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図面 (3)

課題

リンゴ花粉短期間で取得する方法を提供する。

解決手段

シロイヌナズナFT遺伝子発現する組換えリンゴ小球潜在ウイルス(FT-ALSV)に感染した増殖宿主から濃縮したウイルスRNAを、発根直後のリンゴ実生子葉パーティクルガン法を用いて接種する工程を含み、播種から1.5ヵ月〜3ヵ月で開花させ、この花から発芽能力を有する花粉を採取する。発根直後のバラ科果樹実生の子葉にパーティクルガン法を用いて接種する。

概要

背景

植物は固着生物であるが故、周囲からの多様な情報を取り入れ最適な環境で発生と生長を行う必要がある。ことに花芽の形成は茎頂分裂組織における栄養生長から生殖生長への切り換えという劇的な変化を意味する発生プログラム過程の一つであり、有性生殖による繁殖成功させる上で、この変化を決定するタイミングは特に重要である。例えばリンゴでは、種子が発してから6〜12年という非常に長い栄養成長期を経て、初めて開花に至る。これは遺伝的に決められているもので、その詳細なメカニズムは不明であるが、リンゴの品種改良などにとっては非常に大きな障害となっている。

花芽形成開始のタイミングは栄養状態概日リズム、また植物の生育ステージなどといった内的要因と、温度や光周期などの環境による外的要因に制御されていることが明らかにされている(非特許文献1)。近年では、モデル植物で、長日植物のArabidopsis thaliana(以下シロイヌナズナ)を用いた精力的な研究により、光周期(photoperiodic)、春化(vernalization)、ジベレリン(GA)、そして自律的(autonomous)花芽形成促進の4つの経路が花芽形成を決定すると提唱されている(非特許文献2-4)。これらの経路の各シグナルは必要
に応じて補い合うように働いているため、どれか一つの機能が失われたとしても花芽形成が完全に阻害されることはない。また、花芽形成のシグナルは、FLOWERING LOCUS T(FT)遺伝子とSUPPRESSOROF OVEREXPRESSION OF CO1(SOC1)遺伝子に統合され、花の形態形成誘導するAPETALA1(AP1)遺伝子とLEAFY(LFY)遺伝子の発現を促進し、開花を促す(非特許文献5-7)。経路統合遺伝子であるFT遺伝子は光周期花芽促進経路により強く発現される遺伝子であり、この遺伝子の転写制御は花芽形成を調節する上で最も重要なステップである。

FT遺伝子は1991年に花芽形成遅延変異体解析から明らかにされた(非特許文献8)。概日時計光受容体相互作用によって日長の変化を受容する場所は葉であることが知られており、葉の師部組織でCONSTANS(CO)遺伝子の発現が誘導され(非特許文献6、9)、さらにCO遺伝子の発現がFT遺伝子の発現を促進する(非特許文献10-14)。このようにして葉で発現したFT遺伝子はFTタンパク質の形で茎頂分裂組織に移行することが明らかとなっている (非特許文献15)。また、茎頂で特異的に発現するFD遺伝子はbZIP型転写因子をコードしており、FDタンパク質は核に局在することが確認されている(非特許文献16、17)。FDタンパク質の制御標的は花芽分裂調節遺伝子であるAP1遺伝子であり、FTタンパク質がこのFDタンパク質と結合することでAP1遺伝子の転写活性を促進し、花芽形成を促進する(非特許文献16、18)。

一方、FT遺伝子と高い相同性を示すシロイヌナズナのTERMINALFLOWER 1(TFL1)遺伝子は、FT遺伝子とは逆に花芽形成を抑制することが明らかにされている(非特許文献19、20)。TFL1遺伝子がその高い相同性のためFT遺伝子と拮抗し、FDタンパク質と結合することでAP1遺伝子の転写活性を阻害するためである(非特許文献21)。このTFL1遺伝子の発現抑制が花芽形成を促進することが、TFL1遺伝子を不活化した変異体の形質転換体作出することにより実証された(非特許文献22)。また最近ではリンゴのTFL1(MdTFL1)遺伝子のアンチセンス鎖を導入した変異体が、実際にリンゴで花芽形成を促進した例が報告され、これはTFL1遺伝子のサイレンシングによるものと推定された(非特許文献23)。RNAサイレンシングによる遺伝子の発現調節は、今後この花芽形成調節機構解明する遺伝学アプローチとして有効な手段となるであろう。

リンゴ小球潜在ウイルス(Apple latent spherical virus:ALSV)は2分節の1本鎖RNAゲノム(RNA1とRNA2)と3種類の外被タンパク質(Vp25、Vp20、Vp24)から構成される径25nmのウイルスであり、リンゴ以外に、5種のナス科植物[Nicotiana tabacum cv. Xanthi nc(以下タバコ)、Nicotiana glutinosa(以下グルチノーサ)、Nicotiana occidentalis(以下オキシデンタリス)、ベンサミアナ、ペチュニア]やシロイヌナズナなどに潜在感染することが明らかにされている(非特許文献24)。ALSVは実験植物であるChenopodium quinoa(以下キノア)では全身感染して葉脈透過や退緑斑紋の症状を(非特許文献25、26)、ダイズでは感染初期に退緑斑紋症状を引き起こす。これまでにALSV-RNA2がコードする細胞間移行タンパク質(MP)とVp25の間にプロテアーゼ切断サイトを反復し、外来遺伝子導入サイトを付加した感染性cDNAクローンが作出され(非特許文献27-30)、さらに、これを利用した感染植物における外来遺伝子の発現(特許文献2、非特許文献27、31、32)が報告されている。ALSVはリンゴをはじめとしてほとんどの宿主で潜在感染するというウイルスベクターとして非常に有利な特徴を持っており、様々な有用遺伝子の導入と発現、さらにはVIGSを利用したポストゲノム解析や、原宿主によるリンゴの育種への応用など多くの可能性が期待されている。

