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技術 レーザ射出装置及びレーザ射出装置の製造方法

出願人 ソニー株式会社
発明者 藤田五郎岡美智雄吉田浩前田史貞植田充紀田中健二
出願日 2012年12月27日 (8年5ヶ月経過) 出願番号 2012-285027
公開日 2014年7月7日 (6年11ヶ月経過) 公開番号 2014-127651
状態 特許登録済
技術分野 半導体レーザ
主要キーワード ゲイン電流 同相状態 配置角度θ 光射出位置 格子密度 共振効率 n型半導体 ブラッグの法則
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題

より安定的な出力を得ることを可能とする。

解決手段

所定の波長の光を射出する半導体レーザと、前記半導体レーザの後段に設けられ、前記半導体レーザからの射出光反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するとともに、前記射出光の一部が出力光として外部に取り出されるグレーティングと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つ設けられるシリンドリカルレンズと、を備えるレーザ射出装置を提供する。

概要

背景

外部共振器型レーザ射出装置では、レーザ光源外部ミラーとの間で共振構造が形成される。外部共振器としては、当該外部ミラーとしてグレーティング回折格子)が用いられた、リットロー(Littrow)型外部共振器やリットマン(Littman)型外部共振器が知られている。

このようなリットロー型外部共振器やリットマン型外部共振器においては、レーザ光源から射出された光が、グレーティングによって反射され、グレーティングとレーザ光源との間で往復されることにより、共振構造が構成される。ここで、グレーティングに入射した光は、グレーティングの構成に応じて、その波長ごとに互いに異なる角度に回折される。ここで、入射光回折条件に関するグレーティングの構成とは、例えば、反射面における溝の間隔(格子間隔)、レーザ光源に対する配置角度(グレーティングへの入射光の入射角)等である。従って、このような回折条件に関するグレーティングの構成を調整し、所望の波長帯域の光の回折角度を制御することにより、レーザ光源に帰還させる光の波長帯域を選択することが可能となる。このように、グレーティングを用いた外部共振器型レーザ射出装置においては、共振させる光の波長帯域を制御することが可能となる。

一方、グレーティングを用いた外部共振器型レーザ射出装置においては、グレーティングの構成を変更して共振させる光の波長を変化させると、当該波長変化に伴い、外部共振器型レーザ射出装置からの出力光光軸の方向も変化する。従って、グレーティングを用いた外部共振器型レーザ射出装置においては、波長選択に伴う光軸の変化を補正する技術が提案されている。

例えば、特許文献1には、体積型回折格子の厚さ(レーザ光源からの射出光の当該体積型回折格子への入射方向の幅)を変化させることにより、波長変化に伴う光軸のシフトを生じさせない技術が開示されている。また、例えば、特許文献2や特許文献3には、レーザ光源とグレーティングとの間、又はグレーティングの後段プリズムを更に設けることにより、波長選択性の自由度の向上や、光軸のずれの補正を実現する技術が開示されている。

概要

より安定的な出力を得ることを可能とする。所定の波長の光を射出する半導体レーザと、前記半導体レーザの後段に設けられ、前記半導体レーザからの射出光を反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するとともに、前記射出光の一部が出力光として外部に取り出されるグレーティングと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つ設けられるシリンドリカルレンズと、を備えるレーザ射出装置を提供する。B

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
1件

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請求項1

所定の波長の光を射出する半導体レーザと、前記半導体レーザの後段に設けられ、前記半導体レーザからの射出光反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するとともに、前記射出光の一部が出力光として外部に取り出されるグレーティングと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つ設けられるシリンドリカルレンズと、を備えるレーザ射出装置

請求項2

前記シリンドリカルレンズは、光軸方向と前記グレーティングに設けられる溝の延伸方向である第1の方向とで規定される平面において、前記グレーティングの前記反射面が前記共焦点の一方の焦点となるように設けられる、請求項1に記載のレーザ射出装置。

請求項3

前記シリンドリカルレンズは、光軸方向と前記グレーティングに設けられる溝の配列方向である第2の方向とで規定される平面において、前記半導体レーザからの射出光が、前記グレーティングの前記反射面に所定の広がりを持って照射されるように設けられる、請求項1に記載のレーザ射出装置。

請求項4

前記第1の方向は、前記半導体レーザにおける活性層及びクラッド層の積層方向である、請求項2に記載のレーザ射出装置。

請求項5

前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に、リレーレンズとして、1対のシリンドリカルレンズを更に備える、請求項1に記載のレーザ射出装置。

請求項6

前記リレーレンズを構成する前記シリンドリカルレンズのうち後段に配設される前記シリンドリカルレンズの光軸方向における配設位置によって、前記射出光の前記グレーティングへの入射角が制御される、請求項5に記載のレーザ射出装置。

請求項7

前記シリンドリカルレンズは、光軸方向と前記グレーティングに設けられる溝の配列方向である第2の方向とで規定される平面において、前記グレーティングの前記反射面よりも前記半導体レーザ側の所定の位置が焦点となるように設けられる、請求項1に記載のレーザ射出装置。

請求項8

前記シリンドリカルレンズの光軸方向に沿った配設位置によって、前記射出光の前記グレーティングへの入射角が制御される、請求項7に記載のレーザ射出装置。

請求項9

前記レーザ射出装置は、前記半導体レーザを外部共振器の形態で動作させたモードロックレーザ(MLLD)を利用して、前記モードロックレーザの出力を半導体光増幅器(SOA)で増幅する主発振器出力増幅器(MOPA)システム、におけるモードロックレーザ(MLLD)であり、前記MOPAシステムにおける前記SOAの前段には、前記レーザ射出装置において前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に設けられる第1のレンズ群と同一の構成を有する第2のレンズ群が、前記MOPAシステムにおける光軸に対して前記第1のレンズ群と対称に設けられる、請求項1に記載のレーザ射出装置。

請求項10

所定の波長の光を射出する半導体レーザを配設することと、前記半導体レーザの後段に、前記半導体レーザからの射出光を反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するグレーティングを配設することと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つシリンドリカルレンズを配設することと、を含む、レーザ射出装置の製造方法。

技術分野

0001

本開示は、レーザ射出装置及びレーザ射出装置の製造方法に関する。

背景技術

0002

外部共振器型レーザ射出装置では、レーザ光源外部ミラーとの間で共振構造が形成される。外部共振器としては、当該外部ミラーとしてグレーティング回折格子)が用いられた、リットロー(Littrow)型外部共振器やリットマン(Littman)型外部共振器が知られている。

0003

このようなリットロー型外部共振器やリットマン型外部共振器においては、レーザ光源から射出された光が、グレーティングによって反射され、グレーティングとレーザ光源との間で往復されることにより、共振構造が構成される。ここで、グレーティングに入射した光は、グレーティングの構成に応じて、その波長ごとに互いに異なる角度に回折される。ここで、入射光回折条件に関するグレーティングの構成とは、例えば、反射面における溝の間隔(格子間隔)、レーザ光源に対する配置角度(グレーティングへの入射光の入射角)等である。従って、このような回折条件に関するグレーティングの構成を調整し、所望の波長帯域の光の回折角度を制御することにより、レーザ光源に帰還させる光の波長帯域を選択することが可能となる。このように、グレーティングを用いた外部共振器型レーザ射出装置においては、共振させる光の波長帯域を制御することが可能となる。

0004

一方、グレーティングを用いた外部共振器型レーザ射出装置においては、グレーティングの構成を変更して共振させる光の波長を変化させると、当該波長変化に伴い、外部共振器型レーザ射出装置からの出力光光軸の方向も変化する。従って、グレーティングを用いた外部共振器型レーザ射出装置においては、波長選択に伴う光軸の変化を補正する技術が提案されている。

0005

例えば、特許文献1には、体積型回折格子の厚さ(レーザ光源からの射出光の当該体積型回折格子への入射方向の幅)を変化させることにより、波長変化に伴う光軸のシフトを生じさせない技術が開示されている。また、例えば、特許文献2や特許文献3には、レーザ光源とグレーティングとの間、又はグレーティングの後段プリズムを更に設けることにより、波長選択性の自由度の向上や、光軸のずれの補正を実現する技術が開示されている。

先行技術

0006

特開2008−192902号公報
特開2008−71798号公報
特開2005−322813号公報

発明が解決しようとする課題

0007

ここで、レーザ光源とグレーティングとの間に形成される共振構造においては、その共振効率や共振される光の波長は、両者の相対的な位置関係に大きく依存している。ここで、共振効率とは、例えばレーザ光源からの射出光がグレーティングで反射され、レーザ光源に帰還する割合によって表現される。従って、グレーティングのレーザ光源に対する配置角度がわずかに変化しただけでも、グレーティングで反射されてレーザ光源に帰還する光の割合が低下してしまい、共振効率が低下する可能性がある。このような共振効率の低下は、最終的なレーザ射出装置からの出力光の強度(パワー)の低下を引き起こす。

0008

一方、レーザ光源及びグレーティングの相対的な位置関係は、例えば周囲の温度変化装置自体に生じる機械的な歪み等によって、意図せず変化してしまう可能性がある。このようなレーザ光源及びグレーティングの相対的な位置関係の変化は、出力光の波長や強度の変化を引き起こし、その結果、所望の出力を安定的に得られず、装置としての信頼性が低下してしまう可能性があった。上記特許文献1−3では、このような信頼性の低下に対しては、必ずしも効果的な技術は提示されていなかった。

0009

記事情に鑑みれば、波長選択性の自由度を確保しつつ、安定的な出力が得られるレーザ射出装置が求められていた。そこで、本開示では、より安定的な出力を得ることが可能な、新規かつ改良されたレーザ射出装置及びレーザ射出装置の製造方法を提案する。

課題を解決するための手段

0010

本開示によれば、所定の波長の光を射出する半導体レーザと、前記半導体レーザの後段に設けられ、前記半導体レーザからの射出光を反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するとともに、前記射出光の一部が出力光として外部に取り出されるグレーティングと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つ設けられるシリンドリカルレンズと、を備えるレーザ射出装置が提供される。

