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技術 転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 安孫子貴木村世意
出願日 2013年1月22日 (7年9ヶ月経過) 出願番号 2013-009349
公開日 2014年8月7日 (6年3ヶ月経過) 公開番号 2014-141696
状態 特許登録済
技術分野 銑鉄の精製;鋳鉄の製造;転炉法以外の製鋼 炭素鋼又は鋳鋼の製造
主要キーワード 外乱因子 スタティック制御 波形状態 反応進行状況 ベンチュリ流量計 目標処理 音響センサー 目標品質
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年8月7日)のものです。
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図面 (14)

課題

転炉での吹錬時に、簡便な手段にて早期に炉内状況を評価し、当該吹錬中での操業条件の変更の要否をより精度良く確実に判定しうる方法を提供する。

解決手段

脱珪後所定期間にて、一定時間ごとに下記式(1)で算出された排ガス流量時間変化度aの瞬間値が許容範囲Bfを外れ回数Cfをカウントし、このCfをしきい値Ccritと比較し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する。BfとCcritは、予め、前記と同種の過去に行われた複数の吹錬操業の操業データに基づき、前記脱珪後所定期間にて下記式(1)で算出されたaと、当該吹錬操業における吹錬指標との相関関係より、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要のないものから定められたものである。 a={Q(t+Δt)−Q(t)}/Δt ・・・式(1) ここに、Q:排ガス流量、t:時間、Δt:時間間隔である。

概要

背景

転炉を用いた吹錬にて、目標とする品質(例えばP濃度)の溶鋼を得るためには、吹錬条件を適正に制御する必要がある。しかし、吹錬開始時に鋼種溶銑条件で決定されるスタティック操業条件によっては、目標とする品質(例えばP濃度)が得られないと見込まれる場合や、炉内反応状況が思わしくない(例えばスロッピングの発生の可能性が高い)場合がある。このような場合、吹錬中に操業条件の変更(修正)のダイナミックコントロールを行うことで、品質の安定化や吹錬の安定化を図る必要がある。

このため、吹錬中に炉内状況を評価する方法や、その評価に基づいて吹錬条件を制御する方法として、過去に多くの提案がなされている。例えば、吹錬中の排ガス組成および流量を連続的に測定し、マスバランス計算により、スラグ中酸素ポテンシャル蓄積酸素量等を計算し、それに基づいて吹練条件を設定し直す方法(例えば、特許文献1、2参照)、排ガス流量波形状態を用いてニューラルネットワーク知識処理によりスロッピング発生予測する方法(例えば、特許文献3、4参照)、排ガス流量の測定に音響センサー炉圧センサーを組み合わせてスロッピングの発生を予知する方法(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。

しかしながら、特許文献1、2に記載された方法は、排ガス組成を精度良く測定するために高価なガス分析機器を必要とするうえ、そのメンテナンス負荷も大きく、特許文献3、4に記載された方法は、データ処理に煩雑なプロセスを経る必要があり、特許文献5に記載された方法は、音響センサーや炉圧センサーのメンテナンスの負荷が大きく、いずれの方法にも実用性に問題がある。つまり、過去に提案された方法で、実操業で実用化されたものはほとんど存在しないのが実情であった。

概要

転炉での吹錬時に、簡便な手段にて早期に炉内状況を評価し、当該吹錬中での操業条件の変更の要否をより精度良く確実に判定しうる方法を提供する。脱珪後所定期間にて、一定時間ごとに下記式(1)で算出された排ガス流量時間変化度aの瞬間値が許容範囲Bfを外れ回数Cfをカウントし、このCfをしきい値Ccritと比較し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する。BfとCcritは、予め、前記と同種の過去に行われた複数の吹錬操業の操業データに基づき、前記脱珪後所定期間にて下記式(1)で算出されたaと、当該吹錬操業における吹錬指標との相関関係より、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要のないものから定められたものである。 a={Q(t+Δt)−Q(t)}/Δt ・・・式(1) ここに、Q:排ガス流量、t:時間、Δt:時間間隔である。

目的

本発明の目的は、転炉の吹錬操業において、簡便な手段にて、早期に炉内反応状況を評価し、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があるか否かをより精度良く確実に判定しうる方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

転炉を用いた脱りん吹錬操業または脱りん脱炭吹錬操業において、脱珪後所定期間の吹錬初期における排ガス流量の変動により炉内反進行状況を評価し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する方法であって、前記脱珪後所定期間にて、一定時間ごとに下記式(1)で定義される排ガス流量時間変化度aを算出し、この排ガス流量時間変化度aの瞬間値が許容範囲Bfを外れ回数Cfをカウントし、この回数Cfをしきい値Ccritと比較し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定するものであり、前記脱珪後所定期間は、脱珪期終了時点から全送酸量の1/4以下の所定の送酸量の時点までの期間であり、前記許容範囲Bfおよび前記しきい値Ccritは、あらかじめ、前記と同種の過去に行われた複数の吹錬操業の操業データに基づき、前記脱珪後所定期間にて算出された、下記式(1)で定義される排ガス流量時間変化度aと、当該吹錬操業における吹錬指標との相関関係より、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要のないものから定められたものである、転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法。a={Q(t+Δt)−Q(t)}/Δt・・・式(1)ここに、Q:排ガス流量、t:時間、Δt:時間間隔である。

請求項2

前記のしきい値Ccritとの比較は、前記回数Cfが、当該回数Cfと前記しきい値Ccritとの大小関係を規定する条件式満足する場合には、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要がないと判定する一方、前記回数Cfが前記条件式を満足しない場合には、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があると判定するものである、請求項1に記載の転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法。

