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技術 蓚酸化成処理方法およびステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法

出願人 新日鐵住金株式会社
発明者 宮島慎松本圭司香月太村上浩亮露口聡史
出願日 2012年8月26日 (7年10ヶ月経過) 出願番号 2012-185965
公開日 2014年3月13日 (6年3ヶ月経過) 公開番号 2014-043606
状態 特許登録済
技術分野 金属の化成処理 金属の引抜加工
主要キーワード ショットブラスト材 被膜質量 高耐食ステンレス鋼 高耐食性ステンレス鋼 冷間引抜加工 変化挙動 冷間引抜き加工 化成処理薬剤
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課題

高耐食ステンレス鋼管など、難化成材料に対して蓚酸塩被膜を形成させる蓚酸化成処理方法、およびこの蓚酸塩被膜の上に二次潤滑処理を施し、焼付き疵などを生じさせずに抽伸するステンレス鋼管冷間引抜き加工方法を提供する。

解決手段

(1)ステンレス鋼管の冷間引抜き加工用潤滑下地処理として施す蓚酸化成処理方法であって、蓚酸化成処理溶液に、促進剤として亜硫酸塩を添加して化成処理を行う。処理の対象が、Cr含有量15%を超える、二相ステンレス鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼からなる鋼管の場合、特に効果が大きい。(2)前記の蓚酸化成処理方法で蓚酸塩被膜を形成させ、さらにその上に二次潤滑処理を施せば、焼付きを生じさせずに、冷間加工を行うことができる。

概要

背景

ステンレス鋼管、特にCrの含有量が15%を超えるような高耐食ステンレス鋼管の冷間加工、例えば冷間抽伸においては、まず、脱スケール工程で、熱間圧延工程で発生したミルスケール熱処理の際に発生したスケールなどの酸化皮膜が弗硝酸や弗硫酸を用いた酸洗により除去される。この処理が施された材料は、酸洗材と称される。続いて、酸洗材の表面に蓚酸化成処理を施して蓚酸塩化成被膜を形成させ、さらに石けん等による二次潤滑処理を施した後、冷間抽伸が行われる。

蓚酸化成処理は、主剤として蓚酸を含む溶液を入れた浴槽鋼管を入れ、温度約80〜90℃で数時間程度浸漬させて表面に蓚酸塩被膜を形成させる処理である。蓚酸化成処理溶液には、蓚酸の他、一般に、被膜形成を助長するための数種類薬剤が含まれている。例えば、日本パーカライジング社製のフェルボンド溶剤であれば、不動態被膜を除去するエッチング剤としてのフッ化ナトリウム、蓚酸塩被膜を酸化させる酸化剤としての硝酸ナトリウム、さらに反応の促進剤としてのチオ硫酸ナトリウムが含まれている。

しかし、CrとNiの含有量が高い高耐食性ステンレス鋼や高Ni合金の酸洗材では、その耐食性が高いが故に化成被膜が形成されにくく、その上層潤滑剤として塩素系潤滑油や石けん被膜の形成が十分でなくなり、抽伸時に焼付き疵を生じることがある。この問題は、特に使用する化成処理溶液が劣化した場合に顕著に現れる。

この問題を解決するために、例えば、特許文献1には、蓚酸塩処理液中のエッチング剤として硫酸ヒドロキシルアンモニウムを使用したステンレス鋼潤滑処理方法が記載されており、高耐食性ステンレス鋼(Cr20%以上、Ni20%以上)であっても蓚酸塩被膜の形成が可能であるとしている。しかし、硫酸ヒドロキシルアンモニウムは強力な還元剤であり、酸化剤と接触または混合すると非常に激しく反応し爆発の危険があることから、取り扱いが難しく、実用に適していない。また、このような技術をもってしてもCr25%以上を含むような高耐食性鋼では蓚酸塩被膜が形成されない。

