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課題
高粘度の溶融ガラスの攪拌に有用であり、攪拌作用が高いと共に、変形・破損が生じ難いガラス製造用スターラーを提供する。
解決手段
本発明は、スターラーシャフトと、スターラーシャフトを貫通して固着された複数段の棒状のスターラーブレードとからなるガラス製造用のスターラーである。このスターラーブレードは、白金又は白金合金をマトリックスとして金属酸化物が分散する強化白金等からなる平板の対向する2辺をシーム溶接してなる円筒と、前記円筒の両端に全周溶接された同材料からなる円盤とからなる中空の円柱体であり、また、溶接線がスターラーシャフトの中心軸と交差するように貫通し、かつ、その端部の軌跡がらせん状となるように固着されている。そして、この棒状のスターラーブレードは、スターラーシャフトとの固着部分の断面組織において、固着による熱影響を受けていない分散組織を示す芯層を有するものである。
概要
背景
各種ガラス製品の製造工程においては、調整・混合されたガラス原料を溶融し、溶融状態のガラスを攪拌することによりその成分の均質化、屈折率の均一化を行った後、成型をしてガラス製品としている。従来から均質で欠陥(脈理や泡等)のないガラス製品が求められている状況下において、このガラス製造工程における攪拌工程は特に重要な工程である。
溶融ガラスの攪拌工程は、通常、溶融ガラス槽にガラス製造用スターラーを挿入して回転させることにより行われる。このガラス製造用スターラーは、回転軸となるスターラーシャフト(以下、単にシャフトと称することがある)にスターラーブレード(以下、単にブレードと称することがある)を設置して構成される。シャフトに設置されるブレードの形状についてはいくつかの形態が知られている。例えば、図5のように、複数の棒状体をブレードとしてシャフトに多段に突接させたものや(特許文献1参照)、図6のようなシャフト外周に板材を螺旋状に接合したもの(特許文献2参照)、図7のようなシャフト外周にフランジ状の凸部をらせん状に形成したもの等が知られている。これらの各種のスターラーは、それぞれ攪拌槽の形状・寸法や処理対象となる溶融ガラスの性状・要求品質に応じて適宜に使い分けられている。
概要
高粘度の溶融ガラスの攪拌に有用であり、攪拌作用が高いと共に、変形・破損が生じ難いガラス製造用スターラーを提供する。本発明は、スターラーシャフトと、スターラーシャフトを貫通して固着された複数段の棒状のスターラーブレードとからなるガラス製造用のスターラーである。このスターラーブレードは、白金又は白金合金をマトリックスとして金属酸化物が分散する強化白金等からなる平板の対向する2辺をシーム溶接してなる円筒と、前記円筒の両端に全周溶接された同材料からなる円盤とからなる中空の円柱体であり、また、溶接線がスターラーシャフトの中心軸と交差するように貫通し、かつ、その端部の軌跡がらせん状となるように固着されている。そして、この棒状のスターラーブレードは、スターラーシャフトとの固着部分の断面組織において、固着による熱影響を受けていない分散組織を示す芯層を有するものである。
目的
効果
実績
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この技術が所属する分野
請求項1
スターラーシャフトと、前記スターラーシャフトを貫通して固着された複数段の棒状のスターラーブレードとからなるガラス製造用のスターラーであって、前記棒状のスターラーブレードは、白金又は白金合金をマトリックスとして金属酸化物が分散する強化白金又は強化白金合金からなる平板の対向する2辺をシーム溶接してなる円筒と、前記円筒の両端に全周溶接された同材料からなる円盤とからなる中空の円柱体であり、前記棒状のスターラーブレードは、前記シーム溶接による溶接線が前記スターラーシャフトの中心軸と交差するように前記スターラーシャフトに貫通し、かつ、その端部の軌跡がらせん状となるように固着され、更に、前記棒状のスターラーブレードは、前記スターラーシャフトとの固着部分の断面組織において、固着による熱影響を受けていない分散組織を示す芯層を有する、ガラス製造用のスターラー。
請求項2
スターラーブレードは、前段のスターラーブレードとの間で10〜20mmの隙間を有して固着されている請求項1記載のガラス製造用のスターラー。
