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技術 菌根菌の培養方法、その活用方法および菌根菌生長調整用物質

出願人 石井孝昭株式会社オーガニック・ソリューションズ・ジャパン
発明者 石井孝昭
出願日 2012年9月28日 (7年4ヶ月経過) 出願番号 2012-217587
公開日 2014年4月21日 (5年10ヶ月経過) 公開番号 2014-068600
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理
主要キーワード 菌糸長 生長促進物質 外生菌根菌 遠赤色光 ガラスハウス 胞子形成率 乾燥地 ppm溶液
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年4月21日)のものです。
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図面 (8)

課題

菌根菌胞子形成を促進させる新規物質を見いだし、それによる菌根菌の純粋培養技術をさらに高める培養方法農業場面での活用方法を提供する。

解決手段

菌根菌の純粋培養技術を、新たに発見した菌根菌生長促進物質、すなわちアミンまたはアミン誘導体を用いてさらに改善した。従来に比べ、菌根菌が感染し得る宿主の根や根抽出物を用いずに、菌根菌の生長を旺盛にして大量に胞子を増殖できるので、菌根菌の純粋培養技術をさらに安定化できる。アミンは菌根菌感染植物の根で生成されるので、アミンまたはアミン誘導体を農業場面で活用できる。

概要

背景

従来、この種の菌根菌培養方法としては、宿主の根を用いた菌糸の培養や胞子生産方法が知られている。また、消毒した宿主の根を用いて、体外的なインビトロ(in vitro)において無菌状態下で菌根菌を培養することも知られている。すなわち、従来は、これら菌根菌の培養方法のように、絶対共生菌である菌根菌の培養においては、宿主の根なくして無菌状態下で純粋に菌根菌を培養し、胞子を得るまで増殖できないと考えられていた。

ところが、近年、フラッシュクロマトグラフィで得たバヒアグラス根の25質量%のメタノール溶出物を用い、菌根菌の中でも代表的なアーバスキュラー菌根(Arbuscular Mycorrhiza:AM)菌の純粋培養成功している(例えば、特許文献1、並びに非特許文献1および2参照)。そして、この培養方法においては、赤色光から遠赤色光までの光の照射によって、菌根菌の菌糸生長が著しく促進することも知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの培養方法は、バヒアグラスという宿主から得た根抽出物を用いた培養基においてのものであり、バヒアグラス根の採取時期の判断が極めて重要であるとともに、胞子の生産効率余り良くなく、実用化が容易ではない(例えば、非特許文献3参照)。

これに対し、本発明者らは、AM菌の生長に関与する物質の単離・同定によって、宿主の根や根抽出物を全く用いない人工の培養基内でも、AM菌母胞子から新胞子を生産でき、数世代も継代培養できる純粋培養技術を確立した(例えば、特許文献3、並びに非特許文献4および5参照)。この純粋培養用培地には、AM菌菌糸を生長促進させて、誘引する作用を持ち、胞子形成をも促進させるトリプトファンダイマー(Trp-Trp)、ロイシルプロリン(Leu-Pro)などのペプチドが含まれている。

概要

菌根菌の胞子形成を促進させる新規の物質を見いだし、それによる菌根菌の純粋培養技術をさらに高める培養方法や農業場面での活用方法を提供する。菌根菌の純粋培養技術を、新たに発見した菌根菌生長促進物質、すなわちアミンまたはアミン誘導体を用いてさらに改善した。従来に比べ、菌根菌が感染し得る宿主の根や根抽出物を用いずに、菌根菌の生長を旺盛にして大量に胞子を増殖できるので、菌根菌の純粋培養技術をさらに安定化できる。アミンは菌根菌感染植物の根で生成されるので、アミンまたはアミン誘導体を農業場面で活用できる。

目的

本発明は、菌根菌の生長、特に胞子形成を著しく促進させる菌根菌生長調整用物質による菌根菌の培養方法に関し、さらに菌根菌の純粋培養等への活用方法、およびその菌根菌生長調整用物質を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む培養基菌根菌を培養することを特徴とする菌根菌の培養方法