特許文献2には、スケールなどの酸化皮膜が付いたままの材料(黒皮材と称する)に鉄ショットブラスト処理を行うことによって、脱スケールと同時に鉄の微細粉末を付着させ、その後に蓚酸塩被膜を形成させる方法が記載されている。表面電位が卑で反応しやすい微粉鉄を表面に付着させることにより被処理材電位を卑側へ移行させ蓚酸塩処理液との反応性を向上させる方法である。しかし、この方法では脱スケールと鉄の微細粉末付着が同時に行われるため、不良率の低減を目的とする冷間抽伸前の疵検査において疵が粉末に隠れてしまうために検出できない。

また、特許文献3、特許文献4には、脱スケール工程を省略して黒皮材のまま冷間抽伸する方法が開示されている。ミルスケールの付着量または厚さ等を規定することにより同工程の省略を可能としたものである。しかし、冷間抽伸前の疵検査において、黒皮材のままでは疵が黒皮に隠れてしまい検出できないため、脱スケール工程は必須である。

概要

高耐食ステンレス鋼管など、難化成材料に対して蓚酸塩被膜を形成させる蓚酸化成処理方法、およびこの蓚酸塩被膜の上に二次潤滑処理を施し、焼付き疵などを生じさせずに抽伸するステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法を提供する。(1)ステンレス鋼管の冷間引抜き加工用潤滑下地処理として施す蓚酸化成処理方法であって、蓚酸化成処理溶液に、促進剤として亜硫酸塩を添加して化成処理を行う。処理の対象が、Cr含有量15%を超える、二相ステンレス鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼からなる鋼管の場合、特に効果が大きい。(2)前記の蓚酸化成処理方法で蓚酸塩被膜を形成させ、さらにその上に二次潤滑処理を施せば、焼付きを生じさせずに、冷間加工を行うことができる。なし

目的

しかし、この方法では脱スケールと鉄の微細粉末付着が同時に行われるため、不良率の低減を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
2件

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請求項1

ステンレス鋼管冷間引抜き加工潤滑下地処理として施す蓚酸化成処理方法であって、蓚酸化成処理溶液に、促進剤として亜硫酸塩を添加して化成処理を行うことを特徴とする蓚酸化成処理方法。

請求項2

前記蓚酸化成処理溶液に促進剤を添加した後、7時間以内に被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入し、または被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入した後に同処理溶液に促進剤を添加することを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼管表面の蓚酸化成処理方法。

請求項3

前記亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス鋼管表面の蓚酸化成処理方法。

請求項4

前記ステンレス鋼管の材質Cr含有量15%を超える、二相ステンレス鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼である請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼管表面の蓚酸化成処理方法。

請求項5

請求項1〜4のいずれかに記載の方法で蓚酸塩被膜を形成させ、さらにその上に潤滑層を形成して冷間引抜加工を実施することを特徴とするステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法。

技術分野

0001

本発明は、化成処理が施されにくい各種のステンレス鋼管の表面に蓚酸塩被膜を生成させる蓚酸化成処理方法、およびこの蓚酸塩被膜の上に二次潤滑処理を施して冷間抽伸するステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法に関する。

背景技術

0002

ステンレス鋼管、特にCrの含有量が15%を超えるような高耐食ステンレス鋼管の冷間加工、例えば冷間抽伸においては、まず、脱スケール工程で、熱間圧延工程で発生したミルスケール熱処理の際に発生したスケールなどの酸化皮膜が弗硝酸や弗硫酸を用いた酸洗により除去される。この処理が施された材料は、酸洗材と称される。続いて、酸洗材の表面に蓚酸化成処理を施して蓚酸塩化成被膜を形成させ、さらに石けん等による二次潤滑処理を施した後、冷間抽伸が行われる。

