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技術 レールの製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 上田正治宮崎照久
出願日 2014年2月19日 (6年10ヶ月経過) 出願番号 2014-029930
公開日 2014年6月5日 (6年6ヶ月経過) 公開番号 2014-101583
状態 特許登録済
技術分野 物品の熱処理 鋼の加工熱処理
主要キーワード レール延 すべり帯 規定領域内 ころがり面 冷却温度範囲 荷重制御装置 電解研摩 ラメラ組織
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年6月5日)のものです。
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図面 (10)

課題

貨物鉄道レールで要求される耐内部疲労損傷性を向上させたレールを提供する。

解決手段

本発明に係るレールの製造方法は、所定の化学組成を有するブルーム再加熱し、熱間圧延を行い前記レールとした直後に加速冷却して製造する際、前記熱間圧延において、前記レール頭部外郭表面における最終圧延温度を1000℃超1100℃以下、かつ、前記熱間圧延開始前の鋼断面積に対する減面量の百分率で定義される最終圧延減面率を1.0〜3.9%とすることを特徴とする。また、本発明に係るレールの製造方法は、ブルームを再加熱し、熱間圧延を行いレールとした後に前記レールを再加熱して加速冷却を行い製造する際、前記レールの再加熱において、再加熱温度を1000℃超1150℃以下とし、保持時間を5〜10分とすることを特徴とする。

概要

背景

経済発展に伴い、石炭などの天然資源の新たな開発が進められている。具体的には、これまで未開発であった自然環境の厳しい地域での採掘が進められている。これに伴い、資源輸送する貨物鉄道では、軌道環境が著しく厳しくなっている。レールに対しては、これまで以上の耐摩耗性が求められるようになってきた。このような背景から、耐摩耗性を向上させたレールの開発が求められるようになってきた。

レール鋼の耐摩耗性を改善するために、下記に示すような高強度レールが開発された。これらのレールの主な特徴は、耐摩耗性を向上させるために、熱処理によりパーライトラメラ間隔微細化し、鋼の硬さを増加させる点である。または、鋼の炭素量を増加させて、パーライトラメラ中のセメンタイト相体積比率を増加させていることも、これらのレールの特徴である(例えば、特許文献1、2参照)。

特許文献1の開示技術では、レールの圧延終了後に、又はレールを圧延終了後に再加熱した後に、レール頭部をオーステナイト域温度から850〜500℃まで冷却速度1〜4℃/secで加速冷却し、これにより耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。

特許文献2の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラに含まれるセメンタイトの体積比率を増加させ、これにより耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。

特許文献1、及び2の開示技術では、パーライト組織中のラメラ間隔の微細化によるレールの高硬度化、及び、パーライト組織中のラメラに含まれるセメンタイト相の体積比率の増加により、レールの耐摩耗性の向上が図れる。しかし、貨物鉄道では、レール頭部内部(レール頭部表面から深さ20〜30mmの位置)から発生する疲労損傷が多発するようになってきた。

そこで、耐内部疲労損傷性を向上させた高強度レールの開発が求められるようになってきた。疲労損傷に関する問題を解決するために、下記に示すような高強度レールが開発された。これらのレールの主な特徴は、耐内部疲労損傷性を向上させるために、微量な合金を鋼に含有することによりパーライト変態を制御する点にある。また、これらのレールの別の特徴は、微量な合金を鋼のパーライト組織中に析出させることによりレール頭部内部の硬さを向上させる点にある(例えば、特許文献3、4参照)。

特許文献3の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にBを含有することにより、レール頭部内部のパーライトの変態温度を制御し、レール頭部内部の硬さを向上させる。

特許文献4の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にV、及びNを含有することにより、パーライト組織中にVの炭窒化物を析出させて、レール頭部内部の硬さを向上させる。

特許文献3、4の開示技術では、レール頭部内部のパーライト変態温度の制御やパーライト組織析出強化により、レール頭部内部の硬さを向上させ、ある一定範囲において耐内部疲労損傷性の向上が図れる。しかし、製造条件の変動等により内部疲労損傷が発生し、耐内部疲労損傷性が低下する場合があった。

概要

貨物鉄道のレールで要求される耐内部疲労損傷性を向上させたレールを提供する。本発明に係るレールの製造方法は、所定の化学組成を有するブルームを再加熱し、熱間圧延を行い前記レールとした直後に加速冷却して製造する際、前記熱間圧延において、前記レール頭部外郭表面における最終圧延温度を1000℃超1100℃以下、かつ、前記熱間圧延開始前の鋼断面積に対する減面量の百分率で定義される最終圧延減面率を1.0〜3.9%とすることを特徴とする。また、本発明に係るレールの製造方法は、ブルームを再加熱し、熱間圧延を行いレールとした後に前記レールを再加熱して加速冷却を行い製造する際、前記レールの再加熱において、再加熱温度を1000℃超1150℃以下とし、保持時間を5〜10分とすることを特徴とする。

目的

本発明は、貨物鉄道で使用される高強度レールの製造方法において、耐内部疲労損傷性を向上させることを目的とした

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
1件

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請求項1

化学組成が、質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.0250%以下、S:0.0250%以下、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜0.50%、Co:0〜1.00%、B:0〜0.0050%、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、V:0〜0.50%、Nb:0〜0.050%、Ti:0〜0.0500%、Mg:0〜0.0200%、Ca:0〜0.0200%、REM:0〜0.0500%、Zr:0〜0.0200%、N:0〜0.0200%、Al:0〜1.00%、残部:Feおよび不純物であるレールであって、前記レールの延伸方向に沿ってレール頭部の頂部に延在する平坦な領域である頭頂部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記レール頭部の側部に延在する平坦な領域である側頭部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記頭頂部と前記側頭部との間に延在する丸められた角部と前記側頭部の上半分とを併せた領域である頭部コーナー部と、前記頭頂部の表面と前記頭部コーナー部の表面とを併せた領域であるレール頭部外郭表面と、を備えるレールの製造方法であって、前記化学組成を有するブルーム再加熱し、熱間圧延を行い前記レールとした直後に加速冷却して製造する際、前記熱間圧延において、前記レール頭部外郭表面における最終圧延温度を1000℃超1100℃以下、かつ、前記熱間圧延開始前の鋼断面積に対する減面量の百分率で定義される最終圧延減面率を1.0〜3.9%とすることを特徴とするレールの製造方法。なお、前記減面量とは、前記熱間圧延開始前の鋼断面積と前記熱間圧延終了後の鋼断面積との差である。

請求項2

前記加速冷却を行う際、前記レール頭部外郭表面の温度が800〜600℃の範囲における加速冷却速度を3〜10℃/secとすることを特徴とする請求項1に記載のレールの製造方法。

請求項3

化学組成が、質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.0250%以下、S:0.0250%以下、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜0.50%、Co:0〜1.00%、B:0〜0.0050%、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、V:0〜0.50%、Nb:0〜0.050%、Ti:0〜0.0500%、Mg:0〜0.0200%、Ca:0〜0.0200%、REM:0〜0.0500%、Zr:0〜0.0200%、N:0〜0.0200%、Al:0〜1.00%、残部:Feおよび不純物であるレールであって、前記レールの延伸方向に沿ってレール頭部の頂部に延在する平坦な領域である頭頂部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記レール頭部の側部に延在する平坦な領域である側頭部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記頭頂部と前記側頭部との間に延在する丸められた角部と前記側頭部の上半分とを併せた領域である頭部コーナー部と、前記頭頂部の表面と前記頭部コーナー部の表面とを併せた領域であるレール頭部外郭表面と、を備えるレールの製造方法であって、前記化学組成を有するブルームを再加熱し、熱間圧延を行い前記レールとした後に前記レールを再加熱して加速冷却を行い製造する際、前記レールの再加熱において、再加熱温度を1000℃超1150℃以下とし、保持時間を5〜10分とすることを特徴とするレールの製造方法。

請求項4

前記加速冷却を行う際、前記レール頭部外郭表面の温度が800〜600℃の範囲における加速冷却速度を5〜15℃/secとすることを特徴とする請求項3に記載のレールの製造方法。

