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技術 透析用剤および透析用剤の製造方法

出願人 日機装株式会社
発明者 春田富久常本哲也小松大介
出願日 2014年5月20日 (5年6ヶ月経過) 出願番号 2014-104412
公開日 2014年10月16日 (5年1ヶ月経過) 公開番号 2014-196311
状態 特許登録済
技術分野 医薬品製剤 化合物または医薬の治療活性 体外人工臓器
主要キーワード 付着水量 X線回折法 容量滴定法 各含有成分 塩化ナトリウム粉末 押出造粒装置 潮解性物質 試験用ふるい
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重要な関連分野

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図面 (3)

課題

電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器充填された透析用剤において、薬剤の固結、凝集が抑制され、低コストで得られる透析用剤を提供する。

解決手段

少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、163%未満2%以上であり、塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている透析用剤である。

概要

背景

透析用剤は、透析液を作製するための薬剤である。透析液は、血液透析血液濾過腹膜透析などにより、本来腎臓が行う機能に代わって体液老廃物取り去り、場合によっては血液中に必要な成分を補うために用いられるもので、体液に近い電解質組成を有する水溶液である。透析液としては、アルカリ化成分として炭酸水素ナトリウム重炭酸ナトリウム)を用いる透析液が生理的に好ましく、主流となっている。このような透析液を得るための透析用剤は、通常、炭酸水素ナトリウムの他に、糖質成分として無水結晶ブドウ糖と、電解質成分として塩化ナトリウム塩化カリウム塩化カルシウム塩化マグネシウム等と、pH調整成分として有機酸有機酸塩等とを含む。透析用剤は、従来液剤であったが、容積と重量が大きく、貯留運搬や使用時の取扱に不便をきたすという問題があったので、近年では固形剤移行してきている。

現在の透析用剤は、一般的には、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン等を含む電解質成分、無水結晶ブドウ糖およびpH調整成分を含む「A剤」と、炭酸水素ナトリウムを含む「B剤」との2剤構成となっている。現在使用されている電解質濃度および無水結晶ブドウ糖濃度の範囲は、例えば、以下の通りである(その他にpH調整成分を含む)。
Na+:103.0〜143.0mEq/L
K+:1.0〜4.0mEq/L
Ca++:1.25〜3.50mEq/L
Mg++:0.25〜1.50mEq/L
Cl−:107.0〜115.5mEq/L
無水結晶ブドウ糖:0〜250mg/dL

透析用剤の固形剤化の手段として、顆粒剤化があり、顆粒剤のA剤の造粒方法として、主に乾式造粒法押出造粒法転動撹拌流動造粒法、撹拌造粒法等の造粒方法が行われている。

乾式造粒法は、例えば、乾式造粒装置内で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび酢酸ナトリウム等の有機酸塩の各電解質化合物を混合、圧縮粉砕し造粒してA剤を得る造粒方法である。

押出造粒法は、例えば、塩化ナトリウム粉末に塩化ナトリウム以外の各電解質水溶液を加えて練合し、得られた造粒物押出造粒装置スクリーン面押しつけ成形造粒してA剤を得る造粒方法である。

転動撹拌流動層造粒法は、例えば、塩化ナトリウムを転動撹拌流動層造粒装置内で転動および流動させ、この転動流動中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の有機酸塩の混合物水溶液を噴霧することにより、転動撹拌流動層造粒装置内で転動流動中の塩化ナトリウム粒子の表面を塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の有機酸塩を含有する混合物の微粒子によって略均一に覆ってA剤を得る造粒方法である。

撹拌造粒法は、例えば、撹拌造粒装置中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムの懸濁液を入れ撹拌混合し、得られた混合物に酢酸ナトリウム等の有機酸塩を混合し、乾燥してA剤を得る造粒方法である。

しかし、顆粒剤に成形することにより、単位操作が複雑になり生産性が低下し、単位操作が増えることにより異物混入の可能性が増大するという問題点がある。また、顆粒剤に成形することにより、品種切換(各成分の濃度変更)による品種ごとの製造条件確立が必要になる。さらに、品種切換(各成分の濃度変更)時に生産設備に残る原料を除去しなければならず、製品ロスおよび時間ロスが生じ、生産性が低下するという問題点がある。

一方、顆粒剤に成形しない透析用剤の製造方法としては、以下の方法が検討されている。例えば、特許文献1には、重炭酸ナトリウムが塩化カルシウムや塩化マグネシウム等と化学反応し、炭酸塩析出する等の反応を防止するため、直接接触させると化学反応を起こす物質の間に、化学的に安定している塩化ナトリウム層を緩衝層として用いることにより、1包装にした、透析液の調剤に利用する薬剤が記載されている。

特許文献2には、ブトウ糖および炭酸水素ナトリウムを含有する粉末透析用剤において、粉末透析用剤全体、もしくはブドウ糖、塩化ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの少なくとも1成分を乾燥することにより、保存時の着色を抑制し、長期にわたって安定に保存可能とすることが記載されている。

特許文献3には、濃透析酸溶液の調製中の使用のため、ならびに使用準備が完了した透析液にする水および重炭酸塩含有濃縮物との混合のための透析酸前駆組成物であって、前記透析酸前駆組成物は、塩化ナトリウム、少なくとも1種の乾燥酸および少なくとも1種のマグネシウム塩、ならびに任意にカリウム塩カルシウム塩およびグルコースを含む粉末成分からなり、前記少なくとも1種のマグネシウム塩および前記任意のグルコースは、前記透析酸前駆組成物中無水成分として存在し、前記透析酸前駆組成物は、水蒸気透過率が38℃/90%RHで0.3g/m2/日未満である耐湿性容器中に密封されている透析酸前駆組成物が記載されている。

