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技術 摺動部材及びこれを用いた軸受装置

出願人 大同メタル工業株式会社
発明者 戸田和昭栗本覚久保田寛隆長崎忠利
出願日 2012年12月28日 (7年11ヶ月経過) 出願番号 2012-287427
公開日 2014年7月10日 (6年5ヶ月経過) 公開番号 2014-129561
状態 特許登録済
技術分野 すべり軸受 鋳ぐるみ鋳造
主要キーワード 成分状態 種類未満 設定面 境界長 動荷重試験 オーバレイ層 疲労クラック 背面温度
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年7月10日)のものです。
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図面 (12)

課題

疲労クラック進展を抑制すること、延いては寿命の長い摺動部材及びこれを用いた軸受装置を提供する。

解決手段

摺動部材10は、裏金層と、Snを主とする合金で形成され裏金層に積層されている軸受合金層11とを備える。軸受合金層11は、SnからなるSn母相21と、異形金属間化合物相22とを含む。異形金属間化合物相22は、Sn母相21に分散している。異形金属間化合物相22は、断面における周囲の長さである周囲長をLcとし、断面における外接円の直径をDとしたとき、Dが80μm以上であって、Lc/Dが350%以上である。

概要

背景

従来、軸受装置に用いられる摺動部材は、環境汚染を招くおそれのあるPbやAsやCdを用いることなく、より一層の長寿命化が求められている。特許文献1では、いわゆるSn基ホワイトメタルであるSn−Sb−CuにCo、Mn、Sc、Ge等の金属元素希土類元素を添加することを提案している。これにより、特許文献1では、Sn基ホワイトメタルのSn母相析出するCu−SnやSn−Sb等の金属間化合物相微細化及び面取りを促している。その結果、特許文献1では、Sn基ホワイトメタルからなる合金層の強度の向上が図られている。

ところで、摺動部材に繰り返し荷重が加わると、疲労によってクラックが生じ、この疲労クラック相手部材摺動する摺動面から裏金層側へSn基のSn母相を進展する。このとき、Sn母相とSn−Sb化合物相との境界部分は強度が低いため、疲労クラックはこの境界部分を経由して進展し易いという問題がある。

概要

疲労クラックの進展を抑制すること、延いては寿命の長い摺動部材及びこれを用いた軸受装置を提供する。摺動部材10は、裏金層と、Snを主とする合金で形成され裏金層に積層されている軸受合金層11とを備える。軸受合金層11は、SnからなるSn母相21と、異形金属間化合物相22とを含む。異形金属間化合物相22は、Sn母相21に分散している。異形金属間化合物相22は、断面における周囲の長さである周囲長をLcとし、断面における外接円の直径をDとしたとき、Dが80μm以上であって、Lc/Dが350%以上である。

目的

本発明の目的は、疲労クラックの進展を抑制すること、延いては寿命の長い摺動部材及びこれを用いた軸受装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

裏金層と、Snを主とする合金で形成され、前記裏金層に積層されている軸受合金層とを備える摺動部材であって、前記軸受合金層は、SnからなるSn母相と、該Sn母相に分散し、断面における周囲の長さである周囲長をLcとし、断面における外接円の直径をDとしたとき、Dが80μm以上であって、Lc/Dが350%以上である異形金属間化合物相を含む摺動部材。

請求項2

前記異形金属間化合物相は、前記外接円の直径Dの平均が100μm以上300μm以下である請求項1記載の摺動部材。

請求項3

前記異形金属間化合物相の総数のうち50%以上は、2種類以上の金属間化合物相の集合体であって、前記異形金属間化合物相を構成するn(n≧2)種類の金属間化合物相をそれぞれ第一金属間化合物相、・・・、第n金属間化合物相とすると、集合体である前記異形金属間化合物相を構成する前記金属間化合物相のうち、第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、前記第k金属間化合物相は、前記第k−1金属間化合物相よりも硬く、第二金属間化合物相は、第一金属間化合物相に接している請求項1又は2記載の摺動部材。

請求項4

2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相を有する摺動部材であって、該異形金属間化合物相を構成するn(n≧2)種類の金属間化合物相をそれぞれ第一金属間化合物相、・・・、第n金属間化合物相とすると、集合体である前記異形金属間化合物相を構成する前記金属間化合物相のうち、第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、前記第k金属間化合物相は、前記第k−1金属間化合物相よりも硬く、前記異形金属間化合物相の総数の75%以上は、周囲の全長の50%以上が前記Sn母相との境界を形成している第二金属間化合物相を有する請求項1から3のいずれか一項記載の摺動部材。

請求項5

前記軸受合金層は、Sb:8.0〜14.0質量%Ag:1.0〜10.0質量%を含み、残部がSnで形成され、前記異形金属間化合物相が占める面積率は、前記軸受合金層の前記断面において5〜20%である請求項1から4のいずれか一項記載の摺動部材。

