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技術 被覆アーク溶接棒

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 片野洋平小池貴之北川良彦太田誠川崎浩之
出願日 2012年7月31日 (7年3ヶ月経過) 出願番号 2012-170625
公開日 2014年2月13日 (5年9ヶ月経過) 公開番号 2014-028390
状態 特許登録済
技術分野 溶接用非金属材料(フラックス) 溶接材料およびその製造
主要キーワード 発生アーク バルク組成 耐脱落性 機械性能 原子量比 耐欠陥性 乾燥割れ チタニヤ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2014年2月13日)のものです。
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課題

良好な溶接作業性が得られ、特にビード端部のなじみ性がよく、かつ、良好なビード形状が得られる被覆アーク溶接棒を提供する。

解決手段

鋼心線被覆剤が塗布されている被覆アーク溶接棒であって、被覆剤の被覆率を規定し、被覆剤は被覆剤全質量あたり、酸化チタン原料、SiO2のSi換算量、Al2O3のAl換算量、CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量、C、Mn、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計を所定量含有し、前記酸化チタン原料は、TiO2、Si、Al、Mn、Fe、Mg、Caを所定量とした組成を有し、粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が1≦Al+Si≦10を満足することを特徴とする。

概要

背景

従来、造船建築等の溶接現場では、能率的に作業を行うために、溶接作業性に優れる被覆アーク溶接棒の開発が進められている。例えば、引用文献1、引用文献2に記載のような発明が公開されている。引用文献1には還元イルミナイト中に所定のSiO2を含有することで、溶接作業性を劣化させることなく、耐棒焼け性を向上させる技術が記載されている。また、引用文献2には鋼心線中に所定のCを含有することで、溶接作業性に優れ、特に立向上進溶接に優れた効果が得られる技術が記載されている。

概要

良好な溶接作業性が得られ、特にビード端部のなじみ性がよく、かつ、良好なビード形状が得られる被覆アーク溶接棒を提供する。鋼心線被覆剤が塗布されている被覆アーク溶接棒であって、被覆剤の被覆率を規定し、被覆剤は被覆剤全質量あたり、酸化チタン原料、SiO2のSi換算量、Al2O3のAl換算量、CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量、C、Mn、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計を所定量含有し、前記酸化チタン原料は、TiO2、Si、Al、Mn、Fe、Mg、Caを所定量とした組成を有し、粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が1≦Al+Si≦10を満足することを特徴とする。なし

目的

すなわち、良好な溶接作業性が得られ、特にビード端部のなじみ性がよく、かつ、良好なビード形状が得られる被覆アーク溶接棒を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

鋼心線被覆剤が塗布されている被覆アーク溶接棒であって、溶接棒全質量あたりの前記被覆剤の被覆率は20.0〜55.0質量%であり、前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、粒子状をなす酸化チタン原料:15.0〜60.0質量%、SiO2のSi換算量:4.0〜14.0質量%、Al2O3のAl換算量:0.1〜3.5質量%、CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量:1.0〜15.0質量%、C:0.01〜1.0質量%、Mn:0.1〜15.0質量%、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計:1.0〜8.0質量%を含有し、前記酸化チタン原料は、酸化チタン原料全質量あたり、TiO2:58.0〜99.0質量%、Si:2.5質量%以下、Al:3.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:35.0質量%以下、Mg:5.0質量%以下、Ca:2.0質量%以下である組成を有し、かつ前記酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、かつ、この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が1≦Al+Si≦10を満足することを特徴とする被覆アーク溶接棒。

請求項2

鋼心線に被覆剤が塗布されている被覆アーク溶接棒であって、溶接棒全質量あたりの前記被覆剤の被覆率は20.0〜55.0質量%であり、前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、粒子状をなす酸化チタン原料:2.0〜20.0質量%、金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計:4.0〜14.0質量%、金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計:0.1〜3.5質量%、CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量:5.0〜30.0質量%、CaF2、BaF2、AlF3、LiF、Na2SiF6からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属弗化物のF換算量:0.5〜15.0質量%、C:0.01〜0.7質量%、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計:1.0〜8.0質量%を含有し、前記酸化チタン原料は、酸化チタン原料全質量あたり、TiO2:58.0〜99.0質量%、Si:2.5質量%以下、Al:3.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:35.0質量%以下、Mg:5.0質量%以下、Ca:2.0質量%以下である組成を有し、かつ前記酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、かつ、この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が1≦Al+Si≦10を満足することを特徴とする被覆アーク溶接棒。

請求項3

前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、Mn:1.0〜7.0質量%を含有し、金属TiのTi換算量:0.2〜2.0質量%、B化合物のB換算量:0.02〜0.3質量%、Ni:0.5〜10.0質量%、CrとMoの合計:0.1〜3.0質量%、AlとMgの合計:0.1〜2.0質量%、の群から選択された少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載の被覆アーク溶接棒。

請求項4

前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、Li化合物のLi換算量:0.01〜1.0質量%を含有することを特徴とする請求項3に記載の被覆アーク溶接棒。

請求項5

前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、ZrO2のZr換算量:0.1〜7.0質量%を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の被覆アーク溶接棒。

技術分野

0001

本発明は鋼心線被覆剤が塗布された被覆アーク溶接棒に関する。

背景技術

0002

従来、造船建築等の溶接現場では、能率的に作業を行うために、溶接作業性に優れる被覆アーク溶接棒の開発が進められている。例えば、引用文献1、引用文献2に記載のような発明が公開されている。引用文献1には還元イルミナイト中に所定のSiO2を含有することで、溶接作業性を劣化させることなく、耐棒焼け性を向上させる技術が記載されている。また、引用文献2には鋼心線中に所定のCを含有することで、溶接作業性に優れ、特に立向上進溶接に優れた効果が得られる技術が記載されている。

先行技術

0003

特開2003−311478号公報
特開2002−321090号公報

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、これらの発明においては、溶接作業において以下のような問題点がある。
全姿勢の溶接作業においては、なじみ不良や、ビード形状不良などが発生しやすく、ビード形状等の手直しが必要であり、多大な労力とコストがかかる。このような問題を解決するために、溶接時において母材溶着金属のなじみがよく、溶接金属のビード形状が良好になるような被覆アーク溶接棒が求められている。しかしながら、引用文献1はビード形状については考慮されているものの、ビード端部のなじみ性については記載されていない。また、引用文献2についてもビード端部のなじみ性という点ではまったく検討されていない。

0005

本願発明は、上記の問題点を省みて発明されたものである。すなわち、良好な溶接作業性が得られ、特にビード端部のなじみ性がよく、かつ、良好なビード形状が得られる被覆アーク溶接棒を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明に係る第1の被覆アーク溶接棒は、鋼心線に被覆剤が塗布されている被覆アーク溶接棒であって、溶接棒全質量あたりの前記被覆剤の被覆率は20.0〜55.0質量%であり、前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、粒子状をなす酸化チタン原料:15.0〜60.0質量%、SiO2のSi換算量:4.0〜14.0質量%、Al2O3のAl換算量:0.1〜3.5質量%、CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量:1.0〜15.0質量%、C:0.01〜1.0質量%、Mn:0.1〜15.0質量%、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計:1.0〜8.0質量%を含有し、前記酸化チタン原料は、酸化チタン原料全質量あたり、TiO2:58.0〜99.0質量%、Si:2.5質量%以下、Al:3.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:35.0質量%以下、Mg:5.0質量%以下、Ca:2.0質量%以下である組成を有し、かつ前記酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、かつ、この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が1≦Al+Si≦10を満足することを特徴とする。

0007

かかる構成によれば、被覆剤の被覆率を規定することで、溶接作業性が向上する。そして、被覆剤の成分において、酸化チタン原料を規定することで、溶接作業性が向上し、Si量を規定することで、スラグ粘性が調整されるとともにアーク力が高まり、Al量を規定することで、アークの安定性及びスラグの粘性が上昇する。また、CO2量を規定することで、溶着金属が保護されるとともにスラグの粘性が高まり、C量を規定することで、溶接金属の強度が向上するとともにアーク力が保たれる。また、Mn量を規定することで、溶接金属が脱酸されるとともに強度が調整され、NaとK量の合計を規定することで、アークの安定性が向上する。