特許文献1の方法では、自由度の高い水分に対する対策がとられることがなく薬剤を容器充填しているので、薬剤の固結、凝集が発生し、迅速な溶解が困難となるという問題点がある。

特許文献2の方法のように、粉末透析用剤全体を乾燥させる場合、ブドウ糖が分解しないように乾燥するため、減圧乾燥(例えば、乾燥条件真空乾燥、25℃、165時間程度)、凍結乾燥(例えば、乾燥条件:予備凍結−45℃、12時間、一次乾燥0℃、72時間、二次乾燥25℃、12時間程度)という大型設備で長時間乾燥する必要があり、生産性が悪く現実的ではない。さらに、上記のような低温度の乾燥条件では、塩化カルシウム二水和物結晶水の水分を乾燥させることはできない。そして、透析用剤の主要成分である、ブドウ糖、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを乾燥させる場合、微量成分である塩化カルシウムを乾燥するより、1製剤あたり乾燥処理が必要な成分の重量が多く、生産効率が悪く現実的ではない。

特許文献3の組成物では、無水のマグネシウム塩として無水塩化マグネシウムが用いられているが、単なる加熱乾燥だけでは無水塩化マグネシウムを製造することができず、無水塩化マグネシウムを使用した透析剤を製造するのはコストがかかるという問題点がある。また、無水塩化マグネシウムは吸湿速度が速く、大量の無水塩化マグネシウムの水分含有率を維持しながら輸送保管することは難しい。さらに、水分含有率が安定した塩化マグネシウムを保持できないと透析剤のマグネシウム含有量の精度が安定しないという問題が生じる。

概要

電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤において、薬剤の固結、凝集が抑制され、低コストで得られる透析用剤を提供する。少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、163%未満2%以上であり、塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている透析用剤である。なし

目的

本発明の目的は、電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤において、薬剤の固結、凝集が抑制され、低コストで得られる透析用剤を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、前記塩化カルシウムの除水量透析用剤全体の含水量との比率が、163%未満2%以上であり、前記塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器充填されていることを特徴とする透析用剤。

請求項2

請求項1に記載の透析用剤であって、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、82%未満2%以上であることを特徴とする透析用剤。

請求項3

請求項2に記載の透析用剤であって、前記塩化カルシウムの水分含有率が14%〜22%の範囲であることを特徴とする透析用剤。

請求項4

請求項3に記載の透析用剤であって、前記塩化カルシウムの水分含有率が14%〜16%の範囲であることを特徴とする透析用剤。

請求項5

少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有する透析用剤の製造方法であって、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が163%未満2%以上となり、前記塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥する乾燥処理工程と、各含有成分を単一の固体成分として容器に充填する充填工程と、を含むことを特徴とする透析用剤の製造方法。

請求項6

請求項5に記載の透析用剤の製造方法であって、前記乾燥処理工程において、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が82%未満2%以上となるように塩化カルシウムを乾燥することを特徴とする透析用剤の製造方法。

請求項7

請求項6に記載の透析用剤の製造方法であって、前記乾燥処理工程において、前記塩化カルシウムの水分含有率が14%〜22%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥することを特徴とする透析用剤の製造方法。

請求項8

請求項7に記載の透析用剤の製造方法であって、前記乾燥処理工程において、前記塩化カルシウムの水分含有率が14%〜16%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥することを特徴とする透析用剤の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、透析用剤およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

透析用剤は、透析液を作製するための薬剤である。透析液は、血液透析血液濾過腹膜透析などにより、本来腎臓が行う機能に代わって体液老廃物取り去り、場合によっては血液中に必要な成分を補うために用いられるもので、体液に近い電解質組成を有する水溶液である。透析液としては、アルカリ化成分として炭酸水素ナトリウム重炭酸ナトリウム)を用いる透析液が生理的に好ましく、主流となっている。このような透析液を得るための透析用剤は、通常、炭酸水素ナトリウムの他に、糖質成分として無水結晶ブドウ糖と、電解質成分として塩化ナトリウム塩化カリウム塩化カルシウム塩化マグネシウム等と、pH調整成分として有機酸有機酸塩等とを含む。透析用剤は、従来液剤であったが、容積と重量が大きく、貯留運搬や使用時の取扱に不便をきたすという問題があったので、近年では固形剤移行してきている。

0003

現在の透析用剤は、一般的には、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオン等を含む電解質成分、無水結晶ブドウ糖およびpH調整成分を含む「A剤」と、炭酸水素ナトリウムを含む「B剤」との2剤構成となっている。現在使用されている電解質濃度および無水結晶ブドウ糖濃度の範囲は、例えば、以下の通りである(その他にpH調整成分を含む)。
Na+:103.0〜143.0mEq/L
K+:1.0〜4.0mEq/L
Ca++:1.25〜3.50mEq/L
Mg++:0.25〜1.50mEq/L
Cl−:107.0〜115.5mEq/L
無水結晶ブドウ糖:0〜250mg/dL

0004

透析用剤の固形剤化の手段として、顆粒剤化があり、顆粒剤のA剤の造粒方法として、主に乾式造粒法押出造粒法転動撹拌流動造粒法、撹拌造粒法等の造粒方法が行われている。

0005

乾式造粒法は、例えば、乾式造粒装置内で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび酢酸ナトリウム等の有機酸塩の各電解質化合物を混合、圧縮粉砕し造粒してA剤を得る造粒方法である。

0006

押出造粒法は、例えば、塩化ナトリウム粉末に塩化ナトリウム以外の各電解質水溶液を加えて練合し、得られた造粒物押出造粒装置スクリーン面押しつけ成形造粒してA剤を得る造粒方法である。