請求項5

前記化学組成が、質量%で、Cr:0.01〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%、Co:0.01〜1.00%、B:0.0001〜0.0050%、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、V:0.005〜0.50%、Nb:0.0010〜0.050%、Ti:0.0030〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0200%、REM:0.0005〜0.0500%、Zr:0.0001〜0.0200%、N:0.0060〜0.0200%、及びAl:0.0100〜1.00%、の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のレールの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、貨物鉄道で使用される高強度レールの製造方法において、耐内部疲労損傷性を向上させることを目的としたレールの製造方法に関する。
本願は、2012年6月14日に、日本に出願された特願2012−134442号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

0002

経済発展に伴い、石炭などの天然資源の新たな開発が進められている。具体的には、これまで未開発であった自然環境の厳しい地域での採掘が進められている。これに伴い、資源輸送する貨物鉄道では、軌道環境が著しく厳しくなっている。レールに対しては、これまで以上の耐摩耗性が求められるようになってきた。このような背景から、耐摩耗性を向上させたレールの開発が求められるようになってきた。

0003

レール鋼の耐摩耗性を改善するために、下記に示すような高強度レールが開発された。これらのレールの主な特徴は、耐摩耗性を向上させるために、熱処理によりパーライトラメラ間隔微細化し、鋼の硬さを増加させる点である。または、鋼の炭素量を増加させて、パーライトラメラ中のセメンタイト相体積比率を増加させていることも、これらのレールの特徴である(例えば、特許文献1、2参照)。

0004

特許文献1の開示技術では、レールの圧延終了後に、又はレールを圧延終了後に再加熱した後に、レール頭部をオーステナイト域温度から850〜500℃まで冷却速度1〜4℃/secで加速冷却し、これにより耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。

0005

特許文献2の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)を用いて、パーライト組織中のラメラに含まれるセメンタイトの体積比率を増加させ、これにより耐摩耗性に優れたレールを提供することができる。

0006

特許文献1、及び2の開示技術では、パーライト組織中のラメラ間隔の微細化によるレールの高硬度化、及び、パーライト組織中のラメラに含まれるセメンタイト相の体積比率の増加により、レールの耐摩耗性の向上が図れる。しかし、貨物鉄道では、レール頭部内部(レール頭部表面から深さ20〜30mmの位置)から発生する疲労損傷が多発するようになってきた。

0007

そこで、耐内部疲労損傷性を向上させた高強度レールの開発が求められるようになってきた。疲労損傷に関する問題を解決するために、下記に示すような高強度レールが開発された。これらのレールの主な特徴は、耐内部疲労損傷性を向上させるために、微量な合金を鋼に含有することによりパーライト変態を制御する点にある。また、これらのレールの別の特徴は、微量な合金を鋼のパーライト組織中に析出させることによりレール頭部内部の硬さを向上させる点にある(例えば、特許文献3、4参照)。

0008

特許文献3の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にBを含有することにより、レール頭部内部のパーライトの変態温度を制御し、レール頭部内部の硬さを向上させる。

0009

特許文献4の開示技術では、過共析鋼(C:0.85超〜1.20%)にV、及びNを含有することにより、パーライト組織中にVの炭窒化物を析出させて、レール頭部内部の硬さを向上させる。

0010

特許文献3、4の開示技術では、レール頭部内部のパーライト変態温度の制御やパーライト組織析出強化により、レール頭部内部の硬さを向上させ、ある一定範囲において耐内部疲労損傷性の向上が図れる。しかし、製造条件の変動等により内部疲労損傷が発生し、耐内部疲労損傷性が低下する場合があった。

先行技術

0011

日本国特許第1567917号
日本国特開平08−144016号公報
日本国特願平08−527465号公報
日本国特許第3513427号
日本国特開平08−246100号公報
日本国特開平09−111352号公報

発明が解決しようとする課題

0012

本発明は、上述した問題点に鑑み案出されたものであり、特に、貨物鉄道のレールで要求される耐内部疲労損傷性を向上させたレールを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

以下に、本発明の種々の態様について説明する。

0014

(1)本発明の一態様に係るレールの製造方法は、化学組成が、質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.0250%以下、S:0.0250%以下、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜0.50%、Co:0〜1.00%、B:0〜0.0050%、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、V:0〜0.50%、Nb:0〜0.050%、Ti:0〜0.0500%、Mg:0〜0.0200%、Ca:0〜0.0200%、REM:0〜0.0500%、Zr:0〜0.0200%、N:0〜0.0200%、Al:0〜1.00%、残部:Feおよび不純物であるレールであって、前記レールの延伸方向に沿ってレール頭部の頂部に延在する平坦な領域である頭頂部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記レール頭部の側部に延在する平坦な領域である側頭部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記頭頂部と前記側頭部との間に延在する丸められた角部と前記側頭部の上半分とを併せた領域である頭部コーナー部と、前記頭頂部の表面と前記頭部コーナー部の表面とを併せた領域であるレール頭部外郭表面と、を備えるレールの製造方法であって、前記化学組成を有するブルームを再加熱し、熱間圧延を行い前記レールとした直後に加速冷却して製造する際、前記熱間圧延において、前記レール頭部外郭表面における最終圧延温度を1000℃超1100℃以下、かつ、前記熱間圧延開始前の鋼断面積に対する減面量の百分率で定義される最終圧延減面率を1.0〜3.9%とする。
なお、前記減面量とは、前記熱間圧延開始前の鋼断面積と前記熱間圧延終了後の鋼断面積との差である。

0015

(2)上記(1)に記載のレールの製造方法は、さらに、前記加速冷却を行う際、前記レール頭部外郭表面の温度が800〜600℃の範囲における加速冷却速度を3〜10℃/secとしてもよい。
(3)本発明の他の態様に係るレールの製造方法は、化学組成が、質量%で、C:0.75〜1.20%、Si:0.10〜2.00%、Mn:0.10〜2.00%、P:0.0250%以下、S:0.0250%以下、Cr:0〜2.00%、Mo:0〜0.50%、Co:0〜1.00%、B:0〜0.0050%、Cu:0〜1.00%、Ni:0〜1.00%、V:0〜0.50%、Nb:0〜0.050%、Ti:0〜0.0500%、Mg:0〜0.0200%、Ca:0〜0.0200%、REM:0〜0.0500%、Zr:0〜0.0200%、N:0〜0.0200%、Al:0〜1.00%、残部:Feおよび不純物であるレールであって、前記レールの延伸方向に沿ってレール頭部の頂部に延在する平坦な領域である頭頂部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記レール頭部の側部に延在する平坦な領域である側頭部と、前記レールの前記延伸方向に沿って前記頭頂部と前記側頭部との間に延在する丸められた角部と前記側頭部の上半分とを併せた領域である頭部コーナー部と、前記頭頂部の表面と前記頭部コーナー部の表面とを併せた領域であるレール頭部外郭表面と、を備えるレールの製造方法であって、前記化学組成を有するブルームを再加熱し、熱間圧延を行い前記レールとした後に前記レールを再加熱して加速冷却を行い製造する際、前記レールの再加熱において、再加熱温度を1000℃超1150℃以下とし、保持時間を5〜10分とする。
(4)上記(3)に記載のレールの製造方法は、さらに、前記加速冷却を行う際、前記レール頭部外郭表面の温度が800〜600℃の範囲における加速冷却速度を5〜15℃/secとしてもよい。

0016

(5)上記(1)〜(4)の何れか一項に記載のレールの製造方法は、前記化学組成が、質量%で、Cr:0.01〜2.00%、Mo:0.01〜0.50%、Co:0.01〜1.00%、B:0.0001〜0.0050%、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜1.00%、V:0.005〜0.50%、Nb:0.0010〜0.050%、Ti:0.0030〜0.0500%、Mg:0.0005〜0.0200%、Ca:0.0005〜0.0200%、REM:0.0005〜0.0500%、Zr:0.0001〜0.0200%、N:0.0060〜0.0200%、及びAl:0.0100〜1.00%、の1種または2種以上を含有してもよい。

発明の効果

0017

本発明の一態様によれば、レール鋼の成分、及び組織を制御することにより、レール頭部内部のパーライトブロック平均粒径と平均硬さとを制御して、貨物鉄道で使用されるレールの耐内部疲労損傷性を向上させ、レールの使用寿命を大きく向上させることが可能となる。