請求項6

前記異形金属間化合物相は、第一金属間化合物相としてSn−Sb相、及び第二金属間化合物相としてSn−Ag相を含む請求項1から5のいずれか一項記載の摺動部材。

請求項7

前記軸受合金層の前記裏金層とは反対側の端面に、前記軸受合金層を覆うオーバレイ層をさらに備える請求項1から6のいずれか一項記載の摺動部材。

請求項8

請求項1から7のいずれか一項記載の摺動部材を備える軸受装置

技術分野

0001

本発明は、摺動部材及びこれを用いた軸受装置に関する。

背景技術

0002

従来、軸受装置に用いられる摺動部材は、環境汚染を招くおそれのあるPbやAsやCdを用いることなく、より一層の長寿命化が求められている。特許文献1では、いわゆるSn基ホワイトメタルであるSn−Sb−CuにCo、Mn、Sc、Ge等の金属元素希土類元素を添加することを提案している。これにより、特許文献1では、Sn基ホワイトメタルのSn母相析出するCu−SnやSn−Sb等の金属間化合物相微細化及び面取りを促している。その結果、特許文献1では、Sn基ホワイトメタルからなる合金層の強度の向上が図られている。

0003

ところで、摺動部材に繰り返し荷重が加わると、疲労によってクラックが生じ、この疲労クラック相手部材摺動する摺動面から裏金層側へSn基のSn母相を進展する。このとき、Sn母相とSn−Sb化合物相との境界部分は強度が低いため、疲労クラックはこの境界部分を経由して進展し易いという問題がある。

先行技術

0004

特表2011−513592号公報

発明が解決しようとする課題

0005

そこで、本発明の目的は、疲労クラックの進展を抑制すること、延いては寿命の長い摺動部材及びこれを用いた軸受装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

上記の課題を解決するために、本実施形態の摺動部材は、裏金層と、Snを主とする合金で形成され、前記裏金層に積層されている軸受合金層とを備える。前記軸受合金層は、SnからなるSn母相と、該Sn母相に分散し、断面における周囲の長さである周囲長をLcとし、断面における外接円の直径をDとしたとき、Dが80μm以上であって、Lc/Dが350%以上である異形金属間化合物相を含む。

0007

摺動部材の軸受合金層は、Sn母相に異形金属間化合物相を含んでいる。Sn母相は、SnにSb、Bi等が固溶したものであっても良い。この異形金属間化合物相は、裏金層から摺動面へ向かう方向に平行な観察断面において、外接円の直径Dが80μm以上であるとともに、外接円の直径Dに対するその異形金属間化合物相の周囲長Lcの割合、即ちLc/Dが350%以上である。つまり、異形金属間化合物相は、その大きさに対して十分に長い周囲長Lcを有している。これは、異形金属間化合物相は、Sn母相との境界部分が従来のものよりも複雑な凹凸形状を呈していることを意味している。このように、異形金属間化合物相とは、円形状、方形状あるいは針形状等の形状である一般的な金属間化合物相と比較して、所定の大きさを持ちながらいびつな形状を呈する金属間化合物相を意味する。

0008

上述のように、軸受合金層の表面、即ち相手部材との摺動面において生じた疲労クラックは、裏金層側に軸受合金層内を進展する。特に、Sn母相に金属間化合物相が析出しているとき、Sn母相と金属間化合物相との境界部分は強度が低いため、疲労クラックはこの境界部分を経由して進展し易い。これに対し、本実施形態のように金属間化合物相を所定の大きさにした上でいびつな形状とすることにより、Sn母相と異形金属間化合物相との境界部分の形状が、複雑化するとともに十分な全長にされるので、疲労クラックの進展を抑制することができた。即ち、本実施形態では、軸受合金層において、疲労クラックが進展する経路は、一般的な金属間化合物相の場合と比較して、複雑化するとともに長くなるからである。詳述すると、本実施形態では、Sn母相と異形金属間化合物相との境界部分における疲労クラックの貫通が容易ではないからである。そのため、疲労クラックが軸受合金層の摺動面から裏金層に至るまでに要する期間が延長されることになる。したがって、疲労クラックの進展を抑制することができ、寿命の長い摺動部材を提供することができる。異形金属間化合物相ではない金属間化合物相が存在していても構わない。

0009

また、本実施形態では、前記異形金属間化合物相は、前記外接円の直径Dの平均が100μm以上300μm以下である。
上記断面において、外接円の直径Dの平均が100μm以上になると、異形金属間化合物相によって複雑化された疲労クラックの経路も軸受合金層の厚さに対して全体としてより好ましい長さとなる。一方、異形金属間化合物相は、Sn母相よりも硬い。そのため、相手部材への攻撃性を考慮すると、外接円の直径Dの平均が300μm以下であることが好ましい。したがって、異形金属間化合物相の大きさを外接円の直径Dを用いて規定することにより、疲労クラックの進展を抑制することができ、寿命を延長させることができる。

0010

さらに、本実施形態では、前記異形金属間化合物相の総数のうち50%以上は、2種類以上の金属間化合物相の集合体であって、前記異形金属間化合物相を構成するn(n≧2)種類の金属間化合物相をそれぞれ第一金属間化合物相、・・・、第n金属間化合物相とすると、集合体である前記異形金属間化合物相を構成する前記金属間化合物相のうち、第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、前記第k金属間化合物相は、前記第k−1金属間化合物相よりも硬く、第二金属間化合物相は、第一金属間化合物相に接している。

