入れする工程と、焼入れ後の亜鉛系めっき鋼材の表面に対してX線回析を実施する工程と、X線回折で測定された回折強度のうち、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備える。

目的

本発明の目的は、ホットスタンプ用の亜鉛系めっき鋼材におけるLME割れの発生の有無を容易に判定できる方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

亜鉛系めっき鋼材ホットスタンプ成形して製造されるホットスタンプ成形品における溶融金属脆化割れの発生を判定する方法であって、前記ホットスタンプ成形品の加熱条件に基づいて、前記亜鉛系めっき鋼材を加熱する工程と、加熱された前記亜鉛系めっき鋼材を焼入れする工程と、焼入れ後の前記亜鉛系めっき鋼材の表面に対してX線回析を実施する工程と、前記X線回折で測定された回折強度のうち、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備える、方法。

請求項2

請求項1に記載の方法であって、前記溶融金属脆化割れの発生を判定する工程では、測定された前記回折強度のうち、線源がCoKα線であるときの回折角が49.2〜50.0°の範囲内の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する、方法。

請求項3

請求項2に記載の方法であって、前記溶融金属脆化割れの発生を判定する工程ではさらに、式(1)で定義される割れ指標Irefを求める工程と、求めた前記割れ指標Irefに基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備える、方法。Iref=Ip/Ig(1)ここで、式(1)中のIpは、前記回折角が49.2〜50.0°の範囲内の回折強度の平均値であり、Igは、測定された前記回折強度のうちのバックグラウンド強度である。

請求項4

請求項3に記載の方法であって、前記バックグラウンド強度Igは、回折角が104.2〜105.0°の範囲内の回折強度の平均値、又は、回折角が90.5〜91.5°の範囲内の回折強度の平均値である、方法。

請求項5

請求項1に記載の方法であって、前記焼入れする工程では、前記ホットスタンプ成形品と同じホットスタンプ成形条件で、前記加熱された亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形する、方法。

請求項6

亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形して製造されるホットスタンプ成形品であって、前記ホットスタンプ成形品の表面に対してCoKα線を用いたX線回折を実施した場合、式(1)で定義される割れ指標Irefが3.0以下である、ホットスタンプ成形品。Iref=Ip/Ig(1)ここで、式(1)中のIpは、前記X線回析で得られた回折強度のうち、回折角が49.2〜50.0°の範囲内の回折強度の平均値であり、Igは、回折角が104.2〜105.0°の範囲内の回折強度の平均値である。

技術分野

0001

本発明は、溶融金属脆化(Liquid Metal Embrittlement:LME)割れの発生を判定する方法に関し、さらに詳しくは、ホットスタンプ成形品の溶融金属脆化割れの発生を判定する方法及びホットスタンプ成形品に関する。

背景技術

0002

亜鉛系めっき鋼材は、ホットスタンプ成形品の素材として利用される。ホットスタンプ成形品を製造する場合、加熱された亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形する。ホットスタンプ成形時に、鋼材金型により冷却され、焼入れされる。つまり、ホットスタンプ成形では、プレス加工と同時に焼入れが実施される。これにより、高強度のホットスタンプ成形品が製造される。

0003

亜鉛融点は419℃と低い。そのため、亜鉛系めっき鋼材を加熱すると、表面の亜鉛系めっき皮膜溶融する。亜鉛系めっき皮膜が溶融したままでホットスタンプ成形を実施すると、溶融金属脆化割れ(以下、LME割れという)が発生する。したがって、LME割れを抑制するためには、ホットスタンプ成形時に鋼材表面に液相が極力存在しない方が好ましい。

0004

ホットスタンプ成形時の液相を減らす方法として、主として次の2つ方法がある。一つは、加熱工程における加熱時間を長くし、鋼材表面のFeと亜鉛との合金化反応を十分に進行させ、液相を減らす方法である(以下、合金化法という)。もう一つは、加熱工程で鋼材を高温加熱し、加熱終了後からホットスタンプ成形を開始するまでの間に鋼材の温度を低下して鋼材表面の液相を凝固させ、液相を減らす方法である(以下、液相凝固法という)。

0005

液相凝固法では、加熱時間を短時間にすることができるものの、加熱後の鋼材を冷却して、鋼材温度下げる必要がある。液相中のFe濃度が15〜30質量%程度である場合、状態図の上では、鋼材温度が782℃よりも低くなれば、溶融したZn系めっき皮膜の液相は固相変態する。したがって、液相凝固法を採用した場合、ホットスタンプ成形直前での鋼材温度は、750〜700℃程度まで下げられなければならない。このような低めの温度で鋼材を焼入れするためには、合金元素を含有して鋼材の焼き入れ性を上げる必要がある。したがって、液相凝固法を採用する場合、鋼材は高合金にする必要があり、鋼材コストが高くなりやすい。

