図面 (/)
課題
解決手段
概要
背景
金属、プラスチック、ガラスやセラミックスを始めとする各種材料の接合を行った際、被接合物同士がどれだけの強さで接合したかを定量的に評価する方法はいくつか考案されている。例えばJIS(非特許文献1参照)では、接合した材料をタブと呼ばれる金具に接着剤で固定し、引っ張り試験を行うことで接合強度を測定している。しかし、これらの方法は共通して、測定すべき材料同士の接合強度が、被測定物と測定用金具を固定する接着剤の接着強度より低くなくては測定できないこと、また、安定した破壊荷重が得られにくいことが問題点として挙げられる。
これらの問題を解決する手段として、被測定物を専用の金具にネジ等の力により固定し引っ張り試験を行うことで、接合強度を測定する方法が考案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、これらの方法でも、ガラスなどの欠けやすい材料では金具固定箇所が試験荷重に耐えられず、破壊されてしまうことが生じやすい。また、接着剤を用いて被測定物を測定用金具に固定する方法では、測定したい接合面より先に接着剤が剥離し、測定に失敗することも生じやすい。また、これらの問題が生じなかったとしても、本質的な問題として、接合面を荷重により剥離させる方法は、測定値のバラツキが極めて大きい。
概要
本発明は、各種材料、特にガラスやセラミックスなどの脆性材料同士を接合した際の接合強度を、良好な精度で容易に測定する方法を提供する。被測定物である接合した材料5の接合面を五角形または三角形状とし、次に被測定物5を高強度の治具6と接着剤7によって接着し、これを強度試験器にて四点曲げ測定を行う。
目的
本発明の目的は、各種材料、特にガラスやセラミックスなどの脆性材料を接合した際の接合強度を、簡便かつ精度良く測定する方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
材料の接合面が五角形または三角形状となるように被測定物を調整した後、前記被測定物を高強度の治具と接着し、前記接合面の最も鋭角な頂点が荷重点の反対側になるよう配置した状態で四点曲げ測定を行うことを特徴とする接合強度評価法。
請求項2
接合前の材料にザグリ加工を行うことで、接合面が五角形または三角形状となるように被測定物を調整することを特徴とする請求項1記載の接合強度評価法。
請求項3
請求項4
接合面の鋭角頂点の角度が90°以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の接合強度評価法。
請求項5
材料が脆性材料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の接合強度評価法。
請求項6
材料が石英ガラスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の接合強度評価法。
技術分野
背景技術
0002
金属、プラスチック、ガラスやセラミックスを始めとする各種材料の接合を行った際、被接合物同士がどれだけの強さで接合したかを定量的に評価する方法はいくつか考案されている。例えばJIS(非特許文献1参照)では、接合した材料をタブと呼ばれる金具に接着剤で固定し、引っ張り試験を行うことで接合強度を測定している。しかし、これらの方法は共通して、測定すべき材料同士の接合強度が、被測定物と測定用金具を固定する接着剤の接着強度より低くなくては測定できないこと、また、安定した破壊荷重が得られにくいことが問題点として挙げられる。
0003
これらの問題を解決する手段として、被測定物を専用の金具にネジ等の力により固定し引っ張り試験を行うことで、接合強度を測定する方法が考案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、これらの方法でも、ガラスなどの欠けやすい材料では金具固定箇所が試験荷重に耐えられず、破壊されてしまうことが生じやすい。また、接着剤を用いて被測定物を測定用金具に固定する方法では、測定したい接合面より先に接着剤が剥離し、測定に失敗することも生じやすい。また、これらの問題が生じなかったとしても、本質的な問題として、接合面を荷重により剥離させる方法は、測定値のバラツキが極めて大きい。