0011

また、本開示によれば、所定の波長の光を射出する半導体レーザを配設することと、前記半導体レーザの後段に、前記半導体レーザからの射出光を反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するグレーティングを配設することと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つシリンドリカルレンズを配設することと、を含む、レーザ射出装置の製造方法が提供される。

0012

本開示によれば、シリンドリカルレンズが、半導体レーザの光射出面とグレーティングの反射面とが共焦点となるように、当該半導体レーザと当該グレーティングとの間に少なくとも1つ設けられる。従って、半導体レーザとグレーティングとの間で構成される共振器構造において、レーザダイオードからの射出光がグレーティングの反射面上の焦点とレーザダイオードの光射出面上の焦点との間をより確実に往復することが実現される。よって、グレーティングの配置角度の変化に対してトレランスが確保され、共振効率の低下が抑制される。

発明の効果

0013

以上説明したように本開示によれば、より安定的な出力を得ることが可能となる。

図面の簡単な説明

0014

一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。
一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。
リットロー型外部共振器レーザ射出装置のレーザ光源として用いられる一般的なレーザダイオードの一構造例を示す概略図である。
本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。
本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。
本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置のレーザ光源として用いられるレーザダイオードの一構造例を示す概略図である。
本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置及び一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置の出射光の強度を表すグラフである。
本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置及び一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置のSA部の光密度を表すグラフである。
リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。
リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。
リレーレンズによるレーザ射出装置内における光軸のずれの補正効果について説明する説明図である。
レーザ射出装置においてリレーレンズの位置をz軸方向に変化させた様子を示す上面図である。
レーザ射出装置における出力光のスペクトルを示すグラフである。
レーザ射出装置における出力光のスペクトルを示すグラフである。
レーザ射出装置においてリレーレンズの位置をz軸方向に変化させた様子を示す側面図である。
レーザ射出装置におけるモードロック発振しきい値の変化を示すグラフである。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置における出力光のスペクトルを示すグラフである。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置における出力光のスペクトルを示すグラフである。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置における出力光のスペクトルを示すグラフである。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置におけるモードロック発振しきい値の変化を示すグラフである。
本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置が適用されたMOPAシステムの一構成例を示す概略図である。
本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態の一変形例に係るレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。
本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態の一変形例に係るレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。

実施例

0015

以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。

0016

なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.一般的な外部共振器型レーザ射出装置についての検討
2.第1の実施形態
2−1.第1の実施形態に係るレーザ射出装置の概略構成
2−2.第1の実施形態に係るレーザ射出装置の効果
3.第2の実施形態
3−1.リレーレンズについての検討
3−2.第2の実施形態に係るレーザ射出装置の概略構成
3−3.第2の実施形態に係るレーザ射出装置の効果
4.変形例
4−1.MOPAシステムへの適用
4−2.レンズ構成レンズ系)における変形例
5.まとめ

0017

<1.一般的な外部共振器型レーザ射出装置についての検討>
本開示の好適な実施形態について説明するに先立ち、本開示の内容をより明確なものとするために、まず、一般的な外部共振器型レーザ射出装置の構成について説明する。以下では、一般的な外部共振器型レーザ射出装置について本発明者らが検討した結果について説明するとともに、本発明者らが本開示に至った背景について説明する。

0018

図1A図1B及び図2を参照して、一般的なリットロー型外部共振器を有する外部共振器型レーザ射出装置(以下、リットロー型外部共振器レーザ射出装置とも呼称する。)の概略構成について説明する。図1Aは、一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。図1Bは、一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。図2は、リットロー型外部共振器レーザ射出装置のレーザ光源として用いられる一般的な半導体レーザ(レーザダイオード)の一構造例を示す概略図である。

0019

図1A及び図1Bを参照すると、一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900は、半導体レーザ(レーザダイオード)910、コリメータレンズ(CL:Collimator Lens)920及びグレーティング(回折格子)930を備える。図1A及び図1Bに示すように、レーザダイオード910から射出された光(射出光)は、コリメータレンズ920を通過して、グレーティング930に入射する。ここで、以下の説明では、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900において、レーザダイオード910からグレーティング930に向かって光が射出される方向をz軸の正方向と定義する。すなわち、z軸方向はレーザダイオード910とグレーティング930との間における光軸方向である。また、光軸方向と垂直で、グレーティングの反射面に設けられる溝の延伸方向と平行な方向をy軸方向と定義する。更に、y軸及びz軸と互いに垂直な方向をx軸方向と定義する。

0020

レーザダイオード910は、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900のレーザ光源の一例である。レーザダイオード910は、活性層p型半導体及びn型半導体であるクラッド層で挟んだ構造を有する。レーザダイオード910は、活性層内で電子正孔再結合することにより放射される光を、共振器構造によって所定の領域内で往復させ、同相状態増幅定常的に発振させることにより、位相の揃った光であるレーザ光として射出する。レーザダイオード910の詳細な構造は、図2を参照して後述する。

0021

コリメータレンズ920は、例えば球面レンズ又は非球面レンズであり、レーザダイオード910とグレーティング930との間に設けられ、レーザダイオード910からの射出光を略平行光にしてグレーティング930に入射させる。なお、コリメータレンズ920の形状(曲率等)や材料(屈折率反射率及び透過率等)は、特に限定されるものではなく、レーザダイオードの射出光の波長等に応じて適宜決定されてよい。

0022

グレーティング(回折格子)930は、入射した光を所定の方向に回折させる。例えば、グレーティング930は板状の部材であり、その一表面には、所定の間隔を隔てて複数の溝が形成されている。図1A及び図1Bに示すように、グレーティング930は、溝が設けられた面(反射面)が、レーザダイオード910とグレーティング930とを結ぶ光軸(z軸)に対して所定の角度だけ傾いた状態でレーザダイオード910の方向を向くように配設される。

0023

図1Aに示すように、グレーティング930は、x軸とz軸とで規定される平面(以下、x−z平面と呼称する。)において、z軸と所定の角度θxだけ傾きを有するように配設される。ここで、x−z平面は、z軸とグレーティング930に設けられる溝の配列方向とで規定される平面でもある。図1Aに示すように、レーザダイオード910からの射出光は、グレーティング930の溝が形成されている面に入射すると、グレーティング930の配置角度θxに応じて、その1次回折光がコリメータレンズ920を通過してレーザダイオード910に帰還する。また、グレーティング930への入射光の0次回折光が入射角と等しい角度で反射され、外部に出力される。ここで、図2を参照して後述するように、レーザダイオード910の光射出面とは逆側の面(z軸の負方向に位置する面)にはHR(High Reflection)コーティングが施されており、レーザダイオード910に帰還した光は当該HRコーティングで反射され、再びグレーティング930に向かって射出される。このように、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900においては、レーザダイオード910とグレーティング930との間で共振器構造が構成される。ここで、1次回折光の回折角及び波長並びにグレーティング930の溝間隔は、ブラッグの法則(2dsinθ=nλ:dはグレーティング930の溝間隔、λは入射光の波長、θは回折角、nは整数)を満たす。従って、ブラッグの法則を考慮して、グレーティング930の溝間隔や配置角度θxを決定することにより、所望の波長の光を共振させることができる。また、レーザダイオード910からの射出光が、グレーティング930の溝の配列方向に所定の広がり(幅)をもって入射することにより、1次回折光としてレーザダイオード910に帰還する光の波長の帯域が確保される。

0024

一方、図1Bに示すように、グレーティング930は、y軸とz軸とで規定される平面(以下、y−z平面と呼称する。)において、z軸と所定の角度θyだけ傾きを有するように配設される。図1Bに示す例では、θy=0(Rad)であるが、θyは、グレーティング930から帰還する光が、後述するレーザダイオード910の光射出面の光スポット915(光が射出される位置)に入射し、共振器における結合性が最大になるように、すなわち、共振効率が最大となるように調整される。

0025

次に、図2を参照して、一般的なレーザダイオード910の構成について説明する。レーザダイオード910は、活性層911をp型クラッド層912及びn型クラッド層913で挟んだ積層構造を有する。そして、p型クラッド層912の積層方向における上面には、例えばストライプ状の電極914が設けられる。電極914に電圧印加することにより、活性層911に電子が注入され、活性層911内での電子と正孔との再結合が促進される。そして、再結合により放出された光が、活性層911の一端面における光スポット915からz軸の正方向に向かって射出される。なお、活性層911、p型クラッド層912及びn型クラッド層913の主原料としては、例えばIII−V族半導体が用いられる。

0026

ここで、以下の説明では、レーザダイオード910について、図2に示すように、n型クラッド層913、活性層911及びp型クラッド層912が積層される方向をy軸の正方向と定義し、y軸方向のことを縦方向とも呼称する。また、当該縦方向と垂直な方向(すなわち、x軸方向)において、レーザダイオード910から光が射出される方向を見たときの左右方向のうち左方向をx軸の正方向と定義する。更に、x軸方向のことを横方向とも呼称する。なお、図1Aに示す上面図は、図2における縦方向のうちy軸の正方向から見た図に対応しており、図1Bに示す側面図は、図2における横方向のうちx軸の負方向から見た図に対応している。このように、レーザダイオード910におけるn型クラッド層913、活性層911及びp型クラッド層912の積層方向は、y軸方向、すなわち、グレーティング130に設けられる溝の延伸方向と略一致している。

0027

また、レーザダイオード910の後面(z軸の負方向の面)のうち少なくとも活性層911の端面に対応する領域には、HR(High Reflection)コーティングが施されており、前面(z軸の正方向の面)、すなわち光出射面のうち少なくとも活性層911の端面に対応する領域には、AR(AntiReflection)コーティングが施されている。上述したように、レーザダイオード910から射出された光のうち、グレーティング930による1次回折光はレーザダイオード910に帰還する。レーザダイオード910に帰還した光は、活性層911に入射し、後面に設けられたHRコーティングによって反射され、再びグレーティング930に向かって射出される。