概要

リンゴの花粉短期間で取得する方法を提供する。シロイヌナズナFT遺伝子を発現する組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(FT-ALSV)に感染した増殖宿主から濃縮したウイルスRNAを、発根直後のリンゴ実生子葉パーティクルガン法を用いて接種する工程を含み、播種から1.5ヵ月〜3ヵ月で開花させ、この花から発芽能力を有する花粉を採取する。発根直後のバラ科果樹実生の子葉にパーティクルガン法を用いて接種する。

目的

本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、リンゴの開花を促進することによって、短期間でリンゴの花粉を取得するための新しい手段を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

シロイヌナズナFT遺伝子発現する組換えリンゴ小球潜在ウイルス(FT-ALSV)に感染した増殖宿主から濃縮したウイルスRNAを、発根直後のリンゴ実生子葉パーティクルガン法を用いて接種する工程を含み、播種から1.5ヵ月〜3ヵ月で開花させ、この花から発芽能力を有する花粉採取することを特徴とするリンゴの花粉取得方法

技術分野

0001

本願発明は、発芽能力を有するリンゴ花粉を、短期間で取得する方法に関するものである。

背景技術

0002

植物は固着生物であるが故、周囲からの多様な情報を取り入れ最適な環境で発生と生長を行う必要がある。ことに花芽の形成は茎頂分裂組織における栄養生長から生殖生長への切り換えという劇的な変化を意味する発生プログラム過程の一つであり、有性生殖による繁殖成功させる上で、この変化を決定するタイミングは特に重要である。例えばリンゴでは、種子が発してから6〜12年という非常に長い栄養成長期を経て、初めて開花に至る。これは遺伝的に決められているもので、その詳細なメカニズムは不明であるが、リンゴの品種改良などにとっては非常に大きな障害となっている。

0003

花芽形成開始のタイミングは栄養状態概日リズム、また植物の生育ステージなどといった内的要因と、温度や光周期などの環境による外的要因に制御されていることが明らかにされている(非特許文献1)。近年では、モデル植物で、長日植物のArabidopsis thaliana(以下シロイヌナズナ)を用いた精力的な研究により、光周期(photoperiodic)、春化(vernalization)、ジベレリン(GA)、そして自律的(autonomous)花芽形成促進の4つの経路が花芽形成を決定すると提唱されている(非特許文献2-4)。これらの経路の各シグナルは必要
に応じて補い合うように働いているため、どれか一つの機能が失われたとしても花芽形成が完全に阻害されることはない。また、花芽形成のシグナルは、FLOWERING LOCUS T(FT)遺伝子とSUPPRESSOROF OVEREXPRESSION OF CO1(SOC1)遺伝子に統合され、花の形態形成誘導するAPETALA1(AP1)遺伝子とLEAFY(LFY)遺伝子の発現を促進し、開花を促す(非特許文献5-7)。経路統合遺伝子であるFT遺伝子は光周期花芽促進経路により強く発現される遺伝子であり、この遺伝子の転写制御は花芽形成を調節する上で最も重要なステップである。

0004

FT遺伝子は1991年に花芽形成遅延変異体解析から明らかにされた(非特許文献8)。概日時計光受容体相互作用によって日長の変化を受容する場所は葉であることが知られており、葉の師部組織でCONSTANS(CO)遺伝子の発現が誘導され(非特許文献6、9)、さらにCO遺伝子の発現がFT遺伝子の発現を促進する(非特許文献10-14)。このようにして葉で発現したFT遺伝子はFTタンパク質の形で茎頂分裂組織に移行することが明らかとなっている (非特許文献15)。また、茎頂で特異的に発現するFD遺伝子はbZIP型転写因子をコードしており、FDタンパク質は核に局在することが確認されている(非特許文献16、17)。FDタンパク質の制御標的は花芽分裂調節遺伝子であるAP1遺伝子であり、FTタンパク質がこのFDタンパク質と結合することでAP1遺伝子の転写活性を促進し、花芽形成を促進する(非特許文献16、18)。

0005

一方、FT遺伝子と高い相同性を示すシロイヌナズナのTERMINALFLOWER 1(TFL1)遺伝子は、FT遺伝子とは逆に花芽形成を抑制することが明らかにされている(非特許文献19、20)。TFL1遺伝子がその高い相同性のためFT遺伝子と拮抗し、FDタンパク質と結合することでAP1遺伝子の転写活性を阻害するためである(非特許文献21)。このTFL1遺伝子の発現抑制が花芽形成を促進することが、TFL1遺伝子を不活化した変異体の形質転換体作出することにより実証された(非特許文献22)。また最近ではリンゴのTFL1(MdTFL1)遺伝子のアンチセンス鎖を導入した変異体が、実際にリンゴで花芽形成を促進した例が報告され、これはTFL1遺伝子のサイレンシングによるものと推定された(非特許文献23)。RNAサイレンシングによる遺伝子の発現調節は、今後この花芽形成調節機構解明する遺伝学アプローチとして有効な手段となるであろう。

0006

リンゴ小球潜在ウイルス(Apple latent spherical virus:ALSV)は2分節の1本鎖RNAゲノム(RNA1とRNA2)と3種類の外被タンパク質(Vp25、Vp20、Vp24)から構成される径25nmのウイルスであり、リンゴ以外に、5種のナス科植物[Nicotiana tabacum cv. Xanthi nc(以下タバコ)、Nicotiana glutinosa(以下グルチノーサ)、Nicotiana occidentalis(以下オキシデンタリス)、ベンサミアナ、ペチュニア]やシロイヌナズナなどに潜在感染することが明らかにされている(非特許文献24)。ALSVは実験植物であるChenopodium quinoa(以下キノア)では全身感染して葉脈透過や退緑斑紋の症状を(非特許文献25、26)、ダイズでは感染初期に退緑斑紋症状を引き起こす。これまでにALSV-RNA2がコードする細胞間移行タンパク質(MP)とVp25の間にプロテアーゼ切断サイトを反復し、外来遺伝子導入サイトを付加した感染性cDNAクローンが作出され(非特許文献27-30)、さらに、これを利用した感染植物における外来遺伝子の発現(特許文献2、非特許文献27、31、32)が報告されている。ALSVはリンゴをはじめとしてほとんどの宿主で潜在感染するというウイルスベクターとして非常に有利な特徴を持っており、様々な有用遺伝子の導入と発現、さらにはVIGSを利用したポストゲノム解析や、原宿主によるリンゴの育種への応用など多くの可能性が期待されている。

