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技術 制御装置、制御プログラムおよび制御方法

出願人 オムロン株式会社
発明者 恵木守
出願日 2012年12月14日 (8年0ヶ月経過) 出願番号 2012-273843
公開日 2014年6月30日 (6年5ヶ月経過) 公開番号 2014-119902
状態 特許登録済
技術分野 フィードバック制御一般 位置、方向の制御
主要キーワード 従属軸 減算要素 位相シフトフィルタ 微調整装置 実搬送速度 サンプリング周期間 増幅要素 測定用カメラ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年6月30日)のものです。
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図面 (20)

課題

主軸従軸連動制御アプリケーションにおいて生じる制御の遅れ時間による影響を低減できる、新規制御装置制御プログラムおよびその制御方法を提供する。

解決手段

制御装置は、対象物物理変位を示す測定情報測定装置から取得する入力部と、対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、測定情報に基づいて駆動部を制御する制御部とを含む。制御部は、測定情報に対して平滑化処理を行なう平滑化手段と、先行して算出された平滑化処理の結果と測定情報とを比較することで、平滑化処理の前に測定情報を補正する補正手段とを含む。

概要

背景

機械設備などの制御には、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:以下「PLC」と称す。)などの制御装置が用いられる。このような制御装置は、予め定められた周期制御演算を行なうため、制御の遅れ時間(むだ時間)が問題となることがある。

このような制御の遅れ時間が問題となる一例として、主軸従軸連動制御アプリケーションが挙げられる。この主軸・従軸連動の制御アプリケーションの一例としては、対象物物理変位(回転速度や変位)などを測定装置(主軸)で測定して得られた測定情報を用いて、対象物に対する処理(従軸)を制御するようなアプリケーションである。このような制御アプリケーションでは、主軸で測定された情報が処理されて従軸へ伝達されるまでの遅れが発生するという課題が存在する。そこで、このような遅れによる影響を低減する方法が以下のように提案されている。

特開平08−126375号公報(特許文献1)には、主軸モータ従属軸モータが遅れなく追従できる同期制御装置が開示されている。より具体的には、主軸モータと従属軸モータとを同期駆動させる装置において、従属軸モータの動特性モデルより予測したモータ回転位置未来目標位置指令と一致するように制御される予見制御器を備え、主軸モータの未来位置予測値を計算する手段と、従属軸モータの未来目標位置指令を主軸モータの未来位置予測値の関数として求め、予見制御器に入力する手段とを備えた構成が開示されている。

また、特開平09−289788号公報(特許文献2)には、精度の高い同期制御を実現し、かつ、位置指令の入力や、主軸位置の検出に遅れがある場合でも同期精度劣化が少ない同期制御装置が開示されている。より具体的には、予測装置1と、主軸装置2と、従属軸装置3とを含む、主軸モータに同期して従属軸モータを駆動する同期制御装置を開示される。予測装置1は、現在に至るまでの過去複数点に入力した主軸位置指令増分値を記憶する手段7と、記憶された値の内でM−1サンプリング前に入力した主軸位置指令増分値を出力する手段7’と、現在に至るまでの過去複数点に入力した主軸位置増分値を記憶する手段8と、dサンプリングの遅れを含めた主軸装置の動特性モデル、記憶された主軸位置指令増分値および主軸位置増分値により、数サンプリング先までの複数個の主軸位置増分値の予測値を求める演算器9と、得られた複数個の主軸位置増分値の予測値から複数個の従属軸未来位置指令を求める変換器10とを含む構成が開示されている。

さらに、特開平10−174478号公報(特許文献3)には、主軸の動特性正転時と逆転時とで異なる場合にも、同期精度の劣化のない同期制御装置が開示されている。具体的には、主軸モータに同期して従属軸モータを駆動する同期制御装置であって、主軸位置のサンプリング周期間の増分値、あるいはその予測値を乗数K1倍した信号と、主軸位置指令増分値を乗数K2倍した信号とを加算した信号を同期ずれ微調整信号として従属軸モータの制御装置へ入力する微調整装置19を備えた同期制御装置において、乗数K1を2種類記憶し、主軸位置増分値の正負によって切り換える手段を有する構成が開示されている。

概要

主軸・従軸連動の制御アプリケーションにおいて生じる制御の遅れ時間による影響を低減できる、新規な制御装置、制御プログラムおよびその制御方法を提供する。制御装置は、対象物の物理的変位を示す測定情報を測定装置から取得する入力部と、対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、測定情報に基づいて駆動部を制御する制御部とを含む。制御部は、測定情報に対して平滑化処理を行なう平滑化手段と、先行して算出された平滑化処理の結果と測定情報とを比較することで、平滑化処理の前に測定情報を補正する補正手段とを含む。

目的

本発明は、主軸・従軸連動の制御アプリケーションにおいて生じる制御の遅れ時間による影響を低減できる、新規な制御装置、制御プログラムおよびその制御方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

対象物物理変位を示す測定情報測定装置から取得する入力部と、前記対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、前記測定情報に基づいて前記駆動部を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記測定情報に対して平滑化処理を行なう平滑化手段と、先行して算出された平滑化処理の結果と前記測定情報とを比較することで、前記平滑化処理の前に前記測定情報を補正する補正手段とを含む、制御装置

請求項2

前記補正手段は、前記測定情報と前記先行して算出された平滑化処理の結果との差を算出する手段を含む、請求項1に記載の制御装置。

請求項3

前記補正手段は、前記先行して算出された平滑化処理の結果に対して位相遅れ側にシフトさせる手段と、前記測定情報と前記位相がシフトされた平滑化処理の結果との差を算出する手段を含む、請求項1に記載の制御装置。

請求項4

前記測定装置は、前記物理的変位として、前記対象物の移動に係る各時点での位置を測定し、前記平滑化手段は、前記対象物の位置の時間的変化量である移動速度を平滑化する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の制御装置。

請求項5

記入力部および前記駆動部の少なくとも一方は、ネットワークを通じて情報を遣り取りする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の制御装置。

請求項6

前記制御部は、予め定められた周期演算処理を実行する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の制御装置。

請求項7

前記制御部は、前記平滑化処理の結果に基づいて前記駆動部へ与える指令値を算出する算出手段をさらに備え、前記算出手段は、前記平滑化処理の結果から前記対象物の位置を推定する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の制御装置。

請求項8

対象物の物理的変位を示す測定情報を測定装置から取得する入力部と、前記対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、制御部とを備えたコンピュータで実行される制御プログラムであって、前記制御プログラムは、コンピュータに、前記測定情報に対して平滑化処理を行なうステップと、先行して算出された平滑化処理の結果と前記測定情報とを比較することで、前記平滑化処理の前に前記測定情報を補正するステップとを実行させる、制御プログラム。

