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技術 チタン合金鍛造材およびその製造方法ならびにチタン合金鍛造部品の製造方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 伊藤良規村上昌吾木下敬之
出願日 2012年9月11日 (8年3ヶ月経過) 出願番号 2012-199970
公開日 2014年3月27日 (6年9ヶ月経過) 公開番号 2014-055318
状態 特許登録済
技術分野 鍛造 非鉄金属または合金の熱処理
主要キーワード パンケーキ形 小片試料 低周波加熱 荷重軸 平底穴 チタン合金素材 複数視野 航空機用部品
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年3月27日)のものです。
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課題

疲労強度等の航空機用部品に要求されるβ鍛造材機械的特性を保持しつつ、超音波探傷検査時のノイズを低減したチタン合金鍛造材およびその製造方法を提供する。

解決手段

チタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で2以上10以下であり、旧β粒界鍛造方向に平行な線となす角θ1,θ2,θ3,θ4が平均で80°以下であり、旧β粒界上に形成されたα相の旧β粒界方向長さlαが平均で15μm以下であることを特徴とする。

概要

背景

Ti−6Al−4V合金に代表されるα+β型チタン合金は、軽量、高強度、高耐食性に加え、溶接性超塑性拡散接合性等の諸特性を有することから、エンジン部品等、航空機産業で多く使用されている。α+β型チタン合金は、主相である稠密六方晶hcp構造)のα相と体立方晶bcc構造)のβ相とが室温で安定に共存し、β変態点(Tβ)以上の温度域でβ相単相となる。α+β型チタン合金の鍛造材には、Tβ以上の温度に到達しないようにTβ未満の温度域(α+β二相域)に加熱してこの温度域で鍛造するα+β鍛造によるものと、Tβ以上の温度域(β単相域)に加熱して鍛造するβ鍛造によるものとがあり、形成される材料組織は全く異なり、それに伴い材料特性が異なることが知られている。

チタン合金鍛造材は、β鍛造によれば、針状α相組織となる。具体的には、次のように組織が形成される。まず、Tβ以上の温度域でβ相単相となり、等軸状のβ相(β粒)が鍛造加工により扁平に潰れた後、Tβ未満の温度域まで冷却されてこの温度域で保持されると、β粒の結晶粒界に沿ってα相が膜状に析出し、引き続き、β粒の結晶粒内にα相が針状に析出する(図3(a)で白く示されているのがα相)。なお、β鍛造には、β単相域で鍛造を完了させるもの、β単相域外(α+β二相域)に温度降下後も鍛造が継続されるもの、およびα+β二相域に温度が降下してから鍛造を開始するものがある。さらにβ鍛造材は、鍛造条件やその後の冷却条件によって、旧β粒の結晶粒界上のα相の形態や厚さ、また粒内の針状α相の長さや厚さが変化し、さらには粒界上の膜状のα相が存在しないものもあり得る。一方、チタン合金鍛造材は、α+β鍛造によれば、粒状α組織となる(図3(b)参照)。一般的に、α+β型チタン合金鍛造材において、破壊靭性はβ鍛造をされた鍛造材の方がα+β鍛造をされた鍛造材よりも優れ、逆に疲労強度特性はα+β鍛造をされた鍛造材の方がβ鍛造をされた鍛造材よりも優れることが知られている。

航空機のエンジン部品は、高い疲労強度特性と共に、高い信頼性が要求されることから、超音波探傷により欠陥の有無が検査される。超音波探傷検査は、探触子から発信(送信)された超音波被検査体の表面から内部に入射させ、傷等の欠陥で反射する反射波を同じく探触子で受信することで、内部の欠陥の有無を判定する検査である。しかし、α相とβ相が共存するα+β型チタン合金は、α+β鍛造材かβ鍛造材かにかかわらず、超音波探傷時に材料組織に起因するノイズが高く、このノイズのため、欠陥の検出精度が低下したり、あるいは材料組織起因のノイズを欠陥と誤認したりして、問題となっている。そのため、α+β型チタン合金(以下、チタン合金)で形成されるエンジン部品等には、超音波探傷時のノイズを低減して超音波探傷性を向上させることが求められている。

そこで、従来は、ノイズを低減したα+β型チタン合金材として、例えば、α+β二相域での熱間圧延前に、β単相域から急冷して組織を微細化して、その後のα+β二相域での熱間圧延および熱処理により、等軸α組織を得たチタン合金圧延板が提案されている(特許文献1)。

概要

疲労強度等の航空機用部品に要求されるβ鍛造材の機械的特性を保持しつつ、超音波探傷検査時のノイズを低減したチタン合金鍛造材およびその製造方法を提供する。チタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で2以上10以下であり、旧β粒界の鍛造方向に平行な線となす角θ1,θ2,θ3,θ4が平均で80°以下であり、旧β粒界上に形成されたα相の旧β粒界方向長さlαが平均で15μm以下であることを特徴とする。

目的

本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、α+β型チタン合金のβ鍛造材について、疲労強度特性等の航空機用部品に要求される機械的特性を保持しつつ、超音波探傷時のノイズを低減した超音波探傷性に優れるチタン合金鍛造材およびその製造方法、ならびにチタン合金鍛造部品の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

β鍛造をされたチタン合金鍛造材であって、アスペクト比が平均で2以上10以下である旧β粒の多結晶構造を有し、前記旧β粒の粒界は、鍛造方向に平行な線となす角が平均で80°以下であり、前記旧β粒の粒界上に形成されたα相は、前記粒界方向における長さが平均で15μm以下であることを特徴とするチタン合金鍛造材。

請求項2

前記旧β粒は、鍛造方向における径が平均で700μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のチタン合金鍛造材。

請求項3

アスペクト比が3未満、かつ鍛造方向における径が30μm以上200μm以下である旧β粒が、1%以上存在しないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチタン合金鍛造材。

請求項4

前記旧β粒の粒界上に形成されたα相および当該粒界に沿って形成されたα相が存在する領域である粒界α帯の幅が平均で10μm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のチタン合金鍛造材。

請求項5

次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが2.7を超え15未満であるチタン合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のチタン合金鍛造材。[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe]・・・(1)ただし、前記式(1)の[X]は、前記チタン合金における元素Xの含有量(質量%)とする。

請求項6

厚さが少なくとも50mmで、平均で80mm以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のチタン合金鍛造材。