0007

特開2008-211993号公報
特開2004-65009号公報(リンゴでの外来遺伝子の発現)

先行技術

0008

HastingsMH,Follett BK.2001.Toward a molecular biological calendar? Journal of Biological Rhythms 16,424-430.
BossPK,Bastow RM,Mylne JS,Dean C.2004.Multiple pathways in the decision to flower: enabling, promoting, and resetting. The Plant Cell 16,S18-S31.
Corbesier L,Coupland G.2005.Photoperiodic flowering of Arabidopsis: integrating genetic and physiological approaches to characterization of the floral stimulus.Plant, Cell and Environment 28,54-66.
Searle I,Coupland G.2004.Induction of flowering by seasonal changes in photoperiod. TheEMBO Journal 23,1217-1222.
Moon J,SusSS,Lee H,Choi KR,Hong CB,PeakNC,Kim SG,Lee I.2003.The SOC1 MADS-box gene integrates vernalization and gibberellin signals for flowering in Arabidopsis. The Plant Journal 35,613-623.
Pineiro M,Gomez-Mena C,Schaffer R,Martinez-Zapater JM,Coupland G.2003.EARLY BOLTING IN SHORTDAYS is related to chromatin remodelling factors and regulates flowering in Arabidopsis by repressing FT. The Plant Cell 15,1552-1562.
Takada S,Goto K.2003.TERMINALFLOWER2, an Arabidopsis homolog ofHETEROCHROMATIN PROTEIN1, counteracts the activation of FLOWERING LOCUS T by CONSTANS in the vascular tissues of leaves to regulate flowering time. The Plant Cell 15,2856-2865.
Koornneef M,Hanhart CJ,van der Veen JH.1991.A genetic and physiological analysis of late flowering mutants in Arabidopsis thaliana. Mol Gen Genet 229,57-66.
An H,Roussot C,Suarez-Lopez P,Corbesier L,Vincent C,Pineiro M,Hepworth S,Mouradov A,Justin S,Turnbull C,Coupland G.2004.CONSTANS acts in the phloem to regulate a systemic signal that induces photoperiodic flowering of Arabidopsis. Development 131,3615-3626.
Imaizumi T,Schultz TF,Harmon FG,Ho LA,Kay SA.2005.FKF1 F-box protein mediates cyclic degradation of a repressor of CONSTANS in Arabidopsis. Science 309,293-297.
Imaizumi T,Tran HG,Swartz TE,Briggs WR,Kay SA.2003.FKF1 is essential for photoperiodic-specific light signalling in Arabidopsis. Nature 426,302-306.
Suarez-Lopez P,Wheatley K,Robson F,Onouchi H,Valverde F,Coupland G.2001.CONSTANS mediates between the circadian clock and the control of flowering in Arabidopsis. Nature 410,1116-1120.
Valverde F,Mouradov A,Soppe W,Ravenscroft D,Samach A,Coupland G.2004.Photoreceptor regulation of CONSTANS protein in photoperiodic flowering. Science 303,1003-1006.
Yanovsky MJ,Kay SA.2002.Molecular basis of seasonal time measurement in Arabidopsis. Nature 419,308-312.
Corbesier L, Vincent C, Jang S, Fornara F, Fan Q, Searle I, Giakountis A, Farrona S, Gissot L, Turnbull C, Coupland G. 2007. FT Protein Movement Contributes to Long-Distance Signaling in Floral Induction of Arabidopsis. Science 316, 1030-1033.
Abe M,Kobayashi Y,Yamamoto S,Daimon Y,Yamaguchi A,Ikeda Y,Ichinoki H,Notaguchi M,Goto K,Araki T.2005.FD,a bZIP protein mediating signals from the floral pathway integrator FT at the shoot apex. Science 309, 1052-1056.
Jakoby M,Weisshaar B,Droge-Laser W,Vicente-Carbajosa J,Tiedemann J,Kroj T,Parcy F.2002.bZIP transcription factors in Arabidopsis.Trendsin Plant Science 7,106-111.
Wigge PA,Kim MC,JaegerKE,Busch W,Schmid M,Lohmann JU,Weigel D.2005.Integration of spatial and temporal information during floral induction in Arabidopsis. Science 309,1056-1059.
Hanzawa Y,Money T,Bradley D.2005.A single amino acid converts a repressor to an activator of flowering. Proc Natl Acad Sci USA 102, 7748-7753.
Kotoda N,Wada M.2005.MdTFL1, a TFL1-like gene of apple, retards the transition from the vegetative to reproductive phase in transgenic Arabidopsis. Plant Science 168,95-104.
Ahn JH,Miller D,Winter VJ,Banfield MJ,Lee JH,Yoo SY,Henz SR,Brady RL,Weigel D.2006.A divergent external loop confers antagonistic activity on floral regulators FT and TFL1. The EMBO Journal 25,605-614.
Shannon S,Meeks-Wagner DR.1991.A Mutation in the Arabidopsis TFL1 Gene Affects Inflorescence Meristem Development. The PlnatCell 3, 877-892.
Kotoda N,Iwanami H,Takahashi S,Abe K.2006.Antisense expression of MdTFL1, a TFL1-like gene, reduces the juvenile phase in apple. J Amer Soc Hort Sci 131,74-81.
五十亜紀.2007.リンゴ小球形潜在ウイルスベクターを利用した植物内在性遺伝子のRNAサイレンシングの誘導.岩手大学大学院農学研究科修士論文.
伝,小金澤碩,吉田浩二.1992.リンゴ輪状さび果Aウイルス(仮称)のリンゴ実生への戻し接種.日植病報 58,617.
伊藤伝.1997.リンゴ輪状さび果病の病原ウイルスについて. 日植病報 63,487.
Li C,Sasaki N,Isogai M,Yoshikawa N.2004.Stable expression of foreign proteins in herbaceous and apple plants using Apple latent spherical virus RNA2 vectors. Arch Virol 149,1541-1558.
Li C,Yoshikawa N,Takahashi T,Ito T,Yoshida K,Koganezawa H.2000.Nucleotide sequence and genome organization of apple latent spherical virus: a new virus classified into the family Comoviridae. Journal of General Virology 81,541-547.
江.1999.リンゴから分離された小球形ウイルスの分類学的研究.岩手大学大学院農学研究科修士論文.
李春江.2003.リンゴ小球形潜在ウイルス構造のゲノムとウイルスベクターへの改変に関する研究.岩手大学大学院連合農学研究科博士論文.
佐々木伸浩.2003.ALSVベクターによる抗菌性ペプチド植物体での発現.岩手大学農学部応用生物学科卒業論文
佐々木伸浩.2005.GFPでタグしたリンゴ小球形潜在ウイルスの細胞間および長距離移行の解析. 岩手大学大学院農学研究科修士論文.