0006

一方、合金化法の場合、ホットスタンプ成形直前の鋼材温度は特に限定されない。そのため、ホットスタンプ成形直前の鋼材温度を高く維持できる。したがって、合金元素の含有量が少ない低合金の鋼材であっても、ホットスタンプ成形時に焼入れすることができる。

0007

しかしながら、合金化法においても加熱時間が過剰に長くなれば、生産性が低下する。したがって、LME割れの発生を抑制でき、かつ、生産性の低下も抑制できる適切な加熱条件を設定する必要がある。

0008

従来、適切な加熱条件を設定するために、次の方法を行っている。ホットスタンプ成形品と同じ鋼種及び同じ加熱条件でサンプル鋼材をホットスタンプ成形してサンプル成形品を製造する。サンプル成形品の断面をミクロ組織観察し、LME割れの発生の有無を判定する。判定結果に基づいて、加熱条件を調整する。

0009

しかしながら、上記の判定方法では、ミクロ組織観察試験片の作製が煩雑であり、作業負荷が大きい。

0010

特許第5015356号(特許文献1)は、液相凝固法を採用した場合のホットスタンプ方法を開示する。特許文献1では、加熱後の亜鉛めっき鋼板を冷却するとき、亜鉛メッキ鋼板の表面の放射率を測定する。鋼板表面の亜鉛めっき液相が消滅するとき、つまり、合金化反応により固相が形成されたとき、又は、亜鉛めっき液相が凝固して金属間化合物が形成されたとき、放射率が変化する。放射率が変化したとき、亜鉛めっき液相が消滅したと判断し、プレス及び焼入れを開始する。この方法により、未合金の溶融亜鉛に起因した鋼の粒界脆化割れの発生を抑制できると特許文献1には記載されている。

先行技術

0011

特許第5015356号
特許第4506128号

発明が解決しようとする課題

0012

しかしながら、特許文献1の方法では、加熱後の鋼材に液相が存在し、加熱後の鋼材が冷却されることにより液相が合金化又は凝固する過程が存在することが前提となる。つまり、特許文献1の方法は、液相凝固法が前提となる。したがって、合金化法を採用した場合、放射率の変化を検出するのは困難である。

0013

本発明の目的は、ホットスタンプ用の亜鉛系めっき鋼材におけるLME割れの発生の有無を容易に判定できる方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0014

本実施の形態による方法は、亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形して製造されるホットスタンプ成形品における溶融金属脆化割れの発生を判定する。上記方法は、ホットスタンプ成形品の加熱条件に基づいて、亜鉛系めっき鋼材を加熱する工程と、加熱後の亜鉛系めっき鋼材を焼入れする工程と、焼入れ後の亜鉛系めっき鋼材の表面に対してX線回析を実施する工程と、X線回折で測定された回折強度のうち、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備える。

発明の効果

0015

本実施の形態による方法では、ホットスタンプ用の亜鉛系めっき鋼材におけるLME割れの発生の有無を容易に予測及び判定できる。

図面の簡単な説明

0016

図1は、Fe、Fe−Zn系金属間化合物(Γ相、Γ1相、δ1相、ζ相)及びイータ層(η相、Zn)及びZnOのX線回折強度を示す図である。
図2は、実施例で使用した加熱炉ヒートパターンを示す図である。
図3は、実施例で使用したホットスタンプ成形装置の模式図である。
図4は、実施例で実施したX線回折により得られたXRDプロファイルの図である。
図5Aは、炉温が900℃で在炉時間が2分のときのホットスタンプ成形品の表面近傍の断面のSEM画像である。
図5Bは、炉温が900℃で在炉時間が2.5分のときのホットスタンプ成形品の表面近傍の断面のSEM画像である。
図5Cは、炉温が900℃で在炉時間が3分のときのホットスタンプ成形品の表面近傍の断面のSEM画像である。
図5Dは、炉温が900℃で在炉時間が3.25分のときのホットスタンプ成形品の表面近傍の断面のSEM画像である。
図5Eは、炉温が900℃で在炉時間が3.5分のときのホットスタンプ成形品の表面近傍の断面のSEM画像である。
図5Fは、炉温が900℃で在炉時間が3.75分のときのホットスタンプ成形品の表面近傍の断面のSEM画像である。
図6Aは、炉温が900℃のときの、割れ指標Iref1と、在炉時間との関係を示す図である。
図6Bは、炉温が900℃のときの、割れ指標Iref2と、在炉時間との関係を示す図である。
図6Cは、炉温が900℃のときの、割れ指標Iref3と、在炉時間との関係を示す図である。
図6Dは、炉温が900℃のときの、割れ指標Iref4と、在炉時間との関係を示す図である。
図7Aは、在炉時間が3分のときの、割れ指標Iref1と、加熱温度との関係を示す図である。
図7Bは、在炉時間が3分のときの、割れ指標Iref2と、加熱温度との関係を示す図である。
図7Cは、在炉時間が3分のときの、割れ指標Iref3と、加熱温度との関係を示す図である。
図7Dは、在炉時間が3分のときの、割れ指標Iref4と、加熱温度との関係を示す図である。

