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課題
解決手段
概要
背景
燃料電池には、固体高分子(膜)形燃料電池(PE(M)FC,Polymer Electrolyte (Membrane) Fuel Cell)、りん酸形燃料電池(PAFC,Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC,Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC,Solid Oxide Fuel Cell)、アルカリ電解質形燃料電池(AFC,Alkaline Fuel Cell)、直接形燃料電池(DFC,Direct Fuel Cell)、直接ホウ化水素燃料電池(DBFC,Direct Borohydride Fuel Cell)等がある。
燃料電池の電極触媒に用いられる材料である金、プラチナをはじめとする貴金属は、触媒活性の高い材料である。そのため、高性能な触媒を形成できるが、埋蔵量が乏しく、値段の高い材料であるので、工業量産を考慮すると好ましくない。
また、表面で触媒反応させることを考慮すれば、単位量(グラム)当たりの表面積を高くすることが好ましい。
そのため、貴金属以外の材料からなる、粒子状の触媒の研究開発が進んでおり、粒子状の触媒として、その表面で燃料(CH3OH等)とO2を触媒反応させて、生成物(H2O、CO2等)とすることができるNi3C粒子が注目を浴びている(非特許文献1〜8)。
Ni3C粒子は、NiもCもどちらも値段が安く、豊富な元素であるので、工業的に量産して使用する場合に、有用な材料である。また、粒子状であるので、バルクの材料に対して、単位量(グラム)当たりの表面積を高くすることができる。これにより、特に、燃料電池の電極触媒の材料として着目されている。
Ni3C粒子の課題は粒子径が大きいことである。そのため、その粒子径をより小さくすることが研究開発されている。粒子径をより小さくできれば、単位量(グラム)当たりの表面積をより大きくすることができ、その触媒活性をより高めることができる。
従来、Ni3C粒子は、図1に示すように、NiCp2をNaNaph及びTHFで還元反応させて、Ni6面体クラスターであるNi−Cpクラスターとしてから(非特許文献3)、通常の有機金属分子を用いた合成反応と同様に、これを高温反応させて合成していた。しかし、高温反応により、粒子径は20〜30μmとなっていた。
概要
これまでになく小さい、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子及びその製造方法、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒及びその製造方法を提供する。減圧下、200℃以下で、Ni−Cpクラスターを加熱することにより、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子を製造する。該Ni3Cナノ粒子からなる粉末と、プロトン導電性高分子と、アルコールとを混合して、成膜用溶液を調整し、該成膜用溶液を電極基板上に塗布してから、乾燥して、前記電極基板上に前記小径Ni3Cナノ粒子が分散されたプロトン導電性高分子からなる膜を形成して、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒を製造する。
目的
本発明は、粒子径10nm未満と、これまでになく小さい小径Ni3Cナノ粒子及びその製造方法、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒及びその製造方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
技術分野
背景技術
0002
燃料電池には、固体高分子(膜)形燃料電池(PE(M)FC,Polymer Electrolyte (Membrane) Fuel Cell)、りん酸形燃料電池(PAFC,Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC,Molten Carbonate Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC,Solid Oxide Fuel Cell)、アルカリ電解質形燃料電池(AFC,Alkaline Fuel Cell)、直接形燃料電池(DFC,Direct Fuel Cell)、直接ホウ化水素燃料電池(DBFC,Direct Borohydride Fuel Cell)等がある。
0003
燃料電池の電極触媒に用いられる材料である金、プラチナをはじめとする貴金属は、触媒活性の高い材料である。そのため、高性能な触媒を形成できるが、埋蔵量が乏しく、値段の高い材料であるので、工業量産を考慮すると好ましくない。
