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技術 Ni基超合金の鋳塊の製造方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 山下悠衣水上英夫山中章裕大西洋史
出願日 2012年8月28日 (8年3ヶ月経過) 出願番号 2012-187352
公開日 2014年3月13日 (6年9ヶ月経過) 公開番号 2014-043620
状態 特許登録済
技術分野 鋳型中の金属の処理 エレクトロスラグ鋳造 金属の製造または精製 非鉄合金の製造
主要キーワード 体膨張係数 グラスホフ数 粒状塊 沈降型 鋳物材料 電界エッチング 断面試験 代表長さ
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図面 (4)

課題

フレッケル欠陥偏析等の欠陥の発生を抑制することが可能な、ESR法またはVAR法によるNi基超合金鋳塊の製造方法を提供する。

解決手段

質量%で、Ni:45〜60%、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ti:5%以下、NbおよびTa:合計で10%以下、ならびにAl:0.2〜5%を含有し、さらにBi:10〜100質量ppmを含有するNi基超合金の鋳塊1をESR法またはVAR法によって製造する方法であって、母材中にBiを含有しない消耗電極2を用い、前記消耗電極2を溶解する際にBiを添加することを特徴とするNi基超合金の鋳塊1の製造方法。

概要

背景

Ni基超合金は、優れた耐食性および耐熱性を有し、高温下においても強度が維持される。これは、母相であるγ相中に、γ′相(Ni3(Al,Ti))およびγ″相(Ni3Nb)を整合析出させることによる析出強化や、Cr、Mo等の元素の添加による固溶強化により得られる特徴である。そのため、この超合金は、航空機用エンジンガスタービン油井機器等の、700℃を超える高温環境や過酷な腐食環境において使用可能な素材として注目を集めている。

さらに、この種の合金は、上記のような安全性が要求される用途に適用されるため、その鋳塊に要求される品質のレベル厳格化しており、併せて製品の大型化に伴って鋳塊の大型化も要求されている。

しかし、Ni基超合金は、強化相析出を目的としてNbやMo等の合金元素を多量に含有しているため、合金元素の含有率が低い合金と比較してマクロ偏析が生じやすく、鋳塊の大型化が困難であるとされている。

そのため、Ni基超合金の鋳塊は、マクロ偏析が生じにくい再溶解プロセスである、エレクトロスラグ溶解法ESR(Electro−Slag Remelting)法))や真空アーク再溶解法(VAR(Vacuum Arc Remelting)法)またはこれらの方法の併用により製造される。

これらの再溶解プロセスによって鋳塊を製造する場合、凝固して形成された柱状の鋳塊の上部に溶湯プールが存在し、そのプールの底部から溶湯が凝固し、その一方でプールの上方から溶湯が補充され、鋳塊の形成が進行する。

このプロセスではマクロ偏析は生じにくいものの、冷却条件合金組成、鋳塊の形状等の条件によってフレッケル欠陥と呼ばれる偏析に起因する欠陥が生じることがある。

フレッケル欠陥は、後工程で鋳塊に熱処理を施しても除去することが困難であり、鋳塊の内部に偏析として残存する。そのため、この鋳塊から製造された製品の品質低下の原因となり、要求される品質に対応できないという大きな問題となる。

図1は、ESR法によって得られた一般的な鋳塊の縦断面図である。ESR法では、水冷銅モールドを用いて鋳塊が製造される。そのため、鋳塊1には、表面から内部に向かってデンドライト11が成長する。また、鋳塊1の内部には、製造時の溶湯のプールの深さにもよるが、プールの曲率が大きくデンドライトアームの間隔が広がりやすい鋳塊のR/2近傍にフレッケル欠陥12が発生しやすい。さらに、鋳塊が大型である場合には、重元素の含有率が高い場合等にはR/2に加え、鋳片の表面寄りにもフレッケル欠陥が発生しやすい。ここで「R/2」とは、半径Rの円柱形状の鋳塊の中心軸からの距離がR/2の位置をいう(以下同様)。

フレッケル欠陥とは、Nb、Mo、W、その他の合金元素が濃化して生じる偏析であり、ストリーク状に発達したマクロ偏析の一種である。また、フレッケル欠陥は、普通造塊法(鋳型に溶湯を流し込んで鋳造する方法)で製造した鋳塊に見られるゴースト偏析と同様の機構で発生し、チャンネル型偏析の一種である。

ここで、フレッケル欠陥の発生機構は以下のように説明できる。

鋳塊の製造時において合金の固液界面において凝固が進行する際に、溶質再分配が行われ、含有する合金元素により、デンドライトアームの間にAl、Ti、Si等の軽元素、またはNb、Mo、W等の重元素が濃化(凝集)した金属の液塊ミクロ偏析)が溶湯のバルク(母材)中に発生する。

軽元素が凝集したミクロ偏析は、バルクと比較して密度が低いため、浮力により浮上する。反対に、重元素が凝集したミクロ偏析は、バルクと比較して密度が高いため、重力により沈降する。

これらの、ミクロ偏析は、発生当初には樹枝状に形成されたデンドライトアームの間で静止しているものの、その後浮力または重力によりわずかに移動し、別のミクロ偏析と合体(凝集)することでマクロ的な偏析の集合体に成長して体積を増す。このようにして生じた大きな偏析が凝固の進行とともに凍結され、偏析線となって鋳塊内部に残ったものが、フレッケル欠陥である。