0017

以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。

0018

本発明者らは、LME割れの判定方法について検討した結果、以下の知見を得た。

0019

ホットスタンプ成形時に亜鉛系めっき鋼材の表面に亜鉛めっきの液相が存在すれば、LME割れが発生する。

0020

亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形すると、鋼材が金型により急冷される。ホットスタンプ成形時に鋼材表面に上記液相が存在すれば、急冷により、液相からFe−Zn系金属間化合物が生成される。Fe−Zn系金属間化合物はFeとZnとからなる金属間化合物であり、たとえば、キャピタルガンマ相(Fe3Zn10、Γ相)、キャピタルガンマ1相(Fe5Zn21、Γ1相)、デルタ1相(FeZn7、δ1相)、ツェータ相(FeZn13、ζ相)等である。

0021

つまり、ホットスタンプ成形時に液相が存在すれば、製造後のホットスタンプ成形品の表面近傍にはFe−Zn系金属間化合物が含まれる。したがって、ホットスタンプ成形品の表面近傍において、Fe−Zn系金属間化合物の有無を確認すれば、ホットスタンプ時に液相が存在したか否かを判定できる。ホットスタンプ成形品の表面近傍にFe−Zn系金属間化合物が存在すれば、ホットスタンプ時に鋼材表面に液相が存在したと判定でき、LME割れが発生すると判定(予測)できる。

0022

したがって、ホットスタンプ成形品と同じ加熱条件で加熱した亜鉛系めっき鋼材を急冷して焼入れた後、鋼材の表面近傍において、Fe−Zn系金属間化合物の有無を確認すれば、ホットスタンプ成形品にLME割れが発生するか否かを判定できる。

0023

Fe−Zn系金属間化合物の有無の判定には、X線回折を用いることができる。具体的には、焼入れ後の亜鉛系めっき鋼材の表面に対してX線回析を実施する。X線回折により測定された回折強度のうち、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、ホットスタンプ成形品にLME割れが発生するか否かを判定(予測)できる。

0024

焼入れ後の亜鉛系めっき鋼材の表面近傍は、Fe(後述する「固溶体」を含む)、Fe−Zn系金属間化合物(Γ相、Γ1相、δ1相、ζ相)、イータ層(η相、Zn)及びZnOが含まれ得る。図1は、各組成物のX線回折強度を示す図である。図1横軸回折角2θを示し、縦軸は回折強度(100分率強度)を示す。また図1は、線源としてCoKα線波長は1.7889Å)を用いたものである。

0025

図1は、各組成物のICDカード(旧ASTMカード)を重ね合わせたものである。図1を参照して、回折角2θが49.2〜50.0°の範囲(以下、回折角範囲D1という)では、複数のFe−Zn系金属間化合物のうちの3相(Γ相、Γ1相及びδ1相)の強い回折ピークが重なる。したがって、好ましくは、回折角範囲D1の回折強度に基づいて、LME割れの発生を判定する。この場合、Fe−Zn系金属間化合物の発生の有無を、より容易に、精度よく判定できる。

0026

さらに、X線回折で得られた回折強度をバックグラウンド強度Ig補正してもよい。
バックグラウンド強度Igを用いて回折強度を補正する場合、好ましくは、次の式(1)で定義された割れ指標Irefに基づいて、LME割れの有無を予測(判定)する。
Iref=Ip/Ig (1)
ここで、Ipは、回折角範囲D1における回折強度(cps)の平均値である。この場合、X線回折装置の装置機差や測定条件等に依存することなく、Iref値が基準値を超えるか否かでLME割れの発生予測が可能となる。

0027

以上の知見に基づいて完成した本実施形態の方法及びホットスタンプ成形品は、次のとおりである。

0028

本実施形態による方法は、亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形して製造されるホットスタンプ成形品における溶融金属脆化割れの発生を判定する。上記方法は、ホットスタンプ成形品の加熱条件に基づいて、亜鉛系めっき鋼材を加熱する工程と、加熱後の亜鉛系めっき鋼材を焼入れする工程と、焼入れ後の亜鉛系めっき鋼材の表面に対してX線回析を実施する工程と、X線回折により測定された回折強度のうち、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備える。

0029

溶融金属脆化割れの発生を判定する工程では、測定された回折強度のうち、線源がCoKαであるときの回折角が49.2〜50.0°の範囲内の回折強度に基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定してもよい。