請求項3
スターラーブレードの段数は、4〜10である請求項1又は請求項2記載のガラス製造用のスターラー。
請求項4
スターラーブレードは、スターラーシャフトとの固着部分の断面組織において、0.1〜1.0mm平均厚さの芯層を有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガラス製造用のスターラー。
請求項5
スターラーブレードを構成する強化白金又は強化白金合金は、分散する金属酸化物として酸化ジルコニウムまたは酸化イットリウムが分散するものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガラス製造用のスターラー。
請求項6
技術分野
背景技術
0002
各種ガラス製品の製造工程においては、調整・混合されたガラス原料を溶融し、溶融状態のガラスを攪拌することによりその成分の均質化、屈折率の均一化を行った後、成型をしてガラス製品としている。従来から均質で欠陥(脈理や泡等)のないガラス製品が求められている状況下において、このガラス製造工程における攪拌工程は特に重要な工程である。
0003
溶融ガラスの攪拌工程は、通常、溶融ガラス槽にガラス製造用スターラーを挿入して回転させることにより行われる。このガラス製造用スターラーは、回転軸となるスターラーシャフト(以下、単にシャフトと称することがある)にスターラーブレード(以下、単にブレードと称することがある)を設置して構成される。シャフトに設置されるブレードの形状についてはいくつかの形態が知られている。例えば、図5のように、複数の棒状体をブレードとしてシャフトに多段に突接させたものや(特許文献1参照)、図6のようなシャフト外周に板材を螺旋状に接合したもの(特許文献2参照)、図7のようなシャフト外周にフランジ状の凸部をらせん状に形成したもの等が知られている。これらの各種のスターラーは、それぞれ攪拌槽の形状・寸法や処理対象となる溶融ガラスの性状・要求品質に応じて適宜に使い分けられている。
先行技術
0004
特開2004−149338号公報
特開2003−34539号公報
発明が解決しようとする課題
0005
近年においては、液晶ディスプレイガラス等のガラス製品に対する要求も多様となっており、これに対応すべく多数の品種のガラスが開発されている。その中には、溶融状態において高粘度であるものや、従来以上に高温(1600℃以上)で溶融するものがある。そして、これらの特異な溶融ガラスの攪拌処理に対し、上記従来のスターラーの有効性が懸念される。
0006
溶融ガラスの攪拌処理においては、溶融ガラスに好適な流動状態を形成してその均質化を図る必要があるが、溶融ガラスの粘度の上昇に応じた攪拌作用の増強が必要となる。また、溶融ガラスの高粘度化及び高温化は、ブレードにかかる負荷を増大させることになる。溶融ガラスの高粘度化により適切な攪拌状態を得るためのトルク値は増大するが、これはブレードに対して力学的な負荷を増大させるからである。また、溶融ガラスの高温化により、雰囲気温度は攪拌棒の構成材料の耐熱温度に近接することとなり、材料軟化の要因となる。材料の軟化は、前記のトルク値増大の作用と相俟ってブレードの変形を引き起こすこととなる。
0007
ここで問題になるのが、上記の攪拌作用の増大と、力学的負荷の低減は相反することである。即ち、攪拌作用を増大させるためには、ブレードの表面積や本数を増加させる等により、溶融ガラスに対してより動的に接触するようにすることが考えられる。例えば、図6のらせん状のブレードを供えるスターラーの場合、一列構成のブレード(シングルスパイラル)から、二列構成のブレード(ダブルスパイラル)にすることで、攪拌作用は向上する。しかし、このようにブレードを増やすことは、溶融ガラスに対する抵抗体を増やすことであり、攪拌時のトルク値が上昇することとなる。
0008
そこで本発明は、特に高粘度の溶融ガラスの攪拌に有用であり、攪拌作用が高いと共に、攪拌時の負荷が低く、変形・破損が生じ難いガラス製造用のスターラーを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0009