また、表面で触媒反応させることを考慮すれば、単位量(グラム)当たりの表面積を高くすることが好ましい。
0004
そのため、貴金属以外の材料からなる、粒子状の触媒の研究開発が進んでおり、粒子状の触媒として、その表面で燃料(CH3OH等)とO2を触媒反応させて、生成物(H2O、CO2等)とすることができるNi3C粒子が注目を浴びている(非特許文献1〜8)。
Ni3C粒子は、NiもCもどちらも値段が安く、豊富な元素であるので、工業的に量産して使用する場合に、有用な材料である。また、粒子状であるので、バルクの材料に対して、単位量(グラム)当たりの表面積を高くすることができる。これにより、特に、燃料電池の電極触媒の材料として着目されている。
0005
Ni3C粒子の課題は粒子径が大きいことである。そのため、その粒子径をより小さくすることが研究開発されている。粒子径をより小さくできれば、単位量(グラム)当たりの表面積をより大きくすることができ、その触媒活性をより高めることができる。
0006
従来、Ni3C粒子は、図1に示すように、NiCp2をNaNaph及びTHFで還元反応させて、Ni6面体クラスターであるNi−Cpクラスターとしてから(非特許文献3)、通常の有機金属分子を用いた合成反応と同様に、これを高温反応させて合成していた。しかし、高温反応により、粒子径は20〜30μmとなっていた。
先行技術
0007
Schaefer,Z.L.;Weeber,K.M.;Misra,R.;Schiffer,P.;Schaak,R.E. Chem.Mat.2011,23,2475.
Goto,Y.;Taniguchi,K.;Omata,T.;Otsuka−Yao−Matsuo,S.;Ohashi,N.;Ueda,S.; Yoshikawa,H.;Yamashita,Y.;Oohashi,H.; Kobayashi,K.Chem. Mater.2008,20,4156.
Leng,Y.G.;Liu,Y.;Song,X.B.;Li,X.G.J.Nanosci.Nanotechnol.2008,8, 4477.
Leng,Y.G.;Shao,H.Y.;Wang,Y.T.; Suzuki,M.;Li,X.G.J.Nanosci.Nanotechnol.2006,6, 221.
Leslie−Pelecky,D.L.;Zhang,X.Q.; Kim,S.H.;Bonder,M.;Rieke,R.D.Chem.Mater.1998,10,164.
Tanaka,T.;Ishihara,K.N.;Shingu, P.H.Metall.Trans.A.1992,23A,2431.
Hooker,P.;Tan,B.J.;Klabunde,K. J.;Suib,S.Chem.Mat.1991,3,947.
Davis,S.C.;Severson,S.J.;Klabunde,K.J.J.Am.Chem.Soc.1981,103,3024.
発明が解決しようとする課題
0008
本発明は、粒子径10nm未満と、これまでになく小さい小径Ni3Cナノ粒子及びその製造方法、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒及びその製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
0009
本発明者らは、上記事情を鑑みて試行錯誤した結果、減圧下、低温で、Ni−Cpクラスターを加熱することにより、粒子径10nm未満と、現時点でおそらく世界最小径となる小径Ni3Cナノ粒子を製造できることを見出した。これは、平均粒子径6nmとなる粉末として得られた。また、これを用いて燃料電池用に電極触媒を作成したときに、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の触媒活性が金に匹敵する高い値となることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
0010
(1)粒子径10nm未満であることを特徴とする小径Ni3Cナノ粒子。
0011
(2)減圧下、200℃以下で、Ni−Cpクラスターを加熱して、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子を製造することを特徴とする小径Ni3Cナノ粒子の製造方法。
0012
(3)電極基板と、前記電極基板上に形成されたプロトン導電性高分子からなる膜と、前記プロトン導電性高分子からなる膜内に分散されたNi3Cナノ粒子と、を有し、前記Ni3Cナノ粒子が、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子であることを特徴とする小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒。