フレッケル欠陥は、その発生機構上、溶湯中の軽元素または重元素の含有率が高いほど発生しやすい。また、凝固組織であるデンドライト組織が粗い場合には、最初に発生する個々のミクロ偏析も大きく、かつミクロ偏析が移動しやすいため、容易に凝集して体積が大きくなりやすく、フレッケル欠陥が粗大化しやすい。

上述の通り、Ni基超合金の鋳塊に要求される品質のレベルは厳格化しており、欠陥のない高い品質が要求されている。この要求に応えるには、フレッケル欠陥を鋳塊の鋳造段階で低減する必要がある。

フレッケル欠陥は、その発生機構から考えると、デンドライト組織を微細化することで発生を抑制可能であると考えられる。デンドライト組織の微細化は、鋳造時の冷却速度を大きくすることにより達成できることが知られている。冷却速度を大きくする方法としては、例えば鋳塊の径を小さくする方法が挙げられるが、その場合には製品のサイズが制限される等の問題がある。

特許文献1には、鋳造時の冷却速度を大きくすることを目的とし、冷却ガスとして熱伝導性に優れるHeガスを鋳塊の下部から供給しながらESR法を行う方法が記載されている。しかし、鋳塊が大きい場合には、冷却ガスを熱伝導性に優れたものとする効果は鋳塊の表層部近傍でしか得られないため、フレッケル欠陥が発生しやすい鋳塊のR/2近傍の冷却速度を大きく変化させることはできない。そのため、同文献に記載された方法では、フレッケル欠陥を抑制する効果は小さいと考えられる。

特許文献2には、Ni基超合金の鋳塊の製造時にストリーク状の偏析の発生を軽減させる方法として、Coを添加することにより、Niとの密度差が大きいWの分配係数を1に近づけ、溶湯のバルクと合金元素が濃化したミクロ偏析との密度差を小さくする方法が記載されている。この方法は、Wを含有するNi基超合金におけるストリーク状の偏析の抑制に有効であることが実施例に示されているものの、記載鋳物材料を変えた場合には、改めて合金設計を行わなければならず、さらに機械的特性の評価を改めて行わなければならないという問題がある。

特許文献3には、フレッケル欠陥のないNi基超合金の鋳塊をVAR法またはESR法で製造する方法として、溶湯のプールの形状を固液界面の傾斜が緩やかとなるように制御する方法が記載されている。一般的に、鋳型と鋳塊のデンドライト成長方向の角度との関係から、プールの側面を鋳型にできるだけ平行にする必要があること、およびプールが浅いほどフレッケル欠陥が発生しにくいことが知られている。しかし、これらの条件を実現するには溶解速度を遅くする必要がある。溶解速度を遅くすると、スラグ殻の厚肉化や不均一化等により、鋳肌劣化や、凝固組織の粗大化による鋳塊品質の劣化が生じるという問題が生じる可能性があり、さらに生産量の低下という問題も生じる。

また、本発明者らは、特許文献4において、普通造塊法で鋼塊を鋳造する際にゴースト偏析の発生を抑制するのに非常に有効な方法として、微量のBiを添加することにより、デンドライトアームの間隔を狭くし、偏析発生の原因となるミクロ偏析の流動を抑制する方法を提案した。しかし、この方法は、普通造塊法により鋼塊を鋳造する際に適用されるものであり、ESR法やVAR法による鋳造方法に適用した場合には、アーク加熱を用いるため局部的な高温領域が生じ、Biの歩留まりが悪く、同様の効果が得られないと考えられる。

ところで、特許文献5には、Pbに替わる元素としてBiを含有する快削鋼の製造方法が記載されている。同文献には、Biを5〜70質量%含有する合金のワイヤーまたは粒状塊を、鋳造の際の溶鋼注入流に添加することが記載されており、特にワイヤーの場合にBiの歩留まりが良好であることが記載されている。しかし、同文献に記載の方法も、前記特許文献4に記載の方法と同様に普通造塊法により鋼塊を鋳造する際に適用されるものであり、ESR法やVAR法による鋳造方法に適用した場合には、同様の効果が得られないと考えられる。

概要

フレッケル欠陥や偏析等の欠陥の発生を抑制することが可能な、ESR法またはVAR法によるNi基超合金の鋳塊の製造方法を提供する。質量%で、Ni:45〜60%、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ti:5%以下、NbおよびTa:合計で10%以下、ならびにAl:0.2〜5%を含有し、さらにBi:10〜100質量ppmを含有するNi基超合金の鋳塊1をESR法またはVAR法によって製造する方法であって、母材中にBiを含有しない消耗電極2を用い、前記消耗電極2を溶解する際にBiを添加することを特徴とするNi基超合金の鋳塊1の製造方法。

目的

本発明は、この問題に鑑みてなされたものであり、フレッケル欠陥や偏析等の欠陥の発生を抑制し、品質の優れた大型の鋳塊を得ることが可能な、ESR法またはVAR法によるNi基超合金の鋳塊の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、Ni:45〜60%、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ti:5%以下、NbおよびTa:合計で10%以下、ならびにAl:0.2〜5%を含有し、さらにBi:10〜100質量ppmを含有するNi基超合金鋳塊ESR法またはVAR法によって製造する方法であって、母材中にBiを含有しない消耗電極を用い、前記消耗電極を溶解する際にBiを添加することを特徴とするNi基超合金の鋳塊の製造方法。

請求項2

前記消耗電極の母材の側面にBiを含有するワイヤー溶接し、この消耗電極を用いることを特徴とする請求項1に記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

請求項3

前記ワイヤーがNi−Bi合金であることを特徴とする請求項2に記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

