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技術 大地震と巨大地震の予知方法、予知装置、予知プログラム及び記録媒体

出願人 株式会社武田エンジニアリング・コンサルタント
発明者 武田文秀
出願日 2012年11月2日 (6年9ヶ月経過) 出願番号 2012-243002
公開日 2014年5月19日 (5年2ヶ月経過) 公開番号 2014-092454
状態 特許登録済
技術分野 地球物理、対象物の検知
主要キーワード 目盛範囲 下向きピーク 二重破線 系列要素 移動平均後 目盛り範囲 変位ゼロ 総変位量
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

地殻定常非定常周期的な応力変化が、地震発生と地殻表面の状態とを変化させる。地震波とGPSを用いて観測できるその変化に、異常が出現すると、大地震や巨大地震が発生する。その異常を、予兆として検出できれば、大地震と巨大地震の発生時刻、場所、大きさの予知が可能となる。しかし、観測した時系列ランダム変化し、この変化を決定論的物理法則記述できないので、予兆検出が不可能となる。この状況下、大地震と巨大地震の予知に特許第4608643号の併用とその改善を目的とする。

解決手段

微分操作が持つ時間反転に関する物理的性質を正しく反映する新たな差分操作を確立し、地殻の応力変化を観測したランダムな時系列に適用し、物理法則を用いて大地震と巨大地震が発生する決定論的な自然法則を確立し、その法則を利用し、それら地震の予知を可能とした。

概要

背景

地殻定常非定常周期的な応力変化が、地震発生と地殻表面の状態とを、複雑に変化させる。地震波とGPSを用いて様々な地震の発生と地殻表面の状態を連続観測すると、地震発生と地殻表面の状態の多種多様な変化は、観測値の時系列定量化できる。その時系列に通常とは異なる変化が出現すると、「地殻の応力状態は、既に、通常とは異なる異質な状態(臨界状態)に到達し、大地震や巨大地震が、その領域で、何時、発生しても不思議でない状態にある。」と推論される。しかし、観測した時系列は、常に、ランダム変化する。地震発生の場合のランダム変化は、地震発生過程の自然現象から生じ、そのランダムな変化量は、観測に伴うノイズ誤差によるランダムな変化量よりはるかに大きい。一方、GPS観測の場合のランダム変化は、ランダム変化をしない地殻表面の状態変化とは無縁な、観測環境に必然的に付随するランダムノイズである。そのランダムな変化量は、地震等が発生しない通常な地殻の日々の上下変化の場合、その地殻の変化量よりはるかに大きい。いずれの場合でも、これら観測した時系列に出現する通常のランダム変化は、ニュートン運動の第二法則等を用いた決定論的物理法則記述できないので、ランダム変化に埋もれた異質な変化の抽出と推移に関する決定論的な自然法則確立は、不可能とされている。従って、大地震や巨大地震の発生に至る過程の決定論的な物理法則、自然法則、及び、地殻に蓄積される歪エネルギーの状態を地震発生の変化からモニターし、地殻の臨界状態を抽出する理論や技術は、未だ確立されていなし、大地震や巨大地震の震源発生時期マグニチュードからなる地震の3要素の予知に利用できる決定論的な物理法則も自然法則も技術も存在しない。例えば、[非特許文献1]に、記載されている地震の物理は、地震波の観測で得た地震発生中の複雑な物理現象を、できる限り簡素化した推論に適合する物理モデルで記述したものである。従って、その物理法則は、巨大地震を発生させるプレート境界付近の通常とは異なる予兆的な地殻状態の変化の有無を、言及できないし、東巨大地震の発生も、後述する様に説明できない。しかし、[非特許文献1]は、観測事実に基づき、「周期的に発生している大地震や巨大地震の発生時期の予知でさえ極めて困難である。」と結論付けている。

[非特許文献1]のGPSでプレート運動を観測した結果によると、プレート境界付近の地殻のせん断歪の蓄積率は、年間、3x10−7程である。この蓄積率は、日本のプレート境界付近の観測値とも調和している。例えば、国土地理院のGPS観測網は、全国に約20km間隔で設置されている電子基準点(GPSステーション)で構成されている。その1つの室戸のGPSステーションは、大陸プレートの東端上に位置し、その下に、フィリッピン海プレート東から北西方向に沈み込んでいる。しかし、2つのプレート間には固着領域が在り、フィリッピン海プレート運動が、その大陸プレートの東端を、北西方向に、略、年間3cm程の率で、引きずり込みながら変形させている。この領域の地殻を、厚さ100kmの弾性体とみなせば、1年間に発生する歪は、3cm
/ 100km = 3x10−7となり、この歪量が、毎年、変形している地殻に蓄積される。この歪を発生させる「せん断応力」は、地殻の「剛性率」とその「歪」の積で与えられる。従って、「せん断応力の蓄積率」は、「剛性率」と「せん断歪の蓄積率」との積として推定できる。[非特許文献1]に倣い、地殻の「剛性率」を、3x104MPaとすれば、その率は、9x10−3MPaとなり、年間、略、0.01MPaとなる。更に、[非特許文献1]に倣い、「せん断」を特別に区別したり強調したりする必要がない限り省略し、「せん断応力」を単に「応力」もしくは「ストレス」と呼び、「せん断歪」を単に、「歪」と呼ぶ事にする。また、「MPa」は、圧力の単位の「メガパスカル」で、1MPa
= 106x Paで、1Pa=1N/m2である。「N」は力の単位「ニュートン」である。

[非特許文献1]によると、地震発生前後の応力変化は次の様になる。応力が、年間、「0.01MPaの率で、プレート境界付近の地殻に蓄積されている。」とし、「地殻には、結合強度が最も弱い箇所とされる断層が存在している。」とする。蓄積量が、断層面静止摩擦応力を超えると、断層面は、その平面上をスリップし始める。この時、蓄積された応力が、開放されて断層面の応力まで降下すると、スリップ運動は停止する。この断層面のスリップ運動が、地震である。断層面付近に蓄積された大地震発生前後の応力は、それぞれ、初期と最終の静止摩擦応力に対応するが、これら応力の大きさは、直接測定できない。しかし、初期と最終応力の差は、地殻に蓄積されていた静的な応力の降下量で、「剛性率」と地震に伴う「歪の変化量」の積となる。大地震発生後に観察される「歪の変化量」が、3x10−5〜3x10−4程なので、その降下量は、1〜10MPaとなる。又、[非特許文献2]によると、2011年3月11日に発生した東北の巨大地震の場合は、場所によっても異なるが、5〜10MPaと推定されている。この降下量が、断層面のスリップ運動を起こすのに必要なせん断応力となるが、実験室岩石破壊に必要な応力である500〜600MPaと比較すると、遥かに小さい。

前記プレート境界付近の地殻の応力蓄積率は、年間、0.01MPa、そして、大地震や巨大地震を起こすのに必要な蓄積応力は、1〜10MPaであった。これらの値を、他の単位で表現する。例えば、血圧値測定に使用する水銀柱の高さの単位(mmHg)に変換してみると、年間の応力蓄積率(0.01MPa)は、75となり、健康人の平均的な拡張期血圧値最低血圧値)に相当する。大地震や巨大地震を起こすのに必要な蓄積応力(1〜10MPa)は、100〜1000人分の拡張血圧値の総和で、7500〜75000(mmHg)となる。従って、100〜1000人の最低血圧値を加算(蓄積)した圧力(せん断応力)が、断層を動かし、大地震や巨大地震を引き起こすことになる。また、1〜10MPaは、10〜100気圧の圧力に相当するので、水深、100m〜1000mの海中の水圧から大気圧を引いた圧力に相当するせん断応力が、断層を動かし、大地震や巨大地震を引き起こしている。

しかし、1〜10MPaと言う断層面のスリップ運動を起こすのに必要な応力を蓄積するには、前述の一人の拡張血圧値75(0.01MPa)を用いると、100〜1000人を必要とする。時間に換算すれば、毎年、0.01MPaの率で、1MPa蓄積するには100年、10MPa蓄積するには、1000年となる。[非特許文献1]によると、プレート境界から遠く離れた内陸部では、年間の歪蓄積率は、3x10−8程と、プレート境界の歪蓄積率より1桁小さくなる。この値も、先の国土地理院のGPS観測地点の土佐から少し離れた内陸部(近畿地方)の歪蓄積率とも調和する。例えば、大津と亀岡の観測地点間の距離(基線)の縮みが10年間で3cm程となるので、年間の歪蓄積率は、3x10−8程となる。従って、内陸部の1〜10MPaの蓄積には、1桁多い1000〜10000年を必要とする。長期にわたる応力の蓄積率は、時間的に変化しないと仮定したが、変動し、地殻内の応力分布も均一では無い。従って、[非特許文献1]は、「長期間の応力蓄積とその開放(大地震や巨大地震の発生)の繰り返しの周期には、大きな変動が伴うので、略、周期的に発生している大地震や巨大地震の正確な発生時刻の予知でさえ、極めて困難である。」と結論付けている。次に、その困難な実例を取り上げる。

[非特許文献3]によると、北米プレートと太平洋プレートとの境界付近の十勝沖では、周期的に、M8クラスの大地震が発生していた。1843年に、M8.4地震、1952年に、M8.2地震が、発生したので、「大地震発生の周期は、100年」と推定できる。従って、「1952年の次の発生時期は2050年」と予測できるが、2003年9月26日に、M8の十勝沖地震が発生した。予測した100年の周期は、50年程に短縮された。従って、この様に大きく変動する大地震発生の繰り返し周期を用いた、発生時期の予知は、日常生活における緊急避難に利用できない。しかし、この変動は、ランダムではなく、決定論的に発生している。

例えば、国土地理院のGPS観測網で十勝沖地震に関する地殻状態の変化(地殻変動)の観測データ解析した[非特許文献4]によると、地震発生前の広尾の地殻は、北西方向に、年間、1.6cmの率で移動していた。従って、地殻が、一定の地殻変動率(1.6cm/年)で、1952年から2003年まで、51年間、移動したとすると、総移動量は、81.6cm(51年x1.6cm/年)となる。地殻を弾性体だとみなすと、この総移動量に相当する総歪量が十勝沖の断層付近に蓄積されていたことになる。「地震発生時、断層運動が、総歪量を一挙に開放させた。」とすると、「その運動は、広尾の地殻を81.6cm程、一挙に移動させた。」はずである。広尾の地殻は、地震発生直後、南東方向へ91cm移動した。それは、総移動量の81.6cmに、略、等しい。また、前もって「広尾の総移動量の限界は、90cm程である。」と仮定できたとすれば、その限界に到達するには、56年[90cm/(1.6cm/年)=56年]を必要とする。従って、「大地震発生は56年後の2008年」と予測できる。しかし、日常生活に有益な大地震発生時期の予知は、「56年〜100年後に発生」ではなく、少なくとも「何年何月何日に発生」である。数週間から1年程前に、この大地震の発生時刻の予知を可能にしたのが、[特許文献1]の発明である。この発明は、繰り返し発生している大地震のみならず、地震発生地帯の何処かに今にも発生しそうな大地震の発生時期、震源、マグニチュードの程度の予知を可能としている。従って、大地震の震源、発生時期、マグニチュードからなる3要素を予知する背景技術は、[特許文献1]に開示された予知技術以外、存在しない。

[特許文献1]の大地震の予知で利用した大地震発生の自然現象を定量化する技術と、その背景技術に、物理法則を導入すると、大地震発生の自然現象をニュートンの運動の第二法則で記述でき、その大地震発生の物理法則を予知に利用できる。しかし、その自然現象は、ランダムに変化するので、現象の変化率を求める微分の使用が、不可能となり、微分を用いた運動の物理法則を、確立できなかった。本願の発明者は、微分をその操作と同等な差分操作に変換する新たな数学基礎を開発し、差分による大地震発生の自然法則と物理モデルを構築した。従って、[特許文献1]の大地震発生の自然現象を定量化する技術、その背景技術、そして、これら技術に、物理法則を導入するのに必要となる背景技術を、次に述べる。

[特許文献1]の発明は、「地震発生の変化(地震活動)は、地殻の応力変化を反映し、その変化には、強いランダムノイズに埋もれた弱い周期変動が含まれる。」という自然法則を、大地震の予知に利用した。例えば、ある地域の地震活動を、震源、震源時(地震発生の時刻)の間隔時間、マグニチュードという震源要素変位時系列で定量化すると、その変位には周期的な弱い変動と、ランダム的な強い変動とが混在する。周期変動の中には、全ての震源要素に略共通な短い周期が存在する。選択した領域の地震活動に依存するが、その周期は、数週間から数年程となる。[特許文献1]の発明は、この短い周期を持った加速度成分を、変位の2次差分値として選択的に抽出し、震源の深さと、発生間隔時間とマグニチュードに作用している3つの加速度成分の振幅位相関係を用いて、大地震発生の自然現象(予兆の推移)を定量化し、発生時刻、震源、マグニチュードの程度を予知する方法と装置とを提供している。この発明は、地震発生の変化(地震活動)の定量化を、次の様に実施している。

地震は様々な揺れ(地震波)を発生させる。[非特許文献3]によると、その地震波を、気象庁防災科学技術科学研究所、大学、各自治体等が、日本各地に設置してある地震計ネットワークから検出し、解析して、地震の発生時刻、地震の地理的な発生個所緯度経度、深さ)、地震の大きさを示すマグニチュードMからなる地震の震源要素に数値化する。さらに地震は、断層の破壊すべり運動なので、その運動を、運動のメカニズムを記述する発震機構解から、断層面の向きやすべり方向を断層節面とその走行(R)と傾斜角(DEC)で記述し、地面の揺れの初動が立下る複数の観測点から断層面に働く主圧力の軸の方向(P軸)を決定し、逆に初動が立ち上がる複数の観測点から断層面にかかる主張力の軸をP軸に直行するT軸として決定し、P軸とT軸の方向をその方位角鉛直角とで記述する。又、断層面を推測するためにP軸とT軸との中間に(それぞれに45度の角度で)2つの面、節面1(N1)と節面2(N2)を構成する。N1かN2かの一つの面が断層面となる。地震の破壊メカニズム要素を、N1とN2とが地表面と接する線上の走行(R)と傾斜角(DEC)、P軸(PA)とT軸(TA)の方位角(DIR)と鉛直角(VER)を用いて、次の8個のパラメータ、N1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、PA-DIR、PA-VER、TA-DIR、TA-VERとして数値化する。又、断層のすべり角(λ)を用い、各節面のN1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、N1-λ、N2−λ2を6つの断層パラメータとして数値化する。

気象庁は、上述の公的な機関から提供される地震波の一括管理と解析を行い、先の数値データを、気象庁一元化処理震源要素のカタログとして公開している。2003年6月3日から、このカタログは、防災科学技術研究所のホームページで2日遅れ震源情報として公開されている。記録された地震波も公開されているので、利用者が、これらパラメータを再解析する事も可能となっている。地震計もパソコン周辺機器として安価に制作できるので、各家庭に設置する事も可能である。各家庭に設置した地震計は、交通による振動等の環境ノイズを受けやすいが、[特許文献1]の解析に必要とするのは、微少地震ではなくマグニチュードMが略3以上の有感地震なので、各地震計インターネットで結び、地震検出ネットワークを構築し、研究機関で開発された汎用ソフトウエアーを用い、上記震源パラメータをリアルタイムで得ることも可能になる。この様にして得た地震の震源要素や、破壊メカニズム要素を用いて地震活動を定量化(数値化)できるので、その時間的推移が、何故、変位(位置)、速度、加速度からなる基本的な物理量で、記述できるかを説明する。

例えば、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方を、対象領域として選択する。気象庁一元化カタログと気象庁カタログから、その小さな領域内に発生した地震で、深発地震を除き、マグニチュード(M)が、M≧Mc(Mc
= 3.5)で選択される地震のみ抽出する。そして、これら地震の震源(緯度−LAT、経度−LON、深さ−DEP)を、地震が発生した順に辿り、その領域(3次元空間)に痕跡軌跡)を描く。[図2]にその3次元空間を表示する。x軸を「LAT」、y軸を「LON」、z軸を「DEP」とすると、x-y平面が、地表面となり、z軸が、地殻の深さとなる。地殻内の星印が、発生した地震で、星印を連結した折れ線(矢印の連結)が、地震が描いた軌跡となる。星印の大小は、地震のMの大小を表す。地殻の応力変化が起こすこれら地震の発生(星印)を、仮想粒子の出現とみなすと、この軌跡は、仮想粒子が出現する度、その粒子の位置を直線で連結した軌跡となる。それは、丁度、液体中に浮遊している粒子が、ブラウン運動して描くジグザグした軌跡の様になる。浮遊粒子運動軌跡は、所定の等間隔時間で、運動している粒子の位置を観測し、その位置を直線で連結して得る。地震発生の場合、震源時(地震の発生時刻)が、仮想粒子を観測した時刻tとなるが、その観測時刻tと粒子の出現順番を示す整数値jとの関係は一意的なので、整数値jを観測時刻とする。[図2]の「x-y-z空間」に、その出現時刻の一例を、0、1、2、‥、として、発生した地震(星印)の横に、付記してある。その仮想粒子の観測値は、3次元空間の位置情報に、応力変化の情報とマグニチュードとを加える事ができる。マグニチュードは、MAGもしくはMと定義する。応力変化は、後述する様に、地震の発生時刻の差である発生間隔時間(INT)に出現すると仮定できるので、INTをその応力変化の観測値とする。これら観測値が、(LAT、LON、DEP、INT、MAG)からなる5つの震源要素となる。従って、仮想粒子の運動は、3次元から5次元へと拡張した観測空間で記述できる。観測空間の次元数は、更に、追加できる。例えば、地震の発生は断層の破壊運動なので、断層面の向き、傾き、すべり方向等の地震の破壊メカニズム要素も観測値に加える事ができる。この様に拡張した空間に描いた軌跡の各座標軸成分が、地震の各要素の時系列データとなり、地震の発生順番を示す整数値jが、各時系列に共通な時間となる。整数値のjを時間とする事は、自然科学工学等における情報や現象を時系列化する際、古くから頻繁に用いられている概念である。従って、時刻tで発生した地震が観測空間に描く軌跡は、時刻jで観測された仮想粒子が、その観測空間に描く運動軌跡と同等に取り扱う事ができるので、その粒子運動の位置、速度、加速度を用いて、地震の発生の変化を記述できる。この時系列化の背景技術と作成の仕方を、LAT、LON、DEP、INT、MAGからなる震源要素パラメータを用いて、次に述べる。

抽出した3つの継続した地震の震源情報が、地震の発生時刻である震源時(YYYY/MM/D:mm:ss.ss)、震源地の緯度(LAT)、経度(LON)、震源の深さ(DEP)、マグニチュード(MAG)として、次のように与えられたとする。
番目(最初)の地震が、
(震源時=1983/01/06 09:35:47.50、LAT=北緯34.453度、LON=東経132.607度、DEP=27.0km、MAG=3.5)、
1番目の地震が、
(震源時=1983/01/08 10:36:54.60、LAT=北緯33.817度、LON=東経131.843度、DEP=83.0km、MAG=4.0)、
2番目の地震が、
(震源時=1983/01/17 12:19:49.10、LAT=北緯33.468度、LON=東経132.448度、DEP=48.0km、MAG=4.1)
であったとする。

これら3つの地震の各震源要素(LAT、LON、DEP、INT、MAG)を使用した時系列データの作成は、それぞれの単位を、LATとLONが度、DEPがkm、INTが時間(60分)とすると、次の様になる。
0番目=(LAT=34.453、LON=132.607、DEP=27.0、INT=X、MAG=3.5)、
1番目=(LAT=33.817、LON=131.843、DEP=83.0、INT=49.0186、MAG=4.0)、
2番目=(LAT=33.468、LON=132.448、DEP=48.0、INT=217.7151、MAG=4.1)
となる。0番目のINT=Xは、その前の地震情報がないので震源時(発生時刻)の差である間隔時間INTが算出できない事を意味する。従って、1番目が時系列データの始まりとなる。この様に作成する時系列の表記方法を次に述べる。

時系列にする各震源要素を任意パラメータcで表記し、時系列の時間tを地震の発生順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)とし、各震源要素の時系列を、[c]=[c(1)、c(2)、c(3)、・・、c(m)、・・]とする。例えば、各時系列[c]は、震源要素cを、
LATとすると、
[ LAT
]=[LAT(1)=33.817、LAT(2)=33.468、・・・]、
LONとすると
[ LON
]=[LON(1)=131.843、LON(2)=132.448、・・・]、
DEPとすると、
[ DEP
]=[DEP(1)=83.0、DEP(2)=48.0、・・・]、
INTとすると、
[ INT
]=[INT(1)=49.0186、INT(2)=217.7151、・・・]、
MAGとすると、
[ MAG
]=[MAG(1)=4.0、MAG(2)=4.1、・・・]、
と表記される。地震の発生順序を示すインデックスjの1、2、・・・が各時系列の時間tとなる。従って、5次元空間(LAT、LON、DEP、INT、MAG)に描かれた地震発生の軌跡の時刻tの各座標軸成分は、LAT(t)、LON(t)、INT(t)、DEP(t)、MAG(t)となる。これら各成分で定められた位置ベクトルは、抽出する地震を選択するために設定した各しきい値、もしくは所定の各基準値からの変位ベクトルともみなす事ができる。従って、仮想粒子の運動が描く軌跡の時刻t(t=j)における各位置成分は、変位成分と同等に取り扱えるので、成分cがLATであれば、その変位d(c,t)を、d(LAT,t)と表記するが、位置ベクトルのLAT成分のLAT(t)と同等である。従って、上記、震源要素cの時系列[c]を、次の[数1]で表記する。

また、後述する粒子の各速度と各加速度成分をそれぞれ、V(c,t)とA(c,t)と表記する。例えば、成分cがLATであれば、V(LAT,t)、A(LAT,t)と表記する。従って、地震活動は、粒子運動と同様に、粒子の位置(変位)、速度、加速度と言う基本的な物理量を用いて記述できる。ただし、時間tは、地震の発生順番を示す配列インデックスjで、それは、地震1個の発生を1イベントとするとイベント数でもある。変位d(c,t)は時間tの離散データとなる。

次に、[数1]の各時系列で定量化された地震活動の時間的な推移から大地震の発生に至る過程に出現する周期性を抽出する。この周期が、予知に利用する時間的な尺度となる。つまり、周期が予知に利用する時計タイムベース(尺度)となる。更に、[数1]の各時系列から、その周期(尺度)を持った変位、速度、加速度成分を抽出する。そして、大地震に至る地震活動の推移を、加速度成分で定量化する。この予知に利用する周期は、一見ランダムに見受けられる複雑な自然現象に埋もれている。[特許文献1]の開示例にあるように、その周期に対応する周波数は、中国・四国・近畿領域の地震活動を[数1]で表記した5つの時系列のスペクトル分布に、略共通したスペクトルピーク付近に観察される。ただし、地震活動の推移は、台風の発生やその移動、の発生やその移動等に見られる気象変動の様な非線形現象カオス現象)である。従って、スペクトルピークは、分光学における線形現象を特徴づける鋭い一本のスペクトルピークではなく、一見複雑に見えスペクトル群(連続した凹凸)に、各要素の時系列に共通した小さなピークとして、周期が60〜70イベントに相当する周波数付近に存在する。つまり、周期は、60〜70イベント付近の範囲で変動している。例えば、[特許文献1]の開示例のスペクトルグラフ(図6)の震源要素LONのピークは、その共通したピークの箇所で分割され両側に2つのピークを持つ。これは[数1]の時系列[LAT]より、時系列[LON]の方が、より複雑に変動している事に起因する。時系列[LON]が、より複雑に変動する理由は、中国・四国・近畿地方に於けるフィリッピン海プレートとユーラシアプレート(大陸プレート)の地理的配置に起因する。この地方に生じた地震で、マグニチュードが3.0以上、深さが300km以内の震源分布のグラフ([特許文献1]の図2、図3、図4で、後述の[図29]、[図30]、[図31]に相当する)から、地震の発生の痕跡を経度(LON)側から見ると、上側の大陸プレートの下側に潜り込むフィリッピン海プレートは、上下が重なり合うように東経131.5度〜136.5度に広がっている事が判明する。一方、緯度(LAT)側から見ると、北緯32度〜36度の南側にフィリッピン海プレート、北側に、大陸プレートと分離している。従って、それらプレート境界付近で発生した地震が描く軌跡の経度(LON)成分は、緯度(LAT)成分と比較すると大きく変化する場合がある。例えば、地震の発生が京都付近から山口付近へと移動すると、それら地震が描く軌跡は、軌跡の緯度(LAT)成分の変化は小さいが、経度(LON)成分の変化は大きくなる。その様な地震の発生の繰り返しが、軌跡のLON成分の変動をより複雑にする。

この様な時系列のスペクトル解析から得た、略、60〜70イベントを中心とした周期的な変動のグループが、中国・四国・近畿地方における地震予知の時間的な尺度となる。地震活動が異なる他の領域を選択すれば、この尺度の大きさも異なる。この60〜70イベントと言う時間の尺度は、平均的な実時間にも変換できる。例えば、「地震が1個(1イベント)発生するのに平均的に7日かかる。」とすると、略420〜490日に相当する。又、地震の発生時刻と次の地震の発生時刻との差のINTを70個累積加算した時系列の周期的な変動は、略300〜400イベントと観測されるので、実時間に変換すると略6〜8年となる。ただし、1995年の庫県南部地震、1997年の山口県東部地震、2000年の取県西部地震後の期間においては、余震のため、周期的な変動は、略2〜3年に短縮されている。

この様な時間的尺度は、[非特許文献5]、[非特許文献6]、[非特許文献7]等に報告されている様に、地震を作り出す地殻構造の時間的変化を、コーダ波で観測すると、必然的に存在している。コーダ波とは、地震波の後部に属する波である。例えば、地震観測所から10km程離れた震源地で発生したM3.6の地震を観測していたとする。この時、P波、S波が過ぎ去った後でも、観測所付近の地面は、しばらくの間、減衰しながら揺れ続ける。この揺れは、その地震のS波が地殻にある多くの不均質物質により散乱された集りからなる。揺れの減衰率を表すパラメータ(コーダQ−1)は、地殻の不均質物質の密度に比例する。地殻に存在する不均質物質の密度の時間的変化は、その変化に比例した応力変化をもたらし、周辺の断層に地震を発生させると考えられる。従って、[非特許文献5]、[非特許文献6]、[非特許文献7]は、コーダQ−1を用いた地殻構造の時間的変化(Q−1の時系列)の観測から、「地殻構造を形成する固有な長さを持った不均質物質の数は、数年から10年程の周期で時間的変化をし、不均質物質は、岩石圏延性部分(Ductile)に存在し、それら不均質物質のクリープ破壊による応力変化が、近接する脆性部分(Brittle)に、不均質物質の固有な長さに相当する断層の長さを持った固有な地震を不均質物質の数に比例した数だけ発生させている。」としている。

[非特許文献5]によると、岩石圏の延性部分(Ductile)と脆性部分(Brittle)の遷移領域で、プレートの運動により延性部分から脆性部分へ、応力が加えられと、空間的に、略、数百メートルと1キロメートルからなる固有な断層の長さを持った地震が作り出される。それら、地震のマグニチュードは、略3と4であり、米国のカリフォルニア州に選択したサンフランシスコ付近(Mt.Hamiltonにある観測所を中心とした半径が略120kmの領域内)のMAG
= 4〜4.5とロスアンゼルス付近(Riversideにある観測所を中心とした半径が略120kmの領域内)のMAG = 3〜3.5からなる2つの固有な地震活動の50年余りにわたる時系列(2つのMAG時系列の時間軸には、実時間を使用)は、コーダ波の減衰率(Q−1)の時系列と、略、同位相を取りながら変動する。コーダ波の減衰率の時系列は、地震を発生させる延性部分と脆性部分の遷移領域付近に蓄積された応力の周期的な変動を反映し、振幅の変動値は、略、0.1MPaと見積もられている。この応力の変動が、先の3〜3.5と4〜4.5とからなる固有なマグニチュードを持った地震を、発生させている事になり、地震の発生の変化には、周期的な変動が必然的に存在している。従って、マグニチュードが略3〜4以上の地震を選択しても、それら全体の地震活動に、その周期的な変動が含まれ、その周期が、[特許文献1]で利用した予知の時間の尺度になっていた。また、[非特許文献6]と[非特許文献7]は、その空間と時間的に固有な尺度が、地震予知にも利用できる事を報告している。

[非特許文献6]と[非特許文献7]によると、大地震が発生しない時は、2種類の固有な地震活動の時系列とコーダ波の減衰率(Q−1)の時系列とは、それぞれが、同位相にある。マグニチュードが略7以上の大地震発生の2年程前から、Q−1は、位相が遅れ始め、1年程前には、その周期的な変動のピークの遅れが最大となる。つまり、大地震が発生しない通常な状態では、プレートの運動により延性部分から脆性部分へ、応力が加えられ、延性部分と脆性部分の遷移領域で、マグニチュードが略3と4からなる2種類の固有な地震が作られている。しかし、大地震発生2年程前から、それら固有地震は、遷移領域に加え、脆性部分でも作られ始められ、固有地震の時系列の振幅値が、脆性部分で発生する固有地震の個数だけ増加し始める。この増加により、Q−1の時系列が固有地震の時系列に比べ遅れ始める。固有地震が、地殻の脆性部分でも作られ始められた事は、脆性部分が通常とは異なる状態(臨界状態)に達した事を示唆し、Q−1の時系列の遅れが、大地震発生の予兆となる。従って、「その遅れの検出から2年程後に、コーダ波の観測地点から半径が、略120kmの領域内で、大地震が発生する。」とする大地震の予知が、可能となる。

地震の発生の変化に必然的に存在している周期的な変動を見つけるための手段、方法、装置が、[特許文献1]と[非特許文献4]とに示してある。それら文献によると、例えば、[数1]の震源要素d(c,m)からなる時系列に出現するランダム的な変動を、平滑するために、所定の個数(w個)で移動平均する。時間tの移動平均値をΣd(c,m)と表記し、所定の間隔(s)での1次差分値、2次差分値を、それぞれ、速度V(c,t)、加速度A(c,t)に比例した量とする。移動平均操作(Σ)は、w個の加算でローパスフィルター機能を設定する。差分操作は、差分を取る間隔s個でハイパスフィルター機能を設定する。従って、加算と差分操作によって得た速度V(c,t)と加速度A(c,t)は、変位d(c,m)をバンドパスフィルターした量に比例する。例えば、Σd(c,m)から間隔sの2次差分で得た加速度A(c,t)は、Σd(c,m)から略2sの周期成分のみ選択的に抽出するのみならず、その周期成分を作り出している力に比例する量を抽出する事になる。従って、大地震を発生させる応力変化の関係を、周期変動する予兆として抽出する事ができる。実際、上記で選択した中国・四国・近畿領域の1984年以降から1995年兵庫県南部地震以前の各時系列のスペクトルに観察される、略、60〜70イベントからなる周期変動は、移動平均個数を、w=20〜25、差分間隔を、s=30〜35として得る事ができる。このw=20〜25とs=30〜35を用いて抽出した各加速度、A(LAT,t)、A(LON,t)、A(DEP,t)、A(INT,t)、A(MAG,t)は、略、60〜70の周期を持って変動している。この時、A(DEP,t)とA(INT,t)とA(MAG,t)との振幅値と位相の変化には、大地震発生の数ヶ月〜1年程前に、次に述べる2種類の特別な変化(予兆)が、出現する。

大地震発生の2種類の予兆は、M7.2の兵庫県南部地震(1995-1-17)と、M7.2の鳥取県西部地震(2000-10-06)に関するものである。兵庫県南部地震の予兆を、神戸の臨界静穏と定義し、CQK
(Critical Quiescence for Kobe)と呼んでいる。一方、鳥取県西部地震の予兆を、鳥取の臨界静穏と定義しCQT (Critical
Quiescence for Tottori)と呼んでいる。時間tを横軸に、加速度を縦軸に取り、A(INT,t)を実線、A(DEP,t)を破線、A(MAG,t)を実線として、それら加速度の周期変動の様子を[図3]に描く。ただし縦軸は、上側がマイナス(負)、下側がプラス(正)領域となる。先ず、CQKは、略、2sの周期で変動していた加速度A(DEP,t)の周期が、時刻ta0付近から、A(INT,t)の周期より長くなり始める。そして、時刻ta1で、A(DEP,t)とA(INT,t)とが逆位相となり反転が生じる。反転時、A(INT,t)は、正の方向(INTを増加させる方向)に振幅のピーク値、A(DEP,t)は、負の方向(DEPを減少させる方向)に振幅のピーク値を取り、A(MAG,t)は、負の方向(マグニチュードを減少させる方向)に振幅のピーク値を取る。このCQKの大地震発生の時刻は、t軸上へ記した上向きの破線矢印の箇所で、A(INT,t)が、半周期後に、反転し、振幅の逆のピークに到達した時刻ta2である。次に、CQTも、略、2sの周期で変動していた加速度A(INT,t)の周期が、時刻ta0付近から、先のCQKとは逆に、A(INT,t)の周期より長くなり始め、時刻ta1で、A(DEP,t)とA(INT,t)とが逆位相となり反転が生じる。反転時、A(INT,t)は、負の方向(INTを減少させる方向)に振幅のピーク値、A(DEP,t)は、正の方向(DEPを増加させる方向)に振幅のピーク値を取り、A(MAG,t)は、先のCQKと同様に、負の方向(マグニチュードを減少させる方向)に振幅のピーク値を取る。このCQTの大地震が発生するのは、t軸上へ記した上向き破線矢印の箇所で、A(INT,t)の振幅のピークが、反転し、逆の振幅のピークに到達した時刻ta2である。略2sからなる短い固有な周期(時間的な尺度)を持った2種類のA(INT,t)とA(DEP,t)とA(MAG,t)との振幅及び位相関係が、大地震発生の時刻を定量化する。これら発生時刻は、配列インデックス(地震の発生個数つまりイベント数)のtなので、tと平均的な地震の発生間隔時間との積が、実時間となる。従って、上記、大地震発生の2種類のCQKとCQTの予兆(自然法則)は、2種類の大地震の予知に利用できる。

先に選択した中国・四国・近畿地方の領域では、これら2つの大地震以外に、M6.6の山口県東部地震(1997-6-25)が発生している。この大地震の予兆タイプはCQTである。他の日本の領域で発生したすべての大地震(マグニチュードMが略6以上)の予兆はCQKかCQTである。例えば、2003年に発生したM8の十勝沖地震(2003-9-26)は、[非特許文献4]によると、CQTである。また、これらCQKとCQTの地理的分布は、[非特許文献8]に掲載されている、日本列島のコーダQマップ(コーダ波で1〜2
Hzの周期を持った成分の減衰を表すパラメータQの分布図)において、コーダ波の減衰率の小さい地域にCQK、大きい地域にCQTが分布している。この様に、コーダ波の減衰率により、大地震の予兆が2種類に分類されると言う観測事実は、「大地震発生の予兆は、2種類しか存在しない。」事を示唆している。つまり、予兆が出現しない状態では、プレート運動により延性部分から脆性部分へ、応力が加えられると、コーダ波の減衰率の大小で区別されるMAG
= 3〜3.5とMAG = 4〜4.5からなる2つの固有な地震が作られる。しかし、大地震発生前の予兆が出現した状態では、これら固有地震が、地殻の脆性部分でも作られ始め、地殻は大地震発生直前の臨界状態となる。従って、これら2つのグループの固有地震が、大地震発生と、大地震発生直前の2種類の臨界状態(予兆)の形成に、強く関与している。

大地震発生の自然法則を利用した震源時(発生時刻)の予知は、[図3]のA(INT,t)の振幅ピークが時刻ta1から半周期後に反転したピークに到達する時刻ta2を大地震の発生時刻とする。従って、A(INT,t)の半周期の時間をta1-ta0とし、時刻ta1以降、震源時ta2を予知する。時間tは、配列インデックス(イベント数つまり地震の発生個数)なので、先ず、「M3.5以上の地震が、後、何個発生したらA(INT,t)の反転ピークに到達するか」で、略、±1の発生個数精度で予測し、次に、平均的な地震の発生間隔時間を用い実時間に変換する。

例えば、[特許文献1]の発明を実施した[非特許文献4]によると、上記、2003年十勝沖地震に関する予知検証テストにおいて(既に発生していた2003年十勝沖地震の時系列データを使用した予知検証テストにおいて)、先に、指摘した56年から100年周期に基づいた予知における、-
6年から- 50年程の予知誤差(誤差=実際の値−予知した値)を、略、+1日に抑える事が可能となっている。更に、その十勝沖地震後、唯一、M6クラスの地震が、2004年5月30日5時56分に、発生した。それは、M6.7の房総半島沖地震であった。選択領域は、北緯34度〜38度、東経136.5度〜142度で囲まれた関東地方の領域で、この地震の予知に成功している。[非特許文献4]にあるように、それは、大地震の発生16日前に予知した発生時刻が、2004年5月30日16時48分であった。時、分への換算は、平均的な地震の発生間隔時間を、小数点以下4桁までを換算した事による。

任意に選択した領域内の震源の予知は、ランダム的な変動を上述の移動平均で平滑した、Σd(LAT,m)とΣd(LON,m)とΣd(DEP,m)とを、予兆検出後から予測発生時刻まで線形補間して得る。実際の震源と予知した震源との差(誤差=実際の値−予知した値)は、時系列の予兆検出直後の線形性にも依存するが、[非特許文献4]によると、十勝沖地震の場合、震源地に関しては、略、±0.5度、震源の深さに関しては、+20km程となっている。M6.7房総半島沖地震の場合、震源地に関しては、略、+0.2度、震源の深さに関しては、-10km程となっている。

この様な予知誤差は、次の、物理法則に起因する。選択した領域の地震現象は、暗に、閉じた系と仮定しているが、プレート運動を介した開いた系である。従って、領域の境界付近の地震を連結する軌跡(時系列)には、その隣接領域の影響が顕著に出現し、これらの影響が予知誤差の主因となる。地震の発生を上記仮想粒子の出現と置き換えると、その影響とは、次の様なケースに起因する場合も含まれる。例えば、隣接領域から粒子が、対象領域に侵入し、しばらく境界内に留まり、そして境界外に消えていくケースである。この間、領域内の粒子も出現する。なお、領域外からの粒子とは、領域外の応力変化により領域内で発生した地震を指し、領域外の応力変化の影響を大きく受けた地震である。また、領域内の粒子とは、主に領域内の応力変化により発生した地震を指し、領域外の応力変化の影響を殆んど受けていない。この様な領域内外の粒子の区別は不可能なので、2種類の粒子が入り乱れる運動軌跡は複雑になり、領域内の粒子の運動軌跡とは大きく異なる可能性が出現する。この原因による予知誤差を、少なくするには、地震活動の現象を把握した適切な選択領域を使用し、それら選択領域をオーバーラップさせる事で、改善できる。しかし、プレート運動の影響を広範囲に受けている領域では、選択領域をオーバーラップさせても改善できない場合もある。その様な領域は、例えば、太平洋プレートが、大陸プレート下に沈み込んでいる東日本の500km余りの東側沿岸やその太平洋沖である。この場合、太平洋プレートと大陸プレートとの固着領域が、太平洋プレートの相対運動により、大陸プレート上に位置する東日本の地殻をゆっくりと変形し続ける。従って、応力が、2つのプレート境界とプレート内部に蓄積されていく。この蓄積により、東日本やその太平洋沖等の海域では、内陸地震、プレート境界付近の地震、太平洋プレート内のスラブ地震等、異質な地震が入り乱れて発生する。従って、狭い領域は、閉じた系と見做すことはできない。しかし、前述した[非特許文献6]の大地震発生直前の地殻の臨界状態検出の概念に基づくと、巨大地震が発生する場合も、固着域により変形を受けている東日本の地殻変動やその変形領域のみの地震活動の推移を観測する事により、巨大地震発生前の変形領域の臨界状態を検出できる。

大地震の予兆CQKかCQTを検出できない例も、[特許文献1]で指摘されている。中国・四国・近畿地方の領域では、兵庫県北部の群発地震(2001-1-12)と、その71日後に発生したM6.7の安芸灘(芸予)地震(2001-3-23)とが、連動しており、群発地震直後に発生した大地震の予兆は、この選択領域では検出できていない。同様な連動は、兵庫県南部の群発地震(1984-5-30)と、その69日後に発生したM7.1の日向灘沖地震(1984-8-7)である。