請求項2

請求項1記載の菌根菌の培養方法において、前記培養基にぺプチドを加えて菌根菌を培養することを特徴とする菌根菌の培養方法。

請求項3

請求項1または2記載の菌根菌の培養方法において、前記菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌エリコイド菌根菌、および外生菌根菌のいずれかであることを特徴とする菌根菌の培養方法。

請求項4

請求項1ないし3いずれかに記載の菌根菌の培養方法において、前記培養基は、アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む培地に、無機養分、ビタミン類、糖類、リン脂質および核酸物質を適宜加えた固形培地または液体培地のいずれかであることを特徴とする菌根菌の培養方法。

請求項5

請求項1ないし4いずれかに記載の菌根菌の培養方法において、アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む溶液に菌根菌胞子を浸漬した後に菌根菌を培養することを特徴とする菌根菌の培養方法。

請求項6

請求項1ないし5いずれかに記載の菌根菌の培養方法に用いるアミンとして、菌根植物の根で生成したものを用いることを特徴とする菌根菌の活用方法

請求項7

エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミンジメチルアミン、これらいずれかの誘導体、およびクロラミンTの少なくともいずれかを含むことを特徴とする菌根菌生長調整用物質

技術分野

0001

本発明は、菌根菌生長、特に胞子形成を著しく促進させる菌根菌生長調整用物質による菌根菌の培養方法に関し、さらに菌根菌の純粋培養等への活用方法、およびその菌根菌生長調整用物質を提供する。

背景技術

0002

従来、この種の菌根菌の培養方法としては、宿主の根を用いた菌糸の培養や胞子生産方法が知られている。また、消毒した宿主の根を用いて、体外的なインビトロ(in vitro)において無菌状態下で菌根菌を培養することも知られている。すなわち、従来は、これら菌根菌の培養方法のように、絶対共生菌である菌根菌の培養においては、宿主の根なくして無菌状態下で純粋に菌根菌を培養し、胞子を得るまで増殖できないと考えられていた。

0003

ところが、近年、フラッシュクロマトグラフィで得たバヒアグラス根の25質量%のメタノール溶出物を用い、菌根菌の中でも代表的なアーバスキュラー菌根(Arbuscular Mycorrhiza:AM)菌の純粋培養が成功している(例えば、特許文献1、並びに非特許文献1および2参照)。そして、この培養方法においては、赤色光から遠赤色光までの光の照射によって、菌根菌の菌糸生長が著しく促進することも知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、これらの培養方法は、バヒアグラスという宿主から得た根抽出物を用いた培養基においてのものであり、バヒアグラス根の採取時期の判断が極めて重要であるとともに、胞子の生産効率余り良くなく、実用化が容易ではない(例えば、非特許文献3参照)。

0004

これに対し、本発明者らは、AM菌の生長に関与する物質の単離・同定によって、宿主の根や根抽出物を全く用いない人工の培養基内でも、AM菌母胞子から新胞子を生産でき、数世代も継代培養できる純粋培養技術を確立した(例えば、特許文献3、並びに非特許文献4および5参照)。この純粋培養用培地には、AM菌菌糸を生長促進させて、誘引する作用を持ち、胞子形成をも促進させるトリプトファンダイマー(Trp-Trp)、ロイシルプロリン(Leu-Pro)などのペプチドが含まれている。

0005

特開平8−191685号公報
特許第4691307号公報
特許第4979551号公報

先行技術

0006

石井孝昭、外4名、園芸学会、1995年、第64巻、別冊1、p.190−191
石井孝昭、外4名、ICOM4(The Fourth International Conference on Mycorrhizae)、(カナダ)、2003年、p.696
デクレエーク(Declerck S.)、外2名、インビトロカルチャーオブマイコライザス(In Vitro Culture of Mycorrhizae)、(ドイツ)、2005年、p.1−388
石井孝昭および堀井幸江、園芸学研究、2007年、第6巻、別冊2、p.136
堀井幸江および石井孝昭、園芸学研究、2007年、第6巻、別冊2、p.137

発明が解決しようとする課題

0007

一方、AM菌の純粋培養技術の実用化を図るためには、AM菌の生長に関与する物質のさらなる探索が必要である。その探索の過程で、菌根菌の胞子形成を著しく促進する新規の物質、すなわちアミンおよびアミン誘導体発見し、菌根菌を純粋培養技術で安定的に生産できる技術を作り上げたと言える。