0008

また、酸化チタン原料の成分において、TiO2量を規定することで、ビード形状が良好になり、Si,Al,Mn量を規定することで、スラグの粘性が調整される。また、Fe量を規定することで、融点の低下が抑制され、Mg、Ca量を規定することで、スパッタ発生量が抑制される。さらに、Al及びSiの原子百分率を規定することで、酸化チタン原料の融点が適度となり、ビード形状が良好となり、また、なじみ性も向上する。

0009

本発明に係る第2の被覆アーク溶接棒は、鋼心線に被覆剤が塗布されている被覆アーク溶接棒であって、溶接棒全質量あたりの前記被覆剤の被覆率は20.0〜55.0質量%であり、前記被覆剤は被覆剤全質量あたり、粒子状をなす酸化チタン原料:2.0〜20.0質量%、金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計:4.0〜14.0質量%、金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計:0.1〜3.5質量%、CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量:5.0〜30.0質量%、CaF2、BaF2、AlF3、LiF、Na2SiF6からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属弗化物のF換算量:0.5〜15.0質量%、C:0.01〜0.7質量%、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計:1.0〜8.0質量%を含有し、前記酸化チタン原料は、酸化チタン原料全質量あたり、TiO2:58.0〜99.0質量%、Si:2.5質量%以下、Al:3.0質量%以下、Mn:5.0質量%以下、Fe:35.0質量%以下、Mg:5.0質量%以下、Ca:2.0質量%以下である組成を有し、かつ前記酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、かつ、この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が1≦Al+Si≦10を満足することを特徴とする。

0010

かかる構成によれば、被覆剤の被覆率を規定することで、溶接作業性が向上する。そして、被覆剤の成分において、酸化チタン原料を規定することで、溶接作業性が向上し、Si量を規定することで、スラグの粘性が調整されるとともにアーク力が高まり、Al量を規定することで、アークの安定性及びスラグの粘性が上昇する。また、CO2量を規定することで、溶着金属が保護され、拡散性水素量が減少するとともにスラグの粘性が高まり、F量を規定することで、スラグの粘性が調整されて溶接作業性が向上する。また、C量を規定することで、溶接金属の強度が向上するとともにアーク力が保たれ、NaとK量の合計を規定することで、アークの安定性が向上する。

0011

また、酸化チタン原料の成分において、TiO2量を規定することで、ビード形状が良好になり、Si,Al,Mn量を規定することで、スラグの粘性が調整される。また、Fe量を規定することで、融点の低下が抑制され、Mg、Ca量を規定することで、スパッタ発生量が抑制される。さらに、Al及びSiの原子百分率を規定することで、酸化チタン原料の融点が適度となり、ビード形状が良好となり、また、なじみ性も向上する。

0012

本発明に係る第3の被覆アーク溶接棒は、前記第2の被覆アーク溶接棒において、さらに、前記被覆剤が被覆剤全質量あたり、Mn:1.0〜7.0質量%を含有し、金属TiのTi換算量:0.2〜2.0質量%、B化合物のB換算量:0.02〜0.3質量%、Ni:0.5〜10.0質量%、CrとMoの合計:0.1〜3.0質量%、AlとMgの合計:0.1〜2.0質量%の群から選択された少なくとも1種以上を含有してもよい。

0013

かかる構成によれば、被覆剤の成分において、所定量のMnを含有することで、溶接金属の強度と靭性が向上する。また、金属Ti、B化合物、Ni、CrとMoの合計、AlとMgの合計の群から選択された少なくとも1種以上を所定量含有することで、溶接金属の強度や靭性が向上する。

0014

本発明に係る被覆アーク溶接棒は、前記第3の被覆アーク溶接棒において、さらに、前記被覆剤が被覆剤全質量あたり、Li化合物のLi換算量:0.01〜1.0質量%を含有してもよい。

0015

かかる構成によれば、被覆剤の成分において、所定量のLi化合物を含有することで、被覆剤の耐吸湿性が向上する。

0016

本発明に係る第4の被覆アーク溶接棒は、前記第1〜第4のいずれか一つの被覆アーク溶接棒において、さらに、前記被覆剤が被覆剤全質量あたり、ZrO2のZr換算量:0.1〜7.0質量%を含有してもよい。

0017

かかる構成によれば、被覆剤の成分において、所定量のZrO2を含有することで、発生アークの集中性及びビード表面の光沢が向上し、また、溶接金属の母材へのなじみ性が向上する。

発明の効果

0018

本発明によれば、全姿勢溶接において良好な溶接作業性を保つことができ、特に、ビード端部のなじみ性がよく、かつ良好なビード形状が得ることができる。また、特に立向溶接性に優れる。さらに、所定の元素含有量を調整することで、低温での靭性確保や、強度の向上を達成することができる。また、所定の元素の含有量を調整することで、被覆剤の耐吸湿性が向上や、発生アークの集中性及びビード表面の光沢の向上を図ることができる。

0019

以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、以下の実施形態において、「金属Si」とは、「純金属Si」および「合金Si」のうちの一種以上を意味する。同様に、「金属Al」とは、「純金属Al」および「合金Al」うちの一種以上を意味し、「金属Ti」とは、「純金属Ti」および「合金Ti」のうちの一種以上を意味する。また、例えば単にMnと書いた場合、純金属、合金、化合物(すなわち、金属Mn、Mn酸化物等)、その他すべてのMnを含む、Mnの換算量である。
また、「酸化物」とは、「単一酸化物」および「複合酸化物」のうちの一種以上を意味する。「単一酸化物」とは、例えば、TiならばTi単独の酸化物(TiO2)をいい、「複合酸化物」とは、これらの単一酸化物が複数種類集合したものと、例えば、Ti,Fe,Mnといった複数の金属成分を含む酸化物との双方をいう。そして、この酸化物が、酸化チタン原料の粒子の表面に存在するという状態は、粒子の表面が酸化物状態になっている場合を含む。

0020

《第1実施形態》
第1実施形態は、ライムチタニヤ系またはチタニヤ系の被覆アーク溶接棒に関するものである。
本発明の被覆アーク溶接棒は、鋼心線に被覆剤が塗布されているものであり、溶接棒全質量あたりの前記被覆剤の被覆率(すなわち、溶接棒全質量あたりの被覆剤の質量)を規定したものである。そして、この被覆剤は、被覆剤全質量あたり、粒子状をなす酸化チタン原料,SiO2のSi換算量,Al2O3のAl換算量,CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量,C,Mn,Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計を所定量含有する。

0021

さらに、酸化チタン原料が、酸化チタン原料全質量あたり、TiO2,Si,Al,Mn,Fe,Mg,Caが所定量である組成を有し、かつ前記酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、かつ、この酸化物が、Al及びSiの原子百分率で1≦Al+Si≦10を満足するものである。
なお、鋼心線としては、例えばJIS G 3523に規定されるSWY11を用いることができる。

0022

以下、本発明で規定する被覆剤の被覆率と成分限定理由および酸化チタン原料の成分限定理由について説明する。

0023

[被覆剤の被覆率と成分限定理由]
<被覆剤の被覆率:20.0〜55.0質量%>
被覆剤の被覆率が20.0質量%未満では、被覆剤が少なすぎて所定の作業性が得られない。一方、被覆率が55.0質量%を超えると、スラグの被りが多くなって作業性が低下し、特になじみ性が劣化する。従って、被覆剤の被覆率は20.0〜55.0質量%とする。なお、被覆剤中には、塗装性を向上させる効果を有する有機物及び不可避的な不純物元素が存在する。

0024

<粒子状をなす酸化チタン原料:15.0〜60.0質量%>
TiO2源として、後記するように酸化物の組成を最適化した酸化チタン原料を用いることで、良好な溶接作業性、特に良好ななじみ性とビード形状が得られる。被覆剤全質量あたりの酸化チタン原料の含有量が15.0質量%未満では、溶接作業性が劣化し、良好ななじみ性、ビード形状が得られない。一方、酸化チタン原料の含有量が60.0質量%を超えると、スラグ融点が高くなり、ウィービングを行った場合にスラグが早く固まる。これにより、その運棒に沿って溶接金属が形成され、うろこビードとなってしまう。従って、粒子状をなす酸化チタン原料の含有量は15.0〜60.0質量%とする。より好ましくは35.0〜55.0質量%である。この範囲にすると、適切なスラグ融点と粘性が得られ、立向溶接において、さらに良好なビード形状となじみ性が得られる。