請求項7

β鍛造を行って請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のチタン合金鍛造材を製造する製造方法であって、前記β鍛造は、β変態点をTβで表したとき、(Tβ+10℃)以上に加熱して、β結晶粒径が300μm以上1000μm以下の範囲になるまで保持し、(Tβ−150℃)以上(Tβ+200℃)以下の温度域で、相当ひずみ0.45以上2.1以下となる条件で鍛造した後、(Tβ−150℃)よりも低い温度に冷却することを特徴とするチタン合金鍛造材の製造方法。

請求項8

請求項7に記載のチタン合金鍛造材の製造方法の前記β鍛造と、前記鍛造における圧下量の最も大きい方向に平行な方向に超音波照射して探傷する工程と、を行うことを特徴とするチタン合金鍛造部品の製造方法。

請求項9

請求項8に記載のチタン合金鍛造部品の製造方法により、航空機エンジンに使用される部品を製造することを特徴とするチタン合金鍛造部品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、超音波検査にて欠陥の有無を検査されるα+β型チタン合金のβ鍛造材に係る技術に関する。

背景技術

0002

Ti−6Al−4V合金に代表されるα+β型チタン合金は、軽量、高強度、高耐食性に加え、溶接性超塑性拡散接合性等の諸特性を有することから、エンジン部品等、航空機産業で多く使用されている。α+β型チタン合金は、主相である稠密六方晶hcp構造)のα相と体立方晶bcc構造)のβ相とが室温で安定に共存し、β変態点(Tβ)以上の温度域でβ相単相となる。α+β型チタン合金の鍛造材には、Tβ以上の温度に到達しないようにTβ未満の温度域(α+β二相域)に加熱してこの温度域で鍛造するα+β鍛造によるものと、Tβ以上の温度域(β単相域)に加熱して鍛造するβ鍛造によるものとがあり、形成される材料組織は全く異なり、それに伴い材料特性が異なることが知られている。

0003

チタン合金鍛造材は、β鍛造によれば、針状α相組織となる。具体的には、次のように組織が形成される。まず、Tβ以上の温度域でβ相単相となり、等軸状のβ相(β粒)が鍛造加工により扁平に潰れた後、Tβ未満の温度域まで冷却されてこの温度域で保持されると、β粒の結晶粒界に沿ってα相が膜状に析出し、引き続き、β粒の結晶粒内にα相が針状に析出する(図3(a)で白く示されているのがα相)。なお、β鍛造には、β単相域で鍛造を完了させるもの、β単相域外(α+β二相域)に温度降下後も鍛造が継続されるもの、およびα+β二相域に温度が降下してから鍛造を開始するものがある。さらにβ鍛造材は、鍛造条件やその後の冷却条件によって、旧β粒の結晶粒界上のα相の形態や厚さ、また粒内の針状α相の長さや厚さが変化し、さらには粒界上の膜状のα相が存在しないものもあり得る。一方、チタン合金鍛造材は、α+β鍛造によれば、粒状α組織となる(図3(b)参照)。一般的に、α+β型チタン合金鍛造材において、破壊靭性はβ鍛造をされた鍛造材の方がα+β鍛造をされた鍛造材よりも優れ、逆に疲労強度特性はα+β鍛造をされた鍛造材の方がβ鍛造をされた鍛造材よりも優れることが知られている。

0004

航空機のエンジン部品は、高い疲労強度特性と共に、高い信頼性が要求されることから、超音波探傷により欠陥の有無が検査される。超音波探傷検査は、探触子から発信(送信)された超音波被検査体の表面から内部に入射させ、傷等の欠陥で反射する反射波を同じく探触子で受信することで、内部の欠陥の有無を判定する検査である。しかし、α相とβ相が共存するα+β型チタン合金は、α+β鍛造材かβ鍛造材かにかかわらず、超音波探傷時に材料組織に起因するノイズが高く、このノイズのため、欠陥の検出精度が低下したり、あるいは材料組織起因のノイズを欠陥と誤認したりして、問題となっている。そのため、α+β型チタン合金(以下、チタン合金)で形成されるエンジン部品等には、超音波探傷時のノイズを低減して超音波探傷性を向上させることが求められている。

0005

そこで、従来は、ノイズを低減したα+β型チタン合金材として、例えば、α+β二相域での熱間圧延前に、β単相域から急冷して組織を微細化して、その後のα+β二相域での熱間圧延および熱処理により、等軸α組織を得たチタン合金圧延板が提案されている(特許文献1)。

先行技術

0006

特許第2988269号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、前記した従来技術はα+β鍛造によるα+β型チタン合金材に関するものである。一方、β鍛造材については、前記した通りα+β鍛造材とは材料組織の形成過程および最終的に形成される形態が大きく異なるので、超音波探傷時のノイズの原因が異なると考えられ、これに伴い改善方法も異なるため、前記技術を適用してノイズを低減することができない。

0008

本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、α+β型チタン合金のβ鍛造材について、疲労強度特性等の航空機用部品に要求される機械的特性を保持しつつ、超音波探傷時のノイズを低減した超音波探傷性に優れるチタン合金鍛造材およびその製造方法、ならびにチタン合金鍛造部品の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは鋭意研究の結果、β鍛造により送信波の入射方向に垂直な広い面を有する扁平な形状に潰れた旧β粒の粒界で送信波が正反射し易く、この反射波が探触子で受信されてノイズの主原因となることを解明するに至った。さらに、旧β粒の形状を適正に制御することにより、疲労強度特性等を保持しつつ、β鍛造材の超音波探傷性を向上することができることを明らかにした。

0010

すなわち、本発明に係るチタン合金鍛造材は、β鍛造をされた鍛造材であって、アスペクト比が平均で2以上10以下である旧β粒の多結晶構造を有するものである。そして、チタン合金鍛造材において、前記旧β粒の粒界は、鍛造方向に平行な線となす角が平均で80°以下であり、前記旧β粒の粒界上に形成されたα相は、前記粒界方向における長さが平均で15μm以下であることを特徴とする。さらに本発明に係るチタン合金鍛造材は、前記旧β粒の鍛造方向における径が平均で700μm以下であることが好ましい。さらに本発明に係るチタン合金鍛造材は、アスペクト比が3未満かつ鍛造方向における径が30μm以上200μm以下である旧β粒が、1%以上存在しないことが好ましい。

