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技術 細胞表面タンパクを抗原とする抗体を測定する方法

出願人 学校法人藤田学園
発明者 三浦惠二吉田俊治黒澤良和
出願日 2013年9月20日 (7年11ヶ月経過) 出願番号 2013-196088
公開日 2014年5月8日 (7年3ヶ月経過) 公開番号 2014-081365
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード 境界域 DSB オキシビオチン 不育症 微小変化型ネフローゼ症候群 エーテルタイプ 捕捉物質 SBE
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年5月8日)のものです。
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図面 (20)

課題

細胞表面タンパク抗原とする抗体を測定するための新たな手法を提供することを課題とする。

解決手段

以下のステップ、即ち、(1)標的細胞の細胞表面タンパクを標識物質標識化するステップ;(2)標識化後の前記標的細胞を界面活性剤で処理し、細胞表面タンパクを含む可溶化膜画分を調製するステップ;(3)前記標識物質に特異的結合性を示す捕捉物質が結合した不溶性支持体を用意するステップ;(4)前記不溶性支持体に前記可溶化膜画分を反応させることにより、細胞表面タンパクを固相化するステップ;(5)固相化した細胞表面タンパクにサンプルを反応させるステップ;(6)固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分を検出するステップ、を含む、抗細胞表面抗体の測定法が提供される。

概要

背景

各種自己免疫疾患において特徴的な自己抗体標的自己抗原の組み合わせが見つかり、すでに臨床検査に使われているものも多い。自己抗原の多くが細胞内(核内)局在物質であることがわかっているが、一方では、患者血清を用いた細胞染色やフローサイトメトリー解析などで血管内皮細胞の表面に結合する抗体が検出されることが40年以上も前に報告され、抗血管内皮細胞抗体(Anti-endothelial cell antibody:AECA)と呼ばれている(例えば非特許文献1、2を参照)。AECAの内皮細胞表面への結合が、内皮細胞の活性化や血管損傷引金になるような免疫学的作用を示すことから、AECAの標的抗原を同定する研究も数多く行われてきた。しかし、標的抗原のほとんどが本来細胞内に局在する可溶性タンパクであり、不思議なことに、膜タンパク表在性タンパク等の細胞表面に存在するタンパク(細胞表面タンパク)を標的抗原とする報告数は少ない。細胞内に局在するタンパクが細胞の状態(例えばアポトーシス誘導など)に大きな変化が起きた時に細胞表面に出てくる現象も報告されているが、正常に培養したヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の細胞表面に結合する抗体が高頻度で観察されることから、別の抗原の存在を想定する研究者も少なくない。長年の自己抗原を探索する研究では、自己免疫疾患患者血清を用いたウェスタンブロッティング解析での検出が主な方法である。近年のプロテオミクス技術の進歩後においても同様であり、二次元電気泳動後に患者血清を用いたウェスタンブロッティング解析を行い、自己抗体が結合したタンパクのスポット質量分析するという方法が採られている(例えば非特許文献3、4を参照)。しかしながら、ウェスタンブロッティング解析は、標的抗原が細胞表面タンパクであることを想定した実験系とは言えない。市販の膜タンパクに対するモノクローナル抗体において、組織染色使用可能でもウェスタンブロッティング解析には使用できないものは珍しくない。つまり、細胞表面タンパクは変性処理により立体構造が変化しやすく、結合できなくなる抗体も多いと予想され、従来の実験手法では検出できない自己抗原も多く存在すると考えられる。

ところで、膜タンパクを扱う実験では界面活性剤により膜タンパクを脂質二重膜から可溶化することが必須であり、可溶化により膜タンパクの立体構造が変化し、抗体が結合できなくなることが想定される。複合体を認識して結合する抗体であれば、可溶化はさらに大きな影響を与えるに違いない。ウェスタンブロッティング解析では通常、タンパクのサンプルをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により分子量に応じて分離するが、SDSに加え還元剤をも含む溶液中での熱処理により、抗原の立体構造が大きく変化し、複合体の多くは各成分に分離されているはずである。細胞表面膜タンパクに結合する抗体が存在していたとしても、SDS-PAGEとウェスタンブロッティング解析の様に大きな変性を伴う実験方法では、膜タンパクを検出することは困難と考えられる。従って、膜タンパクの立体構造をできるだけ保持できるように配慮した新たな検出系の開発は、未だ見つかっていない自己抗原の発見に繋がることが期待できる。

概要

細胞表面タンパクを抗原とする抗体を測定するための新たな手法を提供することを課題とする。 以下のステップ、即ち、(1)標的細胞の細胞表面タンパクを標識物質標識化するステップ;(2)標識化後の前記標的細胞を界面活性剤で処理し、細胞表面タンパクを含む可溶化膜画分を調製するステップ;(3)前記標識物質に特異的結合性を示す捕捉物質が結合した不溶性支持体を用意するステップ;(4)前記不溶性支持体に前記可溶化膜画分を反応させることにより、細胞表面タンパクを固相化するステップ;(5)固相化した細胞表面タンパクにサンプルを反応させるステップ;(6)固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分を検出するステップ、を含む、抗細胞表面抗体の測定法が提供される。なし

目的

本発明は以上の背景の中、細胞表面タンパクを抗原とする抗体(抗細胞表面抗体)を測定するための新たな手法及びその用途等を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

以下のステップ(1)〜(6)を含む、抗細胞表面抗体の測定法:(1)標的細胞の細胞表面タンパク標識物質標識化するステップ;(2)標識化後の前記標的細胞を界面活性剤で処理し、細胞表面タンパクを含む可溶化膜画分を調製するステップ;(3)前記標識物質に特異的結合性を示す捕捉物質が結合した不溶性支持体を用意するステップ;(4)前記不溶性支持体に前記可溶化膜画分を反応させることにより、細胞表面タンパクを固相化するステップ;(5)固相化した細胞表面タンパクにサンプルを反応させるステップ;(6)固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分を検出するステップ。

請求項2

前記標識物質がビオチン類であり、前記捕捉物質がアビジン類である、請求項1に記載の測定法。

請求項3

ビオチン類がビオチンであり、アビジン類がニュートラアビジンである、請求項2に記載の測定法。

請求項4

前記界面活性剤がn-ドデシル-β-d-マルトピラノシドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定法。

請求項5

ステップ(6)の検出をELISAで行う、請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定法。

請求項6

ステップ(4)が以下の操作、即ち(4−1)可溶化膜画分の添加、(4−2)洗浄、を含み、ステップ(5)が以下の操作、即ち(5−1)サンプルの添加、(5−2)洗浄、を含み、ステップ(6)が以下の操作、即ち(6−1)酵素標識抗ヒト免疫グロブリン抗体の添加、(6−2)洗浄、(6−3)酵素基質溶液の添加、(6−4)吸光度の測定、を含む、請求項5に記載の測定法。

請求項7

(4−1)、(4−2)、(5−1)、(5−2)、(6−1)及び(6−2)の操作を、前記界面活性剤が存在する条件下で実施する、請求項6に記載の測定法。

請求項8

前記条件が、臨界ミセル濃度を超える濃度で前記界面活性剤が存在する条件である、請求項7に記載の測定法。

請求項9

前記標的細胞が、血管内皮細胞線維芽細胞、或いは標的疾患特異的に障害を受ける臓器又は組織由来の細胞である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の測定法。

請求項10

請求項11

前記標的疾患が、ループス腎炎、IgA腎症、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎及び全身性強皮症からなる群より選択される疾患であり、前記ステップ(6)における、特異的に結合した成分がIgAである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の測定法。

請求項12

前記標的疾患が、ループス腎炎又は全身性強皮症であり、前記ステップ(6)における、特異的に結合した成分がIgAである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の測定法。

請求項13

前記サンプルが、血清血漿唾液母乳涙液及び脊髄液からなる群より選択される生体サンプルである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の測定法。