0028

このように、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900においては、グレーティング930の溝が設けられる面(反射面)と、レーザダイオード910の後面との間で共振器構造が構成される。このような共振構造を実現するためには、グレーティング930からの1次回折光が、図2に示すレーザダイオード910の光出射面のうち、活性層911の端面に帰還する必要がある。何らかの原因によりグレーティング930から帰還した光が活性層911の端面に入射する割合が低下すれば、共振構造における共振効率は低下するといえる。

0029

ここで、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900において、レーザダイオード910、コリメータレンズ920及びグレーティング930の相対的な位置関係が変化した場合について検討する。ここでは、このような相対的な位置関係の変化を、グレーティング930の配置角度の所定の角度からのずれ量であるΔθx及びΔθyで表現する。Δθxは、図1Aに示すように、x−z平面内における、グレーティング930のz軸に対する角度θxのずれ量のことを意味する。また、Δθyは、図1Bに示すように、y−z平面内における、グレーティング930のz軸に対する角度θyのずれ量を意味する。

0030

まず、グレーティング930の配置角度がθxからΔθxだけずれた場合を考える。この場合、レーザダイオード910からの射出光のグレーティング930の溝の配列方向に対する入射角が変化するため、レーザダイオード910に帰還する光の波長が変化する。また、レーザダイオード910に帰還する光は、そのレーザダイオード910への入射位置がx軸方向にずれる。ここで、図2に示すように、x軸方向は、レーザダイオード910の積層方向と直交する方向、すなわち、活性層911が広がりを有する方向であるため、x軸方向の入射位置が多少ずれても共振構造は維持され得る。従って、Δθxは、共振効率よりも、共振される光の波長に影響を及ぼし、ひいては、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900における出力光の波長に影響を及ぼす。

0031

一方、グレーティング930の配置角度がθyからΔθyだけずれた場合を考える。この場合、グレーティング930からレーザダイオード910に帰還する光は、そのレーザダイオード910への入射位置がy軸方向にずれる。ここで、図2に示すように、y軸方向はレーザダイオード910の積層方向であるため、入射位置がわずかにずれただけでも、帰還した光が活性層911の端面に入射されず、共振効率が低下する可能性がある。従って、Δθyは共振効率に大きな影響を及ぼし、ひいては、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900における出力光の強度に影響を及ぼす。

0032

以上、図1A図1B及び図2を参照して、一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900の概略構成について説明した。このような構成においては、上述したように、グレーティングの傾き角度の変化Δθxが波長選択に影響を及ぼし、傾き角度の変化Δθyが共振効率(結合性)に影響を及ぼす。特にΔθyは、レーザダイオード910の構造上、その角度がわずかに変化しただけでも共振効率が大きく低下してしまう可能性がある。

0033

一方、一般的に、装置周囲の温度変化や装置自体に生じる機械的な歪み等によって、装置内の各構成部材の相対的な位置関係はわずかに変化してしまう可能性がある。例えば、装置自体や装置周囲の温度変化によって、各構成部材自体や、それらを支持する基台及び支持部材等が、熱膨張熱収縮することが考えられる。また、装置の組み立てや経年等に起因する機械的な歪みによって、各構成部材間の相対的な位置関係に物理的なずれが生じることが考えられる。図1A及び図1Bに示すリットロー型外部共振器レーザ射出装置900においても、その光源、レンズ及びグレーティングからなる光学系について、このような温度変化等に起因する歪みによって、その光学的な相対的位置関係が意図せず変化してしまう可能性があった。その結果、θxやθyが変化してしまうと、所望の波長の光を所望の強度で出力できず、外部共振器型レーザ射出装置としての信頼性が損なわれる恐れがあった。なお、以上の説明では、一般的な外部共振器型レーザ射出装置の一例として、リットロー型外部共振器を有するレーザ射出装置について検討した結果について説明をしたが、上記の検討結果は、グレーティングを外部ミラーとして用いる外部共振器型レーザ射出装置であれば、他の構成であっても当てはまる。例えば、リットマン型外部共振器を有する外部共振器型レーザ射出装置(以下、リットマン型外部共振器レーザ射出装置とも呼称する。)であっても、上記のような信頼性の低下が懸念される。

0034

かかる事情を鑑みて、本発明者らは、波長選択性の自由度を確保しつつ、より信頼性の高いレーザ射出装置について検討を行った結果、以下に示す外部共振器型レーザ射出装置及び外部共振器型レーザ射出装置の製造方法に想到した。以下では、本開示に係る外部共振器型レーザ射出装置及び外部共振器型レーザ射出装置の製造方法に関して、その好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、外部共振器型レーザ射出装置の一例として、リットロー型外部共振器レーザ射出装置を例に挙げて各実施形態について説明を行う。ただし、本開示はかかる例に限定されず、例えばリットマン型外部共振器レーザ射出装置のような、グレーティングを外部ミラーとして用いる外部共振器型レーザ射出装置であれば、あらゆる構成の外部共振器型レーザ射出装置に適用可能である。

0035

<2.第1の実施形態>
まず、本開示の第1の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、外部共振器型レーザ射出装置のことを、単にレーザ射出装置とも呼称する。

0036

[2−1.第1の実施形態に係るレーザ射出装置の概略構成]
まず、図3A図3B及び図4を参照して、本開示の第1の実施形態に係る外部共振器型レーザ射出装置の概略構成について説明する。図3Aは、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。図3Bは、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。図4は、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置のレーザ光源として用いられる半導体レーザの一構造例を示す概略図である。

0037

図3A及び図3Bを参照すると、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置10は、半導体レーザ(レーザダイオード)110、コリメータレンズ(CL:Collimator Lens)120、シリンドリカルレンズ140及びグレーティング(回折格子)130を備える。図3A及び図3Bに示すように、レーザダイオード110からの射出光は、コリメータレンズ120及びシリンドリカルレンズ140を通過して、グレーティング130に入射する。

0038

このように、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10の構成は、図1A及び図1Bを参照して説明した一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900に対して、コリメータレンズ920の後段にシリンドリカルレンズ140が更に設けられた構成に対応している。なお、図3A及び図3Bにおける座標軸を示すx軸、y軸及びz軸や、グレーティング130の配置角度を示すθx、θy、Δθx及びΔθyの定義は、図1A及び図1Bにおけるx軸、y軸及びz軸並びにθx、θy、Δθx及びΔθyの定義と同様であるため、詳細な説明は省略する。

0039

レーザダイオード110は、レーザ射出装置10におけるレーザ光源(半導体レーザ)の一例である。レーザダイオード110は、活性層をp型半導体及びn型半導体であるクラッド層で挟んだ構造を有する。レーザダイオード110は、活性層内で電子と正孔が再結合することにより放射される光を、共振器構造によって所定の領域内で往復させ、同相状態で増幅し定常的に発振させることにより、位相の揃った光であるレーザ光として射出する。レーザダイオード110の詳細な構造は図4を参照して後述する。

0040

コリメータレンズ120は、例えば球面レンズ又は非球面レンズであり、レーザダイオード110とグレーティング130との間に設けられ、レーザダイオード110からの射出光を略平行光にする。なお、コリメータレンズ120の形状(曲率等)や材料(屈折率、反射率及び透過率等)は、特に限定されるものではなく、レーザダイオード110の射出光の波長等に応じて適宜決定されてよい。

0041

シリンドリカルレンズ140は、レーザダイオード110とグレーティング130との間で、かつコリメータレンズ120の後段に設けられる。従って、図3A及び図3Bに示すように、シリンドリカルレンズ140には、コリメータレンズ120によって略平行光となった光が入射する。

0042

ここで、シリンドリカルレンズ140は、レンズの少なくとも一面がシリンドリカル面円筒面)を有するレンズのことである。ここで、シリンドリカル面とは、一方向には曲率を持つが、当該方向と直交する他方向には曲率を持たない面のことである。第1の実施形態においては、シリンドリカルレンズ140は、円柱を軸(円柱において互いに対向する二面の円の中心を通る直線)と平行な面で切断した形状を有する。このような形状を有することにより、シリンドリカルレンズ140は、曲率を持つ方向については球面レンズと同様の機能を有し、曲率を持たない方向については平面レンズと同様の機能を有する。

0043

図3A及び図3Bに示すように、第1の実施形態においては、シリンドリカルレンズ140は、シリンドリカル面がz軸の負方向を向くように配設される。また、シリンドリカルレンズ140は、x−z平面では平面レンズとして機能し、y−z平面では球面レンズとして機能するように配設される。シリンドリカルレンズ140の機能については、後で詳しく述べる。

0044

グレーティング(回折格子)130は、入射した光を所定の方向に回折する。例えば、グレーティング130は板状の部材であり、その一表面には、所定の間隔を隔てて複数の溝が形成されている。図3A及び図3Bに示すように、グレーティング130は、溝が設けられた面(反射面)が、レーザダイオード910とグレーティング930とを結ぶ光軸(z軸)に対して所定の角度だけ傾いた状態でレーザダイオード110の方向を向くように配設される。

0045

図3Aに示すように、グレーティング130は、x−z平面において、z軸と所定の角度θxだけ傾きを有するように配設される。ここで、x−z平面は、z軸とグレーティング130に設けられる溝の配列方向とで規定される平面でもある。図3Aに示すように、レーザダイオード110からの射出光は、グレーティング130の溝が形成されている面に入射すると、グレーティング130の配置角度θxに応じて、その1次回折光がコリメータレンズ120及びシリンドリカルレンズ140を通過してレーザダイオード110に帰還する。また、グレーティング130への入射光の0次回折光が入射角と等しい角度で反射され、外部に出力される。ここで、図4を参照して後述するように、レーザダイオード110の後ろ側(z軸の負方向)の端面にはHR(High Reflection)コーティングが施されており、レーザダイオード110に帰還した光は当該HRコーティングで反射され、再びグレーティング130に向かって射出される。このように、レーザ射出装置10においては、レーザダイオード110とグレーティング130との間で共振器構造が構成される。ここで、1次回折光の回折角及び波長並びにグレーティング130の溝間隔は、ブラッグの法則(2dsin(θ)=nλ:dはグレーティング130の溝間隔、λは入射光の波長、θは回折角)を満たす。従って、ブラッグの法則を考慮して、グレーティング130の溝間隔や配置角度θxを決定することにより、所望の波長の光を共振させることができる。