0007

転動撹拌流動層造粒法は、例えば、塩化ナトリウムを転動撹拌流動層造粒装置内で転動および流動させ、この転動流動中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の有機酸塩の混合物水溶液を噴霧することにより、転動撹拌流動層造粒装置内で転動流動中の塩化ナトリウム粒子の表面を塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム等の有機酸塩を含有する混合物の微粒子によって略均一に覆ってA剤を得る造粒方法である。

0008

撹拌造粒法は、例えば、撹拌造粒装置中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムの懸濁液を入れ撹拌混合し、得られた混合物に酢酸ナトリウム等の有機酸塩を混合し、乾燥してA剤を得る造粒方法である。

0009

しかし、顆粒剤に成形することにより、単位操作が複雑になり生産性が低下し、単位操作が増えることにより異物混入の可能性が増大するという問題点がある。また、顆粒剤に成形することにより、品種切換(各成分の濃度変更)による品種ごとの製造条件確立が必要になる。さらに、品種切換(各成分の濃度変更)時に生産設備に残る原料を除去しなければならず、製品ロスおよび時間ロスが生じ、生産性が低下するという問題点がある。

0010

一方、顆粒剤に成形しない透析用剤の製造方法としては、以下の方法が検討されている。例えば、特許文献1には、重炭酸ナトリウムが塩化カルシウムや塩化マグネシウム等と化学反応し、炭酸塩析出する等の反応を防止するため、直接接触させると化学反応を起こす物質の間に、化学的に安定している塩化ナトリウム層を緩衝層として用いることにより、1包装にした、透析液の調剤に利用する薬剤が記載されている。

0011

特許文献2には、ブトウ糖および炭酸水素ナトリウムを含有する粉末透析用剤において、粉末透析用剤全体、もしくはブドウ糖、塩化ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの少なくとも1成分を乾燥することにより、保存時の着色を抑制し、長期にわたって安定に保存可能とすることが記載されている。

0012

特許文献3には、濃透析酸溶液の調製中の使用のため、ならびに使用準備が完了した透析液にする水および重炭酸塩含有濃縮物との混合のための透析酸前駆組成物であって、前記透析酸前駆組成物は、塩化ナトリウム、少なくとも1種の乾燥酸および少なくとも1種のマグネシウム塩、ならびに任意にカリウム塩カルシウム塩およびグルコースを含む粉末成分からなり、前記少なくとも1種のマグネシウム塩および前記任意のグルコースは、前記透析酸前駆組成物中無水成分として存在し、前記透析酸前駆組成物は、水蒸気透過率が38℃/90%RHで0.3g/m2/日未満である耐湿性容器中に密封されている透析酸前駆組成物が記載されている。

0013

特許文献1の方法では、自由度の高い水分に対する対策がとられることがなく薬剤を容器充填しているので、薬剤の固結、凝集が発生し、迅速な溶解が困難となるという問題点がある。

0014

特許文献2の方法のように、粉末透析用剤全体を乾燥させる場合、ブドウ糖が分解しないように乾燥するため、減圧乾燥(例えば、乾燥条件真空乾燥、25℃、165時間程度)、凍結乾燥(例えば、乾燥条件:予備凍結−45℃、12時間、一次乾燥0℃、72時間、二次乾燥25℃、12時間程度)という大型設備で長時間乾燥する必要があり、生産性が悪く現実的ではない。さらに、上記のような低温度の乾燥条件では、塩化カルシウム二水和物結晶水の水分を乾燥させることはできない。そして、透析用剤の主要成分である、ブドウ糖、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを乾燥させる場合、微量成分である塩化カルシウムを乾燥するより、1製剤あたり乾燥処理が必要な成分の重量が多く、生産効率が悪く現実的ではない。

0015

特許文献3の組成物では、無水のマグネシウム塩として無水塩化マグネシウムが用いられているが、単なる加熱乾燥だけでは無水塩化マグネシウムを製造することができず、無水塩化マグネシウムを使用した透析剤を製造するのはコストがかかるという問題点がある。また、無水塩化マグネシウムは吸湿速度が速く、大量の無水塩化マグネシウムの水分含有率を維持しながら輸送保管することは難しい。さらに、水分含有率が安定した塩化マグネシウムを保持できないと透析剤のマグネシウム含有量の精度が安定しないという問題が生じる。

先行技術

0016

特開平8−080345号公報
特開2001−340448号公報
国際公開第2011/161055号パンフレット

発明が解決しようとする課題

0017

本発明の目的は、電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤において、薬剤の固結、凝集が抑制され、低コストで得られる透析用剤を提供することにある。

0018

また、本発明の目的は、電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤において、薬剤の固結、凝集を抑制する透析用剤が低コストで得られる透析用剤の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0019

本発明は、少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、163%未満2%以上であり、前記塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であり、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている透析用剤である。

0020

また、前記透析用剤において、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が、82%未満2%以上であることが好ましい。

0021

また、前記透析用剤において、前記塩化カルシウムの水分含有率が14%〜22%の範囲であることが好ましく、14%〜16%の範囲であることがさらに好ましい。

0022

また、本発明は、少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有する透析用剤の製造方法であって、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が163%未満2%以上となり、前記塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥する乾燥処理工程と、各含有成分を単一の固体成分として容器に充填する充填工程と、を含む透析用剤の製造方法である。

0023

また、前記透析用剤の製造方法における前記乾燥処理工程において、前記塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が82%未満2%以上となるように塩化カルシウムを乾燥することが好ましい。

0024

また、前記透析用剤の製造方法における前記乾燥処理工程において、前記塩化カルシウムの水分含有率が14%〜22%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥することが好ましく、14%〜16%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥することがさらに好ましい。

発明の効果

0025

本発明では、電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤において、pH調整剤を含有し、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が163%未満2%以上であり、塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であることにより、薬剤の固結、凝集が抑制される、低コストで得られる透析用剤が提供される。