図面の簡単な説明

0018

レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径と疲労限荷重との関係を示した図である。
レール頭部内部の硬さと疲労限荷重との関係を示した図である。
本発明の一態様のレールの頭部断面表面位置での呼称、および、パーライト組織を90%以上にすることが必要な領域を示した図である。
レール横断面におけるパーライトブロックの測定領域を示した図である。
転動疲労試験概要を示した図である。
本発明レール鋼(符号A1〜A44)及び比較レール鋼(符号B9〜B17)のレール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径それぞれと疲労限荷重との関係を示した図である。
本発明レール鋼(符号A9〜A11、A13〜A15、A17〜A19、A21〜A23、A24〜A26、A28〜A30、A31〜A33、A36〜A38、A40〜A42)において、レール頭部内部の硬さと疲労限荷重との関係を示した図である。
最終圧延温度(レール頭部外郭表面)と頭部内部のパーライトブロックの平均粒径との関係を示すグラフである。
最終減面率と頭部内部のパーライトブロックの平均粒径との関係を示すグラフである。

0019

以下では、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。

0020

本実施形態として、耐内部疲労損傷性に優れたレールにつき、詳細に説明する。以下、組成における質量%は、単に%と記載する。

0021

まず、本発明者らは、レールの耐内部疲労損傷性を改善するために、内部疲労損傷の起点を調査した。その結果、本発明者らは、損傷がパーライト組織から発生していることを突き止めた。本発明者らは、さらに詳細に調査を進めた結果、パーライト組織中のパーライトブロックの境界部(パーライトブロック境界)にすべり帯が生成し、疲労き裂はこのすべり帯から発生していることを確認した。

0022

そこで、本発明者らは、すべり帯が生成される箇所であるパーライトブロック境界の面積を制御することにより耐内部疲労損傷性が制御できると考えた。さらに、パーライトブロック境界の面積を制御するための方法として、パーライトブロックの粒径を制御することが検討された。パーライトブロックの平均粒径が小さくなると、パーライトブロック境界の面積は増加する。

0023

パーライトブロック境界の面積と内部疲労損傷との関係を明らかにするために、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径が異なる種々のレールを製造し、これらの転動疲労特性を調査した。これらレールは、炭素量0.90%の鋼(0.90%C−0.50%Si−0.90%Mn−0.0150%P−0.0120%S)に対して熱間圧延および熱処理を種々の条件にて実施することにより、製造された。製造の際には、レール頭部表面から深さ20〜30mm位置におけるパーライトブロックの平均粒径を20〜320μmに制御し、且つパーライトブロックの平均硬さをHv300またはHv420に制御した。

0024

転動疲労特性は、実際のレール頭部に実際の車輪を繰り返し転動接触させる方法(転動疲労試験)によって計測した。試験条件の詳細は下記に示すとおりである。
<転動疲労特性の評価方法
・試験条件
試験機:転動疲労試験機(図5参照)
試験片形状レール:136ポンドレール(長さ2m)/車輪:AAR(Association of American Railroads)タイプ(直径920mm)
荷重ラジアル:50〜300kN/スラスト:20kN
潤滑ドライ+油(間欠給油
転動繰返し回数:最大200万回
・評価
疲労限荷重:転動を200万回繰り返した場合に内部疲労損傷が未発生であった垂直荷重最大値を求めた。

0025

図1に、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径(レール頭部表面から深さ20〜30mm位置)と疲労限荷重との関係を示す。パーライトブロックの平均粒径と疲労限荷重との間には強い相関関係があった。パーライトブロックの平均粒径が120〜200μmの範囲内である場合、疲労限荷重が150kNを安定的に超え、レールの耐内部疲労損傷性が大きく向上した。一方、パーライトブロックの平均粒径が120μm未満である場合、疲労限荷重が100kN以下まで低下した。また、パーライトブロックの平均粒径が200μm超である場合、同様に、疲労限荷重が100kN以下まで低下した。本発明者らは、これらの結果から、パーライト組織のパーライトブロック境界の面積に関して、耐内部疲労損傷性を向上させるための最適な範囲が存在すること、すなわち、パーライトブロックの平均粒径に関して最適な範囲が存在することを確認した。

0026

さらに、本発明者らは、パーライトブロックの平均粒径に最適な範囲が存在する理由を解明した。本発明者らは、内部疲労損傷部の破面解析を行った結果、疲労限荷重が低下した、パーライトブロックの平均粒径が120μm未満のレールでは、予測どおり微小な疲労き裂がパーライトブロック境界から多数生成しており、その微小な疲労き裂のうちの一つが選択的に伝播して内部疲労損傷を形成していることを確認した。また、疲労限荷重が低下したパーライトブロックの平均粒径が200μmを超えたレールでは、疲労き裂の生成は少ないが、選択的に伝播した疲労き裂の先端から脆性き裂が生成し、この脆性き裂に起因する脆性破壊により内部疲労損傷が発生していることが明らかになった。

0027

これらの結果から、本発明者らは、耐内部疲労損傷性を向上させるには、レール頭部内部のパーライトブロック境界の面積、すなわち、パーライトブロックの平均粒径を最適な範囲内に制御し、これにより疲労き裂の伝播及び脆性破壊を抑制することが必要であることを見出した。

0028

さらに、本発明者らは耐内部疲労損傷性をより一層向上させる方法を検討した。レール頭部内部のパーライト組織のブロック粒径の制御に加えて、すべり帯が生成するパーライトブロック境界を強化するためにパーライト組織の硬さを制御することにより、レールの耐内部疲労損傷性が向上すると考えた。

0029

炭素量0.90%の鋼(0.90%C−0.50%Si−0.90%Mn−0.0150%P−0.0120%S)を用いて、種々の条件の熱間圧延、および続く熱処理(加速冷却)により、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径及び硬さが異なった種々のレールを製造し、これらレールの転動疲労特性を調査した。製造にあたって、レール頭部表面から深さ20〜30mm位置におけるパーライトブロックの平均粒径を120、160、200μmに制御し、平均硬さをHv300〜500に制御した。転動疲労特性は、上記に示した方法で評価した。

0030

図2にレール頭部内部の硬さ(レール頭部表面から深さ20〜30mmの範囲の位置の平均硬さ)と疲労限荷重との関係を示す。いずれのパーライトブロックの平均粒径のレールにおいても、レール頭部内部の硬さと疲労限応力との間には強い相関関係があった。レール頭部内部の硬さがHv350以上になると、パーライトブロックの境界が強化されることにより、疲労限荷重が200kNを安定的に超え、レールの耐内部疲労損傷性がさらに大きく向上した。しかしながら、いずれのパーライトブロックの平均粒径のレールにおいても、レール頭部内部の硬さがHv460を超えると、パーライト組織の脆化により、逆に疲労限荷重が200kNを下回り、耐内部疲労損傷性の向上が認められなくなることが明らかとなった。

0031

本発明者らは、これらの結果から、レール頭部内部の硬さに関して、レールの耐内部疲労損傷性をより一層向上させるための最適な範囲が存在することを確認した。つまり、レール頭部表面から深さ20〜30mmの範囲の平均硬さがHv350〜460の範囲内であることが、より好ましい。

0032

すなわち、本発明の一態様は、レール鋼の成分及び組織を制御し、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を制御することにより、レールの耐内部疲労損傷性を向上させ、レールの使用寿命を大きく向上させることを目的としたレールに関するものである。加えて、本発明の別の態様に係るレールは、レール頭部内部の平均硬さを制御することにより、レールの耐内部疲労損傷性をさらに向上させることができる。

0033

次に、本発明の一態様の限定理由について詳細に説明する。以下、鋼組成における質量%は、単に%と記載する。

0034

(1)鋼の化学成分の限定理由
本発明の一態様のレールにおいて、鋼の化学成分を前述した数値範囲に限定する理由について詳細に説明する。

0035

Cは、パーライト変態を促進させて、かつ、耐摩耗性を確保する有効な元素である。C量が0.75%未満になると、本成分系では、レールに要求される最低限の強度及び耐摩耗性が維持できない。さらに、C量が0.75%未満になると、レール頭部内部において、疲労き裂を生成し易い軟質初析フェライト組織が生成し、内部疲労損傷を発生し易くする。また、C量が1.20%を超えると、レール頭部内部に初析セメンタイト組織が生成し易くなる。この場合、初析セメンタイト組織とパーライト組織との界面から疲労き裂が発生し、内部疲労損傷を発生し易くする。このため、C含有量を0.75〜1.20%に限定した。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐内部疲労損傷性をさらに向上させるには、C含有量を0.85〜1.10%とすることが望ましい。