0011

かかる構成のチタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比すなわち扁平の度合いが所定範囲に規定され、さらに旧β粒の粒界が鍛造方向に垂直または略垂直にならないように規定されることで、β鍛造材としての強度を低下させることなく、鍛造方向と平行に入射した送信波が旧β粒の粒界で反射しても探触子に受信されず、ノイズが低減するので超音波探傷性に優れる。

0012

さらに本発明に係るチタン合金鍛造材は、前記旧β粒の粒界上に形成されたα相および当該粒界に沿って形成されたα相が存在する領域である粒界α帯の幅が平均で10μm以下であることが好ましい。

0013

かかる構成のチタン合金鍛造材は、旧β粒の粒内のα相の多くが針状であるため、破壊靭性が良好である。

0014

さらに、本発明に係るチタン合金鍛造材は、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが2.7を超え15未満であるチタン合金からなることが好ましい。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・(1)
ただし、前記式(1)の[X]は、前記チタン合金における元素X(X:Mo,Ta,Nb,W,V,Cr,Ni,Mn,Co,Fe)の各含有量(質量%)とする。

0015

かかる構成により、チタン合金鍛造材は、α+β型チタン合金となり、旧β粒の形状の影響が強くなって、機械的特性と超音波探傷性とを並存させることができる。

0016

さらに、本発明に係るチタン合金鍛造材は、厚さが少なくとも50mm、平均で80mm以上とすることができる。かかる構成により、厚肉化しても、深部まで精度よく超音波探傷検査を行うことができ、信頼性の高い製品が得られる。

0017

本発明に係るチタン合金鍛造材は、β鍛造を行って製造される。この本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、前記β鍛造が、β変態点をTβで表したとき、(Tβ+10℃)以上に加熱して、β結晶粒径が300μm以上1000μm以下の範囲になるまで保持し、(Tβ−150℃)以上(Tβ+200℃)以下の温度域で、相当ひずみ0.45以上2.1以下となる条件で鍛造した後、(Tβ−150℃)よりも低い温度に冷却することを特徴とする。

0018

かかる手順により、チタン合金鍛造材の製造方法は、β鍛造にて旧β粒が適度に扁平なチタン合金鍛造材が得られる。

0019

本発明に係るチタン合金鍛造部品の製造方法は、前記β鍛造と、前記鍛造における圧下量の最も大きい方向に平行な方向に超音波を照射して探傷する工程と、を行うことを特徴とする。このチタン合金鍛造部品の製造方法により、航空機のエンジンに使用される部品を製造することができる。

0020

かかる方法により、チタン合金鍛造部品の製造方法は、超音波探傷検査において、比較的高ノイズとなる方向に超音波にて探傷しても十分にノイズが少ないため、チタン合金鍛造材における面積の広い面を探触子で走査することができ、検査が容易かつ高精度な検査を行うことができる。

発明の効果

0021

本発明に係るチタン合金鍛造材によれば、超音波探傷検査にて欠陥を高精度で検出可能となり、航空機のエンジン部品等の製品の信頼性が向上する。そして、本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法によれば、前記の効果を有するチタン合金鍛造材を容易に製造することができる。また、本発明に係るチタン合金鍛造部品の製造方法によれば、前記のチタン合金鍛造材に対して高精度な超音波探傷検査を行ったチタン合金鍛造部品を製造することができる。

図面の簡単な説明

0022

チタン合金のβ鍛造材の組織の状態を説明する断面模式図である。
チタン合金のβ鍛造材におけるα相の形状を説明するための模式図で、旧β粒の粒界近傍の拡大断面図である。
チタン合金鍛造材の組織の画像写真であり、(a)はβ鍛造材、(b)はα+β鍛造材のそれぞれの一例である。

0023

以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
〔チタン合金鍛造材〕
本発明に係るチタン合金鍛造材は、従来のβ鍛造材と同様に、航空機のエンジン部品に適用され、特に超音波探傷検査にて内部の欠陥を検査することを必要とするものに好適である。具体的にはディスクシャフトに利用されるチタン合金鍛造材に適用することができ、厚さ(鍛造方向長さ)が平均で80mm以上、最薄部でも50mm以上とすることができる。

0024

本発明に係るチタン合金鍛造材は、α+β型チタン合金(以下、チタン合金)からなり、従来のβ鍛造材と同様に、旧β粒(β相)と、旧β粒の結晶粒界上や結晶粒内に析出したα相とを有する。ただし、本発明に係るチタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で2以上10以下であり、旧β粒の鍛造方向における径が平均で700μm以下であることが好ましく、アスペクト比3未満かつ鍛造方向における径30μm以上200μm以下の旧β粒が1%以上存在しないことが好ましい。また、本発明に係るチタン合金鍛造材は、旧β粒の粒界の、鍛造方向に平行な線となす角が平均で80°以下である。また、本発明に係るチタン合金鍛造材は、旧β粒の粒界上に形成されたα相が、前記粒界方向における長さが平均で15μm以下であり、前記粒界上に、および当該粒界に沿って、α相が形成された領域である粒界α帯が、平均で幅10μm以下であることが好ましい。

0025

β鍛造においては、チタン合金材がβ変態点(Tβ)以上の温度域(β単相域)に加熱されて保持されることで、β相単相状態となって、等軸状(アスペクト比が1に近い)のβ相の結晶粒(β結晶粒、β粒)が形成され成長する。そして、鍛造加工により、β結晶粒が潰されて鍛造方向(圧下方向)に垂直に広がった扁平形状に変形し、パンケーキ形状となったβ結晶粒(旧β粒)が積み重なった多結晶構造の組織となる(図1参照)。鍛造後に冷却されてTβ未満の十分に低い温度域(α+β二相域)に降下すると、旧β粒の粒界上や粒内にα相が析出する(図3(a)参照)。したがって、β鍛造材において、旧β粒は、径が鍛造方向において最小となる場合が多い。また、チタン合金鍛造材は、鍛造後に、冷却が遅くて温度がβ単相域である時間が長いと、新たに等軸状のβ粒が成長する。図1では、α相について、破線で示した円内の拡大図に、旧β粒の粒界上の膜状に形成されたα相を示し、それ以外は図示を省略する。

0026

(旧β粒のアスペクト比:平均2以上10以下)
本発明において、旧β粒のアスペクト比とは、鍛造方向の径に対するこの方向に垂直な方向の径の比を指す。すなわち図1においては、上下方向の径に対する左右方向の径の比である。また、結晶粒の径とは、所定の方向における最大長を指す。本発明に係るチタン合金鍛造材は、従来のβ鍛造材と同様に、扁平形状のβ結晶粒(旧β粒)の多結晶構造により、高い破壊靱性および疲労強度を有する。チタン合金鍛造材は、鍛造前においてアスペクト比の小さい(1に近い)等軸状であった旧β粒が、鍛造時に加えられたひずみ量が多くなるにしたがい、アスペクト比が大きく、扁平になって、かかる旧β粒の疲労強度の向上の寄与度が高くなる。