請求項4

前記ワイヤーが鉄で被覆されていることを特徴とする請求項2または3に記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

請求項5

鋳塊のBiの含有量は、Biの添加量の40%以上とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、Ni基超合金鋳塊の製造方法に関し、特に、内部品質の均一な鋳塊の製造方法に関する。

背景技術

0002

Ni基超合金は、優れた耐食性および耐熱性を有し、高温下においても強度が維持される。これは、母相であるγ相中に、γ′相(Ni3(Al,Ti))およびγ″相(Ni3Nb)を整合析出させることによる析出強化や、Cr、Mo等の元素の添加による固溶強化により得られる特徴である。そのため、この超合金は、航空機用エンジンガスタービン油井機器等の、700℃を超える高温環境や過酷な腐食環境において使用可能な素材として注目を集めている。

0003

さらに、この種の合金は、上記のような安全性が要求される用途に適用されるため、その鋳塊に要求される品質のレベル厳格化しており、併せて製品の大型化に伴って鋳塊の大型化も要求されている。

0004

しかし、Ni基超合金は、強化相析出を目的としてNbやMo等の合金元素を多量に含有しているため、合金元素の含有率が低い合金と比較してマクロ偏析が生じやすく、鋳塊の大型化が困難であるとされている。

0005

そのため、Ni基超合金の鋳塊は、マクロ偏析が生じにくい再溶解プロセスである、エレクトロスラグ溶解法ESR(Electro−Slag Remelting)法))や真空アーク再溶解法(VAR(Vacuum Arc Remelting)法)またはこれらの方法の併用により製造される。

0006

これらの再溶解プロセスによって鋳塊を製造する場合、凝固して形成された柱状の鋳塊の上部に溶湯プールが存在し、そのプールの底部から溶湯が凝固し、その一方でプールの上方から溶湯が補充され、鋳塊の形成が進行する。

0007

このプロセスではマクロ偏析は生じにくいものの、冷却条件合金組成、鋳塊の形状等の条件によってフレッケル欠陥と呼ばれる偏析に起因する欠陥が生じることがある。

0008

フレッケル欠陥は、後工程で鋳塊に熱処理を施しても除去することが困難であり、鋳塊の内部に偏析として残存する。そのため、この鋳塊から製造された製品の品質低下の原因となり、要求される品質に対応できないという大きな問題となる。

0009

図1は、ESR法によって得られた一般的な鋳塊の縦断面図である。ESR法では、水冷銅モールドを用いて鋳塊が製造される。そのため、鋳塊1には、表面から内部に向かってデンドライト11が成長する。また、鋳塊1の内部には、製造時の溶湯のプールの深さにもよるが、プールの曲率が大きくデンドライトアームの間隔が広がりやすい鋳塊のR/2近傍にフレッケル欠陥12が発生しやすい。さらに、鋳塊が大型である場合には、重元素の含有率が高い場合等にはR/2に加え、鋳片の表面寄りにもフレッケル欠陥が発生しやすい。ここで「R/2」とは、半径Rの円柱形状の鋳塊の中心軸からの距離がR/2の位置をいう(以下同様)。

0010

フレッケル欠陥とは、Nb、Mo、W、その他の合金元素が濃化して生じる偏析であり、ストリーク状に発達したマクロ偏析の一種である。また、フレッケル欠陥は、普通造塊法(鋳型に溶湯を流し込んで鋳造する方法)で製造した鋳塊に見られるゴースト偏析と同様の機構で発生し、チャンネル型偏析の一種である。

0011

ここで、フレッケル欠陥の発生機構は以下のように説明できる。

0012

鋳塊の製造時において合金の固液界面において凝固が進行する際に、溶質再分配が行われ、含有する合金元素により、デンドライトアームの間にAl、Ti、Si等の軽元素、またはNb、Mo、W等の重元素が濃化(凝集)した金属の液塊ミクロ偏析)が溶湯のバルク(母材)中に発生する。

0013

軽元素が凝集したミクロ偏析は、バルクと比較して密度が低いため、浮力により浮上する。反対に、重元素が凝集したミクロ偏析は、バルクと比較して密度が高いため、重力により沈降する。

0014

これらの、ミクロ偏析は、発生当初には樹枝状に形成されたデンドライトアームの間で静止しているものの、その後浮力または重力によりわずかに移動し、別のミクロ偏析と合体(凝集)することでマクロ的な偏析の集合体に成長して体積を増す。このようにして生じた大きな偏析が凝固の進行とともに凍結され、偏析線となって鋳塊内部に残ったものが、フレッケル欠陥である。

0015

フレッケル欠陥は、その発生機構上、溶湯中の軽元素または重元素の含有率が高いほど発生しやすい。また、凝固組織であるデンドライト組織が粗い場合には、最初に発生する個々のミクロ偏析も大きく、かつミクロ偏析が移動しやすいため、容易に凝集して体積が大きくなりやすく、フレッケル欠陥が粗大化しやすい。

0016

上述の通り、Ni基超合金の鋳塊に要求される品質のレベルは厳格化しており、欠陥のない高い品質が要求されている。この要求に応えるには、フレッケル欠陥を鋳塊の鋳造段階で低減する必要がある。

0017

フレッケル欠陥は、その発生機構から考えると、デンドライト組織を微細化することで発生を抑制可能であると考えられる。デンドライト組織の微細化は、鋳造時の冷却速度を大きくすることにより達成できることが知られている。冷却速度を大きくする方法としては、例えば鋳塊の径を小さくする方法が挙げられるが、その場合には製品のサイズが制限される等の問題がある。