0036

Siは、パーライト組織のフェライト相内に固溶し、レール頭部の硬度(強度)を上昇させ、レールの耐摩耗性を向上させる元素である。さらに、Siは、疲労き裂の生成を誘発する初析セメンタイト組織の生成を抑制し、内部疲労損傷の発生を抑制する元素である。しかし、Si量が0.10%未満では、これらの効果が十分に期待できない。また、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に表面疵が多く生成する。さらに、Si量が2.00%を超えると、焼入性が著しく増加し、レール頭部内部に靭性が低いマルテンサイト組織が生成する。このマルテンサイト組織によりレールの耐摩耗性が低下し、内部疲労損傷が発生しやすくなる。このため、Si含有量を0.10〜2.00%に限定する。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐内部疲労損傷性をさらに向上させるには、Si含有量を0.20〜1.50%とすることが望ましい。

0037

Mnは、鋼の焼き入れ性を高め、パーライト変態を安定化すると同時に、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬度を確保し、耐内部疲労損傷性をより一層向上させる元素である。しかし、Mn量が0.10%未満では、その効果が小さい。さらに、Mn量が0.10%未満では、レール頭部内部において、疲労き裂を生成し易い軟質な初析フェライト組織が生成し、耐内部疲労損傷性の確保が困難となる。また、Mn量が2.00%を超えると、鋼の焼入性が著しく増加し、レール頭部において靭性が低いマルテンサイト組織が生成する。マルテンサイト組織の生成により、レールの耐摩耗性が低下し、内部疲労損傷を発生し易くする。このため、Mn含有量を0.10〜2.00%に限定する。なお、パーライト組織の生成を安定化し、耐内部疲労損傷性をさらに向上させるには、Mn含有量を0.20〜1.50%とすることが望ましい。

0038

Pは、鋼中の不純物元素である。転炉での精錬を行うことにより、P含有量を制御することが可能である。P含有量が0.0250%を超えると、パーライト組織が脆化し、レール頭部内部において疲労き裂の先端から脆性き裂が生成し、内部疲労損傷を発生し易くする。このため、P含有量を0.0250%以下に限定する。なお、P含有量の下限を限定する必要はないが、精錬工程での脱燐能力を考慮すると、実際に製造する際には、P含有量の下限は0.0100%程度になると考えられる。内部疲労損傷をさらに抑制するためには、P含有量の上限を0.0150%とすることが望ましい。

0039

Sは、鋼中の不純物元素である。溶銑鍋での脱硫を行うことにより、S含有量を制御することが可能である。S含有量が0.0250%を超えると、介在物としての粗大なMnS系硫化物が生成し易くなる。この場合、レール頭部内部において、介在物の周囲の応力集中により、疲労き裂が生成し、内部疲労損傷を発生し易くする。このため、S含有量を0.0250%以下に限定する。なお、S含有量の下限は限定していないが、精錬工程での脱硫能力を考慮すると、実際に製造する際には、S含有量の下限は0.0050%程度になると考えられる。内部疲労損傷をさらに抑制するためには、S含有量の上限を0.0150%とすることが望ましい。

0040

また、上記の成分組成で製造されるレールは、パーライト組織の硬度(強度)の増加による耐摩耗性の向上及び靭性の向上、溶接熱影響部の軟化の防止、並びにレール頭部内部の断面硬度分布の制御を図る目的で、Cr、Mo、Co、B、Cu、Ni、V、Nb、Ti、Mg、Ca、REM、Zr、N、Alの元素を必要に応じて1種または2種以上を含有してもよい。

0041

Cr、及びMoは、パーライト平衡変態温度を上昇させ、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、硬度を向上させる。Coは、摩耗面ラメラ組織を微細化し、摩耗面の硬度を高める。Bは、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レール頭部の硬度分布を均一にする。Cuは、パーライト組織中のフェライトに固溶し、鋼の硬度を高める。Niは、パーライト組織の靭性と硬度とを向上させ、同時に、溶接継ぎ手熱影響部の軟化を防止する。V、Nb、及びTiは、熱間圧延、及びその後の冷却過程において炭化物及び/又は窒化物を生成させ、析出硬化により、パーライト組織の疲労強度を向上させる。また、V、Nb、及びTiは、再加熱時に炭化物及び/又は窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手の熱影響部の軟化を防止する。Mg、Ca、及びREMは、介在物としてのMnS系硫化物を微細分散し、介在物から生成する内部疲労損傷を低減する。Zrは、凝固組織等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、初析セメンタイト組織及びマルテンサイト組織の生成を抑制する。Nは、オーステナイト粒界偏析することによりパーライト変態を促進させることが主な含有目的である。Alは鋼材脱酸することが主な含有目的である。

0042

Crは、パーライト平衡変態温度を上昇させる元素である。過冷度の増加により、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させ、耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、Cr量が0.01%未満ではその効果は小さく、鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Cr量2.00%を超える過剰な含有を行うと、焼入れ性が著しく増加し、レール頭部に靭性の低いマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下し、内部疲労損傷を発生し易くする場合がある。このため、Cr含有量を0.01〜2.00%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Cr含有量を0.10〜0.30%に限定してもよい。

0043

Moは、Crと同様にパーライト平衡変態温度を上昇させ、過冷度の増加により、パーライト組織のラメラ間隔を微細化し、パーライト組織の硬度(強度)を向上させ、耐内部疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、Mo量が0.01%未満ではその効果が小さく、鋼の硬度を向上させる効果が全く見られなくなる。また、Mo量が0.50%を超える過剰な含有を行うと、変態速度が著しく低下し、レール頭部に靭性の低いマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下し、内部疲労損傷を発生し易くする場合がある。このため、Mo含有量を0.01〜0.50%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Mo含有量を0.01〜0.10%に限定してもよい。

0044

Coは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、レール頭表部の摩耗面において、車輪との接触により形成される微細なラメラ組織をより一層微細化し、ころがり面の硬さを高めることにより耐摩耗性を向上させる元素である。しかし、Co量が0.01%未満では、ラメラ組織の微細化が促進されず、耐摩耗性の向上効果が期待できない。また、Co量が1.00%を超えると、上記の効果が飽和し、含有量に応じたラメラ組織の微細化が図れない場合がある。また、合金含有コストの増大により経済性が低下する場合がある。このため、Co含有量を0.01〜1.00%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Co含有量を0.05〜0.15%に限定してもよい。

0045

Bは、オーステナイト粒界に鉄炭ほう化物(Fe23(CB)6)を形成し、パーライト変態を促進する効果を有する元素である。この促進効果により、パーライト変態温度の冷却速度依存性を低減させ、レール頭部表面からレール頭部内部までの硬度分布をより均一にし、耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、B量が0.0001%未満では、その効果が十分でなく、レール頭部の硬度分布の改善が認められない。また、B量が0.0050%を超えると、粗大な鉄炭ほう化物が生成し、応力集中により内部疲労損傷が発生しやすくなる場合がある。このため、B含有量を0.0001〜0.0050%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、B含有量を0.0005〜0.0030%に限定してもよい。

0046

Cuは、パーライト組織のフェライト相に固溶し、固溶強化により鋼の硬度(強度)を向上させ、耐内部疲労損傷性を向上させる元素である。しかし、Cu量が0.01%未満ではその効果が期待できない。また、Cu量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により、レール頭部にマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下し、内部疲労損傷を発生し易くする場合がある。このため、Cu含有量を0.01〜1.00%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Cu含有量を0.10〜0.30%に限定してもよい。