0026

また、本発明では、電解質成分として少なくとも塩化カルシウムを含み、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤の製造方法において、pH調整剤を含有させ、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が163%未満2%以上となり、塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥することにより、薬剤の固結、凝集を抑制することができる透析用剤が低コストで得られる。

図面の簡単な説明

0027

実施例における比率Cと固結率との関係を示す図である。
実施例における比率Cと5−HMF吸光度との関係を示す図である。
100℃で塩化カルシウム二水和物を乾燥した際の含水率の変化を示す図である。

0028

本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。

0029

<透析用剤>
本発明の実施形態に係る透析用剤は、少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有し、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤である。本実施形態に係る透析用剤において、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が163%未満2%以上であり、塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲である。本明細書において「各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている」とは、透析用剤に含まれる複数の成分が顆粒剤として成形されておらず、各含有成分が、「単一成分の結晶物」として容器に充填されている形態以外に、「単一成分の造粒物」として容器に充填されている形態、「単一成分の粉砕物」として容器に充填されている形態を含む。ここで、「単一成分」とは純度として95%以上のことをいい、5%以下程度の不純物を含む場合も「単一成分」とする。また、本明細書における「単一成分」の中には、二酢酸ナトリウム等の上記酢酸混合物も含まれる。さらに、「各含有成分が単一の固体成分として容器に充填されている」とは、各「単一成分」が容器に充填される前に「単一成分」同士が混合される形態、例えば、各「単一成分」を容器に受けそれらを混合した後に所定量を容器に1回で充填する製造方法等も含まれる。

0030

透析用剤の溶解性悪化の要因の一つである固結、凝集は、気密容器内の自由度の高い水分が透析用剤の各成分の結晶に液架橋を形成することによる凝集と、凝集物の乾燥とを繰り返して粒子間に再結晶を起こして生じると考えられる。

0031

また、透析用剤を気密容器内に充填した場合、気密容器内の自由度の高い水分がクエン酸と塩化ナトリウム(または塩化マグネシウム、塩化カルシウム)の反応の触媒となり、塩化水素を発生させると考えられる。そして、発生した塩化水素が無水結晶ブドウ糖を脱水し、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)を産生する可能性がある。

0032

一方、塩化カルシウムとして一般的に用いられる塩化カルシウム二水和物に含まれる水分は、潮解性物質の結晶水である。この塩化カルシウム二水和物の結晶水は、科学的に結合されている脱水しにくい水分である。そのため、結晶水の脱水は自由水の脱水よりも高いエネルギーが必要となる。したがって、塩化カルシウム二水和物等の水分をどの程度除水する必要があるのか把握することは、塩化カルシウムを乾燥する乾燥処理工程を含む透析用剤の製造方法で作製される透析用剤の塩化カルシウム乾燥工程の効率化、最適化を図ることになる。

0033

塩化カルシウムには、吸水能力があり、例えば、147.0gの塩化カルシウム二水和物(水分含有率:24.5%)を乾燥して、水分含有率が1%の乾燥塩カルシウムにした場合は、34.91gの水分を喪失する。この喪失水分は、水分含有率が1%の乾燥塩化カルシウムが吸水できる能力としてみなすことができる。

0034

本明細書では、乾燥塩化カルシウムの吸水能力を、塩化カルシウムの初期所持水分量(g)([塩化カルシウム二水和物の重量]×[塩化カルシウム二水和物の理論水分率(24.5%)])と、塩化カルシウムの乾燥後の所持水分量(g)([乾燥塩化カルシウムの重量]×[乾燥塩化カルシウムの実測水分率(%)])との差で表し、「塩化カルシウムの除水量」と表現する。

0035

一方、透析用剤の各原料に含まれている水分は、「付着水」と「結晶水」の2種類に大別される。そして、結晶水を持つ原料には、空気中の水分を取り込んで自発的に水溶液となる「潮解性」のある原料と、物質が空気中で結晶水を放出する「風解性」のある原料とがある。風解性のある原料の結晶水と、原料の付着水は、容易に空気中に放出されうる自由度の高い水分である。

0036

本明細書では、これらの自由度の高い水分である原料の付着水の重量と、風解性成分の結晶水の重量との和を「透析用剤全体の含水量」と表現する。

0037

まず、乾燥塩化カルシウムを除いた各成分実測含水率と、各成分理論水分率、各成分重量から全体付着水水分量(付着水量)を算出する。
各成分実測含水率(%)−各成分理論含水率(%)=各成分付着水による含水率(%)
各成分重量(g)×各成分付着水による含水率(%)=各成分付着水水分量(g)
各成分付着水水分量の合計(g)=全体付着水水分量(付着水量)(g)
または、
付着水量(g)=(全成分合計重量(g)−乾燥塩化カルシウム重量(g))×全体付着水の水分含有率(%)
として求めてもよい。
そして、風解性成分理論水率と、風解性成分重量から風解性成分の結晶水の重量(結晶水量)を算出する。
結晶水量(g)=風解性成分重量(g)×風解性成分の理論水分率(%)

0038

このようにして求めた原料の「付着水量」と、「風解性成分の結晶水の重量(結晶水量)」との和から「透析用剤全体の含水量」を求める。そして、「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率をCとする。
透析用剤全体の含水量(g)=付着水量(g)+結晶水量(g)
C(%)=[(透析用剤全体の含水量(g))/(塩化カルシウムの除水量(g))]×100

0039

本発明者らは、「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率であるCが所定の値以下であれば、顆粒剤ではない、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤の固結、凝集が抑制されることを見出した。また、「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率であるCが所定の値以下であれば、気密容器内の自由度の高い水分の存在を減少させ、塩化水素の発生を抑制し、5−HMFの産生が抑制されることを見出した。すなわち、透析用剤に含まれる原料のうちの一般に少量成分である塩化カルシウムに乾燥処理を施して、付着水だけではなく結晶水まで除去して、その乾燥塩化カルシウムに「乾燥剤」としての機能を持たせたものである。本願発明では、各含有成分が単一の固体成分として容器に充填された透析用剤において、「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率Cというパラメータと、固結、凝集の抑制との関係を見出したことに大きな意義がある。