0025

<SiO2のSi換算量:4.0〜14.0質量%>
SiO2はスラグの粘性調整剤として作用すると共にアーク力を高める効果がある。被覆剤全質量あたりのSiO2のSi換算量が4.0質量%未満では、粘性調整剤としての効果が十分に発揮されず、ビード形状が劣化する。一方、SiO2のSi換算量が14.0質量%を超えると、スラグの剥離性が著しく劣化し作業性が低下する。従って、SiO2のSi換算量は4.0〜14.0質量%とする。

0026

<Al2O3のAl換算量:0.1〜3.5質量%>
Al2O3はアークの安定性及びスラグの粘性を上昇させ、スラグ形成剤として作用する。被覆剤全質量あたりのAl2O3のAl換算量が0.1質量%未満では、アークの安定性、スラグの粘性が十分に得られない。一方、Al2O3のAl換算量が3.5質量%を超えると、スラグの生成量が増加し、スラグ剥離性も低下するため溶接作業性が低下する。従って、Al2O3のAl換算量は0.1〜3.5質量%とする。

0027

<CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量:1.0〜15.0質量%>
金属炭酸塩はアーク熱により分解してCO2ガスを発生する。そのCO2ガスによりアーク雰囲気中のH2ガス及びN2ガス分圧下げて、溶着金属を保護する効果がある。またスラグの粘性を高める作用も有する。被覆剤全質量あたりの金属炭酸塩のCO2換算量が1.0質量%未満では、CO2ガスシールド不足によりピット及びブローホールが発生する。一方、15.0質量%を超えると、アークが弱くなり作業性が劣化する。更には、スラグの粘性が高くなり過ぎ、溶融金属垂れ落ち易く凸ビードとなる上、アンダカットが発生する。従って、金属炭酸塩のCO2換算量は1.0〜15.0質量%とする。

0028

<C:0.01〜1.0質量%>
Cは、溶接金属の強度を支配する元素であるとともに、酸素と反応してアーク力を保つために必要である。被覆剤全質量あたりのCの含有量が0.01質量%未満ではその効果がなく、アークの吹付けが弱くなる。一方、Cの含有量が1.0質量%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎ、スパッタが多く発生したりビード形状が不揃いになる。従って、Cの含有量は0.01〜1.0質量%とする。より好ましくは0.05〜0.5質量%である。この範囲にすると、適切なアーク力が得られ、アークが安定する。

0029

<Mn:0.1〜15.0質量%>
Mnは溶接金属の脱酸および強度調整のために必要である。被覆剤全質量あたりのMnの含有量が0.1質量%未満では、脱酸不足となり、ブローホールが発生する。一方、Mnの含有量が15.0質量%を超えると、強度過剰となり、耐割れ性が低下する。従って、Mnの含有量は0.1〜15.0質量%とする。より好ましくは3.5〜12.0質量%である。この範囲にすると、耐欠陥性能(耐ブローホール性、耐割れ性)が良好となる。

0030

<Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計:1.0〜8.0質量%>
NaおよびKはアーク安定性を向上させる効果が高い。被覆剤全質量あたりのNa化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計が1.0質量%未満では、その効果を十分に得ることができない。一方、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計が8.0質量%を超えると、被覆剤の耐脱落性及び耐棒焼け性が低下する。従って、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計は1.0〜8.0質量%とする。

0031

<残部:Fe及び不可避的不純物
被覆アーク溶接棒の被覆剤全体としての残部は、Fe及び不可避的不純物である。そして、前記した被覆剤の成分の他、被覆剤中に、MgO等を脱酸等の微調整剤として、また、Ni、Cr、Sb等を溶接金属の耐腐食性を向上させる目的として、少量含有させることもできる。これらの元素は、本発明の目的には影響を及ぼさない。また、被覆剤中には上記の元素以外のアルカリ金属化合物を微量に含む。

0032

[酸化チタン原料の成分限定理由]
<TiO2:58.0〜99.0質量%>
TiO2は溶接金属を支える重要な役割を担っている。立向溶接において、58.0質量%未満では、スラグ量が不十分であり、ビード形状は垂れた形状となる。一方、酸化チタン原料全質量あたりのTiO2含有量が99.0質量%を超えると、融点が高すぎてスラグが早く固まり、溶接時のプールサイズが小さくなる。そのため、立向溶接でのウィービングを行う際に一定の溶融プール形状を維持することが困難となり、ビード形状が不揃いになる。従って、TiO2含有量は58.0〜99.0質量%とする。なお、一般的に、酸化チタン原料としてTiO2含有量が高ければ、融点が高くなるため立向溶接用に適し、TiO2含有量が低ければ、隅肉溶接用に適している。

0033

<Si:2.5質量%以下,Al:3.0質量%以下,Mn:5.0質量%以下>
Si,Al,Mnの酸化物(単一酸化物あるいは複合酸化物)や炭酸塩は、スラグの粘性を調整するために添加する。しかし、Si,Al,Mn源の酸化物や炭酸塩は、一般的には酸化チタン源を使用してではなく、別の原料(例えば珪砂アルミナ炭酸マンガン二酸化マンガン等)によりフラックス中に添加する。酸化チタン源中における酸化チタン原料全質量あたりのSi,Al,Mn含有量が多くなると、機械性能及びスラグの粘性に影響を及ぼす。従って、Si含有量は2.5質量%以下、Al含有量は3.0質量%以下、Mn含有量は5.0質量%以下とする。なお、各々0質量%でもよいが、後記するように、酸化チタン原料の粒子表面におけるAl及びSiの原子百分率が「1≦Al+Si≦10」を満足する必要があるため、AlおよびSiのいずれか一種以上の含有は必須である。

0034

<Fe:35.0質量%以下>
酸化物や炭酸塩に含まれるFeの含有量が増加すると融点が低下するため、溶融金属は垂れやすくなる。このため、一般的に隅肉溶接用材料ではFe含有量は高く、立向溶接材料ではFe含有量は低い方が好ましい。酸化チタン源として、あるいは、隅肉溶接用及び立向溶接用の両溶接用の原料として使用するためには、酸化チタン原料全質量あたりのFe含有量は35.0質量%以下とすることが必要である。なお、0質量%でもよい。

0035

<Mg:5.0質量%以下、Ca:2.0質量%以下>
酸化チタン原料は天然原料ルチール、イルミナイト、ルコシン)から製造するため、本発明の酸化チタン原料にも、必然的にMg及びCa(酸化物、炭酸塩を含む)等の不純物が含まれてしまう。しかし、Mg及びCaが多いと、スパッタが増加するので、酸化チタン原料全質量あたりのMg含有量は5.0質量%以下、Ca含有量は2.0質量%以下とすることが必要である。なお、各々0質量%でもよい。
その他、酸化チタン原料の成分において、例えば、不可避的不純物として、C、Nb、V等を各々、C:0.30質量%以下、Nb:0.30質量%以下、V:0.30質量%以下を含有してもよい。ただし、これらの成分、数値に限定されるものではない。

0036

<酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在>
この酸化物は、Al及びSiの原子百分率が「1≦Al+Si≦10」を満足する。より好ましくはAl及びSiの原子百分率が「1.5≦Al+Si≦6」である。すなわち、Al、Siの少なくとも一種の酸化物が存在することが必須である。さらに好ましくは、Ti,Fe,Mn及びOの原子百分率が「1<Ti/(Fe+Mn)≦100」、あるいは、「O/(Fe+Mn)≦100」である。
なお、これらの規定は、後記するように、例えば以下の方法で調整することができる。酸化チタン原料を製造した後、Fe,Mn,Al,Si,Mg,Caの酸化物及び炭酸塩等を添加して、酸化チタン原料の表面がやや溶融する程度にて焼成焼結)する。焼成温度は、酸化チタン原料中の酸素量及び焼成方法にもよるが、約800〜1300℃程度とし、ロータリーキルン又はバッチ炉等で添加原料とともに焼結させる。

0037

酸化チタン原料粒子の表面状態は、所定の分析方法に従った表面分析結果より算出した下記数式1〜3を満たす必要がある。即ち、EDX(Energy Dispersive X-ray spectroscopy)において、アルミニウム台にカーボンテープ(Cテープ)を貼った上に、原料約1gを設置し、高倍率(約2000倍)における原料表面の比較的平坦異物が存在していない(付着していない)範囲(10μm×10μmの矩形の領域)を有する5粒子を無作為に選び、各粒子あたり1視野原子量比を測定する。その5点の測定結果について、以下に示す数式1〜3の値を求め、数式の値の平均値を求める。この測定方法により、本発明の酸化チタン原料の評価が可能である。