0047

Niは、パーライト組織の靭性を向上させ、同時に、固溶強化により鋼の硬度(強度)を向上させ、耐内部疲労損傷性を向上させる元素である。さらに、Niは、溶接熱影響部において、金属間化合物である微細なNi3Tiを析出させて、析出強化により鋼の軟化を抑制する元素である。また、Niは、Cu含有鋼において粒界の脆化を抑制する元素である。しかし、Ni量が0.01%未満では、これらの効果が著しく小さい。Ni量が1.00%を超えると、著しい焼入れ性向上により、レール頭部に靭性の低いマルテンサイト組織が生成し、耐摩耗性が低下し、内部疲労損傷を発生し易くする場合がある。このため、Ni含有量を0.01〜1.00%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Ni含有量を0.05〜0.20%に限定してもよい。

0048

Vは、熱間圧延後の冷却過程で生成したV炭化物、及び/又はV窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高め、レールの耐摩耗性及び耐内部疲労損傷性を向上させる元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された溶接継ぎ手の熱影響部において、比較的高温度域でV炭化物やV窒化物を生成させ、溶接継ぎ手の熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、V量が0.005%未満ではこれらの効果が十分に期待できず、パーライト組織の硬度(強度)の向上は認められない。また、V量が0.50%を超えると、Vの炭化物及び/又は窒化物による析出硬化が過剰となり、パーライト組織が脆化し、レールの耐内部疲労損傷性が低下する場合がある。このため、V含有量を0.005〜0.50%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、V含有量を0.02〜0.05%に限定してもよい。

0049

Nbは、Vと同様に、熱間圧延後の冷却過程で生成したNb炭化物及び/又はNb窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高め、耐摩耗性及び耐内部疲労損傷性を向上させる元素である。また、Ac1点以下の温度域に再加熱された溶接継ぎ手の熱影響部において、低温度域から高温度域までNbの炭化物やNb窒化物を安定的に生成させ、溶接継ぎ手の熱影響部の軟化を防止するのに有効な元素である。しかし、Nb量が0.0010%未満では、これらの効果が期待できず、パーライト組織の硬度(強度)の向上は認められない。また、Nb量が0.050%を超えると、Nbの炭化物及び/又は窒化物の析出硬化が過剰となり、パーライト組織が脆化し、レールの耐内部疲労損傷性が低下する場合がある。このため、Nb含有量を0.0010〜0.050%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Nb含有量を0.0010〜0.0030%に限定してもよい。

0050

Tiは、熱間圧延後の冷却過程で生成したTi炭化物及び/又はTi窒化物による析出硬化により、パーライト組織の硬度(強度)を高め、耐摩耗性や耐内部疲労損傷性を向上させる元素である。また、Tiは、溶接時の再加熱において析出したTiの炭化物及び/又はTiの窒化物が金属組織中に溶解しないことを利用して、オーステナイト域まで加熱される熱影響部の組織を微細化し、溶接継ぎ手部の脆化を防止するのに有効な成分である。しかし、Ti量が0.0030%未満ではこれらの効果が少ない。また、Ti量が0.0500%を超えると、粗大なTiの炭化物、及び/又はTiの窒化物が生成し、応力集中により内部疲労損傷が発生しやすくなる場合がある。このため、Ti含有量を0.0030〜0.0500%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Ti含有量を0.0030〜0.0100%に限定してもよい。

0051

Mgは、Sと結合して微細な硫化物(MgS)を形成する元素である。MgSが、疲労き裂を生じさせる介在物であるMnSを微細に分散させ、介在物周辺での応力集中を緩和し、耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、Mg量が0.0005%未満ではその効果は弱い。また、0.0200%を超えてMnを含有すると、Mgの粗大酸化物が生成し、この粗大酸化物周辺での応力集中により内部疲労損傷が発生しやすくなる場合がある。このため、Mg量を0.0005〜0.0200%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Mg含有量を0.0010〜0.0030%に限定してもよい。

0052

Caは、Sとの結合力が強く、CaSとして硫化物を形成する元素である。このCaSが、疲労き裂を生じさせる介在物であるMnSを微細に分散させ、介在物周辺での応力集中を緩和し、耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、Ca量が0.0005%未満ではその効果は弱い。また、0.0200%を超えてCaを含有すると、Caの粗大酸化物が生成し、この粗大酸化物周辺での応力集中により内部疲労損傷が発生しやすくなる場合がある。このため、Ca量を0.0005〜0.0200%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Ca含有量を0.0010〜0.0030%に限定してもよい。

0053

REMは、脱酸・脱硫元素であり、含有によりREMのオキシサルファイド(REM2O2S)を生成し、Mn硫化物系介在物生成核となる。この核であるオキシサルファイド(REM2O2S)は、融点が高いので、圧延後のMn硫化物系介在物の延伸を抑制する。この結果、REMは、介在物であるMnSを微細に分散させ、介在物周辺での応力集中を緩和し、耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、REM量が0.0005%未満では、その効果が小さく、MnS系硫化物の生成核としては不十分となる。また、REM量が0.0500%を超えると、硬質なREMのオキシサルファイド(REM2O2S)が生成し、応力集中により内部疲労損傷が発生しやすくなる場合がある。このため、REM含有量を0.0005〜0.0500%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、REM含有量を0.0005〜0.0030%に限定してもよい。

0054

なお、REMとはCe、La、PrまたはNd等の希土類金属である。上記含有量は、これらの全REMの含有量の総和を限定するものである。含有量の総和が上記範囲内であれば、各元素単独であっても、各元素が複合的に含まれる形態(2種以上の元素が含有される形態)であっても、同様な効果が得られる。

0055

Zrは、ZrO2介在物とγ−Feとの格子整合性が良いので、γ−Feが凝固初晶である高炭素鋼凝固核となり、凝固組織の等軸晶化率を高める元素である。凝固組織の等軸晶化率を高めることにより、鋳片中心部の偏析帯の形成を抑制し、レール偏析部に生成するマルテンサイト及び初析セメンタイト組織の生成を抑制する。しかし、Zr量が0.0001%未満では、ZrO2系介在物の数が少なく、凝固核として十分な作用を示さない。その結果、偏析部にマルテンサイトや初析セメンタイト組織が生成し易くなる場合があり、レールの耐内部疲労損傷性の向上が期待できない。また、Zr量が0.0200%を超えると、粗大なZr系介在物が多量に生成し、応力集中により内部疲労損傷が発生しやすくなる場合がある。このため、Zr含有量を0.0001〜0.0200%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Zr含有量を0.0010〜0.0030%に限定してもよい。

0056

Nは、Vと同時に含有することで、熱間圧延後の冷却過程でVの炭窒化物の析出を促進させる元素である。析出の促進により、パーライト組織の硬度(強度)を高め、耐摩耗性や耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、N量が0.0060%未満では、これらの効果が弱い。また、N量が0.0200%を超えると、鋼中に固溶させることが困難となり、疲労損傷の起点となる気泡が生成し、内部疲労損傷が発生し易くなる場合がある。このため、N含有量を0.0060〜0.0200%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、N含有量を0.0080〜0.0120%に限定してもよい。

0057

Alは、脱酸材として働く元素である。また、Alは、共析変態温度を上昇させる元素であり、このことはパーライト組織の高硬度(強度)化に寄与し、パーライト組織の耐摩耗性や耐内部疲労損傷性を向上させる。しかし、Al量が0.0100%未満では、その効果が弱い。また、Al量が1.00%を超えると、Alを鋼中に固溶させることが困難となり、粗大なアルミナ系介在物が生成し、この粗大な析出物から疲労き裂が発生し、内部疲労損傷が発生し易くなる場合がある。さらに、溶接時に酸化物が生成し、溶接性が著しく低下する場合がある。このため、Al含有量を0.0100〜1.00%に限定してもよい。上述の効果をさらに確実に達成するためには、Al含有量を0.0150〜0.0300%に限定してもよい。

0058

本実施形態の一態様のレールは、上記成分を含有し、残部が鉄および不純物を含む。不純物の例としては、鉱石スクラップ等の原材料に含まれるもの、又は製造工程において含まれるもの等が挙げられる。

0059

上記のような成分組成で構成される鋼は、転炉、及び電気炉などの通常使用される溶解炉で溶製されて溶鋼となる。この溶鋼は造塊及び分塊又は連続鋳造され、次に、熱間圧延されて、レールとして製造される。さらに、必要に応じて、レール頭表部の金属組織を制御する目的で、熱処理を行ってもよい。