請求項14

界面活性剤が結合した標識化細胞表面タンパクを固相化した不溶性支持体と、取り扱い説明書と、を含む、抗細胞表面抗体の測定キット

請求項15

臨界ミセル濃度を超える濃度で前記界面活性剤を含有する溶液中に前記標識化細胞表面タンパクが浸漬した状態である、請求項14に記載の測定キット。

請求項16

前記界面活性剤がn-ドデシル-β-d-マルトピラノシドである、請求項14又は15に記載の測定キット。

請求項17

不溶性支持体が培養皿マルチウェルプレート又はマイクロビーズである、請求項14〜16のいずれか一項に記載の測定キット。

請求項18

請求項1〜13のいずれか一項に記載の測定法に使用される、請求項14〜17のいずれか一項に記載の測定キット。

技術分野

0001

本発明は細胞表面タンパク抗原とする抗体(抗細胞表面抗体)の測定法及びその用途に関する。

背景技術

0002

各種自己免疫疾患において特徴的な自己抗体標的自己抗原の組み合わせが見つかり、すでに臨床検査に使われているものも多い。自己抗原の多くが細胞内(核内)局在物質であることがわかっているが、一方では、患者血清を用いた細胞染色やフローサイトメトリー解析などで血管内皮細胞の表面に結合する抗体が検出されることが40年以上も前に報告され、抗血管内皮細胞抗体(Anti-endothelial cell antibody:AECA)と呼ばれている(例えば非特許文献1、2を参照)。AECAの内皮細胞表面への結合が、内皮細胞の活性化や血管損傷引金になるような免疫学的作用を示すことから、AECAの標的抗原を同定する研究も数多く行われてきた。しかし、標的抗原のほとんどが本来細胞内に局在する可溶性タンパクであり、不思議なことに、膜タンパク表在性タンパク等の細胞表面に存在するタンパク(細胞表面タンパク)を標的抗原とする報告数は少ない。細胞内に局在するタンパクが細胞の状態(例えばアポトーシス誘導など)に大きな変化が起きた時に細胞表面に出てくる現象も報告されているが、正常に培養したヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)の細胞表面に結合する抗体が高頻度で観察されることから、別の抗原の存在を想定する研究者も少なくない。長年の自己抗原を探索する研究では、自己免疫疾患患者血清を用いたウェスタンブロッティング解析での検出が主な方法である。近年のプロテオミクス技術の進歩後においても同様であり、二次元電気泳動後に患者血清を用いたウェスタンブロッティング解析を行い、自己抗体が結合したタンパクのスポット質量分析するという方法が採られている(例えば非特許文献3、4を参照)。しかしながら、ウェスタンブロッティング解析は、標的抗原が細胞表面タンパクであることを想定した実験系とは言えない。市販の膜タンパクに対するモノクローナル抗体において、組織染色使用可能でもウェスタンブロッティング解析には使用できないものは珍しくない。つまり、細胞表面タンパクは変性処理により立体構造が変化しやすく、結合できなくなる抗体も多いと予想され、従来の実験手法では検出できない自己抗原も多く存在すると考えられる。

0003

ところで、膜タンパクを扱う実験では界面活性剤により膜タンパクを脂質二重膜から可溶化することが必須であり、可溶化により膜タンパクの立体構造が変化し、抗体が結合できなくなることが想定される。複合体を認識して結合する抗体であれば、可溶化はさらに大きな影響を与えるに違いない。ウェスタンブロッティング解析では通常、タンパクのサンプルをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により分子量に応じて分離するが、SDSに加え還元剤をも含む溶液中での熱処理により、抗原の立体構造が大きく変化し、複合体の多くは各成分に分離されているはずである。細胞表面膜タンパクに結合する抗体が存在していたとしても、SDS-PAGEとウェスタンブロッティング解析の様に大きな変性を伴う実験方法では、膜タンパクを検出することは困難と考えられる。従って、膜タンパクの立体構造をできるだけ保持できるように配慮した新たな検出系の開発は、未だ見つかっていない自己抗原の発見に繋がることが期待できる。

先行技術

0004

Lindqvist, K.J., Osterland, C.K., 1971. Human antibodies to vascular endothelium. Clin Exp Immunol. 9, 753.
Rosenbaum J, Pottinger BE, Woo P, Black CM, Loizou S, Byron MA, Pearson JD. 1988. Measurement and characterisation of circulating anti-endothelial cellIgGin connective tissue diseases. Clin Exp Immunol. 72, 450.
Guilpain P, Servettaz A, Tamby MC, Chanseaud Y, Tamas N, Garcia de la Pena-Lefebvre P, Broussard C, Guillevin L, Camoin L, Mouthon L, 2007. A combined SDS-PAGE and proteomics approach to identify target autoantigens in healthy individuals and patients with autoimmune diseases. Ann N Y Acad Sci. 1109:538-49.
Karasawa, R., Kurokawa, M.S., Yudoh, K., Masuko, K., Ozaki, S., Kato, T., 2010. Peroxiredoxin 2 is a novel autoantigen for anti-endothelial cell antibodies in systemic vasculitis.Clin Exp Immunol. 161, 459.

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は以上の背景の中、細胞表面タンパクを抗原とする抗体(抗細胞表面抗体)を測定するための新たな手法及びその用途等を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0006

細胞表面に存在する各種受容体イオンチャネルなどの膜タンパクの生化学的研究では、それらのタンパクを界面活性剤で可溶化するステップが不可欠である。それは、膜タンパクの疎水性部分などの一部が脂質二重膜を貫通していたり、埋もれていたりするため、脂質を除去する必要があるからである。しかし、脂質で支えられていることにより構造を保っている面もあり、脂質の除去で機能を失ってしまう報告は珍しくはない。また膜タンパクごとの性質も微妙に異なり、そのために開発された多種多様な界面活性剤の中から適したものを選ぶことは極めて困難であり、結果として王道と言える可溶化方法は未だにない。

0007

そこで、膜タンパクなどの細胞表面タンパクだけを抗原として調製し、立体構造をできるだけ保持したまま、それらに結合する抗体を検出するという戦略に基づく、新たな測定系を考案した。当該測定系の有効性を検証するために、当該測定系の一態様となるELISAステム構築した。このELISAシステムは、細胞表面に存在するタンパクだけをビオチン化した後、膜タンパクに対して汎用性の高い界面活性剤として知られるn-ドデシル-β-d-マルトピラノシド(n-dodecyl-β-D-maltopyranoside:DDM)で可溶化するとともに、予めビオチン結合タンパクを固相化したELISAウェルでビオチン化タンパクだけを捕捉し、そこにサンプル(例えば患者血清)を反応させる方法であり、CSP-ELISA(solubilized cell surface protein-capture ELISA)と名付けた。このシステムには、(1)細胞表面に存在するタンパクだけを濃縮できること、即ち、細胞内に局在する既知の多くの自己抗原はビオチン化されないため、それらを除外することができること、(2)界面活性剤で可溶化した膜タンパクはELISAウェルに固相化しにくい性質を持っているが、ビオチン結合タンパク(実施例ではニュートラアビジン(NeutrAvidin)を介することにより比較的容易に固相化できること、(3)抗原抗体反応の間、常に界面活性剤を補うことにすれば、細胞表面タンパクが細胞膜に存在していた時の状態を保つことが期待できること、(4)抗原をELISAウェルに直接固相化すると抗原性を失う現象も知られているが、ビオチン結合タンパクを介して固相化することにより、立体構造を保つことが期待できること、(5)可溶化処理をしても保たれている複合体があり、そのどこかがビオチン化されていれば、そのままの形で固相化できること、などの特徴ないし利点がある。このELISAシステムを利用して各種実験を行った結果、自己免疫疾患患者の血清中に存在する自己抗体を高い感度及び確度で測定することが可能であった。即ち、自己免疫疾患の診断に当該ELISAシステムが有効であることが示唆された。また、他の疾患患者由来のサンプルを用いた実験の結果より、様々な疾患に関して、有益な情報をもたらすことが判明した。
以下の発明は上記成果及び知見に基づく。
[1]以下のステップ(1)〜(6)を含む、抗細胞表面抗体の測定法:
(1)標的細胞の細胞表面タンパクを標識物質標識化するステップ;
(2)標識化後の前記標的細胞を界面活性剤で処理し、細胞表面タンパクを含む可溶化膜画分を調製するステップ;
(3)前記標識物質に特異的結合性を示す捕捉物質が結合した不溶性支持体を用意するステップ;
(4)前記不溶性支持体に前記可溶化膜画分を反応させることにより、細胞表面タンパクを固相化するステップ;
(5)固相化した細胞表面タンパクにサンプルを反応させるステップ;
(6)固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分を検出するステップ。
[2]前記標識物質がビオチン類であり、前記捕捉物質がアビジン類である、[1]に記載の測定法。
[3]ビオチン類がビオチンであり、アビジン類がニュートラアビジンである、[2]に記載の測定法。
[4]前記界面活性剤がn-ドデシル-β-d-マルトピラノシドである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の測定法。
[5]ステップ(6)の検出をELISAで行う、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の測定法。
[6]ステップ(4)が以下の操作、即ち
(4−1)可溶化膜画分の添加、
(4−2)洗浄
を含み、
ステップ(5)が以下の操作、即ち
(5−1)サンプルの添加、
(5−2)洗浄、
を含み、
ステップ(6)が以下の操作、即ち
(6−1)酵素標識抗ヒト免疫グロブリン抗体の添加、
(6−2)洗浄、
(6−3)酵素基質溶液の添加、
(6−4)吸光度の測定、
を含む、[5]に記載の測定法。
[7](4−1)、(4−2)、(5−1)、(5−2)、(6−1)及び(6−2)の操作を、前記界面活性剤が存在する条件下で実施する、[6]に記載の測定法。
[8]前記条件が、臨界ミセル濃度を超える濃度で前記界面活性剤が存在する条件である、[7]に記載の測定法。
[9]前記標的細胞が、血管内皮細胞、線維芽細胞、或いは標的疾患特異的に障害を受ける臓器又は組織由来の細胞である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の測定法。
[10]前記標的疾患が、全身性エリテマトーデス混合性結合組織病全身性強皮症シェーグレン症候群関節リウマチ高安動脈炎橋本病皮膚筋炎多発性筋炎ベーチェット病バセドウ病不育症習慣性流産)、抗リン脂質抗体症候群好中球減少症IgA腎症ループス腎炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病川崎病潰瘍性大腸炎クローン病ウェゲナー肉芽腫症顕微鏡多発血管炎巨細胞動脈炎突発性網膜血管炎、閉塞性血栓性血管炎チャーグ・ストラウス症候群腎臓又は心臓移植拒絶高プロラクチン血症溶血性尿毒症症候群血栓性血小板凝集性紫斑病、ヘパリン起因性血小板減少症多発性硬化症糖尿病副甲状腺機能低下症妊娠高血圧症候群ロッキー山紅斑熱ウイルス感染境界域高血圧症及びクリオグロブリン血症からなる群より選択される疾患である、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の測定法。
[11]前記標的疾患が、ループス腎炎、IgA腎症、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎及び全身性強皮症からなる群より選択される疾患であり、
前記ステップ(6)における、特異的に結合した成分がIgAである、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の測定法。
[12]前記標的疾患が、ループス腎炎又は全身性強皮症であり、
前記ステップ(6)における、特異的に結合した成分がIgAである、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の測定法。
[13]前記サンプルが、血清、血漿唾液母乳涙液及び脊髄液からなる群より選択される生体サンプルである、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の測定法。
[14]界面活性剤が結合した標識化細胞表面タンパクを固相化した不溶性支持体と、
取り扱い説明書と、
を含む、抗細胞表面抗体の測定キット
[15]臨界ミセル濃度を超える濃度で前記界面活性剤を含有する溶液中に前記標識化細胞表面タンパクが浸漬した状態である、[14]に記載の測定キット。
[16]前記界面活性剤がn-ドデシル-β-d-マルトピラノシドである、[14]又は[15]に記載の測定キット。
[17]不溶性支持体が培養皿マルチウェルプレート又はマイクロビーズである、[14]〜[16]のいずれか一項に記載の測定キット。
[18][1]〜[13]のいずれか一項に記載の測定法に使用される、[14]〜[17]のいずれか一項に記載の測定キット。