0038

数式1:(x=Al+Si)
数式2:(y=Ti/(Fe+Mn))
数式3:(z=O/(Fe+Mn))

0039

数式1において、xは1〜10である。TiO2量に対するAl,Siの量は、酸化チタン原料の融点に影響を及ぼす。数式1の値xが1と10の間では、特にビード形状に差異は見られないが、xが10を超えると、酸化チタン原料の融点が低下して、立向溶接時に凸ビードとなる。一方、xが1より低いと、酸化チタン原料の融点が高すぎるため、ビード形状が不揃いになる。また、なじみ性が劣化する。このため、xは1〜10とするが、xが1.5〜6であると、特にビードのなじみが良好となる。

0040

数式2において、yは1よりも大きく、100以下であることが好ましい。TiO2量に対するFe,Mn量は酸化チタン原料の融点に影響を及ぼす。yの値が1以下であると、Ti量が低く、融点の低いFe、Mn量が増加するため、酸化チタン原料の融点が低くなり、溶接金属が垂れやすく、凸ビードになる。一方、yが100を超えると、酸化チタン原料の融点が高くなり、スラグが早く固まる。そのため、溶融プール形状を制御することが難しくなり、ビード形状が劣る結果となる。このため、yは1よりも大きく、100以下とすることが好ましい。

0041

数式3の値zは、100以下であることが好ましい。zが100を超えると、溶接金属中の酸素量が過剰となり、粘性が低下するため、立向溶接にてビードが垂れやすく、凸ビードとなる。このため、zは100以下とすることが好ましい。

0042

《第2実施形態》
第2実施形態は、低水素系の被覆アーク溶接棒に関するものである。
本発明の被覆アーク溶接棒は、鋼心線に被覆剤が塗布されているものであり、溶接棒全質量あたりの前記被覆剤の被覆率を規定したものである。そして、この被覆剤は、被覆剤全質量あたり、粒子状をなす酸化チタン原料,金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計,金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計,CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量,CaF2、BaF2、AlF3、LiF、Na2SiF6からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属弗化物のF換算量,C,Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計を所定量含有する。

0043

さらに、酸化チタン原料が、酸化チタン原料全質量あたり、TiO2,Si,Al,Mn,Fe,Mg,Caが所定量である組成を有し、かつ前記酸化チタン原料の粒子表面に、Ti、Fe、Mn、Al及びSiのいずれか一種以上からなる酸化物が存在しており、かつ、この酸化物が、Al及びSiの原子百分率で1≦Al+Si≦10を満足するものである。
なお、鋼心線としては、例えばJIS G 3523に規定されるSWY11を用いることができる。

0044

以下、本発明で規定する被覆剤の被覆率と成分限定理由および酸化チタン原料の成分限定理由について説明する。

0045

[被覆剤の被覆率と成分限定理由]
<被覆剤の被覆率:20.0〜55.0質量%>
被覆剤の被覆率が20.0質量%未満では、被覆剤が少なすぎて所定の作業性が得られない。一方、被覆率が55.0質量%を超えると、スラグの被りが多くなって作業性が低下し、特になじみ性が劣化する。従って、被覆剤の被覆率は20.0〜55.0質量%とする。なお、被覆剤中には、塗装性を向上させる効果を有する有機物及び不可避的な不純物元素が存在する。

0046

<粒子状をなす酸化チタン原料:2.0〜20.0質量%>
TiO2源として、後記するように酸化物の組成を最適化した酸化チタン原料を用いることで、良好な溶接作業性、特に良好ななじみ性とビード形状が得られる。被覆剤全質量あたりの酸化チタン原料の含有量が2.0質量%未満では、溶接作業性が劣化し、良好ななじみ性、ビード形状が得られない。一方、酸化チタン原料の含有量が20.0質量%を超えると、スラグ融点が高くなり、ウィービングを行った場合にスラグが早く固まる。これにより、その運棒に沿って溶接金属が形成され、うろこビードとなってしまう。従って、粒子状をなす酸化チタン原料の含有量は2.0〜20.0質量%とする。より好ましくは5.0〜15.0質量%である。この範囲にすると、適切なスラグ融点と粘性が得られ、立向溶接において、さらに良好ななじみ性とビード形状が得られる。

0047

<金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計:4.0〜14.0質量%>
金属Si及びSiO2はスラグの粘性調整剤として作用すると共にアーク力を高める効果がある。被覆剤全質量あたりの金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計が4.0質量%未満では、粘性調整剤としての効果が十分に発揮されず、ビード形状が劣化する。一方、金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計が14.0質量%を超えると、スラグの剥離性が著しく劣化し作業性が低下する。従って、金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計は4.0〜14.0質量%とする。

0048

<金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計:0.1〜3.5質量%>
金属Al及びAl2O3はアークの安定性及びスラグの粘性を上昇させ、スラグ形成剤として作用する。被覆剤全質量あたりの金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計が0.1質量%未満では、アークの安定性、スラグの粘性が十分に得られない。一方、金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計が3.5質量%を超えると、スラグの生成量が増加し、スラグ剥離性も低下するため溶接作業性が低下する。従って、金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計は0.1〜3.5質量%とする。

0049

<CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量:5.0〜30.0質量%>
金属炭酸塩はアーク熱により分解してCO2ガスを発生する。そのCO2ガスによりアーク雰囲気中のH2ガス及びN2ガスの分圧を下げて、溶着金属を保護し、拡散性水素量を減少させる効果がある。またスラグの粘性を高める作用も有する。被覆剤全質量あたりの金属炭酸塩のCO2換算量が5.0質量%未満では、CO2ガスシールド不足によりピット及びブローホールが発生する。一方、金属炭酸塩のCO2換算量が30.0質量%を超えると、アークが弱くなり作業性が劣化する。更には、スラグの粘性が高くなり過ぎ、溶融金属が垂れ落ち易く凸ビードとなる上、アンダカットが発生する。従って金属炭酸塩のCO2換算量は5.0〜30.0質量%とする。より好ましくは10.0〜25.0質量%である。この範囲にすると、シールドガスの効果が高まり、なじみ性が良好となる。

0050

<CaF2、BaF2、AlF3、LiF、Na2SiF6からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属弗化物のF換算量:0.5〜15.0質量%>
金属弗化物は、スラグの粘性を調整して、良好な溶接作業性を得ることができる成分である。被覆剤全質量あたりの金属弗化物のF換算量が0.5質量%未満では、スラグの粘性が高くなりすぎてビード形状が劣化する。一方、金属弗化物のF換算量が15.0質量%を超えると、アークが不安定になるので望ましくない。従って、被覆剤全質量あたりの金属弗化物のF換算量は、0.5〜15.0質量%とする。より好ましくは3.0〜10.0質量%である。この範囲にすると、特にスラグ剥離性が良好となる。

0051

<C:0.01〜0.7質量%>
Cは、溶接金属の強度を支配する元素であるとともに、酸素と反応してアーク力を保つために必要である。被覆剤全質量あたりのCの含有量が0.01質量%未満ではその効果がなく、アークの吹付けが弱くなる。一方、Cの含有量が0.7質量%を超えると、アークの吹付けが強くなりすぎ、スパッタが多く発生したりビード形状が不揃いになる。従って、Cの含有量は0.01〜0.7質量%とする。より好ましくは0.03〜0.2質量%である。この範囲にすると、適切なアーク力が得られ、アークが安定する。

0052

<Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計:1.0〜8.0質量%>
NaおよびKはアーク安定性を向上させる効果が高い。被覆剤全質量あたりのNa化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計が1.0質量%未満では、その効果を十分に得ることができない。一方、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計が8.0質量%を超えると、被覆剤の耐脱落性及び耐棒焼け性が低下する。従って、Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計は1.0〜8.0質量%とする。
なお、Na化合物には、前記したNa2SiF6も含まれる。

0053

<残部:Fe及び不可避的不純物>
被覆アーク溶接棒の被覆剤全体としての残部は、Fe及び不可避的不純物である。そして、前記した被覆剤の成分の他、被覆剤中に、Ce、La等を脱酸等の微調整剤として、また、Nb、V等を溶接金属の強度調整剤として、少量含有させることもできる。これらの元素は、本発明の目的には影響を及ぼさない。また、被覆剤中には上記の元素以外のアルカリ金属化合物を微量に含む。
また、不可避的不純物として、例えば、B、Ni、Mo、Cr等を各々、B:0.02質量%未満、Ni:0.5質量%未満、Mo:0.1質量%未満、Cr:0.1質量%未満を含有してもよい。ただし、これらの成分、数値に限定されるものではない。