請求項3

前記吹錬指標が、吹錬後のりん濃度、吹錬前後での脱りん率および吹錬中におけるスロッピング発生状況からなる群より選ばれた1種または2種以上である、請求項1または2に記載の転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法。

技術分野

0001

本発明は、転炉を用いた吹錬操業において、吹錬初期に炉内の反応進行状況を評価し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する方法に関する。

背景技術

0002

転炉を用いた吹錬にて、目標とする品質(例えばP濃度)の溶鋼を得るためには、吹錬条件を適正に制御する必要がある。しかし、吹錬開始時に鋼種溶銑条件で決定されるスタティックな操業条件によっては、目標とする品質(例えばP濃度)が得られないと見込まれる場合や、炉内反応状況が思わしくない(例えばスロッピングの発生の可能性が高い)場合がある。このような場合、吹錬中に操業条件の変更(修正)のダイナミックコントロールを行うことで、品質の安定化や吹錬の安定化を図る必要がある。

0003

このため、吹錬中に炉内状況を評価する方法や、その評価に基づいて吹錬条件を制御する方法として、過去に多くの提案がなされている。例えば、吹錬中の排ガス組成および流量を連続的に測定し、マスバランス計算により、スラグ中酸素ポテンシャル蓄積酸素量等を計算し、それに基づいて吹練条件を設定し直す方法(例えば、特許文献1、2参照)、排ガス流量波形状態を用いてニューラルネットワーク知識処理によりスロッピング発生予測する方法(例えば、特許文献3、4参照)、排ガス流量の測定に音響センサー炉圧センサーを組み合わせてスロッピングの発生を予知する方法(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。

0004

しかしながら、特許文献1、2に記載された方法は、排ガス組成を精度良く測定するために高価なガス分析機器を必要とするうえ、そのメンテナンス負荷も大きく、特許文献3、4に記載された方法は、データ処理に煩雑なプロセスを経る必要があり、特許文献5に記載された方法は、音響センサーや炉圧センサーのメンテナンスの負荷が大きく、いずれの方法にも実用性に問題がある。つまり、過去に提案された方法で、実操業で実用化されたものはほとんど存在しないのが実情であった。

先行技術

0005

特開2006−206930号公報
特開2001−279317号公報
特開2000−144229号公報
特開平5−222430号公報
特開平6−279827号公報

発明が解決しようとする課題

0006

そこで本発明の目的は、転炉の吹錬操業において、簡便な手段にて、早期に炉内反応状況を評価し、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があるか否かをより精度良く確実に判定しうる方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

請求項1に記載の発明は、
転炉を用いた脱りん吹錬操業または脱りん脱炭吹錬操業において、脱珪後所定期間の吹錬初期における排ガス流量の変動により炉内反応進行状況を評価し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する方法であって、
前記脱珪後所定期間にて、一定時間ごとに下記式(1)で定義される排ガス流量時間変化度aを算出し、この排ガス流量時間変化度aの瞬間値が許容範囲Bfを外れ回数Cfをカウントし、
この回数Cfをしきい値Ccritと比較し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定するものであり、
前記脱珪後所定期間は、脱珪期終了時点から全送酸量の1/4以下の所定の送酸量の時点までの期間であり、
前記許容範囲Bfおよび前記しきい値Ccritは、あらかじめ、前記と同種の過去に行われた複数の吹錬操業の操業データに基づき、前記脱珪後所定期間にて算出された、下記式(1)で定義される排ガス流量時間変化度aと、当該吹錬操業における吹錬指標との相関関係より、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要のないものから定められたものである、
転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法である。
a={Q(t+Δt)−Q(t)}/Δt ・・・式(1)
ここに、Q:排ガス流量、t:時間、Δt:時間間隔である。

0008

請求項2に記載の発明は、
前記のしきい値Ccritとの比較は、前記回数Cfが、当該回数Cfと前記しきい値Ccritとの大小関係を規定する条件式満足する場合には、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要がないと判定する一方、前記回数Cfが前記条件式を満足しない場合には、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があると判定するものである、請求項1に記載の転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法である。

0009

請求項3に記載の発明は、
前記吹錬指標が、
吹錬後のりん濃度、吹錬前後での脱りん率および吹錬中におけるスロッピングの発生状況からなる群より選ばれた1種または2種以上である、
請求項1または2に記載の転炉吹錬中における操業条件の変更要否の判定方法である。

発明の効果

0010

本発明によれば、転炉での吹錬初期における反応進行状況を、既存の排ガス流量計で測定される排ガス流量のデータのみを用いて簡易に把握できるので、簡便な手段にて、早期に炉内反応状況を評価し、当該吹錬中における操業条件の変更の要否をより精度良く確実に判定できるようになった。その結果、吹錬中におけるスロッピングの発生などの重大トラブルを回避しつつ、目標品質の溶鋼がより安定して得られるようになった。

図面の簡単な説明

0011

排ガス流量時間変化度aの時間変動を模式的に示す推移グラフ図である。
非吹錬時におけるaの振れ幅(最大値最小値との差)に及ぼすΔtの影響を示すグラフ図である。
実施例1における、aの経時変化を例示する推移グラフ図である。
許容範囲Bfの候補値Biと累積回数Ciの求め方を模式的に説明するための図である。
実施例1における、BiとCiとの関係を例示する推移グラフ図である。
実施例1における、Ciと処理後りん濃度との相関関係を例示するグラフ図である。
実施例1における、Biと図6に例示する相関係数R2との関係を示すグラフ図である。
実施例2における、aの経時変化を例示する推移グラフ図である。
実施例2における、脱珪期終了時点から吹錬開始後2000Nm3の送酸量の時点までの期間におけるCiと吹錬開始後4000Nm3から6000Nm3の送酸量の時点までの期間におけるCi’との相関関係を例示するグラフ図である。
実施例2における、Biと図9に例示する相関係数R2との関係を示すグラフ図である。
実施例3における、aの経時変化を例示する推移グラフ図である。
実施例3における、Ciと脱りん率との相関関係を例示するグラフ図である。
実施例3における、Biと図11に例示する相関係数R2との関係を示すグラフ図である。