これら、連動には、鳥取県西部地震と、M6.3の三地震(1983-10-31)とが、それぞれ先行し、[非特許文献9]によると、鳥取県西部地震の前後には、その震源付近直下で流体に関係した予兆的な地震活動も報告されている。また、[非特許文献10]によると、この地域特有な水に関係した微動スロースリップ等の新しい地震現象も多く発見されている。従って、連動には、これら先行した大地震が関与している事は明白で、安芸灘地震等、群発地震後にスラブ内で発生する地震予知には、連動のメカニズムの解明が欠かせない。

[特許文献1]で大地震の予兆として利用した大地震発生の自然法則は、略、周期変動しているA(INT,t)とA(DEP,t)とA(MAG,t)とが作り出す2種類の振幅と位相関係で記述された。地震発生の変化は、その発生毎に観察される仮想粒子の運動とみなせるので、その運動を、ニュートンの運動の第二法則(物理法則)で記述できれば、上記大地震発生の自然法則を第二法則で再記述できる。従って、大地震の発生の物理モデルを確立でき、大地震の予知をより正確に実施できる。このニュートンの第二法則(運動の微分方程式)に基づく物理モデルを確立するには、粒子の運動軌跡が、[数1]で記述される時、粒子に作用する力は、先ず、d(c,t)の時間tに関する一次微分(一次の変化率)で与えられる粒子の速度V(c,t)を求め、そして速度の一次微分である加速度A(c,t)を求めなければならない。しかし、仮想粒子が描く運動の軌跡は、ブラン運動の様なジグザグ軌跡となり、各成分d(c,t)のジグザグ箇所で、時間微分が不可能となる。従って、時間微分の代わりに差分を用いた変化率を求めなければならない。この時、運動の第二法則を確立するには、微分操作の持つ物理的性質を正しく反映する差分操作を必要とする。この新たな差分操作は、本願の発明者により確立されたので、その物理的性質と数学的な基本技術とを述べる。

粒子運動を記述する微分方程式が持つ物理的性質を説明するために、質量Maの粒子の1次元の調和振動を取り上げる。平衡点(基準位置)からの時刻tの変位D(t)は、微分可能なので、時刻tの1次微分、2次微分を、数学や物理の教科書に倣い、それぞれ[数2]の速度V(t)、[数3]の加速度A(t)と定義する。

この時、ニュートンの運動の第二法則(振動の運動方程式)は、質量Maの粒子に作用する弾性常数をKとすると、次の[数4]で与えられる。

粒子運動の変位D(t)の瞬時変化率を記述する時間微分操作は、時間の方向を反転すると、反転に関し、非対称となる。[数2]に於いて、時間tの正の微少量を表すパラメータΔt(時間の増減方向の反転に係わらず常に正の微小量)をゼロとして得る1次微分操作のd/dtは、その変化率を得る時間の増減方向を反転させると、即ち、tの方向(増加が正、減少が負)を反転(tを-t)させると、d/d(-t)=
-d/dtとなり、符号を反転させるので時間反転に対し非対称となる。一方、[数3]と[数4]のΔtをゼロとして得る2次微分操作、d2/dt2、は、時間tを-tとしても、d/d(-t)(d/d(-t))=d2/dt2と符号を反転させない。つまり、時間反転に対し対称となる。また、[数4]が記述する周期振動方程式一般解D(t)は、次の[数5]で与えられる。

ここで、Daは振動の振幅値、fは固有振動数、φは振動の初期条件で定まる位相角で、時刻t=0でφ= 0とすると、[数5]は、D(t)=Da
cos(2πft)となり、時間の偶関数、D(t)= D(-t)となる。

運動している仮想粒子(地震の発生)の位置d(c,t)は、ジグザグ箇所で微分不可能なので、[数2]の1次微分、[数3]の2次微分、[数4]で記述されたニュートンの第二法則(微分方程式)を、仮想粒子の運動記述にそのまま適用する事はできない。従って、[数2]の1次微分を、有限値Δtを用いた1次差分で、又、[数3]、[数4]で記述された2次微分を、正の有限値Δtを用いた2次差分で近似的に記述しなければならない。この時、これら1次、2次差分操作に、1次、2次微分操作と同様な時間反転に関する物理的性質を持たせなければならない。しかし、[数2]の1次差分、[数3]、[数4]の2次差分に、時刻t=0でφ=
0とした[数5]のD(t)=Da cos(2πft)を代入すると、D(t)が、偶関数なので、D(t)=D(-t)となり、次の[数6]、[数7]に示すように、[数2]-[数4]の差分操作は、tを-tとする時間反転の物理的性質を満足しない。なお、[数6]、[数7]の⇒は、tを-tとする時間反転操作をする記号である。

[数6]に表示されるように、[数2]の[D(t+Δt)-D(t)]は、時間反転後、-[D(t+Δt)-D(t)]ではなく、-[D(t)-D(t-Δt)]となり、その1次差分操作は、1次微分操作が持つ時間tの非対称性を満足しない。また、[数7]に表示される様に、[数3]、[数4]の[D(t+2Δt)-2D(t+Δt)+D(t)]は、時間反転後、[D(t)-2D(t-Δt)+D(t-2Δt)]となり、その2次差分操作は、2次微分操作が持つ時間tの対称性を満足していない。従って、微分操作の物理的性質が正しく反映される差分操作は、[数6]、[数7]の差分式の時間を反転する時、次の、[数8]、[数9]の左辺の差分操作に変更されなければならない。なお、tを-tとする時間反転操作は、⇒記号で表示してある。

[数8]の1次差分式の時間反転は、1次微分の時間反転に対する非対称性(符号を反転させる)を持ち、[数9]の2次差分式の時間反転は、2次微分が持つ時間反転に対する対称性(符号を反転させない)を持つ。D(t)が、時間の偶関数である条件を課し、これら対称の性質を得たが、その条件を課さなくとも、正しい差分式を導出する事ができる。そのために、差分操作関数をDirac
(ディラック)のデルタ関数を用いて導出する。

デルタ関数δ(t)は、時間tの偶関数で、時間tを-tとする時間反転に関してδ(t)= δ(-t)となる対称な性質を持ち、振幅値は、時刻t=0で無限大(+∞)、それ以外の時刻でゼロとなるインパルスで、その面積は1となる。従って、幅がΔt、振幅値(高さ)が1/Δt、幅の中心が、時刻t=0となる方形波の幅、Δtをゼロに限りなく近づける事で、上記性質を持つデルタ関数δ(t)を得る事ができる。この方形波をS(t)と表記し、Heaviside(ヘビサイド)のユニットステップ関数η(t)を用いて構成する。関数η(t)は、正の振幅値が、η(t)=1(t≧0)、η(t)=0(t<0)とし、関数−η(t)は、負の振幅値が、−η(t)=-1(t>0)、−η(t)=0(t≦0)と定義する。これら2つの関数、+と−のη(t)を用いて、S(t)が時間tの偶関数で面積が1となる様に構成する。例えば、S(t)の幅がΔt、高さが、[-1/(2Δt)≦t≦+1/(2Δt)]の区間内で1/Δt、その区間外で0となる様に構成する。このS(t)の幅と高さは、その面積を1に保てば、任意に変更できる。微分操作が正しく反映される差分操作に3種類の幅と高さを用いたS(t)を使用するので、先ず、[数10]に記述するS(t)をSa(t)と定義する。このSa(t)のΔtをゼロに限りなく近づけて得たデルタ関数を、δa(t)と[数11]で定義する。従って、δa(t)は、時刻t=0で、無限大(+∞)となるインパルスである。

[数10]のSa(t)、[数11]のδa(t)と[数10]のSa(t)とを用いて、変位D(t)を、時刻t=0の変位D(0)として、[数12]、[数13]に、再定義する。

容易に確認できるように、[数10]のSa(t)は、tを-tとする時間反転に対し不変(対称)となり、時間tの偶関数となる。又、Sa(t)の波形は、[図4]に、DDW(t)とも、表記され、横軸が時間軸t、幅がΔt、高さが1/Δtの方形波である。[図4]からも確認できる様に、Sa(t)は、原点t=0に関して対称な波形(偶関数)となり、Δtをゼロに限りなく近づけると、[数11]で定義されるデルタ関数δa(t)となり、δa(t)は、時刻t=0で、偶関数となる。デルタ関数δa(t)とSa(t)は、tをt-τとすると、任意時刻τで偶関数になるので、その時刻τの変位D(τ)は、次の[数14]で与えられる。

[数14]において、Δtの極限を取らなければ、その変位D(t)とSa(t-τ)との相関積分は、時刻τを中心とした有限幅Δtで囲まれた変位D(t)を加算し、Δtで割る操作を、時刻τのD(t)の時間幅Δtの平均値として算出する。D(t)の時刻τにおけるその平均値を<D(τ)>と表記する。それは、[数15]で、次に与えられる。

Sa(t-τ)は、D(t)を時間幅Δtで平均し、その平均値を時刻τの<D(τ)>とする関数なので、本願の発明者は、「変位検出ウエーブレット、DDW(t-τ)」と定義する。

次に、[数11]のδa(t)と[数10]のSa(t)とを用いて、[数2]の速度V(t)を、時刻t=0の速度V(0)として、[数16]、[数17]に、再定義する。

[数17]の[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]は、Sa(t)が時間tの偶関数、Sa(t)=
Sa(-t)なので、次の[数18]に示されるように時間tの奇関数となる。なお、tを-tとする時間反転操作は、⇒記号で表示してある。

従って、[数17]と[数18]の[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]は、原点t=0に関して非対称(tの奇関数)となり、[数2]と[数17]の1次微分操作が持つ時間反転の物理法則を正しく継承する1次差分操作となる。また、その1次差分操作の波形は、[図4]にD1W(t)として描かれている。なお、D(t)の任意時刻τの1次微分V(τ)は、[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]のtをt-τとして、次式の[数19]で与えられる。

[数17]においてΔtの極限値の0をとらず有限値とすれば、変位D(t)と[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]との相関積分は、D(t)を有限幅ΔtのSa(t-Δt/2)とSa(t+Δt/2)とで平滑した変位D(Δt/2)とD(-Δt/2)との差をΔtで除算し、時刻t=0の速度とする速度検出機能を持つ。任意時刻τの速度は、次の[数20]で与えられる。

[Sa(t-τ-Δt/2)-Sa(t-τ+Δt/2)]/Δtは、との差をΔtで除算し時刻τの速度とする関数なので、本願の発明者は、「速度検出ウエーブレット、VDW(t-τ)」と定義する。又、との差のみ検出する[Sa(t-τ-Δt/2)-Sa(t-τ+Δt/2)]を、「1次差分検出ウエーブレット、D1W(t-τ)」と定義する。

次に、[数11]のδa(t)と[数10]のSa(t)とを用いて、[数3]で定義された時刻tの加速度A(t)を、時刻t=0の加速度A(0)として、[数21]、[数22]に、再定義する。

[数22]の[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]は、Sa(t)がtの偶関数、Sa(t)=
Sa(-t)なので、次の[数23]に示されるように時間tの偶関数となる。なお、tを-tとする時間反転操作は、⇒記号で示してある。

従って、[数22]と[数23]の[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]は、原点t=0に関して対称(tの偶関数)となり、[数3]と[数21]の2次微分操作が持つ時間反転の物理的性質を正しく継承する2次差分操作関数となる。また、その2次差分操作の波形は、D2W(t)と、[図4]に表記されている。任意時刻τのD(t)の2次微分は、次式の[数24]で与えられる。

[数22]のΔtを有限とすれば、変位D(t)と[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]との相関積分を表示するので、幅Δtで平均された各変位、、の2次差分をΔtで2回除算し、その値を、時刻t=0の加速度とする。任意時刻τの加速度は、[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]のtをt-τとして、次式の[数25]で与えられる。

[Sa(t-τ-Δt)-2Sa(t-τ)+Sa(t-τ+Δt)]/(Δt)2は、と、の2次差分をΔtで2回除算し、時刻τの加速度とする関数なので、本願の発明者は、「加速度検出ウエーブレット-ADW(t-τ)」と定義する。又、[Sa(t-τ-Δt)-2Sa(t-τ)+Sa(t-τ+Δt)]を「2次差分検出ウエーブレット-D2W(t-τ)」と定義する。

[図4]の各波形DDW(t)、D1W(t)、D2W(t)は、[非特許文献11]、[非特許文献12]、[非特許文献13]、[特許文献1]、[特許文献2]、[特許文献3]で使用した変位、1次差分(速度)、2次差分(加速度)を検出する関数(ウエーブレット)の一例である。それらは、信号D(t)から基本的な物理量を検出するので、本願の発明者は、変位検出用のDDW(t-τ)、速度検出用のVDW(t-τ)、加速度検出用のADW(t-τ)を、総称して「物理的ウエーブレット」と呼んでいる。なお、これら物理的ウエーブレットの時間幅Δtを極限値のゼロとすると、時刻τで検出(観測)する物理量は、物理学で定義されている変位D(τ)、速度V(τ)、加速度A(τ)となる。

[数4]のMadV(t)/dt=-KD(t)と記述されるニュートンの第二法則は、運動量MaV(t)の時間の変化率(時間微分)が、質量Maの粒子に作用している力(MaA(t))に等しく、−KD(t)で、一意的に決定される事を述べている。つまり、互いに独立した観測量D(t)とV(t)とが同時に確定すれば、V(t)の1次微分で与えられる加速度A(t)は、一意的に表記される事を述べている。又、その運動を、位置と運動量とからなる位相平面(状態平面)を用いて観測する場合は、x軸にD(t)、y軸にMaV(t)かV(t)を取り、位相平面(D、MaV)か(D、V)平面に、運動が描く軌跡を観測する事になる。この位相平面解析のx軸とy軸とは互いに直行している。互いに独立した観測量であるD(t)とV(t)とを、それぞれx軸成分、y軸成分とする事は、D(t)とV(t)とが、互いに直行している事を暗に仮定している。逆に、D(t)とV(t)は、時間幅Δtを極限値のゼロとした物理的ウエーブレットを用いて観測(検出)されるので、その極限を取る前の検出ウエーブレットが直行していれば、極限時、それら観測量は、互いに独立であるとも言える。D(t)とV(t)とが直行するメカニズムを説明する記述は、いかなる物理の教科書や学術論文にも無い。教科書では、D(t)とV(t)とが、経験的に、独立な物理量だから、暗に、それらが直行すると仮定している。従って、各検出ウエーブレットの直行関係を明確にする。

2つのベクトルは、内積がゼロとなれば、直行している。同様に、2つのウエーブレット(関数)は、2つの関数の積のt=-∞からt=+∞までの積分がゼロとなれば、それら関数は、直行している。又、1次差分検出ウエーブレットのD1W(t)をΔtで除算した速度検出ウエーブレットのVDW(t)は、D1W(t)と相似な形状となり、2次差分検出ウエーブレットのD2W(t)をΔtで2度除算した加速度検出ウエーブレットのADW(t)も、D2W(t)と相似な形状となる。従って、物理的ウエーブレットの各内積関係を、[非特許文献12]、[非特許文献13]に基づいて、[数10]と[図4]のDDW(t)で与えられた「変位検出ウエーブレット」と[数18]と[図4]のD1W(t)で与えられた「1次差分検出ウエーブレット」との内積とし、[数18]と[図4]のD1W(t)の「1次差分検出ウエーブレット」と[数23]と[図4]のD2W(t)の「2次差分ウエーブレット」との内積とし、次の[数26]、[数27]に記述する。

[数26]と[数27]に示されるように、これらの内積は、ゼロとなる。又、これら内積結果は、[図4]のDDW(t)とD1W(t)の重なる符号付面積の(時間軸より上側が正、下側が負となる)積の総和と[図4]のD1W(t)とD2W(t)の重なる符号付面積の積の総和となるので、それら内積は、それぞれゼロとなる事が図から確認できる。従って、偶関数である「変位検出ウエーブレット、DDW(t)」と奇関数である「1次差分検出ウエーブレット、D1W(t)」とは直行し、更に奇関数の「1次差分検出ウエーブレット、D1W(t)」は、偶関数である「2次差分ウエーブレット、D2W(t)」とも直行している。しかし、偶関数同士の「変位検出ウエーブレット」と「2次差分ウエーブレット」との内積は、[図4]のDDW(t)とD2W(t)の重なる符号付面積の積の総和となり、ゼロとならない事が確認できる。実際、次式の[数28]が与える内積は、-2となるので、「変位検出ウエーブレット」と「2次差分検出ウエーブレット」とは、直行しない。

しかし、[非特許文献12]と[非特許文献13]によると、「変位検出ウエーブレット」と「2次差分検出ウエーブレット」とからなる偶関数同士でも直行化できる。従って、「変位検出ウエーブレット」、「1次差分検出ウエーブレット」、「2次差分検出ウエーブレット」の全てが互いに直行する様に、方形波S(t)を再構成できる。その一例を、[図5]に表示する。[図5]のDDW(t)は、Sa(t)で、変位検出にはSa(t)をそのまま使用する。速度検出には、S(t)を、区間幅Δt/2の[-Δt/4≦t≦+Δt/4]で振幅値が2/Δt、その他の区間ではゼロとなるSb(t)を用いる。[図5]のSb(t-Δt/4)が、その方形波Sb(t)を右側にΔt/4移動した方形波であり、その高さ(振幅値)は2/Δtとなる。加速度検出には、S(t)を、区間幅Δt/3の[-Δt/6≦t≦+Δt/6]で振幅値が3/Δt、その他の区間ではゼロとなるSc(t)を用いる。[図5]のSc(t-Δt/6)が、その方形波Sc(t)を右側にΔt/6移動した方形波であり、その高さ(振幅値)は3/Δtとなる。これらSb(t)とSc(t)を、ユニットステップ関数η(t)を用いて表記すると[数29]と[数30]で与えられる。

Sb(t)とSc(t)のΔtをゼロの極限として得たデルタ関数を、それぞれ、δb(0)とδc(0)とする。速度検出で用いた[数16]のδa(t)をδb(t)とすると、速度を検出する[数17]のSa(t)の代わりにSb(t)を用いる事になる。従って、速度V(0)は、[数31]で与えられる。

加速度検出で用いた[数21]のδa(t)をδc(t)とすれば、加速度を検出する[数22]のSa(t)にSc(t)を用いる事になる。従って、加速度A(0)は、[数32]で与えられる。

変位、1次差分(速度)、2次差分(加速度)を検出する各ウエーブレットは、[図5]にDDW(t)、D1W(t)、D2W(t)の波形として表示されている。2つのウエーブレットの積、DDW(t)とD1W(t)、D1W(t)とD2W(t)、DDW(t)とD2W(t)の各積分値は、2つのウエーブレットの重なった部分の面積の積の総和がゼロとなるのが容易に確認できる。実際、[数33]-[数35]の積分値は、ゼロとなり、各ウエーブレットは、互いに直行する。

従って、ニュートンの運動の第二法則を、微分から差分へと正しく変換するには、次の2つの物理的性質を満足する変位、1次差分(速度)、2次差分(加速度)検出ウエーブレットに基づいた差分記述にしなければならない。

1番目の物理的性質は、微分操作が持つ時間反転に関する非対称性を保持する法則である。即ち、変位、速度、加速度を検出する任意時刻τに関し、「変位検出ウエーブレット」が対称(偶関数)、「1次差分検出ウエーブレット」が非対称(奇関数)、「2次差分検出ウエーブレット」が対称(偶関数)とならなければならない。

2番目の物理的性質は、1番目の時間反転の非対称性を保持する物理的性質が暗に課す各検出ウエーブレット間の直行関係である。即ち、任意時刻τにおける偶関数の「変位検出ウエーブレット」と奇関数の「1次差分(速度)検出ウエーブレット」とは、必ず直行する。「1次差分(速度)検出ウエーブレット」と偶関数の「2次差分(加速度)検出ウエーブレット」も必ず直行する。しかし、偶関数同士である「変位検出ウエーブレット」と「2次差分(加速度)検出ウエーブレット」とは、直行しない。しかし、[図5]を用いて説明したように、それらの直行化も、偶関数である変位検出ウエーブレットの形を、変位検出、1次差分検出、2次差分検出のそれぞれの場合で変える事により可能となる。従って、「変位検出ウエーブレット」と「2次差分(加速度)検出ウエーブレット」の直行関係は、差分を取る「変位検出ウエーブレット」の形を、随時、変えなければ、成立しない。

対象とした変位D(t)は、時間tの連続関数でなく、離散値からなる如何なる時系列でも良い。従って、時系列[c]の変位、速度、加速度検出は、上記の[数15]、[数20]、[数25]のD(t)に時系列[c]を代入した、次の[数36]-[数38]で与えられる相関積分となる。

[数36]の[c]とSa(t-τ)との相関積分は、Sa(t-τ)の有限幅Δtで囲まれた[c]を加算平均し、幅Δtの中心の時刻t=τの値、D(c,τ)、とする。なお、加算平均する個数は、有限幅Δtに相当する奇数個のデータ数(Δt=2w+1)となる。このwは、1以上の整数値である。方形波Sa(t-τ)の右端に位置する時刻を時系列[c]の時刻mとすると、mは、τと、m=τ+wなる関係がある。従って、[数36]の相関積分は、離散値d(c,m-i)を、相関積分の相関幅に相当する2w+1個(Δt=2w+1)だけ時刻iに関して過去から時刻mまで加算平均し、その平均値を、Sa(t-τ)の中心の時刻τ(τ=m-w)の値D(c,τ)とする操作であり、加算平均後、τが平均値を指定する時刻となる。加算平均する時刻は、過去から時刻mまで移動できるので、2w+1個の加算平均は、移動平均となる。この具体的な平均操作と、時刻τに割り当てた平均値をD(c,τ)とする数式を、それぞれ、次の[数40]、[数41]に記述する。

従って、[数37]のV(c,τ)、[数38]のA(c,τ)は、相関積分した結果に、[数36]、[数41]の関係を使用すると、次式の[数42]、[数43]で与えられる。

なお、上の[数42]と[数43]のΔtは、Δt=2w+1、wは1以上の整数値である。従って、[数42]と[数43]とが、[数1]の震源要素の時系列[c]から抽出した変位、D(c,τ)、に作用する速度、V(c,τ)と、加速度、A(c,τ)とを与える。更に、D(c,τ)が、周期変動していれば、そのニュートンの第二法則は、次式の[数44]で与えられる。なお、それら運動方程式中のKcは、震源要素cと、時刻τの弱い関数であるが、所定の時間の範囲内では、震源要素cのみに依存する定数と仮定されている。

上記2つの物理的性質を満足する変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットの波形は、[図4]や[図5]に与えられた以外にも選択できる。その一例は、[特許文献1]のグラフ(図7)で使用した変位、速度、加速度検出ウエーブレットに2つの物理的性質を満足させる様、各位相を調整した例である。先ず、物理的性質が満足されてない[特許文献1]で使用された変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットから説明する。

時系列[c]から任意時刻τの変位を検出するための変位検出のウエーブレットSa(t-τ)を、[図6]の時間軸t1上に表示し、Sa(t-τ)の右端の時刻mを、時系列[c]の最も新しい時刻とする。時刻τと時刻mとの関係は、m=τ+Δt/2、となる。以降、この関係は、[図6]に於いて、変わらない。次に、1次差分を取る時間間隔をnとし、その1次差分検出ウエーブレットを、[図6]の時間軸t2上に、上向きのSa(t-τ)と、下向きのSa(t-τ+n)とを、それぞれ、時刻τとτ-nに配置して構成する。上向きのSa(t-τ)の右端の時刻が時系列[c]の時刻mとなる。更に、この1次差分の時間間隔k(k>n)での差分を取ると、2次差分を検出する事ができる。その2次差分検出ウエーブレットは、[図6]の時間軸t3上に、時間軸t2上の1次差分検出ウエーブレットに加え、時刻τ-kに、下向きのSa(t-τ+k)、時刻τ-k-nに、上向きのSa(t-τ+k+n)を配置する事により構成される。この時、2つの差分を取る間隔時間のnとkとが等しくなると(s=n=k)、[図6]の時間軸t4に描かれている様に、2次差分検出ウエーブレットの2つの下向きのSa(t-τ+n)とSa(t-τ+k)とが重複加算され、下向きの2Sa(t-τ+s)となる。又、左側の上向きのSa(t-τ+k+n)が、時刻τ-2sにシフトされSa(t-τ+2s)となる。これら、[図6]の時間軸ta1上の変位検出ウエーブレット、時間軸t2上の1次差分、時間軸t3とt4上の2次差分検出ウエーブレットは、上記2つの物理的性質が満足されてない配置関係にあるので、それら物理的性質を満足する、各ウエーブレットの再配置を、[図7]に表示する。

[図7]の時間軸ta1上のSa(t-τ)が変位検出ウエーブレットDDW(t-τ)、時間軸t2上の、[Sa(t-τ-n/2)-Sa(t-τ+n/2)]が、1次差分検出ウエーブレットD1W(t-τ)、時間軸t3上の{[Sa(t-τ-k/2-n/2)-Sa(t-τ-k/2+n/2)]-[Sa(t-τ+k/2-n/2)-Sa(t-τ+k/2+n/2)]}がk>nの場合の2次差分検出ウエーブレットD2W(t-τ)、時間軸t4上の[Sa(t-τ-s)-2Sa(t-τ)+Sa(t-τ+s)]が、nとkとが等しくs=n=kの場合の2次差分検出ウエーブレットD2W(t-τ)となる。これら各検出ウエーブレットの中心は、共通な時刻τなので、これら差分検出のウエーブレットは、上記2つの物理的性質を満足する。k<nの場合も、k≧nの場合と同様に、各差分検出ウエーブレットを構成できる。又、[図6]と[図7]の1次、2次差分検出ウエーブレットの図示例は、Sa(t-τ)の幅Δtに相当する2w+1が、差分を取る間隔、n、k、よりも小さい場合であるが、整数パラメータw(≧1)、偶数パラメータ、n(≧2)、k(≧2)の大きさは任意に選択できるので、その幅、2w+1は、それら差分間隔より大きく取れる。従って、[図7]の時間軸t2上に例示されている様に、D1W(t-τ)は、時刻τ(t2=τ)で奇関数となるよう、変位検出ウエーブレットSa(t-τ)を時間軸上の任意な箇所に、差を取る方を反転配置して得られる。又、D2W(t-τ)は、t3=τで偶関数となるよう時間軸t3の任意な箇所に、1次差分検出ウエーブレットを反転配置して得られ、n=kの場合は、t4=τで重なった偶関数となる。これら物理的ウエーブレットを用いて[数1]や後述の[数58]等のいかなる時系列を[c]とし、[c]から時刻τの変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を得る数式を、[数45]-[数47]で記述する。なお、[数45]は、[数41]と同一式である。

差分間隔を等しくした、s = k
= n の場合、

従って、時系列[c]の最新な時刻をmとすると、変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出する時刻τと最新時刻mとの関係は、変位のみ検出する場合、m=τ+w、速度まで検出する場合は、m=τ+w+n/2、加速度まで検出する場合は、m=τ+w+(n+k)/2となる。τはmより常に遅れ、その遅延量は、移動平均を取る幅(2w+1)のwと、差分を取る間隔nとkとで定まる。又、これらwとnとkの設定は、次に説明するように、時系列[c]から、ノイズを除去し、選択的に設定された周波数成分を持った変位、速度、加速度を抽出する。従って、自然現象を、これら選択された周波数領域にある物理量で定量化でき、その現象を、[数44]で与えるニュートンの運動の第二法則で記述できる。

[図7]のt1、t2、t3、t4の時間軸上に配置されている時刻τの、変位検出用のDDW(t-τ)、1次差分検出用のD1W(t-τ)、2次差分検出用のD2W(t-τ)ウエーブレットは、それらが、左から右へと単位時間ずつ移動する度に、その時間軸上にある時系列[c]との相関量(相関積分の値)を、[数45]、[数46]、[数47]、[数48]で与えられた変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)として検出する。検出ウエーブレットの波形が、時系列[c]の変動と類似すると、相関が高くなり、大きな相関量を、検出した事になる。つまり、各ウエーブレットの形状に含まれる周波数成分と時系列[c]の変動がマッチする成分のみ、大きく抽出する機能を持つ。相関積分で抽出される周波数成分は、相関積分のフーリエ積分変換で与えられる。DDW(t-τ)とD2W(t-τ)とは、偶関数なので、検出された変位D(c,τ)のフーリエ変換は、DDW(t-τ)と時系列[c]のフーリエ変換(離散フーリエ変換)との積、加速度A(c,τ)のフーリエ変換は、D2W(t-τ)と時系列[c]のフーリエ変換の積として与えられる。速度V(c,τ)のフーリエ変換は、D1W(t-τ)が、奇関数なので、D1W(t-τ)のフーリエ変換の複素共役と時系列[c]のフーリエ変換の積で与えられる。従って、[図7]のw(Δt=
2w+1)、n、kのパラメータで定めた各検出ウエーブレットのフーリエ積分変換が、時系列[c]から抽出する変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)の周波数領域を選択する。それらフーリエ積分結果を、周波数f、複素数

を用いて、次に与える。

差分間隔を等しくした、s = k = n の場合、

DDW(t-τ)は、[数49]から、周波数が、1/Δt以下の周波数領域のみ大きく抽出するローパスフィルター機能を持ち、D1W(t-τ)は、[数50]から、[数49]のローパスで選択された周波数領域内にある1/2n付近の周波数領域を更に大きく抽出するバンドパスフィルター機能を持ち、D2W(t-τ)は、[数51]から、[数49]のローパス機能に加え、その低い周波数領域内の1/2n付近と1/2k付近の周波数領域を更に大きく抽出するバンドパスフィルター機能を持つ。差分間隔が等しいs = k
= n の場合、D2W(t-τ)は、[数52]から、[数49]のローパス機能に加え、その低い周波数領域の1/2s付近の周波数領域を2重に抽出するバンドパスフィルター機能を持つ。

変位検出ウエーブレットに使用された方形波Sa(t)、Sb(t)、Sc(t)は、デルタ関数δ(t)を得る近似関数の1つであった。そのような近似関数は、方形波以外にもある。例えば、幅が2Δtで高さが1/Δtの三角波関数等の偶関数や、次式の[数53]で与えられる正規分布関数もその例である。

S(t)や[数53]等、デルタ関数δ(t)を得る全ての近似関数は、1次差分、2次差分検出ウエーブレットに使用する変位検出ウエーブレットとして使用できる。しかし、変位検出には、δ(t)を得るそれら近似関数でなくとも、波形の面積が有限ならば、規格化して+1とできるので、いかなる偶関数をも使用できる。例えば、ウエーブレットの形状を、ローパスフィルター機能を高めた偶関数にする事も出来る。更に、近似的に偶関数となるだけでも良い。

[特許文献1]の発明は、[図6]の変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットと[数1]の時系列[c]との相関積分を、移動平均とその差分で置き換え、変位D(c,t)を、[数40]で与える[数1]の時系列[c]のw個の移動平均値で与えた。その移動平均個数のwが、Δtの幅に相当するので、[数40]の移動平均個数の2w+1は、w、iの加算は、0からw-1までとなる。差分間隔nとkは、[図6]のSa(t-τ)の配置間隔である。移動平均個数wと差分間隔nとkとを、w=20〜25、n
= k= s= 30〜35とすると、中国・四国・近畿地方に固有な60〜70イベントの周期を持った加速度A(c,t)を抽出でき、[図3]の大地震のCQKとCQT予兆の推移を抽出できる。[特許文献1]は、このCQKとCQTとからなる自然法則を大地震の予知に利用した。しかし、[図6]の各検出ウエーブレットを、[図7]の各検出ウエーブレットに変更すると、[数45]の変位D(c,t)と、[数47]もしくは[数48]の加速度A(c,t)を用いた、[数44]のニュートンの運動の第二法則を、大地震発生の自然法則に適用でき、その物理モデルも構築できる。更に、[図7]の各検出ウエーブレットは、複雑な運動をしている[数1]の時系列[c]から、変位検出ウエーブレットの幅と差分を取る間隔で選択的に抽出した周波数領域にある運動のみ検出する事が可能となる。選択する周波数領域は、変位、速度、加速度を検出する物理的ウエーブレットの周波数特性式、[数式48]、[数式49]、[数式50]、[数式51]で、与えられる。従って、対象とする周波数領域にある運動を選択的に抽出する技術とその物理モデルとを大地震の予知に利用できるので、[特許文献1]の発明の技術の改善ができる。更に、上記2つの物理的性質を満足する変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットを用いると、巨大地震を発生させる地殻の応力変化を、その地殻表面に出現する異常地殻変動として定量化でき、その自然法則も、巨大地震の予知に利用する事ができる。更に、変位検出ウエーブレットと、応力と歪に関する物理法則を用いると、大地震や巨大地震の発生直前に、地殻に蓄積されていた歪エネルギーが急激に解放される自然現象を定量的にモニターでき、このモニター手段を、大地震や巨大地震の予知に利用する事ができる。従って、[特許文献1]の発明には、次の5つの改善可能な項目がある。

(1)大地震発生の時刻(震源時)の予知
(2)マグニチュードの予知
(3)加速度A(DEP,t)とA(INT,t)の波形の反転が、[図3]の様に、略、完全な反転とならない場合、CQKとCQT予兆の推移を如何に確定し予知に利用するか
(4)巨大地震の予知
(5)大地震、巨大地震につながる地殻の蓄積応力の臨界状態を如何にモニターし、大地震、巨大地震の予知に利用するか
これら項目に関する理論及び技術的な背景を順に説明する。

第1の改善項目、「大地震発生の時刻(震源時)の予知」について述べる。
[特許文献1]は、地震発生の2次の変化率である加速度A(c,t)を、[数1]の時系列[c]から、[図6]の差分間隔を、n=k=sと等しくした2次差分検出ウエーブレットを用いて検出した。この時、加速度A(c,t)は、各震源要素間に共通な略2sの短い固有な周期(時間的な尺度)を持って変動するが、大地震発生直前には、通常の地震発生とは異なる2種類のA(INT,t)とA(DEP,t)とA(MAG,t)との振幅及び位相関係が成立する。この2つの特殊な関係が、[図3]に表示した大地震発生のCQK及びCQT予兆であった。この図で、大地震が発生した時刻は、それら予兆を検出した時刻ta1のA(INT,ta1)の振幅のピークが、半周期後に、反転し、逆のピークに到達した時刻ta2である。[特許文献1]は、加速度A(INT,t)が、略2sの周期を持った変動をしているので、予兆検出時刻ta1の半周期前のta0に2sを加算するか、予兆検出時刻ta1に半周期sを加算して大地震発生時刻のta2を予知した。しかし、加速度A(INT,t)の周期は、略2sであるが、振動毎に、変動する。従って、その様な場合も考量し、予兆検出時刻までの前半の半周期を、ta1-ta0とし、この前半の半周期が、後半の半周期と等しいと仮定して、大地震の発生時刻ta2を予知した。しかし、この後半の半周期が、前半と異なる場合、大地震発生の時刻(震源時)の予知には改善が求められる。この改善に、[数45]の変位D(c,t)と[数48]の加速度A(c,t)の間に成立する[数44]のニュートンの運動の第二法則を利用する。

このニュートンの運動の第二法則を、[図8]に表示する。[図3]と同様に、横軸は、時間t、縦軸は、変位D(c,t)、加速度A(c,t)で、上向きが負、下向きが正の方向となる。変位は、[数45]で、加速度は、[数48]で与えられているとする。最新の変位D(c,t)を与える時刻をtx2とすると、差分間隔時間をn=k=sとして算出する最新の加速度A(c,t)を与える時刻tx1は、tx1=tx2-sとなる。従って、[図8]の遅れ時間は、sとなる。加速度A(c,t)と変位D(c,t)とは常に、逆位相となる。略周期的に変動している変位が、時刻ta1で最大振幅値D(c,ta1)を取ると、加速度はその変位を減少させる負の最大加速値A(c,ta1)を取る。変位が、時刻ta2で、最小値D(c,ta2)に到達していても、加速度は、まだ、時刻ta2に到達していない。加速度が、破線で示された正の最大値A(c,ta2)に到達する時には、変位は、加速度A(c,ta2)が[数48]から算出されるので、差分を取る間隔だけ先の時刻ta3(ta2+s)のD(c,ta3)に到達している。

大地震の予兆抽出直後の[数44]のニュートンの運動の第二法則が、[図8]に表示されているとする。又、時刻tx2(tx2 > ta2)が、最新の変位のD(c,tx2)を与えると仮定する。その時、[図8]の各時刻は、次の関係を持つ。
(1)時刻tx2(tx2
> ta2)のD(c,tx2)が、最新の変位となる。
(2)時刻tx1(=tx2-s)のA(c,tx1)が最新の加速度となる。
(3)[数44]の運動の第二法則により最新の加速度A(c,tx1)が作用している変位は、時刻tx1の変位D(c,tx1)であるが、加速度A(c,tx1)の算出には、変位D(c,tx2)も含まれる。
(4)[数1]の時系列[c]の最後(最新)の変位d(c,m)を与える最新の時刻mは、m=tx2+wとなる。
(5)大地震が発生する時刻は、震源要素cをINTとした加速度A(INT,t)が谷(正の方向のピーク)となる時刻ta2となる。
この大地震発生時刻ta2は、[図3]のCQT予兆の大地震が発生する時刻に対応する。ニュートンの運動の第二法則から、時刻ta2の加速度A(INT,ta2)は、変位D(INT,ta2)に作用し、変位D(INT,ta2)は、その振動の山(負の方向のピーク)に在る。[図3]のCQK予兆の大地震発生の場合は、大地震発生時刻ta2で、[図8]のA(c,ta2)とD(c,ta2)の位相関係が、それぞれ反転する。

加速度A(INT,t)が時刻tx1の時点で、振幅の谷(正の方向のピーク)となる時刻ta2を予知する事は、変位D(INT,t)が、確実に負の方向のピークを過ぎた時刻のtx2で、変位D(INT,t)が、負の方向のピークに在った時刻ta2を抽出する事と、等しくなる。従って、
「加速度A(INT,t)が、正の方向のピーク値に今から到達する時刻ta2を予知する。」事は、
「変位D(INT,t)が、負の方向のピーク値に既に到達した時刻ta2を抽出する。」事になる。
加速度A(INT,t)が正の方向のピーク値に到達する時刻は、変位D(INT,t)が、負の方向のピーク値に既に到達した時刻ta2を用いて、時刻tx1から、(ta2-tx1)イベント後に、大地震が発生すると予知できる。変位D(INT,t)は、時刻tx2から更に(ta2-tx1)イベント進んだ時刻ta3で大地震の発生を、観測する事になる。[数44]で与えられる運動の第二法則が成立する周波数領域は、[数1]の時系列[c]から、パラメータwとsを選択し抽出される。その抽出領域は、[図7]の変位検出と加速度検出ウエーブレットが持つ周波数特性式、[数49]と[数52]のΔtを2w+1として与えられる。従って、変位D(INT,t)の振動の周期は、[数49]で選択された略1/(2w+1)以下の低い周波数領域内で変動し、その2次の変化率を与える加速度A(c,t)は、更に低い周波数の1/sを中心としたバンド幅内で変動する。変位D(c,t)の周期が変動しても、運動の第二法則により、その周期変動に追従して加速度A(c,t)が作用する。従って、加速度A(c,t)の正と負の方向の振幅値のピークに到達する時刻は、差分間隔の時間sだけ先に進んだ変位D(c,t)の負と正の方向の振幅値のピークに到達した観測時刻から予知できる。CQK予兆の大地震の場合は、[図8]のA(c,t)とD(c,t)が、CQT予兆の場合の逆位相の関係となるので、上記CQT予兆の大地震の場合の議論と変わらない。この様に、[特許文献1]の大地震発生の時刻を予知する技術は、[図3]の加速度A(INT,t)の周期振動に、ニュートンの運動の第二法則を導入し、常に差分を取る時間間隔sだけ先の情報を持つ変位D(INT,t)の周期振動を利用し、変位のピーク到達時刻を、大地震発生時刻とする予知技術に改善できる。又、大地震発生の時刻の予知に震源要素c=INTを利用したが、大地震発生の直前には、A(INT,t)とA(DEP,t)とは逆位相にあるので、A(DEP,t)も利用でき、変位D(DEP,t)の周期振動を利用してもよい。