0008

ここで、菌根菌は、植物の根に共生し、宿主の植物から光合成産物を得る見返りとして、植物の養水分を促進させ、生長を旺盛にさせるとともに、病害虫環境ストレスに対する抵抗性を植物に付与する働きを有している。このため、菌根菌の利用としては、(1)低投入持続可能な作物生産、(2)環境に優しく、安心・安全な食料生産、(3)乾燥地半乾燥地における環境緑化、等に着目されている。

0009

以上のように、菌根菌は絶対共生微生物であることから、この菌根菌の純粋培養が容易ではないと考えられていたという問題を有している。

0010

本発明は、このような点に鑑みなされたもので、新規の菌根菌生長調整用物質を見出し、菌根菌の純粋培養が容易にできる菌根菌の培養方法に加え、新規の菌根菌生長調整用物質を用いた菌根菌の活用方法、および菌根菌生長調整用物質を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

請求項1記載の菌根菌の培養方法は、アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む培養基で菌根菌を培養するものである。

0012

請求項2記載の菌根菌の培養方法は、請求項1記載の菌根菌の培養方法において、前記培養基にぺプチドを加えて菌根菌を培養するものである。

0013

請求項3記載の菌根菌の培養方法は、請求項1または2記載の菌根菌の培養方法において、前記菌根菌は、アーバスキュラー菌根菌エリコイド菌根菌、および外生菌根菌のいずれかであるものである。

0014

請求項4記載の菌根菌の培養方法は、請求項1ないし3いずれかに記載の菌根菌の培養方法において、前記培養基は、アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む培地に、無機養分、ビタミン類、糖類、リン脂質および核酸物質を適宜加えた固形培地または液体培地のいずれかであるものである。

0015

請求項5記載の菌根菌の培養方法は、請求項1ないし4いずれかに記載の菌根菌の培養方法において、アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む溶液に菌根菌胞子を浸漬した後に菌根菌を培養するものである。

0016

請求項6記載の菌根菌の活用方法は、請求項1ないし5いずれかに記載の菌根菌の培養方法に用いるアミンとして、菌根植物の根で生成したものを用いるものである。

0017

請求項7記載の菌根菌生長調整用物質は、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミンジメチルアミン、これらいずれかの誘導体、およびクロラミンTの少なくともいずれかを含むものである。

発明の効果

0018

請求項1記載の菌根菌の培養方法によれば、菌根菌生長促進物質であるアミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む培養基で菌根菌を培養することにより、純粋に菌根菌の胞子を生産できるから、菌根菌の純粋培養をさらに容易にできる。

0019

請求項2記載の菌根菌の培養方法によれば、請求項1記載の菌根菌の培養方法において、例えばトリプトファンダイマーおよびロイシルプロリン等のぺプチドを加えた培養基で菌根菌を培養することにより、菌根菌の菌糸生長を回復でき、菌根菌の胞子を生産できるから、菌根菌の純粋培養をより効率良くできる。

0020

請求項3記載の菌根菌の培養方法によれば、請求項1または2記載の菌根菌の培養方法の効果に加え、アーバスキュラー菌根菌、エリコイド菌根菌および外生菌根菌のいずれの菌根菌であっても、これら菌根菌の胞子を効率良く増殖することができる。

0021

請求項4記載の菌根菌の培養方法によれば、請求項1ないし3いずれかに記載の菌根菌の培養方法において、アミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む培地に、無機養分、ビタミン類、糖類、リン脂質および核酸物質を適宜加えた固形培地または液体培地のいずれかの培地基とすることにより、菌根菌の胞子形成率を向上できる。

0022

請求項5記載の菌根菌の培養方法によれば、請請求項1ないし4いずれか記載の菌根菌の培養方法において、培養前の胞子をアミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む溶液に浸漬させることにより、胞子形成を誘発させやすくできるから、菌根菌の胞子形成率をより向上できる。

0023

請求項6記載の菌根菌の活用方法によれば、菌根植物の根では菌根菌の成長をつかさどるアミンが生成されるので、それらのアミンおよびアミン誘導体を農業場面で活用することができる。