0012

以下、本発明をさらに詳細に説明する。

0013

本発明は、「転炉を用いた吹錬操業において、吹錬初期における排ガス流量の変動により炉内反応進行状況を評価し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する方法」であるが、以下を前提条件とする。

0014

すなわち、本発明が対象とする「転炉」としては、上吹き転炉、上底吹き転炉のいずれかとし、底吹き転炉は対象としない。後述するように、本発明は、上吹き酸素による溶鉄からFeOへの酸化反応(FeO生成反応)と、このFeOの溶銑中Cによる還元反応COガス発生反応)との優劣を評価することを技術的思想とするものであるためである。なお、底吹き攪拌ガスの種類は問わない。

0015

また、本発明が対象とする「吹錬操業」としては、脱りん吹錬操業、脱りん脱炭吹錬操業のいずれかとする。脱りんを伴わない単なる脱炭のみを目的とする脱炭吹錬操業では、CO発生反応を積極的に促進すればよく、そもそも脱りん促進に寄与するFeO生成反応との優劣を考慮する必要がなく、本発明を適用するまでもないためである。

0016

また、本発明において、排ガス流量の変動に着目する「吹錬初期」とは、脱珪期終了時点から全送酸量の1/4以下の所定の送酸量の時点までの期間(以下、「脱珪後所定期間」という。)をいうものとする。吹錬が開始されると、上吹き酸素は、まず溶銑中のSiやFe−Si合金中のSiの酸化優先的に消費されるため、Siの酸化が終了するまでは、上記FeO生成反応およびCO発生反応への寄与は小さい。したがって、排ガス流量の変動に着目するのは脱珪期終了時点以後の期間とする。一方、当該吹錬中に操業条件を変更して目標品質を得たり、以後の吹錬の安定化を図るためには、できるだけ早期に炉内反応進行状況を評価する必要があるので、「吹錬初期」の終了時点は、遅くとも、全送酸量の1/4の送酸量の時点までとする。この「吹錬初期」の終了時点は、吹錬操業の種類によって変化するので、スタティック制御で予測される全送酸量の1/4の送酸量の時点までの範囲で適宜最適な時点(所定の送酸量の時点)を選択すればよい。

0017

なお、脱珪期は、溶銑中SiおよびFe−Si合金中のSiが酸化してSiO2になるまでの必要酸素量で規定するが、脱珪期においても脱炭反応が起こるので、上吹き酸素の80%がSiの酸化に消費されると仮定する。例えば、溶銑中Si濃度:0.3質量%(以下、化学成分につき、単に「%」と表示する。)、溶銑質量:250tの場合、脱珪期は750Nm3(=0.3×250/28×22.4×10/0.8)となる。

0018

そして、本発明は、上記を前提条件として、「前記脱珪後所定期間にて、一定時間ごとに排ガス流量の時間変化度aを算出し、この排ガス流量時間変化度aの瞬間値が許容範囲Bfを外れる回数Cfをカウントし、この回数Cfをしきい値Ccritと比較し、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定する」ものである。

0019

ここで、転炉において吹錬を開始すると、上吹き酸素は、まず溶銑中のSiや装入したFe−Si合金中のSiの酸化(脱珪反応)に優先的に消費される。Siの酸化(脱珪反応)が終了すると、下記式(2)で示される上吹き酸素による溶鉄の酸化反応(FeO生成反応)と、下記式(3)で示される溶鉄中のCによる溶融スラグ中酸化鉄の還元反応(CO発生反応)とが開始され、両反応が同時に進行する。

0020

Fe+(1/2)O2(g)→FeO・・・式(2)
FeO+C→Fe+CO(g)・・・式(3)

0021

脱珪期終了後の吹錬中には、上記2つの反応のうち、いずれの反応が優先的に起きているかにより、系全体で酸素消費がFeO生成とCO発生のどちらの反応で支配されているかが決まる。

0022

上記式(2)で表されるFeO生成反応はガスが減少する方向の反応であり、一方、上記式(3)で表されるCO発生反応はガスが増加する方向の反応である。したがって、排ガス流量の変動に着目することにより、炉内において上記式(2)、式(3)のいずれの反応が優先的に起きているかを推測することができる。

0023

吹錬中に酸素流量、底吹き攪拌ガス流量等の操業条件の変更を行わない場合、上記両反応はいずれバランスして定常状態となる。従来の排ガス流量による吹錬状況の判断は、上記両反応がバランスして定常状態になった後に行われていたため、判断のタイミングが遅くなり、その後に操業条件を変更したとしても、目標とする溶鋼品質が得られなかったり、スロッピングによる吹錬状況の悪化を防止することができない等の問題があった。

0024

そこで、上記両反応のいずれの反応が優先的(優勢)になるかの兆候を極力早期に把握するため、そのパラメータとして下記の再掲式(1)で定義される排ガス流量の時間変化度(以下、「排ガス流量変化速度」ともいう。)aを採用することとした。

0025

a={Q(t+Δt)−Q(t)}/Δt ・・・再掲式(1)
ここに、Q:排ガス流量、t:時間、Δt:時間間隔である。

0026

概念的には、a>0の場合には、排ガス流量が増加する傾向を示し、上記式(3)で表されるCOガス発生が優先的(優勢)になる兆候を示している。一方、a<0の場合には、排ガス流量が減少する傾向を示し、上記式(2)で表されるFeO生成が優先的(優勢)になる兆候を示している。そして、a=0の場合には、排ガス流量が安定化する傾向を示し、上記式(2)で表されるFeO生成と式(3)で表されるCOガス発生とがバランスし、定常状態になる兆候を示している。

