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技術 アルミニウムブレージングシートの設計方法

出願人 株式会社UACJ
発明者 伊藤泰永
出願日 2012年10月5日 (9年0ヶ月経過) 出願番号 2012-222784
公開日 2014年4月24日 (7年6ヶ月経過) 公開番号 2014-073520
状態 特許登録済
技術分野 溶融はんだ付 はんだ付・ろう付材料
主要キーワード 振動係数 区分求積 強度向上策 心材表面 低速加熱 溶融直前 界面濃度 材料調達
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年4月24日)のものです。
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図面 (5)

目的

不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートにおいて、ろう付け接合界面にスピネル型Mg酸化物を形成させて、ろう材表面の酸化皮膜脆弱化し、ろう付け性を向上させるために、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度が特定の値(0.04〜0.3%)となるよう、ろう付け加熱前の心材Mg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱速度(450℃から577℃までの加熱時間s(秒)で定義)を決定するアルミニウムブレージングシートの設計方法を提供する。

構成

下記の式1または式2を用いて設計する。式1:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)={(c−d)/c}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・c+d(但し、c≧d、c≠0)式2:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)=d−{(d−c)/d}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・d(但し、c<d)

概要

背景

自動車などの輸送機器用の熱交換器接合方法としては、アルミニウム心材の片面あるいは両面にAl−Si合金ろう材クラッドしたブレージングシートを用いるろう付け方法が適用されており、最近は、不活性雰囲気中でフラックス無しでろう付けする方法が注目され、その方法の一つとして、従来の真空ろう付けと同様、ろう材にMgを添加したアルミニウムブレージングシートを用いてろう付けする手法、あるいは心材にMgを添加したアルミニウムブレージングシートを用い、ろう付け加熱時に心材からろう材にMgを拡散させてろう付けする手法が提案されている。これらの方法は、Mgによりろう材表面のアルミニウム酸化皮膜(以下、単に酸化皮膜)を除去して、ろう付け性を向上させることを意図したものである。

しかしながら、通常、上記の手法によりろう付け接合した場合、ある程度の接合は可能であるが、Mgにはろう付け性に相反する作用もあり、十分な接合が得られない場合も少なくない。例えば、Mgを含有するアルミニウムを大気中で加熱すると、とくに450℃以上の高温域ではアルミニウムの表面にMg酸化物が生成する。これは、アルミニウム中のMgが大気中の酸素と反応して生成する酸化物であるが、不活性ガス雰囲気中で加熱した場合も、不活性ガス中の酸素濃度あるいは露点が高いと、アルミニウム中のMgが雰囲気ガス中の酸素や水蒸気と反応して酸化皮膜表面でMg酸化物を生成し、ろうの濡れ性を低下させる原因となる。

発明者らは、Mgによりろう材表面の酸化皮膜を除去して、ろう付け性を向上させるのは、接合界面にスピネル型Mg酸化物(Al2MgO4)が形成され、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化するためであることを見出し、この知見に基づいてなされたアルミニウムブレージングシートの発明について特許出願した(特願2012−222689号)。

最近、とくに自動車用熱交換器の分野においては、更なる材料の薄肉化と生産性の向上が要求され、熱交換器のろう付けにおいても、急速加熱が求められているが、例えば、心材にMgを添加したアルミニウムブレージングシートを用い、ろう付け温度への昇温速度を速くしてろう付けを行った場合、間隙充填性が劣ることがあり、その原因は、加熱速度が速いと、心材からろう材表面へのMg拡散が間に合わず、スピネル型Mg酸化物の生成が不足するためであることが認められた。

概要

不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートにおいて、ろう付け接合界面にスピネル型Mg酸化物を形成させて、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化し、ろう付け性を向上させるために、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度が特定の値(0.04〜0.3%)となるよう、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱速度(450℃から577℃までの加熱時間s(秒)で定義)を決定するアルミニウムブレージングシートの設計方法を提供する。下記の式1または式2を用いて設計する。式1:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)={(c−d)/c}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・c+d(但し、c≧d、c≠0)式2:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)=d−{(d−c)/d}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・d(但し、c<d)なし

目的

本発明は、上記の検討結果に基づいてなされたものであり、その目的は、不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートにおいて、ろう付け接合界面にスピネル型Mg酸化物を形成させて、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化し、ろう付け性を向上させるために、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度が特定の値となるよう、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱速度(450℃から577℃までの加熱時間s(秒)で定義する)を決定するアルミニウムブレージングシートの設計方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