0027

チタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で2未満では、等軸状のβ粒が多いことになり、このようなβ粒が疲労強度の向上に寄与しないため、疲労強度が不足する。したがって、チタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で2以上であり、3以上であることが好ましく、さらに、後記するようにアスペクト比が3未満の旧β粒ができるだけ少ないことがより好ましい。旧β粒のアスペクト比は、鍛造時のひずみ量が不足したことにより、β粒が十分に変形しなかった場合に、あるいは、鍛造後に速やかにTβよりも低い温度に冷却されなかったことにより、等軸状の新たなβ粒が多く生成した場合に小さくなる。一方、旧β粒はアスペクト比が大きくなる、すなわちより扁平になるにしたがい、旧β粒の粒界の傾きが減少して鍛造方向に垂直な面に近付き、かつその面が大きくなって、超音波探傷検査(鍛造方向に平行に超音波を照射した場合。以下同。)におけるノイズが増大する。旧β粒のアスペクト比が平均で10を超えると、超音波探傷検査においてノイズにより測定精度が低下する虞がある。したがって、チタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で10以下であり、8以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、6以下であることがさらに好ましい。このような旧β粒のアスペクト比は、鍛造時のひずみ量(圧下量)で制御することができ、さらに、鍛造完了後は速やかに冷却して短時間でTβよりも十分に低い温度に到達させて、新たなβ粒が成長しないようにすることが好ましい。

0028

(旧β粒界が、鍛造方向に平行な線となす角:平均80°以下)
チタン合金鍛造材は、前記した通り、鍛造方向に垂直に広がった扁平な旧β粒が鍛造方向に積み重なった組織を有する。したがって、図1に断面図に示すように、旧β粒の粒界(旧β粒界)が、鍛造方向に垂直に比較的近い面を形成することになる。チタン合金鍛造材は、この粒界の傾きが鍛造方向に垂直な面により近く、かつこのような粒界が広く、また多くなるにしたがい、超音波探傷検査におけるノイズが増大する。具体的には、旧β粒の粒界が、鍛造方向に垂直な面となす角が平均で10°未満に、言い換えると鍛造方向に平行な線となす角(図1のθ1,θ2,θ3,θ4)が平均で80°を超えると、超音波探傷検査においてノイズにより測定困難となる虞がある。したがって、旧β粒界の、鍛造方向に平行な線となす角は、平均で80°以下とする。この角度は鋭角(最大90°の絶対値)で判定する。なお、旧β粒の粒界は曲面が多いので、後記するように、チタン合金鍛造材の断面を観察して、当該断面に線(曲線)状に表れる粒界の接線で測定すればよい。このような旧β粒の粒界の角度は、旧β粒が扁平になり過ぎない、すなわち旧β粒を前記で規定されたアスペクト比に制御すれば得られる。

0029

(旧β粒の鍛造方向の径:平均700μm以下)
チタン合金鍛造材は、旧β粒が大き過ぎると疲労強度が低下するため、具体的には鍛造方向における径が平均で700μm以下であることが好ましい。一方、旧β粒の径の下限は特に規定しないが、現実的には60μmよりも小さくすることは困難である。チタン合金鍛造材の旧β粒の径は、鍛造前の加熱で成長したβ粒の径に依存し、加熱温度および保持時間で制御することができる。すなわち旧β粒を小粒化するためには加熱にて微細なβ粒とする必要があるが、大型化したチタン合金素材(鍛造前のチタン合金鍛造材)は、加熱における昇温速度が表層と深部とで差が大きいので微細かつ均一なβ粒とすることが困難である。具体的には、鍛造前のβ粒は径300μm以上が現実的で、したがって、鍛造後(チタン合金鍛造材)における鍛造方向の径は60μm以上となり、さらに、鍛造前のβ粒は径400μm以上がより安定的に生産し易いため、鍛造後における径は80μm以上とすることが好ましい。

0030

(アスペクト比3未満かつ鍛造方向における径30μm以上200μm以下の旧β粒の存在割合:1%未満)
チタン合金鍛造材は、鍛造後に新たにβ粒が成長すると、この等軸状のβ粒により、鍛造で扁平にされた旧β粒の存在割合が減少し、疲労強度が低下する。また、チタン合金鍛造材は、旧β粒のアスペクト比が平均で2以上であっても全体に小さく、かつ径も小さいと、かかる旧β粒では疲労強度を向上させる効果が小さい。具体的には、アスペクト比3未満かつ鍛造方向の径が30μm以上200μm以下の旧β粒(以下、適宜、非扁平β粒と称する)が1%以上存在しない(存在割合が1%未満である)ことが好ましい。このような組織は、鍛造前の加熱でβ粒を適度な径に成長させてから、十分なひずみが加えられる条件で鍛造し、さらに、鍛造完了後は速やかに冷却して短時間でTβよりも十分に低い温度、具体的には(Tβ−30℃)よりも低い温度に到達させて、新たなβ粒が成長しないようにすることで得られる。なお、チタン合金鍛造材におけるこの存在割合は、断面における面積率を指す。

0031

(粒界上のα相の粒界方向における長さ:平均15μm以下)
旧β粒の粒界上に析出したα相(図1参照)は、粒界に沿った膜状であり、通常、粒界上に析出した後、粒界から旧β粒内に向けて成長する。なお、鍛造完了後に旧β粒界上に析出し始めるα相は、膜厚(旧β粒界の法線方向の長さ、図1のtα)が通常2μm程度である。チタン合金鍛造材は、粒界に沿ってα相が連続して長く形成されると、疲労強度が劣化する。したがって、旧β粒界上のα相の当該旧β粒界方向長さ(図1のlα)は、平均で15μm以下とし、10μm以下とすることが好ましく、7μm以下とすることがさらに好ましい。このα相の長さlαは、後記するようにチタン合金鍛造材の断面を観察して、当該断面に線状に表れる旧β粒界上に形成されたα相について、旧β粒界方向の長さを測定すればよい。チタン合金鍛造材は、鍛造にて加えられるひずみが少ないと、その後の冷却時に粒界に沿ってα相が広がって形成され易いため、後記の製造方法にて説明するように、十分なひずみが加えられるように鍛造することが好ましい。