第2の改善項目、「マグニチュードの予知」について述べる。
[特許文献1]の発明における、マグニチュードの程度の予知に関しては、[非特許文献11]にもあるように、地震発生の変化に、地殻の応力場の変化が反映されているというよく知られた自然法則を利用している。具体例としては、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方に発生したマグニチュードが3.5以上の地震の発生時刻の時間間隔INTの時系列d(INT,m)を利用する。INTのランダム的な変動を平滑するために、例えば、任意な個数、2s個(2s=60〜70)の移動平均、もしくは累積加算を取る。時間に関する固有な尺度(60〜70イベント)は、大地震の予兆を検出する加速度A(c,t)の変動周期に相当する。時刻mのINTの2s個の累積値を、CI(m,2s)と表記する。CI(m,2s)は、2s個の地震発生に、費やした時間なので、CI(m,2s)が、増加すれば、単位時間当たりの地震の数が、減少し、地震活動が静穏になり、応力の蓄積が進む。従って、CI(m,2s)を利用すれば、大地震に至る応力の蓄積が如何に推移するかを観察する事が出来る。例えば、上記中国・四国・近畿地方の場合、次の3つの段階に分類できる。まず1段階目は、地震の数年前から観測される静穏の始まり、次の2段階目は、1年から半年程前に観測される蓄積された応力がピークに到達し応力の蓄積が減少し始めたと判断される臨界静穏状態、そして、3段階目は、応力の蓄積が急激に減少し、大地震の発生数日〜数時間前まで急減少が継続する段階に分類できる。すると、臨界静穏状態に対応する形状の振幅値、大地震の発生数日までに観測される形状全体の幅やその面積の大きさが、蓄積応力が作用する断層形状(長さや幅)や断層面積に比例していると仮定できる。又、後述するように、CI(m,2s)は、地殻に蓄積され開放される歪エネルギーの密度に比例する量となるので、その形状の総面積が、大地震により解放される総歪エネルギーと仮定できる。従って、過去に発生した大地震のM6クラスとかM7クラスとかのマグニチュードの程度とこれら形状の大きさとの比例関係から、今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの程度の予知をする事ができる。一方、マグニチュードは、[非特許文献1]によると、MKS単位で、次の[数54]で与えられる。

ここで、M0は地震モーメントで、MKS単位で、[数55]で定義されている。

ここで、μは、断層を含む地殻の剛性率,Dは、断層のすべり量、Sは、断層の面積である。Sは断層の幅W(km)と断層の長さL(km)との積(S=W・L)で与えられる。

また、[非特許文献15] によると、日本で観測されたマグニチュードが6 ≦M ≦ 8.5の地震にたいし、断層の長さLと幅Wの間には、経験的に、L=2Wの関係があり、断層の長さLかWを用いると、地震のマグニチュードは、次の、[数56]か[数57]により与えられる。

従って、衛星を用いた干渉計やGPS等を用いた観測から、今にも発生しそうな断層の長さLを予測できたり、地殻の応力変化(地震発生の変化)から断層の幅W、断層の形状や面積を予測できたりするならば、[特許文献1]に開示された大地震のマグニチュードMの予知方法に、[数56]、[数57]等を追加し、予知の定量化の改善ができる。その改善に、本願の発明者は、[数44]のニュートンの運動の第二法則を利用する。この時、前述した様に、変位は、[数45]で与えられるD(c,t)、加速度は、[数47]もしくは[数48]で与えられるA(c,t)とする。

[特許文献1]で利用した大地震の予兆の推移は、[図3]の加速度、A(DEP,t)、A(INT,t)、A(MAG,t)の位相と振幅の関係で定量化したCQKとCQTである。これら二つ予兆は、[特許文献1]の図2、図3、図4か、後述の[図29]、[図30]、[図31]の中国・四国・近畿地方の震源分布に表示したM7.2の兵庫県南部地震のCQK予兆と、M7.2の鳥取県西部地震のCQT予兆である。この二種類の予兆は、その中国・四国・近畿地方における深発地震を除いたマグニチュード(M)が、M≧Mc(Mc=3.5)の地震発生の変化から抽出した。[数47]、もしくは、[数48]の加速度A(c,t)を用いたCQKとCQTの関係を、[数44]のニュートンの運動の第二法則を利用して、[数45]の変位D(c,t)
(c=DEP,INT,MAG)を用いた関係、CQKDとCQTDにそれぞれ変換する。[数45]で、Δt=2w+1とした変位D(c,t)と、差分間隔の時間をn=k=sとした[数48]の加速度A(c,t)を算出するには、時刻tから差分間隔sだけ過去のD(c,t-s)と、sだけ先のD(c,t+s)とを必要とする。しかし、変位D(c,t)の最新の時刻を、[図8]で大地震が発生するta3とすると、加速度A(c,t)が変位D(c,t)に作用している[数44]のニュートンの運動の第二法則が成立する時間tの範囲は、t≦ta3-sである。従って、加速度A(c,t)
(c= DEP,INT,MAG)で定量化した[図3]のCQKとCQTの特別な位相関係が成立する時間の範囲は、t≦ta3-sであるが、変位D(c,t)の周期性を利用し、時刻ta3まで拡張したD(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)とを用いたCQKDとCQTDにそれぞれ変換し、[図9]に、模式的に表示する。変位D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)は、[数45]で2w+1個の地震発生に関する移動平均で得た値なので、CQKとCQTから変換したCQKDとCQTDは、2w+1個の平均的な地震発生の変化(地震活動)を記述する。また、この移動平均に関して、[数1]で与えられる時系列[c]の最新時刻mは、m
= ta3+wとなる。

[図9]の模式図では、縦軸に、実線のD(INT,t)、破線のD(DEP,t)、実線のD(MAG,t)を取り、横軸に時間tを取り、CQKDとCQTDの関係を表示する。ただし縦軸は、[図3]と同様に、上向きが負、下向きが正の方向となる。CQKとCQTの特殊な位相関係が確認された時刻ta1の箇所に、下向きの矢印で、それぞれ、「CQKD型の位相関係」と「CQTD型の位相関係」と表示した。CQKDとCQTDを用いた地震発生の変化(地震活動)は、CQKとCQTに関連して次の様になる。

先ず、[図9]のCQKDの地震発生の変化を説明する。[図3]のCQKは、時刻ta1でA(DEP,t)とA(INT,t) の反転が生じ逆位相となる。従って、[図8]に示した[数44]のニュートンの運動の第二法則から、CQKDも、時刻ta1で、D(DEP,t)とD(INT,t)との間に、反転が生じる。反転時、D(DEP,ta1)の値は大きいので、震源の深さ(DEP)は深い。D(INT,ta1)は小さいので、地震発生の間隔時間(INT)は短い。D(MAG,ta1)は大きいので、マグニチュード(MAG)は、大きい。そして、大地震は、CQKのA(INT,t)が、時刻ta1から、半周期後に反転する時刻ta2となった時、発生する。この時、D(INT,ta2)も反転し、その値は大きく、INTは長い。又、周期が長くなったCQKのA(DEP,t)も、時刻ta2で震源を深くする方向に反転する。従って、時刻ta2のD(DEP,ta2)は、浅い。地震のマグニチュード、D(MAG,ta2)は、小さくなる。大地震が発生する時刻ta2の加速度を算出する変位は、ta2から半周期sだけ進んだ時刻ta3の変位も含まれる。その変位は、時刻ta2の状態から反転し、D(INT,ta3)が、小、D(DEP,ta3)が、大、D(MAG,ta3)が、大となる。従って、時刻ta3の地震の発生状況は、INTが短く、DEPが深く、MAGが大きい。

次に、[図9]のCQTDに関連した地震発生の変化を説明する。[図3]のCQTは、時刻ta1でA(INT,t)とA(DEP,t)との間に振幅の反転が生じ逆位相となる。その反転は、先のCQK現象とは逆の反転となるので、CQTDは、CQKDと比較すると、変位D(DEP,t)とD(INT,t)との間に逆の反転関係が成立し、他の関係は、CQKDと同一となる。時刻ta1のD(DEP,ta1)は小さいので、震源(DEP)は浅く、D(INT,ta1)は大きいので、地震発生の間隔時間(INT)は長い。D(MAG,ta1)は大きいので、マグニチュード(MAG)は、大きい。そして、大地震は、A(INT,t)が、時刻ta1から半周期進み、反転する時刻ta2で発生する。この時、D(c,t)も反転し、D(INT,ta2)は小さく(INTは短く)、D(DEP,ta2)は大きく(震源は深く)、地震のマグニチュードD(MAG,ta2)は、小さくなる。大地震が発生する時刻ta2の加速度を算出する変位D(c,t)は、ta2から半周期sだけ進んだ時刻ta3の変位も含まれる。その変位D(c,t)は、時刻ta2の状態から反転し、D(INT,ta3)が、大、D(DEP,ta3)が、小、D(MAG,ta3)が、大となる。従って、時刻ta3の地震の発生状況は、INTが長く、DEPが浅く、MAGが大きい。

変位D(c,t)と加速度A(c,t)間に、[数44]のニュートンの運動の第二法則が成立する[図9]の時刻ta1からta2までのCQKDとCQTDの時間的推移を、[図10]に地震発生の変化の模式図として描く。図に於いて、X印の特大フォントサイズがM7.2の大地震で、その他の大小サイズは、[数45]における移動平均個数に相当する2w+1個の平均的なマグニチュード、D(MAG,t)の大小に対応している。大きいフォントサイズは、マグニチュードが4程度(M4)で、小さいフォントサイズは、マグニチュードが3.8程度(M3.8)となる。X印の地表面からの深さは、発生した地震の平均的な震源の深さ、D(DEP,t)に対応している。X印の数の多少は、そのX印に相当するマグニチュードを持った地震の一定時間当たりの平均的な発生回数の多少を表示する。従って、その数が多ければ、その大きさの地震発生の平均的な間隔時間、D(INT,t)は、短く、少なければ、D(INT,t)は、長い。

従って、[図10]の左側の模式図のM7.2の兵庫県南部地震等のCQK予兆検出時、地殻表面から深い個所で、M4地震が多発している。D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)は周期変動しているので、その半周期後、CQK予兆検出時の地震発生の状態から反転し、地殻表面から浅い個所で、M3.8地震が、時々発生している状態となる。深い個所から浅い個所への反転直後に、CQK予兆の大地震が、発生するので、この反転に伴う震源の深さD(DEP,t)の変化量に相当する応力変化が、CQK予兆の大地震の断層運動を起こす地殻の応力変化を誘発する。震源の深さD(DEP,t)の変化量をΔD(DEP,t)とすると、その変化の方向は、■の破線矢印が示す深い方から浅い方向の上向きとなる。その変化量ΔD(DEP,t)を発生させる力ΔF(DEP,t)との関係は、ニュートンの運動の第二法則を記述する[数44]の変分Δを取った数式が、ΔF(c,t)∝-KcΔD(c,t)となるので、変化量ΔD(DEP,t)に比例した力ΔF(DEP,t)は、ΔD(DEP,t)が変化を生じる方向と逆方向に作用する。従って、CQK型のΔF(DEP,t)の方向は、●の破線矢印で示した浅い方から深い方向の下向きとなる。地殻内では、地震発生の変化で生じたΔF(DEP,t)を打ち消す方向、即ち、●の破線矢印で示した上向きの方向に、ΔD(DEP,t)の発生個所より浅い所で、反作用的な応力変化が誘発されると推論される。従って、その反作用的な応力変化が浅い所の断層に作用し、せん断応力が断層の静止摩擦応力を上回れば、特大フォントサイズのX印で表示したCQK型のM7.2大地震が発生する事になる。せん断応力は、変化量ΔD(DEP,t)を起こした力ΔF(DEP,t)から誘発されたので、ΔD(DEP,t)と略等しい幅W
kmを持った断層を動かす事ができると推論される。実際、M7.2の兵庫県南部地震の変化量ΔD(DEP,t)=20kmは、[非特許文献16]に報告されている断層幅W=20kmと一致しているので、上記推論は正しい。

CQT型の大地震(M7.2の鳥取県西部地震等)の場合は、[図10]の右側の模式図で、次の状況を示している。大地震のCQT予兆検出時、地殻表面から浅い個所で、M4地震が時々発生している。D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)は周期変動しているので、その半周期後、CQT予兆検出時の地震発生の状態から反転し、■の破線矢印で示した深いい個所で、M3.8地震が、多発している。この反転直後に、CQT予兆の大地震が、発生する。反転時、CQK予兆の大地震の場合と同様に、D(DEP,t)の変化量をΔD(DEP,t)とすると、ニュートンの運動の第二法則から、●の破線矢印で示した上向きの力ΔF(DEP,t)が、発生し、このΔF(DEP,t)を打ち消す方向、即ち、ΔD(DEP,t)の発生個所より浅い所で、●の破線矢印で示した下向きの反作用的な応力変化が誘発されると推論される。この応力変化が幅W
kmの断層に作用し、そのせん断応力が、断層の静止摩擦応力を上回り、大地震を発生させる断層運動が生じたと推論される。M7.2の鳥取県西部地震の場合、ΔD(DEP,t)=15kmとなり、[非特許文献17]に報告されている推定断層幅、W=17kmと略一致しているので、推論は正しい。

兵庫県南部地震(1995-1-17、CQK予兆タイプでM7.2)、山口県東部地震(1997-6-25、CQT予兆タイプでM6.6)、鳥取県西部地震(2000-10-06、CQTタイプでM7.2)、中越地震(2004-10-23、CQTタイプでM6.8)等の大地震の断層形状(長さLと幅W)は、[非特許文献16]-[非特許文献19]によると、大地震の余震分布や地震波観測に基づく断層運動のモデル等から推定されている。これら大地震の推定断層幅Wと、大地震発生前に観測される、D(DEP,t)の変化量ΔD(DEP,t)とを比較すると、山口県東部地震を除き、WとΔD(DEP,t)とが、略、同じ値になる。従って、変化量ΔD(DEP,t)を断層幅Wとし、[数57]を用いると、今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの予知が、可能となる。この概要は、[非特許文献20]に報告されている。従って、[特許文献1]に開示された大地震のマグニチュードMの予知の定量化の改善ができる。

第3の改善項目、「加速度A(DEP,t)とA(INT,t)の波形の反転が、[図3]の様に、略、完全な反転とならない場合、CQKとCQT予兆の推移を如何に確定し予知に利用するか」について述べる。
[図3]のCQKとCQT予兆において、加速度A(DEP,t)とA(INT,t)とが、完全な逆位相とならない波形の反転も観測されている。例えば、[特許文献1]の改善の実施例として後述する2011年3月10日に発生した東北地方のCQKのM6.4地震や2011年7月5日に発生した和山県のCQKのM5.5地震等がある。これらの地震では、地震発生日は、[図3]のA(INT,t)が負のピーク値をとる時刻ta2ではなく、A(DEP,t)が、時刻ta2の正のピーク値から更に半周期進んだ負のピーク値を取る時刻となる。その時刻は、[図8]のA(c,t)とD(c,t)で震源要素cをDEPとした関係図を用いると、時刻ta3となる。この発生時刻のta2からta3への遅延は、上記CQK型の物理モデルによると、時刻ta1からta2の変化量ΔD(DEP,t)で生じるΔF(DEP,t)は、時刻ta2で今にも発生しそうな大地震の断層に作用するせん断応力を誘発する。しかし、そのせん断応力は、変化量ΔD(DEP,t)で生じるとされたΔF(DEP,t)よりも少ない量となり、変化量ΔD(DEP,t)に相当する断層幅を持った断層の静止摩擦応力より小さくなる。従って、そのCQK大地震は、時刻ta2で発生しない。時刻ta2からta3までの変化量ΔD(DEP,t)で生じたΔF(DEP,t)が誘発するせん断応力が更に加わると、断層に作用するせん断応力は、断層面の静止摩擦応力より大きくなり、そのCQK大地震が時刻ta3で発生すると推論される。ただし、この場合でも、時刻ta1からta2までの変化量ΔD(DEP,t)が、断層幅Wに略等しくなる。従って、断層幅Wを持った断層に作用するせん断応力を生み出す源となるΔF(DEP,t)を発生させる物理モデルは、CQKとCQT予兆の加速度A(DEP,t)とA(INT,t)の波形の反転が、[図3]に図示した理想的な反転と異なる場合、[特許文献1]の大地震発生時刻と震源の予知技術を改善する。

第4の改善項目、「巨大地震の予知」について述べる。
マグニチュードが8.5より大きな巨大地震にも[数56]や[数57]が成立すると仮定すると、巨大地震の断層長Lの予測が、巨大地震のマグニチュードの予知となる。従って、断層長Lの予測をするために、[特許文献1]に用いた変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットを上記2つの物理的性質を満足する各検出ウエーブレットに変更して、巨大地震発生の自然現象を定量化し、巨大地震の予知に利用する。

本願の発明者は、次に述べる地殻表面に出現する変化(地殻変動)のGPS観測から、「プレート境界に沿って出現する地殻変動の異常の広がりが、今にも発生しそうな巨大地震の断層長Lとなる。」自然現象を発見した。地殻変動の定量化は、先ず、GPSを用いて観測した各電子基準点(GPSステーション)の世界測地系(地球の重心が原点)の位置座標値を、各ステーションに定めた東西(X軸)、南北(Y軸)と上下(Z軸)方向の直行座標系の位置座標値に変換する。この座標値を用いて、ステーションの位置が変化する推移を、3方向成分の時系列とし、所定の基準位置からの変位とする。この3成分の時系列を、[数1]の時系列[c]と同様に記述する。従って、cは、東西方向(X軸)成分を表すE、南北方向(Y軸)成分を表すN、上下方向(Z軸)成分を表すhとなる。各時系列の単位は、メートル(m)、時間を示すインデックスjは、日数となり、単位時間は、1日となる。GPSステーションの基準位置を、初日のGPS観測値とすると、初日の変位が、ゼロとなり、2日目の変位が、基準値からの位置変化の値となる。変位時系列データの各成分は、[数1]の震源要素cを、EとNとhで置き換えた次の[数58]となる。

初日の位置を、ステーションの基準位置としたので、d(E,1)、d(N,1)、d(h,1)はそれぞれ、ゼロとなる。しかし、ステーションの基準位置は、任意日のステーションの位置に取ることもできる。この場合、任意に選択した日の各変位がゼロとなる。

この様に、GPSステーションの日々の位置座標を時系列化し、その平均値を基準位置とし基準位置からの変動を変位時系列とするグラフ化データ化の技術は、国土地理院のウエブサイトで公開され、それら表示データもダウンロードできる。変位時系列の単位時間は、1日(24時間)である。更に、公開されている10年以上の長期間のGPSステーションの日々の位置情報は、F2かF3解析の各年毎のデータファイルとして、ダウンロードできるので、それら世界測地系での位置情報を[数58]の変位時系列(単位時間は1日)に座標変換すれば良い。GPSステーションの位置情報は、GPSの観測データの処理方法に依存するので、この単位時間は、1日(24時間)でなく、処理速度の速い1秒とする事もできる。[数58]で与えられるGPSステーションの変位は、ノイズによる変動が大きい。特に、[数58]の[h]の上下変動は、丁度、地震の発生(仮想粒子の出現)が描くジグザグ軌跡となる。[h]軌跡のジグザグ箇所で、その時間微分は不可能となり、運動の微分方程式を導出できない。他の[E]と[N]成分も、拡大するとノイズの影響が在り、[数1]の震源要素時系列[c]と同様に、ジグザグ箇所で、その時間微分が不可能となる。従って、その時間微分操作が持つ時間の非対称性に関する物理的性質を、正しく反映する差分操作を導出しなければならない。この差分操作を満足させるためには、発明者が考案した変位と1次差分と2次差分とを検出するウエーブレットとを用いなければならない。これらウエーブレットを用いて、時系列[数58]から、[数式45]-[数式48]で与えられる変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出する。GPSステーションの時刻τの変位D(c,τ)、速度V(c,τ)と、そのD-V位相平面図のD(c,τ)-V(c,τ)軌跡とを用いると、ノイズに埋もれていた「地殻変動の異常」を「巨大地震発生の予兆」として確定できる。その予兆の推移(巨大地震発生の自然法則)の唯一の観測例が、2011年3月11日に発生した東日本巨大地震である。その予兆発生と推移の観測結果を、模式図にして説明する。

巨大地震が発生した東日本は、大陸プレートの東端上に位置し、その下を太平洋プレートが、沈み込んでいる。これら2つのプレートの相対運動の方向は、主に、東西方向である。太平洋プレートは、年間、約4cmの率で主に西方向へ、一方、大陸プレートは、年間、約2cmの率で主に東方向へと運動している。そのプレート境界の東西方向の断面を模式図、[図11]-[図13]にして、緯度38.5度付近の地殻の3つの変形を説明する。

(1)[図11]に描いた予兆発生前の東日本におけるプレート境界付近のスローな変形
太平洋に面する東海岸側の下には、太平洋プレートと固着している領域がある。その固着域は、[図11]に色で示され、その下の矢印は、太平洋プレートの西方向への運動方向を示し、固着域もその方向へ動いていた。固着域の西方向への運動が、太平洋に面する東海岸側を引きずり込んでいた(沈下させていた)。一方、大陸プレートの東方向へ矢印で示した運動は、日本海に面する西海岸側を押し上げていた(隆起させていた)。このスローな変形は、長年にわたり生じた変形で、実線からの通常な変形として破線で示されている。
(2)[図12]に描いた予兆的膨らみの発生と発生後の太平洋プレートの西方向への急加速と急停止とからなる異常加速運動
2009年12月8日頃から太平洋に面する東海岸側(大陸プレートの東端)と日本海に面する西海岸側に地殻の膨らみが観察された。大陸プレートの東方向への「押し」に対し、太平洋プレートの西方向への「押し」が強まったプレートの相対運動による膨らみは、「予兆的な膨らみ」として、赤の破線で表示されている。その膨らみは、東海岸側で1mm程、西海岸側で3mm程あった。又、この膨らみは、本州の東海岸側(四国の太平洋側も含む)と日本海岸側でも観察されている箇所がある。又、その「膨らみ」を観測した後、太平洋プレートの赤色の破線矢印で示されている西方向への異常運動が観測された。2010年7月8日頃から、その西方向への運動が加速され始め、2010年12月22日頃に通常の約3倍の西方向への移動速度に達した。その直後から、急減速し、2011年1月27日頃までに急停止した。そして、太平洋プレートの西方向への運動は、3月11日の巨大地震と津波発生まで停止し続けていた。
(3)[図13]に描いたプレート境界の固着領域の壊れ、誘起されたメガスラストが巨大地震と津波を発生させた。
大陸プレートの東端に位置する東日本の地殻の膨らみを支えていた固着域は、太平洋プレートの西方向の運動に耐え切れなくなり、[実施例]で後述する様に、先ず浅い箇所が破壊され、深い箇所が一挙に壊れ、プレート境界で赤色の破線矢印で示す方向にメガスラストを誘起し、東方向の断層運動をし、巨大地震と津波とを発生させた。壊れた固着域は、丸印の破線で表示されている。

上記3つの地殻の変形過程とプレート運動とを予兆の推移とする概要は、[非特許文献21]にも、「膨らみ」と「太平洋プレートの異常運動」との連動として報告されているが、模式図や次に述べる詳細は省略されている。

太平洋プレート上にある南鳥島、フィリッピン海プレートとの境界付近にある島、母島のGPSステーションの運動は、太平洋プレートの運動を代表しているとする。太平洋プレートは、太平洋上の南鳥島のGPSステーションの変位時系列によると、年間、約5.5cmの率で主に西方向(約5.7cmで西北方向へ、1.7cmで北方向)へ移動していた。しかし、南鳥島のGPSステーションの変位時系列は、複数の期間に渡り欠損データが存在し、定量解析ができない。又、2011年3月11日の東北巨大地震発生とは無関係に、父島のGPSステーションは、2011/03/09以降その運用停止が、予め決定されていた。しかし、巨大地震発生直前の3月8日までの太平洋プレートの運動の定量解析が可能である。母島のGPSステーションの変位時系列は、2004/06/15から2005/09/24までの長期間、データが欠損しているが、その他の期間では、欠損データが少なく定量解析が可能である。従って、太平洋上の父島と母島のGPSステーションが、太平洋プレートの西方向への運動を代表しているとする。ただし、これらのステーションは、フィリピン海プレートとの境界付近にあり、そのプレート運動の影響を少なからず受けているが、定性的には、国土地理院のウエブサイトで公開されている「日本列島の地殻変動情報の10年間の座標変化グラフ」の太平洋プレート上の南鳥島のGPSステーションの運動と調和している。従って、先ず、父島の時系列の変位[数58]から巨大地震発生直前に出現した地殻の異常加速運動と、巨大地震発生後の運動も含めた母島の異常加速運動とを説明する。

[図14]に、父島、母島、東日本の太平洋側、日本海側にある解析に用いたGPSステーションの配置関係を示す。[図11]-[図13]で表示した東日本の東西方向の断面の一例が、破線で示した方向の断面となり、その断面方向には、川、上、両津2の各ステーションがある。1996年から開始されたこれらステーションの連続観測位置座標値には、GEONETのF3解を用いた。これらGPSステーションの過去10年の最新観測データは、国土地理院のウエブサイトの「日本列島の地殻変動の位置座標のグラフ」として公開されている。

父島のGPSステーションのF3座標値を[数58]で表示される変位時系列に変換し、上段から、南北、東西、上下方向の変位の推移として、[図15]にグラフ表示した。1996年からの1999年までのデータには多くのノイズがあり、それらデータは解析に使用せず、2000年1月1日から2011年3月8日の期間のデータを使用した。父島のステーションは3月8日を持って予め運用停止が決定されていたので、3月9日以降の父島のステーションの位置座標は観測されていない。グラフの縦軸のプラス方向(上向きの方向)は、上段がN(北)方向、中段が、E(東)方向、下段が、地表からh(上)方向となる。各縦軸の単位は、全てメートル(m)で、赤色の目盛りの原点(ゼロ)上に黒色で記される目盛値が、2000年1月1日の位置を基準値の0
mとするオフセット値となる。例えば、上段の南北方向の変位時系列[N]の赤色目盛りの原点(0)上の黒色で記された0.05(メートル、m)が、2000年1月1日の南北方向の変位0mの基準位置からのオフセット値となる。従って、変位ゼロの基準位置は、目盛りが5000倍に拡大されているので、0.05メートル下方の、目盛りの-250に相当する個所となる。又、横軸は、各段に共通な日数の時間軸mで、1目盛は、単位時間の1日(day)である。最下段の時間のウインドウは、任意期間を拡張表示する拡張ウインドウである。時系列[N]の変位d(N,m)の推移は緑色で表示され、上の方向(北の方向)へ移動している。観測値に欠損日があれば、その日を、除去し、前後の日で連結表示している。又、2011年3月8日(m=3940)の最終の変位値は、左側の水銀柱の目盛りに緑色の柱の高さ赤色の原点ゼロの位置からオフセット表示され、その変位の値が、下方(縦軸と横軸が交わる付近)に緑色で0.1182メートルと記されている。又、(E,N,h)の直行座標の関係を図示した。同様に、中段には、東西方向の時系列[E]の変位の推移が、縦軸の拡大率2500倍で表示されている。2000年1月1日の位置からのオフセット値は、縦軸目盛りの原点ゼロで、-0.2mとなる。西方向への変位d(E,m)の総移動量は、10年余りで、0.3896メートルとなっている。又、下段の拡大率は、上段の5000倍と同じで、時系列[h]の変位d(h,m)の上下変動は、10年余り、殆ど無かった事を示している。2000年1月1日の位置からのオフセット値は、ゼロで、縦軸目盛りの原点ゼロ上に、0と表記されている。約0.02メートル(2cm)の日々の上下変動(ジグザグな振幅変動)は、実際に生じる地殻の上下変動とは、全く無関係なGPSの観測に関連する環境ノイズによるものである。もし、GPSステーションで観測する環境に異常が無く、一日に2cmの地殻の上下変動があれば、その地殻変動は、地震発生によるものである。[図15]によると、父島のステーションの通常な西方向への運動は、10年余りにわたり39cm移動していた。その年間の変化率は、約3.9cm/yearとなり、日々の変化率は、約0.11
mm/dayとなる。

父島のステーションの位置の変化率(運動)を観測するために、例えば、[数58]で与えられる任意時刻mの[c]の変位d(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅(2w+1)を15日とした[数45]のD(c,τ)と[数46]の差分間隔nを20日としたV(c,τ)とを検出し、[図16]に、グラフ表示する。変位D(c,τ)と速度V(c,τ)の原点は、変位d(c,m)の原点と同じ、縦軸目盛の0である。なお、変位d(c,m)と、平均変位D(c,m)と、その速度のV(c,τ)の位相関係は、D(c,τ)が、d(c,m)から8日遅れ、V(c,τ)が28日遅れている。これら時系列の長さを同一にしたグラフ表示のため、m=0〜28に相当するd(c,m)の最初の28日間と、D(c,τ)の20日間のグラフは表示されていない。太平洋プレートの東西方向の運動を明確にするため、変位D(E,τ)と速度V(E,τ)との関係を、これら時系列グラフに追加して、D-V位相平面図にD(E,τ)-V(E,τ)軌跡を描く。位相平面図に於ける横軸の変位D(E,τ)の原点は、太い赤線で印をした縦軸目盛りの原点0の個所となり、その値は、オフセット値の-0.2mとなる。従って、D-V図に於ける原点の値は、変位D(E,τ)が、-0.2mとなり、変位の一次変化率である縦軸の速度V(E,τ)が、0m/dayとなる。このD-V位相平面図の横軸のDの範囲は、±24cmで右側反面がD(E,τ)のプラス(原点から東側)領域となる。縦軸Vの範囲は、±1
mm/dayとなり、上側半面が、V(E,τ)のプラス(東方向)領域となる。この位相平面図に描かれたD(E,τ)-V(E,τ)軌跡から、太平洋プレートの異常加速運動が特定される。西方向への速度V(E,τ)は、2010年7月11日頃まで、最大約0.2
mm/dayであったが、急激に加速し始め、2010年12月22日には、通常速度の約3倍の速度(0.66 mm/day)に到達した。この日には、父島近海でM7.9の大地震が発生している。その発生個所を、時系列[E]上の時刻m=3864(2010/12/22)の個所とD-V位相平面図の軌跡上にM7.9と矢印で表記した。急加速直後に、急減速が始まり、2011年1月27日頃には西方向への運動は停止し、速度V(E,τ)は、ゼロとなり、西方向への運動は、東方向へと逆転し、僅か3-5日後に、その東方向への速度は、0.06mm/dayまで上昇し、巨大地震発生直前の3月8日頃まで、その東方向の速度値は、変化しなかった。2009年12月23日から2011年3月8日の期間(m=3500〜3940)の様子を、[図17]に拡大表示した。拡大図の左下の数値、-0.3896は、2000年1月1日から2011年3月8日までのd(E,m)の総変位量が、西方向へ0.3896mであった事、その下の2500は、縦軸目盛りの拡大率である。D-V位相平面図に於ける変位D(E,τ)の原点は、太い青線で印をした目盛り-400の個所のオフセット値となる。目盛りの倍率が2500なので、このオフセット値は、-0.16mとなる。従って、東西方向の変位時系列[E]は、2000年1年1日の位置を基準にすると、縦軸目盛りの0が、-0.2mと、既にオフセットされているので、D-V図に於ける原点の値は、変位D(E,τ)が、-0.36mとなり、速度V(E,τ)の原点が、0m/dayとなる。変位D(E,τ)が、原点となる縦軸目盛り-400の値を取る個所の時刻は、m=3700の2010年7月11日で、その個所に両矢印と2010/07/11と表記した。D-V位相平面図の速度Vの縦軸目盛り範囲は、±1
mm/dayとなり、上半面がプラス(東方向)領域となる。変位Dの範囲は、原点となるオフセット値から、±4 cmとなり、右側半面が、プラス(原点から東側)領域となる。それら領域の大きさを、両矢印と数値で、D-V図に表記した。又、速度V(E,τ)と加速度A(E,τ)とを、左の縦軸目盛りの0を原点とした相対スケールで、表示した。又これら速度と加速度に含まれている振動の周期の28日を、破線間隔で加速度A(E,τ)上に示した。父島のステーションは3月8日を持って予め運用停止が決定されていて、その最終時刻は、m=3940となる。これら、異常加速運動が観測された上記日時は、変位検出ウエーブレットの幅15日と差分間隔20日による遅れ時間(最低、幅による8日と差分間隔による10日を加算した計18日の遅れ日数)は考慮されていない実時間である。異常運動の確定に費やす日数を考慮すると、50日程を要した急加速運動は、巨大地震が発生する50日程前に終え、その直後、急減速し、西方向への運動は、遅くとも20日程前に、急停止した事を、[数58]の時系列[E]から確認できる。更に、使用した幅(15日)と差分間隔(20日)は、用途別に、任意設定できる。例えば、日々のランダム変動ノイズと[図17]に出現している略28日の地球潮汐の周期とを平滑するために、変位検出ウエーブレットの幅(2w+1)を29日とし、差分間隔を35日とし、異常運動の確定をより正確にする事ができる。その2010年4月2日から2011年3月8日の期間(m=3600〜3940)の様子を、[図18]に拡大表示した。幅(2w+1)は、奇数値となるが、wの値が大であれば、偶数値を使用しても結果に差は無い。又、[数46]の差分間隔nは、偶数値であるが、nの値が大きければ、奇数値を使用しても結果に差は無い。

父島のGPSステーションは、2011年3月9日以降その運用が停止されているので、母島のGPSステーションの変位時系列を用いて、巨大地震発生後の父島のGPSステーションの地殻変動を推論する。母島のGPSステーションでは、2004/06/15から2005/09/24まで長期間のデータ欠損があった。その欠損前後に、加速を伴った地殻変動は無かったと仮定すれば、その時系列データをオフセット連結できる。連結した結果には、地震による様な大きな地殻変動は観察されていないので、その「加速を伴った地殻変動は無かった」とする仮定は、概ね満足されている。従って、連結した時系列を2011年10月29日まで延長した[数58]の[E]に、幅29日の変位検出ウエーブレットと差分間隔35日の速度検出ウエーブレットを適用し、巨大地震発生前後の異常な加速運動を、[図19]に図示した。[図19]によると、母島のGPSステーションの変位時系列[E]は、巨大地震発生前まで父島と略同様なので、巨大地震発生後も、その東西方向の地殻変動は、父島と同様であったと推論できる。なお、2011年3月11日の巨大地震発生日、東北地方を始め日本各地のGPSステーションの、変位時系列[c]には、スパイクノイズが、存在し、母島のGPSステーションの変位時系列[c]にも、時刻m=3606(2011年3月11日)に存在している。そのノイズの個所は、2011/03/11
@ m=3606 M9のラベルと破線矢印で、東西方向の変位時系列[E]のd(E,m)上に表記した。又、異常変位運動を起こした個所には、父島近海の大地震の発生時刻とM7.9を2010/12/22
@ m=3527 M7.9のラベルと両矢印でd(E,m)とV(E,τ)上に表記した。この異常運動とM7.9大地震の発生個所は、D-V図の軌跡上にも矢印とM7.9を表記した。又、M9地震の個所もD-V図に描かれた軌跡上に表記した。巨大地震M9の軌跡は、スパイクノイズの影響で鋭く変化している。このスパイクノイズの影響を取り除くために、3月11日はGPS観測のデータ欠損日だとして、その日の前後のデータを連結し、巨大地震発生前後の変位時系列[E]のm=3300〜3836(2010年5月9日から2011年10月29日)までを、[図20]に拡大表示した。この時系列[E]とD-V位相平面図に描かれたD(E,τ)-V(E,τ)軌跡は、太平洋プレートの西方向への運動が、巨大地震が発生する45日程前に、急停止し、その直後、東方向への運動に反転するが、巨大地震発生後、西方向の運動に戻る。この西方向の運動は小さく150日間ほど継続し、太平洋プレートの西方向への運動に再加速されている。そのD-V位相平面図に描かれたD(c,τ)-V(c,τ)軌跡で表示される予兆の推移は、天気図で表示される台風情報と同等に取り扱える。「台風のの発生」は、次に述べる「東日本の通常変形からの膨らみの発生」と見なせる。従って、D-V位相平面図を、巨大地震発生の予報図や予知図として利用できる。

これら太平洋プレートの異常な急加速、急減速運動は、大陸プレート上にある東北地方の日本海側(西海岸側)と太平洋側(東海岸側)に出現した「東日本の地殻の通常変形からの膨らみ」と連動している。膨らみの観測後に、太平洋プレートの異常な加速度運動が観察されているので、膨らみが、異常加速運動を誘引したと推論される。この膨らみは日本列島全域で観察されているが、「通常変形からの膨らみ」は、東北地方の東海岸側は種市付近から山付近に及び、西海岸側は、岩崎付近から入善付近に及ぶ。先ず、観測した東海岸側の通常な変形とその変形からの膨らみ(隆起)の観測結果例を述べる。

通常な太平洋プレートの西方向への移動は、太平洋プレートと固着している東北地方の東海岸側を引きずりこむ。例えば、東海岸のGPSステーション女川の過去15年間余りの地殻変動時系列、[数58]の[N]と[E]と[h]のd(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅を400日とし、差分間隔を300日として、[数45]のD(E,τ)と[数46]のV(E,τ)とを検出する。それら検出結果を、[図21]に表示した。縦軸目盛りの拡大率は、上段の[N]が、5000倍、中段の[E]も、5000倍、下段の[h]が、10000倍である。これら検出結果によると、太平洋プレートとの固着は、女川のステーションを約18mm/yearで西方向へ、約10mm/yearで南方向へ引きずり、約6mm/yearで沈下させていた。女川の高さ方向の時系列[h]には、上段[N]と中段[E]に矢印で示された地震発生個所にノイズ変動とは異なる約4cmの沈下が観察される。この沈下は、このステーションの近くで2008年6月14日に発生したマグニチュード7.2の地震によるもので、時系列[E]を、4cm程東に、時系列[N]を1.5cm程南に移動させている。上下変動[h]には、この地震による変動以外、明確に観測されていないが、[N]には、2003年5月26日のM7.1、[E]には、2003年7月26日のM6.4の地震がそれぞれ観察されている。この女川のステーションは、これら地震時の移動も含め、15年間で、[N]から北へ約11cm、[E]から西へ17cm、[h]から下方へ9cmの移動が確認されている。[N]から、これらの移動は、絶えず南方向へ移動している。2008年6月14日のM7.2の地震による[E]の東方向への移動を除けば、西方向への定常的な移動は、[h]の沈下と連動している。各大地震の発生個所は、その発生日とマグニチュードを、時系列d(c,m)上に、矢印で示した。巨大地震の発生個所は、二重矢印で示した。

上記太平洋プレートの西方向への通常な移動により沈下していた東北地方の東海岸側に、隆起速度成分を持った膨張(隆起)が2009年12月8日頃から始まった。その隆起の開始時点は、女川の[図21]の下段[h]のD(h,τ)とD-V位相平面図に描かれたD(h,τ)-V(h,τ)軌跡上に破線矢印で示した。又、時系列[h]を[図22]に拡大表示した。[図22]から、巨大地震発生直前までに、女川のステーションは、1.2
mm隆起し、その直前の隆起速度成分は、0.001mm/dayであった。この東海岸の膨張開始から半年後の2010年7月11日頃から、上記太平洋プレートの西方向への異常な加速運動が観測されたので、膨張が、異常加速を誘起した事になる。この膨張の開始は、巨大地震が発生する約445日前である。幅が400日の変位検出ウエーブレットを用いてその隆起の始まりが観測できたので、その開始の検出は、約245日前(245日=445日−200日)となる。更に、その隆起に、隆起速度成分(上下変動[h]の正の速度成分)を確認するには、巨大地震が発生する約150日前頃となる。なお、その巨大地震が発生した個所のD(h,τ)-V(h,τ)軌跡は、急激に変化する変位と速度データを連結する鋭い下降直線(細線)となり、その箇所をM9と二重線矢印で示した。