図面の簡単な説明

0008

CSP-ELISA(solubilized cell surface protein-capture ELISA)の概要。(1)細胞表面タンパクのビオチン化、(2)界面活性剤による細胞表面タンパクの可溶化、(3)ELISAウェルへのニュートラアビジン(NeutrAvidin)の固相化、(4)ビオチン化タンパクのビオチンを介してのニュートラアビジンへの捕捉、(5)自己抗体の結合、(6)HRP標識の抗ヒトIg抗体の結合、(7)ペルオキシダーゼ基質を加えての反応、(8)ペルオキシダーゼ反応による産生物吸光度計で測定、からなる一連の操作を行う。
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)から調製したタンパク画分のSDS-PAGE、銀染色及びウェスタンブロッティング。A. 銀染色、B. HRP標識ニュートラアビジンを用いたウェスタンブロッティング(レーンT:総タンパク、レーンMN:DDM可溶性膜画分、レーンS:細胞内可溶性画分)。
CSP-ELISAによって検出された自己免疫疾患患者血清中の自己抗体。一つの点が一人の患者の抗体価を示す。各疾患のカラムにある実線平均値点線中央値を表している。破線健常人データの平均値+2 x (標準偏差)の値を示し、この値をカットオフ値に設定した。全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病(MCTD)、全身性強皮症(SSc)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、高安動脈炎(TA)、その他の自己免疫疾患(others)、健常人(HC)。
CSP-ELISAウェル上の抗原を変性処理したことによる自己抗体反応性の変化。0.01% DDMを含むPBS(白)、PBS(グレー)、0.1% SDS(黒)、RIPA緩衝液斜線)。全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病(MCTD)、健常人(HC)。
CSP-ELISAによって検出された腎疾患患者血清中の自己抗体。左はIgGの測定結果。右はIgAの測定結果。一つの点が一人の患者の抗体価を示す。各疾患のカラムにある実線は平均値、点線は中央値を表している。破線は健常人データの平均値+2 x (標準偏差)の値を示し、この値をカットオフ値に設定した。IgA腎症(IgAN)、ANCA関連腎炎(ANCA)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSPN)、ループス腎炎患者(LupusN)。
不育症患者血漿の測定結果。健常妊婦と不育症患者の間でIgG抗体価とIgM抗体価を比較した。
実験に供した、ループス腎炎患者及び全身性エリテマトーデス(SLE)患者の臨床的特徴。
CSP-ELISAによる測定結果。正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)由来の膜画分を用いた。左はIgGの測定結果、右はIgAの測定結果。
ループス腎炎におけるIgA値と臨床的特徴の相関性。IgAが高値の方が病態活動性が高いことがわかる。
CSP-ELISAによる測定結果。正常ヒト腎糸球体毛細血管内皮細胞(HGMEC)由来の膜画分を用いた。左はIgGの測定結果、右はIgAの測定結果。
HUVECとHGMECに対する反応の相関性。左はIgGについての解析、右はIgAについての解析。
ループス腎炎における活動性病変とIgG値(左)及びIgA値(右)との相関性。IgA値と腎炎の活動性との間に相関性が見られる。
実験に供した、各患者(IgA腎症(IgAN、50検体)、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎(HSPN、8検体)、ループス腎炎(LN、37検体)、ANCA関連腎炎(ANCA、10検体)、疾患コントロール(DC、10検体;微小変化型ネフローゼ症候群、ひ薄基底膜病、家族性巣状糸球体硬化症1型糖尿病性腎症など))の臨床的特徴。
CSP-ELISAによる測定結果。HUVEC由来の膜画分を用いた。
IgG値とIgA値の相関性。
腎疾患におけるIgG、IgA自己抗体陽性率
IgAN及びHSPNにおけるIgA値と臨床的特徴の相関性。
CSP-ELISAによる測定結果。正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVECd)由来の膜画分を用いた。左はIgGの測定結果、右はIgAの測定結果。
正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVECd)由来の膜画分を用いたCSP-ELISAにおいてIgG値と相関が見られた検査項目
CSP-ELISAによるMCTD患者血清中のIgG、IgA抗体価測定。正常ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)由来の膜画分を使用した場合と正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)由来の膜画分を使用した場合を比較した。

0009

本発明の第1の局面は抗細胞表面抗体の測定法に関する。抗細胞表面抗体とは、細胞表面タンパクを特異的に認識する抗体である。細胞の表面には膜タンパクが存在する。膜タンパクは内在性膜タンパクと表在性膜タンパク(典型的には脂質二重層又は内在性膜タンパクと一時的に結合しているタンパク)に大別される。抗細胞表面抗体は、これら膜タンパクに対して特異的結合性を示す。抗細胞表面抗体のクラス(アイソタイプ)は特に限定されない。換言すれば、様々なクラスの抗体が本発明での測定対象となる。IgG、IgM及びIgAは特に重要な測定対象である。さらに、IgGおよびIgAにおいては、それぞれIgG1〜IgG4の4つのサブクラス、IgAにはIgA1とIgA2の2つのサブクラスがあり、少しずつ構造が異なっており、サブクラスと疾患との関連性も知られていることから、サブクラスを分けて測定することも重要になる。

0010

本発明の測定法によればサンプル(試料)中に抗細胞表面抗体が存在するか、或いは抗細胞表面抗体の存在量を調べることができる。本発明の測定法によって得られる情報、即ち、抗細胞表面抗体の有無及び/又は存在量は各種疾患の診断(判定、鑑定)に利用され得る。換言すれば、本発明は各種疾患の診断用ツールとして有用である。また、例えば、抗細胞表面抗体自体、或いは各種疾患の発症メカニズム進展メカニズムの研究を行うための手段(研究ツール)としても本発明は有用である。

0011

本発明の測定法では以下のステップ(1)〜(6)を行う。
(1)標的細胞の細胞表面タンパクを標識物質で標識化するステップ
(2)標識化後の前記標的細胞を界面活性剤で処理し、細胞表面タンパクを含む可溶化膜画分を調製するステップ
(3)前記標識物質に特異的結合性を示す捕捉物質が結合した不溶性支持体を用意するステップ
(4)前記不溶性支持体に前記可溶化膜画分を反応させることにより、細胞表面タンパクを固相化するステップ
(5)固相化した細胞表面タンパクにサンプルを反応させるステップ
(6)固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分を検出するステップ