0011

このように、本実施形態における異形金属間化合物相は、総数の50%以上が、n種類の金属間化合物相の集合体である。この金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相は、2種類以上の金属間化合物相から構成され、一体的な形態となっている。上記断面での測定において、異形金属間化合物相を構成する第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、かつ硬く設定されている。そして、n種類の金属間化合物相で構成される異形金属間化合物相の第一金属間化合物相と第二金属間化合物相とは互いに接している。金属間化合物相は、組み合わされる金属元素によって結晶粒の形状及び硬さが異なる。そのため、異形金属間化合物相を複数の金属間化合物相の集合体で構成することによって、異形金属間化合物相の形状がより複雑化し、Sn母相と異形金属間化合物相の境界部分の全長はさらに延長される。したがって、そのような異形金属間化合物相をその総数の50%以上に制御することにより、疲労クラックの進展を容易に抑制することができ、寿命をより延長させることができる。また、硬さや大きさの異なるn種類の金属間化合物相を組み合わせて異形金属間化合物相を構成することにより、異形金属間化合物相の形状やSn母相との境界部分の全長の制御はし易くなる。したがって、軸受合金層に要求される性能に対し容易に応えることができる。残りの異形金属間化合物相が、1つの金属間化合物相からなるものであっても構わない。

0012

本実施形態では、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相を有する摺動部材であって、該異形金属間化合物相を構成するn(n≧2)種類の金属間化合物相をそれぞれ第一金属間化合物相、・・・、第n金属間化合物相とすると、集合体である前記異形金属間化合物相を構成する前記金属間化合物相のうち、第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、前記第k金属間化合物相は、前記第k−1金属間化合物相よりも硬く、前記異形金属間化合物相の総数の75%以上は、周囲の全長の50%以上が前記Sn母相との境界を形成している第二金属間化合物相を有する。

0013

このように、本実施形態における摺動部材は、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相を有する。その集合体である異形金属間化合物相は、2種類以上の金属間化合物相から構成され、一体的な形態となっている。そのような異形金属間化合物相を構成する第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、かつ硬く設定されている。この異形金属間化合物相の総数の75%以上は、次のような第二金属間化合物相を有している。この第二金属間化合物相は、上記断面での測定において、周囲の全長の50%以上がSn母相との境界を形成し、残る部分が異形金属間化合物相を構成する他の金属間化合物相と境界を形成している。そのため、この第二金属間化合物相は、一部が異形金属間化合物相を構成する他の金属間化合物相に食い込んだ状態となっているとともに、半分以上の長さである残部がSn母相側へ突出した状態となっている。その結果、この第二金属間化合物相を有する異形金属間化合物相は、周囲長が確実に長い複雑な外形を呈する。したがって、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相を持たせ、それらの75%以上が上記の第二金属間化合物相を1つ以上有するように制御することにより、疲労クラックの進展をより確実に抑制することができ、寿命をより延長させることができる。異形金属間化合物相は、第二金属間化合物相を3つ以上有することが好ましく、6つ以上有することが更に好ましい。

0014

本実施形態では、前記軸受合金層は、Sb:8.0〜14.0質量%、Ag:1.0〜10.0質量%を含み、不可避不純物が含まれる場合もあるが残部はSnで形成され、前記異形金属間化合物相が占める面積率は、前記軸受合金層の前記断面において5〜20%である。
このように、軸受合金層を構成する成分を規定することにより、異形金属間化合物相の形成が促進される。Sbを、9.5〜12.0質量%添加するのがより好ましい。Agを、4.0〜7.5質量%添加するのがより好ましい。Cuを2.0〜10.0質量%添加するのがより好ましい。Niを0.5〜3.0質量%添加するのがより好ましい。また、軸受合金層における異形金属間化合物相の合計の面積率は、軸受合金層の疲労寿命に寄与する。異形金属間化合物相が占める面積率を5%以上にすると、異形金属間化合物相による疲労クラックの進展阻害効果は大きくなる。一方、異形金属間化合物相の面積率を20%以下にすることにより、軸受合金層の靱性面において有利になって、長寿命化を図ることができる。したがって、上記組成にした上で異形金属間化合物相の面積率を軸受合金層の5〜20%に設定している。

0015

本実施形態では、前記異形金属間化合物相は、第一金属間化合物相としてSn−Sb相、及び第二金属間化合物相としてSn−Ag相を含む。
これにより、疲労クラックの進展の阻害に有効な形状の異形金属間化合物相の形成を促すことができる。
本実施形態では、前記軸受合金層の前記裏金層とは反対側の端面に、前記軸受合金層を覆うオーバレイ層をさらに備えていても良い。
また、本実施形態の摺動部材は、相手部材として軸を備える軸受装置に好適に適用することができる。