0054

[酸化チタン原料の成分限定理由]
第2実施形態における酸化チタン原料の成分限定理由については、第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。

0055

《第3実施形態》
第3実施形態は、低温における靭性と強度に優れる被覆アーク溶接棒に関するものである。第3実施形態では、第2実施形態の被覆アーク溶接棒において、被覆剤が、被覆剤全質量あたり、所定量のMnを含有し、さらに、金属TiのTi換算量,B化合物のB換算量,Ni,CrとMoの合計,AlとMgの合計の群から選択された少なくとも1種以上を所定量含有するものである。
これらの各元素は、機械的性質(靭性、強度)を向上させるという意味で共通の効果を持つ。

0056

<Mn:1.0〜7.0質量%>
Mnは、強度の確保と脱酸を目的としており、優れた靭性を得ることからも重要である。被覆剤全質量あたりのMn含有量が1.0質量%未満では、十分な強度と、靭性が得られない。一方、Mn含有量が7.0質量%を超えると、溶接金属の焼入れ性増して靭性が低下する。従って、Mnを添加する場合は、Mnの含有量は1.0〜7.0質量%とする。

0057

<金属TiのTi換算量:0.2〜2.0質量%>
金属Tiは脱酸性元素であると共に、溶接金属の強度の向上に有効である。また、金属Tiは微細な球状酸化物を生成して、溶接金属の組織の微細化に有効である。被覆剤全質量あたりの金属TiのTi換算量が0.2質量%未満では、十分な脱酸性及び溶接金属の強度の向上効果発現しない。一方、金属TiのTi換算量が2.0質量%を超えると、溶接金属中のTi量が多くなり過ぎるため、強度及び硬度過度に高くなり、溶接金属の靭性が低下する。従って、金属Tiを添加する場合は、金属TiのTi換算量は0.2〜2.0質量%とする。

0058

<B化合物のB換算量:0.02〜0.3質量%>
Bは溶接金属組織を微細にして溶接金属の靭性を向上させる効果がある。被覆剤全質量あたりのB化合物のB換算量が0.02質量%未満では効果が出ない。一方、B化合物のB換算量が0.3質量%を超えると、溶接金属の結晶粒界に過剰に析出結晶界面の強度低下によって靭性を低下させる。従って、B化合物を添加する場合は、B化合物のB換算量は0.02〜0.3質量%とする。

0059

<Ni:0.5〜10.0質量%>
Niは強度及び靭性を高める元素である。被覆剤全質量あたりのNiの含有量が0.5質量%未満では、所定の効果を得ることができない。一方、Niの含有量が10.0質量%を超えると、溶接金属の強度が高くなりすぎて、靭性が低下する。従って、Niを添加する場合は、Niの含有量は0.5〜10.0質量%とする。

0060

<CrとMoの合計:0.1〜3.0質量%>
CrとMoは、溶接金属の強度を向上させる効果がある。被覆剤全質量あたりのCrとMoの合計が0.1質量%未満では強度向上の効果が得られない。一方、CrとMoの合計が3.0質量%を超えると、焼入れ性が増しすぎ、また炭化物を生成するので靭性が劣化する。従って、CrとMoの少なくとも一種を添加する場合は、CrとMoの合計は0.1〜3.0質量%とする。

0061

<AlとMgの合計:0.1〜2.0質量%>
AlおよびMgは強脱酸剤であり、溶接金属の酸素量の低減による靭性を向上させる効果がある。被覆剤全質量あたりのAlとMgの合計が0.1質量%未満では靭性向上の効果が得られない。一方、AlとMgの合計が2.0質量%を超えると、アークが不安定になりスパッタ発生量が多くなるとともにスラグの粘性が低下してスラグ剥離性が不良になる。従って、AlとMgの少なくとも一種を添加する場合は、AlとMgの合計は0.1〜2.0質量%とする。

0062

第3実施形態においては、被覆剤がさらに、被覆剤全質量あたり、Li化合物を所定量のLi換算量で含有してもよい。
<Li化合物のLi換算量:0.01〜1.0質量%>
Liは被覆剤の耐吸湿性を向上させる働きをする。被覆剤全質量あたりのLi化合物のLi換算量が0.01質量%未満では耐吸湿性向上の効果が得られない。一方、Li化合物のLi換算量が1.0質量%を超えると、塗装の工程上で、内部のガスが逸脱できず乾燥割れが発生する。従って、Li化合物を添加する場合は、Li化合物のLi換算量は0.01〜1.0質量%とする。

0063

ここで、第1実施形態〜第3実施形態においては、被覆剤がさらに、被覆剤全質量あたり、ZrO2を所定量のZr換算量で含有してもよい。
<ZrO2のZr換算量:0.1〜7.0質量%>
ZrO2は発生アークの集中性及びビード表面の光沢を向上させる作用がある。また、ZrO2は溶接金属の母材へのなじみ性を向上させる。被覆剤全質量あたりのZrO2のZr換算量が0.1質量%未満では、アーク集中性、ビード表面の光沢、及び溶接金属の母材へのなじみ性の効果が十分得られない。一方、ZrO2のZr換算量が7.0質量%を超えると発生スラグが緻密になって剥離性が低下する。従って、ZrO2を添加する場合は、ZrO2のZr換算量は0.1〜7.0質量%とする(酸化チタン原料に含まれる微量のZrO2の値も含む。すなわち、ZrO2のZr換算量は、酸化チタン原料中の残部を含む、合計量である)。

0064

次に、酸化チタン原料の製造方法、および、被覆アーク溶接棒の製造方法について説明する。
≪酸化チタン原料の製造方法≫

0065

酸化チタン原料の製造方法には、主に、焼成法と溶融法の2つがある。焼成法を用いるとFe量は高く、溶融法を用いるとFe量が低くなる。製造方法とチタン原料使い分けることにより、隅肉溶接用(Fe含有量が高い方が好ましい)及び立向溶接用(Fe含有量が低い方が好ましい)の原料を、使い分けして製造することができる。

0066

まず、焼成法について説明する。原料は、Ti源として、天然のルチール、ルコキシン、イルミナイトを使用することができる。各原料のTi含有量は、ルチール、ルコキシン、イルミナイトの順に低く、目標とする酸化チタン原料の物性に応じて使い分けし、混合して使用することができる。一般的に、立向溶接にはTi含有量が高く、隅肉溶接にはTi含有量が低い原料を使用することが好ましい。適用に際しては、より雑物の少ない原料を使用するため、酸化チタン原料の濃縮、不純物の低減を目的とした比重磁力浮遊選鉱を行う。Si,Al,Fe,Mn,Mg,Ca源は、Si,Al,Fe,Mn,Mg,Caの酸化物(複合酸化物を含む)及び炭酸塩等を使用(添加)することができる。ここで、単一酸化物及び炭酸塩と比較して複合酸化物は低融点であるため、表面反応に有利であり、より低温で反応させることが可能である。

0067

焼成方法としては、焼成炉としてロータリーキルン又はバッチ炉等が挙げられるが、酸化Ti源と他の酸化物又は炭酸塩との有効な反応を考慮すると、原料同士が均一に接触するロータリーキルンが好ましい。また、バッチ炉では、焼成温度が1200℃以上になると、低融点となった混合原料全体及び一部が焼結・固化する可能性が高い。そのため、焼結・固化した酸化チタン原料の粗砕粉砕い等の余分な作業が生じるため、コストが上昇する。焼成雰囲気については、焼成温度が高いと、大気雰囲気ではチタンの窒化物である窒化チタン(融点3000℃)が生成することが考えられる。そのため、焼成雰囲気は、CO雰囲気であることが奨励されるが、焼成原料にC源を添加することにより、COガスが容易に発生する。なお、Ti源として、イルミナイトを使用する場合は、イルミナイトの見かけ上の融点を上げるために、C源を多く添加し、イルミナイト粒子表面のイルミナイトを構成する酸化Fe分を還元する。即ち、イルミナイト粒子表面の組成をイルミナイトから、天然ルチールの方向へシフトさせ、イルミナイト粒子表面の融点を上昇させる。このとき、イルミナイト粒子の中心部まで還元する必要はない。