0024

請求項7記載の菌根菌生長調整用物質によれば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、ジメチルアミン、これらいずれかの誘導体、およびクロラミンTの少なくともいずれかを含むため、この菌根菌生長調整用物質にて菌根菌を培養することにより、純粋に菌根菌の胞子を生産でき、菌根菌の純粋培養をさらに容易にできる。

図面の簡単な説明

0025

本発明に係る実施例1においてアミン類が純粋培養下での菌根菌の菌糸生長に及ぼす影響を示すグラフである。
上記実施例1においてアミン類が純粋培養下での菌根菌の胞子形成に及ぼす影響を示すグラフである。
本発明に係る実施例2においてエチレンジアミン(EDA)が純粋培養下での菌根菌の胞子形成に及ぼす影響を示す顕微鏡写真である。
上記実施例2においてEDAとペプチドとの併用処理が純粋培養下での菌根菌の胞子形成に及ぼす影響を示す顕微鏡写真で、(a)は1.5質量%ゲルライト固体培地(純粋培養2か月後)、(b)は液体培地(純粋培養3か月後)である。
本発明に係る実施例3において菌根菌(Glomus clarum)胞子へのクロラミンT処理と胞子形成とを示す顕微鏡写真である。
本発明に係る実施例4においてバヒアグラス根からのアミンの抽出方法を示すフローチャートである。
上記実施例4において菌根菌感染植物における根内のアミンのクロマトグラムである。

0026

次に、本発明の菌根菌の培養方法の一実施形態について説明する。

0027

まず、本発明に係る菌糸菌の培養方法は、菌根菌が感染し得る宿主の根や根抽出物を全く用いない人工の培養基を用い、この培養基に活性炭素繊維を添加したり、光環境条件を調整したりすることによって、菌根菌の菌糸および胞子を純粋に増殖できる菌根菌の純粋培養技術である。なお、この菌根菌としては、この種の菌根菌を代表とするアーバスキュラー菌根(AM菌)(VA菌根菌)、エリコイド菌根菌および外生菌根菌のいずれかが用いられる。ただし、これらAM菌、エリコイド菌根菌および外生菌根菌以外の菌根菌であっても用いることができる。

0028

また、この菌根菌の純粋培養技術には、新たに発見した菌根菌生長調整用物質としての菌根菌生長促進物質であるアミンとともに、これまでに見出されていた菌根菌生長促進物質であるペプチドや、菌根菌の栄養素、例えば無機養分、ビタミン類、糖類、リン脂質および核酸物質等を適宜添加した固形培地または液体培地のような人工の培養基を用いる。また、菌根菌生長促進物質としては、エチレンジアミン、1、2−プロパンジアミンおよびジメチルアミン等のアミンや、クロラミンT等のアミン誘導体が用いられ、これらアミンおよびアミン誘導体の少なくともいずれかを含む菌根菌生長調整用物質が、菌根菌の培養基として用いられる。

0029

ここで、エチレンジアミンおよび1、2−プロパンジアミン等のアミンは、菌根菌の胞子形成を促進させる作用を有するとともに、菌根菌が感染した根で生成される物質である。また、クロラミンTは、消毒剤などに用いられる物質であるが、菌根菌の胞子形成を誘発させる作用を有しているので、アミンおよびペプチドを加えた培養基で菌根菌を培養する前の胞子表面に生息する雑菌の消毒に効果的であるとともに、胞子形成を刺激させる有効な胞子処理剤である。

0030

まず、実施例1として、本発明のアミンを用いた菌根菌の純粋培養技術による新しいAM菌胞子生産について説明する。

0031

石井および堀井(石井孝昭・堀井幸江、園芸学研究、2007年、第6巻別冊2、p.136)が開発した表1に示す基本培養液を含むゲルライト(1.5質量%)固形培地をオートクレーブした後、孔径0.2μmの滅菌フィルタでろ過した図1に示すアミン類を10μM、30μMおよび100μMの濃度になるように加え、直径5cmのシャーレに入れた。