2011年3月11日の巨大地震は、女川を約5m東へ移動、約1.7m南へ移動、約87cm沈下させた。従って、[非特許文献1]の「地震の物理」によると、太平洋プレートの西方向への移動が、プレート境界の固着域により、東日本の地殻に年間、2.14cmの率で歪を蓄積し(変形させ)、固着領域(断層)が、蓄積応力に耐え切れなくなり破壊され、断層がスリップし、巨大地震が発生した事になる。地震発生時の女川の総移動量535.23cmが、女川付近で蓄積されていた応力を開放した事になる。この総移動量に相当する応力を蓄積するには、約250年要した事になり、250年程前(1761年頃)に、M9クラスの東北巨大地震が発生していた事になる。東日本では、過去に、1611年12月2日、三沖で発生したM8.1の慶長三陸地震、1793年、県沖政M8.2地震、1896年6月15日、三陸沖の日本海溝付近で発生したM8.5地震と1933年3月3日、三陸沖の日本海溝付近で発生したM8.1地震があるが、250年程前(1761年頃)に、M9クラスの巨大地震は、存在しない。従って、その様な巨大地震が過去に存在しなかったのであれば、プレート境界の固着領域付近の地殻に蓄積された応力の巨大地震による解放は、[非特許文献1]の「地震の物理」では説明できないし、その巨大地震の発生日や時期の予知は不可能となる。

大陸プレートの東方向への通常な移動は、大陸プレートの東海岸側(東端)が太平洋プレートに固着しているため、東北地方の西海岸側を、東方向へ押し上げる。東海岸のGPSステーション、女川、と同緯度付近(約38.5度付近)にある西海岸のGPSステーション、佐渡島の両津2、の観測例を挙げる。両津2の過去15年間余りの地殻変動時系列、[数58]の[N]と[E]と[h]のd(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅を400日とし、差分間隔を300日として、[数45]と[数46]とで与えられるD(c,τ)とV(c,τ)とを検出する。それら検出結果を、[図23]に表示した。縦軸目盛りの拡大率は、上段の[N]が、5000倍、中段の[E]も、5000倍、下段の[h]が、10000倍である。太平洋プレートとの固着が、その西海岸の通常運動を、両津2のステーションを東方向へ11
mm/yearで移動させ、約2.4mm/year(約0.007 mm/day)で隆起させていた。下段[h]のD(h,τ)とD-V位相平面図に描かれたD(h,τ)-V(h,τ)軌跡とに破線矢印で記した西海岸の予兆的な隆起開始点は(隆起速度成分を持った膨張の開始点は)、東海岸の膨張開始と同時期の2009年12月9日頃である。巨大地震の発生個所は、時系列[h]のd(h,m)上とD(h,τ)-V(h,τ)軌跡に表示した二重線矢印が指す個所である。下段[h]のみを、[図24]に拡大表示した。この拡大図から、巨大地震直前まで、約3
mm隆起し、直前の隆起速度成分は、0.016 mm/dayに達していた事が判明する。また、膨張は、大陸プレートの東方向への速度成分が、0.046 mm/dayから巨大地震直前の0.026
mm/dayまで減速した期間に発生している。更に、この膨張は、太平洋プレートの異常な加速度運動と連動している。時系列d(h,m)とD(h,τ)上に示した2つの二重線矢印と、D(h,τ)-V(h,τ)軌跡の二重線矢印の個所で発生したM9巨大地震は、西海岸側の両津2を、南へ8cm程、東へ71cm程、移動させ、3cm程隆起させた。

巨大地震は、東日本の東海岸側を沈下させ、西海岸側を隆起させたが、殆んど沈下も隆起もさせなかった領域が、その西海岸と東海岸の間で西海岸に沿った線状に存在する。その線上にあるGPSステーションの例として、東海岸のGPSステーション、女川と佐渡島の両津2と同緯度付近にある村上の1996/3/21から2011/9/24までの15年余りの時系列、[数58]の[N]と[E]と[h]のd(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅を400日とし、差分間隔を300日として、[数45]と[数46]とで与えられるD(c,τ)とV(c,τ)とを検出する。それら検出結果を、[図25]に、時系列[h]の拡大を[図26]に表示する。太平洋プレートとの固着が、その西海岸の通常運動を、村上ステーションを南方向へ9
mm/yearで移動させ、巨大地震発生約5年前から、それまで東方向への移動成分はゼロであったが、東方向へ5 mm/yearで移動させた。2000年頃まで沈下していたが、それ以降、上下変動は殆んど無く、隆起は、僅か、0.5
mm/year程の隆起速度であった。村上の地殻の膨張は、西海岸(両津2)の予兆的な膨張と同様であった。それは、東海岸の膨張と同時期の2009年12月9日頃の破線矢印で示した個所から始まり、巨大地震直前まで、約3
mm程隆起し、直前の隆起速度成分は、0.012 mm/dayに達していた。この膨張は、大陸プレートの東方向への速度成分V(E,τ)を0.018 mm/dayから-0.008
mm/dayまで減速させた。マイナスは、村上ステーションが東方向から西方向へ反転移動した事を意味する。この反転開始は、東方向への移動速度成分がゼロと観測された時点で、巨大地震発生71日前に始まった。それは、2010年12月22日頃、太平洋プレート(父島のステーション)の西方向への移動速度が最大値となった頃と同時期であり、太平洋プレートの西方向への異常な加速度運動と連動している。[図25]の変位d(N,m)とd(E,m)上に示した2つの二重矢印は、2011年3月11日に巨大地震が発生した個所である。その個所で、巨大地震は、西海岸側寄りの村上を、南へ23cm程、東へ130cm程、移動させた。[図26]から、ゆっくり時間をかけた1
mm余り程度の隆起が、巨大地震後観察されているが、両津2等で観測されている地震直後シャープな隆起ではない。[図26]の変位時系列のd(h,m)とD(h,τ)上に示した2つの二重矢印は、2011年3月11日に巨大地震が発生した個所である。

女川、村上、両津2のステーションの、通常な地殻変動と予兆的な地殻変動(膨らみ)は、東日本一帯のGPSステーションで観測された。それらステーションを東海岸側の女川の様に、巨大地震発生前後で、ステーションの地殻が「沈下◆」したグループ、西海岸側の両津2の様に地殻が「隆起▲」したグループ、村上の様に、ステーションの地殻の沈下も隆起も発生しなかった「変化なし●」のグループに3種類のシンボルを使用して分類し、[図27]に表示した。図には、2011年3月11日に発生した巨大地震(3/11
M9)とその余震分布も表示した。又、2003年9月26日に発生したM8の十勝沖地震、2010年12月22日に発生した巨大地震の予兆的な父島近海のM7.9地震、巨大地震の前震である2011年3月9日のM7.5地震(3/9
M7.5)とその余震分布も表示した。

これら、東日本のGPSステーションと太平洋上のGPSステーションの地殻変動時系列[数56]の[E]、[N]、[h]に、変位、速度、加速度検出ウエーブレットを用いて、[数45]-[数48]で与えられる変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出し、これら物理量を用いた巨大地震の予兆的な地殻変動の定量的な観測結果を得た。本願の発明者は、太平洋プレートと大陸プレートとの固着域が、大陸プレートの東端に位置する東日本に、通常な地殻の変形とは異なる地殻を膨張させ、膨張と連動した太平洋プレートの異常加速運動を誘引し、固着域が破壊されメガスラストが発生し、巨大地震と津波が発生する自然法則を発見した。前述の[図11]-[図13]、に示したその自然法則によると、東日本が在る大陸プレートと太平洋プレートの固着領域により、太平洋プレートの西方向への移動は、東日本の東海岸側を沈下させ、西海岸側を隆起させるので、その固着域の長さ方向の範囲を、巨大地震の断層長(L)と推定できる。またインターネットで公開されているGoogle
Earthのプレート境界付近の海溝の地形図からも、想定できる巨大地震の断層長を簡単に予測できる。従って、[数54]から、その巨大地震のマグニチュードを予測できる。また、発見した巨大地震の予兆の推移を定量的に記述する物理法則を利用すると、地殻の予兆的な膨らみと太平洋プレート(大陸プレートの下に潜り込む海洋プレート)の異常加速運動の検出後、その発生時期は、発生1年程前から予兆の推移状況をモニターしながら予知できる。変位D(c,τ)と速度V(c,τ)のD-V位相平面図を用いた予兆モニターは、台風の進路予測や大きさの同時モニターに相当する。

第5の改善項目、「大地震、巨大地震の蓄積応力の臨界状態を如何にモニターし、大地震、巨大地震の予知に利用するか」について述べる。
[特許文献1]によると、地震発生の変化に、地殻の応力場の変化が反映されているという自然法則を定量化した具体例は、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方に発生したマグニチュードが、3.5以上の地震の発生時刻の時間間隔d(INT,m)を、時刻mまで2s個、累積したCI(m,2s)であった。CI(m,2s)は、2s個の地震発生に、費やした時間なので、単位時間当たりの地震の数が減少すると、CI(m,2s)は増加し、領域の地殻に応力が蓄積されている状況を示す。逆に、大地震が発生し余震の多発等で地震発生数が増加すれば、蓄積された応力が大地震の発生により開放されている状況を示す。従って、CI(m,2s)は、大地震に至るまでの応力の蓄積と大地震発生後の応力開放サイクルの推移を表す。このサイクルの形状が、[特許文献1]の発明では、マグニチュードの程度の予知に利用された。しかし、CI(m,2s)は、地殻に蓄積され開放される歪エネルギーの密度に比例する量である事も、本願の発明者が、発見したので、その自然法則を次に述べる。

地殻を弾性体とみなすと、プレートの相対運動による地殻の歪は、対称な2階のテンソル量となり、地殻を変形させる応力と線形的に比例し、応力も対称な2階のテンソル量となる。プレートの相対運動により生じた歪を維持する保存エネルギーが、地殻に蓄積される。地殻の単位体積あたりに蓄積されるそのエネルギーは、歪エネルギーの密度で、応力と歪の内積で与えられるスカラー量となる。時系列[CI(m,2s)]は、次に述べるように、3つの成分からなる応力(せん断応力)の関数となる。従って、時系列[CI(m,2s)]は、スカラー量なので、対象領域の地殻の単位体積あたりに蓄積された歪エネルギーに比例すると仮定できる。蓄積された歪エネルギーは、大地震や巨大地震の発生直前から解放される。従って、時系列[CI(m,2s)]は、大地震や巨大地震発生の時期の予知に利用できる。先ず、時系列[CI(m,2s)]が、せん断応力の3成分の関数である事から説明する。

時系列[CI(m,2s)]が、せん断応力の関数である理由は、上記、中国・四国・近畿地方(4度X 5度程のメッシュ領域)のsを30〜35とした[CI(m,2s)]が、3つの独立変数、つまり、3つの自由度(力学変数)を持つ事による。偶数の2sは、奇数の2s+1としても良い。その力学変数の数の特定には、後述する統計解析カオス解析)を用いる。時系列[CI(m,2s)]は、地殻の応力変化で生じる地震の発生の変化を記述するので、それら3つの力学変数は、せん断応力の3成分であると断定できる。例えば、プレート境界で大陸プレートの東端に位置する上記中国・四国・近畿地方の場合、フィリピン海プレートが、西北方向に年間約3cmで移動しながらが潜り込んでいる。この外力が、地殻の断層付近を変形させ、地殻の断層面に作用するせん断応力となる。東西方向をx軸、南北方向をy軸、地表から上下方向をz軸としたx-y-zの直交座標系を用いると、このプレートの相対運動によるせん断応力は、x-y-zの3成分を持つ。この狭い領域を約30倍に広げ、日本列島を含む、北緯24度〜48度、東経124度〜150度領域にすると、マグニチュードを4以上として選択し、差分間隔sを、15〜50とする時系列[CI(m,2s)]の力学変数の数は、1つ増え4となる。この増加は、領域が、平面でなく球面の一区画となるので、球面状の地殻内のz軸方向の選択が、新たな自由度として加わる事による。従って、時系列[CI(m,2s)]は、せん断応力の3成分の関数であり、しかもスカラー量なので、対象領域の地殻に蓄積される歪エネルギーの密度と仮定する事ができる。領域を変えたり、その広さを、順次拡大したりして、選択領域に蓄積された歪エネルギーの密度の推移を観察できる。更に、時系列[CI(m,2s)]の1/(2s)値は、ローパスフィルターのカットオフ周波数に相当するので、s値を変え、大地震や、巨大地震発生前に出現する歪エネルギーの急激な解放現象を異なる周波数領域で検出できる。[非特許文献22]によると、この加速された解放現象は、大地震や巨大地震の発生直前の地殻に蓄積されたせん断応力が作り出す臨界現象であって、加速された地震モーメントの開放現象(Accelerated
Morment Release-AMR現象)として知られている。従って、大地震と巨大地震のある程度の震源領域と発生時期を予知できる。次に、せん断応力の成分の数、即ち、力学変数の数を特定する方法について、[CI(m,2s)]を、例にとり説明する。

以下に述べる方法は、本願の発明者の考案によるもので、カオス解析(統計解析)でシステムの力学運動を記述する状態空間の次元数(最小の埋め込み次元数)を推定する「最も近接した誤り点法(誤り近接法)」と、結果的に、同じ方法となる。[図28]に、その方法の原理を図示する。先ず、変位検出ウエーブレットの幅Δtが1のDDW(t)を、時刻jから間隔n毎にr個並べる(図例ではr=4)。解析する時系列を時刻jのINTの累積値をCI(j,2s)とする。間隔nの値は、CI(j,2s)の変動が、互いに相関を失い独立となる時間間隔が最適なので、例えば、時系列の変動の自己相関が、無くなる時間間隔とする。各変位検出ウエーブレットは、互いに重なる領域が無いので、直行している。従って、INTの累積時系列[CI(m,2s)]の力学変数の数が4であれば、累積時系列の変動は、4個の変位検出ウエーブレットが張る4次元の状態空間に軌跡として描かれることになる。この空間の次元数は、任意に増加する事ができるが、最小の次元数が、時系列[CI(m,2s)]の次元数、つまり力学変数の数となり、カオス解析で使用される、「最小の埋め込み次元数」となる。

1次元である時系列[CI(m,2s)]の変動を、状態空間に描く軌跡として観測する。時系列の時間軸に並べる変位検出ウエーブレットの個数rが、状態空間を張る基底数となる。従って、状態空間の次元数は、rとなる。最適な次元数rを求めるために、r個の変位検出ウエーブレットは、次の作用をすると仮定する。それぞれの変位検出ウエーブレットが検出した変位をr個加算平均し、時刻jのその値を、<CI(j,2s),r>とする。カギ括弧<・>は平均操作記号で、その中のラベルrは、平均を取る個数で、r≧1の整数とする。数式で、その平均操作を、[数59]に記述する。又、任意選択した時刻jの時系列の値CI(j,2s)に最も近い値を時刻kのCI(k,2s)とする。この時、時刻jとkの平均値の差の絶対値、Δ<CI(j-k,2s),r>も、[数60]に記述する。

[数60]は、[数59]の時刻jとkの値の差の絶対値を算出する。

1次元的に表記されているINTの2s個の累積加算の時系列[CI(m,2s)]の変動は、先ず、1個の力学変数(r=1)に支配されているとする。従って、力学変数の数を求めるステップは、r=1の場合から、始める。
ステップ1:
任意選択した時刻jの値 (平均個数は1個なので、CI(j,2s)と同一値)と最も近接した値を、Δ〜0の条件で探す
ステップ2:
その値が、時刻kの値 = CI(k,2s)であったとする。
ステップ3:
所定のしきい値THを、例えば、TH=10とかTH=15とかに設定する。設定に関して、時系列[CI(m,2s)]の標準偏差等の統計量を考慮した値でも良い。
ステップ4:
時刻kを時刻j以外の全ての時刻kxに変え、ΔがTHより大きくなる場合の数を数える。その総数をN1とし、N1をN1/N1で規格化する。従って、r=1の場合、規格化した総数は1となる。
なお、時系列は、変動しているので、変動が激しくなると、N1の値は、増加し、時系列がランダムであれば、N1は最大となる。
ステップ5:
時刻j+nとk+nに変位検出ウエーブレットを、それぞれ追加配置し、r=2とした時刻jとkの差Δを、所定のしきい値THと比較する。ΔがTHより大であれば、時刻j+nと時刻k+nの変位成分が大きく寄与している事になる。この様にTHより大きくなる総数N2を、時刻kを時刻j以外の全ての時刻kxに変え、ペアーの差の絶対値ΔがTHより大となる回数を数え、総回数をN2と、その規格値をN2/N1とする。その値が、例えば、N2/N1〜0.5であったとする。N2は、2個の移動平均後のから得るΔがTHより大となる総数なので、その平均操作により、N1より少ない数値を取る。N2/N1〜0.5の場合、時系列[CI(m,2s)]の変動を、50%支配している事になり、力学変数の数は、2となる。
ステップ6:
時刻j+2nとk+2nに変位検出ウエーブレットを、それぞれ追加配置したr=3の場合でも([図28]のr=4をr=3とした)Δが、THよりも大となると、時刻j+2nとk+2nの変位成分が、依然、寄与している事になる。上記ステップ5と同様のプロセスで、時刻kを時刻j以外の全ての時刻kxに変えると、ΔがTHより大となる条件に適合する総数N3は減少する。規格値がN3/N1〜0.2だったとすると、3番目の独立変数の時系列[CI(m,2s)]の変動への寄与は、20%程度で、力学変数の数は3となる。
ステップ7:
時刻j+3nとk+3nに変位検出ウエーブレットを追加配置する。上記ステップ6と同様なプロセスをr=4で実施する事になる。[図28]のΔが、THより大となる条件を満足する総数を数える。総数N4は激減する。その規格化値が、N4/N1〜0.05だったとする。4番目の力学変数の時系列[CI(m,2s)]への変動への寄与は、微小だが、依然存在し、力学変数の総数は4となる。
ステップ8:
時刻j+4nとk+4nに変位検出ウエーブレットを追加配置する。上記ステップ6、7と同様なプロセスをr=5で実施する。Δが、THより大となる条件を満足する総数がN5で、規格値は、r=4の場合と変わらず、N5/N1
〜0.05だったとする。5番目の独立変数の時系列[CI(m,2s)]への変動への寄与は、r=4の場合と同程度で存在し、力学変数の総数は5となる。
ステップ9:
時刻j+5nとk+5nに変位検出ウエーブレットを追加配置する。上記ステップ8と同様なプロセスをr=6で実施する。Δが、THより大となる条件を満足する総数をN6とする。その規格化値が、N6/N1〜0.05となり、r=4、r=5
の場合と同程度だったとする。6番目の独立変数の時系列[CI(m,2s)]への変動への寄与は、r=4、r=5 の場合と同程度で、力学変数の総数は6となる。
ステップ10:
時刻j+6nとk+6nに変位検出ウエーブレットを追加配置し、上記ステップ9と同様なプロセスをr=7で実施し、ステップ9と同様な規格値N7/N1〜0.05を得たとする。ステップ7でr=4の時と、規格値は変化してなく、この様な規格値を作り出す時系列[CI(m,2s)]の変動は、ランダム変動が力学変数に重複している状況を示す。最終的に力学変数の数は、3と断定できる。また、ランダム変動の寄与が無ければ、r=4以降の、規格値はN4/N1、N5/N1、N6/N1は、全てゼロとなり時系列[CI(m,2s)]に変動を与えている力学変数の数は3となる。時系列[CI(m,2s)]には、2sを適当な大きさ以上に取ればランダム変動の寄与は無い。

上記方法から、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方の時系列[CI(m,2s)]のsが(2s=60〜70)の力学変数の数は3で、
[CI(m,2s)]は、領域の単位体積あたりに蓄積されそして開放される歪エネルギーだと断定できた。その力学変数の数を断定する方法は、他の震源パラメータの時系列にも適用できる。例えば、その中国・四国・近畿地方の震源の深さDEPの時系列[d(DEP,m)]の[数40]で与えられる2s個(60〜70個)の移動平均値<d(DEP,m),2s>や累積加算[CD(m,2s)]に、適用すると、その独立変数の数は、3となり、<d(DEP,m),2s>と[CD(m,2s)]は、歪エネルギーの密度に比例する時系列となる。従って、全く異なる震源情報から得た歪エネルギーの密度を観測する2つの窓を使用すると、大地震や巨大地震の発生直前に出現するAMR現象をより確実に検出できる。その具体例を次に述べる。

INTの累積加算時系列[CI(m,2s)]とDEPの累積加算時系列[CD(m,2s)]は、選択した領域の歪エネルギーの密度の時系列となる。累積加算時系列は、それぞれの震源パラメータd(INT,j)とd(DEP,j)の2s個の移動平均の時系列でも良い。この時、過去の時刻mxに観察した最大値を、INTの場合は、累積加算CI(mx,2s)maxと移動平均<d(INT,mx),2s>maxとし、DEPの場合は、累積加算CD(mx,2s)maxと移動平均<d(DEP,mx),2s>maxとして、それら最大値が1となるように2つの時系列を、次の様に規格化する。

従って、[数61]と[数62]は、選択した領域の過去(時刻mx)の最大値が1となるよう規格化した歪エネルギー密度の推移を表す時系列となる。最大値が100となる等の他の規格化でも良い。蓄積されたせん断応力が、大地震発生の直前から急速に開放されるAMR現象を、この規格化した歪エネルギー密度を用いて観察する。領域として、前述した、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方を選択する。又、この領域の震源分布図を[特許文献1]の図2、図3、図4に倣い[図29]、[図30]、[図31]に表示する。

[図29]の地震の震源分布は、1983年1月6日から2012年1月30日までに発生したマグニチュードが3.0以上の地震で、それらは気象庁の全国震源カタログと一元化震源カタログから集めたものである。図の横軸は、経度、縦軸は緯度を表している。水色の点で示された各地震の震央は、マグニチュード(MAG)が3.0以上3.5未満で、黒色の丸印の震央は、MAGが3.5以上の地震である。MAGが5以上で6未満の地震には、赤色の三角印、MAGが6以上の8個の地震の地震は、赤色で塗りつぶした丸印と発生年代のラベルを付けてある。同じ年代に発生した地震には、アルファベットのaとbとで区別している。1983年に発生した三朝地震は、1983bとラベルが付けられている。又、2つの群発地震は、発生年代の前に群発(Swarm)のSが付けられている。深発地震に関しては、MAGが3.0以上3.5未満の地震は黒色の円内を、MAGが5以上で6未満の地震は、黒色の三角内を、MAGが6以上の地震は黒色の大きな円内を、それぞれ青色で塗りつぶして表示してある。[図30]と[図31]は、それら震源分布の緯度方向経度方向の断面図で、震源の深さ方向の分布を、logスケールを用いkmで表示してある。プレート境界に発生する震源分布の緯度方向の断面図は、フィリッピン海プレートの北端がユーラシアプレートの南端下に沈下している状況を表している。経度方向の断面図は、フィリッピン海プレートがユーラシアプレートの下に略円弧状に位置している状況を表している。

この中国・四国・近畿地方のプレート境界の地殻に蓄積され解放される歪エネルギーの密度の推移を、深発地震を除いたM3.5以上の地震の発生の変化から、[数61]と[数62] を用いて、[図32]にグラフ表示する。その推移は、1983年1月6日(1983/1/6)から2012/1/30までの期間である。ただし、この地域の地震観測網は、1984年以降新たに増設整備されたので、M3.5以上の地震の検出数が、それ以前の検出数と比較すると高くなっている。グラフの横軸は、時間mで、地震の発生順番を示すインデックスである。最上段に記した選択地震、領域、期間を示すM>=3.5
(32.5o-38 o,136.5 o-142 o)
(1983/1/6-2012/1/30)は、Mが3.5以上、選択領域が、(32度−36度、131.5度−136.5度)、横軸のイベント時間mの0から1741が、1983/1/6から2012/1/30に相当する事を意味する。[数61]と[数62]の2sを70とし、最大値を1とする規格化に用いた2つの時系列の過去28年間の最大値CI(m,70)maxと最大値CD(m,70)maxは、
m =
555 (1994/04/06)の時、CI(m,70)max = 70 x 283.0961時間、
m =
551 (1994/01/31)の時、CD(m,70)max = 70 x 43.1942km
となる。なお、70倍した283.0961時間と43.1942kmは、d(INT,j)とd(DEP,j)の70個の移動平均値の最大値である。[図32]の左側の縦軸目盛は、[数61]をNCI(m,70)、[数式62]をNCD(m,70)とラベル付けしたグラフの目盛である。又、右側の縦軸の6以上の目盛は、時系列[d(MAG,m)]をMAGとラベル付けした矢印の高さのグラフの目盛である。従って、MAGのグラフは、マグニチュードである矢印の高さが6以上の大地震になると表示される。更に、その上にある右側の縦軸目盛にLONとラベル付けされている範囲は、震源パラメータの時系列[d(LON,m)]を点グラフにしたLONの目盛で、経度が131.5度〜136.5度に相当する。大地震の余震や群発地震は、震源が略同じなので、それら余震や群発地震の震源の経度は殆んど変化しない。従って、[d(LON,m)]の点グラフの変動は無くなる。又、[図29]-[図31]に使用されたマグニチュードが6以上の大地震の発生年代ラベルは、そのまま[図32]の時系列[d(MAG,m)]に表記されている。又、2つの群発地震S1984とS2001は、時系列[d(LON,m)]の点グラフに矢印と共にラベルが付けられている。

上記領域の地震観測網が増設を含め再整備され、地震検出能力が増加した1984年以降、大地震発生の直前に出現するAMR現象を、[数61]と[数62]を用いて規格化した歪エネルギー密度を用いて観察する。規格化した歪エネルギー密度NCI(m,70)は、1994年4月6日に、又、NCD(m,70)は、1994年1月31日にピークに到達後、共に減少し始め、更に急減少する過程(矢印のAMR-22a)で、1995年1月17日にM7.2の兵庫県南部地震(1995)が発生した。この様な、大地震発生前から始まる蓄積された歪エネルギーの急減少は、M7.2の兵庫県南部地震以降、1997年6月25日に発生したM6.6の山口県東部地震(1997)のAMR-22b、そして、2000年10月6日に発生したM7.2の鳥取県西部地震(2000)のAMR-22cに観察されている。しかし、2001年1月12日に発生した兵庫県北部の群発地震(S2001)直後の2001年3月23日に発生したM6.7の安芸灘地震(2001)の場合、AMR現象は観察されない。これは、前記CQKもしくはCQT予兆が出現しない例として前述した2000年10月6日に発生した鳥取県西部地震(2000)後の兵庫県北部の群発地震(S2001)と、その71日後に発生したM6.7の安芸灘地震(2001)の連動に起因する。又、AMR?-22dと印されたAMR現象では、大地震は、発生していないが、M5.9地震が発生し、AMR?-22eでは、M5.4以上の地震の多発と、領域に隣接した大分県で、M6.2地震(発生日=
2006/06/12、緯度=33.135度、経度=131.408、震源の深さ=146.2 km)とが発生している。このM6.2地震は、[非特許文献23]で、その予知を公開した。又AMR?-22fは、後述の予知の実施例の和歌山県のM5.5地震(2011/7/5)に関連した現象である。この様なAMR現象は、上記群発地震や大地震との連動がなければ、日本列島の他の領域でも観察されている。なお、上記AMR現象が、マグニチュードの5以上d(MAG,m)の地震にも検出されている事を、[図32]に、5以上のd(MAG,m)を追加表示した[図33]で検証した。

1997年10月以降、日本列島全体を含むより広範囲な領域の様々な地震観測網から得ていた様々な震源データが、気象庁1元化震源データとして統一された。[非特許文献23]によると、この1元化震源データを利用し、例えば、北緯16度〜52度、東経116度〜156度で囲まれた領域で発生したマグニチュードが4以上の地震を選択した[数61]でs=15〜50としたNCI(m,2s)にも、上記中国・四国・近畿地方と同様なAMR現象が観察されている。[非特許文献23]によると、過去の最大値は、CI(m,30)max
= 22.706日、CI(m,100)max=55.192日、となる。従って、[数61]で規格化された2つの歪エネルギー密度NCI(m,30)、NCI(m,100)は、異なる観測窓(異なるローパスフィルターのカットオフ周波数)を提供する。この観測によるAMR現象は、NCI(m,100)とNCI(m,30)とが共にピーク値に達し、M4以上の地震がこの広い領域内で多発しはじめると、そのピーク値から減少し始め、その減少が加速し始めると、通常は1日内、遅くとも2-3日内にM7以上の大地震が広範囲領域のどこかに発生する。2011年3月11日のM9東北巨大地震後の大きな余震や大地震発生にも同様なAMR現象が観測されている。震源パラメータINTのみ用いたこの2つの観測窓に、震源パラメータDEPから得たNCD(m,100)とNCD(m,30)とを追加できるので、AMR現象をより確実に検出すると同時に大地震もしくは巨大地震の震源の深さ情報も得る事ができる。実施例は、後述の[図82]-[図85]で取り上げる。この様に大地震発生前に、地震発生の数が急増化する加速された地震モーメントの開放現象(Accelerated
Morment Release-AMR現象)と呼ばれている自然現象は、[非特許文献24]によると、統計力学における相転位の臨界現象と仮定でき、その物理法則を利用し、大地震発生時期を予知する方法もある。しかし、そのAMR現象が、統計力学における相転位の臨界現象と物理的に同一なメカニズムを持った臨界現象であると仮定できる確証は、皆無である。

概要

地殻の定常、非定常、周期的な応力変化が、地震発生と地殻表面の状態とを変化させる。地震波とGPSを用いて観測できるその変化に、異常が出現すると、大地震や巨大地震が発生する。その異常を、予兆として検出できれば、大地震と巨大地震の発生時刻、場所、大きさの予知が可能となる。しかし、観測した時系列はランダム変化し、この変化を決定論的な物理法則で記述できないので、予兆検出が不可能となる。この状況下、大地震と巨大地震の予知に特許第4608643号の併用とその改善を目的とする。微分操作が持つ時間反転に関する物理的性質を正しく反映する新たな差分操作を確立し、地殻の応力変化を観測したランダムな時系列に適用し、物理法則を用いて大地震と巨大地震が発生する決定論的な自然法則を確立し、その法則を利用し、それら地震の予知を可能とした。

目的

本発明は、[特許文献1]の地震の予知方法、地震の予知システム、地震の予知プログラム及び記録媒体を併用することにより、大地震の予兆発生とその推移に関し、ニュートンの運動の第二法則に基づく自然法則とその物理モデルを利用した大地震の短期予知方法、装置、プログラム及び記録媒体を提供する

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請求項1

観測対象とする領域に発生した地震震源情報である緯度(LAT)、経度(LON)と深さ(DEP)、震源時(地震の発生時刻)の間隔(INT)、マグニチュード(MAG)とし、更に、発震機構解の情報から得る地震の破壊メカニズムに関する要素を、節面1(N1)と節面2(N2)の走行(R)と傾斜角(DEC)、P軸(PA)とT軸(TA)の方位(DIR)と鉛直角VER)とするか、断層運動の要素として、断層すべり角をλとし、各節面のN1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、N1-λ、N2−λ2とするか、断層面をNとし、N-R、N-DEC、N-λとし、それら震源情報の要素を表すパラメータをcとして、その選択領域の観測対象とする地震の発生の変化を、対象とする要素cの時系列データで定量化するために、抽出したj番目の地震の要素cに関する地震情報をd(c,j)として数値化する震源要素信号化手段と、対象とする大陸プレート上の領域の地殻状態の変化を連続観測するために、その領域に稠密に設置されたGPSの各ステーションと、対象領域を含む大陸プレート下に沈み込んでいる海洋プレート上に設置されたGPSの各ステーションで、ステーションの東西方向をE、南北方向をN、上下方向をhとした直交座標系(E,N,h)の座標軸成分(要素)をパラメータcとし、j番目に観測したステーションの位置座標値をd(c,j)として数値化する地殻変動成分信号化手段と、前記、震源要素信号化手段により抽出されたd(c,j)を、地震の発生を観測した順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)に基づいて、直接、もしくは、所定の選択処理または平滑化処理を施し、[C]=[D(c,1)、D(c,2)、D(c,3)、・・、D(c,m)、・・]を得る震源要素の時系列化手段と、前記、地殻変動成分信号化手段により抽出されたd(c,j)を、観測時間の順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)に基づいて、直接、もしくは所定の選択処理または平滑化処理を施し、[C]=[D(c,1)、D(c,2)、D(c,3)、・・、D(c,m)、・・]を得る地殻変動成分の時系列化手段と、前記、所定の選択または平滑処理をした場合、その処理に費やす遅れ時間をΔとする遅れ時間検出手段と前記、震源要素と地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]の時刻mのD(c,m)と、時刻mから任意間隔n(n=1,2,3、・・)だけ離れたD(c,m-n)との差に比例する量を、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)として出力するD(c,m)の1次差分出力手段か、前記、地震要素の時系列化手段か地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]を、前記、1次差分値ΔD(c,m,n)を得るバンドパスフィルター機能と略等価な機能を設定したフィルターを用いて、[C]を濾過したF1(c,m)を、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)として出力するD(c,m)の1次差分出力手段かのいずれかの1次差分出力手段と前記、1次差分出力手段から出力された、ΔD(c,m,n)と、時刻mから任意間隔k(k=1、2、・・)だけ離れたΔD(c,m-k,n)との差に比例する量を、時刻mの2次差分値、Δ2D(c,m,n,k)として求めるD(c,m)の2次差分出力手段か前記、地震要素の時系列化手段か地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]を、前記、2次差分値Δ2D(c,m,n,k)を得るバンドパスフィルター機能と略等価な機能を設定したフィルターを用いて、[C]を濾過したF2(c,m)を、時刻mの2次差分値Δ2D(c,m,n,k)として出力するD(c,m)の2次差分出力手段かのいずれかの2次差分出力手段とからなる、地震発生と地殻状態の変化を定量化する方法において、 前記、2次差分出力手段から得た、時刻mの2次差分値Δ2D(c,m,n,k)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の2次差分値Δ2D(c,t,n,k)とする、2次差分値の時刻シフト手段と、前記、1次差分出力手段から得た、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の1次差分値ΔD(c,t,n)とする、1次差分値の時刻シフト手段と、前記、震源要素と地殻変動成分の時系列化手段から得た時刻mのD(c,m)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の変位D(c,t)として出力する変位変換手段と前記、2次差分値の時刻シフト手段から得たΔ2D(c,t,n,k)を、前記変位変換手段から得たD(c,t)に作用している加速度A(c,t)に変換出力する加速度変換手段と前記、1次差分値の時刻シフト手段から得たΔD(c,t,n)を、前記、時系列の変位変換手段から得たD(c,t)に作用している速度V(c,t)に変換出力する速度変換手段と前記、変位変換手段で得たD(c,t)と、前記、速度変換手段で得た速度V(c,t)の各振幅と各位相の関係を出力する変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記、速度変換手段で得た速度V(c,t)と、前記、加速度変換手段で得た加速度A(c,t)との各振幅と各位相の関係を出力する速度と加速度の振幅位相比較検出手段と前記、変位変換手段で得たD(c,t)と、前記、加速度変換手段で得た加速度A(c,t)の各振幅と各位相の関係を出力する変位と加速度の振幅位相比較検出手段と前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となり、加速度A(MAG,t)の振幅値が、負の値を取る位相振幅関係が作用している各変位D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)の振幅関係と位相関係において、 加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(INT,t)の振幅値がピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(INT,t+Δa)が、時刻ta1から次の半周期後に既に反転した時刻ta2を、時刻ta1のA(INT,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta2か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(DEP,t)の振幅値がピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(DEP,t+Δa)が、時刻ta1から次の半周期後に既に反転した時刻ta2を、時刻ta1のA(DEP,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta2か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出した後、逆位相にあったA(DEP,t)の振幅値がピークを取った時刻をその検出時刻ta1とし、その時刻ta1から、半周期後にA(DEP,t)が反転したピークを取った時刻をta2とし、その時刻ta2から、更に、次の半周期後にA(DEP,t)が反転したピークを取ると予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(DEP,t)が、振幅値のピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、その時刻ta1のA(DEP,t)が半周期後に反転したピークを取った時刻をta2とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(DEP,t+Δa)が、時刻ta2から次の半周期後に既に反転した時刻ta3を、時刻ta2のA(DEP,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出した後、逆位相にあったA(INT,t)の振幅値がピークを取った時刻をその検出時刻ta1とし、その時刻ta1から、半周期後にA(INT,t)が反転したピークを取った時刻をta2とし、その時刻ta2から、更に、次の半周期後にA(INT,t)が反転したピークを取ると予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(INT,t)が、振幅値のピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、その時刻ta1のA(INT,t)が半周期後に反転したピークを取った時刻をta2とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(INT,t+Δa)が、時刻ta2から次の半周期後に既に反転した時刻ta3を、時刻ta2のA(INT,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta3か、を今にも発生しそう大地震の発生時刻とする大地震発生時刻の予知手段と 前記、大地震発生時刻の予知手段で得た大地震の発生予測時刻まで、前記、変位変換手段で得たD(LAT,t)、D(LON,t)、D(DEP,t)を線形延長した(LAT、LON、DEP)情報を予測震源とする、今にも発生しそうな大地震の震源の予知手段と、 変位D(MAG,t)が最大値となる時刻tmaxと最小値となる時刻tminの変位D(DEP,tmax)とD(DEP,tmin)との差の絶対値か、変位D(MAG,t)が最大値となる時刻tmaxと時刻tmaxからD(DEP,t)の振幅値が反転し始める時刻をtminとし、D(DEP,tmax)とD(DEP,tmin)との差の絶対値か変位D(MAG,t)の最大値付近から最小値付近に変化する時刻に対応して変化するD(DEP,t)の振幅値の差の絶対値か、変位D(MAG,t)の最大値付近の、D(DEP,t)の振幅値とその半周期後の振幅値との差の絶対値かを今にも発生しそうな大地震の断層幅Wとする予測断層幅Wの検出手段と予測断層幅Wの検出手段から出力されたWを用いて今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの予知手段と 大陸プレート上にある広範囲の対象領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする前記変位変換手段と前記1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(h,t)と、速度V(h,t)とから、変位D(h,t)の膨らみを検出する手段か、もしくは前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と、前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(h,t)と、速度V(h,t)と、加速度A(h,t)とから、変位D(h,t)の膨らみを検出する手段と、膨らみが検出された大陸プレート上にある対象領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする、前記、変位変換手段と1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記、変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(E,t)とD(N,t)と、それら変位に作用している速度V(E,t)とV(N,t)との関係から、大陸プレートの運動変化を検出する手段か、もしくは、膨らみが検出された大陸プレート上にある対象領域で、前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(E,t)と変位D(N,t)と、それら変位に作用している速度と加速度のV(E,t)とV(N,t)、A(E,t)とA(N,t)との関係から、大陸プレートの運動変化を検出する手段と、前記大陸プレートの運動変化を検出する手段の出力から、大陸プレートの運動変化による膨らみのプレート境界に沿った広がりの長さLを検出する手段と海洋プレート上にある領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする前記変位変換手段と1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(E,t)とD(N,t)と、それら変位に作用している速度V(E,t)とV(N,t)との関係から、海洋プレートの大陸プレートとの境界方向への速度成分が、通常の速度の約2倍以上に急加速し、その直後、急減速、急停止する異常加速運動を検出する海洋プレートの異常加速運動検出手段か、もしくは、前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(E,t)か変位D(N,t)と、それら変位に作用している速度と加速度のV(E,t)とA(E,t)かV(N,t)とA(N,t)との関係からか、海洋プレートの大陸プレートとの境界方向への速度成分が、通常の速度の約2倍以上に急加速し、その直後、急減速、急停止する異常加速運動を検出する海洋プレートの異常加速運動検出手段と大陸プレートの運動変化による膨らみと海洋プレートの異常加速運動を検出後、もしくは、膨らみか異常加速運動のいずれかを検出後、今にも発生しそうな巨大地震の発生時刻、マグニチュードを予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知方法である。