0068

次に、溶融法について説明する。原料は、Ti源として、低コストである天然のイルミナイトを使用することができる。また、ルチール又はルコキシンも使用できる。適用に際しては、より雑物の少ない原料を使用するため、酸化チタン原料の濃縮、不純物の低減を目的とした比重・磁力・浮遊選鉱を行う。Si,Al,Fe,Mn,Mg,Ca源は、Si,Al,Fe,Mn,Mg,Caの酸化物(複合酸化物を含む)及び炭酸塩等を使用(添加)することができる。ここで、単一酸化物又は炭酸塩と比較して複合酸化物は低融点であるため、表面反応に有利であり、より低温で反応させることが可能である。

0069

溶融方法としては、イルミナイト及び他の原料(酸化物、炭酸塩)並びに脱酸剤(C源)を混合し(ペレット状に成型するのも可)、アーク炉又は高周波炉で1800〜2000℃に加熱することにより行うことができる。これにより、イルミナイト中の酸化Feが還元されて溶融状態となる。Feは融点が低いため、炉の下部に集まり、炉の上部にはTiとSi,Al,Mn,Fe,Mg,Caとその他の不純物からなる酸化物が生成する。なお、アーク炉、高周波炉の他、電気炉を用いることもできる。

0070

このようにして得られた酸化物を、粗砕→粉砕→粒度調整して溶剤原料とする。ここで、求める溶接材料の特性(ビード形状)と、立向溶接用か隅肉溶接用かに応じて、融点の低いFe部(下部)と融点の高い酸化物部(上部)を混合して使用したり、中間層(融点が上部と下部の間)を使用すると良い。

0071

また、焼成法及び溶融法の場合、脱酸剤中のC及びSが酸化チタン原料中に残留することがある。これらの不純物は溶接材料の品質に悪影響を及ぼすため、不純物の種類によって異なる後処理(酸洗又は焼成処理等)をする必要がある。

0072

また、溶融法では、酸化物中の大気中のTiの価数(酸化度)が安定しないので、Tiの価数を一番安定な4価(TiO2の結晶構造)にすべく、大気中(溶融中はCO還元雰囲気)で焼成する場合もある。

0073

前記説明した焼成法及び溶融法を使用して、酸化チタン原料を製造した後、表面に存在するFe,Mn,Al,Si,Mg,Ca量等の微量元素を調整する必要があれば、Fe,Mn,Al,Si,Mg,Caの酸化物及び炭酸塩等を添加して、酸化チタン原料の表面がやや溶融する程度にて焼成(焼結)しても良い。焼成温度は、酸化チタン原料中の酸素量及び焼成方法にもよるが、約800〜1300℃程度とし、ロータリーキルン又はバッチ炉等で添加原料とともに焼結させる。Fe,Mn,Al,Si,Mg,Caは酸化されやすいため、金属として添加しても良い。

0074

≪被覆アーク溶接棒の製造方法≫
本発明の被覆アーク溶接棒は、以上述べた被覆剤を珪酸ソーダ珪酸カリで代表される水ガラスなどの粘結剤により、鋼心線の周囲に被覆率が20〜55質量%となるように通常の溶接棒塗装機により被覆塗装した後、水分を除去するため、例えばライムチタニヤ系またはチタニヤ系:70〜250℃、低水素系:350〜550℃で焼成して製造する。鋼心線は、例えばJIS G 3523に規定されるSWY11を用いることができる。

0075

以上説明したように、本発明は、酸化物の組成を最適化した酸化チタン原料を用いることで、良好な溶接作業性が得られる。そして、その酸化チタン原料は、粒子表面のTi,Fe,Mn,Al,Si,Oの存在形態がコントロールされており、適正なスラグおよび溶融金属の融点と、粘性および酸素量とを両立し、さらに良好ななじみ性とビード形状の確保が可能となる。
また、低温における靭性と強度確保のため、所定量のMnを添加し、さらに、金属TiのTi換算量,B化合物のB換算量,Ni,CrとMoの合計,AlとMgの合計の群から選択された少なくとも1種以上を所定量添加することで、低温における靭性と強度が向上した被覆アーク溶接棒とすることができる。また、さらにLi化合物のLi換算量を所定量添加することで、被覆剤の耐吸湿性が向上した被覆アーク溶接棒とすることができる。また、ZrO2のZr換算量を所定量添加することで、アーク集中性、ビード表面の光沢、及び溶接金属の母材へのなじみ性が向上した被覆アーク溶接棒とすることができる。

0076

以下、本発明の効果を説明するために、本発明の範囲に入る実施例と、本発明の範囲から外れる比較例とを比較して説明する。

0077

なお、本実施例において、表1、2は、酸化チタン原料についてのものであり、表3はその結果、表4は用いた被覆アーク溶接棒の組成である。表1において、表2の比較例に該当するNo.13〜16は、「比較例」と記している。ここで、酸化チタン原料には一般的にSi,Al,Mn,Fe,Mg,Ca等の不純物が含まれ、表1においてTiO2及び、Si,Al,Mn,Fe,Mg,Caの成分範囲も一般的な範囲内である。したがって、これらの上下限及び上下限を超えた比較例は設けていない。
また、表5〜18は被覆アーク溶接棒についてのものであり、例えば、表5は第1実施形態、表6は第2実施形態、表7は第3実施形態に対応するものである。そして、例えば、表5〜7のNo.1−1〜1−24は、表1、2のNo.1の酸化チタン原料を使用したものである(詳細は後述する)。

0078

まず、供試材である酸化チタン原料の製造方法について説明する。前記のとおり、酸化チタン原料の製造方法には、主に、焼成法と溶融法の2つがあり、焼成法を用いるとFe量は高く、溶融法を用いるとFe量が低くなる。製造方法とチタン原料を使い分けることにより、隅肉溶接用(Fe含有量が高い方が好ましい)及び立向溶接用(Fe含有量が低い方が好ましい)の原料を使い分けして製造した。

0079

まず、焼成法について説明する。原料は、Ti源として、天然のルチール、ルコキシン、イルミナイトを使用した。これらを目標とする酸化チタン原料の物性に応じて使い分けし、混合して使用した。適用に際しては、より雑物の少ない原料を使用するため、酸化チタン原料の濃縮、不純物の低減を目的とした比重・磁力・浮遊選鉱を行った。Si,Al,Fe,Mn,Mg,Ca源は、Si,Al,Fe,Mn,Mg,Caの酸化物(複合酸化物を含む)及び炭酸塩等を使用(添加)した。

0080

焼成方法としては、焼成炉として、ロータリーキルンを用いた。焼成雰囲気は、CO雰囲気とした。なお、焼成原料にはC源を添加した。

0081

次に、溶融法について説明する。原料は、Ti源として、低コストである天然のイルミナイトを使用した。適用に際しては、より雑物の少ない原料を使用するため、酸化チタン原料の濃縮、不純物の低減を目的とした比重・磁力・浮遊選鉱を行った。Si,Al,Fe,Mn,Mg,Ca源は、Si,Al,Fe,Mn,Mg,Caの酸化物(複合酸化物を含む)及び炭酸塩等を使用(添加)した。

0082

溶融方法としては、イルミナイト及び他の原料(酸化物、炭酸塩)並びに脱酸剤(C源)を混合し、アーク炉で1800〜2000℃に加熱し、イルミナイト中の酸化Feを還して溶融状態とした。Feは融点が低いため、炉の下部に集まり、炉の上部にはTiとSi,Al,Mn,Fe,Mg,Caとその他の不純物からなる酸化物が生成した。

0083

このようにして得られた酸化物を、粗砕→粉砕→粒度調整して溶剤原料とした。
また、脱酸剤中のC及びS等の不純物を除去するため、後処理として、酸洗及び焼成処理を行った。

0084

そして、酸化チタン原料を製造した後、表面に存在するFe,Mn,Al,Si,Mg,Ca量等の微量元素を調整するため、Fe,Mn,Al,Si,Mg,Caの酸化物及び炭酸塩等を添加して、酸化チタン原料の表面がやや溶融する程度にて焼成(焼結)した。焼成温度は、800〜1300℃程度とし、ロータリーキルンで添加原料とともに焼結させた。
表1に酸化チタン原料No1〜16のバルク組成を示す。なお、表中、「−」は成分を含有しないものである。