0046

一方、図3Bに示すように、グレーティング130は、y−z平面において、z軸と所定の角度θyだけ傾きを有するように配設される。図3Bに示す例では、θy=0(Rad)であるが、θyは、グレーティング130から帰還する光が、後述するレーザダイオード110の光射出面の光スポット116(光が射出される位置)に入射し、共振器における結合性が最大になるように、すなわち、共振効率が最大となるように調整される。

0047

ここで、第1の実施形態におけるシリンドリカルレンズ140の機能について詳しく説明する。図3A及び図3Bを参照すると、シリンドリカルレンズ140は、レーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となるように、レーザダイオード110とグレーティング130との間に少なくとも1つ設けられる。具体的には、シリンドリカルレンズ140は、図3Aに示すように、x−z平面においては、平面レンズとして機能するように、すなわち、曲率を持たない方向がx軸方向と略平行になるように設けられる。従って、x−z平面においては、レーザダイオード110からの射出光は、グレーティング130に対して略平行光として、グレーティング130の溝の配列方向に所定の広がり(幅)D1をもって入射される。このように、レーザダイオード110からの射出光が、グレーティング130の溝の配列方向に所定の幅D1をもって入射することにより、1次回折光としてレーザダイオード110に帰還する光の波長の帯域が確保される。また、θxを変化させる(Δθxを生じさせる)ことにより、共振させる光の波長を選択することが可能となる。

0048

また、シリンドリカルレンズ140は、図3Bに示すように、y−z平面においては、球面レンズとして機能するように、すなわち、曲率を持つ方向がy軸方向となるように配設される。更に、シリンドリカルレンズ140は、グレーティング130の反射面が共焦点の一方の焦点f1となり、レーザダイオード110の光スポット(光射出位置)が共焦点の他方の焦点f2となるように設けられる。従って、y−z平面においては、レーザダイオード110の射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となるため、レーザダイオード110からの射出光は、グレーティング130の反射面上の焦点f1とレーザダイオード110の光射出面上の焦点f2との間を往復することとなり、θyの変化(Δθy)に伴う共振効率の低下を抑えることが可能となる。

0049

次に、図4を参照して、第1の実施形態に係るレーザダイオード110の構成について説明する。なお、図4に示すx軸、y軸及びz軸は、図3A及び図3Bにおける座標軸と対応している。

0050

図4を参照すると、レーザダイオード110は、活性層111をp型クラッド層112及びn型クラッド層113で挟んだ積層構造を有する。そして、n型クラッド層113の積層方向における下面(y軸の負方向の面)には、グラウンド電位に固定された電極115が設けられる。また、p型クラッド層112の積層方向における上面(y軸の正方向の面)には電極114が設けられる。このように、レーザダイオード110におけるn型クラッド層113、活性層111及びp型クラッド層112の積層方向は、y軸方向、すなわち、グレーティング130に設けられる溝の延伸方向と略一致している。

0051

ここで、レーザダイオード110は、過飽和吸収(SA:Saturable Absorption)部及びGain部を有する、いわゆる分割式レーザダイオード(BS−LD:Bisectional−Laser Diode)である。レーザダイオード110では、当該構成に伴い電極114も2分割されており、電極114は、SA部用電極114a及びGain部用電極114bの2つの領域を有する。

0052

SA部用電極114aに逆バイアスの電圧VSAが印加されることにより、レーザダイオード110を、外部ミラーと併せてパルス光を射出するモードロックレーザ光源として機能させることができる。また、電圧VSAの値により、SA部における光密度が調整される。SA部における光密度に応じてSA部の透過率は変化するため、電圧VSAを調整することにより、レーザダイオード110を短パルスのモードロックレーザ光源として機能させることが可能となる。一方、電圧VSAを印加しない(VSA=0(V))ことにより、レーザダイオード110をCWレーザ(Continuous wave laser)光源として機能させることも可能である。また、SA部は、光ディテクタとしても機能する。すなわち、SA部用電極114aにおける電流値は光密度に対応しており、当該電流値をモニタすることによりレーザダイオード110における光密度、つまりレーザ発振における共振の強さを評価することができる。

0053

Gain部用電極114bには、レーザゲイン電流Igainが印加される。電流Igainが印加されることにより、活性層111に電子が注入され、活性層111内での電子と正孔との再結合が促進される。そして、再結合により放出された光が、活性層111の一端面における光スポット116からz軸の正方向に向かって射出される。なお、本実施形態においては、レーザダイオード110の射出光の波長は特に限定されず、あらゆる波長の光が適用されてよい。従って、活性層111、p型クラッド層112及びn型クラッド層113の主原料は、レーザダイオード110の射出光の波長に応じて、適宜選択され得る。例えば、活性層111、p型クラッド層112及びn型クラッド層113の主原料としては、GaN、GaAs、GaInN及び/又はAlGaAs等のIII−V族半導体が主に用いられる。

0054

また、レーザダイオード110の後面(z軸の負方向の面)のうち少なくとも活性層111の端面に対応する領域には、HR(High Reflection)コーティングが施されており、前面(z軸の正方向の面)、すなわち光出射面のうち少なくとも活性層111の端面に対応する領域には、AR(AntiReflection)コーティングが施されている。上述したように、レーザダイオード110から射出された光のうち、グレーティング130による1次回折光はレーザダイオード110に帰還する。レーザダイオード110に帰還した光は、活性層111に入射し、後面に設けられたHRコーティングによって反射され、再びグレーティング130に向かって射出される。

0055

このように、レーザ射出装置10では、グレーティング130の溝が設けられる面(反射面)と、レーザダイオード110の後面との間で共振器構造が構成される。このような構成においては、図1A及び図1Bに示した一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900と同様、グレーティングの傾き角度の変化Δθxが波長選択に影響を及ぼし、傾き角度の変化Δθyが共振効率(結合性)に影響を及ぼす。

0056

ここで、レーザ射出装置10においては、上述したように、シリンドリカルレンズ140が、レーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となるように、レーザダイオード110とグレーティング130との間に少なくとも1つ設けられる。従って、レーザダイオード110からの射出光は、グレーティング130の反射面上の焦点f1とレーザダイオード110の光射出面上の焦点f2との間を往復することとなり、傾き角度の変化Δθyによる影響を抑えることができ、共振効率の低下を抑えることが可能となる。

0057

具体的には、シリンドリカルレンズ140は、x−z平面においては、レーザダイオード110からの射出光が、グレーティング130に対して略平行光として、グレーティング130の溝の配列方向にある幅(広がり)D1をもって入射されるように設けられる。また、シリンドリカルレンズ140は、y−z平面においては、グレーティング130の反射面が共焦点の一方の焦点f1となり、レーザダイオード110の光スポット(光射出位置)が共焦点の他方の焦点f2となるように設けられる。このように、レーザ射出装置10においては、レーザダイオード110からの射出光が、グレーティング130の溝の配列方向にある幅D1をもって入射されるため、1次回折光としてレーザダイオード110に帰還する光の波長の帯域が確保される。また、θxを変化させる(Δθxを生じさせる)ことにより、共振させる光の波長を選択することが可能となる。このように、レーザ射出装置10では、波長選択性を確保しつつ、Δθyに対する共振効率の低下を抑制することが可能となる。

0058

以上、図3A図3B及び図4を参照して、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置10の構成について説明した。なお、上記の説明では、図4を参照してレーザダイオード110が分割式BS−LDである場合について説明したが、第1の実施形態はかかる例に限定されない。第1の実施形態に係るレーザダイオード110には、外部共振器構造を構成できる限りにおいて、公知のあらゆるレーザ光源が適用されてよく、その種類や構成は限定されない。また、第1の実施形態においては、レーザ光源(レーザダイオード)が発するレーザはパルスレーザであってもよくCWレーザであってもよい。

0059

[2−2.第1の実施形態に係るレーザ射出装置の効果]
次に、図5A及び図5Bを参照して、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置10の効果について説明する。図5Aは、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置10及び一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900の出射光の強度を表すグラフである。図5Bは、本開示の第1の実施形態に係るレーザ射出装置10及び一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900のSA部の光密度を表すグラフである。なお、図5A及び図5Bに示すデータ取得時には、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900のレーザ光源として、レーザダイオード110と同様の構成のレーザダイオードを用いることにより、射出光の強度及びSA部の光密度を評価している。

0060

図5Aでは、横軸に、図1A図1B図3A及び図3Bにおけるy−z平面でのz軸に対するグレーティング130、930の傾き角度Δθy(mRad)を取っている。また、縦軸に、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10及び一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900の射出光の強度Po(mW)を取っている。図5Aにおいては、縦軸の値が大きいほど射出光の強度が大きいことを示している。

0061

また、図5Bでは、横軸に、図5Aと同様にグレーティング130、930の傾き角度Δθy(mRad)を取り、縦軸に、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10及び一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900のレーザダイオード110のSA部の電流値であるSA電流(mA)を取っている。上述したように、レーザダイオード110のSA部の電流値によって、SA部の光密度の大きさ、ひいてはレーザ発振における共振の強さを評価することができる。図5Bにおいては、縦軸の値が小さいほど(電流値が小さいほど)、光密度が大きく、共振器における共振の度合い(結合の度合い)が大きいことを示している。

0062

なお、図5A及び図5Bに示すデータの取得条件としては、格子密度が3600(line/mm)であるグレーティング130、930を用い、レーザ射出装置10及びリットロー型外部共振器レーザ射出装置900からの出力光の波長が405nmとなるようにした。このとき、グレーティング130、930からレーザダイオード110に帰還する1次回折光の波長を制御するために、ブラッグの法則から、グレーティング130、930の配置角度θxをθx≒0.82(Rad)≒47(deg)とした。また、レーザ射出装置10及びリットロー型外部共振器レーザ射出装置900におけるコリメータレンズ120、920は焦点距離fがf=4.02mmのものを用い、レーザ射出装置10におけるシリンドリカルレンズ140は焦点距離fがf=70mmのものを用いた。また、レーザダイオード110、910の駆動条件は、VSA=0(V)(すなわち、CWレーザ)、Igain=60(mA)とした。