0003

蓚酸化成処理は、主剤として蓚酸を含む溶液を入れた浴槽鋼管を入れ、温度約80〜90℃で数時間程度浸漬させて表面に蓚酸塩被膜を形成させる処理である。蓚酸化成処理溶液には、蓚酸の他、一般に、被膜形成を助長するための数種類薬剤が含まれている。例えば、日本パーカライジング社製のフェルボンド溶剤であれば、不動態被膜を除去するエッチング剤としてのフッ化ナトリウム、蓚酸塩被膜を酸化させる酸化剤としての硝酸ナトリウム、さらに反応の促進剤としてのチオ硫酸ナトリウムが含まれている。

0004

しかし、CrとNiの含有量が高い高耐食性ステンレス鋼や高Ni合金の酸洗材では、その耐食性が高いが故に化成被膜が形成されにくく、その上層潤滑剤として塩素系潤滑油や石けん被膜の形成が十分でなくなり、抽伸時に焼付き疵を生じることがある。この問題は、特に使用する化成処理溶液が劣化した場合に顕著に現れる。

0005

この問題を解決するために、例えば、特許文献1には、蓚酸塩処理液中のエッチング剤として硫酸ヒドロキシルアンモニウムを使用したステンレス鋼潤滑処理方法が記載されており、高耐食性ステンレス鋼(Cr20%以上、Ni20%以上)であっても蓚酸塩被膜の形成が可能であるとしている。しかし、硫酸ヒドロキシルアンモニウムは強力な還元剤であり、酸化剤と接触または混合すると非常に激しく反応し爆発の危険があることから、取り扱いが難しく、実用に適していない。また、このような技術をもってしてもCr25%以上を含むような高耐食性鋼では蓚酸塩被膜が形成されない。

0006

特許文献2には、スケールなどの酸化皮膜が付いたままの材料(黒皮材と称する)に鉄ショットブラスト処理を行うことによって、脱スケールと同時に鉄の微細粉末を付着させ、その後に蓚酸塩被膜を形成させる方法が記載されている。表面電位が卑で反応しやすい微粉鉄を表面に付着させることにより被処理材電位を卑側へ移行させ蓚酸塩処理液との反応性を向上させる方法である。しかし、この方法では脱スケールと鉄の微細粉末付着が同時に行われるため、不良率の低減を目的とする冷間抽伸前の疵検査において疵が粉末に隠れてしまうために検出できない。

0007

また、特許文献3、特許文献4には、脱スケール工程を省略して黒皮材のまま冷間抽伸する方法が開示されている。ミルスケールの付着量または厚さ等を規定することにより同工程の省略を可能としたものである。しかし、冷間抽伸前の疵検査において、黒皮材のままでは疵が黒皮に隠れてしまい検出できないため、脱スケール工程は必須である。

先行技術

0008

特公平1−29872号公報
特開平6−220651号公報
特公昭54−10932号公報
特公平4−75086号公報

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、高耐食ステンレス鋼管など、耐食性の高い材料、すなわち難化成材料に対して蓚酸塩被膜を形成させる蓚酸化成処理方法、およびこの蓚酸塩被膜の上に二次潤滑処理を施し、焼付き疵などを生じさせずに抽伸するステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、上記課題を解決するため、検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
(a)ステンレス鋼ではCr酸化物を含む不動態被膜が形成され、含有Cr量が多いほど強固な不動態被膜になる。

0011

(b)蓚酸化成処理溶液中での鋼管の表面電位を計測し、その電位の変化挙動を検討した結果、高合金鋼ではエッチング剤による不動態被膜の除去を行っても、再不動態化されやすいことが判明した。蓚酸塩被膜形成と再不動態化反応は、不動態被膜がエッチングされたのちに競合的に起こる反応であり、再不動態化を抑えることが蓚酸塩被膜形成には重要であることが分かった。

0012

(c)一般に蓚酸化成処理溶液には、主剤、エッチング剤、酸化剤、促進剤が含まれているが、再不動態化の抑制には促進剤が寄与することを見いだした。促進剤が化成処理溶液中の溶存酸素と反応し、再不動態化反応を抑制する。すなわち溶存酸素を除去することが再不動態化の抑制に重要であることが判明した。