0004
特開平9−304202号公報
実公平6−41152号公報
先行技術
0005
JIS R 1630
発明が解決しようとする課題
0006
本発明の目的は、各種材料、特にガラスやセラミックスなどの脆性材料を接合した際の接合強度を、簡便かつ精度良く測定する方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは、被測定物である接合した材料の接合界面が五角形または三角形状となるよう調整した後、被測定物を高強度治具と接着剤によって接着し、これを強度試験器にて四点曲げ測定することで、五角形または三角形状の接合界面の鋭角部分に引っ張り応力を集中させ、安定的かつ低い荷重で破壊が生じるようにし、これによって接着剤が剥離することなく、かつ安定した破壊応力値を測定可能とする発明を完成するに至った。なお、本発明では測定された破壊応力値を、接合強度と定義する。
0008
多くの材料、特に脆性材料は本質的に安定的な破壊が生じにくく、機械強度の測定は測定値が非常にばらつきやすい。このことは、この分野においては常識的知見であるためその詳細説明は省くが、その主たる理由は、多くの材料、特に脆性材料の強度が表面の傷の影響を受けやすいことに起因する。このことは、例えば綺麗に磨かれたガラスに、ガラス切りなどで一本の細い傷を入れるだけで、その強度が大幅に低下し、たやすく割れるようになることからも容易に想像ができる。一本の傷で強度が大幅に低下する理由は、材料を変形させるような外力を加えた場合、傷部先端に応力が集中し、容易に亀裂(クラック)が伸展しやすくなるためである。この現象は応力集中と呼ばれており、破壊力学の基礎となる考え方である。このような理由から、多くの材料、特に脆性材料の強度測定を行う際は、被測定物の表面状態仕上げを厳密に管理する必要がある。
0009
これと同じ理由から、多くの材料、特に脆性材料の接合面の破壊荷重を測定しようとした場合、接合面に僅かな乱れ(例えば気泡が入ったり、ゴミを噛んだりして部分的に接合してない場所など)があれば、その箇所に応力が集中し、破壊荷重を低下させることとなる。その応力集中の度合いは、接合面の乱れの度合いによって様々に変化するため、破壊荷重もサンプル毎にばらつくこととなる。
0010
そこで我々は、管理された状態で意図的に応力集中を生じさせることで、安定的に破壊が生じるように創意工夫した。意図的に応力集中を生じさせることは、破壊荷重を低下させることに繋がるが、これは被測定物と測定用金具を固定するための接着剤が剥がれる危険を大幅に減らす効果も生むため望ましい。
0011
応力集中を生じさせる方法として、我々は接合面の形状を五角形または三角形となるようにした。接合面を五角形または三角形とするには、まず接合する前の被測定物板材1枚の表面に、図1に示すザグリ加工(表面を削る処理)を施す。この被測定物板材とザグリ加工を施していない被測定物板材を接合すると、接合面は五角形または三角形になる。この様子を図2に示した。
0012
接合面を五角形または三角形とするもう一つの方法は、2枚の板材を接合した後、接合面の一部を正確に切断ブレードによって切断することである。この方法は、加工精度の問題から前者の方法よりも難しいが、より安定的な破壊荷重が得られることが分かっている。
0013
こうして接合面を五角形または三角形とした後、この接合した板材を図3に示すように高強度の治具に接着剤を用いて固定し、次にこれを四点曲げ測定する。四点曲げ測定はJIS R 1601に示されるとおり、破壊試験においては一般的な方法であるため詳細説明は省くが、その様子を図3に示した。すなわち、被測定物を下支持棒の上に載せ、上支持棒に荷重をかけ、被測定物が下にたわむよう、被測定物が破壊するまで荷重を上げていき、接合面が破壊する荷重を測定することで、接合強度を評価する方法である。
0014
四点曲げ試験で荷重をかけた際、被測定物には引き裂くような力が生じるが、その力は荷重をかける箇所の反対側が最大となる。そのため、五角形または三角形とした接合面の鋭角頂点が荷重をかける箇所の反対側(図3では下側)に向くようにサンプルを置けば、鋭角頂点に集中的に引き裂く力が発生し、接合面の破壊は安定的にこの鋭角頂点から生じることとなる。