0018

特許文献1には、鋳造時の冷却速度を大きくすることを目的とし、冷却ガスとして熱伝導性に優れるHeガスを鋳塊の下部から供給しながらESR法を行う方法が記載されている。しかし、鋳塊が大きい場合には、冷却ガスを熱伝導性に優れたものとする効果は鋳塊の表層部近傍でしか得られないため、フレッケル欠陥が発生しやすい鋳塊のR/2近傍の冷却速度を大きく変化させることはできない。そのため、同文献に記載された方法では、フレッケル欠陥を抑制する効果は小さいと考えられる。

0019

特許文献2には、Ni基超合金の鋳塊の製造時にストリーク状の偏析の発生を軽減させる方法として、Coを添加することにより、Niとの密度差が大きいWの分配係数を1に近づけ、溶湯のバルクと合金元素が濃化したミクロ偏析との密度差を小さくする方法が記載されている。この方法は、Wを含有するNi基超合金におけるストリーク状の偏析の抑制に有効であることが実施例に示されているものの、記載鋳物材料を変えた場合には、改めて合金設計を行わなければならず、さらに機械的特性の評価を改めて行わなければならないという問題がある。

0020

特許文献3には、フレッケル欠陥のないNi基超合金の鋳塊をVAR法またはESR法で製造する方法として、溶湯のプールの形状を固液界面の傾斜が緩やかとなるように制御する方法が記載されている。一般的に、鋳型と鋳塊のデンドライト成長方向の角度との関係から、プールの側面を鋳型にできるだけ平行にする必要があること、およびプールが浅いほどフレッケル欠陥が発生しにくいことが知られている。しかし、これらの条件を実現するには溶解速度を遅くする必要がある。溶解速度を遅くすると、スラグ殻の厚肉化や不均一化等により、鋳肌劣化や、凝固組織の粗大化による鋳塊品質の劣化が生じるという問題が生じる可能性があり、さらに生産量の低下という問題も生じる。

0021

また、本発明者らは、特許文献4において、普通造塊法で鋼塊を鋳造する際にゴースト偏析の発生を抑制するのに非常に有効な方法として、微量のBiを添加することにより、デンドライトアームの間隔を狭くし、偏析発生の原因となるミクロ偏析の流動を抑制する方法を提案した。しかし、この方法は、普通造塊法により鋼塊を鋳造する際に適用されるものであり、ESR法やVAR法による鋳造方法に適用した場合には、アーク加熱を用いるため局部的な高温領域が生じ、Biの歩留まりが悪く、同様の効果が得られないと考えられる。

0022

ところで、特許文献5には、Pbに替わる元素としてBiを含有する快削鋼の製造方法が記載されている。同文献には、Biを5〜70質量%含有する合金のワイヤーまたは粒状塊を、鋳造の際の溶鋼注入流に添加することが記載されており、特にワイヤーの場合にBiの歩留まりが良好であることが記載されている。しかし、同文献に記載の方法も、前記特許文献4に記載の方法と同様に普通造塊法により鋼塊を鋳造する際に適用されるものであり、ESR法やVAR法による鋳造方法に適用した場合には、同様の効果が得られないと考えられる。

先行技術

0023

特開平9−29420号公報
国際公開第2009/102028号
特開2003−164946号公報
特開2012−35286号公報
特開2002−363683号公報

発明が解決しようとする課題

0024

上述のように、Ni基超合金の大型の鋳塊をESR法またはVAR法によって製造する場合において、特許文献1〜5に記載の方法を適用してフレッケル欠陥の発生を抑制するのは困難である。

0025

本発明は、この問題に鑑みてなされたものであり、フレッケル欠陥や偏析等の欠陥の発生を抑制し、品質の優れた大型の鋳塊を得ることが可能な、ESR法またはVAR法によるNi基超合金の鋳塊の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0026

本発明者らは、ESR法またはVAR法によって製造されたNi基超合金の鋳塊におけるフレッケル欠陥の発生を抑制する方法について検討した結果、Biを所定量含有させることが効果的であることを知見した。これは、鋼塊の場合と同様に、デンドライト組織が微細化され、ミクロ偏析の移動が阻害されるからである。

0027

さらに、Biを添加する工程について検討した結果、ESR法またはVAR法に用いる消耗電極を鋳造する際ではなく、ESR法またはVAR法において消耗電極を溶解して鋳塊を鋳造する際に添加することにより、Biを歩留まりよく添加することが可能であることを知見した。これらの検討内容については後述する。

0028

本発明は、これらの知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、下記の(1)〜(5)に示すNi基超合金の鋳塊の製造方法にある。

0029

(1)質量%で、Ni:45〜60%、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ti:5%以下、NbおよびTa:合計で10%以下、ならびにAl:0.2〜5%を含有し、さらにBi:10〜100質量ppmを含有するNi基超合金の鋳塊をESR法またはVAR法によって製造する方法であって、母材中にBiを含有しない消耗電極を用い、前記消耗電極を溶解する際にBiを添加することを特徴とするNi基超合金の鋳塊の製造方法。

0030

(2)前記消耗電極の母材の側面にBiを含有するワイヤーを溶接し、この消耗電極を用いることを特徴とする前記(1)に記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

0031

(3)前記ワイヤーがNi−Bi合金であることを特徴とする前記(2)に記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

0032

(4)前記ワイヤーが鉄で被覆されていることを特徴とする前記(2)または(3)に記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

0033

(5)鋳塊のBiの含有量は、Biの添加量の40%以上とすることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のNi基超合金の鋳塊の製造方法。