0063

図5A及び図5Bを参照すると、一般的なリットロー型外部共振器レーザ射出装置900においては、θyがわずかに変化しただけでも強度Poが低下し、SA電流が増加してしまっていることが分かる。これは、θyが変化したことにより、グレーティング930からレーザダイオード910に帰還する光のうち、光スポット915に帰還する光の割合が低下してしまい、その結果、共振効率が低下してしまったことが原因であると考えられる。

0064

一方、図5A及び図5Bを参照すると、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10においては、θyが変化しても、強度Po及びSA電流がほぼ一定の値を保っている。このように、レーザ射出装置10においては、リットロー型外部共振器レーザ射出装置900と比較して、θyの変化に対する許容値(トレランス)が拡大される。これは、上述したように、レーザ射出装置10では、シリンドリカルレンズ140が設けられることにより、レーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となるため、θyが変化しても、レーザダイオード110からの射出光が、グレーティング130の反射面上の焦点f1とレーザダイオード110の光射出面上の焦点f2との間を往復することとなり、共振効率の低下が抑制されるためであると考えられる。

0065

以上、図3A図3B図4図5A及び図5Bを参照して、本開示の第1の実施形態について説明した。以上説明したように、第1の実施形態によれば、シリンドリカルレンズ140が設けられることにより、レーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となる。従って、レーザダイオード110からの射出光がグレーティング130の反射面上の焦点f1とレーザダイオード110の光射出面上の焦点f2との間をより確実に往復するため、グレーティング130の配置角度θyの変化に対してトレランスが確保され、共振効率の低下を抑制することができる。更に、第1の実施形態においては、共焦点を設けるために球面レンズではなくシリンドリカルレンズ140が用いられるため、グレーティング130の溝の配設方向に対しては所定の広がり(幅)を有するように光が入射し、波長選択性が確保される。従って、波長選択性を確保しつつ、Δθyに対する共振率の低下を抑制することが可能となる。

0066

なお、図5A及び図5Bは、レーザダイオード110、910においてVSA=0(V)とした、CWレーザについての結果を示しているが、パルスレーザに対しても同様の結果が得られる。

0067

また、上記の説明では、図3A及び図3Bに示すように、レーザダイオード110とグレーティング130との間のレンズ系は、コリメータレンズ120及びシリンドリカルレンズ140によって構成されていたが、第1の実施形態におけるレンズ系の構成はかかる例に限定されない。第1の実施形態においては、x−z平面において溝の配列方向に所定の幅D1を有して入射し、y−z平面においてレーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となるような光路を形成することができれば、レーザダイオード110とグレーティング130との間に配設されるレンズの種類や数は限定されず、どのようなレンズ構成であってもよい。

0068

<3.第2の実施形態>
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。本開示の第2の実施形態においては、上記説明した第1の実施形態に対して、リレーレンズが更に設けられる。以下の第2の実施形態についての説明では、第2の実施形態における効果をより明確なものとするために、まず、リレーレンズとして球面レンズを用いる場合を例に挙げて、レーザ射出装置におけるリレーレンズの導入について検討する。次いで、本開示の第2の実施形態として、リレーレンズとしてシリンドリカルレンズが設けられるレーザ射出装置について説明する。

0069

[3−1.リレーレンズについての検討]
まず、図6A及び図6Bを参照して、リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置の概略構成について説明する。図6Aは、リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。図6Bは、リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。

0070

図6A及び図6Bを参照すると、リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置40は、レーザダイオード410、コリメータレンズ420、グレーティング430及びリレーレンズ440を備える。図6A及び図6Bに示すように、レーザ射出装置40の構成は、図1A及び図1Bに示したリットロー型外部共振器レーザ射出装置900の構成に対して、リレーレンズ440を更に備えた構成に対応している。ここで、レーザダイオード410、コリメータレンズ420及びグレーティング430の機能及び構成は、図1A図1B図3A及び図3Bを参照して説明したレーザダイオード110、910、コリメータレンズ120、920及びグレーティング130、930の機能及び構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。

0071

リレーレンズ440は球面レンズ441、442を有する。レーザ射出装置40では、レーザダイオード410からの射出光は、コリメータレンズ420及び球面レンズ441、442を通過して、グレーティング430に入射する。リレーレンズ440として、1対の球面レンズ441、442を設けることにより、図6A及び図6Bに示すように、グレーティング430に略平行光を入射させることが可能となる。

0072

このようなリレーレンズを有するレーザ射出装置40においては、当該リレーレンズ440のx軸、y軸及びz軸方向の位置を変化させる(各方向の変化量を、図6A及び図6Bに示すように、Δx、Δy、Δzと呼称する。)ことにより、以下の効果を得ることができる。

0073

例えば、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442のx軸方向の位置を調整することにより、光軸のx軸方向の傾きを制御することができる。つまり、球面レンズ442のx軸方向の位置をΔxだけ移動させることにより、グレーティング430の溝の配列方向に対する入射光の入射角や、レーザダイオード410に帰還する光のx軸方向の入射位置を調整することができる。

0074

また、例えば、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442のy軸方向の位置を調整することにより、光軸のy軸方向の傾きを制御することができる。つまり、球面レンズ442のy軸方向の位置をΔyだけ変化させることにより、グレーティング430の溝の延伸方向に対する入射光の入射角や、レーザダイオード410に帰還する光のy軸方向の入射位置を調整することができる。

0075

なお、上記では、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442のx軸方向及びy軸方向の位置を変化させる場合について説明したが、光軸を調整する場合には、前段に位置する球面レンズ441のx軸方向及びy軸方向の位置も併せて変化させてもよい。つまり、リレーレンズ440に含まれる球面レンズ441、442の少なくともいずれかのx軸方向及びy軸方向の位置を調整することにより、光軸の傾きが調整されてよい。

0076

このように、リレーレンズ440を導入することにより、レーザ射出装置40内における光軸のずれをより簡便に補正することが可能になる。図7を参照して、このようなリレーレンズ440によるレーザ射出装置40内における光軸のずれの補正効果について説明する。図7は、リレーレンズ440によるレーザ射出装置40内における光軸のずれの補正効果について説明する説明図である。図7は、レーザ射出装置40が基台上に設置された様子を概略的に示す側面図である。図7を参照すると、基台450の上に、レーザダイオード支持台411、コリメータレンズ支持台421及びリレーレンズ支持台443、444が設けられている。そして、これら、レーザダイオード支持台411、コリメータレンズ支持台421及びリレーレンズ支持台443、444によって、レーザダイオード410、コリメータレンズ420及び球面レンズ441、442が、それぞれ支持されている。

0077

ここで、上記<1.一般的な外部共振器型レーザ射出装置についての検討>で説明したように、レーザ射出装置40においては、周囲の温度変化や、組立時及び経年等による歪みによって、レーザ射出装置40内における光軸(構成部材の光学的な相対的位置関係)がわずかにずれてしまう可能性がある。例えば、図7に示すように実際に何らかの基台の上にレーザ射出装置40を設置する場合を想定すると、例えば周囲の温度変化や経年劣化等に起因する機械的な歪み等によって、基台自体が歪んでいる可能性がある。

0078

ここで、図7に矢印で示すように、基台450の両端が何らかの原因によって上方向(y軸の正方向)に反り返ってしまった場合を想定すると、レーザダイオード410及びグレーティング430の相対的な位置関係が変化し、光軸が所定の位置からずれてしまう。レーザダイオード410及びグレーティング430の相対的な位置関係にこのような意図せぬ変化が生じてしまうと、出力光の波長や強度が変化してしまい、所望の出力光を安定的に得られず、レーザ射出装置40としての信頼性が低下する可能性がある。図7では、基台450の歪みだけに着目しているが、レーザダイオード支持台411、コリメータレンズ支持台421及びリレーレンズ支持台443、444にも同様に、歪みが生じる可能性がある。

0079

ここで、上述したように、レーザ射出装置40は、リレーレンズ440によって光軸の傾き(歪み)を調整する機能を有する。従って、リレーレンズ440のx軸方向及びy軸方向の位置を調整することによって、このような基台450、レーザダイオード支持台411、コリメータレンズ支持台421及びリレーレンズ支持台443、444の歪みに起因する光軸のずれを調整することが可能となる。よって、例えばレーザ射出装置40を使用する際に、リレーレンズ440によって光軸の調整を行うことにより、より安定的な出力を得ることができ、より精度の高い測定や観察を行うことが可能となる。

0080

レーザ射出装置40を新たに設置する場合であっても、まずレーザダイオード410、コリメータレンズ420及びグレーティング430の位置を決定し、次いでリレーレンズ440を設置することにより、光軸の調整をより容易に行うことができる。レーザダイオード410やグレーティング430の位置を変化させることに比べて、リレーレンズ440の位置を変化させることの方がより容易に行うことができるため、ユーザにとって高い利便性も実現できる。

0081

以上説明したように、リレーレンズ440を有することにより、簡便に光軸の調整を行うことが可能となる。

0082

更に、レーザ射出装置40がパルスレーザを出力する場合には、図8に示すように、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442のz軸方向の位置変化Δzを調整することにより、当該パルスレーザに対して波長分散制御を行うことができる。図8は、図6A及び図6Bに示すレーザ射出装置40においてリレーレンズ440の位置をz軸方向に変化させた様子を示す上面図である。

0083

図8は、レーザ射出装置40において、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442をレーザダイオード410の方向(z軸の負方向)にΔzだけ移動させた場合の光路の変化を示している。図8に示すように、球面レンズ442をΔzだけ移動させることにより、球面レンズ442とグレーティング430との間の光路が、波長に応じて実線で示す光路から破線で示す光路に変化する。図8に示す例では、球面レンズ442からグレーティング430に向かう光のうち、相対的に長波長の光(長波長光)がより長い光路を進み、相対的に短波長の光(短波長光)がより短い光路を進む。従って、共振される光の波長がずれるため、結果的にレーザ射出装置40からの出力光に対して波長分散を与える。