0030

溶融金属脆化割れの発生を判定する工程ではさらに、式(1)で定義される割れ指標Irefを求める工程と、求めた割れ指標Irefに基づいて、溶融金属脆化割れの発生を判定する工程とを備えてもよい。
Iref=Ip/Ig(1)
ここで、式(1)中のIpは、回折角が49.2〜50.0°の範囲内の回折強度の平均値であり、Igは、回折強度のうちのバックグラウンド強度である。

0031

バックグラウンド強度Igは、たとえば、回折角が104.2〜105.0°の範囲内の回折強度の平均値、又は、回折角が90.5〜91.5°の範囲内の回折強度の平均値である。

0032

焼入れする工程では、ホットスタンプ成形品と同じホットスタンプ成形条件で、加熱された亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形してもよい。

0033

本実施形態によるホットスタンプ成形品は、亜鉛系めっき鋼材をホットスタンプ成形して製造される。ホットスタンプの成形品の表面に対してCoKα線を用いたX線回折を実施した場合、式(1)で定義される指数I1が3.0以下である。
Iref=Ip/Ig(1)
ここで、式(1)中のIpは、前記X線回析で得られた回折強度のうち、回折角が49.2〜50.0°の範囲内の回折強度の平均値であり、Igは、回折角が104.2〜105.0°の範囲内の回折強度の平均値である。

0034

以下、本実施形態によるLME割れの発生の予測方法について詳述する。

0035

本実施の形態による判定方法は、熱処理(加熱及び急冷)工程と、X線回折工程と、判定工程とを含む。以下、各工程について説明する。

0036

[熱処理工程]
熱処理工程では、ホットスタンプ成形品の製造時の加熱条件に基づいて、ホットスタンプ成形品の素材と同じ亜鉛系めっき鋼材を加熱する。そして、加熱後の亜鉛系めっき鋼材を急冷し焼入れする。詳細は次のとおりである。

0037

初めに、亜鉛系めっき鋼材を準備する。亜鉛系めっき鋼材は、母材と、母材表面に形成される亜鉛系めっき皮膜とを備える。母材の化学組成は特に限定されない。ホットスタンプ成形品の用途、及び、ホットスタンプ成形品の製造方法を考慮して、母材の化学組成が決定される。

0038

亜鉛系めっき皮膜の種類は特に限定されない。亜鉛系めっき皮膜はたとえば、純亜鉛めっき皮膜であってもよいし、亜鉛−鉄系合金めっき皮膜であってもよい。さらに、亜鉛系合金めっき皮膜は、Mn、Ni、Cr、Co、Mg、Sn、Pb等の1種又は2種以上を含有してもよい。亜鉛系めっき皮膜の製造方法は、溶融めっき法でもよいし、電気めっき法でもよい。

0039

準備する亜鉛系めっき鋼材(以下、サンプル鋼材という)は、実際にホットスタンプ成形品の素材となる亜鉛系めっき鋼材と同じものが好ましい。具体的には、サンプル鋼材は好ましくは、ホットスタンプ成形品の素材となる亜鉛系めっき鋼材と同じ組成の母材を有し、同じ組成及び同じめっき付着量の亜鉛系めっき皮膜を有する。

0040

サンプル鋼材に対して熱処理を実施する。ここでいう熱処理とは、サンプル鋼材を加熱し(加熱工程)、加熱後のサンプル鋼材を冷却する(冷却工程)ことを意味する。

0041

熱処理は、ホットスタンプ成形品の熱処理方法に基づく。具体的には、ホットスタンプ成形品を製造するときと同じ加熱条件でサンプル鋼材を加熱する。ここでいう加熱条件は、少なくとも、加熱温度と、その加熱温度で保持する時間(以下、保持時間という)とを含む。

0042

加熱方法は特に限定されない。たとえば、ガス炉又は電気炉で、サンプル鋼材を加熱する。加熱温度が上昇するに従って、亜鉛系めっき皮膜の一部が液相になる。加熱温度が目標温度(たとえば、850〜1000℃等)となったとき、この加熱温度で一定時間保持する。加熱時間が経過するに従って、液相の亜鉛が母材中に拡散され、母材のFeとの合金化が促進される。その結果、鉄亜鉛固溶体(以下、単に固溶体という)が形成される。固溶体の結晶構造はα−Feと同じである。しかしながら、固溶体の結晶構造の格子定数はα−Feよりも大きい。固溶体は、鉄に亜鉛が固溶した相である。

0043

加熱時間を長くして固溶体を形成し、亜鉛の液相を消滅させれば、ホットスタンプ成形時において、溶融金属脆化(LME)割れの発生は抑制される。

0044

好ましくは、加熱温度及び保持時間以外の他の加熱条件も、実際のホットスタンプ成形品を製造するときの条件に合わせる。他の加熱条件とはたとえば、使用する加熱炉の種類、炉内雰囲気昇温速度等である。