アルミニウムアルミニウム合金を含む、以下同じ)心材にSi:6〜13%(質量%、以下同じ)を含有するAl−Si合金ろう材クラッドしてなり、不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートを、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度(以下、単にろう材中の平均Mg濃度)が0.04〜0.3%となるように、下記の式1または式2を用いて設計する方法であって、式1および式2は、ろう付け加熱前の心材のMg含有量をc(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量をd(%)、ろう材厚さをx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間をs(秒)としたとき、これら4つの因子から、ろう材中の平均Mg濃度を決定する回帰式であり、式1または式2を用いて、前記c、d、x、sの因子のうちの3つの因子の値を特定することにより、他の1つ因子の値を決定する、または、前記c、d、x、sの因子のうちの2つの因子の値を特定することにより、他の2つ因子のうちの1つの値に応じた他の1つの値を決定することを特徴とするアルミニウムブレージングシートの設計方法。式1:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)={(c−d)/c}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・c+d(但し、c≧d、c≠0)式2:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)=d−{(d−c)/d}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・d(但し、c<d)

請求項2

前記心材が、さらに、Mg:0.1〜1.3%を含有するものであることを特徴とする請求項1記載のアルミニウムブレージングシートの設計方法。

技術分野

0001

本発明は、アルミニウムブレージングシート設計方法、詳しくは、不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートを設計する方法に関する。以下、アルミニウムとはアルミニウム合金を含む。

背景技術

0002

自動車などの輸送機器用の熱交換器接合方法としては、アルミニウム心材の片面あるいは両面にAl−Si合金ろう材クラッドしたブレージングシートを用いるろう付け方法が適用されており、最近は、不活性雰囲気中でフラックス無しでろう付けする方法が注目され、その方法の一つとして、従来の真空ろう付けと同様、ろう材にMgを添加したアルミニウムブレージングシートを用いてろう付けする手法、あるいは心材にMgを添加したアルミニウムブレージングシートを用い、ろう付け加熱時に心材からろう材にMgを拡散させてろう付けする手法が提案されている。これらの方法は、Mgによりろう材表面のアルミニウム酸化皮膜(以下、単に酸化皮膜)を除去して、ろう付け性を向上させることを意図したものである。

0003

しかしながら、通常、上記の手法によりろう付け接合した場合、ある程度の接合は可能であるが、Mgにはろう付け性に相反する作用もあり、十分な接合が得られない場合も少なくない。例えば、Mgを含有するアルミニウムを大気中で加熱すると、とくに450℃以上の高温域ではアルミニウムの表面にMg酸化物が生成する。これは、アルミニウム中のMgが大気中の酸素と反応して生成する酸化物であるが、不活性ガス雰囲気中で加熱した場合も、不活性ガス中の酸素濃度あるいは露点が高いと、アルミニウム中のMgが雰囲気ガス中の酸素や水蒸気と反応して酸化皮膜表面でMg酸化物を生成し、ろうの濡れ性を低下させる原因となる。

0004

発明者らは、Mgによりろう材表面の酸化皮膜を除去して、ろう付け性を向上させるのは、接合界面にスピネル型Mg酸化物(Al2MgO4)が形成され、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化するためであることを見出し、この知見に基づいてなされたアルミニウムブレージングシートの発明について特許出願した(特願2012−222689号)。

0005

最近、とくに自動車用熱交換器の分野においては、更なる材料の薄肉化と生産性の向上が要求され、熱交換器のろう付けにおいても、急速加熱が求められているが、例えば、心材にMgを添加したアルミニウムブレージングシートを用い、ろう付け温度への昇温速度を速くしてろう付けを行った場合、間隙充填性が劣ることがあり、その原因は、加熱速度が速いと、心材からろう材表面へのMg拡散が間に合わず、スピネル型Mg酸化物の生成が不足するためであることが認められた。

先行技術

0006

特開2007−190574号公報
特開2004−25297号公報

発明が解決しようとする課題

0007

試験、検討の結果、接合界面における酸化皮膜中のスピネル型Mg酸化物の生成は、540℃では殆ど観察されないが、580℃で明確に観察された。また、ろう材中のMg含有量が0.5%(質量%、以下合金成分はすべて質量%で示す)を超えると、スピネル型Mg酸化物の他にMgOが形成されるようになり、ろう材中のMg含有量が1.2%を超えると、殆どがMgOになることがわかった。さらに、不活性ガス雰囲気中でフラックスを用いないろう付けにおいては、スピネル型Mg酸化物の形成はAl−Si合金ろう材の溶融開始温度(577℃)から活発化し、ろうが溶融すると、Mgの拡散速度が著しく速くなるため、Mg酸化物の組成形成量は、溶融開始時のろう材中の平均Mg濃度に支配されることが見出された。