図面の簡単な説明

0016

一実施形態による摺動部材の観察断面を示す模式図
図1のII部分を拡大した模式図
一実施形態による摺動部材において、1種類の金属間化合物相の集合体で構成された異形金属間化合物相の観察断面を示す模式図
一実施形態による摺動部材において、2種類の金属間化合物相の集合体で構成された異形金属間化合物相の観察断面を示す模式図
一実施形態による摺動部材において、1種類の金属間化合物相の集合体で構成された異形金属間化合物相による疲労クラックの進展経路を示す模式図
従来の摺動部材において、疲労クラックの進展経路を示す模式図
一実施形態による摺動部材において、2種類の金属間化合物相の集合体で構成された異形金属間化合物相による疲労クラックの進展経路を示す模式図
疲労試験試験条件を示す概略図
試験片試験時間と背面温度との関係を示す概略図
実施形態による摺動部材の試験結果を示す概略図
実施形態による摺動部材の試験結果を示す概略図

実施例

0017

以下、摺動部材の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、摺動部材10を示している。摺動部材10は、軸受合金層11及び裏金層12を備えている。軸受合金層11と裏金層12との間には、中間層13を設けても良い。また、軸受合金層11の摺動面14、即ち裏金層12と反対側の端面には、軸受合金層11を覆うオーバレイ層(図示せず)を設けても良い。裏金層12は、例えば鋼等により平板状、半円筒状又は円筒状に成形されている。摺動部材10は、例えば内燃機関軸受として用いられる。

0018

軸受合金層11は、Snを主成分とするSn合金で形成されている。軸受合金層11は、Sb、Cu、Ag、Ni等の添加元素を1種又は2種類以上含有し、残部がSnである。軸受合金層11は、不可避的な不純物を含有していても良い。軸受合金層11には、Zr、Ti、Cr等を添加することができる。これらの添加元素は、核生成を促す。即ち、これらの微量の添加元素を加えることにより、金属間化合物が互いに近い位置で核を生成して成長し、集合体を形成し易くなる。また、例えばAg、Zn、Biなどの添加元素は、Snと共晶組織を形成する。即ち、これらの添加元素を加えることにより、共晶組織が形成され、その形成によって近くの金属間化合物が成長し易い方向のみに成長することを抑えることができる。そのような場合、金属間化合物相は、いびつな形状になり易い。この軸受合金層11は、上述のように裏金層12と反対側の端面に摺動面14を形成している。軸受合金層11を備える摺動部材10は、この摺動面14において図示しない相手部材、即ち例えば鋼や鋳鉄からなる軸部材等と摺動する。

0019

この軸受合金層11は、図2に示すようにSn母相21と、異形金属間化合物相22とを含んでいる。Sn母相21は、軸受合金層11を構成するSnのマトリクスである。異形金属間化合物相22は、このSn母相21に分散している。異形金属間化合物相22は、軸受合金層11における任意の断面である観察断面において観察される。この観察断面は、特許請求の範囲の断面であり、図1及び図2に示すように裏金層12から軸受合金層11に向かう方向に平行な面である。本明細書において、異形金属間化合物相22とは、金属間化合物相のうち、観察断面における周囲の長さである周囲長をLcとし、この観察断面における外接円の直径をDとしたとき、Dが80μm以上であって、Lc/Dが350%以上のものをいう。このように、異形金属間化合物相22は、その大きさに対して十分に長い周囲長Lcを有しており、この周囲長Lcは、外接円の円周よりも十分に長い。そのため、異形金属間化合物相22は、Sn母相21との境界が従来のものよりも複雑な凹凸形状を呈している。即ち、異形金属間化合物相22とは、一般的な金属間化合物の結晶粒からなる相の形状である円形状、方形状あるいは針形状等と比較して、いびつな形状を呈している。また、異形金属間化合物相22は、外接円の直径Dが80μm以上となるように、大きさを設定している。さらに、異形金属間化合物相22は、軸受合金層11の上記観察断面における面積率で5〜20%含まれることが望ましい。

0020

軸受合金層11は、1種類以上の金属間化合物相を含んでいる。そして、異形金属間化合物相22は、軸受合金層11に金属間化合物相が含まれているとき、これら金属間化合物相の集合体として構成されているのが製造上好ましい。例えば、1種類の金属間化合物相で異形金属間化合物相22を構成する場合、図3に示すように異形金属間化合物相22は同一種類の金属間化合物相31から構成され、一体的な集合体となっている。図3において、異形金属間化合物相22は、仮想的な外接円35が設定される。この外接円35の直径は、上述の直径Dである。また、2種類の金属間化合物相で異形金属間化合物相を構成する場合、図4に示すように異形金属間化合物相22は2種類の金属間化合物相32、33から構成され、一体的な集合体となっている。図4において、異形金属間化合物相22は、仮想的な外接円35が設定される。この外接円35の直径は、上述の直径Dである。

0021

3種類以上の金属間化合物相から構成される場合も、異形金属間化合物相22は1種類又は2種類と同様に金属間化合物相の一体的な集合体となっている。軸受合金層11には、添加元素の種類によって、異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相が異なる。また、軸受合金層11に2種類の金属間化合物相から構成される異形金属間化合物相22が含まれる場合、軸受合金層11には2種類の金属間化合物相から構成される異形金属間化合物相22と1種類の金属間化合物相から構成される異形金属間化合物相22とが混在しても良い。同様に、軸受合金層11に3種類以上の金属間化合物相から構成される異形金属間化合物相22が含まれる場合、軸受合金層11には3種類以上の金属間化合物相で構成される異形金属間化合物相と、3種類未満の金属間化合物相で構成される異形金属間化合物相とが混在しても良い。