0084

なお、上記では、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442のz軸方向の位置を変化させる場合について説明したが、波長分散制御を行う場合には、前段に位置する球面レンズ441のz軸方向の位置も併せて変化させてもよい。つまり、リレーレンズ440に含まれる球面レンズ441、442の少なくともいずれかのz軸方向の位置を調整することにより、波長分散制御が行われてよい。

0085

このように、レーザ射出装置40における、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442の位置をz軸方向(光軸方向)に変化させることによる効果について、図9A及び図9Bを参照して説明する。図9A及び図9Bは、図6A及び図6Bに示すレーザ射出装置40における出力光のスペクトルを示すグラフである。図9Aは、Δz=0mm、すなわち、球面レンズ442が所定の位置にあるときの出力光のスペクトルを示すグラフである。図9Bは、球面レンズ442の位置をΔz=−2mmだけ移動させたときの出力光のスペクトルを示すグラフである。なお、図9Aにおけるレーザダイオード410の駆動条件は、VSA=−9(V)、Igain=55(mA)であり、図9Bにおけるレーザダイオード410の駆動条件は、VSA=−9(V)、Igain=62(mA)である。また、図9A及び図9Bに示すデータ取得時には、レーザ射出装置40におけるコリメータレンズ420、球面レンズ441、442は、焦点距離fがf=4.02mm、f=80mm、f=40mのものをそれぞれ用いた。

0086

図9A及び図9Bでは、横軸に出力光の周波数を、縦軸に当該出力光の強度を取り、レーザ射出装置40の出力光のスペクトルをプロットしている。図9A及び図9Bを参照すると、球面レンズ442の位置をΔz=0mmからΔz=−2mmに変化させることにより、所定のスペクトル以外の成分が低減していることが分かる。例えば、図9A及び図9Bに示すスペクトルAは、周波数が約850(MHz)に対応する出力光であるが、球面レンズ442の位置変化に応じて、当該スペクトルAの周囲の他のスペクトルが低減されている。これは、レーザ射出装置40からの出力光として、よりノイズが少ない状態で所定の周波数成分のパルス光が得られることを意味している。このように、リレーレンズ440の光軸方向の配置位置を調整することにより、レーザ射出装置40の出力光であるパルス光のノイズ成分を低減することができる。このような効果が生じる理由は、図8を参照して説明したように、リレーレンズ440の光軸方向の配置位置を変化させることにより、グレーティング430への入射光の光路が波長に応じて変化し、波長分散(周波数分散)効果が得られるためであると考えられる。

0087

以上、図6A及び図6Bを参照して、リレーレンズとして球面レンズを導入したレーザ射出装置40の概略構成について説明した。また、図7図8図9A及び図9Bを参照して、レーザ射出装置40にリレーレンズを導入する効果について説明した。

0088

一方、図8に示すようにリレーレンズ440をz軸方向に移動させる場合には、出力光のスペクトルが改善される反面、以下に説明するような懸念が生じる。すなわち、リレーレンズ440のz軸方向への位置変化に応じて、例えば図10に示すように、グレーティング430への入射角が変化することにより、レーザダイオード410に帰還する光の割合が低下してしまい、共振効率の低下につながる恐れがある。図10は、図6A及び図6Bに示すレーザ射出装置40においてリレーレンズ440の位置をz軸方向に変化させた様子を示す側面図である。ここで、図10は、図8に示したレーザ射出装置40の上面図に対応する側面図である。

0089

図10に示すように、リレーレンズ440のうち後段に位置する球面レンズ442の位置をz軸の負方向にΔzだけ変化させることにより、グレーティング430上の光が照射される領域(光照射領域)が変化する。レーザ射出装置40の光学系は、Δz=0(mm)、すなわち、球面レンズ442を移動させない状態で、グレーティング430に入射した光がレーザダイオード410に帰還し、共振器を構成するように設計されているため、光照射領域が変化した部分(例えば、図10における光照射領域の面積拡大分)については、レーザダイオード410に帰還せず、共振器から発散してしまう損失(ロス)成分となる可能性がある。このようなロスが生じれば、共振器における共振効率が低下してしまう恐れがある。

0090

このことを確認するために、レーザ射出装置40におけるモードロック発振しきい値について検討した。図11は、レーザ射出装置40におけるモードロック発振しきい値の変化を示すグラフである。

0091

図11では、横軸にレーザダイオード410のGain部に印加される電流Igain(mA)を取り、縦軸にレーザ射出装置40の射出光の強度Po(mW)を取っている。そして、レーザダイオード410のSA部に印加される電圧VSAと球面レンズ442のz軸方向の位置を変化させたときの強度Poと電流Igainとの関係についてプロットしている。

0092

まず、(VSA=0(V)、Δz=0(mm))のときは、強度Poと電流Igainとがほぼ直線の関係になっている。次いで、(VSA=−9(V)、Δz=0(mm))に条件を変化させると、図11に示すように、グラフが右方向にシフトする。これは、電圧VSAの値を0(V)から−9(V)に変化させた場合、すなわち、レーザダイオード410の射出光をCWレーザからパルスレーザに変更する場合に同じ出力光の強度Poを得るためには、より大きな電流Igainが必要となることを示している。

0093

ここで、(VSA=−9(V)、Δz=−1.5(mm))に更に条件を変化させると、図11に示すように、グラフは更に右方向にシフトする。このように、球面レンズ442のz軸方向の位置をΔz=0(mm)からΔz=−1.5(mm)に変化させることにより、同じ出力光の強度Poを得るために必要な電流Igainの値は更に増加する。すなわち、モードロック発振しきい値が増加する。

0094

以上、図11に示したように、球面レンズ442のz軸方向への位置変化Δzにより、レーザ射出装置40において所望の出力を得るためには、電流Igainとしてより大きな電流値が必要となることが分かる。これは、図10を参照して説明したように、球面レンズ442の位置変化Δzにより、レーザダイオード410とグレーティング430との間で構成される共振器において、ロスが生じるからであると考えられる。

0095

以上説明したように、レーザ射出装置にリレーレンズを導入することにより、以下の効果を得ることができる。すなわち、x軸方向及びy軸方向に対しては、リレーレンズのx軸方向及びy軸方向の配置位置を調整することにより、簡便に光軸の調整を行うことが可能となる。また、z軸方向(光軸方向)に対しては、リレーレンズのz軸方向の配置位置を調整することにより、波長分散効果を生じさせることができ、出力光のノイズを低減させることができる。

0096

一方、図11に示したように、出力光のノイズを低減させるためにリレーレンズのz軸方向の位置を変化させると、モードロック発振しきい値が上昇してしまうことが分かった。このようなモードロック発振しきい値の上昇を抑えるためには、リレーレンズのz軸方向の位置を変化させることに伴う共振器におけるロスの増加を抑制する必要がある。

0097

本発明者らは、共振器におけるロスの増加を抑制しつつ、出力光のノイズを低減させるについて検討した結果、以下に示す本開示の第2の実施形態に想到した。以下に、第2の実施形態について詳細に説明する。

0098

[3−2.第2の実施形態に係るレーザ射出装置の概略構成]
図12A及び図12Bを参照して、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置の概略構成について説明する。図12Aは、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。図12Bは、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。

0099

図12A及び図12Bを参照すると、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置20は、レーザダイオード210、コリメータレンズ220、グレーティング230、シリンドリカルレンズ240及びリレーレンズ250を備える。ここで、レーザダイオード210、コリメータレンズ220、グレーティング230、シリンドリカルレンズ240の機能及び構成は、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10のレーザダイオード110、コリメータレンズ120、グレーティング130、シリンドリカルレンズ140の機能及び構成と同様である。すなわち、第2の実施形態に係るレーザ射出装置20の構成は、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10に対して、リレーレンズ250が更に備えられた構成に対応する。従って、以下の第2の実施形態についての説明では、第1の実施形態と重複する構成についてはその詳細な説明は省略し、第1の実施形態との相違点であるリレーレンズ250について主に説明する。

0100

リレーレンズ250は、1対のシリンドリカルレンズ251、252を有する。レーザ射出装置20では、レーザダイオード210からの射出光は、コリメータレンズ220、シリンドリカルレンズ240及びシリンドリカルレンズ251、252を通過して、グレーティング230に入射する。ここで、上記[3−1.リレーレンズについての検討]において説明したレーザ射出装置40のリレーレンズ440は球面レンズ441、442を有していた。このように、第2の実施形態に係るレーザ射出装置20は、レーザ射出装置40において球面レンズ441、442によって構成されていたリレーレンズ440を、シリンドリカルレンズ251、252によって構成されるリレーレンズ250に置き換えたものに対応する。

0101

図12Aを参照すると、第2の実施形態においては、コリメータレンズ220、シリンドリカルレンズ240及びリレーレンズ250は、x−z平面においては、レーザダイオード210からの射出光が、グレーティング230に対して略平行光として、グレーティング230の溝の配列方向に所定の広がり(幅)D2をもって入射されるように設けられる。具体的には、シリンドリカルレンズ251、252は、x−z平面において、球面レンズとして機能するように、すなわち、曲率を持つ方向がx軸方向となるように配設される。より具体的には、x−z平面において、より前段に位置するシリンドリカルレンズ251はシリンドリカル面をz軸の負方向に向けて、より後段に位置するシリンドリカルレンズ252はシリンドリカル面をz軸の正方向に向けて配設される。リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)をこのように配置することにより、図12Aに示すように、x−z平面においては、レーザダイオード210からの射出光が、グレーティング230の溝の配列方向に対して所定の広がり(幅)D2をもって入射する。