0013

(d)従来、促進剤として使用されているチオ硫酸ナトリウムは、二段階の反応により溶存酸素を除去する。すなわち、第一段階の反応で、チオ硫酸イオン硫黄亜硫酸イオンに分解し、第二段階の反応で、亜硫酸イオンが溶液中の溶存酸素と結合し、硫酸イオンが生成する。さらに第一段階の反応において生成する硫黄が被処理材に付着して蓚酸塩被膜の形成を阻害している。

0014

そこで、蓚酸化成処理溶液中の促進剤を、解離して直接亜硫酸イオンを生成する亜硫酸ナトリウムに変更して蓚酸化成処理を行ったところ、前記第一段階の亜硫酸イオンを生成する反応を経ずに直接第二段階の反応を起こさせることによって、より効率的に蓚酸塩被膜を形成させ得ることが判明した。

0015

本発明は、これらの知見に基づいてなされたもので、下記(1)の蓚酸化成処理方法、および下記(2)のステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法を要旨としている。なお、被処理材に含まれる各成分、ならびに、蓚酸化成処理溶液および二次潤滑剤に含まれる各成分の「%」は「質量%」を意味する。

0016

(1)ステンレス鋼管の冷間引抜き加工用潤滑下地処理として施す蓚酸化成処理方法であって、蓚酸化成処理溶液に、促進剤として亜硫酸塩を添加して化成処理を行うことを特徴とする蓚酸化成処理方法。

0017

ここで、「ステンレス鋼管」とは、その材質が、Cr含有量が10.5%を超えるステンレス鋼管、すなわち、オーステナイト系フェライト系またはマルテンサイト系のステンレス鋼の他、二相ステンレス鋼からなる鋼管をいう。

0018

本発明の蓚酸化成処理方法において、前記蓚酸化成処理溶液に促進剤を添加した後、7時間以内に被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入し、または被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入した後に同処理溶液に促進剤を添加することとするのが望ましい。5時間以内に処理することがより望ましい。

0019

本発明の蓚酸化成処理方法において、前記亜硫酸塩が亜硫酸ナトリウムであることが望ましい。

0020

また、本発明の蓚酸化成処理方法において、前記ステンレス鋼管の材質がCr含有量15%を超える、二相ステンレス鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼であれば、本発明は特に有効である。なお、これらのステンレス鋼を、ここでは「高合金鋼」ともいう。

0021

(2)前記本発明の蓚酸化成処理方法(上記の実施形態を含む)で蓚酸塩被膜を形成させ、さらにその上に潤滑層を形成して冷間引抜加工を実施することを特徴とするステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法。

発明の効果

0022

本発明の蓚酸化成処理方法によれば、化成処理が施されにくい高耐食性のステンレス鋼管表面に蓚酸塩被膜を形成させることができる。これにより、蓚酸塩被膜の上に潤滑剤を十分に付着させることが可能となるので、本発明の冷間引抜き加工方法を適用して、ダイスプラグとの焼付きを生じさせずに、高加工度の冷間加工を行うことができる。

0023

本発明の蓚酸化成処理方法は、前記のように、ステンレス鋼管の冷間引抜き加工用潤滑下地処理として施すことを前提としている。ステンレス鋼管の表面には直接形成されにくい潤滑被膜を、化成被膜を中間層として形成させるためである。

0024

本発明の蓚酸化成処理方法の特徴は、蓚酸化成処理溶液に、促進剤として脱酸素剤である亜硫酸塩を添加して化成処理を行うことにある。促進剤として脱酸素剤を添加するのは、前述のように、促進剤が化成処理溶液中の溶存酸素と反応し、これを除去することにより被処理材の再不動態化を抑制して、蓚酸化成処理溶液との反応を促進させるためである。