0008

さらに試験、検討を重ねた結果、ろう材あるいは心材(あるいはその両方)にMgを含有するブレージングシートにおいては、Mgの添加部位によらず、Al−Si合金ろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度が0.04〜0.3%の範囲で、ろう付け向上に顕著な効果を発揮することを見出し、溶融開始時のろう材中の平均Mg濃度は、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間s(秒)の4つの因子による回帰式で与えられることを究明した。

0009

本発明は、上記の検討結果に基づいてなされたものであり、その目的は、不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートにおいて、ろう付け接合界面にスピネル型Mg酸化物を形成させて、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化し、ろう付け性を向上させるために、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度が特定の値となるよう、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱速度(450℃から577℃までの加熱時間s(秒)で定義する)を決定するアルミニウムブレージングシートの設計方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0010

上記の目的を達成するための請求項1によるアルミニウムブレージングシートの設計方法は、アルミニウム心材にSi:6〜13%を含有するAl−Si合金ろう材をクラッドしてなり、不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートを、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度(以下、単にろう材中の平均Mg濃度)が0.04〜0.3%となるように、下記の式1または式2を用いて設計する方法であって、式1および式2は、ろう付け加熱前の心材のMg含有量をc(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量をd(%)、ろう材厚さをx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間をs(秒)としたとき、これら4つの因子から、ろう材中の平均Mg濃度を決定する回帰式であり、式1または式2を用いて、前記c、d、x、sの因子のうちの3つの因子の値を特定することにより、他の1つ因子の値を決定する、または、前記c、d、x、sの因子のうちの2つの因子の値を特定することにより、他の2つ因子のうちの1つの値に応じた他の1つの値を決定することを特徴とする。
式1:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)={(c−d)/c}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・c+d(但し、c≧d、c≠0)
式2:ろう材中の平均Mg濃度(0.04〜0.3%)=d−{(d−c)/d}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・d(但し、c<d)

0011

請求項2よるアルミニウムブレージングシートの設計方法は、請求項1において、前記心材が、さらに、Mg:0.1〜1.3%を含有するものであることを特徴とする。

発明の効果

0012

本発明によれば、アルミニウム心材にSi:6〜13%を含有するAl−Si合金ろう材をクラッドしてなり、不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けするために使用するアルミニウムブレージングシートを、ろう付け接合界面にスピネル型Mg酸化物を形成させて、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化し、ろう付け性を向上させるために、ろう材中の平均Mg濃度が0.04〜0.3%となるよう、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間s(秒)の4つの因子を決定することにより設計する方法が提供される。

0013

例えば、ろう付け加熱前の心材のMg含有量とろう付け加熱前のろう材のMg含有量を特定することにより、ろう材厚さに応じた加熱速度または加熱速度に応じたろう材厚さを決定することができ、ろう材厚さと加熱速度を特定することにより、ろう付け加熱前の心材のMg含有量に応じたろう付け加熱前のろう材のMg含有量またはろう付け加熱前のろう材のMg含有量に応じたろう付け加熱前の心材のMg含有量を決定でき、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量とろう材厚さを決定することにより、ろう付け加熱前の心材のMg含有量に応じた加熱速度または加熱速度に応じたろう付け加熱前の心材のMg含有量を決定することができる。

図面の簡単な説明

0014

通常加熱(450℃から577℃までの加熱時間:320s)、ろう材厚さx(μm)が20μmにおける心材Mg濃度とろう材平均Mg濃度の相関図である。
通常加熱におけるろう材厚さと第1次係数の相関図である。
加熱速度(450℃から577℃までの加熱時間(s))と第2次係数の相関図である。
加熱速度と切片の相関図である。
実施例で用いる間隙充填試験片を示す図である。

0015

前記回帰式、式1、式2がどのようにして導びかれるかについて説明する。
固体中の拡散は、原子熱的励起によって格子欠陥を介してジャンプすることに関係しており、温度と時間の関数として物理的且つ数学的に明瞭に表現できる。本発明が対象とするMgは、アルミニウム材料中の含有量が1%未満と少ないため、Mgの拡散は不純物拡散係数に従って進行する。そのため、ろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度は、ろう付け加熱前の心材のMg含有量、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量、ろう材厚さ、実質的に拡散が開始する450℃から577℃までの温度履歴の4つの因子によって精度良く求めることができる。