0022

2種類以上の金属間化合物相から異形金属間化合物相22が構成されるとき、観察断面における断面積が大きな金属間化合物相は観察断面における断面積が小さな金属間化合物相よりも軟らかく設定されている。具体的には、異形金属間化合物相22が2種類以上の金属間化合物相の集合体である場合、この異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相は、第一金属間化合物相、・・・、第n金属間化合物相(n≧2)となる。このとき、第一金属間化合物相は、集合体である異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相のうち、観察断面における面積が最も大きく、かつ最も軟らかいものである。そして、この第一金属間化合物相の次に大きく、かつ軟らかいものは、第二金属間化合物相となる。即ち、n種類の金属間化合物相のうち、第k金属間化合物相(2≦k≦n)は、第k−1金属間化合物相よりも小さく、第k−1金属間化合物相よりも硬い。そして、その場合、第二金属間化合物相は、第一金属間化合物相に接していることが望ましい。

0023

また、2種類以上の金属間化合物相から構成される異形金属間化合物相22を有する摺動部材において、異形金属間化合物相22の総数のうち50%以上を2種類以上の金属間化合物相の集合体とすることができた。即ち、例えば異形金属間化合物相22の総数のうち55%が2種類以上の金属間化合物相の集合体である場合は、残部の45%は1種類の金属間化合物相の集合体や1つの金属間化合物相からなる。異形金属間化合物相の総数のうち60%以上が2種類以上の金属間化合物相の集合体であることが、より好ましい。

0024

また、図4に示すように、異形金属間化合物相22が2種類の第一金属間化合物相41及び第二金属間化合物相42で構成されているものに着目したとき、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の総数のうち75%以上で、第二金属間化合物相42がその周囲の全長の50%以上でSn母相と接触している。この場合、上記第二金属間化合物相42は、観察断面において周囲の全長の50%以上がSn母相21との境界を形成し、残部が第一金属間化合物相41との境界を形成している。即ち、観察断面において、上記第二金属間化合物相42の周囲の全長をCtとし、第二金属間化合物相42のSn母相との境界部分の全長をBtとしたとき、Bt/Ctは50%以上である。これにより、第二金属間化合物相42は、その一部が第一金属間化合物相41に接触しつつ食い込んでいるとともに、50%以上の長さである残部がSn母相と接している。これにより、第一金属間化合物相41及び第二金属間化合物相42から構成される異形金属間化合物相22は、周囲長が長い複雑な外形を呈する。

0025

同様に、3種類以上の金属間化合物相で構成されている異形金属間化合物相22を有する摺動部材に着目したとき、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の総数の75%以上は、周囲の全長の50%以上がSn母相との境界を形成している第二金属間化合物相を有している。このように、2種類又は3種類以上の金属間化合物相で構成される異形金属間化合物相22を有するとき、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の総数の75%以上が、周囲の全長の50%以上がSn母相との境界を形成している第二金属間化合物相を有する。即ち、観察断面において、軸受合金層11に含まれている、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の総数をMtとし、周囲の全長の50%以上がSn母相との境界を形成している第二金属間化合物相を含む異形金属間化合物相22の数をmとしたとき、m/Mt≧75%である。

0026

次に、本実施形態の摺動部材10が疲労クラックの進展を阻害する作用について説明する。
まずは、図5に示す1種類の金属間化合物相の集合体で形成された異形金属間化合物相が疲労クラックの進展を阻害する作用について説明する。なお、図4から図6に示す例の場合、図の上方が摺動面14であり、図の下方が裏金層12である。

0027

図5に示す上側を摺動面14とすると、太実線で示す疲労クラック50は、疲労によって摺動面14から裏金層12側へ、軸受合金層11を板厚方向へ進展する。摺動面14からSn母相21中を進展してきた疲労クラック50は、異形金属間化合物相22に達すると、Sn母相21と異形金属間化合物相22との境界に沿って進展すると考えられる。図6に示すような従来の摺動部材の場合、金属間化合物相51は単純な断面形状を有しているため、Sn母相21を進展してきた疲労クラック50は、Sn母相21と金属間化合物相51との境界に沿って進展し、容易に裏金層12側へ到達する。これに対し、図5に示すような本実施形態の場合、摺動面14からSn母相21中を進展してきた疲労クラック50は、形状が複雑で十分な全長を持つ異形金属間化合物相22とSn母相21との境界を辿ることになる。そのため、疲労クラック50が進展する経路は、複雑化されているだけでなく、全長も長くなっている。その結果、Sn母相21中を進展してきた疲労クラック50は、軸受合金層11に含まれる異形金属間化合物相22によって進展が阻害されることになる。これにより、疲労クラック50が軸受合金層11の摺動面14から裏金層12に至るまでに要する期間が延長されると考えられる。