請求項9

対象物の物理的変位を示す測定情報を測定装置から取得する入力部と、前記対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、制御部とを備えたコンピュータで実行される制御方法であって、前記測定情報に対して平滑化処理を行なうステップと、先行して算出された平滑化処理の結果と前記測定情報とを比較することで、前記平滑化処理の前に前記測定情報を補正するステップとを含む、制御方法。

技術分野

0001

本発明は、主軸従軸連動制御アプリケーションに係る制御装置、その制御プログラムおよびその制御方法に関する。

背景技術

0002

機械設備などの制御には、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:以下「PLC」と称す。)などの制御装置が用いられる。このような制御装置は、予め定められた周期制御演算を行なうため、制御の遅れ時間(むだ時間)が問題となることがある。

0003

このような制御の遅れ時間が問題となる一例として、主軸・従軸連動の制御アプリケーションが挙げられる。この主軸・従軸連動の制御アプリケーションの一例としては、対象物物理変位(回転速度や変位)などを測定装置(主軸)で測定して得られた測定情報を用いて、対象物に対する処理(従軸)を制御するようなアプリケーションである。このような制御アプリケーションでは、主軸で測定された情報が処理されて従軸へ伝達されるまでの遅れが発生するという課題が存在する。そこで、このような遅れによる影響を低減する方法が以下のように提案されている。

0004

特開平08−126375号公報(特許文献1)には、主軸モータ従属軸モータが遅れなく追従できる同期制御装置が開示されている。より具体的には、主軸モータと従属軸モータとを同期駆動させる装置において、従属軸モータの動特性モデルより予測したモータ回転位置未来目標位置指令と一致するように制御される予見制御器を備え、主軸モータの未来位置予測値を計算する手段と、従属軸モータの未来目標位置指令を主軸モータの未来位置予測値の関数として求め、予見制御器に入力する手段とを備えた構成が開示されている。

0005

また、特開平09−289788号公報(特許文献2)には、精度の高い同期制御を実現し、かつ、位置指令の入力や、主軸位置の検出に遅れがある場合でも同期精度劣化が少ない同期制御装置が開示されている。より具体的には、予測装置1と、主軸装置2と、従属軸装置3とを含む、主軸モータに同期して従属軸モータを駆動する同期制御装置を開示される。予測装置1は、現在に至るまでの過去複数点に入力した主軸位置指令増分値を記憶する手段7と、記憶された値の内でM−1サンプリング前に入力した主軸位置指令増分値を出力する手段7’と、現在に至るまでの過去複数点に入力した主軸位置増分値を記憶する手段8と、dサンプリングの遅れを含めた主軸装置の動特性モデル、記憶された主軸位置指令増分値および主軸位置増分値により、数サンプリング先までの複数個の主軸位置増分値の予測値を求める演算器9と、得られた複数個の主軸位置増分値の予測値から複数個の従属軸未来位置指令を求める変換器10とを含む構成が開示されている。

0006

さらに、特開平10−174478号公報(特許文献3)には、主軸の動特性正転時と逆転時とで異なる場合にも、同期精度の劣化のない同期制御装置が開示されている。具体的には、主軸モータに同期して従属軸モータを駆動する同期制御装置であって、主軸位置のサンプリング周期間の増分値、あるいはその予測値を乗数K1倍した信号と、主軸位置指令増分値を乗数K2倍した信号とを加算した信号を同期ずれ微調整信号として従属軸モータの制御装置へ入力する微調整装置19を備えた同期制御装置において、乗数K1を2種類記憶し、主軸位置増分値の正負によって切り換える手段を有する構成が開示されている。

先行技術

0007

特開平08−126375号公報
特開平09−289788号公報
特開平10−174478号公報

発明が解決しようとする課題

0008

上述の特許文献1〜3は、対象となる制御システムに応じてモデルパラメータなどを調整する必要があり、実際に適用する場合には、調整に手間を要するものであった。

0009

本発明は、主軸・従軸連動の制御アプリケーションにおいて生じる制御の遅れ時間による影響を低減できる、新規な制御装置、制御プログラムおよびその制御方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0010

本発明のある局面に従う制御装置は、対象物の物理的変位を示す測定情報を測定装置から取得する入力部と、対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、測定情報に基づいて駆動部を制御する制御部とを含む。制御部は、測定情報に対して平滑化処理を行なう平滑化手段と、先行して算出された平滑化処理の結果と測定情報とを比較することで、平滑化処理の前に測定情報を補正する補正手段とを含む。

0011

好ましくは、補正手段は、測定情報と先行して算出された平滑化処理の結果との差を算出する手段を含む。

0012

好ましくは、補正手段は、先行して算出された平滑化処理の結果に対して位相を遅れ側にシフトさせる手段と、測定情報と位相がシフトされた平滑化処理の結果との差を算出する手段を含む。

0013

好ましくは、測定装置は、物理的変位として、対象物の移動に係る各時点での位置を測定し、平滑化手段は、対象物の位置の時間的変化量である移動速度を平滑化する。

0014

好ましくは、入力部および駆動部の少なくとも一方は、ネットワークを通じて情報を遣り取りする。

0015

好ましくは、制御部は、予め定められた周期で演算処理を実行する。
好ましくは、制御部は、前記平滑化処理の結果に基づいて前記駆動部へ与える指令値を算出する算出手段をさらに含み、算出手段は、平滑化処理の結果から対象物の位置を推定する。

0016

本発明の別の局面に従えば、対象物の物理的変位を示す測定情報を測定装置から取得する入力部と、対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、制御部とを備えたコンピュータで実行される制御プログラムが提供される。制御プログラムは、コンピュータに、測定情報に対して平滑化処理を行なうステップと、先行して算出された平滑化処理の結果と測定情報とを比較することで、平滑化処理の前に測定情報を補正するステップとを実行させる。

0017

本発明のさらに別の局面に従えば、対象物の物理的変位を示す測定情報を測定装置から取得する入力部と、対象物に対して処理を行なう処理装置を駆動する駆動部と、制御部とを備えたコンピュータで実行される制御方法が提供される。制御方法は、測定情報に対して平滑化処理を行なうステップと、先行して算出された平滑化処理の結果と測定情報とを比較することで、平滑化処理の前に測定情報を補正するステップとを含む。