(4)前記プロトン導電性高分子がナフィオンであることを特徴とする(3)に記載の小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒。
0013
(5)粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子からなる粉末と、プロトン導電性高分子と、アルコールとを混合して、成膜用溶液を調整する工程と、前記成膜用溶液を電極基板上に塗布してから、乾燥して、前記電極基板上に前記小径Ni3Cナノ粒子が分散されたプロトン導電性高分子からなる膜を形成して、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒を製造する工程と、を有することを特徴とする小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の製造方法。
発明の効果
0014
本発明の小径Ni3Cナノ粒子は、粒子径10nm未満である構成なので、単位量(グラム)当たりの表面積を高くでき、表面で触媒反応させる電極触媒の材料として用いた時に、触媒活性を向上させることができる。また、NiとCはどちらも値段が安く、豊富な元素であるので、工業的に量産して使用することができ、低製造コストで、製造のための材料調達が容易な、燃料電池の電極触媒を提供することができる。
0015
本発明の小径Ni3Cナノ粒子の製造方法は、減圧下、200℃以下で、Ni−Cpクラスターを加熱して、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子を製造する構成なので、減圧下、有機金属クラスターを低温で反応させるという方法で、容易に、収率高く、小径Ni3Cナノ粒子を製造することができる。
0016
本発明の小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒は、電極基板と、前記電極基板上に形成されたプロトン導電性高分子からなる膜と、前記プロトン導電性高分子からなる膜内に分散されたNi3Cナノ粒子と、を有し、前記Ni3Cナノ粒子が、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子である構成なので、小径Ni3Cナノ粒子を用いて、単位量(グラム)当たりの表面積を高くでき、触媒活性を向上させた電極触媒とすることができる。
0017
本発明の小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の製造方法は、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子からなる粉末と、プロトン導電性高分子と、アルコールとを混合して、成膜用溶液を調整する工程と、前記成膜用溶液を電極基板上に塗布してから、乾燥して、前記電極基板上に前記小径Ni3Cナノ粒子が分散されたプロトン導電性高分子からなる膜を形成して、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒を製造する工程と、を有する構成なので、容易に、高触媒活性を示す電極触媒を製造することができる。
図面の簡単な説明
0018
NiCp2をNaNaph及びTHFで還元反応させて、Ni6面体クラスターであるNi−Cpクラスターとする化学反応図である。
本発明の小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の一例を示す模式図である。
減圧下、200℃以下で、Ni−Cpクラスターを加熱することにより、小径Ni3Cナノ粒子を製造する化学反応図である。
NICPクラスターの粉体X線回折(pXRD)の温度依存性を説明するプロファイルである。
Ni3C Npsの明視野TEM像である。
Ni3C Npsの粒子径の分布グラフである。
Ni3C Npsの高分解TEM像である。挿入図は、このTEM像のフーリエ変換像である。
Ni3C NpsとSrTiO3基板のC1sのHX−PESプロファイルである。
バルクNi、Ni Nps、Ni3C NpsのNi 2p3/2のHX−PESプロファイルである。
Ni3C Nps及びNi NpsのNaBH4電気酸化のLVである。
C Nps、Ni Nps、Ni3C Nps及びAu Npsのオンセット・ポテンシャルを示す図である。
Ni3C Nps及びNi Npsのメタノール電気酸化のCVである。
Ni3C Nps及びNi NpsのORRのLVカーブである。
0019
(本発明の実施形態)
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子及びその製造方法、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒及びその製造方法について説明する。
0020
<小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒>