0102

一方、図12Bを参照すると、第2の実施形態においては、コリメータレンズ220、シリンドリカルレンズ240及びリレーレンズ250は、y−z平面においては、レーザダイオード210の光射出面とグレーティング230の反射面とが共焦点となるように設けられる。具体的には、シリンドリカルレンズ251、252は、y−z平面においては、平面レンズとして機能するように、すなわち、曲率を持たない方向がy軸方向と略平行になるように配設される。第2の実施形態では、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)をこのように配置することにより、x−z平面においては、グレーティング230の反射面が共焦点の一方の焦点f1となり、レーザダイオード210の光スポット(光射出位置)が共焦点の他方の焦点f2となるように光学系が構成される。

0103

以上、図12A及び図12Bを参照して説明したように、リレーレンズ250を上記のように配設することにより、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。つまり、第2の実施形態によれば、レーザダイオード210の光射出面とグレーティング230の反射面とが共焦点となるため、グレーティング230の配置角度θyの変化に対してトレランスが確保され、共振効率の低下を抑制することができる。更に、第2の実施形態においては、グレーティング230の溝の配設方向に対して所定の広がり(幅)D2を有するように光が入射されるため、波長選択性が確保される。従って、波長選択性を確保しつつ、Δθyに対する共振率の低下を抑制することが可能となる。

0104

また、第2の実施形態においては、リレーレンズ250を備えることにより、上記[3−1.リレーレンズについての検討]で説明したような、リレーレンズを設けることにより生じる効果を得ることが可能となる。すなわち、第2の実施形態によれば、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)のx軸方向及びy軸方向の配置位置を調整することにより、x軸方向及びy軸方向における光軸の傾きを調整することができる。また、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)のz軸方向の配置位置を調整することにより、出力光に対する波長分散制御を行うことができる。

0105

更に、第2の実施形態においては、リレーレンズ250がシリンドリカルレンズ251、252によって構成されることにより、上記の波長分散制御において、共振器におけるロスの増加を抑制しつつ、出力光のノイズを低減させることが可能となる。以下、第2の実施形態における当該効果について説明する。

0106

[3−3.第2の実施形態に係るレーザ射出装置の効果]
図13A図13C及び図14を参照して、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置20が奏する効果について説明する。図13A図13Cは、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置20における出力光のスペクトルを示すグラフである。図13Aは、Δz=0mm、すなわち、リレーレンズ250のうち後段に位置するシリンドリカルレンズ252が所定の位置にあるときの出力光のスペクトルを示すグラフである。図13Bは、シリンドリカルレンズ252の位置をΔz=−1.5mmだけ移動させたときの出力光のスペクトルを示すグラフである。図13Cは、シリンドリカルレンズ252の位置をΔz=−3mmだけ移動させたときの出力光のスペクトルを示すグラフである。なお、図13A図13Cに示すスペクトルの測定条件としては、レーザダイオード210のSA部への印加電圧VSAはVSA=−9(V)である。また、レーザダイオード210のGain部への印加電流Igainは、図13AがIgain=54(mA)、図13BがIgain=57(mA)、図13CがIgain=59(mA)として測定を行っている。なお、図13A図13Cに示すグラフにおける横軸及び縦軸の物理量の意味は、図9A及び図9Bに示すグラフと同様である。

0107

図13A図13Cを参照すると、シリンドリカルレンズ252の位置をΔz=0mmからΔz=−1.5mm、Δz=−3.0mmと変化させることにより、所定のスペクトル以外の成分が低減していることが分かる。例えば、図13A図13Cに示すスペクトルB及びスペクトルCに注目すると、シリンドリカルレンズ252の位置変化に応じて、当該スペクトルB及びスペクトルCの周囲の他のスペクトルが低減されている。これは、レーザ射出装置20からの出力光として、よりノイズが少ない状態で所定の周波数成分のパルスレーザが得られることを意味している。このように、レーザ射出装置20においては、図6A及び図6Bに示したレーザ射出装置40と同様、リレーレンズ250の光軸方向の配置位置を調整することにより、レーザダイオード210の射出光に対して波長分散(周波数分散)効果を得ることができ、レーザ射出装置20の出力光であるパルス光のノイズ成分を低減することができる。

0108

次に、図14を参照して、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置20におけるモードロック発振しきい値について説明する。図14は、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置20におけるモードロック発振しきい値の変化を示すグラフである。なお、図14に示すグラフにおける横軸及び縦軸の物理量の意味は、図11に示すグラフと同様である。

0109

図14では、レーザダイオード210のSA部に印加される電圧VSAとシリンドリカルレンズ252のz軸方向の位置を変化させたときの出力光の強度Poとレーザダイオード210のgain部に印加される電流Igainとの関係についてプロットしている。具体的には、電圧VSAとシリンドリカルレンズ252のz軸方向の位置変化Δzについて、(VSA=0(V)、Δz=0(mm))、(VSA=−9(V)、Δz=0(mm))、(VSA=−9(V)、Δz=−1.5(mm))、(VSA=−9(V)、Δz=−3(mm))の4つの条件について強度Poと電流Igainとの関係を測定した。

0110

図14を参照すると、(VSA=0(V)、Δz=0(mm))から、(VSA=−9(V)、Δz=0(mm))に条件を変化させたときのグラフの変化は、図11と同様である。しかし、図14においては、Δzを変化させたとき、すなわち、条件を(VSA=−9(V)、Δz=−1.5(mm))や(VSA=−9(V)、Δz=−3(mm))に変化させた場合におけるグラフの右方向へのシフト量が、図11と比べて小さく抑えられている。このように、第2の実施形態においては、図6A及び図6Bに示したレーザ射出装置40の構成と比べて、シリンドリカルレンズ252(リレーレンズ)の位置を変化させたことによるモードロック発振しきい値の増加を抑えることができる。これは、第2の実施形態においては、シリンドリカルレンズ240、251、252が設けられることにより、レーザダイオード210の光照射面とグレーティング230の反射面とが共焦点となるため、シリンドリカルレンズ252のz軸方向の位置が変化したとしても、射出光が共焦点を通過してレーザダイオード210とグレーティング230との間を往復するため、共振器におけるロスを抑えることができるためであると考えられる。このように、第2の実施形態によれば、共振器におけるロスの増加を抑制しつつ、出力光のノイズを低減させることが可能となる。

0111

以上、図6A図6B図7図8図9A図9B図10図11図12A図12B図13A図13C及び図14を参照して、本開示の第2の実施形態について説明した。以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果に加えて、以下の効果を得ることができる。

0112

第2の実施形態においては、第1の実施形態に対して、シリンドリカルレンズ251、252から構成されるリレーレンズ250が更に設けられる。従って、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)のx軸方向及びy軸方向の配置位置を調整することにより、x軸方向及びy軸方向における光軸の傾きを調整することができる。また、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)のz軸方向の配置位置を調整することにより、出力光に対して波長分散制御を行うことができる。

0113

更に、第2の実施形態においては、リレーレンズ250がシリンドリカルレンズ251、252によって構成されることにより、レーザダイオード210の光照射面とグレーティング230の反射面とが共焦点となるため、上記の波長分散制御において、共振器におけるロスの増加を抑制しつつ、出力光のノイズを低減させることが可能となる。

0114

なお、上記の説明では、図6A及び図6Bに示したリレーレンズ440は1対の球面レンズ441、442によって構成されており、図12A及び図12Bに示したリレーレンズ250は1対のシリンドリカルレンズ251、252によって構成されていたが、第2の実施形態において用いられるリレーレンズはかかる例に限定されない。第2の実施形態においては、x−z平面において溝の配列方向に所定の幅D2を有して入射し、y−z平面においてレーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となるような光路を形成することができれば、リレーレンズを構成するレンズの種類や数、更にはレーザダイオード110とグレーティング130との間に配設されるレンズの種類や数は限定されず、どのようなレンズ構成であってもよい。

0115

<4.変形例>
次に、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例について説明する。

0116

[4−1.MOPAシステムへの適用]
まず、図15を参照して、第1の実施形態及び第2の実施形態に係るレーザ射出装置10、20を、いわゆるMOPA(主発振器出力増幅器:Master Oscillator Optical Amplifier)システムに適用する場合の、概略構成について説明する。図15は、本開示の第2の実施形態に係るレーザ射出装置20が適用されたMOPAシステムの一構成例を示す概略図である。なお、図15では、MOPAシステムへの適用例として、第2の実施形態に係るレーザ射出装置20を例に挙げているが、第1の実施形態に係るレーザ射出装置10も同様に適用可能である。

0117

ここで、MOPAシステムとは、半導体レーザを外部共振器の形態で動作させたモードロックレーザ(MLLD:Mode−Locked Laser Diode)をマスターレーザとして、当該モードロックレーザの出力を半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)で増幅するシステムのことである。図15では、MOPAシステムにおけるマスターレーザとして第2の実施形態に係るレーザ射出装置20を適用する場合の構成例を示している。

0118

図15を参照すると、MOPAシステム50においては、レーザ射出装置20の後段に、アイソレータ570及びミラー560が設けられる。更に、ミラー560の後段には、シリンドリカルレンズ551、552から構成されるリレーレンズ550、シリンドリカルレンズ540及びコリメータレンズ520が設けられており、これらを順に通過した光が、最終的にSOA510に入射し、外部に出力される。ここで、リレーレンズ550、シリンドリカルレンズ540及びコリメータレンズ520は、レーザ射出装置20におけるリレーレンズ250、シリンドリカルレンズ240及びコリメータレンズ220と同様の機能及び構成を有する。このように、MOPAシステム50においては、リレーレンズ550、シリンドリカルレンズ540及びコリメータレンズ520は、MOPAシステム50内で、グレーティング230、アイソレータ570及びミラー560を挟んで、レーザ射出装置20におけるリレーレンズ250、シリンドリカルレンズ240及びコリメータレンズ220と対称に配置される。

0119

レーザ射出装置20においては、レーザダイオード210から射出されたレーザ光が、複数のレンズ(コリメータレンズ220、シリンドリカルレンズ240及びリレーレンズ250)を通過するため、その出力光の位相や照射領域の広がり等の状態は、レーザダイオード210からの射出光の状態から変化している場合がある。そこで、図15に示すように、MOPAシステム50内において、レーザ射出装置20におけるレンズ系と対称的なレンズ系を更に配置することにより、SOA510に入射する光の状態を、レーザダイオード210から射出された状態に戻すことが可能となり、最終的にMOPAシステム50から出力される光として、より安定的な光を得ることがでる。従って、例えば、レーザ射出装置20を、MOPAシステム50の更に後段に設けられる他の光学機器等の光源として用いる場合に、より安定的な出力を有する光源を実現することが可能となる。