発明の効果

0018

本発明によれば、主軸・従軸連動の制御アプリケーションにおいて生じる制御の遅れ時間による影響を低減できる。

図面の簡単な説明

0019

本実施の形態に係る制御システムの構成を示す模式図である。
本実施の形態に係る制御システムにおける主軸・従軸連動を説明するための模式図である。
本実施の形態に係る制御システムにおける遅れ時間の影響を説明するための図である。
本実施の形態に係る制御システムにおける遅れ時間の影響を説明するための図である。
本実施の形態に係る制御装置に実装される制御構造を示す模式図である。
本実施の形態に係る制御システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
本実施の形態に係る制御システムによる改善効果シミュレーションで検証した一例を示す図である。
第1変形例に係る制御装置に実装される制御構造を示す模式図である。
第1変形例に係る制御装置による改善効果をシミュレーションで検証した一例を示す図である。
第1変形例に係る制御装置による改善効果をシミュレーションで検証した一例を示す図である。
第2変形例に係る制御システムの構成を示す模式図である。
第2変形例に係る制御システムにおける処理手順を示すフローチャートである。
第2変形例に係る制御システムに実装される制御構造の全体を示す模式図である。
第2変形例に係る制御システムに関連する目標位置予測の効果の一例を示す図である。
第2変形例に係る制御システムに関連する別の目標位置予測の効果の一例を示す図である。
第2変形例の別の形態に係る制御システムによる目標位置予測の効果の一例を示す図である。
第3変形例に係る制御システムに実装される制御構造の全体を示す模式図である。
第3変形例に係る制御装置に入力される入力データに含まれるヒントデータ作成方法を説明するための図である。
第3変形例に係る制御装置による将来位置予測の効果の一例を示す図である。
第4変形例に係る制御装置に実装される制御構造を示す模式図である。
図20に示す制御構造における時間的な遅れの補償を行なうための原理を説明するための図である。

実施例

0020

本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。

0021

<A.システム構成
本発明のある実施の形態として、移動する対象物(以下「ワーク」と称す。)を測定するとともに、予め定められた位置で処理を行なう、主軸・従軸連動の制御アプリケーションについて考える。

0022

図1は、本実施の形態に係る制御システム100の構成を示す模式図である。図1を参照して、本実施の形態に係る制御システム100は、鉄板などのワークWを搬送するための搬送モータ112,114と、ワークWを切断するロータリーカッターとを含む。

0023

ワークWの移動量(あるいは、搬送速度)は、ワークWの移動に関連付けられたメジャリングロールによって計測される。このメジャリングロールとしては、その回転軸がワークWの裏面と接触するように配置されたエンコーダ140が用いられる。すなわち、エンコーダ140からの検出信号パルス信号)に基づいてワークWの移動量が算出されるとともに、予め指定された間隔でワークWが切断される。

0024

ワークWの切断は、搬送方向に直交する方向に配置された一対のロータリーカッター102および104で行われる。より具体的には、このロータリーカッター102がサーボモータ110によって駆動されることで、ロータリーカッター102および104が同期回転して、その周の一部に形成されている刃でワークWを切断する。サーボモータ110は、サーボドライバ40からその駆動に係る信号(典型的には、パルス信号)を供給されることで、回転駆動する。

0025

図1に示す例では、エンコーダ140を主軸とも称し、この主軸からの情報を受けて駆動されるサーボモータ110を従軸とも称す。

0026

このワークWの移動量の測定およびワークWの切断は、制御装置1によって制御される。次に、この制御装置1の詳細について説明する。

0027

<B.制御装置の構成>
図1に示す制御装置1は、典型的には、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller:以下「PLC」と称す。)などによって実現される。もちろん、PLCではなく、パーソナルコンピューター(PC)や各種の演算処理装置を用いて実装してもよい。

0028

制御装置1は、主たる演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)ユニット10と、エンコーダ140が出力するパルス信号を検出およびカウントするためのパルスカウンタユニット20と、サーボドライバ40などのフィールド機器通信を行なうためのフィールドバスインターフェイス(I/F)ユニット30とを含む。

0029

CPUユニット10は、主たる構成要素として、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、および、HDD(Hard Disk Drive)やROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリを含む。典型的には、制御装置1では、CPUユニット10がプログラムを実行することで後述するような処理が実現される。但し、プログラムによって実現される処理の全部または一部を専用のハードウェアで実現してもよい。

0030

フィールドネットワークとしては、EtherCAT登録商標)、Profinet IRT、MECHATROLINK(登録商標)−III、Powerlink、SERCOS(登録商標)−III、CIP Motionといった各種の産業用イーサネット(登録商標)を用いることができる。あるいは、DeviceNet、CompoNet/IP(登録商標)などの独自規格のネットワークを用いてもよい。

0031

制御装置1は、図示しない入出力ユニットや特殊ユニットを含んでいてもよい。これらのユニットは、図示しないPLCシステムバスを介して、データを互いに遣り取りできるように構成される。

0032

図1に示す構成例において、エンコーダ140についてもフィールドバスなどのネットワークを通じてその情報が伝送されてもよい。すなわち、入力部であるパルスカウンタユニット20および駆動部であるサーボドライバ40の少なくとも一方は、ネットワークを通じて情報を遣り取りしてもよい。

0033

図1に示すパルスカウンタユニット20は、対象物(ワークW)の物理的変位である移動量(あるいは、搬送速度)を示す測定情報を測定装置であるエンコーダ140から取得する入力部に相当する。フィールドバスインターフェイスユニット30およびサーボドライバ40は、対象物(ワークW)に対して処理を行なう処理装置であるロータリーカッター102,104およびサーボモータ110を駆動する駆動部に相当する。CPUユニット10は、測定情報(すなわち、エンコーダ140からのパルス信号)に基づいて駆動部を制御する制御部に相当する。

0034

本実施の形態に係る制御装置1は、後述するような処理ロジックを採用することで、ワークWの切断精度をより高めることができる。以下、この処理ロジックの詳細について説明する。

0035

<C.主軸・従軸連動について>
まず、主軸であるエンコーダ140による検出値(主軸位置/カウント値)と、従軸であるサーボモータ110の回転運動との関係について説明する。図1に示すロータリーカッターは、ワークWの移動に応じてその刃の位置を適切に制御する必要がある。すなわち、サーボモータ110の回転角度を適切に制御することで、一種カム運動を実現する。

0036

図2は、本実施の形態に係る制御システム100における主軸・従軸連動を説明するための模式図である。図2に示すように、ワークWの移動量を示す主軸位置の変化に対して、従軸目標角度(ロータリーカッター102,104の角度)は、リニアではなく所定の関係に従って決定される。典型的には、この主軸・従軸の関係は、後述するカムテーブルによって実現される。すなわち、図2に示す主軸・従軸の関係をカムテーブルとして定義しておき、パルスカウンタユニット20によってカウントされたパルス数に応じて、このカムテーブルを参照することで、ロータリーカッター102,104の角度が逐次算出される。