0025

蓚酸化成処理溶液には、通常、主剤(蓚酸)、エッチング剤、酸化剤および促進剤が含まれているが、本発明の蓚酸化成処理方法では、蓚酸化成処理溶液に含まれる促進剤として特定の薬剤(亜硫酸塩)を使用する。

0026

本発明で使用する蓚酸化成処理溶液としては、促進剤以外は公知の薬剤組成が使用できる。例えば、市販のフェルボンドA溶剤(日本パーカライジング株式会社)に含まれる成分および含有量は以下に示すとおりであるが、ここに示した主剤、エッチング剤および酸化剤に、促進剤として亜硫酸塩を所定量添加すればよい。促進剤としてすでにチオ硫酸ナトリウムが添加されているフェルボンドA溶剤に、亜硫酸塩を追加投入してもよい。これは、フェルボンドA溶剤に限らず、一般的な化成処理薬剤においても同様であり、促進剤として亜硫酸塩が含まれていればよい。
〔フェルボンドA溶剤の成分構成
主剤 :蓚酸41.4〜46.3g/L
エッチング剤:フッ化ナトリウム2.4〜4.9g/L
酸化剤 :硝酸ナトリウム8.5〜9.7g/L
促進剤 :チオ硫酸ナトリウム 1.9g/L

0027

促進剤(亜硫酸塩)の添加量は特に規定しない。フェルボンドA溶剤、その他一般的な化成処理薬剤における添加量を参照するとともに、被処理材の材質(特に、Cr含有量)に応じて適宜定めればよく、通常は、0.2〜5.0g/Lとするのがよい。添加量が0.2g/L未満であるとその効果が十分でない場合があり、5g/Lを超えて添加しても効果が飽和するので、経済的に不利である。

0028

化成処理を行う際の処理溶液の温度、時間についても特に規定しない。従来行われている化成処理の際の温度、時間に準じて行えばよい。処理溶液の温度については、例えばフェルボンドA溶剤に亜硫酸塩を添加した場合であれば、通常、50〜100℃の範囲とすればよい。処理時間を短縮させるためには、80〜90℃とするのが望ましい。この温度条件(80〜90℃)の下では、処理時間を1時間以上とすればよく、2時間以上とするのがより望ましい。

0029

本発明の蓚酸化成処理方法の対象となるステンレス鋼管は、前記のとおり、その材質が、Cr含有量が10.5%を超える、オーステナイト系、フェライト系またはマルテンサイト系のステンレス鋼、またはフェライト相オーステナイト相を持つ二相ステンレス鋼からなる鋼管である。

0030

本発明の蓚酸化成処理方法において、ステンレス鋼管の材質がCr含有量15%を超える、二相ステンレス鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼であれば、本発明は特に有効である。

0031

本発明の蓚酸化成処理方法は、ステンレス鋼管一般に広く適用できるが、特に効果が顕著なステンレス鋼管は、Cr含有量が15%を超える二相ステンレス鋼またはオーステナイト系ステンレス鋼(高合金鋼)からなる鋼管である。例示すれば、25%Cr−35%Niのオーステナイト系ステンレス鋼、25%Cr−50%Niのオーステナイト系ステンレス鋼、25%Cr−7%Niのオーステナイトフェライト二相ステンレス鋼などの鋼管が挙げられる。

0032

これら高合金鋼からなるステンレス鋼管は、特に耐食性に優れており、化成処理が施されにくいが、後述する実施例に示すように、本発明の蓚酸化成処理方法を適用することにより、その表面に蓚酸塩被膜を形成させることができる。

0033

本発明の蓚酸化成処理方法を適用するステンレス鋼管の素管は、周知の方法で製造することができる。例えば、ユジーン・セジュルネ法に代表される熱間押出加工により製造される管、マンネスマン製管法により製造される管などである。また、丸棒素材から、機械加工により中心部に貫通孔を形成して製造された素管でもよい。