0012

<ステップ(1)>
ステップ(1)では標的細胞を用意し、その表面タンパクを標識物質で標識化する。本発明では、抗細胞表面抗体(本発明における測定対象)が結合する細胞表面タンパクを発現している細胞を「標的細胞」と呼ぶ。標的細胞は特に限定されず、様々な細胞を採用可能である。標的細胞の例を挙げると、血管内皮細胞(臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)、大動脈由来血管内皮細胞、冠状動脈由来血管内皮細胞、由来血管内皮細胞、毛細血管内皮細胞、微小血管内皮細胞など)、線維芽細胞、或いは標的疾患特異的に障害を受ける臓器又は組織由来の細胞(大動脈由来血管内皮細胞、冠状動脈由来血管内皮細胞、肺由来血管内皮細胞、メサンギウム細胞、腎上皮細胞、腎微小血管内皮細胞、大腸由来細胞など)である。標的細胞は、株化細胞であっても、或いは生体から新たに採取した細胞又はその継代細胞であってもよい。標的疾患の例として、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、全身性強皮症、シェーグレン症候群、関節リウマチ、高安動脈炎、橋本病、皮膚筋炎、多発性筋炎、ベーチェット病、バセドウ病、不育症(習慣性流産)、抗リン脂質抗体症候群、好中球減少症、IgA腎症、ループス腎炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、川崎病、潰瘍性大腸炎、クローン病を挙げることができる。また、AECA陽性が報告されている以下の疾患(Praprotnik S et al., Arthritis Rheum. 2001 Jul;44(7):1484-94.を参照)、即ち、ウェゲナー肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、巨細胞動脈炎、突発性網膜血管炎、閉塞性血栓性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、腎臓および心臓の移植の拒絶、高プロラクチン血症、溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板凝集性紫斑病、ヘパリン起因性血小板減少症、多発性硬化症、糖尿病、副甲状腺機能低下症、妊娠高血圧症候群、ロッキー山紅斑熱、ウイルス感染、境界域高血圧症、クリオグロブリン血症なども、本発明の標的疾患となり得る。

0013

標的細胞の選択に際しては、本発明の測定法によって得られる情報(即ち、測定データ又は測定データを処理・加工して得られる情報)の用途を考慮するとよい。具体的には、診断用途への利用を想定した場合、疾患により障害が生ずる組織・細胞が違うこともあることから、標的細胞を疾患に合わせて選択することにより、疾患特徴的なデータを取得可能となる。例えば同じ血管炎を起こす疾患においても、高安動脈炎では大動脈、川崎病では心臓の冠状動脈に、あるいは混合性結合組織病(MCTD)などで肺に異常が起こっていることもある。その様な疾患を対象にする場合は、それぞれ大動脈由来、冠状動脈由来、肺由来の血管内皮細胞を標的細胞にした方が実情を反映し、好ましいといえる。また、自己免疫疾患の多くが皮膚症状を示すことも特徴的なことであり、皮膚由来毛細血管内皮細胞あるいは皮膚由来線維芽細胞などが標的細胞として有望である。腎臓疾患においては腎臓内の細胞に抗体が結合することが知られており、腎臓に特徴的な細胞である、メサンギウム細胞、腎上皮細胞、腎微小血管内皮細胞などが標的細胞となり得る。潰瘍性大腸炎、クローン病などにおいては大腸由来細胞の使用が想定される。

0014

細胞表面タンパクの変性を防止するため、冷凍保存を経ていない標的細胞を標識化に供することが好ましい。従って、好ましい態様では、培養細胞であれば培養後に冷凍保存することなく、標識化を実施する。生体から新たに採取した細胞であれば、そのまま或いは培養後、冷凍保存することなく、標識化を実施する。

0015

標識物質は、タンパクの標識化に利用でき、且つそれに対する特異的結合物質(本願明細書では捕捉物質と呼ぶ)が存在するものであれば、特に限定されない。好ましい標識物質としてビオチン類を例示することができる。ビオチン類を採用すれば、捕捉物質としてのアビジン類の使用によって、標識化後の細胞表面タンパクを特異的に捕捉することができる。ビオチン類としては、ビオチン、ビオシチンデスチオビオチンオキシビオチン、又はアビジン類と安定的な複合体を形成し得るこれらの誘導体(例えば末端アミノ基修飾ビオチン)が挙げられる。アビジン類とは、アビジンストレプトアビジン又はニュートラアビジンなど、ビオチン結合タンパクのことである。

0016

ビオチン類による標識化には各種ビオチン化試薬利用可能である。細胞表面タンパクのみをビオチン化することが望まれるため、水溶性でかつ細胞膜を透過しない性質をもつビオチン化試薬を選択するとよい。ビオチン化試薬は、基本的には、反応性の違いからアミノ基標識用、SH基標識用、還元糖末端標識用、リン酸基標識用などに分けられる。ビオチン化試薬の具体例として、Sulfo-NHS-Biotin、Sulfo-NHS-LC-LC-Biotin、Sulfo-NHS-SS-Biotin、NHS-PEG12-Biotin、NHS-PEG4-Biotin、TFP-PEG3-Biotin、Maleimide-PEG11-Biotin、Maleimide-PEG2-Biotin、Iodoacetyl-PEG2-Biotin、Alkoxyamine-PEG4-SS-PEG4-Biotin、Alkoxyamine-PEG12-Biotin、Hydrazide-PEG4-Biotin、Alkoxyamine-PEG4-Biotin、Amine-PEG11-Biotin、Amine-PEG3-Biotin、Amine-PEG2-Biotin、Pentylamine-Biotin、Psoralen-PEG3-Biotin、Biocytin、Sulfo-SBED、Phostag- Biotinを挙げることができる。これらのビオチン化試薬は、反応する物質、官能基やビオチン化のスペーサーの長さなどの点で異なる。従って、標的となる細胞表面タンパクによっては、ビオチン化試薬の違いにより、抗細胞表面抗体の反応性が異なることも想定される。ビオチン化試薬の選択の際にはこの点を考慮するとよい。

0017

用いる試薬(ビオチン類を標識物質とした場合にはビオチン化試薬)に標準的な操作で標識化を実施することができる。例えば、ビオチン化試薬はタンパクや核酸などの標識に頻用されており、試薬に添付の取り扱い説明書或いは過去の使用例を参考にして、標識化を実施すればよい。また、条件の設定の際には、後述の実施例に示した具体例が参考になる。

0018

<ステップ(2)>
ステップ(1)に続くステップ(2)では、細胞表面タンパクを含む可溶化膜画分を調製するために、標識化後の標的細胞を界面活性剤で処理する。細胞表面タンパクの立体構造への影響の少ない界面活性剤を採用することが好ましい。細胞表面タンパクの立体構造が変化し、抗細胞表面抗体が結合できなくなることを防止するためである。好ましい界面活性剤の例として、n-ドデシル-β-d-マルトピラノシド(n-dodecyl-β-D-maltopyranoside:DDM)を挙げることができる。DDMは、多くの膜タンパクの研究において比較的良好な結果をもたらした、汎用性の高い界面活性剤として知られている。DDMを選択する一つの利点として、臨界ミセル濃度(CMC)が低いことがある。後述の実施例に示した本発明の一態様(CSP-ELISAと呼ぶ)では、反応及び洗浄の全てのステップにおいて、DDMを0.01%で添加しており、無添加の場合よりも良好な測定結果が得られている。DDMを含まない状態にしてしまうと、細胞表面タンパクによっては、タンパクの疎水性部分からDDMが排除されることで立体構造に変化が生じてしまうと予想される。そこで、界面活性剤としてDDMを採用する場合、好ましくは、可溶化膜画分を調製するステップ(ステップ(2))の各操作、細胞表面タンパクを固相化するステップ(ステップ(3))の各操作、サンプルを反応させるステップ(ステップ(5))の各操作、特異的結合成分を検出するステップ(ステップ(6))の各操作(但し、ELISAを採用した場合の酵素反応や吸光度の測定など、細胞表面タンパクの立体構造の維持が不要ないし無関係である操作を除く)を、CMCを超える濃度でDDMが存在する条件下(即ち、所定濃度のCMC含有の反応液洗浄液を使用する条件下)で実施する(この特徴については、ELISAによる検出を利用した態様についての説明の欄において詳しく説明する)。ここでのCMCを超える濃度は、0.0087%以上(例えば0.01%〜0.05%の間で設定することができる)である。DDM以外の界面活性剤を使用する場合も同様であり、上掲の各操作を、CMCを超える濃度で界面活性剤の存在する条件下で実施するとよい。DDM以外の界面活性剤として、同じく非イオン性トレハロースエステルタイプ(Trehalose C8など)、トレハロースエーテルタイプ(Treharose C8 etherなど)、グルコースタイプ(n-Octyl-β-D-glucosideなど)グルコアミドタイプ(BIGCHAPなど)、グルカミンタイプ(MEGA-8など)、陰イオン性コール酸タイプ(Sodium cholateなど)、両性コールアミドタイプ(CHAPSなど)を例示できる。尚、DDMは、CMCが低いため、洗浄液などに常時添加しても比較的安価であるという利点もある。n-Octyl-β-D-glucosideも定評のある界面活性剤であるが、CMCは0.73%であるため、DDMに比較すると約100倍以上の濃度で添加する必要がある。試薬の単価は、DDMに比較すると半額程度安価になるが、洗浄液のコストは約50倍となってしまう。