0037

ワークWに対する切断面をより好ましいものにするために、従軸目標角度[rad]およびその微分値である従軸目標角速度[rad/s]の両方が考慮される。従軸目標角速度について見れば、切断動作の開始位置から距離p1までの間は、その従軸目標角速度が一定値(典型的には、ワークWの搬送速度に相当する値)に制限される。その後、切断動作の開始位置から距離p2の位置でロータリーカッター102,104の角速度が最大化するように増速される。その後、切断動作の開始位置から距離p3の位置において、再度、その従軸目標角速度が一定値(典型的には、ワークWの搬送速度に相当する値)に制限される。そして、切断動作の開始位置から距離p4の位置において、切断動作が完了する。

0038

次に、主軸・従軸連動における制御の遅れ時間の影響について説明する。
図3および図4は、本実施の形態に係る制御システム100における遅れ時間の影響を説明するための図である。

0039

図1に示す制御システム100では、ワークWの搬送に係る物理的変化は、エンコーダ140によって測定される。エンコーダ140は、物理的変位として、対象物であるワークWの移動に係る各時点での位置を測定する。このエンコーダ140による測定情報がフィールドネットワークなどを介して伝送される場合には、その伝送による遅延時間(むだ時間)は不可避である。また、パルスカウンタユニット20がエンコーダ140からの検出信号(パルス信号)をカウントして、CPUユニット10がそのカウント値を参照して、従軸目標角度を算出するための演算時間が必要である。さらに、その算出された従軸目標角度がフィールドバスを介してサーボドライバ40へ伝送されるのに要する遅延時間も必要となる。

0040

これらの遅延時間(むだ時間)によって、従軸であるロータリーカッター102,104が実際に動作を開始するタイミングは遅れる。具体的には、図3に示すように、主軸位置に対して、従軸目標角度が現実に有効になるタイミングが遅くなるので、その遅延分カット寸法誤差となる。すなわち、本来であれば、切断動作の開始位置から距離p4の位置で切断動作が完了すべきであるところ、現実には、距離p4’の位置で切断動作が完了する。

0041

ワークWの搬送速度が一定であれば、図3に示す遅れの特性は、図4に示すような特性として表現することもできる。図4に示すように、位置検出遅れやCPU演算遅れによって、カット寸法の誤差が生じ得る。

0042

本実施の形態においては、このような遅れを補正することで、カット寸法の誤差発生といった影響を回避して、ロータリーカッターをより高い精度で制御する。特に、本実施の形態においては、ワークWの搬送速度を算出する際に量子化誤差を抑制するために実行されるフィルタ処理(平滑化処理)による位相遅れを考慮した補正ロジックを採用する。より具体的には、フィルタ処理(平滑化処理)による位相遅れを補正するために、オブザーバ制御を導入する。以下、このオブザーバ制御について説明する。

0043

<D.オブザーバ制御>
図5は、本実施の形態に係る制御装置1に実装される制御構造を示す模式図である。図5に示す制御構造は、CPUユニット10がプログラムを実行することによって、実現される。基本的には、CPUユニット10は、予め定められた制御周期(例えば、10msec)で演算処理を実行する。そのため、図5に示す制御構造に係る演算についても、予め定められた制御周期で繰り返し実行される。

0044

図5を参照して、制御装置1は、その制御構造として、微分要素11と、増幅要素12と、加算要素13と、フィルタ要素14と、減算要素15と、積分要素16,18とを含む。制御装置1において、パルスカウンタユニット20は、エンコーダ140からのパルス信号をカウントする。このカウント値がワークWの主軸位置に相当し、この主軸位置(カウント値)がCPUユニット10によって読み出される。この読み出された主軸位置(カウント値)は、微分要素11によって、時間についての微分(あるいは、差分)されることで、ワークWの搬送速度が算出される。制御装置1においては、ワークWの搬送速度に基づいて制御が行われる。

0045

このワークWの搬送速度は、フィルタ要素14によって平滑化される。このフィルタ要素14は、微分要素11によって生じる量子化誤差やパルス信号に生じるノイズなどの影響を取り除くために用いられる。すなわち、フィルタ要素14は、測定情報であるエンコーダ140からのパルス信号に対して平滑化処理を行なう平滑化手段に相当する。図1に示す構成例においては、フィルタ要素14は、対象物であるワークWの位置の時間的変化量である搬送速度を平滑化する。

0046

フィルタ要素14から出力される平滑化後の搬送速度は、ワークWの推定搬送速度に相当し、積分要素18に入力されてさらに積分される。積分要素18から出力される結果は、ワークWの位置(移動量)を示す。この積分要素18から出力されるワークWの位置(移動量)は、目標値算出部19へ入力される。目標値算出部19は、図2に示すような特性を定義するカムテーブル19aを参照して、サーボドライバ40へ与える目標値(ロータリーカッター102,104を駆動するサーボモータ110の角速度の指令値あるいは指令角度)が算出される。そして、算出された目標値は、サーボドライバ40へ出力される。すなわち、積分要素18および目標値算出部19は、平滑化処理の結果に基づいて、駆動部であるサーボモータ110へ与える指令値を算出する算出手段に相当する。そして、この算出手段は、平滑化処理の結果から対象物であるワークWの位置を推定する。

0047

フィルタ要素14は、量子化誤差やノイズなどの影響を除去するのに有効であるが、いくらか時定数を有しているので、入力と出力との間に遅れ時間が生じる。そこで、このフィルタ要素14による遅れ時間をオブザーバ制御によって補償する。より具体的には、増幅要素12、加算要素13、減算要素15、および、積分要素16がオブザーバ制御を実現する。このオブザーバ制御は、先行して算出された平滑化処理の結果(フィルタ要素14の出力)と測定情報(パルスカウンタユニット20から読み出された値:主軸位置)とを比較することで、平滑化処理の前に測定情報である主軸位置を補正する補正手段に相当する。

0048

すなわち、フィルタ要素14から出力される平滑化後の搬送速度は、積分要素16に入力されて積分される。積分要素16から出力される結果は、ワークWの推定位置(推定の移動量)を示す。制御系としての遅れ時間がなければ、理想状態として、このワークWの推定位置は、パルスカウンタユニット20から読み出された主軸位置と一致する。本実施の形態においては、フィルタ要素14に遅れ時間が存在しているため、両者の間にはいくらかの差が生じる。この主軸位置と推定位置との差に基づいて主軸位置を補正することで、両者の間の時間遅れを補償する。