0032

(粒界α帯の幅:平均10μm以下)
ここで、チタン合金鍛造材は、α相が析出する温度域で鍛造が行われると、既に旧β粒の粒界上および粒内に析出したα相が細かく分断される。また、鍛造時にα相が析出していない過冷領域であっても、鍛造完了直後にα相が析出するためにα相の析出密度が増え、通常のβ鍛造では旧β粒内において針状に成長するところ粒状(等軸状)に留まる。この等軸状のα相は、アスペクト比(旧β粒界方向における長さに対する旧β粒界の法線方向の長さの比)が2以下のものを指し、粒内に形成された針状のα相(粒内α、図2参照)とは明確に区別される。このような等軸状のα相は、形成される領域が粒界上からその周辺へ次第に広がることで増加し、すなわち粒界に沿って形成される(図2参照)。チタン合金鍛造材は、このように、旧β粒の粒界の周辺に当該粒界に沿って形成されたα相が多いと、言い換えると広い範囲に存在していると、破壊靭性が劣化する虞がある。したがって、チタン合金鍛造材は、旧β粒の粒界上を含め、その周辺において当該粒界に沿って形成されたα相が存在している帯域(以下、粒界α帯と称する)の幅(旧β粒界の法線方向の長さ)wα(図2参照)が平均で10μm以下であることが好ましい。なお、粒界α帯は、旧β粒界上に形成された、等軸状でないα相(図1参照)が形成されている領域も含まれ、言い換えれば、針状(図2の粒内α)でないα相が形成されている帯域を指す。したがって、旧β粒界の周辺に等軸状のα相が形成されていないチタン合金鍛造材においては、粒界α帯の幅wαが旧β粒界上に形成された膜状のα相の膜厚tα(図1参照)と一致し、このようなチタン合金鍛造材がより好ましい。粒界α帯の幅wαは、後記するようにチタン合金鍛造材の断面を観察して、当該断面に線状に表れる旧β粒界の両側に形成されたα相について、等軸状のものを定義し、この等軸状のα相が含まれている領域(粒界α帯)の、前記旧β粒界の垂線方向長さを測定すればよい。チタン合金鍛造材は、旧β粒の粒界周辺における等軸状のα相の形成が抑制されるように、後記の製造方法にて説明するように所定の温度域で鍛造して完了させることが好ましい。

0033

本発明に係るチタン合金鍛造材の旧β粒のアスペクト比や径、粒界の角度、および非扁平β粒の面積率、ならびに旧β粒界上のα相の長さ、および粒界α帯の幅は、当該チタン合金鍛造材の鍛造方向と平行な断面における1ないし複数視野における値とすることができる。すなわち、チタン合金鍛造材を鍛造方向と平行な面で切断し、断面を研磨機械研磨電解研磨仕上げの後に腐食させて、この断面から例えば1〜数mm角程度の視野を1ないし複数選択し、光学顕微鏡により断面組織を観察する。

0034

そして、断面の鍛造方向とこれに直交する方向とのそれぞれにおける旧β粒の長さ(径)を測定し、アスペクト比を算出し、径およびアスペクト比に基づいて非扁平β粒を定義する。また、前記視野において、1本ないし複数本の鍛造方向に平行な直線(図1の一点鎖線)と交差する旧β粒界について、それぞれの交角(90°以下)、詳しくは交点における旧β粒界の接線と前記直線のなす角を測定する。さらに、旧β粒界上に形成されたα相の粒界方向における長さ、および旧β粒界の周辺において等軸状のα相が形成された領域の幅を測定する。これにより、チタン合金鍛造材の断面の前記視野における旧β粒のアスペクト比および径、粒界の角度、粒界上のα相の長さ、粒界α帯の幅のそれぞれの平均値、ならびに非扁平β粒の面積率を算出することができる。

0035

(チタン合金:Mo当量2.7を超え15未満)
本発明に係るチタン合金鍛造材を形成するチタン合金は、α+β型チタン合金であれば適用することができるが、次式(1)で表されるMo当量[Mo]eqが2.7を超え15未満となる組成であることが好ましい。チタン合金は、Mo当量が大きくなるにしたがい、α相の体積含有率が減少して旧β粒界の形状の影響が強くなって、前記した旧β粒の扁平粒による破壊靱性および疲労強度の向上効果がいっそう得られる。チタン合金のMo当量は、より好ましくは3.5以上、さらに好ましくは4.5以上である。一方、チタン合金は、Mo当量[Mo]eqが大きくなるにしたがい、合金元素偏析し易くなり、組織がばらつく虞があるため、15未満とすることが好ましい。チタン合金のMo当量は、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下である。
[Mo]eq=[Mo]+[Ta]/5+[Nb]/3.6+[W]/2.5+[V]/1.5+1.25[Cr]+1.25[Ni]+1.7[Mn]+1.7[Co]+2.5[Fe] ・・・(1)
ただし、式(1)の[X]は、チタン合金における元素X(X:Mo,Ta,Nb,W,V,Cr,Ni,Mn,Co,Fe)の各含有量(質量%)とする。

0036

このようなチタン合金としては、具体的にはAMS4981,AMS4995で規定されるチタン合金が挙げられる。AMS4981で規定されるチタン合金(Ti−6Al−2Sn−4Zr−6Mo合金、Ti−6246合金)は、Al:5.50〜6.50質量%、Sn:1.75〜2.25質量%、Zr:3.50〜4.50質量%、Mo:5.50〜6.50質量%を含有し、残部はTiおよび不可避的不純物であり、各元素の平均値から計算されるMo当量は6.0である。前記不可避的不純物としては、概ね、N:0.04質量%、C:0.08質量%、H:0.015質量%、Fe:0.15質量%、O:0.15質量%を含有する。

0037

AMS4995で規定されるチタン合金(Ti−5Al−2Sn−2Zr−4Cr−4Mo合金、Ti−17合金)は、Al:4.5〜5.5質量%、Sn:1.5〜2.5質量%、Zr:1.5〜2.5質量%、Cr:3.5〜4.5質量%、Mo:3.5〜4.5質量%、O:0.08〜0.12質量%であって、残部はTiおよび不可避的不純物であり、各元素の平均値から計算されるMo当量は9.5である。前記不可避的不純物としては、概ね、Fe:0.03質量%、C:0.05質量%、N:0.04質量%、H:0.0125質量%を含有する。