0085

0086

次に、酸化チタン原料の粒子表面の原子百分率の分析方法について説明する。分析装置は以下のとおりである。

0087

(1)第1分析装置
装置:日本電子株式会社製
WD/EDコンバイン電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)JXA−8200使用
分析条件加速電圧15kv、照射電流5×10−10A

0088

(2)第2分析装置
装置:株式会社日立ハイテクフィールイング社製
EDS付き走査型電子顕微鏡S−3700N 使用
EDS:エダクスジャパン株式会社社製GENESIS400シリーズ
分析条件:加速電圧15kv,照射電流5×10−12A
なお、第1及び第2のEDX装置にて分析を行ったが、両者において分析結果は同等であった。

0089

(3)定量分析方法
定量分析は、スタンダードレス分析により行った。コンピュータデータベース化されている標準試料スペクトルと測定されたスペクトルの相対強度比を求め、トータルが100%になるように補正計算した。

0090

分析方法は以下のとおりである。EDXにおいて、アルミニウム台にCテープ(日新EM株式会社製 SEM用導電性テープカーボン両面テープ)を貼った上に、原料約1gを設置した後、薬包紙ガラス板又はステンレス製マイクロスプーンで原料をCテープ上によく接着させた。通電性を確保するため、Os蒸着を施して高倍率(約2000倍)における原料表面の比較的平坦で異物が存在又は付着していない範囲(10μm×10μmの矩形の領域)を有する5粒子を無作為に選び、各粒子当たり1視野の原子百分率(原子%)を測定した。

0091

分析条件:エネルギーフルスケール:20KeV(10eV/ch, 2Kch)
有効時間:60秒
加速電圧:15.0KV
プローブ電流:5.0×10−10A

0092

前記酸化チタン原料の表面分析で説明した数式1〜3のx、y、zの計算方法は、以下のとおりである。前述の5点(5粒子の点)の測定結果から、以下に示す数式1乃至3の値を求め、5点のx、y、zの平均値を算出する。

0093

数式2及び数式3の計算方法は、分母及び分子を夫々独立に5点の算術平均をとり、その得られた平均値で割り算を行う。分母の平均値がゼロ(5点全てゼロ)の場合には、数式2,3の値は無限大になる。

0094

酸化チタン原料の粒子表面の原子百分率の分析結果(すなわち、EDX分析結果)を表2に示す。なお、表中、「−」は成分を含有しないものである。

0095

0096

そして、被覆アーク溶接棒における各酸化チタン原料を使用した溶接試験の評価結果を表3に示す。なお、酸化チタン原料を使用した溶接試験で使用した被覆アーク溶接棒は、表1〜3に示す酸化チタン原料を使用して作製したものであるが、酸化チタン原料以外の成分の配合量は下記表4に示すとおりである。なお、表3における、なじみ性、ビード形状の評価は、後記する「溶接作業性」についての5段階評価と同じ基準にて評価した。また、溶接条件も後記する「溶接作業性」についての条件と同様である。また、被覆アーク溶接棒の製造方法は後記する方法と同様である。

0097

0098

0099

総合評価は、なじみ及びビード形状のいずれも「4」の場合に「4」、いずれかが「4」、他方が「3」の場合、あるいは、いずれも「3」の場合に「3」である。また、なじみ及びビード形状のいずれも「2」の場合に、総合評価は「2」、いずれかが「1」の場合に「1」とした。

0100

≪被覆アーク溶接棒の製造方法≫
本発明の溶接棒は以上述べた被覆剤を珪酸ソーダ、珪酸カリで代表される水ガラスなどの粘結剤により、4.0mm鋼心線の周囲に被覆率が20〜55質量%となるように通常の溶接棒塗装機により被覆塗装した後、水分を除去するため適正(ライムチタニヤ系またはチタニヤ系:70〜250℃、低水素系:350〜550℃)に焼成して製造した。鋼心線はJIS G 3523に規定されるSWY11を用いた。

0101

表5〜18に、被覆アーク溶接棒の成分組成を示す。なお、表中、本発明の範囲を満たさないものについては、数値等に下線を引いて示す。また、表中、「−」は成分を含有しないものである。
また、「SiO2」、「Al2O3」、「金属炭酸塩」は、それぞれ、「Si換算量」、「Al換算量」、「CaCO3、MgCO3、BaCO3からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属炭酸塩のCO2換算量」であり、「Na+K」は、「Na化合物のNa換算量とK化合物のK換算量との合計」である。
また、「SiO2+Si」、「Al2O3+Al」、「金属弗化物」は、それぞれ、「金属SiのSi換算量とSiO2のSi換算量との合計」、「金属AlのAl換算量とAl2O3のAl換算量との合計」、「CaF2、BaF2、AlF3、LiF、Na2SiF6からなる群から選択された少なくとも1種以上の金属弗化物のF換算量」である。
また、「金属Ti」、「B化合物」、「Li化合物」、「ZrO2」は、それぞれ、「金属TiのTi換算量」、「B化合物のB換算量」、「Li化合物のLi換算量」、「ZrO2のZr換算量」である。
なお、これらについては表4においても同様である。

0102

ここで、表5〜7は、表1〜3の試料No.1の酸化チタン原料を使用したものである。この試料No.1は、「Si+Al」がより好ましい範囲であり、「Ti/(Fe+Mn)」、及び、「O/(Fe+Mn)」が好ましい範囲のものである。
表8〜10は、表1〜3の試料No.7の酸化チタン原料を使用したものである。この試料No.7は、「Si+Al」がより好ましい範囲を外れるものである。

0103

表11〜13は、表1〜3の試料No.9の酸化チタン原料を使用したものである。この試料No.9は、「Si+Al」がより好ましい範囲であるが、「O/(Fe+Mn)」が好ましい範囲を外れるものである。
表14〜16は、表1〜3の試料No.10の酸化チタン原料を使用したものである。この試料No.10は、「Si+Al」がより好ましい範囲を外れ、「O/(Fe+Mn)」が好ましい範囲を外れるものであり、さらに、TiO2の含有量が低めのものである。
表17、18は、表1〜3の試料No.13の酸化チタン原料を使用したものである。この試料No.13は、「Si+Al」が範囲を外れ、「Ti/(Fe+Mn)」、及び、「O/(Fe+Mn)」が好ましい範囲を外れるものである。

0104

また、表5〜18は、それぞれ、第1実施形態(ライムチタニヤ系またはチタニヤ系の被覆アーク溶接棒に関する)、第2実施形態(低水素系の被覆アーク溶接棒に関する)、第3実施形態(低温における靭性と強度に優れる被覆アーク溶接棒に関する(表中、「低温+HT」と記載))の被覆アーク溶接棒に対応している。

0105

0106

0107

0108

0109

0110

0111

0112

0113

0114

0115

0116

0117

0118

0119

このようにして製造した被覆アーク溶接棒について、以下の試験を行った。なお、各試験において、第1実施形態(ライムチタニヤ系またはチタニヤ系の被覆アーク溶接棒に関する)、第2実施形態(低水素系の被覆アーク溶接棒に関する)、第3実施形態(低温における靭性と強度に優れる被覆アーク溶接棒に関する(表中、「低温+HT」と記載))に対応するように、条件を変更した。

0120

≪溶接作業性≫
[第1〜3実施形態に対応]
ここではビード形状、なじみ性、アーク安定性、スラグ剥離性について評価した。

0121

(溶接作業性確認用試験母材)
[第1〜3実施形態に対応]
JIS G G3106に規定される溶接構造鋼材SM490A)からなる板厚12mm、長さ400mmの試験板を溶接作業性確認用の試験母材とした。

0122

(溶接条件)
溶接電流:140〜160Amp
極性交流(AC)
溶接姿勢:立向

0123

<ビード形状>
[第1〜3実施形態に対応]
140〜160Ampにて立向溶接した溶接部を観察し、ビード形状について視覚的に評価した。
評価基準は以下のとおりとし、評価が3〜5のものを合格とした。

0124

5:平滑(Flat)、波目が非常に揃っている
4:若干凸〜平滑(Flat)、波目が揃っている
3:若干凸、波目が揃っている
2:凸で波目が荒い
1:凸で波目が非常に荒く、不安定

0125

<ビード形状を除く官能評価
[第1〜3実施形態に対応]
なじみ性、アーク安定性、スラグ剥離性についての評価は以下のとおりとし、なじみ性については評価が3〜5のものを合格、アーク安定性およびスラグ剥離性については評価が2、3のものを合格とした。