0049

より具体的には、減算要素15には、パルスカウンタユニット20から読み出された主軸位置と、積分要素16での積分の結果得られる推定位置とが入力される。そして、減算要素15は、両者の差を算出し、増幅要素12へ入力する。このように、オブザーバ制御は、測定情報(パルスカウンタユニット20から読み出された値:主軸位置)と先行して算出された平滑化処理の結果(フィルタ要素14の出力)との差を算出する手段として、減算要素15を含む。増幅要素12は、入力値に予め定められた補正ゲインを乗じた後、その結果を加算要素13へ出力する。加算要素13は、微分要素11の出力に増幅要素12の出力を加算することで、補正後のワークWの搬送速度を算出する。

0050

以上のようなオブザーバ制御を採用することで、フィルタ要素14による遅れ時間を補償して、より正確な位置制御を行なうことができる。

0051

<E.処理手順>
次に、図1に示す制御システム100における制御手順について説明する。図6は、本実施の形態に係る制御システム100における処理手順を示すフローチャートである。図6に示す各ステップは、典型的には、CPUユニット10がプログラムを実行することで実現される。

0052

図6を参照して、CPUユニット10は、ワークWがカット位置に到達したか否かを判断する(ステップS102)。ワークWがカット位置に到達したか否かは、ワークWの搬送経路に設けられた位置検出センサ光学式または機械式など)などを用いて判断してもよいし、メジャリングローラであるエンコーダ140を用いて判断してもよい。

0053

ワークWがカット位置に到達したと判断された場合(ステップS102においてYESの場合)には、CPUユニット10は、メジャリングロールによって計測されるワークWの長さを初期化する(ステップS104)。典型的には、エンコーダ140からの検出信号(パルス信号)のカウント値がゼロリセットされる。

0054

これに対して、ワークWがカット位置に到達したと判断されなかった場合(ステップS102においてNOの場合)には、ステップS104の処理はスキップされる。

0055

続いて、CPUユニット10は、エンコーダ140からの検出信号(パルス信号)のカウント値を取得する(ステップS106)。典型的には、パルスカウンタユニット20は、CPUユニット10の制御周期とは独立して、エンコーダ140からの検出信号(パルス信号)をカウントする。そして、CPUユニット10が所定の演算タイミングにおいて、パルスカウンタユニット20に保持されているカウント値を読み出す。

0056

CPUユニット10は、ワークWの主軸位置を更新する(ステップS108)とともに、ワークWの搬送速度を算出する(ステップS110)。さらに、CPUユニット10は、前の制御周期において算出されたワークWの推定位置と現制御周期において取得されたワークWの主軸位置との差分を用いて、ワークWの搬送速度を補正する(ステップS112)。そして、CPUユニット10は、補正後のワークWの搬送速度に対してフィルタ処理を実行する(ステップS114)。このフィルタ処理として、移動平均法を採用した場合には、それ以前に算出されたワークWの搬送速度の平均値が用いられる。

0057

そして、CPUユニット10は、フィルタ処理後のワークWの搬送速度からワークWの推定位置を算出するとともに、サーボドライバ40へ与える目標値を算出する(ステップS116)。最終的に、CPUユニット10は、サーボドライバ40へ与える目標値を出力する(ステップS118)。

0058

そして、次の制御周期が到来すると、ステップS102以下の処理が再度実行される。
<F.シミュレーション結果>
次に、図5および図6に示すオブザーバ制御に係る効果を、シミュレーションを用いて検証した結果の一例について示す。

0059

図7は、本実施の形態に係る制御システム100による改善効果をシミュレーションで検証した一例を示す図である。図7に示す例は、ロータリーカッターの定格トルクの14%に相当する加速度変動を与えた場合の挙動をシミュレーションしたものである。図7の(1)は、実速度(実搬送速度)を示し、ワークWの推定搬送速度がこの実速度に近い値を示す程、正確な速度推定ができていることになる。

0060

図7の(2)は、エンコーダ140からの検出信号(パルス信号)に基づいて算出(差分)された速度を示し、図7の(3)は、上述のオブザーバ制御が無い場合にフィルタ要素14から出力される平滑化後の速度を示す。この図7の(3)に示すように、フィルタ要素14によって遅れ時間が生じていることがわかる。

0061

これに対して、図7の(4)は、上述のオブザーバ制御がある場合にフィルタ要素14から出力される平滑化後の速度を示す。この図7の(4)に示すように、オブザーバ制御によって、フィルタ要素14で生じる遅れ時間が補償されていることがわかる。

0062

このように、オブザーバ制御を適用することで、フィルタ要素14による遅れ時間を低減することができ、これによって生じる影響を最小限化できる。

0063

<G.第1変形例>
上述のオブザーバ制御においては、フィルタ要素14による遅れを補償する構成について説明した。一方、制御システム100の全体としては、エンコーダ140で検出されたパルス信号の伝送遅延や、CPUユニット10における制御周期によるむだ時間などにより、出力の演算に影響を与えやすい。このような伝送遅延や制御周期によるむだ時間などは、その大きさを予め知ることができる。そこで、このような予め定められたむだ時間を補償するために、上述したオブザーバ制御に位相シフトフィルタを導入することで、より遅れによる影響を回避することができる。以下、オブザーバ制御を改良した構成について例示する。

0064

図8は、第1変形例に係る制御装置1に実装される制御構造を示す模式図である。図8に示す制御構造は、CPUユニット10がプログラムを実行することによって、実現される。基本的には、CPUユニット10は、予め定められた制御周期(例えば、10msec)で演算処理を実行する。そのため、図8に示す制御構造に係る演算についても、予め定められた制御周期で繰り返し実行される。

0065

図8に示す制御構造は、図5に示す制御構造に比較して、積分要素16の前段に位相シフトフィルタ17が追加された点が異なっている。この位相シフトフィルタ17は、フィルタ要素14から出力されるワークWの推定搬送速度に対して、指定されたシフト量だけ位相を遅らせた上で、積分要素16へその結果を出力する。この位相シフトフィルタ17は、伝送遅延や制御周期によるむだ時間などを補償するものであり、基本的には、これらの遅れ時間と同程度の時間に基づいて、遅らせる位相が決定される。すなわち、ワークWの推定搬送速度を所定時間分だけ遅らせた上でフィードバックすることで、対応する位相分を進ませる方向にワークWの搬送速度が補正される。

0066

位相シフトフィルタ17は、典型的には、1次遅れフィルタである。位相シフトフィルタ17で搬送速度の位相は所定の時定数(遅れ時間)だけシフトし、その結果、後述するようなオブザーバ補正値を算出する系によって、結果的に、処理反映位置の位相を進ませることができる。