0034

以下の説明では、「金属」とは、純金属および合金のいずれをも含む。Ni基超合金およびNi−Bi合金の成分組成についての「質量%」および「質量ppm」を、それぞれ単に「%」および「ppm」とも表示する。

発明の効果

0035

本発明のNi基超合金の鋳塊の製造方法によれば、フレッケル欠陥や偏析等の欠陥の少ない大型の鋳塊を得ることができる。この鋳塊を素材として製造された製品は、高温環境や過酷な腐食環境において安定して使用することができる。また、Biを歩留まりよく添加することができるため、確実に欠陥を低減することができる。

図面の簡単な説明

0036

ESR法によって得られた一般的な鋳塊の縦断面図である。
本発明のNi基超合金の鋳塊の製造方法において、鋳塊をESR法によって鋳造する際の状態の一例を示す模式図である。
Bi含有率と1次デンドライトアーム間隔との関係を示す図である。

0037

本発明のNi基超合金の鋳塊の製造方法は、Ni:45〜60%、Cr:15〜30%、Mo:1〜10%、Ti:5%以下、NbおよびTa:合計で10%以下、ならびにAl:0.2〜5%を含有し、さらにBi:10〜100ppmを含有するNi基超合金の鋳塊をESR法またはVAR法によって製造する方法であって、母材中にBiを含有しない消耗電極を用い、前記消耗電極を溶解する際にBiを添加することを特徴とする。

0038

以下に、本発明のNi基超合金の鋳塊の製造方法を上述の通り規定した理由および本発明の好ましい態様について説明する。

0039

1.ESR法による鋳塊の製造
図2は、本発明のNi基超合金の鋳塊の製造方法において、鋳塊をESR法によって鋳造する際の状態の一例を示す模式図である。同図に示すように、ESR法では、鋳塊1の材料である円柱状の消耗電極2は、その上端に溶接によってスタブ4が連結され、図示しない昇降機構によるスタブ4の下降に伴って下降する。その際、チャンバー5内の鋳型(水冷銅モールド)6内には溶融スラグ7が保持されており、消耗電極2を溶融スラグ7に浸漬させた状態で通電を行うことにより、溶融スラグ7に電流が流れ溶融スラグ7が発熱する。消耗電極2は、その溶融スラグ7のジュール熱によって下端から順次溶解する。溶解した消耗電極2は、液滴となって溶融スラグ7中を沈降し、鋳型6内で溶湯3のプールとなって貯溜されつつ積層凝固していく。こうして消耗電極2が上端まで順次溶解し、その溶湯3が鋳型6内で順次凝固することにより、Ni基超合金の鋳塊1が得られる。VAR法によっても、以上説明したESR法とほぼ同様の過程で消耗電極からNi基超合金の鋳塊を得ることができる。

0040

2.Biを鋳塊に含有させる方法
本発明では、ESR法またはVAR法によって得られる鋳塊1にBiを所定量含有させるため、ESR法またはVAR法による鋳造の過程でプールの溶湯3にBiを含有させる必要がある。

0041

その方法として、(1)消耗電極2にBiを含有させておく方法、(2)ESR法またはVAR法により消耗電極を溶解する際にBiを添加する方法、の2つの方法が考えられる。

0042

(1)の消耗電極2にBiを含有させておく方法としては、ESR法またはVAR法による鋳造の前処理段階すなわち真空誘導溶解法(VIM(Vacuum Induction Melting)法)または普通造塊法によって消耗電極2を作製する際に、溶湯にBiを添加する方法が挙げられる。しかし、この方法では、消耗電極2を作製する際とESR法またはVAR法による鋳造段階との2回Biが溶湯から揮発し、さらにBiは融点が低く溶湯から揮発しやすいため、Biの歩留まりが悪く、効率が低いという問題がある。そのため、この方法で得られる鋳塊1において所望のBi含有率とするには、消耗電極2の作製時に2回分の揮発量を見越して溶湯にBiを添加しなければならない。また、後述する実施例に示すように、Biを含有する消耗電極を用いてESR法またはVAR法によって鋳塊を製造した場合、Biの歩留まりが非常に悪いという問題もある。

0043

(2)のESR法またはVAR法により消耗電極を溶解する際にBiを添加する方法では、消耗電極2にBiを添加していない場合には、Biが溶湯から揮発する機会は1回だけとなる。そのため、(2)の方法は(1)の方法と比較して、Biの歩留まりが良好である。本発明では、母材にBiを添加しない消耗電極を用い、ESR法またはVAR法により消耗電極を溶解する際にBiを添加することとした。

0044

ESR法またはVAR法により消耗電極を溶解する際にBiを添加する方法としては、(2−1)純Biの顆粒またはBiを含有する合金の顆粒を添加する方法、(2−2)純BiのワイヤーまたはBiを含有する合金のワイヤーを添加する方法が挙げられる。

0045

(2−1)の顆粒を添加する方法では、連続して添加すると溶け残りが生じることや、ブールの溶湯3の上部に滞留して溶湯3に均一に溶解しないことがあり、これらの場合には得られた鋳塊1において不均一な組織を生じるおそれがある。

0046

(2−2)のワイヤーを添加する方法では、ワイヤーの下降速度を消耗電極2の下降速度と合わせることにより、溶湯3のBi含有率を一定とすることができ、均一な組織の鋳塊1を得ることができる。