発明が解決しようとする課題

0009

我が国の主要果樹であるリンゴやナシ等のバラ科果樹播種から開花まで通常6〜12年を要し、これがリンゴやナシの育種(品種改良)を困難にしている最大の原因の一つである。

0010

近年リンゴにおいても、花芽形成に関係する遺伝子機構が解明されつつあり、前記のとおり、花芽形成を抑制するリンゴTFL1遺伝子の発現抑制がリンゴの花芽形成を促進することが報告されている。すなわち、リンゴ(品種王林)について、リーフディスク法を用いてTFL1遺伝子のアンチセンス鎖を導入し、組織培養シュート再生を行った後に得られた形質転換リンゴのシュート矮性台木接ぎ木し、その後、温室搬入して育成した形質転換リンゴは、同条件下で育成した非形質転換リンゴが温室搬入後に開花まで約6年(69ヶ月)を要したのに対して、温室搬入後に8〜25ヶ月で開花した(非特許文献23)。しかしながら、リンゴの形質転換には多大な労力、並びに組織培養とシュート再生に長い期間を要するうえに、形質転換効率も低く(非特許文献23におけるリンゴの形質転換効率は0.15%)、さらに、形質転換が可能なリンゴ品種は限られているのが現状である。また、形質転換リンゴの導入遺伝子は次世代にも受け継がれるため、形質転換植物に対する規制が厳しい現在の情勢では、早期開花する形質転換リンゴが得られても、その形質転換リンゴから得られた次世代個体をそのまま育種素材として使用することは不可能である。

0011

一方、ウイルスベクターによる植物への外来遺伝子導入は、外来遺伝子を組み込んだウイルスが植物に感染・増殖することで成立するため、形質転換法と比較すると簡便性と迅速性に富んでいる。有効に機能するウイルスベクターの条件として、感染植物に激しい病徴を引き起こさないことや、感染植物において安定して増殖することなどが挙げられるが、ALSVベクターはこれらの条件を満たすウイルスベクターである。すなわち、ALSVベクターはリンゴに病気を引き起こすことなく無病徴感染し、安定して全身感染を維持する。ALSVベクターを用いた外来遺伝子の導入技術(例えば、特許文献2)が知られているが、このALSVベクター技術を用いたバラ科果樹の開花促進は全く知られていない。また、一般的に果樹類への安定したウイルス接種は困難であり、ALSVについてもリンゴをはじめとするバラ科果樹への効率的接種法はこれまでに確立されておらず、このことがバラ科果樹におけるALSVベクターを用いた外来遺伝子導入技術の利用への大きな障害になっていた。しかしながら、前記のとおり、ALSVベクターはリンゴをはじめとするバラ科果樹のウイルスベクターとして優れた特性を有している。また、ALSVは種子伝染するがその種子伝染率は低率であることから、ALSVベクター技術を用いて開花促進がなされたリンゴの次世代からはウイルスフリーの個体を選抜することが可能であり、その選抜したウイルスフリー個体は、遺伝子導入がなされていないリンゴとなんら変わることがないことから、そのまま育種素材として使用することが可能である。したがって、ALSVベクター技術によるリンゴをはじめとするバラ科果樹の開花促進法が確立できれば、即役立つ実用技術となると期待できる。

0012

本願発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、リンゴの開花を促進することによって、短期間でリンゴの花粉を取得するための新しい手段を提供することを課題としている。

課題を解決するための手段

0013

本願は、前記の課題を解決するための発明として、シロイヌナズナFT遺伝子を発現する組換えリンゴ小球形潜在ウイルス(FT-ALSV)に感染した増殖宿主から濃縮したウイルスRNAを、発根直後のリンゴ実生の子葉パーティクルガン法を用いて接種する工程を含み、播種から1.5ヵ月〜3ヵ月で開花させ、この花から発芽能力を有する花粉を採取することを特徴とするリンゴの花粉取得方法を提供する。

発明の効果

0014

本願発明によれば、通常は6〜12年を要するリンゴの開花を、1.5〜3ヶ月と大幅に短縮することを可能とする。これによって、リンゴの品種改良を効率よく行うことが可能となる。

0015

また、前記いずれかの方法で開花促進されたバラ科果樹の次世代個体から選別されたウイルスフリーの個体は、遺伝子導入がなされていないリンゴ個体となんら変わることがないことから、この選別個体やその種子はそのまま育種素材として使用することができる。