0067

位相シフトフィルタ17において、位相をシフトさせる時間は、システムに応じて、任意に設定可能である。典型的には、フィールドネットワークにおける伝搬遅延時間(および、CPUユニット10における指令値生成処理やその出力処理に要する時間)とほぼ同一の時間とすることが好ましい。

0068

このように、第1変形例に従うオブザーバ制御は、先行して算出された平滑化処理の結果(フィルタ要素14の出力)に対して遅れ側にシフトさせる手段として、位相シフトフィルタ17を含む。そして、第1変形例に従うオブザーバ制御は、測定情報(パルスカウンタユニット20から読み出された値:主軸位置)と位相がシフトされた平滑化処理の結果(位相シフトフィルタ17の出力)との差を算出する手段として、減算要素15を含む。

0069

第1変形例によれば、速度オブザーバにおいて、遅れ時間および/またはむだ時間のうち、予測可能なものについて位相をシフトさせることで、将来値を推定することができる。これによって、検出系の遅れや目標速度の変動を補償できる。

0070

このように、第1変形例に従うオブザーバ制御は、先行して算出された平滑化処理の結果(フィルタ要素14の出力)に対して遅れ側にシフトさせる手段として、位相シフトフィルタ17を含む。そして、第1変形例に従うオブザーバ制御は、測定情報(パルスカウンタユニット20から読み出された値:主軸位置)と位相がシフトされた平滑化処理の結果(位相シフトフィルタ17の出力)との差を算出する手段として、減算要素15を含む。

0071

第1変形例によれば、速度オブザーバにおいて、遅れ時間および/またはむだ時間のうち、予測可能なものについて位相をシフトさせることで、将来値を推定することができる。これによって、検出系の遅れや目標速度の変動を補償できる。

0072

次に、図8に示すオブザーバ制御に係る効果を、シミュレーションを用いて検証した結果の一例について示す。

0073

図9および図10は、第1変形例に係る制御装置1による改善効果をシミュレーションで検証した一例を示す図である。図9および図10に示す例は、ロータリーカッターの定格トルクの14%に相当する加速度変動を与えた場合の挙動をシミュレーションしたものである。但し、エンコーダ140から制御装置1までの通信ライン通信遅れ(2ms)があると仮定している。

0074

図9および図10の(1)は、制御装置1へ入力されるエンコーダ140の実速度(実搬送速度)を示し、図9および図10の(1)’は、エンコーダ140の実速度(実搬送速度)を示す。すなわち、図9および図10の(1)は、図9および図10の(1)’を通信に係るむだ時間である2msだけシフトさせたものに相当する。ワークWの推定搬送速度が図9および図10の(1)’に近い値を示す程、正確な速度推定ができていることになる。

0075

図9および図10の(2)は、エンコーダ140からの検出信号(パルス信号)に基づいて算出(差分)された速度を示し、図9および図10の(3)は、上述のオブザーバ制御が無い場合にフィルタ要素14から出力される平滑化後の速度を示す。

0076

図9および図10の(4)は、実施の形態1に係るオブザーバ制御がある場合にフィルタ要素14から出力される平滑化後の速度を示す。この図9および図10の(4)に示すように、オブザーバ制御によって、フィルタ要素14で生じる遅れ時間が補償されていることがわかる。但し、エンコーダ140の検出信号の通信に係るむだ時間については補償できていない。

0077

これに対して、図9および図10の(5)は、第1変形例に係る、位相シフトフィルタをさらに含むオブザーバ制御がある場合にフィルタ要素14から出力される平滑化後の速度を示す。このように、位相シフトフィルタを含むオブザーバ制御を適用することで、フィルタ要素14による遅れ時間に加えて、通信に係るむだ時間によって生じる影響を最小限化できる。

0078

<H.第2変形例>
主軸・従軸連動の制御アプリケーションとしては、上述した制御システム100の他に、以下のような制御システム200を対象とすることもできる。

0079

図11は、第2変形例に係る制御システム200の構成を示す模式図である。図11を参照して、本実施の別の形態に係る制御システム200は、移動する対象物(ワークW)として、ソーラパネルガラス基板などを想定する。この制御システム200は、ワークWに対してレーザ光照射することで、所定の配線パターンなどを形成する。レーザ光の光源とワークWの照射位置との距離は予め定められた値に維持する必要がある。そのため、光学的な手段によりワークWまでの距離を測定するとともに、この測定した距離に基づいて、レーザ光の光源をワークWの垂直方向に逐次移動させる。

0080

より具体的には、レーザ光源240および測定用カメラ250は、同一の基板220上に配置されており、この基板220は、サーボモータ230によって紙面上下方向、すなわちワークWの面に対して垂直方向に移動される。この移動によって、基板220とレーザ光源240との距離は予め定められた値に維持される。なお、ワークWの表面は、無視できない程度の凸凹が存在しているものとする。

0081

測定用カメラ250によってワークWの表面が撮像され、この撮像によって得られた画像およびそのときの光学定数焦点位置など)から、ガラス基板の表面までの距離がガラス距離計算ロジック260によって算出される。この距離は、所定周期毎に更新されることになる。すなわち、測定用カメラ250およびガラス面距離計算ロジック260による距離測定は、予測可能なむだ時間が存在することになる。

0082

また、サーボモータ230は、サーボドライバ40からその駆動に係る信号(典型的には、パルス信号)を供給されることで、回転駆動する。図11に示す例では、測定用カメラ250およびガラス面距離計算ロジック260を主軸とも称し、この主軸からの情報を受けて駆動されるサーボモータ230を従軸とも称す。

0083

制御装置1Aは、主たる演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)ユニット10と、測定用カメラ250およびガラス面距離計算ロジック260が出力する距離を取得するためのAD(Analog to Digital)ユニット50と、サーボドライバ40などのフィールド機器と通信を行なうためのフィールドバスインターフェイスユニット30とを含む。

0084

その他の基本的な構成については、図1に示す制御システム100と同様であるので、詳細な説明は繰り返さない。

0085

図11に示す制御システム200においては、ガラス基板の表面までの距離の情報更新周期がサーボモータ230の制御周期に比較して遅く、かつ、その距離情報アナログ信号によって規定されるのでノイズを含み得るという課題がある。したがって、測定用カメラ250からの出力信号をそのままサーボモータ230に対する指令値として与えると、サンプリングの遅れに起因する追従遅れセンシングノイズに起因する振動とが発生し得る。前者に関しては、位相シフトフィルタの導入による位相進み時間の補償によって対応し、後者に関しては、オブザーバ制御に含まれるローパスフィルタ(フィルタ)処理によって対応する。