0027

上記で概念的と表現した理由は、実際の操業中においては、上記式(2)の反応が優先的であっても、上記式(3)の反応は常に起こっており、aは一定の振幅(aの絶対値)で+と−の値を往復するハンチング挙動を示している。

0028

転炉を用いた吹錬では、吹錬初期は溶銑中のC濃度が高いため、COガス発生の反応が優先的に起こりやすい。このため、一度、COガス発生が優先的な定常状態となるとFeO生成が起こり難くなる傾向にある。

0029

すなわち、FeO生成を促進させるために制御するには、極力COガス発生が優先的になる兆候が小さくなければならず、そのため、aの絶対値(振れ幅)を小さく制御する必要がある(aの絶対値が大きいと、aの負の値が大きくなり、上記式(3)の反応の優先性が大きくなる)。

0030

上より、目的とする反応ごと、特にFeO生成反応の優先性の度合いごとに適正なaの値(範囲)が異なる。

0031

本発明が対象とする脱りん吹錬および脱りん脱炭吹錬の場合においては、脱りんを促進するためにはCaOの溶解を促進させるFeO生成が重要となるため、上記式(2)が優先的である必要がある。すなわち、aの絶対値が小さい(振れ幅が小さい)ことが求められる。

0032

一方、本発明の対象外である脱炭吹錬の場合においては、上記式(3)で表されるCOガス発生を促進させる必要がある。すなわち、aの絶対値は大きくて(振れ幅は大きくて)よいこととなる。

0033

目的とする反応が優先的になる兆候をキャッチするタイミングは、吹錬開始後のできるだけ早い時期であることが望ましい。しかしながら、上述したように、吹錬開始直後の脱珪期においては、上吹き酸素はSiの酸化に消費されるため、FeO生成反応とCOガス発生反応の2つの反応への寄与は小さい。したがって、上記両反応の優先性が重要となるのは、脱珪期以降である。

0034

よって、両反応の優先性を評価するタイミングは、脱珪期以後となるが、早ければ早いほど望ましい。そこで、目的とする上記両反応の優先性が定常状態に移行しつつあるか否かを判断するために、優先性の変化の兆候を示した回数を積算することで判断することとした。

0035

上述したように、aは正(+)と負(−)の値を取るが、本発明ではその絶対値に着目し、具体的には、正(+)の値のみで吹錬状況を判定する。

0036

本発明では、脱珪期終了時点から所定時間後までにおける排ガス流量の時間変化度aが所定の許容範囲Bfを外れた累積回数Cfと、しきい値Ccritとの大小を比較することで吹錬状況(反応進行状況)を評価し、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があるか否かを判定することとした。なお、許容範囲Bfを外れた累積回数Cfに代えて、許容範囲Bfを外れた累積時間等の同様の概念で評価するようにしてもよい。

0037

「許容範囲Bfおよびしきい値Ccritは、あらかじめ、前記と同種の過去に行われた複数の吹錬操業の操業データに基づき、前記脱珪後所定期間にて算出された排ガス流量時間変化度aと、当該吹錬操業における吹錬指標との相関関係より、当該吹錬操業中に操業条件を変更する必要のないものから定める」ことができる。

0038

より詳しくは、例えば、本発明を適用しようとしている現在の吹錬操業(例えば、脱りん吹錬)と同種の吹錬操業(脱りん吹錬)であって、過去に行われた複数チャージの操業データを用い、その各チャージごとに、脱珪期終了時点から所定時間後までにおいて、排ガス流量時間変化度aと吹錬指標との関係を調査する。吹錬指標としては、吹錬後のりん濃度(「処理後りん濃度」ともいう。)、吹錬前後での脱りん率、吸錬中におけるスロッピングの発生状況(規模頻度)などが挙げられるが、これらの指標は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

0039

そして、上記各チャージごとに調査した排ガス流量時間変化度aと吹錬指標との関係を上記複数チャージについて集約して得られた、上記排ガス流量時間変化度aと吹錬指標との相関関係より、許容範囲Bfとしきい値Ccritとを決定する。

0040

そして、本発明を適用しようとしている現在の吹錬操業において、脱珪期終了時点から上記所定時間後までにおいて、排ガス流量時間変化度aを算出し、許容範囲Bfを外れた回数を積算し、その累積回数Cfと上記しきい値Ccritとを比較し、その大小によって、当該吹錬中に操業条件を変更するか否かを判定する。

0041

例えば、累積回数Cfが上記しきい値Ccrit以下である場合には、操業条件を変更することなく、操業を継続する。一方、累積回数Cfが上記しきい値Ccritを超えた場合には、現在の操業条件を継続すると、目的とする溶銑や溶鋼の品質が得られないと判断し、この時点で操業条件(吹錬条件)を変更する必要があると判定する。

0042

上記の操業条件(吹錬条件)の変更とは、例えば、上吹き条件や底吹き条件を変更することで、攪拌力を変更することを意味する。

0043

すなわち、排ガス流量時間変化度aの振れ幅が小さく、許容範囲Bfを外れた累積回数Cfが上記しきい値Ccritを下回る場合には、FeO生成反応(上記式(2))が優先的で滓化過剰状態であるので、溶銑CによるFeOの還元反応(上記式(3))を促進する必要があり、攪拌力を強化する必要がある。攪拌力を強化する手段としては、上吹き酸素量の増加、上吹きランス下降、底吹き流量の増加などが挙げられる。