0019

可溶化膜画分を調製するための操作は、常法に従えばよく、例えば、細胞の破砕遠心分離による細胞膜画分回収、回収した細胞膜画分の溶解及び不溶成分の除去からなる一連の操作によって可溶化膜画分を得ることができる。細胞膜画分の溶解の際には、例えば超音波処理により溶解を促進することが好ましいが、温度の上昇によるタンパク変性を防止するため、氷冷条件下で処理するとよい。細胞の破砕には、ホモジナイザー(例えばDounce型ホモジナイザー)、フレンチプレス窒素ガス細胞破砕器等を用いることができる。細胞膜画分の回収の際にはプロテアーゼ阻害剤(例えば、Complete protease inhibitor cocktail (Roche Applied Science))を使用し、細胞表面タンパクの分解を防止することが好ましい。

0020

界面活性剤で処理して細胞表面タンパクを可溶化する際に、NDSB(non-detergent sulphobetaine)を添加することで可溶化効率を高めたり、タンパク同士の凝集を防いだり、及び/又は構造の安定化を図ることにしてもよい。

0021

<ステップ(3)>
このステップでは、細胞表面タンパクを固相化するための不溶性支持体を用意する。具体的には、捕捉物質が結合した不溶性支持体を用意する。ステップ(1)において細胞表面タンパクの標識化に使用した標識物質に対して特異的結合性を示す物質を捕捉物質とする。例えば、標識物質としてビオチン類を用いた場合には、アビジン類を捕捉物質として用いる。各種アビジン類を使用可能であるが、非特異的吸着が少ないニュートラアビジンを使用することが特に好ましい。ニュートラアビジンでは、アビジンと異なり、中性pH領域に等電点を持つことで非特異的吸着が最低限に抑えられ、さらに糖を除去する処理により、レクチンの結合、非特異的結合がなくなっている。また、ストレプトアビジンと異なり、細胞接着性配列(RYD配列)に起因する非特異的結合もない。

0022

不溶性支持体への捕捉物質の結合は、不溶性支持体に対して捕捉物質を接触させることにより達成可能である。例えば、捕捉物質を含有する溶液を用意し、それを添加する等して不溶性支持体に接触した状態を形成させ、所定時間(例えば1時間〜24時間)、接触状態を維持する。その後、結合していない捕捉物質を洗浄除去する。洗浄液には例えばPBS、Tris/HCl緩衝液を使用することができる。洗浄は複数回(例えば2〜5回)行うと良い。捕捉物質が結合せずに空いているスペースへの非特異的吸着を避けるため、所定温度(例えば4℃〜37℃)で所定時間(例えば1時間〜24時間)、ブロッキングを行う。ブロッキングには好ましくはBSA(ウシ血清アルブミン)を用いる。濃度は、例えば2.5%で行う。スキムミルクブロッキング試薬として頻用されるが、スキムミルクにはビオチンが含まれているため、アビジン類を捕捉物質とした場合には、不適切である

0023

不溶性支持体としては例えば、ポリスチレン樹脂ポリカーボネート樹脂シリコン樹脂ナイロン樹脂等の樹脂や、ガラス等の水に不溶性の物質が用いられ、特にその材質は限定されない。不溶性支持体の形状も特に限定されない。好ましくは、培養皿やマルチウェルプレート(例えば6ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート)等、捕捉物質を結合させるためのウェル(穴)を備えた不溶性支持体を使用する。マイクロビーズ等、ビーズ状の不溶性支持体を用いることもできる。

0024

尚、ステップ(3)をステップ(1)又はステップ(2)と並行して、或いはステップ(1)又はステップ(2)の前に行うことにしてもよい。

0025

<ステップ(4)>
このステップでは、ステップ(3)で用意した不溶性支持体に対して、ステップ(2)で調製した可溶化膜画分を反応させる。例えば、不溶性支持体において捕捉物質を結合させた領域(典型的には、ウェル)に可溶化膜画分を添加し、不溶性支持体に結合した捕捉物質と可溶化膜画分中の標識化細胞表面タンパクが接触する状態を形成する。これにより、捕捉物質と、標識化細胞表面タンパクにおける標識物質とが結合する。その結果、標識化細胞表面タンパクが、捕捉物質と標識物質の結合を介して、不溶性支持体に捕捉されることになる。このように本発明では、細胞表面タンパクを不溶性支持体に直接、固相化しないことにより、細胞表面タンパクの立体構造が障害ないし破壊されることを防止する。

0026

反応条件は、使用する捕捉物質や標識物質等によって変動し得るが、最適な反応条件は予備実験を通して決定することができる。可溶化膜タンパクは、構造が不安定になっていることが想定されるため、低温での反応が望ましい。捕捉物質としてニュートラアビジン、標識物質としてビオチンを使用する場合の反応条件の例を示すと、4℃で2時間〜48時間である。反応させる際の可溶化膜画分の濃度は、例えば1ウェルあたり、600〜800ngにするとよい。可溶化膜画分を希釈する際には、可溶化膜画分の調製の際に用いた界面活性剤を含む溶液(例えばPBS溶液)を使用し、可溶化膜画分における界面活性剤濃度が、CMCを下回らないようにすることが好ましい。

0027

可溶化膜画分の反応後は、非特異的結合成分を除去するために洗浄を行い、次のステップに進む。洗浄液には例えばPBS、Tris/HCl緩衝液を使用できる。好ましくは、可溶化膜画分の調製の際に用いた界面活性剤を含む洗浄液を使用する。洗浄は複数回(例えば2〜5回)行うと良い。次のステップにおいて、サンプル、例えば患者血清を100倍希釈以上の条件で反応させる場合、血清希釈液にスキムミルクを、例えば0.5%程度添加することで非特異的吸着を防ぐことができる。しかし、血清濃度がさらに高い条件で反応させる場合には、予め5%スキムミルクでブロッキングすることが望ましい。

0028

<ステップ(5)>
ステップ(1)〜(4)の結果、不溶性支持体に細胞表面タンパクが固相化される。ステップ(5)では、このように固相化した細胞表面タンパクにサンプルを反応させる。例えば、不溶性支持体において細胞表面タンパクを固相化させた領域(典型的には、ウェル)に可溶化膜画分を添加し、固相化された細胞表面タンパクとサンプル中に存在し得る抗細胞表面抗体が接触する状態を形成する。これにより、固相化された細胞表面タンパクを抗原とする抗細胞表面抗体がサンプル中に存在しておれば特異的な結合が生じ、細胞表面タンパクと抗細胞表面抗体からなる免疫複合体が形成される(換言すれば、固相化された細胞表面タンパクに対して抗細胞表面抗体が特異的に結合する)。反応条件は、サンプルの種類や濃度等によって変動し得るが、最適な反応条件は予備実験を通して決定することができる。可溶化膜タンパクは、構造が不安定になっていることが想定されるため、低温での反応が望ましいが、抗体の結合反応が低下する可能性も考慮する必要がある。反応条件の例を示すと、4℃で2時間〜48時間である。サンプルとしては、血清、血漿、尿、唾液、母乳、涙液、脊髄液、骨髄液腹水胸水等の生体液が用いられる。測定対象とする抗細胞表面抗体がIgAの場合には唾液、母乳及び涙液も好適なサンプルとなり得る。また、神経疾患などにおいては、脊髄液中での抗体価を測定する意味があることも既に知られている。

0029

サンプルを希釈する際には、可溶化膜画分の調製の際に用いた界面活性剤を含む溶液(例えばPBS溶液)を使用し、可溶化膜画分における界面活性剤濃度が、CMCを下回らないようにすることが好ましい。また、希釈液にスキムミルクや市販のブロッキング試薬(ELISAUltrablock, ELISA Neptuneなど魚類由来のタンパク)等を添加しておき、サンプルの反応の際の非特異的結合を防止することが好ましい。