まず、本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒について説明する。
図2は、本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の一例を示す模式図である。
図2に示すように、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒1は、電極基板10と、電極基板10上に形成されたプロトン導電性高分子からなる膜11と、プロトン導電性高分子からなる膜11内に分散された小径Ni3Cナノ粒子22と、を有する。
プロトン導電性高分子からなる膜11の膜厚Lは、50nm〜500nmとすることが好ましく、例えば100nmとする。しかし、これに限られるものではない。
プロトン導電性高分子膜内の小径Ni3Cナノ粒子濃度は、1μg〜100μgとすることが好ましい。しかし、これに限られるものではない。電極基板10としては、例えば、炭素板を用いることができる。
0021
プロトン導電性高分子とは、水分なしに高いプロトン導電性を有する高分子であり、例えば、ナフィオンである。
ナフィオンは、スルホン酸基で官能基化されたフッ素化高分子である。具体的には、炭素−フッ素からなる疎水性テフロン骨格とスルホン酸基を持つパーフルオロ側鎖から構成されるパーフルオロカーボン材料である。tetrafluoroethyleneとperfluoro[2−(fluorosulfonylethoxy)propylvinyl ether]の共重合体である。ナフィオンは、200℃付近で10−2S/cm以上の高い伝導度を示す。
一般的には、以下の構造を有する。
0022
0023
プロトン導電性高分子としては、ナフィオンの代わりにスルホン化スチレン−オレフィン共重合体又はポリ(ビニルフォスフォニックアシッド)[Poly(vinylphosphonic acid)]等を用いてもよい。
0024
燃料電池の電極触媒としても用いるときは、例えば、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒1の一端側を電解質溶液あるいは媒体中に差し込み、電極基板を電源に配線する。電源から電極基板に電界を印加することにより、小径Ni3Cナノ粒子22の表面で、触媒反応させることができる。
0025
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒は、プロトン導電性高分子がナフィオンである構成なので、プロトン伝導度を高くした高分子中で、小径Ni3Cナノ粒子を用いて、単位量(グラム)当たりの表面積を高くでき、触媒活性を向上させた電極触媒とすることができる。
0026
<小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の製造方法>
次に、本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の製造方法について説明する。本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒の製造方法は、成膜用溶液調整工程S1と、電極触媒製造工程S2と、を有する。
0027
(成膜用溶液調整工程S1)
この工程では、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子からなる粉末と、プロトン導電性高分子と、アルコールとを混合して、成膜用溶液を調整する。
アルコールとしては、メタノール又はエタノールが好ましい。
成膜用溶液中の小径Ni3Cナノ粒子濃度は、1mg/mL〜10mg/mLとすることが好ましい。成膜用溶液中のプロトン導電性高分子濃度は、1μg/mL〜10μg/mLとすることが好ましい。プロトン導電性高分子としては、先に記載したナフィオンを挙げることができる。回転子を用いてよく攪拌するか、超音波照射してよく攪拌する。
0028
(電極触媒製造工程S2)
この工程では、前記成膜用溶液を電極基板上に塗布してから、乾燥して、前記電極基板上に前記小径Ni3Cナノ粒子が分散されたプロトン導電性高分子からなる膜を形成して、電極触媒を製造する。
スピンコーティング、ディッピング、キャスティング等の湿式成膜法を用いる。
乾燥は自然乾燥でもよいが、オーブンで乾燥することが好ましい。
0029
<小径Ni3Cナノ粒子>
次に、本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子について説明する。
小径Ni3Cナノ粒子22の粒子径は10nm未満とされている。小径Ni3Cナノ粒子22の粒子径は10nm未満と小さくすることにより、単位量(グラム)当たりの表面積をより大きくすることができ、その触媒活性をより高めることができる。
0030