0016

低濃度領域におけるアルミニウム中の元素拡散は、次のA式で示される不純物拡散係数によって支配的に進行する。
D=Do・exp{−Q/(RT)}・・・A式
ここで、D:拡散係数(m2/s)、Do:振動係数(m2/s)、Q:活性化エネルギー(J/mol)、R:気体定数(J/mol・K)、T:絶対温度(K)
A式で求めた拡散係数により、任意の温度履歴で加熱したクラッド材における厚さ方向の任意の位置xにおける元素濃度を求める。そのときの拡散の基礎式は次のB式で示される。
C(x)=Co・{F1(x)+F2(x)}
=Co・∫0h exp{−(x−h)2/(4・ΣDt)}dh+Co・∫0hexp{−(x+h)2/(4・ΣDt)}dh・・・B式
ここで、Co:界面濃度(wt%)、x:界面からの距離(m)、h:クラッド厚さ(m)、F1、F2:区分求積法による関数、F1は正方向拡散、F2は逆方向拡散

0017

B式をベースとし、心材とろう材からなるブレージングシートにおいて、任意の加熱履歴を与えた後のMgの拡散プロファイル(拡散後のMg濃度分布)を求める計算用シートを区分求積法によって作成した。次に、計算によって求めたMg濃度分布と、実際の加熱材におけるMg濃度分布が一致することを確認した後、回帰式を求める計算を実施した。回帰式を求める手順としては、まず、ろう材の初期Mg含有量を0%と仮定して、心材のMg含有量:0〜2.1%、ろう材厚さ:10〜60μm、実質的に拡散が開始する450℃から577℃までの昇温速度:80〜640秒の範囲で計算し、それぞれにおけるろう材の溶融直前(577℃)のろう材中の平均Mg濃度を求めた。次に、ろう材の平均Mg濃度を各因子で回帰した。

0018

一例として、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)=0とした場合の前記回帰式がどのように導かれるかについて概要を説明する。
ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)=0として、450℃から577℃まで昇温したときのろう材の平均Mg濃度を、低速加熱(450℃から577℃までの加熱時間:640s)、通常加熱(320s)、急速加熱(160s)、超急速加熱(80s)を行った場合について、ろう材厚さを10μmから60μmまで変えて求めると、ろう付け加熱前の心材のMg含有量とろう材中の平均Mg濃度の関係は、原点を通る次の一次関数で与えられる。相関図の一例を図1に示す。
(ろう材中の平均Mg濃度)=A×(ろう付け加熱前の心材のMg含有量)
次に、Aを第1次係数として、ろう材厚さxを因子として加熱速度別に第1次係数の近似式を求めると、次式のとおりとなる。相関図の一例を図2に示す。
(第1次係数)=B×ln(x)+E ここで、Bは第2次係数、Eは近似式の切片である。

0019

加熱速度を因子として第2次係数と切片の近似式を求めると、第2次係数と切片は、第1次係数と同様に対数関数近似される。相関図の一例を図3図4に示す。
(第2次係数)=−0.0326ln(x)−0.0091
(切片)=0.1771ln(x)−0.0813

0020

以上の結果から、加熱速度(450℃から577℃までの加熱時間s(秒)で定義)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)を因子とした、ろう材中の平均Mg濃度の回帰式を決定すると、以下のとおりである。
(ろう材中の平均Mg濃度)={(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・c(但し、c>0、d=0)

0021

上記の回帰式は、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)=0とした場合の回帰式であるが、拡散の性質上、d>0の場合の心材からろう材へのMg拡散量Mは、d=0の場合の心材からろう材へのMg拡散量Aとの間に次の比例関係を持つ。
M={(c−d)/c}・A

0022

上記の比例関係の下に、c≧dの場合(但し、c≠0)とc<dの場合とではMg拡散の方向が逆となり、それぞれの場合におけるろう材中の平均Mg濃度は、次の回帰式で示される。
<式1:c≧d、c≠0>
ろう材中の平均Mg濃度={(c−d)/c}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・c+d
<式2:c<d>
ろう材中の平均Mg濃度=d−{(d−c)/d}・{(−0.0326ln(s)−0.0091)・ln(x)+0.177ln(s)−0.0813}・d