請求項2

請求項1に記載の大地震と巨大地震の予知方法において、前記、地震要素信号化手段と時系列化手段により抽出した地震発生時刻時間間隔(INT)の信号d(INT,j)を地震の任意な発生順序mまで、地震の任意な発生個数をa(a=1、2、・・)とし、a個ずつ、移動平均するか、a個ずつ、累積加算CI(m,a)とする時間間隔累積検出手段か、もしくは、m番目の地震とm−a番目の地震の発生時刻の差をCI(m,a)とする時間間隔累積検出手段と、前記、CI(m,a)値がNCI(m,a)となるように規格化するNCI(m,a)の規格化手段と前記、NCI(m,a)から大地震や巨大地震発生前の自然現象の一つである地震発生の変化が加速されるAMR現象(臨界状態)を検出し大地震や巨大地震発生時期を予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知方法において対象とする領域の広さを、順次変える、観測領域縮小と拡大手段と前記、地震要素信号化手段と時系列化手段により抽出した地震の震源の深さ(DEP)の信号d(DEP,j)を地震の任意な発生順序mまで、a個ずつ移動平均するか、a個ずつ、累積加算しCD(m,a)とする震源の深さDEPの累積検出手段と前記、累積値CD(m,a)がNCD(m,a)となるように規格化するNCD(m,a)の規格化手段と観測領域の縮小と拡大手段から出力された各領域のCI(m,a)とCD(m,a)のそれぞれ規格化したNCI(m,a)とNCD(m,a)とを、領域に蓄積開放される規格化された歪エネルギー密度とする歪エネルギー変換手段と領域の歪エネルギー変換手段から出力した地殻の蓄積歪エネルギー密度が巨大地震、大地震発生直前の臨界状態に到達したかを検出する地殻の臨界状態検出手段と、前記、地殻の臨界状態検出手段で臨界状態を検出後大地震や巨大地震発生時期を予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知方法である。

請求項3

観測対象とする領域に発生した地震の震源情報である緯度(LAT)、経度(LON)と深さ(DEP)、震源時(地震の発生時刻)の間隔(INT)、マグニチュード(MAG)とし、更に、発震機構解の情報から得る地震の破壊メカニズムに関する要素を、節面1(N1)と節面2(N2)の走行(R)と傾斜角(DEC)、P軸(PA)とT軸(TA)の方位(DIR)と鉛直角(VER)とするか、断層運動の要素として、断層のすべり角をλとし、各節面のN1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、N1-λ、N2−λ2とするか、断層面をNとし、N-R、N-DEC、N-λとし、それら震源情報の要素を表すパラメータをcとして、その選択領域の観測対象とする地震の発生の変化を、対象とする要素cの時系列データで定量化するために、抽出したj番目の地震の要素cに関する地震情報をd(c,j)として数値化する震源要素信号化手段と、対象とする大陸プレート上の領域の地殻状態の変化を連続観測するために、その領域に稠密に設置されたGPSの各ステーションと、対象領域を含む大陸プレート下に沈み込んでいる海洋プレート上に設置されたGPSの各ステーションで、ステーションの東西方向をE、南北方向をN、上下方向をhとした直交座標系(E,N,h)の座標軸成分(要素)をパラメータcとし、j番目に観測したステーションの位置座標値をd(c,j)として数値化する地殻変動成分信号化手段と、前記、震源要素信号化手段により抽出されたd(c,j)を、地震の発生を観測した順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)に基づいて、直接、もしくは、所定の選択処理または平滑化処理を施し、[C]=[D(c,1)、D(c,2)、D(c,3)、・・、D(c,m)、・・]を得る震源要素の時系列化手段と、前記、地殻変動成分信号化手段により抽出されたd(c,j)を、観測時間の順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)に基づいて、直接、もしくは所定の選択処理または平滑化処理を施し、[C]=[D(c,1)、D(c,2)、D(c,3)、・・、D(c,m)、・・]を得る地殻変動成分の時系列化手段と、前記、所定の選択または平滑処理をした場合、その処理に費やす遅れ時間をΔとする遅れ時間検出手段と前記、震源要素と地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]の時刻mのD(c,m)と、時刻mから任意間隔n(n=1,2,3、・・)だけ離れたD(c,m-n)との差に比例する量を、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)として出力するD(c,m)の1次差分出力手段か、前記、地震要素の時系列化手段か地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]を、前記、1次差分値ΔD(c,m,n)を得るバンドパスフィルター機能と略等価な機能を設定したフィルターを用いて、[C]を濾過したF1(c,m)を、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)として出力するD(c,m)の1次差分出力手段かのいずれかの1次差分出力手段と前記、1次差分出力手段から出力された、ΔD(c,m,n)と、時刻mから任意間隔k(k=1、2、・・)だけ離れたΔD(c,m-k,n)との差に比例する量を、時刻mの2次差分値、Δ2D(c,m,n,k)として求めるD(c,m)の2次差分出力手段か前記、地震要素の時系列化手段か地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]を、前記、2次差分値Δ2D(c,m,n,k)を得るバンドパスフィルター機能と略等価な機能を設定したフィルターを用いて、[C]を濾過したF2(c,m)を、時刻mの2次差分値Δ2D(c,m,n,k)として出力するD(c,m)の2次差分出力手段かのいずれかの2次差分出力手段とからなる、地震発生と地殻状態の変化を定量化する装置において、 前記、2次差分出力手段から得た、時刻mの2次差分値Δ2D(c,m,n,k)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の2次差分値Δ2D(c,t,n,k)とする、2次差分値の時刻シフト手段と、前記、1次差分出力手段から得た、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の1次差分値ΔD(c,t,n)とする、1次差分値の時刻シフト手段と、前記、震源要素と地殻変動成分の時系列化手段から得た時刻mのD(c,m)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の変位D(c,t)として出力する変位変換手段と前記、2次差分値の時刻シフト手段から得たΔ2D(c,t,n,k)を、前記変位変換手段から得たD(c,t)に作用している加速度A(c,t)に変換出力する加速度変換手段と前記、1次差分値の時刻シフト手段から得たΔD(c,t,n)を、前記、時系列の変位変換手段から得たD(c,t)に作用している速度V(c,t)に変換出力する速度変換手段と前記、変位変換手段で得たD(c,t)と、前記、速度変換手段で得た速度V(c,t)の各振幅と各位相の関係を出力する変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記、速度変換手段で得た速度V(c,t)と、前記、加速度変換手段で得た加速度A(c,t)との各振幅と各位相の関係を出力する速度と加速度の振幅位相比較検出手段と前記、変位変換手段で得たD(c,t)と、前記、加速度変換手段で得た加速度A(c,t)の各振幅と各位相の関係を出力する変位と加速度の振幅位相比較検出手段と前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となり、加速度A(MAG,t)の振幅値が、負の値を取る位相振幅関係が作用している各変位D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)の振幅関係と位相関係において、 加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(INT,t)の振幅値がピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(INT,t+Δa)が、時刻ta1から次の半周期後に既に反転した時刻ta2を、時刻ta1のA(INT,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta2か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(DEP,t)の振幅値がピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(DEP,t+Δa)が、時刻ta1から次の半周期後に既に反転した時刻ta2を、時刻ta1のA(DEP,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta2か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出した後、逆位相にあったA(DEP,t)の振幅値がピークを取った時刻をその検出時刻ta1とし、その時刻ta1から、半周期後にA(DEP,t)が反転したピークを取った時刻をta2とし、その時刻ta2から、更に、次の半周期後にA(DEP,t)が反転したピークを取ると予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(DEP,t)が、振幅値のピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、その時刻ta1のA(DEP,t)が半周期後に反転したピークを取った時刻をta2とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(DEP,t+Δa)が、時刻ta2から次の半周期後に既に反転した時刻ta3を、時刻ta2のA(DEP,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出した後、逆位相にあったA(INT,t)の振幅値がピークを取った時刻をその検出時刻ta1とし、その時刻ta1から、半周期後にA(INT,t)が反転したピークを取った時刻をta2とし、その時刻ta2から、更に、次の半周期後にA(INT,t)が反転したピークを取ると予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(INT,t)が、振幅値のピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、その時刻ta1のA(INT,t)が半周期後に反転したピークを取った時刻をta2とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(INT,t+Δa)が、時刻ta2から次の半周期後に既に反転した時刻ta3を、時刻ta2のA(INT,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta3か、を今にも発生しそうな大地震の発生時刻とする大地震発生時刻の予知手段と 前記、大地震発生時刻の予知手段で得た大地震の発生予測時刻まで、前記、変位変換手段で得たD(LAT,t)、D(LON,t)、D(DEP,t)を線形延長した(LAT、LON、DEP)情報を予測震源とする、今にも発生しそうな大地震の震源の予知手段と、変位D(MAG,t)が最大値となる時刻tmaxと最小値となる時刻tminの変位D(DEP,tmax)とD(DEP,tmin)との差の絶対値か、変位D(MAG,t)が最大値となる時刻tmaxと時刻tmaxからD(DEP,t)の振幅値が反転し始める時刻をtminとし、D(DEP,tmax)とD(DEP,tmin)との差の絶対値か変位D(MAG,t)の最大値付近から最小値付近に変化する時刻に対応して変化するD(DEP,t)の振幅値の差の絶対値か、変位D(MAG,t)の最大値付近の、D(DEP,t)の振幅値とその半周期後の振幅値との差の絶対値かを今にも発生しそうな大地震の断層幅Wとする予測断層幅Wの検出手段と予測断層幅Wの検出手段から出力されたWを用いて今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの予知手段と 大陸プレート上にある広範囲の対象領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする前記変位変換手段と前記1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(h,t)と、速度V(h,t)とから、変位D(h,t)の膨らみを検出する手段か、もしくは前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と、前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(h,t)と、速度V(h,t)と、加速度A(h,t)とから、変位D(h,t)の膨らみを検出する手段と、膨らみが検出された大陸プレート上にある対象領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする、前記、変位変換手段と1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記、変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(E,t)とD(N,t)と、それら変位に作用している速度V(E,t)とV(N,t)との関係から、大陸プレートの運動変化を検出する手段か、もしくは、膨らみが検出された大陸プレート上にある対象領域で、前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(E,t)と変位D(N,t)と、それら変位に作用している速度と加速度のV(E,t)とV(N,t)、A(E,t)とA(N,t)との関係から、大陸プレートの運動変化を検出する手段と、前記大陸プレートの運動変化を検出する手段の出力から、大陸プレートの運動変化による膨らみのプレート境界に沿った広がりの長さLを検出する手段と海洋プレート上にある領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする前記変位変換手段と1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(E,t)とD(N,t)と、それら変位に作用している速度V(E,t)とV(N,t)との関係から、海洋プレートの大陸プレートとの境界方向への速度成分が、通常の速度の約2倍以上に急加速し、その直後、急減速、急停止する異常加速運動を検出する海洋プレートの異常加速運動検出手段か、もしくは、前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(E,t)か変位D(N,t)と、それら変位に作用している速度と加速度のV(E,t)とA(E,t)かV(N,t)とA(N,t)との関係からか、海洋プレートの大陸プレートとの境界方向への速度成分が、通常の速度の約2倍以上に急加速し、その直後、急減速、急停止する異常加速運動を検出する海洋プレートの異常加速運動検出手段と大陸プレートの運動変化による膨らみと海洋プレートの異常加速運動を検出後、もしくは、膨らみか異常加速運動のいずれかを検出後、今にも発生しそうな巨大地震の発生時刻、マグニチュードを予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知装置である。

請求項4

請求項3に記載の大地震と巨大地震の予知装置において、前記、地震要素信号化手段と時系列化手段により抽出した地震発生時刻の時間間隔(INT)の信号d(INT,j)を地震の任意な発生順序mまで、地震の任意な発生個数をa(a=1、2、・・)とし、a個ずつ、移動平均するか、a個ずつ、累積加算しCI(m,a)とする時間間隔累積検出手段か、もしくは、m番目の地震とm−a番目の地震の発生時刻の差をCI(m,a)とする時間間隔累積検出手段と、前記、CI(m,a)値がNCI(m,a)となるように規格化するNCI(m,a)の規格化手段と前記、NCI(m,a)から大地震や巨大地震発生前の自然現象の一つである地震発生の変化が加速されるAMR現象(臨界状態)を検出し大地震や巨大地震発生時期を予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知装置において対象とする領域の広さを、順次変える、観測領域の縮小と拡大手段と前記、地震要素信号化手段と時系列化手段により抽出した地震の震源の深さ(DEP)の信号d(DEP,j)を地震の任意な発生順序mまで、a個ずつ移動平均するか、a個ずつ、累積加算しCD(m,a)とする震源の深さDEPの累積検出手段と前記、累積値CD(m,a)がNCD(m,a)となるように規格化するNCD(m,a)の規格化手段と観測領域の縮小と拡大手段から出力された各領域のCI(m,a)とCD(m,a)のそれぞれ規格化したNCI(m,a)とNCD(m,a)とを、領域に蓄積と開放される規格化された歪エネルギー密度とする歪エネルギー変換手段と領域の歪エネルギー変換手段から出力した地殻の蓄積歪エネルギー密度が巨大地震、大地震発生直前の臨界状態に到達したかを検出する地殻の臨界状態検出手段と、前記、地殻の臨界状態検出手段で臨界状態を検出後大地震や巨大地震発生時期を予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知装置である。

請求項5

請求項5の発明は、観測対象とする領域に発生した地震の震源情報である緯度(LAT)、経度(LON)と深さ(DEP)、震源時(地震の発生時刻)の間隔(INT)、マグニチュード(MAG)とし、更に、発震機構解の情報から得る地震の破壊メカニズムに関する要素を、節面1(N1)と節面2(N2)の走行(R)と傾斜角(DEC)、P軸(PA)とT軸(TA)の方位(DIR)と鉛直角(VER)とするか、断層運動の要素として、断層のすべり角をλとし、各節面のN1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、N1-λ、N2−λ2とするか、断層面をNとし、N-R、N-DEC、N-λとし、それら震源情報の要素を表すパラメータをcとして、その選択領域の観測対象とする地震の発生の変化を、対象とする要素cの時系列データで定量化するために、抽出したj番目の地震の要素cに関する地震情報をd(c,j)として数値化する震源要素信号化手段と、対象とする大陸プレート上の領域の地殻状態の変化を連続観測するために、その領域に稠密に設置されたGPSの各ステーションと、対象領域を含む大陸プレート下に沈み込んでいる海洋プレート上に設置されたGPSの各ステーションで、ステーションの東西方向をE、南北方向をN、上下方向をhとした直交座標系(E,N,h)の座標軸成分(要素)をパラメータcとし、j番目に観測したステーションの位置座標値をd(c,j)として数値化する地殻変動成分信号化手段と、前記、震源要素信号化手段により抽出されたd(c,j)を、地震の発生を観測した順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)に基づいて、直接、もしくは、所定の選択処理または平滑化処理を施し、[C]=[D(c,1)、D(c,2)、D(c,3)、・・、D(c,m)、・・]を得る震源要素の時系列化手段と、前記、地殻変動成分信号化手段により抽出されたd(c,j)を、観測時間の順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)に基づいて、直接、もしくは所定の選択処理または平滑化処理を施し、[C]=[D(c,1)、D(c,2)、D(c,3)、・・、D(c,m)、・・]を得る地殻変動成分の時系列化手段と、前記、所定の選択または平滑処理をした場合、その処理に費やす遅れ時間をΔとする遅れ時間検出手段と前記、震源要素と地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]の時刻mのD(c,m)と、時刻mから任意間隔n(n=1,2,3、・・)だけ離れたD(c,m-n)との差に比例する量を、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)として出力するD(c,m)の1次差分出力手段か、前記、地震要素の時系列化手段か地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]を、前記、1次差分値ΔD(c,m,n)を得るバンドパスフィルター機能と略等価な機能を設定したフィルターを用いて、[C]を濾過したF1(c,m)を、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)として出力するD(c,m)の1次差分出力手段かのいずれかの1次差分出力手段と前記、1次差分出力手段から出力された、ΔD(c,m,n)と、時刻mから任意間隔k(k=1、2、・・)だけ離れたΔD(c,m-k,n)との差に比例する量を、時刻mの2次差分値、Δ2D(c,m,n,k)として求めるD(c,m)の2次差分出力手段か前記、地震要素の時系列化手段か地殻変動成分の時系列化手段により得られた時系列[C]を、前記、2次差分値Δ2D(c,m,n,k)を得るバンドパスフィルター機能と略等価な機能を設定したフィルターを用いて、[C]を濾過したF2(c,m)を、時刻mの2次差分値Δ2D(c,m,n,k)として出力するD(c,m)の2次差分出力手段かのいずれかの2次差分出力手段とからなる、地震発生と地殻状態の変化を定量化するプログラムにおいて、 前記、2次差分出力手段から得た、時刻mの2次差分値Δ2D(c,m,n,k)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の2次差分値Δ2D(c,t,n,k)とする、2次差分値の時刻シフト手段と、前記、1次差分出力手段から得た、時刻mの1次差分値ΔD(c,m,n)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の1次差分値ΔD(c,t,n)とする、1次差分値の時刻シフト手段と、前記、震源要素と地殻変動成分の時系列化手段から得た時刻mのD(c,m)を、時刻t= m-Δ-(n+k)/2の変位D(c,t)として出力する変位変換手段と前記、2次差分値の時刻シフト手段から得たΔ2D(c,t,n,k)を、前記変位変換手段から得たD(c,t)に作用している加速度A(c,t)に変換出力する加速度変換手段と前記、1次差分値の時刻シフト手段から得たΔD(c,t,n)を、前記、時系列の変位変換手段から得たD(c,t)に作用している速度V(c,t)に変換出力する速度変換手段と前記、変位変換手段で得たD(c,t)と、前記、速度変換手段で得た速度V(c,t)の各振幅と各位相の関係を出力する変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記、速度変換手段で得た速度V(c,t)と、前記、加速度変換手段で得た加速度A(c,t)との各振幅と各位相の関係を出力する速度と加速度の振幅位相比較検出手段と前記、変位変換手段で得たD(c,t)と、前記、加速度変換手段で得た加速度A(c,t)の各振幅と各位相の関係を出力する変位と加速度の振幅位相比較検出手段と前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となり、加速度A(MAG,t)の振幅値が、負の値を取る位相振幅関係が作用している各変位D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)の振幅関係と位相関係において、 加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(INT,t)の振幅値がピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(INT,t+Δa)が、時刻ta1から次の半周期後に既に反転した時刻ta2を、時刻ta1のA(INT,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta2か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(DEP,t)の振幅値がピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(DEP,t+Δa)が、時刻ta1から次の半周期後に既に反転した時刻ta2を、時刻ta1のA(DEP,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta2か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出した後、逆位相にあったA(DEP,t)の振幅値がピークを取った時刻をその検出時刻ta1とし、その時刻ta1から、半周期後にA(DEP,t)が反転したピークを取った時刻をta2とし、その時刻ta2から、更に、次の半周期後にA(DEP,t)が反転したピークを取ると予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(DEP,t)が、振幅値のピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、その時刻ta1のA(DEP,t)が半周期後に反転したピークを取った時刻をta2とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(DEP,t+Δa)が、時刻ta2から次の半周期後に既に反転した時刻ta3を、時刻ta2のA(DEP,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出した後、逆位相にあったA(INT,t)の振幅値がピークを取った時刻をその検出時刻ta1とし、その時刻ta1から、半周期後にA(INT,t)が反転したピークを取った時刻をta2とし、その時刻ta2から、更に、次の半周期後にA(INT,t)が反転したピークを取ると予測する時刻ta3か、加速度A(DEP,t)と、加速度A(INT,t)とが逆位相となる特別な位相振幅関係を検出直後、逆位相にあったA(INT,t)が、振幅値のピークを取った時刻をその特別な関係を検出した時刻ta1とし、その時刻ta1のA(INT,t)が半周期後に反転したピークを取った時刻をta2とし、前記2次差分検出手段と加速度変換手段で差分を取った間隔時間Δa、Δa=(n+k)/2、だけ進んだ変位D(INT,t+Δa)が、時刻ta2から次の半周期後に既に反転した時刻ta3を、時刻ta2のA(INT,t)が、次の半周期後に反転する時刻と予測する時刻ta3か、を今にも発生しそうな大地震の発生時刻とする大地震発生時刻の予知手段と 前記、大地震発生時刻の予知手段で得た大地震の発生予測時刻まで、前記、変位変換手段で得たD(LAT,t)、D(LON,t)、D(DEP,t)を線形延長した(LAT、LON、DEP)情報を予測震源とする、今にも発生しそうな大地震の震源の予知手段と、変位D(MAG,t)が最大値となる時刻tmaxと最小値となる時刻tminの変位D(DEP,tmax)とD(DEP,tmin)との差の絶対値か、変位D(MAG,t)が最大値となる時刻tmaxと時刻tmaxからD(DEP,t)の振幅値が反転し始める時刻をtminとし、D(DEP,tmax)とD(DEP,tmin)との差の絶対値か変位D(MAG,t)の最大値付近から最小値付近に変化する時刻に対応して変化するD(DEP,t)の振幅値の差の絶対値か、変位D(MAG,t)の最大値付近の、D(DEP,t)の振幅値とその半周期後の振幅値との差の絶対値かを今にも発生しそうな大地震の断層幅Wとする予測断層幅Wの検出手段と予測断層幅Wの検出手段から出力されたWを用いて今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの予知手段と 大陸プレート上にある広範囲の対象領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする前記変位変換手段と前記1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(h,t)と、速度V(h,t)とから、変位D(h,t)の膨らみを検出する手段か、もしくは前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と、前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(h,t)と、速度V(h,t)と、加速度A(h,t)とから、変位D(h,t)の膨らみを検出する手段と、膨らみが検出された大陸プレート上にある対象領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記、変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする、前記、変位変換手段と1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記、変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(E,t)とD(N,t)と、それら変位に作用している速度V(E,t)とV(N,t)との関係から、大陸プレートの運動変化を検出する手段か、もしくは、膨らみが検出された大陸プレート上にある対象領域で、前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(E,t)と変位D(N,t)と、それら変位に作用している速度と加速度のV(E,t)とV(N,t)、A(E,t)とA(N,t)との関係から、大陸プレートの運動変化を検出する手段と、前記大陸プレートの運動変化を検出する手段の出力から、大陸プレートの運動変化による膨らみのプレート境界に沿った広がりの長さLを検出する手段と海洋プレート上にある領域で、時系列の要素パラメータcを(E,N,h)とし、前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段を必要としない場合、D(c,m)からD(c,t)とする前記変位変換手段と1次差分値の時刻シフト手段に於いて、2次差分を取る間隔kをゼロとした前記変位と速度の振幅位相比較検出手段とで得た変位D(E,t)とD(N,t)と、それら変位に作用している速度V(E,t)とV(N,t)との関係から、海洋プレートの大陸プレートとの境界方向への速度成分が、通常の速度の約2倍以上に急加速し、その直後、急減速、急停止する異常加速運動を検出する海洋プレートの異常加速運動検出手段か、もしくは、前記変位と速度の振幅位相比較検出手段と前記変位と加速度の振幅位相比較検出手段で得た変位D(E,t)か変位D(N,t)と、それら変位に作用している速度と加速度のV(E,t)とA(E,t)かV(N,t)とA(N,t)との関係からか、海洋プレートの大陸プレートとの境界方向への速度成分が、通常の速度の約2倍以上に急加速し、その直後、急減速、急停止する異常加速運動を検出する海洋プレートの異常加速運動検出手段と大陸プレートの運動変化による膨らみと海洋プレートの異常加速運動を検出後、もしくは、膨らみか異常加速運動のいずれかを検出後、今にも発生しそうな巨大地震の発生時刻、マグニチュードを予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知プログラムである。

請求項6

請求項5に記載の大地震と巨大地震の予知プログラムにおいて、前記、地震要素信号化手段と時系列化手段により抽出した地震発生時刻の時間間隔(INT)の信号d(INT,j)を地震の任意な発生順序mまで、地震の任意な発生個数をa(a=1、2、・・)とし、a個ずつ、移動平均するか、a個ずつ、累積加算しCI(m,a)とする時間間隔累積検出手段か、もしくは、m番目の地震とm−a番目の地震の発生時刻の差をCI(m,a)とする時間間隔累積検出手段と、前記、CI(m,a)値がNCI(m,a)となるように規格化するNCI(m,a)の規格化手段と前記、NCI(m,a)から大地震や巨大地震発生前の自然現象の一つである地震発生の変化が加速されるAMR現象(臨界状態)を検出し大地震や巨大地震発生時期を予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知プログラムにおいて対象とする領域の広さを、順次変える、観測領域の縮小と拡大手段と前記、地震要素信号化手段と時系列化手段により抽出した地震の震源の深さ(DEP)の信号d(DEP,j)を地震の任意な発生順序mまで、a個ずつ移動平均するか、a個ずつ、累積加算しCD(m,a)とする震源の深さDEPの累積検出手段と前記、累積値CD(m,a)がNCD(m,a)となるように規格化するNCD(m,a)の規格化手段と観測領域の縮小と拡大手段から出力された各領域のCI(m,a)とCD(m,a)のそれぞれ規格化したNCI(m,a)とNCD(m,a)とを、領域に蓄積と開放される規格化された歪エネルギー密度とする歪エネルギー変換手段と領域の歪エネルギー変換手段から出力した地殻の蓄積歪エネルギー密度が巨大地震、大地震発生直前の臨界状態に到達したかを検出する地殻の臨界状態検出手段と、前記、地殻の臨界状態検出手段で臨界状態を検出後大地震や巨大地震発生時期を予知する手段とを備えてなる大地震と巨大地震の予知プログラムである。

請求項7

請求項7の発明は、請求項5ないし請求項6のいずれかに記載の大地震と巨大地震の予知プログラムを記録した記録媒体である。

技術分野

0001

本発明は、[特許文献1]の地震予知方法、地震の予知システム、地震の予知プログラム及び記録媒体を併用することにより、大地震の予兆発生とその推移に関し、ニュートン運動の第二法則に基づく自然法則とその物理モデルを利用した大地震の短期予知方法、装置、プログラム及び記録媒体を提供するものである。更に、[特許文献1]の地震の予知方法、地震の予知システム、地震の予知プログラム及び記録媒体の併用が困難となるマグニチュードが約8.5以上の巨大地震の予知に関しては、巨大地震発生決定論的な自然法則を利用することにより、巨大地震の短期予知方法、装置、プログラム及び記録媒体を提供するものである。又、地殻蓄積された歪エネルギーが大地震や巨大地震の発生前に急激に解放され始める地殻の応力臨界状態の検出技術を確立し、大地震と巨大地震のある程度の震源領域と発生時期の予知の方法、システム、プログラム、及び記録媒体を提供するものである。

背景技術

0002

地殻の定常非定常周期的な応力変化が、地震発生と地殻表面の状態とを、複雑に変化させる。地震波とGPSを用いて様々な地震の発生と地殻表面の状態を連続観測すると、地震発生と地殻表面の状態の多種多様な変化は、観測値の時系列定量化できる。その時系列に通常とは異なる変化が出現すると、「地殻の応力状態は、既に、通常とは異なる異質な状態(臨界状態)に到達し、大地震や巨大地震が、その領域で、何時、発生しても不思議でない状態にある。」と推論される。しかし、観測した時系列は、常に、ランダム変化する。地震発生の場合のランダム変化は、地震発生過程の自然現象から生じ、そのランダムな変化量は、観測に伴うノイズ誤差によるランダムな変化量よりはるかに大きい。一方、GPS観測の場合のランダム変化は、ランダム変化をしない地殻表面の状態変化とは無縁な、観測環境に必然的に付随するランダムノイズである。そのランダムな変化量は、地震等が発生しない通常な地殻の日々の上下変化の場合、その地殻の変化量よりはるかに大きい。いずれの場合でも、これら観測した時系列に出現する通常のランダム変化は、ニュートンの運動の第二法則等を用いた決定論的な物理法則記述できないので、ランダム変化に埋もれた異質な変化の抽出と推移に関する決定論的な自然法則の確立は、不可能とされている。従って、大地震や巨大地震の発生に至る過程の決定論的な物理法則、自然法則、及び、地殻に蓄積される歪エネルギーの状態を地震発生の変化からモニターし、地殻の臨界状態を抽出する理論や技術は、未だ確立されていなし、大地震や巨大地震の震源、発生時期、マグニチュードからなる地震の3要素の予知に利用できる決定論的な物理法則も自然法則も技術も存在しない。例えば、[非特許文献1]に、記載されている地震の物理は、地震波の観測で得た地震発生中の複雑な物理現象を、できる限り簡素化した推論に適合する物理モデルで記述したものである。従って、その物理法則は、巨大地震を発生させるプレート境界付近の通常とは異なる予兆的な地殻状態の変化の有無を、言及できないし、東巨大地震の発生も、後述する様に説明できない。しかし、[非特許文献1]は、観測事実に基づき、「周期的に発生している大地震や巨大地震の発生時期の予知でさえ極めて困難である。」と結論付けている。

0003

[非特許文献1]のGPSでプレート運動を観測した結果によると、プレート境界付近の地殻のせん断歪の蓄積率は、年間、3x10−7程である。この蓄積率は、日本のプレート境界付近の観測値とも調和している。例えば、国土地理院のGPS観測網は、全国に約20km間隔で設置されている電子基準点(GPSステーション)で構成されている。その1つの室戸のGPSステーションは、大陸プレートの東端上に位置し、その下に、フィリッピン海プレート東から北西方向に沈み込んでいる。しかし、2つのプレート間には固着領域が在り、フィリッピン海プレート運動が、その大陸プレートの東端を、北西方向に、略、年間3cm程の率で、引きずり込みながら変形させている。この領域の地殻を、厚さ100kmの弾性体とみなせば、1年間に発生する歪は、3cm
/ 100km = 3x10−7となり、この歪量が、毎年、変形している地殻に蓄積される。この歪を発生させる「せん断応力」は、地殻の「剛性率」とその「歪」の積で与えられる。従って、「せん断応力の蓄積率」は、「剛性率」と「せん断歪の蓄積率」との積として推定できる。[非特許文献1]に倣い、地殻の「剛性率」を、3x104MPaとすれば、その率は、9x10−3MPaとなり、年間、略、0.01MPaとなる。更に、[非特許文献1]に倣い、「せん断」を特別に区別したり強調したりする必要がない限り省略し、「せん断応力」を単に「応力」もしくは「ストレス」と呼び、「せん断歪」を単に、「歪」と呼ぶ事にする。また、「MPa」は、圧力の単位の「メガパスカル」で、1MPa
= 106x Paで、1Pa=1N/m2である。「N」は力の単位「ニュートン」である。

0004

[非特許文献1]によると、地震発生前後の応力変化は次の様になる。応力が、年間、「0.01MPaの率で、プレート境界付近の地殻に蓄積されている。」とし、「地殻には、結合強度が最も弱い箇所とされる断層が存在している。」とする。蓄積量が、断層面静止摩擦応力を超えると、断層面は、その平面上をスリップし始める。この時、蓄積された応力が、開放されて断層面の応力まで降下すると、スリップ運動は停止する。この断層面のスリップ運動が、地震である。断層面付近に蓄積された大地震発生前後の応力は、それぞれ、初期と最終の静止摩擦応力に対応するが、これら応力の大きさは、直接測定できない。しかし、初期と最終応力の差は、地殻に蓄積されていた静的な応力の降下量で、「剛性率」と地震に伴う「歪の変化量」の積となる。大地震発生後に観察される「歪の変化量」が、3x10−5〜3x10−4程なので、その降下量は、1〜10MPaとなる。又、[非特許文献2]によると、2011年3月11日に発生した東北の巨大地震の場合は、場所によっても異なるが、5〜10MPaと推定されている。この降下量が、断層面のスリップ運動を起こすのに必要なせん断応力となるが、実験室岩石破壊に必要な応力である500〜600MPaと比較すると、遥かに小さい。

0005

前記プレート境界付近の地殻の応力蓄積率は、年間、0.01MPa、そして、大地震や巨大地震を起こすのに必要な蓄積応力は、1〜10MPaであった。これらの値を、他の単位で表現する。例えば、血圧値測定に使用する水銀柱の高さの単位(mmHg)に変換してみると、年間の応力蓄積率(0.01MPa)は、75となり、健康人の平均的な拡張期血圧値最低血圧値)に相当する。大地震や巨大地震を起こすのに必要な蓄積応力(1〜10MPa)は、100〜1000人分の拡張血圧値の総和で、7500〜75000(mmHg)となる。従って、100〜1000人の最低血圧値を加算(蓄積)した圧力(せん断応力)が、断層を動かし、大地震や巨大地震を引き起こすことになる。また、1〜10MPaは、10〜100気圧の圧力に相当するので、水深、100m〜1000mの海中の水圧から大気圧を引いた圧力に相当するせん断応力が、断層を動かし、大地震や巨大地震を引き起こしている。

0006

しかし、1〜10MPaと言う断層面のスリップ運動を起こすのに必要な応力を蓄積するには、前述の一人の拡張血圧値75(0.01MPa)を用いると、100〜1000人を必要とする。時間に換算すれば、毎年、0.01MPaの率で、1MPa蓄積するには100年、10MPa蓄積するには、1000年となる。[非特許文献1]によると、プレート境界から遠く離れた内陸部では、年間の歪蓄積率は、3x10−8程と、プレート境界の歪蓄積率より1桁小さくなる。この値も、先の国土地理院のGPS観測地点の土佐から少し離れた内陸部(近畿地方)の歪蓄積率とも調和する。例えば、大津と亀岡の観測地点間の距離(基線)の縮みが10年間で3cm程となるので、年間の歪蓄積率は、3x10−8程となる。従って、内陸部の1〜10MPaの蓄積には、1桁多い1000〜10000年を必要とする。長期にわたる応力の蓄積率は、時間的に変化しないと仮定したが、変動し、地殻内の応力分布も均一では無い。従って、[非特許文献1]は、「長期間の応力蓄積とその開放(大地震や巨大地震の発生)の繰り返しの周期には、大きな変動が伴うので、略、周期的に発生している大地震や巨大地震の正確な発生時刻の予知でさえ、極めて困難である。」と結論付けている。次に、その困難な実例を取り上げる。

0007

[非特許文献3]によると、北米プレートと太平洋プレートとの境界付近の十勝沖では、周期的に、M8クラスの大地震が発生していた。1843年に、M8.4地震、1952年に、M8.2地震が、発生したので、「大地震発生の周期は、100年」と推定できる。従って、「1952年の次の発生時期は2050年」と予測できるが、2003年9月26日に、M8の十勝沖地震が発生した。予測した100年の周期は、50年程に短縮された。従って、この様に大きく変動する大地震発生の繰り返し周期を用いた、発生時期の予知は、日常生活における緊急避難に利用できない。しかし、この変動は、ランダムではなく、決定論的に発生している。

0008

例えば、国土地理院のGPS観測網で十勝沖地震に関する地殻状態の変化(地殻変動)の観測データ解析した[非特許文献4]によると、地震発生前の広尾の地殻は、北西方向に、年間、1.6cmの率で移動していた。従って、地殻が、一定の地殻変動率(1.6cm/年)で、1952年から2003年まで、51年間、移動したとすると、総移動量は、81.6cm(51年x1.6cm/年)となる。地殻を弾性体だとみなすと、この総移動量に相当する総歪量が十勝沖の断層付近に蓄積されていたことになる。「地震発生時、断層運動が、総歪量を一挙に開放させた。」とすると、「その運動は、広尾の地殻を81.6cm程、一挙に移動させた。」はずである。広尾の地殻は、地震発生直後、南東方向へ91cm移動した。それは、総移動量の81.6cmに、略、等しい。また、前もって「広尾の総移動量の限界は、90cm程である。」と仮定できたとすれば、その限界に到達するには、56年[90cm/(1.6cm/年)=56年]を必要とする。従って、「大地震発生は56年後の2008年」と予測できる。しかし、日常生活に有益な大地震発生時期の予知は、「56年〜100年後に発生」ではなく、少なくとも「何年何月何日に発生」である。数週間から1年程前に、この大地震の発生時刻の予知を可能にしたのが、[特許文献1]の発明である。この発明は、繰り返し発生している大地震のみならず、地震発生地帯の何処かに今にも発生しそうな大地震の発生時期、震源、マグニチュードの程度の予知を可能としている。従って、大地震の震源、発生時期、マグニチュードからなる3要素を予知する背景技術は、[特許文献1]に開示された予知技術以外、存在しない。

0009

[特許文献1]の大地震の予知で利用した大地震発生の自然現象を定量化する技術と、その背景技術に、物理法則を導入すると、大地震発生の自然現象をニュートンの運動の第二法則で記述でき、その大地震発生の物理法則を予知に利用できる。しかし、その自然現象は、ランダムに変化するので、現象の変化率を求める微分の使用が、不可能となり、微分を用いた運動の物理法則を、確立できなかった。本願の発明者は、微分をその操作と同等な差分操作に変換する新たな数学基礎を開発し、差分による大地震発生の自然法則と物理モデルを構築した。従って、[特許文献1]の大地震発生の自然現象を定量化する技術、その背景技術、そして、これら技術に、物理法則を導入するのに必要となる背景技術を、次に述べる。

0010

[特許文献1]の発明は、「地震発生の変化(地震活動)は、地殻の応力変化を反映し、その変化には、強いランダムノイズに埋もれた弱い周期変動が含まれる。」という自然法則を、大地震の予知に利用した。例えば、ある地域の地震活動を、震源、震源時(地震発生の時刻)の間隔時間、マグニチュードという震源要素変位時系列で定量化すると、その変位には周期的な弱い変動と、ランダム的な強い変動とが混在する。周期変動の中には、全ての震源要素に略共通な短い周期が存在する。選択した領域の地震活動に依存するが、その周期は、数週間から数年程となる。[特許文献1]の発明は、この短い周期を持った加速度成分を、変位の2次差分値として選択的に抽出し、震源の深さと、発生間隔時間とマグニチュードに作用している3つの加速度成分の振幅位相関係を用いて、大地震発生の自然現象(予兆の推移)を定量化し、発生時刻、震源、マグニチュードの程度を予知する方法と装置とを提供している。この発明は、地震発生の変化(地震活動)の定量化を、次の様に実施している。

0011

地震は様々な揺れ(地震波)を発生させる。[非特許文献3]によると、その地震波を、気象庁防災科学技術科学研究所、大学、各自治体等が、日本各地に設置してある地震計ネットワークから検出し、解析して、地震の発生時刻、地震の地理的な発生個所緯度経度、深さ)、地震の大きさを示すマグニチュードMからなる地震の震源要素に数値化する。さらに地震は、断層の破壊すべり運動なので、その運動を、運動のメカニズムを記述する発震機構解から、断層面の向きやすべり方向を断層節面とその走行(R)と傾斜角(DEC)で記述し、地面の揺れの初動が立下る複数の観測点から断層面に働く主圧力の軸の方向(P軸)を決定し、逆に初動が立ち上がる複数の観測点から断層面にかかる主張力の軸をP軸に直行するT軸として決定し、P軸とT軸の方向をその方位角鉛直角とで記述する。又、断層面を推測するためにP軸とT軸との中間に(それぞれに45度の角度で)2つの面、節面1(N1)と節面2(N2)を構成する。N1かN2かの一つの面が断層面となる。地震の破壊メカニズム要素を、N1とN2とが地表面と接する線上の走行(R)と傾斜角(DEC)、P軸(PA)とT軸(TA)の方位角(DIR)と鉛直角(VER)を用いて、次の8個のパラメータ、N1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、PA-DIR、PA-VER、TA-DIR、TA-VERとして数値化する。又、断層のすべり角(λ)を用い、各節面のN1-R、N1-DEC、N2−R2、N2−DEC2、N1-λ、N2−λ2を6つの断層パラメータとして数値化する。

0012

気象庁は、上述の公的な機関から提供される地震波の一括管理と解析を行い、先の数値データを、気象庁一元化処理震源要素のカタログとして公開している。2003年6月3日から、このカタログは、防災科学技術研究所のホームページで2日遅れ震源情報として公開されている。記録された地震波も公開されているので、利用者が、これらパラメータを再解析する事も可能となっている。地震計もパソコン周辺機器として安価に制作できるので、各家庭に設置する事も可能である。各家庭に設置した地震計は、交通による振動等の環境ノイズを受けやすいが、[特許文献1]の解析に必要とするのは、微少地震ではなくマグニチュードMが略3以上の有感地震なので、各地震計インターネットで結び、地震検出ネットワークを構築し、研究機関で開発された汎用ソフトウエアーを用い、上記震源パラメータをリアルタイムで得ることも可能になる。この様にして得た地震の震源要素や、破壊メカニズム要素を用いて地震活動を定量化(数値化)できるので、その時間的推移が、何故、変位(位置)、速度、加速度からなる基本的な物理量で、記述できるかを説明する。