0126

<なじみ性>
5:非常に容易になじみ、アンダカットに非常になり難い
4:容易になじみ、アンダカットに非常になり難い
3:容易になじみ、アンダカットになり難い
2:なじむのに時間がかかる
1:なじむのに時間がかかる(なじみが悪く)、アンダカットになり易い

0127

<アーク安定性>
3:非常に安定。アーク切れが起こらない
2:安定性があり、アーク切れは殆ど起こらない
1:時々アーク切れが起こり、スラグ巻き等の欠陥になり易い、又は起こり易い

0128

<スラグ剥離性>
3:自然剥離
2:スケールハンマーにより容易に剥離可能
1:スケールハンマーによる剥離に若干時間がかかる

0129

≪機械的性質≫
[第3実施形態に対応]
(機械的性質確認用試験母材)
JIS Z3211準拠による全溶着金属を作製し、機械的性質を調査した。
JIS G3106に規定される溶接構造用圧延鋼材(SM490A)からなる板厚20mm、長さ300mmの試験板を機械的性質確認用の試験母材とした。

0130

(溶接条件)
溶接電流:140〜170Amp
極性:交流(AC)または直流(DC(+))
溶接姿勢:下向
予熱パス間温度:90〜110℃
積層方法:7〜9層、各層2パス

0131

引張強度衝撃性能衝撃値)>
[第3実施形態に対応]
JIS Z3211に準じて、引張強さ、−60℃シャルピー吸収エネルギー(靭性)について評価した。引張強度に関する評価基準は671MPa以上を「◎」、520〜670MPaを「○」、519MPa以下を「×」とした。そして、「◎」、「○」を合格とした。なお、表には、数値のみを記している。
靭性に関する評価基準はシャルピー吸収エネルギーが80J以上を「◎」、47〜79Jを「○」、46J以下を「×」とした。そして、「◎」、「○」を合格とした。なお、表には、数値のみを記している。
これらの結果を表19〜32に示す。

0132

0133

0134

0135

0136

0137

0138

0139

0140

0141

0142

0143

0144

0145

0146

表19〜32に示すように、No.1−1〜1−5、No.1−10〜1−14、No.1−19〜1−21、No.7−1〜7−5、No.7−10〜7−14、No.7−19〜7−21、No.9−1〜9−5、No.9−10〜9−14、No.9−19〜9−21、No.10−1〜10−5、No.10−10〜10−14、No.10−19〜10−21は、本発明の範囲を満たすため、各評価において良好な結果を得られた。

0147

No.1−6は、酸化チタン原料が過少のため、ビート形状、なじみ性が劣化した。また、Al2O3量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.1−7は、酸化チタン原料が過多のため、ビード形状が劣化した。また、Al2O3量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.1−8は、SiO2量が過少のため、ビード形状が劣化した。No.1−9は、SiO2量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過多のため、ビード形状が劣化した。

0148

No.1−15は、酸化チタン原料が過少のため、ビード形状、なじみ性が劣化した。また、「Al2O3+Al」量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.1−16は、酸化チタン原料が過多のため、ビード形状が劣化した。また、「Al2O3+Al」量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.1−17は、「SiO2+Si」量が過少のため、ビード形状が劣化した。No.1−18は、「SiO2+Si」量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過多のため、ビード形状が劣化した。

0149

No.1−22は、金属Ti量、B化合物量が過少のため、強度、靭性が劣化した。No.1−23は、B化合物量、Ni量が過多のため、靭性が劣化した。No.1−24は、「Cr+Mo」量、Mn量が過少のため、強度、靭性が劣化した。

0150

No.7−6は、Mn量が過少のため、ブローホールが発生し、また、「Na+K」量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.7−7は、被覆率が過多のため、なじみ性が劣化した。また、「Na+K」量が過多のため、棒焼けしやすくなり、被覆剤の脱落も発生した。No.7−8は、Mn量が過多のため、溶接割れが発生した。また、金属炭酸塩量が過多のため、アーク安定性、ビード形状が劣化した。また、ZrO2量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。No.7−9は、被覆率が過少のため、溶接作業性がすべて劣化した。また、金属炭酸塩量が過少のため、ピット、ブローホール発生した。

0151

No.7−15は、被覆率が過多のため、なじみ性が劣化した。また、金属弗化物量が過多のため、アーク安定性が劣化した。No.7−16は、被覆率が過少のため、溶接作業性がすべて劣化した。また、金属炭酸塩量が過少のため、ピット、ブローホールが発生した。No.7−17は、金属炭酸塩量が過多のため、アーク安定性、ビード形状が劣化した。また、「Na+K」量が過多のため、棒焼けしやすくなり、被覆剤の脱落も発生した。No.7−18は、金属弗化物量が過少のため、ビード形状が劣化した。また、「Na+K」量が過少のため、アーク安定性が劣化した。

0152

No.7−22は、金属Ti量、「Cr+Mo」量が過多のため、靭性が劣化した。No.7−23は、Mn量が過多のため、靭性が劣化した。No.7−24は、「Cr+Mo」量、「Al+Mg」量が過少のため、強度、靭性が劣化した。

0153

No.9−6は、C量が過多のため、ビード形状が劣化した。また、Al2O3量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.9−7は、Al2O3量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.9−8は、SiO2量が過少のため、ビード形状が劣化した。また、酸化チタン原料が過少のため、ビード形状、なじみ性が劣化した。No.9−9は、SiO2量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、酸化チタン原料が過多のため、ビード形状が劣化した。また、ZrO2量が過少のため、Zr添加による効果がなかった。

0154

No.9−15は、酸化チタン原料が過少のため、ビード形状、なじみ性が劣化した。また、「Al2O3+Al」量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.9−16は、酸化チタン原料が過多のため、ビード形状が劣化した。また、「Al2O3+Al」量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過少のため、アーク安定性が劣化した。No.9−17は、「SiO2+Si」量が過少のため、ビード形状が劣化した。No.9−18は、「SiO2+Si」量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。また、C量が過多のため、ビード形状が劣化した。また、ZrO2量が過少のため、Zr添加による効果がなかった。

0155

No.9−22は、金属Ti量、B化合物量、Ni量が過少のため、靭性、強度が劣化した。No.9−23は、「Al+Mg」量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。No.9−24は、Ni量、「Cr+Mo」量が過多のため、靭性が劣化した。また、Li化合物量が過少のため、Li添加による効果がなかった。

0156

No.10−6は、SiO2量が過少のため、ビード形状が劣化した。また、Mn量が過多のため、溶接割れが発生した。No.10−7は、被覆率が過多のため、なじみ性が劣化した。また、「Na+K」量が過多のため、棒焼けしやすくなり、被覆剤の脱落も発生した。また、金属炭酸塩量が過少のため、ピット、ブローホールが発生した。No.10−8は、被覆率が過少のため、溶接作業性がすべて劣化した。また、金属炭酸塩量が過多のため、アーク安定性、ビード形状が劣化した。No.10−9は、「Na+K」量が過少のため、アーク安定性が劣化した。また、Mn量が過少のため、ブローホールが発生した。

0157

No.10−15は、被覆率が過多のため、なじみ性が劣化した。また、金属弗化物量が過多のため、アーク安定性が劣化した。No.10−16は、被覆率が過少のため、溶接作業性がすべて劣化した。また、金属炭酸塩量が過少のため、ピット、ブローホールが発生した。No.10−17は、金属炭酸塩量が過多のため、アーク安定性、ビード形状が劣化した。また、「Na+K」量が過多のため、棒焼けしやすくなり、被覆剤の脱落も発生した。No.10−18は、金属弗化物量が過少のため、ビード形状が劣化した。また、「Na+K」量が過少のため、アーク安定性が劣化した。また、ZrO2量が過多のため、スラグ剥離性が劣化した。

0158

No.10−22は、金属Ti量が過少のため、強度、靭性が劣化した。また、Li化合物量が過多のため、乾燥割れが発生した。No.10−23は、「Cr+Mo」量、Ni量が過多のため、靭性が劣化した。No.10−24は、「Al+Mg」量、Mn量が過少のため、強度、靭性が劣化した。
No.13−1、No.13−2は、酸化チタン原料の粒子表面における「Si+Al」の値が下限値未満のため、ビート形状、なじみ性が劣化した。

実施例

0159

以上、本発明について実施の形態及び実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。

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