0034

前記の素管は、酸洗処理を施した酸洗材、表面にスケールが存在する黒皮材、鉄ショットピーニング表面処理した材料のいずれでもよい。

0035

本発明の蓚酸化成処理方法において、亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウムが好適である。亜硫酸ナトリウムは水に易溶で、強い還元性を有しており、染色助剤食品漂白剤医薬品、その他広い用途をもっている。無色の結晶(粉末)で、取り扱いも容易である。

0036

本発明の蓚酸化成処理方法においては、前記蓚酸化成処理溶液に促進剤を添加した後、7時間以内に被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入し、または被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入した後に同処理溶液に促進剤を添加することとするのが望ましい。

0037

蓚酸化成処理溶液に促進剤を添加した後、7時間以内に被処理材を蓚酸化成処理溶液に投入するのは、促進剤が処理溶液中で徐々に分解するからである。蓚酸化成処理溶液への促進剤の添加から被処理材投入までの時間が7時間以内であれば、促進剤のもつ還元力を比較的高く維持して、被処理材の再不動態化を抑制し、被処理材と蓚酸化成処理溶液との反応を促進させる効果を発現させることができる。前記促進剤の添加から被処理材投入までの時間が5時間以内であればより望ましい。3時間以内であればより一層望ましい。

0038

また、蓚酸化成処理溶液への促進剤の添加を、同処理溶液への被処理材の投入後に行う場合は、時間を考慮する必要はない。促進剤の添加と同時に促進剤が化成処理溶液中の溶存酸素と反応(結合)して被処理材の再不動態化が抑制され、被処理材と蓚酸化成処理溶液との反応が促進されて蓚酸塩被膜が形成される。

0039

本発明の蓚酸化成処理方法によれば、化成処理が施されにくい高耐食性のステンレス鋼の表面に蓚酸塩被膜を形成させることができ、同被膜を中間層(下地)としてその上に潤滑剤を十分に付着させることができる。

0040

本発明のステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法は、前記のとおり、本発明の蓚酸化成処理方法で蓚酸塩被膜を形成させ、さらにその上に潤滑層を形成して冷間引抜加工を実施する加工方法である。

0041

本発明の蓚酸化成処理方法によりステンレス鋼管表面に形成させた蓚酸塩被膜の上に潤滑層を形成する二次潤滑処理は、蓚酸塩被膜上に潤滑剤を塗布する方法、潤滑剤を満たした処理槽に浸漬して潤滑剤を付着させる方法などにより行えばよい。

0042

潤滑剤としては、通常使用されている金属石けん水溶液ステアリン酸ナトリウムを主成分とする水溶液など)や潤滑油(Cl系やS系の極圧添加剤を含む油潤滑剤など)を用いればよい。

0043

本発明のステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法によれば、蓚酸塩被膜を中間層としてその上に二次潤滑処理を施すことができ、焼付き疵を生じさせることなくステンレス鋼管の冷間引抜き加工を行うことができる。

0044

本発明の効果を確認するために、以下の試験を行った。

0045

(実施例1)
オーステナイト系ステンレス鋼(25%Cr−35%Ni)または二相ステンレス鋼(ASTMUNS S32740に規定される25%Cr−7%Ni−3%Mo−N)からなる鋼管を対象とし、本発明の蓚酸化成処理方法を適用して化成処理試験を行い、蓚酸塩被膜の形成状態を評価した。比較のために、化成処理溶液として従来のフェルボンドA溶剤(日本パーカライジング社製)を用いた場合についても同様の評価を行った。

0046

被処理材は、酸洗材、黒皮材、鉄ショットブラスト材のいずれかとした。蓚酸化成処理溶液は、実施例、比較例のいずれにおいても、市販のフェルボンドA溶剤(日本パーカライジング社)をベースとし、実施例では、促進剤として、チオ硫酸ナトリウムに替えて亜硫酸ナトリウム(添加量:1.5g/L)を使用した。比較例では、チオ硫酸ナトリウムを用いた。蓚酸化成処理は、90℃の化成処理溶液に3時間浸漬することにより行った。