0013

例えば、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方を、対象領域として選択する。気象庁一元化カタログと気象庁カタログから、その小さな領域内に発生した地震で、深発地震を除き、マグニチュード(M)が、M≧Mc(Mc
= 3.5)で選択される地震のみ抽出する。そして、これら地震の震源(緯度−LAT、経度−LON、深さ−DEP)を、地震が発生した順に辿り、その領域(3次元空間)に痕跡軌跡)を描く。[図2]にその3次元空間を表示する。x軸を「LAT」、y軸を「LON」、z軸を「DEP」とすると、x-y平面が、地表面となり、z軸が、地殻の深さとなる。地殻内の星印が、発生した地震で、星印を連結した折れ線(矢印の連結)が、地震が描いた軌跡となる。星印の大小は、地震のMの大小を表す。地殻の応力変化が起こすこれら地震の発生(星印)を、仮想粒子の出現とみなすと、この軌跡は、仮想粒子が出現する度、その粒子の位置を直線で連結した軌跡となる。それは、丁度、液体中に浮遊している粒子が、ブラウン運動して描くジグザグした軌跡の様になる。浮遊粒子運動軌跡は、所定の等間隔時間で、運動している粒子の位置を観測し、その位置を直線で連結して得る。地震発生の場合、震源時(地震の発生時刻)が、仮想粒子を観測した時刻tとなるが、その観測時刻tと粒子の出現順番を示す整数値jとの関係は一意的なので、整数値jを観測時刻とする。[図2]の「x-y-z空間」に、その出現時刻の一例を、0、1、2、‥、として、発生した地震(星印)の横に、付記してある。その仮想粒子の観測値は、3次元空間の位置情報に、応力変化の情報とマグニチュードとを加える事ができる。マグニチュードは、MAGもしくはMと定義する。応力変化は、後述する様に、地震の発生時刻の差である発生間隔時間(INT)に出現すると仮定できるので、INTをその応力変化の観測値とする。これら観測値が、(LAT、LON、DEP、INT、MAG)からなる5つの震源要素となる。従って、仮想粒子の運動は、3次元から5次元へと拡張した観測空間で記述できる。観測空間の次元数は、更に、追加できる。例えば、地震の発生は断層の破壊運動なので、断層面の向き、傾き、すべり方向等の地震の破壊メカニズム要素も観測値に加える事ができる。この様に拡張した空間に描いた軌跡の各座標軸成分が、地震の各要素の時系列データとなり、地震の発生順番を示す整数値jが、各時系列に共通な時間となる。整数値のjを時間とする事は、自然科学工学等における情報や現象を時系列化する際、古くから頻繁に用いられている概念である。従って、時刻tで発生した地震が観測空間に描く軌跡は、時刻jで観測された仮想粒子が、その観測空間に描く運動軌跡と同等に取り扱う事ができるので、その粒子運動の位置、速度、加速度を用いて、地震の発生の変化を記述できる。この時系列化の背景技術と作成の仕方を、LAT、LON、DEP、INT、MAGからなる震源要素パラメータを用いて、次に述べる。

0014

抽出した3つの継続した地震の震源情報が、地震の発生時刻である震源時(YYYY/MM/D:mm:ss.ss)、震源地の緯度(LAT)、経度(LON)、震源の深さ(DEP)、マグニチュード(MAG)として、次のように与えられたとする。
番目(最初)の地震が、
(震源時=1983/01/06 09:35:47.50、LAT=北緯34.453度、LON=東経132.607度、DEP=27.0km、MAG=3.5)、
1番目の地震が、
(震源時=1983/01/08 10:36:54.60、LAT=北緯33.817度、LON=東経131.843度、DEP=83.0km、MAG=4.0)、
2番目の地震が、
(震源時=1983/01/17 12:19:49.10、LAT=北緯33.468度、LON=東経132.448度、DEP=48.0km、MAG=4.1)
であったとする。

0015

これら3つの地震の各震源要素(LAT、LON、DEP、INT、MAG)を使用した時系列データの作成は、それぞれの単位を、LATとLONが度、DEPがkm、INTが時間(60分)とすると、次の様になる。
0番目=(LAT=34.453、LON=132.607、DEP=27.0、INT=X、MAG=3.5)、
1番目=(LAT=33.817、LON=131.843、DEP=83.0、INT=49.0186、MAG=4.0)、
2番目=(LAT=33.468、LON=132.448、DEP=48.0、INT=217.7151、MAG=4.1)
となる。0番目のINT=Xは、その前の地震情報がないので震源時(発生時刻)の差である間隔時間INTが算出できない事を意味する。従って、1番目が時系列データの始まりとなる。この様に作成する時系列の表記方法を次に述べる。

0016

時系列にする各震源要素を任意パラメータcで表記し、時系列の時間tを地震の発生順序j(j=1、2、3、・・、m、・・)とし、各震源要素の時系列を、[c]=[c(1)、c(2)、c(3)、・・、c(m)、・・]とする。例えば、各時系列[c]は、震源要素cを、
LATとすると、
[ LAT
]=[LAT(1)=33.817、LAT(2)=33.468、・・・]、
LONとすると
[ LON
]=[LON(1)=131.843、LON(2)=132.448、・・・]、
DEPとすると、
[ DEP
]=[DEP(1)=83.0、DEP(2)=48.0、・・・]、
INTとすると、
[ INT
]=[INT(1)=49.0186、INT(2)=217.7151、・・・]、
MAGとすると、
[ MAG
]=[MAG(1)=4.0、MAG(2)=4.1、・・・]、
と表記される。地震の発生順序を示すインデックスjの1、2、・・・が各時系列の時間tとなる。従って、5次元空間(LAT、LON、DEP、INT、MAG)に描かれた地震発生の軌跡の時刻tの各座標軸成分は、LAT(t)、LON(t)、INT(t)、DEP(t)、MAG(t)となる。これら各成分で定められた位置ベクトルは、抽出する地震を選択するために設定した各しきい値、もしくは所定の各基準値からの変位ベクトルともみなす事ができる。従って、仮想粒子の運動が描く軌跡の時刻t(t=j)における各位置成分は、変位成分と同等に取り扱えるので、成分cがLATであれば、その変位d(c,t)を、d(LAT,t)と表記するが、位置ベクトルのLAT成分のLAT(t)と同等である。従って、上記、震源要素cの時系列[c]を、次の[数1]で表記する。

0017

0018

また、後述する粒子の各速度と各加速度成分をそれぞれ、V(c,t)とA(c,t)と表記する。例えば、成分cがLATであれば、V(LAT,t)、A(LAT,t)と表記する。従って、地震活動は、粒子運動と同様に、粒子の位置(変位)、速度、加速度と言う基本的な物理量を用いて記述できる。ただし、時間tは、地震の発生順番を示す配列インデックスjで、それは、地震1個の発生を1イベントとするとイベント数でもある。変位d(c,t)は時間tの離散データとなる。

0019

次に、[数1]の各時系列で定量化された地震活動の時間的な推移から大地震の発生に至る過程に出現する周期性を抽出する。この周期が、予知に利用する時間的な尺度となる。つまり、周期が予知に利用する時計タイムベース(尺度)となる。更に、[数1]の各時系列から、その周期(尺度)を持った変位、速度、加速度成分を抽出する。そして、大地震に至る地震活動の推移を、加速度成分で定量化する。この予知に利用する周期は、一見ランダムに見受けられる複雑な自然現象に埋もれている。[特許文献1]の開示例にあるように、その周期に対応する周波数は、中国・四国・近畿領域の地震活動を[数1]で表記した5つの時系列のスペクトル分布に、略共通したスペクトルピーク付近に観察される。ただし、地震活動の推移は、台風の発生やその移動、の発生やその移動等に見られる気象変動の様な非線形現象カオス現象)である。従って、スペクトルピークは、分光学における線形現象を特徴づける鋭い一本のスペクトルピークではなく、一見複雑に見えスペクトル群(連続した凹凸)に、各要素の時系列に共通した小さなピークとして、周期が60〜70イベントに相当する周波数付近に存在する。つまり、周期は、60〜70イベント付近の範囲で変動している。例えば、[特許文献1]の開示例のスペクトルグラフ図6)の震源要素LONのピークは、その共通したピークの箇所で分割され両側に2つのピークを持つ。これは[数1]の時系列[LAT]より、時系列[LON]の方が、より複雑に変動している事に起因する。時系列[LON]が、より複雑に変動する理由は、中国・四国・近畿地方に於けるフィリッピン海プレートとユーラシアプレート(大陸プレート)の地理的配置に起因する。この地方に生じた地震で、マグニチュードが3.0以上、深さが300km以内の震源分布のグラフ([特許文献1]の図2図3図4で、後述の[図29]、[図30]、[図31]に相当する)から、地震の発生の痕跡を経度(LON)側から見ると、上側の大陸プレートの下側に潜り込むフィリッピン海プレートは、上下が重なり合うように東経131.5度〜136.5度に広がっている事が判明する。一方、緯度(LAT)側から見ると、北緯32度〜36度の南側にフィリッピン海プレート、北側に、大陸プレートと分離している。従って、それらプレート境界付近で発生した地震が描く軌跡の経度(LON)成分は、緯度(LAT)成分と比較すると大きく変化する場合がある。例えば、地震の発生が京都付近から山口付近へと移動すると、それら地震が描く軌跡は、軌跡の緯度(LAT)成分の変化は小さいが、経度(LON)成分の変化は大きくなる。その様な地震の発生の繰り返しが、軌跡のLON成分の変動をより複雑にする。

0020

この様な時系列のスペクトル解析から得た、略、60〜70イベントを中心とした周期的な変動のグループが、中国・四国・近畿地方における地震予知の時間的な尺度となる。地震活動が異なる他の領域を選択すれば、この尺度の大きさも異なる。この60〜70イベントと言う時間の尺度は、平均的な実時間にも変換できる。例えば、「地震が1個(1イベント)発生するのに平均的に7日かかる。」とすると、略420〜490日に相当する。又、地震の発生時刻と次の地震の発生時刻との差のINTを70個累積加算した時系列の周期的な変動は、略300〜400イベントと観測されるので、実時間に変換すると略6〜8年となる。ただし、1995年の庫県南部地震、1997年の山口県東部地震、2000年の取県西部地震後の期間においては、余震のため、周期的な変動は、略2〜3年に短縮されている。

0021

この様な時間的尺度は、[非特許文献5]、[非特許文献6]、[非特許文献7]等に報告されている様に、地震を作り出す地殻構造の時間的変化を、コーダ波で観測すると、必然的に存在している。コーダ波とは、地震波の後部に属する波である。例えば、地震観測所から10km程離れた震源地で発生したM3.6の地震を観測していたとする。この時、P波、S波が過ぎ去った後でも、観測所付近の地面は、しばらくの間、減衰しながら揺れ続ける。この揺れは、その地震のS波が地殻にある多くの不均質物質により散乱された集りからなる。揺れの減衰率を表すパラメータ(コーダQ−1)は、地殻の不均質物質の密度に比例する。地殻に存在する不均質物質の密度の時間的変化は、その変化に比例した応力変化をもたらし、周辺の断層に地震を発生させると考えられる。従って、[非特許文献5]、[非特許文献6]、[非特許文献7]は、コーダQ−1を用いた地殻構造の時間的変化(Q−1の時系列)の観測から、「地殻構造を形成する固有な長さを持った不均質物質の数は、数年から10年程の周期で時間的変化をし、不均質物質は、岩石圏延性部分(Ductile)に存在し、それら不均質物質のクリープ破壊による応力変化が、近接する脆性部分(Brittle)に、不均質物質の固有な長さに相当する断層の長さを持った固有な地震を不均質物質の数に比例した数だけ発生させている。」としている。

0022

[非特許文献5]によると、岩石圏の延性部分(Ductile)と脆性部分(Brittle)の遷移領域で、プレートの運動により延性部分から脆性部分へ、応力が加えられと、空間的に、略、数百メートルと1キロメートルからなる固有な断層の長さを持った地震が作り出される。それら、地震のマグニチュードは、略3と4であり、米国のカリフォルニア州に選択したサンフランシスコ付近(Mt.Hamiltonにある観測所を中心とした半径が略120kmの領域内)のMAG
= 4〜4.5とロスアンゼルス付近(Riversideにある観測所を中心とした半径が略120kmの領域内)のMAG = 3〜3.5からなる2つの固有な地震活動の50年余りにわたる時系列(2つのMAG時系列の時間軸には、実時間を使用)は、コーダ波の減衰率(Q−1)の時系列と、略、同位相を取りながら変動する。コーダ波の減衰率の時系列は、地震を発生させる延性部分と脆性部分の遷移領域付近に蓄積された応力の周期的な変動を反映し、振幅の変動値は、略、0.1MPaと見積もられている。この応力の変動が、先の3〜3.5と4〜4.5とからなる固有なマグニチュードを持った地震を、発生させている事になり、地震の発生の変化には、周期的な変動が必然的に存在している。従って、マグニチュードが略3〜4以上の地震を選択しても、それら全体の地震活動に、その周期的な変動が含まれ、その周期が、[特許文献1]で利用した予知の時間の尺度になっていた。また、[非特許文献6]と[非特許文献7]は、その空間と時間的に固有な尺度が、地震予知にも利用できる事を報告している。

0023

[非特許文献6]と[非特許文献7]によると、大地震が発生しない時は、2種類の固有な地震活動の時系列とコーダ波の減衰率(Q−1)の時系列とは、それぞれが、同位相にある。マグニチュードが略7以上の大地震発生の2年程前から、Q−1は、位相が遅れ始め、1年程前には、その周期的な変動のピークの遅れが最大となる。つまり、大地震が発生しない通常な状態では、プレートの運動により延性部分から脆性部分へ、応力が加えられ、延性部分と脆性部分の遷移領域で、マグニチュードが略3と4からなる2種類の固有な地震が作られている。しかし、大地震発生2年程前から、それら固有地震は、遷移領域に加え、脆性部分でも作られ始められ、固有地震の時系列の振幅値が、脆性部分で発生する固有地震の個数だけ増加し始める。この増加により、Q−1の時系列が固有地震の時系列に比べ遅れ始める。固有地震が、地殻の脆性部分でも作られ始められた事は、脆性部分が通常とは異なる状態(臨界状態)に達した事を示唆し、Q−1の時系列の遅れが、大地震発生の予兆となる。従って、「その遅れの検出から2年程後に、コーダ波の観測地点から半径が、略120kmの領域内で、大地震が発生する。」とする大地震の予知が、可能となる。

0024

地震の発生の変化に必然的に存在している周期的な変動を見つけるための手段、方法、装置が、[特許文献1]と[非特許文献4]とに示してある。それら文献によると、例えば、[数1]の震源要素d(c,m)からなる時系列に出現するランダム的な変動を、平滑するために、所定の個数(w個)で移動平均する。時間tの移動平均値をΣd(c,m)と表記し、所定の間隔(s)での1次差分値、2次差分値を、それぞれ、速度V(c,t)、加速度A(c,t)に比例した量とする。移動平均操作(Σ)は、w個の加算でローパスフィルター機能を設定する。差分操作は、差分を取る間隔s個でハイパスフィルター機能を設定する。従って、加算と差分操作によって得た速度V(c,t)と加速度A(c,t)は、変位d(c,m)をバンドパスフィルターした量に比例する。例えば、Σd(c,m)から間隔sの2次差分で得た加速度A(c,t)は、Σd(c,m)から略2sの周期成分のみ選択的に抽出するのみならず、その周期成分を作り出している力に比例する量を抽出する事になる。従って、大地震を発生させる応力変化の関係を、周期変動する予兆として抽出する事ができる。実際、上記で選択した中国・四国・近畿領域の1984年以降から1995年兵庫県南部地震以前の各時系列のスペクトルに観察される、略、60〜70イベントからなる周期変動は、移動平均個数を、w=20〜25、差分間隔を、s=30〜35として得る事ができる。このw=20〜25とs=30〜35を用いて抽出した各加速度、A(LAT,t)、A(LON,t)、A(DEP,t)、A(INT,t)、A(MAG,t)は、略、60〜70の周期を持って変動している。この時、A(DEP,t)とA(INT,t)とA(MAG,t)との振幅値と位相の変化には、大地震発生の数ヶ月〜1年程前に、次に述べる2種類の特別な変化(予兆)が、出現する。

0025

大地震発生の2種類の予兆は、M7.2の兵庫県南部地震(1995-1-17)と、M7.2の鳥取県西部地震(2000-10-06)に関するものである。兵庫県南部地震の予兆を、神戸の臨界静穏と定義し、CQK
(Critical Quiescence for Kobe)と呼んでいる。一方、鳥取県西部地震の予兆を、鳥取の臨界静穏と定義しCQT (Critical
Quiescence for Tottori)と呼んでいる。時間tを横軸に、加速度を縦軸に取り、A(INT,t)を実線、A(DEP,t)を破線、A(MAG,t)を実線として、それら加速度の周期変動の様子を[図3]に描く。ただし縦軸は、上側がマイナス(負)、下側がプラス(正)領域となる。先ず、CQKは、略、2sの周期で変動していた加速度A(DEP,t)の周期が、時刻ta0付近から、A(INT,t)の周期より長くなり始める。そして、時刻ta1で、A(DEP,t)とA(INT,t)とが逆位相となり反転が生じる。反転時、A(INT,t)は、正の方向(INTを増加させる方向)に振幅のピーク値、A(DEP,t)は、負の方向(DEPを減少させる方向)に振幅のピーク値を取り、A(MAG,t)は、負の方向(マグニチュードを減少させる方向)に振幅のピーク値を取る。このCQKの大地震発生の時刻は、t軸上へ記した上向きの破線矢印の箇所で、A(INT,t)が、半周期後に、反転し、振幅の逆のピークに到達した時刻ta2である。次に、CQTも、略、2sの周期で変動していた加速度A(INT,t)の周期が、時刻ta0付近から、先のCQKとは逆に、A(INT,t)の周期より長くなり始め、時刻ta1で、A(DEP,t)とA(INT,t)とが逆位相となり反転が生じる。反転時、A(INT,t)は、負の方向(INTを減少させる方向)に振幅のピーク値、A(DEP,t)は、正の方向(DEPを増加させる方向)に振幅のピーク値を取り、A(MAG,t)は、先のCQKと同様に、負の方向(マグニチュードを減少させる方向)に振幅のピーク値を取る。このCQTの大地震が発生するのは、t軸上へ記した上向き破線矢印の箇所で、A(INT,t)の振幅のピークが、反転し、逆の振幅のピークに到達した時刻ta2である。略2sからなる短い固有な周期(時間的な尺度)を持った2種類のA(INT,t)とA(DEP,t)とA(MAG,t)との振幅及び位相関係が、大地震発生の時刻を定量化する。これら発生時刻は、配列インデックス(地震の発生個数つまりイベント数)のtなので、tと平均的な地震の発生間隔時間との積が、実時間となる。従って、上記、大地震発生の2種類のCQKとCQTの予兆(自然法則)は、2種類の大地震の予知に利用できる。

0026

先に選択した中国・四国・近畿地方の領域では、これら2つの大地震以外に、M6.6の山口県東部地震(1997-6-25)が発生している。この大地震の予兆タイプはCQTである。他の日本の領域で発生したすべての大地震(マグニチュードMが略6以上)の予兆はCQKかCQTである。例えば、2003年に発生したM8の十勝沖地震(2003-9-26)は、[非特許文献4]によると、CQTである。また、これらCQKとCQTの地理的分布は、[非特許文献8]に掲載されている、日本列島のコーダQマップ(コーダ波で1〜2
Hzの周期を持った成分の減衰を表すパラメータQの分布図)において、コーダ波の減衰率の小さい地域にCQK、大きい地域にCQTが分布している。この様に、コーダ波の減衰率により、大地震の予兆が2種類に分類されると言う観測事実は、「大地震発生の予兆は、2種類しか存在しない。」事を示唆している。つまり、予兆が出現しない状態では、プレート運動により延性部分から脆性部分へ、応力が加えられると、コーダ波の減衰率の大小で区別されるMAG
= 3〜3.5とMAG = 4〜4.5からなる2つの固有な地震が作られる。しかし、大地震発生前の予兆が出現した状態では、これら固有地震が、地殻の脆性部分でも作られ始め、地殻は大地震発生直前の臨界状態となる。従って、これら2つのグループの固有地震が、大地震発生と、大地震発生直前の2種類の臨界状態(予兆)の形成に、強く関与している。

0027

大地震発生の自然法則を利用した震源時(発生時刻)の予知は、[図3]のA(INT,t)の振幅ピークが時刻ta1から半周期後に反転したピークに到達する時刻ta2を大地震の発生時刻とする。従って、A(INT,t)の半周期の時間をta1-ta0とし、時刻ta1以降、震源時ta2を予知する。時間tは、配列インデックス(イベント数つまり地震の発生個数)なので、先ず、「M3.5以上の地震が、後、何個発生したらA(INT,t)の反転ピークに到達するか」で、略、±1の発生個数精度で予測し、次に、平均的な地震の発生間隔時間を用い実時間に変換する。

0028

例えば、[特許文献1]の発明を実施した[非特許文献4]によると、上記、2003年十勝沖地震に関する予知検証テストにおいて(既に発生していた2003年十勝沖地震の時系列データを使用した予知検証テストにおいて)、先に、指摘した56年から100年周期に基づいた予知における、-
6年から- 50年程の予知誤差(誤差=実際の値−予知した値)を、略、+1日に抑える事が可能となっている。更に、その十勝沖地震後、唯一、M6クラスの地震が、2004年5月30日5時56分に、発生した。それは、M6.7の房総半島沖地震であった。選択領域は、北緯34度〜38度、東経136.5度〜142度で囲まれた関東地方の領域で、この地震の予知に成功している。[非特許文献4]にあるように、それは、大地震の発生16日前に予知した発生時刻が、2004年5月30日16時48分であった。時、分への換算は、平均的な地震の発生間隔時間を、小数点以下4桁までを換算した事による。

0029

任意に選択した領域内の震源の予知は、ランダム的な変動を上述の移動平均で平滑した、Σd(LAT,m)とΣd(LON,m)とΣd(DEP,m)とを、予兆検出後から予測発生時刻まで線形補間して得る。実際の震源と予知した震源との差(誤差=実際の値−予知した値)は、時系列の予兆検出直後の線形性にも依存するが、[非特許文献4]によると、十勝沖地震の場合、震源地に関しては、略、±0.5度、震源の深さに関しては、+20km程となっている。M6.7房総半島沖地震の場合、震源地に関しては、略、+0.2度、震源の深さに関しては、-10km程となっている。

0030

この様な予知誤差は、次の、物理法則に起因する。選択した領域の地震現象は、暗に、閉じた系と仮定しているが、プレート運動を介した開いた系である。従って、領域の境界付近の地震を連結する軌跡(時系列)には、その隣接領域の影響が顕著に出現し、これらの影響が予知誤差の主因となる。地震の発生を上記仮想粒子の出現と置き換えると、その影響とは、次の様なケースに起因する場合も含まれる。例えば、隣接領域から粒子が、対象領域に侵入し、しばらく境界内に留まり、そして境界外に消えていくケースである。この間、領域内の粒子も出現する。なお、領域外からの粒子とは、領域外の応力変化により領域内で発生した地震を指し、領域外の応力変化の影響を大きく受けた地震である。また、領域内の粒子とは、主に領域内の応力変化により発生した地震を指し、領域外の応力変化の影響を殆んど受けていない。この様な領域内外の粒子の区別は不可能なので、2種類の粒子が入り乱れる運動軌跡は複雑になり、領域内の粒子の運動軌跡とは大きく異なる可能性が出現する。この原因による予知誤差を、少なくするには、地震活動の現象を把握した適切な選択領域を使用し、それら選択領域をオーバーラップさせる事で、改善できる。しかし、プレート運動の影響を広範囲に受けている領域では、選択領域をオーバーラップさせても改善できない場合もある。その様な領域は、例えば、太平洋プレートが、大陸プレート下に沈み込んでいる東日本の500km余りの東側沿岸やその太平洋沖である。この場合、太平洋プレートと大陸プレートとの固着領域が、太平洋プレートの相対運動により、大陸プレート上に位置する東日本の地殻をゆっくりと変形し続ける。従って、応力が、2つのプレート境界とプレート内部に蓄積されていく。この蓄積により、東日本やその太平洋沖等の海域では、内陸地震、プレート境界付近の地震、太平洋プレート内のスラブ地震等、異質な地震が入り乱れて発生する。従って、狭い領域は、閉じた系と見做すことはできない。しかし、前述した[非特許文献6]の大地震発生直前の地殻の臨界状態検出の概念に基づくと、巨大地震が発生する場合も、固着域により変形を受けている東日本の地殻変動やその変形領域のみの地震活動の推移を観測する事により、巨大地震発生前の変形領域の臨界状態を検出できる。

0031

大地震の予兆CQKかCQTを検出できない例も、[特許文献1]で指摘されている。中国・四国・近畿地方の領域では、兵庫県北部の群発地震(2001-1-12)と、その71日後に発生したM6.7の安芸灘(芸予)地震(2001-3-23)とが、連動しており、群発地震直後に発生した大地震の予兆は、この選択領域では検出できていない。同様な連動は、兵庫県南部の群発地震(1984-5-30)と、その69日後に発生したM7.1の日向灘沖地震(1984-8-7)である。

0032

これら、連動には、鳥取県西部地震と、M6.3の三地震(1983-10-31)とが、それぞれ先行し、[非特許文献9]によると、鳥取県西部地震の前後には、その震源付近直下で流体に関係した予兆的な地震活動も報告されている。また、[非特許文献10]によると、この地域特有な水に関係した微動スロースリップ等の新しい地震現象も多く発見されている。従って、連動には、これら先行した大地震が関与している事は明白で、安芸灘地震等、群発地震後にスラブ内で発生する地震予知には、連動のメカニズムの解明が欠かせない。

0033

[特許文献1]で大地震の予兆として利用した大地震発生の自然法則は、略、周期変動しているA(INT,t)とA(DEP,t)とA(MAG,t)とが作り出す2種類の振幅と位相関係で記述された。地震発生の変化は、その発生毎に観察される仮想粒子の運動とみなせるので、その運動を、ニュートンの運動の第二法則(物理法則)で記述できれば、上記大地震発生の自然法則を第二法則で再記述できる。従って、大地震の発生の物理モデルを確立でき、大地震の予知をより正確に実施できる。このニュートンの第二法則(運動の微分方程式)に基づく物理モデルを確立するには、粒子の運動軌跡が、[数1]で記述される時、粒子に作用する力は、先ず、d(c,t)の時間tに関する一次微分(一次の変化率)で与えられる粒子の速度V(c,t)を求め、そして速度の一次微分である加速度A(c,t)を求めなければならない。しかし、仮想粒子が描く運動の軌跡は、ブラン運動の様なジグザグ軌跡となり、各成分d(c,t)のジグザグ箇所で、時間微分が不可能となる。従って、時間微分の代わりに差分を用いた変化率を求めなければならない。この時、運動の第二法則を確立するには、微分操作の持つ物理的性質を正しく反映する差分操作を必要とする。この新たな差分操作は、本願の発明者により確立されたので、その物理的性質と数学的な基本技術とを述べる。

0034

粒子運動を記述する微分方程式が持つ物理的性質を説明するために、質量Maの粒子の1次元の調和振動を取り上げる。平衡点(基準位置)からの時刻tの変位D(t)は、微分可能なので、時刻tの1次微分、2次微分を、数学や物理の教科書に倣い、それぞれ[数2]の速度V(t)、[数3]の加速度A(t)と定義する。

0035

0036

この時、ニュートンの運動の第二法則(振動の運動方程式)は、質量Maの粒子に作用する弾性常数をKとすると、次の[数4]で与えられる。

0037

0038

粒子運動の変位D(t)の瞬時変化率を記述する時間微分操作は、時間の方向を反転すると、反転に関し、非対称となる。[数2]に於いて、時間tの正の微少量を表すパラメータΔt(時間の増減方向の反転に係わらず常に正の微小量)をゼロとして得る1次微分操作のd/dtは、その変化率を得る時間の増減方向を反転させると、即ち、tの方向(増加が正、減少が負)を反転(tを-t)させると、d/d(-t)=
-d/dtとなり、符号を反転させるので時間反転に対し非対称となる。一方、[数3]と[数4]のΔtをゼロとして得る2次微分操作、d2/dt2、は、時間tを-tとしても、d/d(-t)(d/d(-t))=d2/dt2と符号を反転させない。つまり、時間反転に対し対称となる。また、[数4]が記述する周期振動方程式一般解D(t)は、次の[数5]で与えられる。

0039

0040

ここで、Daは振動の振幅値、fは固有振動数、φは振動の初期条件で定まる位相角で、時刻t=0でφ= 0とすると、[数5]は、D(t)=Da
cos(2πft)となり、時間の偶関数、D(t)= D(-t)となる。

0041

運動している仮想粒子(地震の発生)の位置d(c,t)は、ジグザグ箇所で微分不可能なので、[数2]の1次微分、[数3]の2次微分、[数4]で記述されたニュートンの第二法則(微分方程式)を、仮想粒子の運動記述にそのまま適用する事はできない。従って、[数2]の1次微分を、有限値Δtを用いた1次差分で、又、[数3]、[数4]で記述された2次微分を、正の有限値Δtを用いた2次差分で近似的に記述しなければならない。この時、これら1次、2次差分操作に、1次、2次微分操作と同様な時間反転に関する物理的性質を持たせなければならない。しかし、[数2]の1次差分、[数3]、[数4]の2次差分に、時刻t=0でφ=
0とした[数5]のD(t)=Da cos(2πft)を代入すると、D(t)が、偶関数なので、D(t)=D(-t)となり、次の[数6]、[数7]に示すように、[数2]-[数4]の差分操作は、tを-tとする時間反転の物理的性質を満足しない。なお、[数6]、[数7]の⇒は、tを-tとする時間反転操作をする記号である。

0042

0043

[数6]に表示されるように、[数2]の[D(t+Δt)-D(t)]は、時間反転後、-[D(t+Δt)-D(t)]ではなく、-[D(t)-D(t-Δt)]となり、その1次差分操作は、1次微分操作が持つ時間tの非対称性を満足しない。また、[数7]に表示される様に、[数3]、[数4]の[D(t+2Δt)-2D(t+Δt)+D(t)]は、時間反転後、[D(t)-2D(t-Δt)+D(t-2Δt)]となり、その2次差分操作は、2次微分操作が持つ時間tの対称性を満足していない。従って、微分操作の物理的性質が正しく反映される差分操作は、[数6]、[数7]の差分式の時間を反転する時、次の、[数8]、[数9]の左辺の差分操作に変更されなければならない。なお、tを-tとする時間反転操作は、⇒記号で表示してある。

0044

0045

[数8]の1次差分式の時間反転は、1次微分の時間反転に対する非対称性(符号を反転させる)を持ち、[数9]の2次差分式の時間反転は、2次微分が持つ時間反転に対する対称性(符号を反転させない)を持つ。D(t)が、時間の偶関数である条件を課し、これら対称の性質を得たが、その条件を課さなくとも、正しい差分式を導出する事ができる。そのために、差分操作関数をDirac
(ディラック)のデルタ関数を用いて導出する。

0046

デルタ関数δ(t)は、時間tの偶関数で、時間tを-tとする時間反転に関してδ(t)= δ(-t)となる対称な性質を持ち、振幅値は、時刻t=0で無限大(+∞)、それ以外の時刻でゼロとなるインパルスで、その面積は1となる。従って、幅がΔt、振幅値(高さ)が1/Δt、幅の中心が、時刻t=0となる方形波の幅、Δtをゼロに限りなく近づける事で、上記性質を持つデルタ関数δ(t)を得る事ができる。この方形波をS(t)と表記し、Heaviside(ヘビサイド)のユニットステップ関数η(t)を用いて構成する。関数η(t)は、正の振幅値が、η(t)=1(t≧0)、η(t)=0(t<0)とし、関数−η(t)は、負の振幅値が、−η(t)=-1(t>0)、−η(t)=0(t≦0)と定義する。これら2つの関数、+と−のη(t)を用いて、S(t)が時間tの偶関数で面積が1となる様に構成する。例えば、S(t)の幅がΔt、高さが、[-1/(2Δt)≦t≦+1/(2Δt)]の区間内で1/Δt、その区間外で0となる様に構成する。このS(t)の幅と高さは、その面積を1に保てば、任意に変更できる。微分操作が正しく反映される差分操作に3種類の幅と高さを用いたS(t)を使用するので、先ず、[数10]に記述するS(t)をSa(t)と定義する。このSa(t)のΔtをゼロに限りなく近づけて得たデルタ関数を、δa(t)と[数11]で定義する。従って、δa(t)は、時刻t=0で、無限大(+∞)となるインパルスである。

0047

0048

[数10]のSa(t)、[数11]のδa(t)と[数10]のSa(t)とを用いて、変位D(t)を、時刻t=0の変位D(0)として、[数12]、[数13]に、再定義する。

0049

0050

容易に確認できるように、[数10]のSa(t)は、tを-tとする時間反転に対し不変(対称)となり、時間tの偶関数となる。又、Sa(t)の波形は、[図4]に、DDW(t)とも、表記され、横軸が時間軸t、幅がΔt、高さが1/Δtの方形波である。[図4]からも確認できる様に、Sa(t)は、原点t=0に関して対称な波形(偶関数)となり、Δtをゼロに限りなく近づけると、[数11]で定義されるデルタ関数δa(t)となり、δa(t)は、時刻t=0で、偶関数となる。デルタ関数δa(t)とSa(t)は、tをt-τとすると、任意時刻τで偶関数になるので、その時刻τの変位D(τ)は、次の[数14]で与えられる。

0051

0052

[数14]において、Δtの極限を取らなければ、その変位D(t)とSa(t-τ)との相関積分は、時刻τを中心とした有限幅Δtで囲まれた変位D(t)を加算し、Δtで割る操作を、時刻τのD(t)の時間幅Δtの平均値として算出する。D(t)の時刻τにおけるその平均値を<D(τ)>と表記する。それは、[数15]で、次に与えられる。

0053

0054

Sa(t-τ)は、D(t)を時間幅Δtで平均し、その平均値を時刻τの<D(τ)>とする関数なので、本願の発明者は、「変位検出ウエーブレット、DDW(t-τ)」と定義する。

0055

次に、[数11]のδa(t)と[数10]のSa(t)とを用いて、[数2]の速度V(t)を、時刻t=0の速度V(0)として、[数16]、[数17]に、再定義する。

0056

0057

[数17]の[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]は、Sa(t)が時間tの偶関数、Sa(t)=
Sa(-t)なので、次の[数18]に示されるように時間tの奇関数となる。なお、tを-tとする時間反転操作は、⇒記号で表示してある。

0058

0059

従って、[数17]と[数18]の[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]は、原点t=0に関して非対称(tの奇関数)となり、[数2]と[数17]の1次微分操作が持つ時間反転の物理法則を正しく継承する1次差分操作となる。また、その1次差分操作の波形は、[図4]にD1W(t)として描かれている。なお、D(t)の任意時刻τの1次微分V(τ)は、[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]のtをt-τとして、次式の[数19]で与えられる。

0060

0061

[数17]においてΔtの極限値の0をとらず有限値とすれば、変位D(t)と[Sa(t-Δt/2)-Sa(t+Δt/2)]との相関積分は、D(t)を有限幅ΔtのSa(t-Δt/2)とSa(t+Δt/2)とで平滑した変位D(Δt/2)とD(-Δt/2)との差をΔtで除算し、時刻t=0の速度とする速度検出機能を持つ。任意時刻τの速度は、次の[数20]で与えられる。

0062

0063

[Sa(t-τ-Δt/2)-Sa(t-τ+Δt/2)]/Δtは、との差をΔtで除算し時刻τの速度とする関数なので、本願の発明者は、「速度検出ウエーブレット、VDW(t-τ)」と定義する。又、との差のみ検出する[Sa(t-τ-Δt/2)-Sa(t-τ+Δt/2)]を、「1次差分検出ウエーブレット、D1W(t-τ)」と定義する。

0064

次に、[数11]のδa(t)と[数10]のSa(t)とを用いて、[数3]で定義された時刻tの加速度A(t)を、時刻t=0の加速度A(0)として、[数21]、[数22]に、再定義する。

0065

0066

[数22]の[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]は、Sa(t)がtの偶関数、Sa(t)=
Sa(-t)なので、次の[数23]に示されるように時間tの偶関数となる。なお、tを-tとする時間反転操作は、⇒記号で示してある。

0067

0068

従って、[数22]と[数23]の[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]は、原点t=0に関して対称(tの偶関数)となり、[数3]と[数21]の2次微分操作が持つ時間反転の物理的性質を正しく継承する2次差分操作関数となる。また、その2次差分操作の波形は、D2W(t)と、[図4]に表記されている。任意時刻τのD(t)の2次微分は、次式の[数24]で与えられる。

0069

0070

[数22]のΔtを有限とすれば、変位D(t)と[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]との相関積分を表示するので、幅Δtで平均された各変位、、の2次差分をΔtで2回除算し、その値を、時刻t=0の加速度とする。任意時刻τの加速度は、[Sa(t-Δt)-2Sa(t)+Sa(t+Δt)]のtをt-τとして、次式の[数25]で与えられる。

0071

0072

[Sa(t-τ-Δt)-2Sa(t-τ)+Sa(t-τ+Δt)]/(Δt)2は、と、の2次差分をΔtで2回除算し、時刻τの加速度とする関数なので、本願の発明者は、「加速度検出ウエーブレット-ADW(t-τ)」と定義する。又、[Sa(t-τ-Δt)-2Sa(t-τ)+Sa(t-τ+Δt)]を「2次差分検出ウエーブレット-D2W(t-τ)」と定義する。

0073

[図4]の各波形DDW(t)、D1W(t)、D2W(t)は、[非特許文献11]、[非特許文献12]、[非特許文献13]、[特許文献1]、[特許文献2]、[特許文献3]で使用した変位、1次差分(速度)、2次差分(加速度)を検出する関数(ウエーブレット)の一例である。それらは、信号D(t)から基本的な物理量を検出するので、本願の発明者は、変位検出用のDDW(t-τ)、速度検出用のVDW(t-τ)、加速度検出用のADW(t-τ)を、総称して「物理的ウエーブレット」と呼んでいる。なお、これら物理的ウエーブレットの時間幅Δtを極限値のゼロとすると、時刻τで検出(観測)する物理量は、物理学で定義されている変位D(τ)、速度V(τ)、加速度A(τ)となる。

0074

[数4]のMadV(t)/dt=-KD(t)と記述されるニュートンの第二法則は、運動量MaV(t)の時間の変化率(時間微分)が、質量Maの粒子に作用している力(MaA(t))に等しく、−KD(t)で、一意的に決定される事を述べている。つまり、互いに独立した観測量D(t)とV(t)とが同時に確定すれば、V(t)の1次微分で与えられる加速度A(t)は、一意的に表記される事を述べている。又、その運動を、位置と運動量とからなる位相平面(状態平面)を用いて観測する場合は、x軸にD(t)、y軸にMaV(t)かV(t)を取り、位相平面(D、MaV)か(D、V)平面に、運動が描く軌跡を観測する事になる。この位相平面解析のx軸とy軸とは互いに直行している。互いに独立した観測量であるD(t)とV(t)とを、それぞれx軸成分、y軸成分とする事は、D(t)とV(t)とが、互いに直行している事を暗に仮定している。逆に、D(t)とV(t)は、時間幅Δtを極限値のゼロとした物理的ウエーブレットを用いて観測(検出)されるので、その極限を取る前の検出ウエーブレットが直行していれば、極限時、それら観測量は、互いに独立であるとも言える。D(t)とV(t)とが直行するメカニズムを説明する記述は、いかなる物理の教科書や学術論文にも無い。教科書では、D(t)とV(t)とが、経験的に、独立な物理量だから、暗に、それらが直行すると仮定している。従って、各検出ウエーブレットの直行関係を明確にする。