図面の簡単な説明

0016

FT-ALSV接種後約1.5ヶ月で開花した実生リンゴの写真像である。
FT-ALSV感染リンゴ開花個体から採取した花粉の発芽の様子である。この個体の花粉発芽率は約80%であった。

0017

シロイヌナズナFT遺伝子は、公知の配列情報GenBank/AB027504)に基づいて、シロイヌナズナのトータルRNAを鋳型とするRT-PCRや、シロイヌナズナcDNAライブラリープラークハイブリダイゼーション法等の公知の方法により取得することができる。具体的には、後記の実施例に記載の手順で容易に取得することができる。

0018

FT遺伝子を発現する組換えALSVベクター(FT-ALSV)の作製は、基本的には特許文献2に開示された方法に従って行うことができる。すなわち、ALSV RNA2の感染性cDNAクローンであるpEALSR2L5R5の外来遺伝子導入サイトに、FT遺伝子 cDNAを挿入することによってpEALSR2L5R5FTを構築し、ALSV RNA1の感染性cDNAクローンであるpEALSR1とともに増殖宿主に接種しウイルス化を行うことでFT-ALSVを得ることができる。

0019

このようにして得たFT-ALSV感染キノア用からFT-ALSVを濃縮し、濃縮試料から抽出したRNAをパーティクルガン法でバラ科果樹実生の子葉に接種することで、ほぼ100%の効率でFT-ALSV感染実生苗を作出でき、リンゴ等のバラ科果樹の開花を大幅に早めることが可能となる。本願発明におけるFT-ALSVのパーティクルガン接種は以下の手順で行うことができる。
工程(1):FT-ALSVを増殖宿主(例えば、キノア)に接種する。
工程(2):増殖宿主の感染葉からFT- ALSVを抽出し、遠心分離等の処理により濃縮する。
工程(3):この濃縮したFT- ALSVからRNAを単離する。
工程(4):発根直後のバラ科果樹植物実生の子葉にパーティクルガン法を用いて前記RNAを接種する。

0020

これらの具体的操作は、後記実施例に詳細に記載されており、実施例の記載に従って実施することができるが、特にこの方法は、前記工程(3)においてFT-ALSVから単離したRNAを接種すること、並びに前記工程(4)においてバラ科果樹実生の子葉に接種することを特徴の一つとしている。

0021

また、工程(4)における「発根直後のバラ科果樹植物実生の子葉」は以下の様に調製する。先ず、休眠終了後の発根間もない実生苗の種子の種皮メスで除去し、子葉を露出させる。そして、RNAを塗布したマイクロキャリアをパーティクルガンを用いて子葉に接種する。このようにして接種したFT-ALSVは、100%の効率でバラ科果樹実生に感染する。

0022

RNAを接種した種子は、遮光して湿度を保った状態で2〜3日静置したのち、徐々に外気馴化させ、その後培養土移植して、通常の生育温度(約25℃)で育成する。

0023

このようにして育成したバラ科果樹は、後記の実施例に示したリンゴの場合は約40%の個体が1.5〜3ヶ月で開花した。

0024

以下、実施例を示して本願発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが、本願発明は以下の例によって限定されるものではない。

0025

1.材料および方法
(1) FT-ALSVの感染性cDNAクローンの構築
シロイヌナズナFT遺伝子(864bp,accession number:AB027504)のFTタンパク質発現領域である525bp(塩基番号70〜594番)を次のように増幅した。DNA増幅の際、鋳型にはpBlue script IISK(+)のXbaI/SacIサイトにFTmRNAの塩基番号29〜709番までの配列を組み込んだプラスミド(pBSAtFT-19)を用い、またプラス鎖プライマーには10μM FT-Xho(+)[5’- CCGCTCGAGATGTCTATAAATATAAGAGA-3’](配列番号1)を、マイナス鎖プライマーには10μM FT-Sma(-)[5’-TCCCCCGGGAAGTCTTCTTCCTCCGCAGC-3’](配列番号2)を用いた。鋳型DNA溶液(10ng/μl)を1μl、プラス鎖プライマーとマイナス鎖プライマーをそれぞれ2μl、2.5mM dNTP mixture(TaKaRa)を1.6μl、10×Ex Taq Buffer(TaKaRa)を2μl、滅菌水を11.2μl、TaKaRa Ex Taqを0.2μl混合し、GeneAmpPCRSystem2400(Perkin Elmer)を使用して94℃で5分間処理した後、[94℃、30秒→55℃、30秒→72℃、60秒]の反応を35サイクル行い、続いて72℃で7分間処理した後、最後に4℃で5分間処理してPCRを終了した。得られたPCR産物1μlにLoading Buffer[0.25%ブロモフェノールブルー,1mMEDTA(pH8.0),40%スクロース]1μlを加え、Agarose S(ニッポンジーン)0.15g、TAE[40mM Tris,20mM酢酸,1mM EDTA(pH8.0)]15ml、エチジウムブロマイド0.6μlで調製した1%アガロースゲルウェルアプライして電気泳動し、増幅したDNAが期待されたFT遺伝子のサイズであることを確認した。