0028

次に、図7に示す2種類の金属間化合物相の集合体で形成された異形金属間化合物相22を例に、異形金属間化合物相22が疲労クラックの進展を阻害する作用について説明する。
2種類の金属間化合物相32、33の集合体で異形金属間化合物相22を形成することにより、異形金属間化合物相22とSn母相21との境界部分の形状は1種類の場合よりもさらに複雑化させ易い。形状や成長し易い方向が異なる複数種の金属間化合物を選択することができ、それらを組合せることができるからである。そのため、摺動面14からSn母相21中を進展してきた疲労クラック50は、異形金属間化合物相22に達すると、より複雑な経路を辿ることとなり、裏金層12側への進展が阻害される。これにより、疲労クラック50が軸受合金層11の摺動面14から裏金層12に至るまでに要する期間がさらに延長されると考えられる。

0029

次に、上記構成の摺動部材10の製造手順について説明する。
軸受合金層11は、裏金層12の表面に形成される。このとき、裏金層12と軸受合金層11との間には、中間層13を形成しても良い。軸受合金層11は、遠心鋳造法を用いて、裏金層12の表面に鋳造によって形成した。軸受合金層11は、裏金層12を背面から水冷することによって、鋳造時の冷却温度を制御した。具体的には、予熱された裏金層12を図示しない鋳造機に設置し、鋳造機とともに裏金層12を回転させながら軸受合金層11を鋳造した。このとき、裏金層12の予熱温度溶融した軸受合金層11の温度、鋳造時の温度、鋳造時の軸受合金層11の供給量及び冷却水の水量等を調整することにより、鋳造時における軸受合金層11の冷却速度を制御した。

0030

例えば軸受合金層11に1種類の金属間化合物相31を析出させる場合、Zr、Ti、Crのように金属間化合物相の核の生成を促す添加元素を微量添加することが望ましい。このように添加元素を添加することにより、金属間化合物相は互いに近い位置で核が生成して成長するため、金属間化合物相31の集合体からなる異形金属間化合物相22が形成され易い成分状態となる。添加元素を添加した状態で金属間化合物相31が晶出する温度帯域まで急冷することにより、Sn母相21には多くの核が生成する。そして、核が生成した温度帯域で徐々に冷却することにより、金属間化合物相31の集合体で構成される異形金属間化合物相21の生成が促される。また、例えば軸受合金層11に2種類の金属間化合物相として第一金属間化合物相41及び第二金属間化合物相42を析出させる場合、第一金属間化合物相41及び第二金属間化合物相42が同時に晶出及び成長する温度帯域で、急冷することが望ましい。これにより、第一金属間化合物相41が所望の大きさまで成長しながら、第二金属間化合物相42はこの第一金属間化合物相41に接触した状態で析出する。鋳造した軸受合金層11は、任意の観察断面のエッチング組織を所望の倍率光学顕微鏡で観察し、異形金属間化合物相22の外接円35の直径D、周囲長Lc等を測定した。

0031

次に、実施例1〜実施例21、及び比較例1〜比較例2を用いて摺動部材の作用及び効果について説明する。
軸受寿命評価試験
実施例1〜実施例21、及び比較例1〜比較例2に対して、図8に示す試験条件で焼付に至る寿命について検証した。この軸受寿命評価試験では、後述する疲労試験と耐久試験とを行った。実施例1〜実施例21、及び比較例1〜比較例2による摺動部材10の試験片は、いずれも軸受合金層11及び裏金層12を有しており、半円筒形状に成形した。これらの試験片は、内径を80mm、軸方向の長さを30mm、全体の肉厚を3mm、軸受合金層の厚さを1.0mmにそれぞれ設定した。

0032

疲労試験と耐久試験とでは、相手部材である軸部材は、材質がS55Cであり、回転数を3000rpmに設定した。潤滑油給油圧力は0.5MPaに設定し、潤滑油の温度は80℃に設定した。耐久試験に先立ち、疲労クラックが発生する面圧を探索する疲労試験を行なった。この面圧を探索する疲労試験は、20時間の動荷重試験とした。探索した疲労クラックが発生する面圧を、耐久試験における設定面圧とした。この設定面圧と材料硬さの比は、ほとんど変化しない。そのため、寿命に対する設定面圧の影響は実質無いものであるとすることができた。設定面圧を探索した後、各試験片に対して設定面圧で耐久試験を実施した。

0033

耐久試験では、試験片の背面温度、即ち裏金層12の温度は、模式的に表した図9に示すように、疲労クラックの発生によって小さなピークが生じた。横軸tは時間を示し、縦軸Tは背面温度を示す。図9において、参照符号52は、疲労クラックの発生によるピークを示す。また、図9において、参照符号54は、疲労クラックが発生してから焼付に至るまでの時間を示す。疲労クラックが生じた後、試験片の背面温度は徐々に上昇する。本実施形態における耐久試験では、試験片の背面温度が200℃を超えると焼付と判定した。このように、本試験では、疲労クラックの発生から焼付が生じるまでの試験時間を軸受寿命として評価した。

0034

(異形金属間化合物相の影響)
まず、軸受合金層11における異形金属間化合物相22の有無の影響を検証した。図10に示すように、実施例1及び実施例2は、いずれも外接円の直径Dが80μm以上の異形金属間化合物相22を含み、その異形金属間化合物相22の外接円35の直径Dと周囲長Lcの比が350%以上となっている。これに対し、比較例1は、外接円の直径Dが80μm以上の金属間化合物相を含んでいるが、外接円35の直径Dと周囲長Lcとの比が350%未満である。そのため、比較例1は、本実施形態で定義する異形金属間化合物相22を含んでいない。また、比較例2は、80μm以上の金属間化合物相を含んでいない。