0086

図12は、第2変形例に係る制御システム200における処理手順を示すフローチャートである。図12に示す各ステップは、典型的には、CPUユニット10がプログラムを実行することで実現される。

0087

図12を参照して、CPUユニット10は、ワークWの加工面までの目標距離設定値受け付ける(ステップS200)。続いて、CPUユニット10は、測定用カメラ250による画像の撮像タイミングであるか否かを判断する(ステップS202)。測定用カメラ250による画像の撮像タイミングではない場合(ステップS202においてNOの場合)には、ステップS216の処理が実行される。

0088

測定用カメラ250による画像の撮像タイミングである場合(ステップS202においてYESの場合)には、CPUユニット10は、測定用カメラ250によりワークWを撮像するとともに、その撮像された画像に基づいてワークWまでの距離を取得する(ステップS204)。そして、CPUユニット10は、目標距離と取得したワークWまでの距離との偏差を算出する(ステップS206)。

0089

続いて、CPUユニット10は、目標距離との偏差について時間変化量を算出する(ステップS208)。そして、CPUユニット10は、前の制御周期において算出された推定の偏差と現制御周期において取得された偏差との差分を用いて、偏差について時間変化量を補正する(ステップS210)。そして、CPUユニット10は、補正後の偏差について時間変化量に対してフィルタ処理を実行する(ステップS212)。

0090

続いて、CPUユニット10は、フィルタ処理後の偏差を用いて時間変化量から推定の偏差を算出するとともに、サーボドライバ40へ与える目標値を算出する(ステップS214)。具体的には、目標距離設定値に対して推定の偏差を加算することで、サーボドライバ40へ与える目標位置が決定される。最終的に、CPUユニット10は、サーボドライバ40へ与える目標値を出力する(ステップS216)。

0091

そして、次の制御周期が到来すると、ステップS202以下の処理が再度実行される。
ここで、オブザーバ制御を用いた将来値を推定、すなわち将来目標位置を予測する処理についてより詳細に説明する。

0092

図13は、第2変形例に係る制御システムに実装される制御構造の全体を示す模式図である。図13を参照して、制御装置1Aは、その制御構造として、将来位置予測部270を含む。将来位置予測部270の内部の制御構造は、図8に示す制御構造と実質的に同一である。将来位置予測部270は、入力データおよび位相シフト量を受け付け、目標位置情報の未来の値を出力する。将来位置予測部270は、基板偏差e(k,0)を受け付ける。この基板偏差e(k,0)は、図11の主軸位置として入力される。ここで、カッコ内の1番目変数(k)は制御タイミング(制御周期の番号)を示し、カッコ内の2番目の変数は制御タイミング(位相)を示す。

0093

位相シフト量S(1,m)に含まれる、カッコ内の1番目の変数は、測定用カメラ250による撮像間隔を示し、カッコ内の2番目の変数は、ネットワーク上の伝送による遅延時間およびCPUユニット10での処理時間の合計時間(むだ時間)を示す。

0094

将来位置予測部270は、予測した基板偏差予測値e(k+1,m)*を出力する。ここで、カッコ内の1番目の変数は、制御タイミング(制御周期の番号)を示し、カッコ内の2番目の変数は、ネットワーク上の伝送による遅延時間およびCPUユニット10での処理時間の合計時間(むだ時間)を示す。

0095

以下、第2変形例に係る効果について、関連技術と比較しつつ説明する。
図14は、第2変形例に係る制御システムに関連する目標位置予測の効果の一例を示す図である。図15は、第2変形例に係る制御システムに関連する別の目標位置予測の効果の一例を示す図である。図16は、第2変形例の別の形態に係る制御システムによる目標位置予測の効果の一例を示す図である。

0096

まず、図14を参照して、偏差情報取得タイミング(測定用カメラ250による距離情報の取得タイミング)およびサーボ制御タイミング(サーボドライバ40へ実際に指令値が与えられるタイミング)は、同期しているとは限らない。そのため、t(k,0)の情報を何ら考慮せずに、目標位置として設定されると、この設定は、t(k,m)において反映される。すなわち、目標位置は、図14太線のようなタイミングで切り替わる。この結果、目標位置は、偏差情報取得タイミングの間一定となり、目標位置の切り替えタイミングにいおいて振動(変位)が大きくなる。

0097

図15には、図14に示す制御構成において、目標位置で生じる振動を緩和できる手法を示す。より具体的には、例えば、後退差分近似などの補間ロジックを用いることで、目標位置の時間的変化軌道)が滑らかになる。但し、図15の方法では、基板偏差と目標位置eとの間の乖離追従誤差)が大きくなるという課題がある。

0098

これに対して、本形態においては、図16に示すように、まず、位相シフト量S(1,m)が与えられることで、将来偏差が予測される。より具体的には、将来偏差予測部170は、予測時間に相当する位相シフト量S(1,m)を受け付け、基板偏差予測値e(k+1,m)*を出力する。さらに、補間部172は、この基板偏差予測値e(k+1,m)*に基づいて、制御周期毎に後退差分近似などの補間ロジックを実行する。これによって、基板偏差eに含まれるノイズを除去できる。また、将来値を予測することで、時間的に滑らかな目標軌道を生成できる。

0099

このように、将来位置予測部270は、測定情報の取得された時間的変化に基づいて測定情報を予測する。

0100

<I.第3変形例>
上述の実施の形態においては、対象物の物理的変位(主軸:回転速度や変位)と取得される測定情報との間の時間的な遅れを補償する補償手段の一例として、オブザーバ制御について説明した。これに対して、第3変形例においては、過去の実績に基づいて、対象物の物理的変位を予測することで、取得される測定情報に生じる遅れを補償する方法について説明する。より具体的には、予め予測可能な遅れの情報(ヒントデータ)を作成し、この作成したヒントデータを用いて、ある時点から所定時間だけ先の位置(将来位置)を決定する。

0101

第3変形例として、図11に示す制御システム200の制御装置1Aに実装される制御構造について説明する。

0102

図17は、第3変形例に係る制御システムに実装される制御構造の全体を示す模式図である。図17に示す制御構造は、CPUユニット10がプログラムを実行することによって、実現される。基本的には、CPUユニット10は、予め定められた制御周期(例えば、10msec)で演算処理を実行する。そのため、図17に示す制御構造に係る演算についても、予め定められた制御周期で繰り返し実行される。