0038

〔チタン合金鍛造材の製造方法〕
本発明に係るチタン合金鍛造材は、所望の組成のチタン合金からなるインゴットを公知の方法でビレットに鍛造し(ビレット鍛造工程と称する)、必要に応じて機械加工を行ってから、β鍛造を行って所望の製品形状に製造される。ビレット鍛造工程は、例えば、β鍛造→α+β鍛造→β熱処理→応力除去焼鈍→α+β鍛造→焼鈍順序で行われる。α+β鍛造はβ変態点(適宜、Tβと表す)よりも10〜200℃程度低い温度域に、β鍛造はTβよりも10〜150℃程度高い温度域に、それぞれ加熱し、所定の鍛錬比鍛伸方向に垂直な断面の、鍛造前に対する鍛造後の面積比、例えば1.5)の鍛造を行い、室温に冷却する。ビレット鍛造工程における鍛造をα+β鍛造とするかβ鍛造とするかは製品に要求される特性に応じて設定すればよく、鍛造の回数も所望するビレットの径等に応じて行えばよい。また2回の焼鈍はそれぞれ必要に応じて行えばよく、例えば2回目の焼鈍はその後の機械加工をし易くするために行われる。さらにチタン合金ビレットを機械加工することで、表面の酸化皮膜シワバリが除去され、表面粗度を整えることができ、その後の鍛造(チタン合金鍛造材の製造におけるβ鍛造)がし易くなる。そして、本発明に係るチタン合金鍛造材を製造するために、チタン合金ビレットを以下の方法でβ鍛造する。β鍛造前にチタン合金ビレットに対してα+β二相域にて荒地鍛造を行い、所望の形状に仕上げてもよい。なお、チタン合金鍛造材のβ鍛造前をチタン合金素材と称し、ここではチタン合金素材としてチタン合金ビレットを適用する。

0039

本発明に係るチタン合金鍛造材の製造方法は、チタン合金素材(チタン合金ビレット)を(Tβ+10℃)以上に加熱して、β結晶粒径(平均粒径)が300μm以上1000μm以下の範囲になるまで保持し、(Tβ−150℃)以上(Tβ+200℃)以下の温度域で、相当ひずみ0.45以上2.1以下となる条件で鍛造した後、(Tβ−150℃)よりも低い温度に冷却する。

0040

鍛造前加熱温度:≧Tβ+10℃)
鍛造前加熱は、一般的なβ鍛造と同様に、鍛造前に、チタン合金ビレットをβ単相域まで加熱してβ相単相にするために行われる。β単相域とはβ変態点(Tβ)以上の温度域であり、Tβはチタン合金ビレットの全体(100%)がβ相となる最低温度で、当該チタン合金ビレット(チタン合金鍛造材)を形成するチタン合金の組成によって変化する。例えば、AMS4981で規定されるチタン合金(Ti−6246合金)のTβは960℃程度であり、AMS4995で規定されるチタン合金(Ti−17合金)のTβは890℃程度である。本発明においては、チタン合金ビレットを深部まで確実にβ相単相とし、また、(Tβ−150℃)以上の温度域で鍛造を完了させる。一方、チタン合金ビレットがβ単相域において高温になるにしたがい、β相の結晶粒の成長速度が速くなるため結晶粒径を制御し難くなり、また、(Tβ+250℃)を超えると、表面に厚い酸化スケールが形成され易く、鍛造後に除去する必要が生じるため、加熱温度は(Tβ+250℃)以下が好ましい。

0041

チタン合金ビレットを加熱してβ単相域に到達させた後、鍛造開始前に一定時間保持して、β結晶粒を適度な大きさ、具体的には径300μm以上1000μm以下の範囲に成長させる。保持時間は、チタン合金ビレットの保持温度によって異なるが、例えば1000℃で60〜480分間程度保持すればよい。なお、いったん所望のβ結晶粒組織が形成された後は、チタン合金ビレットの温度は、鍛造前にTβ+10℃未満に降下してもよいが、後記するように、鍛造完了まで(Tβ−150℃)以上の温度域で保持することができるように設定される。

0042

鍛造温度(TF):Tβ−150℃≦TF≦Tβ+200℃)
加熱して一定時間保持したチタン合金ビレットを鍛造して、製品の形状とする。ここで、チタン合金ビレットは、Tβ未満の温度域になると、β結晶粒の粒界上に、さらには粒内にα相が析出し始め、(Tβ−150℃)未満の温度域になると、これらのα相の析出が顕著になる。鍛造中にこれらのα相が多く形成されると、破壊靭性が劣化する虞がある。したがって、チタン合金ビレットの鍛造の完了時における温度は(Tβ−150℃)以上とし、(Tβ−110℃)以上が好ましい。鍛造に使用される金型は、400℃以上に加熱されていることが好ましく、鍛造温度(チタン合金ビレットの温度)に加熱されていることがさらに好ましい。このように加熱された金型を使用することで、鍛造されるチタン合金ビレットの表面が内部に対して早期に冷却され過ぎることがなく、表面近傍も(Tβ−150℃)以上に保持して鍛造を完了することができる。一方、鍛造時の温度が過剰に高いと、鍛造完了後に(Tβ−150℃)未満に冷却されるまでに時間がかかることにより、新たなβ粒が成長したり旧β粒の粒界上にα相が太く(厚く)析出して、チタン合金鍛造材の疲労強度が低下する虞がある。したがって、鍛造温度(鍛造の開始から完了までの温度)は(Tβ+200℃)以下とする。なお、鍛造完了まで(Tβ−150℃)以上の温度域に保持されるのは、チタン合金鍛造材の製品部分でよく、鍛造後(冷却後)に除去される表層等の余肉(製品部分以外)における温度は特に規定されない。