0030

精製処理を経たサンプルを用いることもできる。ここでの精製処理は、不溶成分の除去、遠心処理、特定の免疫グロブリン画分を調製又は濃縮するための処理(例えばプロテインGカラムによる精製)等である。

0031

サンプルの反応後は、非特異的結合成分を除去するために洗浄を行い、次のステップに進む。洗浄液には例えばPBS、Tris/HCl緩衝液を使用できる。好ましくは、可溶化膜画分の調製の際に用いた界面活性剤を含む洗浄液を使用する。洗浄は複数回(例えば2〜5回)行うと良い。

0032

<ステップ(6)>
このステップでは、固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分を検出する。免疫複合体を検出可能である限りにおいて、様々な検出法を適用可能である。検出法として、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に代表される酵素免疫測定法EIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)、放射免疫測定法RIA法)を例示することができる。好ましい測定法としては、FIA法及びEIA法(特にELISA)を挙げることができる。これらの方法によれば高感度、迅速且つ簡便に検出可能である。EIA法では酵素標識した抗ヒト免疫グロブリン抗体(抗ヒトIgG抗体、抗ヒトIgGサブクラス抗体、抗ヒトIgM抗体、抗ヒトIgA抗体、抗ヒトIgAサブクラス抗体など)が使用される。標識に使用する酵素の例はホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼグルコースオキシダーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素である。FIA法では、フルオレセインイソチオシアネートFITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、ユーロピウム等の蛍光で標識した抗ヒト免疫グロブリン抗体を使用する。尚、パーキンエルマー社のAlphaLISAシステム等を利用して免疫複合体を検出することにしてもよい。

0033

ELISAを利用する場合、典型的には、酵素標識抗ヒト免疫グロブリン抗体の添加(6−1)、洗浄(6−2)、酵素の基質溶液の添加(6−3)及び吸光度の測定(6−4)からなる一連の操作を行う。典型的には吸光度の測定に先立って、酵素反応を停止させておく。換言すると、予め定められた時間(例えば、20分間)のみ酵素反応を行う。各操作は、使用する試薬の取り扱い説明書や成書(例えば例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)やCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987))或いは過去の報告を参考にして行うことができる。但し、本発明においては、標識化細胞表面タンパクの立体構造を維持するために、(6−1)及び(6−2)の操作を、可溶化膜画分の調製の際に用いた界面活性剤がCMCを超える濃度で存在する条件下で実施することが好ましい。従って、好ましい態様では、特定の界面活性剤がCMCを超える濃度で存在する酵素標識抗ヒト免疫グロブリン抗体溶液を使用して操作(6−1)を行い、特定の界面活性剤がCMCを超える濃度で存在する洗浄液を使用して操作(6−2)を行う。

0034

本発明の測定法によれば、抗原(抗体が特異的に結合する細胞表面タンパク)が未知の抗細胞表面抗体を網羅的に測定することが可能である。一方、抗原が同定された場合、即ち、測定対象の抗細胞表面抗体が特異的に結合する細胞表面タンパクが判明している場合には、当該抗原の遺伝子を利用して組換えタンパクを細胞表面に強制発現させることで、当該抗原を濃縮して固相化し、利用することが可能になる。例えば、捕捉物質としてニュートラアビジンを採用するのであれば、抗原遺伝子をAvitagと融合した状態で発現させる。Avitagは、ビオチンリガーゼが発現している細胞で発現させることにより、そのリジン残基がビオチン化されるタグである。別のタグを使うことも可能である。各種タグが利用できるが、抗タグ抗体で捕捉することも可能であるものの、結合力の強さを考慮すると、共有結合あるいはアビジン−ビオチン結合を利用するのが好ましい。例えば、Haloタグは、リガンドと共有結合するため極めて安定である。リガンドには、Amine Ligand、Sccinimidyl Ester Ligand、Thiol Ligand、Iodoacetamide Ligandを用いることができる。また、Haloタグに対してビオチン標識リガンドでビオチン化することが可能なことからニュートラアビジンなどで捕捉することも可能である。

0035

一態様では、検出する成分(即ち、固相化した細胞表面タンパクに対して特異的に結合した成分)はIgGである。IgGは免疫グロブリンの中で存在量が最も多く、様々な疾患におけるマーカーとなり得る。従って、IgGを検出対象とした測定法は、その結果の利用範囲が広い(汎用性が高い)といえる。一方、他の一態様では、検出する成分はIgAである。IgAは、IgGに次ぎ高濃度で血中に存在する免疫グロブリンであり、粘膜免疫主役として消化管呼吸器における免疫に大きく関与していると考えられている。しかし、IgAが腎臓の糸球体に沈着することで糸球体腎炎となるIgA腎症は、慢性糸球体腎炎で一番頻度の高い疾患であるが、その原因や病態の解明には未だ至っていない。後述の実施例に示す通り、IgAの検出結果は、ループス腎炎ないし腎炎の活動性、IgA腎症、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性強皮症の判定・評価に有用であることが判明した。この態様は、ループス腎炎ないし腎炎の活動性又は全身性強皮症の判定の手段として本発明を利用する場合に特に有効である。

0036

本発明の第2の局面は抗細胞表面抗体の測定キットに関する。本発明の測定キットは本発明の測定法に利用可能である。本発明の測定キットを利用すれば、本発明の測定法を簡便且つ効率的に実施できる。

0037

本発明の測定キットは、界面活性剤が結合した標識化細胞表面タンパクを固相化した不溶性支持体を構成要素とする。当該不溶性支持体は、上記のステップ(1)〜(4)によって調製することができる。界面活性剤は、好ましくはn-ドデシル-β-d-マルトピラノシドである。また、不溶性支持体の形態は、典型的には、培養皿、マルチウェルプレート又はマイクロビーズである。標識化細胞表面タンパクの変性を防止するために、CMCを超える濃度で界面活性剤(標識化細胞表面タンパクに結合している界面活性剤と同一のもの)を含有する保存液中に標識化細胞表面タンパクが浸漬した状態にあることが好ましい。例えば、マルチウェルプレートの不溶性支持体を採用した場合は、各ウェルに保存液を添加しておくことにより、当該状態を実現可能である。一方、保存性を高めるために、保存液にショ糖(例えば5%〜20%)やトレハロースなどを添加しておくとよい(例えば、-20℃での冷凍保存した場合の安定性が向上する)。

0038

本発明の測定法を実施する際に使用するその他の試薬(緩衝液、洗浄液、ブロッキング用試薬酵素標識抗体、酵素の基質)及び/又は装置ないし器具チューブ等の容器インキュベーター、吸光度計など)をキットに含めてもよい。尚、通常、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。

0039

新規ELISAシステムの開発及びその有効性の検証>
全身性血管炎の患者や炎症状態の患者の血清中には、血管内皮細胞に結合する抗体(AECA)が含まれていることが報告されている。AECAには、内皮細胞の活性化や血管損傷の引金になるような免疫学的作用を持つことが知られているが、その免疫病理学的な詳細は不明である。AECAの標的抗原を検出するためにSDS-PAGEやウェスタンブロッティング解析が行われてきた。しかしながら、これらの方法は、細胞表面の真の標的抗原を探索する方法としては適切とはいえない。そこで、可溶化した細胞表面タンパクを捕捉して使用する新たなELISAシステム(CSP-ELISA法)を開発し、その有効性を検証した。

0040

1.方法
(1)血清
自己免疫疾患患者および健常人の血清あるいは血漿を使用した。対象とした自己免疫疾患は全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病(MCTD)、全身性強皮症(SSc)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、高安動脈炎(TA)、橋本病、皮膚筋炎、ベーチェット病、バセドウ病である。コントロールとして健常人血清を使用した。

0041

(2)細胞培養
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)はLonza社より購入した。培地はEGM-2培地(Lonza)、15cmディッシュ使い、5%CO2インキュベーター内で培養した。細胞の剥離にはCollagenase Type I (Invitrogen) をCell Dissociation Buffer (Invitrogen)に4mg/mlの濃度で溶解して使用した。

0042

(3)ビオチン化
コラゲナーゼ処理により剥離した細胞をPBSで2回以上洗浄して培地由来のタンパクを除去後、1x107/mlの細胞濃度になるように氷冷PBSに懸濁した。ビオチン化試薬は、EZ-link Sulfo- NHS-LC-Biotin (Thermoscientific)を使用し、10mg/mlの濃度の試薬を1x107細胞あたり100μl加えた。4℃で30分間、ゆっくり転倒混和後、最終濃度100μg/mlになるようにグリシンを加え、ビオチン化反応を停止した。その後、PBSで1回洗浄し、ビオチン化試薬を除去した。