0023

本発明は、アルミニウムブレージングシートにおいて、ろう材中の平均Mg濃度を0.04〜0.3%の範囲とすることにより、ろう付け接合界面にスピネル型Mg酸化物が形成し、ろう材表面の酸化皮膜を脆弱化して、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中でフラックス無しでろう付けした場合のろう付け性を向上させることができるという定量的管理方法を提供するものであり、本発明はさらに、ろう材中の平均Mg濃度が0.04〜0.3%となるよう、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間s(秒)の4つの因子を決定することによりブレージングシートを設計する方法を提供するものである。

0024

ろう材中の平均Mg濃度、すなわち、ろう付け加熱においてろう材が溶融を開始する577℃でのろう材中の平均Mg濃度が0.04%未満では、ろう材表面でのスピネル型Mg酸化物の形成が緩慢になり、酸化皮膜の脆弱化が不十分となる。ろう材中の平均Mg濃度が0.3%を超えると、スピネル型Mg酸化物の形成が進行する一方で、濡れ性に悪影響を与えるMgOの形成も進行するようになるため、加熱環境によって接合性が変るなどの不安定さを伴うようになり好ましくない。

0025

本発明のアルミニウムブレージングシートは、アルミニウム心材の片面または両面にSi:6〜13%を含有するAl−Si合金ろう材をクラッドしてなるものである。Si含有量が6%未満では、溶融するろうの比率が低下するとともに流動性も悪くなるため、ろう材としての機能が十分に果たせなくなる。Si含有量が13%を超えると、ろう材が心材あるいは相手材をも溶解して流動するため、局部的なろうによる侵食が過大となり好ましくない。

0026

心材に含有されるMgについては、ろう付け性を向上させる元素として、本発明の近似式によって適正な含有量を求めることができるが、心材へのMgの含有は心材の強度を向上させる機能も果たす。フラックスろう付け用ブレージングシートでは、前記のとおり薄肉化が求められることが多いため、心材へのMgの添加は心材の強度向上の点でも重要である。心材のMg含有量が0.1%未満では心材強度の向上効果が乏しく、1.3%を超えると、心材の固相線温度が低下して局部溶融が発生し易くなり、ろうによる侵食量も増大するため好ましくない。

0027

心材には、用途に応じて、Si:1.0%以下、Cu:1.0%以下、Mn:1.8%以下、Cr:0.5%以下、Zn:0.6%以下、Zr:0.5%以下、Ti:0.2%以下、Fe:1.5%以下の1種または2種以上が含有されていてもよく、ろう材には、必要に応じて、Be:0.1%以下、Li:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Zr:0.1%以下、Ce:0.1%以下、Na:0.1%以下、Bi:0.05%以下、Sr:0.05%以下、Sb:0.05%以下の1種または2種以上を含有させることができる。

0028

本発明の効果を、実際の熱交換器の設計開発状況に応じて具体的に説明すると、熱交換器の設計においては、熱交換器の耐圧強度確保の目的から、ブレージングシートに一定の強度を求めることが多い。従来の非腐食性フラックスを用いたろう付けにより製造される熱交換器では、Mgがフラックスと反応してフラックスの機能を低下させるため、ブレージングシートの心材にSi、Cu、Mnを許容範囲で添加して強度の向上を図ったり、ろう材と逆側の心材表面にSi、Cu、Mn、Mg、Znなどを添加した層をクラッドして、クラッド層による強度の向上あるいはろう付け加熱中の拡散を利用した心材強度の向上を図るなどの工夫がなされてきた。

0029

一方、フラックスを使用しないろう付けにおいては、心材へのMgの添加が可能となるため、上記の強度向上策に加えて、心材(あるいはろう材と逆側のクラッド層)へのMg添加前提として材料設計をすることができる。そのため、従来よりブレージングシートの更なる薄肉化が可能となるが、薄肉化されたブレージングシートでは、ろう付け加熱での元素拡散を前提とした詳細な材料設計と、優れた成形加工性、さらには確実な接合性と接合部の信頼性も求められる。すなわち、熱交換器の設計段階においては、熱交換器の性能試算や材料単体の強度設計のみでなく、プレス成形とろう付け接合時の加熱履歴を想定した熱交換器の形状設計と、それを構成する材料の設計が必要となる。材料設計においては、まずブレージングシートに添加するMg量によって材料強度大要が決定され、熱交換器を生産する加熱炉仕様から、熱交換器の設計段階において加熱速度も確定していることが多い。