0103

図17を参照して、制御装置1Aは、その制御構造として、将来位置予測部150を含む。将来位置予測部150の内部の制御構造は、図8に示す制御構造と実質的に同一である。将来位置予測部150は、今回計測結果(現在の制御周期において取得された計測結果)にヒントデータを加えた値を入力データとして受け付けるとともに、位相シフトフィルタ17に設定される位相シフト時間を設定値として受け付ける。なお、入力データは、図8の主軸位置として入力される。そして、将来位置予測部150は、入力データおよび将来位置を出力する。

0104

位相シフト時間としては、検出器検出遅れやネットワーク上の遅延時間といった予測可能な値が設定される。

0105

図18は、第3変形例に係る制御装置1Aに入力される入力データに含まれるヒントデータの作成方法を説明するための図である。図19は、第3変形例に係る制御装置1Aによる将来位置予測の効果の一例を示す図である。図19には、図11に示す制御システム200において、測定用カメラ250のサンプリング周期が2msecである場合に、16msec後のワークWの位置を予測した結果を示す。

0106

図19を参照して、ヒントデータは、前回計測結果(1つ前の制御周期において取得された計測結果)をむだ時間分だけ時間的にシフトさせたデータを正解データとし、この正解データから前回計測結果を減算したものをヒントデータとする。ここで、前回計測結果は、ある遅れ時間をもって計測されることになる。この両者の差分をヒントデータとすることで、追従誤差を低減できる。すなわち、補償手段としての将来位置予測部150は、制御系で生じるむだ時間だけ測定情報を時間的にシフトさせて得られる測定情報と今回の測定情報との差分からヒントデータを生成する。

0107

図19には、正解値(実線)と測定用カメラ250によって測定される今回計測結果とを示す。さらに、ヒントデータおよびヒントデータをフィルタ処理した結果を示す。このヒントデータまたはフィルタ処理したヒントデータを用いて、計測値を補正することで、より正解値に近い位置を予測できる(本手法)。図19には、本実施の形態に関連する手法により予測される位置を併せてします。特に、変動の大きな範囲では、本実施の形態によれば、より正確に位置を予測できていることがわかる。

0108

図19には、正解値に対する予測値の誤差を示す。図19には、第3変形例に従うヒントデータを用いた予測手法を用いた場合とそうでない場合とを比較して示す。図19に示すように、本実施の形態に従うヒントデータを用いて遅れを補償することで、より誤差の少ない位置予測を行なうことができる。

0109

このように、第3変形例においては、ヒントデータを用いて指令値を生成する。
<J.第4変形例>
上述の実施の形態においては、過去の実績に基づいて、対象物の物理的変位を予測することで、取得される測定情報に生じる遅れを補償する方法について説明した。これに対して、実施の形態3においては、同一のワークについて取得済の情報を利用して、将来のデータを外挿によって決定する方法について説明する。

0110

第4変形例として、図1に示す制御システム100の制御装置1に実装される制御構造について説明する。

0111

図20は、第4変形例に係る制御装置1に実装される制御構造を示す模式図である。図21は、図20に示す制御構造における時間的な遅れの補償を行なうための原理を説明するための図である。

0112

図20を参照して、制御装置1は、その制御構造として、バッファ160と、補間部162と、予測部164と、制御部166とを含む。

0113

バッファ160は、メジャリングロール(エンコーダ140)によって測定される主軸位置を一時的に格納する。補間部162は、バッファ160に格納された主軸位置などを参照するとともに、これらを補間(外挿)することで、所定期間だけ先の位置を算出する。典型的には、線形補間一次補間)や各種の多次元補間などを用いることができる。

0114

予測部164は、測定された主軸位置と、補間部162によって算出される所定期間だけ先の位置とを組み合わせて、予測位置を算出する。この算出された予測位置は、制御部166へ入力される。制御部166は、入力された予測位置に基づいて制御を行ない、サーボモータ110へ与えられる指令値を算出する。この制御部166としては、一般的なPID制御を採用してもよい。

0115

次に、図21を参照して、予測位置の算出方法について説明する。図21に示す矢印のように、先に取得された位置の数点を用いて、所定期間だけ先の変化を予測する。このように、ある期間にわたる位置の変化を取得できれば、先の変化を予測できる。このように対象物の物理的変位を予測できるので、取得される情報に時間遅れがあったとしても、その影響を受けることなく、適切な指令値を生成および出力できる。

0116

このように、第4変形例において、予測部164は、測定情報の取得された時間的変化に基づいて測定情報を予測する。

0117

<K.利点>
本実施の形態に係る制御装置によれば、ワークWの物理的変位などに含まれる量子化誤差やノイズなどによる影響をフィルタ処理(平滑化処理)を用いて低減することができる。同時に、フィルタ処理によって生じる遅れ時間による影響については、オブザーバ制御を用いて補正する。これによって、量子化誤差やノイズによる影響を抑制しつつ、精度の高い制御を実現することができる。

0118

より具体的には、オブザーバ制御をサーボモータ110に対する指令値に適用することで、サンプリングの遅れ分だけ指令値の時間を進めることができるので、安定性を損なうことなく、応答性を高めることができる。

0119

さらに、オブザーバ制御に位相シフトフィルタを導入することにより、伝送遅れ計測系のむだ時間による影響を低減することができる。これによって、予測可能なむだ時間については、その影響を排除できる。

0120

より具体的には、位相シフトフィルタにおける位相進み時間を明示的に指定できるので、フィールドネットワークなどのむだ時間が明確に判断できるシステムにおいて、フィードフォワード制御および/またはフィードバック制御における位相調整を容易に行なうことができる。

0121

今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

0122

1制御装置、2主軸装置、3従属軸装置、10CPUユニット、11微分要素、12増幅要素、13加算要素、14フィルタ要素、15減算要素、16,18積分要素、17位相シフトフィルタ、19目標値算出部、19aカムテーブル、20パルスカウンタユニット、30フィールドバスインターフェイスユニット、40サーボドライバ、100,200 制御システム、102,104ロータリーカッター、110,230サーボモータ、112,114搬送モータ、140エンコーダ、220基板、240レーザ光源、250測定用カメラ、260ガラス面距離計算ロジック、W ワーク。

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  • キヤノン株式会社の「 ガルバノ装置及びレーザ加工装置」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】 ミラーの回転角度を精密に計測するガルバノ装置を提供する。【解決手段】 モータを回転させることによってモータ軸に備え付けたミラーを回転させ、光をミラーに反射させることで光の方向を変化させる... 詳細

  • 株式会社日立製作所の「 機械の自動運転制御方法、及びシステム」が 公開されました。( 2020/10/29)

    【課題】数学的に記述される関数による合わせ込みの過学習の影響を取り除くことにより実機とシミュレーションとの誤差を削減し、以って、機械の自動運転制御を最適化する。【解決手段】機械の自動運転を制御する自動... 詳細

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