0044

一方、排ガス流量時間変化度aの振れ幅が大きく、許容範囲Bfを外れた累積回数Cfが上記しきい値Ccritを超える場合には、COガス発生反応(上記式(3))が優先的で滓化不良状態であるので、溶銑CによるFeOの還元反応(上記式(3))を抑制する必要があり、攪拌力を弱める必要がある。攪拌力を弱める手段としては、上吹き酸素量の減少、上吹きランスの上昇、底吹き流量の減少などが挙げられる。

0045

以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することももちろん可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

0046

下記に示す設備仕様および基本の操業条件にて、上底吹き転炉での各種吹錬操業を実施した。

0047

・上底吹き転炉
容量:250ton
MgO−C耐火物
・上吹きランス
ノズル数:6孔
ノズル出口径:55mm
ノズル傾斜角:15°
吹込み酸素流量:0.6〜3.4Nm3/min/ton
・底吹き
ノズル数:4孔
ガス種:N2、Ar、CO
底吹きガス流量:0.02〜0.09Nm3/min/ton
・副原料
CaO源として生石灰を使用した。
SiO2源は、溶銑中Si、Fe−Si合金、珪石である。
なお、Fe−Si合金は昇熱剤として用いた。
珪石はスラグ塩基度調整剤として用いた。
耐火物保護を目的として軽焼ドロマイトを用いた。
温度調整鉄源としてミルスケール鉄鉱石を用いた。

0048

[実施例1]脱りん吹錬操業
目標の処理後りん濃度(吹錬後のりん濃度)を0.03%以下として実施した脱りん吹錬の複数チャージについて、それらの排ガス流量のデータを用いて、各チャージにおける炉内反応状況を評価し、目標の処理後りん濃度を達成するために操業条件の変更が必要であったか否かの判定を試みた。

0049

本実施例における脱りん吹錬の操業条件は以下のとおりである。

0050

・溶銑条件
装入量:260〜280ton
吹錬前の溶銑成分
C=4%
Si=0.2〜0.5%
P=0.10〜0.16%
吹錬後の溶銑成分:
C=3.5〜4%
P=0.02〜0.05%
・上吹き条件
脱珪期(吹錬開始から最大送酸量1500Nm3):εT=1〜5kW/ton
脱りん期(脱珪期以後):εT=0.04〜0.2kW/ton
・底吹き条件
εB=0.6〜1.5kW/ton

0051

ここに、εTは、斐ら(鉄と鋼,68(1982),1946)によって提唱された下記式(4)で定義される、上吹き酸素による攪拌動力密度である。

0052

0053

また、εBは、森ら(鉄と鋼,67(1981),672)によって提唱された下記式(5)で定義される、底吹きガスによる攪拌動力密度である。

0054

0055

各チャージにおいて、吹錬中に所定のサンプリング間隔(本実施例では1s)で測定された排ガス流量Q(t)のデータを用いて、上記式(1)により排ガス流量時間変化度aを算出した。なお、排ガス流量は、ベンチュリ流量計を用いて測定した。算出したaを時間tに対してプロットすると、図1に模式的に示すように、時間変動を示す。

0056

なお、上記式(1)中の時間間隔Δtを決定するに当り、非吹錬時において、Δtを順次変更してaを算出し、上記式(2)および式(3)の反応が関与していない状態でのaの振れ幅に及ぼすΔtの影響を確認したうえでΔtを決定した。

0057

図2は、非吹錬時におけるaの振れ幅(最大値と最小値との差)に及ぼすΔtの影響を示したものである。この図からわかるように、Δtの減少に伴い、aの振れ幅が大きくなる傾向を示す。つまり、排ガス流量のわずかな変動でもaの変化の兆候として捉えるため、感度が高くなると考えられるが、感度が高くなりすぎて操業変更が必要との判定を過剰に行ってしまうことが懸念される。一方、Δtを大きくしすぎるとaの振れ幅が小さくなり、吹錬時におけるaの変化の兆候を捉える感度が低下することが懸念される。また、Δt=5s付近を境にaの振れ幅の変化に及ぼすΔtの影響が小さくなる傾向を示している。以上のことより、本実施例ではΔt=5sとした。

0058

処理後りん濃度が、目標りん濃度(0.030%以下)に到達したチャージと、到達しなかったチャージのそれぞれについて、aの経時変化の一例を図3に示す。

0059

図3に示すように、脱珪期終了時点から吹錬全体の約1/2の400sまでにおいては、aの時間変動はほぼ同じ挙動を示す。吹錬中期以降においては鉄鉱石等の副原料を途中装入するため、この副原料投入などによる外乱因子によりaの挙動に急激な変化が起こる。そのため、外乱因子が少ない吹錬初期に吹錬状況を把握(評価)することが望ましい。本実施例では、吹錬全体の約1/4の200sの時点で吹錬状況を評価することとした。以上により、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点までの期間(脱珪後所定期間)におけるaを用いた。

0060

複数チャージについてaを算出した結果、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点までの期間におけるaの値は、図3(b)に示すように、処理後りん濃度が目標りん濃度に到達しなかったチャージでは、「−20」〜「20」の範囲を外れる値を示すタイミングも認められたが、ほぼ「−20」〜「20」の範囲内を推移した。一方、同期間におけるaの値は、図3(a)に示すように、処理後りん濃度が目標りん濃度に到達したチャージでは、ほぼ「−4」〜「4」の範囲内を推移した。