0040

「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率Cは、163%未満であるが、113%以下が好ましい。また、「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率Cは、82%未満であることがより好ましく、77%以下であることがさらに好ましい。「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率Cが82%未満であると、透析用剤が糖質成分として無水結晶ブドウ糖を含む場合でも無水結晶ブドウ糖の分解が抑制される。「塩化カルシウムの除水量」と「透析用剤全体の含水量」との比率Cは、気密容器外から入ってくる水分等を考慮すると、55%以下であることがさらにより好ましく、長期保管等の観点から、40%以下であることが特に好ましい。比率Cは低ければ低い方が好ましいが、比率Cが低すぎると、比率Cを小さくするには塩化カルシウムの過剰な乾燥処理が必要となる場合があるので、適度な乾燥処理で十分であるように比率Cは2%以上であればよく、4%以上であることが好ましく、7%以上であることがより好ましい。

0041

比率Cが163%未満であれば、透析用剤の固結、凝集の原因となる自由度の高い水分を乾燥塩化カルシウムが吸水するため、透析用剤の固結、凝集が抑制されると考えられる。比率Cが82%未満であれば、無水結晶ブドウ糖の分解の原因となる自由度の高い水分を乾燥塩化カルシウムが十分に吸水するため、透析用剤が糖質成分として無水結晶ブドウ糖を含む場合でも無水結晶ブドウ糖の分解が抑制されると考えられる。透析用剤の固結、凝集および無水結晶ブドウ糖の分解を抑制するのに必要な塩化カルシウムの除水量を処方内容(例えばA剤の成分量)ごとに必要最小限にすることができるので、乾燥工程の効率化を図ることができる。また、顆粒剤に成形する透析用剤の製造方法と比較して、単位操作が短縮、簡略化され生産性が向上し、異物の混入の可能性が減少する。また、品種切換(各成分の濃度変更)による製造条件の確立が容易になる。さらに、品種切換(各成分の濃度変更)時に生産設備に残る原料を除去しなくてもよく、生産性が向上する。したがって、低コストかつ質の高い透析用剤が実現される。

0042

また、気密容器内の自由度の高い水分を吸湿する乾燥塩化カルシウムを気密容器内に内包することにより、気密容器内の自由度の高い水分が各成分の結晶に液架橋を形成することによる凝集、凝集物の乾燥を繰り返して粒子間に再結晶を起こして生じる固結の発生を抑制することができると考えられる。

0043

また、気密容器内の自由度の高い水分、および気密容器外から入ってくる水分を吸湿するのに十分な乾燥塩化カルシウムを気密容器内に内包することにより、無水結晶ブドウ糖の分解の原因となる自由度の高い水分を乾燥塩化カルシウムが吸水するので、無水結晶ブドウ糖の分解を抑制することができると考えられる。

0044

本実施形態に係る透析用剤において、塩化カルシウムの水分含有率は1%〜22%の範囲であり、14%〜22%の範囲であることが好ましく、14%〜16%の範囲であることがより好ましい。「水分含有率」は、物質に含まれる水分の割合(質量%)を示す。塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲であることにより、製造工程が簡略化でき、生産性が向上し、異物混入の問題が少なくなる。水分含有率が14%〜22%の範囲の塩化カルシウムは、水分含有率が1%未満の塩化カルシウムと比べて製造(乾燥)に用いるエネルギーをかけずに透析剤の製造をすることができるという利点がある。比率Cを上記範囲の値とすれば、水分含有率が14%〜22%の範囲の塩化カルシウムであっても薬剤の安定性を図ることができる。また、例えば、100℃の雰囲気で塩化カルシウム二水和物を乾燥した場合、塩化カルシウムの水分含有率が14%〜16%の範囲で脱水速度が緩やかになり、14%程度で脱水がほとんど進まなくなる(図3参照)。したがって、水分含有率が14%〜16%の範囲の塩化カルシウムは、水分含有率を管理しやすいという利点がある。また、水分含有率が14%〜16%の範囲の塩化カルシウムを用いることにより、水分含有率が安定した塩化カルシウムを使用し透析用剤を製造することができるので、透析用剤のカルシウム含有量の精度が安定化するという利点もある。塩化カルシウム二水和物を乾燥して水分含有率を14%〜16%の範囲としたものを用いることにより、吸湿速度が速い水分含有率が1%未満の塩化カルシウムを用いるよりも、取り扱いが容易であり、さらにコストを低減することができる。

0045

このように、本実施形態に係る透析用剤の製造方法により、顆粒剤に成形することにより品種切換(各成分の濃度変更)による複雑な製造条件の確率が必要になるという問題が解決される。また、顆粒剤に成形することにより単位操作が複雑になり、生産性が低下し、単位操作が増えることにより異物の混入の可能性が増大するという問題が解決される。さらに、顆粒剤に成形することにより品種切換(各成分の濃度変更)による製造条件の確立が困難となるという問題が解決される。また、品種切換(各成分の濃度変更)時に生産設備に残る原料を除去しなければならず、製品ロスおよび時間ロス等が生じて生産性が低下するという問題が解決される。したがって、低コストかつ品質の高い透析用剤が実現される。

0046

本実施形態に係る透析用剤において、塩化カルシウムが乾燥処理されていることが好ましく、塩化カルシウムが75℃以上の雰囲気で乾燥処理されていることがより好ましい。塩化カルシウムの加熱乾燥処理において雰囲気が75℃以上の温度であると、塩化カルシウムの水分が除去されやすく、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率163%未満2%以上、および塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲が達成されやすい。