0043

(4)膜画分の調製
ビオチン化処理をした細胞を、1x107細胞あたり2mlの氷冷HEPES緩衝液(10mMHEPES(pH 7.9)、1.5mM MgCl2、10mM KCl)に懸濁し、Dounce型ホモジナイザーで40回のストロークにより細胞を破砕した。10,000 x g、10分間の遠心により、細胞膜を含む画分をペレットして回収した。上清は可溶性画分として回収した。ペレットに1x107細胞あたり1mlの氷冷1% n-dodecyl-β-D-maltopyranoside (Dojindo)、Complete Protease Inhibitor (Roche Applied Science)を含むPBSを加え、溶解した。転倒混和だけでは塊を完全に溶解することは困難なため、氷冷しつつ1分間の超音波処理を行った。その後、4℃で1時間以上転混和した。10,000 x g、10分間の遠心により、溶解できない成分を除去した。上清をDDM可溶化膜画分として回収した。タンパク量はMicroBCA Protein Assay Kit (Thermoscientific)で定量した。尚、1% DDMを含むPBSに溶解した可溶化膜画分を4℃で保存したところ、少なくとも数ヶ月は安定であった。

0044

(5)CSP-ELISA
ELISA用プレートはMaxisorp immuno-module (ThermoFisher)を使用した。NeutrAvidin (Thermoscientific)は、5μg/mlでPBSに溶解し、Maxisorp immuno-moduleに1ウェルあたり100μlを加え、4℃で一晩以上放置することで固相化した。PBSで洗浄後、2.5%BSAを含むPBSを200μl加えて37℃で1時間以上、あるいは4℃で一晩以上放置してブロッキングした。PBSで洗浄後、DDM可溶化膜画分を6.4μg/mlの濃度になるように0.01% DDMを含むPBSで希釈し、1ウェルあたり100μlを加えて4℃で一晩以上放置することでビオチン化タンパクを捕捉させた。ウェルに加えるタンパク量が大過剰になると、反応できる抗体の量が低下することが観察された。抗原の密度が高すぎることで抗体の結合に立体障害が生じたことが考えられる。捕捉したウェルに対して0.1μg/mlのHRP標識NeutrAvidinを反応することで、捕捉されたビオチン化タンパクの量を検出できるが、プラトーになる80%程度で捕捉させる条件を通常使うことにした。

0045

ビオチン化タンパクを捕捉させたELISAウェルを、0.01%DDMを含むPBS350μlで2回洗浄後、患者血清希釈液を加えた。患者血清は、0.5%スキムミルク、0.01% DDMを含むPBSで希釈した。IgG、IgMの場合は200倍希釈、IgAの場合は100倍希釈した。1ウェルあたり希釈液100μlを加えて4℃で2時間反応し、洗浄は0.01% DDMを含むPBS 350μlで3回行った。洗浄後、5000倍希釈のHRP標識抗ヒトIgG抗体(MBL)、HRP標識抗ヒトIgM抗体(MBL)又はHRP標識抗ヒトIgA抗体(MBL)を100μl加えて4℃で1時間反応した。0.01% DDMを含むPBS 350μlで4回洗浄した後、o-phenylenediamine dihydrochrolide (OPD;和光)溶液を100μl加え、発色による検出を行った。発色時間は、IgGの検出は20分、IgMの検出10分、IgAの検出は30分とし、0.2N硫酸反応停止した。反応停止後、492nmの吸光度を測定した。

0046

ビオチン化タンパクを捕捉したCSP-ELISAプレートは、-20℃の条件下、少なくとも数ヶ月は安定であった。しかしながら、そのままの状態で長期間-20℃で保存したところELISA値の低下が認められたことから、保存液を検討することにした。ウェルを0.01%DDMを含むPBSで洗浄後、さらに10%ショ糖、0.01%DDMを含むPBSを150μl加え-20℃で保存した場合は、ELISA値の低下はほとんど起こらなかった。ショ糖以外にもトレハロースも同様の効果が期待できる。

0047

2.結果
(1)膜画分のビオチン化の検出
HUVECの総タンパク、DDM可溶化膜画分、及び細胞内可溶性画分を各2μg、SDS-PAGEで分離し、銀染色でタンパクを検出した。DDM可溶化膜画分と細胞内可溶性画分についてはウェスタンブロッティングを行い、HRP標識NeutrAvidinでビオチン化タンパクを検出した。(図2)。ビオチン化されたタンパクは主にDDM可溶化膜画分に回収されたことから、ビオチン化試薬が細胞内に入って細胞内可溶性タンパクをビオチン化していることは少ないと判断された。細胞内可溶性タンパクで検出されているバンドには、既知の内在性のビオチン化タンパクなども含まれている。

0048

(2)患者血清中の抗体価
全身性エリテマトーデス(SLE)、混合性結合組織病(MCTD)、全身性強皮症(SSc)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、高安動脈炎(TA)、その他の自己免疫疾患、健常人についてCSP-ELISAでIgGを測定した(図3)。健常人122名での平均値は、0.143(±0.074)になり、平均値+2x(標準偏差)の値0.26をカットオフ値に設定したところ、カットオフ値以上になったのは122名の内4名(3.3%)であった。

0049

患者においては、SLEで78%(28/36)、MCTDで81%(13/16)、SScで56%(5/9)の陽性率となった。Mann-WhitneyU検定で健常人データに対しての統計処理をしたところ、SLE (p < 0.00001)、MCTD(p < 0.00001)、SSc (p < 0.00001 )となり、患者においては非常に有意に高い陽性率であった。SS、RAについてもp < 0.05 を示すことから、陽性率は高いと判断できる。TAに関してはP=0.465となり、健常人比率と差が見られなかった。しかしながら、TAについては、細胞に対して直接血清を反応させるCyto-ELISA(Ito S. et al. Biol Pharm Bull. 2002 Aug;25(8):986-90.を参照)においては高陽性率(P < 0.00001)を示すことから、条件(標識化法、細胞破砕法、可溶化法、界面活性剤の選択、プレートへの固相化など)を調整すればCSP-ELISAでも有意な判定が可能であると考えられる。

0050

(3)患者血清中の抗体が結合する抗原は変性により抗原性が消失する
CSP-ELISAでは基本的に全てのステップ(反応、洗浄)で0.01%DDMを含むPBSを使用する。DDMを含まないPBSを全ステップで使用した場合、検体により抗体の結合が低下することが観察された。そこで、ウェル上の抗原を敢えて変性処理することにより、抗体の結合の変化を観察した。血清を反応する直前に、ELISAウェルを、0.01%DDMを含むPBS、PBSのみ、0.1% SDSを含むトリス緩衝液(10mM Tris-HCl(pH7.5、100mM NaCl)或いはRIPA緩衝液(50mM Tris-HCl(pH9.8)、150mM NaCl、0.1% SDS、0.5% Sodium deoxychorate、1% NP-40)で、37℃、30分間の処理を行った後、再び0.01%DDMを含むPBSで洗浄して通常の反応を行った。SLE、MCTDそれぞれ6検体について測定したところ、PBSのみの場合、0.1% SDSを含むトリス緩衝液の場合、RIPA緩衝液の場合において、それぞれ3〜15%、20〜77%、11〜47%の低下が見られた。この結果は、0.1% SDS処理により抗原性が大きく低下したことを意味している。MCTDで1検体のみ大きな低下は見られなかった。市販のモノクローナル抗体である、抗CD147抗体、抗Integrin α3抗体、抗Integrinβ1抗体についても同様の実験を行ったところ、抗Integrin β1抗体で結合の顕著な低下が観察された。この抗Integrin β1抗体は、仕様書にウェスタンブロッティング解析には使用できないと書かれており、その性質と合致する。HRP標識NeutrAvidinによる測定では大きな変化は見られず、これらの変性処理によりウェル上の抗原が剥離していないことが確認できた。0.1% SDS、37℃、30分間の処理は、SDS-PAGEの際に行う1%SDSを含むサンプル緩衝液での煮沸処理に比較すると、かなり穏やかな処理にも関わらず、抗原性の低下を引き起こした。以上の結果より、CSP-ELISAで検出している患者血清中の自己抗体と自己抗原の反応は、ウェスタンブロッティング解析では検出できないものと考えられる。

0051

(4)腎疾患患者血清の結果
IgA腎症(IgAN)、ANCA関連腎炎(ANCA)、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSPN)、ループス腎炎患者(LupusN)の血清を用いCSP-ELISAを実施した結果、ループス腎炎では非常に高値を示した。他の疾患についても陽性率は高かった。ループス腎炎の結果では、リウマチ感染症内科のSLE患者より高値を示す場合が見られ、IgG、IgA共に高値の患者と、IgGだけが高値の患者に分かれた。前者にはIV型管内増殖性糸球体腎炎の患者が多く、後者にはV型膜性ループス腎炎の患者が多かった。この結果は、抗体測定だけで腎疾患の分類分けができる可能性を示す。