上記課題を解決する本発明は、スターラーシャフトと、前記スターラーシャフトを貫通して固着された複数段の棒状のスターラーブレードとからなるガラス製造用のスターラーであって、前記棒状のスターラーブレードは、白金又は白金合金をマトリックスとして金属酸化物が分散する強化白金又は強化白金合金からなる平板の対向する2辺をシーム溶接してなる円筒と、前記円筒の両端に全周溶接された同材料からなる円盤とかなる中空の円柱体であり、前記棒状のスターラーブレードは、前記シーム溶接による溶接線が前記スターラーシャフトの中心軸と交差するように前記スターラーシャフトに貫通し、かつ、その端部の軌跡がらせん状となるように固着され、更に、前記棒状のスターラーブレードは、前記スターラーシャフトとの固着部分の断面組織において、固着による熱影響を受けていない分散組織を示す芯層を有する、ガラス製造用のスターラーである。
0010
本発明に係るガラス製造用のスターラーは、図1のように、棒状のブレードをらせん状に配置するものである。棒状のブレードを有するスターラーにより溶融ガラスを攪拌する場合、通常は、ブレードとブレードとの隙間を溶融ガラスが通過する。本発明者等によると、高粘度の溶融ガラスに対して棒状のブレードをらせん状に配置して攪拌する場合、ブレード間の隙間に溶融ガラスが通過することなく、らせん形状の板状ブレード(図6)に近似した溶融ガラスの攪拌状態が生じる。このらせん状ブレードによる溶融ガラス流とは、溶融ガラス槽の上方へ向かう渦巻流である。この渦巻流は、溶融ガラスの上面に達した後、溶融ガラス槽の壁面に沿って下方に流れることから、溶融ガラスを溶融ガラス槽の下から上へそしてまた下へと流動させることができ、非常に良好な攪拌状態といえる。
0011
そして、本発明者等によれば、棒状のブレードをらせん状に配置することで、従来の板材をらせん状にしたブレードよりも有効な攪拌状態を得ることができる上に、攪拌時のトルクも低減させることができる。これは、基本的に、ブレードの間隙を溶融ガラスが通過することはないが、部分的に溶融ガラスが通過する箇所があることによる。この溶融ガラスの通過部分では、溶融ガラス流は剪断され上記した渦巻流とは相違する方向の流れが創出されるものと考えられる。そして、この溶融ガラス流の局所的な剪断によってより、低負荷で効果的な攪拌状態が得られるものと考えられる。
0012
本発明において、棒状のブレードは、等間隔且つ等角度で固着されらせん状となっていることが必要となる。ここで、各ブレード間の間隔角度は、20°〜70°とするのが好ましい。特に好ましくは、間隔角度を25°〜45°の範囲とする。各ブレード間の間隔角度は相違しても良いが、一方向に等角度で固着されたものが好ましい。また、シャフトの軸方向でのブレードとブレードとの隙間は、棒状ブレードの径によらず10〜20mmの間隔で固着されていることが好ましい。より好ましくは、この隙間は15mmとする。ブレード間の隙間を各上限以上にする場合、ブレードの間隙を溶融ガラスが通過し、目的とする溶融ガラスの流動状態が再現できなくなるからである。
0013
ブレードのシャフト長手方向の設置数である段数は、4〜10段とするのが好ましい。4段未満では攪拌作用が弱く、10段を超えるものは材料コストの観点から除外される。また、この段数は、攪拌槽のサイズ(深さ)も考慮して設定される。
0014
本発明では、棒状のブレードをシャフトに貫通して固着する。つまり、各段のブレードの本数は、シャフトに対して2本の棒状ブレードが対称となって固定されている。このようにシャフトにブレードを貫通させるのは、ブレードとシャフトとの固定強度を確保するためである。即ち、シャフトにブレードを突合せて固着させる場合、通常は溶接にて固着するが、その場合、ブレードの突合せ部の大部分の材料組織が変化することが多い(図2(a))。溶接により形成される材料組織(熱影響部)は、高温での引張り強度が低下していることから、使用時において接合部で破断するおそれがある。また、そもそも、突合せの接合は固定強度に劣る。これに対し、ブレードをシャフトに貫通させる場合、それ自体で十分な固定強度を持たせることができる。ここで、本発明における固着とは、ブレードとシャフトとの接合部(ブレードの付け根箇所)について、隙間を封止する程度の溶接で十分である(図2(b))。かかる最小限の溶接箇所でもブレードとシャフトとの接合部の強度は確保され溶融ガラスの侵食も排除できる。
0015