0047

実施例において、化成処理溶液への促進剤添加から処理開始(すなわち、化成処理溶液への被処理材の投入)までの時間は、1分、5時間または7時間とした。

0048

化成処理試験の結果を表1に示す。

0049

0050

表1において、「蓚酸塩被膜」の欄は評価結果で、鋼管表面に形成された単位面積当たりの蓚酸塩被膜の質量の大小により評価した。同欄の記号の意味は次のとおりで、◎印、○印または△印であれば、合格とした。
◎:優良被膜質量が20g/m2以上。
○:良。被膜質量が10g/m2以上で、かつ20g/m2未満。
△:可。被膜質量が5g/m2以上で、かつ10g/m2未満。
×:不可。被膜質量が5g/m2未満。

0051

表1に示したように、促進剤としてチオ硫酸ナトリウムを用いた比較例では、蓚酸塩被膜の形成が不十分であった。これに対し、促進剤として亜硫酸ナトリウムを使用した本発明の蓚酸化成処理方法を適用することにより、耐食性の高い難化成材料(酸洗材、黒皮材および鉄ショットブラスト材)に対して蓚酸塩被膜を形成させ得ることが確認できた。

0052

(実施例2)
下記の鋼管(素管)を対象とし、本発明の冷間引抜き加工方法を適用して蓚酸塩被膜を形成させ、さらにその上に二次潤滑処理を施して小型抽伸機による冷間抽伸を行い、冷間加工性を示す抽伸性を評価した。前記蓚酸塩被膜の形成は、実施例1で行った化成処理試験と同じ条件で行った。

0053

試験条件は下記のとおりである。
素管の仕様引抜加工前の素管寸法外径25mm、肉厚1.65mm、長さ1m、
引抜加工前の内外面の粗度Ra0.3μm、
(Ra:JIS B0601−2001に規定される算術平均粗さ)
材質25Cr−35Niのオーステナイト系ステンレス鋼、
および25Cr−6Niの二相ステンレス鋼
引抜加工 :ダイスの材質超硬合金
プラグの材質 超硬合金
引抜き速度2m/min、
加工後の鋼管寸法:外径19.5mm、肉厚1.15mm
二次潤滑:塩素系潤滑油(塩素化パラフィン40%、硫化油脂60%)、
またはステアリン酸ナトリウム被膜(ステアリン酸ナトリウム水溶液に
浸漬後、乾燥して成膜

0054

冷間抽伸の評価は、抽伸後の管の内外表面目視で観察し、焼付きの有無を調べることにより行った。試験結果を表2に示す。

0055

0056

表2において、「抽伸性評価」の欄の記号の意味は次のとおりで、○印であれば、合格とした。
○:良。管の内外面ともに焼付きが認められなかった場合。
×:不可。管の内外面のいずれかまたは両方に焼付きが生じた場合。

実施例

0057

表2に示したように、促進剤としてチオ硫酸ナトリウムを用いた比較例では、蓚酸塩被膜の形成が不十分であったため、二次潤滑処理を十分に行えず、冷間抽伸の際に焼付きが生じた。これに対し、本発明の冷間引抜き加工方法を適用すれば、蓚酸塩被膜を形成させ、その上に二次潤滑処理を施して、焼付きを生じさせずに冷間抽伸できることが確認された。

0058

本発明の蓚酸化成処理方法およびステンレス鋼管の冷間引抜き加工方法によれば、化成処理が施されにくい高耐食性のステンレス鋼に対し蓚酸塩被膜を形成させることができ、その上に十分な潤滑処理を施して、焼付きを生じさせずに冷間引抜き加工を行うことができる。したがって、本発明は、ステンレス鋼管の冷間加工に好適に利用することができる。

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