0030

従って、熱交換器の設計段階において、ろう付け加熱履歴を想定した熱交換器の基本的な強度設計が完了する。また一方で、ブレージングシートの薄肉化に伴ってろう材量も制限されるが、信頼性のある接合部を実現するために必要なろう材量は、熱交換器の継手構造が決定した段階で凡そ確定する。すなわち、本発明で取り上げた4つの因子のうち、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間s(秒)、ろう材厚さx(μm)の3つについては、熱交換器の設計段階で確定することが多い。このような場合において、安定したフラックスレスろう付け性を得るためには、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)を正しく決めることが必要であり、前記本発明の回帰式はフラックスレスろう付け性を確保する有効な手段となる。

0031

この他、本発明は様々な場合において有効性を発揮する。例えば、ろう付け加熱前の心材のMg含有量c(%)、ろう材厚さx(μm)、ろう付け加熱前のろう材のMg含有量d(%)の3つの因子が確定している熱交換器において、加熱炉が選択可能あるいは加熱炉の操炉条件が変更可能なときは、ろう付け加熱における450℃から577℃までの加熱時間s(秒)を考慮した的確な選択や最適な条件変更が可能となる。また、世界各地生産拠点を有する場合においては、生産設備材料調達は世界各地で異なり、各地におけるそれぞれの選択肢は一つとは限らず、このような複数の可変因子(選択可能因子)を有する場合においても、本発明の回帰式、推奨される添加元素の範囲は、熱交換器が目標とする性能や接合性を確実に実現するための材料選択、ろう付け炉の選択、ろう付け炉の操炉条件変更などにおいて、卓越した手段として有効に活用することができる。

0032

以下、本発明の実施例を説明し、本発明の効果を実証する。なお、これらの実施例は、本発明の一実施態様を示すものであり、本発明はこれらに限定されない。

0033

実施例1、比較例1
Al−1.2%Mn合金をベースとし、これに0〜1.31%のMgを含有する心材と、Al−10%Si合金をベースとし、これに0〜0.45%のMgを含有するろう材からなるブレージングシートを常法に従って作製した。ブレージングシートの厚さは0.4mm、ろう材厚さは40μmおよび20μmとした。

0034

得られたブレージングシートを水平材、3003合金板(厚さ1mm)を垂直材として組み付けて図5に示す間隙充填試験片(実施例:試験片1〜8、比較例:試験片9〜17)を構成し、窒素ガスを流したろう付け炉内で、低速加熱(加熱速度=450℃から577℃までの加熱時間s(秒)が640秒)、標準加熱(320秒)、急速加熱(160秒)、超急速加熱(80秒)によって600℃の温度まで加熱してろう付けを行い、間隙充填長さを測定してフィレット形成能を評価した。ろう材厚さが40μmのブレージングシートについては、間隙充填長さが20mm以上のものを合格と評価し、ろう材厚さが20μmのブレージングシートについては、表面積比を考慮して間隙充填長さが14mm以上のものを合格と評価した。間隙充填長さの他、形成されたフィレット均一性も評価し、総合評価として、フィレット形成能が合格で、フィレット形状が安定したものを◎、フィレット形成能が合格で、フィレット形状がやや不安定なものを○、フィレット形成能が不合格で、フィレット形状が不安定なものを×とした。

0035

ろう材の溶融直前の平均Mg濃度については、前記ろう付けした間隙充填試験片と同じ構成の試験片を、同じ加熱速度で577℃の温度まで加熱し、冷却後、ブレージングシートの断面をEPMA(電子マイクロアナライザ)で分析して求めた。但し、ろう材においては、560℃付近からAl−Si−Mgの三元共晶による局部的な溶融が始まるため、冷却後のろう材中Mg濃度分布は見掛け上不均一になり、ろう材断面から正確な分析値を得ることは困難となる。そこで、ろう材中の平均Mg濃度については、初期のろう材中のMg含有量と、EPMAで分析した加熱前後での心材Mg量の増減分から計算して求めた。結果を表1(実施例)、表2(比較例)に示す。

0036

本発明に従って、回帰式を用いてろう材の溶融直前の平均Mg濃度を0.04〜0.3%になるよう設計した試験片1〜8においてはいずれも、間隙充填試験においてフィレット形成能が良好で、フィレット形状も安定またはやや不安定の評価であり、総合評価はいずれも◎または○であった。また、577℃の温度まで加熱した試験片断面から求めたろう材中の平均Mg濃度は、拡散計算によって求めた計算値と略一致しており、本発明の回帰式の妥当性立証された。ろう材の溶融直前の平均Mg濃度が0.04〜0.3%の範囲を外れている試験片9〜17はいずれも、総合評価が×であった。

0037

実施例

0038

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