0026

次に、増幅したFT遺伝子をXhoIおよびSmaIで以下のように切断した。まず、PCRで増幅したFT遺伝子の溶液を10μl、10×K Buffer(TaKaRa)を10μl、滅菌水を78μl、XhoI(TaKaRa)を2μl混合し、37℃で2時間静置した。この反応液に100μlの滅菌水、100μlのTE[10mM Tris-HCl(pH8.0),1mMEDTA(pH8.0)]飽和フェノール、100μlのクロロホルムを順に加え、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌し、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清200μlに等量のクロロホルムを加え、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌した後、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離し、この上清200μlを別の1.5ml容チューブに移した。その上清に20μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)、600μlの99%エタノールを加え、十分に撹拌した後、-80℃で30分間静置した。14,000rpmで10分間(4℃)遠心分離して得られた沈殿に70%エタノール1mlを加えて14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、沈殿を減圧乾燥し、50μlの滅菌水に懸濁した。引き続きこの溶液に10×T Buffer(TaKaRa)を10μl、0.1%BSA(TaKaRa)を10μl、滅菌水を28μl、SmaI(TaKaRa)を2μl混合し、25℃で2時間静置した。制限酵素処理を施した反応液に100μlの滅菌水、100μlのTE飽和フェノール、100μlのクロロホルムを加え、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌し、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清200μlに等量のクロロホルムを加え、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌した後、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。遠心分離後、この上清200μlに20μlの3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)と600μlの99%エタノールを加え、十分に撹拌した後、-80℃で30分間静置した。14,000rpmで10分間(4℃)遠心分離して得られた沈殿に70%エタノール1mlを加えて14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、沈殿を減圧乾燥し、20μlの滅菌水に懸濁した。XhoIおよびSmaIによる酵素処理は、ALSV-RNA2に外来遺伝子導入サイトを付加した感染性cDNAクローンのpEALSR2L5R5(100ng/μl)10μlに対しても上と同様に行った。

0027

続いて、制限酵素処理したFT遺伝子およびpEALSR2L5R5の回収をQIA quick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて行った。FT遺伝子の溶液18μlに10×Loading Buffer 2μlを加え、1%アガロースゲルのウェルにアプライして電気泳動した後、メスを用いて目的のDNA断片をアガロースゲルから切り出し、1.5ml容チューブに入れゲルの重量を測った。ゲルの3倍容のBuffer QGを1.5ml容チューブに加え50℃に加温してゲルを完全に溶解し、溶液の色が黄色であることを確認した。ゲルと等量のイソプロパノールを加え、2ml容のチューブにカラムをセットし、これにゲルが溶解した溶液を入れ、10,000rpmで1分間(室温)遠心分離した。2ml容チューブに落ちた溶液を捨て、カラムに750μlのBuffer PEを加えて洗浄し、10,000rpmで1分間(室温)遠心分離した後、再度2ml容チューブに落ちた溶液を捨てた。10,000rpmで1分間(室温)遠心分離し、カラムを新たな1.5ml容チューブにセットし、DNA溶出のため30μlのBuffer EB[10mM Tris-HCl(pH8.5)]をカラムの中央に加え、1分間静置後、13,000rpmで1分間(室温)遠心分離した。

0028

ゲル回収後のFT遺伝子をインサートDNA、pEALSR2L5R5をプラスミドベクターとしてライゲーションを行った。インサートDNA溶液4μlとプラスミドベクター溶液1μlを混合し、DNA Ligation Kit Ver.2.1(TaKaRa)のI液を5μl加えて16℃で2時間静置した後、1.1μlのIII液を加えてライゲーション溶液とした。

0029

形質転換はHeat Shock法で行った。-80℃で保存していた100μlのコンピテントセル中でゆっくりと解凍し、そこへライゲーション溶液を5μl加え5秒間ゆっくりと混合し、氷中で30分間静置した。続いてウォーターバスを用いて42℃で45秒間加温し、終了後2分間氷中で冷却した。予め温めておいたSOC[2%tryptone,0.5%yeast extract,0.058%NaCl,0.019%KCl,10mM MgCl2,10mM MgSO4,20mMグルコース] 900μlをクリーンベンチ内で加え蓋をしてパラフィルムを巻き、振とう培養器を用いて37℃で1時間振とうした。この培養液200μlをLMAプレート[1%tryptone,0.5%yeast extract,0.058%NaCl,10mM MgSO4,1.5%agar,40mg/mlアンピシリン]に滴下し、スプレッダー培地の表面に塗布し、シャーレの蓋を開けた状態で10分間乾かした。残った培養液800μlは14,000rpmで30秒間遠心分離し、上清600μlを捨て残った200μlの溶液で沈殿を懸濁した。この溶液のうち100μlを同様にLMAプレートに滴下してスプレッダーで培地の表面に塗布、さらに蓋を開けた状態で10分間乾かした。培地が乾燥したら各プレートはインキュベーターに入れ、37℃で12〜16時間培養した。

0030

形質転換したコロニースモールスケール培養するため2mlのLB培養液[1%tryptone,0.5%yeast extract,1%NaCl]を入れた試験管を16本用意し、オートクレーブ後これに10倍希釈したアンピシリン[25mg/ml]を各試験管に40μl添加した。コロニーを滅菌した爪楊枝の先端でかきとりLMAプレートに接触させることで大腸菌の一部を植菌してマスタープレートを作成し、爪楊枝はそのままLB培養液の入った試験管に入れた。マスタープレートはコロニーごとに番号をふって区別し、37℃で一晩静置培養した後、ビニールテープ密閉し、4℃で保存した。LB培養液の入った試験管にもマスタープレートと対応する番号をふり、傾けて37℃で一晩振とう培養した後、各試験管の全量を同じ番号を記した16本の1.5ml容チューブに移して14,000rpmで1分間(室温)遠心分離した。以下、16本の各1.5ml容チューブについて行った操作を示す。上清をアスピレーターで除去し、STET[0.1M NaCl,10mM Tris-HCl(pH8.0),1mMEDTA(pH8.0),5% TritonX-100]350μlを加えて混和し、沈殿を懸濁した。10mM Tris-HCl(pH8.0)に10mg/mlになるよう調製したリゾチーム溶液を25μl加えて3秒間撹拌し、40秒間煮沸した後氷中で5分間冷却した。14,000rpmで10分間(室温)遠心分離し、沈殿を滅菌した爪楊枝を用いて除去し、残った上清に3M酢酸ナトリウム(pH5.2)40μlとイソプロパノール420μlを加えて撹拌した後、室温で5分間静置した。これを14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離し、上清を丁寧に取り除いた。得られた沈殿に500μlの70%エタノールを加え、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離後、上清を除去し、沈殿を減圧乾燥した。これにRNaseが20μg/mlとなるよう調整したTEを50μl添加して懸濁し、37℃で30分間静置してプラスミド溶液とした。