そして、ブレードの構成材料は、強化白金又は強化白金合金とする。強化白金又は強化白金合金は、白金又は白金合金に金属酸化物が分散する分散強化型の合金である。強化白金又は強化白金合金は、高温強度特性、特に高温クリープ強度に優れることから、高温環境で使用されるガラス製造装置用の構造材料として好適である。ここで、強化白金又は、強化白金合金の好ましい分散粒子は、酸化ジルコニウムや酸化イットリウム等の高融点バルブ金属酸化物、酸化サマリウムなどの希土類金属酸化物等である。分散粒子は、1μm未満、特に数十nm程度の粒径のものが好ましく、その分散量を数質量%以下とするものが好ましい。また、マトリックスは、白金、又は、白金合金として白金−ロジウム合金(例えば、白金−5〜30質量%ロジウム合金)又は白金−金合金(例えば、白金−5質量%金合金)を適用するものが好ましい。
0016
ブレードは、上記の強化白金又は強化白金合金からなる平板を巻回し対向する2辺をシーム溶接してなる円筒と、この円筒の両端に同材料からなる円盤を全周溶接して形成される中空の円柱体である。中空体を用いるのは、材料コスト・重量を考慮するものである。強化白金又は強化白金合金からなる平板の板厚は、1.5mm以上とするのが好ましい。
0017
スターラーブレードのシャフトへの固定は、スターラー回転時のガラスとの接触圧が低くなるようにするため、ブレード製造時のシーム溶接による溶接線がスターラーシャフトの中心軸と交差するようにスターラーシャフトに貫通させて固着する。
0018
ブレードの構成材料である分散強化型材料である強化白金又は強化白金合金は、溶接等の固着の際に溶融・凝固することで強化組織である粒子分散組織が消失する。この熱影響組織は、高温での引張り強度が低くブレードとシャフトとの固着部分での破損の要因となる。そこで、本発明では、ブレードのスターラーシャフトとの固着部分の断面組織において、固着による熱影響を受けない分散組織を示す芯層が存在することを要する。ブレードの接合部分に芯層を残存させることで、強化白金又は強化白金合金としての高温強度(クレープ強度)を維持することができ、粘度の高い溶融ガラス中で毎分数回から十数回の回転数で攪拌動作させても変形・破断なく使用可能となる。
0019
この芯層の厚さは、平均で0.1mm以上であるものが好ましい。それ以下であると、強化白金又は、強化白金合金としての高温強度(クレープ強度)を維持することができないためである。芯層の厚さは厚いほど好ましいが、固着時の強度を確保する必要から1.0mm以下とすることが好ましい。芯層の厚さは0.2〜0.8mmとするのがより好ましい。
0020
以上のように、ブレードをシャフトに貫通させて固着することで両者の接合強度は確保され、これによりブレードの翼長さを長くすることが可能となる。ブレードの翼長さはシャフトの直径の150〜600%とすることが好ましく、比較的自由に設定することができる。ブレードの翼長さは、溶融ガラスの粘度、ブレードの径によって設定可能であるが、溶融ガラスの粘度が200〜400Pa・s程度とする場合、より好ましくはシャフトの直径の200〜500%とするのが好ましい。
0021
尚、シャフトの構成材料としては、ブレードと同様、強化白金又は強化白金合金を使用するのが好ましい。
発明の効果
0022
以上説明したように、本発明に係るガラス製造用のスターラーは、棒状体のブレードをシャフトにらせん状に配置するものであり、高粘度の溶融ガラス攪拌に際して、従来の各種のスターラーよりも高い攪拌作用を有すると共に、ブレードに対する負荷も軽減されている。そして、ブレードの構成材料として強化白金又は強化白金合金を適用しつつ、シャフトとの接続状態を適切にすることで、ブレードの大型化及びシャフトへの強固な固定状が可能となる。
図面の簡単な説明
0023
本発明に係るガラス製造用スターラーの一態様を示す図。
従来品及び本発明における、ブレードとシャフトとの固着状態を説明する図。
シミュレーションで適用した攪拌槽及びスターラーの配置状況を説明する図。
シミュレーション結果である溶融ガラスの攪拌状態を説明する図。
従来の棒状のブレードを適用するガラス製造用スターラーの図。
従来のらせん板状のブレードを適用するガラス製造用スターラーの図。
従来のフランジ状のブレードを適用するガラス製造用スターラーの図。
本実施形態に係るガラス製造用スターラーのブレード接続部断面写真。
実施例
0024