0047

ワイヤーは、供給装置を設けて溶湯3に繰り出して添加してもよいし、消耗電極2の母材2aの側面に、軸方向に沿って溶接してもよい。前記図2には、複数のワイヤー2bを母材2aの側面に、軸方向に沿って溶接した状態を示す。これ以外に、母材2aに、軸方向に貫通する孔を1個以上設けてその孔にワイヤー2bを通してもよい。

0048

ワイヤー2bを消耗電極2の母材2aに溶接または母材2aに設けた孔に通し、消耗電極2の軸方向すなわち下降方向に配置する場合には、供給装置を新たに設ける必要がなく、またワイヤーの下降速度を調整する必要がない。そのため、鋳型6の周囲に十分な空間がなく、供給装置を設けるのが困難な場合に有利である。

0049

ワイヤー2bは、純BiのワイヤーよりもBiを含有する合金のワイヤーの方が好ましい。溶湯3の温度は、溶融スラグ7との界面の近傍では1600℃以上となるのに対して、純Biは沸点が1564℃である。このため、純Biのワイヤーを添加すると鋳造時にBiが揮発し、溶湯3中にBiを有効にとどめることができない可能性がある。

0050

一方、Biを含有する合金、例えばNiとBiとの合金(以下「Ni−Bi合金」という)は融点(液相線温度)が約1300℃と、純Biの271℃と比べて高く、沸点も同様に純Biより高いと考えられる。そのため、Ni−Bi合金のワイヤーを添加した場合には、鋳造時にBiが揮発しにくいため、溶湯3中にBiを有効にとどめることができ、Biの歩留まりを向上させることができる。Ni−Bi合金では、Biの含有率を、溶湯3中でBiが液相となる20〜70%とすることが好ましい。

0051

さらに、ESR法においては、ワイヤー2bを、高温の溶融スラグ7の層を溶解せずに通過させ、溶湯3にBiを添加する必要がある。そのため、純BiまたはNi−Bi合金のワイヤー2bを鉄で被覆することが好ましい。鉄で被覆したワイヤー2bを、前記図2に示すように消耗電極2の母材2aの側面に溶接した場合、ワイヤー2bが加熱されてもワイヤー2b自体の熱伝導により母材2aへ抜熱されるため、溶融スラグ7中に挿入されてもすぐには溶融せず、また溶融後も溶融スラグ7との比重差により沈降してプールの溶湯3に流入する。そのため、鉄で被覆したワイヤーを用いることにより、鉄で被覆していないワイヤーを用いた場合よりもBiの歩留まりを向上させることができ、Biを安定して添加することができる。

0052

以上のBiを鋳塊に含有させる方法は、電子ビーム溶解炉を用いてNi基超合金の鋳塊を製造する場合にも適用することができる。

0053

3.Ni基超合金の成分組成およびその限定理
Ni:45〜60%
Niは、母相であるγ相(オーステナイト)を安定化し、Ni基超合金の耐熱性および高温強度を向上させるのに有効な元素であり、Ni基超合金の高強度化に寄与するγ′相およびγ″相をγ相から析出させるのに不可欠な元素である。また、Ni基超合金の機械的特性を劣化させるσ相等の有害な析出物の生成を防止する効果を有する。Ni含有率が45%未満ではγ相が不安定となる可能性がある。また、Niを、60%を超えて含有させてもこれらの効果の向上が小さく、Ni基超合金が高価となるだけである。そのため、Niの含有率は45〜60%とする。

0054

Cr:15〜30%
Crは、Ni基超合金の耐酸化性および高温強度を向上させるのに有効な元素である。Cr含有率が15%未満ではNi基超合金の耐酸化性が劣り、30%を超えると靭性が低くなる。そのため、Cr含有率は15〜30%とする。

0055

Mo:1〜10%
Moは、母相であるγ相に固溶して、Ni基超合金の高温引張特性クリープ特性およびクリープ疲労特性を向上させるのに有効な元素である。また、Cとともに炭化物を形成してNi基超合金の結晶粒の成長を抑制する効果を有する。しかし、Moの含有率が過剰である場合には、Ni基超合金の熱間加工性が低下するとともに、脆化相の析出を招く。これらの理由から有効な範囲として、Mo含有率は1〜10%とする。

0056

Ti:5%以下
Tiは、主として析出強化相であるγ′相に固溶して、Ni基超合金の高温強度を向上させるのに寄与する元素である。また、Cとともに炭化物を形成してNi基超合金の結晶粒の粗大化を抑制する効果を有する。しかし、Tiの含有率が過剰である場合には、脆化相の析出を招く。そのため、Ti含有率は5%以下とする。

0057

NbおよびTa:合計で10%以下
NbおよびTaはともに析出強化元素であり、Ni基超合金の高強度化に寄与するγ″相を析出させるため、必要に応じて含有させる。しかし、NbおよびTaの含有率が過剰である場合には、Laves相、σ相等の金属間化合物相が生成し、好ましくない。そのため、NbおよびTaの含有率は合計で10%以下とする。

0058

Al:0.1〜5%
Alは、Ni基超合金の主要析出強化相であるγ′相を構成し、Ni基超合金の高温強度を向上させるのに有効な元素である。しかし、Alの含有率が0.1%未満では高温強度を向上させる十分な効果を得ることがでない。また、Alの含有率が過剰である場合にはγ′相の結晶粒界への粗大凝集を招き、Ni基超合金の機械的特性が大幅に低下する。これらの理由から有効な範囲として、Al含有率は0.1〜5%とする。