0047

本実施形態に係る透析用剤には、糖質成分を含むことが好ましい。糖質成分としては、例えば、無水結晶ブドウ糖等が挙げられる。

0048

電解質成分としては、塩化カルシウムの他に、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。好ましい電解質成分としては、塩化カルシウムの他に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムである。

0049

本実施形態に係る透析用剤は、アルカリ化成分を含むことが好ましい。アルカリ化成分としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)等が挙げられる。

0050

本実施形態に係る透析用剤は、pH調整成分として例えば酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の混合物である酢酸混合物を含む。酢酸ナトリウムとしては、酢酸ナトリウム無水物、酢酸ナトリウム三水和物等が挙げられる。酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の混合物は、酢酸ナトリウムと氷酢酸とを混合して粉末化したものである。この酢酸混合物において、酢酸ナトリウムの少なくとも一部と氷酢酸とは錯体を形成していると考えられる。この酢酸混合物において、錯体を形成してない未反応の酢酸ナトリウムを含んでいてもよい。なお、酢酸ナトリウムと氷酢酸とが錯体を形成していることは、X線回折法により確認することができる。

0051

透析用剤に使用するpH調整剤を酢酸ナトリウムと氷酢酸とを混合して粉末化した酢酸混合物とせずに、酢酸ナトリウムと氷酢酸をpH調整剤として透析用剤を気密容器内に充填した場合、氷酢酸が無水結晶ブドウ糖を脱水し、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)を産生し、また液体である氷酢酸が薬剤を固結・凝集する。

0052

酢酸混合物における酢酸ナトリウムと氷酢酸とのモル比は、1:1〜5:1の範囲であることが好ましく、3:1〜4:1の範囲であることがより好ましい。酢酸ナトリウムに対する氷酢酸のモル比が1以上であると、氷酢酸が酢酸ナトリウムと結合しきれずに粉末化できず薬剤の安定性を害する場合がある。氷酢酸に対する酢酸ナトリウムのモル比が5以上のA剤では、炭酸水素ナトリウムを含んでなるB剤と組み合わせて調製された際の透析液のpHおよびアルカリ化剤濃度透析治療に適さない。この酢酸混合物としては、酢酸ナトリウムと氷酢酸との1:1混合物(二酢酸ナトリウム(粉末酢酸))、酢酸ナトリウムと氷酢酸との3:1混合物、酢酸ナトリウムと氷酢酸との8:2.2混合物、酢酸ナトリウムと氷酢酸との10:2混合物等が挙げられる。これらのうち、酢酸ナトリウムと氷酢酸との1:1〜5:1混合物を用いると、透析用剤で用いられる酢酸ナトリウムおよび氷酢酸の全量を粉末化した混合物として添加することができ、必要な酢酸ナトリウムを別途添加しなくてもよく、製造工程の短縮化につながるという利点がある。また、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との3:1〜4:1混合物は、酢酸ナトリウム無水物に氷酢酸を添加しても粒度の安定した酢酸混合物を製造することができる。

0054

本実施形態に係る透析用剤における各成分の配合量は、適切な濃度に希釈、混合した場合に、透析液として、例えば、下記の濃度であることが好ましい。本実施形態に係る透析用剤では、下記のように、透析用剤における塩化カルシウムの配合量が少量であっても精度よく容器に充填される。
Na+ 140.6〜135.2mEq/L
K+ 2.0mEq/L
Ca2+ 3.5〜2.5mEq/L
Mg2+ 1.5〜1mEq/L
Cl− 113〜110.5mEq/L
HCO3− 35〜25mEq/L
無水結晶ブドウ糖150〜100mg/dl
クエン酸イオン2.4〜0mEq/L
または、酢酸イオン12〜0mEq/L

0055

本実施形態に係る透析用剤において、容器への充填方法としては、「単一の固体成分」として充填されていればよく、特に制限はない。通常は、塩化カルシウムを含む電解質成分、無水結晶ブドウ糖等の糖質成分およびpH調整成分を含む「A剤」と、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ化成分を含む「B剤」との2剤構成となっている。顆粒剤に成形しない「単一の固体成分」としてA剤が容器に充填されていればよい。また、各成分の容器への充填順序についても特に制限はない。さらに、「A剤」の主要な電解質成分である「塩化ナトリウム」を別の包装にし、3剤構成とすることも可能である。本実施形態における「A剤」とは、少なくとも塩化マグネシウムを含む電解質成分と、無水結晶ブドウ糖およびpH調整剤とを含む製剤を意味する。

0056

<透析用剤の製造方法>
本発明の実施形態に係る、少なくとも塩化カルシウムを含む電解質成分と、pH調整剤とを含有する透析用剤の製造方法において、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が163%未満2%以上となり、塩化カルシウムの水分含有率が1%〜22%の範囲となるように塩化カルシウムを乾燥する乾燥処理工程と、各含有成分を単一の固体成分として容器に充填する充填工程と、を含む。乾燥処理工程において、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率が82%未満2%以上となるように塩化カルシウムを乾燥することが好ましい。本実施形態に係る透析用剤の製造方法において、酢酸ナトリウムと氷酢酸とを混合して酢酸混合物を得る混合工程を含んでもよい。

0057

本実施形態において、塩化カルシウムの乾燥処理の方法としては、例えば、加熱する加熱乾燥法、減圧状態にする減圧乾燥法、乾燥剤等を使用した乾燥法等のうちの1つまたはそれらの組み合わせが挙げられる。特に、加熱する加熱乾燥法、または加熱する加熱乾燥法と減圧状態にする減圧乾燥法の組み合わせが塩化カルシウムの乾燥効率の観点から好ましい。また、乾燥処理の効率化等の点から、塩化カルシウムは他の成分とは別に、個別に乾燥されることが好ましい。