0045

上記条件によりサンプル鋼材を加熱した後、サンプル鋼材を急冷する(冷却工程)。たとえば、実際のホットスタンプ成形時に鋼材が金型により急冷される場合の冷却速度以上の冷却速度で、サンプル鋼材を急冷する。たとえば、加熱後のサンプル鋼材を水冷すれば、実際の製造時の冷却速度以上でサンプル鋼材を冷却できる。

0046

本実施形態の判定方法では、加熱後のサンプル鋼材に液相が存在したか否かを判定できればよい。加熱後に液相が存在すれば、サンプル鋼材を急冷したとき、換言すれば、サンプル鋼材を焼入れしたとき、Fe−Zn系金属間化合物が形成される。したがって、液相からFe−Zn系金属間化合物が析出する程度の冷却速度でサンプル鋼材を冷却すれば足りる。200℃までの好ましい平均冷却速度は50℃/sec以上である。

0047

実際のホットスタンプ成形品のホットスタンプ成形条件と同じ条件で、加熱後のサンプル鋼材に対してホットスタンプ成形を実施してもよい。この場合、焼入れ条件(冷却速度)は、実際のホットスタンプ成形品を製造する時と同じになる。

0048

[X線回折工程及び判定工程]
続いて、焼入れ後のサンプル鋼材の表面に対してX線回折を実施する。X線回折方法は次のとおりである。

0049

サンプル鋼材うち、亜鉛系めっき皮膜が形成されていた表面(以下、主面という)を含む試験片を採取する。X線回折では、管球はたとえば、前述のCoKα線を用いる。しかしながら、管球及びX線回折装置の種類は特に限定されない。使用する管球の種類に応じて判断に適した角度範囲を適宜設定すればよく、その際CoKα線を用いた場合に設定された角度範囲から換算した角度範囲を設定してもよい。

0050

X線回析を実施し、サンプル鋼材の主面における回折角2θと回折強度との関係を示す測定結果(以下、XRDプロファイルという)を得る。XRDプロファイルの回折強度は、上述のとおり、サンプル鋼材の主面近傍に存在する組成物の回折強度であり、具体的には、Fe、固溶体、Fe−Zn系金属間化合物(Γ相、Γ1相、δ1相、ζ相)、η相(Zn)及びZnOの回折強度が含まれ得る。

0051

図1に示すとおり、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度のピークは、所定の回折角範囲内で発生する。したがって、得られたXRDプロファイルに基づいて、Fe−Zn系金属間化合物の回折強度のピークが現れているか否かを確認することにより、LME割れの発生を判定(予測)できる。具体的には、XRDプロファイルにFe−Zn系金属間化合物の回折強度ピークが現れている場合、加熱後のサンプル鋼材表面に液相が存在したことになる。したがって、ホットスタンプ成形時にLME割れが発生すると判定(予測)できる。一方、XRDプロファイルにFe−Zn系金属間化合物の回折強度が現れなかった場合、加熱後のサンプル鋼材表面に液相が存在しなかったことになる。したがって、ホットスタンプ成形時にLME割れが発生しないと判定(予測)できる。

0052

以上の方法によれば、従来のミクロ組織観察のように、煩雑な作業をすることなく、X線回折を実施すればLME割れの発生の有無を容易に予測、判定できる。

0053

XRDプロファイルに基づいた判定方法としては、種々の方法がある。図1に示すとおり、線源としてCoKα線を使用した場合、回折角2θが49.2〜50.0°の範囲(回折角範囲D1)では、Γ相と、Γ1相と、δ1相と3相の回折強度ピークが現れ、かつ、Fe、ZnO及びη相の強度ピークは現れない。また、回折角2θが93.7〜94.7°の範囲(以下、回折角範囲D2という)では、Γ相の回折強度ピークが現れ、Fe、ZnO及びη相の強度ピークは現れない。

0054

したがって、これらの回折角範囲D1又はD2に回折強度のピークが現れているか否かに基づいて、溶融金属割れの発生を容易に判定することができる。

0055

たとえば、回折角範囲D1又はD2の回折強度ピークが、予め定められた基準値を超えているか否かを判定してもよい。この場合、回折強度ピークが基準値を超える場合、Fe−Zn系金属間化合物が生成したと判断し、実際のホットスタンプ成形品においてLME割れが発生し得ると判定できる。

0056

他の判定方法を採用してもよい。たとえば、回折角範囲D1の回折強度のみに注目して判定してもよいし、回折角範囲D2の回折強度のみに注目して判定してもよい。さらに、他の回折角範囲に注目して判定してもよい。いずれの判定方法であっても、XRDプロファイルのFe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、LME割れの発生の有無を容易に予測できる。