0031

スモールスケール培養により得たプラスミドにFT遺伝子が導入されているかどうかを制限酵素で処理して確認した。プラスミド溶液2μl、10×K Buffer(TaKaRa)1μl、滅菌水6.8μl、XhoI(TaKaRa)0.2μlを新たな1.5ml容チューブに移して混合し、37℃で2時間静置した。その後、90μlの滅菌水、50μlのTE飽和フェノール、50μlのクロロホルムを順に加え、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌し、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清100μlに等量のクロロホルムを加え、ボルテックスミキサーで30秒間撹拌した後、14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離し、この上清100μlを別の1.5ml容チューブに移した。その上清に10μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)、300μlの99%エタノールを加え、十分に撹拌した後、-80℃で30分間静置した。静置後、14,000rpmで10分間(4℃)遠心分離し、得られた沈殿に70%エタノール500μlを加えて14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、沈殿を減圧乾燥し、10μlの滅菌水に懸濁した。引き続きこの溶液に10×T Buffer(TaKaRa)を2μl、0.1%BSA(TaKaRa)を2μl、滅菌水を5.6μl、SmaI(TaKaRa)を0.4μl混合し、25℃で2時間静置した。静置後、XhoIとSmaIで処理したプラスミド溶液のうち9μlに10×Loading buffer 1μlを加え1%アガロースゲルのウェルにアプライして電気泳動した。泳動の結果、PCRにより得られたFT遺伝子と同じサイズの断片がプラスミドから切り出されているサンプルの番号を控え、次のラージスケール培養にその番号の記されたコロニーを用いた。