0059

Bi:10〜100ppm
NbおよびMoは重元素であるため、含有率を上記範囲とした場合には、Ni基超合金の鋳塊において沈降型のフレッケル欠陥が発生しやすい。しかし、ESR法またはVAR法で鋳造し、Bi含有率を10ppm以上とすることにより、フレッケル欠陥の発生を抑制することができる。一方、Bi含有率が100ppmを超えると、微小ではあるもののNi基超合金の熱間加工時に脆化する。そのため、Biの含有率は10〜100ppmとする。

0060

上述の成分以外の残部は、Feおよび不純物である。

0061

ESR法またはVAR法での鋳造により、上記組成のNi基超合金の鋳塊は、Biを含有しない場合と比較してデンドライト組織が微細となるため、フレッケル欠陥が完全に抑制され、または偏析が抑制され、高い内部品質を有する。この鋳塊を素材として製造された製品は、高温環境や過酷な腐食環境において安定して使用することができる。

0062

4.Biを含有させることの効果
本発明者らは、ESR法またはVAR法による鋳造の過程で溶湯にBiを添加し、鋳塊にBiを微量(10ppm以上)含有させることにより、デンドライト組織が微細化し、フレッケル欠陥の発生を抑制することが可能であることを、以下の一方向凝固試験により見出した。一方向凝固を採用したのは、冷却速度を任意に設定できるからである。

0063

4−1.試験条件
直径が15mm、高さが50mmの円柱形の鋳塊を普通造塊法により鋳造した。その際、消耗電極が溶解してプールとなった溶湯にBiを添加して、Bi含有率が0ppm、4ppm、11ppm、21ppm、25ppm、32ppmおよび34ppmである鋳塊を作製するとともに、Biを添加せず、Biを含有しない鋳塊を作製した。冷却速度は、実用鋳塊の冷却速度に合わせて5〜15℃/minとした。

0064

得られた鋳塊のそれぞれについて、中心を通る縦断面において軸方向にほぼ平行に延びる約10本の1次デンドライトアームの間隔を測定し、算術平均した値を各鋳塊の1次デンドライトアーム間隔とした。

0065

4−2.試験結果
図3は、Bi含有率と1次デンドライトアーム間隔との関係を示す図である。同図では、1次デンドライトアーム間隔(d)を、Bi含有無しの鋳塊の1次デンドライトアーム間隔(dB)に対する比(d/dB)として縦軸に表示した。同図から、Bi含有率が高いほどNi基超合金の1次デンドライトアーム間隔が狭くなり、デンドライト組織が微細となることがわかる。これは、BiがNi基超合金の固液界面エネルギー下げる効果を有する元素であり、その含有率が微少でも1次デンドライトアーム間隔の微細化に効果を示すことによるものと考えられる。上述のように、Bi含有率は、10ppm以上であればフレッケル偏析の抑制に効果がある。

0066

5.フレッケル欠陥発生の尺度
上述のように、フレッケル欠陥は合金元素が濃化した金属の液塊(ミクロ偏析)がデンドライトアームの間から移動することに起因して形成される。そのため、このミクロ偏析の移動を抑制することでフレッケル欠陥の発生を抑制できる。

0067

本発明者らは、フレッケル欠陥発生の尺度として知られ、濃化液塊の浮力と通過抵抗との関係を示すRa数に着目した。Ra数は、温度場での対流流動無次元数であり、Pr数(Prandtl数:プラントル数)とGr数(Grashof数:グラスホフ数)の積であり、下記(1)式で表される。
Ra=Pr・Gr=gβ(Ts−T∞)L3/να …(1)
ここで、g[m/s2]:重力加速度、β[1/K]:体膨張係数、Ts[K]:物体表面温度、T∞[K]:流体の温度、ν[m2/s]:動粘性係数、α[m2/s]:熱拡散率、L[m]:代表長さである。

0068

Ra数は、物理的には流動抵抗力に対する、流動駆動力である密度差による沈降する力の比と考えられ、上記(1)式に示すように代表長さLの3乗に比例する。フレッケル欠陥の発生の臨界について考える場合、Ra数における代表長さLは、デンドライトアームの間のミクロ偏析の大きさとするべきである。この場合、ミクロ偏析が生成初期にデンドライトアームの間を満たすことから、ミクロ偏析の大きさを1次デンドライトアーム間隔とすることができる。そのため、Ra数は、1次デンドライトアーム間隔の3乗に比例するといえる。

0069

上述のように、デンドライト組織が粗いほどフレッケル欠陥が粗大化しやすいため、Ra数が大きいほどフレッケル欠陥は発生しやすくなると考えられる。Ni基超合金の鋳塊にBiを微量に含有させることによる1次デンドライトアーム間隔の減少そのものが比較的小さくても、Ra数は1次デンドライトアーム間隔の3乗に比例するため、鋳塊にBiを含有させることはRa数の低減に有効であり、フレッケル欠陥の発生の抑制に大変効果的である。

0070

本発明の、Ni基超合金の鋳塊の鋳塊の製造方法の効果を確認するため、以下の試験を行い、その結果を評価した。

0071

1.試験方法
前記図2に示す装置を用い、ESR法により消耗電極を溶解してNi基超合金の鋳塊を作製した。作製条件は表1および以下の通りとした。

0072

消耗電極(母材)
組成:54%Ni−18%Cr−3%Mo−5%Nb−1%Ti(残部はFeおよび不純物)
液相線温度:1336℃
固相線温度:1260℃
直径:430mm
作製した鋳塊
直径:650mm
長さ:1100mm