0057

好ましくは、回折角範囲D1の回折強度に基づいて、LME割れの発生の有無を判定する。上述のとおり、回折角範囲D1には、3相(Γ相、Γ1相、δ1相)の強い回折ピークが重複することも関連し、回折角範囲D2と比較して、回折角範囲D1では少量のFe−Zn系金属間化合物でも検知しやすい。

0058

さらに、LME割れの判定において、式(1)で定義される割れ指標Irefを求め、割れ指標Irefに基づいて、LME割れの発生の有無を判定してもよい。

0059

Iref=Ip/Ig(1)
式(1)中のIpは、回折角2θが49.2〜50.0°の範囲(つまり、回折角範囲D1)内の回折強度の平均値である。

0060

式(1)中のIgは、バックグラウンド強度である。X線回折では使用するX線回折装置に応じた装置機差が生じ得る。装置機差は、バックグラウンド強度としてXRDプロファイルに現れる。

0061

上記式(1)で定義されるIref値に基づいてLME割れを判定する場合、X線回析装置や測定条件に依存せず、Iref値が所定の基準値を超えるか否かでLME割れの有無を判定できる。

0062

バックグラウンド強度は種々の方法で決めることができる。たとえば、図1において、回折角2θが104.2〜105.0°の範囲(以下、回折角範囲Dg1という)では、Fe、ZnO、Fe−Zn系金属間化合物及びη相の強度ピークは現れない。したがって、この範囲の回折強度の平均値は、X線回折装置固有バックグランド強度Igと定義することができる。同様に、回折角2θが90.5〜91.5°の範囲(以下、回折角範囲Dg2という)でも、Fe、ZnO、Fe−Zn系金属間化合物及びη相の強度ピークは現れない。したがって、回折角範囲Dg2の回折強度の平均値も、バックグラウンド強度Igと定義することができる。

0063

したがって、上記式(1)のバックグラウンド強度Igはたとえば、回折角範囲Dg1又はDg2の回折強度の平均値と定義することができる。他の方法により、バックグラウンド強度Igを規定してもよい。

0064

式(1)で定義された割れ指標Irefを用いれば、X線回折装置に依存せずに、LME割れが発生したと判断する基準値(しきい値)を設定しやすくなる。

0065

式(1)のバックグラウンド強度Igが回折角範囲Dg1の回折強度の平均値である場合、好ましい割れ指標Irefは3.0以下である。割れ指標Irefが3.0以下の場合、ホットスタンプ成形品にLME割れは発生しない。さらに好ましくは、割れ指標Irefが2.7以下である。

0066

一方、式(1)のバックグラウンド強度Igが回折角範囲Dg2の回折強度の平均値である場合、好ましい割れ指標Irefは2.7以下である。

0067

以上のとおり、本実施形態の予測方法では、実際のホットスタンプ成形品の加熱条件に合わせてサンプル鋼材を加熱し、その後急冷する。そして、急冷されたサンプル鋼材の表面のXRDプロファイルを取得すれば、LME割れの発生を容易に予測できる。

0068

本実施形態の判定方法は、サンプル鋼材を用いて、実際のホットスタンプ成形品にLME割れが発生するか否かを予測するために利用することができる。さらに、実際のホットスタンプ成形品に対して実施することで、LME割れが発生したか否かを判定するために利用してもよい。

0069

種々の熱処理条件で亜鉛系めっき鋼材を加熱し、ホットスタンプ成形した。ホットスタンプ成形された鋼材に対してX線回折を実施し、XRDプロファイルに基づいてLME割れの発生を予測した。さらに、ホットスタンプ成形された鋼材の表面を観察し、LME割れの有無を確認した。以下、実施例の詳細を説明する。

0070

試験方法
亜鉛系めっき鋼材として、表1に示す化学組成(各元素の単位は質量%)を有する母材と、表1に示すFe含有量(質量%)及びめっき付着量(g/mm2)のめっき皮膜とを有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(厚さ2.6mm)を複数準備した。

0071

0072

めっき皮膜中のFe以外の化学組成は、Zn、約0.2〜0.3mass%のAl及び不純物であった。このような合金化溶融亜鉛めっき鋼板を60mm×40mmに切りだした。

0073

上記鋼材をガス炉に装入した。ガス炉の空燃比は1.1であった。加熱温度を900℃で一定として、保持時間を2〜20分の間で変化させた。加熱炉では、図2に示すヒートパターンで昇温した。

0074

加熱後の鋼材をガス炉から取り出し、速やかにホットスタンプ成形を実施した。図3にホットスタンプ成形装置の模式図を示す。図3に示すとおり、ホットスタンプ成形装置は、ポンチ10と、ダイス30と、鋼材20を支持するためのピン40とを備えた。ポンチ10はダイス30の上方に配置され、横断面が下に凸の三角形状を有した。ポンチ10の頂上の曲率半径Rpは0.5mmであった。