小径Ni3Cナノ粒子22の材料であるNiとCはどちらも値段が安く、豊富な元素であるので、工業的に量産して使用することができ、低製造コストで、製造のための材料調達が容易な、燃料電池の電極触媒を提供することができる。
0031
小径Ni3Cナノ粒子22は、ほぼ単結晶からなる。これにより、表面の触媒活性を高めることができる。
0032
<小径Ni3Cナノ粒子の製造方法>
次に、本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子の製造方法について説明する。
まず、Ni−Cpクラスターを用意する。
Ni−Cpクラスターは、公知の方法で作成することができる。
具体的には、NiCp2をNaNaph及びTHFで還元反応させて、Ni6面体クラスターであるNi−Cpクラスターとする(非特許文献3)。
0033
次に、減圧下、200℃以下で、Ni−Cpクラスターを加熱する。
加熱は、例えば、オーブンを用いる。
これにより、図3に示すように、小径Ni3Cナノ粒子を製造することができる。小径Ni3Cナノ粒子の粒子径は、10nm未満とされる。
0036
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子22は、粒子径10nm未満である構成なので、単位量(グラム)当たりの表面積を高くでき、表面で触媒反応させる電極触媒の材料として用いた時に、触媒活性を向上させることができる。また、NiとCはどちらも値段が安く、豊富な元素であるので、工業的に量産して使用することができ、低製造コストで、製造のための材料調達が容易な、燃料電池の電極触媒を提供することができる。
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子22の製造方法は、減圧下、200℃以下で、Ni−Cpクラスターを加熱して、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子22を製造する構成なので、減圧下、有機金属クラスターを低温で反応させるという方法で、容易に、収率高く、小径Ni3Cナノ粒子を製造することができる。
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒1は、電極基板10と、電極基板10上に形成されたプロトン導電性高分子からなる膜11と、プロトン導電性高分子からなる膜11内に分散されたNi3Cナノ粒子22と、を有し、Ni3Cナノ粒子22が、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子である構成なので、小径Ni3Cナノ粒子を用いて、単位量(グラム)当たりの表面積を高くでき、触媒活性を向上させた電極触媒とすることができる。
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒1の製造方法は、前記プロトン導電性高分子がナフィオンである構成なので、ナフィオンで小径Ni3Cナノ粒子を一様に分散させ、触媒活性を向上させた電極触媒とすることができる。
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒1の製造方法は、粒子径10nm未満の小径Ni3Cナノ粒子からなる粉末と、プロトン導電性高分子と、アルコールとを混合して、成膜用溶液を調整する工程S1と、前記成膜用溶液を電極基板上に塗布してから、乾燥して、前記電極基板上に前記小径Ni3Cナノ粒子が分散されたプロトン導電性高分子からなる膜を形成して、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒を製造する工程S2と、を有する構成なので、容易に、高触媒活性を示す電極触媒を製造することができる。
本発明の実施形態である小径Ni3Cナノ粒子及びその製造方法、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
0037
(実施例1)
まず、室温で、乾燥テトラヒドロフラン(THF)中、ナトリウムnaphthalide(NaNaph)で、ニッケルcyclopentadienyl(NiCp2)を還元して、CP配位NIクラスター(NICPクラスター)を作成した。
NICPクラスターは、NaNaphでNiCp2の還元によって、黒い、空気に反応しやすい粉末として、得られた。
0038
NICPクラスター(合成直後のサンプル)の粉体X線回折(pXRD)を行った。また、100℃、200℃、500℃のアニールを行ったサンプルも作成し、これらについても粉体X線回折(pXRD)を行った。
0039
図4は、NICPクラスターの粉体X線回折(pXRD)の温度依存性を説明するプロファイルである。グラフの上部には、ac面又はab面を基準にしたNi3Cの結晶構造図を示している。