0058

加熱乾燥法の場合、塩化カルシウムの乾燥処理温度は、例えば、75℃〜110℃であり、乾燥時間は、例えば、15分〜5時間である。塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率を163%未満2%以上とし、塩化カルシウムの水分含有率を1%〜22%の範囲とするためには、乾燥処理温度は、75℃以上であり、乾燥時間は、15分以上であることが好ましく、乾燥処理温度が、100℃以上であり、乾燥時間は、30分以上であることがより好ましい。

0059

このようにして製造された本実施形態に係る透析用剤から透析液を調製するには、本実施形態に係る透析用剤を「A剤」として、所定量の精製水に溶解してA原液を作製し、「B剤」を所定量の精製水に溶解してB原液を作製し、これらのA原液とB原液とを所定の比率で混合希釈する。例えば、実施例1のサンプル7−1の透析用剤A剤を9Lになるように精製水で溶解してA原液を作製し、炭酸水素ナトリウム661.6gのB剤を11.34Lになるように精製水で溶解してB原液を作製する。そして、A原液:B原液:精製水=1:1.26:32.74の割合で混合すれば、315Lの透析液を調製することができる。

0060

以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。

0061

<各種測定方法
実施例における各種測定は以下の通りに行った。
[水分含有率(%)]
物質に含まれる水分の割合(質量%)を水分含有率と定義する。詳細な測定方法は以下の通りである。

0062

塩化ナトリウム、無水結晶ブドウ糖、塩化カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムの水分含有率測定は、第16改正日本薬局方に記載されている水分含有率測定方法に準じて行った。

0063

塩化カルシウム、塩化マグネシウム、粉末酢酸の水分含有率測定は、室温25℃±2.5℃、相対湿度40%±2.5%の雰囲気において、JIS K0068のカールフィッシャ滴定法、容量滴定法、直接滴定に準じて行った。カールフィッシャ測定器(京都電子工業株式会社製;型番MKA−510)を用いて、溶媒としてメタノール(関東化学株式会社製)30mlを使用して行った。水分測定用試薬は、カールフィッシャ試薬シグマアルドリッチジャパン社製製品ハイドナールコンポジット5)を使用した(参照:JIS K0068)。

0064

[固結率]
固結率とは、透析用剤の全成分合計重量に対する固結重量の割合と定義する。固結重量とは、試験用ふるい(目開き5.6mm)を通過しない試料の重量と定義する。詳細な測定方法は以下の通りである。

0065

所定の水分含有量の塩化カルシウムを使用した透析用剤を密閉容器に入れ、次に、恒温恒湿器(タバイエスペック(株)社製;型式PR−3KP)において40℃、相対湿度75%の条件下で14日安定性試験を実施した。14日保存された透析用剤を開封し、試験用ふるい(目開き5.6mm)の上にあけ、固結の量(g)を確認した。

0066

[5−HMF試験
所定の水分含有量の塩化カルシウムを使用した透析用剤を密閉容器に入れ、次に、恒温恒湿器(タバイエスペック(株)社製;型式PR−3KP)において40℃、相対湿度75%の条件下で14日安定性試験を実施した。14日保存された透析用剤を開封し、当該透析用剤をRO水で溶解した。溶解された透析用剤A原液の無水結晶ブドウ糖の分解率を測定するため、第16改正日本薬局方に記載されているブドウ糖注射液純度試験紫外可視吸光度測定法に基づき波長284nmにおける吸光度の測定を行った。

0067

<塩化カルシウムの乾燥>
以下のようにして、塩化カルシウムの乾燥処理を行った。
[加熱乾燥]
塩化カルシウム・二水和物(CaCl2・2H2O)50gをステンレス角型バット外寸法(mm)210×170×31:底寸法(mm)170×130:SUS304)に取り、平らに均し、所定の温度、時間で加熱乾燥した。乾燥後の塩化カルシウムを2000μmと212μmメッシュを通過させて、212μmの篩上に残った試料だけを使用した。乾燥温度は、100℃または180℃とした。乾燥時間は、100℃で30分、1時間、3.5時間、180℃で2時間とした。乾燥機は、ヤマト科学社製、型式DK600Tを使用した。

0068

得られた乾燥試料(CaCl2)および乾燥処理を行っていない塩化カルシウム・二水和物について、水分含有率を測定した。結果を表1に示す。

0069

0070

<実施例1>
乾燥工程を経ることによって、乾燥剤としての機能を向上させた塩化カルシウム(CaCl2)(水分含有率1%、15%、19%、22%)を使用して、表2の割合で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム六水和物無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水結晶ブドウ糖、塩化カルシウムを容器に充填した後、容器を密閉して透析用剤を作製した(サンプル1−1〜1−4)。

0071

塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム六水和物、無水クエン酸、無水クエン酸ナトリウム、無水結晶ブドウ糖の各成分の付着水水分量を上記水分含有率の測定方法により測定し、付着水量を求めた。結果を表3に示す。

0072

上記透析用剤について安定性試験(40℃、75%RH、14日間)を実施して、固結の有無を調べ、上記の方法で評価した。また、上記安定性試験を受けた透析用剤をRO水で溶解して透析用剤A原液を作製した。透析用剤A原液の無水結晶ブドウ糖の分解率を測定するため、上記の方法で5−HMFの吸光度の測定を行った。結果を表4に示す。また、塩化カルシウムの除水量および透析用剤全体の含水量を算出し、比率Cを算出した結果を表4に示す。

0073

0074

0075

0076

<実施例2>
pH調整成分として無水クエン酸と無水クエン酸ナトリウムとの組み合わせの代わりに、表5に示す通り、無水クエン酸とクエン酸ナトリウム二水和物との組み合わせを用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表6,7に示す。