0060

(2)金属組織およびパーライト組織の限定理由
本実施形態の一態様のレールにおいて、レール頭部外郭表面から30mm深さまでの範囲において、面積%で、金属組織の95%以上をパーライト組織とする理由について詳細に説明する。

0061

まず、金属組織の95%以上をパーライト組織に限定する理由について説明する。
車輪に接触するレール頭部では、耐摩耗性の確保が最も重要である。本発明者らが金属組織と耐摩耗性との関係を調査した結果、パーライト組織が最もレール頭部の耐摩耗性を高めることが確認された。さらに、パーライトブロックの粒径を制御することにより、耐内部疲労損傷性の向上が図れることが実験により確認された。そこで、耐摩耗性および耐内部疲労損傷性を向上及び確保させる目的で、レール頭部外郭表面を起点として30mm深さまでの範囲の金属組織の95%以上をパーライト組織とする。パーライト組織の含有量の上限を規定する必要はなく、従って、その上限は100%である。

0062

次に、パーライト組織の必要範囲を、レール頭部外郭表面を起点として30mm深さまでの範囲に限定する理由について説明する。

0063

金属組織の95%以上がパーライト組織である範囲がレール頭部外郭表面を起点として30mm未満までの範囲である場合、この範囲はレール頭部に要求される耐摩耗性及び耐内部疲労損傷性を達成するためには小さく、十分なレール使用寿命の向上が困難となる。
金属組織の95%以上をパーライト組織とする範囲の深さの上限は特に限定されない。耐内部疲労損傷性をさらに向上させるには、レール頭部外郭表面を起点として深さ40mm程度までの範囲の金属組織の95%以上をパーライト組織とすることが望ましい。

0064

ここで、図3に、本実施形態の一態様のレールの、頭部断面表面位置での呼称、および、パーライト組織が必要な領域を示す。レール頭部3は、頭頂部1と、前記頭頂部1の両端に位置する頭部コーナー部2と、側頭部9とを有する。頭頂部1は、レール延伸方向に沿ってレール頭部の頂部に延在する略平坦な領域である。側頭部9は、レール延伸方向に沿ってレール頭部の側部に延在する略平坦な領域である。頭部コーナー部2は、レール延伸方向に沿って頭頂部1及び側頭部9の間に延在する丸められた角部と、側頭部9の上半分(側頭部9の、鉛直方向に沿った1/2部より上側)とを併せた領域である。頭部コーナー部2の一方は、車輪と主に接触するゲージコーナー(G.C.)部である。
頭頂部1の表面と頭部コーナー部2の表面とを併せた領域を、レール頭部外郭表面と称する。この領域は、レールの中で、車輪に接触する頻度が最も高い領域である。

0065

前記頭部コーナー部2および前記頭頂部1の表面(レール頭部外郭表面)から深さ30mmまでの範囲を頭表部3a(斜線部)と呼ぶ。図3に示すように、頭部コーナー部2及び頭頂部1の表面を起点として深さ30mmまでの頭表部3aにおいて金属組織の95%以上がパーライト組織であれば、レールの耐摩耗性及び耐内部疲労損傷性の向上が図れる。

0066

したがって、パーライト組織は、車輪とレールとが主に接し、耐摩耗性と耐内部疲労損傷性とが要求される頭表部3aに配置することが望ましい。頭表部以外の、これらの特性が必要とされない部分の金属組織は、パーライト組織以外の金属組織であってもよい。

0067

また、本実施形態に係るレールの頭表部の金属組織は、上記限定のようなパーライト組織であることが望ましい。しかし、レールの成分系及び熱処理製造方法によっては、これらの組織中に、面積率で5%未満の範囲で、微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織又はマルテンサイト組織が混入することがある。しかし、これらの組織が混入しても、レール頭部内部の耐内部疲労損傷性又はレール頭部の耐摩耗性には大きな悪影響を及ぼさない。従って、レールの組織としては、微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織、及びマルテンサイト組織が混在した組織を、面積率で5%未満含んでいてもよい。言い換えれば、本発明レールの頭部の金属組織の95%以上がパーライト組織であれば良く、耐内部疲労損傷性及び耐摩耗性を十分に向上させるには、レール頭部の金属組織の98%以上をパーライト組織とすることがさらに好ましい。なお、実施例の表1−1、表1−2及び表2におけるミクロ組織の欄でパーライト組織以外の組織が記載されているものは全て面積率で5%以上の量を意味する。
レール頭部外郭表面から30mm深さまでの範囲において、面積%で、金属組織の95%以上がパーライト組織であるレールを得るためには、C、Si及びMnの含有率を上述した規定範囲内とすることが必要である。

0068

0069

0070

(3)レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径の限定理由
まず、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を120〜200μmの範囲に限定する理由について説明する。

0071

パーライトブロックの平均粒径が小さくなると、パーライト組織のパーライトブロック境界の面積が増加する。パーライトブロック境界の面積が増加すると、パーライトブロック境界から発生する微小な疲労き裂の数が増大する。パーライトブロックの平均粒径が120μm未満になると、これら微小な疲労き裂の一つが選択的に伝播し、内部疲労損傷が発生し易くなる。また、パーライトブロックの平均粒径が200μmを超えると、疲労き裂の生成自体は少ないが、選択的に伝播した疲労き裂の先端から脆性き裂が生成し、脆性破壊により内部疲労損傷が発生し易くなる。このため、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を120〜200μmの範囲に限定する。なお、耐内部疲労損傷性を安定的に向上させるには、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を150〜180μmの範囲とすることが望ましい。

0072

ここで、パーライトブロックの平均粒径の測定方法について述べる。図3に示したレール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲の横断面からサンプルを切り出し、横断面を1μmのダイヤ研磨した後、電解研摩を行い、パーライトブロックの平均粒径の測定に用いた。
なお、横断面とは、図4に示すようにレール長手方向に垂直な断面である。レール頭部外郭表面から図中の楕円状の破線に示す深さ20〜30mmの範囲がパーライトブロックの測定領域である。

0073

パーライトブロックの測定方法には後方散乱電子回折(Electron BackScattering Pattern:EBSP)法を用いた。以下に測定条件を示す。

0074

<レール頭部内部のパーライトブロック粒径の測定方法>
・測定条件
装置:高分解能走査型顕微鏡(SEM
測定用試験片採取:レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲の横断面からサンプルを切り出した。
事前処理:横断面を1μmダイヤ砥粒により機械研磨し、次いで電解研摩を行った。
粒径測定方法
[1]測定視野:1000×1000μm
[2]SEM電子ビーム径:30nm
[3]測定ステップ(間隔):1.0〜2.0μm
[4]粒界認定:互いの結晶方位差が15°以上である隣り合うパーライトブロック粒の境界(大角粒界)をパーライトブロック境界として認識した。
[5]粒径測定:パーライトブロック粒の面積を測定後、パーライトブロックを円形仮定した場合の直径を算定した。
・平均粒径の算定
平均粒径:深さ20〜30mmの範囲の任意断面から10視野以上選択し、各視野における各パーライトブロック粒に対して上記の測定を行い、この測定により得られた各パーライトブロック粒の直径の平均値を当該レールのパーライトブロックの平均粒径とした。

0075

次に、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を限定した位置を当該部位の深さ20〜30mmの範囲に限定する理由について説明する。

0076

本発明者らは、レール頭部における内部疲労損傷の発生位置を調査した結果、発生位置は、レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲に集中していることを確認した。このため、パーライトブロックの平均粒径を限定する位置を当該部位の深さ20〜30mmの範囲に限定する。

0077

(4)レール頭部内部の平均硬さの限定理由
まず、本発明の一態様において、レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲の平均硬さをHv350〜460の範囲に限定してもよい理由について説明する。

0078

レール頭部内部の平均硬さがHv350未満では、パーライトブロック境界の強化が十分でなく、耐内部疲労損傷性の向上が認められない場合がある。また、レール頭部内部の平均硬さがHv460を超えると、パーライト組織の脆化により、選択的に伝播した疲労き裂の先端からの脆性き裂の生成が促進し、脆性破壊により内部疲労損傷が発生し易くなる場合がある。このため、レール頭部内部の平均硬さをHv350〜460の範囲に限定してもよい。なお、耐内部疲労損傷性を安定的に向上させるには、レール頭部内部の平均硬さをHv380〜440の範囲とすることが望ましい。