0075

2つのベクトルは、内積がゼロとなれば、直行している。同様に、2つのウエーブレット(関数)は、2つの関数の積のt=-∞からt=+∞までの積分がゼロとなれば、それら関数は、直行している。又、1次差分検出ウエーブレットのD1W(t)をΔtで除算した速度検出ウエーブレットのVDW(t)は、D1W(t)と相似な形状となり、2次差分検出ウエーブレットのD2W(t)をΔtで2度除算した加速度検出ウエーブレットのADW(t)も、D2W(t)と相似な形状となる。従って、物理的ウエーブレットの各内積関係を、[非特許文献12]、[非特許文献13]に基づいて、[数10]と[図4]のDDW(t)で与えられた「変位検出ウエーブレット」と[数18]と[図4]のD1W(t)で与えられた「1次差分検出ウエーブレット」との内積とし、[数18]と[図4]のD1W(t)の「1次差分検出ウエーブレット」と[数23]と[図4]のD2W(t)の「2次差分ウエーブレット」との内積とし、次の[数26]、[数27]に記述する。

0076

0077

[数26]と[数27]に示されるように、これらの内積は、ゼロとなる。又、これら内積結果は、[図4]のDDW(t)とD1W(t)の重なる符号付面積の(時間軸より上側が正、下側が負となる)積の総和と[図4]のD1W(t)とD2W(t)の重なる符号付面積の積の総和となるので、それら内積は、それぞれゼロとなる事が図から確認できる。従って、偶関数である「変位検出ウエーブレット、DDW(t)」と奇関数である「1次差分検出ウエーブレット、D1W(t)」とは直行し、更に奇関数の「1次差分検出ウエーブレット、D1W(t)」は、偶関数である「2次差分ウエーブレット、D2W(t)」とも直行している。しかし、偶関数同士の「変位検出ウエーブレット」と「2次差分ウエーブレット」との内積は、[図4]のDDW(t)とD2W(t)の重なる符号付面積の積の総和となり、ゼロとならない事が確認できる。実際、次式の[数28]が与える内積は、-2となるので、「変位検出ウエーブレット」と「2次差分検出ウエーブレット」とは、直行しない。

0078

0079

しかし、[非特許文献12]と[非特許文献13]によると、「変位検出ウエーブレット」と「2次差分検出ウエーブレット」とからなる偶関数同士でも直行化できる。従って、「変位検出ウエーブレット」、「1次差分検出ウエーブレット」、「2次差分検出ウエーブレット」の全てが互いに直行する様に、方形波S(t)を再構成できる。その一例を、[図5]に表示する。[図5]のDDW(t)は、Sa(t)で、変位検出にはSa(t)をそのまま使用する。速度検出には、S(t)を、区間幅Δt/2の[-Δt/4≦t≦+Δt/4]で振幅値が2/Δt、その他の区間ではゼロとなるSb(t)を用いる。[図5]のSb(t-Δt/4)が、その方形波Sb(t)を右側にΔt/4移動した方形波であり、その高さ(振幅値)は2/Δtとなる。加速度検出には、S(t)を、区間幅Δt/3の[-Δt/6≦t≦+Δt/6]で振幅値が3/Δt、その他の区間ではゼロとなるSc(t)を用いる。[図5]のSc(t-Δt/6)が、その方形波Sc(t)を右側にΔt/6移動した方形波であり、その高さ(振幅値)は3/Δtとなる。これらSb(t)とSc(t)を、ユニットステップ関数η(t)を用いて表記すると[数29]と[数30]で与えられる。

0080

0081

Sb(t)とSc(t)のΔtをゼロの極限として得たデルタ関数を、それぞれ、δb(0)とδc(0)とする。速度検出で用いた[数16]のδa(t)をδb(t)とすると、速度を検出する[数17]のSa(t)の代わりにSb(t)を用いる事になる。従って、速度V(0)は、[数31]で与えられる。

0082

0083

加速度検出で用いた[数21]のδa(t)をδc(t)とすれば、加速度を検出する[数22]のSa(t)にSc(t)を用いる事になる。従って、加速度A(0)は、[数32]で与えられる。

0084

変位、1次差分(速度)、2次差分(加速度)を検出する各ウエーブレットは、[図5]にDDW(t)、D1W(t)、D2W(t)の波形として表示されている。2つのウエーブレットの積、DDW(t)とD1W(t)、D1W(t)とD2W(t)、DDW(t)とD2W(t)の各積分値は、2つのウエーブレットの重なった部分の面積の積の総和がゼロとなるのが容易に確認できる。実際、[数33]-[数35]の積分値は、ゼロとなり、各ウエーブレットは、互いに直行する。

0085

0086

従って、ニュートンの運動の第二法則を、微分から差分へと正しく変換するには、次の2つの物理的性質を満足する変位、1次差分(速度)、2次差分(加速度)検出ウエーブレットに基づいた差分記述にしなければならない。

0087

1番目の物理的性質は、微分操作が持つ時間反転に関する非対称性を保持する法則である。即ち、変位、速度、加速度を検出する任意時刻τに関し、「変位検出ウエーブレット」が対称(偶関数)、「1次差分検出ウエーブレット」が非対称(奇関数)、「2次差分検出ウエーブレット」が対称(偶関数)とならなければならない。

0088

2番目の物理的性質は、1番目の時間反転の非対称性を保持する物理的性質が暗に課す各検出ウエーブレット間の直行関係である。即ち、任意時刻τにおける偶関数の「変位検出ウエーブレット」と奇関数の「1次差分(速度)検出ウエーブレット」とは、必ず直行する。「1次差分(速度)検出ウエーブレット」と偶関数の「2次差分(加速度)検出ウエーブレット」も必ず直行する。しかし、偶関数同士である「変位検出ウエーブレット」と「2次差分(加速度)検出ウエーブレット」とは、直行しない。しかし、[図5]を用いて説明したように、それらの直行化も、偶関数である変位検出ウエーブレットの形を、変位検出、1次差分検出、2次差分検出のそれぞれの場合で変える事により可能となる。従って、「変位検出ウエーブレット」と「2次差分(加速度)検出ウエーブレット」の直行関係は、差分を取る「変位検出ウエーブレット」の形を、随時、変えなければ、成立しない。

0089

対象とした変位D(t)は、時間tの連続関数でなく、離散値からなる如何なる時系列でも良い。従って、時系列[c]の変位、速度、加速度検出は、上記の[数15]、[数20]、[数25]のD(t)に時系列[c]を代入した、次の[数36]-[数38]で与えられる相関積分となる。

0090

0091

[数36]の[c]とSa(t-τ)との相関積分は、Sa(t-τ)の有限幅Δtで囲まれた[c]を加算平均し、幅Δtの中心の時刻t=τの値、D(c,τ)、とする。なお、加算平均する個数は、有限幅Δtに相当する奇数個のデータ数(Δt=2w+1)となる。このwは、1以上の整数値である。方形波Sa(t-τ)の右端に位置する時刻を時系列[c]の時刻mとすると、mは、τと、m=τ+wなる関係がある。従って、[数36]の相関積分は、離散値d(c,m-i)を、相関積分の相関幅に相当する2w+1個(Δt=2w+1)だけ時刻iに関して過去から時刻mまで加算平均し、その平均値を、Sa(t-τ)の中心の時刻τ(τ=m-w)の値D(c,τ)とする操作であり、加算平均後、τが平均値を指定する時刻となる。加算平均する時刻は、過去から時刻mまで移動できるので、2w+1個の加算平均は、移動平均となる。この具体的な平均操作と、時刻τに割り当てた平均値をD(c,τ)とする数式を、それぞれ、次の[数40]、[数41]に記述する。

0092

0093

従って、[数37]のV(c,τ)、[数38]のA(c,τ)は、相関積分した結果に、[数36]、[数41]の関係を使用すると、次式の[数42]、[数43]で与えられる。

0094

0095

なお、上の[数42]と[数43]のΔtは、Δt=2w+1、wは1以上の整数値である。従って、[数42]と[数43]とが、[数1]の震源要素の時系列[c]から抽出した変位、D(c,τ)、に作用する速度、V(c,τ)と、加速度、A(c,τ)とを与える。更に、D(c,τ)が、周期変動していれば、そのニュートンの第二法則は、次式の[数44]で与えられる。なお、それら運動方程式中のKcは、震源要素cと、時刻τの弱い関数であるが、所定の時間の範囲内では、震源要素cのみに依存する定数と仮定されている。

0096

0097

上記2つの物理的性質を満足する変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットの波形は、[図4]や[図5]に与えられた以外にも選択できる。その一例は、[特許文献1]のグラフ(図7)で使用した変位、速度、加速度検出ウエーブレットに2つの物理的性質を満足させる様、各位相を調整した例である。先ず、物理的性質が満足されてない[特許文献1]で使用された変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットから説明する。

0098

時系列[c]から任意時刻τの変位を検出するための変位検出のウエーブレットSa(t-τ)を、[図6]の時間軸t1上に表示し、Sa(t-τ)の右端の時刻mを、時系列[c]の最も新しい時刻とする。時刻τと時刻mとの関係は、m=τ+Δt/2、となる。以降、この関係は、[図6]に於いて、変わらない。次に、1次差分を取る時間間隔をnとし、その1次差分検出ウエーブレットを、[図6]の時間軸t2上に、上向きのSa(t-τ)と、下向きのSa(t-τ+n)とを、それぞれ、時刻τとτ-nに配置して構成する。上向きのSa(t-τ)の右端の時刻が時系列[c]の時刻mとなる。更に、この1次差分の時間間隔k(k>n)での差分を取ると、2次差分を検出する事ができる。その2次差分検出ウエーブレットは、[図6]の時間軸t3上に、時間軸t2上の1次差分検出ウエーブレットに加え、時刻τ-kに、下向きのSa(t-τ+k)、時刻τ-k-nに、上向きのSa(t-τ+k+n)を配置する事により構成される。この時、2つの差分を取る間隔時間のnとkとが等しくなると(s=n=k)、[図6]の時間軸t4に描かれている様に、2次差分検出ウエーブレットの2つの下向きのSa(t-τ+n)とSa(t-τ+k)とが重複加算され、下向きの2Sa(t-τ+s)となる。又、左側の上向きのSa(t-τ+k+n)が、時刻τ-2sにシフトされSa(t-τ+2s)となる。これら、[図6]の時間軸ta1上の変位検出ウエーブレット、時間軸t2上の1次差分、時間軸t3とt4上の2次差分検出ウエーブレットは、上記2つの物理的性質が満足されてない配置関係にあるので、それら物理的性質を満足する、各ウエーブレットの再配置を、[図7]に表示する。

0099

[図7]の時間軸ta1上のSa(t-τ)が変位検出ウエーブレットDDW(t-τ)、時間軸t2上の、[Sa(t-τ-n/2)-Sa(t-τ+n/2)]が、1次差分検出ウエーブレットD1W(t-τ)、時間軸t3上の{[Sa(t-τ-k/2-n/2)-Sa(t-τ-k/2+n/2)]-[Sa(t-τ+k/2-n/2)-Sa(t-τ+k/2+n/2)]}がk>nの場合の2次差分検出ウエーブレットD2W(t-τ)、時間軸t4上の[Sa(t-τ-s)-2Sa(t-τ)+Sa(t-τ+s)]が、nとkとが等しくs=n=kの場合の2次差分検出ウエーブレットD2W(t-τ)となる。これら各検出ウエーブレットの中心は、共通な時刻τなので、これら差分検出のウエーブレットは、上記2つの物理的性質を満足する。k<nの場合も、k≧nの場合と同様に、各差分検出ウエーブレットを構成できる。又、[図6]と[図7]の1次、2次差分検出ウエーブレットの図示例は、Sa(t-τ)の幅Δtに相当する2w+1が、差分を取る間隔、n、k、よりも小さい場合であるが、整数パラメータw(≧1)、偶数パラメータ、n(≧2)、k(≧2)の大きさは任意に選択できるので、その幅、2w+1は、それら差分間隔より大きく取れる。従って、[図7]の時間軸t2上に例示されている様に、D1W(t-τ)は、時刻τ(t2=τ)で奇関数となるよう、変位検出ウエーブレットSa(t-τ)を時間軸上の任意な箇所に、差を取る方を反転配置して得られる。又、D2W(t-τ)は、t3=τで偶関数となるよう時間軸t3の任意な箇所に、1次差分検出ウエーブレットを反転配置して得られ、n=kの場合は、t4=τで重なった偶関数となる。これら物理的ウエーブレットを用いて[数1]や後述の[数58]等のいかなる時系列を[c]とし、[c]から時刻τの変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を得る数式を、[数45]-[数47]で記述する。なお、[数45]は、[数41]と同一式である。

0100

差分間隔を等しくした、s = k
= n の場合、

0101

従って、時系列[c]の最新な時刻をmとすると、変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出する時刻τと最新時刻mとの関係は、変位のみ検出する場合、m=τ+w、速度まで検出する場合は、m=τ+w+n/2、加速度まで検出する場合は、m=τ+w+(n+k)/2となる。τはmより常に遅れ、その遅延量は、移動平均を取る幅(2w+1)のwと、差分を取る間隔nとkとで定まる。又、これらwとnとkの設定は、次に説明するように、時系列[c]から、ノイズを除去し、選択的に設定された周波数成分を持った変位、速度、加速度を抽出する。従って、自然現象を、これら選択された周波数領域にある物理量で定量化でき、その現象を、[数44]で与えるニュートンの運動の第二法則で記述できる。

0102

[図7]のt1、t2、t3、t4の時間軸上に配置されている時刻τの、変位検出用のDDW(t-τ)、1次差分検出用のD1W(t-τ)、2次差分検出用のD2W(t-τ)ウエーブレットは、それらが、左から右へと単位時間ずつ移動する度に、その時間軸上にある時系列[c]との相関量(相関積分の値)を、[数45]、[数46]、[数47]、[数48]で与えられた変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)として検出する。検出ウエーブレットの波形が、時系列[c]の変動と類似すると、相関が高くなり、大きな相関量を、検出した事になる。つまり、各ウエーブレットの形状に含まれる周波数成分と時系列[c]の変動がマッチする成分のみ、大きく抽出する機能を持つ。相関積分で抽出される周波数成分は、相関積分のフーリエ積分変換で与えられる。DDW(t-τ)とD2W(t-τ)とは、偶関数なので、検出された変位D(c,τ)のフーリエ変換は、DDW(t-τ)と時系列[c]のフーリエ変換(離散フーリエ変換)との積、加速度A(c,τ)のフーリエ変換は、D2W(t-τ)と時系列[c]のフーリエ変換の積として与えられる。速度V(c,τ)のフーリエ変換は、D1W(t-τ)が、奇関数なので、D1W(t-τ)のフーリエ変換の複素共役と時系列[c]のフーリエ変換の積で与えられる。従って、[図7]のw(Δt=
2w+1)、n、kのパラメータで定めた各検出ウエーブレットのフーリエ積分変換が、時系列[c]から抽出する変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)の周波数領域を選択する。それらフーリエ積分結果を、周波数f、複素数

を用いて、次に与える。

0103

差分間隔を等しくした、s = k = n の場合、

0104

DDW(t-τ)は、[数49]から、周波数が、1/Δt以下の周波数領域のみ大きく抽出するローパスフィルター機能を持ち、D1W(t-τ)は、[数50]から、[数49]のローパスで選択された周波数領域内にある1/2n付近の周波数領域を更に大きく抽出するバンドパスフィルター機能を持ち、D2W(t-τ)は、[数51]から、[数49]のローパス機能に加え、その低い周波数領域内の1/2n付近と1/2k付近の周波数領域を更に大きく抽出するバンドパスフィルター機能を持つ。差分間隔が等しいs = k
= n の場合、D2W(t-τ)は、[数52]から、[数49]のローパス機能に加え、その低い周波数領域の1/2s付近の周波数領域を2重に抽出するバンドパスフィルター機能を持つ。

0105

変位検出ウエーブレットに使用された方形波Sa(t)、Sb(t)、Sc(t)は、デルタ関数δ(t)を得る近似関数の1つであった。そのような近似関数は、方形波以外にもある。例えば、幅が2Δtで高さが1/Δtの三角波関数等の偶関数や、次式の[数53]で与えられる正規分布関数もその例である。

0106

0107

S(t)や[数53]等、デルタ関数δ(t)を得る全ての近似関数は、1次差分、2次差分検出ウエーブレットに使用する変位検出ウエーブレットとして使用できる。しかし、変位検出には、δ(t)を得るそれら近似関数でなくとも、波形の面積が有限ならば、規格化して+1とできるので、いかなる偶関数をも使用できる。例えば、ウエーブレットの形状を、ローパスフィルター機能を高めた偶関数にする事も出来る。更に、近似的に偶関数となるだけでも良い。

0108

[特許文献1]の発明は、[図6]の変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットと[数1]の時系列[c]との相関積分を、移動平均とその差分で置き換え、変位D(c,t)を、[数40]で与える[数1]の時系列[c]のw個の移動平均値で与えた。その移動平均個数のwが、Δtの幅に相当するので、[数40]の移動平均個数の2w+1は、w、iの加算は、0からw-1までとなる。差分間隔nとkは、[図6]のSa(t-τ)の配置間隔である。移動平均個数wと差分間隔nとkとを、w=20〜25、n
= k= s= 30〜35とすると、中国・四国・近畿地方に固有な60〜70イベントの周期を持った加速度A(c,t)を抽出でき、[図3]の大地震のCQKとCQT予兆の推移を抽出できる。[特許文献1]は、このCQKとCQTとからなる自然法則を大地震の予知に利用した。しかし、[図6]の各検出ウエーブレットを、[図7]の各検出ウエーブレットに変更すると、[数45]の変位D(c,t)と、[数47]もしくは[数48]の加速度A(c,t)を用いた、[数44]のニュートンの運動の第二法則を、大地震発生の自然法則に適用でき、その物理モデルも構築できる。更に、[図7]の各検出ウエーブレットは、複雑な運動をしている[数1]の時系列[c]から、変位検出ウエーブレットの幅と差分を取る間隔で選択的に抽出した周波数領域にある運動のみ検出する事が可能となる。選択する周波数領域は、変位、速度、加速度を検出する物理的ウエーブレットの周波数特性式、[数式48]、[数式49]、[数式50]、[数式51]で、与えられる。従って、対象とする周波数領域にある運動を選択的に抽出する技術とその物理モデルとを大地震の予知に利用できるので、[特許文献1]の発明の技術の改善ができる。更に、上記2つの物理的性質を満足する変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットを用いると、巨大地震を発生させる地殻の応力変化を、その地殻表面に出現する異常地殻変動として定量化でき、その自然法則も、巨大地震の予知に利用する事ができる。更に、変位検出ウエーブレットと、応力と歪に関する物理法則を用いると、大地震や巨大地震の発生直前に、地殻に蓄積されていた歪エネルギーが急激に解放される自然現象を定量的にモニターでき、このモニター手段を、大地震や巨大地震の予知に利用する事ができる。従って、[特許文献1]の発明には、次の5つの改善可能な項目がある。

(1)大地震発生の時刻(震源時)の予知
(2)マグニチュードの予知
(3)加速度A(DEP,t)とA(INT,t)の波形の反転が、[図3]の様に、略、完全な反転とならない場合、CQKとCQT予兆の推移を如何に確定し予知に利用するか
(4)巨大地震の予知
(5)大地震、巨大地震につながる地殻の蓄積応力の臨界状態を如何にモニターし、大地震、巨大地震の予知に利用するか
これら項目に関する理論及び技術的な背景を順に説明する。

0109

第1の改善項目、「大地震発生の時刻(震源時)の予知」について述べる。
[特許文献1]は、地震発生の2次の変化率である加速度A(c,t)を、[数1]の時系列[c]から、[図6]の差分間隔を、n=k=sと等しくした2次差分検出ウエーブレットを用いて検出した。この時、加速度A(c,t)は、各震源要素間に共通な略2sの短い固有な周期(時間的な尺度)を持って変動するが、大地震発生直前には、通常の地震発生とは異なる2種類のA(INT,t)とA(DEP,t)とA(MAG,t)との振幅及び位相関係が成立する。この2つの特殊な関係が、[図3]に表示した大地震発生のCQK及びCQT予兆であった。この図で、大地震が発生した時刻は、それら予兆を検出した時刻ta1のA(INT,ta1)の振幅のピークが、半周期後に、反転し、逆のピークに到達した時刻ta2である。[特許文献1]は、加速度A(INT,t)が、略2sの周期を持った変動をしているので、予兆検出時刻ta1の半周期前のta0に2sを加算するか、予兆検出時刻ta1に半周期sを加算して大地震発生時刻のta2を予知した。しかし、加速度A(INT,t)の周期は、略2sであるが、振動毎に、変動する。従って、その様な場合も考量し、予兆検出時刻までの前半の半周期を、ta1-ta0とし、この前半の半周期が、後半の半周期と等しいと仮定して、大地震の発生時刻ta2を予知した。しかし、この後半の半周期が、前半と異なる場合、大地震発生の時刻(震源時)の予知には改善が求められる。この改善に、[数45]の変位D(c,t)と[数48]の加速度A(c,t)の間に成立する[数44]のニュートンの運動の第二法則を利用する。

0110

このニュートンの運動の第二法則を、[図8]に表示する。[図3]と同様に、横軸は、時間t、縦軸は、変位D(c,t)、加速度A(c,t)で、上向きが負、下向きが正の方向となる。変位は、[数45]で、加速度は、[数48]で与えられているとする。最新の変位D(c,t)を与える時刻をtx2とすると、差分間隔時間をn=k=sとして算出する最新の加速度A(c,t)を与える時刻tx1は、tx1=tx2-sとなる。従って、[図8]の遅れ時間は、sとなる。加速度A(c,t)と変位D(c,t)とは常に、逆位相となる。略周期的に変動している変位が、時刻ta1で最大振幅値D(c,ta1)を取ると、加速度はその変位を減少させる負の最大加速値A(c,ta1)を取る。変位が、時刻ta2で、最小値D(c,ta2)に到達していても、加速度は、まだ、時刻ta2に到達していない。加速度が、破線で示された正の最大値A(c,ta2)に到達する時には、変位は、加速度A(c,ta2)が[数48]から算出されるので、差分を取る間隔だけ先の時刻ta3(ta2+s)のD(c,ta3)に到達している。

0111

大地震の予兆抽出直後の[数44]のニュートンの運動の第二法則が、[図8]に表示されているとする。又、時刻tx2(tx2 > ta2)が、最新の変位のD(c,tx2)を与えると仮定する。その時、[図8]の各時刻は、次の関係を持つ。
(1)時刻tx2(tx2
> ta2)のD(c,tx2)が、最新の変位となる。
(2)時刻tx1(=tx2-s)のA(c,tx1)が最新の加速度となる。
(3)[数44]の運動の第二法則により最新の加速度A(c,tx1)が作用している変位は、時刻tx1の変位D(c,tx1)であるが、加速度A(c,tx1)の算出には、変位D(c,tx2)も含まれる。
(4)[数1]の時系列[c]の最後(最新)の変位d(c,m)を与える最新の時刻mは、m=tx2+wとなる。
(5)大地震が発生する時刻は、震源要素cをINTとした加速度A(INT,t)が谷(正の方向のピーク)となる時刻ta2となる。
この大地震発生時刻ta2は、[図3]のCQT予兆の大地震が発生する時刻に対応する。ニュートンの運動の第二法則から、時刻ta2の加速度A(INT,ta2)は、変位D(INT,ta2)に作用し、変位D(INT,ta2)は、その振動の山(負の方向のピーク)に在る。[図3]のCQK予兆の大地震発生の場合は、大地震発生時刻ta2で、[図8]のA(c,ta2)とD(c,ta2)の位相関係が、それぞれ反転する。

0112

加速度A(INT,t)が時刻tx1の時点で、振幅の谷(正の方向のピーク)となる時刻ta2を予知する事は、変位D(INT,t)が、確実に負の方向のピークを過ぎた時刻のtx2で、変位D(INT,t)が、負の方向のピークに在った時刻ta2を抽出する事と、等しくなる。従って、
「加速度A(INT,t)が、正の方向のピーク値に今から到達する時刻ta2を予知する。」事は、
「変位D(INT,t)が、負の方向のピーク値に既に到達した時刻ta2を抽出する。」事になる。
加速度A(INT,t)が正の方向のピーク値に到達する時刻は、変位D(INT,t)が、負の方向のピーク値に既に到達した時刻ta2を用いて、時刻tx1から、(ta2-tx1)イベント後に、大地震が発生すると予知できる。変位D(INT,t)は、時刻tx2から更に(ta2-tx1)イベント進んだ時刻ta3で大地震の発生を、観測する事になる。[数44]で与えられる運動の第二法則が成立する周波数領域は、[数1]の時系列[c]から、パラメータwとsを選択し抽出される。その抽出領域は、[図7]の変位検出と加速度検出ウエーブレットが持つ周波数特性式、[数49]と[数52]のΔtを2w+1として与えられる。従って、変位D(INT,t)の振動の周期は、[数49]で選択された略1/(2w+1)以下の低い周波数領域内で変動し、その2次の変化率を与える加速度A(c,t)は、更に低い周波数の1/sを中心としたバンド幅内で変動する。変位D(c,t)の周期が変動しても、運動の第二法則により、その周期変動に追従して加速度A(c,t)が作用する。従って、加速度A(c,t)の正と負の方向の振幅値のピークに到達する時刻は、差分間隔の時間sだけ先に進んだ変位D(c,t)の負と正の方向の振幅値のピークに到達した観測時刻から予知できる。CQK予兆の大地震の場合は、[図8]のA(c,t)とD(c,t)が、CQT予兆の場合の逆位相の関係となるので、上記CQT予兆の大地震の場合の議論と変わらない。この様に、[特許文献1]の大地震発生の時刻を予知する技術は、[図3]の加速度A(INT,t)の周期振動に、ニュートンの運動の第二法則を導入し、常に差分を取る時間間隔sだけ先の情報を持つ変位D(INT,t)の周期振動を利用し、変位のピーク到達時刻を、大地震発生時刻とする予知技術に改善できる。又、大地震発生の時刻の予知に震源要素c=INTを利用したが、大地震発生の直前には、A(INT,t)とA(DEP,t)とは逆位相にあるので、A(DEP,t)も利用でき、変位D(DEP,t)の周期振動を利用してもよい。

0113

第2の改善項目、「マグニチュードの予知」について述べる。
[特許文献1]の発明における、マグニチュードの程度の予知に関しては、[非特許文献11]にもあるように、地震発生の変化に、地殻の応力場の変化が反映されているというよく知られた自然法則を利用している。具体例としては、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方に発生したマグニチュードが3.5以上の地震の発生時刻の時間間隔INTの時系列d(INT,m)を利用する。INTのランダム的な変動を平滑するために、例えば、任意な個数、2s個(2s=60〜70)の移動平均、もしくは累積加算を取る。時間に関する固有な尺度(60〜70イベント)は、大地震の予兆を検出する加速度A(c,t)の変動周期に相当する。時刻mのINTの2s個の累積値を、CI(m,2s)と表記する。CI(m,2s)は、2s個の地震発生に、費やした時間なので、CI(m,2s)が、増加すれば、単位時間当たりの地震の数が、減少し、地震活動が静穏になり、応力の蓄積が進む。従って、CI(m,2s)を利用すれば、大地震に至る応力の蓄積が如何に推移するかを観察する事が出来る。例えば、上記中国・四国・近畿地方の場合、次の3つの段階に分類できる。まず1段階目は、地震の数年前から観測される静穏の始まり、次の2段階目は、1年から半年程前に観測される蓄積された応力がピークに到達し応力の蓄積が減少し始めたと判断される臨界静穏状態、そして、3段階目は、応力の蓄積が急激に減少し、大地震の発生数日〜数時間前まで急減少が継続する段階に分類できる。すると、臨界静穏状態に対応する形状の振幅値、大地震の発生数日までに観測される形状全体の幅やその面積の大きさが、蓄積応力が作用する断層形状(長さや幅)や断層面積に比例していると仮定できる。又、後述するように、CI(m,2s)は、地殻に蓄積され開放される歪エネルギーの密度に比例する量となるので、その形状の総面積が、大地震により解放される総歪エネルギーと仮定できる。従って、過去に発生した大地震のM6クラスとかM7クラスとかのマグニチュードの程度とこれら形状の大きさとの比例関係から、今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの程度の予知をする事ができる。一方、マグニチュードは、[非特許文献1]によると、MKS単位で、次の[数54]で与えられる。

0114

ここで、M0は地震モーメントで、MKS単位で、[数55]で定義されている。

0115

ここで、μは、断層を含む地殻の剛性率,Dは、断層のすべり量、Sは、断層の面積である。Sは断層の幅W(km)と断層の長さL(km)との積(S=W・L)で与えられる。

0116

また、[非特許文献15] によると、日本で観測されたマグニチュードが6 ≦M ≦ 8.5の地震にたいし、断層の長さLと幅Wの間には、経験的に、L=2Wの関係があり、断層の長さLかWを用いると、地震のマグニチュードは、次の、[数56]か[数57]により与えられる。

0117

0118

従って、衛星を用いた干渉計やGPS等を用いた観測から、今にも発生しそうな断層の長さLを予測できたり、地殻の応力変化(地震発生の変化)から断層の幅W、断層の形状や面積を予測できたりするならば、[特許文献1]に開示された大地震のマグニチュードMの予知方法に、[数56]、[数57]等を追加し、予知の定量化の改善ができる。その改善に、本願の発明者は、[数44]のニュートンの運動の第二法則を利用する。この時、前述した様に、変位は、[数45]で与えられるD(c,t)、加速度は、[数47]もしくは[数48]で与えられるA(c,t)とする。

0119

[特許文献1]で利用した大地震の予兆の推移は、[図3]の加速度、A(DEP,t)、A(INT,t)、A(MAG,t)の位相と振幅の関係で定量化したCQKとCQTである。これら二つ予兆は、[特許文献1]の図2図3図4か、後述の[図29]、[図30]、[図31]の中国・四国・近畿地方の震源分布に表示したM7.2の兵庫県南部地震のCQK予兆と、M7.2の鳥取県西部地震のCQT予兆である。この二種類の予兆は、その中国・四国・近畿地方における深発地震を除いたマグニチュード(M)が、M≧Mc(Mc=3.5)の地震発生の変化から抽出した。[数47]、もしくは、[数48]の加速度A(c,t)を用いたCQKとCQTの関係を、[数44]のニュートンの運動の第二法則を利用して、[数45]の変位D(c,t)
(c=DEP,INT,MAG)を用いた関係、CQKDとCQTDにそれぞれ変換する。[数45]で、Δt=2w+1とした変位D(c,t)と、差分間隔の時間をn=k=sとした[数48]の加速度A(c,t)を算出するには、時刻tから差分間隔sだけ過去のD(c,t-s)と、sだけ先のD(c,t+s)とを必要とする。しかし、変位D(c,t)の最新の時刻を、[図8]で大地震が発生するta3とすると、加速度A(c,t)が変位D(c,t)に作用している[数44]のニュートンの運動の第二法則が成立する時間tの範囲は、t≦ta3-sである。従って、加速度A(c,t)
(c= DEP,INT,MAG)で定量化した[図3]のCQKとCQTの特別な位相関係が成立する時間の範囲は、t≦ta3-sであるが、変位D(c,t)の周期性を利用し、時刻ta3まで拡張したD(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)とを用いたCQKDとCQTDにそれぞれ変換し、[図9]に、模式的に表示する。変位D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)は、[数45]で2w+1個の地震発生に関する移動平均で得た値なので、CQKとCQTから変換したCQKDとCQTDは、2w+1個の平均的な地震発生の変化(地震活動)を記述する。また、この移動平均に関して、[数1]で与えられる時系列[c]の最新時刻mは、m
= ta3+wとなる。

0120

[図9]の模式図では、縦軸に、実線のD(INT,t)、破線のD(DEP,t)、実線のD(MAG,t)を取り、横軸に時間tを取り、CQKDとCQTDの関係を表示する。ただし縦軸は、[図3]と同様に、上向きが負、下向きが正の方向となる。CQKとCQTの特殊な位相関係が確認された時刻ta1の箇所に、下向きの矢印で、それぞれ、「CQKD型の位相関係」と「CQTD型の位相関係」と表示した。CQKDとCQTDを用いた地震発生の変化(地震活動)は、CQKとCQTに関連して次の様になる。

0121

先ず、[図9]のCQKDの地震発生の変化を説明する。[図3]のCQKは、時刻ta1でA(DEP,t)とA(INT,t) の反転が生じ逆位相となる。従って、[図8]に示した[数44]のニュートンの運動の第二法則から、CQKDも、時刻ta1で、D(DEP,t)とD(INT,t)との間に、反転が生じる。反転時、D(DEP,ta1)の値は大きいので、震源の深さ(DEP)は深い。D(INT,ta1)は小さいので、地震発生の間隔時間(INT)は短い。D(MAG,ta1)は大きいので、マグニチュード(MAG)は、大きい。そして、大地震は、CQKのA(INT,t)が、時刻ta1から、半周期後に反転する時刻ta2となった時、発生する。この時、D(INT,ta2)も反転し、その値は大きく、INTは長い。又、周期が長くなったCQKのA(DEP,t)も、時刻ta2で震源を深くする方向に反転する。従って、時刻ta2のD(DEP,ta2)は、浅い。地震のマグニチュード、D(MAG,ta2)は、小さくなる。大地震が発生する時刻ta2の加速度を算出する変位は、ta2から半周期sだけ進んだ時刻ta3の変位も含まれる。その変位は、時刻ta2の状態から反転し、D(INT,ta3)が、小、D(DEP,ta3)が、大、D(MAG,ta3)が、大となる。従って、時刻ta3の地震の発生状況は、INTが短く、DEPが深く、MAGが大きい。

0122

次に、[図9]のCQTDに関連した地震発生の変化を説明する。[図3]のCQTは、時刻ta1でA(INT,t)とA(DEP,t)との間に振幅の反転が生じ逆位相となる。その反転は、先のCQK現象とは逆の反転となるので、CQTDは、CQKDと比較すると、変位D(DEP,t)とD(INT,t)との間に逆の反転関係が成立し、他の関係は、CQKDと同一となる。時刻ta1のD(DEP,ta1)は小さいので、震源(DEP)は浅く、D(INT,ta1)は大きいので、地震発生の間隔時間(INT)は長い。D(MAG,ta1)は大きいので、マグニチュード(MAG)は、大きい。そして、大地震は、A(INT,t)が、時刻ta1から半周期進み、反転する時刻ta2で発生する。この時、D(c,t)も反転し、D(INT,ta2)は小さく(INTは短く)、D(DEP,ta2)は大きく(震源は深く)、地震のマグニチュードD(MAG,ta2)は、小さくなる。大地震が発生する時刻ta2の加速度を算出する変位D(c,t)は、ta2から半周期sだけ進んだ時刻ta3の変位も含まれる。その変位D(c,t)は、時刻ta2の状態から反転し、D(INT,ta3)が、大、D(DEP,ta3)が、小、D(MAG,ta3)が、大となる。従って、時刻ta3の地震の発生状況は、INTが長く、DEPが浅く、MAGが大きい。

0123

変位D(c,t)と加速度A(c,t)間に、[数44]のニュートンの運動の第二法則が成立する[図9]の時刻ta1からta2までのCQKDとCQTDの時間的推移を、[図10]に地震発生の変化の模式図として描く。図に於いて、X印の特大フォントサイズがM7.2の大地震で、その他の大小サイズは、[数45]における移動平均個数に相当する2w+1個の平均的なマグニチュード、D(MAG,t)の大小に対応している。大きいフォントサイズは、マグニチュードが4程度(M4)で、小さいフォントサイズは、マグニチュードが3.8程度(M3.8)となる。X印の地表面からの深さは、発生した地震の平均的な震源の深さ、D(DEP,t)に対応している。X印の数の多少は、そのX印に相当するマグニチュードを持った地震の一定時間当たりの平均的な発生回数の多少を表示する。従って、その数が多ければ、その大きさの地震発生の平均的な間隔時間、D(INT,t)は、短く、少なければ、D(INT,t)は、長い。

0124

従って、[図10]の左側の模式図のM7.2の兵庫県南部地震等のCQK予兆検出時、地殻表面から深い個所で、M4地震が多発している。D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)は周期変動しているので、その半周期後、CQK予兆検出時の地震発生の状態から反転し、地殻表面から浅い個所で、M3.8地震が、時々発生している状態となる。深い個所から浅い個所への反転直後に、CQK予兆の大地震が、発生するので、この反転に伴う震源の深さD(DEP,t)の変化量に相当する応力変化が、CQK予兆の大地震の断層運動を起こす地殻の応力変化を誘発する。震源の深さD(DEP,t)の変化量をΔD(DEP,t)とすると、その変化の方向は、■の破線矢印が示す深い方から浅い方向の上向きとなる。その変化量ΔD(DEP,t)を発生させる力ΔF(DEP,t)との関係は、ニュートンの運動の第二法則を記述する[数44]の変分Δを取った数式が、ΔF(c,t)∝-KcΔD(c,t)となるので、変化量ΔD(DEP,t)に比例した力ΔF(DEP,t)は、ΔD(DEP,t)が変化を生じる方向と逆方向に作用する。従って、CQK型のΔF(DEP,t)の方向は、●の破線矢印で示した浅い方から深い方向の下向きとなる。地殻内では、地震発生の変化で生じたΔF(DEP,t)を打ち消す方向、即ち、●の破線矢印で示した上向きの方向に、ΔD(DEP,t)の発生個所より浅い所で、反作用的な応力変化が誘発されると推論される。従って、その反作用的な応力変化が浅い所の断層に作用し、せん断応力が断層の静止摩擦応力を上回れば、特大フォントサイズのX印で表示したCQK型のM7.2大地震が発生する事になる。せん断応力は、変化量ΔD(DEP,t)を起こした力ΔF(DEP,t)から誘発されたので、ΔD(DEP,t)と略等しい幅W
kmを持った断層を動かす事ができると推論される。実際、M7.2の兵庫県南部地震の変化量ΔD(DEP,t)=20kmは、[非特許文献16]に報告されている断層幅W=20kmと一致しているので、上記推論は正しい。

0125

CQT型の大地震(M7.2の鳥取県西部地震等)の場合は、[図10]の右側の模式図で、次の状況を示している。大地震のCQT予兆検出時、地殻表面から浅い個所で、M4地震が時々発生している。D(DEP,t)、D(INT,t)、D(MAG,t)は周期変動しているので、その半周期後、CQT予兆検出時の地震発生の状態から反転し、■の破線矢印で示した深いい個所で、M3.8地震が、多発している。この反転直後に、CQT予兆の大地震が、発生する。反転時、CQK予兆の大地震の場合と同様に、D(DEP,t)の変化量をΔD(DEP,t)とすると、ニュートンの運動の第二法則から、●の破線矢印で示した上向きの力ΔF(DEP,t)が、発生し、このΔF(DEP,t)を打ち消す方向、即ち、ΔD(DEP,t)の発生個所より浅い所で、●の破線矢印で示した下向きの反作用的な応力変化が誘発されると推論される。この応力変化が幅W
kmの断層に作用し、そのせん断応力が、断層の静止摩擦応力を上回り、大地震を発生させる断層運動が生じたと推論される。M7.2の鳥取県西部地震の場合、ΔD(DEP,t)=15kmとなり、[非特許文献17]に報告されている推定断層幅、W=17kmと略一致しているので、推論は正しい。

0126

兵庫県南部地震(1995-1-17、CQK予兆タイプでM7.2)、山口県東部地震(1997-6-25、CQT予兆タイプでM6.6)、鳥取県西部地震(2000-10-06、CQTタイプでM7.2)、中越地震(2004-10-23、CQTタイプでM6.8)等の大地震の断層形状(長さLと幅W)は、[非特許文献16]-[非特許文献19]によると、大地震の余震分布や地震波観測に基づく断層運動のモデル等から推定されている。これら大地震の推定断層幅Wと、大地震発生前に観測される、D(DEP,t)の変化量ΔD(DEP,t)とを比較すると、山口県東部地震を除き、WとΔD(DEP,t)とが、略、同じ値になる。従って、変化量ΔD(DEP,t)を断層幅Wとし、[数57]を用いると、今にも発生しそうな大地震のマグニチュードの予知が、可能となる。この概要は、[非特許文献20]に報告されている。従って、[特許文献1]に開示された大地震のマグニチュードMの予知の定量化の改善ができる。