NICPクラスターの粉体X線回折(pXRD)のプロファイルは、45.0°に単一ピークを示した。これは、FCCタイプNI(Fm3m、a=0.352nm)の111反射角による、44.5°よりわずかに大きい角度であった。
0040
アニール温度が100℃のサンプルでは、アニールをしないサンプルと類似するプロファイルが得られた。
アニール温度が200℃のサンプルでは、Ni3C Nps(R3c;=0.455nm、c=1.29nm)がそれぞれ、006、110、116そして300の反射角に対応する、39.3、41.8、58.7そして71.4°の小さい反射角ピークが観測された。また、不純物相であるFCCタイプNIの200反射角に対応する51.5°のブロードなピークが観測された。
アニール温度を500℃としたとき、Ni3C NpsはFCCタイプNIとカーボンに分解された。
0041
次に、真空中、200℃で、NICPクラスター(合成直後のサンプル)を加熱して、Ni3Cナノ粒子を合成した。
0043
図6は、Ni3C Npsの粒子径の分布グラフである。顕微鏡(UHV−TEM)で観察により、粒子径を測定すると、粒子径は3nm以上10nm未満であり、平均粒子径6nmであった(図6)。すなわち、今回合成したNi3C Npsは、従来の合成物より、はるかに小さかった。
0044
図7は、Ni3C Npsの高分解TEM像である。挿入図は、このTEM像のフーリエ変換像である。
Ni3C Nps上に整列された格子フリンジが観察された(図7)。これは、Npsが原子的に配列されていることを示している。
格子フリンジの間隔は、0.201nmであった。これは、Ni3Cの(113)面(d113=0.201nm)のd値に一致した。
0045
次に、硬X線−光電子放出測定(HX−PES:光子エネルギー=5.95keV)を、Ni3C Npsに対して行った(図8)。
図8は、Ni3C NpsとSrTiO3基板のC1sのHX−PESプロファイルである。
C1sの光電子放出ピークは、Ni3C Npsの283.7±0.2eV、Srの3p1/2の285.7±0.2eV、SrTiO3基板の280.0±0.2eVであった(図8)。
0046
図9は、バルクNi、Ni Nps、Ni3C NpsのNi 2p3/2のHX−PESプロファイルである。
Ni3C NpsのNi 2p3/2の光電子放出ピークの結合エネルギーは、バルクのNiやNi Npsのものより0.2eV大きかった(図9)。
Ni3C NpsのC1s−及びNi 2p3/2のピークの結合エネルギーは両方とも、文献値に一致した。
Niの3d及びC2p間の強い混成軌道により、Ni3C Npsの状態密度(DOS)は、Fermiレベル(EF)の近くで減少した(図9挿入図)。
0047
次に、Ni3C Npsの電気触媒活性を、固体高分子型燃料電池(PEFCs)で試験した。
図10は、Ni3C Nps及びNi Nps(平均サイズ=3nm)のNaBH4電気酸化のラインスキャン・ボルタムグラム(LV)である。電流値0mAとなるオリジンを十字記号で示している。
Ni Npsは、−0.43 Vのオンセット・ポテンシャルで増加を始めた。
Ni3C Npsは、−0.85Vのオンセット・ポテンシャルで増加を始めた。これは、Au Npsのオンセット・ポテンシャル−0.86Vに匹敵した(図11)。
0048
NaBH4の電気酸化の場合とは異なり、Ni3C Npsは、メタノールの電気酸化または酸素還元反応(ORR)では活性改善がされなかった。
図12は、−0.3Vから+0.35Vまでの範囲で、Ni3C Nps及びNi Npsのメタノール電気酸化のサイクリック・ボルタムグラム(CV)である。電流値0mAとなるオリジンを十字記号で示している。
Ni3C NpsのCVカーブは、この範囲で、Ni NpsのCVカーブとほとんど同じであった。
実施例
0049
図13は、Ni3C Nps及びNi NpsのORRのLVカーブである。電流値0mAとなるオリジンを十字記号で示している。
Ni3C Nps及びNi Npsは、ほとんど同じオンセット・ポテンシャル、−0.3Vであった。
0050
本発明の小径Ni3Cナノ粒子及びその製造方法、小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒及びその製造方法は、粒子径10nm未満と、現時点でおそらく世界最小径となる小径Ni3Cナノ粒子とその製造方法と、金に匹敵する触媒活性を示す小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒とその製造方法に関するものであり、電極触媒は燃料電池に用いることができ、触媒産業、エネルギー産業等において利用可能性がある。
0051
1…小径Ni3Cナノ粒子含有電極触媒、10…電極基板、11…プロトン導電性高分子からなる膜、22…小径Ni3Cナノ粒子。
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