0043

(相当ひずみ:0.45以上2.1以下)
鍛造は、一般的な仕上げ鍛造と同様の条件で行うことができる。ここで、鍛造によりチタン合金ビレットに加えるひずみが大きくなるにしたがい、β粒がより扁平に潰れて旧β粒のアスペクト比が大きくなる。相当ひずみが0.45未満では、旧β粒はアスペクト比が過小となって疲労強度の向上に寄与せず、さらに鍛造後の冷却で旧β粒の粒界に沿ってα相が連続して長く形成されるため、チタン合金鍛造材の疲労強度が劣化する。したがって、チタン合金素材に加えられる相当ひずみが0.45以上に、好ましくは0.5以上になるように鍛造する。反対に、相当ひずみが2.1を超えると、旧β粒が過剰に扁平に潰れてアスペクト比が過大になり、旧β粒界が鍛造方向に垂直な面に近くなって、超音波探傷検査においてノイズにより測定精度が低下する。したがって、チタン合金素材に加えられる相当ひずみが2.1以下になるように鍛造し、好ましくは2.0以下に、より好ましくは1.8以下に、さらに好ましくは1.7以下にする。なお、相当ひずみは有限要素法によって求めることができる。このような相当ひずみであって、旧β粒をアスペクト比が平均で2以上にするためには、平坦面を有する金型による円柱形状ビレットの鍛造を例にすると、圧下率33%以上80%以下の加工、あるいはそれに相当する加工を加えることが好ましい。また、チタン合金ビレットに対する金型の移動速度は、ひずみ速度が10-3〜10(1/s)とすることが好ましい。

0044

チタン合金ビレットを、鍛造完了後、(Tβ−150℃)よりも低い温度に冷却することで、β単相域外(α+β二相域)として新たなβ粒の成長を停止させ、かつ旧β粒の粒界上にα相が太く(厚く)析出することを抑制して、得られたチタン合金鍛造材の疲労強度の劣化を防止する。したがって、鍛造完了後はできるだけ時間を空けずに冷却を開始し、具体的には、鍛造完了時から300秒間以内に(Tβ−150℃)よりも低い温度に到達させることが好ましい。そのために、鍛造後の冷却速度は、10℃/min以上が好ましく、50℃/min以上がより好ましい。一方、冷却速度の上限は特に規定しないが、500℃/min以下が実用的であり、また粒内の針状α相を長くして破壊靭性を向上させるため、好ましい。冷却方法は、空冷送風水冷、湯冷、油冷等の公知の方法を適用すればよい。なお、(Tβ−150℃)よりも低い温度域における冷却速度は特に規定せず、その他の要求される特性に応じて設定すればよい。

0045

〔チタン合金鍛造部品の製造方法〕
得られたチタン合金鍛造材は、必要に応じて、公知の方法にて溶体化処理および時効処理にて調質熱処理を行い、さらに機械加工を行って酸化皮膜や余肉を除去し、以下の超音波探傷検査を実施されて、チタン合金鍛造部品となる。具体的には表面から1mm以上の厚さを除去し、表面粗度6.3S以上に平滑化してから、超音波探傷検査を行うことが好ましい。チタン合金鍛造部品は、その後、必要に応じて再度機械加工されてディスクやシャフトのようなエンジン部品等の製品となる。これらの処理は、公知の方法で行われることができる。

0046

(超音波探傷検査方法)
本発明に係るチタン合金鍛造部品の製造方法における超音波探傷検査は、公知の方法で行うことができ、探触子はプローブ径が5〜30mmの範囲のものから選択し、超音波(送信波)は周波数1〜20MHzの範囲を使用することが好ましい。プローブ径は10mm以上、超音波の周波数は15MHz以下が好ましい。また、欠陥の検出分解能が高い水浸傷法にて検査を行うことが好ましい。本発明に係るチタン合金鍛造材は、鍛造における圧下量の最も大きい方向、すなわち鍛造方向(図1参照)と平行な方向を含む方向に探傷する超音波探傷検査に供すことができる。鍛造における圧下量の最も大きい方向とは、鍛造の前後(チタン合金素材とチタン合金鍛造材)で、寸法の減少率が最大の方向であり、図1に示す鍛造方向である。鍛造方向は、鍛造後(チタン合金鍛造材)の組織における旧β粒の形状からも推定することができる。また、超音波探傷検査の方向とは、送信波の進行方向(チタン合金鍛造材の内部を透過させる方向)を指す。チタン合金鍛造材は鍛造圧下量の最も大きい方向が最もノイズが多い傾向があるが、本発明に係るチタン合金鍛造材は、かかる方向に探傷しても十分にノイズが少なく高精度な検査を行うことができる。また、チタン合金鍛造材は、探触子を走査するこの方向に垂直な表面の面積が広い場合が多いので、検査し易い。また、チタン合金鍛造材(チタン合金鍛造部品、製品)の形状に応じて、前記1方向での探傷、またはさらに方向を変化させて合計2回以上検査することが好ましい。さらに、チタン合金鍛造材の厚さ(送信波の進行方向長さ)によっては、逆方向から送信波を入射してもよい。

0047

以上、本発明を実施するための形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

0048

試験体作製〕
チタン合金素材として、AMS4981で規定されるTi−6246合金(Tβ:960℃)からなるビレットを、α+β二相域で所定形状に鍛造して用いた。チタン合金素材の形状は、鍛造(β鍛造)後(チタン合金鍛造材)における鍛造方向厚さが45mmとなるように、鍛造時の圧下量(圧下率)に応じて決定した。

0049

(β鍛造)
チタン合金ビレットを、内部の温度分布が一定となるように、炉内にて930℃で2時間保持した後、1010℃に加熱してβ粒が平均粒径500〜600μmになるまで保持し、炉から出して表1に示す鍛造温度まで空冷させた後に、予め低周波加熱装置で鍛造温度に加熱した金型を用いて鍛造した。鍛造は、平坦な面形状の一対の金型を用い、金型移動速度1800mm/minで、変形方向(圧下方向)をビレット軸方向として表1に示す圧下率で行った(鍛造後の素材長さ45mm)。

0050

チタン合金ビレットを鍛造完了後、直ちに(15秒間以内に)金型から取り出し、室温まで冷却して、チタン合金鍛造材を得た。このとき、試験体No.4は空冷、それ以外の試験体は水冷にて冷却した。なお、チタン合金ビレットは、加熱や保持、鍛造時に、1/2H,1/4D位置(H:鍛造材の厚み、D:鍛造材の直径)、すなわち鍛造材の厚み方向と半径方向のそれぞれの中間位置の温度を熱電対で測定して鍛造温度等を管理した。また、表1に記載の鍛造後の冷却速度は予備実験により測定した。すなわち、チタン合金鍛造材と同形状のチタン合金素材を用意し、その1/2H,1/4D位置に熱電対を挿入し、1050℃に加熱保持した後、空冷ならびに水冷を行い、冷却曲線を取得した。その後、900℃に到達した時から700℃に到達した時までの冷却速度が一定であるとして、冷却速度を算出した。