0035

これら実施例1及び実施例2と、比較例1及び比較例2とを比較すると、疲労クラックが発生する面圧に大差はないものの、疲労クラックの発生から焼付に至るまでの時間つまり軸受寿命に大きな差が生じていることがわかる。これは、軸受合金層11に異形金属間化合物相22が分散することにより、上述のように疲労クラックの進展が異形金属間化合物相22において阻害されるからと考えられる。このことから、裏金層と、その裏金層に積層されている、Snを主とする合金で形成されている軸受合金層と、を備える摺動部材において、異形金属間化合物相22の外接円の直径Dが80μm以上であってLc/Dが350%以上であることが、寿命の長いものとするのに必要であることが分った。

0036

実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1は軸受合金層11の組成としてSbを含むのに対し、実施例2は軸受合金層11の組成としてCuを含む点で相違する。即ち、実施例1では異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物がSn−Sbであるのに対し、実施例2では異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物がSn−Cuである。

0037

(異形金属間化合物相の詳細な影響)
次に、図11に示すように異形金属間化合物相22の詳細な影響について検証した。具体的には、異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相の種類、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の個数割合、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22のうち第二金属間化合物相42の全長に対するSn母相との境界長の割合が50%以上となる異形金属間化合物相22の個数割合、軸受合金層において異形金属間化合物相22が占める面積率の影響を検証した。

0038

実施例1〜実施例7は、いずれも異形金属間化合物相22としてSn−Sb、又はSn−Cuのいずれか一種を含んでいる。これに対し、実施例8〜実施例10及び実施例14は、異形金属間化合物相22を構成する第一金属間化合物相41としてSn−Sb、第二金属間化合物相42としてSn−Agを含んでいる。同様に、実施例11は、第一金属間化合物相41としてSn−Cu、第二金属間化合物相42としてSn−Niを含んでいる。実施例12は、第一金属間化合物相41としてSn−Sb、第二金属間化合物相42としてSn−Cuを含んでいる。実施例13は、第一金属間化合物相41としてSn−Sb、第二金属間化合物相42としてSn−Niを含んでいる。

0039

また、実施例15〜実施例17はいずれも異形金属間化合物相22として後述の3種類の金属間化合物相を含み、実施例18〜実施例21は異形金属間化合物相22として後述の4種類の金属間化合物相を含んでいる。具体的には、実施例15は、第一金属間化合物相としてSn−Sb、第二金属間化合物相としてSn−Ag、第三金属間化合物相としてSn−Cuを含んでいる。実施例16は、第一金属間化合物相としてSn−Sb、第二金属間化合物相としてSn−Cu、第三金属間化合物相としてSn−Niを含んでいる。実施例17は、第一金属間化合物相としてSn−Sb、第二金属間化合物相としてSn−Ag、第三金属間化合物相としてSn−Niを含んでいる。実施例18〜実施例21は、いずれも第一金属間化合物相としてSn−Sb、第二金属間化合物相としてSn−Ag、第三金属間化合物相としてSn−Cu、第四金属間化合物相としてSn−Niを含んでいる。なお、Sn−Sb、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Niの代表的な硬さは、順に、およそ100HV、200HV、300HV、500HVである。

0040

以上のように、実施例1〜実施例21によると、異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相の種類が増加すると、寿命が延長する傾向にあることが分かる。これは、異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相の種類が増加すると、図5図7との対比からも分かるように、その種類が少ないときよりも異形金属間化合物相22の形状が複雑化するためと考えられる。異形金属間化合物相22の形状が複雑化すると、疲労クラックが進展する経路が複雑化し、その経路が延長される。そのため、異形金属間化合物相22による疲労クラックの進展が効果的に阻害されると考えられる。また、異形金属間化合物相22を構成する金属間化合物相の種類が増加すると、軸受合金層11の硬さも大きくなる傾向にあった。

0041

また、異形金属間化合物相22の外接円35の直径Dは、図11の実施例1〜実施例21に示す通りである。詳述すると、実施例1は、観察視野における異形金属間化合物相22のLc/Dが3.7〜4.2(百分率で370〜420%)で平均値4.0であって、Dの平均が95(μm)であった。また、実施例21は、Lc/Dが3.6〜4.1(百分率で360〜410%)で平均値3.9であって、Dの平均が240(μm)であり、Mt/Mが0.76(百分率で76%)、m/Mtが0.80(百分率で80%)、Sが20(%)であった。なお、M、Mt、m、Sについては、後述する。

0042

図11から外接円35の直径Dが大きくなるほど、寿命は延長する傾向にあることが分かる。このことから、異形金属間化合物相22の外接円の直径Dは、80μm以上であることが寿命の延長に必要であると考えられる。これは、外接円35の直径Dが80μm未満になると、異形金属間化合物相22によって疲労クラックの経路を複雑化しても、その経路が全体として短く、疲労クラックの進展が阻害され難いからと考えられる。特に、実施例3〜実施例21によると、寿命を向上させるためには、Lc/Dが350%以上であると共に外接円35の直径Dの平均は、100μm〜300μmにあることが好ましいことが分る。したがって、異形金属間化合物相22の外接円35の直径Dは、100μm以上300μm以下に設定することが好ましい。