0079

次に、レール頭部内部の平均硬さを限定する位置を、レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲に限定してもよい理由について説明する。

0080

本発明者らは、レール頭部における内部疲労損傷の発生位置を調査した結果、発生位置はレール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲に集中していることを確認した。このため、平均硬さを限定する位置を、レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲に限定してもよい。なお、測定方法は下記に示すとおりである。

0081

<レール頭部内部の硬度の測定方法>
・測定条件
装置:ビッカース硬度計(荷重98N)
測定用試験片採取:レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲の横断面からサンプルを切り出した。
事前処理:横断面を1μmダイヤ砥粒により機械研磨した。
・測定方法:JIS Z 2244に準じて測定した。
・平均硬さの算定:
平均硬さ:深さ20〜30mmの範囲の任意断面において20点の測定を行い、その平均値を当該レールの平均硬さとした。

0082

(5)頭部内部のパーライトブロックの粒径の制御方法
パーライトブロックの粒径を制御するためには、パーライト変態の前組織である熱間圧延時のオーステナイト粒径を制御することが必要である。頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を120〜200μmの範囲に収めるには、オーステナイト粒径を150〜300μmの範囲に制御することが必要である。

0083

このオーステナイト粒径の制御を行うためには、熱間圧延工程の直後に放冷または熱処理(加速冷却)を行う場合は、熱間圧延時の温度及び圧下量の制御が必要である。また、上述の加速冷却とは別に、熱間圧延工程の後に熱処理する目的でレールを再加熱する場合は、オーステナイト粒径の制御を行うために、再加熱温度及び保持時間の制御が必要である。

0084

本発明者らは、熱間圧延時の温度の好ましい制御範囲を明確にするために、炭素量0.90%の鋼(0.90%C−0.50%Si−0.90%Mn−0.0150%P−0.0120%S)に対して、最終圧延温度を種々の値に変化させた熱間圧延を行い、次いで熱処理(加速冷却)を行い、レールを製造した。このレールのレール頭部表面から深さ20〜30mm位置(頭部内部)のパーライトブロックの平均粒径を調査した。
図8に最終圧延温度(レール頭部外郭表面)と頭部内部のパーライトブロックの平均粒径との関係を示す。最終減面率が一定の範囲において、パーライトブロックの平均粒径と最終圧延温度との間には強い相関があった。ここで、最終減面率とは、圧延工程開始前の鋼断面積に対する減面量(圧延工程開始前の鋼断面積と圧延工程終了後の鋼断面積との差)の百分率である。本発明者らは、最終圧延温度(レール頭部外郭表面)が1000℃超〜1100℃の範囲内であれば、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を120〜200μmの範囲内に制御することが可能であり、耐内部疲労損傷性を向上させることが可能であることを確認した。

0085

さらに、本発明者らは、熱間圧延時の圧下量の好ましい制御範囲を明確にするために、炭素量0.90%の鋼(0.90%C−0.50%Si−0.90%Mn−0.0150%P−0.0120%S)に対して、最終減面率を種々の値に変化させた熱間圧延を行い、次いで熱処理(加速冷却)を行い、レールを製造した。このレールのレール頭部表面から深さ20〜30mm位置(頭部内部)のパーライトブロックの平均粒径を調査した。
図9に最終減面率と頭部内部のパーライトブロックの平均粒径との関係を示す。本発明者らは、最終圧延温度が一定の範囲において、パーライトブロックの平均粒径と最終減面率との間には強い相関があった。本発明者らは、最終減面率が1.0〜3.9%の範囲内であれば、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を120〜200μmの範囲内に制御することが可能であり、耐内部疲労損傷性を向上させることが可能であることを確認した。

0086

これらの実験結果を基に検討すると、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を120〜200μmの範囲内に制御するためのレールの熱間圧延条件は、最終圧延温度:1000℃超〜1100℃(レール頭部外郭表面)、及び最終圧延減面率:1.0〜3.9%の両方を満足することが必要である。

0087

また、熱間圧延工程の後に、熱処理する目的でレールを再加熱する場合は、再加熱温度を1000℃超〜1150℃(レール頭部外郭表面)の範囲内とし、頭部内部まで熟熱させるため保持時間を5〜10分の範囲内とすることが、オーステナイト粒径の制御を行うために必要である。この場合、最終圧延温度及び最終圧延減面率を規定する必要はない。

0088

(6)レール頭部内部の硬さの制御方法
レール頭部内部の硬さを制御するためには、熱処理時のレール頭部の冷却速度を制御することが望ましい。熱間圧延工程の直後に熱処理(加速冷却)を行う場合は、レール頭部外郭表面において加速冷却速度を3〜10℃/sec(冷却温度範囲:800〜600℃)の範囲内に制御することが望ましい。また、熱間圧延工程の後に、熱処理する目的でレールを再加熱する場合は、レール頭部外郭表面において、加速冷却速度を5〜15℃/sec(冷却温度範囲:800〜600℃)の範囲内に制御することが望ましい。なお、冷却方法の詳細については、特許文献5、特許文献6等に記載されているような方法を参考にすることが望ましい。

0089

次に、実施例について説明する。
表1−1及び表1−2に本発明レールの化学成分と諸特性を示す。表1−1及び表1−2には、化学成分値、レール頭部のミクロ組織、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径、及びレール頭部内部の平均硬さを示す。さらに、図5に示す方法で行った転動疲労試験結果(疲労限荷重)も併記した。なお、レール頭部のミクロ組織がパーライト組織であると記載されている実施例は、面積率で5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織又はマルテンサイト組織がミクロ組織中に混入している場合がある。

0090

表2に比較レールの化学成分と諸特性とを示す。表2には、化学成分値、レール頭部のミクロ組織、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径、及びレール頭部内部の平均硬さを示す。さらに、図5に示す方法で行った転動疲労試験結果(疲労限荷重)も併記した。なお、レール頭部のミクロ組織がパーライト組織であると記載されている比較例は、面積率で5%以下の微量な初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織又はマルテンサイト組織がミクロ組織中に混入している場合がある。

0091

なお、表1−1、表1−2及び表2に示した本発明レールおよび比較レールの製造工程の概略は、熱間圧延工程の直後に熱処理(加速冷却)または放冷を行う場合は、下記に示すとおりである(以降、製造工程例aと称する)。
(a−1)溶鋼製造工程
(a−2)成分調整工程
(a−3)鋳造(ブルーム)工程
(a−4)再加熱工程
(a−5)熱間圧延工程
(a−6)放冷工程又は熱処理(加速冷却)工程
また、熱間圧延工程の後に、熱処理する目的でレールを再加熱する場合は、レールの製造工程および製造条件の概略は下記に示すとおりである(以降、製造工程例bと称する)。
(b−1)溶鋼製造工程
(b−2)成分調整工程
(b−3)鋳造工程
(b−4)再加熱工程
(b−5)熱間圧延工程
(b−6)放冷工程
(b−7)再加熱工程(レール用)
(b−8)熱処理(加速冷却)工程

0092

また、表1−1及び表1−2に示した本発明レールの製造条件の概略は下記に示すとおりである。
・熱間圧延工程前の再加熱工程(a−4、b−4)における再加熱条件
再加熱温度:1250〜1300℃
・熱間圧延工程(a−5)における熱間圧延条件
最終圧延温度:1000〜1100℃(レール頭部外郭表面)
最終圧延減面率:1〜3.9%
・熱間圧延工程後の再加熱工程(b−7)における再加熱条件
再加熱温度:1000〜1150℃(レール頭部外郭表面)
保持時間:5〜10分
・レール頭部熱処理条件(適用した実施例のみ)
熱間圧延工程直後の熱処理(加速冷却)工程(a−6)における加速冷却速度:3〜10℃/sec(冷却温度範囲:800〜600℃)
再加熱工程(レール用)後の熱処理(加速冷却)工程(b−8)における加速冷却速度:5〜15℃/sec(冷却温度範囲:800〜600℃)