0061

そこで、本実施例では、aの振れ幅の絶対値として「4」〜「20」の間で、当該吹錬中に操業条件を変更する必要のない許容範囲Bfを定めることが有効と判断した。

0062

以上より、Bfを定めるために、Bfの候補値Bi(i=1,2,・・・,17)として「4」〜「20」の間の「1」刻みの値を採り、図4に模式的に示すように、各Bi(i=1,2,・・・,n)において、そのBiの値を超えた回数を積算して累積回数Ci(i=1,2,・・・,17)を求めた。図5は、図3における脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点までの期間について、Biとして「15」の値を採用したときの例を示すものである。同図に示すように、(a)の処理後りん濃度が目標りん濃度に到達したチャージではCi=2、(b)の処理後りん濃度が目標りん濃度に到達しなかったチャージではCi=15である。そして、このCiと吹錬指標の一つである処理後りん濃度との相関関係を調査した。

0063

図6は、Bi=11,15,20のときにおける、Ciと処理後りん濃度との相関関係を直線回帰により調査し、その相関係数を求めた結果を例示したものである。このようにして求めた相関係数R2について、図7に、候補値Biとの関係を示した。同図に示すように、候補値Biが「13」〜「18」の間で相関係数R2が最大となった。本実施例ではBfとして「15」を採用した。なお、脱珪期終了時点から200sまでと300sまでとのそれぞれについて、候補値Biと相関係数R2との関係を比較した結果、両者に有意な差異がないことを確認した。このため、既述したとおり、本実施例では、より早いタイミングである200sを採用した。

0064

そして、Bfとして「15」を採用したことから、候補値Biが「15」の図6(b)を用いて、目標処理後りん濃度0.030%以下を満足する累積回数Cfのしきい値Ccritを「4」に決定した。

0065

つまり、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sまでの間にaがBfを超えた累積回数Cf>Ccrit=4となった場合、その条件で吹錬を継続すると処理後りん濃度が0.03%超となる確率(可能性)が高いことがわかる。言い換えれば、目標である0.030%以下の処理後りん濃度とするためには、Cf>Ccrit=4となった時点(すなわち、Cf=5に達した時点)で吹錬条件を変更する必要があるとの判定が可能となる。

0066

下記表1に示す脱りん吹錬の6チャージについて、上記のようにして決定したBf=15およびCcrit=4を用いて、吹錬中に操業条件を変更する必要があったか否かの判定を試みた。

0067

同表に示すとおり、チャージNo.A1〜A3は、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点でaがBfを超えた累積回数CfがCcrit=4を超えていないため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要がないと判定されるものである。そして、これらのチャージは、実際の操業においても吹錬中に操業条件を変更していないが、吹錬後(処理後)のP濃度は、目標の0.030%以下を達成している。

0068

これに対し、チャージNo.A4〜A6は、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点でaがBfを超えた累積回数CfがCcrit=4を超えているため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があると判定されるものである。しかしながら、実際の操業においては吹錬中に操業条件を変更していないため、吹錬後(処理後)のP濃度は、目標の0.030%以下を達成できていない。

0069

このことから、脱りん吹錬操業において本発明を適用すれば、吹錬中早期に操業条件の変更の要否を簡易かつ精度良く判定でき、安定して目標の処理後P濃度の溶銑を製造しうることが確認できた。

0070

0071

[実施例2]脱りん脱炭吹錬操業(一般銑低炭素鋼吹錬)
一般銑の脱りん脱炭吹錬の複数チャージについて、それらの排ガスデータを用いて、各チャージにおける炉内反応状況を評価し、下記で定義する「スロッピング大」を回避するために操業条件の変更が必要であったか否かの判定を試みた。

0072

ここに、スロッピングとは、転炉炉口から溶融したスラグが炉外噴出する現象をいう。転炉容器の容量、転炉内に装入する溶銑および副原料の量に影響されるため、操業固有の現象である。本明細書においては、炉外に溶融スラグが多量に噴出して、操業をそのまま継続することが困難な状態を「スロッピング大」、スロッピングの発生は見られるものの、操業を継続しうる状態を「スロッピング小」、スロッピングの発生がない状態を「スロッピングなし」と、それぞれ定義した。

0073

本実施例における一般銑の脱りん脱炭吹錬の操業条件は以下のとおりである。

0074

・溶銑条件
装入量:260〜290ton
吹錬前の溶銑成分:
C=4%
Si=0.2〜0.5%
P=0.09〜0.16%
吹錬後の溶鋼成分
C=0.001〜0.4%
P=0.005〜0.03%
・上吹き条件
εT=2〜5kW/ton
・底吹き条件
εB=0.2〜0.3kW/ton

0075

ここに、εTおよびεBの定義は、ともに上記実施例1と同じである。

0076

また、上記実施例1と同じく、排ガス流量のサンプリング間隔は1s、Δt=5sとした。

0077

上記実施例1の脱りん吹錬では、目標の処理後りん濃度の達成が最優先課題であるのに対し、本実施例の一般銑の脱りん脱炭吹錬ではスロッピング抑制が最優先課題である。

0078

吹錬中に「スロッピング大」に至ったチャージと、「スロッピング小」に留まったチャージのそれぞれについて、aの経時変化の各一例を図8に示す。

0079

ここで、スロッピングは吹錬初期に過剰に生成したFeOが吹錬中期に溶銑中Cによって還元され、その結果発生するCOガスが溶融スラグ中に充満し、あるタイミングでそのCOガスが急激に溶融スラグから抜けて炉内の溶融スラグが炉外に噴出する突沸現象をいう。

0080

つまり、スロッピングは、吹錬初期における過剰なFeO生成が主要因であると考えられる。すなわち、スロッピングの予測は、この吹錬初期における過剰なFeO生成を把握することが重要である。

0081

また、図8(a)において、排ガス流量時間変化度aが急上昇している、吹錬時間5min(=300s)付近で「スロッピング大」に至っており、「スロッピング大」を回避するためには、より早期に操業条件変更の要否の判断が必要である。このため、本実施例では、「スロッピング大」に至った吹錬時間5minの約1/2の時間に相当する送酸量2000Nm3の時点で吹錬状況を評価することとした。