0120

[4−2.レンズ構成(レンズ系)における変形例]
次に、図16A及び図16Bを参照して、第1の実施形態及び第2の実施形態に係るレーザ射出装置において、異なるレンズ系を有する変形例について説明する。図16Aは、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態の一変形例に係るレーザ射出装置の一構成例を示す上面図である。図16Bは、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態の一変形例に係るレーザ射出装置の一構成例を示す側面図である。

0121

図16A及び図16Bを参照すると、本変形例に係るレーザ射出装置30は、レーザダイオード310、コリメータレンズ320、球面レンズ340、シリンドリカルレンズ350及びグレーティング330を備える。レーザ射出装置30においては、レーザダイオード310からの射出光は、コリメータレンズ320、球面レンズ340、シリンドリカルレンズ350を順に通過して、グレーティング330に入射し、レーザダイオード310とグレーティング330との間で共振器構造が構成される。ここで、レーザダイオード310、コリメータレンズ320及びグレーティング330の機能及び構成は、第1の実施形態及び第2の実施形態におけるレーザダイオード110、210、コリメータレンズ120、220及びグレーティング130、230の機能及び構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。

0122

図16Aを参照すると、レーザ射出装置30の球面レンズ340及びシリンドリカルレンズ350は、x−z平面において、グレーティング330の反射面よりもレーザダイオード310側の所定の位置が焦点f3となるように設けられる。具体的には、例えば、シリンドリカルレンズ350は、図16Aに示すように、x−z平面において、球面レンズとして機能するように、すなわち、曲率を持つ方向がx軸方向となるように配設される。従って、レーザ射出装置30においては、図16Aに示すように、グレーティング330の溝の配設方向に対して所定の広がり(幅)D3を有するように、グレーティング330に光が入射する。つまり、シリンドリカルレンズ350は、波長分散用のレンズである。このように、レーザ射出装置30においては、レーザダイオード310からの射出光が、グレーティング330の溝の配列方向にある幅D3をもって入射されるため、1次回折光としてレーザダイオード310に帰還する光の波長の帯域が確保される。また、θxを変化させる(Δθxを生じさせる)ことにより、共振させる光の波長を選択することが可能となる。

0123

また、図16Bを参照すると、レーザ射出装置30の球面レンズ340及びシリンドリカルレンズ350は、y−z平面において、レーザダイオード310の光照射面とグレーティング330の反射面とが共焦点となるように設けられる。具体的には、例えば、シリンドリカルレンズ350は、図16Bに示すように、y−z平面において、平面レンズとして機能するように、すなわち、曲率を持たない方向がy軸方向と略平行になるように配設される。従って、レーザ射出装置30においては、レーザダイオード310からの射出光は、グレーティング330の反射面上の焦点f1とレーザダイオード310の光射出面上の焦点f2との間を往復することとなり、グレーティング330の配置角度の変化Δθyによる影響を抑えることができ、共振効率の低下を抑えることが可能となる。従って、本変形例によれば、Δθyに対する共振率の低下の抑制と、Δθxによる波長選択性とを両立させることが可能となる。

0124

以上、図16A及び図16Bを参照して、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態の一変形例に係るレーザ射出装置30の構成について説明した。

0125

ここで、本開示に係るレーザ射出装置の構成は、上述した図3A図3B図12A図12B図16A及び図16Bに示す構成に限定されない。本開示によれば、レーザダイオードから射出された光がグレーティングに入射するに際して、x−z平面においては当該射出光がグレーティングの反射面に設けられる溝の配列方向に対して所定の幅を持って入射し、y−z平面においてはレーザダイオードの光照射面とグレーティングの反射面とが共焦点となるように、レーザダイオードとグレーティングとの間の光学系が構成されればよく、その構成は限定されない。例えば、図16A及び図16Bに示す変形例であれば、球面レンズ340とシリンドリカルレンズ350の配置位置は逆であってもよい。球面レンズ340とシリンドリカルレンズ350の配置位置を逆にした場合であっても、図16A及び図16Bに示すレーザ射出装置30と同様の効果を得ることができる。このように、本開示に係るレーザ射出装置の構成は、上述した条件を満たす限りにおいて、その光学系は適宜設計されてよい。

0126

<5.まとめ>
以上説明したように、本開示の第1の実施形態及び第2の実施形態によれば、以下の効果が得られる。

0127

第1の実施形態によれば、シリンドリカルレンズ140が設けられることにより、レーザダイオード110の光射出面とグレーティング130の反射面とが共焦点となる。従って、レーザダイオード110からの射出光がグレーティング130の反射面上の焦点f1とレーザダイオード110の光射出面上の焦点f2との間をより確実に往復するため、グレーティング130の配置角度θyの変化に対してトレランスが確保され、共振効率の低下を抑制することができる。更に、第1の実施形態においては、共焦点を設けるために球面レンズではなくシリンドリカルレンズ140が用いられるため、グレーティング130の溝の配設方向に対しては所定の広がり(幅)D1を有するように光が入射し、波長選択性が確保される。従って、波長選択性を確保しつつ、Δθyに対する共振率の低下を抑制することが可能となる。

0128

また、第2の実施形態においては、上記第1の実施形態で得られる効果に加えて、以下の効果を得ることができる。

0129

第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、シリンドリカルレンズ251、252から構成されるリレーレンズ250が更に設けられる。従って、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)のx軸方向及びy軸方向の配置位置を調整することにより、x軸方向及びy軸方向における光軸の傾きを調整することができる。また、リレーレンズ250(シリンドリカルレンズ251、252)のz軸方向の配置位置を調整することにより、出力光に対して波長分散制御を行うことができる。更に、第2の実施形態においては、リレーレンズ250がシリンドリカルレンズ251、252によって構成されることにより、レーザダイオード210の光照射面とグレーティング230の反射面とが共焦点となるため、上記の波長分散制御において、共振器におけるロスの増加を抑制しつつ、出力光のノイズを低減させることが可能となる。

0130

このように、第1の実施形態及び第2の実施形態では、一般的な外部共振器型レーザ射出装置の構成に対して、1つ又は複数のシリンドリカルレンズを更に設けることによって共振効率の低下の抑制が実現される。従って、第1の実施形態及び第2の実施形態においては、複雑な構成は必要なく、より簡便な構成でより安定的な出力を得ることが可能となる。

0131

以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。

0132

なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)所定の波長の光を射出する半導体レーザと、前記半導体レーザの後段に設けられ、前記半導体レーザからの射出光を反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するとともに、前記射出光の一部が出力光として外部に取り出されるグレーティングと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つ設けられるシリンドリカルレンズと、を備えるレーザ射出装置。
(2)前記シリンドリカルレンズは、光軸方向と前記グレーティングに設けられる溝の延伸方向である第1の方向とで規定される平面において、前記グレーティングの前記反射面が前記共焦点の一方の焦点となるように設けられる、前記(1)に記載のレーザ射出装置。
(3)前記シリンドリカルレンズは、光軸方向と前記グレーティングに設けられる溝の配列方向である第2の方向とで規定される平面において、前記半導体レーザからの射出光が、前記グレーティングの前記反射面に所定の広がりを持って照射されるように設けられる、前記(1)又は(2)に記載のレーザ射出装置。
(4)前記第1の方向は、前記半導体レーザにおける活性層及びクラッド層の積層方向である、前記(2)に記載のレーザ射出装置。
(5)前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に、リレーレンズとして、1対のシリンドリカルレンズを更に備える、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のレーザ射出装置。
(6)前記リレーレンズを構成する前記シリンドリカルレンズのうち後段に配設される前記シリンドリカルレンズの光軸方向における配設位置によって、前記射出光の前記グレーティングへの入射角が制御される、前記(5)に記載のレーザ射出装置。
(7)前記シリンドリカルレンズは、光軸方向と前記グレーティングに設けられる溝の配列方向である第2の方向とで規定される平面において、前記グレーティングの前記反射面よりも前記半導体レーザ側の所定の位置が焦点となるように設けられる、前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のレーザ射出装置。
(8)前記シリンドリカルレンズの光軸方向に沿った配設位置によって、前記射出光の前記グレーティングへの入射角が制御される、前記(7)に記載のレーザ射出装置。
(9)前記レーザ射出装置は、前記半導体レーザを外部共振器の形態で動作させたモードロックレーザ(MLLD)を利用して、前記モードロックレーザの出力を半導体光増幅器(SOA)で増幅する主発振器出力増幅器(MOPA)システム、におけるモードロックレーザ(MLLD)であり、前記MOPAシステムにおける前記SOAの前段には、前記レーザ射出装置において前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に設けられる第1のレンズ群と同一の構成を有する第2のレンズ群が、前記MOPAシステムにおける光軸に対して前記第1のレンズ群と対称に設けられる、前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載のレーザ射出装置。
(10)所定の波長の光を射出する半導体レーザを配設することと、前記半導体レーザの後段に、前記半導体レーザからの射出光を反射することにより前記半導体レーザとの間で共振構造を構成するグレーティングを配設することと、前記半導体レーザの光射出面と前記グレーティングの反射面とが共焦点となるように、前記半導体レーザと前記グレーティングとの間に少なくとも1つシリンドリカルレンズを配設することと、を含む、レーザ射出装置の製造方法。

0133

10、20、30、40レーザ射出装置
50 MOPAシステム
110、210、310、410レーザダイオード
120、220、320、420、520コリメータレンズ
130、230、330、430グレーティング
140、240、350、540シリンドリカルレンズ
250、550リレーレンズ
251、252、551、552 シリンドリカルレンズ
340球面レンズ
440 リレーレンズ
441、442 球面レンズ
510半導体光増幅器(SOA)

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