0043

軸受合金層11に2種類以上の金属間化合物相が含まれているとき、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相を含むものとすることができる。そこで、実施例8〜実施例21により、2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22を有するとき、異形金属間化合物相22の総数Mに対する2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の個数Mtの割合が寿命に与える影響について検証した。これによると、観察断面において、軸受合金層11に含まれる異形金属間化合物相22の総数に対して2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の個数割合が大きくなるほど、寿命は向上することが分かる。例えば、実施例8と実施例9とを比較すると、外接円35の直径D等に大きな差は無いのに対し、軸受寿命には差が生じている。このことから、異形金属間化合物相22の総数に対する2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相22の個数割合(Mt/M)は、0.5以上(百分率で50%以上)が好ましいことが分かる。これは、同じように2種類以上の金属間化合物相の集合体で異形金属間化合物相22を有していても、その個数割合が高い方が、疲労クラックが進展する経路が長くなる確率が高くなるからと考えられる。

0044

実施例8〜実施例21に基づいて、2種類以上の金属間化合物の集合体である異形金属間化合物相22の総数に対する後述する第二金属間化合物相42を含む異形金属間化合物相22の個数割合について検証した。即ち、観察断面において、軸受合金層11に含まれる、2種類以上の金属間化合物の集合体である異形金属間化合物相22の総数をMtとし、後述する第二金属間化合物42を含む異形金属間化合物相22の数をmとしたとき、m/Mtが寿命に与える影響を検証した。異形金属間化合物相22が図4に示すように2種類の金属間化合物相で構成される場合、異形金属間化合物相22は、第二金属間化合物相42を有する。この第二金属間化合物相42は、その全長Ctに対するSn母相との境界長Btの割合Bt/Ctの百分率が50%以上のものとすることができる。これらの実施例から、異形金属間化合物相22がそのような第二金属間化合物相42を含む割合が高くなるほど、即ち、2種類以上の金属間化合物の集合体である異形金属間化合物相22において、Bt/Ctが50%以上の第二金属間化合物42を有するものの割合が高くなるほど、摺動部材10の寿命は向上する傾向にあることが分かる。特に、百分率でm/Mtが0.75以上(百分率で75%以上)であることが好ましい。これは、Bt/Ctが50%以上となる第二金属間化合物相42は、図4に示すように第一金属間化合物相41からSn母相21側へ大きく突出しているからと考えられる。このように第二金属間化合物相42がSn母相21側へ大きく突出することにより、異形金属間化合物相22は、形状がより複雑化し、Sn母相21との境界部分の全長が増大する。その結果、疲労クラックの経路が摺動面14側へ折り返されたり複雑化するだけでなく、その経路も延長される。このような異形金属間化合物相22を多くすることによって、疲労クラックが進展するときの経路が長くなり易くなり、軸受寿命をより向上させることができたと考えられる。異形金属間化合物相22を3種類以上の金属間化合物相で構成する場合も、同様である。したがって、疲労クラックの進展が効率良く阻害されると考えられる。

0045

実施例1〜実施例21に基づいて、異形金属間化合物相22の面積率が寿命に与える影響について検証した。これらの実施例からも明らかなように、観察断面において、軸受合金層11に含まれる異形金属間化合物相22の面積率が大きくなると、寿命は向上する傾向にあることが分かる。これは、異形金属間化合物相22の面積率が大きくなると、疲労クラックが進展する延長線上に異形金属間化合物相22が存在する確率が高くなるからであった。その結果、軸受合金層11における疲労クラックの進展は、異形金属間化合物相22によって阻害され易くなったと考えられる。異形金属間化合物相22が占める面積率S(%)を5%以上に制御すると、摺動部材10の寿命は特に向上した。
また、本願発明者らは、「(Lc/D)の平均値×Dの平均値」が400以上になるように軸受合金層の組織制御をすることが、軸受寿命の向上に好ましいことを見出した。そして、特に2種類以上の金属間化合物相の集合体である異形金属間化合物相を有する場合は、「(Lc/D)の平均値×Dの平均値×(Mt/M)×(m/Mt)×S」が800以上になるように軸受合金層の組織制御をすることが、軸受寿命の向上に好ましく、2500以上にすることがより好ましいことも見出した。例えば、実施例14は、5.4×210×0.54×0.77×6≒2830となり、実施例13の2020よりも軸受寿命が優れていた。

0046

オーバレイ層を軸受合金層11上に備えた場合も、上述と同様の傾向を示した。
上述の摺動部材10を相手部材である軸部材と共に備える軸受装置は、長期間の使用に好適である。
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。

0047

図面中、10は摺動部材、11は軸受合金層、12は裏金層、21はSn母相、22は異形金属間化合物相、31、32、33は金属間化合物相、41は第一金属間化合物相、42は第二金属間化合物相を示す。

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