0082

上記実施例1と同様にして、複数チャージについてaを算出した結果、脱珪期終了時点から吹錬開始後2000Nm3の送酸量の時点までの期間(脱珪後所定期間)におけるaの値は、図8(b)に示すように、「スロッピング小」に留まったチャージでは、「−9」〜「9」の範囲を外れる値を示すタイミングも認められたが、ほぼ「−9」〜「9」の範囲内を推移した。一方、同期間におけるaの値は、図8(a)に示すように、「スロッピング大」に至ったチャージでは、ほぼ「−1」〜「1」の範囲内を推移した。

0083

そこで、本実施例では、aの振れ幅の絶対値として「1」〜「9」の間で、当該吹錬中に操業条件を変更する必要のない許容範囲Bfを定めることが有効と判断した。

0084

以上より、Bfを定めるために、Bfの候補値Biとして「1」〜「9」の間の「1」刻みの値を採り、既述の図4に模式的に示すように、各Biにおいて、そのBiの値を上回った回数を積算して累積回数Ciを求めた。

0085

ここで、スロッピングの大きさを評価する指標として、本実施例では、送酸量が4000Nm3から6000Nm3までの期間におけるaの値がBiを超える累積回数Ci’を用いた。つまり、スロッピング発生時には、COガス発生により排ガス流量が増加するためaが大きくなり、累積回数Ci’が大きくなるため、スロッピングの発生を評価する指標として、Ci’を用いた。なお、上記図8(a)に例示したように、「スロッピング大」に至る時期が吹錬中期であり、本実施例では全送酸量が10000Nm3強であるため、スロッピングを評価する期間としての吹錬中期を送酸量が4000Nm3から6000Nm3までとした。

0086

図9は、図8における脱珪期終了時点から吹錬開始後2000Nm3の送酸量の時点までの期間(脱珪後所定期間)におけるCiと、吹錬開始後4000Nm3から6000Nm3の送酸量の時点までの期間におけるCi’との相関関係を調査した結果について、Biとして「4」、「7」、「9」の値をそれぞれ採用したときの例を示すものである。

0087

各BiにおいてCiとCi’との相関関係を直線回帰してその相関係数R2を求め、このようにして求めた相関係数R2について、図10に、候補値Biとの関係を示した。同図に示すように、候補値Biが「6」〜「8」の間で相関係数R2が最大となった。本実施例ではBfとして「7」を採用した。

0088

そして、Bfとして「7」を採用したことから、候補値Biが「7」の図9(b)を用いて、「スロッピング大」に至らない累積回数Cfのしきい値Ccritを「11」に決定した。

0089

つまり、脱珪期終了時点から吹錬開始後2000Nm3の送酸量の時点(脱珪後所定期間)でaがBfを上回った累積回数Cf<Ccrit=11であった場合、その条件で吹錬を継続すると吹錬中期に「スロッピング大」に至る確率(可能性)が高いことがわかる。言い換えれば、吹錬中期における「スロッピング大」を回避するためには、2000Nm3の送酸量の時点でCf<Ccrit=11であった場合に、この時点で吹錬条件を変更する必要があるとの判定が可能となる。

0090

下記表2に示す一般銑の脱りん脱炭吹錬の5チャージについて、上記のようにして決定したBf=7およびCcrit=11を用いて、吹錬中に操業条件を変更する必要があったか否かの判定を試みた。

0091

同表に示すとおり、チャージNo.B1〜B3は、脱珪期終了時点から吹錬開始後2000Nm3の送酸量の時点でaがBfを上回った累積回数CfがCcrit=11を上回っているため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要がないと判定されるものである。そして、これらのチャージは、実際の操業においても吹錬中に操業条件を変更していないが、吹錬中において「スロッピングなし」あるいは「スロッピング小」に留まり、吹錬を完了することができた。

0092

これに対し、チャージNo.B4およびB5は、脱珪期終了時点から吹錬開始後2000Nm3の送酸量の時点でaがBfを上回った累積回数CfがCcrit=11を下回っているため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があると判定されるものである。しかしながら、実際の操業においては吹錬中に操業条件を変更していないため、「スロッピング大」に至り、操業を途中で停止せざるを得なかった。

0093

このことから、一般銑の脱りん脱炭吹錬操業において本発明を適用すれば、吹錬中早期に操業条件の変更の要否を簡易かつ精度良く判定でき、吹錬中期におけるスロッピングによる操業停止を招くことなく、安定して目的の溶鋼を製造しうることが確認できた。

0094

0095

[実施例3]脱りん脱炭吹錬操業(処理銑・高炭素鋼吹錬)
処理銑をP:0.025%以下、C:0.5%以上で吹き止める脱りん脱炭吹錬の複数チャージについて、それらの排ガスデータを用いて、各チャージにおける炉内反応状況を評価し、「スロッピング大」を回避しつつ、目標の脱りん率を確保するために操業条件の変更が必要であったか否かの判定を試みた。

0096

本実施例における処理銑の脱りん脱炭吹錬の操業条件は以下のとおりである。

0097

・溶銑条件
装入量:250〜275ton
吹錬前の溶銑成分:
C=4%
Si=0.01〜0.04%
P=0.01〜0.03%
吹錬後の溶鋼成分:
C=0.5〜0.9%
P=0.004〜0.025%
・上吹き条件
εT=1〜3kW/ton
・底吹き条件
εB=0.15〜0.25kW/ton