0015
接合面の鋭角頂点の角度はより小さな角度にすれば、より安定的に破壊が生じるようになるが、90°以下であれば充分な効果が得られる。頂点の角度が90°より大きくなると、応力集中の効果が不足し、安定的な破壊が得られにくくなる傾向にある。
0016
なお、本方法では比較的低荷重で接合面の破壊が生じるため、接合面より先に接着剤が先に剥がれるような測定の失敗は極めて生じ難いため、接着剤の種類は特に限定されるものではないが、測定の失敗を避ける意味では当然接着力が高いものを選定することが望ましい。用いる接着剤としてはエポキシ系接着剤を推奨するが、一般的な瞬間接着剤でも十分なことが多い。
0017
また、接合した板材を接着する高強度治具も、特にその材質を限定されるものではなく、一般的な金属ならば問題なく使用可能である。ただし、安全を期するならステンレスなどの硬質金属を用いるべきである。
発明の効果
0018
本発明の接合強度評価法であれば、接着剤が剥離したり、接合面以外の箇所に望ましからざる破壊を生じることなく測定することが可能であり、かつ安定した接合強度を測定することが可能である。
図面の簡単な説明
0019
接合前の材料の板材に対して行うザグリ加工の形状を示す図である。
ザグリ加工後の材料と、ザグリ加工を行わない材料を接合したものを示す図である。
被測定物を高強度の治具と接着剤によって接着したものを、四点曲げ測定のための下支持棒に載せ、さらに上支持棒を載せた状態を示す図である。
実施例1から4および比較例1で測定した破壊荷重を図示したものである。
実施例1から4および比較例1で測定した破壊荷重を、それぞれの平均値で除算した値を図示したものである。
0020
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は係る実施例に限定されるものではない。
0021
実施例1
鏡面研磨した石英ガラス(東ソー・エスジーエム製ESグレード)の板材(20mm□×2.3mmt。高平坦、高平滑に研磨済み)2枚を用意した。このうちの1枚の表面に、図1(a)の形状となるようザグリ加工を行い、残された鏡面部の形状が五角形となるようにした。2枚の石英ガラス板を十分洗浄した後、これを重ね合わせ、2kgfの荷重をかけた状態で600℃まで加熱し、ガラス板同士を接合して、測定用サンプルとした(図2)。サンプルの両面を、SUS製治具2個(30mm×24mm×21mm)の21mm×24mmの面と瞬間接着剤アロンアルフア・スーパーゼリー(東亞合成株式会社)を用いて接着した(図3)。このサンプルの破壊応力値を四点曲げ測定法により測定した。四点曲げ測定は、オートグラフAG−Xplus(株式会社島津製作所製)を用い、下支持棒間距離40mm、上側支持棒間距離10mm、クロスヘッド降下速度0.1mm/分の条件で行った。その結果を表1および図4、5に示した。
0024
実施例4
鏡面研磨した石英ガラス(東ソー・エスジーエム製ESグレード)の板材(20mm□×2.3mmt。高平坦、高平滑に研磨済み)2枚を用意し、これを十分洗浄した後、重ね合わせ、2kgfの荷重をかけた状態で600℃まで加熱し、ガラス板同士を接合し、接合面の一部を、ダイヤモンド砥粒をレジンにより固定したブレード(刃厚0.6mmt)にて切断し、残された接合面の形状が図1(c)となるよう加工して、測定用サンプルとした。得られたサンプルを、実施例1と同様の条件で四点曲げ測定法を行い、破壊強度を測定した。サンプルの破壊応力値の結果を表1および図4、5に示した。
0025
比較例1
長さ30mm、幅6mm□の石英ガラス棒(東ソー・エスジーエム製ESグレード)2本を用意し、それぞれ6mm□部分を高平坦かつ高平滑に鏡面研磨した。十分洗浄後、研磨面同士を重ね合わせ、2kgfの荷重をかけた状態で600℃まで加熱し、ガラス棒同士を接合したサンプルを用意した。この接合済みガラス棒の接合強度を、JIS R 1630に示される方法によって測定した。その結果を表1および図4、5に示した。
0026
0027
各種材料同士の接合強度の測定を容易かつ安定的に行うことを可能とする。