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本実施形態では、図1のガラス製造用スターラーを製造し、その攪拌効果を確認した。強化白金の中空パイプからなるスターラーシャフト(厚さ2.0mm、直径3cm、長さ60cm)についてブレード貫通のための貫通孔を空け、スターラーブレードを貫通させた。ブレードは、厚さ1.5mmの強化白金合金板を巻回し突合せ部をシーム溶接して製造したパイプである(直径1.5cm、長さ15.5cm)。本実施形態では、白金をマトリックスとして酸化ジルコニウムを分散させた強化白金を適用している。そして、本実施形態では、このパイプを4本のシャフトに貫通させてブレードを形成した(即ち、8本のブレードが形成される)。ブレード位置については、ブレードの断面中心を基準にして、ブレード間の角度45°と一定にし、ブレードとブレードとの間の隙間は15mmとしている。
0025
ブレードをシャフトに貫通後、ブレードの付け根部分(貫通孔とブレードとの隙間)をシーム溶接して固定した。溶接部におけるブレードの断面について、熱影響部の深さが1.2mmとなるように入熱量を調整した。この溶接の結果、ブレードを構成する板材は、表面から1.2mmの深さまで強化組織(粒子分散組織)が消失したが、残りの0.3mm厚において強化組織が残存していた。ブレードの貫通、溶接により、図1のスターラー(ブレード長さ6.25cm)が製造された。
0026
この製造したスターラーについて、溶融ガラス攪拌についてのシミュレーションを行い攪拌作用の確認を行った。シミュレーションは、市販のシミュレーションソフト(商品名:ANSYS CFX、アンシス・ジャパン社製)を用いた。このシミュレーションは、図3のように攪拌槽に2基のスターラーを設置し、溶融ガラス流を攪拌したときの一方のスターラーについて、その周囲の攪拌状態、及び、シャフトのトルク値についてシミュレートした。シミュレーション条件は、溶融ガラス流温度:1300℃±50℃、粘度400Pa・sとし、2基のスターラーの間隔を20cmとし、溶融ガラス流がスターラーシャフトに直角に当たるように配置した。そして、各スターラーの回転速度について、溶融ガラス流を巻き込む方向に10rpm(翼の先端速度は毎分約500cm)とした。尚、このシミュレーションは、比較のため、従来のらせん状のブレード(2.0mm厚×6.25cm幅×14cm長さ)を備えるスターラーについても行っている。シミュレーション結果について、攪拌開始から60秒経過後の混合状態を図4に示す。
0027
図4において、白色の部分が攪拌効果の高い箇所になる。本実施形態のスターラーにおいては、攪拌される範囲はブレードの翼長さの2倍以上の範囲にまで及び、上段に行くほど撹拌効果の高い箇所が拡がっており、最も撹拌効果が高いことがわかる。比較例についてみると、ブレードをシングルよりもダブルにすることで、攪拌効果が多少増大しているといえる。但し、ブレードを増加することでトルク値が急増している。本実施形態は、形状としては比較例のダブルスパイラルに類似したものであるが、トルク値はそれよりも低く、シングルとダブルとの中間に近い。この結果から、本実施形態のスターラーは、攪拌効果を最大にしつつも負荷(トルク)が軽減されたものであることがわかる。
0028
また、本実施形態では、ブレードをシャフトに貫通・溶接する際、ブレード付け根部分について、強化白金の粒子分散組織を有する芯層が残るようにしている。上記のシミュレーションにおいては、本実施形態のスターラーについて、最上段のブレードの根元部分(シャフトとの固着部分)にかかる応力を算出し、破断時間の推定を行った。
0029
図8は、本実施形態におけるブレードとシャフトとの接合部分の断面を示す。ブレードは、1.5mm厚のパイプであり0.3mmの芯層を有する。即ち、1.2mmの白金合金(白金—10質量%ロジウム合金)と0.3mmの強化白金との複合材となっている。本実施形態についてのシミュレーションの結果、最上段のブレードの根元部分には3.7MPaの応力の負荷があり、この負荷に対する破断時間は上記の強化白金部分(0.3mm)だけでも40万時間以上となる。これに対して、ブレードの根元部分を完全に溶接した場合、即ち、パイプの板厚全体を熱影響組織(白金合金)にした場合、破断時間は362時間であった。従って、わずかでも芯層を残すことで、ブレードの耐久性を大幅に増大させることができる。