0098

ここに、εTおよびεBの定義は、ともに上記実施例1、2と同じである。

0099

また、上記実施例1、2と同じく、排ガス流量のサンプリング間隔は1s、Δt=5sとした。

0100

上記実施例1の脱りん吹錬では、目標の処理後りん濃度の達成が最優先課題、上記実施例2の一般銑の脱りん脱炭吹錬ではスロッピング抑制が最優先課題であるのに対し、本実施例の処理銑の脱りん脱炭吹錬では、目標の脱りん率の達成とスロッピング抑制の両立が最優先課題である。

0101

吹錬後の脱りん率が、目標脱りん率(0.5)を達成したチャージと、達成できなかったチャージのそれぞれについて、aの経時変化の一例を図11に示す。

0102

図11に示すように、脱珪期終了時点から吹錬全体の約1/2の400sまでにおいては、aの時間変動はほぼ同じ挙動を示す。本実施例においても、上記実施例1と同じく、吹錬全体の約1/4の200sの時点で吹錬状況を評価することとし、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点までの期間(脱珪後所定期間)におけるaを用いた。

0103

複数チャージについてaを算出した結果、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点までの期間(脱珪後所定期間)におけるaの値は、図11(b)に示すように、脱りん率が目標脱りん率を達成できなかったチャージでは、ほぼ「−7.5」〜「7.5」の範囲内を推移した。一方、同期間におけるaの値は、図11(a)に示すように、処理後りん濃度が目標りん濃度に到達したチャージでは、ほぼ「−1.0」〜「1.0」の範囲内を推移した。

0104

そこで、本実施例では「1.0」〜「7.5」の間で、当該吹錬中に操業条件を変更する必要のない許容範囲Bfを定めることが有効と判断した。

0105

以上より、Bfを定めるために、Bfの候補値Biとして「1.0」〜「7.5」の間の「0.5」刻みの値を採り、図4に模式的に示すように、各Biにおいて、そのBiの値を超えた回数を積算して累積回数Ciを求めた。そして、このCiと吹錬指標の一つである脱りん率との相関関係を調査した。

0106

図12は、Bi=2.0,3.5,6.0のときにおける、Ciと脱りん率との相関関係を直線回帰により調査し、その相関係数を求めた結果を例示したものである。このようにして求めた相関係数R2について、図12に、候補値Biとの関係を示した。同図に示すように、候補値Biが「3.5」のときに相関係数R2が最大となったので、本実施例ではBfとして「3.5」を採用した。

0107

そして、Bfとして「3.5」を採用したことから、候補値Biが「3.5」の図12(b)を用いて、目標脱りん率0.5以下を満足する累積回数Cfのしきい値Ccrit.maxを「5」に決定した。

0108

つまり、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sまでの間にaがBfを超えた累積回数Cf>Ccrit.max=5となった場合、その条件で吹錬を継続すると脱りん率が0.5を達成できない確率(可能性)が高いことがわかる。言い換えれば、目標である0.5以上の脱りん濃率を達成するためには、Cf>Ccrit.max=5となった時点(すなわち、Cf=6に達した時点)で吹錬条件を変更する必要があるとの判定が可能となる。

0109

一方で、吹錬初期でのFeO生成が過剰であった場合、吹錬中期でのCOガスの急激な発生により「スロッピング大」に至るおそれがある。このため、吹錬初期でのFeO生成を過剰にしないことにも配慮する必要がある。吹錬初期におけるaの振れ幅が小さい場合にFeO生成傾向にあり、Bfを超える累積回数Cfが少なくなる。図12に示すように、Cf=0のときに「スロッピング大」が発生したことから、「スロッピング大」を回避する累積回数Cfのしきい値Ccrit.minを「1」に決定した。

0110

つまり、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点でaがBfを超えた累積回数Cf<Ccrit.min=1であった場合(すなわち、Cf=0であった場合)、その条件で吹錬を継続すると吹錬中期に「スロッピング大」に至る確率(可能性)が高いことがわかる。言い換えれば、吹錬中期における「スロッピング大」を回避するためには、Cf<Ccrit.min=1(すなわち、Cf=0)であった場合には吹錬条件を変更する必要があるとの判定が可能となる。

0111

下記表3に示す処理銑の脱りん脱炭吹錬の5チャージについて、上記のようにして決定したBf=3.5、Ccrit.max=5およびCcrit.min=1を用いて、吹錬中に操業条件を変更する必要があったか否かの判定を試みた。

0112

同表に示すとおり、チャージNo.C1〜C3は、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点でaがBfを超えた累積回数CfがCcrit.min=1とCcrit.max=5との間にあるため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要がないと判定されるものである。そして、これらのチャージは、実際の操業においても吹錬中に操業条件を変更していないが、吹錬中においてスロッピングが発生せず、吹錬後の脱りん率は、目標の0.5以上を達成している。

0113

これに対し、チャージNo.C4は、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点でaがBfを超えた累積回数CfがCcrit.min=1を下回っているため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があると判定されるものである。しかしながら、実際の操業においては吹錬中に操業条件を変更していないため、「スロッピング大」に至ってしまい、当該吹錬の脱りん率は目標の脱りん率を達成したものの、以後の操業を長時間停止せざるを得なかった。

0114

また、チャージNo.C5は、脱珪期終了時点から吹錬開始後200sの時点でaがBfを超えた累積回数CfがCcrit.max=5を上回っているため、当該吹錬中に操業条件を変更する必要があると判定されるものである。しかしながら、実際の操業においては吹錬中に操業条件を変更していないため、目標の脱りん率を達成できなかった。

0115

このことから、処理銑の脱りん脱炭吹錬操業において本発明を適用すれば、吹錬中早期に操業条件の変更の要否を簡易かつ精度良く判定でき、吹錬中期におけるスロッピングによる操業停止を招くことなく、安定して目的の品質の溶鋼を製造しうることが確認できた。

実施例

0116

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