0075

ダイス30は、ポンチ10の形状に対応した三角形状の溝を有した。したがって、本実施例では、ホットスタンプ成形により、鋼材20はV曲げ加工を施された。なお、図中の長さLは60mmであった。ホットスタンプ成形時の成形速度は300mm/secであり、成形荷重は40kNであった。保持時間は30秒であった。

0076

ダイス30内には冷媒である水が循環する経路50が設けられた。ホットスタンプ時において、経路50を流れる冷媒により、ホットスタンプ成形と同時に鋼材を急冷(金型による急冷)して焼入れした。200℃までの平均冷却速度は、90〜120℃/secであった。

0077

[X線回折]
ホットスタンプ成形後の鋼材の主面(図3における下側の面)に対して、上述の方法に基づいてX線回折を実施してXRDプロファイルを得た。X線回析装置は、株式会社リガク製の商品RINT2500を使用した。管球はCoKα線を使用した。電圧は30kV、電流は100mAとした。発散スリット及び受光スリットはそれぞれ1.0°とした。回折角2θの走査範囲は30°〜110°とした。ステップ測定間隔は0.02°とし、スキャン速度は2.0°/minとした。

0078

得られたXRDプロファイルを用いて、各加熱時間のXRDプロファイルごとに、回折角範囲D1、回折角範囲D2、回折角範囲Dg1、回折角範囲Dg2の回折強度の平均値を求めた。以下、回折角範囲D1の回折強度の平均値を強度ID1といい、回折角範囲D2の回折強度の平均値を強度ID2といい、回折角範囲Dg1の回折強度の平均値を強度Ig1といい、回折角範囲Dg2の回折強度の平均値を強度Ig2という。

0079

得られた強度Ip、ID2、Ig1及びIg2を用いて、式(2)〜式(5)により、割れ指標Iref1〜Iref4を求めた。
Iref1=ID2/Ig2 (2)
Iref2=ID2/Ig1 (3)
Iref3=ID1/Ig1 (4)
Iref4=ID1/Ig2 (5)

0080

[ミクロ組織観察試験
さらにホットスタンプ成形後の鋼材の主面近傍部分の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、LME割れの有無について調査した。断面のSEM写真画像において、LME割れが、鋼材表面の固溶体だけでなく、母材にまで伝播している場合、LME割れが発生したと判断した。割れが、固溶体のみにとどまり、母材にまで伝播してない場合、LME割れが発生していないと判断した。

0081

SEM画像に基づくLME割れの有無の判定結果と、XRDプロファイルにおけるFe−Zn系金属間化合物の回折強度ピークとの比較を行った。さらに、SEM画像に基づくLME割れの有無の判定結果と、割れ指標Iref1〜Iref4とを比較した。

0082

[調査結果]
[XRDプロファイルとLME割れの有無について]
図4は、各在炉時間ごとのXRDプロファイルを示す図である。図5A図5Fは、SEM観察により得られた、各在炉時間ごとの鋼材主面近傍の断面SEM画像である。

0083

図4中の在炉時間2minの欄には、在炉時間が2分のときのXRDプロファイルが記載されている。同様に、各在炉時間の欄には、対応するXRDプロファイルが記載されている。XRDプロファイルの横軸は回折角2θであり、縦軸は回折強度である。図中の「D1」、「D2」は、回折角範囲D1、回折角範囲D2をそれぞれ意味する。

0084

また、図5Aは、在炉時間tが2.0分のときの鋼材主面及びその近傍の断面SEM画像である。同様に、図5B図5Fはそれぞれ、在炉時間tが2.5分、3.0分、3.25分、3.5分、3.75分のときのSEM画像である。

0085

図5A図5Fにおいて、主面(表面)の白色の領域は、固溶体であり、白色の領域よりも下の部分は母材である。図5A図5Fを参照して、在炉時間が2.0分の場合(図8A)、LME割れが、固溶体から母材まで伝播していた。そして、在炉時間が長くなるにしたがって、LME割れの深さは徐々に短くなり、在炉時間が3.5分以上になると、LME割れは非常に軽微もしくは消滅した。より具体的には、加熱時間が3.5分の場合、LME割れの発生量は少なかったものの、非常に軽微な(浅い)LME割れの存在が確認された。一方、加熱時間が3.5分よりも長くなると、LME割れは確認できなかった。

0086

以上のSEM画像による溶融金属割れの結果と、図4のXRDプロファイルとの相関を調査した。

0087

図4中の回折角範囲D1及びD2に注目して、SEM画像において大きな溶融金属割れが確認された在炉時間2分、2.5分及び3分のXRDプロファイルでは、回折角範囲D1及びD2に顕著な回折強度ピークが確認された。さらに、SEM画像において溶融金属割れが全く確認できなかった在炉時間4分のXRDプロファイルでは、回折角範囲D1及びD2に回折強度ピークが現れなかった。