0052

(5)不育症患者血漿の結果
不育症患者100名についてCSP-ELISAでIgG及びIgMを測定したところ、健常妊婦20名と比較して、IgG、IgMともに有意に高値を示した。健常妊婦20名の値は、健常人122名の結果に比べると、有意に高値を示している。妊娠状態においては、CSP-ELISA値が陽性になる人が増えると考えられる。

0053

<CSP-ELISA法の適用・応用>
CSP-ELISA法の有効性を更に検証するため、以下の実験を行った。尚、特に言及しない事項(使用した試薬、操作、条件など)は、上記の実験に準じた。

0054

1.全身性エリテマトーデス(SLE)患者でのループス腎炎の有無によるCSP-ELISA値
ループス腎炎の症状を有しているSLE患者血清(ループス腎炎(Lupus N)、52検体)、ループス腎炎の症状を有していないSLE患者血清(SLE、25検体)、疾患コントロール(DC、10検体;微小変化型ネフローゼ症候群、ひ薄基底膜病、家族性巣状糸球体硬化症、1型糖尿病性腎症など)、さらに健常人(HC、81検体)を測定した。ループス腎炎およびSLEの臨床データ図7に示す。ループス腎炎においては血清中総IgG量(IgG mg/dl)の低下、C3c量(C3c mg/dl)の低下、抗DNA抗体価(Anti-DNA Ab IU/ml)の上昇、たんぱく尿(UP (0-3+))の上昇、尿潜血(UOB (0-3+))の上昇、尿沈渣赤血球(URBC(sediment))の増加が見られた。

0055

HUVEC(正常ヒト臍帯静脈内皮細胞)由来の膜画分を用いたCSP-ELISAで測定した結果が図8である。IgGに加えてIgAも測定した。健常人の平均値+2×(標準偏差)の値をカットオフ値に設定すると、IgGについてはループス腎炎、SLE、疾患コントロール及び健常人で、それぞれ94%、96%、26%及び6%が陽性であった。また、IgAについてはループス腎炎、SLE、疾患コントロール及び健常人で、それぞれ35%、28%、10%及び5%が陽性であった。

0056

ループス腎炎の有無と自己抗体価の相関性は、IgGでは殆どが高値で陽性であるため差が見られなかったが、IgAについては高値の方が病態の活動性が高いことがわかった。その結果を図9に示す。血清中総IgG量(IgG mg/dl)の上昇、C3c量(C3c mg/dl)の低下、抗DNA抗体価(Anti-DNA Ab IU/ml)の上昇、尿潜血(UOB (0-3+))の上昇、尿沈渣赤血球(URBC(sediment))の増加との相関性が見られた。

0057

腎炎を対象にしていることから、臍帯静脈由来ではなく腎臓由来の血管内皮細胞を用いて測定することで、より病態に直結する自己抗体を検出しやすいと考え、正常ヒト腎糸球体毛細血管内皮細胞(HGMEC)を使用してCSP-ELISAを行った。測定結果を図10に示す。IgG、IgAともに、HUVECとほぼ同じ結果が得られた。HUVECとHGMECの相関性を示したものが図11である。この結果から、自己抗体が結合する細胞表面上の自己抗原はHUVECとHGMECでほぼ同様な発現をしていると考えられた。

0058

HGMECを使用したCSP-ELISAにおいても、IgA値と腎炎の活動性との相関性が見られた(図12)。

0059

2.IgA腎症および他の腎疾患患者血清中に含まれる自己抗体のCSP-ELISAによる測定
IgA腎症(IgAN、50検体)、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎(HSPN、8検体)、ループス腎炎(LN、37検体)、ANCA関連腎炎(ANCA、10検体)、疾患コントロール(DC、10検体;微小変化型ネフローゼ症候群、ひ薄基底膜病、家族性巣状糸球体硬化症、1型糖尿病性腎症など)、さらに健常人(HC、81検体)を測定した。各疾患患者の臨床データは、図13である。各疾患において、血清中総IgA量(IgA mg/dl)、尿沈渣赤血球(URBC(sediment)の増加、半月体形成率(Crescent %)の増加、癒着率(Synechiae %)の増加、状糸球体硬化率(G. sclerosis %)などの増加などが挙げられる。

0060

HUVEC由来の膜画分を用いたCSP-ELISAで測定した結果が図14である。IgG及びIgAを測定した。健常人の平均値+2×(標準偏差)の値をカットオフ値に設定すると、IgGについては、IgA腎症及びへノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎で、それぞれ60%及び75%が陽性であった。IgAについては、IgA腎症及びへノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎で、それぞれ34%及び62%が陽性であった。また、IgG値とIgA値には相関性が見られたが、(図15)、IgGとIgAともに陰性、IgGのみ陽性、IgAのみ陽性、IgGとIgAともに陽性のグループに分かれた(図16)。病態と自己抗体価の相関性は、IgA高値の場合、有意に尿沈渣赤血球(URBCsediment)の増加が見られた(図17)。

0061

3.全身性強皮症患者血清中に含まれる自己抗体のCSP-ELISAによる測定
全身性強皮症(SSc、156検体)、健常人(HC、114検体)を測定した。正常ヒト皮膚微小血管内皮細胞(HMVECd)由来の膜画分を用いたCSP-ELISAで測定した結果が図18である。IgG及びIgAを測定した。健常人の平均値+2×(標準偏差)の値をカットオフ値に設定すると、IgGについては15%、IgAについては23%が陽性だった。IgG値は肺活量(%VC)、肺拡散能(%DLco)、リンパ球数及びクレアチニンクリアランス(CCr)と弱い負の相関を示した。また、血清中総IgG量と血中シアル化糖鎖抗原(KL-6)の間に弱い正の相関が見られた(図19)。

0062

4.混合性結合組織病患者血清中に含まれる自己抗体のCSP-ELISAによる測定
混合性結合組織病(MCTD、16検体)について、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と正常ヒト肺動脈内皮細胞(HPAEC)由来の膜画分を用いたCSP-ELISAで測定した結果が図20である。IgG及びIgAを測定した。HUVECに比較してHPAECの方が高値を示す患者が多かった。HUVECよりHPAECの方が自己抗原をより多く発現していることが考えられる。MCTDの5〜10%に合併する肺高血圧症重篤合併症であり、肺動脈においての抗原抗体反応が肺高血圧症に関与しているのであれば、HPAECでの自己抗原の解明は大きな価値がある。15番の患者は肺高血圧症を発症しており、その治療の前後での血清を測定した結果を図20の右端に示した。PHが肺高血圧症で入院時の血清、preおよびpostが治療前後である。ステロイドの大量投与で抗体価の著しい低下が見られるが、治療前後では差が見られなかった。

実施例

0063

5.まとめ
(1)CSP-ELISA法が各種疾患の判定に有効であることが示された。即ち、CSP-ELISA法の汎用性が高いことが更に裏づけられるとともに、本法がループル腎炎、IgA腎症、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性強皮症及び混合性結合組織病に対して特に有効であることが示された。
(2)ループス腎炎ないし腎炎の活動度、IgA腎症、へノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性強皮症の判定においては、IgGだけでなくIgAも検出対象として有用であることが明らかとなった。特に、ループス腎炎と全身性強皮症では、IgGよりもIgAの方が高い陽性率を与え、IgAの有用性が高いことが示唆された。
(3)疾患に関連する組織(当該疾患によって障害が生ずる組織)由来の膜画分を使用することの有効性が裏づけられた。

0064

本発明の測定方法によれば、細胞表面タンパクの様に不安定なエピトープを持つ自己抗体も検出可能となる。また、様々な細胞表面タンパクと抗体の反応を検出・測定できる、汎用性の高い方法である。細胞表面タンパクに対する抗体は、自己免疫疾患をはじめとする様々な疾患の発症、進展などに関与することが知られている。本発明の測定法によって得られる情報は、これらの疾患の発症の判定、発症可能性の予測、病態の把握ないしモニタリング等に利用され得る。このように、細胞表面タンパクに対する抗体が関与する疾患の診断用ツールとして本発明は有用である。また、本発明は、細胞表面タンパクに対する抗体が関与する各種疾患の発症メカニズムや進展メカニズムの研究用ツールとしても有用である。細胞表面タンパクは、自己免疫疾患をはじめ、癌、内分泌代謝疾患精神神経疾患など多くの臨床分野における創薬標的分子候補になると考えられている。しかしながら、細胞表面タンパクを扱う実験手法はまだ十分とは言えない。細胞表面タンパクの立体構造を保持したまま固相化して扱うという本願発明考え方は、細胞表面タンパクを対象とした研究に有効且つ重要であり、創薬や診断技術の発展に多大な貢献をし得る。

0065

この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

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