0073

0074

表1には、Biの添加方法、およびBiの添加率を示した。Biの添加方法は、以下の通りとした。

0075

本発明例1および2ならびに比較例3および4では、直径10mmの純Biからなるワイヤーを、前記図2に示すように、消耗電極の母材の側面に軸方向すなわち消耗電極の下降方向に沿って溶接した。本発明例3〜5では、直径10mmの30%Ni−70%Biからなるワイヤーを厚さ3mmの鉄で被覆したものを、消耗電極の母材の側面に軸方向に沿って溶接した。これにより、本発明例1〜5ならびに比較例3および4では、鋳型内に形成された溶湯のプールにBiを添加した。

0076

比較例1では、Biは添加しなかった。比較例2では、VIM法によって消耗電極を作製する際に溶湯にBiを添加し、ESR法による鋳塊の作製時には、Biを含有する消耗電極を使用した。そのため、比較例2の消耗電極の組成は上記組成に30ppmのBiを加えたものであった。比較例2以外では、消耗電極自体またはその母材にはBiを添加しなかった。

0077

Biの添加率は、消耗電極の母材の側面にワイヤーを溶接した本発明例1〜5ならびに比較例3および4では、母材とワイヤーからなる消耗電極全体におけるBiの割合であり、消耗電極にBiを含有させた比較例2では消耗電極中のBiの含有率である。

0078

表1からわかるように、この試験は、(1)Biの添加率および含有率、(2)Biの添加方法、(3)Biの添加に用いたワイヤー、を異なる条件として行った。本発明例1〜5はいずれも本発明の規定を満足した。比較例1〜4は、いずれも本発明の規定のうち、Bi含有率を満足しなかった。

0079

2.評価項目
評価項目は、作製された鋳塊のBi含有率、Biの歩留まり、1次デンドライトアーム間隔の変化率、Ra/Ra0、およびフレッケル欠陥の発生状況とした。

0080

鋳塊のBi含有率は、上記各条件で作製された鋳塊から採取した切粉試料とし、ガス分析行い測定した値である。Biの歩留まりは、Biの添加量に対するBi含有量の比の値とした。

0081

1次デンドライトアーム間隔の変化率は、上記各条件で作製された鋳塊の1次デンドライトアーム間隔(d)と比較例1の条件で作製された鋳塊の1次デンドライトアーム間隔(d0)を用いて、(d−d0)/d0とした。

0082

1次デンドライトアーム間隔(d、d0)は、鋳塊から採取した縦断面試験片に、下記条件のエッチングを行い、鋳塊のR/2に相当する位置(鋳塊の中心軸から半径方向に100mmの位置)において間隔を複数測定し、その算術平均値とした。縦断面試験片は、鋳塊の表層を含めた幅50mm、長さ120mm、厚さ8mmの大きさとした。測定箇所としてR/2を選択したのは、鋳片の表面よりもフレッケル欠陥が現れやすいからである。
エッチング条件
エッチング液シュウ酸
エッチング方法電界エッチング
液温:室温
エッチング時間:60〜180秒

0083

Ra/Ra0におけるRaは上記各条件で作製された鋳塊についてのRa数であり、Ra0は比較例1の条件で作製された鋳塊のRa数である。

0084

フレッケル欠陥の発生状況は、1次デンドライトアーム間隔の測定に使用した縦断面試験片を目視で観察した。表1では、目視によりフレッケル欠陥の発生が確認されなかったものを○(良)、軽微なフレッケル欠陥の発生が確認されたものを△(可)、粗大なフレッケル欠陥の発生が確認されたものを×(不可)とした。

0085

3.試験結果
表1には、Biの添加方法と併せて、上記評価項目の結果を示す。本発明例1および2ならびに比較例3および4を比較してわかるように、純Biからなるワイヤーを使用してBiを添加した場合には、Biの添加率に関わらずBiの歩留まりは39〜45%と良好であった。また、本発明例3〜5のように鉄で被覆したNi−Bi合金からなるワイヤーを使用した場合には、Biの歩留まりは51〜63%とさらに良好であった。比較例2のようにBiを含有する消耗電極を使用した場合には歩留まりは16%であり、ワイヤーを使用した場合に比べて大きく劣っていた。

0086

1次デンドライトアーム間隔の変化率からわかるように、Bi含有率が高いほど1次デンドライトアーム間隔が狭く、デンドライト組織が微細であった。これは前記図3で示した結果と同様である。

0087

また、Bi含有率が高く、デンドライトアーム間隔が狭いほど、Ra/Ra0の値が著しく小さくなっていた。このことから、Bi含有率が高いほど、フレッケル欠陥の発生の抑制効果が大きいと判断できる。実際にフレッケル欠陥の発生状況は、Bi含有率が2.2%以下であれば評価が×であったのに対し、4.0ppm以上であれば評価が△であり、11.7ppm以上であれば評価が○であった。

実施例

0088

すなわち、Bi含有率は4.0ppmと微少であっても1次デンドライトアーム間隔の微細化にはわずかに効果があり、10ppm以上であればフレッケル欠陥の発生の抑制に十分な効果があるといえる。

0089

本発明のNi基超合金の鋳塊の製造方法によれば、フレッケル欠陥や偏析等の欠陥の少ない大型の鋳塊を得ることができる。この鋳塊を素材として製造された製品は、高温環境や過酷な腐食環境において安定して使用することができる。また、Biを歩留まりよく添加することができるため、確実に欠陥を低減することができる。

0090

1:鋳塊、 2:消耗電極、 2a:母材、 2b:ワイヤー3:溶湯、
4:スタブ、 5:チャンバー、 6:鋳型、7:溶融スラグ、 11:デンドライト、
12:フレッケル欠陥

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