0032

その後、この培地に表面殺菌を施したグロムスクララム(Glomus clarum)IK97胞子を置床し、26℃の赤色発光ダイオードLED)による光照射下(10μmol/m2・sec)で培養した。殺菌方法は、胞子を消毒剤(chloramine T:7000ppm、streptomycin:56ppm、chloramphenicol:21ppm、およびTween 80:数滴)に投入し、超音波洗浄機で数秒間処理した後、12分間静置して殺菌した。さらに、培養2か月後、菌糸生長および新しく形成された胞子数を調査した。なお、菌糸長は、スタイラスペン付のタブレット(WACOM Tablet UD−0608II)と自作のプログラムソフトウェア(石井孝昭、日本農業教育学会誌1993年、第24巻、p.25−36)を用いて計測した。

0033

この結果、図1に示すように、供試したアミン類は、菌根菌の菌糸生長促進効果を示さず、むしろ生長を抑制するものが多かった。しかしながら、それらの中で、第一アミンおよび第二アミンに含まれるアミン類は、胞子形成を誘発させる作用を有していた。特に、図2に示すように、エチレンジアミン(EDA)、1,2−プロパンジアミン(PDA)およびジメチルアミンの効果は著しく大きいものであった。なお、これら図1および図2中の垂線は、標準誤差(n=8)を表している。

0034

次いで、胞子形成促進効果が大きなアミン、すなわちEDAと、これまでに発見したペプチド(Trp−TrpおよびLue−Pro、各10ppm)との併用処理が菌糸生長および胞子形成に及ぼす影響について、ゲルライト固形培地上で検討した。また、この研究成果を基に、最適な濃度下での液体培養の調査も行った。殺菌方法および培養方法については、上記実施例1と同様とした。

0035

この結果、純粋培養下における菌根菌(Glomus clarum)の菌糸生長および胞子形成に及ぼすEDAおよびPDAの効果をまとめた表2に示すように、基本培養液のみの区においては菌糸生長が旺盛であったが、胞子形成は全くみられなかった。しかしながら、ペプチド(Trp−Trp,10ppm + Lue−Pro,10ppm)添加区においては、既報(石井孝昭・堀井幸江、園芸学研究、2007年、6巻別冊2、p136)と同様に、菌糸生長が良好で胞子形成も観察された。一方、EDA添加区では、100μMおよび250μMのいずれにおいても菌糸生長が阻害され、特に250μM区では顕著であった。

0036

ところが、図3に示すように、いずれのEDA添加区においても母胞子1個から新しい胞子が数個形成された。EDAとペプチドとの併用添加区では、EDAによる菌糸生長阻害効果が軽減され、胞子形成が促進される傾向が確認できた。なお、図3において、MSは母胞子を示し、EDAの濃度が100μMとされている。

0037

特に、図4(a)に示すように、EDA250μM+ペプチド添加区では、菌糸生長および胞子形成ともに良好であった。さらに、EDAとペプチドとの併用処理における胞子形成促進効果を液体培養下で検討したところ、図4(b)に示すように、培養3か月後の解体時には1個の母胞子から多数の新胞子が形成されていた。なお、図4(a)において、MSは母胞子を示し、Sは新胞子を示している。

0038

以上のように、胞子形成にアミンが関与することが明らかであることから、アミン誘導体であり消毒剤でもあるクロラミンTを用いて、胞子表面の消毒とともに、胞子形成に及ぼす影響について調査した。方法としては、7000ppm、8000ppmおよび14000ppmのクロラミンT溶液に30分間浸漬し胞子を消毒した後、素寒天培地に置床した。その後、26℃の赤色発光ダイオードによる光照射下(10μmol/m2・sec)で培養した。この成果を踏まえて、クロラミンT8000ppm溶液内に、胞子を1時間、4時間および8時間浸漬させた後、素寒天培地に置床し培養を行った。培養条件は上記実施例1と同様とした。

0039

この結果、菌根菌(Glomus clarum)胞子へのクロラミンT処理の効果をまとめた表3に示すように、一般に消毒に用いられている濃度、7000ppmでは胞子形成はみられなかったものの、8000ppmでは母胞子1個から新しい胞子が6個程度形成された。しかしながら、14000ppmになると胞子形成は阻害される傾向が確認できた。さらに、菌根菌胞子をクロラミンT8000ppm溶液内に1時間、4時間および8時間浸漬させたところ、いずれの区でも胞子形成が確認できたが、特に、4時間浸漬区では、図5に示すように、多数の新しい胞子が観察された。なお、図5中のMSは母胞子を示している。