0088

以上の結果から、XRDプロファイルにおけるFe−Zn系金属間化合物の回折強度に基づいて、LME割れの発生を予測できることが確認できた。

0089

さらに、在炉時間3.5分において、回折角範囲D2では回折強度ピークが確認できなかったが、回折角範囲D1では回折強度ピークが確認された(図中の符号100内)。したがって、回折角範囲D1における回折強度に基づいて、LME割れの発生有無を予測すれば、予測精度が高まることが確認できた。

0090

[割れ指標Iref1〜Iref4について]
割れ指標Iref1〜Iref4とSEM画像によるLME割れの有無の判定結果を表2に示す。

0091

0092

表2中の「LME割れ」欄には、LME割れの有無と、LME割れが発生している場合は、その程度が記載されている。「L」は、LME割れが発生し、かつ、母材表面からのLME割れ深さが20μmを超えたことを意味する。「S」は、LEM割れが軽微であり、母材表面からのLME割れ深さが10μm未満であったことを意味する。「NF」は、LEM割れが観察できなかったことを意味する。各割れ指標Iref1〜Iref4の欄には、各在炉時間の割れ指標値が記載されている。

0093

図6A図6Dは、表2をグラフ化したものであり、在炉時間に対する割れ指標Iref1〜Iref4を示す図である。図中の「×」印は、SEM画像においてLME割れが表2中の「L」に相当したことを示す。「□」印は、LME割れが「Ss」に相当したことを示す。「○」印は、LME割れが「NF」に相当したことを示す。図6A図6Dは、いずれも同じスケールで図示されたものである。

0094

図6A図6Dを参照して、いずれの図においても、割れ指標Iref1〜Iref4は、在炉時間の増加とともに急速に低下し、在炉時間が3.5分以降は、在炉時間が増加してもそれほど低下しなかった。つまり、いずれの図においても、在炉時間が3.5分近傍に変曲点を有した。

0095

さらに、図6A及び図6Bでは、「□」印と「○」印との境界、つまり、在炉時間が3.5分での割れ指標と、在炉時間が3.75分での割れ指標との差分D0が0.05以下と小さかったのに対して、図6C及び図6Dでは、差分D0が0.5以上と大きかった。したがって、回折角範囲D2を利用した割れ指標Iref1及びIref2よりも、回折角範囲D1を利用した割れ指標Iref3及びIref4の方が、LME割れの発生を予想するための指標として優れていた。具体的には、割れ指標Iref3を利用した場合、3.0以下であればLME割れが発生せず、割れ指標Iref4を利用した場合、2.7以下であればLME割れが発生しないことが分かった。したがって、割れ指標Iref3及びIref4を用いた場合、これらの基準値(Iref3の場合は3.0、Iref4の場合は2.7)に基づいてLME割れの発生予測を精度よく容易に行うことができることが判明した。

0096

調査方法
実施例1と同じ化学組成及びサイズの合金化溶融亜鉛めっき鋼板を加熱して、ホットスタンプ成形を行った。実施例2では、在炉時間を3分として、加熱温度を変化させた。その他の加熱条件、及び、ホットスタンプ条件は、実施例1と同じとした。

0097

ホットスタンプ成形された鋼材を用いて、実施例1と同様に、X線回折を実施して、XRDプロファイルを得た。また、実施例1と同様にミクロ組織観察試験を実施し、各加熱温度ごとにLME割れの有無を調査した。さらに、式(2)〜式(5)に基づいて、割れ指標Iref1〜Iref4を求めた。

0098

[調査結果]
表3に調査結果を示す。さらに、図7A図7Dに、表3をグラフ化したものを示す。

0099

0100

図7A図7D中の「×」印は、LME割れが表3中の「L」に相当したことを示し、「○」印は、LME割れが「NF」に相当したことを示す。

実施例

0101

図7A図7Dを参照して、いずれの図においても、加熱温度が950℃近傍において、変曲点が存在した。図7A及び図7Bでは、「×」印と「○」印との境界、つまり、加熱温度が950℃及び975℃での割れ指標の差分D0が0.3未満と小さかったのに対して、図7C及び図7Dでは、差分D0が0.95以上と大きかった。したがって、実施例1と同様に、回折角範囲D2を用いた割れ指標Iref1及びIref2よりも、回折角範囲D1を用いた割れ指標Iref3及びIref4の方が、LME割れの発生を判定するための指標として優れていた。具体的には、実施例1と同様に、割れ指標Iref3が3.0以下であればLME割れが発生せず、割れ指標Iref4が2.7以下であればLME割れが発生しないことが分かった。

0102

10ポンチ
20鋼材(合金化溶融亜鉛めっき鋼板)
30ダイス
40 ピン

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