0093

表1−1、表1−2及び表2に示した本発明レールおよび比較レールの詳細は下記に示すとおりである。
(1)本発明レール(44本)
符号 A1〜A44:化学成分値、レール頭部のミクロ組織、及びレール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径が本願発明範囲内のレール。
(2)比較レール(17本)
符号 B1〜B8(8本):C、Si、Mn、P、若しくはSの含有量、又はレール頭部のミクロ組織が本願発明範囲外のレール。
符号 B9〜B17:レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径が本願発明範囲外のレール。

0094

また、表3−1及び表3−2には、表1−1及び表1−2に記載の鋼を種々の製造条件にて加工した場合のレールの諸特性を示す。表3−1及び表3−2には、熱間圧延条件、再加熱条件、レール頭部熱処理条件、レール頭部のミクロ組織、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径、及びレール頭部内部の平均硬さを示す。さらに、図5に示す方法で行った転動疲労試験結果(疲労限荷重)も併記した。

0095

また、各種試験条件は下記のとおりである。
<転動疲労特性の評価方法>
・試験条件
試験機:転動疲労試験機(図5参照)
試験片形状レール:136ポンドレール(長さ2m)/車輪:AARタイプ(直径920mm)
荷重ラジアル:50〜300kN/スラスト:20kN
潤滑:ドライ+油(間欠給油)
繰返し回数:最大200万回

0096

・評価
疲労限荷重:200万回繰り返した場合に内部疲労損傷が未発生であった垂直荷重の最大値を求めた。
疲労限荷重の合格基準:疲労限荷重150kN以上

0097

<レール頭部内部のパーライトブロックの測定方法>
・測定条件
装置:高分解能走査型顕微鏡
測定用試験片採取:レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲の横断面からサンプルを切り出した。
事前処理:横断面を1μmダイヤ砥粒により機械研磨し、さらに電解研摩した。

0098

・測定方法
[1]測定視野:1000×1000μm
[2]SEM電子ビーム径:30nm
[3]測定ステップ(間隔):1.0〜2.0μm
[4]粒界認定:互いの結晶方位差が15°以上である隣り合うパーライトブロック粒の境界(大角粒界)をパーライトブロック境界として認識した。
[5]粒径測定:パーライトブロック粒の面積を測定後、パーライトブロックを円形と仮定した場合の直径を算定した。
・平均粒径の算定
平均粒径:深さ20〜30mmの範囲の任意断面から10視野以上選択し、各視野における各パーライトブロック粒に対して上記の測定を行い、この測定により得られた各パーライトブロック粒の直径の平均値を当該レールのパーライトブロックの平均粒径とした。

0099

0100

<レール頭部内部の硬度の測定方法>
・測定条件
装置:ビッカース硬度計(荷重98N)
測定用試験片採取方法:レール頭部外郭表面から深さ20〜30mmの範囲の横断面を現出させるようにサンプルを切り出した。
測定前処理方法:横断面を1μmダイヤ砥粒により機械研磨した。
・測定方法:JIS Z 2244に準じて測定した。
・平均硬さの算定:
平均硬さ:深さ20〜30mmの範囲のレール頭部横断面における任意の箇所20点の硬さ測定を行い、これにより得られた計測値の平均値を、当該レールの平均硬さとした。

0101

表1−1、表1−2及び表2に示すように、本発明レール(符号A1〜A44)では、鋼のC、Si、Mn、P、Sの含有量を限定範囲内に収めることにより、初析フェライト組織、初析セメンタイト組織、ベイナイト組織、及びマルテンサイト組織の生成を抑制して、レール頭部の金属組織を主にパーライト組織とした。さらに、本発明レールでは、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を制御した。これにより、本発明レールにおいて、レール頭部内部の耐内部疲労損傷性を向上させることができた。
比較例B1は、C含有量が規定範囲を下回るので、レール頭部外郭表面から30mm深さまでの範囲において、金属組織中に初析フェライトが過剰に含まれた。比較例B2は、C含有量が規定範囲を上回るので、金属組織中にセメンタイトが過剰に含まれた。比較例B3は、Si含有量が規定範囲を下回るので、初析セメンタイトの生成が十分に抑制されなかった。比較例B4は、Si含有量が規定範囲を上回るので、鋼の焼き入れ性が著しく増加し、マルテンサイト組織が過剰に生成した。比較例B5は、Mn含有量が規定範囲を下回るので、パーライト変態が十分に安定化されず、初析フェライト組織が過剰に生成した。比較例B6は、Mn含有量が規定範囲を上回るので、鋼の焼き入れ性が著しく増加し、マルテンサイト組織が過剰に生成した。比較例B7は、規定領域内におけるパーライト面積率及びパーライトブロックの平均粒径が規定範囲内であったが、P含有量が規定範囲を上回っていたので、パーライト組織が脆化した。比較例B8は、規定領域内におけるパーライト面積率及びパーライトブロックの平均粒径が規定範囲内であったが、S含有量が規定範囲を上回っていたので、粗大なMnSが生成された。以上の理由から、比較例B1〜B8の疲労限荷重は十分ではなかった。

0102

また、表1−1、表1−2及び表2、図6に示すように、本発明レール鋼(符号A1〜A44)は、比較レール鋼(符号B9〜B17)と比べて、C、Si、Mn、P、Sの含有量に加えて、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を限定範囲内に収めることにより、耐内部疲労損傷性を向上させることができた。比較例B9、B10、B16、及びB17は、化学組成が規定範囲内であったが、パーライトブロックの平均粒径が規定範囲を上回ったので、パーライト組織が脆化し、疲労限荷重が十分ではなかった。比較例B11〜B15は、化学組成が規定範囲内であったが、パーライトブロックの平均粒径が規定範囲を下回ったので、パーライトブロック境界の面積が増大し、疲労限荷重が十分ではなかった。

0103

また、表1−1、表1−2及び表2、図7に示すように、本発明レール鋼(符号A9〜A11、A13〜A15、A17〜A19、A21〜A23、A24〜A26、A28〜A30、A31〜A33、A36〜A38、A40〜A42)は、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を限定範囲内に制御し、これに加えて、レール頭部内部の硬さを限定範囲内に制御することにより、耐内部疲労損傷性をより一層向上させることができた。

実施例

0104

また、表3−1及び表3−2に示すように、熱間圧延条件及び熱処理(加速冷却)条件、又は熱間圧延後の再加熱温度条件および温度保持時間条件を上述の条件で行うことにより、レール頭部内部のパーライトブロックの平均粒径を限定範囲内に制御し、疲労限荷重を向上させることができた(発明例A45、A47、A49、A51、A53、A55)。これに加えて、レール頭部熱処理の条件を規定範囲内で行うことにより、レール頭部内部の硬さを限定範囲内に制御し、レールの耐内部疲労損傷性をさらに向上させることができた(発明例A46、A48、A50、A52、A54、A56)。
比較例B18、B20、B23、B25は、熱間圧延工程時の最終圧延温度が規定範囲外であったので、パーライトブロックの平均粒径が規定範囲外となり、疲労限荷重が十分ではなかった。比較例B19、B21、B22、B24は、熱間圧延工程時の最終圧延減面率が規定範囲外であったので、パーライトブロックの平均粒径が規定範囲外となり、疲労限荷重が十分ではなかった。比較例B26、B28は、熱間圧延工程後の再加熱工程における再加熱温度が規定範囲外であったので、パーライトブロックの平均粒径が規定範囲外となり、疲労限荷重が十分ではなかった。比較例B27、B−29は、再加熱工程における保持時間が規定範囲以外であったので、パーライトブロックの平均粒径が規定範囲外となり、疲労限荷重が十分ではなかった。

0105

本発明に係るレールは、レール頭部内部において金属組織及びパーライトブロックの平均粒径が制御されているので、高い耐内部疲労損傷性を有し、使用寿命が非常に長い。本発明に係るレールは、使用寿命が非常に長いので、これまで未開発であった自然環境の厳しい地域においても使用することができる。

0106

1:頭頂部
2:頭部コーナー部
3:レール頭部
3a:頭表部(レール頭部外郭表面から深さ30mmまでの範囲、斜線部)
4:レール移動用スライダー
5: レール
6:車輪
7:モーター
8:荷重制御装置
9: 側頭部

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