0040

無加温のガラスハウス内で育成させたAM菌感染および非感染のバヒアグラス根内からアミン類を抽出して分析した。具体的に、このアミン類の抽出および分析方法は、図6に示すように、根内のアミン類を4mMメタンスルホン酸で抽出し、ろ過した後、Shodex IC-YS-50カラム装備した電気伝導度検出器付き高速液体クロマトグラフHPLC)で分析した。このHPLCの分析条件は、次のとおりである。

0041

カラム: Shodex IC-YS-50、4.6mmID × 125mm
溶離液:4mMメタンスルホン酸
流速:10ml/min
カラム温度:40℃
検出器:Hitachi L3720 Electric Conductivity Detector
ポンプ:Hitachi Pump L-2130

0042

この結果、非菌根のバヒアグラス根ではアミン類は検出されなかった。しかしながら、グロムス・ファシキュラータム(G. fasciculatum)、グロムス・クララム(G. clarum)およびギガスポラ・マルガリータ(Gi. margarita)のAM菌が感染した根では、図7に示すように、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、PDA、EDA等のアミン類が検出された。なお、図7において、1はNa、2はNH4、3はジエタノールアミン、4はK、5はジメチルアミン、6はトリエチルアミン、7はMg、8はCa、9はPDA、10はEDAを示している。特に、EDAは、いずれの菌根菌感染根でも検出されたが、PDAは、グロムス・クララム感染根でのみ分析された。また、菌根菌が感染したバヒアグラスにおける根内のEDAおよびPDAの濃度をまとめた表4に示すように、それらの含量は、胞子形成促進に効果のある濃度で検出された。

0043

以上の結果、胞子形成に効果のあるペプチド以外に、アミン、特に第一アミンおよび第二アミンが菌根菌の胞子形成を著しく促進させる重要な働きを持っていることや、これらの物質は菌根菌が感染した植物において生産されることが見出された。特に、菌根植物において生産されたアミンの中で、EDA、PDAなどはキレート物質であるため、菌根菌の感染によって生成されたEDA、PDAなどのアミンが菌根植物の養分吸収に密接に関与していることは非常に興味深く、これらのアミンを土壌などに施用して植物における菌根形成や養分吸収の促進に効果を得ることができるものと考えられる。

0044

AM菌の純粋培養において、EDAのようなアミンとペプチドとの併用添加は、それぞれの単独添加よりも胞子形成を高めた。この傾向は液体培養下でも確認でき、この純粋培養技術を用いて、菌根菌の胞子を純粋に安定的に大量生産できるという重要な意味を有している。また実用化に向け、EDAとペプチドとを同時に添加して実験を行ったところ、EDA等のアミンは、菌糸生長をわずかに阻害する傾向が認められたので、EDAは、菌糸生長が旺盛になったときに添加することが良いと思われる。すなわち、本発明に係る培養方法は、菌根菌が感染し得る宿主の根や根抽出物を用いずに、菌根菌の生長を旺盛にして大量に胞子を増殖できるので、さらに菌根菌の純粋培養技術を安定化できる。また、アミンは菌根菌感染植物の根で生成されるので、アミンあるいはその誘導体を農業場面で活用できる。

実施例

0045

一方、AM菌の増殖方法としては、遺伝子組み換え毛状根を宿主とした技術がある(Becard, G. & Fortin, J. A. 1988年. New Phytol. 108: 211−218; St-Arnaud, M. C., Hamel, C., Vimard, B., Caron, M. & Fortin, J. A. 1996年. Mycol. Res. 100: 328-332)。この技術を用いることにより、インビトロでの安全なAM菌の生産が可能であるように思われる。しかしながら、AM菌は宿主から細胞核奪うので、毛状根を用いた培養では、変異遺伝子によるAM菌への影響やその変異遺伝子の自然環境への流出や拡大が懸念される。それゆえ、AM菌の増殖および保存を安心かつ安全に行うためには、本発明を用いてさらなる改良が加えられた菌根菌の純粋培養技術を用い、世界のAM菌の増殖や保存を進めていかなければならない。

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