0051

調質
室温に冷却したチタン合金鍛造材を、Tβ未満(α+β二相域)の935℃に加熱して2時間保持して30℃/minで冷却する溶体化処理の後、595℃で8時間保持して35℃/minで室温まで冷却する時効処理を行い、試験体とした。

0052

〔材料組織の観察〕
(旧β粒のアスペクト比および径、旧β粒界の角度、非扁平β粒の面積率)
試験体における1/2H,1/4D位置を含む15mm角の立方体小片試料を試験体から切り出した。そして、旧β粒界の観察を容易にするために、Tβ未満(α+β二相域)の900℃に加熱して、30分間保持後に空冷する熱処理を行った。このように、α+β二相域での熱処理により、β粒の再結晶粒成長は起こらず旧β粒の形状は維持しつつ、旧β粒内の針状α相の面積率を低下させるため、旧β粒界の観察が容易となる。前記熱処理を施した小片から、試験体の鍛造方向と半径方向とに平行な面な断面を切り出し、前記断面に対して、エメリー紙で機械研磨を行い、ダイヤモンド砥粒による仕上げ研磨の後、フッ硝酸溶液で腐食を行い、組織観察に供した。組織観察は光学顕微鏡にて行い、倍率100倍で3200μm×2000μmの視野をパノラマ状に観察した。旧β粒について、鍛造方向(軸方向)の径とアスペクト比を求め、視野における旧β粒のすべてについて平均値を算出し、また、アスペクト比および径に基づき非扁平β粒を検出して、その視野における面積率を求めた。また、鍛造方向に平行な直線を300μm間隔で引き、直線と交差する旧β粒の粒界について、交点での接線と前記直線との角度(≦90°)を測定し、すべての交点での角度の平均値を算出した。これらの値を表1に示す。

0053

(旧β粒界上のα相の長さ、粒界α帯の幅)
試験体における1/2H,1/4D位置を含む15mm角の立方体の小片試料を試験体から切り出し、試験体の鍛造方向と半径方向とに平行な面な断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて倍率2000倍で65μm×60μmの視野を10視野観察した。旧β粒の粒界上に形成されたα相の、粒界方向の長さlα(図1参照)を測定し、平均値を算出した。また、粒界の両側において、等軸状(アスペクト比2以下)のα相が形成されている帯域(粒界α帯)の幅wα(図2参照)を測定し、平均値を算出した。等軸状のα相が観察されなかった試験体については、粒界上に形成されたα相の膜厚tα(図1参照)を測定した。これらの値を表1に示す。

0054

〔評価〕
(超音波探傷性)
試験体から45mm角の立方体の試験片を切り出し、水浸探傷法にて超音波探傷検査を行った。プローブ径19.05mm、焦点距離152.4mmの探触子を使用し、周波数5MHzの超音波を送信波とし、水距離(探触子から試験片表面までの距離)は160mmとした。標準化試験片を用いて直径0.62mmの平底穴からの反射強度が80%となるように感度調整を行った後、試験片表面(鍛造方向に垂直な面)における中央の40mm×40mmを検査領域として、探触子を移動走査させながら、鍛造方向(試験体の軸方向)に平行な方向に超音波探傷試験を行って、Cスコープを取得した。

0055

なお、Cスコープとは、水距離を一定として被検査体の表面に沿って探触子を移動走査させ、探触子が検出した探傷深さ範囲における最大ノイズ強度値を表面走査点毎に抽出し、二次元表示した探傷結果である。各試験片において移動走査させた探触子が検出した最大ノイズを表1に示し、50%以下を合格とする。

0056

(機械的特性)
チタン合金鍛造材の機械的特性の評価として、疲労強度の評価および破壊靭性値評価(KIC)を実施した。試験体の1/2H,1/4D位置から、試験体の周(接線)方向が荷重軸と平行になる試験片を切り出し、それぞれの評価用として別々に用意した。

0057

室温にて、ASTM規格のE466に準拠した低サイクル疲労試験を、荷重制御で、最大荷重1000MPa、応力比0、台形波の条件で、試験片が破断するまで行った。破断サイクル数について、試験体No.8を基準(1)として規格化した値を算出し(試験体No.8の破断サイクル数で除する)、表1に示す。0.5以上を疲労強度合格とする。

0058

室温にて、ASTM規格のE399に準拠した破壊靱性試験を実施し、KICを求め、表1に示す。

0059

0060

表1に示すように、試験体No.8は、通常のβ鍛造として、β単相域で十分なひずみを加えて鍛造したために、本発明の範囲を超えて扁平度合い(アスペクト比)の大きな旧β粒の組織となった。その結果、試験体No.8は、疲労強度は高いが、一方で旧β粒の粒界が鍛造方向と垂直に近いために、超音波探傷検査におけるノイズの低減効果が得られなかった。

0061

これに対して、試験体No.1〜5は、本発明に係る製造方法、すなわち鍛造前にβ結晶を所定の範囲の粒径に抑制して成長させ、β単相域で所定範囲のひずみを加えるように鍛造し、直ちに冷却したことにより、旧β粒の粒界上には所定長さのα相が、粒内には針状のα相のみが、それぞれ形成され、さらに旧β粒が適度に扁平に潰れて、旧β粒のアスペクト比および粒界の角度の平均が本発明に係るチタン合金鍛造材の範囲を満足する実施例となった。その結果、試験体No.1〜4は試験体No.8と比較して疲労強度が低いものの、航空機のエンジン部品等として必要な機械的特性を保持し、また、本発明の範囲内で旧β粒のアスペクト比を大きくした試験体No.5は試験体No.8と同等の機械的特性を示し、さらにいずれも優れた超音波探傷性を示した。

0062

試験体No.6は、組織すなわち旧β粒や旧β粒界上のα相について本発明に係るチタン合金鍛造材の範囲を満足する実施例であるため、疲労強度および超音波探傷性は良好であった。ただし、試験体No.6は、鍛造温度が低く、鍛造時にα相が析出していたために、旧β粒内の針状のα相が分断されて、旧β粒界周辺の広い範囲に等軸状のα相が形成され、その結果、破壊靭性値が劣化して、他の実施例(試験体No.1〜5)よりも低い50MPa√m未満となった。

実施例

0063

一方、試験体No.7は、鍛造時のひずみが不足したために、旧β粒が十分に潰れずにアスペクト比が過小となり、その結果、低ノイズであるが疲労強度が低下した。

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