0127

第3の改善項目、「加速度A(DEP,t)とA(INT,t)の波形の反転が、[図3]の様に、略、完全な反転とならない場合、CQKとCQT予兆の推移を如何に確定し予知に利用するか」について述べる。
[図3]のCQKとCQT予兆において、加速度A(DEP,t)とA(INT,t)とが、完全な逆位相とならない波形の反転も観測されている。例えば、[特許文献1]の改善の実施例として後述する2011年3月10日に発生した東北地方のCQKのM6.4地震や2011年7月5日に発生した和山県のCQKのM5.5地震等がある。これらの地震では、地震発生日は、[図3]のA(INT,t)が負のピーク値をとる時刻ta2ではなく、A(DEP,t)が、時刻ta2の正のピーク値から更に半周期進んだ負のピーク値を取る時刻となる。その時刻は、[図8]のA(c,t)とD(c,t)で震源要素cをDEPとした関係図を用いると、時刻ta3となる。この発生時刻のta2からta3への遅延は、上記CQK型の物理モデルによると、時刻ta1からta2の変化量ΔD(DEP,t)で生じるΔF(DEP,t)は、時刻ta2で今にも発生しそうな大地震の断層に作用するせん断応力を誘発する。しかし、そのせん断応力は、変化量ΔD(DEP,t)で生じるとされたΔF(DEP,t)よりも少ない量となり、変化量ΔD(DEP,t)に相当する断層幅を持った断層の静止摩擦応力より小さくなる。従って、そのCQK大地震は、時刻ta2で発生しない。時刻ta2からta3までの変化量ΔD(DEP,t)で生じたΔF(DEP,t)が誘発するせん断応力が更に加わると、断層に作用するせん断応力は、断層面の静止摩擦応力より大きくなり、そのCQK大地震が時刻ta3で発生すると推論される。ただし、この場合でも、時刻ta1からta2までの変化量ΔD(DEP,t)が、断層幅Wに略等しくなる。従って、断層幅Wを持った断層に作用するせん断応力を生み出す源となるΔF(DEP,t)を発生させる物理モデルは、CQKとCQT予兆の加速度A(DEP,t)とA(INT,t)の波形の反転が、[図3]に図示した理想的な反転と異なる場合、[特許文献1]の大地震発生時刻と震源の予知技術を改善する。

0128

第4の改善項目、「巨大地震の予知」について述べる。
マグニチュードが8.5より大きな巨大地震にも[数56]や[数57]が成立すると仮定すると、巨大地震の断層長Lの予測が、巨大地震のマグニチュードの予知となる。従って、断層長Lの予測をするために、[特許文献1]に用いた変位、1次差分、2次差分検出ウエーブレットを上記2つの物理的性質を満足する各検出ウエーブレットに変更して、巨大地震発生の自然現象を定量化し、巨大地震の予知に利用する。

0129

本願の発明者は、次に述べる地殻表面に出現する変化(地殻変動)のGPS観測から、「プレート境界に沿って出現する地殻変動の異常の広がりが、今にも発生しそうな巨大地震の断層長Lとなる。」自然現象を発見した。地殻変動の定量化は、先ず、GPSを用いて観測した各電子基準点(GPSステーション)の世界測地系(地球の重心が原点)の位置座標値を、各ステーションに定めた東西(X軸)、南北(Y軸)と上下(Z軸)方向の直行座標系の位置座標値に変換する。この座標値を用いて、ステーションの位置が変化する推移を、3方向成分の時系列とし、所定の基準位置からの変位とする。この3成分の時系列を、[数1]の時系列[c]と同様に記述する。従って、cは、東西方向(X軸)成分を表すE、南北方向(Y軸)成分を表すN、上下方向(Z軸)成分を表すhとなる。各時系列の単位は、メートル(m)、時間を示すインデックスjは、日数となり、単位時間は、1日となる。GPSステーションの基準位置を、初日のGPS観測値とすると、初日の変位が、ゼロとなり、2日目の変位が、基準値からの位置変化の値となる。変位時系列データの各成分は、[数1]の震源要素cを、EとNとhで置き換えた次の[数58]となる。

0130

0131

初日の位置を、ステーションの基準位置としたので、d(E,1)、d(N,1)、d(h,1)はそれぞれ、ゼロとなる。しかし、ステーションの基準位置は、任意日のステーションの位置に取ることもできる。この場合、任意に選択した日の各変位がゼロとなる。

0132

この様に、GPSステーションの日々の位置座標を時系列化し、その平均値を基準位置とし基準位置からの変動を変位時系列とするグラフ化データ化の技術は、国土地理院のウエブサイトで公開され、それら表示データもダウンロードできる。変位時系列の単位時間は、1日(24時間)である。更に、公開されている10年以上の長期間のGPSステーションの日々の位置情報は、F2かF3解析の各年毎のデータファイルとして、ダウンロードできるので、それら世界測地系での位置情報を[数58]の変位時系列(単位時間は1日)に座標変換すれば良い。GPSステーションの位置情報は、GPSの観測データの処理方法に依存するので、この単位時間は、1日(24時間)でなく、処理速度の速い1秒とする事もできる。[数58]で与えられるGPSステーションの変位は、ノイズによる変動が大きい。特に、[数58]の[h]の上下変動は、丁度、地震の発生(仮想粒子の出現)が描くジグザグ軌跡となる。[h]軌跡のジグザグ箇所で、その時間微分は不可能となり、運動の微分方程式を導出できない。他の[E]と[N]成分も、拡大するとノイズの影響が在り、[数1]の震源要素時系列[c]と同様に、ジグザグ箇所で、その時間微分が不可能となる。従って、その時間微分操作が持つ時間の非対称性に関する物理的性質を、正しく反映する差分操作を導出しなければならない。この差分操作を満足させるためには、発明者が考案した変位と1次差分と2次差分とを検出するウエーブレットとを用いなければならない。これらウエーブレットを用いて、時系列[数58]から、[数式45]-[数式48]で与えられる変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出する。GPSステーションの時刻τの変位D(c,τ)、速度V(c,τ)と、そのD-V位相平面図のD(c,τ)-V(c,τ)軌跡とを用いると、ノイズに埋もれていた「地殻変動の異常」を「巨大地震発生の予兆」として確定できる。その予兆の推移(巨大地震発生の自然法則)の唯一の観測例が、2011年3月11日に発生した東日本巨大地震である。その予兆発生と推移の観測結果を、模式図にして説明する。

0133

巨大地震が発生した東日本は、大陸プレートの東端上に位置し、その下を太平洋プレートが、沈み込んでいる。これら2つのプレートの相対運動の方向は、主に、東西方向である。太平洋プレートは、年間、約4cmの率で主に西方向へ、一方、大陸プレートは、年間、約2cmの率で主に東方向へと運動している。そのプレート境界の東西方向の断面を模式図、[図11]-[図13]にして、緯度38.5度付近の地殻の3つの変形を説明する。

0134

(1)[図11]に描いた予兆発生前の東日本におけるプレート境界付近のスローな変形
太平洋に面する東海岸側の下には、太平洋プレートと固着している領域がある。その固着域は、[図11]に色で示され、その下の矢印は、太平洋プレートの西方向への運動方向を示し、固着域もその方向へ動いていた。固着域の西方向への運動が、太平洋に面する東海岸側を引きずり込んでいた(沈下させていた)。一方、大陸プレートの東方向へ矢印で示した運動は、日本海に面する西海岸側を押し上げていた(隆起させていた)。このスローな変形は、長年にわたり生じた変形で、実線からの通常な変形として破線で示されている。
(2)[図12]に描いた予兆的膨らみの発生と発生後の太平洋プレートの西方向への急加速と急停止とからなる異常加速運動
2009年12月8日頃から太平洋に面する東海岸側(大陸プレートの東端)と日本海に面する西海岸側に地殻の膨らみが観察された。大陸プレートの東方向への「押し」に対し、太平洋プレートの西方向への「押し」が強まったプレートの相対運動による膨らみは、「予兆的な膨らみ」として、赤の破線で表示されている。その膨らみは、東海岸側で1mm程、西海岸側で3mm程あった。又、この膨らみは、本州の東海岸側(四国の太平洋側も含む)と日本海岸側でも観察されている箇所がある。又、その「膨らみ」を観測した後、太平洋プレートの赤色の破線矢印で示されている西方向への異常運動が観測された。2010年7月8日頃から、その西方向への運動が加速され始め、2010年12月22日頃に通常の約3倍の西方向への移動速度に達した。その直後から、急減速し、2011年1月27日頃までに急停止した。そして、太平洋プレートの西方向への運動は、3月11日の巨大地震と津波発生まで停止し続けていた。
(3)[図13]に描いたプレート境界の固着領域の壊れ、誘起されたメガスラストが巨大地震と津波を発生させた。
大陸プレートの東端に位置する東日本の地殻の膨らみを支えていた固着域は、太平洋プレートの西方向の運動に耐え切れなくなり、[実施例]で後述する様に、先ず浅い箇所が破壊され、深い箇所が一挙に壊れ、プレート境界で赤色の破線矢印で示す方向にメガスラストを誘起し、東方向の断層運動をし、巨大地震と津波とを発生させた。壊れた固着域は、丸印の破線で表示されている。

0135

上記3つの地殻の変形過程とプレート運動とを予兆の推移とする概要は、[非特許文献21]にも、「膨らみ」と「太平洋プレートの異常運動」との連動として報告されているが、模式図や次に述べる詳細は省略されている。

0136

太平洋プレート上にある南鳥島、フィリッピン海プレートとの境界付近にある島、母島のGPSステーションの運動は、太平洋プレートの運動を代表しているとする。太平洋プレートは、太平洋上の南鳥島のGPSステーションの変位時系列によると、年間、約5.5cmの率で主に西方向(約5.7cmで西北方向へ、1.7cmで北方向)へ移動していた。しかし、南鳥島のGPSステーションの変位時系列は、複数の期間に渡り欠損データが存在し、定量解析ができない。又、2011年3月11日の東北巨大地震発生とは無関係に、父島のGPSステーションは、2011/03/09以降その運用停止が、予め決定されていた。しかし、巨大地震発生直前の3月8日までの太平洋プレートの運動の定量解析が可能である。母島のGPSステーションの変位時系列は、2004/06/15から2005/09/24までの長期間、データが欠損しているが、その他の期間では、欠損データが少なく定量解析が可能である。従って、太平洋上の父島と母島のGPSステーションが、太平洋プレートの西方向への運動を代表しているとする。ただし、これらのステーションは、フィリピン海プレートとの境界付近にあり、そのプレート運動の影響を少なからず受けているが、定性的には、国土地理院のウエブサイトで公開されている「日本列島の地殻変動情報の10年間の座標変化グラフ」の太平洋プレート上の南鳥島のGPSステーションの運動と調和している。従って、先ず、父島の時系列の変位[数58]から巨大地震発生直前に出現した地殻の異常加速運動と、巨大地震発生後の運動も含めた母島の異常加速運動とを説明する。

0137

[図14]に、父島、母島、東日本の太平洋側、日本海側にある解析に用いたGPSステーションの配置関係を示す。[図11]-[図13]で表示した東日本の東西方向の断面の一例が、破線で示した方向の断面となり、その断面方向には、川、上、両津2の各ステーションがある。1996年から開始されたこれらステーションの連続観測位置座標値には、GEONETのF3解を用いた。これらGPSステーションの過去10年の最新観測データは、国土地理院のウエブサイトの「日本列島の地殻変動の位置座標のグラフ」として公開されている。

0138

父島のGPSステーションのF3座標値を[数58]で表示される変位時系列に変換し、上段から、南北、東西、上下方向の変位の推移として、[図15]にグラフ表示した。1996年からの1999年までのデータには多くのノイズがあり、それらデータは解析に使用せず、2000年1月1日から2011年3月8日の期間のデータを使用した。父島のステーションは3月8日を持って予め運用停止が決定されていたので、3月9日以降の父島のステーションの位置座標は観測されていない。グラフの縦軸のプラス方向(上向きの方向)は、上段がN(北)方向、中段が、E(東)方向、下段が、地表からh(上)方向となる。各縦軸の単位は、全てメートル(m)で、赤色の目盛りの原点(ゼロ)上に黒色で記される目盛値が、2000年1月1日の位置を基準値の0
mとするオフセット値となる。例えば、上段の南北方向の変位時系列[N]の赤色目盛りの原点(0)上の黒色で記された0.05(メートル、m)が、2000年1月1日の南北方向の変位0mの基準位置からのオフセット値となる。従って、変位ゼロの基準位置は、目盛りが5000倍に拡大されているので、0.05メートル下方の、目盛りの-250に相当する個所となる。又、横軸は、各段に共通な日数の時間軸mで、1目盛は、単位時間の1日(day)である。最下段の時間のウインドウは、任意期間を拡張表示する拡張ウインドウである。時系列[N]の変位d(N,m)の推移は緑色で表示され、上の方向(北の方向)へ移動している。観測値に欠損日があれば、その日を、除去し、前後の日で連結表示している。又、2011年3月8日(m=3940)の最終の変位値は、左側の水銀柱の目盛りに緑色の柱の高さ赤色の原点ゼロの位置からオフセット表示され、その変位の値が、下方(縦軸と横軸が交わる付近)に緑色で0.1182メートルと記されている。又、(E,N,h)の直行座標の関係を図示した。同様に、中段には、東西方向の時系列[E]の変位の推移が、縦軸の拡大率2500倍で表示されている。2000年1月1日の位置からのオフセット値は、縦軸目盛りの原点ゼロで、-0.2mとなる。西方向への変位d(E,m)の総移動量は、10年余りで、0.3896メートルとなっている。又、下段の拡大率は、上段の5000倍と同じで、時系列[h]の変位d(h,m)の上下変動は、10年余り、殆ど無かった事を示している。2000年1月1日の位置からのオフセット値は、ゼロで、縦軸目盛りの原点ゼロ上に、0と表記されている。約0.02メートル(2cm)の日々の上下変動(ジグザグな振幅変動)は、実際に生じる地殻の上下変動とは、全く無関係なGPSの観測に関連する環境ノイズによるものである。もし、GPSステーションで観測する環境に異常が無く、一日に2cmの地殻の上下変動があれば、その地殻変動は、地震発生によるものである。[図15]によると、父島のステーションの通常な西方向への運動は、10年余りにわたり39cm移動していた。その年間の変化率は、約3.9cm/yearとなり、日々の変化率は、約0.11
mm/dayとなる。

0139

父島のステーションの位置の変化率(運動)を観測するために、例えば、[数58]で与えられる任意時刻mの[c]の変位d(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅(2w+1)を15日とした[数45]のD(c,τ)と[数46]の差分間隔nを20日としたV(c,τ)とを検出し、[図16]に、グラフ表示する。変位D(c,τ)と速度V(c,τ)の原点は、変位d(c,m)の原点と同じ、縦軸目盛の0である。なお、変位d(c,m)と、平均変位D(c,m)と、その速度のV(c,τ)の位相関係は、D(c,τ)が、d(c,m)から8日遅れ、V(c,τ)が28日遅れている。これら時系列の長さを同一にしたグラフ表示のため、m=0〜28に相当するd(c,m)の最初の28日間と、D(c,τ)の20日間のグラフは表示されていない。太平洋プレートの東西方向の運動を明確にするため、変位D(E,τ)と速度V(E,τ)との関係を、これら時系列グラフに追加して、D-V位相平面図にD(E,τ)-V(E,τ)軌跡を描く。位相平面図に於ける横軸の変位D(E,τ)の原点は、太い赤線で印をした縦軸目盛りの原点0の個所となり、その値は、オフセット値の-0.2mとなる。従って、D-V図に於ける原点の値は、変位D(E,τ)が、-0.2mとなり、変位の一次変化率である縦軸の速度V(E,τ)が、0m/dayとなる。このD-V位相平面図の横軸のDの範囲は、±24cmで右側反面がD(E,τ)のプラス(原点から東側)領域となる。縦軸Vの範囲は、±1
mm/dayとなり、上側半面が、V(E,τ)のプラス(東方向)領域となる。この位相平面図に描かれたD(E,τ)-V(E,τ)軌跡から、太平洋プレートの異常加速運動が特定される。西方向への速度V(E,τ)は、2010年7月11日頃まで、最大約0.2
mm/dayであったが、急激に加速し始め、2010年12月22日には、通常速度の約3倍の速度(0.66 mm/day)に到達した。この日には、父島近海でM7.9の大地震が発生している。その発生個所を、時系列[E]上の時刻m=3864(2010/12/22)の個所とD-V位相平面図の軌跡上にM7.9と矢印で表記した。急加速直後に、急減速が始まり、2011年1月27日頃には西方向への運動は停止し、速度V(E,τ)は、ゼロとなり、西方向への運動は、東方向へと逆転し、僅か3-5日後に、その東方向への速度は、0.06mm/dayまで上昇し、巨大地震発生直前の3月8日頃まで、その東方向の速度値は、変化しなかった。2009年12月23日から2011年3月8日の期間(m=3500〜3940)の様子を、[図17]に拡大表示した。拡大図の左下の数値、-0.3896は、2000年1月1日から2011年3月8日までのd(E,m)の総変位量が、西方向へ0.3896mであった事、その下の2500は、縦軸目盛りの拡大率である。D-V位相平面図に於ける変位D(E,τ)の原点は、太い青線で印をした目盛り-400の個所のオフセット値となる。目盛りの倍率が2500なので、このオフセット値は、-0.16mとなる。従って、東西方向の変位時系列[E]は、2000年1年1日の位置を基準にすると、縦軸目盛りの0が、-0.2mと、既にオフセットされているので、D-V図に於ける原点の値は、変位D(E,τ)が、-0.36mとなり、速度V(E,τ)の原点が、0m/dayとなる。変位D(E,τ)が、原点となる縦軸目盛り-400の値を取る個所の時刻は、m=3700の2010年7月11日で、その個所に両矢印と2010/07/11と表記した。D-V位相平面図の速度Vの縦軸目盛り範囲は、±1
mm/dayとなり、上半面がプラス(東方向)領域となる。変位Dの範囲は、原点となるオフセット値から、±4 cmとなり、右側半面が、プラス(原点から東側)領域となる。それら領域の大きさを、両矢印と数値で、D-V図に表記した。又、速度V(E,τ)と加速度A(E,τ)とを、左の縦軸目盛りの0を原点とした相対スケールで、表示した。又これら速度と加速度に含まれている振動の周期の28日を、破線間隔で加速度A(E,τ)上に示した。父島のステーションは3月8日を持って予め運用停止が決定されていて、その最終時刻は、m=3940となる。これら、異常加速運動が観測された上記日時は、変位検出ウエーブレットの幅15日と差分間隔20日による遅れ時間(最低、幅による8日と差分間隔による10日を加算した計18日の遅れ日数)は考慮されていない実時間である。異常運動の確定に費やす日数を考慮すると、50日程を要した急加速運動は、巨大地震が発生する50日程前に終え、その直後、急減速し、西方向への運動は、遅くとも20日程前に、急停止した事を、[数58]の時系列[E]から確認できる。更に、使用した幅(15日)と差分間隔(20日)は、用途別に、任意設定できる。例えば、日々のランダム変動ノイズと[図17]に出現している略28日の地球潮汐の周期とを平滑するために、変位検出ウエーブレットの幅(2w+1)を29日とし、差分間隔を35日とし、異常運動の確定をより正確にする事ができる。その2010年4月2日から2011年3月8日の期間(m=3600〜3940)の様子を、[図18]に拡大表示した。幅(2w+1)は、奇数値となるが、wの値が大であれば、偶数値を使用しても結果に差は無い。又、[数46]の差分間隔nは、偶数値であるが、nの値が大きければ、奇数値を使用しても結果に差は無い。

0140

父島のGPSステーションは、2011年3月9日以降その運用が停止されているので、母島のGPSステーションの変位時系列を用いて、巨大地震発生後の父島のGPSステーションの地殻変動を推論する。母島のGPSステーションでは、2004/06/15から2005/09/24まで長期間のデータ欠損があった。その欠損前後に、加速を伴った地殻変動は無かったと仮定すれば、その時系列データをオフセット連結できる。連結した結果には、地震による様な大きな地殻変動は観察されていないので、その「加速を伴った地殻変動は無かった」とする仮定は、概ね満足されている。従って、連結した時系列を2011年10月29日まで延長した[数58]の[E]に、幅29日の変位検出ウエーブレットと差分間隔35日の速度検出ウエーブレットを適用し、巨大地震発生前後の異常な加速運動を、[図19]に図示した。[図19]によると、母島のGPSステーションの変位時系列[E]は、巨大地震発生前まで父島と略同様なので、巨大地震発生後も、その東西方向の地殻変動は、父島と同様であったと推論できる。なお、2011年3月11日の巨大地震発生日、東北地方を始め日本各地のGPSステーションの、変位時系列[c]には、スパイクノイズが、存在し、母島のGPSステーションの変位時系列[c]にも、時刻m=3606(2011年3月11日)に存在している。そのノイズの個所は、2011/03/11
@ m=3606 M9のラベルと破線矢印で、東西方向の変位時系列[E]のd(E,m)上に表記した。又、異常変位運動を起こした個所には、父島近海の大地震の発生時刻とM7.9を2010/12/22
@ m=3527 M7.9のラベルと両矢印でd(E,m)とV(E,τ)上に表記した。この異常運動とM7.9大地震の発生個所は、D-V図の軌跡上にも矢印とM7.9を表記した。又、M9地震の個所もD-V図に描かれた軌跡上に表記した。巨大地震M9の軌跡は、スパイクノイズの影響で鋭く変化している。このスパイクノイズの影響を取り除くために、3月11日はGPS観測のデータ欠損日だとして、その日の前後のデータを連結し、巨大地震発生前後の変位時系列[E]のm=3300〜3836(2010年5月9日から2011年10月29日)までを、[図20]に拡大表示した。この時系列[E]とD-V位相平面図に描かれたD(E,τ)-V(E,τ)軌跡は、太平洋プレートの西方向への運動が、巨大地震が発生する45日程前に、急停止し、その直後、東方向への運動に反転するが、巨大地震発生後、西方向の運動に戻る。この西方向の運動は小さく150日間ほど継続し、太平洋プレートの西方向への運動に再加速されている。そのD-V位相平面図に描かれたD(c,τ)-V(c,τ)軌跡で表示される予兆の推移は、天気図で表示される台風情報と同等に取り扱える。「台風のの発生」は、次に述べる「東日本の通常変形からの膨らみの発生」と見なせる。従って、D-V位相平面図を、巨大地震発生の予報図や予知図として利用できる。

0141

これら太平洋プレートの異常な急加速、急減速運動は、大陸プレート上にある東北地方の日本海側(西海岸側)と太平洋側(東海岸側)に出現した「東日本の地殻の通常変形からの膨らみ」と連動している。膨らみの観測後に、太平洋プレートの異常な加速度運動が観察されているので、膨らみが、異常加速運動を誘引したと推論される。この膨らみは日本列島全域で観察されているが、「通常変形からの膨らみ」は、東北地方の東海岸側は種市付近から山付近に及び、西海岸側は、岩崎付近から入善付近に及ぶ。先ず、観測した東海岸側の通常な変形とその変形からの膨らみ(隆起)の観測結果例を述べる。

0142

通常な太平洋プレートの西方向への移動は、太平洋プレートと固着している東北地方の東海岸側を引きずりこむ。例えば、東海岸のGPSステーション女川の過去15年間余りの地殻変動時系列、[数58]の[N]と[E]と[h]のd(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅を400日とし、差分間隔を300日として、[数45]のD(E,τ)と[数46]のV(E,τ)とを検出する。それら検出結果を、[図21]に表示した。縦軸目盛りの拡大率は、上段の[N]が、5000倍、中段の[E]も、5000倍、下段の[h]が、10000倍である。これら検出結果によると、太平洋プレートとの固着は、女川のステーションを約18mm/yearで西方向へ、約10mm/yearで南方向へ引きずり、約6mm/yearで沈下させていた。女川の高さ方向の時系列[h]には、上段[N]と中段[E]に矢印で示された地震発生個所にノイズ変動とは異なる約4cmの沈下が観察される。この沈下は、このステーションの近くで2008年6月14日に発生したマグニチュード7.2の地震によるもので、時系列[E]を、4cm程東に、時系列[N]を1.5cm程南に移動させている。上下変動[h]には、この地震による変動以外、明確に観測されていないが、[N]には、2003年5月26日のM7.1、[E]には、2003年7月26日のM6.4の地震がそれぞれ観察されている。この女川のステーションは、これら地震時の移動も含め、15年間で、[N]から北へ約11cm、[E]から西へ17cm、[h]から下方へ9cmの移動が確認されている。[N]から、これらの移動は、絶えず南方向へ移動している。2008年6月14日のM7.2の地震による[E]の東方向への移動を除けば、西方向への定常的な移動は、[h]の沈下と連動している。各大地震の発生個所は、その発生日とマグニチュードを、時系列d(c,m)上に、矢印で示した。巨大地震の発生個所は、二重矢印で示した。

0143

上記太平洋プレートの西方向への通常な移動により沈下していた東北地方の東海岸側に、隆起速度成分を持った膨張(隆起)が2009年12月8日頃から始まった。その隆起の開始時点は、女川の[図21]の下段[h]のD(h,τ)とD-V位相平面図に描かれたD(h,τ)-V(h,τ)軌跡上に破線矢印で示した。又、時系列[h]を[図22]に拡大表示した。[図22]から、巨大地震発生直前までに、女川のステーションは、1.2
mm隆起し、その直前の隆起速度成分は、0.001mm/dayであった。この東海岸の膨張開始から半年後の2010年7月11日頃から、上記太平洋プレートの西方向への異常な加速運動が観測されたので、膨張が、異常加速を誘起した事になる。この膨張の開始は、巨大地震が発生する約445日前である。幅が400日の変位検出ウエーブレットを用いてその隆起の始まりが観測できたので、その開始の検出は、約245日前(245日=445日−200日)となる。更に、その隆起に、隆起速度成分(上下変動[h]の正の速度成分)を確認するには、巨大地震が発生する約150日前頃となる。なお、その巨大地震が発生した個所のD(h,τ)-V(h,τ)軌跡は、急激に変化する変位と速度データを連結する鋭い下降直線(細線)となり、その箇所をM9と二重線矢印で示した。

0144

2011年3月11日の巨大地震は、女川を約5m東へ移動、約1.7m南へ移動、約87cm沈下させた。従って、[非特許文献1]の「地震の物理」によると、太平洋プレートの西方向への移動が、プレート境界の固着域により、東日本の地殻に年間、2.14cmの率で歪を蓄積し(変形させ)、固着領域(断層)が、蓄積応力に耐え切れなくなり破壊され、断層がスリップし、巨大地震が発生した事になる。地震発生時の女川の総移動量535.23cmが、女川付近で蓄積されていた応力を開放した事になる。この総移動量に相当する応力を蓄積するには、約250年要した事になり、250年程前(1761年頃)に、M9クラスの東北巨大地震が発生していた事になる。東日本では、過去に、1611年12月2日、三沖で発生したM8.1の慶長三陸地震、1793年、県沖政M8.2地震、1896年6月15日、三陸沖の日本海溝付近で発生したM8.5地震と1933年3月3日、三陸沖の日本海溝付近で発生したM8.1地震があるが、250年程前(1761年頃)に、M9クラスの巨大地震は、存在しない。従って、その様な巨大地震が過去に存在しなかったのであれば、プレート境界の固着領域付近の地殻に蓄積された応力の巨大地震による解放は、[非特許文献1]の「地震の物理」では説明できないし、その巨大地震の発生日や時期の予知は不可能となる。

0145

大陸プレートの東方向への通常な移動は、大陸プレートの東海岸側(東端)が太平洋プレートに固着しているため、東北地方の西海岸側を、東方向へ押し上げる。東海岸のGPSステーション、女川、と同緯度付近(約38.5度付近)にある西海岸のGPSステーション、佐渡島の両津2、の観測例を挙げる。両津2の過去15年間余りの地殻変動時系列、[数58]の[N]と[E]と[h]のd(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅を400日とし、差分間隔を300日として、[数45]と[数46]とで与えられるD(c,τ)とV(c,τ)とを検出する。それら検出結果を、[図23]に表示した。縦軸目盛りの拡大率は、上段の[N]が、5000倍、中段の[E]も、5000倍、下段の[h]が、10000倍である。太平洋プレートとの固着が、その西海岸の通常運動を、両津2のステーションを東方向へ11
mm/yearで移動させ、約2.4mm/year(約0.007 mm/day)で隆起させていた。下段[h]のD(h,τ)とD-V位相平面図に描かれたD(h,τ)-V(h,τ)軌跡とに破線矢印で記した西海岸の予兆的な隆起開始点は(隆起速度成分を持った膨張の開始点は)、東海岸の膨張開始と同時期の2009年12月9日頃である。巨大地震の発生個所は、時系列[h]のd(h,m)上とD(h,τ)-V(h,τ)軌跡に表示した二重線矢印が指す個所である。下段[h]のみを、[図24]に拡大表示した。この拡大図から、巨大地震直前まで、約3
mm隆起し、直前の隆起速度成分は、0.016 mm/dayに達していた事が判明する。また、膨張は、大陸プレートの東方向への速度成分が、0.046 mm/dayから巨大地震直前の0.026
mm/dayまで減速した期間に発生している。更に、この膨張は、太平洋プレートの異常な加速度運動と連動している。時系列d(h,m)とD(h,τ)上に示した2つの二重線矢印と、D(h,τ)-V(h,τ)軌跡の二重線矢印の個所で発生したM9巨大地震は、西海岸側の両津2を、南へ8cm程、東へ71cm程、移動させ、3cm程隆起させた。

0146

巨大地震は、東日本の東海岸側を沈下させ、西海岸側を隆起させたが、殆んど沈下も隆起もさせなかった領域が、その西海岸と東海岸の間で西海岸に沿った線状に存在する。その線上にあるGPSステーションの例として、東海岸のGPSステーション、女川と佐渡島の両津2と同緯度付近にある村上の1996/3/21から2011/9/24までの15年余りの時系列、[数58]の[N]と[E]と[h]のd(c,m)に変位検出ウエーブレットの幅を400日とし、差分間隔を300日として、[数45]と[数46]とで与えられるD(c,τ)とV(c,τ)とを検出する。それら検出結果を、[図25]に、時系列[h]の拡大を[図26]に表示する。太平洋プレートとの固着が、その西海岸の通常運動を、村上ステーションを南方向へ9
mm/yearで移動させ、巨大地震発生約5年前から、それまで東方向への移動成分はゼロであったが、東方向へ5 mm/yearで移動させた。2000年頃まで沈下していたが、それ以降、上下変動は殆んど無く、隆起は、僅か、0.5
mm/year程の隆起速度であった。村上の地殻の膨張は、西海岸(両津2)の予兆的な膨張と同様であった。それは、東海岸の膨張と同時期の2009年12月9日頃の破線矢印で示した個所から始まり、巨大地震直前まで、約3
mm程隆起し、直前の隆起速度成分は、0.012 mm/dayに達していた。この膨張は、大陸プレートの東方向への速度成分V(E,τ)を0.018 mm/dayから-0.008
mm/dayまで減速させた。マイナスは、村上ステーションが東方向から西方向へ反転移動した事を意味する。この反転開始は、東方向への移動速度成分がゼロと観測された時点で、巨大地震発生71日前に始まった。それは、2010年12月22日頃、太平洋プレート(父島のステーション)の西方向への移動速度が最大値となった頃と同時期であり、太平洋プレートの西方向への異常な加速度運動と連動している。[図25]の変位d(N,m)とd(E,m)上に示した2つの二重矢印は、2011年3月11日に巨大地震が発生した個所である。その個所で、巨大地震は、西海岸側寄りの村上を、南へ23cm程、東へ130cm程、移動させた。[図26]から、ゆっくり時間をかけた1
mm余り程度の隆起が、巨大地震後観察されているが、両津2等で観測されている地震直後シャープな隆起ではない。[図26]の変位時系列のd(h,m)とD(h,τ)上に示した2つの二重矢印は、2011年3月11日に巨大地震が発生した個所である。

0147

女川、村上、両津2のステーションの、通常な地殻変動と予兆的な地殻変動(膨らみ)は、東日本一帯のGPSステーションで観測された。それらステーションを東海岸側の女川の様に、巨大地震発生前後で、ステーションの地殻が「沈下◆」したグループ、西海岸側の両津2の様に地殻が「隆起▲」したグループ、村上の様に、ステーションの地殻の沈下も隆起も発生しなかった「変化なし●」のグループに3種類のシンボルを使用して分類し、[図27]に表示した。図には、2011年3月11日に発生した巨大地震(3/11
M9)とその余震分布も表示した。又、2003年9月26日に発生したM8の十勝沖地震、2010年12月22日に発生した巨大地震の予兆的な父島近海のM7.9地震、巨大地震の前震である2011年3月9日のM7.5地震(3/9
M7.5)とその余震分布も表示した。

0148

これら、東日本のGPSステーションと太平洋上のGPSステーションの地殻変動時系列[数56]の[E]、[N]、[h]に、変位、速度、加速度検出ウエーブレットを用いて、[数45]-[数48]で与えられる変位D(c,τ)、速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出し、これら物理量を用いた巨大地震の予兆的な地殻変動の定量的な観測結果を得た。本願の発明者は、太平洋プレートと大陸プレートとの固着域が、大陸プレートの東端に位置する東日本に、通常な地殻の変形とは異なる地殻を膨張させ、膨張と連動した太平洋プレートの異常加速運動を誘引し、固着域が破壊されメガスラストが発生し、巨大地震と津波が発生する自然法則を発見した。前述の[図11]-[図13]、に示したその自然法則によると、東日本が在る大陸プレートと太平洋プレートの固着領域により、太平洋プレートの西方向への移動は、東日本の東海岸側を沈下させ、西海岸側を隆起させるので、その固着域の長さ方向の範囲を、巨大地震の断層長(L)と推定できる。またインターネットで公開されているGoogle
Earthのプレート境界付近の海溝の地形図からも、想定できる巨大地震の断層長を簡単に予測できる。従って、[数54]から、その巨大地震のマグニチュードを予測できる。また、発見した巨大地震の予兆の推移を定量的に記述する物理法則を利用すると、地殻の予兆的な膨らみと太平洋プレート(大陸プレートの下に潜り込む海洋プレート)の異常加速運動の検出後、その発生時期は、発生1年程前から予兆の推移状況をモニターしながら予知できる。変位D(c,τ)と速度V(c,τ)のD-V位相平面図を用いた予兆モニターは、台風の進路予測や大きさの同時モニターに相当する。

0149

第5の改善項目、「大地震、巨大地震の蓄積応力の臨界状態を如何にモニターし、大地震、巨大地震の予知に利用するか」について述べる。
[特許文献1]によると、地震発生の変化に、地殻の応力場の変化が反映されているという自然法則を定量化した具体例は、北緯32度〜36度、東経131.5度〜136.5度で囲まれた中国・四国・近畿地方に発生したマグニチュードが、3.5以上の地震の発生時刻の時間間隔d(INT,m)を、時刻mまで2s個、累積したCI(m,2s)であった。CI(m,2s)は、2s個の地震発生に、費やした時間なので、単位時間当たりの地震の数が減少すると、CI(m,2s)は増加し、領域の地殻に応力が蓄積されている状況を示す。逆に、大地震が発生し余震の多発等で地震発生数が増加すれば、蓄積された応力が大地震の発生により開放されている状況を示す。従って、CI(m,2s)は、大地震に至るまでの応力の蓄積と大地震発生後の応力開放サイクルの推移を表す。このサイクルの形状が、[特許文献1]の発明では、マグニチュードの程度の予知に利用された。しかし、CI(m,2s)は、地殻に蓄積され開放される歪エネルギーの密度に比例する量である事も、本願の発明者が、発見したので、その自然法則を次に述べる。

0150

地殻を弾性体とみなすと、プレートの相対運動による地殻の歪は、対称な2階のテンソル量となり、地殻を変形させる応力と線形的に比例し、応力も対称な2階のテンソル量となる。プレートの相対運動により生じた歪を維持する保存エネルギーが、地殻に蓄積される。地殻の単位体積あたりに蓄積されるそのエネルギーは、歪エネルギーの密度で、応力と歪の内積で与えられるスカラー量となる。時系列[CI(m,2s)]は、次に述べるように、3つの成分からなる応力(せん断応力)の関数となる。従って、時系列[CI(m,2s)]は、スカラー量なので、対象領域の地殻の単位体積あたりに蓄積された歪エネルギーに比例すると仮定できる。蓄積された歪エネルギーは、大地震や巨大地震の発生直前から解放される。従って、時系列[CI(m,2s)]は、大地震や巨大地震発生の時期の予知に利用できる。先ず、時系列[CI(m,2s)]が、せん断応力の3成分の関数である事から説明する。

0151

時系列[CI(m,2s)]が、せん断応力の関数である理由は、上記、中国・四国・近畿地方(4度X 5度程のメッシュ領域)のsを30〜35とした[CI(m,2s)]が、3つの独立変数、つまり、3つの自由度(力学変数)を持つ事による。偶数の2sは、奇数の2s+1としても良い。その力学変数の数の特定には、後述する統計解析カオス解析)を用いる。時系列[CI(m,2s)]は、地殻の応力変化で生じる地震の発生の変化を記述するので、それら3つの力学変数は、せん断応力の3成分であると断定できる。例えば、プレート境界で大陸プレートの東端に位置する上記中国・四国・近畿地方の場合、フィリピン海プレートが、西北方向に年間約3cmで移動しながらが潜り込んでいる。この外力が、地殻の断層付近を変形させ、地殻の断層面に作用するせん断応力となる。東西方向をx軸、南北方向をy軸、地表から上下方向をz軸としたx-y-zの直交座標系を用いると、このプレートの相対運動によるせん断応力は、x-y-zの3成分を持つ。この狭い領域を約30倍に広げ、日本列島を含む、北緯24度〜48度、東経124度〜150度領域にすると、マグニチュードを4以上として選択し、差分間隔sを、15〜50とする時系列[CI(m,2s)]の力学変数の数は、1つ増え4となる。この増加は、領域が、平面でなく球面の一区画となるので、球面状の地殻内のz軸方向の選択が、新たな自由度として加わる事による。従って、時系列[CI(m,2s)]は、せん断応力の3成分の関数であり、しかもスカラー量なので、対象領域の地殻に蓄積される歪エネルギーの密度と仮定する事ができる。領域を変えたり、その広さを、順次拡大したりして、選択領域に蓄積された歪エネルギーの密度の推移を観察できる。更に、時系列[CI(m,2s)]の1/(2s)値は、ローパスフィルターのカットオフ周波数に相当するので、s値を変え、大地震や、巨大地震発生前に出現する歪エネルギーの急激な解放現象を異なる周波数領域で検出できる。[非特許文献22]によると、この加速された解放現象は、大地震や巨大地震の発生直前の地殻に蓄積されたせん断応力が作り出す臨界現象であって、加速された地震モーメントの開放現象(Accelerated
Morment Release-AMR現象)として知られている。従って、大地震と巨大地震のある程度の震源領域と発生時期を予知できる。次に、せん断応力の成分の数、即ち、力学変数の数を特定する方法について、[CI(m,2s)]を、例にとり説明する。

0152

以下に述べる方法は、本願の発明者の考案によるもので、カオス解析(統計解析)でシステムの力学運動を記述する状態空間の次元数(最小の埋め込み次元数)を推定する「最も近接した誤り点法(誤り近接法)」と、結果的に、同じ方法となる。[図28]に、その方法の原理を図示する。先ず、変位検出ウエーブレットの幅Δtが1のDDW(t)を、時刻jから間隔n毎にr個並べる(図例ではr=4)。解析する時系列を時刻jのINTの累積値をCI(j,2s)とする。間隔nの値は、CI(j,2s)の変動が、互いに相関を失い独立となる時間間隔が最適なので、例えば、時系列の変動の自己相関が、無くなる時間間隔とする。各変位検出ウエーブレットは、互いに重なる領域が無いので、直行している。従って、INTの累積時系列[CI(m,2s)]の力学変数の数が4であれば、累積時系列の変動は、4個の変位検出ウエーブレットが張る4次元の状態空間に軌跡として描かれることになる。この空間の次元数は、任意に増加する事ができるが、最小の次元数が、時系列[CI(m,2s)]の次元数、つまり力学変数の数となり、カオス解析で使用される、「最小の埋め込み次元数」となる。

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