0077

0078

0079

0080

<実施例3>
pH調整成分として無水クエン酸と無水クエン酸ナトリウムとの組み合わせの代わりに、表8に示す通り、クエン酸一水和物と無水クエン酸ナトリウムとの組み合わせを用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表9,10に示す。

0081

0082

0083

0084

<実施例4>
pH調整成分として無水クエン酸と無水クエン酸ナトリウムとの組み合わせの代わりに、表11に示す通り、クエン酸一水和物とクエン酸ナトリウム二水和物との組み合わせを用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表12,13に示す。

0085

0086

0087

0088

<実施例5>
塩化カルシウムの配合量を表14の通りとした以外は、実施例4と同様にして評価を行った。結果を表15,16に示す。

0089

0090

0091

0092

<実施例6>
塩化カルシウムの配合量を表17の通りとした以外は、実施例4と同様にして評価を行った。結果を表18,19に示す。

0093

0094

0095

0096

<実施例7>
pH調整成分として無水クエン酸と無水クエン酸ナトリウムとの組み合わせの代わりに、表20に示す通り、粉末酢酸と酢酸ナトリウム無水物との組み合わせを用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表21,22に示す。粉末酢酸は、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸とをモル比1:1で混合して得た。

0097

0098

0099

0100

<実施例8>
pH調整成分として無水クエン酸と無水クエン酸ナトリウムとの組み合わせの代わりに、表23に示す通り、粉末酢酸と酢酸ナトリウム三水和物との組み合わせを用いた以外は、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表24,25に示す。

0101

0102

0103

0104

各サンプルをRO水で溶解して315Lとした時の各成分の濃度を表26に示す。

0105

0106

以上の結果をまとめて、比率Cと固結率との関係を図1に示し、比率Cと5−HMFの吸光度との関係を図2に示す。

0107

このように、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率Cを163%未満2%以上とすることにより、安定性試験において薬剤の固結、凝集が抑制された。また、塩化カルシウムの除水量と透析用剤全体の含水量との比率を82%未満2%以上とすることにより、安定性試験において5−HMFの産生が抑制された。

0108

<実施例9>
[酢酸混合物の調製]
酢酸ナトリウム無水物(38.8g)を容器に投入し、氷酢酸(28.4g)を投入量6mL/分で投入しながら混合し、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との混合物である酢酸混合物(1.5:1.5)(酢酸ナトリウム無水物:氷酢酸(モル比)=1.5:1.5)を得た。

0109

酢酸ナトリウム無水物(77.5g)を容器に投入し、氷酢酸(56.7g)を投入量6mL/分で投入しながら混合し、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との混合物である酢酸混合物(3:3)(酢酸ナトリウム無水物:氷酢酸(モル比)=3:3)を得た。

0110

酢酸ナトリウム無水物(154.8g)を容器に投入し、氷酢酸(37.8g)を投入量6mL/分で投入しながら混合し、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との混合物である酢酸混合物(6:2)(酢酸ナトリウム無水物:氷酢酸(モル比)=6:2)を得た。

0111

酢酸ナトリウム無水物(206.7g)を容器に投入し、氷酢酸(42.0g)を投入量6mL/分で投入しながら混合し、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との混合物である酢酸混合物(8:2.2)(酢酸ナトリウム無水物:氷酢酸(モル比)=8:2.2)を得た。

0112

酢酸ナトリウム無水物(258.4g)を容器に投入し、氷酢酸(37.8g)を投入量6mL/分で投入しながら混合し、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との混合物である酢酸混合物(10:2)(酢酸ナトリウム無水物:氷酢酸(モル比)=10:2)を得た。

0113

X線回折法により、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸の全部または一部とが錯体を形成していることを確認した。

0114

乾燥工程を経ることによって、乾燥剤としての機能を向上させた塩化カルシウム(CaCl2)(水分含有率15%)を使用して、表27の割合で塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム六水和物、無水結晶ブドウ糖、塩化カルシウム、pH調整剤(酢酸混合物(1.5:1.5)、酢酸混合物(3:3)、酢酸混合物(6:2)、酢酸混合物(8:2.2)、酢酸混合物(10:2)、酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との組合せのいずれか)を容器に充填した後、容器を密閉し、容器内容物を分散して透析用剤を作製した(サンプル9−1〜9−6)。

0115

塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム六水和物、無水結晶ブドウ糖、pH調整剤の各成分の付着水水分量を上記水分含有率の測定方法により測定し、付着水量を求めた。結果を表28に示す。

0116

上記透析用剤について安定性試験(40℃、75%RH、14日間)を実施して、固結の有無を調べ、上記の方法で評価した。また、上記安定性試験を受けた透析用剤をRO水で溶解して透析用剤A原液を作製した。透析用剤A原液の無水結晶ブドウ糖の分解率を測定するため、上記の方法で5−HMFの吸光度の測定を行った。結果を表29に示す。また、塩化カルシウムの除水量および透析用剤全体の含水量を算出し、比率Cを算出した結果を表29に示す。

0117

0118

0119

0120

このように、pH調整剤を酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸との組合せではなく、酢酸ナトリウム無水物および氷酢酸の混合物である酢酸混合物を使用することにより、安定性試験において薬剤の固結、凝集が抑制された。また、安定性試験において5−HMFの産生が抑制された。酢酸ナトリウム無水物と氷酢酸とをpH調整剤として透析剤を製造したサンプル9−6では、酢酸混合物を使用した場合に比べて、薬剤の固化および無水結晶ブドウ糖の分解が発生した。

0121

サンプル9−1〜9−6をRO水で溶解して315Lとした時の各成分の濃度を表30に示す。

実施例

0122

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