実施例

0032

ラージスケール培養には200μlのアンピシリンを加えた100mlのLB培養液とQIAGEN Plasmid Midi Kit(100)(QIAGEN)を用いて行った。マスタープレートから単一コロニーを爪楊枝で採取し、これをLB培養液の入った坂口フラスコに入れ37℃で12〜16時間振とう培養し、培養後ファルコンチューブに培養液50mlを移して7,500rpmで15分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、残りの50mlも同じように遠心分離し、その後ペレットをRNaseの入った4mlのBuffer P1に懸濁して4mlのBuffer P2を添加後、4〜6回転倒させ十分に混和し5分間室温で静置した。冷却したBuffer P3を4ml添加して4〜6回転倒させ混和した後、15分間氷上でインキュベーションした。続いて50ml容の遠心管に溶液を移し、13,000rpm(日立RPR16ローター)で30分間(4℃)遠心分離し、プラスミドDNAを含む上清を回収した。この上清を再度13,000rpmで15分間 (4℃)遠心分離した。カラムに4mlのBuffer QBTを加えカラムが空になるまで自然落下させ平衡化し、遠心分離で得られた上清をこのカラムに添加して樹脂浸透させた。カラムを10mlのBufferQCで2回洗浄し、5mlのBuffer QFでDNAを新たなファルコンチューブに溶出した。溶出したDNA溶液にイソプロパノール3.5mlを添加し混和した後、COREXチューブへ入れ直ちに11,000rpmで30分間(4℃)遠心分離(日立RPR16ローター)し、上清を素早くデカンテーションで除去した。沈殿したDNAを70%エタノール2mlで洗浄し、11,000rpmで10分間(4℃)遠心分離し、上清を取り除いて沈殿したDNAを減圧乾燥した後、TE100μlに溶解した。分光光度計(ND-1000 v3.1.2)を用いてDNAの濃度を1μg/μlに調製し、pEALSR2L5R5にFT遺伝子を導入した感染性cDNAクローンpEALSR2L5R5FTを得た。
(2) 感染性cDNAクローンのウイルス化
(1)の方法に従って、ラージスケール培養から精製したALSV RNA1 の感染性cDNAクローンであるpEALSR1を1μg/μlに調製した。増殖宿主のChenopodium quinoa(以下キノア)の葉にカーボランダムをふりかけ、pEALSR1(1μg/μl)とpEALSR2L5R5FT(1μg/μl)を等量ずつ混ぜ合わせたDNA溶液をこれら1葉当たり8μlずつ接種しウイルス化を行うことでFT遺伝子を発現するALSVベクター(FT-ALSV)を得た。FT-ALSV感染により退緑症状が現れたキノア葉をサンプリングし、以後の操作に用いた。
(3) ウイルスの濃縮
FT遺伝子を連結したALSV(FT-ALSV)の濃縮は以下の手順で行った。まず、FT-ALSVをChenopodium quinoa(以下キノア)に接種後、7〜10日の接種葉と病徴の現れた上葉をサンプリングした。この感染葉100gに対し、300mlの抽出緩衝液[0.1M Tris-HCl(pH7.8),0.1M NaCl,5mM MgCl2]と3mlのメルカプトエタノールを加えてワーリングブレンダー磨砕した。磨砕液を2重ガーゼでろ過し、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離(日立RPR12-2ローター)した。得られた溶液に、ベントナイト溶液(40mg/ml)を攪拌しながら静かに加え、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離した。上清が透明な黄色になるまでこの作業を繰り返し清澄化した。次に、上清にポリエチレングリコールを8%になるように加え、氷中で1時間攪拌した。9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離した後、沈殿を20mlの抽出緩衝液に溶解した。続いて10mlのクロロホルムを加えて15分間(4℃)攪拌した。9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離(日立RPR16ローター)後、上清を45,000rpmで1.5時間(4℃)遠心分離(日立RP65ローター)した。沈殿に1mlの抽出緩衝液を加えて十分に懸濁した後、9,000rpmで10分間(4℃)遠心分離しこの上清を濃縮FT-ALSVとした。
(4) RNAの抽出
濃縮FT-ALSVからRNAを抽出し、マイクロキャリアの調製に用いた。濃縮FT-ALSVからのRNAの抽出は以下の手順で行った。濃縮FT-ALSV 50μlに滅菌水150μlを加え撹拌した後、水飽和フェノールとクロロホルムを100μlずつ加えてボルテックスミキサーで十分に攪拌した。14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離後、上清200μlを新しい1.5ml容チューブに移し、20μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)、500μlの99%エタノールを加え、十分に撹拌した後、-80℃で15分間静置した。14,000rpmで15分間(4℃)遠心分離して得られた沈殿に70%エタノール1mlを加えて14,000rpmで5分間(4℃)遠心分離した。上清を捨て、15μlの滅菌水に懸濁した。分光光度計(ND-1000 v3.1.2)で得られた溶液を1μg/μlに調整し、これをRNA溶液とした。
(5)パーティクルガン接種(BiolisticPDS-1000/He Particle Delively System(Bio-Rad
))
マイクロキャリア(RNA;3μg/金粒子;0.4mg/shot)の調製は以下の手順で行った。まず、1.5ml容チューブに金粒子(0.6μm)を2.4mg量り取り、滅菌水100μlを加えボルテックスミキサーで十分に混和した。超音波洗浄機にチューブを入れ、5分間ソニケーションした。ボルテックスミキサーにチューブをセットし撹拌しながら18μlのRNA溶液(1μg/μl)を静かに加えた。同様に、5M酢酸アンモニウムを11.8μl、続いてイソプロパノールを259.6μl静かに加えた。しばらく撹拌した後、−20℃で1時間以上静置した。上清を取り除き金粒子の沈殿をボルテックスミキサーで一瞬撹拌した。金粒子の沈殿に1mlの100%エタノールを加え、沈殿を崩さないように静かに振盪し、その後上清を取り除いた。この作業を4回繰り返した後に60μlの100%エタノールに金粒子を懸濁した。懸濁液10μlをマイクロキャリアの中心に約1cmに塗り広げ十分乾燥させた後に、パーティクルガンを用いて植物への導入を行った。パーティクルガンを用いた接種試験には発根して間もないリンゴの種子4〜6個体を1試験区として供試した。種皮をメスで取り除きシャーレに同心円状に並べ、その子葉にヘリウム圧1100psiでBiolistic PDS-1000/He Particle Delively System(Bio-Rad)を用いて1試験区あたり4shot行った。
(6) パーティクルガン接種(Helios Gene Gun System(Bio-Rad))
マイクロキャリア(RNA;3μg/金粒子;0.4mg/shot)の調製は以下の手順で行った。まず、1.5ml容チューブに金粒子(1.0μm)を7.2mg量り取り、滅菌水100μlを加えボルテックスミキサーで十分に混和した。超音波洗浄機にチューブを入れ、5分間ソニケーションした。ボルテックスミキサーにチューブをセットし撹拌しながら54μlのRNA溶液(1μg/μl)を静かに加えた。同様に、5M 酢酸アンモニウムを15.4μl、続いてイソプロパノールを338.8μl静かに加えた。しばらく撹拌した後、−20℃で1時間以上静置した。上清を取り除き金粒子の沈殿をボルテックスミキサーで一瞬撹拌した。金粒子の沈殿に1mlの100%エタノールを加え、沈殿を崩さないように静かに振盪し、その後上清を取り除いた。この作業を4回繰り返した後に1080μlの100%エタノールに金粒子を懸濁し、ゴールドコートチューブの調製に使用した。チュービングプレップステーション(BIO-RAD)にゴールドコートチューブ(BIO-RAD)をセットし、純窒素ガスを20分間通してゴールドコートチューブの内部を完全に乾燥させた。続いて金粒子の懸濁液を、均一になるようゴールドコートチューブ内に充填し、5分間放置して金粒子をゴールドコートチューブに沈着させた後、上清の99.5%エタノールをゴールドコートチューブ内から取り除いた。続いてチュービングプレップステーションを回転させ、金粒子をゴールドコートチューブ内部に均一に拡散させながらゴールドコートチューブ内に純チッソガスを通し、金粒子を完全に乾燥させた。続いてゴールドコートチューブを、チューブカッター(BIO-RAD)を用いて18個に裁断し、パーティクルガンを用いて植物への導入を行った。発根して間もないリンゴ種子の種皮をメスで取り除き、その子葉に接種した。接種はヘリウム圧220psiでHelios Gene Gun System(Bio-Rad)を用いて1個体あたり4shot行った。
(7) 接種個体の育成
接種個体は湿度を保ち、遮光条件下で2〜3日静置した後に、徐々に外気に馴化させ、その後培養土に移植し、培養室(25℃、明期16時間-暗期8時間)で育成した。
(8)花粉発芽試験
花粉の発芽率ショ糖17%を含む1%寒天培地上に花粉を散布し、培養室に12時間以上静置後、一花につき120粒以上光学顕微鏡下で観察し、花粉管伸長している花粉の割合から求めた。
2.結果
濃縮FT-ALSVから抽出したRNAを発根直後のリンゴ実生の子葉にパーティクルガン法を用いて接種することにより、接種した20個体中20個体においてFT-ALSVの全身感染が確認できた。したがって、本法を用いることにより非常に高い効率でALSVベクターをリンゴに感染させられることができることが明らかとなった。また、FT-ALSVの感染が確認された20個体中8個体で、接種後1.5ヶ月から3ヶ月の間に、図1に示したように開花が認められた。開花した各個体から花粉を採取し発芽試験を行った結果、いずれの個体の花粉も発芽能力を有し、高いものでは図2に示したように、発芽率は80%近かった。すなわち、FT-ALSVを利用することで通常6年から12年を要するリンゴの開花までの期間を大幅に短縮できるとともに、FT-ALSV感染により早期開花したリンゴを花粉親に用いることが可能であると考えられた。

0033

以上詳しく説明したように、本願発明によって、リンゴの開花時期を大幅に早めることにより短期間でリンゴの花粉を取得することが可能となる。これは、リンゴの品種改良に大いに資するものである。

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